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大祓百鬼夜行⑦〜フルムーン・サプライズアタック

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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●すすき野に潜む悪意
 カクリヨファンタズムの片隅にあるすすき野。そこは常に真夜中という不思議な場所で、夜空には常に明るい満月が浮かんでいる。まさにお月見のためにあるようなすすき野だ。
 ――だが、今、このすすき野には、のんびりとお月見をする妖怪を狩ろうと、オブリビオン軍団が潜んでいるのであった。

『さあ、獲物たちよ、のこのことやってくるダルマ』

●季節外れの刺客
「というわけで、オブリビオン軍団が、すすき野に潜んで妖怪を襲おうとしていることが分かりました」
 猟兵たちの前でアイ・リスパー(f07909)がホロキーボードを操作すると、空中に一面のすすき野が映し出された。空に大きな満月が浮かぶ明るい野原だ。
 一面に生えたすすきの合間に――場違い感が半端ない雪だるまたちが立っていた。この雪だるまたちが、件のオブリビオン軍団である。

「すすき野に身を潜めた雪だるま軍団は、のんびりとお月見をしようとやってくる妖怪を奇襲しようとしているのです」
 背の高いすすきとはいえ、雪だるまが立っているという違和感は消せていない――というか、これは身を潜めていると言えるのだろうか?
 まあ、カクリヨファンタズムの妖怪たちなら、自分たちの命を狙う雪だるまに気付かずに月見をしてしまいそうだが――。

「皆さんには、月見をしようとする妖怪たちに被害が出る前に、この雪だるま軍団に逆に奇襲をしかけて撃破していただきたいのです」
 ただの雪だるまのふりをして獲物を虎視眈々と狙う雪だるま軍団。
 だが、その正体がオブリビオンだとわかっているのであれば、こちらから逆に奇襲をかけることも容易だろう。
 幸い、すすき野には明るい満月が出ているので、真夜中と言っても明かりには困らない。

「オブリビオン軍団は、自分たちがただの雪だるまに完璧に偽装できていると思って油断しきっています。また、すすき野には背の高いすすきが生えていますので、身を隠すのにも最適です。どんな方法でもいいので、オブリビオン軍団を奇襲してやっつけちゃってくださいね」
 そう言うとアイはすすき野に通じるゲートを開き――。

「あ、ちなみにすすきは燃えやすいので火気厳禁でお願いますね」
 大事な一言を付け加えたのだった。


高天原御雷
 このシナリオは「戦争シナリオ」です。1章で完結し「大祓百鬼夜行」の戦況に影響を及ぼす特殊なシナリオとなります。

 オープニングをご覧いただき、どうもありがとうございます。高天原御雷です。
 今回は、満月輝く真夜中のすすき野でのオブリビオン軍団との戦いです。敵は油断しきっていますので、うまく奇襲をかけてください。
 なお、オブリビオンは「骸魂が妖怪を飲み込んで変身したもの」です。飲み込まれた妖怪は、オブリビオンを倒せば救出できますので、遠慮なく倒してしまいましょう。

●プレイングボーナス
 雪だるま軍団に奇襲をおこなうと、プレイングボーナスが付きます。


 オープニング公開からプレイング受付を開始します。
 今回は戦争シナリオなので、完結速度優先にして採用人数を絞らせていただくかもしれませんが、ご了承ください。
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第1章 集団戦 『『剣客』雪だるま』

POW   :    雪だるま式に増える
自身が戦闘で瀕死になると【仲間】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    抜けば玉散る氷の刃
【その手でどうやって持つんだかわかんない刀】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    雪合戦
レベル×5本の【氷】属性の【雪玉】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ゲニウス・サガレン
奇襲と言えば火攻めだけど、ダメというなら次善の策を考えよう

