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灰跡に火は起ち

#UDCアース

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#UDCアース


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●灰積もり
 パチパチと何かの爆ぜる音がした。したというのは、男が視線を向けた時にはもう、何が音を立てていたのか、わからなくなっていたからだ。
「はぁっ……。はぁっ……!」
 男の視界の端で景色が流れていく。
 灰にまみれた靴を必死に振り上げ続ける男は、一心不乱に来た道を辿り行く。
「死んだ! 殺された!? なんなんだここは!」
 死んだと叫ぶのは、男の目の前で、人間が灰となってしまったから。
 殺されたと聞くのは、男の目の前で灰となった人間は、突如として燃え上がったから。
 そんな叫びや疑問に答えるものはない。ただ一つ、確実に言える事があるとすれば。
「ぁ、ぐぉっ!!?」
 彼はここに踏み入ってはいけなかった。という事くらいだろうか。
 情けない呻きと共に、灰に足をとられて転倒してしまう。
「ぁっ……ぁぁ……」
 逃亡も、そこまでだった。急いで起き上がろうとする男は目にしてしまったのだ。
 自らが乗ってきた車に纏わりつく、翼を持った謎の怪物の姿を。それも一匹だけではない。何体も。
 その怪物は、ニタニタと無邪気な子供がイタズラをしているような微笑みを浮かべているのが、なお不気味であった。
 男はもはや声を発する事を忘れて、それら怪物が飛び立つのを見ているしかなかった。
 最後に意識を失う寸前、徐々に距離を縮めてくる怪物の鳴き声を耳に。まるで子供の声のような鳴き声をしているんだなと思った。

●灰明かし
 グリモアベースにかちゃりと、首飾りの揺れる音が響く。
「この人たちが襲われたのは、ある邪神教団の拠点に近づいたための口封じでした」
 その場に集まった猟兵たちを見回して。グリモア猟兵である結晶・ザクロ(多重人格者のブレイズキャリバー・f03773)は、改めて口にする。
「皆さんには、この拠点の攻略をお願いしたいと思っています」
 そうすれば、予知に見るような事件も抑える事ができると。
 幸い、この拠点の情報が手に入った事もあり、予知も合わせて、現場近くへのテレポートができる。
「敵はきっと思いもよらない攻撃で、最初は混乱すると思います」
 その勢いで、少なくとも主だったUDCの撃破ができれば、シンボルを失った拠点は機能を失うだろう。
「もちろん、ちょっとした奇襲くらいであっと言う間に殲滅、というわけにはいかないでしょうけど」
 けれども、何も考えずに真っ向から立ち向かうよりはいい。
 自らの予知によって、他人を危険な場所に向かわせているという自責の念を持つザクロにとっての、できる限りの応援のつもりだった。
「多分、最初に出くわすのは、予知にも見えた翼のある怪物だと思います」
 その怪物につけられた呼び名を『嘲笑う翼怪』という。
 醜い鳥人間型のUDCであり、その特徴は、子どもを喰らう事を好み、最後に喰らった子どもの声を真似た鳴き声を発する事。
 一般的に子どもの声というのは、人の心に強く当たるものであり、意地の悪い特徴であると言わざるを得ない。
「あとは、邪神のつかいという一面もあって、それに違わず、数が多くいるはずです。一匹を倒したからといって油断はしないように、気を付けてください」
 まだこの戦いが最後であるわけではないのだから、猶更である。
 これが、邪神のつかいであるというのなら、当然それをつかわせた存在がいるはずなのだ。
「逆に、次のUDCを倒す事ができれば……」
 つかいは役目を終え、離散を始めるだろう。
 つまりは、これが最優先の目的であるといえる。
「それでそのUDCについて何ですが。予知の中で人が燃えていたのは、これの仕業になります」
 『灰霞の剣』と呼ばれるその存在は、自らの体の一部を形成する灰によって、あらゆるものを燃やす事ができる。
 本来、灰とは火の燃え残った跡に残る物であり、それによって発火現象を起こすというのは、背反した歪な存在であると言わざるを得ない。
「突破すれば良いだけの、『嘲笑う翼怪』たちとの戦いに比べると、伴う危険も大きくなると思います。……それでも、お願いします」
 一通りの説明は済んだと、ザクロは小さく頭を下げて。
 早速と、支度を始める猟兵たちの前で、やや考えた後、また口を開くと。
「えっと。もしなんですけど、無事に終わったら、遊びに行きませんか?」
 この世界の出なので、もし必要なら、ちょっとくらいなら案内できると思いますとも。
「そんな良い場所がある世界かどうかは、皆さんの感想にお任せしますけど」
 きっと、こうした戦いは精神が疲れてしまうから。リフレッシュも必要だろうと。
 その後もしばらく、予知と戦いの事を語る時よりも軽くなったようにザクロの言葉は続いたという。


一兎
●はじめに
 初めまして。こんにちは、もしくはこんばんは。
 この度、マスターとなりました、一兎と言います。
 ちょっと文章は堅いかもしれませんが、互いに盛り上げていけるように、していけたらなと。柔軟になっていけるように。
 そんな手前ですが、ご縁ありましたら、よろしくお願いします。
 以下、当シナリオの概要を。

●概要
 目的は、邪神教団への突入。そして拠点の中心となるUDC(オブリビオン)の撃破となっております。
 突入の際は、『嘲笑う翼怪』の群れとの戦いとなります。
 そこから進めば、『灰霞の剣』との戦いに。
 どちらとの戦いにしても、油断なきようにお願いします。

 それからですが、戦いが終わった後に遊びにいきませんか。
 どうしてもこの世界の戦いは、メンタルに降り積もりやすいと思いますので、リフレッシュは大切ですと、サムズアップさせていただきます。
 気軽にイベシナ感覚で、どうぞご利用ください。

 以上、それでは。皆さまからのプレイング。お待ちしております。
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第1章 集団戦 『嘲笑う翼怪』

POW   :    組みつく怪腕
【羽毛に覆われた手足】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    邪神の加護
【邪神の呪い】【喰らった子供の怨念】【夜の闇】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    断末魔模倣
【不気味に笑う口】から【最後に喰らった子供の悲鳴】を放ち、【恐怖と狂気】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

多々羅・赤銅
ァァア。あああ、あ"あ"あ"あ"あ"!!!!
ガキの声の真似事だ!?悪趣味にも程がある、赦さねえ地獄に堕ちろ、私の前でその口開いた事後悔させてやらァ……!!!!

羅刹の怒り露わに刀を奮う。身軽さ重視、羅刹紋、聖痕、刀一振りのみを手に最前線へ。
破壊の為に悪鬼羅刹の如く研ぎ澄まされる全六感をもって、鳥の口を割いて周る。
ああ?ここは通れればいいだけ?わかってる、わかってんだ、だが気が治らねえ。悲鳴が、嘲笑が、離れねえ。
此処は私に寄越していけ。此処は私のもんだ。私が此処の砦だ。
今だけ、鬼子母神にでもなってやらあ。


空廼・柩
子どもの声を真似た…
実際に戦った事あるけれど、気分の良いものじゃない
本当に、趣味の悪い怪物だ
嘲る暇すらない様に、その翼を引き千切ってやるよ

眼鏡を外して棺型の拷問具を手に
使用するのは【咎力封じ】
超強化されようが弱体化が叶うよう雁字搦めにしてやろう
じわじわ代償に苦しむ姿、さぞや滑稽だろう
共に戦う者在れば、連携を試みよう
敵の攻撃は可能な限り見切り、
回避するなり拷問具で防御するなり直撃は避ける
数が多い分死角からの攻撃に気をつけなければ
寧ろフェイントしてだまし討ちする位の気持ちで行く

