大祓百鬼夜行④〜東方妖怪総大将
●その名は山本五郎左衛門
「暴力にゃ。暴力は全てを解決するにゃ! この山本五郎左衛門が揉め事を仲裁する必要がないくらいの暴力さえあれば、大抵のことは解決するにゃ!」
その毛むくじゃらの『黒き暴獣』となった東方親分『山本五郎左衛門』は、咆哮した。
溢れ出る圧倒的な『虞』。
それは彼女が合体した骸魂の影響を完全に抑え込んでいることを示していた。
「『大祓骸魂』を儂は確かに見ることができる。けれど、あんなバケモンに勝つパワーはもっとらんにゃ」
しかし、その『黒き暴獣』としての力を振るう彼女の力は、こと単純な力だけであればUDCアースにおける『大いなる邪神』をも凌駕しうるものである。
だが、その力をもってしても『大祓骸魂』は打倒できないのだ。
だからこそ、彼女たちは決死の覚悟で『大祓骸魂』の軍門に下り、百鬼夜行のごとく群がることによって猟兵たちの持つグリモアの力に寄って『大祓骸魂』の姿を可視化しようと策を講じたのだ。
「だけど、それでもなお猟兵さんたちと儂らは戦わねばならぬ。儂らと猟兵さんたちとの『全力で戦う』ことこそが、『必須条件』。西洋親分『しあわせな王子さま』も同意してくれた。他の親分たちもそうにゃ」
『山本五郎左衛門』の瞳に輝いていたのは、決死の覚悟である。
他の妖怪たちだって同じだった。
二つの愛おしき世界を守るために己たちの生命が礎となるのならば、喜んで生命ぐらい暮れてやろうというのだ。
西洋親分『しあわせな王子さま』は楔となった。
「ならば、儂は礎となろう。猟兵さん、それでは殺らせていただきます!」
大気が震えるほどの圧倒的な『虞』。
それは猟兵たちをして『真の姿』を晒さなければ打倒できぬほどの暴風となって『サンモトのマヨヒガ』に吹き荒れるのだった――。
●大祓百鬼夜行
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。今回の事件は、『サンモトのマヨヒガ』。そう、この大きな戦い『大祓百鬼夜行』を知る予兆となった東方親分『山本五郎左衛門』さんと『全力で戦う』ことになります」
彼女の瞳は、仕方のないこととは言え、あの優しい親分のことを憂いているようであった。
『大祓骸魂』へと至るための『雲の道』。
それを紡ぐために必要なのは、四人の親分たちと『全力で戦う』ことが『必須条件』とされている。
彼女たちは自分たちの生命すらも顧みることなく、骸魂と合体し『大祓骸魂』の軍門にあえて下り、百鬼夜行として『大祓骸魂』の存在を自分たちに知らせてくれたのだ。
「彼女たちを喪うわけにはいきません。最悪の場合、彼女たちは自分たちの生命が喪われることさえも厭わないでしょう」
ですが、とナイアルテの瞳が輝く。
そう、誰一人として殺さない。誰一人として死なせない。
猟兵たちの総意であったことだろう。それを知るからこそ、彼女の瞳は輝くのだ。
「東方親分『山本五郎左衛門』さんは、暴力特化型の『暴獣形態』となって『サンモトのマヨヒガ」にて皆さんを迎え撃つでしょう」
そこに小細工は一切ない。
圧倒的な『虞』は猟兵たちをして『窮地』であると認識させるだろう。
『真の姿』を晒して戦わなければ、『山本五郎左衛門』は打倒できない。それほどの相手なのだ。
毛むくじゃらの『黒き暴獣』となった彼女は欠損部位再生能力を持ち、棘状の毛に覆われた尻尾による範囲攻撃、詠唱時間に応じて力を増す火の玉など、単純な力で言うならばUDCアースの『大いなる邪神』をも凌駕する力を持っている。
「互いに加減はできません。ですが、それでもやらなければならないことがあるのです。誰も殺さない。誰も死なせない。私達猟兵の戦いにおいて、後に流れる犠牲の血など一滴たりとてあってはならないのです」
相対するは東方の妖怪総大将。
しかし、猟兵達は生命の埒外にある者たち。
ならば、相手にとって不足があるわけもない。
「奇跡が起こらぬというのならば、起こしてみせましょう。私は皆さんを信じています。どうか」
そう、どうか、とナイアルテは頭を下げる。
二つの世界のためにと生命を投げ打つ妖怪たちの想いをと猟兵たちの背に託すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『大祓百鬼夜行』の戦争シナリオとなります。
『サンモトのマヨヒガ』にて猟兵を迎え撃つ東方親分『山本五郎左衛門』、その『暴獣形態』との戦いになります。
彼女は完全に骸魂を抑え込んでいますが、『大祓骸魂』へと至る道である『雲の道』を紡ぐために、皆さんを完全に殺しにかかっています。
それは身にまとう『虞』からも理解できることでしょう。
その『虞』故に猟兵は窮地でなくても『真の姿に変身して戦うことができます。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……真の姿を晒して戦う(🔴は不要)。
それでは、大祓百鬼夜行を阻止する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『東方親分『山本五郎左衛門』暴獣形態』
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POW : 暴獣形態
自身の【理性】を捨て【毛むくじゃらの「黒き暴獣」】に変身する。防御力10倍と欠損部位再生力を得るが、太陽光でダメージを受ける。
SPD : 四尾暴獣撃
【棘状の毛に覆われた尻尾】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : 山本火焔塊
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【獣】属性の【火の玉】を、レベル×5mの直線上に放つ。
イラスト:乙川
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ナーバ・キャンサ
真の姿=普段より3倍ほどの体積を持つ不定形のブラックタール
ついにこの時が来た。
尊敬する東方親分、その人と戦うとき。
親分が殺しに来るのなら僕らは無事じゃ済まないだろう。
それでも戦うし、殺す勢いで戦うとしても決して命を奪わない。二つの覚悟を抱いて僕は行く。
そう、僕にあるのは全力で戦う覚悟と命を奪わない覚悟。つまり――
ユーベルコード、賭け狂いを発動するよ。
敬愛する貴方のためなら自分の命をチップにしたって構わない。怖くない。そんな狂信ともいえるものを武器にして運気を奪い取り、自分に幸運を引き寄せる。
幸運を味方に相手の攻撃をしのぎ、身体を自在に変形させて相手の懐に潜り込み一撃づつ加えていこう!
覚悟とは誰の心にもあるものである。
その強弱があれど、其処に貴賤はない。けれど時に勝負とは残酷なものである。どれだけ真摯なる覚悟を持っていたとしても、敗北は訪れる。
勝者と敗者を分かつものがなんでるのかを知ることはあれど、それらを尽く凌駕するのはいつだって勇気であったのかもしれない。
東方親分『山本五郎左衛門』。
その毛むくじゃらの体から放たれる『虞』は凄まじいものであった。
「にゃあにゃあ、我こそは! 東方親分『山本五郎左衛門』にゃ! 猟兵さんたちがどれだけ強かろうが、我こそはと思う者があるのならば、いざ尋常に!」
膨れ上がる毛むくじゃらの『黒き暴獣』となった『山本五郎左衛門』の咆哮が迸る。
それは圧倒的な『虞』であるがゆえに、その尻尾が棘状に膨れ上がって旋風のように振るわれるのだ。
「ついにこの時が来た」
そう思ったのは、ナーバ・キャンサ(猫又もどき・f33334)であった。
彼にとって東方親分『山本五郎左衛門』は尊敬すべき存在であった。四人の妖怪親分たちが『大祓骸魂』を打倒するための礎になるというのならば、この時が訪れることは判りきっていたのだ。
そう、『全力で戦う』。
望まぬ対決であることは言うまでもない。けれど、『雲の道』を紡ぐための必須条件がそれであるのならば、東方親分である『山本五郎左衛門』はためらわないだろう。
例え、それが己の生命を喪うことになったとしても。
そんな覚悟をもつからこそ、ナーバは『山本五郎左衛門』を尊敬するのだ。
『虞』故にナーバの姿は『真の姿』、ブラックタールとしての姿へと変わる。
不定形のブラックタール。
その姿は普段の三倍ほどの体積を持つ。
しかし、それでもなお足りない。
「僕らは無事じゃ済まないだろう。それでも戦うし、殺す勢いで戦うとしても」
「にゃん! 猟兵さん! 儂らの覚悟はとうに決まっているにゃん! 問答手加減無用にゃ!」
振るわれる棘状の尻尾が旋風のように振るわれる。
躱す暇もないほどの圧倒的な速度。
加減なんてそもそもできない。様子見もできない。ならばこそ、此処こそがナーバの死地であったことだろう。
「決して生命を奪わない。貴方が覚悟を一つ決めているのなら。二つの覚悟を抱いて僕は行く。そう、僕にあるのは全力で戦う覚悟と生命を奪わない覚悟。つまり――!」
その瞳に輝くのは命知らずの狂気であった。
狂気がユーベルコードにの領域にまで昇華された時、戦場に在りし『山本五郎左衛門』の運気を奪って、不孝を与える。
そして、自分へと幸運を引き寄せる。
それこそが彼のユーベルコード、賭け狂い。
賭けたのは己の生命。
どれだけ困難であったとしてもやり遂げるという意志が輝くからこそ、それはユーベルコードに昇華したのだ。
「尻尾が外れる……! 躱しているのではなく、運良く当たっていないってこと……にゃん!?」
「体は変幻自在に変わる! それが僕のブラックタールとしての力。ならさ――!」
不定形のブラックタールの体であればこそ、尻尾の一撃は当たらない。
体を歪ませ、たわませ、そして飛ぶ。
真の姿を曝け出したナーバにとって、それは如何なる意味を持っていただろうか。
二つの覚悟が両の瞳に輝く時、ナーバは誰かのために戦うだろう。
四人の親分達が二つの世界のために生命を投げ打つ。
ならばこそ、自分だって負けてはいられないのだ。
ブラックタールの不定形の身体が『山本五郎左衛門』の懐へと飛び込む。ブラックタールとしての身体が収縮し、一気に地面を蹴り上げるのだ。
「にゃ!?」
「尊敬しているからこそ、僕は幸運を味方にして、親分を倒す!」
地面を蹴ったブラックタールの拳が、一直線に『山本五郎左衛門』の顎を捉える。アッパーのように高く放たれた拳が、その毛むくじゃらの身体を吹き飛ばし、痛烈なる一撃を見事に与え、己の尊敬の念を伝えるように走るのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
エィミー・ロストリンク
【WIZ】
サンモトの親分、わかりました!
