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大祓百鬼夜行⑦〜Lunatic Picnic

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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「皆、お月見をしましょう」
 グリモア猟兵、川谷・茉莉(n番目の花子さん・f32951)は開口一番そう宣った。
「会場はカクリヨファンタズム内のすすき野原、食べ物はお月見団子と甘酒を用意するけど持ち込みもOK。あと当然だけど公序良俗に反する行為は禁止。概要と注意事項は以上よ」
 一気に概要を説明した茉莉に、一体どういうことなのかと猟兵達が問う。戦の真っ最中にお月見とは、と。
「……月が、割れたのよ」
 茉莉の返した答えは、更なる問題を告げるものであった。
 曰く、すすき野原から見える月が骸魂の影響を受けて割れ、その中から『カタストロフの幼生』なるものが生まれようとしているのだという。
「幼生には直接の手出しができず、育ちきれば勿論カタストロフとなってカクリヨを滅ぼす。これを防ぐ手段は、ただ一つ──」
 お月見よ。茉莉は言い切った。
「楽しく賑やかにお月見をやることで、月は本来の在り方を思い出す。そして割れていたのが元に戻って、カタストロフの幼生も消滅する、という寸法よ」
 なるほど、それ故のお月見か。一応の筋は通っている気がする。
「注意事項としては、月が割れていること、カタストロフの幼生がそこにあることを意識しないこと。その意識は、月の復元を阻害し、カタストロフに成長を促すことになってしまうから」
 即ち、月は割れていないもの、カタストロフの幼生は存在しないもの──という意識を、お月見の間ずっと保っておく必要があるのだという。
「異常な点は幾つもあるけど、あくまで正常であるという認識は崩さずに。皆、宜しくお願いするわね」
 そこまで説明して、茉莉はグリモアを展開し転送準備に入った。

 と。
「そうそう。今回だけど、一通り転送が終わったら私も現地に行くわ」
 もし声がかかればお付き合いするから、一人で行くけど誰か付き合う人が欲しい、というなら声をかけてくれて構わない、との事だ。
 そして改めてグリモアが起動。猟兵達を満月輝くすすき野原へ送り出してゆく。


五条新一郎
 それは髑髏めいた月。
 五条です。

 大祓百鬼夜行、続いてのシナリオはお月見パーティ。
 ちょっと月がおかしなことになってますが、気にせず楽しみましょう。

●目的
 お月見を楽しむ。

●会場
 カクリヨファンタズムのすすき野原の一つ。
 常に真夜中であり、空には大きな満月が浮かんでいます。
 地上は一面のすすき野原です。

●プレイングについて
 OP公開直後から受付、締切はタグにてご案内します。
「幼生の事を気にしないようにしつつ、全力でお月見を楽しむ」ことでプレイングボーナスがつきます。
 月は割れ、カタストロフの幼生が生まれつつありますが、これに言及せず、しても認識を振り切るなどすることでボーナスがつきます。
 因みに本シナリオのカタストロフの幼生は、巨大な髑髏のような形をしてます。

●リプレイについて
 現在運営中の「大祓百鬼夜行⑲〜Ninety-nine Line」完結後より執筆開始、遅くとも5/14(金)深夜には完結したいと思っております。

●他
 概要補足や注意事項はOPの通り。
 グリモア猟兵の川谷・茉莉(f32951)が同行可能です。絡んでみたい方、お月見を楽しむお相手をお求めの方はプレイングにて。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
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第1章 日常 『月割れてるけどお月見しよう』

POW   :    全力で月の美しさを褒め称え、「立派な満月」だと思い込む。

SPD   :    賑やかな歌や踊りでお祭り気分を盛り上げる。

WIZ   :    お月見にふさわしいお菓子やお酒を用意する。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
不思議なことになっておりますねぇ。
とは言え、戦争の最中の息抜きにも丁度良いでしょうかぁ?。

一人で、というのもなんですし、川谷さんをお誘いしますねぇ。
『月見団子』や『月餅』等の『お月見用の料理やお菓子』を[料理]して持っていく予定ですが、何か好物等御座いましたら、仰っていただければご用意しますぅ。
気に入っていただけると良いのですが。

