大祓百鬼夜行⑧〜まぼろし橋の爆弾魔
●まぼろし橋にて
カクリヨファンタズムの川に突如として出現したまぼろし橋。
その橋の中央に陣取るのは、輝く銀色のプレートアーマーを身に纏う騎士。
騎士には頭部がなく、長髪の美しい女性の頭部を腕に抱えている。
西洋妖怪デュラハン。東洋妖怪の「小玉鼠」の骸魂に呑まれる前は、戦場を一人で戦い抜き、領民たちを命懸けで守ったという逸話もある、一騎当千の誇り高き女騎士だ。
しかし、彼女は骸魂に呑み込まれ、誇り高き騎士道精神を失っていた。今の彼女の武器は「剣」ではなく、自らの「頭部」だ。
「フハハハハッ!私のために、木っ端微塵に吹っ飛び給えよ!」
橋の上を不気味に飛び回る女の頭部の群れ。そのうちの二つが衝突し、爆発が起こる。吹き荒れる爆風とともに、頭部を構成していた血肉が周囲に飛散する。
頭部が爆弾と化したオブリビオン・デュラハン小玉鼠。彼女は将来、「爆弾魔」と呼ばれ、多くの妖怪を黄泉へと送り出すことになるのだった……。
●グリモアベースにて
「……この世界では、最悪のシナジーがよく起こるものよね……」
グリモア猟兵の紡木原・慄(f32493)は小さくため息をつくと、集まった猟兵たちを見回し、口を開く。
「今回、皆さんに向かってもらうのは、カクリヨファンタズムの『まぼろし橋』。そこを占拠しているオブリビオンを止めてください!」
カクリヨファンタズムのとある川の上に時折現れる「まぼろし橋」。
その橋を渡った先には死後の世界、「黄泉」があるという。
何のために現れるのか。幽世の妖怪たちを黄泉へと誘うためであろう。
幽世での生活に行き詰まった妖怪たちが黄泉での安寧を求め、密かに渡っているとの噂もある。そんないわくつきの場所だ。
まぼろし橋は、いわば黄泉に最も近い橋。そして、黄泉に旅立った思い人に未練を抱えた者を引き寄せる場所でもある。
そこに目をつけたのが件のオブリビオンだ。橋の前を通りかかった妖怪たちに『死んだ思い人の幻影』を見せ、橋に引き込こみ、殺そうとしているのだという。
「まぼろし橋の中に足を踏み入れた瞬間に、周囲は外界と隔絶された『超空間』になるわ。この空間から外に出るには、そのまま黄泉へと旅立つか、その空間にいるオブリビオンを倒すしかないの……」
ところが、そのオブリビオンは、爆弾と化した頭部を投げて攻撃してくる厄介な敵だ。しかも、戦うのは「狭い橋」の上だ。
「橋の上には遮蔽物もないし、爆弾が飛んできても逃げる場所は皆無に等しいわね。オブリビオンは橋の中央部に陣取って、橋を渡ってくる者に爆弾攻撃を仕掛けてくるはず。完全に地の利は向こうにある。普通に戦えば不利な戦いを強いられるわね……」
困難な戦いに赴く猟兵たちのことを思い、慄は眉をひそめる。だが、彼女は猟兵たちの実力を信じているようで、そんなに不安げな様子ではない。
「危険な敵だけど、このオブリビオンも元は善良な妖怪よ。一人でも被害者を出してしまえば、その妖怪に殺害の罪を背負わせることになるわ……」
たとえ骸魂から解放することができても心に大きな傷を残すことになる。
そうなれば今度は彼女自身が「まぼろし橋」を渡ってしまうかもしれない。
その前に絶対に救わなければならないのだと、慄は真剣な顔で訴え、祈るように手を組んで目を閉じ、猟兵たちを送り出すのだった。
刈井留羽
こんにちは。刈井留羽です。戦争シナリオ(一話完結)をご提供します。
さて、今回は西洋妖怪のデュラハンが、爆発する鼠の妖怪の「小玉鼠」の骸魂に呑み込まれて誕生した「デュラハン小玉鼠」との橋上での戦いです。
まぼろし橋は中央に向かって緩い勾配のあるアーチ橋(太鼓橋)で、幅は片側一車線の道路くらいです。
というわけで、プレイングボーナスは【狭い橋の上でうまく戦う】ということになります。
以下はこのシナリオでのみ適用される設定です。
(他シナリオでの再現性は保証されません)
●デュラハン小玉鼠
通常攻撃では手元に召喚した「頭部の爆弾」を投げたり転がしたりしてきます。
接近戦では手に持った炎の鞭のような武器を使います。
爆弾は衝撃を加えるか、着火するかのどちらかで爆発します。遠隔起爆はできません。
頭部が爆発すると爆風(熱と衝撃波)が生じ、肉片や血液を飛び散らせます。
デュラハンの鎧は対爆性能が高いようです。
※技能名【爆撃】は「通常攻撃で頭部の爆弾を投げて攻撃するときの、爆発の威力に影響する技能」と定義します。
なので、POWのユーベルコードでは投げた爆弾が通常の10倍以上の威力で爆発することになります。
●フィールド
まぼろし橋は不思議な力に守られているので、爆弾やUCで壊れることはありません。
まぼろし橋には大人の胸くらいの高さの欄干があります。
