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大祓百鬼夜行⑪〜修理屋阻む乱気流!

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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●無謀なる道行き
 普通の人間であれば立っていられないどころか、なすすべなく空高くまで吹っ飛ばされるだろうというほどの暴風のまっただ中、右へ左へと危なっかしく揺れながら爆走する巨影がある。
 それは、巨大な山型パンめいた幌を背負ったダンプカーといった風体の、妖怪バスだった。
「きゃぁぁぁぁ!」
「ひぃぇぇぇぇ!」
 揺れる度に、幌の中から悲鳴の輪唱が聞こえる。
 声の主は、三角巾にエプロンドレスという出で立ちの、背に蜂の羽らしきものを生やした妖精たちだ。幌の中にぎゅうぎゅうに乗り込んでいる彼女たちは、バスが風に煽られるたび、天井といわず床といわず弾みまくっていた。
「うろたえるなっ! お裁縫妖怪はうろたえないっ!」
「無茶言わないで! 誰よ、こんな大風突っ切ろうって言い出した馬鹿は!?」
「この先に『世界のほつれ』があるのは間違いないの! あたしたち『お針子妖精クマンバチーズ』がやらなきゃ誰がやるの!」
「それはそうかもしんないけど、安全な迂回路ってもんはないの!?」
「あったらそっち通ってるに決まってるでしょ!」
 涙混じりの怒鳴り声や悲鳴が交差する最中も、妖怪バスは爆走する。
 もっとも、風に吹っ飛ばされてその走りが止まってしまうのは、時間の問題だった。

●世界の修理屋
「百鬼夜行の影響で、カクリヨファンタズムに『世界のほつれ』ってもんができたらしいんだ。ほっといたらどんどん広がって、世界をバラバラに壊しちゃうっていうヤバいやつ」
 平生はへらへらした態度の大宝寺・風蘭(狂拳猫・f19776)だが、事が事だけにやや神妙な面持ちである。あくまで『やや』ではあるが。
「だけど、そのほつれを修正する能力を持った妖怪がいる。お裁縫妖怪ってゆーんだけど、その中の一団が妖怪バスに乗り込んで、ほつれに向かってくれたんだ。ところが、だよ」
 その妖怪バスの行く手を阻むように、暴風の領域が展開されているのだという。わけのわからない現象が日常茶飯事のカクリヨファンタズムにおいても珍しいほどの暴威と範囲を誇る大風で、世界のほつれへとたどり着くにはどうしてもその暴風域を通らなければならないという。
 捨て置けば妖怪バスは強風によってバラバラにされてしまう。これを避けるため、猟兵が同行して風からバスを守る――というのが、今回の依頼となる。
「ほつれを直せるのはお裁縫妖怪だけだから、アタシら猟兵だけが突破しても意味がないんだ。方法は、各自で得意なやり方があるだろうからお任せするけど、しっかりきっちりバスとお針子さんたちをガードしたげてねぃ」


大神登良
 オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。大神登良(おおかみとら)です。

 これは「大祓百鬼夜行」の戦況に影響を与える戦争シナリオで、1章で完結する特殊な形式になります。

 このシナリオには下記の特別な「プレイングボーナス」があります。
『プレイングボーナス……妖怪バスとお裁縫妖怪を、危険から守る』
 妖怪バスの進む道は、普通では考えられないような強さの暴風が吹き荒れています。何らかの対処をしないと、いずれ妖怪バスはバラバラになり、お裁縫妖怪たちは全滅してしまいます。
 妖怪バスは自動でもある程度普通の運転技能レベルで走ってくれますが、猟兵が運転しようと思えばできます。
 お裁縫妖怪の『お針子妖精クマンバチーズ』は身長二十センチ前後の妖精の集団で、風に対抗する手段は基本的に持っていません。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 冒険 『妖怪バスでほつれに向かえ』

POW   :    肉体や気合いで苦難を乗り越える

SPD   :    速さや技量で苦難を乗り越える

WIZ   :    魔力や賢さで苦難を乗り越える

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK


まったく、自分から骸魂を取り込んだり、命がけで危険に飛び込んだり、
どうにも妖怪たちは無茶をしがちだねえ。

さて、猟兵だけが突破しても意味がないけど、
逆に言えばお裁縫妖怪たちが突破できればいいってことだよね。
バスには乗らずに地面に手をついて【豊穣樹海】を発動。
大量の木を生やすことで、即席の防風林を作って暴風を和らげるよ。

ほつれの所まで範囲を広げられるかは分からないけど、
出来る限り風を防げる並木道を伸ばしていこうか。
風で飛んでく食べ物はもったいないけど仕方ないね。

暴風で声も届かないだろうけど、頑張ってねー。


岩倉・鈴音
妖怪バスと裁縫妖怪守って突破する。

妖怪バスの上にあがり風に立ち向かう。
ムサシビーム!
暴風よ友のたのみだしばしのあいだ凪になってくれー。
風がひどくなるたびにムッサシビィィム!
凪になってるあいだにバスで突っ切るんだ。
運転……ペーパードライバーだが問題ない!
席から立ち上がらないようにしてくれよっ
超弩級発進!

