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大祓百鬼夜行⑳〜 あ そ ぼ

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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●メリーさんの電話番号
 不快な雑音が受話器の向こう側から聞こえてくる。
 それは砂嵐のような音であったし、耳の中をかきむしるような音でもあった。同時にそれが何を意味するのかは理解できはしない。
「ザ――」
 雨音のような音。
 ずっとずっと響いているのだ。けれど、時折聞こえてくる幼子の笑い声のような音。
 砂嵐の向こう側で、幼い子供らが何か笑っているような、不気味な声が時折聞こえてくるのだ。

「ど こ か な」

 それは確かに聞こえた。
 聞き間違いではないかと思ったけれど、そうではない。雑音の向こう側で確かに聞こえたのだ。

「あ れ が い い」
 はっきりと聞こえる。
 受話器から聞こえていた、単音が徐々に意味を為してくる。
 周囲を見回しても、この電話ボックスの中からは何も見えない。ボックス内の蛍光灯に蛾が群がり、ひどく鬱陶しい。

「あ」
 びくりと肩が震える。
 今、確かに自分の耳元で声が聞こえた。受話器を離す。確かに子供の声が。

「そ」
 じわりと汗が吹き出すのを感じただろう。
 どうしようもない焦燥感が喉からせり上がってきて。

「ぼ」

●大祓百鬼夜行
 ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)は、その瞳を伏せてグリモベースに集まった猟兵たちを出迎えた。
「お集まり頂きありがとうございます。今回は『電気を操る妖怪』がUDCアースの通信網に潜り込みました」
 彼女の瞳は揺れていた。
 そう、言うまでもなく電気を操るということは、『現代社会を破壊しうる力』である。
 電線やコンピューターネットワークを非実体化して飛び回る妖怪を捉える手段などなく、『大祓骸魂』と同じく対抗することなできずにUDCアースにある社会を破壊されてしまうはずであった。

「ですが、一つだけ手段があるのです」
 ナイアルテが猟兵たちに手振りで何かを伝えようとしている。こう、なんだか四角いものを手で囲うような仕草であった。
 何がいいたいのかと思ったが、どうやら電話ボックスのことを示しているらしい。
 ああ、なるほど。
 電話ボックスという単語が出てこなかったのだろう。
 気恥ずかしそうにナイアルテは額から湯気を出しながら、説明を続ける。

「で、電話ボックスです。唯一の弱点が『電話ボックス』からとある電話番号でアクセスすると受話器からオブリビオン妖怪『無邪気』が実体化するのです」
 しかし、スマートフォンが普及したUDCアースには電話ボックスという存在自体が稀有なるものである。
 それらをUDCアースから探し出して『メリーさんの電話番号』と呼ばれる番号を入力し、オブリビオン妖怪『無邪気』を引きずり出して倒さなければならない。

 しかし、問題がある。
「電話ボックスを破壊してしまうと妖怪も非実体化してしまうのです。電話ボックスは、ええと……人一人分ほどのスペースしかありません。どうにかして電話ボックスを壊さずに外へと引きずり出さないといけないのです」
 さらにある程度消耗させると、また受話器の中に引っ込んでしまう。
 要するに猟兵が戦う度に、再び電話ボックスを探して電話番号を入れて、アクセスし実体化して消滅するまで戦わなければならないのだ。

 面倒なことである。
 しかも、電話ボックスを破壊しないように、さらに電話ボックスから出る、もしくは狭い電話ボックスの中で戦うなどの策が必要となるのだ。
「受話器から出てくるというのが曲者ですね。さらにオブリビオン妖怪『無邪気』そのものもまた厄介な存在です」
 オブリビオン妖怪『無邪気』。
 概念が形を持った者であり、対する猟兵たちには子供の影のような姿に見えるだろう。このオブリビオン妖怪『無邪気』の攻撃に寄って電話ボックスそのものを巻き込んで破壊される可能性だってあるのだ。

「非常に制約の大きな戦いとなるでしょう。電話ボックスを壊さないように、けれど受話器から実体化する『無邪気』を打倒する……私には思いつくことがありませんが……」
 しゅっしゅっ、と拳を切る音がする。
 ああ、もしかしてホラーとか苦手なのだろうか。
 しかし、ナイアルテは頭を振って否定する。

「いいえオブリビオンである以上殴れば倒れるのですならば恐れることなど何一つ無いでしょうええそうです何も怖いとは思っていませんよ私はええ本当です別に大丈夫ですから予知した内容がホラー過ぎて今夜眠れそうにないとかそういうわけではないんです本当ですから!」
 あっ。
 はい。
 それ以上猟兵達は何も言えず、けれど、これより始まる難解なる戦いへと向かうのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『大祓百鬼夜行』の戦争シナリオとなります。

 UDCアースにおいて今はもう珍しい存在となった電話ボックスを探し出し、『メリーさんの電話番号』でアクセスすることによって実体化するオブリビオン妖怪『無邪気』を打倒するシナリオとなります。
 大変面倒くさい戦いになるでしょう。
 電話ボックスは壊してはならず、電話番号を入力すると受話器から実体化するオブリビオン妖怪。
 電話ボックスが壊れると非実体化してしまう。
 消耗すると受話器に逃げ込んでまた別の電話ボックスから電話番号を入力しなければならない。

 など、わりと制約の多い戦いとなるでしょう。ですが、これを皆さんの起点と術策で乗り越えるシナリオとなっております。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……電話ボックスを壊さないように、受話器から出てくる妖怪と戦う。

 それでは、大祓百鬼夜行を阻止する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『無邪気』

POW   :    あ そ ぶ
レベル×1tまでの対象の【身体や建造物など】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    ど こ か な
【生物を見つけること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【恐怖を与え動きを封じる視線】で攻撃する。
WIZ   :    あ れ が い い
攻撃が命中した対象に【強い興味】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【自身から発生した複数体の分身】による追加攻撃を与え続ける。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は霞末・遵です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アイン・セラフィナイト
電気を操る妖怪か。電話ボックスってなると場所も限られちゃうからね。今じゃスマートフォンが主流だし。
とにかく、まずは電話ボックスから電話をかけて、と。妖怪が現れたのを確認したらUC発動!

水晶の鴉たちを電話ボックスの周囲に配置、ボクの光属性の魔弾を放射して鴉たちに連続反射、擬似的な光の結界を作り出して電話ボックスを『オーラ防御』してみるよ。

ボクは無防備になっちゃうね。杖から魔弾を放射……するけどそれは囮。
水晶の鴉の反射を少しだけ変化させてこちらへ向かってくる敵に『属性攻撃』の魔弾を撃ち放ってみるよ。(動物使い)
連続反射させて威力を増幅させた魔弾、食らうと良い!

(アドリブ歓迎です)



 現代社会においてネットワークは無くてはならないものである。
 情報通信網は人びとの暮らしを豊かにするが、それに慣れきってしまえばそれ無しでは生活もままならなくなってしまう。
 それは仕方のないことであるが、だからといってオブリビオン妖怪によって蹂躙されていいものでもないのだ。

 今やスマートフォンが主流たる世界において電話ボックスとは、やはり存在を忘れ去られてしまうものであったことだろう。
 街中に未だわずかに残っているとは言え、稀有である。
 オブリビオン妖怪『無邪気』は、電気を操り、ネットワーク上に忍び込み、世界を滅ぼそうとしている。
「電気を操る妖怪か。電話ボックスってなると場所も限られちゃうからね」
 とにもかくにも電話ボックスを探し出し、呪いの電話番号にアクセスしなければならないと、街なかを急ぐのはアイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)であった。

 彼が見つけた電話ボックス。
 中の蛍光灯が明滅し、羽根虫の残骸であろう死骸が四隅に溜まっている。雰囲気だけであれば十分すぎるほどに老朽化した電話ボックスであるが、猟兵としての目的を果たすには十分であった。
「あった……とにかくまずは番号を入れないといけないんだよね……」
 思った以上に狭い電話ボックス内。
 ボタン式であることは見て取れるし、お札を入れるのかなと思えば、どうにも違うサイズである。

 電話番号を入力して程なくした瞬間、受話器からオブリビオン妖怪『無邪気』の影の身体が溢れるようにして電話ボックスからアインの身体を押し流す。
「あ そ ぼ」
 クスクス笑うような影の気配。
 けれどアインの瞳にはユーベルコードが輝いていた。
「翔べ、清浄の守護者! 輝け、星光の大翼! 魔を制し、空を駆けろ!」
 小型の水晶の鴉が聖空に羽撃く者(プリズマティック・フェザー)として、世界に顕現する。
 電話ボックスの周囲に配置し、アインのはなった光の魔弾を反射し、擬似的な光の結界を生みだすのだ。