【往結】を使用し『認識阻害』の能力を得る『秘薬』を形成し摂取、自分自身に使用して『月は正常であると認識される状態』にしますぅ。
その上で、先程の『お料理』と多目の飲み物、座る為の茣蓙や床几等を持ち込んでお月見を始め、ゆっくりと楽しみましょうかぁ。



「不思議なことになっておりますねぇ」
 満月望むすすき野原、一面に広がるすすきの合間。平坦な地面に茣蓙を敷きつつ、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は呟いた。よもや、二つの世界の命運を決める戦の最中に、このような任務が――月を見上げて宴をするのみの任務があろうとは、と。
「とはいえ、戦争の合間の息抜きにも丁度良いでしょうかぁ?」
「そうね、寧ろその認識でいてくれた方がきっと都合が良いわ」
 二人分の床几を一つずる広げながら応えるのは、グリモア猟兵の川谷・茉莉。此度の任務に参加する猟兵達の転送を終えた後、直接の戦闘が無い見込みということで、るこるの誘いに応じて来たものである。
 見上げる月は真っ二つに割れ、その合間に浮かぶ巨大な髑髏が二人を見下ろす。大きさも含めたその存在感、見下ろされる者にとっては相当な重圧を齎す代物であるが。
「そうそう、私もお料理を色々ご用意してきたんですよぉ」
「ああ、転送の前に言ってたやつね」
 それを全く意識していないかのように、るこるは携えてきた和装の鞄から黒塗りの重箱を幾つも取り出す。見つめる茉莉の表情に、何処か期待の色が滲む。
 茣蓙の上にて蓋を開ければ、一つ目の箱には月餅がぎっしり。二つ目の箱には、茉莉が用意したものとは別の月見団子や、兎や三日月型などのクッキーといった様々なお菓子。そして三つ目の重箱には。
「此方、川谷さんのリクエストにお応えした品になりますぅ」
 中身は厚焼きの玉子焼きに、タコ型にカットしたウィンナー。濃厚なソースのかかったミートボールに、胡瓜やチーズをハムで巻いた品、などなど。王道の『ピクニックのお弁当』と言うべきメニューが詰まっていた。
「あら……凄い。どれもとっても美味しそう。まだ準備途中なのに食べたくなっちゃうわね……」
 それらを認めた茉莉、表情こそあまり変わらないものの、視線はすっかり釘付けだ。妖怪として長く生きている彼女だが、この辺りの嗜好は外見年齢相応の少女そのものだったりする。
「ふふ、ご用意も後少しですよぉ。後は此方を……」
 そんな茉莉の反応を微笑ましく見ながら、るこるは更に大きな水筒を二本取り出してくる。温かいお茶、其々緑茶と番茶だ。
「ありがとう。こんなところかしらね?」
 その隣には、茉莉が甘酒入りの水筒を置く。これで用意は揃った。二人分の湯呑みに、其々緑茶と甘酒とを注いで。
「はい。それでは、今宵の良き月を祝して――」
 天を仰ぐるこる。割れた月の間、見下ろす髑髏と目が合った。
「――乾杯、ですぅ」
 意に介さず、正面の茉莉へと視線を下ろして。互いの湯呑みを、軽く打ち合わせた。

「――ん、美味しい。丁度良い甘さ」
 早速卵焼きを食す茉莉。余程に美味なのか、その表情も思わず緩む。
「お気に召したようで何よりですぅ」
 作った甲斐があるというもの。るこるは満面の笑みを浮かべて月餅を一口。重箱一つを埋め尽くしていた月餅が、既に二割程無くなっている。
「……るこる、よく食べるのね」
「よく健啖と言われますぅ。あ、茉莉さんの分はちゃんと残しておきますのでご心配なくぅ」
 余った時は自分が責任を持って全て食べる、とも言い添えて。ふと、上空の月を見上げる。
 夜天の半ばを埋め尽くす大きな月。真っ二つに割れ砕け、その狭間に浮かぶ髑髏が二人を見下ろして――
「――良いお月様、ですねえ。『欠け一つ無い真ん丸の満月』ですぅ」
 その言葉は紛い無く本心。事前にユーベルコードにて精製した秘薬によって、彼女は今の光景を『正常な満月』と認識しているのだ。
「全くね。『綺麗な満月』。このまま暫く、眺めさせてもらいましょうか」
 対する茉莉は、そんなるこるの認識に乗っかるかのように。自分の認識を、あたかもそうであるかのように知覚を説き伏せる。
 そうして、二人は割れた月をそうと認識せぬように見上げ、愛でていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