さあ素敵なドライブの始まりだー



●一筋、真っ直ぐ
 爆走する妖怪バスのルーフに、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)と岩倉・鈴音(JKハングマン・f09514)の二人の猟兵がしがみついていた。
 バスの速度が速度であるため、頬をなでる風は強い。が、次第にその強さが増し、風向きも荒れ出す。
 問題の暴風域に近付いたということだろう。
「まったく……どうにも妖怪たちは無茶をしがちだねぇ」
 呆れているのか、あるいはある種の敬意を抱いているのか。何にせよペトの表情は淡く、声色も平坦ではあった。
 いざとなった場合に平生では考えられない度胸を発揮する者というのは、確かにいる。それでも、不可視の敵を可視にするために自ら討たれる覚悟で骸魂を取り込むだの、使命を果たすために死地に突撃するだのというのは、あんまり思い切りすぎである。それはもう『度胸』というより、身を捨てるのを前提とした『覚悟』と呼ぶべき段のものだ。
 次第に増していく風の強さに、ペトは目を細める。予知の通り、間もなく妖怪バスの手に負える威力ではなくなるだろう。
「猟兵が突破しても意味がない。逆に言えば、猟兵が突破できなくても妖怪たちが突破できればいいわけだ」
「ほ?」
 横でそれを聞いた鈴音が、きょとんと目を丸くする。
「それはそうだが、妖怪たちだけで突破は無理なんだ。結局は我々が付きっきりでなければいけないのでは?」
「んー……その役は任せるよ」
 ペトはさらりと言うが早いか、ぴょん、とバスの屋根から跳び降りた。
 その手足は、巌のような鱗に覆われた竜のように変化しており、強まる風にも負けることなく安定した軌道で地面に引っ張られる。
「なるべく遠くまで、道を刻みつけるから」
 ペトの四肢が地面に触れた刹那、【豊穣樹海(プロビジョン・フォレスト)】が顕現する。妖怪バスの進行方向、その側面と天井を覆うような、巨木の森のトンネルとして。
 常であれば密林迷宮化させるところ、今回ペトが作り出したのは一本道。漠然と周囲一帯に拡げていたエネルギーを一点突破に注ぎ込む。一直線にただひらすらに遠くに、隙なく太く森を形成する。尋常ならざる速度で生えそろっていく巨木の群れは、伸ばした端から枝葉を颶風にへし折られ吹き散らされるのをものともせず、頑強なる幹を鉄壁と成していく。
 目の回るような疲労感に襲われつつも、ペトはその光景に一応の満足をした。全身全霊の森の道。世界のほつれまで伸びてくれるかどうかは博打だが、それでも自分力の及ぶの限界までのことはやった。
「がん、ばって、ねー……」
 つぶやくように、猛進する妖怪バスに向かってペトは言う。暴風に襲われた枝葉がへし折れる音、幹を震わせる音のやかましさに紛れ、その声はかき消えた――はずが。
「ありがとうー!」
 風音を押しのけて耳に届いた声に、ペトは目を丸くした。
「絶対、ほつれは直すからねー!」
「猟兵さんの頑張り、無駄にしないから!」
 バスの後部、幌から顔を出したクマンバチーズが叫んでいた。あるいはペトへの返答というより、ただ彼女たちが主張したかっただけのことかもしれないが。
 いずれにせよ、不意討ちで響いたその声は猟兵たちの耳から胸へと沁みた。
「ンッフッフ……」
 ルーフに張り付いたままの鈴音は、口角をうっすらと上げる。
「これは、後を任されたということかな。いいとも、きっちり役割を果たしてみせよう」
 夕闇に似た赤い双眸が、比喩ではなく、ギラリと輝く。
 その目が捉えているのは、真正面から吹き付けてくる暴風である。
 爆速で直進する妖怪バスの進路を確保する都合上、巨木の森のトンネルは真っ直ぐ前だけは開けている。つまり、八方ほとんどの風をガードできても、正面一方からの風だけはどうしても受けてしまう。
 それを許さないための鈴音だ。
「ムッサシビィィム!」
 鈴音の喝破と同時、彼女の眼光が極致となる。それは、剣を振るわずして人を斬れる域に達した剣豪を彷彿とさせた。
 それは先鋭なる殺気――だけでもない。武人が究極の境地に至るとき、その奥義は会敵必倒の技を置き去りにして、殺意をもって対峙した敵を友とする。
 鈴音の【ムサシビーム】は、その一端を具現していた。
「暴風よ、しばし凪になってくれー!」
 それと事情を知らない者が聞けば、破れかぶれの妄言でしかない。しかし、それはその一瞬の間に間違いなく暴風を『友』にしてしまった者が発した、実効性のある『頼み』だった。バスを粉砕せんとする勢いだった暴風は鈴音の言葉に従って、実に、ぴたりと止まる。
(八方にビームを撃ちながらというのは忙しすぎるかもと思っていたけど、正面だけ見ていればいいというこの状況、ありがたし)
 口角をさらに吊り上げつつ、鈴音はバスへと叫ぶ。
「今です! 超弩級前進!」

