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大祓百鬼夜行⑧〜泡沫の想い君との語らいを

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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 今宵、幽世のとある川に橋が掛かる。
 ずっと以前からそこにあったような石の橋は短く、数歩も歩けばすぐに渡れてしまうだろう。
 けれどこれはまぼろし橋、此岸と彼岸を繋ぐ橋。これを渡りきってしまえば黄泉の国に送られてしまうのだ。
 ああ、けれど。この橋の上で佇んで待っていれば――彼の人が現れる。
 想い描いたあの人とのただ一夜の逢瀬が叶うのだ。
 たった一晩。されど一晩。語らっていたい。


「死んだ、あとでも……逢いたい方、いらっしゃいますか」
 そう語る寧宮・澪が見たのは、カクリヨファンタズムにまぼろし橋が掛かる光景だ。
 唐突に現れるこの橋は、渡り切った者を黄泉へと送り出す、つまり死に繋がらり少々危険な橋だ。できれば早急に浄化したい。
 その方法として、この橋の上で佇んで待っていれば、彼岸から「死んだ想い人の幻影」が現れるという。家族、友人、恋い焦がれた相手かもしれない。けれど、必ず死んだ誰か、だ。
 本当の死者が蘇ったわけではない。明確な返事や言葉が帰ってくるとは限らない。
 けれど、そんな「想い人」と一晩語りあかせたら。橋も、その人も浄化されて泡沫の如く消えていく。
 残るのは何だろうか。再会、逢瀬の喜び。訪れる喪失。執着を昇華できるか。新たな何かを手に入れるか。
 より心に傷になるかもしれない。より良い思い出になるかもしれない。
 どうなるかは語らい次第だろう。
「それでも、行かれますか?」
 澪は静かに、静かに猟兵達へ問いかけた。


霧野

 彼岸からの想い人との邂逅は、美しいでしょうか。
 よろしくお願いします、霧野です。

●シナリオについて
 大祓百鬼夜行のシナリオです、一章のみで完結します。
 死んだ「想い人」――家族や友人、恋い焦がれた人。そんな人との一晩だけの逢瀬です。
 ただ一晩、語り合えば成功です。
 公開後からすぐに受け付けます。

●プレイングボーナス
  あなたの「想い人」を描写し、夜が明けるまで語らう。
 相手の詳細を記載願います。
 曖昧ですとアレンジが入ったり、採用を見送るかと思います。

●採用について
 すべてのプレイングの採用はお約束できません。
 短期終了を目差すので、少なめかと思います。
 もし参加者が多ければ、もう一回同じテーマで出したいと思います。
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第1章 日常 『想い人と語らう』

POW   :    二度と会えない筈の相手に会う為、覚悟を決めて橋に立つ。

SPD   :    あの時伝えられなかった想いを言葉にする。

WIZ   :    言葉は少なくとも、共に時を過ごすことで心を通わせる。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

誘名・櫻宵


彼岸と此岸の境目
向こう側へ踏み出せば私も

─またグズグズしてるの?情けないわね!
─若様にそんな!いけませんよ!

