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月燈花譚

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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 銀鈴蘭という名の花がある。
 力強い陽の光の元では決して咲くことはなく、柔らかな月の光の元でのみ綻ぶ鈴蘭の花――銀鈴蘭は二つの月が顔を合わせる水辺に群生し、月光に照らされて淡い銀色に輝くのだという。
 アックス&ウィザーズの辺境、とある村の側に広がる森の奥。
 澄んだ水を湛える湖の畔に、銀鈴蘭の群生地のひとつがある。
 村人たちは時折、酒の肴に、あるいは恋人たちの密やかな逢瀬の折にと、銀鈴蘭の咲く光景を共に楽しんでいたのだが――。

「その湖の畔を、オブリビオンが塒にしてしまったのです」
 フィオリーナ・フォルトナータ(ローズマリー・f11550)は招集に応じてくれた猟兵たちに、事の経緯を説明する。
 このままでは村の平穏な生活までもが脅かされかねない事態に、事情を知った冒険者が討伐に向かったのだが、件のオブリビオンが現れた頃から凶暴化した仔竜の群れに返り討ちに遭ってしまったのだそうだ。
「そこで、皆様にオブリビオンの討伐をお願いしたいのです」
 村人たちが何の憂いもなく、銀鈴蘭を見にゆくことが出来る――そんなありふれた日常を取り戻すために力を貸してほしいとフィオリーナは言った。
 まずは、森の入口に屯する仔竜の群れを何とかしなければならない。仔竜たちは本来は純粋で人に悪さをするような存在ではないとのことだが、件のオブリビオンの気に充てられたのか、人間に対して敵意を剥き出しにするようになってしまった。幸い個々の力は大したことはなく、また気絶させれば正気を取り戻すため、命を奪う必要はない。
 仔竜の群れを切り抜けた後は、そのまま森を真っ直ぐに進めばやがて湖に辿り着く。
 そこではヒューレイオンと呼ばれる幻獣のオブリビオンが、森そのものを自らの領域とでも主張するかのように猟兵たちを待ち受けていることだろう。
「こちらは仔竜たちと違い、相応の強さを備えています。ですが、皆様の力があれば、決して負けることはないでしょう」
 そうして、無事にオブリビオンの討伐が叶ったなら。
 現地は、ちょうど日没を過ぎた頃。
 空に浮かぶ月の下、湖畔に揺れる銀鈴蘭を楽しむ一時も、きっと悪くないだろう。
「それでは、皆様。宜しくお願い致します」
 フィオリーナは丁寧な一礼と共に説明を終え、猟兵たちを転送すべくグリモアを発現させた。


小鳥遊彩羽
 ご覧くださいましてありがとうございます、小鳥遊彩羽です。

●シナリオの流れと補足など
 第1章:『戯れる仔竜』(集団戦)
 第2章:『ヒューレイオン』(ボス戦)
 第3章:『闇に咲く花』(日常)
 となっております。

 時間帯は夜ですが、照明類は持参しているものとして扱いますので、プレイングへの記載は不要です。
 オブリビオンの討伐が無事に終わった場合、第3章の日常パートで、湖の畔に咲く銀鈴蘭の花を見ることが出来ます。
 その際は【POW】【SPD】【WIZ】の判定については気にせず、銀鈴蘭を見ること前提でプレイングを掛けて頂いて大丈夫です。

 ご一緒される方がいらっしゃる場合は【お相手の名前(ニックネーム可)とID】もしくは【グループ名】をご記載下さい。
 また、第3章ではお声がけを頂いた場合のみ、フィオリーナもご一緒させて頂きます。
 シナリオの進行状況、及びプレイングの受付タイミングなどにつきましては、個人ページにて随時ご案内させて頂きますので、ご確認頂ければ幸いです。

 以上となります。どうぞ宜しくお願い致します。
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第1章 集団戦 『戯れる仔竜』

POW   :    じゃれつく
【爪 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    未熟なブレス
自身に【環境に適応した「属性」 】をまとい、高速移動と【その属性を纏わせた速いブレス】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    可能性の竜
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ソナタ・アーティライエ
悪い子たちではなく、本来は優しい子たち
なら、大人しくさせるためとはいえ痛いことはしないですませたいです
あの子たちを傷つけるのも、あの子たちが何かや誰かを傷つけるのも
どちらもさせたくはないのです

放たれる攻撃は【幻想小夜曲第140番『夢絃の琴』】ですべて鎮め
攻勢が緩んだところで、元の優しい子たちに戻ってくれるよう想いをのせて
やさしくそっと撫でるような歌声で【シンフォニック・キュア】を
「怖がらないで……大丈夫」そう言ってあげたい、です

落ち着いたら、アマデウスとも仲良くしてくれるかな?
お友達になってくれたら嬉しいのです

アドリブ・他の方との連携歓迎です


シエル・マリアージュ
「大丈夫、この子達は殺さないよ」
仔竜たちを案ずるように鳴いたキルシュを優しく撫でて、銃に変形させた聖銃剣ガーランドに魔力を込めて非殺傷用マヒ弾を装填。
気絶させやすくするために【トリニティ・エンハンス】で状態異常力を高めておきます。
【先制攻撃】で先手をとり、非殺傷用弾の【気絶攻撃】を念のため【誘導弾】にして目とか急所に当たらないようにして、仔竜たちを正気に戻していきます。
仔竜でも数が多そうなので【フェイント】【残像】【ジャンプ】などで攻撃を受けないように立ち回ります。
「キルシュ、この子達が静かに暮らせるようにオブリビオンを倒さなくちゃね」



「キュアアアアア……!」
「キュイイイィッ!!」
 森へ入った猟兵たちを、仔竜の群れが出迎える。
 響く鳴き声は威嚇するようで、同時に仲間たちへの合図のようでもあった。
 事実、呼ぶ声に応じてだろう、どこに身を潜めていたのか何匹もの仔竜があちらこちらから姿を見せ、侵入者たる猟兵たちを森の外へ追い出そうと襲い掛かってくる。
 ――本来は優しい心を持つ、小さき竜たち。
 大人しくさせなければならないとは言え、悪い子ではないのならなるべく痛みを与えるようなことはせずに済ませたいと、ソナタ・アーティライエは想いを籠めた歌声を響かせる。
「静謐の帳を下ろしましょう……」
 幻想小夜曲第140番『夢絃の琴』――世界を宥める子守唄。
 仔竜たちが踊らせる炎や雷の攻撃はどれもソナタに届くことなく、優しく澄んだ歌声に溶けて消えていく。
「――大丈夫、この子達は殺さないよ」
 仔竜たちを案ずるように鳴いた桜桃色の小さな竜――キルシュを優しく撫でて、シエル・マリアージュは慈悲の聖銃――聖銃剣ガーランドを銃形態へと変じさせる。
 装填する魔力に込めるのは非殺傷用の麻痺弾。炎と水、そして風の魔力を己に纏わせ、シエルは群がる仔竜たち目掛けて素早く、何度も引き金を引いた。
「命に危害を加えるつもりはないから、少しの間だけ、我慢してね」
「キュッ! キューッ!!」
 急所となる場所を避けながらも的確に、魔力を帯びた銃弾が描く軌跡に導かれるように飛び回る仔竜たちを、シエルは次々に撃ち落としていく。
「キュンッ!」
「キュウ……」
 気を失った仔竜たちは、どれもシエルの狙い通り、命に関わるような傷を負った様子はなく。
「怖がらないで……大丈夫」
 優しくそっと撫でるような癒しの歌声を奏でながら、ソナタはそっと身を寄せてくる銀竜――アマデウスを抱き締める。
 呪縛から解き放たれて元の仔竜に戻ったなら、アマデウスとも仲良くしてくれるだろうか。
「キュ、ゥ……」
 眠る仔竜たちの鳴き声が段々と柔らかくなっていくのは、彼らがその耳で歌を聴いてくれている何よりの証。
「……お友達になってくれたら、嬉しいのです」
 ソナタは安堵の息をつき、祈るように目を伏せる。
 銃を下ろしたシエルもまた、キルシュ、と傍らの竜に呼び掛けた。
「この子達が静かに暮らせるように、オブリビオンを倒さなくちゃね」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

逢坂・宵
仔竜とは、これまたかわいらしいものですね
オブリビオンの気に当てられたのか、敵意をむき出しにしてくるのは致し方ありませんが……
術は少々、気絶させる程度に加減をした方がよさそうですね
無害な獣を無為に倒してしまうのは好きではないので
なるべく穏便に、この森を駆け抜けましょう


『属性攻撃』『2回攻撃』『高速詠唱』『全力魔法』を用いて
『天航アストロゲーション』で攻撃します
猟兵の仲間とも連携や協力をおこなっていきましょう


法悦堂・慈衛
銀鈴蘭か…どんな花なんやろか。
一応お花屋さんやし気になるところ。是非一回見ときたいなぁ。
ちゅーことで、お邪魔さんにはご退場願うよう拝むとしよか。

さて、随分かいらしい敵さんやな。
目の前の数は偏愛真言符と煩悩切で燃やして払って数減らしとこか。
敵さんと距離取れたら式神符を使う。
【式の弐・吉備津彦命】、お供はなにがくるかわからんけどもよろしゅう頼むで。
長刀と弓で他の猟兵さんらの攻撃をサポートしてもらおか。
お供は俺の警護についてもろらうとするで。

あ、こら。吉備津ちゃん!知らん子やからってきび団子あげたらあかんて!
ちゃんと戦って!

【アドリブ・共闘歓迎です】



「さて、随分かいらしい敵さんやな」
「ええ、仔竜とは、これまたかわいらしいものですね」
 法悦堂・慈衛の声に逢坂・宵が応じる。
 二人の目の前にも、多くの仔竜たちが集まっていた。
「キュイ! キューイ!!」
「キュッ、キュキュウ!!」
 帰れとばかりの敵意剥き出しの大合唱も、この奥に潜む幻獣の影響を受けているからこそ。
(「銀鈴蘭か……どんな花なんやろか」)
 慈衛が思いを巡らせるのは、その幻獣――オブリビオンが塒としている場所に咲く花だ。
 今は流浪の花屋を営む身としては、是非とも一度見ておきたい。そう思いながら、慈衛は傍らの宵へ呼び掛けた。
「ちゅーことで、お邪魔さんにはご退場願うよう拝むとしよか。行くで、宵くん!」
「はい、慈衛君。なるべく穏便に、この森を駆け抜けましょう」
「キューッ!」
 一斉に飛び掛かってくる仔竜たちを、慈衛は手にした霊符と薙刀で払っていく。
 霊符に籠められているのは女性への熱い想い。燃えるような想いのままに鮮やかな炎が踊り、驚いた仔竜へ宵が星の意匠が凝らされた魔杖の先端を向ける。
「――星降る夜を、あなたに」
 無害な獣を無為に倒してしまうのは宵の望むところではなく、詠唱の声が心なしか控えめなのは、仔竜たちへの手心ゆえ。
 すると、空から招来した無数の隕石が、流れ落ちる星のように仔竜たちへと降り注いだ。
「キャウッ!」
「キュウ……」
 思いの外あっさりと、次々に気を失う仔竜たち。だがまだまだ数が多いのを見て、慈衛は自身の血で真言と祝詞と御伽噺を書き記した符を取り出した。
「別嬪さんでも油断しなや?」
 慈衛の声に応えて現れたのは、長刀と弓、そしてきび団子を携えた女武者。それから、お供の犬だ。
 女武者は現れるや否やすぐさま武器を構え、仔竜の群れへ飛び込んでいく。
 慈衛が傷を受ければすぐさま術が解除され、女武者の姿は消えてしまうため、お供の犬が慈衛を守るように勇ましく吠えて仔竜たちを威嚇する。
 女武者が攻撃した隙に宵が星を降らせて、的確に仔竜たちを倒していた――のだが。
「……あ、こら。吉備津ちゃん!」
 慈衛が慌てて女武者を制したのは、彼女が仔竜にきび団子をあげようとしたからだ。
 仔竜も我に返ったのか、何だかきらきらした眼差しを女武者に向けている――ように見えた。
「知らん子やからってきび団子あげたらあかんて! ちゃんと戦って!」
 その声に、女武者が残念そうに慈衛を見つめる一幕もあったが――慈衛と宵は何とか無事にこの場を切り抜けることが出来たのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雨糸・咲
柔らかに降る月光の心地良さに目を細め

森の奥にある、湖の畔…
何だか愛する我が家に似ていて
放っておけません

可愛らしい、小さな竜たち

可哀想に
そんなに牙を剥き出しにしていては、疲れてしまうでしょう

少し、痛いですけど
我慢して下さいね?

【地形の利用】と【フェイント】を駆使し、
練成した山葡萄の籠で仔竜たちを気絶させていきます

目が覚めたら、きっと元通り

あなた達が眠っている間に、
嫌な風は払ってきますから
今だけ、おやすみなさい

柔らかく微笑んで
森の奥へ

※アドリブ、他の方との絡み歓迎です



 昏い森にも柔らかく降る月光の心地良さに、雨糸・咲はふわりと目を細める。
 森の奥にある、湖の畔――まだ見ぬ光景に重ねるのは、自らが森の湖畔に構える小さな店であり、愛する我が家でもある場所。
 ゆえに、どうしても放っておけなくて。咲は仲間たちと共にこの森へ足を踏み入れたのだ。
「可愛らしい、小さな竜たち。……可哀想に、そんなに牙を剥き出しにしていては、疲れてしまうでしょう」
 胡桃色の瞳に宿る、悲しげな色。
 視線の先に立ちはだかった仔竜の群れが、咲や他の猟犬の気配にだろう、にわかに騒ぎ出す。
「キュアアアッ!」
「キュイーーーッ!」
「少し、痛いですけど、……我慢して下さいね?」
 次の瞬間、咲の姿が夜の闇と鬱蒼と茂る木々の影の狭間に消える。
「キュ!?」
 頭に疑問符を浮かべ、きょろきょろと咲の姿を探す仔竜たち。
 すると、がさりと揺れた木陰から幾つもの山葡萄の籠が次々に飛び出して、仔竜たちへ襲い掛かった。
「キュウっ!?」
 それは咲が手ずから錬成した、彼女の魂の依代たる器。
 咲の意のままに自由自在に宙を飛び交う籠たちは、時に石のように仔竜たちへ勢いよくぶつかり、あるいは星のように垂直に落ちて、彼らの意識を束の間の夢の世界へ誘い込んでゆく。
「キュウウゥ……」
「……今だけ、おやすみなさい」
 目をぐるぐると回して倒れた仔竜に目立つ外傷が見られないことを確かめてから、咲は柔らかく微笑んで、森の奥へと歩き出す。
「あなた達が眠っている間に、嫌な風は払ってきますから」
 今はただ、ほのかに甘く香る優しい夢を揺蕩って。
 ――そうして次に目が覚めたなら、きっと全てが元通り。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロー・オーヴェル
陽光の下で咲くことがない……か
なんともひ弱さを感じさせる花だな

だからこそその花には
人の心を惹く不思議な力があるのかもしれない

それに何より
「たおやかな存在は守ってやりたくもあるしな、オトナのオトコとしては」

敵の集団に囲まれぬ様
自身の立ち位置に常に留意

攻撃優先は傷深い個体優先
【二回攻撃】や【鎧無視攻撃】等を活用し
確実に敵数を減らしていく事を主眼

但し敵からの攻撃を受け深手を受けており
尚も敵攻撃を受ける可能性のある者がいる際は
その者の援護の意味も兼ねて当該敵を攻撃

自身の負傷は適宜【生命力吸収】で癒す

この竜たちも花と戯れているだけなら
それで一つの絵にもなったろう

そんな叶わぬ事を思うのは
月の魔力の影響かな



(「陽光の下で咲くことがない……か」)
 何ともひ弱さを感じさせる花だと、ロー・オーヴェルは考える。
 けれど、だからこそ。銀鈴蘭には、人の心を惹く不思議な力があるのかもしれない――とも。
 ――それに、何より。
「……たおやかな存在は守ってやりたくもあるしな、オトナのオトコとしては」
 ぽつり零せば、口元に浮かぶ微かな笑み。
「キュアアッ!」
「キュイィ!!」
 次から次へと賑やかな声を上げながら湧いてくる仔竜の群れを相手に、ローは囲まれぬよう注意しつつ攻撃へと移った。
 この場を切り抜けるには命まで奪わなくとも、気絶させるだけで良い――そう聞いていたから、周囲で戦っている他の猟兵たちがそうしているように、ほんの少しだけ手心を加えながらも決して油断はせずに。ナイフの柄や拳を使って素早い動きで連続攻撃を繰り出してゆけば、さほど時間を置かずに地面にはたくさんの、目を回しながら意識を失った仔竜が転がっていて。
「キュー……」
「キャウー……」
 ――この竜たちが花と戯れる姿は、それで一つの絵にもなるだろう、とローは思う。
 森が元の平穏を取り戻したのなら、そんな光景もまた、見ることが叶うかもしれない。
「……よし、」
 意を決したように森の奥へと駆け出すローの姿を、空に輝く金色の月が静かに見下ろしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

糸縒・ふうた
【リル(f10762)】と一緒
アドリブ・改変等歓迎

月の元でだけ咲く鈴蘭、か
きっと、きらきらできれーなんだろうな!

