大祓百鬼夜行⑥〜こぼれさいわい
●こぼれ
幻朧桜の花が舞う。
明るい日差しを受けて、青空を背景にして。
桜の枝枝には綾錦の帯が掛けられ、地へとその彩をのばして陰をつくる。
そより風吹けば、誘うは戦いへと赴く人々。
あなたのお陰で世界を救える。
あなたは本当に、日々頑張っている。
今だけ、今だけは、少し休んでいかれませんか――
●さいわい
「みなさま、長い闘い、本当にお疲れ様です。ほんの少しですが、休まれていきませんか?」
たくさんの花が詰まった籠を持って、プルミエール・ラヴィンス(はじまりは・f04513)は忙しなく説明する。
「『幻朧桜の丘』というところが見つかったんです。此処には、かの桜の世界から流れ着いたと思われる、『魂と肉体を癒やす桜』が咲き乱れています」
花籠をいくつも用意したプルミエールは、続いてお湯を沸かし始めた。
「もし、この場所を制圧出来たら…桜の花吹雪が、他の戦場で戦う妖怪さんたちの力を削いでくれるみたいなんです。戦いではなくて、桜の下でお花見をしたらいいんですって。それが、桜の力になるそうですよ」
熱々のお湯を注いで花茶の準備をしている間に、プルミエールは草団子を曲げわっぱの弁当箱に詰めていく。
「それで、提案なんですが。新しく見つかった封神武侠界のお祭りにちなんで、花送りといきませんか?」
本当は、もう時期は過ぎてるんですけどね、と舌を見せながらプルミエールは笑う。
「花送りは、5月の頭ごろに行うお祭りなんですって。幻朧桜の丘のあたり、綾錦の帯を日よけ代わりにしてあります。みなさま、もしよかったらこの花籠を木々に吊るしてきていただけますか?あと、花茶とお団子も用意してみました。勿論、持ち込み歓迎ですよ」
花籠と、藤枝を組んでできた、ピクニックバッグ。中には花茶と草餅や草団子、ヨモギ餅なんかが入っている。
机に一通りおいて、プルミエールはちょっと下を向いて。
「…みなさん、頑張っているから…何か、私にもできることは無いかなって。のんびり桜を楽しむことが、力になるなら。どうか、ほんのひととき。息抜きしませんか?」
南雲
初めまして、またはこんにちは、南雲と申します。
大祓百鬼夜行、少し休憩していかれませんか。
●プレイングボーナス……よその戦争を無視して宴会する!。
●シナリオ概要
①こちらでご用意しているのは花籠、花茶、団子各種。
持っていかなくても大丈夫です。
持ち込み歓迎、のんびり桜を楽しんでいただければ。
どんちゃんお酒ありも好きです。
②花送り、つまり芒種節のお祭りをモチーフにしています。
ですが、あまり気にせず。ご自由にどうぞ。
●プレイングについて
同行者がいらっしゃる場合は、【相手の名前(実際の呼称)と、fからはじまるID】または【グループ名】をご記入ください。
①人が見ていて「いやだなぁ」、人がされて「いやだなぁ」となるような、他人への狼藉は書くわけにはいかないと思っています。
②年齢を制限せねばならないような文字の並びは、公の場で人にお見せするものではないと思っています。
以上の2点に触れるような内容は、申し訳ありませんが採用はしません。
遅筆ではありますが、再送の無いよう努めてまいりたいと思います。
どなたさまでも、お気軽に。
※「こぼれさいわい」…思いがけない幸福のこと
第1章 日常
『桜の下で宴会しよう!』
|
POW : 美味しい料理や飲み物を提供する
SPD : 巧みな芸を披露する
WIZ : 桜の下で語り明かす
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御園・桜花
「此処は…私の理想の丘なのです。私は何時か、異界で幻朧桜になって、転生を誘う標になりたいと思っていました。此の地は、私の理想の先達が集う丘なのです」
そっと幻朧桜に触れ
「だから、なるべく此の地を訪れたくて。それに…不勉強で芒種節の事を良く知らなくて。勉強させていただければと思いました」