「あー あ れ が い い」
『無邪気』は笑っていた。
 光の魔弾が水晶の鴉に反射して跳ねる様子を見つめ、目で追う。
 何処まで言っても子供の妖怪が骸魂によって変化した概念としての存在であるのだ。ならばこそ、光るものに引き寄せられるのは道理であろう。
「分身……! なら!」
 光る魔弾に興味をそそられた『無邪気』の身体が分裂し、分身体として追いかけ回すあのだ。

「囮にするまでもなかったね。けど、こっちにも気を配ってないとさ」
 杖から魔弾を発射した光がアインから『無邪気』の分身体へと放たれる。
 しかし、それは囮でしかないのだ。
 新たに現れた魔弾に興味をもった『無邪気』たちが笑いながら光る魔弾を追い求め、跳ね回る。

 結界に当たって跳弾する度に魔弾の威力は上がっていくのだ。
「水晶の鴉……擬似的な結界だけれど、跳ねる度に威力を増幅させていく……連続反射の回数は十分。この一撃を食らうと良い!」
 縦横無尽に駆け巡る光の魔弾が凄まじい光の軌跡を生み出し、結界内に捉えられた『無邪気』たちの分身体を尽く貫いていく。

 それは一瞬にも満たない時間であったことだろう。
「い た い い た い」
 けれど、笑うように『無邪気』たちはケタケタ笑いながら電話ボックスの受話器の中に飛び込んでいく。
 アインの光の魔弾により結界は、『無邪気』たちの総量を減らす事に成功する。
 同時にそれは、彼の戦法が電話ボックスを傷つけず、オブリビオン妖怪だけを消耗させる戦術として非常に有効であったことを示し、彼等を無事に撃退させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
予知した内容がホラー過ぎるって話だがその手の輩の対処は俺達の十八番だぜッ!
って言ったものの先ずは電話ボックスを探さねえとな。
「・・・スマホで近くの電話ボックスを検索しましょう。」
スマホで電話ボックスを探すってのも奇妙な話だぜ。

電話ボックスを見付けたら早速『メリーさんの電話番号』とやらをかけるぜ。
おうおう、受話器からテンプレのホラー導入のような言葉が聴こえてくるぜ。
受話器から敵が出現する瞬間を見切って電話ボックスから飛び出して距離をとるぜ。

「・・・破魔の祓い矢。」
こいつは怪異『のみ』を粉砕する技。電話ボックスを気にせずブチ込めるって訳だぜ。
祓い矢を弾幕の如く浴びせてやるぜッ!


【アドリブ歓迎】



 グリモア猟兵が見た予知内容。
 それは慣れていない者であれば、正直何度も見たいとは思わない内容であったことだろう。
 しかし、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)にとって、それは十八番である。
『その手の輩の対応は俺達の専門分野、専売特許って奴だッ!』
 意気揚々と凶津は相棒である桜と共にUDCアースの街中にあるであろう電話ボックスを探す。
 しかし、すでに絶滅危惧種である電話ボックスの所在を探すのは困難であったことだろう。
 一昔前は、少し歩くだけでも電話ボックスが見つかるものであったが、今はスマートフォンの普及に寄って需要が減ってきているのだろう。

 維持費だって馬鹿にならない。
 だからこそ忘れされていく。そうやってカクリヨファンタズムにまた電話ボックスという存在が流れ着いていくのかも知れなかった。
「……スマホで近くの電話ボックスを検索しましょう」
 相棒である桜がスマートフォンを手にする。
 スマートフォンで電話ボックスを探すというのもまた奇妙な話であるが、これが手っ取り早いのだ。
 インターネットに繋がるということは世界中の情報にアクセスできるということだ。

 スマートフォンからのアクセスにはオブリビオン妖怪『無邪気』が反応しないということは、やはり電話ボックスという存在自体が鍵となるのだろう。
「……あれです」
『やっぱ便利だなッ、スマホってやつはッ!』
 二人が見つけた電話ボックスは随分と古いものであった。電話自体も灰黒色であり、あちらこちらにサビが浮いている。
 きぃきぃとかすれた音を立てて、電話ボックスの扉もきちんと閉まらなくなっているのだ。

『早速『メリーさんの電話番号』とやらをかけるぜッ』
 二人は番号を入力していく。
 少しの間の呼び出し音の後に雑音が響く。
「ど こ か な」
 それはおどろおどろしい声であったけれど、幼さを感じさせる声色だった。
 凶津たちにとって、それは恐ろしいものではなく、どちらかと言えばテンプレートのような無為簡素なものにしか思えなかったのだ。

 瞬間的に二人は電話ボックスから飛び出す。
 受話器からオブリビオン妖怪『無邪気』が飛び出す瞬間を狙って、外へ出れば電話ボックスを破壊されることもない。
 それに自分たちに執着している『無邪気』がどろりと影を溶かしたような身体を電話ボックスからはいださせ、奇妙な口だけの笑顔で追いすがってくるのだ。

「……破魔の祓い矢(ハマノハライヤ)」
 恐怖を与える視線を感じても、桜はためらわない。
 ユーベルコードに輝く瞳が、どれだけ彼女の恐怖を増幅させようとも、引き絞った破魔弓に霊力が込められた矢をつがえ、放つことで怪異のみを粉砕し、浄化する力を解き放つのだ。
 そう、『怪異のみ』を破壊する。
 ならば、電話ボックスという物理的なものには一切の効果がない。つまりは、電話ボックスから這い出ようとした瞬間、壊す心配など無く打撃を与えられるということなのだ。

「あ あ な ん で す り ぬ け る の」
 疑問を抱く瞬間すら無く、一瞬で凶津たちの放った矢が『無邪気』の身体を貫く。
『相棒ッ! 遠慮なく祓い矢の弾幕を叩き込めッ!』
 凶津の言葉にうなずき、桜が霊力の矢を次々と雨のように降らせる。
 電話ボックスを破壊せず、同時に敵を打つ。
 二人は見事な戦いぶりで『無邪気』の身体を霊力の籠もった矢で傷つけ、悲鳴を上げるように受話器へと潜り込んでいく背に最後の一矢を放つ。

「……これでだいぶ消耗させられたはず……」
『ああッ! しかし、巫女とスマートフォン……時代が変わったものだなッ!』
 二人はこれからも姿を消していくであろう電話ボックスを見つめ、時代の移り変わりを痛感するであろう。
 けれど、古きものが姿を消しても、カクリヨファンタズムにたどり着き懐かしむ者がいるというのならば、それもまた一つの救いであろう。
 そう思えば、忘れ去られてもなお、覚えてくれている者がいるというのは、幸せであると二人はそう感じるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

姫川・芙美子
私と同じ、子供達の想いから生まれた妖怪なんでしょうか。ご同輩ですね。
悪い事をして人間に迷惑をかけているのなら、お姉さんが叱ってあげないと。

電話ボックスからメリーさんの番号を入力。
無邪気が現れたら、ボックスから飛び出しつつ【隠れ鬼】達を呼び出します。もういいよ、みんな出ておいで。
複数の見えない鬼達を召喚。【拠点防御】で電話ボックスへの被害を防ぎつつ、鬼達の【怪力】で実体化した無邪気を押さえ込みねじ伏せます。
逃げられる前に懲らしめてあげないと。手に封印された鬼の力を解放。【鬼手】による【鎧無視攻撃】。存在自体を切り裂く鬼の爪で攻撃します。ダメだよ、こんなことしてたら。



 オブリビオン妖怪『無邪気』。
 それは幼子の持つ残虐性や悪性が集合した概念としての姿である。そこにあったのは純粋な悪意と残虐性。
 誰しもが幼き日に持つ純粋なるものであり、倫理や理性といったものを獲得する前の概念が集まったものであろう。
 ならば、姫川・芙美子(鬼子・f28908)は、人の胎の中から生まれる『産怪』は彼等と同輩ということになるであろうか。

 しかし、今の彼女は安寧をもたらした者への感謝から生じる感情を糧とする、正義の味方である。
 無力な赤子の妖怪であったころの彼女はもういない。
 すでに多くの戦いを経て、彼女は『正義の味方』として、自立している。『そう在るべき』という強迫観念があれど、それでも彼女は猟兵として戦いに赴くのだ。
「私と同じ、子供達の想いから生まれた妖怪なんでしょうか。ご同輩ですね」