オレも見るのは初めてだ

村の人たちが安心して夜のお散歩できるように、がんばろうぜ


仔竜たちは元々いいこだったんだから、いいこに戻ってもらお

攻撃に警戒しつつ距離を取って
【人狼咆哮】で目を覚ましてって叫んでみよう

ぐるぐるしてる仔がいたら
リルに、あの子あぶないみたい! 助けてあげて
ってお願いする

リル、ありがと。これでもう平気だな?
いいこに戻ったらもう悪さするんじゃないぞって森に返してあげよう

なんだったら、一緒に見に行くか? なんて

湖についたら?
オレは銀鈴蘭を見ながらリルの歌が聞けたら嬉しいな


リル・ルリ
■ふうた(f09635)と一緒
✼アドリブ等歓迎

「ふうた。綺麗な湖に銀鈴蘭が咲いているのだって。見に行こう?」
きっととても綺麗で素敵なんだろう
銀鈴蘭、見るの初めて
ふうたも?じゃあ楽しみが二倍だ
光景を想像し尾鰭を揺らし
けれどその前に幻獣をなんとかしないと

「仔竜……悪戯してはダメだよ?皆、困ってる」
【空中戦】や【野生の勘】で攻撃を躱しながら【光の歌】を歌って殺さず気絶だけさせていく
元通りになったら逃がしてあげる
うん、仔竜が怪我をしていたら僕が歌で癒そう
仔竜達も一緒に見に行けたらもっと楽しいよ

「湖についたら月と銀鈴蘭の歌を歌いたいな
ふうたは何をする?」
考えるだけで楽しみだ
だから平穏を取り戻さなきゃだね



 綺麗な湖に咲く銀鈴蘭は、きっととても綺麗で素敵なのだろう。
 まだ見ぬその光景を想像し、リル・ルリは月光透かすヴェールのような尾鰭を揺らす。
「月の元でだけ咲く鈴蘭、か。きっと、きらきらできれーなんだろうな!」
 糸縒・ふうたもきらきらと瞳を輝かせながら満面の笑みを浮かべ、この先に待つ景色に想いを馳せる。
「銀鈴蘭、見るの初めて。ふうたも?」
 リルがそっと首を傾げれば、ふうたはああ、と頷いて。
「オレも見るのは初めてだ。リルと同じだな」
「じゃあ、楽しみが二倍だ。……楽しむためにも、幻獣をなんとかしないとね」
「オレたちの楽しみもそうだけど、村の人たちが安心して夜のお散歩ができるように、がんばろうぜ」
 互いに頷きを交わしたリルとふうたが視線を向けた先には、仔竜の群れが二人を出迎えるように姿を現していた。

 リルが尾鰭を翻し、ゆらり、優雅に宙を舞う。
 その距離が十分に離れたのを確かめてから、ふうたは仔竜たちを見やり、大きく息を吸い込んだ。
「――目を覚まして!」
 元々いい子だった仔竜たちが、またいい子に戻れるように。ありったけの想いを籠めた狼の咆哮が、無差別に仔竜たちを呑み込んでいく。
「キュウウウッ!?」
「キュイイイッ!!」
 お返しとばかりに吐き出される水のブレスを、リルはくるりと空を游いで躱す。
「……悪戯してはダメだよ? 皆、困ってる」
 ふうたより一歩前に出て、仔竜たちの姿だけをその目で捉えながら、リルはすっと息を吸い込んだ。
「光あれ、光あれ。君の行く末に 生命の静寂に 光導く未来へ――」
 虚空に響く、黄金の旋律。玲瓏たる銀細工のような澄んだ歌声で紡がれるのは、破魔の光を纏う光の歌(ルチア)。
 薄花桜の瞳に映る仔竜たちを、魔を崩壊させる力を帯びた光のベールが優しく包み込む。
「キュ……」
「キュウッ……」
 眩しげに、あるいは苦しげにぎゅっと目を瞑る仔竜たちが、そのまま次々に意識を失い倒れていく。
「……っ、やったな、リル!」
 リルの歌声に、まるで心を奪われてしまったかのように聴き入っていたふうたは、歌の余韻が風に溶けると同時にはっと我に返って。
「これで、いいこに戻れたかな?」
「うん、これできっと、目を覚ませば元通りかな」
 森に満ちる空気も、心なしか穏やかなものになったように感じて。咆哮と破魔の歌声を受けた仔竜たちは目に見える外傷こそないものの、リルが続けて癒しの歌を聴かせれば、程なくして目を覚ます。
「キュ……キュウッ?」
「キュ! キューッ!」
 二人の姿を認めた仔竜たちが、きゃっきゃとはしゃぐように飛び跳ねて、二人に身を寄せてきた。
「よし、もう悪さするんじゃないぞ。……なんだったら、一緒に見に行くか? オレたち、湖に咲く銀鈴蘭を見に来たんだ」
「うん、一緒に見に行けるのなら、きっともっと楽しい」
「キュッ!」
 二人の言葉が通じたかどうかはわからないが、仔竜たちはすっかり二人に懐いているよう。
 仔竜たちと共に、リルとふうたは森の奥を目指し進んでいく。
「湖についたら、月と銀鈴蘭の歌を歌いたいな。ふうたは何をする?」
「そうだな、オレは……銀鈴蘭を見ながらリルの歌が聞けたら嬉しいな」
「キューッ!」
 ふうたの言葉に、仔竜たちが同意するように揃って声を上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セツナ・クラルス
悪意というものは簡単に伝染してしまうものだが
周囲一体を悪意に染めてしまうとは…
オブリビオンというのは厄介だね
純粋な仔竜たちが望まぬ悪事を働くのは忍びない
私が…いや、「私たち」で彼らを救わないとね
おいで、ゼロ
共に歩もう

別人格を呼び出し共に戦う
ゼロの一人称はオレ
セツナよりも目付きや口が悪い

この環境に適応した属性は
やはり水だろうか
…いや、予測はしても決め打ちはしない方がいいかな

ゼロと死角を補い合いながら
仔竜たちの出方を伺う
逃げ回るのは案外得意なのでね
可能な限り攻撃を見切るようにしよう
攻撃の属性が分かれば
反対属性を武器に纏わせて、
相殺しながら敵の攻撃のテンポを崩す
隙を見つけたらカウンター攻撃しよう



 悪意というものは、至極簡単に伝染してしまうもの。
 だが、周辺一帯を染めてしまうのがオブリビオンであるというのなら――。
「……厄介だね」
 セツナ・クラルスはぽつりと独りごちる。それは、誰にともなく零したもののようで、自身に言い聞かせるような響きを帯びていて。
 何にせよ、純粋な仔竜たちが望まぬ悪事を働くのは忍びなく。ゆえにセツナは今度こそ、己自身に向けてこう告げた。
「私が……いや、『私たち』で彼らを救わないとね。――おいで、ゼロ。共に歩もう」
 言葉に従い現れたのは、セツナと瓜二つの青年。けれどその内なる意識は、セツナのもう一人の人格――ゼロのものだ。
「ああ、……ったく、仕方ねえな」
 ややぶっきらぼうな物言いながらもゼロはしっかりと仔竜たちを見据え、セツナもまた仔竜たちへと向き直る。
 威嚇するような声を上げ襲い掛かってくる仔竜たち。その出方を探りつつ、二人は息を合わせて互いに死角を補い合い、攻撃を重ねてゆく。
「この環境に適応した属性は、やはり水だろうか」
「予測するのはいいが、決め打ちはしないほうがいいぜ。――そら!」
「……なるほど」
 その時、仔竜が吐き出したブレスが突風となって駆け抜けた。それを紙一重で避けながら、セツナはすぐさま大地の属性を武器に纏わせ、間髪を入れず吐き出されたブレスを相殺する。
「キュアッ!?」
 攻撃が届かなかったことにか、驚いたような声を上げる仔竜をすかさずゼロが杖で殴打し昏倒させると、鋭い爪を光らせ横合いから飛び掛かってきた別の仔竜を、セツナが大鎌の柄ではたき落とした。
「数が多いが、油断せずに行こう」
「……言われなくとも」
 互いに顔を見合わせ小さく頷きを交わしたセツナとゼロは、それぞれの得物を手に、再び仔竜たちへと向かっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白雪・大琥
襲っちまったとはいえ、本当は悪さするような奴らじゃねぇんだろ?
だったらさっさと目ェ覚まさせてやろうぜ。

仔竜の群れを見つけたら『雪白の番人』でユキヒョウを呼んで、
銀鈴蘭や他の植物が荒されねぇような場所に仔竜を誘き出してもらう
仔竜がユキヒョウにつられてる内に死角から攻撃するぜ
その時はダガーの柄や素手で殴りつけるだけ
倒すんじゃなくてあくまでも気絶させるだけに留める
ブレスがかかりそうならダガーの刃で切り裂くように避けたり
高速移動には同じように身軽さで勝負
「俺だって動き回るのは慣れてんだってぇの……!」
ユキヒョウと共に翻弄させながら、仔竜達との戦いはどこか楽しそうに笑みを浮かべ戯れるように戦う


グリツィーニエ・オプファー
――ふむ、竜で御座いますか
仔とは云え群れを成せば些か骨が折れましょう
ハンスも油断するとぺろりと食べられてしまうやも知れませぬ
…あ痛、痛いですよハンス
髪を啄ばむのはお止めなさい

大規模な災害を起こされては森へ被害が及びましょう
…それに、無闇に命を奪う行為は避けたく存じます
ええ、ええ――そうで御座いますね、ハンス
鳥籠より解放したのは青い蝶…【母たる神の擒】
我が呪詛で効果を高め、極力広範囲の仔竜を『母』の擒と致します
然すれば竜の行動も抑えられますし、何より傷付ける危険は少い

共闘する猟兵方と行動を合わせられそうならば、積極的に我が力を御貸し致します
如何せん竜の数が多いが故、死角を補い行動を心掛けましょう



「――ふむ、竜で御座いますか」
 一つ頷き、グリツィーニエ・オプファーは憂い帯びた花天蓋の瞳に仔竜の群れを映す。
 その隣にすい、と歩み出た白雪・大琥もまた、琥珀色の瞳を鋭く光らせて仔竜を見やった。
「襲っちまったとはいえ、本当は悪さするような奴らじゃねぇんだろ? だったらさっさと目ェ覚まさせてやろうぜ」
「ええ、仔とは云え群れを成せば些か骨が折れましょう。ハンスも油断するとぺろりと食べられてしまうやも知れませぬ」
 大琥はちらりとグリツィーニエと彼が従える鴉を見やるも、視線を交えることはせずすぐに正面へ向き直る。
 そんな大琥へグリツィーニエは同意するように相槌を、そして些か冗談めかした言葉を真顔で紡げば、カァ、と響いた一声と、ばさばさ羽ばたく黒い翼。
「……あ痛、痛いですよハンス。髪を啄ばむのはお止めなさい」
 喰われてたまるかとばかりに、ハンスと呼ばれた鴉の精霊がグリツィーニエの髪を嘴で襲う。
「……何やってんだ、先行くぞ」
 そう言うと、大琥は傍らに雪白の番人たるユキヒョウを招き、その背を押した。
 駆け出したユキヒョウは仔竜たちを誘うように尾を揺らしながら、群れの只中へ飛び込んでいく。
「キュアアッ!」
「キュッ!」
 無闇に植物が荒らされぬよう、広い地面のある場所に誘き出された仔竜たち。ユキヒョウにつられ鳴きながら跳ねるその死角から大琥は音もなく忍び寄り、彼らの意識を奪うべくダガーの柄や拳を素早く当てていく。
「キュイッ!」
 反撃とばかりに吐き出される水の息吹を、大琥はすかさず翻したダガーの刃で切り裂いた。
「俺だって動き回るのは慣れてんだってぇの……!」
 身軽さを生かしてユキヒョウと共に仔竜たちを翻弄する大琥は、どこか楽しげな笑みを浮かべていて。
 まるで戯れるように戦うその姿をグリツィーニエは頼もしげに見やり、傍らのハンスをそっと撫でる。
 大規模な災害を起こされたら、きっと森に被害が及んでしまうだろう。
 それに何より、無闇に命を奪う行為は、可能な限り避けたいとも思うから。
「ええ、ええ――そうで御座いますね、ハンス」
 ハンスの羽ばたきに合わせ、グリツィーニエは掲げた鳥籠から青い蝶を解き放った。
 ふわり、ゆらり、揺蕩うように、仔竜たちの元へ向かう蝶。
「キュウゥ……ッ」
 絡められた魅惑の呪詛の力は広範囲に及び、『母』たる神の擒となった仔竜たちの動きが忽ちの内に鈍っていく。
 こうすれば、不用意に傷つける危険も少ないだろう。
 グリツィーニエの思惑通り、隙を逃さず繰り出された大琥の拳が、仔竜たちを次々に一時の眠りへ落としていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

斎部・花虎
【POW】
……か、
かわ、

違うんだ
大丈夫だ
あれらを何とかして無力化せねばならない事は理解している

心を鬼にして首根っこを掴まえる
そのまま手刀を入れてこう……
何とか、何とかあまり苦しくない様に気絶させたいが

反撃はべつに、その、受けてもいいかなとは
……じゃれている様で愛らしいなどとは、嗚呼、勿論
思っていないとも

あまり悪さをしてはいけない、解るな
目が醒めたら、元の可愛い仔に戻ってくれれば良い


終夜・嵐吾
銀鈴蘭の群生地、と聞いて。
しかも湖の畔と……これは、あとの為にもしっかりと働かねば。
色々と準備をして。そう、美味なるものなどを。

協力できる猟兵がおればともに。
やや、仔竜らは正気を失っておるんじゃったな。ならばその視界を奪って惑わせよう。
虚の主よ、なれも銀鈴蘭は気になろうて。
すこし起きて手伝ってくれんかの、あの仔竜らと少し遊んでやれ。

気絶した仔竜らは、邪魔にならんところに。
目が覚めるころには全部終わっとるじゃろ。明日からは楽しく遊んで、いつも通りじゃ。
無為に命を奪わんでええのは、ちと嬉しい。
さて、これを招いた大物のお出ましはこの先の湖か。


トトリ・トートリド
月の下だけ咲く花と、湖の水鏡
トトリも見たい
でも、独り占めしたいわけじゃ、なくて
綺麗なものなら、村人たちも…猟兵も
見たい皆で分け合えばいい
そのために、ヒューレイオン…倒す

森入り口で側面、背面取れる地形、探す
仲間のいる方角に追い込んで
逃げようとする個体には、立ち塞がる
本当は悪さをしない、純粋だって、フィオリーナが言っていた
…どうして、怒ってる。何か、苦しい?
気になるけど、倒さなくて済むのだけ、ほっとしてる
…少し、痛くする。ごめん
手心は言葉だけ
ローラーペインターから飛ばす塗料弾は
戦いが終われば消える、けど
血も顔料も同じ
…村人とあいつらに返す森、あまり汚したくない

おまえたちも、必ず助けるから
…待ってて



「……か、」
 かわ、と、斎部・花虎の唇が動く。
「キュ?」
「キューーーッ!」
「……大丈夫かの、花虎の嬢ちゃん」
 侵入者たる猟兵の気配に、にわかにざわめき立つ仔竜たち。その凶暴化してもなお愛らしい姿にすっかり心を掴まれてしまった様子の花虎に、終夜・嵐吾が心なしか遠慮がちにそっと声を掛ければ。
「ち、違うんだ、大丈夫だ。あれらを何とかして無力化せねばならない事は理解している」
 花虎ははっと我に返り、ふるふると首を横に振る。それでもまだ、だが……、と逡巡するような間があったが、やがて意を決したように花虎は大きく頷くと、手近にいた仔竜の首根っこを掴まえた。
「す、すまない、少しの間だけ、大人しくしていてくれ……!」
 ――とすっ。と。
「キューッ!?」
 頑張って心を鬼にした花虎の手刀の一撃に仔竜はあっさりと気を失い、だらりと力なく垂れ下がる。
「すまない、本当にすまない……!」
 気絶させただけなのに何故だかとても後ろめたい気持ちになりながら、花虎はすやすやと寝息を立て始めた仔竜に詫びを。
「キューッ!」
「キュキューーッ!」
 すると、仲間を倒された仔竜たちが、怒ったような声を上げながら一斉に花虎へ襲い掛かった。
「うっ……」
 仔竜たちの鋭い爪の乱舞を、花虎は避けることなく受け入れて。
「嬢ちゃん……」
「……花虎、大丈夫?」
 幼いとは言え、相手は竜の仔。加減のない攻撃は、ひとの身で受け止めるにはそれなりの力を持っていることだろう。
 果たしてこの『戯れ』に手を出していいものか、ちょっと迷っていた――なんてことは、正直少しある。
 色々な意味で大丈夫じゃろかみたいな優しい眼差しを向ける嵐吾に加え、トトリ・トートリドも心から案じるような眼差しと声を花虎に向けている。
「だっ、大丈夫、……大丈夫だ。……じゃれている様で愛らしいなどとは、嗚呼、勿論思っていないともあ痛っ」
「重症じゃな……」
 手遅れかと言わんばかりに力なく首を横に振る嵐吾を、トトリがそっと覗き込むように見上げて。
「嵐吾、戦おう。トトリも、戦う。花虎は、無理しないで」
 月の下だけ咲く花と、湖の水鏡。その美しいだろう光景は、トトリも楽しみにしているもの。
 けれど、独り占めしたいわけではなく。綺麗なものならば村人たちも、猟兵も、見たいと思う皆で分け合えばいいと思うのだ。
(「そのために、ヒューレイオン……倒す」)
 この先にいる幻獣へ想いを馳せながら、トトリはまだ残る仔竜たちへと向き直る。
 本来ならば悪さなどしない純粋な存在であると、自分たちをこの場へ送り届けた娘も言っていた。
「……どうして、怒ってる。何か、苦しい?」
「キュアアアアッ!」
 トトリの訴えかけるような声に、仔竜は応えることはない。応えられる状態でないのは明らかだ。
 ゆえに、今は意識を失わせることが先決と、トトリは七つの色彩託したペイントローラーを握り締める。
「……少し、痛くする。ごめん」
 手心は言葉だけ。描き出された森の緑の色彩が飛沫となって、仔竜たちの意識を塗り込めてゆく。
 命を奪わなくて済むのだけは、幸いだった。
「嵐吾、そっち!」
「うむ、任せよ」
 塗料から辛くも逃れた仔竜が向かう先、既に回り込んでいた嵐吾は頷き、右目の洞へ呼び掛けた。
「虚の主よ、すこし起きて手伝ってくれんかの。あの仔竜らと少し遊んでやれ」
 湖の畔に綻ぶ花となれば、後の準備も抜かりなく。まだ見ぬ光景を楽しむためにも、花の香りの戒めを解けば。
(「――なれも銀鈴蘭は気になろうて」)
 仔竜たちが知るものとは少しだけ違う、けれど同じ形の無数の鈴蘭の花びらが、奔流のように舞い踊って彼らを包み込んだ。

 ――束の間の静けさが辺りに戻る。
「あまり悪さをしてはいけない、解るな」
 すやすやと気持ちよさそうに眠る仔竜たちを三人で邪魔にならない所に運んでやりながら、花虎は夢に刷り込むように言い聞かせていて。
「目が覚めるころには全部終わっとるじゃろ。明日からは楽しく遊んで、いつも通りじゃ」
 無為に命を奪わずに済んで良かったと、嵐吾も小さく安堵の息を零す。
「おまえたちも、必ず助けるから。……待ってて」
 トトリの柔く光を灯す琥珀色の瞳に宿るは、確かな決意。
「さて、これを招いた大物のお出ましはこの先の湖か。――往こう」
 嵐吾の声に二人も頷き、立ち上がる。
 森の奥のその先へ誘うように、彼らの背を押す風が吹いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティア・レインフィール
このような可愛らしい仔竜まで狂暴化してしまうなんて……
オブリビオンの気の影響は、やはり大きいのですね
村の方々の中には、仔竜達と親しくしていた方々も居るでしょう
必ず元に戻して差し上げなくては

神よ、私達を見守りください
【祈り】を捧げ、必ず仔竜達を救うと決意を固めます

【破魔】の力を込めた聖歌を【歌唱】し
仔竜達の敵意を鈍らせます
彼らに贈る聖歌は、清らかな鈴蘭の美しさを歌ったもの
鈴蘭の花言葉は純粋……本来の純粋さを、どうか思い出してください

負傷した方が居たら
【シンフォニック・キュア】を【歌唱】して援護を致します



(「このような可愛らしい仔竜まで狂暴化してしまうなんて……」)
 ティア・レインフィールは痛ましげに、オブリビオンの影響を受けた仔竜たちを見つめる。
 村人たちの中には、仔竜と親しくしていた者もきっといることだろう。仔竜たちに何かがあったら、きっと悲しむに違いない。
 だからこそ、必ず仔竜たちを救うと決意を固め、ティアはすっと息を吸い込んだ。
「――神よ、私達を見守りください」
 祈りを捧げ、ティアは静謐な歌声を響かせる。
 仔竜たちへ届けられるのは、災いを破る力が籠められた聖なる歌。
 純粋の花言葉を持つ、清らかな鈴蘭の美しさを歌ったそれに、本来の純粋さを思い出してほしいという願いを託して。
「キュ……」
「キュウン……」
 ティアの紡ぐ歌声により、オブリビオンの呪縛から無事に解き放たれた仔竜たちが、次々に束の間の眠りに落ちてゆく。
「キュウ……」
 やがて歌が終わる頃には、ティアの耳に穏やかな寝息が届き始めていた。
「……どうやら、元に戻ってくださったようですね」
 そっと手を伸ばせば、そのぬくもりに仔竜が身を寄せてくる。
 ティアは仔竜たちが見ているであろう夢に想いを馳せながら、柔らかく微笑むのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

誘名・櫻宵
🌸フレズローゼ(f01174)と
アドリブ歓迎

銀鈴蘭と月夜の湖、きっと描きがいがあるわ
あたしも見てみたいわ
フレズの手を繋いで森へ
仔竜が現れたならフレズを庇うように前へでる
あらぁ!小さくて可愛いのがたくさんいるわ!全部斬って刻んでいいのでしょう?お姉さんわくわくし……えぇ、ダメなの?
残念だわ…

刀を鞘のままに振るい
怪力を乗せながらも加減しながら範囲攻撃と衝撃波でなぎ払い、仔竜達を正気に戻していくわね!
『散華』でまとめて攻撃するわ
攻撃は残像や見切りで躱すわ

さっさと目を覚ましなさい?
フレズが銀鈴蘭の絵を描きたがってるの

そうね、フレズ
悪い子はお仕置きしなきゃいけないわね
それに、おやつだって用意してるのよ


フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓櫻宵(f02768)と一緒
アドリブ等歓迎

櫻宵、可愛い竜だよ!……って、殺しちゃダメだからね!
悪い子はいけません!って気絶させて元に戻すの!
櫻宵の手を繋いで森歩き
目的は勿論、銀鈴蘭の湖!ボクはそこで絵を描きたいんだ!

