大祓百鬼夜行⑥〜KAKURIYO桜祭り
●カクリヨファンタズム幻朧桜特設スタジアム
さぁ始まりました、幻朧桜特設スタジアムで開催される総合格闘技の祭典「KAKURIYO桜祭り」! 会場の熱気は頂点に達しております!
さぁ選手入場……あぁーっとこれは大変だ! 総合格闘技なのに現れたのは全員蝦蟇河童!! 相撲しかやる気がない!! このままでは大相撲幻朧桜場所と化してしまうぞーっ!? さぁまずはエキシビジョンマッチ、蝦蟇河童同士の対決ですが……ゴングが鳴りました! お互いにがっぷり四つに組んで動きません! おっとここで赤コーナー側、下手投げ! レフェリーに「決まった」アピールをしてますが残念ながらこれは相撲ではなく総合格闘技、3カウントを取らない限りノックアウトとは認められません! レフェリー無情にも首を振った! 再び仕切り直しの構え……さぁ今度は青コーナーが押し出しを試みた! しかしここは土俵ではない! リングです! ロープが邪魔で押し出せない!! おかしいなぁ、と首を傾げてる場合じゃないぞ両選手!! これは試合時間いっぱいかかりそうだぁーっ!!
●古代の相撲は蹴り技も極め技もある総合格闘技だったらしいよ
「バーリトゥードとはポルトガル語で『何でもあり』という意味らしいですな」
グリモアベースでプロレス雑誌を読んでいたジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/開発コード[Michael]・f29697)がそんな事を集まっていた猟兵達に言う。
「元々はブラジルで、サーカスの余興として楽しまれていたようです。競技として必要な最小限のルールで戦う格闘技なんですが、これが現在の総合格闘技のルーツと言われていますね」
その総合格闘技の大会がカクリヨファンタズムの幻朧桜の丘の特設リングで開かれている、とジェイミィは言う。
「良いんじゃないですかね、幻朧桜傷つけるとマズいですし。リングの上で戦う分には問題ないんじゃないでしょうか。ただ、そこに出場している妖怪が漏れなく骸魂を取り込んでるんですが、その結果皆『蝦蟇河童』になっちゃいまして、全員相撲しかやる気が無いんですよ。お陰で総合格闘技を期待していた観客はどっちらけムードでして……興行的にも競技的にもちょっと不健全なので、皆さんちょっと出場してきて頂けますか」
この総合格闘技大会ではルールがいくつかあるが、猟兵にとって重要なものをジェイミィはかいつまんで説明する。
「まず、さっきもちらっと言ったんですが幻朧桜を傷つけるのは禁止です。一応リングの上で戦うので問題はないんですが、事故で相手をリング外にふっとばしてしまった時に幻朧桜に当てちゃうとちょっとまずいかもしれませんね。まぁ、相手を場外へ飛ばしてしまったり、場外に逃げてしまうと反則になってしまうので、気をつけていれば大丈夫です。それと、当然ながら武器の使用は禁止です。徒手空拳で戦ってほしいとのことで。まぁ銃とか撃って流れ弾が幻朧桜に当たったらマズいですしね」
その他のルールは、基本的に総合格闘技のルールに準ずるという。
「レスリング、ボクシング、柔道、空手、合気道、システマ、ムエタイ……皆さん様々な格闘技を嗜まれていると思います。最近では拳法の伝承者をされている猟兵さんも増えましたし、ここらでひとつ腕試しなど如何でしょうか」
ジェイミィはそう言うと、何故か手元にあったゴングを鳴らした。それを合図にグリモアが起動し、ポータルが開くのであった。
バートレット
どうも、バートレットです。
今回はフラグメントを見て思いついたシナリオとなります。総合格闘技大会に出場して、相撲しかやる気がない妖怪たちに格闘技の可能性を見せてあげましょう。
今回のプレイングボーナスは以下のとおりです。
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プレイングボーナス……幻朧桜を傷つけないように戦う。
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このシナリオに関しては、総合格闘技に則って、リングの上で戦っていればOKです。ただし、「武器を使用する」「総合格闘技における反則を犯す」とマイナスボーナスが発生しますのでご注意ください。また、集団敵フラグメントですが、基本的に1対1の戦いとなります。試合の決着はKO、ギブアップ、TKO(セコンドからのタオル投げ、レフェリーストップ、ドクターストップ)、レフェリーの判定となるので、プレイングの際に参考にすると良いでしょう。
募集開始は5/21の8:31からです。それ以前のプレイングは不採用となりますのでご注意ください。募集状況はタグにてお知らせしますので、プレイング投稿前にご確認をお願いします。
それでは、皆さんのアツいプレイングをお待ちしております!