川の流れはそれほど急ではないので歩いて川を移動することも可能です。
まぼろし橋の周囲は、外界と隔絶された超空間となっているので、あまり高くは飛べません。敵が視認できないくらいの高さからの攻撃はできないと思います。
プレイングはシナリオ公開後すぐに受付開始。受付状況はタグでお知らせします。
戦争シナリオなので3〜5日程度を目安に完結を目指します。
シナリオ公開から3日後以降にいただいたプレイングは不採用になる可能性が高いのでご了承ください。
第1章 ボス戦
『デュラハン小玉鼠』
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POW : 大爆破
技能名「【爆撃 】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD : 多爆破
自身が装備する【爆弾と化した自身の頭部 】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 誘爆破
攻撃が命中した対象に【爆弾と化した自身の頭部 】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【他の頭部達が集まってきて誘爆】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:白漆
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ピオネルスカヤ・リャザノフ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
黒木・摩那
デュラハン小玉鼠。爆弾魔なのは百歩譲っていいとして、自分の頭を爆弾にするのはいかがなものでしょうか。
もうスプラッターな景色しか思い浮かばないです。
このままでは橋の上の惨劇は必至です。
防ぎましょう。
まずはマジカルボード『アキレウス』を立てて、盾代わりにします。
ボードの耐爆性能に期待です。
さらにUC【暗黒球雷】でエネルギー吸収球をボードに集めて、爆発エネルギーを吸収します。
ボードを避ける頭部はヨーヨー『エクリプス』で迎撃【武器落し】します。
爆発のエネルギーが溜まったところで反撃開始。
ボードに乗ってデュラハンに突撃からの【シールドバッシュ】で、自分の頭達ごと爆発してもらいます。
まぼろし橋に足を踏み入れた黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)を、出迎えるように飛んでくる『デュラハン小玉鼠』の生首。
それは彼女の前方の橋板の上に落下し、爆ぜた。静謐な空気を切り裂くように放出される熱を帯びた衝撃波。
その余波は離れたところに立つ摩那にも届き、熱気を帯びた風が彼女の長い髪をなびかせる。
爆発の威力は予想以上に凄まじい。このオブリビオンを放置していたら、橋の上は惨劇の舞台となるのは必至だろう。
それは防がなければならない。摩那はまだ敵の姿が見えぬ橋の先を見据え、盾代わりのマジカルボード『アキレウス』を構えて歩き出す。
すると、放物線を描き、生首が次々に飛来する。それは箒星ように火のついた頭髪を引きずりながら飛翔し、前方に次々に投下される。地面に叩きつけられた爆弾は賑やかな破裂音を奏で、爆風が吹き荒れる。摩那はそれを正面に構えたアキレウスの盾で防ぎながら、少しずつ前進していく。
アキレウスは耐火対爆性能が高いボードだ。多少の爆風はものともせずに防いでくれる。
しかし、オブリビオンに近づくごとに爆撃の激しさは増していき、摩那は次第に余裕がなくなっていく。
突然、低い弾道で二つの生首が飛来する。不意打ちの爆撃を受けそうになり、咄嗟に後方に飛び退く摩那。間一髪、直撃を回避すると、彼女は激しい爆撃に対処するために、さらなる一手を打つ。
周囲の空間が歪み、空間を転移してくる手のひらサイズの暗黒球の群れ。それはアキレウスに集合し、その表面を覆い尽くす。
すると、狙い澄ましたかのように再び生首爆弾が飛来し、アキレウスを直撃する。
衝撃で爆弾が炸裂し、激しい爆風が生じる――はずなのだが、それはすべて暗黒球へと吸収され、摩那は全くの無傷だ。
ユーベルコード・暗黒球雷(スフェール・テネブル)。空間転移で呼び出した暗黒球は不可視のエネルギーさえも吸収し、そのエネルギーで術者自身を強化する。つまり、摩那はこの「吸収球」でアキレウスの盾を覆うことで、対爆性能を飛躍的に高め、同時に戦闘力を増強する手段も得たというわけだ。
(どうやら爆発のエネルギーも問題なく吸収できるようですね。このまま一気に距離を詰めましょう!)