敵が現れれば、櫻宵の背中はボクが守ると筆を構えて……マヒ攻撃を乗せた雷撃の全力魔法を描いて仔竜達を正気に戻すの
攻撃は第六感で察知して、見切りや残像で躱すよ!
囲まれないように吹っ飛ばして『女王陛下は赤が好き』でぱーんと目覚ましするよ!
キミの背はボクが守る
櫻宵、やさーしくケーキカットみたいに斬るんだからね!
正気に戻して逃がすんだ

仔竜達を惑わすなんて
大元の幻獣もしっかりやっつけなきゃ!



 この森の向こうに待つ景色には、どんな色彩と愛が満ちているのだろう。
「櫻宵、可愛い竜だよ!」
「あらぁ! ホント、小さくて可愛いのがたくさんいるわ! 全部斬って刻んでいいのでしょう? お姉さんわくわくし……」
「……って、殺しちゃダメだからね! 悪い子はいけません! って気絶させて元に戻すの!」
「……えぇ、ダメなの? 残念だわ……」
 抜きかけた刀が、再び鞘に収まる。
 もう、と頬膨らませるフレズローゼ・クォレクロニカに誘名・櫻宵は心なしか物憂げな溜め息で応じつつ、けれど現れた仔竜たちを前に、フレズローゼを庇うように前へ出る。
「キューーーッ!」
「キュアアーッ!!」
 二人を出迎えたのは、木々のざわめきを覆い隠すほど賑やかな仔竜たちの声。揃って鳴く声は可愛らしくも聞こえるが、そこに含まれている感情は紛れもない『敵意』だ。
 そして、その敵意を消すことが、自分たちの役目。
「櫻宵、やさーしくケーキカットみたいに斬るんだからね!」
「わかってるわよ、フレズ。……優しく、ね?」
 愛用の絵筆を構えつつ念を押すフレズローゼに、櫻宵は優しく頷いて。そうして一歩踏み出せば、力任せに振るわれるのは鞘に収まったままの桜の太刀。
「さぁ、さっさと目を覚ましなさい? フレズが銀鈴蘭の絵を描きたがってるの!」
 放たれるのは、『存在』を断ち切る不可視の斬撃。生み出された衝撃波は、斬るでも刻むでもなく仔竜たちを纏めて薙ぎ払い、
「――キミの背はボクが守るよ、櫻宵」
 フレズローゼが真っ直ぐに掲げた虹薔薇の絵筆、その筆先から眩い雷光の色彩が迸り、櫻宵の斬撃に薙ぎ払われて吹き飛んだ仔竜たちを絡め取った。
「ちょっと痛いかもしれないけど、ぱーんと目覚ましするよ!」
 絵筆はそのまま無数の赤と白の薔薇の花弁に姿を変えて、仔竜たちの外から中からぽんっと小さく次々に爆ぜて意識を散らす。
「キュウ……」
「キュー……」
 風が収まれば、二人の目の前にはぐるぐると目を回して倒れる仔竜たち。一先ず無事にこの場を切り抜けられたことに安堵しつつ、フレズローゼは櫻宵へ手を差し伸べた。
「この子たちを惑わす大元の幻獣も、しっかりやっつけなきゃ! 行こう、櫻宵!」
「そうね、フレズ。悪い子はきっちりと、お仕置きしなきゃいけないわね」
 差し出された手を取り、はぐれぬようしっかりと繋いで。櫻宵はまだ幼い少女の歩調に合わせるようにしながら、ゆっくりと歩き出す。
「それに、フレズが描く銀鈴蘭と月夜の湖を早く見てみたいし、おやつだってちゃんと用意してあるのよ」
「おやつ!? うん、取っておきの世界を描いてみせるから、楽しみにしてて!」
 悪戯っぽくウィンクをしてみせる櫻宵に、フレズローゼの苺月の瞳がきらり、煌いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

カーティス・ダウラント
【ニケ(f02710)】と共に。

まだ幼い竜が相手、か。
被害が出ているとは言え、少しばかり心苦しいな。

――嗚呼。分かっているよ、ニケ。
彼らになるべく痛みを与えぬ様、善処しよう。


仔竜の動きを制限すべく、
【ブレイズフレイム】の炎を周囲に展開させよう
後方に控えたニケに、仔竜の爪が届かぬ様
対峙するのは少数、近距離で済ませたい

片刃の大剣を構え、
仔竜の注意を引き付け乍ら攻撃を耐える
防御に徹しつつ、出来る限り【力溜め】を
機がくれば【鎧砕き】を応用する形で
重く峰打ちを落としていこう
一撃ずつで済ませられたなら、良いのだが


お疲れ様、ニケ。後方支援有難う。
助かったよと彼女に感謝と労いの言葉を。
あとは少女の意を汲もう。


ニケ・セアリチオ
【カートおじ様(f02644)】と一緒に向かいます!

憩いの場が無くなってしまうなんて……とても、辛いですよね
近隣の方の為にも、早く解決しなければ!

――と思っていたのですけれど
あんなに小さな子達まで、暴走してしまっているなんて
でも、あの子達が悪さを続ければ本格的に討伐されてしまうのですよね
ねぇ、おじ様。
どうにか、彼らが辛くならない様に取り計らえないでしょうか?


ロッドを手に後方へ
【生まれながらの光】で、カートおじ様の治癒に努めます
仔竜が近くに来てしまったら、
ロッドを振っての【衝撃波】で牽制を

戦闘が終わったなら、仔竜達の無事を確認しても良いでしょうか?
大丈夫そうであれば、彼らも回復してあげたいのです



 森の奥、澄んだ水を豊かに湛える湖は、傍の村に住む人々にとっての憩いの場。
 ゆえに早く事件を解決し、ありふれた日常と平穏を取り戻さなければとニケ・セアリチオは思っていた――けれど。
「キューーーッ!」
 行く手を阻む仔竜たちまでもが影響を受け、見境なく人を襲おうとする程にまで暴走してしまっているのを見ると、心が痛む。
 けれど、彼らが悪さを続ければ、本格的に討伐されてしまうだろうことは明らかで。
「ねぇ、カートおじ様。どうにか、彼らが辛くならない様に取り計らえないでしょうか?」
 ニケの願うような声に、カーティス・ダウラントは静かに頷いてみせる。
「――嗚呼。分かっているよ、ニケ。彼らになるべく痛みを与えぬ様、善処しよう」
 まだ幼い竜を相手にすることは、いくら被害が出ているとは言え、カーティスにとっても心苦しいものだ。
 ゆえに、なるべく苦しませずに済ませたいと、カーティスは片刃の大剣を構える。
「ニケ、下がっていなさい」
「わかっているわ、おじ様!」
 後方に下がったニケに仔竜の爪が届かぬよう、カーティスは自身の身体から噴き出す『地獄』の炎を、仔竜の群れへ解き放った。
 放たれた紅蓮の炎が、さながら障壁のように燃え広がる。
 だが、眼前の敵を排除することにのみ意識を向けている仔竜たちは、決して怯むことなく声を上げながら二人に襲い掛かった。
 一歩踏み込んだカーティスは、自らを盾として仔竜を引き付ける。
 一方、ニケもカーティスという壁を超えてきた一体の仔竜へ、手にしたロッドを振っての衝撃波で牽制を。
「キュアアアッ!」
「キュウッ! キュウッ!」
 鋭く鳴きながら、爪でカーティスを切り裂く仔竜たち。じゃれつくような彼らの攻撃は、見た目よりも重い威力を伴ってカーティスを襲う。
 仔竜たちの攻撃に耐えながら力を溜め、静かに機を窺うカーティスへ注がれる癒しの光は、ニケの祈りの形だ。
(「……そろそろか」)
 しばらく防御に徹していたカーティスは見出した機を逃さず、手近な仔竜へ大剣を叩きつけた。
「キャウッ!?」
 重い峰打ちに、呆気なく気を失う仔竜。確かな手応えにカーティスはそのまま剣を振るい、仔竜たちを一匹ずつ気絶させていく。
 やがて、カーティスはゆっくりと剣を下ろし、地獄の炎を掻き消した。
 ニケは戦いが終わったことを知り、彼の元へと駆け寄る。
「おじ様、傷の痛みはありませんか?」
「大丈夫だ、ニケ。助かったよ、有難う」
 後方で支え続けてくれていた少女に、カーティスが告げるのは感謝と労い。
「……おじ様、仔竜達の無事を確認しても良いでしょうか?」
「勿論だよ、ニケ」
 倒された仔竜たちへ、ニケは癒しの光を分け与える。
「キュ……」
「キュウン……」
 仔竜たちの顔に穏やかさが戻るのを見て安堵の息をつき、ニケはカーティスへと振り返った。
「行きましょう、おじ様!」
 ――この災いの元凶たる、幻獣の元へ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

境・花世
七結(f00421)と

新しい世界へ誘うように
七結へ真直ぐ手を差し伸べて
緑深い、空の蒼い、雄大な世界に
きみは何を想うだろう

軽やかに駆け出す森の端
向かい来る仔竜たちを
見切って早業で避けながら進み

もし七結を狙う仔が居れば
翻す扇から放つ衝撃波で、
纏めて遠ざけてゆくよ

やがて囲まれれば作戦通り、と
鮮やかに笑ってみせて
七結、あれ、出来る?
似て非なるわたしときみの花
薄紅と真紅とを、共に――

“花開花落”

巻き起こる風に散らす花弁が
一斉に呼吸を塞いでゆくだろう
落ちてくる仔はキャッチして
優しく地に横たえながら

宙に舞い続けるふたつの紅は
この世界を彩るものになれたかな
見惚れるきみの横顔もうつくしいと、
風のようにささやいて


蘭・七結
カヨさん(f11024)と

初めて足を踏み入れる剣と魔法の世界
薄紅花の彼女の手を取り最初の一歩
ナユの住む夜闇の世界とも、愛する和の世界とも違う
鮮明な自然の広がりを、美しいと感じるわ

共に駆けてゆく森中
初見の愛らしい小竜たちを見切りながら進むわ
カヨさんの背後に回る悪い子には、『彼岸』と『此岸』の双刀を使用し、早業で峰打ち
本来であれば切り捨ててしまうのだけれど
純粋なあなたたちを殺めるのは無粋でしょう

森の広い場所へおびき寄せ
笑みを浮かべる彼女にうまくいったわね、と
ええ。もちろん。さあご一緒に
ナユたちの美しい〝あか〟をご覧あれ

〝紅恋華〟を展開
薄紅と深紅。似て非なる花嵐
美しいその光景に、目を奪われてしまうわ



 ――緑深い、空の蒼い、雄大な世界に。
 きみは、何を想うだろう。

 初めて足を踏み入れる、剣と魔法の世界。
 自身の住む夜闇の世界とも、愛する和の世界とも違う、鮮明な自然に彩られた世界に蘭・七結が覚えたのは、美しいという感情。
 新たな世界へ誘うように、境・花世は七結へ真っ直ぐに手を差し伸べる。
「行こう、七結」
「ええ、カヨさん」
 重ねた手を繋ぎ、足取りは軽やかに、二人は森を駆け抜ける。
 その最中、キュウ、と愛らしくも見えざる悪意に侵された敵意の宿る声で鳴きながら、二人の行く手に立ちはだかる仔竜たち。
 向けられる爪の乱舞や風の嵐を掻い潜りながら、二人は奥へ、奥へと駆けていく。
 ――本来であれば、斬り捨ててしまうのだけれど。
「純粋なあなたたちを殺めるのは、無粋でしょう?」
 花世の背後に回った一体へ、七結が向けるは『彼岸』の白牙と『此岸』の白刃。
 同時に七結を襲おうとした仔竜たち目掛け、花世は扇を翻す。
 放たれた峰打ちが仔竜の意識を奪い、衝撃波が纏めて遠ざける。
 それでもなお追ってくる仔竜たちはそのままに、『追いかけっこ』を楽しみながら――やがて、二人は開けた場所で足を止めた。
「キュウッ! キュウッ!」
 程なく、追いついてきた仔竜たちが、二人をぐるりと取り囲み、獲物を前に歓喜にも似た賑やかな声を上げ始める。
 ――けれど、これも二人の作戦の内。
 自分たちを囲む仔竜の群れを前に全く動じることもなく。作戦通りと鮮やかな笑みを浮かべる花世に、七結もうまくいったわねと微笑んで。
「七結、あれ、出来る?」
「ええ。もちろん。さあご一緒に」
 ――ナユたちの美しい〝あか〟を、ご覧あれ。
 花世は翻した扇を無数の薄紅の牡丹の花弁に変え、七結は牡丹一花の花時雨を放つ。
 薄紅と深紅。牡丹と牡丹一花。似て異なる二人の花が、仔竜たちを一息に呑み込んで宙を舞う。
 月明かりの下咲き誇り、舞い踊る花嵐。
 宙に舞い続けるふたつの紅は、この世界を彩るものになれただろうか。
「とても美しい、光景ね」
「きみの横顔も、うつくしいよ」
 目を奪われる七結の横顔に、花世はそよ風のようにそっと囁いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ヒューレイオン』

POW   :    ディープフォレスト・アベンジャー
【蹄の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【自在に伸びる角を突き立てて引き裂く攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    チャイルド・オブ・エコーズ
【木霊を返す半透明の妖精】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ   :    サモン・グリーントループ
レベル×1体の、【葉っぱ】に1と刻印された戦闘用【植物人間】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ミレイユ・ダーエです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 仔竜を蝕んでいた悪意を祓った猟兵たちは、やがて森を抜け、湖の畔へと辿り着く。
 日が暮れて、穏やかな夜が訪れた世界。
 空に昇る丸い月と煌めき始めた無数の星が、優しく世界を照らし始めていた。
 凪いだ湖面に映るのはもうひとつの月。
 そして、湖畔に群生するという銀鈴蘭も、少しずつ綻び始めていて。
 ――だが、猟兵たちは気づいていた。
 湖の畔に佇む、一体の獣の姿に。
 そして、獣も、また。

 猟兵たちの気配にゆっくりと振り返った獣は、清冽な、神々しいとも言える気配を湛えながらも、同時に揺るぎない怒りをその瞳に宿していた。
 一歩、こちらへと歩む度に、その足跡に木々が芽吹く。
 そうして森という彼の領域を広げていく――幻獣、ヒューレイオン。
 彼の領域と化したこの森に踏み入った猟兵たちへ、幻獣は今まさに牙を剥く。
グリツィーニエ・オプファー
確かに、無遠慮に己が領域を荒らされましたら怒るのも道理
いやはや然し元を辿れば此処は人の領域に御座います
――誠に僭越で御座いますが、お引き取り願いましょう

彼の幻獣は植物人間を使役するとの事
戦力を増強されては堪りませぬ故、一度に片付けたく存じますが
…ハンス、宜しいですかな?
撫ぜた鴉の身を、そして手に握る黒剣を黒藤に変え
…咲くは美しき銀の花のみでは御座いませぬ
叶う限り敵の多くを巻き込むよう行使するは【黒き豊穣】
極力綻び見せる花は散らしとう御座いませぬ故
我が花弁が大地をも傷つけぬよう細心の注意を

…相手は強敵故に殊更、一層の猟兵方への支援が必要と考えられます
皆様の隙を、死角を補うよう立ち振る舞いましょう



 遠く、高く、響く獣の声が風を呼ぶ。
 ここから去れと言わんばかりのアクアブルーの水晶の瞳が、猟兵たちを睨め付ける。

 確かに、己の領域とした場所を無遠慮に踏み荒らされれば、怒るのも道理と言えるだろう。
「いやはや、然し元を辿れば此処は人の領域に御座います。――誠に僭越で御座いますが、お引き取り願いましょう」
 グリツィーニエ・オプファーは迷うことなくそう告げて、肩口に留まる鴉へ呼び掛けた。
「ハンス、……宜しいですかな?」
 窺うように撫ぜた濡羽色のその身と反対側の手に握られた慈悲の黒剣が、忽ちの内に無数の黒藤の花弁へと姿を変えて夜風に舞い踊る。
 同時に幻獣もまた、トン、と踵で地面を叩き、人の形に組み立てた枝葉に仮初の命を吹き込んだ。
 一斉にグリツィーニエへ、そして他の猟兵たちへ襲い掛かってくる、その身を飾る一枚の葉に数字を刻んだ妖精たち。
 無数の花弁と無数の枝葉が、月明かりの下で交錯する。
「……咲くは美しき銀の花のみでは御座いませぬ」
 グリツィーニエの声が落ちると同時。
 黒き豊穣の花が、ヒューレイオンを、そして彼の幻獣が今まさに生み出した兵士たちを呑み込んだ。
 大地に咲く銀花を揺らす花弁は、けれど、グリツィーニエの心を映し、綻び始めたばかりの淡い光を散らすことはなく。
 湖畔を渡る風に乗り、瞬く星のように空を駆け、無数の黒藤は再びグリツィーニエの元へとかえっていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロー・オーヴェル
住処に勝手に踏み入って悪かったな
だがお前さんの住処は刺々しくて心が安らがない

