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大祓百鬼夜行⑱〜石狼の噂

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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●噂話が聞こえる。
「事件、事件ですよ!」

 集まった猟兵たちの前で、千束・桜花(浪漫櫻の咲く頃に・f22716)が両手を大きく振る。

「UDCアースでは皆さん、日頃からUDCと戦っていますね。けれど、その発見報告の全てが事実であったわけではありません」

 ときには勘違いや嘘の報告も含まれている。
 UDC怪物ではないと証明されたもの、虚言として扱われるもの。
 そういうのはUDC-Nullとして分類されてきた。
 手にした資料を目で追いながら、桜花は語った。

「けれど、それもあながち虚言だったというわけではなかったということがわかりました! 彼らは忘れ去られた存在、つまり妖怪だったのです!」

 大きな文字で妖怪と書かれた資料を広げて胸を張る。

「今回皆さんに対処してもらうUDC-Null、もとい妖怪は、狼男の石像の噂です」

 桜花は帽子を深くかぶり、目元を隠した。
 雰囲気作りだ。

「動物や木々も寝静まった真夜中。とある山の中に、狼男の石像が放置されているそうです。直前まで生きていたかのように精巧で、翼のある狼男の石像が。それも、同じ場所にいくつもです。一見、ただの不気味な石像なようですが、油断して背を向けた途端!」

 目をかっと開いて、少し間を置く。
 それから、周囲の反応をそっと確かめて、続けた。

「……後ろから襲われて、石像の仲間入り。足元には、被害者となった人間の石像がいくつも転がっているんだとか……」

 恐ろしい話ですね、なんて笑っているのは噂好きだからだろう。
 さて問題は、と猟兵たちの注意を集めて、桜花はひと差し指を立てる。

「どうやらこの噂を確かめようとした人が、本当に現れたUDC-Null……妖怪に襲われてしまうというのです!」

 噂話があれば、たとえそれが嘘だという噂であっても、確かめに行く者がいるのだ。

「皆さんが現場に着く頃、噂話を確かめようとやってきた中学生の女の子たちが、ちょうど襲われているところです」

 このまま放置すれば、当然狼男の石像に襲われて、彼女たちは命を落とす。
 猟兵たちの力が、必要だ。

「彼女たちに被害が及ばないように、どうか助けてあげてください。それでは皆さん、いざ参りましょう!」

 桜花は姿勢を正すと軍帽のつばに揃えた指先を当てて、猟兵たちを見送った。


るーで
●ご挨拶
 ごきげんよう、るーでです。
 カクリヨファンタズムの戦争かと思ったらUDCも巻き込んでてんやわんや……。
 いやはやびっくりですね!

●概要
 集団戦です。
 夜中の山中ですが、明かりや足場については気にしなくて構いません。
 プレイングボーナスは「襲われている人々が、妖怪に殺されないようにする」となっております。
 それではよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『石の守護者『キンバーライト』』

POW   :    空中強襲
【空中】から【地上への強襲】を放ち、【力強い拘束】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    石群像罠
合計でレベル㎥までの、実物を模した偽物を作る。造りは荒いが【石化ガスが噴き出す石像】を作った場合のみ極めて精巧になる。
WIZ   :    石化鋭爪
【石化効果のある鋭い爪】が命中した対象に対し、高威力高命中の【石化の呪い】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。

イラスト:なかみね

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シャルロット・クリスティア
戦争の余波がこんなところまで……。
想像以上に影響は大きいようですね。どうにか食い止めなければ……。

敵は石像、瞬間的な衝撃ならそれなりに通じると思いますが、広域破壊は救助対象まで巻き込む恐れがある。
であるならば、初速と貫通力に優れた迅雷弾で。
幸い山中、身を隠す場所には事欠かないし、こちらは目が利く。
ガスの範囲を避け、狙撃には適した環境です。
狙えるなら、他よりは脆いであろう、かつ攻撃の手を緩められるだろう眼球を優先して。
彼女たちに近づくもの、逃げ道を塞ぐものを優先して、片っ端から叩き落す!



●轟雷一条

「きゃあああぁっ!」

 ひと気のない山奥の中に、少女の悲鳴が木霊する。
 狼男の石像の噂を聞きつけ、真実を確かめに来た中学生の少女たち。
 そのひとりが、彼女だ。
 噂の通り後ろから襲いかかってきた狼男の石像。
 無力な少女は、森の中を逃げ惑うばかり。
 暗い森の中を走れるほどの身体能力がない彼女が追い詰められるまで、それほど時間は要さなかった。
 狼男の低く威圧的な唸り声と、どこかから聞こえる友人の声。
 それが少女の精神をギリギリまで追い詰めていた。

「ゆるっ、ゆるしてください……! お願いします、神様……」

 涙を流し、嗚咽を洩らし、引き攣った顔で石像、キンバーライトを見上げる。
 だが、石像が慈悲の心を持つはずもなく、振り上げられた腕は躊躇なく少女へと振り下ろされる────はずだった。
 乾いた破裂音と共に、狼男の目が爆ぜた。
 遅れて、強い衝撃と甲高い風切り音。
 残響が薄れていくと同時に、キンバーライトは力なく地に伏した。

「な、なに……? いま何が起きたの?」

 頭を抱えていた少女が、恐る恐るといった様子で倒れた石像を覗き込む。
 大きく抉れた頭部。
 専門家ではない少女にはわからなかったが、目の辺りを何かが貫通して、余波で周囲も砕いた、という状況だ。

「よくわかんないけど……助かっ、た……?」

 よろよろと立ち上がり、その場を離れる少女。
 その姿を、スコープ越しに覗く影があった。

(あの子は……これで大丈夫。しかし戦争の余波がこんなところまで……)

 少女と石像がいた場所から、どれほど離れているだろうか。
 バイポットを立てた機関銃の傍らに、金髪が揺れる。
 雷の魔力が迸る空薬莢を排除し、シャルロット・クリスティア(弾痕・f00330)は再びスコープを覗いた。
 ナイトビジョンスコープ越しに少女と石像を探し、石像の頭部──可能な角度であれば眼球──を狙って、弾丸を放つ。
 雷光が走り、弾丸が空を駆ければ、少し遅れて岩の砕ける音が返ってきた。
 二人目の少女が無事に離れたのを確認して、また次の獲物を探す。

