7
大祓百鬼夜行⑧〜あいたいして

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#カクリヨファンタズム
🔒
#大祓百鬼夜行


0




●あい、たいして
 あいたい。
 アイタイ。
 会いたい。
 逢いたい。
 遭いたい。
 遇いたい。
 愛たい。
 哀たい。
 相対。
 Iたい。

 そのあいに何が篭っている? そのあいには何がある?
 夜が来る。あなたにあいに。

 目を伏せればほうら――。

 嗚呼、やっと。あえた。

●相対して
「カクリヨファンタズムにあるまぼろしの橋ってご存知ですか」
 此方の橋のことなのですけれど。琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)の手の上で新緑の若葉から照らされた光が映し出したのは紅い橋。幅は狭くてきっと二人ぐらいしか入りそうにないその橋には、死んでしまった人に会えるのだという。
「死んだ人に会いたいですか」
 静かな空間に琴子の言葉が響き渡る。
「話したいことはありますか」
 琴子の目は真っ直ぐに猟兵たちを見つめていた。
「橋は、渡ってしまえば黄泉の国へと向かって行ってしまうそうです。なので、渡る事はできません」
 わざわざ危ない橋を渡る人もいないでしょうと目を細めて溜息を一つ零した琴子の言葉は悪気のないもの。そして、自分の目の前でそうされても助けることができないのだからしないでほしいという心配のものだった。
「夜が明けるまではお話できるそうです」
 一体何を話すのか。少し考えておくといいかもしれないと一言添えた。
 ――時と言うのは残酷で、あまりにも短い。余程会いたかった人に、ものに、会うのならばその時間は夜が明けるまでとは言えども足りないかもしれない。
「よく、考えておくといいかもしれません」
 時よ止まれ。それで世界が滅ぶ世界。時を止まって欲しい、と願うのは簡単だ。けれど有限だからこそ美しいものもそこにはあるかもしれない。

 ねえ、あなたなら何を話す?

 少女の掌の上に乗った新緑の若葉はくるりと回って、猟兵たちを導いていく。


さけもり
 数多くのシナリオからOPをご覧下さって有難うございます。さけもりです。
 此方のシナリオは断章追加無しで公開直後からプレイングを受け付けております。
 締切に関しましてはプレイングの集まり具合で早々に締めてしまう場合がございます。
 詳細はMSページ・タグ、Twitterをご確認下さい。

 此方のシナリオは戦争シナリオとなり1章のみで完結となります。
 又、此方のシナリオにはプレイングボーナスがございます。

 プレイングボーナス……あなたの「想い人」を描写し、夜が明けるまで語らう。

 此方の想い人ですが、どのような人。性格。喋り方、どのような関係だったのか。記載をお願いします。
 記載のない場合にはプレイングをお返しする可能性が高いのでご了承お願い致します。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
69




第1章 日常 『想い人と語らう』

POW   :    二度と会えない筈の相手に会う為、覚悟を決めて橋に立つ。

SPD   :    あの時伝えられなかった想いを言葉にする。

WIZ   :    言葉は少なくとも、共に時を過ごすことで心を通わせる。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マリアドール・シュシュ
連携×