恥ずかし気に笑う
UC「蜜蜂の召喚」で丘を俯瞰
1番立派な幻朧桜を探し、其の枝に傷つけないよう注意して花籠を取り付ける
其の後は其の樹に背中を預け、幻朧桜の隙間から覗く青空が夕暮れになるまで、取り出した花茶と草餅をのんびり楽しむ
「私にとって、青空はいつも希望と自由の象徴なんです。今日は贅沢な1日をありがとうございました」
桜と同じ色した髪の御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は、転送された先の草地へそっと足を下ろした。
その目の前を、一枚の花びらが横切る。顔を上げれば、頭上に淡い紅色が揺れている。
幻朧桜だ。
辺りを見渡せば、そこにも、ここにも。空の半分が淡い紅色なんじゃないかというくらい、連なる幻朧桜。そしてその木々を繋ぐように掛けられた綾錦の帯。
「此処は…私の理想の丘なのです」
桜舞う幻想の都から、なぜか流れ着いた幻朧桜たち。傷ついた魂を呼び寄せ、その魂を新たな命へと転生させることのできる者たちを生み出す、不思議な木々。枯れることなく、永遠に咲き続け、かなしいいのちを再びよろこびの生へと送り出す存在。
桜花には、願いがあった。
――何時か、異界で幻朧桜になって、転生を誘う標になりたい――
それ故に。異界からこの幽世へ到達し、この地での戦いを助けるという幻朧桜が咲く丘は、桜花の理想の先達が集う丘で。
居並ぶ幻朧桜の列を見て、そのひとつに桜花はそっと手を指し伸ばす。
ごつごつとした幹と、その冠を飾る淡い紅の花びら。
目を閉じて顔を寄せれば、彼らの息遣いが聞こえてきそうな。
「…私は、あなたたちのようになりたいのです」
桜花がそっと呟いた願いを、一陣の風がぴゅうと丘の上へ運んでいく。そして、その風が幻朧桜の間を縫うように駆け抜け、枝花が一斉にさやさやと揺れた。
――待っているよ
微かな声がした気がして、桜花ははっと顔を上げる。
「今のは…」
辺りは静かで、人はいない。桜花はあたりを見廻しながら、小さく微笑んだ。
そして、桜花はそっと蜜蜂を召喚する。
「おいで蜜蜂、花の蜜をあげましょう。私の代わりに追い駆けて、全てを見て聞いてくれるなら」
召喚された蜜蜂は、蜜蜂が柔らかな風を切ってぶうんと天高くへ、丘を一通り見渡せるところまで上がっていく。その蜜蜂の目に映る、透き通るような青い空。幾千本と並んで咲く眼下の幻朧桜――それらは蜜蜂と五感を通わせる桜花の目にも映って。
蜜蜂が一際大きな幻朧桜を見つけて、桜花をそちらへ誘う。
丘の天辺の、いっとう空が近いところ。
(「――さっき返事してくれたのは、あなたですか?」)
辿り着いた桜花は、心の中で呼びかける。
桜花は手にしていた花籠をその枝にそっとかけた。
花送りの為に設えられた花籠は、花の神に感謝するためのものだとか。綾錦の帯で木々を飾り付け、花枝を使った籠に供物を入れて木々に吊るし、此度の戦に力を貸してくれるという幻朧桜への感謝を込めるためのもの。
「――ありがとうございます」
小さくお礼を言って、桜花はその幻朧桜に背を預ける。
持ってきたもうひとつの籠には、花茶を淹れたタンブラーと草餅。のんびりと花茶を飲みながら、幻朧桜の花の隙間から垣間見える青空を見上げて。
桜花にとって、青空は希望と自由の象徴。
きっとこの戦いも、いい結末で終わらせることができる。そう感じながら、桜花はこの穏やかな時間を楽しんでいた。
大成功
🔵🔵🔵
ミリアリア・アーデルハイム
私はおかきを持って来ました。
甘いものをいただくと、塩っぽいものが食べたくなる時がありますよね。
花籠を受け取り、近くの木に吊るしたら、お茶とお団子をもらってすとんと腰を下ろす
3月に猟兵になってから、色々な事がありました。
夢中で駆け抜けてきて、今、漸く休む事が出来る、そんな気持ち。
花弁が花茶に落ちてゆらめく
何だか辺りがぼんやりして見える様な…私、泣いて?