「森というのは訪れた者に優しくあるべきだ」
芽吹いた物は何時かは枯れる
お前さんの命もその不変の理からは逃れられない

『真の姿を解放』
恰好は変わらないが幽霊の様に
灰色に光るぼうっとした半透明の姿

ユーベルコードの効果に
【見切り】も併用し敵の攻撃を躱しつつ攻撃

併せて敵の行動は常に注視し
敵攻撃の挙動を読める様極力試みる

敵攻撃を避けえない時は
武器で防いだり身をよじったりして対応

俺の芽吹いた命もいずれは枯れる
でもそれはここではない

月明かりの下で朽ちるのもなかなか悪くない最期だが…
「それはお前さんに譲ってやる。俺はまた違う最期を選ぶさ」



 ――直後、死角から音もなく踏み込んだロー・オーヴェルが、銀灰色の刃を閃かせた。
 肉を切り裂いた手応えに、素早く飛び退ったヒューレイオンが人のそれとは異なる色合いの血の雫を垂らす。トン、と鳴らした踵の下から綻ぶ芽。
「住処に勝手に踏み入って悪かったな。だがお前さんの住処は刺々しくて心が安らがない」
「――……」
 ひゅ、と風の哭くような音は、幻獣の声だろうか。同時に、ヒューレイオンにより生み出された半透明の妖精が、夜の闇に溶けた。
 視認し難いそれがヒューレイオンと共にこちらへ狙いを定めているのを感じながら、ローは静かに告げる。
「森というのは訪れた者に優しくあるべきだ」
 その時、ローの身体が見た目自体はそのままに、灰色の光を帯びて辺りの景色を透かし始めた。
 まるでこの世ならざる者のようなその姿こそ、猟兵たるローが解き放った真の姿。
「芽吹いた物は何時かは枯れる。……お前さんの命も、その不変の理からは逃れられない」
 闇に紛れ、気配を隠し、ローの動きを追い掛けていた幻獣の下僕たる妖精が、迫る。
 反芻する木霊と、膨れ上がる殺気。
 だが、ローはまるで風の精霊の囁きを聴いたかのようにその動きを予測し、振り抜かれた妖精の爪の一撃を回避した。
 代わりに振り抜かれた鋭利なナイフの切っ先が、妖精を切り裂いて夜闇に散らす。
 ローはそのままヒューレイオンとの距離を詰め、胴を抉るように刃を突き立てた。
「俺の芽吹いた命もいずれは枯れる。でもそれはここではない。月明かりの下で朽ちるのもなかなか悪くない最期だが……」
 再び後方へと退いたヒューレイオンへ、他の猟兵たちが想いを、刃を向けるのを見やりながら、ローは微かに口の端を釣り上げた。
「それはお前さんに譲ってやる。俺はまた、違う最期を選ぶさ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シエル・マリアージュ
「この世界を塗りつぶさせはしない」
この世界に住む人々の穏やかな時間を取り戻すため、猟兵達を協力してヒューレイオンに挑む。
【2回攻撃】の手数をいかして、【属性攻撃】の炎と【衝撃波】で強化した【鈴蘭の嵐】で植物人間の数を減らして、聖銃剣ガーランドの射撃でヒューレイオンを狙っていく。
【戦闘知識】と【見切り】で敵の動きを予測、【誘導弾】で敵の動きに合わせて攻撃を当てるようにして、【フェイント】と【残像】で敵を惑わせて敵が攻撃し難くするようにして、敵が攻撃を外したらその隙を突いて【カウンター】を仕掛けていく。
敵を侮らず【第六感】に嫌なものを感じたら回避行動を優先する。



 この場所を愛する人々の、穏やかな時間を取り戻すため。
 シエル・マリアージュは共にこの戦場に立つ猟兵たちと共に、倒すべき敵であるヒューレイオンへと立ち向かう。
 ヒューレイオンが召喚した草葉の兵士たちへ、シエルが放つのは無数の鈴蘭の花弁に鮮やかに踊る炎を灯した衝撃波。
 兵士たちはその力を合わせることすらままならず、炎に焼かれ消えていく。
「――、……」
 ヒューレイオンの瞳がシエルを捉える。次なる攻撃に移ろうと身構えた幻獣へ、シエルが向けるのは黒き剣――聖銃剣ガーランド。
 剣はシエルの意思に従い、慈悲の聖銃へと姿を変える。だがそこから撃ち出される弾丸の群れに慈悲はなく、ただ悪しき存在を屠る力となって幻獣を穿つ。
 フェイントを絡めて引き金を引き、残像を残しながら戦場を駆け回るシエル。
 重量のある蹄が残像を蹴って散らした次の瞬間、シエルは月明かりに照らされたヒューレイオンの影から慈悲の刃を踊らせていた。
 不意打ちによろめいたヒューレイオンが、シエルと距離を取る。
 その姿を真っ直ぐに見つめながら、シエルは凛と告げた。
「この世界を、塗りつぶさせはしない」

成功 🔵​🔵​🔴​

逢坂・宵
美しい獣ですね
これだからこの世界は好きです
美しく気高く、そして強い生物が跋扈する
けれど、人々に危害を加えるのならば
戦わざるを得ませんね

不肖この星術師、お相手仕ります
お手柔らかに―――死合いましょう

「ディープフォレスト・アベンジャー」がなかなかに厄介そうですね
射程圏外からちまちまと攻撃していきたいところですが
必要があれば近寄らざるを得なさそうです

『属性攻撃』『2回攻撃』『高速詠唱』『全力魔法』を用いて
『天撃アストロフィジックス』で攻撃します
猟兵の仲間とも連携や協力をおこなっていきましょう


雨糸・咲
天と地と、二つの空はこんなにも優しいのに
月映す湖の畔に笑み始めた花も、
そして、貴方も――こんなにも美しいのに
肌を刺す様な憤怒を纏う獣の姿を見ると
少し悲しくなってしまいますね

けれど、貴方はそういうものなのでしょう
…ならば私達も、真っ直ぐ立ち向かうだけ

【地形の利用】、【聞き耳】で可能な限り攻撃を躱し
【フェイント】でミスを誘って
【高速詠唱】で隙を突くよう動きます

【第六感】で妖精を発見できれば
他の方を狙っている場合は声掛けで注意を促しましょう

葉っぱ人間さんが現れたら、
合体されないよう速やかに各個撃破に努めます

私が狙われている場合は、オペラツィオン・マカブルを
――コノハナさん、お願い

※アドリブ、絡み歓迎



「……美しい、獣ですね」
 自分たちと、決して相容れることの叶わぬ存在であったとしても。
 幻獣の美しさに、逢坂・宵は改めて、この剣と魔法と竜の幻想世界――アックス&ウィザーズが好きだと思う。
 だが、いかに美しく気高い、この幻想世界に跋扈するに値する存在であったとしても、
 人々に危害を加えるのならば、戦い、そして倒さなければならない。
 幻獣の澄んだ瞳が、こちらを向く。
 ともすれば心の奥まで見透かされてしまいそうな眼差しを受け止め、宵は告げる。
「不肖この星術師、お相手仕ります。お手柔らかに――死合いましょう」
 太陽は地を照らし、月は宙に輝き、星は天を廻る。
 そして時に、彼らは我々に牙を剥く。
「――さあ、宵の口とまいりましょう」
 紡ぎ上げた言の葉が忽ちの内に力を帯びて、無数の星の輝きを導いた。
 一度、二度、放たれた流星の矢はまるで空から落ちるような軌跡を描き、鮮烈な煌めきを帯びて一斉にヒューレイオンへと収束する。
 星に穿たれながらも踏み止まったヒューレイオンはすぐさま踵で地面を蹴り、足元に芽吹いた緑を人の形に編み上げた。
 無数の葉と茎で形作られた兵士たちが、宵へ、そして他の猟兵へ躍り掛かる。
「――コノハナさん、お願い」
 自身に狙いを定めた枝葉の兵たちを前に、雨糸・咲は自らの身体から完全に力を抜いた。
 数字を足して力を増しながら咲へと迫る植物の兵士。
 繰り出された蔦の穂先が、糸の切れた操り人形のようにその場に崩折れた咲を貫くかに思えた次の瞬間、吸い込まれるように消えた力が、黒い瞳と柔和な表情を持つ、紳士的な蛙のぬいぐるみから『排出』される。
 紳士な蛙――コノハナの優雅な所作に、ふわりと仄かに梅花が香った。
 天と地と、夜色を広げる二つの空はこんなにも優しい。
 月映す湖の畔に笑み始めた花も、――そして、
「貴方も――こんなにも美しいのに」
 コノハナを抱き上げ、咲は真っ直ぐにヒューレイオンを見やる。
 肌を刺すような憤怒を纏い、どれほど傷ついてもなお己に定められた終焉に抗おうとする獣の姿は、どこか物悲しさすら感じさせて。
「けれど、貴方はそういうものなのでしょう。……ならば私達も、真っ直ぐ立ち向かうだけ」
 白くたおやかな両の腕から伸びた葡萄の蔓が、ヒューレイオンを絡め取る。そこに、宵が再び放った流星の矢が降り注ぐ。
「――、……!」
 響き渡るのは、幻獣の、悲しくも怒りに満ちた咆哮。
 その音にともすれば圧倒されてしまいそうになる心を、咲はしっかりと自らの手で繋ぎ止める。
 どちらも譲ることの出来ない、確かな想い。
 それがぶつかりあった先にどちらかしか残れないからこそ、猟兵たちは想いを、力を込めて、世界の脅威たる獣へと立ち向かう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

糸縒・ふうた
【リル(f10762)】と一緒
アドリブ・改変等歓迎

春を萌え出づらせるお前が、悪いやつだとは思えない
でも、お前がいるべき場所はここじゃないってことはわかる
本来在るべきところに、還ってもらうぜ

【疾風】と一緒に戦おう

任せて
リルがいてくれるから、オレはいつも以上に強くなれるよ

数字の高い植物人間を潰すことを中心に
余裕がありそうなら積極的に懐へ

出来そうなら【福音】で攻撃回避にも気を配りつつ
ついてきた仔竜たちにも協力をお願いしたいな

お前たちだって銀鈴蘭を見たいだろ?
オレも、リルと、一緒に見たい
だから、手伝って


リル・ルリ
■ふうた(f09635)と一緒
✼アドリブ等歓迎

「あのこが幻獣……?すごく綺麗、で強そう……だけれど。仔竜達や村の皆の為にも、骸の海へかえさなきゃ」
皆、困ってしまうから
ふうたも一緒だから怖くはないよ
ふわりと微笑んで戦う準備

「ふうた、怪我しないようにね?僕も、そう。君を守れるようにがんばる」
攻撃は【野生の勘】で察知して【空中戦】でゆらりと躱す
仔竜達も手伝ってくれるなら嬉しい
大丈夫
君達も守るよ

【歌唱】を活かして精一杯歌うのは『光の歌』――悪い事をしてはだめ
君の居るべき場所へおかえり

怪我をしたならば【癒しの歌】を

綺麗な銀鈴蘭に平和な湖に――ふうたと
皆の笑顔
僕はそれが見たい
僕ができる精一杯を歌って
守ろう



「あのこが幻獣……? すごく綺麗、で強そう……だけれど。仔竜達や村の皆の為にも、骸の海へかえさなきゃ」
 かえさないと、皆、困ってしまうから。
 リル・ルリは夜風に月光ヴェールの尾鰭をそよがせながら、傍らに立つ糸縒・ふうたにふわりと微笑みかけた。
「ふうたも一緒だから、怖くはないよ。……ふうた、怪我しないようにね?」
「任せて。リルがいてくれるから、オレはいつも以上に強くなれるよ」
 ふうたも笑ってしっかりと頷き、そして二人はヒューレイオンへと向き直る。
「キュウッ!!」
「キャウ! キャウ!」
 すると、一緒についてきていた仔竜たちも元気よく声を揃えて鳴いた。
 任せろ、あるいは頑張る――そんな想いを伝えてくれているかのような彼らに、二人が向けるのは頼もしげな眼差し。
「そうだな、お前たちも銀鈴蘭、見たいもんな」
「君達も手伝ってくれるなら、嬉しい」
「キュイーーっ!」
 こちらへ視線を向けたヒューレイオンへ、仔竜たちが次々に飛び掛かっていく。
 鋭い爪を閃かせ、あるいは水のブレスを吐き出して戦う仔竜たちへ、ヒューレイオンはちらりと一瞥をくれると、その小さな体を勢いよく蹴り上げた。
「キューーーッ!!」
 呆気なく宙を舞う小さな体を、伸ばされた水晶の角が打ち据える。
「……大丈夫、ふうたも君達も、守るよ」
 仔竜たちの奮闘に、傷ついたその姿に哀しげに瞳を揺らし、リルは澄んだ繊細な声を夜風に乗せる。
 ――愛を灯す歌、君に、癒しの灯火を。
 リルの唇が紡ぐのは、甘やかに蕩け心に染み渡り、心を奪う魅惑の歌声。
 銀鈴蘭の咲く場所で彼の歌を聴いたなら、きっと今よりももっと素敵に聴こえるのだろう――そんなことを何とはなしに思いながら、ふうたは息を吸い込んだ。
「駆けよう、一緒に。――疾風!」
 すると、ふうたの呼ぶ声に応え、彼の二倍の大きさの狼が陰から現れた。
 互いの力を高め合い、命を分かつ片割れのような存在。
 その背に乗って、ふうたは幻獣の懐へ飛び込み、間近で対峙する。
 色づいた水晶のような、透き通った瞳。
 そこに宿る感情は、ただただ自らの領域を侵しに来た猟兵たちに対する、怒りや悪意と呼べるものに違いなかった。
 ヒューレイオンは踵を鳴らし、足元に萌え出る新芽と葉を編み上げて人形を作り上げた。
 顔と思しき場所に貼られた葉には『1』の刻印。それらが次々に重なり合って、数字を増やしていく。
 綺麗な銀鈴蘭に、平和な湖、――そして、ふうたと皆の笑顔。
 心に思い描くその光景を、リルは見たいとただ願う。
(「……だから、僕ができる精一杯を歌って、守ろう」)
 そうしてリルが紡ぐのは、破魔の光を纏う光の歌。
「光あれ、光あれ――……」
 破魔の力を帯びた光のベールがヒューレイオンを呑み込み、その身に巣食う魔を崩壊させてゆく。
「春を萌え出づらせるお前が、悪いやつだとは思えない。でも、お前がいるべき場所はここじゃないってことはわかる」
 挑むように幻獣を見据え、ふうたは真っ直ぐに告げた。
「だから、本来在るべきところに、還ってもらうぜ」
 次の瞬間、疾風は渾身の力を込めて、ヒューレイオンへと喰らいついた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓櫻宵(f02768)と一緒
アドリブや絡み等歓迎

綺麗な角の綺麗な幻獣だね!……うん、櫻宵ならそう言うと思った
生き生きしちゃってもう……キミが狩りたいと言うなら手伝うよ!
でも、怪我しないようにしてよね!
櫻宵を鼓舞

ごめんね幻獣さん
櫻宵がキミの首、欲しがってるんだぁ
観念してね

空中戦と見切りを使って躱しオーラ防御で防ぎながら攻撃!
マヒ攻撃をのせた炎の薔薇を描いて咲かせて、全力魔法を叩きつけていくよ
櫻宵が上手く斬れるように手伝うよ
それにほらここは、キミの居るべき場所じゃないからさ!
【黄金色の昼下がり】で動きをとめてあげるから
さぁ、首をはねておしまい!

キミをお家まで送ってあげる
この湖に怒りは似合わないよ


誘名・櫻宵
🌸フレズローゼ(f01174)と
アドリブ歓迎

きゃ!見て、フレズ!
なんて綺麗な角…首ごと斬りとって玄関に飾りたいわ!
今度は斬っていいのよね!
存分に
楽しみましょ!

フレズに何かあったら直ぐに庇えるように気を配るわ
炎属性を付与した刀を構え微笑む
これを斬れば皆も助かる
あたしも楽しいし一石二鳥よね!
衝撃波を込めてなぎ払い
傷ができたなら抉るように斬りつけ
攻撃は鞘で盾受け、見切りや残像で躱してフェイントついでに串刺しに
怪力やグラップルも織り交ぜていくわね
草刈りも楽じゃないの
フレズが作ってくれた隙に感謝してダッシュで一気に踏み込んで
美しい【絶華】を咲かせてあげる

美しい歌が良く似合う素敵な夜を
穢させはしないわ



 猟兵たちの攻撃を受け、傷ついてもなお、幻獣は凛と己が領域に立ち続けていた。
「きゃ! 見て、フレズ! なんて綺麗な角……首ごと斬りとって玄関に飾りたいわ!」
「……うん、櫻宵ならそう言うと思った。生き生きしちゃってもう……」
 まるできらきら輝く宝物を見つけた子供のようにはしゃぐ誘名・櫻宵を見て、フレズローゼ・クォレクロニカは心なしかしみじみと。
 とは言え、共にこの場に来た二人の目的は同じ。ゆえに、
「今度は斬っていいのよね! ――存分に楽しみましょ!」
「キミが狩りたいと言うなら手伝うよ! でも、怪我しないようにしてよね!」
 嬉々として刀を抜く櫻宵を鼓舞しつつ、フレズローゼもまた月色の絵筆の先を幻獣――ヒューレイオンへと差し向ける。
「ごめんね幻獣さん、櫻宵がキミの首、欲しがってるんだぁ。――だから、観念してね!」
 それぞれの得物に炎を踊らせながら、フレズローゼと櫻宵が動いたのは同時。
「これを斬れば皆も助かる。あたしも楽しいし一石二鳥よね!」
「それにほらここは、キミの居るべき場所じゃないからさ!」
 紅鶴と星蝙蝠の腰翼をはためかせ、フレズローゼが空に滑らせた筆先が描き出すのは情熱を灯す炎の薔薇。舞い踊る花弁に彩られ動きを鈍らせる幻獣の巨躯を、櫻宵が同じく鮮やかな炎を纏う血桜の刀で薙ぎ払う。
 ヒューレイオンを守るように編み上げられた草葉の兵士たちは、風に舞う炎の彩に瞬く間に包まれて、二人の舞台を彩る光となって爆ぜ消えた。
「キミをお家まで送ってあげる。この湖に怒りは似合わないよ」
 ――さぁ、首をはねておしまい!
 フレズローゼが広げるのは、女王陛下の気まぐれで黄金色の昼下がりに始まる永遠のお茶会を描いたキャンバス。そこから飛び出したきらきら光る蝙蝠と紅茶と砂糖が嵐のように乱舞して、幻獣の『時間』を奪い磔にする。
「櫻宵、せっかくだから上手に斬ってよね!」
「任せて頂戴フレズ! 美しい歌が良く似合う素敵な夜を、穢させはしないわ!」
 緑の障壁を焼かれ剥き出しになったヒューレイオンへ、櫻宵は残像を纏い一気に肉薄する。
「さぁ、桜のように潔く……散りなさい!」
 口元に浮かぶ微かな艶やかな笑みは屠桜。狙うは唯一つ、――幻獣の、首だ。
 超高速で放たれた不可視の斬撃が、空間ごと幻獣の体を断ち斬るかの如き一閃を刻みつける。
「――、……!」
 声なき悲鳴を上げたヒューレイオンの首元から、人のそれとは異なる色の血が噴き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セツナ・クラルス
仔竜たちをたぶらかしたのはあなたかな
愛らしいものを傍においておきたいという気持ちは分からなくもないが
彼らの意思を掌握しようとするのには同意しかねるかな