 そんな風に彼女は見つけた電話ボックスの前に佇む。
 古い電話ボックスはもう、喪われていく存在でしかないのだろう。利用するものも居らず、徐々に朽ち果てていくだけの存在。
 がちゃりと音を立てて電話ボックスに入ると、電話番号を入力する。
 オブリビオン妖怪『無邪気』もまた、その名と同じくただ遊びたいだけなのかもしれない。

 けれど、それが人に害を為すというのならば。
「お姉さんが叱ってあげないと」
 理性や倫理が身についていないからということが、理由にはなりはしないのだ
 それは誰かが正さねばならない。
 ならば、自分がやらなければならないのだと芙美子は決意を新たにする。
 呼び出し音が響き、がちゃりと音を立て雑音が聞こえてくる。
「あ そ ぼ」

 それは無機質だけれど、どこかクスクスと笑うような声であったことだろう。
 芙美子はその瞬間、電話ボックスから駆け出す。
 同時に彼女の瞳はユーベルコードに輝き、空間に隠れた見えない鬼達を放つのだ。
「もういいよ、みんな出ておいで」
 芙美子の呼び出したのは、隠れ鬼(カクレオニ)。
 彼等は実体化したオブリビオン妖怪『無邪気』を万力の如き力で押さえつけるのだ。
 電話ボックスを破壊されては、再び非実体化し、逃げられてしまう。
 だからこそ、隠れ鬼たちによって『無邪気』を取り押さえるのだ。

「お姉さんが懲らしめてあげます。悪いことをしたら、痛い目にあう。それを知ってください」
 芙美子の腕に施された封印が解け、鬼手が姿を顕す。
 鋭い鬼の爪が唸りを上げるように風を切って、取り押さえられた『無邪気』の影のような身体を切り裂く。
「あ あ あ い た い つ め が い た い」
 なんでこんな事をするのかと、その影の泥のような顔が言葉を紡ぐ。

 それは純粋に理解ができないからだろう。
 理性や倫理を獲得する前の純粋な悪性としての概念であるからに他ならない。哀れということは簡単だ。
 けれど、芙美子はそれをしない。
 それをしてしまえば、誰が彼等を諭して導くことができるのだろう。
 芙美子は己を正義の味方として定義するのならばこそ、彼等を導かねばならない。鬼手の爪ではなく、ぴったりと指を合わせた平手でもって『無邪気』たちのお尻であろう部分を叩くのだ。

 まさに尻叩き。
 子供をしつけるのならば、これが一番であると言わんばかりに芙美子は『無邪気』へと張り手を見舞い続ける。
「ダメだよ、こんなことしてたら」
 また同じことをしていたのならば、自分が叱りに来る、と芙美子は毅然と『無邪気』をはたき続ける。
 折檻というには、少し優しい気がしないでもない。
 ずるりと芙美子の万力の如き力から逃げ出した『無邪気』の泣きわめく声と共に、UDCアースに芙美子の張り手の快音が響き渡るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

董・白
※アドリブや他猟兵との連携はOKです
【心境】
「電話…ボックスですか…。」
そもそも電話ってよくわからないんですよね(科学が発達してない世界出身&山籠もり修行者)
(説明受けて)えーっと、わかりました。
よくわからないけどわかりました。
…電話かぁ…早馬の文じゃダメなのかな?
【行動】

えーっと、探し物探し人の場合はこの宝貝の出番です。
宝貝「太極図」を利用します。宝貝の力で検索、情報収集して電話ボックス?の場所を探査発見し、そちらに向かいます。

えーっと使い方は(メモ用紙の内容を確認しつつ、ドキドキしながらボタンプッシュ)

戦闘は破魔の霊符と雷撃の雷公鞭で戦います。
道術ではった結界術で攻撃を防ぎつつがんばります



 多世界をめぐる猟兵にとって、世界とはすなわち異文化の極みである。
 自分の出身世界はあれど、その世俗、文化が同一であるとは限らない。例えば封神武侠界において礼儀とはすなわち『拱手』である。
 この礼儀を欠くことこそが、人としての礼節を持たぬ蛮族である証拠である。
 逆に『拱手』さえ欠かさなければ、人びとをこれを受け入れるだろう。

 しかし、それは他の世界においても通用するかと言えば封神武侠界のように十全に働くものではないのだ。
 だからこそ、董・白(尸解仙・f33242)は学ぶ。
「電話……ボックスですか……」
 そもそも封神武侠界に電話という通信手段はない。
 故にそれがどんなに便利なものであると説かれても、白には未だにピンと来ていないのだ。
 それ以前に彼女は山籠りの修行者である。
 グリモア猟兵から細かく説明を受けても、えーっと、と曖昧な返事しかしていなかったのだ。
 よくわからないけどわかった、というやつである。

「電話かぁ……早馬の文じゃダメなのかな?」
 むしろ、それよりもだいぶ早いし、タイムラグなしで互いの情報を伝達できるというところが革新的であるのだが、慣れ親しんだ文化から中々足を引っ張り出せぬのもまた人たる証拠であろう。

 そして、今回の事件は『電話ボックス』を探し出すことである。
 怪異であるオブリビオン妖怪『無邪気』を見つけるためには、まず電話ボックスを見つけ出さなければならない。
 電話番号を入力して、受話器から現れるオブリビオンを打倒しなければならないというのが今回の事件の目的だ。
「えーっと、探しもの探し人の場合はこの宝貝の出番です――宝貝「太極図」(パオペエタイキョクズ)」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。

 世界が違えど龍脈は流れているであろう。そこから世界の情報を収集し、未だによく理解していない電話ボックスの所在を探し当てるのだ。
 こういう時に宝貝の力は凄まじいものがある。
 一瞬で彼女の脳裏に電話ボックスへの道筋が示され、白は目的の電話ボックスの前に立つのだ。
「これが電話ボックス……想像していたのとはなんだか違う気がしますが、これが早馬の文よりも早く遠くに声を届けることができるもの……」
 慣れぬ異世界の文化に触れて、白はドキドキしながら電話ボックスの中に入る。
 思った以上に狭いし、なんだか異様に古い気がするのは気のせいか。

「えっと、使い方は……」
 しっかりと電話ボックスの使い方と入力する電話番号をメモしてきていたのだ。えらい!
 初めての経験故に緊張しているのか、ドキドキしながらボタンをプッシュ。
 次の瞬間、持っていた受話器からどろりと影のように現れる『無邪気』の姿は子供の影のような姿であった。
 クスクス笑うような表情が気味悪く、白は思わず叫びそうになったが、瞬間的に破魔の霊符をなげうち、狭い電話ボックスから飛び出すのだ。
「あ そ ぼ」
 単音のか擦れた声。

 子供の声だというのに背筋を撫で回されたかのような不快感が白を襲う。
「これが、オブリビオン妖怪……ですが、私とて修行を経た尸解仙! 恐怖は道術でいかようにも!」
 平常心を保つこともまた神仙に至るための修行である。
 どれだけ不気味な存在を目の間にしても彼女の心が揺らぐことはないのだ。

 手にした雷公鞭を振るい、雷撃の一撃を持って『無邪気』を打ち据える。子供の姿をしていたとしても、相手はオブリビオンである。
「ぎ ゃ ぁ い た い か み な り こ わ い」
 打ち付ける雷撃の威力にたまらず『無邪気』は受話器の中に潜り込んでいく。
 相当に消耗しているはずだが、電気を操る妖怪故に、白の攻撃は破魔の霊符のほうが効果的だったのだろう。
「電話ボックス……あんなところにも出入り口があるなんて……やっぱり異世界の文化は知識として得ても、見てみないとわからないですね……」

 電話ボックスのこと、多分誤解していると思うけれど、白は逃げていった『無邪気』を追って受話器の穴を見やる。
 どうあっても自分では、この穴に入り込むことはできない。
 けれど、すでに多くの猟兵がやってきているだろう。
 徐々に宝貝『太極図』に記された街中の電話ボックスにアクセスする者たちがいる。

「やっぱり、電話ボックスより宝貝のほうが便利ですね」
 確かにそうだけれど、宝貝と電話ボックスを比べるのは酷だろう。
 白は『太極図』に明滅する電話ボックスの印を見て、程なくして『無邪気』が打倒されることを知るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エィミー・ロストリンク
【POW】
狭い電話ボックスだけど、破壊しなければいいんだよね?
それなら得意なのがあるよ!

