大祓百鬼夜行㉑〜Doll Phantasm-人形遊戯-
●Re Birth
それは、唐突にこの『窓の無いビル』――UDC秘密実験場に現れた。
『第一防衛ライン壊滅、被害甚大!』
『駄目だ、UDCサーチャーに映らない。アレは何なんだ!?』
彼等にはその姿を捉える事は出来ない。為す術も無く蹂躙されていく仲間達。
『ソナーに感、攻撃反応増大……アンノウン、第三層へ到達!』
『本部の許可を待ってる時間は無いわ。聞こえる、REM?』
でも……私なら、私だけは。
『マスター権限で接続。解除コード……[Blue Bird]!』
『全セーフティ、及びリミッター解除。戦闘モード起動――』
私だけは分かる。私もかつて、そうだったから。
『REMの出力上昇。しかし武装が……彼女はもう兵器じゃないんですよ!』
『大丈夫よ。ここは彼女の生まれた場所……だから』
だから、ゴメンね。皆。
『! 不明な振動が増大! これは……』
『だ、第一層より新たなアンノウンが……多数、出現!』
今、少しだけ――力を貸して。
『アンノウン群、発砲開始。馬鹿な、これ程の戦力が一体何処に……!』
『以降、新手のアンノウンを友軍としてREMsと呼称。いいわね、REM?』
耳をつんざく駆動音と、硝煙と火花が視界を覆う。
ああ……一年半ぶりの戦場だ。
『私達ではアレの姿が認識出来ない。あなただけが頼りなの』
『了解です、隊長殿』
だけど、あの時とは違う。私は私の意思で戦うんだ。
『……ゴメンね。終わったら焼肉でも行きましょう』
『それに、ケーキとアイスを所望します』
笑顔で言葉を返し、私は戦場へ向かう。
私と皆との、縁を守る為に。
「集まってくれてありがとう。早速だが作戦の説明をするぜ」
グリモアベース、虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)は集った猟兵達に一礼すると、手早く大型スクリーンに情報を投影する。戦場と、敵と、そして味方を。
「これを見てくれ……カクリヨからUDCアースへの本格的な侵攻が始まった」
現在進行中の『大祓百鬼夜行』なる一大戦争はカクリヨファンタズムを始め、隣接するUDCアース、果てはサクラミラージュからも影響を受ける程の、世界を跨ぐ戦争となっていた。そして敵は攻撃目標の一つであるUDCアースへと恐るべき刺客を放ったのだ。
「このUDC-Null……オブリビオン化した妖怪が防衛組織の拠点を襲撃したんだ」
忘れられた存在故に知覚出来ない妖怪。それが何を目的としてUDCの防衛組織を攻撃したのだと質問が飛び、志郎は戦場の詳細を続けて説明した。そこはかつて邪教徒の秘密実験場だったが、猟兵達の活躍でUDC組織が接収し今は組織の拠点として活用されていた。
「ここを守れれば超常光線砲【U.D.C(アンリミテッド・ディヴァイン・キャリアー)】の開発が進む。最終決戦で運用すればより多くの虞を祓う事が出来る人類の叡智の結晶だ。何としても、この拠点を守り抜いて超常光線砲を完成させて欲しい」
そこは秘密兵器の開発実験場でもあったのだ。しかしそれ程の拠点なら戦力も充実しているのではないか? と質問が。対して志郎は難しい表情で言葉を返した。
「繰り返すが、このUDC-Nullは一般職員には視認出来ない――彼等には反撃出来ないんだ。だからこそそれが見える俺達の、猟兵の力が必要になる。ああ、それと……」
つまり、猟兵でなければまともに戦えない相手だからこそ、猟兵達でなければ事態の収拾は計れないという訳だ。そしてもう一つ、スクリーンに映された味方が拡大されて。
「以前この施設で保護したUDC-P、REMって言うサイボーグが支援してくれる」
「つーか……現状この子の奮戦でギリギリ全滅を免れている状況だ。至急彼女を支援しつつ、敵を殲滅して欲しい」
純白に鮮やかな青いラインが走る強化プラスチックの装甲に、非殺傷兵器を内蔵した護衛兼作業用サイボーグ――その実体は、かつて『リエ・デッドコピー・ルシーズ』として死と破壊を撒き散らしたオブリビオン――UDCの一体だった。しかし猟兵達の活躍でUDC-Pとして組織に保護され、これまで戦いとは無縁の生活を過ごしていたのだ。
「敵のオブリビオン――『棄物蒐集者・塵塚御前』の襲撃に応じて、一時的に昔の機能を開放して応戦中だ。だが彼女自身がもう非戦闘員である事に変わりはない。最悪な事になる前に彼女を助け、共に敵を打ち破って欲しい」
塵塚御前はREMと同じ様に人形が魂を宿した妖怪だ。相手に応じて恐るべき妖怪を解き放つ強敵――REMとの戦力の差は圧倒的。だからこそ急いで戦闘に介入する必要がある。
「時間は余り無い。準備が出来次第、現地に向かってくれ。よろしく頼む」
頭を下げる志郎。合わせて蜘蛛の巣形のゲートが開き、不意に火薬の臭いが鼻孔をくすぐった。戦闘はもう始まっている……それでも今ならば、まだ間に合う。
ブラツ
ブラツです。このシナリオは1フラグメントで完結し、
「大祓百鬼夜行」の戦況に影響を及ぼす、
特殊な戦争シナリオとなります。
本シナリオはカクリヨファンタズムからUDCアースを襲撃した、
UDC-Nullとしてオブリビオン化した妖怪の退治が目的です。
以下の点に注意する事で、非常に有利な状況になります。
●プレイングボーナス……UDC-Pやエージェント達と協力して戦う。
本シナリオではUDC-P『REM』という作業用サイボーグが支援してくれます。
彼女は以下の過去作【夢見る戦闘人形】で保護されたUDC-Pです。
『https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=15788』
●補足情報
カクリヨファンタズムのオブリビオンは、
骸魂が妖怪を飲み込んで変身したものです。
飲み込まれた妖怪は、オブリビオンを倒せば救出できます。
●今回の注意事項
開始と同時にプレイングを募集します。
アドリブや連携希望の方は文頭に●とご記載下さい。
単独描写を希望の方は文頭に△とご記載下さい。
同時描写希望時は何がしかの識別子の記載をお願いします。
やれるだけやります。やれるだけやります。
募集締切りはタグにて告知いたします。
それでは、よろしくお願い致します。
第1章 ボス戦
『棄物蒐集者・塵塚御前』
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POW : 歯車地獄―壊す事もそれなりに得意なのですよ。
【自身の体の内部 】から【圧搾破砕用に変形した複数の巨大歯車】を放ち、【任意の全対象の関節接続部等を破壊すること】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : 鉄骨抄―喚け、笑え、叫べ。お前の声を響かせよ。
【名を失った”妖怪”百鬼夜行 】【名を与えられなかった”妖怪”百鬼夜行】【名を封じられた”妖怪”百鬼夜行】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 忘霊遊郭―御足は其方の瘡蓋一枚。いざ来たれ。
いま戦っている対象に有効な【対象の心身の傷に刻まれた忘れ・失せモノ 】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
イラスト:エンドウフジブチ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「飾宮・右近」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●Revenge
苛烈な弾幕を潜り抜け、塵塚御前はREMにむけてゆらりと糸を伸ばす。その糸がREMのヘッドギアを真っ二つに裂いて、はらりと桃色の綺麗な髪が垂れ落ちた。
『間抜けめ、最初から狙いは貴様よ』
御前の背後には彼女が取り込んだ数多の妖怪たちの骸――百鬼夜行たる超常の化身が、REMを取り込まんと手ぐすね引いて待っていた。全てはUDC-Pを取り込み新たな力とする為、百鬼夜行の戦列に彼女を加える為の立ち回りだったのだ。
『だから、何だと言うのです?』
矢張り、勘が鈍っている。それに元より戦いは苦手だった――今や眠れる無数の同胞を超常で呼び起こし、第三層にて絶対防衛線を構築。これより上の階には行かせまいと決死の覚悟で臨んだが……どちらにせよ、奴からこの身を守らねばなるまい。顔色一つ変えずに髪を掻き上げて、少女の面を戦士へと切り替えるREM。
『元の骸に戻れと言うのだよ、この塵塚御前がな!』
刹那、影が己と同様の――同型機の形をとって、手にした得物で反撃の砲火を解き放つ。かつてREMの心を傷つけた『共食い』は形を変えて、再び自身に襲い掛かった。交差する火線、充満する互いの硝煙が世界を灰色に染め上げて、御前の糸が荒っぽく迸る。しかしそれは、REMが手にした電磁鉄扇が紫電と共に焼き払った。
『あなたと一緒にしないでください』
『舐めるな、その様な玩具で!』
本当なら蛇腹状の電磁式張扇が良かったが無い物は仕方ない。広げた扇でそのまま火線を遮りながら、REMは御前の喉元へ迫る。
『生憎、鉛弾は切らしてまして……いえ』
矢張り、巨大なオブリビオンだ――自身の三倍はあろう身の丈を見上げながら、弱点を探り同胞と情報を共有する。眼帯は無くともシステムは生きているのだ。不意に下ろされた巨大な蜘蛛の前脚を扇で凌ぎながら、REMは滔々と言葉を紡いだ。
『これで十分でしょう、操り人形さん』
『デッドコピー風情が、我を愚弄するか!』
激高する御前。格下の元オブリビオン如きにどうしてこうも後れを取る――その謎に応える様に、REMは声高らかに宣言した。
『その名は捨てました。私はUDC極東支部南関東第八エリア所属――』
それが今の私の居場所。皆が作ってくれた、新しい世界。そして。
『登録名称、UDC-P:REM……只一人の、ただのサイボーグです!』
瞬間、紫電が走る。衝撃が突風となって施設を揺らし、ゆらりと空間が裂けた。
間に合ったのだ――ここから先は、猟兵の時間だ。
荒谷・つかさ
よし、間に合ったみたいね。
久しぶり、元気にしていたかしら?