(迅雷弾を使ったのは正解でしたか)

 敵は石像。
 防御力に優れているのは明らかだった。
 これを打ち破るほどの威力を求めて広域破壊を使っては、救助対象まで巻き込む恐れがある。
 故に、シャルロットは初速と貫通力に優れた迅雷弾をチョイスした。
 弾丸は文字通り石の肌を砕くと、その頭部を貫通して石像を倒す。
 効果はてきめんだった。
 そうして索敵、狙撃、索敵を繰り返して、シャルロットはキンバーライトを倒していく。

(そろそろ移動しないと集まってきてしまいますね)

 見える範囲の少女たちは助けたかという頃に、シャルロットは身体を起こして機関銃を持ち上げた。
 ここに留まる理由は、もう無い。
 木々の間を縫うように、シャルロットは移動を始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラモート・レーパー
「ガキ守りながら戦えとか……お姉さんは本来襲う側なんだけど」
 お姉さんの姿で挑む。
 自身の人を襲った経験から敵の動向を考えみて黒剣を変化させた狩猟武器で立ち回る。
 初手に殺気を放って敵の意識を自分に向かせつつ被害者らを気絶させる。素人が夜の山中を出歩くとか危ないことこの上ないし。
 黒剣を変化させた槍の石突で突いたりするけど、主力はUCになる。その植物の強さを使いカウンターを食らわせ敵の硬い肉体に根付かせ砕く。



●樹木葬

「もうだめ……こんなところ来なければよかった!」

 少女の、恐怖と僅かの怒気を孕んだ叫びが、森の中に吸い込まれていく。
 ちょっとした肝試しのつもりだった。
 本当に石像が動き出すなんて、誰も思っていなかった。
 誰かのせいにしなければ、耐えられなかった。
 けれど、眼前に迫ったキンバーライトには、そんなことは関係ない。
 低く唸って少女を嘲ると、ガスの漏れる口を開いた。
 だが次の瞬間、狼男は急に振り返った。
 狼男の背後の木々。
 その向こうから発せられる殺気に、反応せざるを得なかったからだ。
 狼男の唸り声は威嚇に変わり、赤い瞳で闇を見つめる。

「ガキ守りながら戦えとか……お姉さんは本来襲う側なんだけど」

 ゆらりと現れた影、ラモート・レーパー(生きた概念・f03606)が呟いた。
 妙齢の女性の姿ではあるが、そこから放たれる殺気は尋常なものではない。
 狼男にすら恐怖していた少女は、溢れ出る殺気に耐えられず気を失った。

「気絶した? そのまま寝ててねー、危ないから」

 背負っていた身の丈ほどもある黒剣に手を手をかけるラモート。
 黒剣は持ち主の意志を受けて、槍へと形を変える。
 すっかり気絶した少女に背を向けたキンバーライトは、ラモートから目をそらさない。
 今ここで何が最も大きな脅威であるか、わかっているからだ。

「さ、やろうか」

 槍を低く構えて、ラモートは口角を上げた。
 対してキンバーライトは、翼を広げて空へと移る。
 長物を持つラモートが相手となれば、地上での戦いは間合いが取りづらいだろう。

(まあ、正解かな)

 ラモートの上空をくるりと回る狼男を見上げて、ラモートは槍の前後を入れ替えて迎撃の姿勢を取った。
 石狼が上空からの強襲を選ぶのなら、勝負はそれほど長引かない。
 一旦更に上へと飛んだキンバーライトは、くるりと反転、すぐに降下を始めた。
 重力と翼により短時間で加速したキンバーライトが、ラモートを目掛けて真っ直ぐに突き進む。

「その速さ、利用させてもらうよ!」

 上空から爪を振り下ろさんとするキンバーライトが間合いに入ったその瞬間、ラモートは槍の石突を真っ直ぐに突き出した。
 がつ、と鈍く激しい音がふたりの間で発生して、衝撃を伴って森を駆ける。
 振り下ろされたキンバーライトの爪は、ラモートのすぐ傍に。
 身体を捻って爪を躱したラモートの槍は、キンバーライトの胸に。
 ラモートの槍は直撃はしたが、キンバーライトの石の肌を傷つけども貫くには至らなかった。

「やっぱ硬いよね、石だもん」

 黒い槍の長さを変えて引き抜き、距離を取るラモート。
 キンバーライトは再び上空へと逃れようと、翼を広げた。

「ああでも、もう終わったよ。おつかれさま」

 ラモートはそう言うと、石狼へ背を向けて気を失った少女の方へと歩きだす。
 無視するのか、隙だらけだと言わんばかりに飛びかかろうとしたキンバーライトは、すぐにその動きを止めた。
 身体が、ひび割れているのだ。
 痛覚があるのか、苦悶の声をあげる。
 槍の石突で砕かれたことが原因ではない。
 もっと、内側からの何かによって。
 答えは、すぐにわかった。
 石狼の身体を突き破って顔を出したのは、植物の根だ。
 ラモートの槍によって傷つけられた胸元。
 そこに、ヤドリギの種が植えられていたのだ。
 キンバーライトの体内で急速に成長したそれは、石の身体に根付き、生気を吸い、そして貫いた。
 砕けていく石狼に目もくれず、ラモートは少女を抱きかかえる。

「とりあえず、安全なとこまではお姉さんが連れて行ってあげるからね」

 気を失ったままの少女に語りかけて、ラモートは妖しく微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メルト・プティング

大親友のベアータ(05212)さんと!

うーん、やることがいっぱい!
こんな時は人海戦術!
UCを発動して総勢95人のボクで作戦行動なのです!

30人くらいの分身は襲われてる人たちの避難誘導と護衛に向かわせましょう
安全な場所に導きつつ、攻撃の余波が飛んでくれば【オーラ防御】【かばう】を活かして防御します!

残りの分身とボク自身は狼男さんに敢えて背を向けて、開けた所におびき寄せダッシュ!
いや怖いのでおびき寄せというかガチ逃げなのですが!ひぇー!!