単純に力のみでの勝負ではあまりにも分が悪い
今回はそうだね…土の力を借りようか
砂埃で視界を遮り、足元の土をぬかるみに変えて、
敵の機動力を削ぐように努める
これで少しは攻撃を見切りやすくなっただろうか
回避不能な攻撃は土の壁を作りガードor威力を殺し、攻撃を受け止める

受けた攻撃は一時的に想像した別人格が使用
借用できるのは一度きりだ
発動タイミングは、
フェイントも織り交ぜ、不意打ち気味で発動できればいいのだが



 大地に流れる血すらも、豊穣の源のよう。
 けれど、今猟兵たちの前に立ちはだかる幻獣は、オブリビオン――捨てられた過去の残滓。世界の敵だ。
「愛らしいものを傍においておきたいという気持ちは分からなくもないが、彼らの意思を掌握しようとするのには同意しかねるかな」
 猟兵たちの力により、本来あるべき姿を取り戻した仔竜たち。そんな彼らを誑し、我が意のままにしたヒューレイオンへ、セツナ・クラルスは静かに告げる。
 交錯する眼差し。圧倒的な力と重量のあるヒューレイオンに対し、純粋な力のみでの勝負ではあまりにも分が悪い。
 そう判断したセツナはヒューレイオンとの距離を開いたまま、とん、と、精霊の力宿す君影草の杖で地面を叩いた。
 すると、土の精霊たちの力により、細かな粒の砂埃が風に乗って舞い上がる。無数の砂がヒューレイオンの視界を覆って目を眩ませ、更にその足元の土をぬかるみに変えて動きを阻んだ。
「――、……!」
 声無き叫びが風を震わせる。同時に地の戒めから逃れるように跳躍した幻獣が、セツナへ空から降る星のような重みを乗せた蹄の一撃を刻みつけようとしたが――。
「私は無から有を創るのは苦手でね。だから、あなたの能力を利用させて貰うよ」
 セツナがそう紡ぐと同時に前方の地面が大きく盛り上がり、ヒューレイオンとの間に現れた土の防壁が蹄を呑み込んだ。
 その時セツナが脳裏に思い浮かべたのは、幻獣が放ったものと同じ技を行使するもう一人の自分――ゼロ。
「……ったく、邪魔者はさっさと消えろよな!」
 瞬きの間にセツナと入れ替わったゼロがそう吐き捨てながら距離を詰め、ヒューレイオンの胴に痛烈な蹴りを叩き込む。
 同時に杖から鋭く伸ばされた水晶の角めいた光がヒューレイオンへと深く突き刺さり、内蔵を抉るように引き裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソナタ・アーティライエ
叶うなら争わずにいたかった……でも貴方がいるだけで平穏が崩れ去ってしまうというのなら、見過ごす訳にはいかないのです

【幻獣交響曲第126番『神鎗』】の調べが誘うは友たる一角獣、ラヴェル
今回の戦いはわたしは僅かな助力のみで、あとはラヴェルにすべてを委ねます
その角に宿す浄化の光に『破魔』と『祈り』を重ね、その清浄な光の領域をもってヒューレイオンの領域に対抗
そして同じ角持つ四足の獣としての雌雄を決する事を望むかのように、真っ向から勝負を挑みます
攻撃をかわすよりも、ただ己の最高の一撃をもって相手を打ち倒すことに専心

決着がつきましたら、【生まれながらの光】を纏った手で優しく撫でて労わってあげたいです


ティア・レインフィール
これが、件のオブリビオンですか……
なんて美しいと、最初に思って
ですが、人々を害するのであれば倒さなければならないと
改めて戦う決意を固めます

神よ、私達を見守りください
【祈り】を捧げ【破魔】の力を込めて
光の【属性攻撃】を行います

傷を負った方が居れば
【シンフォニック・キュア】による聖歌を【歌唱】し
皆様の傷を癒します
どんなに深い闇でも月と星が在り
例え光が届かなくとも、神は見守っていてくださるのだと、希望を謡って

銀鈴蘭や、他の植物達を荒らしてしまわないよう
出来る限り足元には注意を払うように致します

※他の皆様との連携歓迎です



 ――叶うなら、争わずにいたかった。
「……でも、貴方がいるだけで平穏が崩れ去ってしまうというのなら、見過ごす訳にはいかないのです」
 ソナタ・アーティライエは青い瞳を哀しげに揺らし、けれど、脅威を祓うという確かな意志の光を湛えて幻獣を見つめる。
「……来て、ラヴェル」
 紡がれる【幻獣交響曲第126番『神鎗』】の透き通る調べが誘うは、乙女に寄り添う守護の獣――ソナタの友たる一角獣、ラヴェルだ。
 互いの力を高め合い、命を分かち合う友の背に乗り、ソナタは全ての想いと力を友へと託した。
 ラヴェルが角に宿す浄化の光にソナタは破魔の力と祈りを重ね、その清浄な光の領域を以て、ラヴェルはヒューレイオンの領域に対抗する。
 同じ角持つ四足の獣として、雌雄を決することを望むかのような――澄んだ瞳に揺るがぬ闘志を宿しながら、ラヴェルは真っ向からヒューレイオンへと挑み、ぶつかっていく。
 守護の一角獣と、一角獣を駆る乙女。その凛と美しい佇まいにティア・レインフィールはつい見惚れてしまいながらも、自身も改めて目の前のオブリビオン――ヒューレイオンへと向き直った。
 彼の幻獣もまた、ティアの瞳には美しい存在のように映る。
 けれど、人々を害するのであれば、倒さなければならないことも知っているから。
 心に灯すは、戦う決意。そして、ティアは静かに、神へと祈った。
「――神よ、私達を見守りください」
 放たれるのは、破魔の力を籠めた輝かしい光。同時に、ラヴェルが再びヒューレイオンへと踊りかかった。
 角と角とがぶつかり合い、火花のような光が弾けて消える。
 己が最高の一撃で相手を打ち倒すことに心を注ぐラヴェルは、どれほど傷ついても退くことなく、その背に乗るソナタもまた、分かち合う痛みを堪えるように唇を引き結び、ラヴェルのために祈り続けていた。
 ――その時、ふたりの耳に清らかな旋律が届いた。
 それは、ティアが歌うシンフォニック・キュアによる聖歌。ソナタを、ラヴェルを、そして共に戦う仲間たちを優しく包み込み傷を癒す静謐な歌声が、風に乗って彼方へ響き渡る。
 どんなに深い闇の中でも、空には月と星が在る。
 例えその光が届かなくとも、神は決して見捨てることなく見守ってくれているのだと、ティアは希望を、救いを、謡い続ける。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

境・花世
七結(f00421)と

清らかでいて謎めいた月光は、
世界を別の姿に変えてしまうね
きみの膚が今こんなに皓々と白いのは
夜に棲むいきものだから?

問い掛けの答えは戦の後で、
言うや否や駆け出す脚を、腕を、花が侵してゆく
わたしも別の、いきものになる

“紅葬”

高速移動で攻撃を見切り接近、
おびき寄せで敵の気を惹こう
守護者だなんて、まるで独占欲だね
そんなにもこの花を愛したの、
なんて言葉もきっと届きやしない
ただの、時間稼ぎ――

さあどうぞ、夜の姫君

差し出す好機を逃さず放たれる、
七結からの追撃に甘く笑んで
己の身から零れ散る花で敵を裂き
きみの攻撃を、増幅させよう

指先に力籠める理由はひとつだけ
その花を、一緒に見てみたいんだ


蘭・七結
カヨさん(f11024)と

空一面を覆う闇色
黄金の月も、煌めく星々も
見飽きたようなその光景に、なぜか心躍る
この世界が広大で美しいから?
それとも。隣にあなたがいるからかしら

夜の帳が落ちきったあと
それは、ナユが好むナユの世界
今だけは。〝ヒト〟を演ずるのをやめましょう
ねえーー『かみさま』
乞うように、願うように。その名を呼んで
〝かみさまの言うとおり〟

湖の守護者
愛らしい花々を守るその姿
まるで、独占的なナイトのようだわ

薄紅の花吹雪の中
あなたの花が、ナユに力をくれる
舞うように攻撃を見切り
踊るように2回攻撃を重ね
『彼岸』と『此岸』の果てをお見せしましょう
雄々しく、美しいあなた
ナユ達の手で、美しく散ってちょうだい



 空一面を覆う闇色。
 黄金の月、煌めく星々、見飽きたようなその光景に、何故だか心が躍るのを、蘭・七結は感じていた。
 この世界が、広大で美しいからだろうか。
 ――それとも。
「……隣にあなたがいるからかしら?」
 吐息に綻ぶ笑みの花。隣を見やれば、境・花世の顔にも笑みが綻んで。
 ふと空を見上げた花世の片方しかない瞳に映るのは、世界を別の姿に変えてしまうほどの、清らかな月の光。
 再び傍らへと視線を戻せば、たおやかな少女が纏う気配がいつもと違うもののように花世には思えた。
「きみの肌が今こんなに煌々と白いのは、夜に棲むいきものだから? ……ふふ、答えは後で聞こうかな」
 言うや否や、駆け出す花世の右目に咲き誇る薄紅の八重咲牡丹がざわりと揺れる。
 風のヴェールを纏うようにその花弁を全身に纏い、自らを絢爛たる百花の王となした花世は、森の守護者として鎮座する幻獣――ヒューレイオンへと肉薄した。
(「きみが『そう』だというのなら、わたしも別の、いきものになる」)
 幻獣の眼差しが、纏う薄紅に魅入られたかのように花世を追い掛ける。花世は振り上げられた蹄の動きを見切って躱すと、お返しとばかりに手に咲く花弁を差し向けた。
 忽ちの内にヒューレイオンの体を覆った薄紅が、血を啜って真紅に染まる。
 夜の帳が落ちきった後の世界、それは、七結が好む彼女の世界。
(「今だけは。“ヒト”を演ずるのをやめましょう。ねえ――」)
 ――『かみさま』と、乞うように、願うように。七結は愛しきその名を紡ぐ。
 すると、七結の双眸が鮮明な猩々緋のいろに染まり、七結の姿が吸血鬼と呼ぶに相応しいそれへと変じた。
「湖の守護者、愛らしい花々を守るその姿。……まるで、独占的なナイトのようだわ、でも、あなたが独り占めしていい世界では、ないわ」
「守護者だなんて、まるで独占欲だね。そんなにもこの花を愛したの、」
 七結の言葉にも、花世の問いにも、幻獣は答えることはない。無論、答えなどないと知っていた。
 ゆえにそれ以上の言葉を重ねることはなく、花世は薄紅の花弁で空を彩る。
「さあどうぞ、夜の姫君――」
 美しい、薄紅の花吹雪。『彼女』の花が力をくれるのを感じながら、七結は彼岸と此岸の残華――白き牙と刃、散り果てるさいごまで美しく咲いた華を、『かみさま』と共に振るう。
 月光照らす宵闇の舞台で踊るように、舞うように、七結が見せたいと想うのは、『彼岸』と『此岸』の果て。
「雄々しく、美しいあなた。ナユ達の手で、美しく散ってちょうだい」
 少女の舞に甘く笑んで、花世もまた、己の身から零れ散る花で幻獣を裂く。

 指先に力を籠める理由はひとつだけ。
 ――その花を、きみと一緒に見てみたいんだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

法悦堂・慈衛
さて、いよいよ親玉のご登場やね。
おーおー、立派なお馬さんやないか。神さんの遣いのようやないか。
でもごめんなぁ。アンタは骸の海より出でたる残滓。
かける情けもあらへんのよ。

さて、一先ずは偏愛真言符と煩悩切を使うて牽制+援護。
前衛は得意な人に任せて、俺は後ろからの助力に徹する。
状況を見て、他の猟兵の力を底上げするためにUCを使おか。

愛しい卑弥呼ちゃん、いっちょ手を貸してな?
ありがたい吉凶の猟兵みんなに聞こえる音声で言ってもらう。

内容はごくシンプルや。即ち「勝つ」か「負けるか」。
希望を捨てないのが猟兵の皆のええところやし、ここは勝てると言うてほしいなぁ



「おーおー、こないなってもまだ俺らに歯向かってくるんか、立派なお馬さんやないか」
 猟兵たちの猛攻を受け、命に綻びが見られ始めているヒューレイオンを前に、法悦堂・慈衛は口の端を釣り上げる。
 その姿はまるで神の遣いのようだとさえ思えるけれど、今目の前にいるのは紛れもなくオブリビオンだ。
 ゆえに、答えはただひとつ。
「ごめんなぁ。アンタは骸の海より出でたる残滓。かける情けもあらへんのよ」
 言うが早いか、後方支援に徹すると決めた慈衛は戦場の様子をつぶさに眺めやりながら懐から取り出した霊符をヒューレイオンへと投げつける。
 女性への熱い想いを灯した符は勢いよく燃え上がり、その炎がヒューレイオンへと燃え移る。
 ヒューレイオンは自らを燃やす炎を払おうと忌々しげに頭を振りながら、前脚で地面を掻くような仕草を見せた。
 すると、そこから芽吹いた草葉が忽ちの内に人の形をなし、猟兵たちへと襲い掛かった。
 慈衛はさらに霊符を散らし、あるいは薙刀を振るって――人型の植物兵たちが葉に刻んだ数字を合わせる前に焼き払うと、続けて別の符を取り出し、放つ。
「……さて、愛しい卑弥呼ちゃん、いっちょ手を貸してな?」
 慈衛の声に応えて式神符より出でたるは、古の女帝。
 卑弥呼はすっと大きく息を吸い込むと、戦場に声を響かせる。
 それはこの戦いの場にあって、最後まで希望を捨てることなく戦い続けている猟兵たちに十分に届く、澄んだ声。
 それは、慈衛が願っていた答え。
 ――即ち、『勝つ』と。
 戦いの行く末を、その吉凶の占いの結果を、卑弥呼は力強くただ二言で言い表し、猟兵たちへと力を託した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

斎部・花虎
【POW】
うつくしくとも害を為すなら排さねばならない
ひとを恨むか、森の主
――そうだな、おれも叶う事であれば
おまえの姿はただ麗しいものとして見てみたかったよ

一撃、甘んじて受けよう
角がこの身を裂くのならば
その瞬間だけはおまえはおれと繋がるのだろ

呪符と小刀をその身に穿つ
媒介に喚び降ろしたるは己の影に囚えし獣
血反吐吐こうともそれを呼ばう声だけは凛と

――いらせられませ、闇御津羽
この麗しいいきものをおまえに捧ぐ

叶わずともきっと他の猟兵が成し遂げてくれる
……嗚呼でも、誰か、救護は頼んだ


終夜・嵐吾
すべからく、なれを倒さねばなのだろうな
きらめく星の下にあるここはなれの気に入りか?
にしても、花咲く銀鈴蘭の見事なことよ
しかしそれをなれが独り占めするのはもったいないとわしは思うんよ
てあたり次第、領域ひろげればよいというものでもないと思うしの

ヒトのかたちを真似てその葉で生み出すんじゃな。
なればわしの花で飾ってやろうな。銀鈴蘭もうつくしいが、わしの愛でた鈴蘭もうつくしかった。それも、見てみればよい。
なれにも愛でる心があるなら、愛でてみよ。

その動きを止めるように、視界を奪うようにはりつけて。
他の猟兵が動きやすいように、協力できる者おればしていこう。
回復が必要なものがおれば、それも。


トトリ・トートリド
同じ戦場の仲間と連携、する
花虎が近くにいたら、ちょっと心配して、みてる
…今度は、仔竜じゃない。から、平気かな
嵐吾も。…さっきの、頼もしかった
ありがとうは、戦いで、返す

あいつの領域になっていく、森
感じるけど、…させない、塗り替える

トトリは怒ってる
まだ分別ない、他の命との距離も知らない、森の仔たちに
人、傷つけさせた
…惑わせるな。いたずらは、もう終わり

森は、誰かのものじゃない
竜も、鳥も。大きなものも、小さなものも住まう大きな家
だから、独り占めさせない。譲らない。でも
本当は、おまえも一緒に生きられたら。一番、だったかもしれない

…終わった
ふうと大きなため息ついて
花、見に行こう。…村の人たちもきっと、喜ぶ



「……ひとを恨むか、森の主」
 碧翠の双眸にその姿を映しながら、斎部・花虎は静かに、森の主――ヒューレイオンの元へ歩み出す。
「だが、おまえがどんなにうつくしくとも、害を為すなら排さねばならない」
 ヒューレイオンは何も言わず、答えず、ただじっと花虎を見つめていた。
 風が吹く。それは、彼らにとって戦いの始まりを告げるもの。
 花虎は世界を閉ざすように瞼をそっと伏せ、そうして、再び静かに開いた。
「――そうだな、おれも叶う事であれば。おまえの姿はただ麗しいものとして見てみたかったよ」
(「……花虎、今度は大丈夫そう、だ」)
 勇ましく、そして気高く。凛と敵を見据える花虎の姿に、トトリ・トートリドは内心安堵する。
 トトリが案じていたような、仔竜の愛くるしさに翻弄されるままだった彼女の姿はもうどこにもない。
 森の主と対峙する花虎は、紛れもなく一人の――戦う者の姿をしていた。
(「あいつの領域になっていく、森。感じるけど、……させない、塗り替える」)
 雨弓映えるペイントローラーをぐっと握り締め、トトリもヒューレイオンへと向き直る。
「……惑わせるな。いたずらは、もう終わり」
 まだ善悪の分別がつかず他の命との距離も知らない仔竜たちに、人を襲わせ、傷つけさせた。
 トトリがヒューレイオンへ向けるのは、真っ直ぐな想い。それは、純粋な――怒りだ。
 刹那。ヒューレイオンの足元に春が芽吹く。
 そのままこちらへ駆け出してきた獣の前に、花虎が己の身を晒した。
「花虎っ!?」
 トトリが驚愕に目を瞠ったのは、花虎が自らを守る素振りを見せなかったから。
 伸し掛かるような蹄の一撃が落とされ、しなやかに伸ばされた水晶の角が花虎を貫き、引き裂いた。
 甘んじて受け入れたそれはこの瞬間だけの、刹那の繋がり。伝う想いは決して交わることはないけれど、それでいい。
 白と黒の美しい毛並みが、溢れ出た命の色に染まる。淡く彩られた唇もまた、鮮やかなあかい色を灯す。
 命がこぼれ落ちてゆく感覚に身を委ねながらも、告げる声は凛と。
「遵え。あれを餐え」
 放たれた呪符と小刀が、ヒューレイオンを縛り、穿つ。
 それを媒介に、花虎は己の影に囚えし獣を呼び降ろした。
「――いらせられませ、闇御津羽」
 この麗しいいきものを、おまえに捧ぐ――。