よく持ち堪えてくれたわね……さあ、反撃と行くわよ。
REMには私の後ろから攻撃してもらい、敵の射線との間に私が入るよう動いてもらう
そうすることで敵の攻撃のラインを一つに絞り、対処しやすくする狙い
私自身はハンマー「流星」を担いで前衛を担当
飛んでくる歯車を、挟まれる前に叩き落し続ける
挟めなければ単なる質量攻撃、恐るるに足りない
そうこうしながらこっそり【妖術・九十九髪】発動
防戦一方と見せかけて不可視の髪を伸ばし這わせ網を張り、タイミングを見て一気に捕縛
そのまま「怪力」に任せてぶん回し、壁や床や飛び回ってる歯車にぶつけて攻撃するわ
●鬼教官、再び
『口だけは達者な様だな。だがそれが最後の言葉となる!』
威圧的に見降ろす御前の全身が震える。ゆらりと、洞のような剥き出しの腹の闇が歯車の形を成し射出――無数の暴力装置がごうと音を立てREMに殺到した。
『追跡型の投射兵器ですか――!』
それはただの歯車ではない。狙った対象の関節を跡形も無く破壊する破砕兵装。こんなもの、サイボーグとは言え戦闘用では無いREMが耐えられる代物ではない。
『!』
ガクンと姿勢を崩すREM。いつの間にか足元を小型の歯車が打ち付けていたのだ。自己修復出来る程度の傷だが、衝撃で怯んだ隙を見過ごす程御前は甘くはない。
『そのまま転がり奈落へ落ちろッ!』
「いいえ、させないわ」
瞬間、REMの眼前に迫る巨大な歯車が爆ぜる。飛び散る瓦礫にしゅうしゅうと音を立てて昇る煙の奥、小柄な人影が巨大な鉄槌を担ぎ、ゆっくりと立ち上がった。
「――よし、間に合ったみたいね。久しぶり、元気にしていたかしら?」
『荒谷教官! ご無沙汰しておりました』
それは荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)と身の丈よりも巨大な丁字の鉄槌『流星』。威勢よく敬礼を返すREMを見やり、つかさはバツが悪そうに苦笑する。
「いや、教官じゃないから。敬礼もいいから! ……にしても」
ざっと見渡せば、争う事のむなしさを知る彼女が命を懸けて立ち向かった跡――無数の同型機の亡骸にボロボロながら破顔したREMの姿。そっと煤けた頭を撫でて、つかさはREMの笑顔に応えた。
「よく持ち堪えてくれたわね。さあ、反撃と行くわよ」
『小癪な。たかが鬼の小娘が一人増えようと――!』
御前が言い切るよりも早く、力強く大地を叩くつかさ。その一撃が戦場を大きく揺らし、動揺した御前に向かって鬼が疾駆する。
「REM、後ろについてバックアップをお願い。射線を合わせて」
『了解です! 迎撃はお任せください!』
即席のツーマンセル。だがREMの戦闘力は大体把握している――追従するくらいならば造作も無いだろう。亡骸から拾い上げた大型連装ガトリング砲を掲げ、飛び交う歯車を追い払う様に火線が煌めく。取りこぼしは荒ぶる鬼が鉄槌を振り回し、容赦なく、粉々に、跡形も無く破壊せしめた。
『歯車を破壊するか! 何という怪力!?』
「見え見えよ妖怪さん。それじゃあ届かないわ」
関節狙いなら軌道を読み切るのは容易い。背中を任せられれば自身は正面に注力すればいい。後はひたすら前進あるのみ――そして。
『な、動けぬ……これは……!』
「そしてこれは見えなかった様ね……今よREM!」
『はいっ!』
解き放たれたつかさの超常――不可視の九十九髪が足元から御前の全身を縛り上げ、怪力と共にその巨体をまるで鉄球クレーンの様に振り回し壁に打ち据える。飛び散る瓦礫と打撃音が轟いて、その後をREMの火線が追いかけた。
「ね、簡単でしょ?」
『流石……です!』
蹂躙し、破壊するのは力ある者の特権。その力を見誤った妖怪が、この鬼に勝てる筈がない。飛び散る火花と吹き荒れる硝煙の奥、巨大な影がずるりと落ちた。
大成功
🔵🔵🔵
リューイン・ランサード
△
怖くて強そうな相手が出てきましたね。
僕、痛いのは嫌なんです。
あれ、この人、さらに何、呼び出してるの?
…これ、僕が初冒険で出くわした(大魔王第三形態っぽい)モンスターだ<汗>。
帰りたくなってきたけど、REMさんや職員さんを見捨てる訳にはいかない。
頑張ります、怖いけど<泣>(UC使用)
REMさんには後方からの援護をお願いし、自分は前に出る。
相手の攻撃は、UC+第六感で読んでの見切りで回避や、ビームシールドで盾受けしたり、オーラ防御で防いだりで凌ぐ。
UC効果に加え、多重詠唱による炎と風の属性攻撃&全力魔法&破魔&高速詠唱&範囲攻撃で、呼び出した魔物ごと塵塚御前を炎の大竜巻に巻き込んで焼き斬ります!
●過去を乗り越えて
「REMさん、僕の後ろに」
涼やかな声と細身の背中――スラリと抜いた『エーテルソード』を構え、REMの前に立ったのはリューイン・ランサード(竜の雛・f13950)の姿。ドラゴニアンらしい立派な翼と尻尾を振るわせて、巨大な敵を果敢に見上げる。
『ありがとう。でも……あなたは、大丈夫ですか?』
少年を見やり尋ねるREM。確かに幾度となく死闘を潜り抜けた戦士の気迫は尋常ではない。だがそれは敵も同じ――気勢を上げながら洞の様な腹から漏れ出る漆黒の霧が、ぞわりと異形に成っていく。
「大丈夫です。ちょっと怖いですけど」
一つ、二つとそれらは数を増やして……見覚えがある様な、無い様な。リューインの脳裏を過るのは、記憶の底の戦争。故郷のアルダワで見えた数々の敵の形。
「いや、ちょっとどころじゃ……ないかも」
それらを顕現するのが、恐るべき御前の超常であった。無意識に心に爪跡を残した強敵の記憶――それらが刺々しい武装を両手に掲げ、リューインを取り囲む。
「怖くて、強そうな相手が出てきましたね……」
僕、痛いのは嫌なんですけど。歯を食いしばり手に力を込める。やっぱり恐ろしい敵だ。恐ろしい敵……そう。
「って、あれ、この人、さらに何、呼び出してるの?」
それはひたすらに巨大で、醜悪で、強靭で――忘れられる訳がない。初めての冒険で出くわしたあの大魔王、セレブラム・オルクスの姿を。
『心拍に乱れが診られます。本当に、大丈夫ですか?』
「……正直帰りたい。でも」
異形の背後にそそり立つ姿は正に大魔王の貫録。息が苦しい。思考が辛い。それでも――リューインはREMに笑顔を返し、鈍く煌く切先を大魔王の影に突きつけた。何故ならば自分には、心に誓った思いがあるから。
「――もう逃げないって、決めたんです!」
空を薙いだ一閃が、苛烈な気迫と共に有象無象を吹き飛ばす。炎と風の多重詠唱が異形の影を闇へと還したのだ。後に続いて溢れるそれらを、空間を照らす破魔の光が跡形も無く消し飛ばす。そうだ……こんな手合い、幾度となく乗り越えてきた。張り巡らせた気が邪気を吹き飛ばし、残るはただ一人――大魔王のみ。
『了解しました。では援護します。皆、お願い!』
戦列が崩れた今こそが好機。REMの号令一下、まだ戦えるREMsの面々が思い思いの武装を放ち、大魔王へと追撃を続ける。ガトリング、ミサイル、キャノン――煙を吹き、オイルを撒き散らしながら、亡霊めいた機械の兵が津波の様な火線を届けて。
『何故だ、何故退かぬ……!』
所詮は乗り越えた過去の残滓、今を生き抜く意志の束に立ち向かえる筈が無い。追い詰められた大魔王は断末魔の悲鳴を上げて、輝く光の刃の元に両断される。
「REMさんや職員さんを見捨てる訳にはいかない……だから!」
そのまま、巻き起こった暴力の竜巻が赤々とした炎を纏って――リューインの込めた必滅の一撃が御前を真紅で包み込んだ。もう力無き少年では無い、勇気ある戦士の姿がそこにはあった。
成功
🔵🔵🔴
カイム・クローバー
●
タイムリミットだぜ。便利屋Black Jackのご登場だ。
REMと協力。
前衛は俺だ。…今のアンタが戦士なのは分かってる。だからこそ生きて帰る事の重要性も理解してるだろ?
サイボーグだから心配ない、なんて下らねぇ返答は野暮だぜ?俺の請けた依頼はアンタを護る事。んで、アイツの骸魂をぶちのめす事だ。
短い間だが――一緒にダンスでもどうだい、レディ(お嬢さん)?
