大祓百鬼夜行⑧〜もう一度、あなたに会えるなら
カクリヨファンタズムに、一つの橋が架かった。
その橋の上に、ふわりと人影が立つ。
どうやら、橋の上から何かを見つめている様子。
いや、誰かを待っているのだろうか。
その影は、姿を留めることなく、その者を来るのを待っている。
――もう、この世にはいない、大切な者の魂が。
「大切な方はいらっしゃいますか?」
そう問いかけるのは、響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)。
「もし、その方が亡くなっているのであれば……もしかしたら、会えるかも知れません」
「え? それはどういう……」
驚きを隠せない猟兵達にリズは続ける。
「カクリヨファンタズムには、時折、『まぼろしの橋』という橋が架かるそうです。この橋に佇んでいると『死んだ想い人の幻影』が現れ、夜が明けるまで語らえば、橋を浄化する事ができるそうです……ですが」
もう会えない人との出会い。そこまではいい。
しかし、二度目の別れはかなり辛いものになるかも知れない。
それでも……それでも、会って話したいことがあるのなら。
「今回が良い機会となりましょう」
自分の気持ちと、苦しい気持ち、苦い気持ち。嬉しい気持ちがない交ぜとなるだろう。
それでも、この橋の浄化のために来て欲しい。
そう、リズは願う。
「敵は現れません。なので、ゆっくりと語らってください。時間はたくさんありますから」
だからせめて……。
「この不思議な橋の浄化のために……どうぞ、ご協力をお願いいたします」
少しリズの瞳が潤んでいるのは気のせいだろうか? リズはそういうと、猟兵達を静かに見送ったのだった。
柚葵チハヤ
どうもこんにちは! 柚葵チハヤです。
1章のみの戦争シナリオ、今回はしんみり系のお届けです。
さっそくですが、今回のプレイングボーナスを。
プレイングボーナス……あなたの「想い人」を描写し、夜が明けるまで語らう。
私ももう会えない方と会えたら……と思うと、胸が締め付けられそうになります。
もしよろしければ、お会いして何を話すのか。
プレイングに余裕があれば、お相手のことも記載していただけると幸いです。
素敵なひとときがおくれますよう。
皆様のプレイング、お待ちしていますね。
第1章 日常
『想い人と語らう』
|
POW : 二度と会えない筈の相手に会う為、覚悟を決めて橋に立つ。
SPD : あの時伝えられなかった想いを言葉にする。
WIZ : 言葉は少なくとも、共に時を過ごすことで心を通わせる。
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ラモート・レーパー
「足りない……(時間が)」
人間社会に干渉するのは多少なりともやってはいたけど、それで印象深い人でも多すぎる。カクリヨが出来る前からも含めると人外もそれなりの数に……それに彼らを黄泉に送ったのもお姉さんだし……まあ細かいことは何にせよ、死者を冥界に送るのがお姉さんの役割だからね!
(結論 全部アドリブだお願いします。またUDCアースもしくはカクリヨファンタズムイメージでお願いします)
ゆっくりとした足取りで、ラモート・レーパー(生きた概念・f03606)は件の橋へとたどり着いた。
早く行って、事件を解決させたい気持ちもあるが、また見知った顔に会えると思うと、少し戸惑う気持ちもある。
だが、それでも。
「この橋……だっけ」
どこか懐かしい雰囲気を醸し出すのは、橋の効果なのだろうか。
あまり奥へは行かずに、こちらに向かってくる影をそのまま待つことにする。
「久しぶり」
気さくに声をかければ、相手は懐かし気に笑みを見せた。
――人間社会に干渉するのは多少なりともやってはいたけど、それで印象深い人でも多すぎる。カクリヨファンタズムが出来る前からも含めると、人外もそれなりの数に……。
それに気づいたのは、少し遅かった。
「あっ……」
先ほど語り合った人は、いつの間にか消え……その後ろにもう一人出てきた。
なるほど、このまま話せばいいのかと、積もる話を続ける。
そして、数時間後。
「足りない……」
主に時間がというか、気付けば、自分の近くには、行列ができていた。
もしかして、これは……彼らへと残さず語りつくさないといけないのだろうか。
ちょっと魂が出ていきそうになりながらも、ラモートは最後の一人を見送るまで、ずっと語りつくした。その後、豪快にぶっ倒れてしまったのは言うまでもない。
大成功
🔵🔵🔵
サハル・マフディー
あァ……よもやまた、直接話す機会ができようとはね。
いい機会だ、話したいことがたくさんある。付き合っとくれよ、アズィーズ。
想い人:アズィーズ・マフディー(夫・人間男性・享年32歳)
……天国に行ったアンタともう一度逢うことなんて、絶対に無いと思っていた。この時ばかりは、異教の神にも感謝しないとね。
私はアンタがいなくなってから、アッラーは何もしてくださらないことを知った。私を救ってはくださらなかった。
だから私は酒に逃げた。逃げて、溺れて、もう離れられない。
アンタは私を恥ずべき女と罵るかい?