アキレウスの対爆性能と吸収球の検証が終わり、爆撃への対処は万全だと判断した摩那は、速度を上げて前進する。すると、不意に前方に落下する爆弾に混ざり、彼女の頭上を越える爆弾が飛来する。
前方に落下する爆弾と、摩那を飛び越えて後方に落下する爆弾。二つの爆弾を近距離で同時に炸裂させ、前後の爆風で挟み撃ちするつもりなのだ。
アキレウスで守れるのは一方向のみ。挟み撃ちされたらひとたまりもない。
摩那は咄嗟に超可変ヨーヨー『エクリプス』を取り出し、ワイヤーで繋がれた超頑丈な車輪を素早く放つ。
空中で爆散する女騎士の頭部。陰惨な花火が上がり、事なきを得た摩那は、アキレウスの盾による防御とエクリプスによる迎撃を駆使し、危なげなく爆撃の中を駆け抜ける。
そして、ようやく彼女の視界に現れるオブリビオン、『デュラハン小玉鼠』。
(ちょうど爆発のエネルギーが溜まったところですし、反撃開始です!)
敵を視認したところで摩那は即座に判断し、盾にしていたアキレウスに飛び乗って突撃を開始する。
急に距離を詰められ、なりふり構わず爆弾を放り投げるデュラハン。だが、発射地点が見えればその弾道も予測しやすい。摩那はマジカルボードに乗って爆弾をスイスイと避けながら突進していく。
「おのれ! なぜ当たらんのだ!」
業を煮やしたデュラハンは前方に生首をばら撒き、その中央に起爆用の爆弾を投げ込む。複数の爆弾による誘爆攻撃。前方に立ちふさがるのは壁のような爆発だ。
それでも摩那は怯まない。彼女は後方に体重を移動し、ボードを垂直に立てる。
吸収球で覆われたアキレウスの盾が爆風の壁にぶつかり、そのエネルギーが吸収される。そのまま爆発の余波で発生した上昇気流に乗り、高く飛び上がった摩那は、両手に生首を複製している最中のデュラハンに向かって急降下し、ボードの裏を叩きつける。それはアキレウスの盾による強烈なシールドバッシュ。さらに両手の爆弾が起爆し、デュラハンの体に苛烈な熱と衝撃波が降り注ぐ。
「ぐわああああ!」
自らが生み出した爆発エネルギーをまともに喰らい、遥か後方へと吹き飛ばされていく女騎士。摩那はボードで衝撃を吸収し、難なく着地する。
「うぐっ……今のは効いたぞ……だが、まだ私はこのままでは終わらん、終わらんぞ!」
大きな損傷を受けながらも立ち上がり、自らの頭部を両手に複製するオブリビオン。かくして再び戦端が開かれ、摩那は爆発に対処すべく、再びアキレウスを構えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
同じ騎士の道を志すモノとして、骸魂による変節を見逃す訳には参りません
かの騎士の名誉と尊厳を護る為にも…
お相手いたしましょう
爆風への逃げ場無き戦場…ええ、騎士として望む所です
避ける余地が無ければ、耐えて進みましょう
過酷な状況にこそ、私のような種族が望まれたのですから
怪力で大盾構え爆発を盾受け
UCの出力向上も活かし爆風の中を猛然と突き進み接近
爆風による●目潰しはこちらのマルチセンサーでの●情報収集で把握
敵の挙動を●見切り、脚部スラスターをごく僅かに噴射する●推力移動で間合い詰め接近戦
鞭は剣の武器受けで絡めとり手首関節を360度高速回転
巻き取って武器落とし
今、骸魂より解放いたします
ご容赦を!