さぁ、踊ろうぜ。『名前のない』観客も多い方が良い。
【挑発】を掛けながら百鬼夜行を二丁銃の【クイックドロウ】の【乱れ撃ち】で潰す。【悪目立ち】しつつ、あえて近距離に持ち込む。【零距離射撃】で紫雷の【属性攻撃】のUC。
――少し。情熱的になり過ぎたか?
●バレット・バレエ
『小癪な者どもめ……だが!』
力に捻じ伏せられ、炎に焼かれ鋒鋩の体の御前。だがその力は未だ健在――揺らめく影が沸騰するマグマの様に形を変えて、赤黒い無数の妖の姿となった。それらは名も無き忘れられた存在。あるのはただ一つ、現世への憤りという歪められた心のみ。
『流石に、私もこれ以上は……』
解放した能力もずっと使い続ける事は出来ない、膝をついたREMに合わせて、周囲のREMsが一人、また一人と姿を消していく。多勢に無勢……戦場のアドバンテージは逆転した。このままでは成すが儘に蹂躙されてしまう――その時。
『これで終わりだ。疾くと去ね!』
「いいや、終わりはあんたの方だ」
哄笑を上げる御前に向けて叩き込まれたのは、反撃の銃弾と軽やかな男の言葉。
「タイムリミットだぜ。便利屋Black Jackのご登場だ」
宣戦布告の狼煙を上げて、二丁の魔銃『オルトロス』が鈍い光を放つ。立ち昇る硝煙と銃口の向こう、ニヒルに口元を歪ませたカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)が姿を現わした。
『邪魔をするな、人間風情が!』
ぞろりと、無数の妖がカイムと、その背後で膝をつくREMを囲んだ。圧倒的寡兵ながら、それに動じる事も無く飄々とカイムは言葉を続ける。
「……今のアンタが戦士なのは分かってる。だからこそ生きて帰る事の重要性も理解してるだろ?」
『勿論です。ですが……』
如何にも、といった面持ちで立ち上がろうとするREMにむけて、人差し指をそっと立てるカイム。それ以上はいいと言わんばかりのジェスチャーに、REMは不思議そうに小首を傾げた。
「おっと、サイボーグだから心配ない、なんて下らねぇ返答は野暮だぜ? 俺の受けた依頼は二つ――」
ニヤリと笑みを湛えたままカイムは宣う。一つ、アンタを守る事。もう一つ、目の前のアイツの骸魂をぶちのめす事。
「――一緒にダンスでもどうだい、Lady?」
伸ばされたカイムの手。それを無意識に掴み上げたREM――契約は成立だ。くるりと視線を御前に向けて、銃口と共に狙いを定める。有象無象など、この際物の数では無い。
『そのふざけた口を叩き割ってくれようかッ!』
激高する御前。途端、妖の群れが一斉に二人へと飛び掛かる。不定形の津波の様に空間を埋め尽くしたそれらが轟音と共に――爆ぜた。
オーディエンス
「さぁ、踊ろうぜ。百 鬼 夜 行も多い方が良い」
多勢に無勢? 願ったりだ。パーティーは派手な方がいい……ステップを踏む様に子気味良い音が跳ねて、それに合わせて弾かれる二丁拳銃の連弾が殺到する怪異を物言わぬ骸へと変えていく。
『この、力は……!』
それに寄り添う様にしゃがんだREMがありったけの弾雨を浴びせる。高温が跳ねる様なカイムの舞踏に合わせて、爪弾かれた鋼の礫は並居る妖を続々と討ち伏せていった。その姿はまるで立った二人の銃弾舞踏。立ち込めていく硝煙の奥、ギラリと闘志をむき出しにしたカイムのステップが一足飛びに御前へと詰め寄った。
「――少し。情熱的になり過ぎたか?」
一瞬だった。優位を逆転された刹那、首筋まで迫った鈍色の殺意は容赦なくその牙を突き立てて、ピリオドの音が高らかに響く――アンコールは不要だろ、Ready?
大成功
🔵🔵🔵
陽向・理玖
●
戦うの得意じゃねぇんだろ?
任せろ
その為に居る
衝撃波撒き散らしつつ変身し
残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る
彼女の事は知らない
当時はまだなりたてで
他人に構う余裕なんてなかった
けど今は
自分の意志で
戦うのが苦手なのに立ち向かってる
あんたみたいなのを助けたいと願ってる
あんたのホームなんだろ?
得意な事で戦えよ
支援してくれ
少し動き遅くさせるとか何でもいい
好機は見逃さねぇ
攻撃掻い潜り蹴り飛ばし吹き飛ばし壁に叩き付け
拳の乱れ撃ち
出来たら施設の保護もよろ
歯車は距離取り動き見切り
破砕用って事はそれ目的の動きだろ
狙いも見え見えだ
進路読み避け衝撃波ぶつけ動き阻害し攪乱
その隙に暗殺用い深く懐へ
独りで還れ
UC
●闇を裂く疾風
無敵の銃弾舞踏が戦場を制圧して僅か、ようやく立ち上がったREMの側に橙の風がそっと寄り添う。それは厳しくも優しく、強くあった。
「戦うの得意じゃねぇんだろ?」
『あ、ありがとうございます』
陽向・理玖(夏疾風・f22773)はREMの手を軽々と掴み上げてその場に立たせる。ニヤリと口元を歪める理玖――視線を外し、狙うは御前ただ一人。
「任せろ。俺はその為に居る――」
同時に、無数の歯車が二人を潰さんと押し迫った。だがそれはもう見ている――顔面を狙った巨大なそれを伸ばした拳で叩き落とし、理玖は敢然と駆け出した。
「変身ッ!」
声と共に、殺到する破壊の権化を叩き落としながら青き鋼の装甲を纏っていく理玖。両脚、右腕、左腕――全身を包み込み、龍を模した複合センサー装甲がすっぽりと顔を覆った時、凄まじき暴風が戦場のあらゆる闇を吹き飛ばした。
「あんたのホームなんだろ? 細かい事は任せるぜ」
『了解です。皆、支援射撃を! 進路を確保!』
駆け出した理玖を目で追って、REMは再び姉妹たるREMsを再稼働させる。時間は十分に稼がれた――ここからは反撃の時間だ。炸裂する無数の破裂音が、再び戦いの鐘を打ち鳴らした。
彼女の事は知らない。当時はまだ猟兵になりたてで他人に構う余裕なんてなかった。ヒーローズアースの戦争の少し前に、彼女は自身を確立し猟兵と共に戦ったらしいが――。
「支援してくれ。出来たら施設の保護もよろ」
『了解です! 皆、あの歯車を撃ち落として!』
その時と違い、今は自分の意志で戦っている。自分の居場所を、世界を守る為に、戦うのが苦手なのに立ち向かってる。そして俺は、あんたみたいなのを助けたいと願ってる。だから――握りしめた拳に力が籠る。捉えた歯車の動きは解析した通り関節を狙って来る。ならば軌道も読みやすいし、そんな力技で負ける訳がない。
「破砕用って事はそれ目的の動きだろ」
裏拳で弾き飛ばし、肘打ちで叩き落とす。蹴り出した脚の勢いそのまま、殺到する破壊の意志を届く前にぶち壊す。狙って当てるでは遅すぎる――理玖の一挙手一投足はそのまま破壊の力を十全に持つのだ。故に、触れる前に全ては終わっている。
「狙いも見え見えだ……じゃあな」
刹那、距離にして10m程――御前に迫っていた理玖は無数の歯車を潜り抜けて、二の太刀たる歯車が浴びせられる前に、青き疾風はその姿を掻き消した。
『消えた!? 奴はどこに……』
気配はある。だが姿が――瞬間、遅れて届いた爆音と共にそれは御前の長大な足元に現れた。音よりも早く、加速した超常の戦士はついに巨悪の懐へ飛び込んでいたのだ。青き龍は弓を射る様に右腕を大きく引いて、溜め込んだ力を解き放たんと御前を鋭く睨み上げた。
『この距離ならば、貴様も道連れに!』
「断る。骸の海に独りで還りな」
彼方では砲火の音が聞こえる。そしてそれが、御前の最後の記憶だった。解き放たれた灰燼の拳は圧倒的に巨大な御前の肉体を見事に打ち抜く。音と共に衝撃を纏った必滅の一撃――威力と共に、思いを乗せて。今度は間に合ったみたいだな。
成功
🔵🔵🔴
アルトリウス・セレスタイト
●
守り手は失われるべきではない
まあそれがなくとも、オブリビオンは討つのが猟兵だ
戦況は『天光』で逐一把握
REMの位置と現状も同時に捉えておく
攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給
破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
『煌皇』を以て高速詠唱を無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、斉射
それを間断なく無限回実行
戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす
御前とやらが打つ手も全て消去対象
全てにおいて俺を上回らねばREMに届くことは有り得んぞ
REM自身が攻めるなら弾幕を調整し支援
※アドリブ歓迎
●破壊の使者
御前が再び気を取り直した時、目の前は光に包まれていた。ここは最果てか、骸の海か――否。
「守り手は失われるべきではない。まあそれがなくとも――」
その光は『破界』の魔弾。自らが気を失った後も放ち続けられていた歯車ごと、全てを飲み込んで無へと還していた。その根源――アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は滔々と言葉を紡ぎながら、深い海の様な視線を御前へと向けていた。そして力ある言葉と共に、破界の光は威力を更に増していく。
「オブリビオンは討つのが猟兵だ」