第1章 集団戦
『蝦蟇河童』
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POW : 跳躍浴びせ倒し
単純で重い【跳躍からのボディプレス】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 蝦蟇突っ張り
【張り手】が命中した対象に対し、高威力高命中の【舌の攻撃を交えた連続の張り手】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 蝦蟇ベロ攻撃
【口】から【鞭のような長い舌による巻き付けや投げ】を放ち、【痛みや拘束】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:柴一子
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アテナ・カナメ
【心情】なるほどね…まあ格闘技はあまり心得はないけど肉弾戦ならお手の物よ!正義のヒロインアテナマスク!リングに参上よ!相手はあの蛙のお相撲さんね…どんな敵でもぶっとばすわ!
【作戦】相手を場外に出さないように気をつけて戦うわ!基本攻撃は【見切り】や【残像】で回避よ!相手が浴びせ倒しをしてきた所を【ジャンプ】して【零距離】のバーニングパンチを【2回攻撃】してあげるわ!
他にもヒートスタンプなど近距離攻撃を使っていくわね!「負けないわよ蛙のお相撲さん達!」(絡み・アドリブOK)
●第1試合 アテナマスク
「おぉーっとここで新たな挑戦者が名乗りを上げたァーッ!」
実況の妖怪、山彦がマイクを片手にテンションの振り切れた声を上げる。リングに上ったのはヒーローマスク、アテナ・カナメ(アテナマスク・f14759)。
「正義のヒロインアテナマスク! リングに参上よ!」
ファイアパターンの模様が入ったマントを翻し、アテナはマイクパフォーマンスを披露。相撲のみを見せられて退屈だった観客のボルテージも一気に上がっていく。
「さぁKAKURIYO桜祭り、ここからが本番だ! 赤コーナー、正義のヒロイン・アテナマスク! 青コーナー、地を揺るがす関取・蝦蟇河童! 今試合のゴングが鳴りました!」
ゴングが鳴る。まずは猛然と蝦蟇河童が突進しながらアテナに組み付こうとするが、アテナは身を翻してこれを回避。とにかく相手の土俵に立つこと無く、自分のペースに持っていくためにも、初撃に付き合うわけには行かない。
ならば、と蝦蟇河童は持ち前の跳躍力を発揮して飛び上がる。
「おぉーっとここで蝦蟇河童、跳躍からの空中殺法・浴びせ倒しだ! これは厳しいかアテナマスク!」
しかしアテナはこれを待っていた。一旦引くとリングのロープを利用してこちらも跳躍。
「空中で交錯ゥー!! なんということでしょう! 互いに地を蹴り空中戦! なんというドッグファイト……アテナマスクのバーニングパンチがここで炸裂ッ!! 燃える拳の2連撃が蝦蟇河童を捉えたァー!!」
高度を高くとったアテナマスクが蝦蟇河童の上を取り、打ち下ろすように必殺のバーニングパンチ2連撃。たちまち蝦蟇河童は垂直に落下し地面に叩きつけられてしまう。
「負けないわよ河童のお相撲さん! ヒィィィトスタァァァァンプ!!」
「ダメ押しのヒートスタンプ炸裂ゥー! 炎の両足蹴りによるディープインパクトだ! これは決まったかァー!?」
リングよ抉れろとばかりに追撃のヒートスタンプ。立ち上がろうとした蝦蟇河童もこの一撃には耐えきれず、再びどうと倒れる。レフェリーが駆け寄ると、カウントを取る。しかし蝦蟇河童は動かない。3カウント、ノックアウト成立だ。
「決まったァー!! 勝者、アテナマスク!! 炎のスーパーヒロイン、リングに舞い降りた戦女神が鮮烈な勝利を飾ったァー!!」
観客の大歓声に、手を振って応えるアテナ。目の醒めるような戦いぶりは、冷えかけていた会場の空気を再び熱くするには十分だったと言えよう。
大成功
🔵🔵🔵
水鏡・怜悧
詠唱:改変・省略可
人格:アノン
カエルか……美味そうだな
妖怪に戻らないなら喰うんだけどな……骸玉だけ後で喰うか。
液体金属で狼耳と尻尾を象る。手足も液体金属で覆って……あ?凶器?
