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大祓百鬼夜行⑧〜黄泉に誘う歌声

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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●思い出が牙を剥く
 夜の帳が降りた橋の上。風に乗って、どこか懐かしい歌声が聞こえ、ふらふらと誘われるように歩き出す妖怪が一人。
 ヌルリと長く伸びた胴体に、艶のあるスベスベの毛並み。頭に傘を、手には提灯を持った姿は、どこか古風な釣り人の如く。
「ああ、懐かしい歌だなぁ。でも、オイラにあれを歌ってくれたお姉さんは、もうこの世にはおらんのだよなぁ……」
 どこか遠い目をしながら、二足歩行の獣は、気が付けば橋の上にいた。そして、その欄干に座り歌っている者の姿を見た瞬間、思わず黄色い両目を丸く見開いた。
「お、お姉さん!? 生きて……生きておられたのですか!?」
 懐かしさに我を見失い、獣は二本の足で歩くことさえ忘れ、四足で歌い手に駆け寄った。歌っていたのは、美しい姿をした人魚の妖怪。遠く、西洋の地よりやって来た、マーメイドと呼ばれる種族の女性。
「お久しぶりね、坊や。さあ、もっとこっちへいらっしゃい」
 獣に微笑む人魚の背中から、おぞましい気を放つ翼が生えた。だが、それにも関わらず、哀れな獣は人魚に誘われるがままに、その頭を膝枕に乗せてしまい。
「うふふ……いい子ね。それじゃ……あなたは私の子守唄で眠ってもらおうかしら? ……永遠にね!!」
 次の瞬間、人魚の顔が般若の形相へと変わった時には既に遅し。獣は妖魔と化した人魚に抱き締められて、完全に逃げ場を失ってしまった。
「ふぎゃぁっ! な、なんだ、オマエは!? オマエ……オイラに歌を歌ってくれたお姉さんじゃないな!!」
 暴れる獣だったが、哀しいかな、彼の力では妖魔の腕を振り解けず。もはや、狩られるだけの獲物となった彼の首筋に、天翔人魚の鋭い牙が迫るのだった。

●初恋のお姉さん
「カクリヨファンタズムで、『まぼろしの橋』への道が開かれたようね。今回は、そこに現れるオブリビオンを退治しに向かってもらうわよ」
 事態は一刻を争うが故に、あまり長々と説明している時間はない。そう言って、神楽・鈴音(歩く賽銭箱ハンマー・f11259)は猟兵達に、『まぼろしの橋』についての説明を始めた。
「カクリヨファンタズムの川にはね、時折、渡った者を黄泉に送る『まぼろしの橋』が掛かるらしいの。幽世に倦んだ……要するに、日常に嫌気がさしたり、ちょっと現実逃避したくなったりした妖怪の前に、よく現れるらしいんだけど……」
 そんな橋を、強力なオブリビオンが占領した。そして、『死んだ想い人の幻影』を見せて妖怪を橋に引き寄せ、殺そうとしているのだとか。
「今から向かえば、オブリビオンに捕まっている妖怪が、殺される寸前で助けられるわよ。捕まっているのは川獺(かわうそ)ね。タヌキやキツネなんかと同じで、人を化かすのが得意な妖怪よ」
 もっとも、能力としてはそれだけで、戦闘力は皆無である。後は、せいぜい口から水を噴き出せる程度の能力しかなく、オブリビオン相手には逆立ちしても敵わない。
「橋に踏み込めば、そこは超空間になるからね。オブリビオンを倒すか、あるいは黄泉に行くまでは出ることができないから注意して」
 主だった戦場は橋の上。それ以外の場所は川も陸地もなくなって、不可思議な空間に橋が浮いているだけである。橋は狭く、ともすれば落下の危険性が伴うが、それに対して敵のオブリビオンは、空を飛べるのだから厄介だ。
 対抗手段としては、狭い橋の上という地の利を、逆に利用することだろうか。無論、こちらも飛んで対抗するのは構わないが、それでは相手と五分五分に持って行くのがせいぜいなので、戦いの上でのアドバンテージは得られない。
「一見、不利にしか思えない地形を利用して有利に戦う……なかなか、難しいことだとは思うわよ。でも、このまま何の罪もない川獺が殺されるのを、黙って見過ごすわけにはいかないわ」
 敵のオブリビオンは、どうやら川獺の初恋の妖怪である、『人魚のお姉さん』に化けていたようだ。人を化かすはずの妖怪が、逆に化かされるとは皮肉な話だが、騙された川獺に罪はない。
 思い出を利用し、他者を罠に嵌めんとする卑劣なオブリビオン。その魔の手から、哀れな川獺を救って欲しい。そう言って、鈴音は猟兵達を、カクリヨファンタズムの川辺へと転送した。