『次々と鬱陶しい奴らめ……だが!』
己の内なる衝動を解き放ち、現れたるは無数の過去の残滓――そのどれもが、アルトリウスが過去に対峙した恐るべき支配者達の姿を持つ。
『この軍勢を果たして、たった一人で止められるか?』
心身の傷に刻まれた忘れ、失せたモノ達。いわばかつての災厄がそのまま牙を向いたのだ――だがそんなモノ、アルトリウスにしてみればいつもの事である。
「自分だけが力を持つとは思わない事だ」
顔色一つ変えずに蒼光の魔弾はその威を更に増していく。REMの位置は把握済み、施設・設備に影響を及ぼさぬ様選定は完了。纏う十一の原理を無限に廻し、阻み、逸らし、捻じ伏せる。その根源は――世界の果てたる姿と同一。
『まさか、貴様も!?』
無限機関と化した破壊の奔流はこれ以上、何を成そうと、抗おうと、全てを等しく飲み込み平らげる。それが『原理』なのだ――この方程式を書き換えるのは、それと同一の力のみ。
「幾度生み出そうと、消すだけの事」
『人の身で、否――それを越えてこそか』
幾ら式を理解しても、証明出来なければ理論を崩す事は出来ない。数式の代わりに乱舞する破壊の権能は天をも覆い、まるでプラネタリウムの流星雨の様に御前の視界を埋め尽くす。そのどれもが美しく、恐ろしい。
「全てにおいて俺を上回らねば……」
光は全て破壊の跡。星の光が届いた後に分かる事は、その星が消えてしまったという事だけ。戦域を埋め尽くした魔弾の軌跡は絶望的な現実を証明するのみ。心の奥底の恐るべき記憶が如何に形を成そうとも、認識する以前に消えてしまえば最早、どうにもなる事は無いのだから。
「REMに届くことは有り得んぞ」
『お、のれぇ……!!!!』
淡々と執行され、失効する御前の手札はやがて光の渦に溶け消える。そして自身も――意識ごと、怪異は果てへと消え失せていった。
ここは人の世界。妖は妖の世界へ戻れと言わんばかりに。それでも光だけは、平等に遍く全てを照らしていた。
大成功
🔵🔵🔵
支倉・錫華
REMさんだっけ。はじめましてだね。
さっそくだけどその想い、わたしたちにもいっしょに背負わせてもらえるかな。
「アミシアにはREMさんをサポートしてほしいな。REMさんよければアミシアとリンクしてもらえるかな」
『塵塚御前』だっけ? たしか『棄物蒐集者』とか言ってたよね。
そんな名前なら、REMさんを狙っても無駄だよ。
彼女は『棄物』なんかじゃない。極東支部の大切な仲間だからね。
歯車は重量負けはしそうだけど、鋭さ勝負。【九芒真空輪】で切り墜とし、小太刀で足を切り落として動きを止めよう。
トドメはREMさんに刺してもらいたいな。
過去を弄んだツケは、しっかり払ってもらわないとね。
「REMさん、いまだよ!」
ウルル・マーナガルム
●
ボクらが来たからにはもう安心だよ
一緒にアイツをやっつけてやろう!
『助太刀します。共に勝利を』
ハティが収集、解析した諸々の情報
敵味方の位置とか
敵の行動パターン予測とかをREMちゃんに送りたいな
『データリンクを要請します』
狙撃補助用のデータだけど、それだけが使い道じゃないし
あとエージェントさん達にもね
ボクらが何処に攻撃しようとしてるか分かるだけでもかなり違うんじゃない?
ボクも同じ情報をSKORで受信
敵の行動を狙撃で妨害していく
UCはREMちゃんを守る為に使うよ
援護はボクらに任せて
キミはキミの思うようにやっちゃえ!
『御武運を、REM』
使用技能
戦闘知識、情報収集、ジャミング、体勢を崩す、スナイパー
●連弾
「『塵塚御前』だっけ? たしか『棄物蒐集者』とか言ってたよね……そんな名前なら、REMさんを狙っても無駄だよ」
再び意識を取り戻した時、目の前には三人――攻撃対象と、新たな二人の猟兵の姿があった。二人の猟兵の少女――支倉・錫華(Gambenero・f29951)とウルル・マーナガルム(グリムハンター・f33219)は、強い意志を秘めた目を御前に向けて敢然と立っていた。
「彼女は『棄物』なんかじゃない。極東支部の大切な仲間だからね。はじめましてだね、REMさん」
「ボクらが来たからにはもう安心だよ。一緒にアイツをやっつけてやろう!」
五月蠅い……これだから子供は、面倒だ。渦巻く光のイメージが脳裏を未だに焼いている。幸いあの男の姿は見えない。だが戦いは終わっていない――ならば。ゆらりと立ち上がり、御前は破壊の歯車を四方八方へと解き放つ。あれが相手ならば、我が力で捻じ伏せられるはずだ――!
「アミシアにはREMさんをサポートしてほしいな。REMさん、よければアミシアとリンクしてもらえるかな」
『当機からもデータリンクを要請します』
『了解です。ポート開放。アクセスコードは――』
殺到する歯車を超常の『九芒真空輪』で切り裂きながら、錫華は自らのサポートユニットたる『アミシア・プロフェット』をREMの支援に向けて出す。同様にウルルもハウンドタイプのサポートマシン『ハティ』とのリンクを要請し、ここに三位一体の戦闘ネットワークが構築された。
「その想い、わたしたちにもいっしょに背負わせてもらえるかな」
『助太刀します。共に勝利を』
『はい! よろしくお願いします!』
滑らかな電子音声と共にREMの声が高らかに響く。これで三者は繋がった――ここから先は、猟兵の時間だ。
『有象無象が幾ら増えようと、我に敵うと思うな……!』
超常に斬り落とされガラガラと落ちていく歯車を歯噛みして見やり、怒声と共に御前の前に無数の影が形を成す。名も無き百鬼夜行――恨みを糧に顕現した、超常の妖の兵団は、逆三角陣にて展開する猟兵達を覆い潰す様に一挙に殺到した。
「そう来ると思っていたよ……行動パターン予測、迎撃開始!」
ウルルの声と共に無数の火線が妖を穿つ。セミオートにしたマークスマンライフル、錫華のブルパップ式ライフル、そしてREMとREMsの一斉射撃――統制された無数の火線は瞬く間に戦域を蹂躙して、三方に散らばった妖の尽くを撃破し、分隊ながら大隊並みの火力と化した猟兵達は果敢に御前へと前進を続ける。
『いつの間に、ここまで!?』
その進軍速度は想定以上――アミシアとハティの的確なサポートは死角を完全に潰し、敵群の弱い所を潰しながら最短の進路を取る。如何に無数の百鬼夜行とはいえ、訓練され統制された軍隊の作戦行動を止める事など出来る訳がない。
「過去を弄んだツケは、しっかり払ってもらわないとね」
錫華が宣う。未来を切り開く一矢はここにあり――正にガンシップの如き制圧射撃が進路を切り拓いて、猟兵達は真正面から御前の喉元へと迫ったのだ。
『指定装備を展開、カウンターブラスト噴射』
「キミはキミの思うようにやっちゃえ!」
ハティの声に続いてウルルが叫ぶ。HMD『S.K.O.R.』がチカチカと明滅し、緑の髪がブラストの風圧でごうと揺れて――それは超常の神盾。REMを守るべく展開した無敵の防壁が空を裂いて顕現する。神盾に守られたまま、REMは自分達に秘められた最大の力を開放する――それは自らのシリーズに秘められた必殺の攻撃。接続された全ユニットのエネルギーを一身に受けて、REMは手にした電磁鉄扇から長大な光の砲身を形成した。
『御武運を、REM』
「REMさん、いまだよ!」
『はあぁぁぁぁッ!』
放たれた最後の矢――Re-Gnant-Replica。召喚された最大の攻撃は光と共に、御前を包み焼き尽くす。崩落する大地、落ち行く異形――生ある者の抗い、全ての生きるものの為に。無数の意思を背負った猟兵達の思いは、形となって過去を塗り潰した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ルパート・ブラックスミス
いつか投げた言葉を問おう。
魂と想いは放していないな?夢は抱けているな?
往くぞ、REM殿。殺戮の使命の為に非ず、『生きる理由』の為にこそ。
UC【信ずる者に殉ずる為の鋼姿】。
強化鎧に変形した己をREM殿に装着、【鼓舞】しつつ戦闘能力を【限界突破】させる。
敵UCにはニクス(爆槍フェニックス)を【投擲】、【誘導弾】として【武器落とし】迎撃。抜かるなよ、ニクス。
その隙に此方はUCによる高速【空中機動】で接敵。
REM殿が敵を迎撃している間に【情報収集】した【戦闘知識】を基に敵の急所を【見切り】、自身の燃える鉛で【武器改造】強化したREM殿の電磁鉄扇で【串刺し】にする。
失せろ。我らは悪夢に沈む気は無い。
ユエイン・リュンコイス
●
ほう、かつて助けた彼女か。あの後も息災だった様で何より…と、呑気に話している余裕はなさそうだね。幸い、彼女の能力は把握できている。連携に問題は無いだろう。
彼女には後方からの重火力支援を任せつつ、ボクは黒鉄機人と共に前へ出よう。機人を盾として攻撃を防ぎながら、【煉獄】を手に斬り結ぶ。骸魂と化した救出対象とは言え、こちらも手を抜けない。全力で当たろうか。
戦場はUDC秘密実験場という閉所、敵は無尽蔵に妖怪たちを呼び出し物量戦を仕掛けてくる、と。で、あればだ。
【煉獄】を機人の脊椎部にセットし、UCを起動。高熱化した装甲を以て触れるを幸いに敵を殲滅しよう。
前線はボクが掻き乱す。本命は任せたよ、REM?