わたし達も全力で相手をするけど、絶対に殺ったりしないよ!
絶対の決意を元に真の姿:セイレーンの力が溢れ、大人に成長した姿に変身
メガリス海嘯拳で津波を巻き起こしながら、波に乗るように移動して親分を攪乱
その間に右拳にてUC「メガリス海嘯拳奥義・百斂穿孔波」を発動させて水の圧縮を始める
親分が火焔塊を放ったら、圧縮した水球を一点突破を狙うように放出し、貫通させる
直線上の先にあるのは親分、そのまま貫通させ、火と親分を斬り裂くように横に薙ぎ払う
絶対に死なせはしないよー! まずはその骸魂を砕く!
向かってくる火焔塊は斬り裂いた箇所から水を纏って回避し、圧縮水をもう一発撃つ
放たれたブラックタールの拳の一撃が東方親分『山本五郎左衛門』の顎を捉え、その毛むくじゃらの身体を吹き飛ばす。
顎への一撃を受けてもなお、意識を絶たれることなく『山本五郎左衛門』は笑っていた。
その身に宿る圧倒的な『虞』は未だ衰えることなく。
暴風のように『黒き暴獣』となった『山本五郎左衛門』は、骸魂の影響を完全に抑えながらも、猟兵たちを全力で迎え撃つのだ。
「まだにゃ! まだまだにゃ、猟兵さん。儂はまだ倒れておらぬにゃ! 皆さんには感謝しておるにゃ。諍いが起こる前に未然に防いでくれる。カタストロフが起こりそうに成れば、駆けつけてくれる」
それが猟兵である。
妖怪である彼女にとって、猟兵はヒーローなのだ。
だからこそ、託せる。
例え、自分たちの生命が喪われたとしても二つの世界を救ってくれると信じているからこそ、心置きなく戦えるのだ。
「そんなみなさんだからこそ、殺らせていただくのにゃ!」
詠唱が始まる。
巨大な火の玉が練り上げられていくのを見て、猟兵エィミー・ロストリンク(再臨せし絆の乙女・f26184)は叫んだ。
「サンモトの親分、わかりました! わたし達も全力で相手するけど――」
絶対に殺ったりしないよ! と彼女は彼女の覚悟を叫んだのだ。
その瞳に輝く決死の意志は、『虞』故に真の姿を晒すのだ。
セイレーンとしての力が溢れ、普段の少女の姿はもはやない。在ったのは成長したエィミーの姿であった。
放たれる拳のいち撃破津波を引き起こし、『山本五郎左衛門』との距離を詰めるように波に乗って走るのだ。
互いに詠唱が始まっている。
そのユーベルコードの特性は似通っていた。詠唱時間に寄って威力の上がるユーベルコード。
火の玉を練り上げる『山本五郎左衛門』のユーベルコード。
対するエィミーのユーベルコードは水の圧縮。
互いに相対する属性であったけれど、狙うは必殺の一撃である。
「ちきちきちきんれーすにゃ!」
そう、互いに最初に放った方が負けると予感していた。詠唱時間に寄って威力が変わるのであれば、少しでも相手より長く詠唱しなければならない。
だからこそ、『山本五郎左衛門』は己の胆力を信じるのだ。全力で戦わなければ『雲の道』を作る必須条件が満たされない。
故に、必ず勝利すると心に決める。例え、互いのどちらかの生命が喪われようとだ。
「絶対に死なせはしないよー! まずは――」
互いに必殺の威力まで高められた火の玉と水の圧縮が解き放たれる。
放たれた火の玉の一撃は、エィミーの呼び出した津波をも一瞬で蒸発させる。熱波が凄まじく、エィミーの肌を焼く。
けれど、いつだってそうだ。
決死の覚悟を持って戦う者は、誰かのために戦う者である。己のためではない、誰かのために生命を投げ打つことのできるものには。
「水はどんなモノだって貫き、斬り裂く!」
放たれるのは、メガリス海嘯拳奥義・百斂穿孔波(セイレーン・オブ・ジェット)。
その一撃は火の玉を切り裂き貫く限界まで加圧し圧縮された水の一撃。
薙ぎ払われる一撃は火の玉をも鎮火させ、消滅させる。熱波が再びエィミーを襲い、彼女の身体を吹き飛ばす。
けれど、彼女の瞳は未だユーベルコードに輝いていた。
「なんという水の激流にゃ! けれど――!」
「それでも足りないっていうのなら!」
身にまとった水の膜が一瞬で弾ける。目の前にあるのは『黒き暴獣』となった『山本五郎左衛門』の拳であった。
あれだけの一撃を互いに放ってもなお、『山本五郎左衛門』は勝負をやめない。
そう、これは『全力での戦い』だ。
だからこそ、容赦なく拳を振るう。その覚悟にエィミーは瞳をユーベルコードに輝かせるのだ。
「その骸魂を砕く!」
再び放たれた『メガリス海嘯拳』の一撃が圧縮された水の一撃となって『山本五郎左衛門』の毛むくじゃらの身体を『虞』毎貫くのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
メイスン・ドットハック
【WIZ】
おっと、エィミーが先んじていたようじゃのー
次は僕が相手じゃけーのー東方親分、覚悟じゃのー
真の姿:最初からオブリビオンマシン形態「清盛」に変形済
開幕当初からジェットウイング全開で、黒い暴獣に挑む
UC「G線上のドクトル」でサブコクピットにドクトル・アメジストも搭乗させて電脳魔術でのミサイル・榴弾を生み出し続けて撃ち込む
外れても工房と定義されたフィールドは、親分を超重力で縛る場所になるのでどんどん制限できる
火焔塊を撃つ段階で、工房内に立ち性能向上
その上で一気に上空へと駆け上がって回避し、その後に急降下でレーザークローで攻撃
義妹の頼みじゃけー、聞かんわけにもいかんからのー
『そこは甘々だねぇ』
「次は僕が相手じゃけーのー東方親分、覚悟じゃのー」
放たれた水の拳。
その一撃が東方親分『山本五郎左衛門』の体を薙ぎ払った瞬間、飛び込んできたのは、メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)であった。
彼女はオブリビオンマシン『清盛』の竜神の如き機体でもって津波の痕残る戦場にジェットウィングを全開にして『黒き暴獣』状態となっている『山本五郎左衛門』の体を押し込む。
しかし、相対するのは凄まじき『虞』を放つ妖怪親分である。
東方妖怪総大将たる『山本五郎左衛門』の膂力はオブリビオンマシン形態となった『清盛』であってもフレームが軋むほどであった。
「これが『大いなる邪神』をも凌駕する力じゃのー……けど、負けるわけにはいかんけーのー!」
『ちょっと人使い荒くないかい?』
「うるさいのー、黙って働け働けー」
『清盛』のサブコクピットに召喚されたドクトル・アメジストが電脳魔術でもってミサイルや榴弾を生み出し続け、『山本五郎左衛門』へと打ち込み続けるのだ。
爆風が荒れ狂うように『山本五郎左衛門』を抑え込むが、彼女にとって、それは未だ消耗する程度のものでしかなかったのだろう。
言うなれば、まだその段階でしかないということである。
「まだまだにゃ! 猟兵さん! 儂はまだまだ元気ぴんぴんの助であるにゃん!」
震える大気は『虞』故であろうか。
『黒き暴獣』たる『山本五郎左衛門』の掌にある火球が凄まじい熱量を生み出していくのを『清盛』のモニターが知らせる。
『でたらめな火力だね。これじゃあ、こっちの機体が持たない』
「なんのための工房生成能力じゃけー!」
メイスンのユーベルコードが輝く。
G線上のドクトル(グラビドン・ラボラトリー)――それは、放たれた電脳魔術による一撃が地面をえぐり、周囲を彼女たちの電脳工房へと変貌させる。
みしりと軋む音が聞こえた。
「にゃ……! この重さは……!」
「そう、僕らの工房へようこそ。これでその体を縛る事ができる。工房の中にあっては僕は無敵! 引きこもり最高じゃけーのー!」
火球が膨れ上がる。
そう、工房を広げられる前に、この地形そのものを破壊しようというのだ。
「けれど、その手はもうわかっているけーのー! 先んじた義妹との戦い、見ていたけーのー!」
無限の威力にまで高められる可能性を持ったユーベルコード。
けれど、詠唱が不十分であれば威力は減退される。さらに工房と化した周囲にありて、自分たちの力は高まっていく。
ならばこそ、一気にジェットウィングを噴出させ『清盛』が飛ぶ。
はるか上空へと飛び上がった『清盛』を狙って火球が飛ぶ。
「義妹の頼みじゃけー、聞かんわけにもいかんからのー」
彼女の願い、想い。
それらを思う気持ちはいつだって、メイスンの心の中にあるのだろう。
ドクトル・アメジストは『甘々だ』と評したけれど、関係ない。誰かのためにと願う心の何処に偽りがあるのだ。
真に他者を思いやる心があるからこそ、『山本五郎左衛門』も義妹も戦うのだ。
二つの世界を破壊されぬために。
そして、そんな覚悟を持った妖怪たち全てを救うために、おの想いはいつだって無限に膨れ上がるのだ。
放たれた火球を紙一重で躱した『清盛』が上空から急降下し、『山本五郎左衛門』へと迫る。
その武装、レーザークローの一撃は天より放たれた一条の光となって毛むくじゃらの『黒き暴獣』に一閃を加える。
「その覚悟は必ず報われるけーのー! 全部くるっと解決じゃのー!」
レーザークローが『山本五郎左衛門』を切り裂き、一文字の傷跡を刻み込み、メイスンはオーバーヒートを起こした『清盛』と共に飛ぶ。
ドクトル・アメジストがサブコクピットから悲鳴を上げているようであったが、関係ない。
だって、そう。
誰かのためにと願う義妹の想いと自分の想いもまた同じであるからだ。
そんな風にメイスンは義妹のことを思うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シズホ・トヒソズマ
荒れ狂う獣となっても世界の為にという覚悟、決して無駄にはしませんよ!