アイテム「フライングシュリンプ」&「沈滞の投網」

私の指揮下にある有翅エビたちの力を借りよう
みんな、金属製の網を持って上空待機、網は精一杯広げておいてくれ

さて、奇襲というからには手早く、ガツンとやるのが理想的だね

UC「水魔アプサラー召喚」

さあ、我が友よ、うまくやろう
アプサラーは水流を操る
水を召喚し、地面の小石を混ぜてなるべく細く勢いよく噴出させる
そう、ウォーターカッターを作るんだ

雪だるまを崩すには威力は十分だろう

さて、まずアプサラーがウォーターカッターで周囲をぐるりと攻撃
他の雪だるまが異変を感じたところで、上から投網で一網打尽といこう




 すすきの野原に立つ雪だるまの群れに向かっていくひとつの人影があった。
 夜闇に紛れ足音を殺しながら進むのは、茶色い冒険服を着た灰色の髪の男性。博物学者にして探検家として各地を放浪するゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)だ。

「奇襲と言えば火攻めだけど、ダメというなら次善の策を考えよう」
 探検家とは、最悪の事態に備えて常にいくつかの選択肢を用意するものだろう。ゲニウスの脳裏には、火攻めという効率的な手段の他にも打つ手がいくつか浮かんでいるようだ。
 そのうちの一つを実行しようと、ゲニウスは自らに従う有翅エビ――フライング・シュリンプたちに金属繊維で出来た投網『沈滞の投網』を持たせて上空に待機させる。

 丸い満月の浮かぶすすき野原。無数の雪だるまが立ち並ぶ上空を有翼のエビたちが飛翔する。
 他の世界では違和感この上ない情景だが、カクリヨファンタズムだと、この光景もありな気がしてくるので不思議なものだ。

「さあ、奇襲を開始しよう。目覚めよ、我が友アプサラー。君の力を今ここに」
 ゲニウスが飼育用の壺から召喚したのは、悪魔アプサラー。彼が幼少期に拾った、蒼い肌をした魚のような姿の水魔である。
「アプサラー、ウォーターカッターを作って攻撃だ」
 指示に従い、牙の並んだ口を開くアプサラー。そこから吹き出すのは勢いのある流水だ。
 水魔たるアプサラーは水を自在に操り、地面の小石を巻き込みながら細く鋭く絞った水を勢いよく発射した。

 水流の勢いで微細に砕かれた小石が混じった水のジェットが雪だるまに迫り――。
 ウォーターカッターの直撃を受けた雪だるまが身体を削られて崩れ去って行った。
『何ダルマ!? 敵襲ダルマ!?』
『とにかく反撃ダルマ!』
 まさか自分たちが襲われるなどとは夢にも思っていなかった雪だるまたちが混乱に陥る。
 適当な方向に雪玉を放つ雪だるまたち。だが、すすきに身を隠したゲニウスの方に飛んでくる雪玉は一つもない。

「アプサラー、敵を一箇所に集めるようにウォーターカッターで牽制してくれ」
『うわっ、避けるダルマ!』
 ジェット水流が雪だるまたちの周囲の地面を勢いよく削り取っていく。
 それに慌てた雪だるまがウォーターカッターから逃れるように後退し、一箇所に集められていった。――自分たちが誘導されているとも知らずに。

「よし、今だ!」
 ゲニウスが上空のフライング・シュリンプたちに合図を送ると、エビたちは広げていた投網を地上に向けて投下した。
 大きく広がりながら落下してきた投網は、一箇所に誘導された雪だるま軍団の上に覆いかぶさり、絡め取ってその動きを封じる。
『この網は何ダルマ!?』
『動けないダルマ!』

「よし、アプサラー、一気に一網打尽だ!」
 一箇所に集められて動けなくなった雪だるまたちに向かって、水魔が大きく口を開き――。
 そこから放たれた水流によって、雪だるまたちは粉々に砕かれていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スピカ・ネビュラスター
こっそり隠れてからの奇襲って、なかなかワルくていいよね
油断してる相手を逆にっていうのもポイントが高いかな

満月の明かりはちょっと邪魔だけど……油断した間抜けなら気づけないよね?

『ミューテーション・ダークマター』で全身を暗黒物質に変えるよ
そのまますすき野の影に紛れるように、雪だるまの足下に忍び寄ろうか

後は……やりたい放題だね
暗黒物質で包んで視界を塞いでもいいし
存分にウィッチクラフト(隕石とか重力とか爆発とか)をぶちかましてもいいし
悉く殲滅してあげるよ!