雷紋寺音弥
 こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。

 このシナリオは戦争シナリオです。
 1章だけで完結する、特殊なシナリオとなります。

●敵の妖怪について
 カクリヨファンタズムのオブリビオンは「骸魂が妖怪を飲み込んで変身したもの」です。
 飲み込まれた妖怪は、オブリビオンを倒せば救出できます。

●まぼろし橋
 幽世に倦んだ妖怪が渡るという噂の橋で、その先は黄泉へ繋がっていると言われています。
 橋に一歩でも足を踏み入れると、周囲は超空間となり、不可思議な空間に橋だけが浮いている状態になります。
 橋を占拠しているオブリビオンを倒すか、あるいは黄泉に送られるかする以外、超空間は解除されません。
 また、当然のことながら、足場として使えるのは狭い橋の上だけとなります。

●川獺(カワウソ)
 今回の被害者で、動物のカワウソが二足歩行になっただけの姿をしています。
 オブリビオンは、彼の初恋の妖怪である『人魚のお姉さん』に化けて彼を誘き寄せました。
 今から行けば、彼が殺される寸前に助けてあげることが可能です。

●天翔人魚
 骸魂に飲み込まれ、飛行能力を持った人魚です。
 彼女は空が飛べるので、超空間の中を自在に飛行、遊泳して攻撃を仕掛けて来ます。

●プレイングボーナス
 『狭い橋の上でうまく戦う』ための工夫を行い、それが有効と判定された場合、プレイングボーナスが得られます。
 アイテムを利用する、ユーベルコードを使う、川獺に協力してもらう……方法はなんでも構いませんが、『狭い橋の上』という地形を利用しない場合は、プレイングボーナスは発生しませんので、ご注意ください。
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第1章 ボス戦 『天翔人魚』

POW   :    〈鮫〉
【噛みつき】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【記憶を読み取り、精神的な弱点】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    〈天〉
敵より【高い位置にいる】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ   :    〈恋〉
【噛みつき攻撃】が命中した対象の【心臓】から棘を生やし、対象がこれまで話した【恋愛話(真偽を問わず)】に応じた追加ダメージを与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠加々見・久慈彦です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

トリテレイア・ゼロナイン
他者の弱った心に付け込んでの狼藉、其処までにしていただきましょう
疾く骸魂より解放させていただきます、乱暴な方法はご容赦を

どうかご安心を、私の後ろに!