●士道、再び
闇の奥、落ちた御前を追いかけてREMも深くへと進んで行く。煤けた臭いが鼻を突いて――途端、邪悪な声がREMの耳に届いた。
『フフ……ハハハハ! おあつらえ向きの場所が残っているじゃあないか、え?』
『ここは――!』
そこはかつて、姉妹機が廃棄された第一層――REMsの解体現場だった。組織の手が完全には届いていない、封印された区画。正に瘴気が満ち満ちた空間に鎮座した御前の声が高らかに響く。
『これにて堕ちよ、デッドコピー』
巨大な歯車が空を裂き、REMの背後より姿を現わす。忌まわし牙の怨念に気を取られ反応が遅れた――これまでかと運命を呪ったREMの耳に刹那、雄々しい、懐かしい声がはっきりと聞こえた。
「――いつか投げた言葉を問おう」
『あ……』
青白い炎が歯車を飲み込んで、焼き尽くす。ああ、あの青は……。
「魂と想いは放していないな? 夢は抱けているな?」
「あの後も息災だった様で何より……と、呑気に話している余裕はなさそうだね」
『…………はい!』
そして青に重なる様に紅蓮の炎が被さって、黒い影は跡形も無く消え去った。少女の声、優しくも勇ましい声。それは。
「往くぞ、REM殿。殺戮の使命の為に非ず、『生きる理由』の為にこそ」
「前線はボクが掻き乱す。本命は任せたよ、REM?」
ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)、ユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)、かつて己の魂を救った頼もしき仲間が、再びREMの傍らに姿を現わしたのだ。
『了解です! ルパート様、ユエイン様、皆様が示してくれたこの思い!』
そうだ。ここにいる皆は私、私達……その思いを背負って今、ここに立っているんだから。弱音なんて吐くものか。だから!
『決して無くしたりはしません!』
その思いを繋いでいく為に、私は絶対に倒れない。
「良い眼をするようになったな。ならば……」
ルパートが仮面の奥で微笑んだ気がした。優しくも頼もしい黒鉄の騎士様――その力は健在。むしろあの頃より何倍も強くなったと感じられる。
「――我が身は人に非ず。我が身は尊き魂を護る鎧也!」
瞬間、ルパートの五体たる鎧がバラバラに弾け、その全てがREMの全身に装着される。超常の権能、装着者に無類の力を与えるヤドリガミの究極形態。
『これは……』
「今だけ自分の力を貸そう。自らの意思の下、存分に戦うといい」
力が沸き上がる。込められた思いが何倍にも増幅されて……もう何も怖くない! ルパートを纏ったREMは漆黒のバイザーを下ろしふわりと浮かぶ。傍らには青い鳥――ニクスの姿もある。青い炎を纏い自在に飛び回る魔槍を侍らせて、全てに決着をつける為に、黒騎士REMは飛翔した。
「こちらも手を抜けない。全力で当たろうか」
『舐めた口を、人形風情がッ!』
黒衣の人形はもう一つの黒鉄――機人を操り共に飛翔する。正面に機人を配して、溢れる妖の尽くをぶちのめしながら、三つの漆黒は戦場を駆け巡った。
「そうだね。だけどこの意思は……ボクのものだ。キミとは違う」
手にした『煉獄』――灼熱の刀を手にしてユエインが叫ぶ。歯車を打ち払い、妖を斬り伏せて。手勢が怯んだ僅かな暇、その灼熱を機人へ差し込み、煉獄の権能が装甲を赤く燃え上がらせた。
「黒鉄を赤灼に染め上げて……駆けろ、機人ッ!」
「抜かるなよ、ニクス」
傍らには青き炎。二色の炎が闇を染め上げ、巨大な敵の暴力装置の尽くを無に還す。拳が、刃が、三つの意思が一つとなって、一つの炎は百万の煉獄すら焼き尽くすだろう。そこに歪められた妖の居場所など、無い。
『その力は、一体なんだというのだ……!?』
「分からないのかい? これが生きるという事さ!」
ユエインの言葉と共に機人が加速する。生きる事は痛みを伴う。だがそれすらも乗り越えて明日を掴み、生命を育む。それがやがて未来となって――過去のそれが今なのだと。途端、御前の足元に回り込んだ機人がその動きを封じて、がら空きになった洞の様な腹部が剥き出しとなった。そこに飛び込むルパートを纏いしREM。その手には青々と燃え上がる魔槍――ニクスの姿があった。
『やああぁぁぁぁッ!!』
「失せろ。我らは悪夢に沈む気は無い」
青い鳥の導きと共に、迅雷の如き加速したREMの一撃が御前を貫いた。赤と青の炎が過去という悪夢の残滓ごと、妖を焼き尽くす。
「その意思、これからも抱き続けるといい」
「うん。君はもう一人じゃあないんだから」
二人の言葉を受けてREMが頷く。
二つの炎はREMの心を暖かく照らし、満たしていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミハエラ・ジェシンスカ
●
らしくないという自覚はあるが
やはり、こう言うべきだろうな
よく頑張ったな、REM
割って入り攻撃を【武器受け】【受け流し】
久しぶりだな。やりたい事は見つかったか?
等と敵への【挑発】も兼ねて言葉を投げつつ
敵意をこちらへ向けてやる
悪いが、かばう等という器用な真似はできないのでな
そうして戦いの最中、敢えて関節を破砕され
動きを封じられた振りをして【騙し討ち】
悪いが、REMには驚き役になって貰うとしよう
バラバラになった全身を【念動力】で操り
4振りのフォースセイバーとドローン2基
そして頭部に搭載された特殊合金製の歯
これらを総動員してオールレンジ攻撃を仕掛けてやる
ウォーマシンがこの程度で戦いを止めると思うな
トリテレイア・ゼロナイン
●
壊したくない大切な物、それを見つけられたのですね
ご立派になられましたね、REM様
UC端末を残存REMs達に投擲し配布
音声指示より直結(ハッキング)の方が良いですね
私の技量(盾受け武器受け乱れ撃ちスナイパー武器落としかばう)を彼女達に幾らか反映させます
これ以上、誰も壊させません
互いをカバーし合う連携戦術を情報収集と瞬間思考力で取らせながら同時並行で自身は最前線へ
彼女らをかばいつつ巨大歯車は単騎の怪力で振るう剣盾で粉砕
援護を受け推力移動で懐に飛び込み大盾殴打
REM様、難しいお願いを致します
あの骸魂に呑まれた妖怪を恨んでも
許して頂きたいのです
貴女と同じく大切な物の為に
彼らも戦う選択をしたのですから
●受け継がれし鋼の意志
それでも、御前はまだ諦めてはいなかった。UDC-PたるREMさえ手に入れられれば問題無い。たとえ五体が幾度滅びようと、この目的さえ完遂すれば――再び、己を包む炎の中から無数の歯車を投げ放ちREMを狙う。しかしそれが届く事は無い。御前は見誤っていたのだ。彼女は孤独なUDC-Pなどでは無いという事を。
「らしくないという自覚はあるが……やはり、こう言うべきだろうな」
ガランと音を立てて、真っ二つになった歯車が地に堕ちる。赤々と輝く『フォールンセイバー』を振り抜いて、巨大な影がゆっくりとREMを見下ろした。
「よく頑張ったな、REM」
『! ミハエラ様!』
もう一人の黒き騎士――ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)はバイザー越しに煤けたREMの顔を見やり、僅かに口元を歪ませた。
「久しぶりだな。やりたい事は見つかったか?」
『それはもう……沢山……っと!』
僅かな談笑、それを引き裂く様に放たれた無数の歯車はもう一人の騎士の手によって叩き落とされた。内臓火器、ワイヤーハーケン、そして仰々しい長剣を振り抜いて、蒼銀の騎士がREMの前に立つ。
「悪いが、かばう等という器用な真似はできないのでな。それは私の仕事じゃない」
その姿を見てミハエラは事も無げに言葉を吐いた。最早語るまでも無い――いるならばそうなる。無言という絶対の信頼を見せつけて。
「壊したくない大切な物、それを見つけられたのですね」
それに応える様に大盾を降ろしたトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が優しく語りかけた。あの時、逃げる事も出来ずに戦いの渦中にいた彼女。自らの身体を作り替えられ、この世界に生まれた彼女――力無き少女だったサイボーグは、覚悟を秘めたREMとなって、再び見える事になった。
「ご立派になられましたね、REM様」
『トリテレイア様も!』
再会を喜び声を上げるREM。頼もしいマシンの先輩が二人も揃ったのだ――これが戦場でなければ、どれほど良かっただろうか。
「これ以上、誰も壊させません」
声援を背に受けて再び御前に向き直るトリテレイア。手にした直剣を正眼に構え駆け出そうとした刹那、ゴロンと大きな音を立ててミハエラの首が飛んだ。
『ミハエラ様!?』
「言ってる傍から……あなたは本当に……」
僅かだった。再会を喜び合う束の間、いつの間にか周囲に配された無数の歯車が三人を狙い一機に殺到したのだった。ただREMを守る為に飛び込んだミハエラが直撃を受けて、その五体をバラバラにされようなどとは予想もしなかったが。