剣を一閃
まぼろし橋の中央から放物線を描いて飛来する爆弾は、次々に橋板へと着弾し、周囲に熱風と衝撃波を撒き散らしていく。
間断なく空爆が続けれる狭い橋上。そこは絶えず爆風が吹き荒れ、血と肉片が降り注き、猛烈な熱気が立ち込める、逃げ場なき戦場だった。
そんな過酷な状況で戦うことを志願したトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、優しく誇り高き騎士と冷たい戦闘機械との狭間で複雑な思いを抱えながら、身の丈ほどの大盾を正面に構え、橋上を猛然と突き進む。
すると、行く手を阻むように、生首の爆弾が低い弾道で次々と飛来する。
それでもトリテレイアは怯まず、凄まじい強度を持つ超重量級の大盾で爆弾を正面から敢然と受け止め、爆風を力づくで押し返しながら、強引に進んでいく。
激しい爆撃で巻き上げられた粉塵が視界を塞いでも、トリテレイアの全身に散在し、魔力以外のすべての情報を収集する「全環境適応型マルチセンサー」が視界不良を補う。赤外線、音波、空気の流れ、磁気など、可視光線の代替となる情報はいくつも存在する。
要するに、彼はセンサーで得た様々な情報をコアユニットに集積することで、盤石の行軍を実現させているのだ。
「どうして、こやつは止まらぬ、止まらぬのだ!」
苛烈な空爆にも全く動じずに行軍を続ける巨躯の騎士に業を煮やしたデュラハンは、高速で複製した生首を間髪入れずに投下し始める。それは狙いを定めずに、広範囲を爆撃するいわば「絨毯爆撃」だった。
そして、トリテレイアへと突然、豪雨のように降りそそぐ生首爆弾。度重なる爆撃で、彼が持つ「重質量大型シールド」のフレームは歪み、胸部装甲も軋み始めている。だが、トリテレイアは全く動じることはない。彼は爆発で飛び散る生首の返り血を浴びながらも、力強く突き進んでいく。
嵐のような爆撃の中でも着実に歩みを進めるその姿は、まさにトリテレイアの「騎士道」を体現してるようでもあった。
(同じ騎士の道を志すモノとして、骸魂による変節を見逃す訳には参りません。かの騎士の名誉と尊厳を護る為にも……)
この爆撃を正面から乗り越え、オブリビオン化した憐れな騎士を、骸魂から解放する。それは同じ志を持つ騎士としてふさわしい行いだ。このとき、トリテレイアのユーベルコードは既に発動していた。オース・オブ・マシンナイツ。それは彼が理想とする騎士の姿を体現することで身体能力を強化し、激しい空爆の中でも行軍する力を与えているのだった。
そして、爆撃の嵐を乗り越えたトリテレイアのセンサーが『デュラハン小玉鼠』を捉える。
爆撃のために生首を複製するデュラハン。トリテレイアは脚部メインスラスターを噴出し、騎士剣を抜いて盾を構えたまま弾丸のように間合いを詰めていく。
だが、彼が間合いに入る直前、デュラハンは後方に飛び退きながら、地面に向かって生首爆弾を投げつけた。
ドゴッ。両者の間に起こる大きな爆発。間髪入れずに蒼い炎の鞭が一直線に向かってくる。それを脚部スラスターの僅かな噴出で、難なく回避するトリテレイア。
そして、二人は少し離れて間合いを取り、対峙することとなった。
「ほう、鈍重な見た目のわりに、なかなか素早い動きをするではないか。だがまだ遅い!」
デュラハンは称賛の言葉を発しながら、再び爆弾を地面に投げ、後方に飛ぶと、距離を詰めようとする相手を牽制するように蒼い鞭を放ち、素早く左右に不規則に動きながら、翻弄するように爆弾と鞭の攻撃を繰り出す。
それは相手の間合いを把握し、決定機を与えない戦術的な動きだった。
対するトリテレイアは相手の動きをセンサーで把握し、冷静に分析をしていた。
間合いを取るための爆弾攻撃と、相手の動きを牽制する蒼い炎の鞭による連携。
左右に揺さぶるような不規則なステップと、間合いを取るときの素早いバックステップ。
そして、攻撃の起点となるのが、大きな爆発と、蒼い炎の鞭だ。
(今です!)