……仕方ねェから耳と尻尾だけにしておくぜ。
向き合った瞬間に殺気を放つ。マヒしても殺し合い……じゃなかった、試合は始まるぜ。張り手は野生の勘で回避。舌を掴んで怪力で床に叩きつける。
確か、何でもアリとかって言ってやがったな。1対1じゃつまんねェよ、残り全員かかってこい。
挑発してかかってきたやつ全員まとめて相手してやる。攻撃を喰らっても激痛耐性で耐えるぜ。出てきた骸玉は全部まとめて喰らってやる。カエルの味しねェかなァ
●第2試合 アノン
「えー? 納得行かねぇ!!」
試合前、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の人格のひとり・アノンは不満の声を上げていた。
「大会実行委員会としても協議を重ねたんですがね……やはり、手足の液体金属はメリケンサック等と同様の凶器の使用と判断せざるを得ません」
「まぁ……検討してくれただけでもありがたいんだけどよ……」
アノンは普段、肉弾戦を挑む際には液体金属状のUDCで手足を覆うのが基本スタイルなのだが、これは凶器になるのか、肉体の延長なのかということが問題視されるだろうと、念の為大会実行委員会の判断を仰いでいたのだ。結局認められることはなく、アノンは未練がましい声を上げていると、頭の中で別人格のロキが「ほら見なさい」、とアノンに説教を始めた。
(大会実行委員会に事前に諮って正解でしたね、そのまま試合に出たら反則負けですよ)
「わーったよ! そもそも1対複数のマッチを組んでもらった事自体大会側も無茶を通したって話だろ!? だったら文句はねぇよむしろありがてぇくらいだ! ……普通の妖怪に戻らねぇならカエル食うんだけどなぁ」
(あぁ、一応河童ですよ。カエルとは似ていますが微妙に別物かと)
「こまけぇんだよロキ!!」
……とまぁ、試合前にゴタゴタはあったものの、アノンはリングに立つ。
「さぁ、続いての挑戦者は……赤コーナー、全てを喰らう猛獣、アノンの登場だァー!!」
液体金属型UDCで耳と尻尾を装着したアノンはリング上で不敵に笑う。対する蝦蟇河童、その立ち姿に殺気を感じ思わず身震い。
「ビビってんのかよォ、来いよカエル野郎!」
アノンの挑発に、蝦蟇河童は闘志を奮い立たせると試合開始のゴングと共に連続の張り手を仕掛けていく。しかしこれを次々とスウェーしながら躱していくアノン。
「さぁまずは蝦蟇河童、怒涛の張り手を仕掛けていきますがアノンはこれを次々と回避! リングというジャングルでは野性の勘が冴え渡っている!!」
ある程度躱したところでおもむろに反撃に出るアノン。蝦蟇河童の長い舌を掴むとそのまま力任せに勢いよく地面に引き倒してしまう。その荒々しい攻撃に観客もヒートアップ。
「これは凄まじい攻撃だ! ノックアウトォー!!」
ゴングが鳴り響く中、アノンはマイクを取ってぐるりと会場を見回しながら、一言告げた。
「おいおいこいつはどうしたことだァ? 何でもありって聞いたから来てみたが一瞬で決着がついちまったぜ? ……1対1じゃオレには勝てる相手がいねぇって事だなァ?」
「これは痛烈! 蝦蟇河童陣営、黙っていられません!」
アノンのマイクパフォーマンスによる挑発は、蝦蟇河童陣営を刺激する。たちまち4人の蝦蟇河童がリング上に上がり、さらなる試合を要求する。
「あぁーっとここで4対1による試合続行を要求! アノン、これは流石に厳しいか?」