左右から響く懐かしい声
黒い髪の双子の巫女の姿

一人は醜い火傷跡を顔布で隠す心の美しい姉巫女

美しく整った容姿に綺麗とは言えぬ心を持つ妹巫女

姉妹は二人で一人
私の生家に伝わる御神木「神代櫻」の世話をする巫女
…神代櫻に神贄として捧げられるはずだった私と縁があって
姉のように慕っていた

変わらないわねと笑えば
うるさいと妹巫女に耳を摘まれ
姉巫女が慌てて止めて─昔のよう

たわい無いやり取りが楽しい
でも
もう二人共居ない

私が生きる為に
二人とも呪の贄として喰い殺したの

そんな事忘れていたい
夜が明けるまでは
昔のままで




 まぼろし橋に誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)は一人立つ。
 こちらからあちら、彼岸と此岸の境目。もう少しだけ向こう側へ踏み出せば櫻宵も彼岸に到れるだろう。
 それもいい気がしている。己の所業を思えば、それもふさわしい。それでも櫻宵は川を見てただ佇んだ。
「――またグズグズしてるの? 情けないわね!」
「――若様にそんな! いけませんよ!」
 櫻宵の耳に打てば響くような拍子で懐かしい声が飛び込んでくる。
 彼岸の方へ振り返れば、黒髪の少女が二人。顔を布で隠した少女と美しい顔の少女だ。
「久しぶりね」
「本当にね。あなたは相変わらずぼんやりしてるの?」
「若様はご健勝のようで、何よりです」
 美しい少女は少しだけつんとした言葉を返す。顔を隠した少女は穏やかに優しい言葉を返す。
 櫻宵は知っている。顔布の下に醜い火傷跡を残す姉巫女の心はとても美しい。美しい容姿の妹巫女の心は綺麗とは言い難い。
 それがこの二人の在り方だった。二人で一人、互いの優劣を差し引きするような双子の巫女。
 櫻宵の生家に伝わる御神木「神代櫻」の世話をする巫女だ。
 もともと神代櫻に神贄として捧げられるはずだった櫻宵と縁があり、櫻宵は二人を姉のように慕っていた。
 櫻宵は柔らかな笑みを浮かべる。
「変わらないわね」
「何よ、成長してないってこと? もう、うるさいわね!」
「おやめなさい、若様、申し訳ありません」
 妹巫女が言うやいなや櫻宵の耳をくいくいと引っ張って、姉巫女が慌てて止めて謝って。姉妹で言い合いを始めるのを櫻宵が仲裁に入って、また騒がしくなるのだ。
 ああまるで、昔のよう。櫻宵はただ、他愛のないやり取りが楽しい。何も知らない穏やかな時間を過ごした頃に戻ったようだ。
 けれどこれは一夜の夢。もうこの二人は居ないのだ。
 この二人の死は櫻宵がもたらした。櫻宵が生きるために、二人とも呪の贄として喰い殺した。
 恨んでいるか、憎んでいるか。少しだけ怖かった。
 けれど昔のままの二人に少しだけほっとした。
 この夢幻の夜が明けるまではそんなことを忘れよう。昔のまま、一晩語らっていたい。

 月が東に沈むまで、三つの影はそこに居た。

大成功 🔵​🔵​🔵​

聖・華蓮
死したる御方に逢える橋…ですか。となりますと、もしや…

…ああ、やはり…。…貴方様、なのですね…!
(選択UCで召喚される武将と同一人物。封神武侠界の戦乱期の武将)

…こうして、再び言葉を交わす機会を得られるなど、望外の喜び。
例え、貴方様が私の言葉、認識しておられずとも。
ここで、私の言葉を聞いて下さることが。それだけで…。

何からお話致しましょうか。
貴方様亡き後のかの世界の変遷と現状。
私が猟兵となり、今こうして武侠界とは別の世界へ渡る身となった事。
今も私は無力な女のままですが、無力なりに力を尽くし生きている事…

全てを語るには、あまりにも時間が足りなくて。
けれど、改めて語る時が得られて…幸い、でした。




 聖・華蓮(傾界幻嬢・f32675)は橋の上に立つ。
「死したる御方に逢える橋……ですか」
 もしかしたら、と月光の下、照らされる夜、懐かしい記憶を呼び起こした。
 幾夜と逢瀬を重ねた愛し君、結ばれることなく先に逝ったかの人を。比翼連理でありたいと願った幸せで愛おしい想い。その願いが叶わず、死によって離れた悲しい記憶。
 姿を想い描き、思い出を辿り、待つことしばし。願い通りに華蓮の待ち人はやってきた。
「……ああ、やはり……。……貴方様、なのですね……!」
 彼岸より橋を渡って現れたのは、万夫不当の猛将だ。古代中国の甲冑に身を包み、常に側においた方天戟を携えて、華蓮と別れたあの日の姿のままで現れた。
 玉のような涙を浮かべ、華蓮は彼が歩む姿を見つめる。
 いつだってその魂は守ってくれているが、こうしてゆっくりと語らえる機会を得るなど想像もできなかった。この不思議な一夜の邂逅に感謝しながら、華蓮はそっと偉丈夫へと寄り添う。
「……こうして、再び言葉を交わす機会を得られるなど、望外の喜び」
 例え、彼が幻のようなものであり、華蓮の言葉を認識していなくとも。
「ここで、私の言葉を聞いて下さることが。それだけで……」
 幸せという水を得て、花が綻ぶような歓喜の笑みを浮かべ華蓮は唇を開く。
「何からお話致しましょうか」
 二人過ごした懐かしい時代から、随分とあの世界は遷ろい変わり、封神台も破壊された事実。乱世の如き世界で華蓮も猟兵となり、別の世界へ渡り歩くその旅路。無力な女であれども、力を尽くし生き抜いていることを。
 たった一晩ですべてを語るにはあまりにも時間は足りていない。それでも華蓮は言葉を紡ぎ、寄り添う愛しい人へと語りかけた。
 橋と偉丈夫の姿が薄れていく。
「改めて語る時が得られて……幸い、でした」
 最後にそれだけを告げて、そっとその背を押す彼に従い、華蓮は此岸へと戻るために歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月13日


挿絵イラスト