 森の壁と眼光とに守られつつ妖怪バスは突き進み、程なくして『世界のほつれ』へ到着する。
 目に見えるモノとしては、空中に浮かぶ白い糸くずの巨塊といった風情。もちゃもちゃと薄気味悪く蠢きつつ、極めてゆっくりではあるが、大きくなっていっているようだった。
 その姿を認めたクマンバチーズは一斉にバスから飛び出した。
「やっちゃえ!」
「おー!」
 サイズのバランスからするとロングソードほどもある縫い針を振りかざし、クマンバチーズはほつれに突撃した。
 縦横に飛び回りつつ針を振るう様は、お針子仕事というより乱闘、白兵戦といった言葉を連想させる。
 ボカスカと擬音の鳴りそうな状況が数分ほども続いただろうか、糸くずは綺麗さっぱりと消え去り、同時に周囲を荒れ狂っていた暴風もなくなった。
「やった!」
「いえーっ!」
 クマンバチーズ、それから鈴音も混ざって歓声を上げ、危難の去ったのを喜び合った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユノフェリア・ソーダライツ(サポート)
・おまかせ/アドリブ大歓迎

『そう、了解。
Initiating the operation.』

愛称:ユノ
年齢:7歳 

黒蒼色のオブリビオンマシン:フェンリル

真白のクロムキャバリア:フリーン

口調「淡々と/女性的(私、~殿、言い捨て)」

戦闘中「ほぼ無口/男性的(自分、お前、呼び捨て、言い捨て)」

銃と素早さ重視の体術とロボを使い分け戦う。
頭が良すぎる為にしばしば秒単位で思考し自己完結のち色々とすっ飛ばし行動。

致命傷や敵の罠に注意しつつも、ある程度の危険や怪我は厭わず積極的かつ戦略的に行動。
本人的には動ければ問題い。
他猟兵に迷惑をかける行為は不要ならしない。

実験のせいで感情が一部欠落している。



●黒白の守護神
 白を基調としたカラーの、どこか女性的なフォルムをしたクロムキャバリアが、妖怪バスを守るように飛行している。ユノフェリア・ソーダライツ(アンサーヒューマンのオブリビオンマシン・f30068)の操るフリーンである。長距離、高火力を誇る機体で、装甲もそれなり――ではあるのだが、超常の暴風の中にあって安定して飛べるかと言われればまた微妙ではある。
 それでもユノフェリアは己の運転技能を駆使し、妖怪バスを追随していた。

 猟兵らの尽力と妖怪バスの爆走によって、『世界のほつれ』へと到達する。もつれ合った白い糸が十数メートル四方ほどの塊となって、中空に浮かんでいるかのような。
 暴風はそこを起点に吹き荒れているようだった。必然、その場を支配する風はこれまでで最も強烈、最も破壊的である。
 だからこそ、ここぞ、とユノフェリアは断じた。
「Initiating the operation」
 器械のようにクールな声が紡がれる。
 フリーンを操り、ユノフェリアは限界までほつれに近付いた。超高密度の暴風が相手ともなれば、これまでのように風の隙間を縫うようにして進むというわけにもいかない。己の愛機の頑強さを信じた、真正面からの肉迫である。
 あと一メートル、あと一センチ、あと一ミリでも――愛機が悲鳴を上げ始めたその刹那に、フリーンの体の隙間にできた陰のそちこちから【塗り潰されるもの(フィル・シャドウ)】を伸ばす。
 それら漆黒は世界のほつれを捉え、液状パテがヒビを埋めるかのように侵食していった。流石にほつれの全てを覆うには至らないが、それでも埋められた端から暴風が阻止されていく。周囲を荒らし回る颶風が徐々に鳴りを潜めていく。
 風が絶無となったわけではない。しかし、それでもクマンバチーズが飛び寄って作業するには充分な弱まり具合になった。
「やっちゃえ!」
「おー!」
 ときの声を上げ、クマンバチーズが群れなしてほつれに襲いかかる。身の丈ほどもある縫い針を振りかざして暴れ回る様は、重装歩兵隊さながらである。時折ほつれからの隙間風に吹っ飛ばされることがあるが、欠片もめげることなくリベンジを挑む。
 クマンバチーズの奮戦が続くこと数分、ほつれは完全に消え、暴風も収まった。
 ワッと周囲でクマンバチーズの歓声が上がる中、精根尽きるまで暴風を抑え続けていたユノフェリアは、フリーンのコクピット内で汗をぬぐいつつ、大きく安堵の吐息をもらした。
「任務、完了」
 その声は常と同様にクールそのものではあったが、同時にどこか誇らしげでもあった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年05月15日


挿絵イラスト