ベアータさんの攻撃に適した広い場所に相手を集めれば、くるりと振り返り『プラズマバイザー』からの『マヒ攻撃』で足止め一斉電撃!
あとはベアータさんにおまかせ、です!


ベアータ・ベルトット

大親友のメルト(f00394)と

襲ってくる敵に先手必勝のレーザー射撃で牽制

好奇心は猫を殺すって事、ちっとは勉強になったみたいね
彼女達の避難は任せたわよ、メルト

たくさん増えたメルト達に思わず目移りしちゃうけど…グッと堪えて蝙翼機光を展開
空中高く舞い上がり、逃げる一団を追跡よ

凄いモテっぷりねー。やー、流石JK、羨ましいわー(棒)

メルトが広場に誘いだしたら 狩りの始まりね。にしても…一斉電撃、圧巻だわ
感電した敵軍に向けて、空中から大量の吸血光線を乱れ撃ち
あいにく、石の体じゃ腹は膨れないけどね
光線を放ちながら、翻弄するように飛び回って攻撃を回避。接近した敵には機餓獣爪で早業の斬撃をお見舞いしてやるわ



●ふたりきりのときにね

 友人ともはぐれ、森の中を逃げ回るうちに服も土だらけ。
 少女の心は、限界まで追い詰められていた。
 ちょっとしたイタズラ心だった。
 こんなことになるなんて思っていなかった。
 どれだけ現実逃避しても夢から覚めることはない。
 唯一の現実は、少女を見下ろしている石狼だけだ。

(もうだめ……!)

 観念して、ぎゅっと目を閉じる。
 ごう、という風切り音。
 同時に、身体がふわりと浮かび上がる感覚。
 恐る恐る目を開けると、少女の目の前には眼帯を着けた勇ましい女性の貌があった。

「こっちでもひとり見つけたわ! 今そっちに行く!」

 眼帯の女、ベアータ・ベルトット(餓獣機関BB10・f05212)が少女を抱えて駆ける。
 木々を蹴って、走るよりも速く。
 背後から追いかけてくるキンバーライトにはレーザーで牽制を入れて、ふたりはあっという間に森を抜けた。
 後ろから追ってくる影はない。

「好奇心は猫を殺すって事、ちっとは勉強になったみたいね」

 少女を下ろすと、その不安を拭うように、ベアータはぽんと少女の頭に手を置いた。

「ああーっ! ベアータさん、何してるんですか! ボクも、ボクもそれして欲しいです!」

 そこに居た制服姿の女、メルト・プティング(夢見る電脳タール・f00394)が騒ぎ出す。
 両手をぶんぶんと振って遺憾の意を示す姿は、少し子供っぽい。

「あーもう、いま仕事中でしょ! 彼女達の避難は任せたわよ、メルト」

 ベアータは赤らんだ顔を誤魔化すように、大きな声でメルトに指示を出した。
 ここには、既に助けられた少女たちが何人かいるのだ。
 口を尖らせて肩を落としたメルト。
 しかしすぐに気を取り直して、任せてください、と手をあげる。

「みなさーん、こっちですよー! 安全なルートはこっちでーす!」

 タールの身体をいくつにも分けて、メルトは分裂し始めた。
 ひとり、ふたり、いっぱい。
 百にも迫る数のメルトが、その一部を分けて少女たちの避難誘導と護衛にあたる。
 危機的状況であっても元気よく声をあげる姿は、少女たちに安心感を与えた。

(メルトがたくさん……じゃなくて!)

 たくさんのメルトに囲まれて、思わず声が洩れそうになったベアータ。
 頭を振って、背中の翼を広げて空高く舞い上がる。
 まだキンバーライトの脅威は去ったわけではない。
 上空から、石狼たちの赤い瞳を探す。

「メルト、北にちょっと固まった数がいるわ!」

「はいはーい! 了解です!」

 ベアータの指示を受けたメルトは、分身の1/3程度を残して、あとを探索に回す。
 山の中を走っていった先、そこにはベアータの言う通りいくつもの石像が立っていた。
 近くに人が来たせいか、石像たちは静かに、生気を殺してそこにいる。

「はー、なるほど。結構たくさんいますね。出来としてはいまいちでしょうか」

 いくつかの石像たちに近づいたメルトが、その顔を覗き込む。
 当然、石像たちは動かずに反応しない。

(聞いた話では、後ろを向くと襲ってくるとのことですけど……)

 その場でくるりと背を向けるメルトたち。
 途端に、後ろでいくつもの気配が動き出した。
 ごり、ごり。
 石が擦れるような音と共に、近寄ってくる。

「いやー……振り向きたくないんですけど、振り向かないわけには、というやつですね……」

 ちらりと後ろに目を向けると、いくつものキンバーライトがメルトのすぐ後ろまで迫っていた。
 口からはガスが漏れ、爪を振り上げ、翼を広げた人狼が、だ。

「ひぇー!! 普通に怖いんですが!」

 メルトたちは一斉に逃げ出した。

「ふーん、凄いモテっぷりねー。やー、流石JK、羨ましいわー」

 その姿を、上空から眺めるベアータ。
 不機嫌そうに、平坦に呟く。
 胸の話ではない。
 その間にも石像から逃げ続けたメルトたちは、ある程度開けた場所までやってきた。

「このあたりですかねー」

 それぞれ連れてきたキンバーライトがこの開けた場所に入ったことを確認すると、メルトは足を止めて石像たちと向き合う。

「さあ、いきますよー!」

 メルトたちがバイザーに手を添えると、そこから電撃が発せられる。
 ぱち、っという軽い音と共に、辺りに走る雷光。
 それが身体を貫くと、キンバーライトたちは痙攣して動きを止めた。

「メルトの一斉電撃、圧巻だわ。……さあ、狩りの始まりね」

 上空で機械の翼を広げたベアータ。
 その翼から、無数の光線が放たれた。
 いくつもの光が縦横無尽に駆け巡り、動けないキンバーライトの身体を貫いていく。
 焼ける音と砕ける音が同時に響いて、石像たちは倒れた。