カワウソをかばいつつ噛みつきを大盾の盾受けや剣の武器受けで防御
センサーでの●情報収集と瞬間思考力で飛行ルートを見切って対応

間合いを詰めては一撃離脱、こちらは追う事も出来ず…
やはり、少々分が悪いですね

ですが…

再度の攻撃を怪力●シールドバッシュで弾くと同時、UCを複数戦場へ射出
狭い橋を更に囲む『檻』を防御障壁で形成し人魚を閉じ込め、壁面へ叩き付け

閉じ込められれば不利なのは貴女の方なのですよ

激突からのUCの大出力放電で生じた敵の隙を逃さず接近、剣を一閃



●鳥籠の人魚
 懐かしい歌声に誘われて、罠に嵌った哀れな川獺。正体を現した天翔人魚に捕まって、もはや逃げ場はどこにもない。
「やめてくれぇ! オイラは、食べても美味くないぞ!」
 懸命に抗う川獺だったが、彼の力ではオブリビオンと化した人魚の腕からは逃げられない。このまま、鋭い牙で喉元を引き裂かれ、黄泉送りにされてしまうのかと……そう、思われた時だった。
「他者の弱った心に付け込んでの狼藉、其処までにしていただきましょう!」
「何者……っ!? ぐはっ!!」
 突然、天翔人魚が吹き飛ばされ、川獺は慌てて逃げ出した。見れば、彼の前に立っていたのは、純白の装甲に身を包んだ機械の騎士。
「どうかご安心を、私の後ろに!」
「ああ、面目ない。助かったよ」
 川獺を庇いつつ、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、天翔人魚と対峙する。先の一撃は奇襲を食らわせることができたが、この程度で倒れる相手ではないことは理解している。
「おのれ! よくも、邪魔してくれたわね!」
 怒りの表情を露にし、天翔人魚が飛翔した。橋以外には何もない、極彩色の超空間。その中を、まるで泳ぐかのように飛び回り、天翔人魚はトリテレイアへと襲い掛かる。
「まずは、あなたから黄泉の世界へ送ってあげるわ!」
「面白い! やれるものなら、やっていただきましょう!!」
 真横から喉元を狙ってきた敵の攻撃を、トリテレイアは盾を構えて遮った。だが、それでも攻撃を『受けて』しまったことに変わりはなく、天翔人魚は不敵な笑みを浮かべながら、再びトリテレイアとの距離を取った。
「へぇ、やるじゃない。でも……今ので、あなたの弱点は覚えたわよ」
 攻撃が命中した相手の記憶を読み取り、そこから弱点を探る技。天翔人魚の噛み付きは、単なる物理攻撃に留まらない。
 次は、より致命的な場所を、防がれぬように確実な間合いとタイミングで攻撃できる。それが届かなかったとしても、接触されてしまった時点で、更に記憶を探られトリテレイアの方が不利になる。
「間合いを詰めては一撃離脱。こちらは追う事も出来ず……。やはり、少々分が悪いですね。ですが……」
 ここは狭い橋の上。おまけに周囲は謎の超空間。落下すれば、どこに行ってしまうのかも分からない。
 戦う場所としては、この上なく不利な環境だ。おまけに、相手は自在に飛行できるとなれば、なかなか面倒な話になるが……反対に、相手をも橋の上に閉じ込めてしまえばどうだろうか。
「魔法の杖のように万能ではありませんが……」
 天翔人魚が次の攻撃を繰り出すのに合わせて盾を構えて突撃しつつ、トリテレイアは多数の杭を四方八方に射出した。それらは橋に食い込むと同時に格子の形を成して行き、瞬く間に橋を巨大な鳥籠の如き場所へと変えてしまった。
「……っ!? ぐぁぁぁぁっ!!」
 空中で受け身を取りながら距離を放そうと天翔人魚が羽ばたいたが、檻に触れた瞬間に激しく感電した。トリテレイアの放った杭が変じた檻は、任意で放電することも可能なのだ。
「ぐぐ……お、おのれ……」
 橋の上に落下し、天翔人魚がトリテレイアを睨むものの、これでは切り札の飛行が使えない。そして、飛行能力さえ失ってしまえば、相手には何のアドバンテージもないわけで。
「閉じ込められれば、不利なのは貴女の方なのですよ。もはや、どこにも逃げ場はありません!」
 再び、檻から放たれる電撃の嵐。狭い橋の上では回避することもままならず、天翔人魚は幾度となく雷撃に打ち据えられ。
「黄泉へ帰るのは、骸魂だけで十分です!」
 トリテレイアの繰り出した刃の一閃が、天翔人魚の身体を横薙ぎに斬り裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エメラ・アーヴェスピア
また狭い戦場ね…狭い橋の上という地の利を利用しろ、ね
ふふっ…今回はあの手で行きましょうか。橋の一つがあるのなら、私にはそれで十分よ
少し派手に行きましょう

それじゃあ、この橋で戦わせてもらいましょうか…ええ、橋で、ね
『我が紡ぐは戦装束』!対象はこの橋、選択する兵器は各種魔導蒸気砲や装甲!
つまりはこの橋自体を武装化、私の兵器とさせてもらうわ
橋で戦う場合はもちろん、空を飛ばれても迎撃はできるし防衛も容易
アナタ(川獺)もここに隠れていなさい、勿論私も隠れるわ
…さぁ、問うわよオブリビオン、この橋の何処に記憶があるかしら?
考えがあるなら噛みついてみなさい…噛みつけるものなら、ね