ま、キマイラフューチャーも割れたし、月が割れるくらい普通普通♪
デモニックレギオンで眷属達を召喚してお月見宴会よ☆
かわいこちゃんには目がないので茉莉ちゃんもナンパするけど、脈がなさそうならおとなしく引き下がりましょ。もし、のってくれるなら“なかよし”になりたいわ♪
眷属達といちゃいちゃしていればもう他のことなんて気にならなくなるなり、眷属達がいつの間にかすすきで作った休憩室で、月明かりに照らされながらしっぽりと楽しんだりしてるわ♡



 総勢100名からの悪魔っぽい少女達が、レジャーシートを敷いたりお菓子やお茶の用意をしたりしている。その間を歩んでくるのは二人の少女。一人はグリモア猟兵の川谷・茉莉。もう一人は悪魔少女達――『夜』(デモン)の主であるアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト魔少女・f05202)だ。
「ま、キマイラフューチャーも割れたくらいだし月が割れるくらいは普通普通♪」
「割れる……? キマイラフューチャーが……?」
 真っ二つに割れた月を見上げつつ、あっけらかんとアリスは言い放つ。しかし、猟兵になって日が浅い茉莉にとってはあまりにも想像を超えた事態だったようで。
「それに比べれば、まああれでも普通の範囲内……なのかしらね」
 衝撃のあまり、割れた月の間から顔を覗かせる髑髏も気にならなくなったようだ。
「そうそう♪ そんなことより宴会よ、茉莉ちゃん」
 ほら、と示した先にはレジャーシートの上いっぱいに広がる色とりどりのお菓子。傍らには紅茶を淹れるべくティーポットを持ったデモン少女も控える。
「ええ。こういうのはちょっと意外な感じがしたけど……」
 応えてレジャーシートの上に腰を下ろす茉莉。西洋式のお月見というのも珍しい、と思いつつ、こういうのも新鮮で良いかも、とも思っている模様。
「ま、私だからね♪」
 くすくす、と笑いかけながらも同じく腰を下ろすアリス。同時に目配せすれば、侍るデモン達が二人に紅茶を供してゆく。
「それじゃあ、今宵の『綺麗な満月』に、乾杯♪」
「ええ、乾杯」
 カップとカップが合わせられ。宴会が始まった。

 東洋では月はあくまでその美しき輝きを愛でられる対象だが、西洋ではその光に人の心狂わせる魔力を宿す魔性の存在と言われている。そのせいだろうか。
「……ちょっと、この子達なんだか距離が近くない?」
 眉根を寄せる茉莉。その左右には二人のデモン少女が侍り――というか最早ぴったりとその身を密着させてたりする。そうしてケーキやらクッキーやらのお菓子を差し出し、食べさせようとしているのだ。
「いつものことよ♪ 気にしないで遠慮なくいちゃいちゃしてもいいのよ?」
 一方のアリスはその返答通り、己に侍るデモン少女達の腰を抱いて肌を撫で回していた。何やら少女達が顔赤くして甘い声を上げている。
「そういうものなのね……なら良いけど」
 それで納得した様子の茉莉、抵抗なくデモン少女達の些か過激めな給仕を受け入れる。胸元に少女の手が這うのにも特に難色は示さず、別の少女が口元に運んだ紅茶を啜る。
「あら茉莉ちゃん、もしかしてこういうこともイケる口かしら?」
 先程まで侍っていたデモン少女がぐったりしてしまったので、控えていた少女の一人を手招きしながらアリス。可愛い娘には目が無い百合寄りトリセクシャルのアリス、茉莉にも興味を示したが故にナンパしたものの、脈が無ければ普通に楽しむに留めるつもりでいた。しかし。
「まあ、アリだとは思ってるわ。好き好んでそういう処に飛び込んだりする趣味は無いけど」
 ふう、と一息つきながら、侍るデモン少女達に身を委ねる茉莉。その吐息の帯びた熱が紅茶の温もりばかりでないことは、アリスにはお見通しであった。
「ふぅん……♪ それじゃあ、もっと『なかよし』になりましょう♪」
 ならばと更なる誘いを告げるアリス。流した視線の先には、いつの間にかデモン達が築いていた『休憩部屋』。野原に茂るすすきを材料とした、休憩しながら月見も可能なように天井の無い仕様だ。
「……あら。……そうね、私は構わないわよ。友達は欲しいと思ってたし」
 アリスの言葉の意味を理解しているのかいないのか。応える茉莉がアリスに向ける視線は、何処か熱を帯びているかのようで。
「ふふっ、嬉しいわ♪ それじゃあ、行きましょう……♪」
 そうして立ち上がった二人の少女は、互いの身をぴったり寄せ合いながら休憩部屋へ。