「大丈夫じゃよ、トトリ君」
 影の獣が幻獣に牙を突き立てると同時、その場に膝をついた花虎へ注がれる淡い光。
「……でも、嵐吾、」
 声に焦燥を滲ませるトトリを安心させるように終夜・嵐吾が微笑んでみせれば、生まれながらの光の癒しを受けた花虎が大きく息を吐き出し、立ち上がった。
「――助かった」
 その様子にトトリは安堵しつつも、きゅっと表情を引き締めて前に出る。
「次は、トトリの、番。……、芽吹け」
 声に応えて、筆先に滲んだ緑の色が空を舞う。それはヒューレイオンの体を彩り、あるいは地面に蔦の魔法紋を描いて、トトリの緑を広げてゆく。
「森は、誰かのものじゃない。竜も、鳥も。大きなものも、小さなものも住まう大きな家」
 だから、独り占めさせることはない。譲ることも。――でも、とトトリは想う。
(「……本当は、おまえも一緒に生きられたら。一番、だったかもしれない」)
 ヒューレイオンが、声なき声で鳴く。瞬く間に形をなした草と葉の植物兵たちが、隊列を組んで三人へ襲い掛かる。
「……すべからく、なれを倒さねばなのだろうな」
 煌めく星の下、ここを気に入りの場所としたからこそ、全てを手に入れようとしたのだろうとも嵐吾は思う。
「それにしても、花咲く銀鈴蘭の見事なことよ。しかし、それをなれが独り占めするのは勿体無いとわしは思うんよ」
 手当たり次第、領域を広げれば良いというものでもない。
 そして、世界にとって驚異となるべき存在である以上は、共に生きることは望めない。
「銀鈴蘭もうつくしいが、わしの愛でた鈴蘭もうつくしかった。……のう、ヒトのかたちをなす草木よ、わしの花で飾ってやろうな」
 嵐吾は静かに右目を覆う香りを解き、洞にて眠る怠惰なものを呼び起こす。
 綻ぶ花は純白の鈴蘭。舞い上がった小さな花たちが、草葉の兵士を、そしてヒューレイオンをも呑み込んでいく。
「なれにも愛でる心があるなら、愛でてみよ」
「……きれい」
 トトリが思わず感嘆の息を零し、花虎も静かに、風に舞う花を見上げる。
 ふと鼻腔をくすぐった優しい香りに、嵐吾は懐かしげに目を細めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

白雪・大琥
すげぇ怒ってる。
表情は特に変えぬまま、見たまま呟く
先に領域を侵したのはそっちだろうに。
お前がいると、またあいつら殴らなきゃならねぇだろ。
戦いは楽しかったけど可哀想だからもうやり合いたくねぇと【動物と話す】を試みながら向けられた怒りに睨みつけ

ライオンに騎乗
敵の動きをよく観察し【野生の勘】で出来る限り攻撃を躱す
妖精召喚がわかれば敵に向かい突進
そのまま攻撃と見せかけ、寸前で進路を変え仲間が居ない方へ走る
追跡を自分達へ向けさせ攻撃する隙を作る
自分に攻撃向けばダガーで弾き、ライオンに様々な方向から走らせ牽制の攻撃を仕掛ける

頑張ったライオンには労いの言葉を
すっげ動き回ったな、サンキュー。ゆっくり休めよ。



「すげぇ怒ってる」
 白雪・大琥は特に表情を変えぬまま、見たままを呟いた。
 猟兵たちの攻撃に深く傷つきながらもまだ戦場に立ち続けるヒューレイオンの瞳が、大琥の姿を映す。
 ――その瞳に滾る、紛れもない怒りの感情。何故己がここから去らねばならないのかと、言わんばかりの。
「……先に領域を侵したのはそっちだろうに。お前がいると、またあいつら殴らなきゃならねぇだろ」
 大琥が思い浮かべるのは、森を抜ける前に戯れた仔竜たち。そろそろ意識を取り戻す頃合いかもしれないが、元に戻すためとは言え、痛みを与えたことに変わりはない。
「戦いは楽しかったけど、可哀想だからもうやり合いたくねぇ」
 向けられた怒りに臆することなく、大琥は真正面から幻獣を睨みつける。
 直後、大きく地を蹴って後方へ飛び退ったヒューレイオンを追うように、大琥は自身の身長の二倍の大きさの黄金のライオンを喚び出すと、その背に跨がり地を蹴った。
「……、――!」
 ヒューレイオンの声なき声に、木霊が返る。妖精が召喚されたのだとわかった大琥は、そのままヒューレイオンへと突進していく。
 森の動物たちと共に育ってきた大琥の奥底に息づく野生の勘。意識せずとも攻撃の矛先から身を逸らしてくれるそれに心を委ねながら、懐近くまで距離を詰めた大琥は、しかし、そのまま攻撃と見せかけて寸前で進路を変えた。
 目指すは、仲間がいない方向。妖精の追撃を己へ向けさせることで隙を作り、仲間たちの攻撃が届きやすいようにすることが大琥の狙いだ。
 そして狙い通り、猟兵たちが一斉に攻撃を仕掛けてゆくのがわかる。
 その時、死角から向けられた妖精の見えざる刃を、大琥は難なくダガーで弾き返した。
 同時に、ライオンが鋭い牙で妖精を存在ごと噛み砕く。
「あと少しで終わる。……まだ、動けるか?」
 大琥の問う声に、勿論だと言わんばかりにライオンは咆哮で答え――そうして、大琥は再びヒューレイオンの元へと駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニケ・セアリチオ
カートおじ様(f02644)と!

まぁ……本当に、本当に綺麗
きらめいた星空と、それを落としたように輝く水面
そこに『彼』がいると分かってはいても、思わず息を呑んでしまうくらい
……あぁ、でも。だからこそに。
この景色を好んでいた皆様に、再び憩いを取り戻すためにも
私たちは、『彼』へ挑みます……!


まだ未熟で、かばわれてばかりの私だけれど
少しでも、皆様の為に出来ることを

後方に控えながら、コインに祈りを
コインの白鳩たちに助力を求め
【Drop-Dead】で彼の視界を塞ぎつつ、挙動の観察に努めるわ
第六感にも頼りながら
彼が攻撃しそうなタイミングでおじ様方に声を掛けます

皆様、お気を付けて
どうか、大事のないように……!


カーティス・ダウラント
ニケ(f02710)と共に

成程、あの獣が此度の元凶か
……見目通りに手強そうだ
被害の広がらぬ様、私も尽力するが
くれぐれも油断はせぬように

扨て。
あの獣の蹄は、先程の仔竜達の爪よりも手強そうだな
なるべく一撃を受けぬ様に、立ち回るべきか

ニケが気を引いてくれている間に呼吸を整え、力を溜めよう
己の炎を剣に纏わせ、集中し乍ら機を伺う
特に蹄の一撃には気を配り
攻撃が来ると同時に見切り、渾身の一撃を放とう
……しかし、簡単に倒せる輩でもないだろう
一度で倒れぬ様ならすかさず二撃目を

どうしても躱せぬ攻撃が来たなら、気を張って耐えるしかないだろうな
其れが彼女や味方に及ぶものとなれば、尚更だ
この身を挺してかばう心算でいるよ



「まぁ……本当に、本当に綺麗」
 満天の星が煌めく夜空。それを落としたように輝く静かな水面。
 ――そこに『彼』がいると分かってはいても、ニケ・セアリチオは思わず、目の前に広がる美しい光景に息を呑んでしまう。
 けれど、だからこそ。
 この景色を心から愛し、共に暮らしてきた人々の元へ、再び憩いを取り戻すためにも、『彼』を在るべき場所へ還さなければならない。

 森と共に生き、森を己が領域となす――森の守護者たる幻獣、ヒューレイオン。
 その澄んだ、けれど過去の残滓に侵された瞳が、静かに、真っ直ぐにニケを見つめていた。
 終焉が近いだろうことは明らかだった。自らを癒す術を持たぬ獣の命は、猟兵たちの猛攻に今にも尽きかけているように思えた。
 けれど、最期のその瞬間まで心を許すことは出来ないとニケは思う。
(「まだ未熟で、かばわれてばかりの私だけれど」)
 それでも、ここに立ち、共に戦う皆と想いは同じ。
 ――少しでも、皆の為に出来ることを。
「お願い、みんな……!」
 ニケは金鎖を介して胸元に輝く一枚のコイン――一点の曇りもなく磨かれた自身の依代たるそれを握り締め、コインに刻まれた鳩たちに願う。
 すると、コインから四羽の白鳩が羽ばたいて、一直線にヒューレイオンの元へと飛来した。
 白鳩たちはヒューレイオンの周囲を素早く旋回し、その視界を遮る。
 動きを阻まれながらも、ヒューレイオンは草葉の兵を編み上げて抗おうとする。
(「……扨て、」)
 カーティス・ダウラントは己の炎を剣に纏わせ、呼吸を整えながら、静かに機を窺っていた。
 終焉がすぐそこまで視えていようとも、まだ最期のその瞬間を見届けるまで決して油断は出来ないと、カーティスも心得ていた。手負いの獣の恐ろしさを、知らぬ彼ではない。
「――おじ様!」
 その時、不意に後方から届いたニケの声。それと同時に、カーティスは反射的に動いていた。
 視界を覆う白鳩を色づいた水晶の角で振り払い、二人を標的と定め駆けてくるヒューレイオン。仔竜の爪よりも鋭く重そうな蹄がニケの華奢な身体を蹴り飛ばすより早く、身を挺して割り込んだカーティスが繰り出された蹄を弾き返す。
 ――衝撃に大きく仰け反ったヒューレイオンの元へ、カーティスは機を逃さず一息に踏み込んだ。
「……、――!!」
 ごう、と唸る風の音。
 叩きつけられた渾身の一撃にカーティスは骨が砕ける手応えを感じ――そして、ついにヒューレイオンの巨躯がその場に崩れ落ちる。
 それが、森の主たるヒューレイオンの最期だった。
 剣を伝ってヒューレイオンへと燃え移った紅蓮の――カーティスの心を燃やす地獄の炎が、過去の残滓たる幻獣を在るべき場所へと還し、鮮やかに夜空を照らし出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『闇に咲く花』

POW   :    言い伝えを信じ、森中を踏破

SPD   :    周囲の町や村から情報収集

WIZ   :    自分の魔法や、夜の動物たちに協力してもらい情報収集

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちの手により脅威が退けられ、ようやく森と湖は元の平穏を取り戻した。
 見上げた空には丸い月が輝き、周囲に散りばめられた無数の星たちがきらきらと瞬いている。
 凪いだ湖面にもうひとつ揺らめく月は、空に浮かぶものと同じそれ。
 まさに銀鈴蘭が密やかに綻ぶ、二つの月が出会う場所だった。

 その時、さあっと風が吹き、綻ぶ花たちを優しく揺らした。
 月の光に照らされて咲く銀鈴蘭は、まるで彼、あるいは彼女たちそのものが、淡い光を帯びているようにも見える。
 訪れる者たちを優しく迎え入れる、小さな箱庭のような世界。

 そっと耳を澄ませば、囁くように歌う花たちの声が――聴こえたような気がした。
ソナタ・アーティライエ
叶うなら、村の皆様に平穏が戻ったことを伝え、銀鈴蘭の咲く光景を共に過ごせれば、と思います
アマデウスに変化してもらったリラで、花たちの歌に寄り添うような秘めやかな調べを奏でたり
そして皆様からは、この土地に伝わる歌などを聴かせて頂けたら嬉しいです
歌の蒐集はわたしの使命のようなものですけれど、今回は他に(オブリビオンではない、かつての幻獣としての)ヒューレイオンの事が伝わっていてくれたら……と

出来れば正気に戻った仔竜たちとも一緒に遊びたいです
村の皆様からこの子たちの好きな食べ物とか訊けたら、探してあげたいですね
アマデウスやラヴェルも、お友達が増えたら嬉しいのです

アドリブ・他の方との絡み歓迎です



 かつての平穏を取り戻した湖畔に、さざめく人の声。
 ソナタ・アーティライエの計らいにより、湖には猟兵たちだけでなく、報せを聞いて駆けつけた村人たちの姿もある。
 幻獣が討伐されたことを知ると、村人たちからは『冒険者』である猟兵たちへ惜しみない感謝と称賛が向けられた。

 音楽人形として生を受けたソナタにとって、歌の蒐集は使命のようなもの。
 ゆえに、ソナタは村人たちからこの土地に伝わる歌や物語を教わり、それを実際に奏でる一方、銀竜のアマデウスに変化してもらったリラで、花たちの歌に寄り添うような秘めやかな調べを奏でたりもして、花たちだけでなく、村人たちの心も楽しませた。
 真珠色の角を持つユニコーン――ラヴェルも、ソナタを守るように寄り添いながら、彼女の紡ぐ調べに心地良さそうに耳を傾けていて。
 ――すると、
「キュー……!」
「キュイ、キュイ♪」
 ソナタとアマデウスが紡ぐ調べに惹かれたらしい仔竜たちが、楽しげに鳴きながら姿を見せる。
「あの、……この子たちの好きな食べ物などは、ありますか?」
 ソナタが尋ねれば、村人たちは勿論と笑って、持参した袋を開け始めた。
「ああ、来るだろうと思って用意してあるよ。君もあげてみるといい」
 取り出された木の実や干しぶどうなどに、元の姿に戻ったアマデウスやラヴェルも興味津々だ。
「あとで、この子たちにもあげて……いいですか?」
 控えめに問うソナタに、村人たちは快く頷く。
「仔竜さん……おやつ、ですよ」
 手のひらに乗せた木の実や干しぶどうをそっと差し出せば、早速寄って来た仔竜たちがふんふんと確かめるように鼻を動かしてから、ぺろり、と。
「わっ……」
「キューイ、キューイ!」
 おやつを貰った仔竜は嬉しげに、他の仔竜たちも、早速アマデウスやラヴェルの周りにも集まっていて。
「お友達になって……くれますか?」
「キュイ!」
「どうやら、この子ら、お嬢ちゃんたちのことをえらく気に入ったらしいなあ」
「キュキュッ! キュー!」
 そうだと言わんばかりに上がる声はどれも楽しげで。
「……ふふ、よかった、です」
 ソナタはふわり、嬉しげに笑みを綻ばせると、再び楽器の姿へ変じたアマデウスと共に優しい旋律を奏でるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
なんとも素敵な言い伝えですね
僕も探してみましょうか
何かしら願いごともあるわけではないのですが……
美しい眺めを肴に、月を、星を見るのも一興でしょう

僕は精霊術師ですから
現地の精霊に語りかけて聞いてみましょう
水の精霊や、木々の精霊などが詳しそうでしょうか
そうして探していこうかな

見つけたら、絶好の眺めが見える場所に腰を下ろして
星と月と、銀鈴蘭の競演に酔いましょう
酒などなくとも、この眺めだけで気分が良くなるものです
嗚呼、実に美しい―――
精霊たちが羨ましいですね
このような光景を見ることができるとは



 天上の空に浮かぶ月と、瞬く星々。
 地上の水面に浮かぶ月と、煌めく星々。
 見渡せば、湖畔に咲き誇る銀鈴蘭。
 言い伝えにある、二つの月が顔を合わせる場所。

「嗚呼、実に美しい――」
 眩しげに目を細めながら、逢坂・宵は感嘆の息を零す。
 銀鈴蘭が咲く風景の中でもとびきりの眺めを見てみたいと、この地に住まう水や木々の精霊たちに案内を頼みながら辿り着いた場所で宵を待っていたのは、精霊たちだけが知っている、この世のものとは思えぬほどの美しい世界だった。
 それは宵が、そして共に戦った猟兵たちが、確かにその手で守り抜いたもののひとつだ。
 静寂の中、息を潜めて耳を澄ませば、彼と共にここへやって来た精霊たちの楽しげな歌声が聴こえてくる。
 湖畔を渡る風に乗り、銀鈴蘭たちの囁きとも重なり合って彼方へ響き渡る音は、宵の耳だけに届くものだ。
「……あなたたちが、羨ましいですよ。このような光景を見ることが出来るとは」
 空を舞い、あるいは銀鈴蘭の元で羽を休める精霊たちへ、宵はそっと語りかける。
 星と月と、銀鈴蘭と、そして――精霊たちの競演。
 酒などなくとも、この眺めだけで心地よく酔ってしまえそうで、宵は静かに笑みを零し、暫し美しい風景を楽しんだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸フレズローゼ(f01174)と
アドリブ歓迎

あら!素敵ねフレズ!
天と湖のお月様に銀鈴蘭
可憐なうさぎが跳ねる光景は可愛らしくてなごんでしまうわ
でも玄関のオブジェ獲得ならなかった……なんて思いもフレズの笑顔で癒されて
そうね、あなたの絵を飾りましょう
ギャラリーが華やかになるわね!
風に吹かれ翼と角の桜が游ぐ
心地いい夜ね!

フレズの可愛い歌を聴きながら湖畔を散策しましょ
ホットココアと苺とチョコの大福も用意したの!
湖も銀鈴蘭も見える所で食べましょ!今度鈴蘭型のチョコも作ろうかしら

ねぇ、知ってる?鈴蘭って『再び幸せが訪れる』って意味があるのよ
その花言葉通り、この湖にもあなたにも
たくさんの幸せが訪れますように


フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓櫻宵(f02768)と一緒
アドリブや絡み等歓迎

櫻宵ー!湖に銀鈴蘭!見てみて、すごく綺麗だよー!
く、首は残念だったけどさ!それより、銀鈴蘭の絵の方が館には合ってるよっなんて櫻宵を励まして
月夜、銀鈴蘭の咲く湖畔を駆けて跳ねる
こうやって一緒に観られたのが嬉しい

絢爛の歌声で歌ったら
きっと綺麗な夜色と白の魔法石の絵の具ができるはず
今宵も絵に描こう
キミの笑顔に星と花の歌の絵を!

銀鈴蘭と、櫻宵の桜が一緒に舞って
それはとてもとても綺麗な光景で
ボクは、来てよかったと心から思うんだ
櫻宵がくれたあったかなホットココアを飲みながら、ほっと一息
おやつの苺大福を頬張って幸せ気分

再び幸せが訪れる――ボクはいつも幸せさ!