「余所見している場合か。汚い部品が飛んで来るぞ」
しかしそれすらも意に介さずミハエラは悪態を吐く。最早戦う事も出来ぬだろう――飛び散った五体が痙攣する様に震えながら紫電を纏い、それを見た御前が鼻で笑う様に言葉を吐いた。
『ガラクタ風情が。貴様も取り込んでくれようか……む?』
部品になれば我が絡繰の一部に――止めを刺そうとミハエラの残骸へ歯車を飛ばした時、御前はその声の主の居場所を見失っていた。
「ウォーマシンがこの程度で戦いを止めると思うな」
いつの間にかその声は自らの足元に……それだけでは無い。バラバラに飛び散った部品がそれぞれ赤黒い光剣を放出し、更には円盤の様な自律兵器が飛び交う歯車を続々と蹴散らしていたのだ。
『この、面妖な!』
「妖怪は貴様だろうに。鏡をよく見るがいい」
咆哮一閃、悪態を吐くミハエラの頭部が御前の脚に噛み付いた。ただの噛み付きでは無い――ミハエラに備えられた特殊合金製の歯は古のガラクタ如き易々と喰い破る。合わせて乱れ飛ぶ光剣の輪舞に翻弄されて、御前は妖にあるまじき感情を呼び起こされていた。
『この……化け物め……!』
恐怖という、原初の感情を。
「REM様、難しいお願いを致します」
その隙にトリテレイアはREMへ言葉を掛ける。やるべき事は御前を倒す事。だがそれだけでは、世界を救う事など出来ない。
「あの骸魂に呑まれた妖怪を恨んでも、許して頂きたいのです」
『それは……』
此度の戦で見えた妖怪は世界を救う為に己の生命を投げ出した。故にこの破壊も本心では無い……その事を知り、これからの為にとトリテレイアは言葉を続ける。
「貴女と同じく大切な物の為に――彼らも戦う選択をしたのですから」
『了解しました。だって私もそうでしたから――ね!』
それこそ、かつての自身と一緒。世界の有り様を守る為に、逸脱する事を決心したREMと同じ。ならばやるべき事はただ一つ。
「ありがとうございます……私の端末の力をお貸ししましょう。姉妹の皆様も、これで少しは戦い易くなるはずです」
同意を得て、トリテレイアは自らの力を開放する。緊急時戦術指揮プログラム解凍――射撃管制システムをアップデートされたREMsはゆっくりと立ち上がり、ミハエラに動きを封じられた御前に向かって発砲を再開する。その動きはこれまで以上に精緻で、歯車を含めて着実に御前の動きを取り押さえていた。
「では、行きましょう。この世界で生きる為に」
『……はい!』
同じく強化されたREMも大型ガトリング砲を手にして、皆と共に支援射撃を敢行する。データリンクしたトリテレイアはそのまま最適な突入角を算出して、大盾を構えてスラスターを点火する。
『まだ……来るか、ガラクタ共ぉ!』
「ええ。今しばらく辛抱して貰います――!」
歯車はREM達の手により打ち落とされ、動きはミハエラが封じている。突撃したトリテレイアを阻むものはどこにも無い。瞬間、強烈な振動が五体を揺らして、御前は彼方の闇へと吹き飛ばされた。
「あなたも、世界も、これ以上壊させはしません」
「だからさっさとくたばるがいいさ……!」
それは終局を願う本心からの、慈悲の言葉。
それは地獄を見てきたマシン達の、心からの願い。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御形・菘
はーっはっはっは! ここで名乗りを上げぬは無粋の極み!
御形・菘、推参!
さてレムちゃん、妾が望む支援はただ一つ! 精一杯の応援だ!
戦う必要はない、心を込めて、大声を出して! 妾のバトる勇姿を励ましてくれ!
怪人よ、妾は今、最っ高に気分が良い!
好きに仕掛けてくるがよい、お主の渾身など握り潰してくれよう!
はっはっは、疎外と嘲笑を向けてくる名もなき輩たちで、妾を物理的に止められるはずがあるまい?
まして声援を背負い、最強無敵と成った今ならな!
それに、止めるのであれば口を塞ぐべきであったのだ
妾にとって、バトル中のトークはすべて演出にして『詠唱』!
素晴らしき再会動画の締めに相応しく、素敵にフッ飛ぶがよい!
●女神の祝祭
吹き飛ばされた御前を追撃したREMは、不意に背後からの奇襲を受ける。それは同型機による一斉射――心の傷より生れ出た、忌まわしき過去の残滓。
『クク……どうやらここまでの様だな』
『……まだです』
歯を食いしばり立ち上がるREM。幸い動力系は無事……だが、このままではマトモに動く事すら敵わない。即座に能力を開放するも、先の戦いのクールダウンに僅かな時間が必要だった。このままでは本当に――最後を覚悟した瞬間、高らかに響く声が空間に木霊した。
「はーっはっはっは! ここで名乗りを上げぬは無粋の極み!」
闇が極彩色に染め上がる。奈落の様な第一層は彩りを取り戻し、朽ちた輪郭がはっきりと姿を浮かび上がらせた。その中に一人、巨大な蛇の様な雄々しき姿が目に入る。それは邪神――否、真の蛇神。
『何者だ、貴様!?』
『あ、あなたは……!』
苛立ちの表情を浮かべる御前。それを見やり蛇神は再び澄んだ声を響かせる。威風堂々、正々堂々、無敵にして優雅なその姿は、REMも知る猟兵のものだった。
「遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ。我こそは御形・菘! そこな妖を成敗せんとここに参上!」
じろりと長い舌を伸ばしてREMに近寄った御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は、大きな腕で倒れたその身をゆっくりと抱き起こした。
「――いい笑顔になったわね。後は任せて」
『まさか……』
そっと耳打ちされた声は、はっきりと覚えている彼女のものだった。
「さてレムちゃん、妾が望む支援はただ一つ! 精一杯の応援だ!」
ビシィと人差し指を突き出して、マイク片手にパフォーマンスを。一流のエンターテイナーは常に気配りを忘れない。演出もだ。もう彼女を戦わせたりはしないと、菘は固く誓っているのだから。
「戦う必要はない、心を込めて、大声を出して! 妾のバトる勇姿を励ましてくれ!」
『了解です……皆、サーチライト点灯よ!』
力を振り絞りREMsの面々を起動させるREM。照準用のサーチライトを一斉に点灯した途端、光の奔流はステー氏のボルテージを最高潮に引き上げた。
「怪人よ、妾は今、最っ高に気分が良い! 好きに仕掛けてくるがよい、お主の渾身など握り潰してくれよう!」
『デカい口はその形だけにしてもらおうか、神擬き風情が!』
爆音のパーカッションを背に受けて有象無象を薙ぎ倒す菘。声援と嬌声が力となって、音と光が更にそれを増幅する。REMが、REMsが黄色い声援を菘に浴びせる度、内なるパワーは倍々に膨れ上がっていくのだから。
『どうしてだ。何故止まらない!?』
「はっはっは、疎外と嘲笑を向けてくる名もなき輩たちで、妾を物理的に止められるはずがあるまい? ましてや――」
振動が心地よい。レスポンスが素晴らしい。物言わぬ骸などでは無い――彼女も戦っている。故にそれに精一杯応えてやる事こそが、エンターテイナーたる妾の成すべき世界の理!
「声援を背負い、最強無敵と成った今ならな!」
ビシビシィ! と効果音が打ち鳴らされて、いつの間にか菘は御前の目の前にいた。ライトアップが七色に変わり演出はクライマックス。声援の大合唱は空気を津波の様に振るわせて、その振動が衝撃となり菘から解き放たれる。
「止めるのであれば口を塞ぐべきであったのだ」
中段に構え左腕を大きく引く。強く握りしめた拳に秘めるのは在りし日の誓い、思い、そして――。
「素晴らしき再会動画の締めに相応しく、素敵にフッ飛ぶがよい!」
『貴様ァァーーーーッ!?!?!?』
明日への願いを祈りと共に解き放ち、音速超えの左ストレートが御前を彼方へと吹き飛ばした。今頃は連続カットで各アングルが再生されている事だろう。
「おさらばだ。あの世でチャンネル登録を忘れずにな」
ビシィとポーズを決めてREMへ向き直る菘。
カメラを切り――微笑む女神の姿がそこにはあった。
大成功
🔵🔵🔵
中小路・楓椛
●
第四の結印と伴に【イブン=グハジ】装填、射出。触媒との反作用でそちらの観測機器のセンサーにも強い反応が出るように。
私はREMさんの支援に。【ばーざい】全技能行使、【神罰・呪詛・封印を解く・限界突破】併用でUC【アトラナート】起動。銀の蜘蛛を多数召喚。
不可視化した粘着性の高い光糸を織り交ぜ構造物通路を起点に配置し拘束、動きが落ちたところで肢を更に拘束。
視えないのなら視えるように――専門家の皆様、これで言い訳は通りません。これまでとこれからの戦果矜持があるのならばここで耐え抜いて下さいまし。
REMさん含めたニンゲンの力に期待しましょう。
私の疵…妖怪「ごとき」が深淵を直視して正気で居られますかね?