 月の光を浴びながら、彼女達が如何にして親睦を深めたかは、報告書には記さぬものである。
 その一部始終を見ていたのは、ただ、月だけであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコリネ・ユーリカ
【ワイルドハント】
月には兎が居ると。故にバニー、なるほど!
私もオリヴィアさんに倣ってバニーガール姿で餅搗きを
重たい杵を力いっぱい振り被り
餅搗き音頭のリズムで臼に叩き付けるわ


ハー望月餅つきぺったんぺったん
兎とびとび ぺったんこー!

優れた跳躍力で危機を逃れる兎のようにピョンピョン跳ねて
同じ縁起物の餅を搗いて幸運を引き寄せるの
それに兎は商売繁盛のご利益もあるんですって(ぐふふ

餅が出来たらお料理開始!
南瓜で着色した黄色い団子を入れてお月見団子に
兎型にしたウサさん団子も並べましょ
全て丸く形を整えて、月が割れてるとか知らんぷりよ

幽世の平和を祈って乾杯!
月見酒にほろ酔いになったら
歌って踊って楽しんじゃお!


オリヴィア・ローゼンタール
【ワイルドハント】

お月見です!

月にはうさぎが棲むという伝説を聞いたことがあります
というわけでバニーの姿に変身(狂乱の斬り裂き兎)

和風で伝統的なのもいいですが、こういうのもいかがでしょう
月を模した目玉焼きの挟まったハンバーガーを持ってくる

野生の妖怪さんたちがいらっしゃるならお誘いを
私はまだ未成年なのでお酒は飲めませんが、給仕するくらいなら
空中を足場にした兎のジャンプ力で、あっちへこっちへ飛び跳ねてお酒やバーガーを配って回る
はい、つかささんもニコリネさんも、一献どうぞ

食べ物が行き渡れば皆さんとご一緒に料理を頬張ります
かんぱーい!

宴を盛り上げるのにリクエストあらば歌や踊りで応えます(歌唱・ダンス)


エィミー・ロストリンク
【ワイルドハント】
月には兎さんがいるというけど、バニーさんだけじゃ物足りない!
ということで一足早いけど、エィミーサンタ参上です!

宴を盛り上げる為にミニスカサンタ姿で参加 楽しそうに踊りながらジングルベルを鳴らして、UC「王笏の財宝を分け与える姫君」を発動

月を楽しむパーティグッズをどうぞー♪

団子を食べる皆に月を彩る流星を打ち上げるメガリスをプレゼント
それで月を祝福するような星空を演出し、この月見を美しく楽しく過ごせますようにという願いを込める

やっぱり皆が楽しめるがいいからねー!
自身は飲めないからつかさちゃんにお酌をしながら、ニコリネちゃんとオリヴィアちゃんと一緒にうささん団子とバーガーを食べる


荒谷・つかさ
【ワイルドハント】

(仲間に倣ってバニースーツに着替えつつ)
月の兎を狩るために、兎の衣装で油断を誘う。
なるほど、合理的だわ……えっ、違うの?
兎肉は今回無し……なんてこと……(がくっ

気を取り直して、お月見を楽しむ支度をする
私は「怪力」を活かして餅つきを手伝おうかしら
ニコリネのリズムに合わせて、ぺったんぺったん
力入れ過ぎて臼を叩き割らないよう気を付けないと

お餅が出来たら私は一足先に楽しむ側へ
持ち込んだとっておきのお酒をオリヴィアやエィミーに注いでもらいながら、ニコリネの料理に舌鼓を打つ
全員揃ったら改めて乾杯よ
未成年の二人とも、いつか将来一緒に酒を飲みたいものだわ