――決して油断出来ぬ相手であれど
これは前哨戦に過ぎない
下手に体力を削らぬよう気を引き締めねば
化物に火刑に処されるのは業腹だ



●灰踏みし
 小さく積もった灰に点々と足跡が続いていく。
 幾つもの人数分の足跡は、灰が積もる地の中心、その一点へと向かって、あたかも最初から目的が決まっていたように。
 いや、事実決まっていた。
「五月蠅いな」
 子供が泣き叫ぶような悲鳴を挙げていた翼怪の口に、猿轡がかかる。
 空廼・柩(からのひつぎ・f00796)は、冷めた表情に反して苛立ちにも似た色を浮かべる瞳を隠そうともせず。次々とその目に映る怪物たちへと拘束具を投射していく。まるで、少しでも聞いていたくないとばかりに。
「本当に、趣味の悪い……っ」
 柩の愚痴をこぼすような言葉は、反撃に出た一匹の翼怪によって遮られた。
 盾代わりに構えた棺と、翼怪の剥き出しの歯とが打ち合い、ガキりと鈍い音が立つ。
 その一瞬、柩と翼怪は互いに動きを止めた。
 その一瞬に、多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)が重なる影の合間を駆けた。
「しゃっぁああ、あぁ゛!!」
 一匹の翼怪の首が千切れ飛ぶ。いや、口から上が千切れ飛んだというのが正確だろうか。
「お前らの神が許そうが、どっかの神が許そうが、私は赦さねぇぞ! お前ェらのその開いた口、二度と閉じれねぇようにしてやらあぁ゛ぁ゛っ!!」
 そのまま赤銅は、足を止める事なく。目に入る翼怪という翼怪の顔を、切りつけ、時に拳を捻じ込み、そこにある断末魔ごと叩き潰していく。
 まるで、自らを暴力の化身と変えてしまったかのように。
 赤銅にとって、この翼怪たちの在り方は、子供を糧として、その霊魂までも弄ぶかのような、その在り方は、それほどまでに赦せないものだった。
 ただ赤銅は、それだけの感情の昂りゆえに、背後にいた翼怪が腕を伸ばしてくる事に気づけなかった。しかし、その寸前。
「それじゃあ、赦さないの中に、俺も足してくれるかな?」
 手枷が触れる事を阻んだ。次いで、拘束ロープが翼怪の身を雁字搦めに絡めとり。
「気が合う。って言うほどじゃないかもしれないけど。俺もこの声は聞いてたくないからね」
 最後に猿轡が翼怪を抑え込み、完全な拘束を遂げる。
 そこに刀が突き立つ。猿轡の上から、口を貫くように。
「邪魔はするんじゃねぇぞ!!」
 赤銅は、そう言う柩に一瞥をやると、引き抜いた刀をその勢いのまま、彼の背後にいた翼怪へと突き入れる。
「そちらも、くれぐれも目的は忘れないようにお願いします」
 これが奇襲であった事、そして、あくまでも突破が為せれば良い事。
 柩は、刀の閃きを横目に、彼女の背後にいる翼怪へと拘束具を放つ。
 見れば、狼狽し一部を除けば蜘蛛の子を散らすようであった翼怪たちは、徐々に襲撃者へと興味を示したように、集まりつつある。
 まるで好奇心に群れる子供のように。
「んなトコで、ガキ臭ぇ真似しやがって」
「なら、教えてやればいい。悲鳴すら挙げる事のできない苦しみを」
 二者二様、性格すら違う同士でありながら、至る所は一つ。
 戦場へと移り行く灰の世界を、声無き断末魔が満たし始める。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

湊・賽子
「うへぇ………。聞いてた通り、見た目気持ち悪いなぁ。」と、言ってあからさまな嫌悪感を表に出す

とりあえず鳥型の怪物なら機動力を削ぐ意味合いと奇襲を合わせて自身のユーベルコード「運命の選択」をします。
「あの翼潰せればだいぶ戦力削げるよね?とりあえずやってみよ☆
良いの出てくれないかなぁ♪『何が出るかはお楽しみ!』」


ロースト・チキン
けっ、胸糞わりぃな!
「歯向かわざる者は資源」って、昔から言ってだな子供は生かしてこそ有用なんだよ。それを奪ったってことはオレたちにとっても敵ってことでいいよな?

「ヒャッハーーーー! 奪えー!! 殺せーー!!! 今日は楽しいお祭りだーーー!!」

敵の数の利を覆す為、ローストは【群れる世紀末】でモヒカンたちを呼び寄せ、微笑みを浮かべる嘲笑う翼怪らに対して、別の意味で微笑を浮かべるモヒカン族どもをけしかけます。

例え、無謀と分かっていても立ち向かう、それがモヒカンなのである。


ルベル・ノウフィル
アドリブ絡み歓迎

【SPD】使用

「お任せくださいませ! このルベルが一網打尽にして差し上げ……っ」
周囲にドヤ顔で演説していましたが、翼怪と目があい、恐怖を覚えます
翼怪の目が特に怖いのでございます
尻尾をまるめてぷるぷるしながら、虚勢は張り続けましょう
「い、い、い、一網打尽でございます~~っ」

人狼咆哮を使用
※弱いわんこがびびってワンワン吠えるような感じです

ルベルは考え不足に敵を一掃しようと吠えますが、周囲の味方にもうっかり攻撃が及ぶかもしれません
「ああああっ!? も、申し訳ございませんっ!?」
ルベルは恐怖もふっとぶ勢いでおおいに焦り、あたふたした後でその場に土下座して味方に許しを請います