※アドリブ・絡み歓迎



●城塞橋、起動!
 極彩色の空間の中に、ポツリと橋だけが浮いている奇妙な場所。橋の上へと足を踏み入れた瞬間、こんな場所へと入り込んでしまったエメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は、いかにして相手の上を取るかを考えた。
(「また狭い戦場ね……。狭い橋の上という地の利を利用しろ、ね」)
 橋の狭さを利用しようにも、相手は自由自在に飛べるのだ。要するに、地の利は完全に敵の方にあり、何もしなければこちらが一方的にやられてしまう。そう、何もしなければ……。
「ふふっ……。今回はあの手で行きましょうか。橋の一つがあるのなら、私にはそれで十分よ」
 圧倒的な不利にも関わらず、エメラは何故か微笑んでいた。それが癪に障ったのだろうか。天翔人魚は般若の如き怒りの形相となり、エメラの喉元を狙って彼女の周囲を飛び回るが。
「それじゃあ、この橋で戦わせてもらいましょうか……。ええ、橋で、ね」
 それでも、エメラは余裕の表情を崩さない。そして、敵が彼女に噛みつこうと襲い掛かった瞬間、彼女もまた切り札を発動させた。
「必要な兵器の選定終了……魔導蒸気缶装填……魔導蒸気機関起動確認……兵器の換装を開始……完了! さぁ、行ってきなさい!」
「な、なにっ!? なんなの、これは!?」
 突然、橋が様々な蒸気兵装に覆われたことで、天翔人魚は何もできないまま空中で踏みとどまった。
 いったい、これはどういうことだ。単なる橋が、今や強固な武装に覆われた、殆ど城塞と化しているではないか。
「アナタも、ここに隠れていなさい、勿論私も隠れるわ」
「おお、忝い。それじゃ、遠慮なく……」
 強固な装甲に覆われたシェルターのような場所に、エメラに誘われ川獺も隠れた。こうなっては、もう天翔人魚に彼女達を攻撃する術はない。
「……さぁ、問うわよオブリビオン、この橋の何処に記憶があるかしら?」
 考えがあるなら、噛み付いてみろ。ただし、それができるのであればの話だが。魔導蒸気城塞橋の中から挑発するエメラの言葉に、激高した天翔人魚が突っ込んで来たが、気合だけでどうにかできるものでもなく。
「ぎゃぁぁぁっ! おのれ、小癪な……!!」
 橋に装備された蒸気砲による一斉砲撃で、近づくことさえままならない。翼を射抜かれ、バランスを失ったところへ大砲の強烈な一撃を食らい、天翔人魚は橋の下、超空間の作り出した奈落の底へと転落して行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒川・闇慈
「橋とは此方と彼方を繋ぐもの。黄泉へ通じる象徴となるのも理解できますが……残念ながらまだ向こう側へ渡るつもりはないのですよねえ。クックック」

【行動】
wizで対抗です。
相手のUCは噛みつきが発動のキーとなっています。これを利用しましょう。
高速詠唱、全力魔法、範囲攻撃の技能を用いてUCを使用します。
私に噛みつくためには橋まで接近しなければならない。であれば、相手が噛みつきに来る瞬間、UCを発動しましょう。狭い橋の中を刃で埋め尽くし、逃げ場のないキルゾーンに飛び込んできていただきましょうか。