「お月見です!」
 というわけですすき野原へやってきた四人の女性。旅団『ワイルドハント』の仲間達だ。
「月には兎が棲むという伝説を聞いたことがあります。というわけで!」
 と己の知る月の知識を披露するや、漆黒の光にその身を包むオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。数秒後に光が弾ければ、その装いは頭に兎耳、豊かな肉付きの肢体を余すことなく晒すボディスーツ。そしての臀部には兎尻尾――即ちバニーガールのそれへと変化する。
「なるほど、それ故にバニーというわけなのですね!」
 背高く茂るすすきの影から姿を見せたニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)はオリヴィアの言動に得心いったとばかりに頷く。彼女もまた、その装いはすらりとした肢体を余すことなく晒すバニースーツ。今しがたすすきの影で着替えたものだ。
「月の兎を狩るために、兎の衣装で油断を誘う……そういうことね」
 ニコリネに続いて姿を現した荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)もまた、鍛えられた肢体にバニースーツを纏う。実に合理的だ、と納得していた様子だが。
「違うよー!? 月の兎さんは狩っちゃダメなやつー!」
「え、違うの!?」
 エィミー・ロストリンク(再臨せし絆の乙女・f26184)の抗議に驚愕する。それが意味するところは。
「兎肉は今回無し……なんてこと……」
 失意に肩を落とすつかさであった。
「ところでエィミーちゃんは随分可愛らしい恰好なのね?」
 首を傾げるニコリネ。彼女の恰好は、他の三人のようなバニースーツ姿ではなく。
「バニーさんだけじゃ物足りないかも、って思ったから! 一足早いけど、エィミーサンタ参上です!」
 くるっと一回転して決めポーズを決めるエィミー、その装いは随所に白のファーを飾った赤いミニスカートのワンピース――サンタガール衣装であった。
「サンタクロースもプレゼントを配るのは夜ですし、ミスマッチということは無いでしょう。それにとても可愛らしいかと」
 そんなエィミーの様子を、オリヴィアも微笑と共に眺めつつ評する。
 こうして、バニーガール三名とサンタガールのお月見が始まらんとする、その様子を。割れた月の狭間より、巨大なる髑髏が見下ろしていた。

「さて、まずはお料理を準備しないと!」
 言いながらニコリネがどんっと取り出したのは臼と杵。まさに月の兎の如く餅つきせんという構えである。
「餅つきね。力仕事だし、私も手伝うわ」
 失意からどうにか立ち直ろうとするつかさ、立ち上がりながら応える。腕力には自信のある彼女、それを活かせる仕事と気合十分。
「ええ、一緒に頑張ってつきましょう」
 ニコリネも是と答え、二本ある杵の片方をつかさへ渡す。そして己はもう一本を手に。杵の重さを感じつつも、力一杯振りかぶれば、臼の中のもち米を目掛け――叩きつける!
 ずん、っと重々しい音。杵持つ手に確かな応え。ニコリネが杵を持ち上げると、そこへ今度はつかさが杵を振り下ろす。彼女の腕力ならば杵の重みも堪える程ではない。逆に、力を入れすぎて臼を叩き割ってしまわないよう注意する必要があるぐらいだ。
 絶妙の力加減でもち米へ杵を叩きつければ、ずん、っと重々しい音。つかさが杵を持ち上げれば、再びニコリネが振り下ろす。ニコリネが持ち上げれば、再びつかさが。交互に杵を叩きつけ、餅をついてゆく。そのテンポは次第に一定のリズムを刻み始めて。
「♪ハー望月餅つきぺったん、ぺったん、兎とびとび、ぺったんこー!」
 ニコリネの口から餅つき音頭の拍子が漏れ始める。最初は杵の重みに難儀していた彼女も、やがては兎らしい跳躍を交えたダイナミックな動作で餅つきをするようになっていた。
 つかさもまた、彼女の刻むリズムに合わせて杵を振り下ろし、振り上げる。此方は腰を落とし、どっしりと力強く。
 ところで――ニコリネはふと思う。白い兎といえば幸運の象徴である。そして餅もまた縁起物である。また、兎には商売繁盛のご利益もあるのだという。つまり、己が猟兵の活動と並行して営んでいる花屋にも――
「ニコリネ、顔、顔」
「――はっ!?」
 この時のニコリネは、随分とだらしのない顔になっていた、と。後につかさはそう語ったとか、語らなかったとか。