無駄にする事なく打ち倒します!
人形は◆早業で◆操縦
UCでピサロ将軍の幻影を肉体として構成し
マスクで装着し合体し真の姿とします
1撃はデザイアキメラの◆オーラ防御◆盾受けで防御
2撃目は周囲の無機物を邪剣に変換し盾として配置
止めた一瞬の間に跳躍して回避
3撃目は黄金のまばゆい光で視界を覆い
そこで八艘飛びによる高速移動で尾の攻撃を回避します
さあ、一気に行きますよ!
邪剣の嵐で牽制し
八艘飛びで◆フェイントを入れながら肉薄
魂だけを切り裂くケチュアの宝剣で、骸魂に多めにダメージを与えるように一閃します
厄介な相手でしたがこの剣には今は感謝します
レーザークローの一撃が一文字に東方親分『山本五郎左衛門』の体に刻まれる。
だが、毛むくじゃらの『黒き暴獣』状態となった彼女はこれだけでは止まらない。何故なら、その身に纏う『虞』は未だ衰えない。
発露する暴風の如き『虞』は対峙する猟兵達にはっきりと『窮地』でると認識させた。
「この程度ではまだまだにゃ! 猟兵さん、加減なんて必要ないにゃ! 二つの世界を救うためならば、儂らの生命など安いものにゃ!」
躊躇いなど必要無いのだと『黒き暴獣』となった『山本五郎左衛門』は叫ぶ。
膨れ上がる棘状の尻尾が『虞』を纏って振り回される。
その攻撃速度は凄まじいものであった。
まさに暴風。いや、竜巻のような勢いで切り出される尻尾の攻撃は一瞬の内に三連撃。
無差別に放たれる攻撃を受け止めたのは、己のバリアを張り巡らせた『デザイア・キメラ』と呼ばれる人形であった。
「荒れ狂う獣となっても世界のためにという覚悟、決して無駄にはしませんよ!」
暴風の如き打撃の嵐の中をシズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)は、ユーベルコードの輝きに寄って現れた『ピサロ将軍』の幻影を肉体として、ヒーローマスクとしての『真の姿』をさらけ出す。
「人形が吸いし過去の影、我が身に宿り力となれ。応報を持って因果を制す! ええ、無駄にする事なく打倒します」
それこそが、幻影装身(アームドオブリビオン・ミラージュ)。
己がこれまで倒してきたオブリビオンの幻影を己の全身に纏うことで、その力を宿し超強化を得るユーベルコードは、『ピサロ将軍』の力を持って走る。
邪剣が盾となって棘の尻尾の二撃目を防ぐ。
それさえも容易く打ち破られ、三撃目が振り下ろされる。
「遅いにゃ! 殺らせて頂きますにゃ!」
黒き棘がシズホへと迫る。
しかし、その見は今『ピサロ将軍』の力を宿す体である。なればこそ、その背後に輝く黄金こそが、三撃目の尾の狙いをそらすのだ。
それでも振り下ろされた尻尾はシズホを巻き込むだろう。
けれど、身に宿した『ピサロ将軍』の力が言うのだ。
ならればこそ、神速。超高速ユーベルコード『八艘飛び』によってシズホの体は一瞬の内に尾を躱し、『山本五郎左衛門』へと肉薄するのだ。
追従する邪剣の嵐が尾によって振り払われる。
「フェイントにゃ!」
「魂だけを切り裂くケチュアの宝剣! その体を傷つけずに合体した骸魂だけを切り裂く!」
『黒き暴獣』の周囲に走るのは黄金の閃光の如きシズホであった。
『ピサロ将軍』――グリードオーシャンの七大海嘯の一人。
厄介な相手であったという記憶だけがシズホの中にある。けれど、今はこの力、この宝剣が在るからこそ『山本五郎左衛門』を救うことができる。
放たれた光速の宝剣のレン撃が『山本五郎左衛門』の肉体に合体した骸魂だけを切り裂いていく。
「今は感謝します。貴方を救うことができる」
力の使い方さえ誤ることがないのであれば、救うことができないはずの者もまた余さず救うことができる。
シズホは己のヒーローマスクとして宿る正義の魂が在る限り、力の使い方を誤ることがないようにと、心を戒め、けれど躊躇うことなく力を奮って『山本五郎左衛門』の『黒き暴獣』の肉体を黄金の閃光でもって打ち払うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
ご機嫌よう、山本親分。想いは確かに受け取った。でも、あなたを失わせるつもりはないわ。
【真の姿】
三面六臂の阿修羅の如き姿
手に剣、戟、斧、独鈷杵、戦輪を持つ
「結界術」「全力魔法」影の「属性攻撃」「道術」「仙術」「浄化」で、金光陣展開。
あたしが放つ金の光が生むあなたの影があなたを襲う。影を攻撃したら、それが自分に跳ね返るわよ。
よし、これであたしたちだけに注力出来る状況じゃなくなった。やっぱり真の姿だと、呪力が上がるものね。
「式神使い」で。アヤメ、お願い! あたしは金の光を維持するから、親分の影と上手く共闘して、親分を追い詰めてちょうだい。
祝勝会に愁嘆場は似合わない。あなたには生き残ってもらうわ。
黄金の閃光が走り、東方親分『山本五郎左衛門』の『黒き暴獣』としての体を切り払う。
その斬撃は『骸魂』だけを切り裂き、肉体に傷をつけること無く『虞』だけを振り払うのだ。
だが、それでもなお立ち上がる。
その姿は悲痛というよりも、一種の誇らしさを与えたかも知れない。
「『全力』にゃ! それが『必須条件』! だからこそ儂は立つのにゃ! 遠慮なんていらないのにゃ!」
咆哮する『黒き暴獣』。
その威容は凄まじいものであったし、振り乱れるように放たれる棘状の尻尾の連撃は周囲に在った全てを手当たりしだいに破壊せんとするのだ。
「ご機嫌よう、山本親分。想いは確かに受け取った。でも」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、戦場に溢れる『虞』を前に、己の真の姿をさらけ出す。
三面六臂の阿修羅の如き姿。
手に剣、戟、斧、独鈷杵、戦輪を持った異形の姿であれど、その腕でもってあらゆる戦場に現れては、尽くを平定する力に溢れていた。
「でも、あなたを失わせるつもりはないわ」
その瞳に輝くユーベルコードが、彼女の周囲に金色の光を放つ。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。光り輝くほどに影はより深く。濁気に沈む愚人の影よ、克己せよ。汝らの現し身に牙を剥け。疾!」
金光陣(キンコウジン)。
それは『山本五郎左衛門』の影から現れた偽物であった。
「にゃにゃ! これは儂の影! 偽モンにゃ!」
しゃらくせぇにゃ! と『山本五郎左衛門』が尻尾を振るう。
その攻撃は無差別に放たれるが故に、凄まじい衝撃となって暴風のようにゆかりが生み出した金色より生まれた影の偽物にも振るわれる。
しかし、それがユーベルコードによって生み出された存在であるのならば、もっと警戒すべきだったのだ。
「にゃ!? これは……! 儂に攻撃の痛みが返ってくるにゃ!?」
そう、偽物は生み出すだけではない。
生み出した影の主にダメージを返すのだ。
「そう、自分に跳ね返るのよ」
真の姿となった自身の中にある呪力が跳ね上がっているからこそ、『山本五郎左衛門』の影をあぶり出すことができたようなものだ。
やはり東方親分と呼ぶにふさわしい傑物である。
だからこそ、全力で打倒しなければならない。
「アヤメ、お願い!」
自身は金色の光を維持するだけで手一杯である。
だからこそ、式神のアヤメに影より生み出した偽物の『山本五郎左衛門』と共に連携し、追い詰めてもらうしかない。
「儂の影を生み出した所で!」
そんなことは関係ないとばかりに振るわれる暴風の如き尻尾の打撃が式神のアヤメや偽物の影ごと振り払っていく。
ダメージが自分に返ってこようと関係ない。
『虞』が振り払われ、『大いなる邪神』すらも凌駕する力が『山本五郎左衛門』自身を傷つける。
「流石に効くにゃー。けれど、此処で止めるわけにはいかんのにゃ!」
ああ、とゆかりはつぶやく。
こんな戦いなど早くに終わらせなければならない。
すぐにでも楽にしてあげたい。
だからこそ、追い詰めなければならないのだ。
「祝勝会に愁嘆場は似合わない」
必ずと、その瞳が呪力とユーベルコードにかがやく。
自分が金色の光を維持すればするほどに『山本五郎左衛門』は消耗していく。そのために此処が正念場なのだ。
「あなたには生き残ってもらうわ」
必ず、そう必ず誰一人として欠けさせない。誰も忘れさせない。思い出なんかにさせてたまるかと、ゆかりの放つ黄金の輝きは戦場に輝き続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…この世界の流儀には随分と調子を乱されたけど、それも此処までのようね
…勝利の為に身を捨てる、その意気や良し
ならば此方も、その覚悟に応えて出し惜しみ無しで往くわ
UCを発動し真の姿の吸血鬼化して"写し身の呪詛"を乱れ撃ち、
高速移動する無数の残像が"血の斬擊"を放つ擬似的な集団戦術で敵を撹乱する
…その力は脅威だけど無駄よ。魔獣の狩り方ならば熟知しているもの
自身は分身達を囮に敵の攻撃を受け流しつつ闇に紛れて死角から切り込み、
限界突破した血の魔力を溜めた大鎌を怪力任せになぎ払い、
同時に"血の斬擊"波を放つ闇属性攻撃で敵を切断する
…血によりて生きるもの、血によりて滅びぬ
後は私達に任せてゆっくりと休みなさい