●灰爆ぜて
「な、何が起こっているのでございましょうか……」
 ルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)は、異様な静けさを保つ戦場の中にいた。
 所々に、無残な亡骸を残す翼怪の姿もあったが、どれも一様に首の上顎から先を失くしていて。
「聞いてたけど。ほんっとに気持ち悪いなぁ。これ」
 そんな亡骸を無謀にも、あるいは無神経にも、ちょんちょんと指先でつっつく湊・賽子(人間のスカイダンサー・f05347)。
「あわわわ、生きてたらどうするんですか!?」
「ダイジョーブ、ダイジョーブ♪ それより早く行こっ☆」
 二人がやや出遅れているというのも理由がある。
「ううう、申し訳ございません。私が不甲斐ないばかりに……」
 特別深い理由ではない。ただ、ちょっと、腰を抜かしてしまったのだ。
「突破で奇襲でも、陣形の後ろを守る人は必要だもんね。ルベルくんも気にしなーい、しない?」
 フォローらしき言葉の最中、疑問符のついた言葉に、ルベルもつられて首を傾げる。傾げた視線が辿るのは、こちらへと飛んでくる一つの白い鳥人間の影。
「ヒィッ!!?」
 翼怪かと思わず息を呑むルベル。
 その一瞬の後。
「なごほォ!?!」
 奇妙な呻きと共にその鳥人間は、二人よりも先行していたはずの猟兵、ロースト・チキン(チキン野郎・f03598)は灰の積もる大地の上を転がっていた。
「だ、大丈夫でございますか!?」
「へっ。オレとした事が、飛べる鳥人間を前に、頭がカッと赤くなっちまって、このザマだぜ……」
 元々彼のトサカは赤い。
「そんな事より、敵が来てるよっ!」
 しかし、そのやりとりを遮って賽子の警告が飛ぶ。事実、そうしている間にもローストが転がされた理由となった翼怪たちが迫ってきている。
「とりあえず、あの翼さえ潰せたら、戦力ガクッと削げるよね? それっ『何が出るかはお楽しみ!』」
 賽子は迷う事なく、右耳のハーフピアスからサイコロを外し、放った。彼女のユーベルコード『運命の選択(Diece de Choice)』を発動する時の儀式ともいえる動作。
 その効力は、サイコロによって選び出された火器を召喚するもの。
「それは……火炎放射器でございますか?」
 そうして召喚されたのは、一丁の火炎放射器だった。
「「ヒャッハー!」」
 なぜかローストと賽子の声がハモる。
「こいつぁいいぜ。嬢ちゃん。どうだ、オレ達に賭けてみねぇか?」
『『『ヒャッハー!!!』』』
 火炎放射器の登場に活力を見出したかのように跳び上がるロースト。その後ろにはいつの間にか、13人のモヒカンがいた。
 それぞれ一様に、釘バットだの、チェーンだの、世紀末真っ只中な武装を手に、厳めしい微笑を浮かべている。
 これらは全て、ローストのユーベルコードによって召喚された戦闘用モヒカン族である。
 その全ての視線の先には、今にも嗜虐の限りを尽くそうとばかりに嘲た微笑みを浮かべた、翼怪の群れ。
 大きな溝ほどの差のある微笑の合間にいて、ルベルはおどおどと尻尾を丸めるばかりである。
「その賭け、乗るしかないよね。いっくよー♪」
『『『ヒャッハー!!!』』』
 瞬間、ロースト率いるモヒカンの群れと翼怪の群れとがぶつかり合う。
 交差する凶器と怪物の腕、交じり合う悲鳴と断末魔。
 それでも、数は互角とは言い難い。むしろ負けている。ただもちろん、この力押しで打ち勝つ事がローストの目的ではない。
「汚物は消毒だー☆」
 続けざま、火炎放射器を手に賽子が乱戦の中を駆け巡る。狙いはもちろん、モヒカンによって抑え込まれた翼怪の焼却。最低でも翼を狙って。
『『『火ャッハー!!!』』』
 猛烈な熱に、モヒカン達からも悲鳴が挙がっていた。
 もはや、静けさとはどこに行ったものか。目の前に広がる光景にルベルは思わず、地獄絵図とはこれなのではないかとさえ思い始めていた。そこに。
「ルベルくん、あとはお願いねー!」
 見れば、集団の向こうで手を振る賽子の姿。そのまま耳を塞ぐような素振りをすると、その先へと駆けだしていく。
 そう、敵を倒す事も重要だが、最終的には突破しなければ意味はないのだ。
「お、お任せくださいませ! このルベルが一網打尽にして差し上げま……すぅーっ!」
 気づいた時には息を吸い込んでいた。狙いはつける必要がない。それは無差別であるから。
 人狼が為す咆哮は、物理的な破壊力を持つ。
「わんっ。わんっ……わぅぅっ!」
 例えそれが、ビビったわんこのような弱々しい咆哮であったとしても。
 ルベルを中心に巻き上げられた灰が、波のようにモヒカン族ごと翼怪の群れを呑み込み、吹き飛ばした。
「あぶらかたぶほぉ!?!」
 巻き添えとなったローストの断末魔は、空しく灰の波に呑まれていった。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

アルテミス・カリスト
「世界を混乱に陥れる邪悪な邪神教団の存在は許せません!
この正義の騎士アルテミスが討伐して見せます!」

幸い、予知によって拠点を奇襲できる状況のようですね。

ならば、敵が油断している間に
拠点に強硬突入して、嘲笑う翼怪たちを倒しましょう!

大剣を構えて拠点のUDCに攻撃を仕掛けます。

「子供を襲う存在は騎士の名において放置できません!
必ず殲滅してみせます!」

子供の声で鳴かれても、心を強くもって耐えてみせます!

拠点というだけあって敵は大勢いるはず。
多勢に無勢で不利になりそうなら、【無敵城塞】を発動して、
味方の援護が来るまで堪え忍びます。

「これ以上、罪のない人々は傷つけさせません!」


エリィ・ゴールウェイ
子どもを好んで喰らう輩どもの相手であれば、わしが適任じゃろうて!……魂を見抜くとか、しないじゃろうな?

まず、あらかじめ遠くから戦闘する場所を視察しておいて、狭い道に向かうようにするぞい。囲まれたら厄介じゃからの。

可愛い大声を出しながら近づいていこうかの。幼女が言いそうなセリフ…まぁ、ここはアドリブでなんとかなるじゃろ。

小細工は無しじゃ。サーチアンドデストロイ!『アサルトウェポン』でぶちのめしていくぞい。厳しい戦闘になるやも知れんが、なるべく引きつけたいの。

見つけ次第数を減らしていくぞい。もし数が集まってしまったら【アースジャイアント】を召喚じゃ。分厚い弾幕ですり潰してくれようぞ!


ユキ・パンザマスト
遊びの誘いにぜひぜひと、骨状の尻尾をぎしぱたり。
拠点へ突入、唾液飲み、舌なめずり。
「UDCならユキの獲物です」
さあ狩りだ。子どものお味が好きならば、自身の容姿を利用しよう。
目立つように突貫すれば、翼怪の気を引き、他の猟兵達が攻撃しやすい隙を作る囮にもなれるだろう。
(技能「捨て身の一撃」、ユーベルコード『ブラッド・ガイスト使用』)
囮だけでなく、当然、己も獲物を迎え撃つ!
血の無くなる感覚なんざ知ったこっちゃあない! 
両掌、口内に分散した、椿の刻印から喰らってやるさ!
「今度はお前らが、喰らわれる気分を味わいやがれ!!」
(ま、ちょいとは恨みつらみもマシになるでしょ)(ねぇ子ども達)