想い人:マリアの育て親2人
名はベルラ
一角獣の男獣人
堅物の軍人
藁色の長髪
マリアが頑固な所はベルラ譲り

名はクレーティア
女人魚
白磁色の長髪

故郷はA&W
剣と宝石の国
故郷の紛争で幸せ崩壊
育て親達が自分を庇い目の前で死亡
以降悲しい記憶は忘れてたが宿敵戦を経て全て思い出す

ベルラ!クレーティア!逢いたかったわ(抱き着く
「久しいなぁ、マリア」
『マリー、大きくなったわね』
マリアね、ちゃんと思い出し…っ(涙

友達が沢山出来た事や好きな人が出来た事、強くなった事話す

もうお別れなの…?
『私達はいつでもマリーの心にいるわ』
「あぁ。俺もだ」
二人の温もりが懐かしい
最後にオカリナ奏でるベルラと歌うクレーティアの子守歌を聞く



●逢いたい
 かつり、ヒールを鳴らして紅の橋へ足を踏み入れればそこには入るはずの無い、会いたかった二人の姿が見える。マリアドール・シュシュ(華と冥・f03102)の星芒の眸が橋の上に佇む男と女を捉えれば、マリアドールの目は丸くなって。次第に足は軽くなり、ヒールの音が狭まって二人の元へと駆け寄って抱き着いた。
「ベルラ! クレーティア!」
 ――アックス&ウィザーズにある剣と宝石の国。そこでマリアドールは生まれ育った。華水晶より産まれた彼女に産みの親はおらず、育ててくれたのはベルラとクレーティア、二人の育ての親だった。
 一角獣の獣人、優しい藁色の長髪のベルラ。規律を重んじる軍人らしくも、一度これと決めたら譲らないマリアドールの頑固さは父代わりの彼譲りで。
 美しい白磁色の長い髪、下腹部から魚の尾鰭を持った女人魚のクレーティア。大海よりも広い世界があると母代わりは教えてくれた。
 どちらもマリアドールにとっての、家族で、親。それなのにどうして忘れてしまっていたのだろう。ああそうだ。幸せに暮らしていた筈だった。
 だけれど故郷は紛争に巻き込まれてしまって。ああそれから。目の前でベルラとクレーティアは自分を庇って。それから。――悲しいから、寂しいから、辛い記憶に蓋をした。
「逢いたかったわ!」
「久しいなぁ、マリア」
「マリー、大きくなったわね」
 頭を撫でる大きな手。肩を抱く細い手。何一つ、あの頃と変わらないものだった。
「マリアね、ちゃんと思い出し……っ」
 眸から真珠にも似た丸い涙を零せば、クレーティアの指先がマリアドールの涙を掬い、ぎゅうと抱き締めればそれに重なる様にベルラも二人ごと抱き締めて行く。
「ああ泣かないで、マリー」
「マリア、泣いてはいけないよ」
 私たちは今此処にいるのだから。
 二人の声が重なる。悲しむことも、寂しがることもない。だから安心してほしいとマリアドールの顔がゆっくりと上がった頃、二人はゆっくりと解放して彼女の声に耳を傾けた。
「友達が沢山できたの。……好きな人もできたの。強くもなったの」
 ころころと笑いながら。顔を赤らめながら。マリアドールの喋る姿に一喜一憂する親はうん、うんと頷くだけ。
「それからね……」
 その先はいけない。首をゆるりと横に振ったクレーティアの指先がマリアドールの唇に触れて制止させた。ベルラの指先はす、と橋の向こう側を指さして。マリアドールの唇からはあ、と声が零れる。
「もう、お別れなの……?」
 二人を見上げるマリアドールの目には悲しさと寂しさの色が浮かぶ。ええ、と頷くクレーティアの声も。ああ、と帽子で顔を隠したベルラの声も確と彼女の耳に届いてしまい、俯いてしまう。
「私達はいつでもマリーの心にいるわ」
「あぁ、俺もだ」
 だから寂しくない。そう言う二人は笑顔のまま、マリアドールの体を抱き締める。懐かしい暖かさ。この温もりを何処までも感じていたいけれど、そうはいかないとゆっくりと離れる。
 亡者とて忘れ去られてしまえば存在が死んでしまう。けれど、その存在を忘れない者がいる限りはいつまでも生き続けるから。いつまでも覚えていようとマリアドールは笑う。
 ベルラの懐から取り出したオカリナに併せて歌うクレーティアの子守唄は、優しく響いて。朝を迎えても、何処までも聞こえている気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
死者の幻影……これも未練って言うのかね
だが、これも良い機会か

3年前に死別した、2歳年上の俺の兄貴分――夜刀神・拓真
いい加減でお調子者なのに、変な所で頼りになる。俺の目標みたいな大馬鹿野郎
『意外と元気でやってるみたいじゃねーか』なんて、当たり前だろ