カクリヨファンタズムの世界は、多世界より訪れた猟兵にとってにぎやかで、騒々しくて。
けれど、どこか懐かしさを感じる不思議な世界であったことだろう。
それを楽しむだけの余裕があれば、カクリヨファンタズムはかけがえのない世界へとなる。
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は随分と、カクリヨファンタズムの流儀に調子を狂わされたものであるけれど、それもまた此処までであると思った。
目の前に対峙する『黒き暴獣』――多大なる『虞』を纏う東方親分『山本五郎左衛門』は、未だ建材である。
けれど、多くの猟兵達が戦いに駆けつけ、その『虞』を引き剥がすように攻撃を桑続けているのだ。
「もっとにゃ! もっともっと儂に攻撃をしなければ、儂を止めることなんて、それどころか『大祓骸魂』を倒すなんて夢のまた夢にゃ! けれど、その夢を儂らは信じてるにゃ! 猟兵さん!」
『山本五郎左衛門』は咆哮した。
『虞』放つ圧倒的な存在感を迸らせながらも、リーヴァルディはうなずいた。
「……勝利のために身を捨てる、その意気や良し」
ならばこそ、己もまた覚悟に応えなければならない。
出し惜しみはなしだと、己の瞳をユーベルコードに輝かせる。
「……限定解放。忌まわしき血に狂え、血の寵児」
瞬時に彼女の顔を覆う鮮血の仮面。
溢れ出る魔力の奔流が血色の斬撃となって、振り回された棘状の尻尾と打ち合う。衝撃波が周囲に飛び交い、あらゆるものを破壊していく。
そう、それこそが、限定解放・血の寵児(リミテッド・ブラッドアニマ)。
彼女の真なる姿。
吸血鬼としての姿である。彼女が戦場を走る度に吸血鬼の魔力を圧縮した血色の斬撃が放射され、尻尾の打撃を尽く振り払うのだ。
無数の残像が現れ、『山本五郎左衛門』を翻弄する。
「超高速移動! にゃらば!」
棘状の尻尾を大地に叩きつけ、『山本五郎左衛門』が戦場を走る。その脚力は一歩を踏み出す度に大地をひび割らせ、まさに『黒き暴獣』としての姿を認めさせるものであったことだろう。
「疾い……けれど!」
リーヴァルディもまた限界突破した血の魔力を込めた大鎌を怪力任せに振るい、『山本五郎左衛門』の拳と交錯させる。
凄まじい力の奔流が戦場に走り抜ける。
この状態では、死角から斬撃を切り込ませるのは無理だ。けれど、互いに拮抗した力は、ぎりぎりと互いの骨身をきしませるのだ。
「……血によりて生きるもの、血によりて滅びぬ」
打ち合う剣戟の音が響き渡る。
それは祈りでもあり、願いでもあったことだろう。
互いの拳と、互いの刃が触れ合う度に覚悟だけが二人の間に伝わっていく。
愛おしき世界のために。
二つの世界を一度に守るためにはこれしか手段がないのだと、『山本五郎左衛門』とリーヴァルディは理解しただろう。
けれど、諦めることなんて何一つないのだ。
「私は猟兵。あなたが求めた者。ならば」
「にゃ! だからこそ!」
激突する刃と拳が生み出した衝撃が互いを吹き飛ばす。しかし、それでも瞬時にリーヴァルディは駆け抜ける。
鮮血の仮面が解けるようにして消えていく。
それは限定解放の限界であった。
だが。
「限界は超えるためにあるのならば」
噴出する血色の斬撃が再び、大鎌の斬撃と共に『山本五郎左衛門』の体を切り裂く。
「後は私達に任せてゆっくり休みなさい」
次に目覚める時には、きっと笑って出会えるようにとリーヴァルディは限界を越えた斬撃でもって、『山本五郎左衛門』の覚悟に報いるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーフィ・バウム
親分の覚悟、よくわかりました!
ならばこそ、《真の姿:蒼き猛禽》を解放
レスラーとして、暴獣の猛攻、
全て受け切ってみせますわ!
レスラーとして最大の【武器受け】はこの肉体
攻撃を【見切り】致命を避けて――避けず
肉体と【オーラ防御】でがっちり受け止めるっ
さぁ、今度は私の番ですわよ、親分っ!
【グラップル】でがっちり捕まえて、【力溜め】た
【怪力】のプロレス投げで地面にたたき落とすっ
ついで【ジャンプ】からの軽やかな空中殺法での
【踏みつけ】でダメージを募らせます
これで終わりではないですわよね!
【挑発】して攻撃を誘い、受けてからの
《トランスバスター》の必殺の投げ!
全力で戦いますが、殺意を込めずKOを狙いたいですわ
血色の斬撃が東方親分『山本五郎左衛門』の毛むくじゃらの体を切り裂く。
鮮血と共に『虞』が噴出し、その体を確かに消耗させていることを知らしめる。
けれど、『山本五郎左衛門』は倒れない。
ぼたぼたと鮮血をこぼし、血に塗れながらも凄絶なる笑みを浮かべる。
その姿は圧倒的な『虞』を纏っているからではない、確かな決意と覚悟があるからこそ、こぼれた笑みであった。
「流石は猟兵さんたちにゃ! たしかにこれならば! でも、まだなのにゃ! 儂はまだ倒れていない。儂は所望する!『全力』を。儂の全力、猟兵さんの全力、それら全部ひっくるめて『必須条件』にゃ!」
咆哮する。
それはこれまでのどの咆哮よりも凄まじい地鳴りを引き起こすようであった。
「にゃあ――!!!」
雄叫びのような鳴き声。
瞬間、これまで猟兵達が刻んできた肉体へのダメージが全て修復していく。毛むくじゃらの『黒き暴獣』となった彼女にもう言葉は届かない。
けれど、それでもユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は叫んだ。
「親分の覚悟、よくわかりました! ならばこそ! レスラーとして、暴獣の猛攻、全て受けきってみせますわ!」
己の真の姿を晒したのは、己の意志である。
決して膨大な『虞』故ではない。己は『蒼き猛禽』である。迫る理性を喪った『黒き暴獣』が振るう打撃の一撃を受け止めたユーフィの肉体がきしみ上げる。
『大いなる邪神』をも凌駕するという単純な力の一撃。
まさに暴風。
技量も、技法もない。
単純な力の一撃がユーフィの体の骨という骨をきしませる。確かに彼女の瞳には致命の一撃を見極めることはできた。
けれど。
「わたしにとって、この肉体こそが武器! 受け止めましょう!」
『山本五郎左衛門』の拳の一撃を、その小さな体で受け止めた瞬間、あり得ない音が響く。
それは肉と肉がぶつかるような生易しい音ではなかった。
まるで鋼と鋼が打ち合うような鈍い音であった。
「にゃあああああ――!」
さらに振るわれる乱打。
しかし、その尽くをユーフィは受け止め続ける。鈍い音が響き続ける。けれど、乱打が終わるその時までユーフィは一歩も引かなかった。
引けるわけがない。
だって、彼女の覚悟は『山本五郎左衛門』と比べて遜色ないものであったし、同時に彼女たちを誰一人として欠けさせることのないようにという祈りと願い、そしてなによりも覚悟があったのだ。
額が割れる。 血が噴出してもなおユーフィは倒れることはなかった。
「さぁ、今度は私の番ですわよ、親分っ!」
乱打を受け止めきってユーフィは『山本五郎左衛門』の毛むくじゃらの腕をがっちりと掴む。
「にゃ!?」
「これが投げ技ッ!」
掴んだ腕をひねるようにその場に投げ倒し、地面に強かに打ち据える。大地が砕け、衝撃波が凄まじい勢いで吹きすさび、ユーフィは空へと飛ぶ。
その姿はまるで猛禽そのものである。
はるか上空より振り下ろされるスタンピングの一撃が『山本五郎左衛門』の毛むくじゃらの体へと落とされ、鈍い音を響かせる。
しかし、それで終わることはない。
再び飛び上がったユーフィの瞳に輝いていたのはユーベルコードの輝きだった。
「これで終わりではないえすわよね!」
轟音を響かせ、『山本五郎左衛門』が跳ね上がって上空に飛ぶ。
空を飛ぶ猛禽を獣が落とせぬと誰が決めた。
その理性無き瞳に映ったユーフィのユーベルコードの輝きを彼女はしっかりと見ただろう。
輝くは拳。
「行きますよぉっ!これが森の勇者の、一撃ですっ!」
鍛え上げられた天性の肉体から放たれる拳の一撃は、凄まじい威力を伴って『虞』まとう『山本五郎左衛門』へと放たれる。
しかし、その拳は打ち据えるためではない。
『山本五郎左衛門』の体をしっかりと掴む。
「ええ、ここからですよ。受け止めきって、逆転の一撃っ。それこそが――!」
空中で猛禽は、迫る獣を強靭なる握力で持ってつかみ、そして。
「トランスバスター!」
必殺の投げ技の一撃が炸裂する。
宙を舞う猛禽は己へと迫る獣に敬意を評して、最大の一撃で持って大地へと痛烈に叩きつけるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ミアステラ・ティレスタム
★真の姿≪母なる海の守護者≫
成長した身体に溟海の髪と瞳
口調はそのまま
纏う加護の水の威力と幸運が上昇
身命を賭して愛おしき世界を守るその覚悟、しかと受け取りました
ならばわたしの為すべきことは『全力で戦う』のみ
誰ひとりとして死なせません
誰ひとりとして殺しません
不殺の誓いを立て、貴方との戦いに死力を尽くしましょう
水属性の威力を最大限に引き出し、己を護る加護の水と必中の水の矢を創生
水の矢を弾幕のように放ち、詠唱を妨害
詠唱する時間など与えません
放たれた火の玉は軌道を読んで避けつつ火炎に耐えうる加護の水で防御