実はここまでの流れはプロレスなどで用いられる「ブック」と呼ばれるもので、興行を盛り上げるための演出である。しかしここから先は台本なしのガチンコ勝負。本番の勝負はここからとなる。
「さぁまさかまさかの第2ラウンド、4対1という苦境に立たされながら、猛獣アノンはどう戦うのか!」
四方八方から繰り出される張り手。今度は流石に避けきれず、アノンの身体をしたたかに揺らす。だが、アノンは何発張り手を喰らおうが涼しい顔だ。
「あぁーっとアノン、ダメージをものともしない身のこなし! 耐久力も抜群です! そのままお返しとばかりに回し蹴りが炸裂!! これはどうだァー!?」
隙を見て回し蹴りで四方を囲んだ蝦蟇河童をまとめて振り払う。とは言えこの攻撃は浅かったか、まだ蝦蟇河童たちに目立ったダメージは見られない。だがこの攻撃は起点に過ぎない。そのまま一人の蝦蟇河童に接近すると、足払いを仕掛けて昏倒させ、そのまま跳躍して顔面に膝蹴りを食らわせる。プロレスではシャイニングウィザードと呼ばれる技で、これを食らった蝦蟇河童はノックアウト。
そのままアノンは次の獲物を定めると、目にも留まらぬ速さで接近して舌を掴むと一本背負いの要領で投げ飛ばす。そこには3人目の蝦蟇河童がおり、折り重なるようにしてダブルノックアウト。
最後の一人は反撃の蹴手繰りを仕掛けるも、アノンはこれを回避すると一旦ロープ際に向かう。ロープの反発を活かして加速し急接近しながらボディーブローを叩き込む。かくして、4人の蝦蟇河童を秒殺ノックアウトしてしまったアノン。その圧倒的な強さに、観客は大興奮だ。
「秒殺ーッ! 目にも留まらぬ秒殺ぶり! 強すぎるぞアノン、強すぎるぞこの猛獣! 彼に勝てる者は果たして現れるのかァー!?」
実況のボルテージも高まる中、アノンは祝杯代わりに蝦蟇河童たちから飛び出した骸魂を食べてみるのだが。
「……カエルの味は、確かにするんだけど……なんだこれ、後味は亀に近いな」
(言ったじゃないですか、あくまで河童だって)
独特の味わいに首を傾げるアノンに、脳内でロキはため息をつくのであった。
大成功
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イリス・ノースウィンド
(WIZ)
桜の下で格闘技、変わった趣向なんですね。見る分には楽しそうです。私で盛り上げ役になるかは分かりませんが、1戦お相手いたしましょう。
こちらはの戦法は受け流しからのカウンターと、フェイントを主体とした格闘術。腰回りを掴まれないよう注意しつつ、張り手を受け流します。
舌は左腕を盾にして巻き付かせ、腕を引きながら足払いで体勢を崩させます。そのまま蹴り上げてひっくり返し、みぞおちあたりに右こぶしを叩き込みましょう。上手くKOしてくれれば良いのですが。
「お怪我はありませんか?」
決着が付いたら助け起こし、健闘をたたえて握手をしましょう。
●第3試合 イリス
「桜の下で格闘技、変わった趣向なんですね。見る分には楽しそうです」
ほほう、と目を細める優男、イリス・ノースウィンド(とある部隊の元副隊長・f21619)。一見するとこの場には不釣り合いともとれるし、実際彼が普段扱うのは細いワイヤーを活かしたサイキックの技だ。
ところが、彼は格闘術の心得もあるという。一体どのような技を使うのだろうか、と観客もリングに上ったイリスを固唾を呑んで見守っていた。