少し笑って刀を抜く。……悪いが、一戦付き合ってもらおうか
訓練では俺が負け越して終わっていた。今更一勝しても、然程意味はない――だが、負けっぱなしは性に合わないからな。と告げれば、仕方ねぇと笑って拓真も刀を抜く
後は言葉は不要。存分に刀を交えるのみ

お前がいなくなってからも鍛え続けてきた。立ち止まった奴相手に、負ける訳にはいかないだろ
――だから、安心しろよ



●相対
 紅い橋の上には死者の幻影が見えるというのは本当だった。夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)の未練があったから見えたかもしれないその幻影は今の自分と同じ位……もしかしたら少し背を越してしまったかもしれない。――三年前に死別した兄貴分、夜刀神・拓真はあの日と変わらずのままだった。だけど、良い機会かもしれない。腰に携えた刀に手を掛けた。
 いい加減でお調子者。けれど変な所で頼りになるし、実際鏡介の目標だった。その一方で大馬鹿野郎と思った事もあるし、その人物は橋の上に腰掛けながら笑っていた。
「意外と元気でやってるみたいじゃねーか」
「当たり前だろ」
 少しだけ笑って刀を抜けば、月夜に輝く刃に目を丸くした拓真もまた腰に携えた刀に手を掛けた。
「……悪いが、一戦付き合って貰おうか」
「訓練で俺に負けてばっかだったのに?」
 拓真相手に一本取るよりも、道場の床や天井を見る方の事が多かった気がする。今更一勝しても、然程意味は無い――かもしれない。けれど。
「負けっばなしは性に合わないからな」
「――仕方ねぇ」
 兄貴分である拓真に弟分の鏡介はいつも付いてきた。引っ付いてくる、という方が正しかったかもしれない。何度負けても、一度勝っても、それでも食らいついてくるその姿は嬉しくて何回か後ろを見ていたのに。今では目の前に立てば自分よりも少し目線の高い弟分になっていたが、その弟分の挑戦を兄貴分が受けないわけにはいかない。
 拓真もまた笑いながら刀を抜けば、合図も無しに訓練をしていたあの日々とは違う真剣がぶつかり合う。
 拓真の強さがどんなものだったかよく覚えている。どうすれば拓真を越えられるのか。拓真の弱さとは何処だったか。あの日々では見つけられなかったし、訓練は負けっぱなしだった。けれど今ならどうだろう。
 ――彼の死が悲しかったわけではない。届かなかった手が悔しかった事もある。だから今も鍛錬を続けているし、それを止める事も止まる事もなく進んでいく。
 だから。立ち止まって、いなくなってしまった人間には負けたくない。
 鏡介の柄が拓真の柄にぶつかり、緩んだ拓真の手から刀が抜け落ちてその隙を鏡介は見逃さなかった。拓真の喉元に刀を突きつければ彼は降参と言わんばかりに両手を挙げた。
「久々の訓練は負けちまったなあ」
「立ち止まった奴相手に、負けるわけにはいかないだろ」
 ゆっくりと刀を下す鏡介にそれもそうか、と笑いながら拓真の姿は薄くなって昇り始めた日に透けていく。
「――だから、安心しろよ」
「――ああ」
 もう大丈夫だ。そう思ったのは、鏡介かそれとも拓真か。二人ともだったのかもしれない。
 いなくなった幻影の跡を見つめ、鏡介は頭を下げた。最後の訓練がこれで終わったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