「わぁっ……!」
 月光抱いて綻ぶ花の淡い輝きが、風に揺れる。
 思わず駆け出したフレズローゼ・クォレクロニカの足取りは軽く、跳ねる姿は愛らしい兎そのもの。
「櫻宵ー! 湖に銀鈴蘭! 見てみて、すごく綺麗だよー!」
 苺ミルクの髪を揺らしながら振り返るフレズローゼを慈しむように見つめながら、誘名・櫻宵も素敵ね、と笑みを重ねて。
 天と湖のお月様に銀鈴蘭、可憐なうさぎが跳ねる光景はとても可愛らしくて和んでしまう――けれど、
「でも。玄関のオブジェ獲得はならなかったわね……」
 ふう、と櫻宵の口から零れた物憂げな溜め息。この世界から儚く消えた幻獣に対する未練が滲むそれに、フレズローゼは慌てたように腰の翼をぱたぱたさせて。
「く、首は残念だったけどさ! それより、銀鈴蘭の絵の方が館には合ってるよ」
「……そうね! フレズの絵を飾りましょう、ギャラリーがうんと華やかになるわね!」
 思い浮かべるのは、二人の帰る場所。決して枯れぬ千年桜が迎える館の一角、様々な彩りで満たされたギャラリーに、新たに加わる命の彩。
 それは、どんなにか素敵な光景だろう。
 想像と励まし(鼓舞)に、存外あっさりと立ち直った櫻宵を見て、フレズローゼは内心安堵の息。
「あのね、こうやって櫻宵と一緒に観られたのが、ボクはとても嬉しい」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。勿論あたしもよ、フレズ。……心地いい夜ね!」
 湖畔を渡る優しい風に吹かれ、櫻宵の角と翼に綻ぶ桜もふわりと、楽しげに揺れる。
「うん、とっても!」
 二人で湖畔を辿りながら、フレズローゼが桃薔薇の唇に乗せるのは絢爛の歌声。
 銀鈴蘭と櫻宵の桜が一緒に舞う光景は、とても、とても綺麗な色をフレズローゼの瞳に灯し、櫻宵と一緒に来て良かったと心から思えるから、歌声が練り上げた魔法石には少女が瞳に映した世界と想いの色、綺麗な夜と白が閉じ込められていて。
 出来上がった魔法石を早速砕いて練り上げた絵の具を月色の絵筆に絡めたら、【TRUMP*TRUMP】が描くは『キミ』の笑顔と、綺羅星と銀色の花の歌。
 新たに命を吹き込まれていくカンバスを、新たな命を吹き込む少女を楽しげに愛しげに見守りながら、櫻宵は持参した『おやつ』――甘い苺とチョコの大福、それからホットココアを広げて。
 あたたかいココアを飲んで、ほっと一息。それから口いっぱいに苺大福を頬張って幸せそうなフレズローゼの姿に目を細めつつ、櫻宵は今度は鈴蘭型のチョコも作ろうかしら、なんて想いを馳せながら、ふと思い出したように呟いた。
「ねぇ、知ってる? 鈴蘭って『再び幸せが訪れる』って意味があるのよ」
 その言葉の通り、この湖にもあなたにも、たくさんの幸せがありますように――。
 願うように紡ぐ櫻宵に、フレズローゼは一度円な瞳を瞬かせてから、満開の笑みを咲かせてみせる。
「再び幸せが訪れる? ボクはいつも幸せさ!」
 だって大好きなキミと大好きな皆と、たくさんの愛で彩られた世界が、――いつだってボクに幸せをくれるんだから!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■ふうた(f09635)と一緒
✼アドリブ等歓迎

月夜の湖、一面の銀鈴蘭に感嘆のため息
「ふうた、すごいね!ここにひとつ宙が広がっているみたいだ」
僕の湖とは全く違う光景に喜んで
風に尾鰭を遊ばせて、ふわり夜と戯れるように游ぐ
「銀鈴蘭、はじめてみたけれど。可愛い花だね。見てるとしあわせになりそう」
ふふ、幸せだ

湖に映る月を掴まえたくて湖面を撫でてみる
ふうたと仔竜達に微笑む
「仔竜達もよく頑張ってくれた、から
せめてものお礼がしたいな
月夜と花に似合う、歌を歌おうか」
尾鰭で弾いた水滴は星のように
鈴蘭の揺れる微かな音色を伴奏に

ふうたとかぞくと仔竜たち
ここに生きる全ての生命に、平穏が訪れますように
その笑顔が嬉しいから


糸縒・ふうた
■リル(f10762)と一緒
アドリブ・改変等歓迎

リル、見て、見て!
すっごくきれい!

宙、宙かぁ。地面にあるのに宙だなんてなんだか不思議な感じ。
なりそうじゃなくて、しあわせだーって、思うよ。
だってリルと一緒に観に来られたんだもん!

仔竜たちには
さっきはありがとう。怪我は痛くない?
ほらみて、すっごくきれい
お前たちもそう思うよなって呼び掛けて

なかまとかぞくも喚んで
一緒に銀鈴蘭を観て、リルの歌を聞こう

ほんとに、すっごく、すっごくきれい
なんだかこのお花たちも、一緒に歌ってるみたい



「リル、見て、見て! すっごくきれい!」
 なかまとかぞくと共に歩む糸縒・ふうたが指差す先には、一面の銀鈴蘭。
「ふうた、すごいね! ここにひとつ宙が広がっているみたいだ」
 月夜の湖と共に二人を出迎えた美しい光景に、リル・ルリも感嘆のため息をこぼしながらただ、目の前の光景に見入る。
 リルの住まう湖とは、全く違う光景。風が運ぶ水の匂いも、知っているようで全く知らないもの。
 自然と弾む心をそのままに風に尾鰭を遊ばせて、リルはふわり、夜と戯れるように銀鈴蘭の水面を游ぎ――湖に映る月を掴まえたくてそっと、湖面を掬うように撫でてみたりもして。
「地面にあるのに宙だなんて、なんだか不思議な感じ」
 それならば自分たちは今、地上ではなく宙にいるのだろうか。
 ふとふうたの心に過った問いは、けれどこの光景と、何より本当に楽しそうに游ぐリルの姿の前ではきっと瑣末なこと。
「銀鈴蘭、はじめて見たけれど。可愛い花だね。見てるとしあわせになりそう」
「なりそうじゃなくて、しあわせだーって、思うよ。だってリルと一緒に観に来られたんだもん!」
 そう言ってふうたが満面の笑みを咲かせれば、向けられたリルの薄花桜色の瞳にも笑みが綻んだ。
「キュッ! キュー!」
「キュイッ!」
 すると、先程の戦いの傷もリルの歌で癒え、すっかり元気になった仔竜たちが、自分たちもそうだと言わんばかりに楽しげに鳴いて。
「さっきはありがとう。怪我は痛くない?」
「キュ!」
 ふうたの案じる声にも、返る声は元気いっぱいだ。
「月夜と花に似合う、歌を歌おうか」
 仔竜たちも、よく頑張って戦ってくれた。
 だからせめてものお礼がしたいと、リルは静かに息を吸う。
 ――絶えず吹いていた風が止み、一瞬の静寂が場を満たす。この瞬間だけは空に瞬く星々までもが、『彼』の舞台の開演を待つようにそっと息を潜めて地上を見つめ。
 二つの月が照らす舞台。鈴蘭の揺れる微かな音色を伴奏に重なるのは、玲瓏たる銀細工の歌声。
 月光ヴェールの尾鰭で弾いた水滴が煌めき瞬いて、リルの歌声に華を添える。
 その美しさにふうたは思わず見惚れ、ほんの少しばかり興奮した様子で仔竜たちへ。
「ほらみて、リルも花もすっごくきれい。お前たちもそう思うよな?」
「キュウッ!」
「キュイキューイ!」
 ふうたにそっと身を寄せるなかまやかぞくたちも、静かに銀鈴蘭をその瞳に映し、リルの歌声に耳を傾けていた。
「……ほんとに、すっごく、すっごくきれい。なんだかこのお花たちも、一緒に歌ってるみたいだ」
 ふうたと、彼のかぞくと、仔竜たち。
 それから、ここに生きる全ての生命に、平穏が訪れますようにと。
 笑顔を輝かせるふうたを見つめながら、リルは自らの想いを歌に託し、湖畔を渡る風に乗せる。
 ふうたがこちらへ向ける笑顔が眩しくて、嬉しくて。そして、リルは想うのだ。
(「……ふふ、幸せだ」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

境・花世
七結(f00421)と

空に耀く、水面に揺らぐ
ふたつの月はまるで七結みたいだね

今こうして淑やかに微笑うきみと
艶やかに紅く染まったきみと
似ているようで似つかない表と裏
どちらもきれいなところも、同じだ

あは、わたしもお揃いかな?

内緒話のようにささめく声は
銀鈴蘭がそよぐ音に紛れて
きっときみにしか聞こえない

夜空に月はひとつが理なれど
世界にきれいなものが多いぶんには
いいんじゃないかなあ、なんて
風が吹くように飄然と笑ったら

銀、紅、薄紅とみっつ並んで
あとは静かに咲いていようか
今このひとときだけの儚い幻のような、
けれどきっとこころに枯れず残るだろう
この、うつくしい箱庭で


蘭・七結
カヨさん(f11024)と

ひらけた空、煌めく星々
そして、ふたつの月

銀の光に見守られ、あなたと内緒話
あなたの言葉を耳にすれば奇遇ね、と
ひとつは。陽光射すように優しくあたたかい彼女
ひとつは。凛として咲き誇る、美しい薄紅の彼女
ナユが見た、ふたりのあなた
それぞれをふたつの月と重ね

もしも。ふたつの月が存在すれば
それはとても、まばゆいのでしょうね
ナユの住む世界も。明るさを得るのかしら

月光浴をする銀と紅、薄紅の色
やさしい花々に囲まれ、そつと目を伏せる
美しさを閉じ込めた箱庭へと心を沈め
静かな時の流れに身を委ねましょう

広大な世界。はじめての幻獣
闇に咲く花。美しい、あなた
幻のようなひととき
ナユはきっと、忘れないわ



 どこまでも広がる空に、煌めく星々。
 そして、空に耀き、水面に揺らぐ――二つの月。
 ささめいては風に揺れる、淡く優しい、銀色のひかり。
「……まるで七結みたいだね」
 境・花世がそう零せば、蘭・七結も奇遇ねと微笑んで。

 今こうして淑やかに微笑う“きみ”と、艶やかに紅く染まった“きみ”。
 陽光射すように優しくあたたかい“あなた”と、凛として咲き誇る、美しい薄紅の“あなた”。
 二つの月と重なる、似ているようで似つかない表と裏。
 けれど、どちらも綺麗で、美しいことに変わりはない。
「……お揃いね?」
「うん、お揃いだ」
 内緒話のように囁いて微笑い合う声は銀鈴蘭がそよぐ音に紛れて、きっと互いの耳にしか届かない。

「もしも、ふたつの月が存在するなら。……それはとても、まばゆいのでしょうね」
 そっと声を落として、七結は己が住まう永遠の闇に閉ざされた世界と、そこに浮かぶふたつの月――その光景を、想像する。
(「ナユの住む世界も、この世界のように、明るさを得ることができるのかしら」)
 世界を優しく、まばゆく照らす、ひかり。それはきっと、叶わない願い。けれど、いつかは叶うかもしれないし、想うくらいは許されるだろう。だって、
「夜空に月はひとつが理なれど、世界にきれいなものが多いぶんにはいいんじゃないかな」
 ――なんて、傍らの花世が風が吹くように飄然と笑うから。

 ――あとは銀、紅、薄紅とみっつ並んで、静かに咲いていよう。
 月光浴をする銀と紅、薄紅の三色。
 やさしい花々に囲まれながら、七結はそっと目を伏せる。
 美しいものを閉じ込めた箱庭にそっと心を沈めて、静かな時の流れに身を委ねていれば――儚い幻のような今、このひとときさえも、きっと心に枯れずに残るはずだから。

 そっと肩を寄せ合い、七結は再び紫晶石の瞳に世界の姿を映す。
 どこまでも続く空。広大な世界。初めて出逢った幻の獣。
 空と水面に映る月と煌めく星。闇に咲く淡いひかりの花。
 それから、美しい――“あなた”。
 全てが幻のようで、幻ではない、そんなひととき。
(「――ナユはきっと、忘れないわ」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨糸・咲
他の方からは少し離れた、
でも楽し気な声は届くくらいの場所で
一人、銀鈴蘭をつぶさに観察します

しゃがみ込んでぐぐっと顔を近付けたり
少し離れて周囲の景色と一緒に眺めてみたり
花弁一枚の形さえしっかりと脳裏に刻み込みたくて

ひとしきり観察したら、漸く満足

あ、フィオリーナさん
お仕事お疲れ様です

ふわりと笑んでから
はっとして、少しばつが悪そうな顔に

私、変な人みたいでした…よね?
でも初めて見るお花なので、きちんと覚えておきたくて
…大事な方へのお土産にするんです
お花の好きな方だったので――
どんな場所でどんな風に咲いて…とか、
そんなお話を

彼の人は、とうの昔に土の下
一緒に見に来ることは、できないですから…

※アドリブ歓迎



 ――じーっ。
 ……という効果音が、どこからともなく聴こえてきそうなほど。
 それよりも耳に届くのは、花を楽しむ人々や、その気配に惹かれてやって来た仔竜たちの声だろうか。
 銀鈴蘭の咲く花園の一角、楽しげな喧騒からは少し離れた所にしゃがみ込み、雨糸・咲は一人、銀鈴蘭の観察に勤しんでいた。
 ぐぐっと顔を近づけて、愛らしい鈴蘭の輪郭を辿ったり。
 あるいは少し離れて、周囲の景色と一緒に眺めてみたり。
 淡い光に眩しげに目を細めたら、もう一度しゃがみ込んで、じーっと覗き込む。
 小さな花、一輪。それが幾つも連なって咲く姿や、花弁一枚の形でさえも、目で見た一つ一つをしっかりと脳裏に刻み込みたくて、咲は長い時間をかけて観察を続けていた。
 そして、ようやく満足したように、うんとひとつ頷いた頃。
「……咲様?」
 そっと近づいてきた気配と控えめに掛けられた声に、咲はぱっと振り向いた。
「……はっ、フィオリーナさん! お仕事お疲れ様です」
「はい、咲様もこの度は有難う御座いました。……お怪我はありませんか?」
 大丈夫ですと微笑んでから、咲はそのまま、ほんの少しばかりばつが悪そうな顔になる。古薔薇の娘が案じるような眼差しを向けるのに、いいえっ、とぶんぶん首を横に振って。
「私、変な人みたいでした……よね?」
「そんなことは、ありませんよ。……花を、見ていらしたのですか」
 フィオリーナは緩く首を横に振り、微笑んでみせる。咲もすぐに笑顔を取り戻すと、小さく頷き、視線を銀鈴蘭へと移して。
「でも、初めて見るお花なので、きちんと覚えておきたくて。……大事な方への、お土産にするんです。お花の好きな方だったので――」
「……そう、ですか」
 咲の言葉が意味するものを、人形の娘が察するのはそう難しいことではなく。
 緩やかに吹き抜ける風が花を揺らし、優しい香りを二人の元に運ぶ。
 彼の人は、とうの昔に土の下。一緒に見ることは出来ないから、せめてどんな場所でどんな風に咲いて、そして、どんなに綺麗なのかを、知って帰りたいと。
「一緒に来れない代わりに、私が覚えて帰って。……お話を、聞かせて差し上げたいんです」
「……きっと、喜んでくださいますよ。この花だけでなく、様々な世界の風景を、……どうか、伝えて差し上げて下さい」
 今ではないいつか、ここではないどこかで。
 降り積もる想いと記憶が咲かせる花の、その美しい物語の数々を。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カーティス・ダウラント
ニケ(f02710)と共に

静かに祷りを捧げる少女を見守り乍ら
戦火の消えた景色を見遣る

改めて目に映る水面は、花達は
暗がりの中、優しさを湛え淡く煌めいて
……今の私には、少しばかり眩いかもしれないな

暫し目蓋を閉じて
戦闘の気を落ち着けよう

はしゃぐ少女に誘われるまま
湖の畔へと足を運ぶ

嗚呼。君は、綺麗な景色があると楽しみにしていたものな
ニケの持参したサンドイッチを有難く頂き
目を細めて再び辺りに目を向ける
同行した少女も、他の猟兵諸君も
この光景に負けず劣らずの眩い笑顔を浮かべていて

……成る程
護ると、護れたと言う事は、
此ほどに心落ち着くものなのか。

嘗て遂げれずにいた心地を噛み締め
穏やかな世界を楽しもう


行間お任せ


ニケ・セアリチオ
カートおじ様(f02644)とご一緒に!

取り戻された安穏
その景色にほうと息をついて――魅入る、前に
僅かな時間ですが、黙祷を
喪われた残滓に、それに脅かされた方々に
何より、この穏やかな光景が、末永く続きますように

――ええ、ええ。
こんなに綺麗な場所なんですもの
あとはこの景色を楽しみましょう
めいっぱいに味わなければ、失礼というものです!

私ね、サンドイッチを作ってきたの
良かったらご一緒に食べましょう?
はむりと一口
柔らかな風を感じながら、二口


優しく暖かな、ここで
こうして笑い合う事が出来て、本当に良かった。
ええ、ええ!
今日も、とても幸運な一日でした!

他の方とも絡み・アドリブは大歓迎よ
御随意に頂けたら嬉しいわ



 猟兵たちの手により、取り戻された安穏。
 そよぐ風に揺れる銀鈴蘭の淡い光。一面に広がる美しい景色に、ニケ・セアリチオはほう、と感嘆の息を零して――。
 そうして、その風景に魅入る、前に。
 ニケは静かに両手を組み、目を閉じて、束の間の黙祷を捧げた。
 喪われた残滓に、それに脅かされた人々に。そして、何より、
(「――この穏やかな光景が、末永く続きますように」)
 静かに祷りを捧げる少女を傍らで見守りながら、カーティス・ダウラントは戦火の消えた景色を見遣った。
 灰色の瞳に映る水面は、花たちは、暗がりの中でも優しさを湛え淡く煌めいていて。
(「……今の私には、少しばかり眩いかもしれないな」)
 未だ僅か残る戦闘の高揚を落ち着けるべく、カーティスは暫し目蓋を閉じ、風が奏でる花たちの歌声に耳を傾ける。
 そうして次に目を開けた時には、傍らの少女の金色の瞳が真っ直ぐに向けられていた。
「もう良いのかい、ニケ?」
「ふふっ、おじ様こそ! さあ、こんなに綺麗な場所なんですもの。あとはこの景色を楽しみましょう!」
 はしゃいだ様子を見せるニケは、待ち切れないとばかりに軽やかに踏み出して。
「嗚呼。君は、綺麗な景色があると楽しみにしていたものな」
 今にも羽ばたいていきそうなその背を微笑ましげに見つめながら、カーティスも誘われるまま湖の畔へと足を運ぶ。
「――ええ、ええ。めいっぱいに味わなければ、失礼というものです! ……というわけで、私ね、サンドイッチを作ってきたの」
 良かったらご一緒に食べましょう? と朗らかに笑うニケが持参したバスケットを広げれば、待ってましたとばかりに美味しそうな彩りが顔を覗かせて。
「嗚呼、有難く頂こう」
 はむりと一口。
 湖畔を渡る柔らかな風を感じながら、二口。
 戦いで空いた小腹も、十分に満たされる。
 カーティスは目を細め、再び辺りに目を向けた。
 傍らの少女も、他の猟兵たちも。そして、幻獣討伐の報せを聞き届けて訪れた村人たちや、目を覚ましてやって来た仔竜たちまでも。
 この光景に負けず劣らずの眩い笑顔を浮かべているのが見えれば、カーティスは自身の心に穏やかな感情が満ちていくのを感じた。
(「……成る程」)
 護ると、護れたということは、こんなにも心が落ち着くものなのか。
 それは、かつて護れなかったことを、知っているがゆえ。
 かつて遂げることが叶わなかった心地を噛み締めながら、カーティスは穏やかな世界をゆるりと楽しむ。
 ニケも笑みを綻ばせ、優しくもあたたかなこの場所でこうして笑い合うことが出来て本当に良かったと改めて思う。

 ――ええ、ええ!
 今日も、とても幸運な一日でした!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

法悦堂・慈衛
ロビンちゃん(f06319)と

さーて、目当ての銀鈴蘭を見に行こか。
お誘いした可愛い小鳥(ロビン)ちゃんとのデートを楽しむで。

ほぉ~なるほど。こりゃ絶景。
風に靡く銀鈴蘭、夜空を映す湖面…なるほど耳を澄ませれば花の声も聞こえてきそうやな。
この綺麗な夜は…そうやな。石長姫ちゃんに湖面で踊ってもらったら映えるやろなぁ。

今日のロビンちゃんは少女のように上機嫌。
俺は可愛い女の子とおったら上機嫌。
ゆるり話したいっちゅーロビンちゃんの希望やけどもついつい口が軽くなってまうなぁ。

月も花も湖も綺麗な夜やけど、一番綺麗な小鳥さんが隣におる。
嬉しいよなぁ。
付き合うてくれた君に、感謝のベーゼを手の甲へ。
…あかんかな?