●デビルキングワールド出身の魔女
●ワルい事重視




 大きな満月が浮かぶすすき野に、もう一つの月が浮かんでいた。
 否、それは漆黒の魔女の帽子をかぶり同色の魔女服を着た可憐な少女、スピカ・ネビュラスター(銀河の魔女・f31393)が乗る蒼い魔星『アークツルス』だ。
 光のリングを持った魔星の上で白い髪をなびかせたスピカが、にやりと口角を上げた。
「こっそり隠れてからの奇襲って、なかなかワルくていいよね」
 デビルキングワールドでラスボスと呼ばれるスピカ。善悪の概念が他の世界と逆転した魔界においては、ラスボスとは恐ろしい姿をしているほど心優しい存在だという。
 だが、スピカは見紛うことなき美少女だ。それが意味することは――つまりは、そういうことである。
「奇襲しようと油断して無防備に身を隠している相手を逆に、っていうのもワル的にポイントが高いかな」
 魔界では『完全超悪』を為す魔女として尊敬を集めているスピカは、金色の瞳をきらーんと輝かせながら、音もなく魔星を進める。
 ――その先にいる雪だるま軍団たちは、自分たちを待つ運命を知らぬまま、すすき野に身を隠していた。

「ボクの身体は、宇宙を満たす暗黒へと変わる……」
 ミューテーション・ダークマターによって肉体を暗黒物質へと変異させたスピカ。空に浮かぶ満月の光すらも吸収する漆黒の物体となった身体で、すすきの影に隠れるように静かに雪だるま軍団の元へと向かっていく。満月に照らされるすすきの影と一体化したスピカに、雪だるま軍団たちは気づくことができない。
「さあ、ラスボスの本領を発揮してあげるよ」
『なっ、なんダルマ!?』
 暗黒物質で視界を封じられた雪だるまが狼狽の声をあげるが、もう遅い。
 その身体は暗黒物質によって徐々に押しつぶされていく。
『て、敵襲ダルマ!』
 慌てて仲間を呼ぶ雪だるま。
 それに応えて、周囲から雪だるまたちがわらわらと集まってくるが――。
『な、なにも見えないダルマ!?』
『おのれ、これでどうダルマ!』
 暗黒物質に覆われた空間に飛び込んできた雪だるまたちが混乱に陥りながら滅茶苦茶に刀を振り回す。
 しかし、暗黒物質となったスピカに刀が通じることはなかった。
「さて、ボクのウィッチクラフトを見せてあげよう」
 魔女たるスピカの全身――暗黒物質から魔力が迸ると、彼女の得意魔法が発動した。

 スピカの爆発魔法によって暗黒物質に覆われた空間内に激しい爆発が生じ、雪だるまたちが吹き飛ばされ粉々になっていく。
『い、一体何が起こっているダルマ!?』
「ボクは銀河の魔女スピカ。すすき野を燃やさないように手加減したから、一撃では全滅しなかったかな」
 スピカの可愛らしい声――だが、その内容は恐ろしいものだ――に、雪だるまたちは恐怖で身体が凍りつく。
 本能的にスピカには勝てないと判断した雪だるまたちは、とにかく暗黒物質の空間から逃げ出そうと外に向かって駆け出した。
『ぜ、全員、一時撤収ダルマ!』
「おっと、そうはいかないよ?」
 暗黒物質に覆われた空間内に、スピカの重力魔法による超重力が発生し、雪だるまたちの動きを止める。
『か、身体が重くて……動けないダルマ……!』
「くくく、知らなかったのかい? ラスボスからは逃げられないことを」
 底冷えするようなスピカの声とともに、上空から隕石が飛来し――暗黒物質に覆われた空間に落下した。

「ちょっとやりすぎたけど、それくらいの方がワルだよね」
 すすき野にできたクレーターを魔星の上から見下ろすスピカは、満足げな笑みを浮かべたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
お月見に雪ダルマ…後はスイカでもあれば四季が揃いそう…。
え?そういう問題じゃない…?