百海・胡麦
忘らるる者の世界で…乙な事だ

逢うのは「父と慕った彼の人」だろう
ふた回りは上の、獣の妖だ
ぶっきら棒に話す、薄灰の毛並み
炎の抑え方を示したのも、あんただった

あの頃は幼かった。今はこの通り、其方の好きな酒も呑み交わせる
そう、胡麦だよ。黄泉の飯は美味いかい?満たされているだろうか

酒は?——「平」から祝い酒を注ごう
病を退けたのにね
狩りで、とは其方らしい。臆病であったのに相討ちとは勇ましいよ
彼処はね、穏やかになったよ

ただ、アタシは寂しくなった
うん、人を頼って海を渡った。愛しい道具、大切な者もできたよ?
けれど逝ってしまう事は無かったろうに
だがその顔に目見えた

近くで見たい
触っても?土産話もたんと聞いておくれよ



●あいたい
 忘らるる者の世界――カクリヨファンタズムの一橋、まぼろしの橋。百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)の紅い爪は橋の手摺りの紅と混ざり合う。歩みを進めても軋まぬ橋の真ん中、ゆっくりと進めて月を見上げた。
「……乙な事だ」
 そうは思わないか。隣に感じた存在へと目を向ければ獣特有の毛並み、薄灰色の毛を持つ妖は腕を組みながら月を眺めている。胡麦よりも大きく、嘗て彼女が父と慕っていた男。首を縦に振るい頷いた男はゆっくりと口を開いた。
「ああ、綺麗な月だ」
「何も、変わってないな」
 ぶっきら棒に話す男も何一つ変わっていないと胡麦はふ、と笑みを零した。
「あの頃は幼かったよ」
 胡麦に炎の抑え方を示してくれた時も。炎を上手く扱えた時も。――居なくなった時も。
 居なくなるまで男の傍にいた頃は、男の膝のあたり。成長しても尚彼の肘の辺りぐらいで。今でもあまり背が高くない胡麦でも、顔を見上げれば男の顔が良く見える程になったというのに。それでも尚変わらないと言うのか。
「今はこの通り、其方の好きな酒も呑み交わせる」
「……その声。その姿、胡麦か」
「そう、胡麦だよ」
「大きくなったな」
「ああ。あんたの顔が良く見えるほどにはね。黄泉の飯は美味いかい?」
「まあまあだ」
 満たされているのかいないのか。よく分からない応えに、くすりと笑いながら胡麦が取り出したのは朱の瓢箪。軽く揺らせばちゃぷりと小さな音が中から聞こえて、男はそれにぴくりと反応を示した。
「酒は?」
「頂こう」
 盃にとぷり祝いの酒を注げば男は静かに飲み干した。ふう、と息を吐きだせば辺りに酒の匂いが漂う。
「病を退けたのにね。狩りで、とは其方らしい」
 何を狩ったのかは胡麦は知らないし、男も喋らなかった。彼女が耳にした話は男が臆病だったのにも関わらず、狩りで敵対した相手とは相討ちに終わったということ。そして同時に命も落としてしまったことだった。
「彼処はね、穏やかになったよ」
 あんたのお陰かもしれない。再び酒を注げば男は静かに酒を飲み干した。
「ただ、アタシは寂しくなった」
「寂しい、か」
 父と慕った男がいなくなってしまって。無くなった体を埋める炎は、心まで埋めてくれなかった。
「うん。人を頼って海を渡った。愛しい道具、大切な者もできたよ?」
 しかし。父の代わりとなる者はいなかった。
「逝ってしまう事は無かったろうに」
 月ではなく、男の顔を見上げる。目見えた顔は、以前なら良く見えなかったけれど今ならよく見える。一歩近づいて、胡麦は男の顔に手を伸ばした。
「触っても?」
「……ああ」
 頷いた顔に触れて、見つめる。この目に、この手に、確と覚えていたいから。優しく触れた顔は満更でも無いような顔をしながら静かに目を閉じる。胡麦の土産話に耳を傾けて、時折頷き、相槌を打っては微笑んで。
 嗚呼朝がやって来る。柔らかな日差しは、ゆっくりと幻を包み込んで夜と夢幻を連れて行った。



 あいたい人にあえましたか。
 優しい幻想に。幻影に。夢幻に。
 まぼろしの橋はゆっくりと消えて行く。幻想も幻影も夢幻もすべて連れて行って。

 あいたいと願えば。いつでもそこに。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月14日


挿絵イラスト