●灰抜けて
「もう疲れたー! エリィ一歩も歩けないぃ!」
 灰の世界の中。幼い少女の声が響く。
 その声に、あるいは姿に気づいた翼怪が、飛び立ち。その端から猟兵たちに迎え撃たれる。
「ふん、全く単純なヤツらじゃの」
 両方の声の主、エリィ・ゴールウェイ(幼い老戦士・f01137)は、一匹が地に伏したのを見届け、再び進み始める。
 しっかりと、自らの足で。
「あなたは、随分と器用なんですね」
 這いつくばった翼怪に、トドメの大剣による一撃を叩き下ろして。エリィの小さな後ろ姿にアルテミス・カリスト(正義の騎士・f02293)は、そんな言葉を漏らしていた。
「女子は皆、生まれながらの女優だからの」
 外見に反した達観した物言い。恐らくその姿と本質とは違うのだろうと、アルテミスは胸中で納得する。
 納得をして。握る刃の柄に力を満たす。
「ならば私も、騎士としての役目、演じ切ってみせましょう!」
 そのまま、エリィに迫る翼怪に一匹へと強引な一振りを捻じ込みながら、自らの身を前へと。
 敵の数は確実に減ってきているはずなのだ。にも関わらず、ここに至っては、その実感を得られないほどの状況である。という事は、ここが恐らく最後の難所であるのだろう。
 自然、敵も死力を尽くす。それだけの知能があるかどうかも怪しいが。
(このまま二人だけでは、分が悪いかもしれない)
 アルテミスの思考は、ありえる可能性を。それは敗北の可能性すらも脳裏に写し始めていた。その時。
「次の獲物は……お前かァ!!」
 紅い残像とともに飛来した影が、一匹の翼怪を捉え、地に引きずり落とした。
 影はそのまま、その両掌、舌、上顎、身体の各所の刻印が脈打たせて、翼怪を喰らう。
 その姿と威圧だけならば、翼怪たちよりも、例えるなら並のUDCほどの迫るものがあっただろう。
「うぇっ、さすがに胃もたれしそう……あ、やっはろーです」
 ユキ・パンザマスト(ヤオツバキ・f02035)は、二人の姿を目にして、けろりと。そんな変貌などなかったかのように。胃のあたり、刻印のある下腹の辺りを摩る仕草をして、挨拶をしてみせる。
「やっはろーじゃの」
「あ、ああ、や、やっはろー? か」
 戦いの最中に交わされるとは思い難い、軽い調子で。
 こういう所としても、女子は皆女優という言葉の説得力であるのだろう。一人だけ声に出遅れたアルテミスは、精進が足りないと反省する。
「しかし、これだけじゃとなぁ。やはり、決め手が欲しいのぉ」
「んー、何の話です?」
 そんな思考の合間にも、エリィとユキは話を進めていく。
 それぞれがそれぞれの背に迫る敵を打ち払いながら。
「おぬしが来てくれたのは良いが、このままではやはり埒がの」
 幼い少女の握るアサルトウェポンが、弾丸を吐き出す。
「覆す一手。……地の利を得る、などでしょうか」
 華奢な少女が大剣を振るう。
「あっ、それならユキ、すぐそこに、いい場所見つけたですよ! 邪魔だオラァ!」
 キマイラの少女が、自らの肉体という武器を用いて、敵を掻きわけ、その場所を指さす。
 そこは、大きな塀に囲まれた、周囲と異質な建物だった。辺りにあるどの建物も灰にまみれていて区別がつかない姿と成り果てていた中、そこだけは門扉が開け放たれており、不自然と一部の灰が取り払われていたのだ。
「よし、皆、敵を搔き集めるんじゃ」
 それを見たエリィの判断は素早く。三人は一斉に動き出す。
 攻撃の手を止め、一心不乱に辺りを駆け、目的の場所へと。三人の少女を恰好の餌と見た翼怪たちは、次々と面白いように釣れていく。
 やがて。
「よしよし、ちゃんとついて来てんなァ?」
 食間の運動代わりに丁度良いとばかりに特段走り回っていたユキが、塀の門扉を抜ける。
 瞬間、横に飛んだ。塀の外からは見えない内側へと。
 翼怪たちに見えるのは正面のみとなる、正面にただ一人佇む、アルテミスの姿のみと。
 目に映る餌は変わった。しかし、餌は餌。翼怪たちは迷う素振りを見せる事なく、アルテミスに向かい、飛び掛かっていく。
「これ以上の狼藉は許しません。はぁっ!」
 翼怪の腕がアルテミスに届く寸前、大剣が大地に突き立てられる。アルテミスの体は微動だにせず、翼怪の腕を受け止めた。
 彼女が発動したのは、絶対防御のユーベルコード。
「お次はこれじゃ。出でよ、最高にかわいい、わしの巨人!」
 ユキが飛んだのとは逆の塀の内側、群がる翼怪たちに向けてエリィはアサルトウェポンを構える。その隣には、そっくりそのまま巨大にしたアサルトウェポンを構えた巨人の姿が。
「一網打尽じゃ!」
 一斉に弾が吐き出され、形成される分厚い弾幕に、翼怪たちは次々と、悲鳴を挙げながら無力化されていく。
「おっと、逃がさねぇぜ!」
 運よく弾幕を逃れ、逃げ出そうとした者は、容赦なくユキの手によって地に引きずり落とされる。
 塀の中で空を飛ぶ影が無くなるまで、それほどの時間はいらなかった。
「ようやく片付いたわい。……お前さんも、お疲れじゃの」
 静けさを取り戻した世界の中で、色濃い汗を流して、荒く息をするアルテミスをエリィは労う。
 あの弾幕の中心に、翼怪たちの悲鳴が挙がる中心にいたのだから。その精神の疲労はただならないものだろう。
「それじゃあ、落ち着いてから、敵の拠点に行きましょうか?」
 様子を見てユキも、そんな言葉を投げかけていたが。他ならぬアルテミス自身が大丈夫だと告げた。
「何より……。敵の拠点はここですから」
 そう続けて、アルテミスは背後の建物を振り返る。
 これだけの数の敵を倒したのであれば、いずれ他の猟兵たちも辿り着いてくるだろう。
 灰の世界の中、灰の払われた其処からは、異様な熱を感じられるように思えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『灰霞の剣』ヴォル・ヴァ・ドーズ』

POW   :    焔を焚く者
真の姿を更に強化する。真の姿が、🔴の取得数に比例した大きさの【灰色の焔 】で覆われる。
SPD   :    灰霞の剣
【灰霞の剣 】が命中した対象を燃やす。放たれた【霧とも霞とも見える灰塵の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    焔・灰・剣(BLAZE ASH BLADE)
【焔か灰か剣】が命中した対象を切断する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エリィ・ゴールウェイ
灰霞の剣、強敵じゃ。一筋縄ではいかんじゃろうな。だからこそ、もう一度はわしは前に出る。危険を承知で進むんじゃ。

ユーベルコード【死線で踊り狂え】。敵の攻撃をなるべく近くで避けつつ、嘲るように攻撃を当て続ける。緊張と快楽の連続に血肉が湧き踊るが、冷静さも忘れないぞい。

肉体能力増大、動体視力増強、思考能力向上。いかにユーベルコードでこの身が強くなろうとも、一人じゃったら厳しかろう。だが、生憎わしは一人では来ていないのでの。

周囲の仲間の存在を感じながら、彼奴の目を惹きつけるために、狂ったように踊り続けようぞ。


佐之上・権左衛門
【POW 】ふう、なんとか間に合ったか?生憎俺の武器はただの重量物。形なきものには多分傷は与えられない。それなら形を与えてやればいいんだ。
という訳で用意した液体窒素入りの手榴弾ことユーベルコード【氷結手榴弾】カッチカチに凍っておけやぁ
!と投擲して少し間をおいて突撃、愛用のグレートアクスで【二回攻撃・鎧砕き】で応戦する。
回避は運と直感に身を委ねて【第六感】で回避する。


緋神・美麗
応援要請に応えて遅ればせながら参戦するわ。さて、これはまた厄介そうな敵ね。どこかに核があるのかしら。まずはそこを見極めないとね。
様子見にサイキックブラストで全身を雷で薙ぎ払うわ。
「灰すらも残さなければどうかしら?」
その後の反応を観察して核の有無と場所の確認を行い、そこをめがけて小型ハイメガキャノンの誘導弾を撃って核を焼き滅ぼすわ。
「核を潰されれば流石に滅ぶでしょ」


空廼・柩
その場にいるだけでじりじり焦がされていく様な、そんな感覚
抑えど肌が粟立つこの感情は、もしかすると『恐怖』と呼べるものなのかも
まさに、化物と呼ぶに相応しい存在じゃないか
…けれど、あれが殺せる存在ならば絶望に足が竦む事はない
たとえ神であれ、殺せば良いだけの話だ

灰が燃えたら、次は何になるのかな?
いや燃えたら熱いし嫌だけれど
愚痴りつつも咎力封じで力を封じていく
火力を下げるだけでも此方への損害は減るだろう
燃えるのは剣が命中した対象
ならば飛ばした手枷等での防御も一応手か
共に戦う者在れば連携を試みよう
敵の攻撃は極力見切るなり
拷問具で防御するなり直撃は避ける
何ならカウンターも狙ってみようか?