「やっぱり石の体じゃ腹は膨れないわね」

 石像たちが動かなくなったところで、ベアータは地上に降りてくる。
 辺りには、穴だらけの石像。

「さっすがベアータさん! 良い火力ですね!」

 砕けた石を飛び越えながら、メルトがベアータに駆け寄った。

「ま、こんなもんよ……って」

 ベアータが目を向けると同時に、メルトの後ろに立ち上がる影。
 まだ光の失われていない赤い瞳を輝かせて、石狼は腕を振り上げていた。

「メルト、危ない!」

 ベアータが伸ばした腕の先。
 機械の爪が飛び出て、キンバーライトの頭部を砕く。
 顔のすぐ横をベアータの腕が通り過ぎて驚いたメルトは恐る恐る後ろを見た。
 倒れる石像。
 今度こそ、完全に動かない。

「……さっきの子みたいに抱き上げて助けてくれてもよかったんですよ?」

 少し甘えたようにお願いするメルトに対して、想像して少しだけ耳を赤くしたベアータは、指でメルトの額を弾いて応えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨宮・いつき
好奇心は猫も殺す、という言葉がありますが…
…いえ、誰も死なせはしません
彼らに、人を殺させはしませんとも

白虎に騎乗して現場へ急行
一人…いえ、二人くらいまでならなんとかなるかな…?
襲われてる学生さんを魂縛符で吸い寄せ、白虎の背中、僕の後ろへ乗せましょう
お護りしますから、しっかりつかまってて下さいね!

石化のガスが厄介ですね…まずはあれをなんとかしましょう
白虎の能力で石像を流体金属で包み込んでガスを封じ、
既に吐かれているガスは風の【属性攻撃】で吹き飛ばしてしまいましょう
新たな石像を作られる前に、雷の【マヒ攻撃】を【範囲攻撃】で放って動きを鈍らせ、
炎の【属性攻撃】で確実に骸魂を祓っていきますよ!



●結構大きかったらしい

 少女もう、疲労の限界だった。
 凹凸の激しい山道を走り続け、木々に足を取られて、何度も転んだ。
 石像の狼男は、まったく疲労の色を見せずに追いかけてくる。
 少女が一歩も歩けなくなるまで、そう長くはかからなかった。
 

「もう、だめ……絶対死ぬ……っ!」

 死を覚悟して、少女は目を閉じる。
 ──だが、それが少女を襲うことはなかった。
 突如、強い力で引き寄せられた少女。

「きゃあっ!」 

 それを、虎に跨った少年が抱き止める。

「おっと、大丈夫ですか?」

 符を掲げていた、雨宮・いつき(憶の守り人・f04568)は少女へと声をかけた。
 この魂縛符で、少女の魂を体ごと引き寄せることで少女を救ったのだ。

「お、男の子……?」

 目を開けた少女が、いつきを見てぽつりと声を漏らす。
 何が起きたのか、まだ良くわかっていないようだ。
 少女を虎の背中に座らせて、いつきは再び前を向く。

「しっかり掴まっていてくださいね!」

 後ろの少女に声をかけると、少女はいつきの胴に手を回して抱きついた。
 柔らかなものが、いつきの背中に押し付けられる。

(やわっ、やわらか……っ! いや、戦闘中、今は戦闘中!)

 いつきが頭を振って雑念を飛ばしている間も、ふたりを乗せた白虎がキンバーライトと一定の距離を開けて移動を続ける。
 狼男の石像は、口から黒いモヤのようなガスを洩らしながらふたりを追ってくる。

(彼らも、骸魂に飲まれているだけで元は友好的な妖怪……)

 基本的には、害のない者たちだ。
 ならば、彼らに罪を背負わせるわけには──。

「あなた達に、人を殺させはしません!」

 覚悟を口にして、いつきは白虎に指示を出す。
 白虎の操る液体金属が、石像の顔めがけて飛んだ。
 それなりに重量はあるが、それ自体に破壊力をもたせてあるわけではない。
 キンバーライトの顔に付着した液体金属は、口から吐かれるガスを封じるためだ。
 呼吸は必要ないだろうが、ガスを吐けないもどかしさからだろうか、キンバーライトは口元を手で搔きながらもがく。

「往生して貰いましょう!」

 指に挟んでおいた礼符を、石狼へと飛ばすいつき。
 それがキンバーライトの身体に張り付くと同時に、青い炎をあげて燃え始める。
 次第に大きくなり、石の肌が赤熱し始めるまで、それほど長くはかからない。
 炎に包まれたキンバーライトの骸魂は、やがてその熱に耐えきれずに砕けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
風見くん(f14457)と

一般人の保護って難しいんだよねえ
それで風見くん、作戦はあるの?

【泥人の無意味な憂鬱】
――なんちゃって
風見くんに付いてったのは、自分のことを夏報さんだと思い込んでる自己複製
本物の臥待夏報は離れた場所で、『今日』の風見くんが女の子たちを連れてくるのを待機している
状況を掴めていない泥人と、その場に残された『昨日』の風見くん
囮が二人もいればガスも爪もそっちに向くはず

夏報さんは案外ひどいやつだから、きみを放り出して逃げたりするかもよ
そのほうが時間稼ぎになって都合はいいんだけど
……やっぱり自信がないな
動けなかったら、ごめん

最後は呪詛の炎で攻撃を援護
熱した石は、割れやすくなるでしょ


風見・ケイ
夏報さん(f15753)と

このままだと巻き込みかねません
……一応ありますが、話す暇はなさそうです

中学生に駆け寄り右手で触れたら
さよなら昨日。また明日
『夏報さん』のもとへ

――たった今目覚めたような感覚
隣には夏報さんがいて、目の前には生きているような石像と……生きている石像
私自身、何度もやってきたことだからすぐに理解できた
私は『今日』じゃない
何かが噴出した瞬間に夏報さんを突き飛ばす
……君が『どっち』なのかはわからないけど、これでい