親分さん本体への攻撃には浄化の水の矢を放ちましょう
流石にお強いですね
けれどわたしはまだまだ戦えますよ
はるか上空より放たれた投げ技の一撃は東方親分『山本五郎左衛門』の毛むくじゃらの体を地面へと叩きつける。
突風のような凄まじい衝撃が大地に走り抜け、地割れを引き起こした。
抉れた大地はクレーターのようであったし、その痛烈なる一撃を受けてなお、『山本五郎左衛門』が立ち上がることを願う猟兵はいなかったし、同時にまた『全力で戦う』ことを厭う者もまたいなかった。
「にゃあ! まだまだにゃあ! 儂を殺すつもりで来るにゃ!」
迸る『虞』は戦場に在りてなお健在である。
これが東方妖怪総大将。
『山本五郎左衛門』の力である。『大いなる邪神』すらも単純な力では凌駕するという存在。
その圧倒的な『虞』を前に猟兵達は己の『真の姿』をさらけ出すのだ。
「身命を賭して愛おしき世界を守る覚悟、しかと受け取りました」
玲瓏なる声が響き渡る。
それは、『母なる海の守護者』であった。
その溟海の髪と瞳を持つ者の名を、ミアステラ・ティレスタム(Miaplacidus・f15616)という。
少女の姿をしたヤドリガミであったけれど、真なる姿を持って彼女は成長した姿を戦場に顕す。
「ならばわたしの為すべきことは『全力で戦う』のみ」
その瞳宿るのは決意であった。
誰一人として死なせはしない。
誰一人として殺しはしない。
その不殺の誓いこそが、ミアステラの纏う加護が底上げする。真の姿を顕すことによって得た水の力が、彼女の願いと想いを後押しするのだ。
「それでいいにゃ、猟兵さん! 儂のことなんて気にしないでいいにゃ! なるようになるにゃ! 死んだらそのときにゃ。何も心配しなくっていいにゃ!」
練り上げられた火球が『山本五郎左衛門』のユーベルコードとなって詠唱を重ねていく。
理論上無限に威力を上げる力は、真の姿を顕すミアステラをして脅威である。
放たれた水の矢が詠唱を妨げるように『山本五郎左衛門』を打つがそれでも止まらない。
「ならば、詠唱する時間を与えません」
ミアステラは走る。
水の矢を弾幕のように、まるで降りしきる雨のように『山本五郎左衛門』へと打ち込み続けながら、迫るのだ。
あの火球が十分な詠唱時間を得てしまえば、誰も止められない。
ならばこそ、ミアステラは疾走る。
四人の親分たちがそうであったように、カクリヨファンタズムに住まう妖怪たちがそうであったように。
彼女の背中を押すのだ。
立ち止まるなと、疾走るのをやめるなと。
彼等の決死の覚悟がミアステラの力を、真の姿を晒したからではない、別の力として押すのだ。
「祈りを以て終奏の時を齎しましょう」
そう、それは祈りの力であった。
導かれるは、終奏詩(カデンツ)。
紡がれた想いと願い、そして祈りが彼女の加護を底上げし、吹き荒れる水の矢が『山本五郎左衛門』の体を遂に圧するのだ。
「にゃあにゃあ! けれど、火球は放つにゃー!」
吹き荒れる炎が水の矢を蒸発させながら、一直線にミアステラへと迫る。
それは確かに必殺の威力であった。
炎の輝きがミアステラを飲み込まんと迫る。けれど、ミアステラは瞳を閉じる事をしなかった。
見なければならなかったのだ。
目をそらしてはいけなかったのだ。彼女の、『山本五郎左衛門』が覚悟を持つのならば、必ず己を殺しにかかると。
そして、同時にその殺意を猟兵であるミアステラが越えてくるということもまた信じていたことを、彼女は識る。
「――流石にお強いですね。けれど」
そう、けれど。
自分はまだ戦える。放たれた火球を前にあらゆる妖怪たちの想いを背に負ってミアステラは疾走る。
彼女の真の姿は、加護だけが底上げされたのではない。
言葉にすれば陳腐である。
けれど、それはまごうこと無く運命の因果律さえも歪める『幸運』であった。
真の姿を顕した彼女の身を守るのは、祈りと願い。
奏でる終焉の詩が響く限り、彼女を火球が捉えることはない。彼女の頬をかすめた火球が背後で爆風を吹き荒れさせる。
けれど、その爆風さえも味方に着けてミアステラは水の矢を『山本五郎左衛門』へと解き放ち、激流の如き力の奔流で持って打ち据える。
「貴方のためにわたしは今、戦いましょう――」
大成功
🔵🔵🔵
董・白
※アドリブや他猟兵との連携OKです。
【心境】
「こんどは東方親分さん。あっちが殺しにかかるとしても。こちらは本当に殺すわけにはいきません。」
全力で勝って、救ってみせます!!
【真の姿】
生前の姿です。肌の色も人並みに戻ってます。
封魂符が魂ごと胸に格納して服装が当時の皇女服に変化してます。
この衣装…わりと不敬なんですけど(汗)
そんなこと言ってられないです!
【行動】
道術で強化した結界術で攻撃を防御します。
凄い攻撃ですが、私たちも負けるわけにはいきません。頑張ります。
宝貝「太極符印」で炎の津波を発生させ、そこに破魔の術も付与し攻撃します。
貴方の覚悟。私達の覚悟。その二つがあればきっと全部解決できます。
水の矢が怒涛の勢いで東方親分『山本五郎左衛門』を押し流していく。
毛むくじゃらの『黒き暴獣』の姿はあっという間に水の矢に飲み込まれて消えていったが、すぐさま水の奔流から飛び出すように『山本五郎左衛門』は詠唱を重ねていく。
それは彼女のユーベルコードであり、事実上の無限の威力を秘めた火球であった。
詠唱時間が続けば続くほどに、火球の威力は上がっていく。
「儂の体はまだまだだと言っているにゃ! 猟兵さん達、お覚悟を!」
『山本五郎左衛門』の覚悟はとうの昔に決まっている。
猟兵たちと戦い、己が打倒されること。
ただし、互いに『全力で戦う』ことが『雲の道』を紡ぐ『必須条件』であるからこそ『山本五郎左衛門』は己の持てる全力で持って猟兵に相対するのだ。
「殺らせていただくのにゃ! だから、猟兵さんも同じように頼みますにゃ! 恨みっこなし!」
その凄絶な覚悟は猟兵達をして『真の姿』をさらけ出さねば勝てぬと思わせるほどの窮地であったことだろう。
董・白(尸解仙・f33242)の胸元の封魂符が魂ごと胸の中に消えてく。
死人の色をしていた肌色が血色の良い活人のものへと変わっていくのを『山本五郎左衛門』は見ただろう。
「こんどは東方親分さん。あなたが殺しにかかるとしても。こちらは本当に殺すわけにはいきません」
そう、決死の覚悟。
それでもって『山本五郎左衛門』を始めとする妖怪たち、親分たちは『大祓骸魂』を打倒するために己たちの生命を賭けたのだ。
殺されてしまうかも知れない。
けれど、二つの愛おしき世界を救うためならば、やすいものであると彼等はためらわなかった。
だからこそ、白は決意するのだ。
「全力で勝って、救ってみせます!!」
ひらりと舞い上がる白の生前の皇女の麗しき衣装が彼女に一抹の羞恥を引き出す。けれど、そんなことは言っていられないのだ。
「時には切り捨てる覚悟も必要にゃ、猟兵さん!」
凄まじい『虞』と共に放たれる『山本五郎左衛門』の火球。
その膨れ上がった火球が白を飲み込まんと迫り、張り巡らせた道術による結界を砕いて、凄まじい熱量をもって白を打倒せんとする。
吹き荒れる炎。
砕けた結界。
けれど、それでも白は諦めなかった。
誰も殺さない。
誰も死なせない。
その二つは猟兵たちにとっての総意であった。
「貴方の覚悟。私たちの覚悟。その二つがあればきっと全部解決できます」
炎が肌を焼く。
かまわなかった。その瞳がユーベルコードにかがやく限り、猟兵に敗北の二文字はない。
「これがこの宝貝の真価です!! ――宝貝「太極符印」(パオペエタイキョクフイン)」
その手に輝くのは炎の津波。
火球が膨れ上がり己に迫るというのならば、その火球そのものを飲み込む、炎の津波でもって押し流すのだ。
制御の難しいユーベルコードである。
けれど、己の真の姿を顕した彼女にとって、それは容易でなくてもやらなければならないことである。
誰かを救うためには、己の何かを手放さなければならない。
人の腕は二本しか無い。長さも決まっている。
つかめるものだって決まっている。
ならばこそ、己の生命を賭して、投げ打つことで手に入れる者があるのならば。
「私は私の全てでもって貴方の覚悟を受け止めて、私達の覚悟で持って全部救うのです」
放たれた炎の津波が毛むくじゃらの『黒き暴獣』を飲み込み、炎の渦の中に、その姿を消させる。
彼女たちの決意を少しでも無駄にせぬようにと、白は宝貝の制御を完璧にこなすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
何事も暴力で解決するのが一番……かは分かりませんが。
今目の前にある解決法がそれのみならば、やらせて頂きましょう。
【氷炎の獣】を使用、氷の狼の群れと炎の狼の群れを呼び出します。
全力でやるのであれば、これが私の戦い方。力と力の正面衝突は避け、炎の狼の群れによる波状攻撃で詠唱を妨害し、長時間詠唱を続けさせないようにします。
火の玉は炎の狼には効きが悪い。狙うとしたらこちらでしょうね。召喚中は戦えない私を狙い火の玉を放ってきたら待機させておいた氷の狼たちを盾にすることで火の玉を防ぎます。
火の玉を防いだらその隙は逃しません。残りの炎の狼と氷の狼全てを投入し東方親分に攻撃をさせます。