――くたばれ、化物



●灰霞在りて
 パチパチと、燻る火種が爆ぜる。
 猟兵たちの踏み込んだ、その一室というのは、一見して、異質な空間であった。
 踏み込めばまず、焦げ臭い異臭が鼻をつく。おそらく、そこかしこに散らばる黒く炭化した物質が放つものだろう。その物質の正体はもはや、考えるまでもない。
「ったく、嫌気がしてたまんねぇ」
 異臭の火種を生み出す元凶。『灰霞の剣』の姿を睨みつけながら、佐之上・権左衛門(おっさんは蛮族傭兵・f00239)は煙草の煙を燻らせる。
「全くじゃの。……そう言うおぬしの神経は、図太いようじゃが」
 彼の燻る煙は、エリィ・ゴールウェイ(幼い老戦士・f01137)の頭の位置では届かないはずだが。あたかも怪訝そうに眉根を寄せてみせる。
 いや、エリィがそうしたのは煙草のせいでなく。やはりその異質な空間に一つの事実を見たからだろう。
 ここには、黒く変色しきるほどに燃えるモノがあったはずなのに、部屋の形はそのまま、建物にはただ一つも燃えあがった痕跡がなかった。
 その事実の意味を考えれば。
「ま、しがないおっさんにゃあ、これくらいしか楽しみがねぇんだわ」
 権左衛門がそう返す間にも、ここに至った猟兵たちは、自らの得物を構えていく。
 『灰霞の剣』が蠢いた。
 同時に権左衛門は、咥えていた煙草を放った。
 それが幕開けとなった。
 黒い濁流が、猟兵たちへと迫る。
 呑み込まれた煙草が一瞬の内に灰と化した。
「牽制のための一撃、といったところかしらね」
 猟兵たちが一斉に飛び退く中で一人、緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)は、そんな事を独り言ちる。
 視線の先に『灰霞の剣』を捉えたまま。
 続けて攻撃してこないのは、あちらも様子見のつもりでいるからだろう。
 そんな風に、分析をして。
「少なくとも、知能はあるだろうね。なら、最初の一撃は警戒か。もしかしたら、警告かもしれない」
 独り言に応えが返ってくる。
「立ち去れ、さもなくば焼き殺す、とでも?」
「そういうこと」
 応えは問答に。空廼・柩(からのひつぎ・f00796)はその指先に引っ提げた拘束具を、『灰霞の剣』に向けて投げ放つ。
「なら、返事は一つしかないわね」
 美麗もまた、その軌跡を追うように。正面に構えた両の手から稲妻を生み出し放つ。
「さぁ、あなたの正体は何?」
 エリィの駆ける両脇を追い抜くようにして、稲妻が奔り。『灰霞の剣』の黒い灰のような体を一瞬、吹き散らした。遅れて飛来した拘束具が、再び寄り集まった灰の集合体に取りつく。
 黒い灰のような霞のような身体のどこに取りついているのか、近くで見ているにも関わらず理解できないのは、それが常識に沿った存在ではないからだろうか。
「クカカッ、面白い!」
 そんな状況を前に、むしろ嬉々としてエリィは『灰霞の剣』との距離を詰めた。
 その小さな影に釣られるように、黒い灰霞の奔流が、波打つようにエリィを取り囲む。
「ほれ、来るがいい。狂気の沙汰ほど面白い即興の舞。おぬしには特等席をくれてやろう!」
 瞬間、小さな影が宙を舞う。奔流に開いた唯一の穴。即ち、天へと。
 宙に浮いたまま、『灰霞の剣』へと向けたアサルトウェポンの引き金を引く。狙いは、何処かに取りついた拘束具へと。
 しかし。弾丸は目標に至る事無く。『灰霞の剣』の身体への中へ消えていく。
 代わりに、まるで痛みにのたうつかのように、黒い灰霞は蠢いていた。
「ほほぉ、狙い通りといかずとも。無駄弾ではなかったようじゃ、のっ!」
 アサルトウェポンの反動で間合いをとったエリィを、追うように奔る灰霞。彼女がそれらの一撃を躱す度、冷たい床に黒い焦げ目が増えていく。
 焦げ目の数が四つに達した。
「狙い通りにいかず……ね。いい冗談じゃないかしら」
「へっ、こっちはいつでもいいぜぇ!」
 『灰霞の剣』の背後。その姿に背後があるのかは定かではないが、少なくともソレは気づいていなかった。背後でユーベルコードを備える二人の姿に。
「届かないのなら、剥き出しにすればいいのよね」
 美麗の両掌から迸る稲妻。それは先ほど、一瞬だが『灰霞の剣』の身を吹き散らした。つまり。
「そらよっ! 特製氷結手榴弾だ。燃やす灰ごと凍っちまぇや!」
 剥き出しになる一瞬を狙い、権左衛門は懐から取り出した手榴弾を投げ込む。
 オーバースローによる豪速。
 手榴弾は剥き出しになった拘束具の辺りへ炸裂。その中身である液体窒素が弾けた。
「こうすりゃ、隠しようもねぇだろ。いくぜぇっ」
 液体窒素に触れた拘束具は、その周囲の灰もろとも凍り付き、氷塊のような形を伴って、その存在を剥き出しにする。
 先ほどの弾丸のように直撃を防ぐというような事はできないだろう。愛用のグレートアクスを手に、権左衛門は距離を詰める。
 振り抜くのは、重量にものをいわせた砕ききる事に賭けた一撃。
 果たして。
 再び寄り集まりだす灰霞をもろともせず、グレートアクスの刃はソコに至った。至り、叩き砕いた。
 ただ、それだけだった。
「なにっ……!」
 砕かれた瞬間。先のように痛みにのたうつ様子こそ見せたものの、灰霞が、権左衛門へと迫ったのである。
 咄嗟に避けようにも、先の一撃は隙は大きく。
 そんな両者の間に割って入ったのは、またもや拘束具であった。
 ただしそれは、柩の手によって、新たに放たれたものだ。
「思い違いだったのかもしれない……」
 猿轡が灰霞を包み取るようにすると、瞬く間に発火する。
 拘束ロープが何処かを縛りあげると、これも燃え上がる。
 何かに取りついた手錠には、鋭い斬れこみが出来た。
「全て何かを掴む。って事は、全部当たってるって事だ」
 そして、拘束されたその一つ一つを、幾度と放たれるエネルギー弾が撃ち落とし、消していく。
「私が疑った、アレに核はないって事でいいのよね?」
 美麗の指で、サイキックエナジーの増幅器が光を宿していた。
 身体の一部が消えた『灰霞の剣』は、苦しむように、その身全てを震わせている。
 一見すると。灰霞を攻撃しようと手応えはなく、どれも効き目がないように思える。しかし実際はその逆であった。
「なるほど。そのナリより、答えはずっとシンプルなのじゃな」
 その様子を目にしながら、エリィは二人の、いや、三人の元へと降り立つ。
「んじゃあなんだ。どこ叩いてもいいし。どこも弱点だって事か? アホくせぇ」
 グレートアクスを杖代わりに権左衛門は立ち上がり、またも煙草を咥える。
「そうかもね。ただ、今なら間違いなく言える。あいつは殺せる」
 不思議と集う皆の前で、柩がそう口にしたのは、もしかすれば自身に言い聞かせるものだったのかもしれない。
 異形の、化物とも呼ぶべき存在を前に、ずっと肌が焦がされるように感じていたプレッシャーは、霞の晴れたように、消え去っていた。
 あとに残るものは高揚感にも近い確信。
「だから。くたばれ、化物」
 拘束具が放たれる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ユキ・パンザマスト
(多々羅・赤銅さんと同行)
行き会った彼女の怒りを肌で感じる。ああ、姐さんったらキレてますね?
に、と牙見せて笑う。いいですよ。あいつ、喰い応えはありそうだけど。
「ユキはもうさっき、たらふく喰っちまいました」「厄介は任せて」
床に壁に咲かせた白椿の実体ホロでぐぅるり灰霞の剣を囲み、灰も焔も悉く、衝撃波でなぎ払え!
「禍時だ! けもの──否、戦鬼が来るぜ!」
音量最大。鎧無視で覆いを貫通、敵本体にも及ばせろ。
剣戟の間は、椿樹から伸ばした根や枝で姐さんに攻撃が及ばぬよう支援だ。
ユキは花が好き、瞼裏に灼き付く苛烈な華も好き!
鬼さん鬼さん、邪神はあちら! 鮮やかに咲かせて魅せてくださいな!