――さよなら、昨日
君がひどい人だなんて思ったことはないけど、逃げたっていいよ
それでも昨日の私は……今日の私も、同じだ

後は強い衝撃を加えてやればいい
燃え盛る石像を拳銃で撃つ



●落差がすごい

「一般人の保護って難しいんだよねえ。それで風見くん、作戦はあるの?」

 山中を進みながら、臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)が声をかける。
 今回、猟兵たちに課された使命はふたつ。
 骸魂に飲まれた妖怪を倒すこと。
 襲われている一般人を助けること。
 事前に避難でもできればいいのだが、今回はそうもいかない。
 隣を進む風見・ケイ(星屑の夢・f14457)は、口元に手を当てて少し考え、それから口を開いた。

「……一応ありますが、話す暇はなさそうです」

 理由は明白である。
 すでに目の前で、少女がキンバーライトに襲われているからだ。
 へたり込んだ少女の眼前で、口を開けている狼男の石像。
 それを見た瞬間、ふたりは走り出した。
 まっすぐに、少女目掛けて。
 ふたりに気付いたキンバーライトは、その赤い瞳をふたりへと向ける。
 だが石像の動きに関わらず、ケイは少女の元へと走る。
 そしてケイの右手が、少女の肩に触れた。

「さよなら昨日。また明日」

 ケイの短い言葉と共に、少女の姿は消えた。
 残されたのは、状況がわからず困惑する夏報と、一瞬途絶えていた意識が戻った直後のように辺りを伺うケイ。
 そして今にもガスを吐き出そうとしている狼男の石像。

(ああ、私は────)

 ケイには、状況がすぐに分かった。
 何度も繰り返してきたことだ。
 咄嗟に、夏報を突き飛ばした。

「……君が『どっち』なのかわからないけど、これでい」

 穏やかな表情のまま、ガスを浴びたケイの身体は物言わぬ石と化す。

「──ッ」

 夏報の、少し引き攣った息を飲む音が、山の暗闇に溶けていった。



 そしてこれは、その少し前のことである。
 少し離れた山中には、夏報の姿があった。
 たったひとり、木々の影に隠れている。

(泥人め……)

 ケイと共に行動していた夏報は、ユーベルコードで作り出した自己複製──ただし、夏報と同じ記憶を持ち、自分のことを本物と思い込んでいる──にすぎない。
 当然ながらあまりに自然に夏報として振る舞う偽物。
 共有した五感から伝わる感覚に、本物の夏報は少しだけ頬を膨らませた。
 偽物とケイがキンバーライトと遭遇したのは、それからすぐのことだった。
 走るふたり。
 少女の肩に触れるケイ。

「さよなら昨日。また明日」

 そして、本物の夏報の隣に現れた、ケイと少女。
 偽物の夏報とケイの前から消えた少女は、こちらに来ていたのだ。
 入れ替わるようにその場に残されたのは、過去のケイだ。
 いまこの場には、夏報がふたり、ケイがふたり、いることになる。

「よしっ、ちゃんと来れたね。じゃあちょっと離れておこうか」

 夏報は少女とケイの無事を確認すると、少女の手を引いて歩き出す。
 ふたりの偽物で稼いだ時間は、それほど長くないだろう。
 それは、偽物と五感を共有している夏報には、すぐに分かることだった。
 大きな木の影に隠れているように少女に伝えると、ふたりは再び山の中へ。

「ねえ風見くん。あっちはどうなってるかな」

 道すがら、夏報がぽつりと呟く。

「夏報さんはあっちが見えてるんでしょう? 意地悪なことを聞きますね」
 
 夏報がどんな表情をしているのか、山中は暗くてケイからはよく見えない。

「夏報さんは案外ひどいやつだから、きみを放り出して逃げたりするかもよ。そのほうが時間稼ぎになって都合はいいんだけど」

 つらつらと戯言のように述べる夏報。
 平静を装っているが、僅かな不安と動揺が入り混じった声だ。
 ケイは一息置いてから、口を開いた。

「君がひどい人だなんて思ったことはないけど、逃げたっていいよ」

 木々の隙間から降る月明かりが、ケイの顔を照らす。
 夏報を突き飛ばして石化ガスを受けたケイと、同じ微笑みだった。
 胸の中で熱した鉛玉が溶け出したような感覚。

「……やっぱり自信がないな。動けなかったら、ごめん」

 顔を背けて呟いて、夏報は再び先を急ぐ。

(それでも昨日の私は……今日の私も、同じだ)

 その背中を追いながら、ケイは拳銃のセーフティを外した。
 ふたりが石像の居た場所にたどり着いたときには、石像は偽物の夏報にのしかかり、爪を振り下ろそうとしているところだった。

「あのさあ! それと五感共有してるからさあ! さっきから苦しかったんだよねえ!」

「さっきのあれってそういう感じだったんですか?」

 胸のもやもやをぶつけるが如く、夏報が吠える。
 囮による時間稼ぎはもう要らない。
 困惑するケイを置き去りにする夏報がぱちんと指を鳴らすと、偽物の夏報を中心に、血と臓物の陣が描かれる。
 あっという間に、石像を巻き込んで呪詛の炎が立ち昇った。

「偽物とはいえ燃えてる夏報さんを見たくはないんですが……」

 そう言って頭を掻くケイを、夏報が恨めしそうに見る。
 お互い様だと言わんばかりの表情だ。

「はい撃って!」

「あっ、はい」 

 ケイの手元から乾いた音が数発。
 熱せられて脆くなった石の肌は、鉛の弾丸によって容易に貫かれるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霑国・永一
ははぁ、UDCアースはまだまだ不思議な狂気があるもんだなぁ。飽きなくて実にいいねぇ。
カクリヨのとばっちりで消えてしまうにはますます惜しい。仕事こなしがてら、愉しむとするかぁ。

さて、あれが件の石像かぁ。とりあえず狂気の分身沢山出して各個撃破と行くかな。分身に気を取られさせてる隙に俺は手の空いてる分身共々一般人を安全な場所へ連れて行くよ。一応分身可動範囲内でだけど。
さて、分身はいつも通り自爆含め減ったら追加するけど……おや?
『うはっ!このガス食らうと石になるぜ!』『自爆も良いが、ポーズ決めようぜ!イェーイ!(石化)』『ぶはっ、ウケる!』
楽しそうだなぁ。とはいえそろそろ撤収だよ。相手共々爆ぜるべし