UC「消失せし姫君の財宝、その報いを受けよ」を発動し、自身と接触している電話ボックスを消費型メガリスに異常を転移させるオーラで覆う
これでロスト・オーシャンオーブ内のメガリスがなくなるまで電話ボックスは破壊されることなく、さらにエィミー自身の攻撃回数も増えていくという地獄コンボ

ヒャッハー! メガリス海嘯拳だよー!

水圧で圧し潰すようにボックス内を津波で循環させて連続打撃を与えながら、拳による乱撃でダメージを与えていく
ただし消費型メガリスがなくなる直前になった、脱出する

アドリブ絡みOK



 電話ボックスとは元来一人用の施設である。
 それはある意味で当然であったことだろう。電話をかける時、必然その言葉は他人に聞かれてほしくない内容だってあるだろう。 
 だから間仕切りのように四辺を囲うのだ。となれば、当然狭くもなるだろう。
 むしろ、それだけのスペースで十分であるからこそ、かつてはUDCアースのあらゆる場所に点在していたのだ。

 けれど、スマートフォンの普及に寄って電話ボックスの必要性は喪われていく。
 そうなれば電話ボックスの存在は忘れ去られ、人びとの記憶の中に埋もれて消えていく。電気を操る妖怪『無邪気』の弱点が、 電話ボックスになったのもまた必然であったことだろう。
「狭い電話ボックスだけど、破壊しなければいいんだよね?」
 UDCアースのある電話ボックスの前に立ったエィミー・ロストリンク(再臨せし絆の乙女・f26184)は、戦いの場になる電話ボックスのスペースの狭さを危惧していたが、同時に彼女はすでに戦術を組み立てていたのだ。

 ――消失せし姫君の財宝、その報いを受けよ(ロストオーシャン・オブ・リベンジ)。

 それは彼女の持つ消費型メガリスに彼女に与えられる異常を肩代わりさせるユーベルコードである。
 それは当然ダメージや負傷といったあらゆるものを肩代わりさせるのだ。
 つまり、狭い電話ボックスの中で戦っても、彼女に与えられるダメージは、彼女が持つ消費型メガリスが尽きぬ限り、エィミーに届くことはないのだ。
「さあ、ボタンをプッシュしてコール! いっくよー!」
 呪いの電話番号をプッシュした瞬間、受話器から聞こえてくる単音の怪音。

「あ そ ぼ」

 それはどろりと影のように受話器から溢れ出て、一瞬で狭い電話ボックスの中を満たす。
 けれど、そのオブリビオン妖怪『無邪気』がエィミーに与えるダメージの尽くがエィミーの持つ『ロスト・オーシャン』内に満ちる消費型メガリスによって肩代わりされ、霧散していく。
 ただそれだけであるのならば、限りあるメガリスの全てを消費させ、エィミーを追い込む事ができたであろう。

 けれど、彼女のユーベルコードが他とはひと味違うのは、ここからである。
「メガリスが壊れる度に、わたしの攻撃回数が増えていくんだよー! これが地獄コンボってやつだねー! ヒャッハー! メガリス海嘯拳だよー!」
 一瞬で電話ボックスの中に満ちる津波。
 それは水圧で電話ボックスを破壊するものであったが、全てがエィミーの持つ消費型メガリスによって肩代わりされ、さらにエィミーの攻撃速度を上げていくのだ。

 行くことも戻ることもできない電撃的な攻撃の回数。
 それは圧倒的なラッシュとなって電話ボックスの中で弾け飛ぶ。
「あ あ あ と ま ら な い お し つ ぶ さ れ る」
『無邪気』はたまらずに砕けていく。
 溢れるような影はエィミーの放つメガリス海嘯拳の乱撃に寄って尽く打ち払われ、一瞬の内に放たれる拳の速度は音速を越えている。
 稲妻のような轟音が電話ボックスから響き渡り、エィミーの持つ『ロスト・オーシャン』内にあるメガリスが尽きかける瞬間に、エィミーは外に飛び出す。

「おっと、危ない危ない。勢い余って電話ボックス壊しちゃうところだった。十分遊べたかなー?」
 そうエィミーが問いかける電話ボックスの中には、すでに『無邪気』の姿はない。
 遊ぼ、と問いかけた単音。
 それはきっと子供らしい無邪気なものであったことだろう。
 それが悪性の概念としてあるのならば、彼等はただ、純粋に其処に在るだけの存在であったのだろう。

 けれど、相手が悪かったのだ。
 凄まじい無限コンボを持つエィミーを前にして狭い電話ボックス内で対峙したこと自体が悪手。
 エィミーは、受話器の中に逃げ込んだ『無邪気』とのすさまじい遊びに満足したように己のメガリス海嘯拳の威力を持って拳を突き上げるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
電話ボックス……そういえばUDCアースで見たことがあるような。そういうものもあるんですね。
電話や電話ボックス自体に馴染みが薄いせいか、私にはそこから出現する妖怪の恐ろしさはわかりませんが、戦う上での厄介さは理解できました。

このスペースではまともに銃剣も振るえませんね。
フィンブルヴェトは電話ボックス内に立てかけて置き、メリーさんの電話番号にアクセスすることでオブリビオン妖怪『無邪気』を呼び出します。

無邪気が出現したなら無邪気がこちらを視認し認識するよりも速く、こちらが恐怖を感じるよりも速い『クイックドロウ』、4丁のデリンジャーによる【クイックドロウ・四連】を撃ち込みます。



 UDCアースを知る猟兵であっても、電話ボックスの存在を認知していなかった者もいるだろう。
 それもそのはずである。
 すでに現代と呼ばれる歴史や科学水準を満たすUDCアースにおいて、電話ボックスとはすでにレトロな……言ってしまえば、稀有な存在である。
 それゆえに忘れ去られたものが行き着く幽世、カクリヨファンタズムにおいてこそ多く存在するものであったかも知れない。
「電話ボックス……そう言えばUDCアースで見たことがあるような。そういうのもあるんですね」
 目の前にある電話ボックスを見つめ、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は小さくつぶやいた。

 グリモア猟兵が大袈裟に怖がっていたが、セルマは電話や電話ボックス自体に馴染みがない。
 そのせいか、彼女はそこから出現するという妖怪の恐ろしさがいまいちピンとこないのだ。
「ですが、戦う上での厄介さは理解できました」
 目の前の電話ボックス。
 その四角で囲われたボックスの名に恥じぬ囲いある物体を見て、セルマはうなずく。

 この狭い場所で戦うというのは、セルマにとってしても厄介なものであったことだろう。
 彼女は狙撃手だ。
 戦場において彼女の力が最も発揮されるのは広大な世界そのものである。しかし、電話ボックスは人一人分のスペースしかないのだ。こんな狭い場所では、彼女の類まれなる狙撃の腕は用をなさないのではないだろうか。

「このスペースでは銃剣もまともに震えませんね」
 彼女の持つ接近戦用の武装もまた役に立たないほどの狭いスペース。
 ここでオブリビオンと戦うのは自殺行為であろう。けれど、彼女は臆すること無くマスケット銃である『フィンブルヴェト』を電話ボックスに立て掛け、呪いの電話番号であるメリーさんの電話番号をプッシュする。
 持っていた受話器から声が響く。

 それは単音であり、最初は何を言っているのかわからないものであったが、受話器の向こう側から雑音と共にクスクス笑う声が聞こえてくる。
 少しも不気味に思えない。
「ど こ か な」
 意味を為す単音。その言葉の意味をセルマは理解したが、どちらかと言えば驚きのほうが大きい。
 別に恐怖する理由なんて何処にもないが、彼女の動きは鍛錬と練磨によって生み出された圧倒的な、クイックドロウ・四連(クイックドロウ・クアドラプル)であった。

 放たれた銃声は一発。
 されど放たれた弾丸は四発。瞬きすらも遅いと言われる超絶為る早撃ち。それこそがセルマのユーベルコードであった。
 オブリビオン妖怪『無邪気』が受話器から出現した瞬間、セルマは『無邪気』を視認するよりも、恐怖を認識するよりも早く身体が動いていたのだ。
「あ ? て じ な ?」
 オブリビオン妖怪『無邪気』は何もできなかったし、自分が何をされたのかもわからなかった。