多々羅・赤銅
【ユキ・パンザマスト同行】
鳥どもをさんざ斬り捨てた苛立ちのままに灰の熱気の奥を睨む。未だ、まだまだ斬り足りねえ。

ユキ。道開け。
やり方は任す、出来るだろ?
乱暴に支持を投げる。団地で顔合わせる分にゃあ私は面白姉貴なんだろうが、ここにいるのは悪鬼羅刹で。きっとお前は餓鬼の類。
ここに居て、悠々とすらしてんだ。その度胸買ってやる。

ユキが道を開けたなら、駆け込んで剣刃一閃
力任せに怪力で振り抜いて、炎ごと断ってご覧いれてやらぁ。
周りのことはすっかりユキに任せてノーガード
全身全霊、神を、地獄に堕とす事にかけてやる。
剣戟の応酬なら付き合ってやる。死してなお、鬼に追われる悪夢でも見続けろ。


アルテミス・カリスト
「邪悪な灰霞の剣よ、
この正義の騎士アルテミスがお相手します!」

灰霞の剣、厄介な相手ですが、
攻撃が通用するなら問題はありません!

大剣を構えて灰霞の剣に正面から立ち向かいます。

「人々を守るための騎士の剣の重み、
その身に受けてください!
【スーパーソニック・ブレイク】!」

身体能力を極限まで高めて超加速。
音速の域まで到達ながら灰霞の剣に肉薄すると、
突進の勢いを活かして剣を振り下ろします。

すれ違い様に斬ることを繰り返せば、
相手の攻撃を受けることもありません!

「邪悪な存在は、そのまま無に帰るのです!」

大きく振りかぶった大剣の一撃とともに言い放ちます。



●灰霞尽きて
 壁の一部が、燃え尽き、剥がれ落ちる。
 漂う灰霞に触れた柱が、燃え始める。
 熱い息苦しさがないのは、まだそれが始まったばかりであるからだろうか。
「まるで、最後の時に力強く燃える、ロウソクのようですね……」
 あるいは、死に物狂いとでも言った方が良いだろう。
 猟兵たちの攻撃を受け、濃度を薄くしつつある『灰霞の剣』は、その存在に余裕を失くしたかのように。灰霞に触れるモノを燃やし始めたのである。
 もちろんそれは、自らが巣食うこの屋敷さえも例外ではない。
「長くは保たない、でしょうね」
 燃え落ちた屋敷の一部を目に、アルテミス・カリスト(正義の騎士・f02293)は冷静に状況を伝える。
 外にあれだけの数の翼怪がいたのに。邪神教団の拠点であるというのに。
 中に、特にこの一室に『灰霞の剣』以外の姿がなかった理由を、見せつけられているような気さえした。
「ようは、危なっかしくて、テメェでも面倒見切れねぇってわけか」
 多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)の抜き放った刀が、降りかかる火の粉、いや、灰霞を切り捨てる。
「こうも熱くっちゃ、喉にも通らないですよ」
 すぐ傍で、ユキ・パンザマスト(夕間暮れの鵺・f02035)が灰霞を喰らっていた。
 刻印が脈打つ。
「ですから。後ろはユキに任せてください、です」
 赤々とした椿の舌を引っ込め、微笑みを浮かべる。
 応えるのは、チリと火花が散っているかのような眼光。
 赤銅の抜き放ったままの刃が熱を吐き出すようにギラついた。
 もはや、抑える理由もない。
「道ぃ、開け」
 二人の姿を端から見たなら、それは悪鬼と餓鬼が手を組んだように見えただろう。
 いや、事実、傍にいたアルテミスの目には、そのように映っていたかもしれない。
「……っ!」
 大剣を振るい、取り巻く灰霞を払う彼女の背に一瞬、熱の空洞ができる。
 遅れて、空洞を埋める熱。
「しゃらくせェッ」
 眼前の灰霞を切り捨て、赤銅が駆ける。目指すのは『灰霞の剣』。ただ一つ。
 真っ向からぶつけられた殺気に、漂い蠢く灰霞が、一斉に赤銅へと迫り始める。
 まるで灰霞そのものが炎であるかのように襲いくる熱気。
「姐さんの邪魔はさせません!」
 その時、ユキの一声が部屋を満たした。
 同時に咲き乱れる、白椿の花。
 熱と火に包まれた空間の中、燃えずに咲きゆくそれは、異様な光景であっただろう。
 これらは全て実体を持ったホログラム。ユキのユーベルコードである。
「禍時だァ! 鬼だ、戦鬼が来るぜェ、それも、とびっきりのなァ!!」
 瞬間、無数の白椿を基点に一斉に放たれる大音響の警報音、そして衝撃波。
 あたかもそれは、鬼の到来を告げるかのように。
 白椿が取り囲む、全ての者に等しく降り注ぐ。
 無論、それは迫りくる灰霞の中心にいる赤銅も例外ではない。
 だからこそ、それの到来は早かった。
「――全く、無茶をしますね」
 音よりも早く。瞬間的な超加速により到達したアルテミスの身が、大振りの刃が、赤銅の身に迫る衝撃波に割り込む。
「ですが、見ているだけでは、騎士の名折れです。はぁぁっ!」
 音速はより遅い音を掻き消す。騎士の矜持は、いかなる衝撃すら受け止める。
 降り注ぐ衝撃波、駆け巡る騎士の振るう刃。
 二つのユーベルコードに挟み込まれた灰霞は次々と、自らの存在を失ったかのように掻き消えていく。
 道は開けた。
「どっちも、いい度胸じゃねぇか」
 警報音の中、その呟きは熱に溶けていく。
「なぁ、テメェはどう思うよ?」
 もし仮に、その言葉を聞けた者がいたとすれば。それは『灰霞の剣』のみだっただろう。
 零距離。刃が振るわれる。
「どうだ、痛ぇか。痛ぇらしいなァ!!」
 口のない『灰霞の剣』に答える術はない。だが、その異形の身を悶えさせている事で、痛みに苦しんでいるのがわかる。
「まだ、斬りたりねェぞ。っらぁぁァッ!」
 容赦なく、次々と振るわれる刃には、彼女自身が抱える苛立ちも込められていたかもしれない。
 考えればわかる事だった。
 外にいた翼怪たちは、子どもを好んで襲い、喰らう。ならそうでない者は。
 邪神教団というものは常に生贄を求めている。つまり、それぞれの利害が一致していたのだ。
「神だが何だか知らねぇが、テメェの行く先は決まってんだ」
 徐々に濃度を薄くしていくように、力を失っていく『灰霞の剣』の姿。
 迸る熱の中、幾度と刃を振るう彼女の姿は、鍛冶師のように見えたかもしれない。
 ならば、何を鍛えなおしているのか。敵か、あるいは己か。
「地獄に、堕ちろぉォァあ!!」
 渾身の怪力を込めた、大上段からの一撃。
 振り下ろす。眼前にあった熱がなくなる。
 漂う黒い灰霞のような姿は、跡形もなく消えていた。
「……はぁっ、はぁっ」
 途端、どっと押し寄せる疲労感に、赤銅の身がふらつく。
「姐さん、お疲れっすよ!」
 それを支えるように、にゅっと肩の下からユキが顔を出して。
 あとに残ったのは、パチパチと音を立てて燃えていく屋敷のみ。
 幕引きはあっけないものだった。
「二人とも、お疲れかもしれませんが、まずは脱出しましょう」
 そんな二人にアルテミスは、移動を促す。見れば、他の猟兵たちも続々と動き始めている。
 どうあれここは敵の拠点だった場所。消火するよりも一度、燃え崩れてしまった方が良いと判断したらしい。
「りょーかいですよー。ほら、行きましょう、姐さん」
「んな事しなくたって、一人で歩けるっての。……ああそういや、アンタも、悪かったな」
 ぐいとユキは引っ張り。赤銅は抵抗しながら、アルテミスの姿を見る。
 なぜか彼女の纏う衣装はボロボロで、脱げてしまったのか鎧を手に持っていた。
 そんな赤銅の視線に気づいたのか、恥じらいに顔を赤くするアルテミス。
「え、いや、こ、これは!」
「ユキのを受けた時だろ。ま、そのうち、礼はするさ」
「いやっ、違っ……!」
「えっへへー。頼っちゃいました。また、よろしくですよ」
 んじゃ帰るか、と。彼女の言葉を遮って、二人は歩き出す。
 そんな彼女も、慌てて二人の後を追う。
 結局、アルテミスは最後まで言い出す事ができなかった。
 こうなってしまうのは、いつもの事なのだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ストレス発散で狂気を拭い去る』

POW   :    スポーツや大食いなどで、ストレス発散

SPD   :    ショッピングやゲームなどで、ストレス発散

WIZ   :    読書や映画鑑賞などで、ストレス発散

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アルテミス・カリスト
「こ、これが、UDCアースの市場なのですねっ!
私の世界、アックス&ウィザーズの街の市場とは規模が違いますっ!」

ショッピングモールとかいう市場に来て、目を丸くしてしまいます。
こんなにたくさんのお店があるなんてっ!