●それゆけ分身爆弾

「ははぁ、UDCアースはまだまだ不思議な狂気があるもんだなぁ。飽きなくて実にいいねぇ」

 山中を進みながら、霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)は呟く。
 夜の山は、不気味なほど静かだ。
 鳥や虫の声ひとつ聞こえず、風の音ばかりが耳に残る。
 だからこそ、少女の悲鳴はやけに遠くまで聞こえた。

「おっ、良い声で啼きそうな女の声」

 ここに一般人がいることは、既に聞いていた。
 少女のいるところに、妖怪もいるだろう。
 永一は悲鳴の聞こえた方へと真っ直ぐに向かった。
 それから、キンバーライトに追い詰められている少女を見つけるまで、それほど長くはかからなかった。

「あれが件の石像かぁ」

 翼を持つ、石で作られた狼男。
 今にも少女に襲いかからんとするキンバーライトを見て、永一は顎に手を当てて唸る。

「ほら、出てこいお前ら」

『おっ、俺様の出番か』

 永一の影から、永一の分身がひょっこりと顔を出した。

『なになに、呼び出しか?』

『暗いんだが? もう寝る時間なんだが?』

 それを皮切りに、次々と永一の分身が何人も表れる。
 そりゃあもうたくさん、同じ顔がずらりと並ぶ。
 騒がしくなったことで気付いたキンバーライトが、永一たちの方へと目を向けた。

『こっち見んな! うははは!』

 げらげらと笑う永一の分身たちへと、狼男の石像が襲いかかる。

「じゃ、時間稼ぎよろしく」

 分身たちを前に出して、永一本人は後ろから少女の方へと向かった。

「あ、あの……?」

 困惑した少女が、永一と分身たちの間で視線を往復させる。
 それに気付いた永一は、いつものようにへらっと笑った。

「ああ、あいつらは大丈夫だから気にせずこちらへどうぞ、お嬢さん」

『紳士みたいなこと言ってんじゃねーよ!』

 からかおうとした分身を爆発させて、少女の手を引いていく永一。
 山を降りて道に出たところで、永一は少女に現在位置を教える。

「あとは自分で帰れるよね?」

「はい……! ありがとうございました!」

 少女を見送ると、永一は再び山の中へと入っていった。
 戦いはまだ、続いているからだ。

「さて、どんくらい減ってるかなっと」

 戦場へと戻った永一は、分身たちの様子を見る。
 囮としての使命はきちんと果たしていたようで、数こそ減っているものの、キンバーライトを相手にうまく遊んでいた。

『うはっ! このガス食らうと石になるぜ!』

『自爆も良いが、ポーズ決めようぜ! イエーイ!』

『ぶはっ、ウケる!』

 きりっとポーズを決めて石になる分身。
 ジャンプした状態で石化し、地面に置いて砕ける分身。
 それらを見て笑う分身。
 戦場はめちゃくちゃである。

「いやー、みんな楽しそうだなぁ。とはいえそろそろ撤収だよ」

 永一がニコッと笑って指を鳴らすと、分身たちは石になった者も、なってない者もまとめて自爆した。
 キンバーライトの骸魂も一緒に吹っ飛んだ。
 憐れなり。

大成功 🔵​🔵​🔵​

上野・修介
※アドリブ、連携歓迎

「下手に時間を掛ければ不利か」

調息、脱力、『観』据える。
周囲の敵味方、保護対象の数と配置、地形状況等を確認。
目付は広く、自身を含め戦場全体を俯瞰するように。

先ずは保護対象と敵を引き離すようにアサルトペンを投擲し挑発。
「数だけはあるようだが、どれも粗悪品だな。特に造形にセンスがない」

UC:攻撃重視
ヘイトを自身に集め、保護対象から引き離すように立ち回る。

相手が空中にいる場合はこちらに対する攻撃に合わせてカウンター、もしくは流星錘を絡めて引き摺り落とす、あるいはぶん回して他の敵にぶつけるなどで対処。

可能であれば他の味方と連携して迅速に殲滅。
その際は前衛での囮役を買って出る。


ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

そもそもUDCアースで狼男の石像っていうのが怪し過ぎる~!
なにそれ、遊園地のお化け屋敷の置物?おもしろそう~!

●巻き込み対策
がお~!食べちゃうぞ~!
とUCで石像くんたち以外を何もかもすり抜けちゃうようにしたたくさんの餓鬼球くんたちを放つ!女の子たちはすり抜けるので安全!
どのあたりにどの程度の数の餓鬼球くんを配置していくかなんてのは大体【第六感】で!
怪物が怪物に食べられる様なんてなかなか見られない貴重でエキサイティングな光景だね!

そもそも狼男の石像っていうのがホラーなのか怪談系なのか悩むよね~
この石像くんたち設置する世界を間違ってないかな!



●堕ちるは餓鬼の道

 山の中に木霊する、少女の悲鳴。
 追いかけてくる石像たちは、明らかに尋常ではない。
 命を奪うつもりで、襲ってきているのだ。
 一体誰が、噂を確かめようなんて言いだしたのだったか。
 こんなところ、来なければよかった。
 少女は心の中で幾度もそう唱えた。
 目前に迫った石像が、その腕を振り上げる。
 これが振り下ろされたら、自分は終わりだ。

「誰か……誰か助けて……!」

 少女が振り絞るような声を上げたそのとき、石像の身体に棒状のものが突き立てられた。
 見慣れない紋こそ刻まれてはいるもの、それはペンだった。
 少女と石像たちが、それの飛来した方へと一斉に目を向ける。
 上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)が、次のアサルトペンを投げようとしているところだった。

「数だけはあるようだが、どれも粗悪品だな。特に造形にセンスがない」

 キンバーライトは、翼を広げてペンを躱しながら、少女から距離を取る。
 間に入るように立った修介は、深く細く息を吐いた。
 敵は石像のため疲れ知らずで、数もそれなり。
 しかも石像は増える。