「さぁ、続いて現れたのは先程とは打って変わっておよそこの場には不釣り合いな印象すら与える、サイキックファイター・イリス! しかし今回サイキックすら封印するとのことですが、その細身に隠された実力や如何に!?」
対戦相手として現れたのはやや年配の蝦蟇河童だ。
「ほぉ……お主、なかなかの実力を持っていると見た」
「いやいや、そんな事は」
「謙遜せんでええ。儂にはちゃーんと見えておるでな。そのしっかりとした体幹、隙を消した立ち姿……お主、体術の心得もしっかりとあるようじゃの」
故に、と蝦蟇河童は構える。
「儂は確かに骸魂を飲み込んでおる。しかし骸魂を飲み込む以前より相撲をはじめとした武の心得のある蝦蟇河童として生きてきた。お主の実力、測らせてもらうとしようかの」
その言葉を聞いて、イリスは「臨むところです」、と頷いた。
「さぁ両者構えた! 試合開始です!」
ゴングが鳴ると同時に、蝦蟇河童は一気に距離を詰めてきた。初老とは思えぬ身のこなしにイリスは焦燥を覚えるが、腰回りを掴まれないように最初の突進を受け流す。そのままカウンターで拳を入れようとするが、蝦蟇河童は凄まじい反応速度で手を払い、弾いた。
「ほぉ、今のを見切るか。これまで儂の押し出しを見切ったのは久しくおらなんだ。これは十数年ぶりに楽しめそうじゃ」
「光栄です」
呵呵、と楽しげに笑う蝦蟇河童。次の瞬間、蝦蟇河童は勝負に出た。
「ならば、蝦蟇河童らしくこの戦い方でゆくかのう! 見事受けてみせよ!」
シャッ、という風切り音とともに舌が飛び出る。長い舌を利用した投げ飛ばしを行うつもりだ。イリスはこれに即応し、左腕を盾のように構えた。胴を狙って延びた舌は左腕に巻き付く。
「……む!」
「今です!」
ぐっと左腕を引き、蝦蟇河童を引き寄せると足払い。蝦蟇河童は体勢を崩し、足が宙を舞う。そこに蹴り上げを入れて蝦蟇河童を宙に浮かせると、鳩尾に向けて右拳を突き出す。蝦蟇河童はとっさに腹筋に力を入れたものの、打撃をしたたかに受けてもんどり打って倒れ込んだ。
「ぬぅ……見事……!」
「おぉーっと怒涛の舌による拘束を逆利用! イリス、相手の体勢を崩したところに容赦のない追撃だぁーっ!」
観客が目にも留まらぬ早業に歓声を上げる中、レフェリーが駆け寄る。蝦蟇河童は立ち上がろうとしたが、上手く身体に力が入らない。
「ううむ、儂としたことが立ち上がることが叶わんとはな……こりゃ年じゃなぁ」
「どうしますか?」
「これ以上は無理ということじゃろう……ギブアップじゃな」
レフェリーの問いに、降参の意を告げる蝦蟇河童。ここに第三試合の勝者はイリスと決まった。骸魂を吐き出し蒸発させる蝦蟇河童を、イリスは助け起こす。
「お怪我はありませんか?」
「うむ、すまんの……やはり儂が見込んだ通りじゃて。磨けばさらに光るじゃろう」
良き試合であった、と蝦蟇河童は手を差し出し、握手を求める。イリスは一礼してそれに応じた。
素晴らしい試合を見せた二人に、観客は惜しみない拍手喝采を浴びせるのであった。
大成功
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天王寺・吾郎
これは、本来ならば、格闘大会の横で屋台に徹する方がいいともうのであるが、相手の河童連中が、みんなして、相撲取るであるか。
沙悟浄だったら、もっと違う形になってたアルよ。
うーん、1対1の戦いに獣召喚でお茶を濁すわけには行かないアル。