 わかったのは、自分が弾丸で撃ち抜かれたという事実のみ。
 わけがわからないというように、ぱくぱく開く口。言葉も、音も発することもなく、『無邪気』は受話器の中に吸い込まれていくのだ。
「種も仕掛けもありません、ただの早撃ちです」
 セルマは受話器の向こう側に消えていく『無邪気』に言い放つ。
 狭くても、どれだけ相手が早かろうとも。

 それでもセルマの早撃ちは、そのどれよりも早いのだ。
 相手にとっては不条理極まりないセルマの超絶技巧であったが、しかし、二つの世界を救うための戦いは今もなお予断を許さないのだ。
 ならばこそ、セルマの早撃ちのごとく迅速果断に事件を解決していくしかない。

 セルマは電話ボックスから出て、立て掛けておいたマスケット銃を手に再び新たな戦場へと走る。
 そう、誰も殺さず、誰も死なせず、そして二つの世界を救う戦いは、セルマの力を今も必要としているのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
そういえば電話ボックスは見なくなったね。

でもなくなったわけではないだろうし、
電話会社のHPで検索すれば設置場所とか出てくるんじゃないかな。

なるべく人気のないところ、近いところ、
それとデジタル端末のついている電話ボックスを探して、そこへ向かうね。

電話ボックスについたら、デジタル端末に【LVTP-X3rd-van】を接続してから、
『メリーさんの電話番号』でアクセス。

受話器から『無邪気』が出てきたら、電話機に直接【E.C.M】を流し込んで、電話機自体の動きを封じて、逃げられないようにして、
【バゼラード】で直接攻撃させてもらおうかな。

あまり長時間は止めていられないから、倒しきれるといいんだけどっ。



「そういえば電話ボックスは見なくなったね」
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は電脳世界から電話会社のホームページを検索し、ページを開いて電話ボックスの所在を検索していた。
 自分の位置情報を打ち込んで検索をかければ、UDCアースにおいて理緒の周囲にある電話ボックスの位置を教えてくれるのだ。
 そういうサービスがあるのではないかと踏んでいたのだが、調べれば即座に出てくるものである。

 けれど、理緒や他の一般人もそうであるが、電話ボックスが必要になる事態の場合、大体、そのサービスを受けるための端末もまた役に立たない異常事態であることが多いだろう。
 転ばぬ先の杖というか、絵に描いた餅というか。
 こういう時儘ならぬものであるが、今まさに猟兵として『大祓百鬼夜行』に類する事件を解決するためには役立てられたのだから良しとしようではないか。
「えっと、なるべく人気のないところ、近い所……あ、そうだ」
 理緒は早速、検索した電話ボックスへと向かい、その中に入る。

 きっとあるはずだと思っていたデジタル端末のソケットを見つけ、彼女の所持するコンバーチブル型のパソコンタブレットをつなげる。
「よし、これで準備万端。さあ、メリーさんの電話番号を押しちゃうよ!」
 少しドキドキする。
 曲がりなりにも呪いの電話番号である。いや、猟兵として戦っているわけだから、このたぐいにことは平気かもしれない。
 けれど、やっぱり怖いもの見たさというか、ホラーが好きな人間は得てしてそういうところがあるのかも知れない。

 理緒は躊躇いなく番号を押し、コール音が響くのを聞く。
 がちゃり、と乾いた音が聞こえたかと思っった瞬間、理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
 タブレットをタップして、E.C.M(イー・シー・エム)を発動させるのだ。
 電波妨害装置から発せられるノイズジャミングとディセプションが、電話ボックスの中のデジタル端末から放たれ、受話器から溢れるように飛び出した『無邪気」の身体の動きを止めるのだ。
「あ そ ぼ な に こ れ」
 ぎしりと軋むように『無邪気』の影のような身体が止まる。
 動けないのだ。

 それは理緒の繋いだパソコンタブレットから流し込まれたノイズジャミングによって、一種の金縛り状態に『無邪気』を陥らせるのだ。
「やっぱり! 電気を操る妖怪って聞いた時にピンと来たんだよね。電話機自体の動きを封じたら逃げられないし、動けなくなるんじゃないかって!」
 理緒は手にしたバゼラードを逆手に持ち、『無邪気』の影の身体へと一気に突き立てる。

 長時間は拘束できない。
 ここで倒しきれるのなら、倒しきったほうがいい。それでも逃げるのならば、少しでも痛手を与えなければならない。
「遊びたいって気持ちはわかるけれど、それで嫌な思いをする子だっていることを知らないとね!」
 理緒のはなった一撃が『無邪気』の影の体に深々と突き刺さり、霧散させる。
 しかし、電気を操る妖怪である『無邪気』は追い詰められてもなお、ケタケタと笑いながら受話器の中へと飛び込んでいく。

 逃した、と思ったが理緒は即座にパソコンタブレットから『無邪気』を追跡する。
 多くの猟兵達が電話ボックスからアクセスしたことによって、『無邪気』が出現する電話ボックスが潰れていくのだ。
 それはいわば包囲網である。
 これより遠くへはいけない。けれど、確実に『無邪気』を追い詰めているのだ。
「これが遊びだなんてつもりはないけれど、鬼ごっこはいつだって終わる時が来るんだよ」
 理緒は、電脳魔術を通じて他の猟兵達に使用可能な電話ボックスを伝え、そして『無邪気』を逃さぬように鉄壁の包囲網を敷くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャイン・エーデルシュタイン
【勇者パーティ】
「電話ボックスから電話をかける妖怪、ですか。
まずは電話ボックスを探す必要がありますね」

ここはシーフのサージェさんの出番ですね。
周辺の電話ボックスを探してもらいましょう。
ほら、ナイアルテさんに萌え死してないでキリキリ働いてください。

電話をかけるのは勇者のルクスさんにお任せします。

「って、フィアさん!?
なに電話ボックスを破壊しようとしてるんですか!」

フィアさんに【デュエリスト・ロウ】を発動。
電話ボックスを破壊せずに敵の動きを封じる魔法を使うように優しく説得しますね。

「サージェさんは敵本体を引きずり出し、ルクスさんがトドメを!」

電話ボックスを破壊したルクスさんにはお仕置きの手袋です。


フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】

「でんわぼっくす……?
なるほど、誰でも念話の魔法が使えるようにと作られた魔道具といったところか。
なんにせよ、そこから出てくる敵を逃さなければいいのだな!
ならば簡単なことよ!」

でんわぼっくすから出てきた瞬間を狙って、一撃で消し炭にすればいいだけのこと!
我の魔法で吹き飛ばしてくれるわ!

「いくぞ、ルクス、サージェ!
我にタイミングをあわせよ!」

敵が姿を現した瞬間に魔法を撃ち込もうとして……

「あいたぁっ!
シャイン、何故UC!?」

シャインからの小言を聞き、渋々【極寒地獄】ででんわぼっくすごと敵を氷漬けにして退路を断つという作戦に切り替えよう。

「くっ、うるさいやつがパーティに復帰したな」


ルクス・アルブス
【勇者パーティ】

サージェさんこれが『でんわぼっくす』なんですか?
でもこれって?

魔法なしで遠くの人とお話しできる道具なんですね。

え、わたしですか? わかりました!
このボタンを順番に押すんですね。

メリーさーん。
でてこないとふぃあふぃあしちゃいますよー?

あ、反応あっ……怖ぁ!?

聞こえてきた声に受話器を取り落としたら、
『無邪気』がでてきましたが……。

師匠!?
また話聞いてませんでしたね!?

でもわたしより早く電光のツッコミが。
シャインさん昔よりキレキレですね!

さぁ、もう逃げられませんよ。
【カンパネラ】で『無邪気』を撃破で……痛ぁっ!?

シャインさん手袋に石は反則ですよぅ!?
お仕置きって、なんでですかー!?


サージェ・ライト
【勇者パーティー】
……そういうとこやぞナイアルテさん(ごふっ
(ボックス説明の仕草とか最後の早口とかで萌え死ぬクノイチ)

どうやら私はここまでのようです
後はお任せ…ちょっとシャインさん引っ張らないで!?
えーツッコミ役復活したから
私、休m…忍んでいてもいいと思いません?
アッハイ、世に忍ばず戦いますね

さてまず電話ボックスですね
お任せください
【かげぶんしんの術】で500人に増えた私は探索では最強です
しゅばばーっと見つけてきますねー

敵が分身体を使ってくるなら再び【かげぶんしんの術】です!
数には数で対抗しつつ、余った分身で本体引きずり出しましょう
ボックスだけ壊さないようにしないといけませんね!