「下手に時間をかければ不利か。しかしまずは、この子を逃さなければ……」

 瞬時に状況を纏めて、防御に寄った構えを取った。

「うわ~、なにこれ! そのまま気を引いててよ、お兄さん!」

 木々の間を抜けて、桃色の髪を揺らしてぴょんと飛び出したロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)が、少女の手を引く。

「この子を安全な場所まで送ったら返ってくるから! それまで耐えてよね!」

「頼む。そちらには一匹も行かせん」

 空中から少女とロニを追おうとしたキンバーライトの脚に流星錘を絡めて引き摺り落とし、石像の鼻先を自身へと向けさせた。
 広範囲の攻撃手段は多くはないが、一対多ができないわけではない。
 とはいえ、空を飛び、ガスによる攻撃手段を持つキンバーライトに対して、拳主体の戦法では相性が悪いことはわかっていた。
 それを補うためのアサルトペンと流星錘だ。
 だが、ペンを刺しても、流星錘をぶつけても、決定的なダメージを与えられずにいた。
 空中の敵には、衝撃が上手く伝わらないのだ。

(もっと上手く、相手の力を利用して……)

 戦う間も、頭は休ませない。
 行動と結果を分析して、より効果的な戦い方をしなければならない。
 次なる一手を思考している間に、空中で加速したキンバーライトが再び修介へと襲いかかる。
 それを躱そうとした修介は、一度動きを止めた。

「ここだ」

 相手の攻撃を躱すのではなく、相手の速度を利用して叩き込む。
 空から降りてくるキンバーライトの落下に合わせて、修介は下からすくい上げるように拳を振った。
 先程までであれば、上向きの力が空へと逃されていた。
 だが、降下中であれば、力は逃げることが出来ず石像の中で炸裂する。
 果たしてそれは、正しかった。
 石像の胴へと振り上げられた修介の拳は、キンバーライトの石の肌を砕き、貫く。
 一匹ずつ、十分に倒せる。
 修介に、活路が見えた。
 だが目の前の石像から腕を引き抜いた瞬間に、修介は気付いた。

「増えすぎだろ……っ!」

 防御中心の戦い方をしている間に、石像は数え切れないほどに増殖していた。
 この数を相手にどれだけ保つか、ひやりとするものが、修介の脳裏を過ぎる。

「おまたせ~! ご飯の時間だよ~!」

 そのとき、ロニの底抜けに明るい声が、修介の耳に入った。
 戦場に戻ってきたロニが、不思議な球体を空へと浮かべる。
 大きな口を持つ、謎の物体だ。
 やがてそれは数を増やして宙を舞い、大きくなって空を駆ける。

「がお~! 食べちゃうぞ~!」

 ロニの操る餓鬼球が、縦横無尽に駆け巡った。
 キンバーライトたちの身体に喰らいつき、飲み込み、また次の獲物へ。

「これは……!」

 無数の球が空を飛ぶ石像を落としていく様子を、見上げる修介。
 球が修介へ向けて飛んできて、思わず防御姿勢を取った。
 だが、餓鬼球をするりとすり抜けて、修介の向こうのキンバーライトへと喰らいつく。

「なかなか見られない光景だね! 怪物が怪物に食べられるなんて!」

 最後に数百メートルにも巨大化した餓鬼球が、石像以外の全てを残し、上から丸ごと飲み込んだ。
 どれほど石像が増えようとも、自在の攻撃範囲を持つロニとは、相性が悪かった。

「狼男の石像っていうのがホラーなのか怪談系なのか悩むよね~」

 修介の隣にやってきたロニが楽しそうに笑う。
 暴食の宴は終わり、石像はすべてバラバラ、もはや動く影はない。

「あの子は?」

「だいじょ~ぶ! 他の子のところまで送り届けてきたから!」 

 ロニが余った袖をぴょんと跳ねさせて応える。
 そうか、と短く呟くと、修介は足元に転がっていた骸魂を踏み砕くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可

ひゃわわ…中学生の女の子達が襲われています…
ここは【性癖少女『はいいろ・きゃんぱす』】さんを召喚しましょう!
はいいろ・きゃんぱすさんの黄金の手を召喚して襲われそうになっている中学生の女の子と動く石像を隔てて逃がしてあげます!
その後は動く石像を掴んで黄金塊にしちゃいましょう♪
黄金化してしまえば流石に動かなくなりますよね…?
(石化フラグはお任せします)



●石像がもうひとつ

(ひゃわわ……中学生の女の子達が襲われています……)

 テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)が現場へ到着したときには、少女たちはいまにも石にされてしまうそうなところだった。
 山の中を随分と逃げ回ったのだろうか、足元は土で汚れ、小さな擦り傷も多い。
 もはや逃げる力など残っていないといった様子で座り込み、口からガスが洩れる狼男の石像を、恐怖の表情で見上げていた。

「はいダメでーす! お触り禁止ですよ!」

 少女と石像の間に、巨大な手が振り下ろされる。
 テフラの召喚した、はいいろ・きゃんぱすさんによるものだ。

「さあ、早く逃げちゃってください!」

 邪魔をされたキンバーライトの視線は、テフラに釘付けになった。
 その間に、少女は逆方向へ走っていく。
 少女の背中を見送り、テフラは短く息を吐く。

「もう大丈夫ですね? それじゃあ……あなたは黄金塊にしちゃいましょう♪」

 キンバーライトは即座に翼を広げ、その場から飛び立とうとした。
 だが、テフラの指示で動きた巨大な手が、すぐさまキンバーライトを捕まえる。

「あなたは逃してあげません!」

 最初は手の中でもがいていたキンバーライトだったが、次第に動きが鈍くなっていく。
 石の体が、黄金へと変化しているからだ。
 巨大な手が直接触れている胴や手は、完全に黄金になってしまったのか動かない。
 石像の表面全てが黄金になるまで、それほど時間は掛からなかった。