ロビン・テヘラ
慈衛(f03290)と

空に月と星、地上には湖と銀鈴蘭
今日はキラキラしたものが沢山だわ
夜空の月と、湖に映る月が出逢って…出会ったらどうなると思う?
恋をするかしら?
ふわりふわりと浮かれ足で
慈衛の顔を覗き込んだり、首を傾げたり
驚いたり、笑ったりで今日のわたしは忙しいの
そうね、だってあなたがいるからだわ
あなたと見る世界が、こんなにも煌めいているから
今宵のわたしは慈衛の小鳥さんだもの
檻なんか要らないけれど
素敵なあなたの周りを飛ぶの
こんな素敵な約束を果たしてくれたから

まぁ慈衛ったら、と微笑んで彼の手をとるわ
銀鈴蘭が見てるから少し恥ずかしいけれど
ベーゼは慎んで受けましょう
そうして二人だけの秘密よって、笑うの



 空に月と星、地上には湖と銀鈴蘭。
 たくさんのきらきらしたものを前に、ロビン・テヘラの足取りはどこかふわふわと軽やかで。
「ほぉ~なるほど。こりゃ絶景や」
 風に靡く銀鈴蘭、夜空を映す湖面。
 なるほど耳を澄ませれば花の声も聞こえてきそうだと、法悦堂・慈衛は何とはなしに思いながら、先を行く陽の彩りを追う。
「夜空の月と、湖に映る月が出逢って……出逢ったら、どうなると思う?」
 恋をするかしら? 微笑んで振り返るロビンに、慈衛は上機嫌な様子で破顔した。
 この綺麗な夜に、式神符に籠めた石長姫に湖面で踊ってもらったらきっと映えるだろう――などと今思うのは、無粋というものだろう。
 何故なら、今日は目の前の少女との“デート”なのだから。
「今日のロビンちゃんは、いつもよりも上機嫌やなあ」
 まるで少女のようとは、敢えて口にせず。けれどそんな胸の内を見透かすかのように、そっと覗き込んでくる涼やかな藍色。
「そうね、だってあなたがいるからだわ。素敵な約束を果たしてくれたあなたと見る世界が、こんなにも煌めいているから」
 慈衛の言葉に首を傾げたり、驚いたり、笑ったり――今日のわたしは忙しいのと告げたそばからまた二人の距離は少しだけ離れていて。
 今宵のロビンは、慈衛の可愛い小鳥さん。例え檻がなくともつかまえていてくれることを、羽を休めるとまり木になってくれることを知っているから、ロビンは楽しげに、慈衛の周りを飛ぶように歩く。
(「……嬉しいよなぁ」)
 月も花も湖も、どれも綺麗な夜だけれど、一番綺麗な小鳥さんが隣にいる。
 ささやかな喜びを噛み締めながら、慈衛はロビンへそっと手を延べた。
「なぁ、ロビンちゃん。今宵付き合うてくれた君に、感謝のベーゼを送りたいんやけど……あかんかな?」
「まぁ……慈衛ったら。――謹んで、お受けするわ」
 慈衛の申し出に微笑んで、ロビンは差し出された手を取った。
 銀鈴蘭が見ているから、ほんの少しだけ恥ずかしい思いこそあるけれど。
「……ね、二人だけの秘密よ」
 慈衛の心からの想いごと手の甲に贈られるベーゼを受け取って、ロビンは嬉しげに、桜色の唇を淡く綻ばせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
銀鈴蘭愛でつつ茶会としゃれこもう
フィオリーナの嬢ちゃんも
今日はましゅまろはないんじゃけど…美味しいものは、ある!

トトリ君も、花虎の嬢ちゃんもお疲れさまじゃよ
よければこっち座らんか?
ひとりじゃ寂しいわしのわがままなんじゃけど
茶と軽食があるんじゃよ(きらっ)じゃーん、ふるーつさんどじゃ!
桃やイチゴやバナナ、生クリームとカスタード
好きなのを、お食べ…!

それから茶器セットもあるんよ
茶は、ここで花の香りのするものよりはすっきりした香りのものにしよ
そう、風呂敷包んだ大荷物はこれでな
おお、カップケーキもよいな、わしにもひとつ
うん、しょっぱいのも大事
こう賑やかじゃと小竜も興味もってきてしまうかもしれんな


トトリ・トートリド
月、空でも湖でも透き通って
銀鈴蘭も、嬉しそう

嵐吾(f05366)、お茶会に誘ってくれた
準備、あっというま
大荷物、これだった?
嵐吾は、すごい
(慌てて鞄探り)
トトリは、胡桃とバナナのカップケーキ
疲れた時は、甘いもの

フィオリーナ、案内、ありがとう
美味しいものは、分けた方が、いいから。一緒に
花虎(f01877)も、さっきの、かっこよかった
仔竜たちもきっと、すぐ、元気になる
月みたいなクラッカーを貰って
紅茶に映る月をまねして、覗く

果物も、クラッカーも、森も花も
好きな物だらけ、幸せだ
静かな夜も好きだけど
守れた花と、守った仲間と一緒だから
今夜は賑やかでいい
…賑やかが、いい
どんな絵具でも描けない夜
ずっと覚えてる


斎部・花虎
ふたつの月が照らす銀鈴蘭
月下にて茶会をいとなむ、そんな時間が在ったって良い

嵐吾に誘われそちらの方へ、トトリも同席とは嬉しいこと
フィオリーナ、おまえも如何だ
きっと特別な一夜だ

ふるーつ、さんど……!(どき……)
かっぷ、けーき……!(そわ……)
おれからの土産は、これを
チーズを挟んだクラッカーを楚々と場へ
しょっぱいものがあると甘いものが引き立つからな
サンドをひときれ頂いては目が輝く
ケーキをひとくち頂いては頬が染まる
掲げたティーカップには月を汲んで飲み干そう
――なあ、とても、愉しいよ

仔竜たちはどうなっただろう
ちゃんと無事に起きられたかと、少し不安になるけれど
そうだなトトリ、きっとすぐ元気になって飛び回る



 ――さて。
 この辺りなら良いだろうかと銀鈴蘭と湖の風景が良く見える場所で、終夜・嵐吾は早速とばかりに大きな風呂敷包みを広げ始める。
「嵐吾、フィオリーナも、来た」
 嵐吾が何やら準備を始めているのを興味深そうに覗き込みつつ、こちらへと近づいてきた気配にトトリ・トートリドが顔を上げる。
「おお、フィオリーナの嬢ちゃん、こっちじゃ」
「嵐吾様、トトリ様、花虎様も。お疲れ様でした」
 人形の娘は見知った顔に、幾許か表情を和らげつつも――早速、嵐吾が風呂敷の上に広げている物がとても気になっているよう。その視線に気づいた斎部・花虎が楽しげな色を碧翠の瞳に宿し。
「これから茶会が始まるそうだ。折角だから皆で楽しもう」
 ふたつの月が照らす銀鈴蘭。
 守り抜いた風景を傍らに月下にて茶会をいとなむ、そんな時間が在ったって良い。

 ――そして。
「……ふふふ。今日はましゅまろはないんじゃけど……美味しいものは、ある!」
 じゃーん!
「ふるーつさんどじゃ! 好きなのを、お食べ……!」
 真っ直ぐな切り口から覗く桃や苺やバナナに蜜柑。フルーツたちを優しく包む、生クリームとカスタード。目にも鮮やかで可愛らしい彩りと甘い香りに、嵐吾を除く三人の目があっという間もなく吸い込まれる。
「「ふるーつ、さんど……!」」
「……嵐吾、すごい」
 これ以上ないほどにシンクロする花虎とフィオリーナの声。一方トトリはぱち、と目を瞬かせてから、慌てた様子で鞄を探り始めて。
「トトリは、胡桃とバナナのカップケーキ。疲れた時は、甘いもの」
「「かっぷ、けーき……!」」
 これまたシンクロする女子二人の声。先に口を開いたのは花虎だった。
「……おれからの土産は、これを」
 楚々と場に加えるのは、チーズを挟んだクラッカー。甘い物の甘さを引き立てる程よいしょっぱさも添えられて、さて、フィオリーナはというと。
「では、わたくしは、こちらを……」
 と、風味豊かなバターが香るワッフルを取り出したのだった。
 そうしていざ茶会の準備が整えば、おろおろと彷徨う女子二人の視線。
「――ど、どういたしますか、花虎様、トトリ様」
「そ、そうだな、ここは……一つずつ、少しずつ、頂くのがいいのではなかろうか……!」
「うん、トトリも、そう思う」
 トトリがこくりと、背を押してくれるのに安堵して、花虎とフィオリーナは互いに顔を見合わせると、何故かとても重々しく頷き合った。
「勿論茶も用意してあるぞい」
 追い打ちとばかりに茶器セットを準備し始める嵐吾に、トトリがぽつり。
「……嵐吾、荷物、すごく大きかったけど。それよりいっぱい、入ってるように見える」
「ふふふ、これは魔法の風呂敷じゃからな」
「魔法の……風呂敷……!?」
 嵐吾がしたり顔で言ってのければ、トトリの丸い琥珀の瞳がさらにびっくりしたように丸くなる。
 花の香りがするものよりは、すっきりしたものを。
 銀鈴蘭の香りを遮ることなく、けれど風味はしっかり備えたあたたかな茶で喉を潤し、甘い物としょっぱい物でひと心地。
 花虎とフィオリーナはその美味しさに時に揃って目を輝かせ、頬を染めていた。
 遠くで元気に鳴いている仔竜たちも、その内、この和やかな空気と美味しそうな香りに興味を持って近づいてくるかもしれない。
「――なあ、とても、愉しいよ」
 花虎は満足気に笑みながらティーカップをゆるりと掲げ、湖面がそうしているように天上の丸い月を汲んで飲み干す。
 それを見たトトリが真似するように、紅茶に月を映してそっと覗き込んだ。
 静かな夜も好きだけれど、守れた花と、守った仲間と一緒だから、今夜は賑やかでいい。
(「……賑やかが、いい」)
 空と湖と、月と星と、風にそよぐ銀色の花。
 トトリの瞳に映る今宵の世界は、きっと、どんな絵の具を用いても描けないものだろうから。
 だから、――ずっと、覚えている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

白雪・大琥
【WIZ】
木の根元へ凭れ、ユキヒョウを呼んで一緒に銀鈴蘭を眺める

花は……俺の育った森ではあんま咲かなかったな。
光る花なら尚更だ。
鼻で鈴蘭つつくユキヒョウに、珍しく思うのは俺だけじゃなかったかと笑う
そこへさっきの仕返しとばかりに攻撃してくる仔竜達
「いってェ……! 悪かった、悪かったって……!」
ほらあっち行けと払い除けると、後をユキヒョウが追っていく
共に戯れる姿見遣りながら、ふと鈴蘭の花を指で弄る
花言葉……なんだっけ
独り言ちるように零すも、夜の動物や近くにいる仲間に届いただろうか
返る答えがあったら、ひとつ瞬き
鈴蘭愛でる仲間を見渡せば、なるほどと納得
確かに今のこの心地の好さは、幸せっていうんだろうな



 湖畔を見渡せる大きな木の根元に凭れ掛かり、白雪・大琥は相棒のユキヒョウを呼び出して。
 目の前に先綻ぶ銀鈴蘭だけでなく、花そのものが、雪深い地で育った大琥にはあまり馴染みのなかったものだ。
 それが光るのであれば、尚更のこと。
 そして、どうやら珍しく思っているのは大琥だけではなかったようで。
 鼻先でふんふんと銀鈴蘭をつついたり、大きな手でそっと光を揺らしてみたりしているユキヒョウに、大琥は思わず笑みを零す。
 ――すると、そこへ。
「キュ!!」
「キュキュッ! キュー!」
「……なっ、」
 まるで見つけたぞ、かかれー! とでも言わんばかりに、どこからともなく現れた仔竜たちが、大琥へと襲い掛かった。
 爪で引っ掻いてきたり、噛み付いてきたり、それは、先程理性を失っていた時のそれよりはだいぶ控えめではあるけれど。
「いってェ……! 悪かった、悪かったって……!」
 それでもやはり、痛いものは痛い。ほらあっち行けと払い除けると、退散ー! とばかりにキュイキュイ鳴きながら一目散に散っていく仔竜たちを、ユキヒョウが追って駆け出した。
 やがて、大きなユキヒョウと小さな仔竜たちが共にじゃれ合い戯れる姿を見やりながら、大琥はふと銀鈴蘭へ指を伸ばす。
「花言葉……なんだっけ」
 指先で花を弄りながら、ふと零れ落ちた独り言。
 その音にユキヒョウが顔を上げ、ちらりと促すような眼差しを受けた仔竜たちが瞬く。
「キューイ!」
 仔竜が得意げに上げた声を、それが意味する答えを理解し、大琥はひとつ瞬いた。
「……そうか、」
 銀鈴蘭を愛でる仲間たちを見渡せば、なるほどと納得がいく。
 自分たちの手で取り戻した平穏。
 空に浮かぶ月と星。湖面に揺らぐもうひとつの月。
 背を押すように湖畔を渡る風。
 そして、一面に咲く銀鈴蘭の、淡い光に包まれた世界。
「――そうだな」
 確かに、今のこの心地の良さは、そう、――“幸せ”というのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グリツィーニエ・オプファー
御覧なさい、ハンス
心洗われる光景で御座いますね
決して拒まず、足元で優しく揺れる花弁
月下にのみ咲く銀鈴蘭を眺め、群生に佇み
静かに、静かに耳を傾けましょう

ふと、視線は花から湖へ
水面に映る月――確か、二つの月が顔を合わせる場所に
その花は咲く、でしたでしょうか
まるで、天と地の月に焦がれ、咲き誇る様では御座いませんか
…私は恋といった感情にはてんで疎いもので
花々が何故斯様な場所を好み、咲くのか等検討もつきませぬが
その姿は美しく、心に光を齎す事に変わりありませぬ

…はてさて
私には、この子達の声を、心を知る事は出来ませぬが
もしかすると…精霊であるハンスには分かるのでしょうか
彼の瞳を見詰め、様子を窺ってみましょう



「御覧なさい、ハンス。心洗われる光景で御座いますね」
 グリツィーニエ・オプファーの呼ぶ声に、彼の肩で羽を休めていた鴉の瞳が興味深げに辺りを探る。
 訪れる者たちを誰一人として拒むことなく受け入れながら、その足元で優しく揺れる淡い光の花。
 一面に広がるひかりの海に佇み、その淡い色を眩しげに見つめながら――グリツィーニエはただ静かに、花たちのうたう声に耳を傾ける。
「……確か、二つの月が顔を合わせる場所にその花は咲く、でしたでしょうか」
 ふと視線を移した先には、漣立つ湖面。
 空に浮かぶ月と、水面に映るもうひとつの月。
 その光を受けて綻ぶ銀鈴蘭たちは、まるで、決して届かぬ天と地の、ふたつの光に焦がれ咲き誇っているようにも思えて。
 ――“恋”という感情がどのようなものであるのかを、グリツィーニエは深くは知らない。
 ゆえに、銀鈴蘭たちが何故このような場所を好んで咲くのかも、皆目見当がつかない。
 だが、これだけは、グリツィーニエにも理解できる。
 淡い光を抱いて可憐に、それでいて凛と咲くその姿はとてもうつくしく、見る者の心にあたたかな光を灯すことに変わりはないのだと。

「……はてさて、」
 ――もうひとつ、グリツィーニエにはどれほど思考を巡らせてもわからないことがある。
 それは、この一面に咲く可憐な銀鈴蘭たちの声、そして、心だ。
 けれど、もしかしたら精霊であるハンスならばこの子たちの声や想いがわかるのかもしれないと思い、“彼”を見つめれば。淡い光を反射する綺麗な硝子玉のような瞳が、グリツィーニエの姿を映す。
「……ハンス、――そう、そうですか」
 精霊の言葉に柔らかく目を細め、グリツィーニエは再び一面に広がる風景を、そこに宿る光を、心に刻み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティア・レインフィール
二つの月が出会う場所
詩的な表現だと思いましたけれど、正にその通りの光景ですね……

温かな陽の光も良いものですが
故郷であるダークセイヴァーとは雰囲気が違いますけれど
やはり、私は夜の方が落ち着くようです

思わず歌いたくなりますが
今夜は花達の聴衆となりましょう

銀鈴蘭の姿を眺めれば
思い浮かぶのは、銀の髪が美しかった亡き母の姿
捨てた名を呼ぶ母の声は、もうおぼろげだけれど
教わった数々の歌は、今も胸の中に

愛してはいけない筈の人を愛した結果、命を落とした母
……あの人を愛して、お母様は後悔しなかったのですか
答えは無いと知りながらも
ヴァンパイアを愛した母を思わせる花に、そう問い掛けて



 あたたかな陽の光も良いものだけれど、夜の静寂に心が安らぐのを感じるのは、雰囲気こそ異なるものの、故郷の――夜と闇に覆われた世界を思い起こさせるからだろうか。
 ――二つの月が出会う場所。
 詩的な表現だと思っていた。けれど、ティア・レインフィールの目の前に広がる光景は、まさしくその通りのものだった。
 満天の星が煌めく、天上の空に浮かぶ月。
 その真下、豊かな水を湛える湖面に揺らぐ、もうひとつの月。
 そして、その出会いを祝福するかのように、辺り一面に咲き誇る――月の光を抱く花、銀鈴蘭。
「……綺麗、ですね」
 唇を開けばすぐにでも歌を紡いでしまいそうな心地になりながらも、ティアはその想いをそっとあえかな微笑に閉じ込める。
 今宵の主役は、そう、彼、あるいは彼女たち。そよぐ風に揺れる銀鈴蘭たちが密やかに奏でる歌に耳を傾けながら、ティアは静かに彼らを見つめ――そして、そこに遠い面影を視た。
 ――思い浮かぶのは、銀色の髪がとても美しかった、今は亡き母の姿。
 とうに捨てた名を呼ぶ彼女の声すら、今となってはもうおぼろげではあるけれど。
 それでも、母が教えてくれた数々の歌は今もなおティアの中に息づき、共に時を重ねて――“生きて”いる。

 愛してはいけない筈のひとを愛し、ティアを遺して命を落とした母。
「……あの人を愛して、お母様は後悔しなかったのですか」
 自らの身体に流れる血の半分と、生まれながらに持つ神殺しの力は、他の誰でもない、母が愛した“あの人”が与えてくれたものに違いないけれど。
 答えはないと知りながらも、ティアは母を思わせる銀色の花に、そう問い掛けずにはいられなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月24日


挿絵イラスト