※アドリブOK



 UDCアースにおいて通信手段といえば嘗ては電話であった。
 公衆電話と呼ばれていたり、電話ボックスとも呼ばれていた。硬貨を投入、もしくはテレフォンカードなる回数券を購入して遠方の地に声を届ける。
 それは嘗ては一般的であり、誰もが知るものであり、誰もが利用し、目にしたものであった。
 けれど、すでにスマートフォンが普及した今の時代にあっては、その姿は見ることはほとんどないであろう。
 誰もが自分専用の電話を持っているのだ。
 取り立てて電話ボックスを利用する理由などなくなっていた。

 だからこそ、カクリヨファンタズムに流れ着くであろうし、怪異、オブリビオン妖怪の弱点にもなったのだろう。
「……そういうとこやぞ」
 ごふっ、と吐血するような声を出してサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は倒れた。
 いきなりなんで!? と思ったことであろうが、サージェにとってグリモア猟兵の語る仕草や最後の早口で虚勢を張るところが非常にツボであったのだろう。
 意図せずして秘孔を突く。
 なんという業。
「どうやら私はここまでのようです。後はおまかせ……」
「電話ボックスから電話をかける妖怪、ですか。まずは電話ボックスを探す必要がありますね」
 そんな彼女の手をとって引きずるのは、シャイン・エーデルシュタイン(悪霊として蘇ったクレリック・f33418)であった。

 彼女はサージェの腕を取るとにこりと微笑んだ。
「ほら、萌え死してないでキリキリ働いてください」
「ちょっとシャインさん引っ張らないで!? えーツッコミ役賦活したから私、休ん……忍んでいてもいいと想いません?」
 にこ。
「……アッハイ。世に忍ばず戦いますね」
 シャインの無言の笑顔に押されてサージェはしびしぶユーベルコードを発現させる。
 かげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)によっていっぱい増えたサージェが街なかに飛ぶ。
 ざっと数えただけで500人。
 彼女たちにとって探索とは簡単なことであった。どれだけ稀有な電話ボックスであろうと数によって探し出すのであれば、彼女ほどの適任は居なかったであろう。

 即座に見つけた電話ボックスの前にシャインとサージェ、そして、フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)とルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)の凸凹師弟がやってくる。
「サージェさん、これが『でんわぼっくす』なんですか? でもこれって?」
「でんわぼっくす……? なるほど、誰でも念話の魔法が使えるようにと作られた魔道具といったところか。なんにせよ、そこからでてくる敵を逃さなければいいのだな! ならば簡単なことよ!」
 ルクスはなんとなく、魔法無しで遠くの人と話ができる道具であることに関心していたが、フィアは他愛もないことだと一蹴している。

「では、電話をかけるのは勇者のルクスさんにおまかせします。これが番号ですよ」
 はい、とメモを手渡すシャイン。
 さらっと役割分担している。司令塔といったところであろう。彼女が入ったことによってこのパーティの稼働率は以前よりもさらにましているようであった。
「え、わたしですか? わかりました! このボタンを順番に押すんですね」
 ぽち、ぽち、ぽち、ぽちっとな。
 ルクスがメモに記されたメリーさんの電話番号を押していく。
 これが呪いの電話番号であることを彼女たちは知っていたが、電話ボックスに馴染みがない以上、日常に潜む怪異の恐ろしさというのを実感しづらかったのかもしれない。

「メリーさーん。でてこないとふぃあふぃあしちゃいますよー?」
 なんだふぃあふぃあって。あ、ぶっぱのことか。
 コール音が受話器から聞こえてきた瞬間、がちゃりと音がして単音が響き渡る。
「あ そ ぶ」
 ひぇっ、と思わず受話器を取り落しそうになったルクスであったが、怖ぁって想いながらもしっかりと段取り良く電話ボックスの扉を開いて外に飛び出す。
 そんな彼女を追って出てきたのはオブリビオン妖怪『無邪気』である。
 子供の影の集合体のような姿をした奇怪な存在。
 純粋なる悪性そのものな口元がにたりと笑うのが気味が悪くて仕方ない。

 だが、こっちにはふぃあふぃあするのがいるのだ。
「いくぞ、ルクス、サージェ! 我にタイミングをあわせよ!」
 そう開幕ぶっぱである。
 本当に大魔術師ですか? となる程の魔力が練り上げられ、オブリビオン妖怪『無邪気』が飛び出してきた瞬間フィアのユーベルコードが輝くのだ。
 だが、そこに飛ぶのがシャインのユーベルコードである。
 デュエリスト・ロウ。それはシャインの手袋であり、それがフィアの後頭部に直撃する。彼女の放った手袋が命中した対象はルールを課せられるのだ。

「フィアさん。なに電話ボックスごと破壊しようとしているんですか?」
 にこり。
 優しい笑顔であった。なんでぶっぱするの? 理由を300文字以内に答えなさい。それくらいの迫力があった。優しい口調なのが余計に怖い。
 これまでであれば、サージェとルクスではフィアのぶっぱを止められなかったが、悪霊として蘇ったシャインは違う。
 実力で止めるのだ。
 え、あのーそのぅ、とフィアがしどろもどろになって小さくなっている間にも『無邪気』はサージェの影分身の術によって増えた数で対抗し、『無邪気』を電話ボックスの外に引っ張り続けている。

「反省は後にしてもらえませんかー! それより早くしてもらわないと持たないんですけどー!?」
 サージェの言葉にルクスが走る。
「師匠、また話聞いてなかったんですね……でも、わたしより早く電光のツッコミが。シャインさん昔よりキレキレですね!」
「くっ、うるさいやつがパーティに復帰したな」
「フィアさんは後でお話がありますから」
 ひっ。フィアは涙目になるわけではないけれど、この後に控えるお説教を思って心で泣いた。

 迸るフィアの大魔術、極寒地獄(コキュートス)によって生み出された氷の壁が『無邪気』の動きを止め、電話ボックスに戻る事をさせない。
 さらにそこへルクスが走り込むのだ。
「ルクスさん、トドメを!」
「はい! さあ、もう逃げられませんよ! 重さは威力です!」
 振るいあげたグランドピアノ。
 それはLa Campanella(ラ・カンパネラ)。ルクスのユーベルコードであり、凄まじい重量に寄る一撃は『無邪気』に叩き込まれ、周囲の地形すらも破壊するのだ。

 ……ん?

 轟音響き、電話ボックスごと『無邪気』がグランドピアノの一撃のもとに粉砕される。
 しかし、そう、周辺の地形すらも破壊する威力である。電話ボックスが破壊されたらどうなるのか。
 そう、オブリビオン妖怪の非実体化である。
「オブリビオン妖怪『無邪気』、撃破で……痛ぁっ!?」
 ごすん、と鈍い音がしてルクスは頭を抱える。
 其処に在ったのは優しい笑顔のままのシャインであった。え、なんで? とルクスが訝しむ。
 もしかして、オブリビオン妖怪に洗脳された? とさえ思ったかも知れない。

「なんで電話ボックスまで破壊するんです?」
 にこ。
 シャインのお説教が凸凹師弟諸共飛び、サージェは自分だけは怒られないと思っていたら、なんでルクスさんを止めないんですかとやぶ蛇どころか飛び火してしまい、三人仲良くUDCアースにおいてお説教を喰らうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
逆に考えるんだ
中で戦闘できるくらい大きくて頑丈な
電話ボックスを創ればいいんだと

UCで大きくて防弾仕様の
巨大な電話ボックスを創るよ
中に公衆電話があって
電話ボックスの表示と登録があれば
それは電話ボックスだよ

配線はちゃんとする必要があるから
そこはUDC組織に依頼しよう

エージェントの人に離れて貰ったら
指定の番号をかけ敵を呼び出そう

ゴーグルを通して直接見ないようにしたり
呪詛耐性で耐えたりして視線の攻撃は凌ごう

あとはガトリングガンで攻撃するよ
もちろん電話自体も頑丈にしてあるし
神気で覆って固定するから簡単には壊れないよ

逃げようとしたらワイヤーガンで捕縛したり
使い魔のマヒで動きを停めたりして
逃げる邪魔をするよ



 電話ボックスとは一人用の施設である。無理をすればまあ、二人か三人は入れるくらいのスペースがあるであろうが、基本的にはすし詰め状態である。
 そんな狭いスペースの中で戦えるかと問われれば、大抵の者は無理であると答えるだろう。
 それは正しい。
 だからこそ、猟兵達は今回の事件に限り様々な手法を持ってオブリビオン妖怪『無邪気』を打倒するために奔走していたのだ。
 だが、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はそんな猟兵たちの中にあっても、更に一風変わった手法を取った者であった。