炎の津波の中に消えた東方親分『山本五郎左衛門』は毛むくじゃらの体を焦げ付かせながら、帰還する。
その身に纏う圧倒的な『虞』は数多の猟兵たちの攻撃に寄って引き剥がされているが、それでもなお圧倒的な量である。
凄まじいまでの『虞』。
それらを開放することによって、『山本五郎左衛門』は『黒き暴獣』たる本能を全開にして猟兵たちとの『全力で戦う』ことをやめないのだ。
「げほっ、ごほっ! 流石は猟兵さん達にゃ! この『山本五郎左衛門』を此処まで完膚なきまでに追い詰めるとはにゃあ! けれど、何もかも解決するためには力が要るにゃ! そう、暴力! 暴力にゃ!」
圧倒的な力がなければ、他者に虐げられるだけだ。
弱者は何もできない。支配されるだけであろう。だからこそ、『山本五郎左衛門』たちのような優しき心がいるのだ。
そうやってこれまでも妖怪たちは助け合ってきた。
諍いだって仲裁してきた。共に生きるために。いつかは忘れ去られてしまうかもしれないのだとしても、それでも。
「何事も暴力で解決するのが一番……かはわかりませんが。今目の前にある解決法がそれのみならば、やらせて頂きましょう」
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)の周囲に冷気を振りまく氷の狼たちと熱気を振りまく炎の狼たちが群れをなして召喚される。
それは氷炎の獣(ヒョウエンノケモノ)。
己は戦うことはできない。
けれど、これこそが己の力。暴力そのものである。己と同じ強さを持つ獣達。彼等を使役し、『山本五郎左衛門』を打倒する。
それしか今は『大祓骸魂』へと至る道筋を見つけられないというのならば、セルマは躊躇うことなく、その瞳をユーベルコードに輝かせるのだ。
「終わりにしましょう」
「それはこっちのセリフにゃ! こんなことはサクっと終わらせて、しまわないと猟兵さんたちに迷惑がかかってしまうにゃ。だから、全力で――!」
殺らせていただくのにゃ! と『山本五郎左衛門』が詠唱を開始する。
生み出された火球は膨れ上がっていくが、それを點せぬと戦場を疾走るのは炎の狼たちである。
彼等は波状攻撃のように『黒き暴獣』へと迫り、詠唱をさせぬと『山本五郎左衛門』へと炎を浴びせる。
力と力の正面衝突は避け、波状攻撃で持って長時間の詠唱を続けさせないようにするのだ。
「鬱陶しいにゃ!」
「これが私の戦い方です。全力でやるのならば、こんな戦い方だってあうrのですよ」
膨れ上がる火球が弾けるようにして周囲に撒き散らされるも、炎の狼たちには効き目が薄いだろう。
だが、それでも火球の威力は十分である。
動けぬセルマにもまた火球の破片が飛び込んでくる。しかし、それを防いだのは氷の狼たちであった。
「あー! ずっこいにゃ!」
「いいえ、ずるくはありません。戦術というのです。そして……その隙は逃しません」
セルマの瞳が赤と青に輝く。
それに呼応するように炎と氷の狼たちが疾走る。
他の何も目に入らぬというように『山本五郎左衛門』を目掛けて走るのだ。その爪で、牙で。
あらゆる鋭きものでもって『黒き暴獣』の体を引き裂く。
まるで炎と氷が輪舞するように『山本五郎左衛門』を追い詰め、飲み込んでいく。
覚悟を前にして、覚悟を語ることはセルマにとって意味のないことであったけれど。
それでも、彼女たちの覚悟を前に敬意を評するのだ。
全力で打倒する。
けれど、誰一人として殺しはしない。死なせない。
その覚悟を持ってセルマは、妖怪たちの覚悟に報いるために己の力、そう、数の暴力を見せつけ続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
妖怪さんたちは覚悟ガンギマリで気持ちのいい奴らだねえ。
五郎左衛門親分も大したもんだ。その心も……戦闘能力もな。
まあ、死なせはしねーさ。
久しぶり……つーか、こっちに出てから初めてか?
まあ、本気も出そう。(真の姿、上位魔神形態へ)
そこからさらに『魔神降臨』を発動。
「黒き暴獣」と真っ向勝負へ。
怪獣大戦争を繰り広げましょう。
(防御力10倍なので防御力の関係ない関節系の技や内部への浸透系の技とかを多様)
ある程度消耗させてから、最後は太陽光と同質の属性を纏わせた拳で渾身の一撃を。
(属性攻撃×怪力×貫通攻撃)
大祓骸魂のことは任せとけ
氷と炎の狼たちによる竜巻のような猛攻の前に東方親分『山本五郎左衛門』は遂には膝をつく。
けれど、未だ身にまとう『虞』は強大そのものであった。
同時に彼女のユーベルコードが瞳に輝いた瞬間、これまで猟兵達が刻んできた傷跡が瞬時に消えていく。
消えたのではない。復元されたのだ。
「にゃあにゃあ! この程度で儂は倒せぬにゃ! 曲がりなりにも東方親分! 東方妖怪総大将としての気概があるにゃ!」
咆哮するのは、もはや理性の欠片もない凄まじき雄叫びそのものであった。
吹き荒れる『虞』は嵐のように戦場に満ちて、猟兵たちをして此処が『窮地』であると知らしめるほどであった。
「妖怪さんたちは覚悟ガンギマリで気持ちのいい奴らだねえ」
そんな風に場違いな感想を抱いたのは、アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)であった。
確かに二つの世界を救うためには妖怪たちの協力なしには為し得ないことだろう。
しかし、それは己の生命を守るためではない。
世界を守るために己たちの生命すらも投げ打つ覚悟がある。
「五郎左衛門親分も大したもんだ。その心も……戦闘能力もな」
びりびりと肌に感じる『黒き暴獣』の重圧。
「まあ、死なせはしねーさ」
ぞわりと体の中の何かが波立つような気配がしただろう。理性なき『黒き暴獣』であるからこそ、『山本五郎左衛門』は感じ取ったであろう。
アレクサンドルの身の内側から溢れる圧倒的な力の奔流。
その真の姿である上位魔神としての――。
「久しぶり……つーか、こっちに出てから初めてか? まあ、何はともあれ本気もだそう」
その姿は魔神としての姿であった。
魔神降臨(グレーターデーモン)。その圧倒的な暴力の気配に『黒き暴獣』であるからこそ『山本五郎左衛門』は警戒したのだ。
互いに圧倒的な力を持つからこそ、容易に手を出せぬ。
しかし、ユーベルコードに輝くアレクサンドルの瞳は違った。
真っ向勝負である。瞬く間に間合いを詰めて拳を振るう。受け止められた拳の衝撃が『山本五郎左衛門』の毛むくじゃらの体に吸い込まれていく。
「なるほどなあ! 力だけじゃあない。その毛むくじゃらは飾りじゃあないってことだな!」
闇雲に拳を叩きつけても、『山本五郎左衛門』には効かないだろう。
毛むくじゃらの身体がクッションのようになって衝撃を吸収し、その打撃を身体の真芯にまで届かせないのだ。
「ならよぉ!」
『黒き暴獣』の放つ乱打を受け止めながら、アレクサンドルは吠える。
心地よい力の解放という久方ぶりの本気。
それを真っ向からぶつけ合えるという喜びに震える。まさに怪獣大戦争とでも呼ぶべき凄まじき戦いが、『虞』を引き剥がすように拳で持って繰り出されていくのだ。
「にゃあにゃあ! 無駄無駄無駄にゃ!」
拳と拳がぶつかる。
けれど、アレクサンドルは『山本五郎左衛門』の関節や、打撃を浸透させる頸でもって、消耗させるのだ。
「その再生能力のツケってやつがあるな! 太陽の光……受けろよ!」
背に負った翼が羽ばたき、アレクサンドルの身体を宙へと舞わせる。
その突き上げた拳に宿るのは、太陽の輝きであった。
そう、圧倒的な再生能力と防御力を誇る『黒き暴獣』形態。唯一の弱点が太陽光である。
ならばこそ、アレクサンドルは己の拳に太陽光と同質の属性を纏わせ、空より一直線に槍を振り下ろすように拳を振るうのだ。
理性無き獣には理解できなかっただろう。
その拳が何を持って放たれたのかを。
誰一人死なせないという覚悟。
誰一人殺さないという決意。
戦いに喜びを見い出すことはすれど、そこにあったのは純粋なる戦いへの渇望。『大いなる邪神』を凌駕する『黒き暴獣』を持ってして初めて顕現した上位魔神としての力。
その渾身を持ってアレクサンドルは『山本五郎左衛門』の覚悟に報いる一撃を振り下ろし、大地を砕いて、その体を沈めさせるのだ。
「『大祓骸魂』のことは任せとけ」
後は自分たちが必ずやってのけると、アレクサンドルは振り下ろした拳の一撃の前に倒れ伏す『山本五郎左衛門』を見下ろすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
そのお覚悟、承りました
聞くところによると、貴女は妖怪の『魔王』とも呼ばれておられるとか
名の持つ意味は多少異なれど、魔王に抗うは騎士の務め
二つの世界の為、我が身の擲った妖怪の皆様の為
良き結末を齎すとお誓いいたします
騎士甲冑模した装甲と体裁外し黒いフレーム剥き出し
真の姿は闘争の権化と恥じるウォーマシンそのもの
装甲保持の出力を攻撃に回し怪力限界突破
武器受け盾受けで暴獣と立ち回り
剣の刃が通らぬならば…叩き潰すまで!
UC取り出し顎を跳ね上げ頭蓋を揺らし
そのまま胴体へ叩き付け
鉄球の推力移動でドリルの様にめり込ませ起爆
再生に乗じ体内へ鉄爪を潜り込ませ放電
その虞、祓わせて頂きます
ご容赦を!