大爆発の後、猛烈な爆風の中を飛んでくる蒼い炎の鞭に向かって、剣を突き出すトリテレイア。
ガシッっと鞭が剣に当たり、蛇のように絡みついた刹那、トリテレイアの手首が360度高速回転する。そのままウインチのように鞭は絡め取られ、無防備になるデュラハン。奪った鞭を橋の下へと投げ落とすトリテレイア。
(今、骸魂より解放いたします。ご容赦を!)
そして、トリテレイアは、スラスターの噴射を全開にして瞬時に間合いを詰め、騎士の剣がデュラハンの体を一閃するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
パルピ・ペルポル
橋渡らせたらそのまま黄泉行きだから爆破はしなくていいのに。
いや、爆破したいがメイン目的になってるのね…やっかいな。
わたしにとっては広さは申し分ないのだけれど、遮蔽物がないのは面倒ね。
エプロンのポケットから徳用(巨大)折り紙を通常サイズに切って作った万羽鶴を周囲に展開して目くらましにするわ。
直撃はともかく爆風だけならすぐに燃えたりしないわよ。
視界を妨げてる間に欄干に姿を隠しつつ、橋の外側を通って敵に接近して。
雨紡ぎの風糸と穢れを知らぬ薔薇の蕾でがっちり本体の動きを拘束しましょう。
そして残ってる万羽鶴をすべて敵に突撃させるわ。
派手な爆発は折り鶴を盾にした上で古竜の骨のマン・ゴーシュで防ぐわ。
まぼろし橋の橋上には、無数の折り鶴が乱舞していた。
その数、一万羽。遠くから見たシルエットは小鳥の群れだ。
一万羽の小鳥が突然、視界に出現した。ここは外界から隔絶されたまぼろし橋だ。奴らは一体どこから現れたのか。しかも小鳥たちは橋の中央部に立つ「デュラハン小玉鼠」へと少しずつ近づいてくる。
それは警戒心を抱かせるのに十分な「脅威」だった。
そして、デュラハン小玉鼠は小鳥の群れを迎撃するために、爆撃を開始する。
「陽動は上手く行ってるようね。このまま見つからないように移動できればいいんだけど……」
欄干の陰から少し顔を出し、爆撃の様子を確認したパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は目立たぬように息を潜めながら、欄干の外側の細い道を慎重に移動する。
フェアリーのパルピの身長はわずか24cm。こっそり隠れて移動するのも難しくはないだろう。
とはいえ、相手はオブリビオンである。猟兵たちの気配を過敏に察知する者も多い。気づかれて爆撃を受けたらひとたまりもない。
そこで、パルピはエプロンのポケットから取り出した特大の折り紙セットを何枚か使って相手の注意を引きつける「万羽鶴」を事前につくり、それをまぼろし橋に到着してすぐに展開させたというわけだ。
その作戦は功を奏し、パルピは折り鶴の群れと生首の爆弾が戯れる様を横目で見ながら平穏に橋を渡り、ついにデュラハン小玉鼠の元へたどり着く。
デュラハン小玉鼠は両手に髪が長い女性の頭部を生み出し、目前に迫っている万羽鶴に向かって放り投げていた。
しかし、難燃性の折り紙で作られた折り鶴はそれほど減ってはいない。
「ええい、なんなのだ。あの鳥どもは!」
デュラハン小玉鼠はパルピの身長の10倍近くはある巨体を苛立たしげに揺らし、周囲には目もくれずに折り鶴たちに殺気を向けていた。
「わたしの存在に全然気づいてないわね。我ながら目立たなすぎよね……」
誇らしげとも、自嘲ともとれる言葉をつぶやきながらも、パルピは「仕込み」を開始する。
まず彼女がポケットから取り出したのは「雨紡ぎの風糸」だ。オブリビオンでも捕獲できるほどの高い強度と柔軟性を兼ね備えながらも、蜘蛛の糸よりも細くて透明な糸。パルピはそれを念動力で巧みに操作しながらデュラハンの周囲に網のように張り巡らせ、さらに欄干に「白い薔薇の蕾」を目立たぬように飾っていく。