「逆に考えるんだ」
 彼女は非常に大胆な手段に出ていた。
 そう、狭くて電話ボックスの中で戦えぬというのならば、中で戦闘ができるくらい大きくて頑丈な電話ボックスを作ればいいのだと。
 え、どういうこと!? と誰もが思ったであろう。
 不可能であると思う者だっていただろう。
 けれど、不可能を可能にしてみせるのがユーベルコードである。
「複製創造支援端末(ブループリント・ライブラリ)……助けてくれる人がいるって本当にありがたいね」
 晶は微笑んで、目の前のUDC組織で設計され、建造された巨大な防弾仕様の電話ボックスを見上げた。

 た、確かに。
 逆転の発想である。電話ボックスが小さくて狭いものだと誰が決めた。
 いや、決めたっていうか大きな電話ボックス作る理由がないっていうか。だが、現実にUDC職員のみなさんが夜なべをして作ってくれた防弾仕様の巨大な電話ボックスがそこにはあったのだ。
「中に公衆電話があって、電話ボックスの表示と登録があれば、それは電話ボックスだよ」
 強引すぎるが理屈は通っている。
 一晩で頑張ってくれたUDC職員の皆さんに頭が上がらない。

「さあ、早速呼び出してみようか。メリーさんの電話番号。そして、オブリビオン妖怪『無邪気』をね」
 晶はゴーグルをかぶり、電話番号をプッシュしていく。
 コール音が数度も鳴る暇もなくガチャリと音がする。瞬間、受話器から聞こえるのは、単音であった。
「ど こ か な」
 どろりと現れる影の集合体。
 子供の姿をしているが、影そのものの体に浮かぶ口元にあるのは不気味な笑顔であった。

 純粋な悪性。
 未だ善性と悪性の区別の付かぬ『無邪気』は、その異常なる風貌でもって相対するものに恐怖を与える。
 けれど、見なければいいのだと晶はゴーグル越しにガトリングガンを振るう。
 これだけ防弾仕様にした電話ボックス内である。多少弾丸が跳ねても問題など無いのだ。
 凄まじい勢いで放たれる弾丸が『無邪気』の体を穿つ。
 これまで無数の猟兵達に攻撃され、消耗していたであろう『無邪気』の勢いは弱々しいものであり、弾丸を受けて即座に受話器の向こうへと逃げようとするが、晶のは鳴ったワイヤーガンがそれをさせない。
「逃げるのはまだ許さないよ!」
 使い魔たちが飛び、その動きを止め、ガトリングガンの斉射が次々と影の体を吹き飛ばしていく。

 嘗てありし、無数の幼子たちの悪性が集合した存在であればこそ、ここで倒しきれなくても消耗させなければならない。
 そのために晶はこれだけの施設を作ってもらったのだ。
「い た い い た い ば ん ば ん い た い」
 単音が刻まれ、悲鳴とも言えぬ奇怪な音が電話ボックスに鳴り響く。
 ガトリングガンの斉射が終わった時、『無邪気』の姿はもうすでに、そこにはなかった。
 あったのは、晶と巨大な謎の電話ボックス。
 後日談ではあるが、晶とUDC職員が作った巨大な電話ボックス。それは、いっときの間、UDCアースで設置意図がわからなすぎる珍しい風景として、有名になるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風

さてさてー、定番といえば定番なのでしょうかー?
無邪気は時に残酷になれますのでねー。ここで止めませんとー。
UDCアースに住んでると、文明の利器、それの便利さを痛感しますのでー。

電話ボックスから電話をかけましてー。出てきましたら、即座に見切って電話ボックスの外へ出て距離をとりましてー。

逃げないように『無邪気』を結界術で囲みまして。
早業で【四天境地・風】を。対象は『無邪気』にしてますからー、電話ボックスには傷つかないんですよねー。

ふふふー、ええ、私たちは悪霊なれば。守るために戦うのですよー。



 文明の利器とは、言うまでもなく人びとの生活を豊かにするものである。
 電話がなき頃は、遠方に物事を伝えるためには人の足が必要であった。時には伝書鳩や早馬など、様々な手段があったが、それらはどれも不確かな手段であった。
 届かないこともあったし、情報が正しく伝わらないこともあっただろう。
 何より時間がかかりすぎるという点においては、どうあがいても電話には敵わない。

 ときにそれは庶民や誰にでも扱えるものではなかったが、文明の水準が上がるにつれて、それらは人びとの手に渡る。
 需要が増えれば当然、価値は下がっていくものであるが、電話自体がなくなることはない。
 今もUDCアースではスマートフォンと呼ばれる電話機にさらなる機能を持たせた端末が普及しているのだ。

 だからこそ、かつては街のどこそこにでもあった電話ボックスは廃れ、姿を消そうとしていた。
「皮肉ですねー忘れ去られるが故にカクリヨファンタズムへと至る。そして、それがオブリビオン妖怪の唯一の弱点となる」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は小さくうなずいた。
 電気を操る妖怪によるネットワークの破壊。
 それは言うまでもなく世界を滅ぼしかねない力であったが、弱点が在るというのならば、攻略できないわけがない。

 四柱の一柱である『疾き者』はのほほんとした雰囲気のまま電話ボックスの前に立つ。
「さてさてー、定番と言えば定番なのでしょうかー? 無邪気は時に残酷になれますのでねー。ここで止めませんとー」
 恐怖など微塵も感じさせずに『疾き者』は電話ボックス内で受話器を手に取り、メリーさんの番号を押す。
 怪談じみた事件の内容であるが、そも自分自身が悪霊なのである。何を恐れる必要があるだろうか。

 幾度かのコール音の後、受話器から溢れる影を見ても、何も動じること無く即座に電話ボックスの外へと飛び出す。
「あ あ あ れ が い い」
 そのオブリビオン妖怪『無邪気』の瞳にあったのは執着であった。
 もっと遊びたい。
 もっと弄びたい。
 そこにあったのは純粋な悪性であった。どんな幼子にも宿る悪性。それを否定することはない。
 それらはいつだって理性と倫理でもって抑制され、善性を育む土壌と鳴るのだから。

「これは『鬼』である私が、至った場所」
 結界術に寄って『無邪気』を取り囲み、逃げられぬようにした『疾き者』のユーベルコードが輝く。
 四天境地・風(シテンキョウチ・カゼ)、無数の鬼蓮の花弁が舞い、『無邪気』の影の体を切り刻む。
「は な は な は な び ら き れ い」
 手を伸ばす度に刻まれていく『無邪気』の体。
 その身体はすでに数多の猟兵達の攻撃に晒され、擦り切れていたが、それでもなお一片が残るだけで即座に増殖していく。

 同じ悪霊とも言える『無邪気』の姿をみやりながら、けれど、決定的に己達と違うことを自覚する。
「ふふふー、ええ、私達は悪霊なれば。守るために戦うのですよー」
 二つの世界を守る。
 それが同じ覚悟を持った妖怪たちとの間にかわされた唯一にして絶対なる目的。
 そのために『疾き者』は戦場を駆け抜けていく。
 その名の通り、疾く事件を解決し、『大祓骸魂』を打倒する。彼等は鬼蓮の花弁と共に、疾風のように『無邪気』の影の身体と交錯し、その体にさらなる消耗を強いるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
この戦争で初めて電話ボックスなるものを利用しましたが…
既に慣れた感がありますね
(複数回利用)
(当然、中に入れないのでアーム状に変形させたワイヤーアンカーを伸ばし電話を操作)

さて、引き摺り出されるのも慣れた頃でしょう

出現と同時、物資収納スペースの煙幕手榴弾を地面に炸裂させ●目潰し
立ち込める煙からUCを射出し身体を掴む●騙し討ち
ワイヤーを巻き取り外へ
隠し腕を掴まれぬよう放り投げ、ボックスをかばうよう位置取り