「人魚の肉は食せば不死となるらしいですが……ゲテモノ食いの趣味はありませんのでね。クックック」

【アドリブ歓迎】



●銀刃散花
 どこまでも続く、超空間の奈落の底。その最果てに落ちる前に、なんとか飛翔することで、天翔人魚は辛うじて橋の上に這い上がっていた。
「はぁ……はぁ……。まったく、やってくれるわね……」
 このまま、好き放題にやられてなるものか。今度こそ、この橋に踏み込んだ猟兵を嚙み殺してやろうと、彼女は怒りに満ちた表情で顔を上げるが。
「橋とは此方と彼方を繋ぐもの。黄泉へ通じる象徴となるのも理解できますが……残念ながら、まだ向こう側へ渡るつもりはないのですよねえ。クックック」
 そこに現れたのは、黒川・闇慈(魔術の探求者・f00672)。どこまでも不敵な彼の態度に、天翔人魚は自らの肉体が傷だらけであることも忘れて激高した。
「おのれ……私を馬鹿にするつもりか!」
 敵を目の前にして、殆ど丸腰で余裕の表情を浮かべる。そんな闇慈の態度に、舐められていると感じたのかもしれない。
「……死ね!!」
 その喉笛に食らいつき、心臓に棘を生やすことで、終わりなき地獄へと送ってやる。怒りに促されるままに飛び掛かる天翔人魚だったが、果たして彼女の鋭い牙は、闇慈に届くことはなく。
「咲き誇れ致死の花。血風に踊れ銀の花。全てを刻む滅びの宴をここに。シルヴァリー・デシメーション!」
 武器を取り出すや否や、闇慈のそれは液体銀の花弁と化して周囲に散った。しかも、それは触れた対象をズタズタに斬り裂くという極めて物騒な代物だ。
「ぎゃぁぁぁぁっ!!」
 真正面から突っ込んだことが災いし、天翔人魚は全身を液体銀の花弁で斬り刻まれてしまった。狭い橋の上では、闇慈の繰り出す花弁もまた密集する。前後左右、どこから襲い掛かろうと、自分から刃の群れに飛び込むようなものだ。
「あ……がが……」
 闇慈に到達することさえできず、天翔人魚は橋の上に落下した。気合で起き上がろうとするも、動けば動くほどに花弁へと触れてしまい、その度に肉体を傷つけられる。
「人魚の肉は食せば不死となるらしいですが……ゲテモノ食いの趣味はありませんのでね。クックック」
 相手に一切触れずして倒す。最後まで不敵な笑みを浮かべる闇慈に対し、天翔人魚は何もできず、口惜しくも後ろに退く他になかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ローゼマリー・ランケ
※遊び、アレンジ等歓迎

「ロミィ、私がやります。地の利を得た敵の油断を突くとしましょう……」
「私に出来る事なさそうデスシ、ベルに一任シマース」

戦闘では【見切り、武器受け】で致命傷を避け
これが精一杯とばかりにダガーを単調に【投擲】する事で劣勢を演じる

敵の目が慣れた頃にUC発動、複製分は束ねてわざと避けられる様に投擲し
背を向け撤退をする素振りで攻撃を誘う

これに乗ったなら、先に投擲したワイヤー付ダガーを操作して攻撃し、絡めとって橋へと叩き付ける

「高所からの攻撃は貴方の専売特許では無いという事です……」
「ウワァ、コレは陰湿デスネェ」



●誘う刃
 狭い橋の上に獲物を捕らえ、空中から自在に襲い掛かる天翔人魚。手負いであれど、その戦術は決して侮れるものではない。地の利が相手側にある以上、油断すればそこで終わりだ。