いいんだ。アンタが悲しもうと、喜ぼうと、今の私は酒と煙草と共にあるから。
見といてくれ、私は地獄でもあがくからさ。
サハル・マフディー(神の信徒は紫煙と共に・f16386)もまた、件の橋へとたどり着いていた。
そこは静かな時間が流れていた。
「あァ……よもやまた、直接話す機会ができようとはね」
彼女の前に現れたのは、32歳で亡くなった人間男性で。
「いい機会だ、話したいことがたくさんある。付き合っとくれよ、アズィーズ」
彼女の夫のアズィーズ・マフディーだった。
橋の半ばで、二人は欄干に体を預けながら、少しずつ語り始めた。
「……天国に行ったアンタともう一度逢うことなんて、絶対に無いと思っていた。この時ばかりは、異教の神にも感謝しないとね」
そんなサハルの言葉にアズィーズは思わず笑みを浮かべる。
『ああ、そうだな』
「私はアンタがいなくなってから、私の信じていた神は何もしてくださらないことを知った。私を救ってはくださらなかった」
川は静かにゆらゆらと水面を揺らす。
「だから私は酒に逃げた。逃げて、溺れて、もう離れられない。アンタは私を恥ずべき女と罵るかい?」
『いいや……だが、飲みすぎは心配だな』
罵ることはせず、体の心配をするアズィーズに、サハルは苦笑を浮かべる。
「いいんだ。アンタが悲しもうと、喜ぼうと、今の私は酒と煙草と共にあるから。見といてくれ、私は地獄でもあがくからさ」
『お前の苦しむ姿は見たくないが』
アズィーズは続ける。
『こっちに来るまでの間の話を、また聞かせてくれ。それと俺が老人になるくらいまで、こっちにはまだ来るなよ』
そういう夫の姿を見ていたサハルの視界が、ゆっくりと涙で歪んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
リード・ユースレス
想い人はマーガレットお嬢様。僕のただ一人の主。あの夜救えなかった方。
お久しぶりですお嬢様。ここで会えると聞き参じました。
お変わりないようで…『挨拶より土産話を』?
それでは僕が見た綺麗な草花の話でも。貴女は花がお好きでしたね。
…お嬢様、貴女に謝らなくてはなりません。
あの夜、お守りできず申し訳ありませんでした。
ですが、どうか今一度僕に機会をください。
この花飾りに誓います。
貴女よりいただいた最後の命令を、今度こそは必ず果たします。邪魔するものは誰であろうと斬りましょう。僕が壊れたその時はきっと良い報告をいたします。
それまでどうか骸の海でお待ちください。
…『命令じゃなくてお願い』ですか。承知しました。
リード・ユースレス(案山子になれなかった人形・f16147)にとっての大切な人は、ただ一人。
――あの日の夜。救いたくても救えなかった主人。
「お久しぶりです、お嬢様。ここで会えると聞き、参じました」
その橋に佇むのは、リードのかつての主人、マーガレット。
「お変わりないようで……」
あのときと変わらぬ姿に驚きながらもリードがそう告げると。
『そんな挨拶はいいわ。それよりも土産話を聞かせなさい』
そういって、リードの話を促す。生前と変わらぬ勝気な口調に笑みを浮かべながら、リードはその口を開いた。
「それでは、僕が見た綺麗な草花の話でも。貴女は花がお好きでしたね」
そのリードの言葉にマーガレットは満足げな笑みを浮かべた。
そして、花の話からリードの近況まで、一通り語った後に。
「……お嬢様、貴女に謝らなくてはなりません。あの夜、お守りできず申し訳ありませんでした」
何かを言おうとするマーガレットを、リードは次の言葉で止めた。
「ですが……どうか今一度、僕に機会をください」
『……』
「この花飾りに誓います。貴女よりいただいた最後の命令を、今度こそは必ず果たします。邪魔するものは誰であろうと斬りましょう。僕が壊れたその時はきっと良い報告をいたします。それまで、どうか……骸の海でお待ちください」
そうリードが言うと。
『リード、あなたに言ったことは『命令』ではなくて『お願い』。そのことを間違えないで。それと……』
そこで区切って、マーガレットは続けた。
『今度来るときは、もっともっと花のことを聞かせなさい。どれだけ立派な案山子になったかを』
リードは深々と頭を下げて、強く頷いた。
「承知しました、マーガレットお嬢様」
こうして、猟兵達の活躍により、まぼろし橋はすうっと消えて、浄化されていったのだった。
大成功
🔵🔵🔵