その骸魂、祓わせて頂きます

言動だけでなく、思考や行動も衝動的…まるで幼子ですね
ならば…

隠し腕を再度射出
釣り餌の如く精密に操作し注意惹き付け

遊びはお終いです
カクリヨに戻りましょう

剣を一閃



「この戦争で初めて電話ボックスなるものを利用しましたが……既に慣れた感がありますね」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、ウォーマシンたる巨躯故に電話ボックスの内部に入ることができず、アーム状に形状を変化させたワイヤーアンカーを伸ばして、電話ボックス内の電話機を操作していた。
 彼はすでに複数の電話ボックスにまつわるオブリビオン妖怪が齎す事件を解決している身である。

 彼自身が機械騎士であることも考えれば、むしろ得意分野であると言ってもいいだろう。
 すでに慣れた手付きでワイヤーアンカーの先端を器用に使って、メリーさんの電話番号を入力している。
 もはやメモなどいらないし、そもそもメモを取る必要もないのだが、素早くボタンをプッシュし、受話器から聞こえてくるコール音とアクセスが成功したことを知らせる、ガチャリという簡素な音を聞いた瞬間、トリテレイアは収納スペースから煙幕手榴弾を取り出し、地面に炸裂させる。

 もうもうと上がる煙に視界を塞がれているが、トリテレイアにとっては無意味である。
 彼に搭載されたマルチセンサーがオブリビオン妖怪『無邪気』の動態反応を見切って、両腰部稼働装甲格納型 ワイヤー制御隠し腕 (ワイヤード・サブ・アーム)を放つのだ。
「さて、引きずり出されるのも慣れた頃でしょう。騎士の戦法ではありませんが……不意を討たせて頂きます」
 それは一瞬であった。
「う で ? な に こ れ?」
 単音の奇怪な音が響き渡る。それがオブリビオン妖怪『無邪気』の発する声であることをトリテレイアは知っている。

 幼子の悪性の集合体。
 人であれば、誰であれ通ってきた道であり、善性を育むための土壌となるものである。理性と倫理によって耕された悪性という土壌にこそ、善性という尊いものが生まれるのだ。
「その骸魂、祓わせて頂きます」
「あ そ ぼ」
 今、『無邪気』の瞳無き瞳に映るのは、機械騎士であるトリテレイアの姿だけであったことだろう。

 性別も定かではない。
 あるのはただ、無邪気さだけである。遊び、弄び、壊し、崩す。そのくり返しの中で得ていくものがあるのだとしても、オブリビオン妖怪『無邪気』に成長はない。
 だからこそ、その純粋な悪性だけが残るのだ。
「言動だけでなく、思考や行動も衝動的……まるで幼子ですね」
 隠し腕を握りつぶす『無邪気』の握力は凄まじいものであり、煙幕の中から新たな玩具であるトリテレイアを圧砕せんと迫る巨躯は不気味な迫力があったことだろう。

 けれど、トリテレイアは恐れない。
 恐れるに足りないのだ。
「ならば……」
 再び放たれた隠し腕が釣り餌のように『無邪気』の注意をそらす。まるで光に群がる蛾のように『無邪気』は素早く飛ぶ隠し腕に注意を取られる。
 これまでの幾多の戦いと経験を積んできたトリテレイアにとって、目の前の敵から注意を逸した者がどれだけ容易い相手であるかを知っているのだ。
「遊びはおしまいです」
 カクリヨにお戻りください、とトリテレイアが『無邪気』に迫る。

 この肉薄する距離にあってもなお『無邪気』の意識はトリテレイアのはなった隠し腕に向けられていた。
 それはトリテレイアにとって幸いであったことだろう。
 彼が振るう剣の一撃を見ることがなかったから。
「あなたの行く末は、きっと希望に溢れていたことでしょう。ただ忘れ去られた悪性……純粋であっても、それを忘れることがあってはならなかったのです」
 だからこそ、振り下ろした剣の一閃が、その根源を断ち切る。
 骸魂と一体化した影の妖怪を切り離すべく、放たれた一撃が『無邪気』を両断し、そして、後に託すのだ。

「……必ずや」
 そう、必ずカクリヨファンタズムとUDCアース二つの世界を救ってみせると、トリテレイアは己の剣に誓うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
電話ボックスか。もう時代遅れの代物よね。
足で探すのも面倒。黒鴉の式を打って、この町の電話ボックスを虱潰しに調べる。
あたしの方が電話ボックスよりもっと古いか。

見つけた中の近いものに赴き、硬貨を投入して件の番号をプッシュ。――繋がった。

「結界術」「仙術」「道術」「破魔」「浄化」「除霊」で、落魂陣展開。
魂魄を吹き飛ばす光線を放つ大判呪符を空間に展開して、無邪気を「弾幕」のように集中攻撃する。
この絶陣は、魂を持たない電話ボックスには影響しないわ。
どうかしら、こういうお遊びは。
こうやって子供は一歩ずつ大人になっていくのよ。

さあ、その忌まわしい感情を捨てていきなさい。こういう怪異を鎮めるのもあたしの仕事。



 オブリビオン妖怪『無邪気』は幼子の悪性の集合体であり、概念そのものであった。
 ある意味で純粋であったのかもしれない。
 けれど、純粋であるからこそ尊いとは言い難いであろう。
 何故ならば、その純粋さが時に悪辣なるものに変わることだってあるのだ。『無邪気』が操る電気の力は、言うまでもなくUDCアースの通信網を潰し、世界を滅ぼしかねない力である。
 その大いなる力を振るうには、時として純粋さよりも理性と倫理が必要とされるだろう。

 だからこそ止めなければならないのだ。
「電話ボックスか。もう時代遅れの代物よね」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、足で探すのも面倒だと式神の黒鴉によって街なかにある電話ボックスを虱潰しに調べ尽くしたのだ。
 その手段は電話ボックスという過去の文明の利器よりも、原始的な手段であったことをゆかりは自嘲するように笑った。

 けれど、実際に目の前にある電話ボックスはきっとゆかりよりも年季の入ったものであったことだろう。
 手にした硬貨を投入口に入れ、呪いの電話番号をプッシュする。
 あまり馴染みのない仕草であったけれど、実際に押せばオブリビオン妖怪『無邪気』が自動的に受話器から現れるのであれば、やれることは多い。
「さらにこっちには十分に準備する時間がある……なら、古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。心身支える三魂七魄の悉くを解きほぐし、天上天下へと帰らしめん。疾!」

 彼女の瞳がユーベルコードに輝くのと同時にコール音が響く。
 ガチャリと音がして、単音が響く。
「あ そ ぼ」
 不気味な音。
 けれど、ゆかりは手にした呪符を持って受話器より溢れるように出現した影の体を持つ『無邪気』に向ける。
 それは魂魄を吹き飛ばす呪詛を込められた無数の光線であった。
 それは弾幕と呼ぶにふさわしい攻撃であり、落魂陣(ラッコンジン)と呼ばれる彼女のユーベルコードであった。

 その光線は電話ボックスを破壊すること無く、魂魄だけの存在であるオブリビオン妖怪『無邪気』を打ち据える。
「どうかしら、こういうお遊びは。こうやって子供は一歩ずつ大人になっていくのよ」
「あ そ ぶ あ そ ぶ も っ と」
 単音が響く。 
 それは痛みにあえぐというよりも、ねだるような声色のように聞こえたかも知れない。
 ただ、遊びたいだけ。
 ただ、いたずらに時間を浪費したいだけ。
 それが『無邪気』というオブリビオン妖怪の本質であったのだろう。意味など見出すことはしない。
 己の欲求に従うだけの存在。

 それを哀れとはいわない。
 忌まわしいと思うだけである。例え、それが純粋なものより生まれた感情であったのだとしても、それが怪異として存在するのならば。
「さあ、その忌まわしい感情を捨てていきなさい。こういう怪異を鎮めるのもあたしの仕事」
 ゆかりは手にした呪符を振るう。
 光線の輝きは電話ボックスの中に満ちて、『無邪気』の影を晴らすように、そして同時に純粋ながらも悪性たる感情を振り払うのだ。

「子供は子供のままではいられない。それが世界の理であり、人間の生であるのかもしれないけれど」
 それが他者に害をなすことを良しとしない。 
 倫理と呼ぶのかも知れないし、理性とも呼ぶのかも知れない。嘗ての忘れ去られた感情の集合体であったけれど、それでも今を生きる者たちの足かせとなるのならば、ゆかりは躊躇うことなく祓うだろう。

 猟兵達が追い込み、全霊でもって打倒したオブリビオン妖怪『無邪気』は光線の輝きに散らされるように、その影の一片まで溶かして霧散され、行き場を喪ったように電話ボックスの中で終着点へと至るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月16日


挿絵イラスト