「ロミィ、私がやります。地の利を得た敵の油断を突くとしましょう……」
 ローゼマリー・ランケ(ヴァイスティーガー&シュバルツシュランゲ・f01147)の中に存在するもう一人の自分、副人格のベルトーシカが代わりに言った。こういう場合は陽気で楽天的なローゼマリーよりも、冷静沈着なベルトーシカの方が合っている。
(「私に出来る事なさそうデスシ、ベルに一任シマース」)
 ローゼマリーにも異論はなく、肉体の主導権をベルトーシカへと完全に譲る。その途端、穏やかな表情が一転し、眼鏡の奥の瞳には、鋭く射抜くような眼光が宿る。
「なにを、一人でゴチャゴチャと……死ね、猟兵!!」
 業を煮やした天翔人魚が、牙をむき出しにしてベルトーシカに迫る。咄嗟にダガーナイフで受けて距離を取るも、直ぐに橋の末端まで到達してしまい、それ以上は下がるに下がれなかった。
「……くっ! これ以上は、近づかせません!」
 手持ちのナイフを投げまくるベルトーシカだったが、殆ど狙いもつけていないためか、天翔人魚には全く当たらない。空中を自在に泳ぎ回りながら、天翔人魚はベルトーシカの様子を伺い、噛み付く隙を狙っている。
「あらあら、もう終わりなの? その程度じゃ、私を捉えることなんて、できないよ」
「なんの! まだ、こちらには奥の手があります!!」
 飛んでくるナイフを余裕で避ける天翔人魚に向け、ついにローズマリーが切り札を放った。ワイヤーの付いた、大量のナイフ。それを一度に束ね、巨大な質量弾として射出したのだ。
「ハハハハ! 確かに、それだけの数を一度に投げれば、私も避けられなかっただろうさ。でも、束ねて投げたんじゃ、意味はないよ!」
 最後の一撃も余裕で避け、天翔人魚は丸腰のローズマリーに噛みつくべく急降下を開始する。だが、その牙がローズマリーに向けられた直後、天翔人魚の全身に激しい痛みが走った。
「ぐぁっ! こ、これは……!?」
 ふと、後ろを振り返れば、そこにあったのは先程ローゼマリーが投げたナイフの塊。それがバラバラになって、まるで意思を持った生き物の如く、天翔人魚の翼に突き刺さっていたのだ。
「その動き、封じさせて頂きます。ロミィに倣って、ベル・スペシャルとでも言いましょうか……!」
 続けて、残るナイフも動き出し、ワイヤーで天翔人魚を絡め捕った。そのまま、勢いに任せて橋の上に叩きつける。高所を飛んでいたことが災いし、かなりのダメージを負ったようだ。
「高所からの攻撃は貴方の専売特許では無いという事です……」
(「ウワァ、コレは陰湿デスネェ」)
 今まで、闇雲にダガーナイフを投げ続けていたのは、全てこの時のための布石。投擲に目が慣れ、余裕で攻撃を避けられたと相手に錯覚させることで、油断を誘い後ろから本命の攻撃を叩き込むために。
 全ては、最初からローゼマリーの計算の内。怒りで我を忘れていた天翔人魚など、彼女にとっては釈迦の手の中で足掻く哀れな妖怪と同じだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナイ・デス
このオブリビオンも、世界の為、骸魂をとりこんだ妖怪。川獺さん、その点を忘れないで……良ければ私達が救ったあとの介抱、お願いできますか?
必ず、救うので……!