 餅がつき上がれば、後はこれをお料理してゆくのみだ。
「白いお団子も良いけど、こういうのはどうかしら?」
 ニコリネは餅の一部を切り分けると、それを潰したカボチャと混ぜ合わせて黄色く着色。その色合いは成程、より月の色に近く思える。
「これを丸くすれば、まさに満月ですね」
 オリヴィアも納得げに頷き、黄色い餅を千切っては丸く形を整えてゆく。
「それとこういうのも……っと」
 ニコリネは更に真ん丸よりも少し細長めに成形した団子も作る。兎に見立てたウサさん団子だ。
「わ、かわいいー!」
 数を作れば、小さな雪兎が沢山並んでいるようにも見える。エィミーが輝く目つきでそれらを眺める。眺めるだけでなく、自らも団子作りに加わってゆく。
 団子はとにかく丸く丸く形を整え、並べてゆく。頭上の割れてしまった月のことなど気にしない。
「――と、そうでした」
 ふと、団子作りを続けていたオリヴィアが、己の持参した荷物を探る。取り出したのは、包み紙に入った幾つものハンバーガーだ。
「和風で伝統的なのも良いですが、こういうのもいかがでしょう?」
 包みを開けば、バンズにビーフパティとレタス、それに加えて目玉焼きが挟まっている。目玉焼きを月に見立てた、まさしく月見バーガーだ。
「あら美味しそう。ふふ、確かに純和風でなくてこういうのも良いわね」
 目先も変わって良い、とニコリネはそれらハンバーガーをバスケットに収め、出来上がった団子の傍らへ。
「……おや?」
 団子作りに戻ろうとしたオリヴィアの視界の端、生い茂るすすきに紛れて別の動く気配を感じる。オブリビオンではない。視線を向ければ、気付かれたと思ったのか気配の正体がおずおずと姿を見せる。
「……わぁ、兎さんだ!」
 エィミーが嬉しそうに声を上げた通り、そこに居たのは白い兎。しかしその気配はただの兎ではなく、何処か神秘の気配を纏う。どうやら妖怪らしい。
「……お姉さん達、ここで何してるの?」
 兎が口を開けば、漏れ出てくるのは人の言葉。やはり妖怪だったようだ。
「私達は、ここでお月見をしに来ました。今はその準備中です」
「ちょっとお月様が変なことになってるけど、気にしない!」
 オリヴィアとエィミーとが、其々に応える。正しく、月の異変など気にしないかのように。
「もし宜しければ、貴方も一緒にどうですか? 月が気にならないぐらい、盛り上げてみせますよ」
 その誘いは勿論好意からでもあるが、この地に住む妖怪がいるなら彼らにも月を意識させない手段を講ずるべきだろう、との判断もある。
「……友達も呼んでいい?」
「ええ、もちろん」
「いっぱい居た方が楽しいものね!」
 いいよね? とエィミーが振り向けば、お団子作り真っ最中のニコリネも、一足先に楽しむ側へ回ろうと酒を持ち出してきていたつかさも頷いて。
 妖怪兎は嬉しそうに声を上げ、友達を呼びにすすきの中へと飛び込んでいった。

 妖怪兎が友達を連れて戻ってきたところで料理も出揃い、オリヴィアが立ち上がる。
「それでは、皆さんにお配りしていきますね」
 空中を足場に跳び回る、まさに兎らしい跳躍を魅せながら、妖怪兎達へとバーガーを配って回る。
「つかささん、お酌させて頂きますね?」
「ええ、この日のためのとっておき、お願いするわね」
 持ち出した酒瓶の封を切り、オリヴィアへと手渡せば。傾けられた瓶口から、コップへ向けて透き通った清酒が注がれてゆく。
「ニコリネさんも、一献どうぞ」
「あら、悪いわね。お願いするわ」
 続いてはニコリネに。この場で成人しているのは彼女達二人だけなので、注ぎ終えれば酒瓶は傍らへ。次いでジュースの瓶を取る。
「それじゃーここで、パーティを盛り上げるアイテムをご用意ー♪」
 と、徐に立ち上がるエィミー。その手のベルをシャンシャンと鳴らしながら、楽しそうに踊り出せば。キラキラした星屑めいた光が辺りへと散り、後には何やらクラッカーめいた道具が人数分現れた。
「ん? これは?」
 手に取り眺めるつかさに、エィミーが答える。
「月を楽しむパーティグッズ! 流れ星を撃ち上げるメガリスだよ!」
 メガリスといっても呪いなどは無い、一般人でも安心して使える品だとエィミーは語る。これなら妖怪兎達でも大丈夫だ。
「願いを込めながら紐を引けば、流れ星が飛び出して飛んでいくよ! あ、もちろん人や妖怪に向けて撃たないようにね!」
 空に向けてメガリスを掲げ、紐を握るエィミー。それに倣ってつかさも、オリヴィアも、ニコリネも。そして妖怪兎達も。同様にメガリスの先端を空へと向けて。
「それじゃ……いっせー、のっ!」
 エィミーの合図と共に、全員が一斉に紐を引く。先端が弾け、その全てから煌めく星が飛び出して。総数十数個の煌めきが夜空を駆け上り、割れた月を目掛けて飛んでゆく。まるでそれは、月を祝福する星空をその場に作り出すかのよう。
(今日のお月見を、美しく楽しく過ごせますように)
 割れた月と、その向こうから一同を睨む髑髏は見ない振りで。エィミーの願いを乗せて、流れ星は空に煌めいてゆく。