「それに、可愛い服もたくさん売ってますね!」

私の世界では手に入らないような服ばかり。
いつも他の猟兵さんの服を見て密かに羨ましかったのです。

「戦いで服もボロボロになってしまいましたし、
UDCの人から資金もいただいたので、ここは新しい服を買いましょう!」

わくわくと服屋を見て回って、色々試着しつつ、
ピンクを基調とした可愛い服を一式揃えるのでした。

なお、試着中にお約束の事故があったのは内緒です。



●灰色染め変えて
 それは何とも表し難い、不思議な感覚であった。
 つい先刻までは、身を焦がすような過酷な戦いの中にその身を投じていたというのに。
「こ、ここが念願の……!」
 アルテミス・カリスト(正義の騎士・f02293)が立つのは、それまでいた灰色の世界とは、程遠い場所だった。 
「UDCの、市場!」
 改め、ショッピングモール。
 色の欠けた地から帰還した彼女が真っ先に足を運んだのは、飽きる事のない色に満ちた地であった。
「ここは貴族の衣装店だろうか。こちらはパーティドレス。にしては、フリルが多いような……。あ、あれはあの猟兵が着ていた!」
 照明と色彩と、特徴的な店名ロゴに飾られた空間の中を、少女は歩き回る。
 アックス&ウィザーズに生まれ育った彼女にとって、これだけ多くの店が並ぶ空間というだけでも、十分に珍しいものだった。それに加えて、普段なら手の届かないような、想像のつかないような装飾に満ちた衣装が、無数に取り扱われているのである。
「す、すみません。これの試着を、いいでしょうか?」
 やがて、アルテミスが足を止めたのは、ピンクピンクした、可愛らしい衣装を中心に扱う一軒。
 頬に朱を浮かべて試着を求める仕草は、少女というより、乙女のような恥じらいにも見えるもので。
 最初こそ、戦いの名残によってボロボロな姿をしているアルテミスに、ギョッとした表情をしていた店員も。そのような様子に、営業スマイルを取り戻していた。
「どうぞ、ご自由にお使いください。お手伝いは……」
「大丈夫です!」
 確認を重ねる店員の言葉にやや被せるように言って、アルテミスはそそくさと試着室に入っていく。
 手にした一揃いは、とても可愛らしい、普段の自身の在り方では、決して手にすることのないようなモノ。その心中は、いち早く着てみたい。そんな思いで溢れていた。
 それゆえに。
「あ、あれっ。そんなはずは」
 普段着慣れないものであるからか。あるいは、品定めを焦った自然の摂理か。
 つっかえて着る事ができないのであった。主に胸が。
 誤解のないように伝えておくと、アルテミスの胸囲は特別大きいというわけではない。ただ、普段通り、体にぴったり当てはまるサイズを選んだ結果、そうなったのである。
 そして、そうなってしまったらしまったで、足掻いてしまうのが乙女心であり。
 足掻いてしまったがゆえに、悲劇を起こすのがこの少女であった。
「ふぬぬぅっ」
 アレコレと工夫を凝らして挑む彼女の足が、中にまで持ち込み立て掛けていた愛用の大剣にこつんと触れる。
 止める間もなく倒れていく鞘に包まれた刀身は、試着室のカーテンを巻き込んで。床を打ち、大きな音を立てる。
 まるで、注目を集めてやろうとばかりに。
 音の静まった後に残されたのは、カーテンという目隠しが消えた試着室と。その中で足掻き、下着のみとなっていた半裸同然の少女の姿。
「ッ!?!」
 遅れて挙がったアルテミスの悲鳴は、ショッピングモール中に響き渡ったという。

成功 🔵​🔵​🔴​

イルナハ・エイワズ
【SPD】ハリエット・ミリオンズ(f05758)さんと一緒に買い物へ
・書店 自分の中の記録と照らし合わせ、図書館に無いタイトルの新刊は全てチェックし、タイトルだけ記録しておきます
持ち運びが面倒ですので、後ほどUDCの組織を通して購入しましょう

ハリエットさんの人間の感情をもっと深く理解しようとする行為が
私には人間らしく思えます
それは口に出さずに置きましょう

あとはカフェテリアに置く、雑誌も見繕いましょう
ファッション誌など女性向けのものがあまり用意されていないようですから
書店を見終わったら、お誘いに応えて、お茶にしましょう


ハリエット・ミリオンズ
【SPD】 イルナハ・エイワズさんと一緒に書店に買い物に出かけましょう

●書店
まずは新刊のコーナーを、その後は…今回は神話や旅行記の棚を覗いてみて面白そうな本がないか探しましょう。
なにか人間の感情をもっと深く理解する、その助けになる本が有るかもしれないから。