●カオスの断章
『か、下層での反応増大!』
『一体何が……せめて手が出せれば』
猟兵とREMが御前と戦いを繰り広げていた一方、上層階のUDC職員達はその様子を見守る他に出来る事が無かった。しかし、それもここまで。
『な、これは……検知出来ている?』
『僅かですが、動きの予測判定も。これなら!』
突如、これまで何の反応も無かった多機能センサー群が一斉に息を吹き返したのだ。それだけでは無い――おぼろげながら敵の動きも見えてきた。
『だったら何とかするわよ。REMの支援準備、急いで!』
隊長が叫ぶ。誰も好きで休んでいたわけじゃあない。反撃の時は来た。
「視えないのなら視えるように――専門家の皆様、これで言い訳は通りません」
燃える目と五芒星――旧神の印を結び、放たれた触媒『イブン=グハジ』がアンノウンの可視化を促す。たとえ神話存在だろうと見えてしまえばただの怪物と相違ない。中小路・楓椛(ダゴン焼き普及会代表・f29038)は表情一つ変えずに『世界を変え』た。
「これまでとこれからの戦果矜持があるのならばここで耐え抜いて下さいまし」
ひゅう、と風が吹き銀の糸がきらりと揺れる。魔法の杖と化した青銅の偃月刀がもう一つの印を結べば、現れたるは超常の銀の蜘蛛。それが数多にも増えれば、放たれし糸の束が成す事を想像するのは容易い……楓椛はぼそりと呟く。化け物を退治するのは、いつの世も人間の仕事なのだから。
『アンノウンの位置を確認、しかし攻撃手段が』
『緊急時よ。それに丁度いい……アレを使うわ』
それは楓椛の『多元霊子複合拘束術式:アトラナート』の権能――拘束されながら可視化された御前に向けて、隊長は職員達に緊急の指示を出す。それは本来幾つもの封印(責任者の押印)を解かねば行使できない人類の牙。
『第七層から第三層までの隔壁を緊急展開、試製キャリアーの砲身を奴に向けて』
『無茶です! 出力も足りてませんし、効果があるかどうか……』
だが、律儀にお役所仕事を務めている暇など無いのだ。管制室に響く怒声と共に、施設に施された厳重なセーフティが一瞬で解除された。まるで煙突の様に巨大な隔壁が縦に開かれていく。
『だからそれを試すのよ。REM! タイミングを合せて退避行動!』
『了解です、隊長殿』
そして姿を現わしたのは大蛇の様な――機械の塊。変電設備と巨大なパラボラアンテナを備えた高所作業機械めいたそれこそ、UDC組織が開発している超常光線砲【U.D.C(アンリミテッド・ディヴァイン・キャリアー)】の試作品。バチバチと紫電を放ち、パラボラの先端に集束した光が解き放たれた時、糸に包まれ身動きの取れぬ御前がこの世のものとは思えぬ叫び声を上げた。
『たかが人の分際で……貴様の仕業か、女狐ッ!』
視界の端に映るのは小柄な狐の様なモノ。それが無力な人間どもに手心を加えたのだ。怒りと共に反撃を……貴様の深淵の恐怖をそのまま映してやろう。だが。
「私の疵……妖怪「ごとき」が深淵を直視して正気で居られますかね?」
『この、洞の様な、何が……』
御前が視た楓椛の記憶は××××××、[検閲済み]以前に■■した【禁則事項】の争いに他ならない。それに比べればこの戦いなど――児戯にも等しい。
「私は何一つ忘れてなどいませんとも、ええ」
誰が覗いた深淵か。闇は何処までも深いというのに。
成功
🔵🔵🔴
ヴィクティム・ウィンターミュート
オーライ、そういうビズなら任せてくれ
俺はREMとかいう奴は存じ上げないが…良い心意気じゃねえか
気に入ったぜ、手助けをしてやろう
サイボーグの身体なら、俺の力も通りやすいだろう
【ハッキング】で俺とREMをブースト
更にダメ押しの──『Heroes』
莫大な強化をくれてやる。他に欲しい奴はいるか?3人までならかけてやる
このユーベルコードの力の最たるものは、攻撃回数だ
テメェがどんだけ百鬼夜行をけしかけてこようが、手数の多さで迎撃してしまえば余裕ってわけよ
さぁREM!アイツの捕縛を頼むぜ、今のお前は強い、信じろ!
どんなナリをしてようが首を狙うまで
このナイフで、俺達の最大出力で、一気に終わらせてやるよ!!
●人のチカラ
「友軍を支援しつつ敵を殲滅……オーライ、そういうビズなら任せてくれ」
解かれた拘束――青ざめた御前の目の前にはボロボロになったREMの姿。そして天より降り注ぐのは、裁きの雷めいた人類の反撃の切札――それらを見やり、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は口元を歪める。
『これまでだな、デッドコピー。貴様らの渾身も耐え抜いたぞ』
『まだです。私がまだ倒れていない!』
溢れ出る百鬼夜行――有象無象が瞬く間に空間を埋め尽くし、滅びの引き金に手を掛ける。阻止せんと立ち上がったREMも最早虫の息……このままでは終わる。僅かに脳裏を過った絶望はしかし、一陣の風と共に霧散した。
「……良い心意気じゃねえか。気に入ったぜ、手助けをしてやろう」
力が蘇る。見た事も無いプログラムが自らに施された幾重ものプロテクトを解除して、新たな力を書き込んでいった。光と共に――チカチカと明滅するデバイスを纏ったヴィクティムの姿が目に入る。彼の仕業か、虫の息だったREMは往時以上の力と共に再び立ち上がったのだ。
「これで莫大な強化をくれてやる。他に欲しい奴はいるか?」
『……そこの猟兵! 上層階のアレを動かせるか?』
Buildup Code『Heroes』――英雄は強く、疾く。電磁鉄扇を構えたREMが群がる妖を蹴散らすと共に、ヴィクティムの耳に入った隊長の声はキャリアへの支援を要請した。最上階で力を振るう人類の牙――しかしそれは、未だ試作品の域を出ない未完成の代物だ。ならば、完成すればどうなるだろう。
「成程――それじゃあデカい奴を頼もうか」
機械への強化ならば俺の力も通り易い。それほど複雑では無い言語体系ならば尚更――エネルギー変換経路、出力装置、それらを統合制御するプログラム、まとめて面倒を見てやれば力は何倍にも増幅される。
『来た……出力回復、ヒートプロジェクター最大展張!』
『攻撃対象――REMと猟兵以外、全てだ!』
大きく広がったパラボラは持てる力の全てを開放し、稲妻は瞬く間に極太の光条と化す。それは虞を知らぬ人類の叡智の結晶――滅びを回避する為の抗いはここに、全ての力を開放した。
『な……妖怪達が続々と……消されているだと?』
「テメェがどんだけ百鬼夜行をけしかけてこようが、手数の多さで迎撃してしまえば余裕ってわけよ」
光条は続々と百鬼夜行を焼き払い、空間を埋め尽くした怪異の群れは神話の如く断ち割られる。強化された力の神髄は攻撃回数……間断なく放たれる光条は休む事無く、ヴィクティムとREMの目の前に勝利の道を築き上げた――駆け上がるのにもう、時間はいらない。
「さぁREM! アイツの捕縛を頼むぜ。今のお前は強い、信じろ!」
『了解です。データリンク、武装開放!』
非殺傷兵器のみとはいえ、REMに施された対UDC用拘束兵装――特殊鋼ワイヤーは強度抜群。更にそれが強化されている今ならば、如何に巨大な御前といえどその動きを封じるのは容易い。
『こんなモノで、貴様……!』
放出された頑健なワイヤーが御前の全身を締め上げた。抗おうにも百鬼夜行は天から降り注ぐ超常の光で屠られて――刹那、青き風が鈍く輝く闇の様な得物を手に、御前の視界を封じ込めた。
「チェックメイトだ。お家へ帰りな」
『貴様ァッ!!』
どんなナリをしてようが首を狙うまで。一閃と共に怒りの表情を上げた首が、ゴロンと地に落ちる。最大出力の『エクス・マキナ・ヴォイド』――虚無へ誘うエースオブスペーズ。言ったろう、そういうビズなら任せてくれと。
成功
🔵🔵🔴
宙夢・拓未
●【全世界サイボーグ連盟】で参加
語尾:だぜ、だな
「REM、無事か? 助けに来たぜ!」
宇宙バイクと共に戦場へ
【不沈の紅】で変形合体、機械のシャチになる
敵が、『破壊すべき関節接続部』を見失ってくれればベストだ
それでも攻撃してくるようなら、修羅雪姫の阻害能力やサブナの回復に頼るぜ
「行くぜREM、その扇使ってくれ! 一緒に戦うぜ!」
REMに声を掛け、空中を泳いで共に前線へ
電磁鉄扇の攻撃とタイミングを合わせながら、俺は牙で【捕食】
狙いは敵の蜘蛛脚
【部位破壊】を狙っていく
クネウスがREMを強化してくれたら、俺は敵に噛みつき
【怪力】を用い、顎でガッチリ敵を固定して動きを封じる
REM、一発デカいのくれてやれ!