そして、仕込みを終えたとき、近距離で爆発が起こる。
パルピは咄嗟に古竜の骨のマン・ゴーシュを構えて爆風を凌ぐも、相手に位置がバレているのは明らかだった。
彼女は覚悟を決めて欄干から飛び降り、デュラハンの正面に堂々と立ちふさがる。
「ほぅ、随分小さい客だな。あの鳥どもも、お前の差し金か……」
「そうよ。アンタなんか、わたしが倒してやるんだから!」
「ハハハッ。そんな小さき体で、私を倒すとは笑止千万! ジワジワといたぶってくれるわ」
小さき者を心の底から侮蔑するように言い放つと、デュラハン小玉鼠は蒼い炎の鞭を振るうために腕を振り上げる。
すると、周囲に張り巡らしておいた雨紡ぎの糸の網が一斉に動き、その体を拘束していく。
「ぐぬっ、なんだこの糸は! だが、こんなもの!」
デュラハン小玉鼠は見えない糸の存在にようやく気づき、力づくで引きちぎろうとする。
「甘いわよ!」
欄干に飛び乗ったパルピは、欄干の上に飾った「穢れを知らぬ薔薇の蕾」をけしかける。鎧の騎士の四肢に向かって先陣を切って伸びた茨が、両腕と両脚に巻き付き、強く締め付ける。さらに、複数の茨が伸び、鎧の上から胴体を捕縛していく。
糸と茨の二重の拘束が完成すると、デュラハン小玉鼠はもがくことすらできなくなった。
「アンタ、わたしが小さいと思って舐めてんだろ! 小さき者を馬鹿にした報いをたっぷりと味わわせてやるよ!」
怒声とともにパルピが空中の折り鶴たちを指を差すと、彼女のユーベルコード、「小さき故の利点」が発動し、空を浮遊していてた折り鶴たちに力が宿る。そして、折り鶴の群れが巨大な滝のように急落下し、デュラハン小玉鼠に襲い掛かった。
「ぐぁああああ!」
「まだまだ、終わらないわよ!」
パルピは絶叫するデュラハン小玉鼠に鋭い視線を向け、折り鶴たちを操り、さらなる追撃を放つのだった。
大成功
🔵🔵🔵
日紫樹・蒼
性格:弱気
性質:ヘタレ
※どんな酷い目に遭っても構いません
「狭い橋の上で、爆弾を避けながら戦わないといけないなんて!
爆弾の炎なら得意の水魔術で消せるはず……と思いきや、蒼の魔力が弱過ぎて、全く効果はない模様
狭い橋の上では逃げ場もなく、簡単に爆撃でやられるでしょう
しかし、その瞬間にUC発動!
爆風が晴れたところに現れたのは、蒼の身体を抱えた水影の女悪魔ウェパル!
『うふふ……やったと思った? それって、こういう場合は負けフラグよ♪
満身創痍な蒼の身体を、相手に向かって全力投擲!
狭い橋の上、意表を突いた反撃なら避けることもできないはず!
『さあ、必殺の人間爆弾を受けなさい!
「うわぁぁぁん! 殺されるぅ!
雨のように降りそそぐ女性の頭部。火のついた長い髪を振り乱しながら、次々と空中を依頼する姿はちょっとしたホラーだった。
「ひぃぃ! 女の人の生首がぁぁぁぁ!」
カフェーのメイド服姿の日紫樹・蒼(呪われた受難体質・f22709)は、まぼろし橋に足を踏み入れて早々、ビビりまくりだった。
ドガーン。落下した生首が橋板にぶつかった衝撃で起爆し、大爆発が起こる。
「わぁああ! 生首が爆発したぁぁああ!」
爆風を避けるように頭を抱えてうずくまる蒼。ただでさえ怖い生首が爆発するなんて、信じられない。
「狭い橋の上で、爆弾を避けながら戦わないといけないなんて!」
ものすごく怖い。今回の依頼は「死にそうな目に遭いそうな依頼ランキング」で上位にくるだろう。死にたくない。絶対に死にたくない。逃げ出したい。今すぐ逃げ出したい。でも……逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!