雪ダルマだし、結界に閉じ込めて火攻めにでもしちゃえば倒せそうだけど…火気厳禁なら仕方ないね…。

一応、逃げられたりすると面倒だし、戦闘域に呪術結界【呪詛、結界術、高速詠唱】を張って逃げられない様に囲んでおくよ…。

後は凶太刀の高速化と併せて、一体ずつ【神滅】で骸魂の核を斬り裂いて飲み込まれた妖怪を助けていくよ…。
わたしの神滅は肉体的なダメージを一切与えず、敵の核や力の源だけを斬り裂く技…。
物理的な防御や肉体強度はすり抜けて無視するし、肉体的に瀕死にならないから仲間も呼べないよね…。

お月見ならお団子欲しいな…




「お月見に雪だるま……後は桜餅とスイカでもあれば四季が揃いそう……」
 満月の輝くすすき野に林立する雪だるま軍団という季節感も何もあったものではない光景を眺め、銀髪の妖狐、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)が無表情に呟いた。
 魔剣や妖刀を祀る魔剣の巫女として露出度の高い白い巫女装束――九尾の羽衣を纏った璃奈は、ぼんやりと言葉を続ける。
「月見だんごに雪だるまアイス、桜餅とスイカ……美味しそう……」
 ――実は甘いものに目がない璃奈の頭の中では、四季折々の甘味が踊り狂っていた。

「っと、そういう問題じゃないよね……」
 危うく目の前の非現実的な光景から現実逃避しかけていた気持ちを、現実に引き戻す。
 そして、雪だるま軍団に対抗する策を考える。
「雪だるまだし、結界に閉じ込めて火攻めにでもしちゃえば倒せそうだけど……火気厳禁なら仕方ないね……」
 璃奈が巫女装束の懐から取り出すのは、数枚の呪符だ。
 結界術と呪術に優れた璃奈が作った呪術結界用のものである。
「一応、逃げられたりすると面倒だし、戦闘域に呪術結界を張って逃げられないように囲んでおくよ……」
 雪だるま軍団を取り囲むように放たれた呪符は、地面に五芒星の形を描き、広域に呪術結界を張り巡らせた。強大な呪力をもった呪術結界は、並のオブリビオンでは突破することは出来ない。こうして雪だるま軍団たちは結界の中に閉じ込められたのだった。

『さて、早く獲物が来ないダルマかね?』
 自分たちが狩られる側になったとも気付かず、雪だるま軍団はのんびりとすすき野に立ち尽くしていた。

「いくよ、凶太刀……」
 璃奈は腰に差した妖刀『九尾乃凶太刀』を引き抜いた。それは使い手に音よりも速い動きを与える呪力を秘めている。
 凶太刀を構えて音速を越えた速度で結界の中に飛び込んだ璃奈は、踏み込みの音が雪だるまに届く前にその刃を閃かせた。凶太刀から放たれるは『妖刀魔剣術・神滅』による、あらゆる防御を貫き、対象の核のみを斬り裂く秘剣である。
『な、なんダルマ!? ぐわああっダルマ!』
 雪だるまは身体に一切の傷を受けずに、オブリビオンの核となっている骸魂のみを斬り裂かれ――その身を善良な雪だるま妖怪へと戻していった。
「思ったとおり。骸魂だけ斬り裂けば、元に戻るみたい……。なら遠慮なく……」

 結界の中を、璃奈が縦横無尽に駆け巡る。
『い、一体、なにが起こっているダルマ!?』
 音速を越えた璃奈の動きに、雪だるま軍団たちはついてくることが出来ない。
 一太刀、また一太刀と凶太刀が振るわれるたびに、雪だるまの骸魂が消滅していく。これでは、雪だるまたちも仲間を呼ぶ余裕すらない。
「これで……最後……」
 凶太刀を振り抜いた璃奈の背後で、結界内の雪だるまの最後の一体がその核を斬り裂かれ――。
 結界内にいた無数の雪だるまたちが骸魂から解放されたのだった。