サブナ・ダディ
●【全世界サイボーグ連盟】で参加//【WIZ】//「仲間の姉妹機じゃぁ助けねぇ訳にはいかねぇよなぁ」//●【阿吽像】をREM達の前に立たせ壁役にし、一時的な態勢の立て直しを行う//「REM、よく持ちこたえていたな」//相手UCの心の傷に対しては髪留めを握りしめ【覚悟】を決め、身体的傷に対してはUC【賽の河原】を発動し、敵にはダメージを、自身を含めた味方全員には治癒を与える//「いくら傷つこうとも、俺の力が尽きるまでお前達を直してやる、お前達は真っ直ぐ相手を見据える事に注視しな」
クネウス・ウィギンシティ
●【全世界サイボーグ連盟】で参加
「云ったでしょうーーアフターサポートも万全と」
【POW】
●戦闘
「デッドコピーではありません」
パイルバンカーで【盾受け】しつつ、REMを庇いつつ火器で反撃。
●強化
REMに必要なのは意思を示すチカラ
「GEAR:ATROPOS。設計図はあの時のお姉さんから、過去は乗り越えるためにと」
姉妹機を参考にした『強化外骨格』、 心臓(動力炉)からリミッターを削除、 思考制御型安全装置と火器管制系をリンクさせ『大型ガトリング型専用アームドフォート』と接続。
「現地改修最新型にして一点物です」
●UC対策
敵UCは機械化した片腕で受けます。
「さあ、行ってらっしゃい」
河原崎・修羅雪姫
●【全世界サイボーグ連盟】で参加
「REMさん、久しぶり。元気だった? 『光』は……見えたかしらぁ?」
この事件に対してこう感じ、猟兵として参加します。
戦闘中、敵の注意を引きつけるオトリ役になります。
「森羅万象、あらゆる機械は私に跪く。行け、電脳ゴースト!」
棄物蒐集者・塵塚御前の「歯車地獄―壊す事もそれなりに得意なのですよ。(POW)」に対し、UC「グレムリン・エフェクト」を使うことで、歯車地獄をジャムらせ、攻撃を不発にします。
「全サ連は決して仲間を見捨てない。REMさん、勿論あなたもその仲間の一人に入っているのよぉ」(ウィンク)
●STARTING FROM HERE
『!?』
時は僅かに遡る。力を取り戻したREMの頭上を、巨大な歯車が再び埋め尽くした。断末魔の悲鳴/御前は倒されたのだろうか? 微かな期待が彼女の動きを止めた刹那、役割を果たさんと御前の死の一撃が放たれていたのだ――しかし。
「云ったでしょう――アフターサポートも万全と」
「ウチのお客に手出しは無用だぜ?」
一瞬の気の緩み/恐怖が思考を支配した。それは聞き覚えのある声と共に希望へと転じる。バラリと崩れる歯車と――。
「それに、仲間の姉妹機じゃぁ助けねぇ訳にはいかねぇよなぁ。よく持ちこたえていたな、REM」
『クネウス様、サブナ様!』
二体一組の仏像――サイキックキャバリアの巨大な姿が目に入り、傍らにはサブナ・ダディ(食事処の僧大将・f21228)とクネウス・ウィギンシティ(鋼鉄のエンジニア・f02209)の姿が。
『また、ぞろぞろと……』
ぐにゃりと、最早人の形を捨てた貌を生やして悪態を吐く御前。怒声と共に放たれるは無数の歯車……しかしそれはもう、見飽きたのだ。
「REM、無事か? 助けに来たぜ!」
爆音と共にそれらが一つ、二つと爆ぜていく。宇宙バイクと共に現れた宙夢・拓未(未知の運び手・f03032)が、体当たりでそれらを破砕して退ける。質量と加速があれば、歯車を破壊するには十分。そして――。
『拓未様も……それに!』
そして大きな影が、艶めかしいシルエットと共に戦場へ姿を現わす。
「REMさん、久しぶり。元気だった? 『光』は……見えたかしらぁ?」
『ハイ! 修羅雪姫様!』
河原崎・修羅雪姫(プリンセス・スノーブラッド・f00298)は声高らかに、REMとの再会を喜んだ。笑顔と共に、鋭い視線を御前に向けて。
「全サ連は決して仲間を見捨てない。REMさん、勿論あなたもその仲間の一人に入っているのよぉ」
サイボーグ戦士達は再び、REMの始まりの地に結集したのだ。
『デッドコピーとそのお仲間か。丁度いい、まとめて粉砕してくれる!』
「名前の割に安っぽい言葉ねぇ……それ、そのまま返してあげるわぁ」
最早御前には十全な力は残っていない。三度ばら撒かれた無数の歯車――だが、修羅雪姫の冷徹な視線はその本質を見逃さない。
「森羅万象、あらゆる機械は私に跪く。行け、電脳ゴースト!」
歯車も機械の内――機械である以上、修羅雪姫の支配から逃れる事は叶わない。あらゆる機械を乗っ取り操る、サイバー攻撃たる『グレムリン・エフェクト』は、瞬く間に歯車の群れを操り、それぞれがぶつかって粉々に砕け散る。
「デッドコピーではありません」
修羅雪姫が果敢に迎撃を続ける中、破片を盾で受けながらREMに新たな武装を授けるクネウス。必要なのは意思を示すチカラ――姿を現わした巨大な蜘蛛めいたアームドフォートは、REMの姉妹たる仲間からの贈り物。
「GEAR:ATROPOS。設計図はあの時のお姉さんから、過去は乗り越えるためにと」
『お姉ちゃんの……』
それに合わせて、今度はREM自身の機能を拡張する。姉妹機を参考にした強化外骨格――Arachnophobia-Replica、 心臓からリミッターを削除――彼女の枷はもう必要ない、 思考制御型安全装置と火器管制系をリンクさせ『大型ガトリング型専用アームドフォート』と接続。
『FCS同調、アウトリガー展開。サブスラスター点火――行けます!』
これまで以上に長大なガトリング砲を支える為の多脚式アウトリガー兼スラスター、多彩な武装を懸架出来る強化外骨格、これら全てを統御する最新型OS、新生したREMの姿を見上げて、クネウスは満足げに声を上げる。
「現地改修最新型にして一点物です。さあ、行ってらっしゃい」
『ハイっ! 行ってきます!』
力が溢れる。受け継いだ思いが、託された願いが、今ここに形となった――轟音と共に火線を振り撒いて御前に向かうREM。新生したその姿を見やり、ガラクタに包まれた御前は忌々し気に言葉を吐いた。
『背格好を取り繕おうと、そんな即席で叩けると思うなッ!』
歯車が、亡霊が、REMの行く手を阻む。それらを討たんと最後の力を振り絞り、徒党を組んだREMsが共に火を吐いて。
『どうしてだ。奴らの数が一向に減らない……!』
「いくら傷つこうとも、俺の力が尽きるまでお前達を直してやる」
その背後には光が――サブナの超常の御光がキャバリアの仏身より放たれて、前へ往く者達を後押しし続ける。光が傷ついた身体を癒し続ければ、如何に手数で押し切ろうと、早々押し切られはしない。
「お前達は真っ直ぐ相手を見据える事に注視しな」
『『『『了解。制圧射撃再開』』』』
声を揃えて進軍を再開するREMs。かつての戦闘マシンでは無い、生きる為の戦いを制する為に。光が、炎が、戦場を染め上げていく。
「行くぜREM、一緒に戦うぜ!」
『ハイッ! この鎧なら追従も問題ありません!』
同時に、滑空するREMに並走した拓未が姿形を変えて飛ぶ。超常の『不沈の紅』――真紅の鯱と化した拓未が、群がる歯車を喰い破ってREMの進路を切り拓いた。
『関節を隠すか。だがッ!』
機械の鯱と化した拓未に目立つ関節の形は無い。巨大な流線型は関節を狙う歯車の攻撃を受け流し、鋭い牙は飛び交う歯車を容赦なく無へと還す。
「やらせねえよ。サブナの回復だってある!」
「幾らでも寄越しなさい。全部私のモノにしてあげるわぁ」
それに治癒の御光が拓未を、REMを癒し続けるのだ。はぐれた歯車は修羅雪姫に乗っ取られ、同士討ちでバラバラに崩れていく。彼等を遮るものはもう、この戦場には存在しない。
「喰らい付いた! REM、一発デカいのくれてやれ!」
『おのれ……離さんか、貴様ァッ!?』
そして先行した拓未が御前に取り付き、巨大な蜘蛛の脚に噛み付いて動きを止める。如何に巨大な御前といえど、自由を封じられれば反撃も不能――本命はこの後、巨大な蜘蛛の影が迫り来る。
『了解! オールウェポンフリー!』
ガツン、と御前同等に巨大となったREMがその脚を踏み潰し、絡み付く様に御前の身体を抱き締めた。
『離せと言っている――邪魔をするな、デッドコピー!』
振り下ろした煙管を鉄扇で受け止め、背負った砲を穴の開いた御前の腹部――歯車が漏れ出る洞の様な闇に突き刺して、REMが吼える。
『いいえ、私はデッドコピーじゃない……』
意思を込めて、授けられたその名を声高らかに宣言する。
『私はREM、サイボーグのREMです!』
そして眩い閃光が、世界を白く染め上げた。
「……任務完了ね、REMさん」
『はい、お陰様、で――』
装甲を解除して大地を踏んだREMがよろめく。その身体を支えながら、修羅雪姫は優しく声をかけた。
「それじゃあ飯にでもするか? って訳にもいかねえか……」
ボロボロになった辺りを見渡し、サブナが溜め息を吐いて。
「まあいいじゃねえか。新兵器も無事みたいだしな」
頭上の鎌首めいたパラボラを見上げて、拓未が苦笑する。
「ええ。決戦も間近――我々も急ぎましょう」
次の戦場へ。クネウスが端末を操作しながら静かに宣う。
この戦いは猟兵達の力で勝利出来た。UDC組織も、新兵器も、UDC-P――REMも無事のまま。しかしそれらは来たるべき決戦の為。世界を守る為のもの。
ただ、今このひと時だけは安らぎを――そっと目を閉じたREMを見やり、猟兵達は手に入れた明日を思い、穴の開いた空を見上げた。
大成功
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