獣を振り回し叩き付け
ぎりぎりと骨身が軋む音がした。
それは東方親分『山本五郎左衛門』の身体から響く音であり、彼女の身体が多くの猟兵達によって『虞』を剥ぎ取られ、消耗していることを示していた。
しかし『黒き暴獣』と化した彼女に躊躇いはない。
己の身体を、生命を、顧みることなど彼女はしない。
愛おしき二つの世界を救うために彼女ができることは、たった一つである。
『全力で戦い』倒されること。
それだけが『大祓骸魂』へと至る『雲の道』を紡ぐための『必須条件』なのだ。
「身体は動くにゃ。ならば、まだ儂は倒れていない。猟兵さん!」
咆哮する。
強大な『虞』を纏い、打ちのめされた体に鞭打って立ち上がる姿は、何度見たことだろうか。
未だ倒しきれぬ『山本五郎左衛門』の力は確かに『大いなる邪神』を凌駕するものであったことだろう。
その覚悟と決意があるからこそ、猟兵達が打倒しきれぬという要因になるのは皮肉でしか無かったけれど、それでもトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は『山本五郎左衛門』に敬意を表するのだ。
「そのお覚悟、承りました」
効くところに寄ると『山本五郎左衛門』は妖怪の『魔王』とも呼ばれる存在である。
名の持つ意味は多少ことなれど、魔王に抗うのは騎士の務めである。ならばこそ、トリテレイアは騎士としての己の胸に宿る騎士道精神を燃やして立ち向かうのだ。
「にゃあにゃあ、儂こそは『東方妖怪総大将』! 『山本五郎左衛門』! 猟兵さん、手加減無用、問答無用にゃ!」
迸る『黒き暴獣』としての力の奔流が、トリテレイアのセンサーを怖気を走らせるような感覚を教える。
目の前の『山本五郎左衛門』は確かに魔王そのものであった。
毛むくじゃらの黒き姿。
ならばこそ、己もまた真なる姿をさらけ出す。騎士甲冑を模した装甲と体裁を廃した黒きフレームをむき出しにした姿。
闘争を求め、闘争に生き、闘争に死すウォーマシンとしてのそのもの。
それをトリテレイアは恥じているけれど、相対する『山本五郎左衛門』、『東方妖怪総大将』を前にして、全力を出さぬことこそ恥である。
「二つの世界の為、我が身を擲った妖怪の皆様の為、良き結末を齎すとお誓い致します」
瞬間、騎士と『黒き暴獣』が激突する。
凄まじい力の奔流がほとばしり、衝撃波となって砕けた大地を浮かび上がらせる。
「装甲保持の出力を回してもなお、これほどとは……『東方妖怪総大将』……! その名の通り!」
咆哮がトリテレイアのフレームをきしませる。
それほどまでの咆哮であった。叩きつけられる拳を受け止め、剣と盾で応戦する。毛むくじゃらの体は剣が通らない。
どれだけ出力を上げても、刃が通っていかないのだ。これが妖怪の魔王とも呼ばれた者の力。
「剣の刃が通らぬならば……」
ならば如何すると、『山本五郎左衛門』の『黒き暴獣』としての本能が笑う。
立ち回る騎士と獣。
その力の差は歴然である。けれど、トリテレイアは退くことはない。
不退転の決意と覚悟があるからこその装甲を廃した真なる姿を晒したのだ。
剣を投げ放ち、拘束鉄爪内蔵式対装甲破砕鉄球(ワイヤード・ジェット・モーニングスター)が振るわれる。
その一撃は『山本五郎左衛門』の顎をかちあげ、頭蓋を揺らす。
「にゃ――!?」
ぐらりと視界が歪む。
なまじ理性がないからこそ、本能で理解したのだろう。次なる一撃は頭上より振り下ろされると。
だからこそ、とっさに腕で頭部をかばったが、そこには騎士としての駆け引きが在った。武装は蛮族じみていたとしても、それでもなおトリテレイアは鉄球をたぐり、その一撃をがら空きの胴へと放つのだ。
「重火器よりは騎士として格好がつくでしょうか……叩き潰すまで!」
鉄球から噴出する推力によって『山本五郎左衛門』の巨躯が吹き飛ばされる。さらに体内へと鉤爪がフックのように引っかかり、放電する。
「にゃにゃにゃ――!」
その悲鳴は望んだものではない。
けれど、トリテレイアはやらねばならない。
「その『虞』、祓わせて頂きます。ご容赦を!」
鉄球に釘付けにされた『山本五郎左衛門』の体をワイヤー毎振り回し、トリテレイアは彼女を地面に叩きつける。
その一撃は凄まじい威力を伴って『虞』を削ぎ落とし、血反吐を撒き散らしながら、『黒き暴獣』を大地に失墜させるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
ここは私の出番ですの
任せて欲しいですの
強敵なのは間違いないけど
見た目にも惹かれてない?
あらまあ、気のせいですの
邪神を凌駕するって誇張じゃなさそうだぞ
心配せずとも私も埒外ですの
詠唱の応じて威力の上昇する火球
凄まじい威力ですけれどやりようはありますの
神域顕現とはいかないまでも空気を固定して静寂をもたらしますの
詠唱できなければ神気で停めれる程度ですの
心配せずとも唇の動きで仰る事はわかりますの
とはいえ全力で戦う必要がありますから
使い魔を呼び出しますの
超硬装甲の外殻を纏った使い魔なら
親分様と肉弾戦ができると思いますの
お相手仕るのですよー
装甲の強度と重量で親分さんの攻撃に耐えつつ
爪と尻尾で攻撃するのですよ
血反吐を撒き散らしながら東方親分『山本五郎左衛門』は大地へと叩きつけられた。
その『黒き暴獣』としての力は言うまでもなく強大なものであった。
『虞』纏う体は、『大いなる邪神』を凌駕するものであり、単純な力という領分においては、『山本五郎左衛門』の力は猟兵たちをして『窮地』であると認識させるのには十分すぎるものであった。
「にゃっ! 猟兵さんたちは、流石にゃ! これならば確かに希望を託すに値するにゃ! だからこそ、儂はたたかうにゃ!」
練り上げられていく火球。
それは詠唱時間に比例して威力を上げる彼女のユーベルコードである。
これまでも猟兵たちを散々に苦しめてきた力であるが、しかし世界に静寂が満ちる。
「にゃ……!?」
そう、これは神気の顕現。
固定と停滞を齎す邪神の権能である。
「ここは私の出番ですの。任せて欲しいですの」
その言葉は、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の身の内に存在する邪神の言葉であった。
彼女の権能は固定と停滞。ならば詠唱時間に比例して威力が上がる『山本五郎左衛門』の詠唱を停滞させることこそが、彼女の本領である。
「今日的なのは間違いないけど、見た目にも惹かれてない?」
晶が訝しむのも当然であったかも知れない。
邪神の価値基準は未だ図り知れぬものであったけれど、大体の蛍光と予測はつくものである。
邪神がやる気になっているのは『山本五郎左衛門』の見た目と、そしてその覚悟である。
「あらまあ、気のせいですの」
笑ってごまかす邪神に晶は気を抜くなという。
彼女の力は『大いなる邪神』を凌駕するほどである。それが誇張ではないことを知らしめるように、停滞の神気を打ち破って『山本五郎左衛門』は詠唱を続けるのだ。
「心配せずとも私も埒外ですの」
「にゃ! 邪神の気配……けれど、おかしな雰囲気にゃ! これが猟兵さんの体に融合しているのならば!」
膨れ上がる火球が放たれる。
十分な詠唱時間が得られずとも、神気を打ち破って火球を放つ事はできるのだ。
これは『全力の戦い』。
ならばこそ、手は抜けないし、神気によって詠唱を中断されても攻撃の手は緩められないのだ。
「心配せずとも唇の動きでおっしゃることはわかりますの」
けれど、全力で戦うことに変わりはない。使い魔を召喚し、式神白金竜複製模造体(ファミリア・プラチナコピー・レプリカ)となった彼女たちを超硬装甲に包み込み、火球を防ぐのだ。
「ご褒美くれるなら頑張るのですよー!!」
無数の超硬装甲を纏った使い魔達が空を飛ぶ。
彼女たちの装甲ならば、『山本五郎左衛門』との肉弾戦であっても遜色ないだろう。
「お相手つかまつるのですよー」
「これは、これは! 数が多いにゃ! けれど、これで止められると思わぬことにゃー!」
放たれる拳が超硬装甲をひしゃげ、さらに砕いていく。
けれど、圧倒的な数を前にしては、あまりにも超硬装甲は厄介な代物であったのだ。
「ええ、その通り。確かにあなたの力は『邪神』をも上回るのでしょう。けれど、それは単純な力においてのみ」
ならばこそ、遅滞戦術である。
消耗させ『虞』を剥ぎ取っていく。猟兵の戦いはいつだって繋ぐ戦いである。一人が紡ぎ、一人が繋ぐ。
そうやって猟兵達は自分たちよりも強大な存在を打倒してきたのだ。
「だからこそ、ここで貴方を止める。貴方の覚悟を見たからこそ、それを美しいのだと言えるのです」
超硬装甲に身を包んだ使い魔たちが乱舞し、その爪と尻尾でもって『山本五郎左衛門』を追い詰めていく。
必ずや救う。
その意志でもって邪神の内側を垣間見た晶は何を思っただろうか。
己と同じ意志か、それとも理解不能な異質か。
どちらにせよ、『山本五郎左衛門』を無数の使い魔達が消耗させ、『虞』を次々と剥ぎ取っていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
真の姿:モノクロになって目が赤くなる。さらに何か行動する度に周囲にノイズが走る。
さて、全力で掛かってくるから全力で打ち倒す……うーんシンプル…
…つまり大祓骸魂を倒せると思わせるだけの力を示せばいいわけだ…
…そういう訳で全力の策で行くからね……
…攻撃を術式組紐【アリアドネ】による結界でいなしながら【投じられしは空裂く巨岩】を発動…
…周囲の瓦礫や柱を飛ばして攻撃…に紛れさせて胡椒と唐辛子等の刺激物の粉を混ぜた煙玉を顔面にシュート…咳き込ませることで詠唱の妨害を行うよ…
…そして咳き込んでいるうちに接近…山本五郎左衛門に触れて何度も投げ飛ばして昏倒を狙うとしよう…
シンプルだと最初に思ったのは、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)であった。