頭を抱えていた蒼は決然と立ち上がり、真剣な目で橋の先を見据える。
そう、僕には戦う理由があるんだ。ここで逃げれば、「影朧(オブリビオン)を倒し続けないと死ぬ呪い」によって、遅かれ早かれ死ぬ運命にある。
それならたとえ死ぬような目に遭っても、今日もなんとか生き残ろう。
「よぉし、いくぞぉ……」
そして、蒼はちょっと男らしく声を出し、半べそをかきながらも橋の上を駆け出した。
そんな彼に、生首の爆弾が容赦なく降ってくる。ドカン、ドカン、ドカン。行く手を遮るように前方で連続して爆発が起こり、猛烈な爆風が押し寄せてくる。
「ダメだぁぁ! やっぱり無理でしたぁああ!」
2コマ漫画のオチの如く叫び、頭を抱えてしゃがみ込む蒼。
それでもなんだかんだで立ち直りが早い蒼は、ピコーンと打開方法を思いつき、すぐに立ち上がる。
「そうだ! 爆弾の炎なら得意の水魔術で消せるはず!」
思い立ったら即行動。蒼は手のひらに意識を集中し、水の魔力を集め、上空から飛来してくる生首の髪(導火線)に向かって放つ。
だが、手のひらから放たれるのはシャワーのような弱々しい水流。それは緩い放物線を描き、前方2メートル付近の橋板を濡らすだけだ。当然、生首は火がついたまま蒼の元へと飛んでくる。
ドゴーン。生首爆弾の直撃を受け、大爆発が起こる。爆風で空高く打ち上げられる蒼。そのまま彼は地面へと落下していく。そのとき、彼が肌身離さずつけている黄金の腕輪がキラリと輝いた。
「終わったな……ぬるい戦いだった……」
遠方で見ていたデュラハン小玉鼠は、侵入者の排除の成功を確信する。
ところが、爆風が晴れると、一つの人影が無傷で立っていた。それは蒼が戦闘不能になったと同時に、自動召喚された水影の女悪魔『ウェパル』だった。ウェパルの手には満身創痍の蒼が抱かれている。いわゆる「お姫様だっこ」だ。
『うふふ……やったと思った? それって、こういう場合は負けフラグよ♪』
そして、ウェパルは蒼を頭上へと高々と持ち上げる。蒼の脳裏をよぎる嫌な予感。このパターンは……。
『さあ、必殺の人間爆弾を受けなさい!』
「え? ちょっと、いきなりなにす……やめてぇぇ!!」
蒼が上げる悲痛な声を無視して、容赦なくブン投げるウェパル。蒼は避けられぬ運命を呪いながら人間爆弾と化し、低い弾道で飛翔する。
「うわぁぁぁん! 殺されるぅ!」
そして、人間爆弾は自分の不幸を呪うような言葉を発しながら、完全に意表を突かれたデュラハン小玉鼠に突き刺さり、小玉鼠の骸魂に致命的なダメージを与えるのだった。
●女騎士デュラハンの帰還
猟兵たちの決死の突撃により、まぼろし橋を占拠していたデュラハン小玉鼠は打倒され、小玉鼠の骸魂は女騎士デュラハンの体から離れ、骸の海へと還っていった。
そして、残された女騎士デュラハンは、戦いの疲労を癒やしている猟兵たちに恭しく敬礼をする。骸魂から解放された彼女は、誇り高き女騎士の風格を取り戻し、再び仲間のために戦うことになるのだろう。
こうして、まぼろし橋はひとまず平穏を取り戻し、幽世の生活に疲れ、黄泉での安寧を求める妖怪たちを待つことになる。
猟兵たちは、まぼろし橋の役割がいつかなくなる日が来ることを願わずにはいられなかった。
大成功
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