幻朧桜さん、わたし、振られちゃいました。
初めから、ダメでもともと、と挑んだ事でしたのに、
今になってどうしてこんなに胸が痛むのでしょう。
何だか、安心したからでしょうか。
今日だけは、あなたの側で泣かせて下さい。明日からは、また頑張りますから…。
ひよひよと、どこかの枝で鳥が嘶く。
転送される前に受け取った花茶のボトルとお団子、そして自前のおかきを手に、ミリアリア・アーデルハイム(かけだし神姫・f32606)は地面の緑に薄紅の花びらが落ちてできた桜の道を歩む。
温かな日差しをいっぱいに受け、空を覆うほどに爛漫の幻朧桜。
青空へ枝を伸ばして風に揺れている様子は、まるで手を振るかのよう。
穏やかで、永遠の春が続くのではないかと思わせるような景色。
ちらちらと舞い落ちる桜の花びらをその手に受けて、ミリアリアは嬉しそうに笑った。
「わあ…きれいですね」
この幻朧桜は、その花を楽しむだけで戦いの助けになるという。元は桜舞う世界に常に咲く花。傷ついたものを癒すその力は、異なる世界で戦う猟兵たちにも恩恵をもたらしてくれるらしい。
「人を癒してくれる桜、ですか…」
不思議な気持ちで歩いていると、道の端に花籠がいくつか用意されていた。
猟兵を癒してくれる幻朧桜への、感謝の為に吊るすという花籠。中には色とりどりの花が飾られている。
ミリアリアはそのうちのひとつを受け取って、丘の中腹に咲く幻朧桜へと花籠をかける。
「ありがとうございます、幻朧桜さん」
感謝の言葉を述べてから、その幻朧桜の木の下に腰を下ろして。
ここらで一休みしようと、もらった花茶のボトルを両手で包んで、ふう、とひとつ。
(「――なんだか、あっという間だなあ」)
ミリアリアは猟兵になってまだふたつきほど。けれど、本当にいろんなことがあった。
世界を知り自立するために家を出た。初めての独り暮らし。オブリビオンとの戦い。
そして何より、他の猟兵たちとの出会い。右も左もわからない自分を、導いてくれた人たち。たくさんの人に出会って、たくさんのことを経験して。
今、ようやく休んでいる気がする。
ふと辺りを見渡せば、ところどころ、幻朧桜どうしを結ぶように綾錦の帯が括り付けられている。赤地に金の鳥の刺繡がされた帯は、遠目に見たら赤いリボンのようで。
赤いリボン。赤い、糸。
なんだか、桜の淡い紅と帯の赤が、ぼんやり霞む。
あれっ?と瞬きした瞬間に、ふたつぶの滴が花茶に波紋をつくった。
「…私、泣いて?」
意識したら、次々と涙がこぼれ落ちていく。止めようとしても、止まらない。
だって。
「幻朧桜さん、わたし、振られちゃいました」
ミリアリアは、幻朧桜にこてんと頭を預けて、しゃくり上げながら言葉を紡ぐ。
「初めから、ダメでもともと、と挑んだ事でしたのに…今になって、どうしてこんなに胸が痛むのでしょう…」
言葉にして改めて、ああ、好きだったと自覚してしまう。
涙があふれだす。
ダメかもしれないけれど。
でも、
――もしかしたら。
淡い期待。儚く散った、想い。
好きだった。確かに、好きだったんだ。
だから、今だけ。
「明日からは、また頑張りますから…」
膝を抱えて泣くミリアリアの上に、はらはらと桜の花びらが落ちる。
それは涙のようで。それは、優しい手のようで。
祈りのような桜の雨。きっと心の痛みすら、幻朧桜は癒してくれるだろう。
その想いは、ほんものだったのだから。
大成功
🔵🔵🔵
ジャム・ジアム
花。花、……花!お花と桜がいっぱいね
お茶にも花。ね、ちょうだい。……それは何のお花?
幻朧桜、サクラミラージュで逢ったことがあるわ
不思議な子。ここで咲く貴方もとっても、綺麗
タヌキたち、さぁ来て!『鼓腹』で召喚
『目黒さん』も。あなたの故郷よ
いつもありがとう。一杯美味しいもの、食べましょう?
この花籠はどこに飾ってあげるといいかしら
……桜さん、いい処、知ってる?
お酒は覚えたてなの。優しい味のがあると嬉しい
わあ、そんな姿になって。あなたたち、もう酔ってるの?