まぁ、ここは、一旦止めて、残った分を全部【大食い】で食べてから、挑むであるヨ。
ここは、【功夫】で挑むアルよ。UCは、ココで使用するであるヨ。
連中が相撲ってことは、地面に転がしてしまえばいいヨロシ。
狙うは足。但し相手の足首の後ろを狙う形で蹴る。
「河童も、カエルも、相撲ならば、足を狙うヨロシ。そこが、弱点だからアルヨ」
「さて、後は、来る猟兵のために屋台を継続するアルヨ」
●第4試合 功夫熊猫・吾郎
熊猫の瑞獣、天王寺・吾郎(白黒料理人・f32789)は会場で飲食物を提供する屋台をやっていたのだが、相手が全員相撲を取っているという話を聞いて首をかしげる。
「みんなして、相撲取るであるか。沙悟浄だったら、もっと違う形になってたアルよ」
「そうなんだよ……何とかならねぇかな」
屋台を訪れた客に言われてどうしたものか、と考え込む吾郎だったが、やがてひとつの結論に達する。
「うむ、やはり、ウチも出場側に一旦回るべきアルね」
「本当か! 頼むぜマスター、本場の功夫を見せてやってくれ!」
ひとまず、目の前には来たお客にすぐに出せるようにと作り置いていた料理がある。しかしこれを放置するわけにもいかないので、自分で食べて腹ごしらえを済ませた。吾郎はフードファイターでもあるため、料理を食べればそれがそのまま力になるのだ。
「んじゃ、ちょっくら行ってくるアル。あ、戻ってくるまでお代わりは我慢するヨロシ」
「おう! もっかい腹すかせて待ってっから!」
屋台の客に見送られて、吾郎は急ぎ大会の会場に急行した。
そして、数分後。
リングには功夫の構えを取る吾郎の姿があった。
「さぁここで予想外の挑戦者登場です! なんと大会会場に併設されていた屋台の店主、天王寺吾郎が電撃参戦! 功夫熊猫の実力や如何に!?」
ゴングが鳴り、対戦相手の蝦蟇河童は一気に接近して体重を活かした浴びせ倒しを仕掛ける。
「おっと」
しかし吾郎、これにすぐさま対応。全身の身体に先刻食べた料理の栄養分を行き渡らせて細胞を活性化させれば、たちまち超人的な速度の反応能力を手に入れる。
この超反応を活かして、相手の蝦蟇河童が浴びせ倒しを仕掛けるために足から力が抜けたところをしっかりと見極める。すかさず足首の後ろめがけて足払いを仕掛けてしまえば、蝦蟇河童の体幹が一気に崩れ、リングにどうと倒れ込む。そのまま拳を打ち下ろし、蝦蟇河童はノックアウト。3カウントが取られ、あっという間に試合が終了する。
「秒殺ゥーッ!! 本場の功夫は格が違ったァーッ!! 浴びせ倒しを仕掛けようとしたところを一気に体勢を崩して勝利しました功夫熊猫・吾郎!!」
「河童も、カエルも、相撲ならば、足を狙うヨロシ。そこが、弱点だからアルヨ」
吾郎のこのコメントには思わず実況も唸る。
「この戦略的な立ち回り、流石の貫禄です!」
「では、屋台に戻るアルヨ。腹が空いたら皆食いに来るヨロシ。会場の入口付近で営業中アル」
リングから去る前には屋台の宣伝も忘れない。何しろ彼の本業は料理人なのだ。であればこそ、多くの人に自分の料理を食べてもらいたいのは自明。
こうして、総合格闘技の祭典「KAKURIYO桜祭り」は大いに盛り上がり、吾郎の屋台もその美味しさと宣伝効果も相まって、腹を空かせたお客による長い行列を作るのであった。
大成功
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