キャバリア擬きの「ダイウルゴス」を【武器改造】構成している彫像達の変形合体組み合わせ、川獺さんを守るシェルターに
私は橋に地縛鎖繋げて、全身から「聖なる光」を放って【推力移動】
飛び出して、攻撃を誘う

そうして近づいてきたところへ【範囲攻撃、目潰し】全身から『生まれながらの光』を
妖怪さんは癒し、骸魂だけを消滅させる【浄化】の光

噛まれても、恋愛はよくわからないので追加ダメージは少なく
【覚悟激痛耐性継戦能力】例え胸部を失っても、再生する
照らし、救います



●思い出の歌
 度重なる連戦で、傷つき果てた天翔人魚。もはや、まともに飛ぶ力さえ残っていなささそうだったが、それでも彼女は未だ戦うことを止めようとはしない。
「おのれ、猟兵……! こうなったら、一人でも多く、この黄泉路への道連れにしてあげるわ!!」
 怒り狂った天翔人魚は、猟兵に対する恨みだけで立っていると言っても過言ではなかった。その全身から放つ執念、いや怨念は、時に歴戦の兵さえも怯ませる程のものがあるのだが。
「このオブリビオンも、世界の為、骸魂をとりこんだ妖怪」
 それでもナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は知っていた。天翔人魚もまた、世界を救うために、自ら骸魂を取り込んだ妖怪だということを。本当は誰も殺したくなどない。だからこそ、遠慮なく自分を倒すことで、この世界を代わりに救って欲しいと思っていることを。
「川獺さん、その点を忘れないで……。良ければ私達が救ったあとの介抱、お願いできますか?」
「へ? オ、オイラが……?」
 突然、話を振られ、川獺は思わず両目を丸くした。
 あんな恐ろしい形相の妖怪を介抱する? 普段であれば、間違いなく尻尾を丸めて逃げ出しているところだが、これまでの猟兵達の戦いぶりを見て、彼にも少しばかり変化があったのだろうか。
「わ、分かった! オイラも男だ! 任せとけ!」
 必ず救う。そう告げるナイの言葉に続け、川獺が軽く胸を叩いた。そんな彼を守るべく、ナイはまず黒竜の彫像を変形させて、彼の隠れるべきシェルターを構築し。
「一気に行きます!」
 自らは、聖なる光を推力に変え、天翔人魚へと一直線!
 当然、直線的な動きでは相手に読まれてしまうのだが、それでもナイは構わなかった。
「自分から突っ込んで来る!? ……ハハハハ! 血迷ったのかしら?」
 この間合いなら、空が飛べずとも関係ない。勝利を確信し、ナイの腕に噛みつく天翔人魚だったが……何故か、噛み付いた分のダメージ以外、決定的な変化が見られない。
「その程度ですか? では、今度はこちらの番ですね」
 淡々とした口調で告げ、ナイは聖なる光で天翔人魚の視界を奪った。至近距離で激しい光を浴びせられ、思わずナイから牙を放してしまう天翔人魚。それでも、噛み付いたことでナイの心臓に棘を生やし、更なるダメージを与えられるはずだったのだが、何故か何も起こらない。
「ば、馬鹿な!? 私の噛み付きを受けた者は、過去に語った恋愛話に応じて負傷するはずなのに!!」
「恋愛、ですか? すみません、良く分からないのです」
 なんと、ここに来てナイの口から語られた驚愕の事実!
 彼女は恋愛に対する経験が殆どなく、またそういった類の感情も、そこまで強いというわけではなかった。要するに、恋に対して物凄く疎いのだ。当然、それでは天翔人魚のユーベルコードは効果を十分に発揮できず、単に噛みつくだけで終わってしまったのである。
「おのれ……人間らしい感情がないというの!?」
「お生憎様。私は人間ではありません。ヤドリガミです」
 歯噛みする天翔人魚を他所に、ナイは更なる光を放った。それは、本来であれば人を癒し、治療するための術。オブリビオンと化した以上、倒さぬ限りは元の姿に戻れない。故に、本来の姿である妖怪にもまた、光は届かぬはずなのだが。
「ぐぅ……! 馬鹿な! 癒しの波動程度で、この私が滅せられるはずが……」
 それでも、何故か天翔人魚はダメージを受けた。癒しの効果とは関係なく、ナイの光には浄化の力が宿っている。満身創痍の肉体で、そんなものに触れてしまえば、傷口から浄化の力が一度に注ぎ込まれてしまう。
「そんな……この私が……付喪の類などに……」
 最後は光に飲み込まれ、天翔人魚は消え去った。すると、今まで周囲に広がっていた不思議な空間も消え失せて、橋は元の場所に戻っていた。
「お、終わったのかい? やれやれ、とんでもない目に遭ったよ……」
 未だ怯えた表情で川獺が辺りの様子探るものの、もはや怪異は過ぎ去った後。そして、天翔人魚のいた場所には、小さな人魚の少女だけが残されており。
「え……? もしかして、オイラに襲い掛かってきたのは、あの女の子だったのかい?」
 怪物の正体が分かり、川獺は拍子抜けした顔で呟いた。骸魂さえ祓ってしまえば、カクリヨファンタズムのオブリビオンは、どれも善良な妖怪なのだ。
「う……ここは……」
 やがて、橋の上で人魚の少女は目を覚ます。目の前にいるナイと川獺。その二人の姿を見て何かに気づき、慌てて背筋を伸ばして頭を下げた。
「あっ! もしかして、あなた達が助けてくれたんですね! ありがとうございます!」
 自ら望んで骸魂を取り込んだとはいえ、今回は色々と迷惑をかけてしまった。深々と礼をした後、人魚の少女は橋から川の中へ帰ろうとしたが……ふと、何かを思い出したようにして飛び込むのを止めた。
「あの……」
 少女が見ているのは、ナイではなく川獺の方だ。いきなり視線を向けられ、川獺は何がなんだか分かっていない様子だが。
「もし、よろしければ……私に、歌を教えていただけませんか? あなたの……大切な人が歌っていた歌を……」
 オブリビオンと化した際、天翔人魚が口ずさんでいた歌。記憶の片隅に、朧げに残るだけのそれを改めて教えてくれないかと、人魚の少女は川獺に頼んだ。
「えぇっ!? で、でも……オイラなんかで、いいのかい?」
 自分は、しがない獣の妖怪だ。どうにも引け目を感じてしまう川獺だったが、最初にナイから言われた言葉を思い出したのだろうか。
「……分かったよ。オイラでよければ、お姉さんから教わった歌、君に全部教えてあげるよ」
 カクリヨファンタズムに現れる、まぼろしの橋。それは、幽世に嫌気がさした妖怪を、黄泉へと誘う危険な場所。
 だが、そんな橋が川獺や人魚の少女の前に現れることは、もうないはずだ。彼らはそれぞれ、幽世にて生きる自分なりの意味を、新しく見つけたようだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月17日
宿敵 『天翔人魚』 を撃破!


挿絵イラスト