 そしてエィミーが改めて席につけば、全員分の飲み物が行き渡ったところであった。
「それではニコリネさん、乾杯の音頭をお願いします」
 オリヴィアの促しを受け、ニコリネが立つ。因みにつかさと一月違いでの最年長である。
「はい! それでは皆様、コップをお持ちくださいね」
 応え、全員がコップを手に。
「――今宵の『美しい満月』に。そして、幽世の平和を祈って」
 今宵が戦の只中とは意識しすぎぬよう、戦勝ではなくその先を願いて。
「――乾杯!」
「「「かんぱーい!!」」」
 ニコリネに続いて掲げられるコップ。宴の始まりである。

「もぐもぐ……ん-、オリヴィアちゃんのハンバーガー美味しい!」
「此方のお団子も、良いつき具合で美味しいです」
 エィミーはハンバーガーを頬張り嬉しそうに笑む。オリヴィアもまた、団子の味わいを堪能しているようで。
「うーん、ニコリネのお料理、どれも絶品ね! お酒も進むってものよ」
「お粗末様ね。ん、でも美味しくできたかも」
 ニコリネが団子作りの合間、ユーベルコードを以て作っていた料理を肴に、つかさとニコリネは酒を飲み交わす。
 妖怪兎達も其々に団子や料理を堪能している様子。どうやら未成年らしく酒は飲まないものの、存分に宴を楽しんでいる様子であった。
「さーて、宴もたけなわ! ひとつ歌に踊りといきましょうか!」
 程よく酒が回り気分良くなった様子のニコリネが立ち上がる。
「出し物ですね、私もご一緒させて頂いても?」
 オリヴィアが応えて立ち上がれば、ニコリネは満面の笑みで快諾。二人並んで歌いながら、頭の上で両手を跳ねさせながらリズミカルに腰を振るダンスを披露する。鑑賞する妖怪兎達も皆楽しげで。中には真似しだす者もいた。
「つかささん、お酒のおかわり要るー?」
「あ、エィミー。そうね、もう一杯お願いするわ」
 二人の歌と踊りを楽しみつつ、つかさはエィミーの酌を受けて酒を飲む。
「あなたやオリヴィアとも、いつか将来一緒にお酒を飲みたいものね」
 遠くを見るように目を細めながら、つかさが呟く。オリヴィアは後二年もあれば叶うが。
「わたしはまだまだ先だけどねー。でも、その時は一緒に飲めるといいなっ」
 エィミーはまだ7歳。己の飲酒が叶うのはまだずっと先だが。その時にもまだ、こうして宴を催したりできるなら、と。二人も、踊っている二人も。願うのであった。



 そうして、猟兵達の宴も終わりに差し掛かった頃。
 上空の割れた月が、突然に一際強く光を放ちだした。
 分かたれた月は互いに引かれ合うようにその距離を縮め、間に髑髏のカタストロフ幼体を挟み込み、押し潰すかのようにして。
 破断点から結合を果たし、その光が収まれば――後に残るのは、罅一つ見えぬ、綺麗な満月であった。即ち、猟兵達の宴を以て、割れたる月が元の姿を取り戻したのである。
 以て、任務は成功。此度のカタストロフも、また阻止されたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月16日


挿絵イラスト