東方親分『山本五郎左衛門』――東方妖怪総大将。
彼女の力は単純明快なものであった。『黒き暴獣』たる姿を曝け出し、『虞』を纏った姿を見るだけでわかる。
あの力は単純なものであれ『大いなる邪神』をも凌駕するものである。
ならばこそ、『全力で戦う』ことが『雲の道』を紡ぐ『必須条件』は猟兵にとって最大の窮地たらしめるのだ。
彼女の足が一歩を踏み出す。
今の彼女はモノクロの姿であった。瞳だけが爛々と赤く輝き、その軌跡は周囲にノイズとなって走らせる。
何をしても、彼女の周囲にはまるで世界から隔絶されたようにノイズが走り、彼女の姿を覆うようであった。
「さて、全力でかかってくるから全力で打ち倒す……うーんシンプル……」
互いに全力。
『山本五郎左衛門』の力は強大そのもの。
対峙するメンカルでさえ『真の姿』でもって相対せねば打倒できぬと判断させる程であった。
「シンプルにゃ! 猟兵さんたちの力は知っているにゃ! これまでどれだけの世界を救ってきたのかも、カクリヨファンタズムさえも幾度も救って下すったにゃ!」
『山本五郎左衛門』の掌に火球が生まれる。
その身は数多の猟兵たちの攻撃を受けて満身創痍である。
傷跡は生々しく、どれもが浅いものではない。
けれども彼女は立っている。血反吐を撒き散らし、傷跡から血を垂れ流し続けてもなお、立っている。
覚悟がある。
それはわかっている。
「……なら力を示すよ。『大祓骸魂』を倒せると思わせるだけの力を……そういう訳で全力の策で行くからね」
放たれた火球を術式組紐『アリアドネ』によって張り巡らされたノイズ混じりの結界でいなし、メンカルは己の手に在るノイズばかりが走る何かを握りしめた。
「にゃ! 何か企んでいるようだけれど! そんな小手先で東方妖怪総大将たる儂が打倒できるとでも!」
迸る火球が煌めき『アリアドネ』の結界を砕いて、炎を噴出させる。
しかし、それでもメンカルの瞳にはユーベルコードがノイズを貫いて輝いていた
「見えざる腕よ、投げろ、放て。汝は剛力、汝は投擲。魔女が望むは大山投じる巨神の手」
その詠唱は彼女の腕を、巨神の腕へと変えるユーベルコードとなって輝くのだ。
周囲に在りし瓦礫を投げ放ち、『山本五郎左衛門』へと牽制する。
「ただものを投げ飛ばすユーベルコードにゃど!」
火球が次々と瓦礫を溶かし尽くしていく。どうにもならないと思わせるには十分すぎるほどであったが、メンカルの瞳にあったのは、未だ実らぬ術策、自身の策への信頼であった。
「うん、わかっているよ。そう、ただものを投げ飛ばすユーベルコードなら、ね」
『山本五郎左衛門』が相対するのは、メンカル・プルモーサである。
赤く輝く瞳がモノクロの彼女の体の中でひときわ鮮烈に輝いた瞬間、『山本五郎左衛門』は急に咳き込んだ。
「にゃげふっ!? にゃ、ごほっ、げっほ、にゃ、なんだこ、げえっほっ!?」
止まらない。
鼻が、喉が、痺れるように痛い。
詠唱もできず、咳き込んでいる『山本五郎左衛門』へとメンカルは赤い残光を伴って距離を詰めるのだ。
「うん、胡椒と唐辛子……を粉にして混ぜた煙幕を紛れさせていたんだよ。瓦礫はブラフってやつさ」
そう、彼女はただ無闇矢鱈に瓦礫を投げていたのではないのだ。
攻撃の合間に本命の刺激物たっぷりの煙玉を彼女の顔面に届かせるためだけに、彼女はユーベルコードを発動させていたのだ。
「時間は十分……なら、ここで一気に『虞』を削り切る……」
メンカルの腕が『山本五郎左衛門』の尻尾を握りしめる。ぎにゃっ! と『山本五郎左衛門』が咳き込みながら悲鳴を上げる。
敏感なのかな。悪い事したかもとメンカルは一瞬考えたが、それは次の瞬間に消し飛んだ。
尻尾を掴んだまま、メンカルは『山本五郎左衛門』は巨神の腕そのものとなった腕力で持って地面へと叩きつける。
ユーベルコードの効力が切れるまで、何度も何度も地面へと投げ放ち、その『虞』を削ぎ落としていく。
彼女たちの覚悟は十二分にもう伝わっている。
だからこそ、メンカルは容赦をしない。こんなにもやりづらい相手と戦うのは、もう十分だとさえ思ったかも知れない。
けれど、それでもやらなければならないのだ。
ノイズ走る戦場にあって、メンカルの瞳が放つ赤き残光だけが、鮮烈に輝き、『山本五郎左衛門』を地面に倒れ伏すまで叩きつけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジャム・ジアム
親分さん。貴方たちって本当に格好良い
いつも私、化け狸たちに助けられているの
素敵な姿…ジアムも変わるわ
白炎の羽開く
虞の影響か青く光る蔦纏う真の姿に
『謎のレモン』の蔦を山と伸ばし即捕縛を試みる
暴れるの…これ位じゃダメね
間髪入れず『しっぽの針』で瞼を狙い口を開かせる、『煌めく溶液』を注ぐの
お酒みたいでしょ、痺れ薬よ?簡単に唱えさせない
尻尾や力強い肢体からも狙われる筈『護り現』で広く広く念を張るの
きっと貴女の動きも伝わってくる
『疾影』!『朱雷枝』を受け取り追撃を
まだでしょう、親分だもの
念を強める、貴女の炎を捉えてみせる
綺麗な色、獣の形!全ての念を集めるわ『落差の坩堝』
ぜんぶ頂戴。ぜんぶ貴女にあげる!!
「まだまだぁ! にゃ! 儂らはまだ此処に在るにゃ! 猟兵さん! 躊躇うことなど必要無いのにゃ! 世界のために! そのために儂らは戦う。それだけでいいのにゃ、理由なんて――!」
満身創痍になりながら東方親分『山本五郎左衛門』は叫ぶ。
その身に宿った『虞』は凄まじいものであったが、数多の猟兵達が削り、打倒し、何度も何度ももう立ち上がってくれるなと願っただろう。
けれど、立ち上がる。
『全力で戦う』ことが『大祓骸魂』へと至るための『雲の道』を紡ぐための『必須条件』であるからこそ、『山本五郎左衛門』は立ち上がるのだ。
まだ立てると。
まだ力が震えると。
それこそが全力であり、東方親分であり、東方妖怪総大将としての己であると咆哮するのだ。
「親分さん。貴方たちって本当に格好良い。いつも私、化け狸たちに助けられているの」
その姿を美しいと思った。
何よりも美しい。誰かのために己を投げ打つ姿はいつだって美しいとジャム・ジアム(はりの子・f26053)は思った。
だからこそ、窮地として感じる『虞』を変わる勇気に変えるのだ。
「……なんて素敵な姿。ジアムも変わるわ」
白炎の羽が開く。
その輝きは『虞』を受けてなお、青く光る蔦纏う姿であったことだろう。『謎のレモン』は彼女の意志を受けて蔦が宙を走り、『山本五郎左衛門』を捕らえんとする。
けれど、満身創痍であっても『山本五郎左衛門』はもがく。
蔦が引きちぎられ、詠唱が始まる。火球が生み出され、練り上げられていく。これだけの多くの猟兵達が削ってもなお、そのユーベルコードの輝きは色褪せることはなかった。
「必ず猟兵さんたちなら儂を打倒してくれる。だからこそ、儂はなんの心配もしないで力を紡ぐことができるにゃ!」
自分の生命なんてとっくに無いものと同じである。
何故ならカクリヨファンタズムに渡った時にもう、自分たちは忘れられてしまう存在であったから。
だから、惜しくはないのだ。
しかし、その口を塞ぐように放たれた『しっぽの針』が彼女の口を開かせる。
「信じてくれるからこそ、ジアムたちは戦うの。誰一人死なせない。誰一人殺さない。ジアムたちが戦う理由はそれだけ!」
煌めく溶液が『山本五郎左衛門』へと注がれ、その身を痺れさせるのだ。
「にゃっ、くちがしびれ……――」
「お酒みたいでしょ、痺れ薬よ? 簡単に詠唱なんてさせない」
ならばと、振るわれる腕や尻尾がジアムの体を打つ。
単純な力であれば邪神すらも凌駕する一撃が、『真の姿』を曝け出したジアムを追い詰める。
オーラの力ですらひび割れ、砕かれていく。
『山本五郎左衛門』の覚悟がジアムの体を打つのだ。あれだけの猟兵たちの攻撃を受け止めてなお、この力。
圧倒的な覚悟だ。
だからこそ、それに自分は応えなければならないとジアムは天に巨大な白銀の大鎌を投げ放つ。
もうオーラの力だって持たない。
だからこそ、彼女は託すのだ。己の縁の先にある存在。禍々しい巨大な翼を広げ、顕現した朱の巨兵へと。
「――疾影! まだでしょう、親分だもの! 受け取ってッ!」
朱の刃を持つ大鎌を受け取るのは、サイキックの炎輝く『疾影』であった。巨人とも取れる朱のサイキックキャバリアが大鎌の一撃を『山本五郎左衛門』へと振るう。
「真剣――!」
だが、我らが東方妖怪総大将は、その瞳に『暴獣』としてのきらめきをほとばしらせながら、大鎌の一撃を受け止める。
「白刃取りにゃ――!」
凄まじい衝撃が突風のように周囲に吹き荒れる。
巨兵の放った斬撃の一撃すら真剣白刃取りで受け止めた『山本五郎左衛門』の踏みしめる大地がひび割れる。
それは燃えるような赤き火球。
膨れ上がるユーベルコードが解き放たれる。それをジアムは見ていた。明確な意志を。覚悟を持った視線を『山本五郎左衛門』へと向ける。
「綺麗な色、獣の形! 素敵だわ! とっても! だから――」
ジアムの瞳がユーベルコードに輝く。
『山本五郎左衛門』の渾身の火球の熱量は凄まじいものであった。
美しいと思った。
だから、ジアムは手をのばす。
「ぜんぶ頂戴。ぜんぶ――」
落差の坩堝(アジタート)。周囲に膨れた火球の温度差を吸収しつくしたジアムのユーベルコードの輝きが、あらゆる全ての念を集めて力に転化する。
念波動が迸る。
その光景は極光の輝きに埋め尽くされた。『黒き暴獣』も白炎も、朱の巨兵も全てが極光の中に飲み込まれていく。
「――貴女にあげる!!」
自分ができる最大の一撃を。ジアムの放ったユーベルコードの一撃は、此処に『東方妖怪総大将』の纏う強大な『虞』さえも吹き飛ばし、紡いだ猟兵たちの戦いに終止符を打ち抜き、楔として確かに『雲の道』を刻むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