人には今生しか与えられていないけれど、本は誰かの物語を追体験をできるのが良い所ね。

終わったら古本コーナーも巡ってみましょうか。もしかしたら掘り出し物が有るかもしれないし。
……といった感じで数冊本を買って書店を出るわ。

書店での探索が終わったら近くのカフェでエイワズさんとお茶しましょう。紅茶を飲みながら談笑するわ。

アドリブ歓迎



●色、々あり
「今の声は、なんでしょうか?」
「まさか、オブリビオン……」
 か弱い少女のものらしき悲鳴を耳に、思わずと二人は身構えていた。
 手にしていた分厚い本を閉じ、状況の把握に意識を注ぐ。
 果たして。
「……大丈夫でしょう」
 ショッピングモールの喧噪に耳を傾けていたイルナハ・エイワズ(挟界図書館の司書・f02906)は、そのように結論を出すと。手にしていた本を棚へと戻した。
 合わせて、手元のメモに書名を記していく。
「それならいいのだけれど」
 言葉とは裏腹に、そんなイルナハの様子に何か納得をしたように。共にいたハリエット・ミリオンズ(ソラリス・f05758)も、本棚を探る手を動かしなおす。
 二人がいるのは、ショッピングモールの外れに位置する物静かな書店だった。
 あまり客足がないからなのか、解放された店の外の音も、よく届くのだ。
 だからこそ、状況の把握も容易だったのだが。
「この世界でオブリビオンが現れたのなら。もっと騒ぎが大きくなっているはずですから」
 記録する手を緩める事なく。まるで独り言のように、イルナハは自らの結論に説明を添える。
「それもそうね」
 その几帳面さゆえの行動なのだろうが、まるで親切心のようだと受け取ったハリエットは、一人微笑みを浮かべて。
 ふと、彼女が記すメモに目を落とすと、今度は気づいたように口にしていた。
「そのタイトルの本は確か、図書館にもあった気がするわ」
 というのも、このメモ。イルナハが身を置く図書館へと、蔵書として取り寄せる本をまとめておくためのもので。
 ハリエットの指摘は、利用者の一人として。記憶に照らし合わせたものだった。
「いえ、この本はありませんよ。間違いなく」
 しかし、そんな指摘に動じる様子もなく、イルナハの手は次々と、書名を記していく。
「確かに、ハリエットさんの言われるように、この本とあの本は、同じものかもしれません」
 話に挙がった二つの本の違いを挙げるとすれば、生まれた時と、訳者。これらくらいのものだろう。
「ですが。訳者が変わるだけで、内容も違ってきます」
 もちろん、本そのものの大筋が変わる事はない。しかし、その過程。あるいは些細な言葉、単語。どれかは違うだろう。
 一文字でも違うのならば、それはきっと違うものになる。
 もっとも、そこに込められた人の意思までわかりませんがと、イルナハの言葉は続いて。
「ですから私は、同じ本だとは思いません」
 言っている間に、見ていた本棚の分の記録を終えたのか、イルナハは次の本棚へと向かっていく。
 その後ろ姿に視線を送り、次いで、手元の本へとハリエットは視線を下ろす。その手に握られていたのは、一冊の本。UDCアースにおいて有名な人物の旅行記。
 日本人のものではない。つまり、この地からすれば外国人の、外国の本。
 ここにあるのは、その訳本。
「つまり、見方によって違うものになる、って事なのかしら」
 それこそ、人が一人一人、個性があって違うように。
 あるいは、些細な違いなら、表情を変えると表現する方が似合ってるのかもしれない。
「まるで、人みたいね」
 静かな書店の中にひっそりと、もしくはくすくすと、呟きが零れる。
「どうかしましたか?」
 そんなハリエットの様子に気づいて尋ねるイルナハの声は、相も変わらず無機質なものだった。
「いいえ、何でもないの」
 この無機質な顔をする魔導書のヤドリガミも、見方を変えれば、表情を表に出さないだけの、感情豊かな女性に見えるのかもしれない。
「これと同じタイトルの本。図書館にもあったかしら」
「ええ、ありますよ。訳者は別人ですけども」
 そう、と答えるハリエットの顔には、不思議と微笑が浮かんでいた。
 帰ったらそれも読んでみよう。そんな思いとともにサイボーグの少女は、手にした一冊と気になった数冊とを手にする。
「そうだわ。良かったらだけれど。この後、お茶でもどうかしら」
「構いませんよ。……丁度、カフェテリアに置く雑誌も見ておきたかったので。参考になりますし」
 イルナハの言う事はおそらく、本当の事なのだろう。ただ、言い訳を言ってるようにも聞こえて。
「それじゃあ、決まりね」
 そんな内心を知らせるわけにもいかず、ハリエットはすぐさま約束をまとめた。
「あちらをまだ見ていないので、もう少し待っていてください」
「なら、私も手伝うわ」
 ヤドリガミとサイボーグ、人ならざる身を持つ二人の談笑は、静かな書店を色づけていく。
「そういえば、何か良い物でも見つけたのですか。先ほどよりも楽しそうに見えます」
「えっと。そういう事に、なるのかしら?」
 二人の探し物は、いつまでも続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

空廼・柩
【SPD】
欠伸を噛み締めつつ、やって来たのはコンビニ
弁当に菓子に…あ、後エナジードリンクも数本確保
戦い疲れたし、今日くらい宿舎に帰ってのんびり休んでも罰は当たらないっしょ
…あ、白衣もクリーニングに出しにいかないとな

そんな事を言っているとポケットのスマホが振動する
…やな予感がするからぶっちゃけ出たくないんだけれど
暫しの逡巡の末…はい、空廼です
案の定掛けてきたのは主任
え、今日戦ったUDCの報告書、今日中にあげろって正気っすか?
いやいや無理ですって俺今日有給取ろうと――って聞けよ!
切れた通話に溜息ひとつ
…ああもう仕方がない
今日中に全部終らせて主任に投げつける!
…何というか、これもまた日常なんだろうな



●灰跡に風は去り
 透き通るような薄い光沢をもつ、ガラスの扉が、目の前で開く。
「ありがとうございましたー!」
 コンビニ店員の感謝の声と共に、寒風の絶えない外の世界へと踏み出して。空廼・柩(からのひつぎ・f00796)は一人、そっと空を見上げた。
「ふぁ……ぁ、ぁっ」
 そんな彼の口から欠伸が漏れたのは、もう既に日が沈みかかっていたからだろうか。
「冬の夜は、足早にやってくる、ってとこかな」
 他愛もない独り言を呟いて。手にしたレジ袋の中から、からあげの刺さった串を一本、取り出し、齧っては、物思いに耽る。
 思えば、気の滅入るような事が多かったと。
 自然と下りてきた視線が捉えるのは、先ほど通り抜けたばかりのショッピングモール。
 日暮れに合わせてだろう。外に出てくる何組かの家族連れを目にしては、その間に守られるようにして連れられている、幼子の姿に視線を細める。
「確か、『嘲笑う翼怪』って言ったっけか……」
 本当に悪趣味だと思う。思い出す事も嫌になる程には。
 彼にとって、それと対峙したのは今回の一件が初めてだったわけではない。
 むしろ、それがありふれたUDCであるからこそ、相対する機会が多かっただけで。
「っとと」
 考え事の間に、ポロと崩れかけたからあげの一つを、柩は受け止め、冷めないうちに、全て胃に仕舞っていく。
「んっ゛!」
 すると、喉につっかえた感覚に慌てて水を取り出し、煽るようにペットボトルを傾けた。
 寒空の中。その時の柩の脳は、冷たいばかりの水を嚥下する度、全身が潤いを取り戻していくような感覚に満たされるようで。
「それもそうか」
 その理由は考える間でもなく、あの空間に身を投じていたからだろうと。
 思考が巡る合間に、両手はきつくペットボトルの蓋を閉めていた。
(結局、無事に終わったけど)
 つい力を入れ過ぎたのは、一度は『真の姿』へ成る事を覚悟していた事を思い出したからだろうか。
 柩が戦いの最中に正体を掴んだ後はともかく。最初に対峙した瞬間に感じた、恐怖に似た感情は本物だった。
(恐怖や狂気は必ず精神を蝕むものだ。今回は良かったとしても、次は……ッ)
 徐々に思考の海に沈んでいく柩の意識を引き戻したのは、彼自身のポケットから響く着信音。
「はい、空廼です。もしもし……。はぁっ!?」
 嫌な予感がしなかったわけではない。むしろ柩は嫌な予感しかしていなかったが、それでも電話に出ないという選択肢もなく。
「今日中って、もう日暮れっすよ。え、冬の足は早いから? それさっき俺が言ったから。今日はもう有給取ってさっさと帰……って、切りやがった!」
 レポートを今日中に提出するようにと一方的に告げられた指示に、怒りのぶつけどころもなく溜息ばかりが漏れる。
「はぁっ。こうなったら、さっさと終わらせるか。内容はさっき思い出した事をまとめるとして……」
 思い出すのも嫌なのになと、言い訳のように漏れる呟き。
 ふと、回想する思考をよぎるのは、先ほどコンビニを出る時にすれ違って行った、猟兵らしき少女たちの事。
「あの子たちは優雅に喫茶店に繰り出してるってのになぁ」
 同じ猟兵であるのに、この差はどこでついたのだろうと、レポートに全く関係のない事まで思い出して、柩はさらに溜息の数を増やしていく。
「……仕方ないか」
 しかし、溜息ばかりでレポートが消える事はなく。
 喫茶店で優雅な時を過ごす日常もあれば、これもまた自らが過ごす日常なのだろうと。
 達観にも似た諦めの感情と共に、柩の足は仕事場の方へと向かっていく。
 揺れ動くレジ袋の中で、数本のエナジードリンクがカラリコロリと静かな音を立て続けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月06日


挿絵イラスト