 璃奈は凶太刀を腰の鞘に収めると、すすき野にのぼる満月を見上げながら、小さく呟いた。
「お団子食べたいな……」

 ――残念、それは同じ戦場の別の依頼だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天星・雲雀
月を見ると、こーんと鳴きたく成ってうずうずする妖狐の本能は、ちょっと横に置いときますね。

いまは茂みに潜み、粉雪に飢えたハンターに身をやつし、雪だるまを解体します。
(いちご・メロンかき氷用シロップ持参)

解体するのは骸魂の分だけです。

上質の雪の塊ですね、オイルまみれのUDCアースの雪とは纏う冷気からして異なります。

冷気を辿って近づきます。

風になびいた芒の音が小さな足音を消してくれます。

『さあ、獲物たちよ、のこのことやってくるダルマ』
(獲物はダルマさん、あなた達ですよ♪)

声も静かに、UCで1体づつ解体していきます。

名月に、かき氷も乙ですね。




 すすき野にのぼる大きな満月。それを機械仕掛けの赤い瞳で見上げるのは、妖狐の少女、天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)だ。身にまとうのはフリルが多用された和風の給仕服であり、ツインテールにした黒髪に、満月の柔らかな光が反射している。
 月を見ることで湧き上がる、狐の鳴き声を上げたくなるという妖狐の本能を抑えつつ、雲雀はすすきの茂みに身を潜めていた。そう、今の雲雀は狩りに集中する飢えた野生の狐なのだ。その両手に持った、イチゴ味、メロン味、ブルーハワイといったかき氷用のシロップがそれを証明している。
 ――かき氷?

「この冷気、相当上質な雪の匂いですね。オイルまみれのUDCアースの雪とは全く違う純度を感じます」
 雲雀は妖狐としての優れた嗅覚で、自然豊かなカクリヨファンタズム産雪だるま軍団を分析する。
 その匂いは、まるで前人未到の南極点の雪を使って雪だるまを作ったかのような清純さだ。
 思わず、雲雀の口から、じゅるり、という涎の音が聞こえてくる。
 ――だが、その音は、風になびくすすきの音にかき消されていった。

『さあ、獲物たちよ、のこのことやってくるダルマ』
 月見にやってくる妖怪たちを奇襲しようとしている雪だるま軍団。
 だが、まさか自分たちを狙う狩人が音もなく近づいてきているとは想像もしていない。
(獲物は雪だるまさん、あなたたちですよ♪)
 雪の匂いを頼りに雪だるまたちに接近していく雲雀は、不敵な笑みを浮かべると、その指を複雑に動かした。指先から放たれるのは、光の粒子を凝縮した操り糸だ。
 目に見えない繰り糸は雲雀の視線の先に立つ雪だるまに命中するとその身体を斬り裂いた。オブリビオンの核となる骸魂を消滅させられた雪だるまが鋭利な断面を見せてバラバラに崩れ去る。残されたのは、ただの雪の山だけだ。

 ――だが、仲間の雪だるまが解体されたことに、他の雪だるま軍団たちは気が付かない。
 雪だるまが崩れ去る音は、すすきが風に揺れる音にかき消されたのだ。

『今、何か聞こえたダルマ?』
『いや、気のせいじゃないかダルマ?』
 雪だるま軍団たちは、まさか襲撃者がいるなどとは思わず油断したままだ。
(その油断が命取りですよ――)
 笑みをたたえた雲雀は再び指を操ると、不可視の操り糸で一体、また一体と雪だるまたちをバラバラに解体していく。

『あれ、そういえば他の仲間はどこにいったダルマ?』
「あなたが最後の獲物ですよ」
 最後の一体となった雪だるまの背後に雲雀が音もなく立つと――雪だるまの全身に光の糸を絡みつかせ、勢いよく指を引いた。
『な……身体がズレていくダルマ……!』
 光の糸によって全身を切り刻まれた雪だるまは、骸魂を失い、そのまま上質な雪の山へと姿を変えたのだった。

「さて――名月にかき氷も乙なものですね」
 雲雀は新鮮な雪にシロップをかけると、思う存分、特上のかき氷を味わうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月16日


挿絵イラスト