「流石にもう動かないですよね……?」

 テフラがメッキをしたように輝く狼男の顔を覗き込む。
 その瞬間、表面しか黄金化していなかった石像の口が開き、テフラの顔めがけて煙が吹き出された。

「ゴホッ、まだ動くじゃないですか!」

 咳き込みながら手で扇いで煙を払うテフラ。

「あれ、これって────」

 一体何を浴びせかけられたのか気付いたときには、もう遅かった。
 テフラの体が、ぴくりとも動かないのだ。
 乳白色の髪も、褐色の肌も、色を失って硬くなっていく。
 薄れゆく意識のなかで、テフラは目の前のキンバーライトを見ていた。
 キンバーライトもまた、全身が黄金に変わって完全に動きを止めているのだ。

(あー、さっきのが最後の足掻きだったんですね)

 辺りが静かになる頃には、可愛らしいゴスロリの石像と禍々しい狼男の黄金像が、向かい合って立っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雪・兼光
ガキが…。遊び半分で霊的場所に行くのは死亡フラグだって知らねぇのかよ。

造りが荒い石像は零距離射撃のクイックドロウで破壊しながら、精巧な石像の近くにいるガキは保護する
ガキへ攻撃をしている相手へはマヒ攻撃、誘導弾を利用したブラスターの攻撃

コミュ力を使って柔らかい声と笑顔を忘れず
「大丈夫、助けに来たよ」と安心させながら相手をクイックドロウで撃退
内心、クソガキがと毒ついているけどな…。

面倒だがこちらから攻撃してきた個体から優先してクイックドロウで攻撃する。うかつに範囲攻撃などで攻撃しない。マヒ攻撃のオマケつきで動きを鈍くしてやる。

さぁ、逃げる手助けだけはしてやるからとっとと逃げな。



●閃光、乱るる

(ガキが……。遊び半分で霊的場所に行くのは死亡フラグだって知らねぇのかよ)

 ブラスターの調子と確かめながら、雪・兼光(ブラスターガンナー・f14765)は心の中で迂闊な少女たちに毒づく。
 ここは夜の山中。
 肝試しに来るというなら、たしかに最適なシチュエーションだろう。
 平和な学生たちの退屈しのぎとしては、よくあることなのかもしれない。
 だが同時に、彼女たちが知らざるものの手によって命を落とすこともまた、よくあることなのだ。
 兼光は時折聞こえる少女の悲鳴を頼りに走り、やがて少し拓けた場所へとたどり着いた。
 疲れきって座り込んだ少女。
 すぐ側に、今にも石化ガスを吐き出さんとするキンバーライトがいる。

「俺が相手だ、石像野郎!」

 ブラスターを抜き放ち、瞬く間にトリガーを引く。
 ガスを吐き出そうと口を開けていたキンバーライトの顔面に熱線が命中し、石像は身体を痙攣させて仰け反った。
 その隙を突いて、少女と石像の間に兼光が割って入る。

「大丈夫、助けに来たよ」

 爽やかな笑顔で、穏やかに声をかける。
 兼光は、内心では少女たちのことを良くは思っていない。
 危険な場所に近づいたのは少女たちの自業自得である。
 それでも猫をかぶって相手に信頼される言動を取るには、円滑に避難させるためだ。

「立って逃げられるかい?」

「す、すみません……脚に力が……」

 だが、少女は腰が抜けたようでその場から動けない。

(クソガキが!)

 ブラスターのトリガーを何度も引いて、目の前のキンバーライトへと熱線を浴びせかける。
 怯んでいる間に蹴飛ばして、僅かな時間を稼いだ。
 蹴った勢いでくるりと回り、兼光は後ろにいた少女の手を掴んで強引に引き寄せる。

「緊急事態だから、ごめんね」

 少女を肩で担ぐように持ち上げて、兼光は走り出した。

「きゃあっ!」

 少女の短い悲鳴を置き去りにするように、凹凸の激しい山中を兼光は難なく進む。
 キンバーライトは空を飛べるが、地上を進むスピードはそれほど早くない。
 少女たちの脚でも少しの間は逃げ回れたことがその証拠だ。
 結局、道路に出るまで狼男たちは追いついて来なかった。

「ここまで来ればもう安心だよ。さあ、家に帰りな」

 少しは休めたであろう少女を下ろして、街の方を指す兼光。
 少女は頭を下げると、明かりを目指して走っていった。

(さて……)

 問題はキンバーライトだ。
 やっと、と言っていいだろう。
 少女が見えなくなった頃に、森の中で赤い瞳が光る。
 2つ、4つ、6つ。
 次第に増え始めたそれは、兼光を包囲しようとしているように見えた。

(チィ、面倒くせえ……)

 ブラスターを強化して広範囲をまとめて焼くこともできるが、それではどこにいるかわからない一般人を巻き込みかねない。
 兼光に出来ることは、近寄ってくるキンバーライトを片っ端から撃ち抜いていくことのみだ。

「ガキが家に着くまで俺に付き合ってもらうぜ」

 ニィ、と口角を上げて、兼光は先頭のキンバーライトへブラスターを向けた。
 銃口から逃れるように、森の中へ隠れるキンバーライト。
 だが放たれた熱線はぐにゃりと曲がって木々を避け、石像の額へと的確に当たる。

「まず一体!」

 足手まといになる少女は近くにはもういない。
 ならばと、兼光は前へ出た。
 先程撃ち抜いて倒れたまま痙攣している石像を踏み砕いて、その奥の個体へと肉薄する。
 ブラスターなら離れていても戦えるが、あえてキンバーライトの間合いの内側へ。
 対して狼男も腕を振り上げるが、もはや遅い。
 振り下ろされるよりも速く、至近距離から兼光のブラスターが火を吹き貫く。

「次ィ!」

 石像を突き倒し、今度は反対側へ。
 その場でブラスターを乱射し、ガスを吐こうとしていた石像を牽制する。
 致命的な部分に直撃せずとも、熱線に付与された麻痺は十分に効果を発揮した。
 動きの鈍くなった石像を飛び越えて、兼光はその後頭部に射撃を加える。
 3発も撃てば熱線は頭を貫いて、石像は力なくその場に倒れた。
 ブラスターの銃身が熱を持って湯気が上がる。
 兼光を追いかけてきたキンバーライトたちは、全て倒した。

「……終わったか?」

 辺りからは、悲鳴も戦いの音も聞こえない。
 猟兵たちの、勝利だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月20日


挿絵イラスト