目黒さんも桜の中を舞えて楽しそう
ジアムも飛ぶ!畳んでいる大きな羽を広げて気の向くままに
花びらも『疾影』に持ち帰るの……綺麗。カクリヨはとても良い処ね
ぴかぴかの青空。見渡せば、一面の桜。
そしてその桜の下で花籠を用意する侍女たちの姿。花籠やらお茶やらを渡していく。
――いらされませ、のびやかにお過ごしくださいまし――
ジャム・ジアム(はりの子・f26053)は、ほわあと口開けて。
「花。花、……花!お花と桜がいっぱいね。ね、ちょうだい。……それは何のお花?」
ジアムが指さした花籠の中には、色とりどりの花。
此方は鈴蘭、此方は姫薔薇、藤に菖蒲に苧環――侍女が指さしながらつるつると説明していく。すべて春の花、幻朧桜の花の神への感謝を伝えるための花ですよ、なんて、にこやかに笑って。
ありがとう、とお礼を言って受け取った花籠を片手に。そしてもう片方の手には、花茶とお団子と草餅とお酒の入った籠。大量、大量。ほくほくと足取り弾ませながら、ジアムは桜が連なる丘をぶらぶら歩く。
見上げれば、青と薄紅のコントラスト。この光景は、あの世界を想起させる。サクラミラージュで出逢った幻朧桜たち。
あの世界特有のものだと思っていたけれど。遠く離れて異なる世界までやってきたのね、と桜の幹をそっと撫でる。
「不思議な子。ここで咲く貴方もとっても、綺麗」
たくさんのきれいな花と、おいしいもの。
この世界をひとりで楽しむなんて、勿体無いから。
「タヌキたち、さぁ来て!」
名前を呼べば、ぽこぽこと小さなタヌキさんたちが現れて、ジアムの足元にころころと。
「目黒さんも。あなたの故郷よ」
また名前を呼べば、現れたブリキの小鳥型ロボットがぴたりとジアムの肩に留まる。
「いつもありがとう。一杯美味しいもの、食べましょう?」
目黒さんの嘴を優しくくすぐっていたら、タヌキさんたちが花籠を代わりに持ってくれて。あっそうか、花籠を桜の枝に吊るすのだっけと思い出す。
きょろりと辺りを見回しても、桜はたくさん。どこに飾ってあげたらいいのかしらと首を傾げて、ジアムは近くの桜に聞いてみる。
「……桜さん、いい処、知ってる?」
さやさやと、答えるように靡く桜の枝々。その桜の木の折りよい高さの枝に、ぱたぱた飛んでいくのは目黒さん。ここはどう、と小首をかしげてジアムを見つめる。
「うん!素敵ね」
よいしょと背伸びして、目黒さんもちょっぴり手伝って。無事に枝にかけられた籠から、花びらがちょっとこぼれてジアムの髪にかかって花飾り。
折角だからと、この木の下で小宴会。
お団子両手に豪勢なタヌキさん、花茶が熱くて舌をぺろりと出すタヌキさん。
覚えたてのお酒をひと口飲んだジアムは、その優しい甘さにはらりと身がほどけていくよう。
その隣でなにやら、でろんと横たわるふたつの丸いもの。お酒を飲んで、酔ってしまったタヌキさんたち。
「わあ、そんな姿になって。あなたたち、もう酔ってるの?」
けらけら笑うジアムの上、桜の花びらのはらはら落ちる中を舞う目黒さん。なんだかとっても楽しそうで。
「ジアムも飛ぶ!」
言うが早いか、ジアムの背中にばさりと広がるは明色の羽。目黒さんと並んで、いちど桜の木の上まで飛び上がって、ふわり一回転。
ああ気持ちいいな、どこまでも飛んでいけそう、なんて気の向くままに羽を広げて。
思いっきり羽を伸ばして、桜の木の下へ降り立つと、風に呼ばれて落ちてきた花びらがジアムの羽にくっついて。狸さんたちと協力して一枚一枚、ていねいに集めてハンカチに包む。これは、お留守番している疾影への、お土産。
うーんと伸びして、ジアムはふかくふかく、深呼吸。
「カクリヨはとても良い処ね」
お酒に酔ったタヌキさんを、別のタヌキさんがおんぶして。
みんなで帰る、今日の帰り道。みんなもちょっとは息抜きできたかな、なんて、ジアムは優しく笑う。
●明日から
長い長い戦いの、ほんのひととき。
桜を楽しむことで、みんなの戦いが少し楽になる。
こんな素敵な連鎖を、奇跡を起こした幻朧桜は、丘の上でその花びらを散らす。
みんなお疲れ様、元気になってね――と。
大成功
🔵🔵🔵