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大祓百鬼夜行⑦〜千鳥と戯れ

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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●うたげ
 ぽっかり浮かぶ満月の、その下に。
 この世のものとは思えぬほど、美しい声と笛の音が響き渡る。

 すすきの原を 吹き渡る
 あれは待つ風 遠い世の
 うつとりねむる 人の子ら
 こっちへこいこい 歌おうぞ
 こっちへこいこい 踊ろうぞ
 燐光のやうな月の下
 おぬしを喰ろうてやろうぞなあ
 みぎのめだまは わしのもの
 ひだりのめだまは あげましょか

 ぴいひゃらぴいひゃら
 とん しゃん ぽん

 ――アァ、うつくしや
 妖たちの声に、人の子は逆らえない。
 ふらふらついつい近寄ったならば、
 そのめだまは諦めるしかないだろう。


●かり
「みなさま、お疲れ様でございます…集まって頂き、ありがとうございます」
 エンドゥーシャン・ダアクー(蓮姫・f33180)はゆるやかに腰を折って挨拶する。
 そして、にこりと微笑んで端的に告げた。
「此度は、狩りです」

 よくよく聞いてみると、こういう事らしい――
 カクリヨファンタズムのすすき野に、凶暴化した妖怪の群れが現れた。
 妖怪たちは、高く伸びたススキに隠れて獲物を狩ろうとしているらしい。

「この妖怪――名を迦陵頻伽と言いますが、みなさまご覧になったことはありますか?」
 極彩色の人鳥一体、つまり鳥の羽や足をもつ妖怪。
 人の子どもが何より好物と言う獣が、このすすき野に集まっている。

「少々厄介なのが……この迦陵頻伽、人や獣を惑わす“滅びの美声”を持つのです。みなさまに置かれましては、この声に重々気を付けていただきながら、迦陵頻伽に気づかれる前に、制圧していただきたいのです」

 さらに、とエンドゥーシャンは付け足して。
「ここは常に満月が照る夜だとか。明るい満月の光を利用し、“逆奇襲”を仕掛けることができれば、有利に事が運ぶかもしれません」

 ここまで説明して、エンドゥーシャンはきりりとその顔を上げた。
「この道を制圧せねば…軍門に下った親分たち皆さまを助けるのは難しいでしょう。皆さま、どうぞお力をお貸しください」


南雲
 初めまして、またはこんにちは、南雲と申します。
 大祓百鬼夜行、心情の部です。

●プレイングボーナス……妖怪軍団を逆奇襲する。

●シナリオ概要
 集団戦です。

 ①迦陵頻伽の声に気を付ける
 ②満月の光などを利用して、奇襲をかける

 カクリヨファンタズムのオブリビオンは「骸魂が妖怪を飲み込んで変身したもの」です。飲み込まれた妖怪は、オブリビオンを倒せば救出できます。
 心置きなく、倒しましょう。


●プレイングについて
 同行者がいらっしゃる場合は、【相手の名前(実際の呼称)と、fからはじまるID】または【グループ名】をご記入ください。

 人が見ていて「いやだなぁ」、人がされて「いやだなぁ」となるような、他人への狼藉は書くわけにはいかないと思っています。

 年齢を制限せねばならないような文字の並びは、公の場で人にお見せするものではないと思っています。
 以上の2点に触れるような内容は、申し訳ありませんが採用はしません。

 遅筆ではありますが、再送の無いよう努めてまいりたいと思います。
 どなたさまでも、お気軽に。
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第1章 集団戦 『迦陵頻伽』

POW   :    極楽飛翔
【美しい翼を広げた姿】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【誘眠音波】を放ち続ける。
SPD   :    クレイジーマスカレイド
【美しく舞いながらの格闘攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    迦陵頻伽の調べ
【破滅をもたらす美声】を披露した指定の全対象に【迦陵頻伽に従いたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

大崎・玉恵(サポート)
『あまり、老狐に無理をさせるでないぞ』
 妖狐の戦巫女×陰陽師女です。
 普段の口調は「女性的(わし、おぬし、じゃ、のう、じゃろう、じゃろうか?)」、気にいったら「尊大(わらわ、おぬし、じゃ、のう、じゃろう、じゃろうか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、公序良俗に反する行動はしません。
ユーベルコードを絡めた【誘惑】による認識操作や籠絡、【呪符】に【破魔】【焼却】等の【呪詛】を込め【呪殺弾】とする、薙刀による【薙ぎ払い】【2回攻撃】が得意です。
卑劣な手段をとる敵には【威厳】【存在感】を放ち神として振る舞います。



西から風が吹く。風は人の背丈ほどもあるすすきを靡かせ、すすきは楽の音に合わせて踊っているかのよう。
迦陵頻伽たちが数羽、横笛を吹きながらその桃色の振袖をふるう。

 ――ぴいひゃらぴいひゃら とん しゃん ぽん

 極彩色の翼を腰から広げ、嗚呼ここは極楽かと見紛うばかりの宴の席。

(「あれは迦陵頻伽じゃの」)

 大崎・玉恵(白面金毛・艶美空狐・f18343)は見た目は幼い少女だが、その実、長い時を経てきた百戦錬磨の妖狐。迦陵頻伽は対峙したことは無いものの、噂には聞いていた。玉恵はその存在感を結界で覆い隠し、すすきの原に隠れて宴の様子を窺って。
 桜を散らしながら笛を奏でる迦陵頻伽たちは、その音で生き物たちをおびき寄せている。
 すると、二羽の兎人の妖怪が、迦陵頻伽を挟んで玉恵の真向かいからひょこりと顔を出した。音につられてぴょこぴょこと近づいてきてしまったようだ。幼い少年と少女の兎人は、耳をぴくぴくと音の方へ向ける。その赤いよっつの目はうっとりと聞き入るかのように閉じられて。
 閉じられていた迦陵頻伽たちの目が、すうと開けられて鮮紅の目があらわになる。

(「…悪いがあれを利用させてもらおう」)

 数多の戦を切り抜けてきた玉恵は、この好機を逃さなかった。
 迦陵頻伽の注意が二羽の兎人に向けられたその瞬間、呪符を取り出し即座に通力・岩戸開放を唱える。通力により破魔と焼却の呪詛が常よりも込められたその呪符は、真っ直ぐ迦陵頻伽たちの色とりどりの翼へ放たれた。

「ギャァァァァァ!」

 ぼっと燃え上がる翼に驚いた迦陵頻伽たちは、火を消そうと翼をはためかせる。それがまた隣の迦陵頻伽へと燃え移り、阿鼻叫喚たる様。
 聞くに堪えないほどの鳴き声を耳にして、兎人たちもはっと正気を取り戻し、一目散に逃げていく。
 ――後に残ったのは、灰と煤だけ。

「――…戦はいつの世でもなくならぬのう」
 西から風が吹く。玉恵の金色の髪が風に遊び、その目はこの幽世のすすきの景色を見つめて。永き世を生き、栄枯盛衰を見てきた神の目には、何が映るのだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

トロン・クラフト
アドリブ、連携歓迎
シルバ(ロバ)は近くで待機!
月の光の方からダイナミックに奇襲をかけるぞ

子供が大好物なのかー?
俺も食われないように気をつけないとなー…。

声の対策は…俺、耳良いから悩ましいぞ!
ここはシンプルにだな〜
耳栓…持ってこ!

それで駄目だったらねー
大きな声を出して相手の声を聞こえないようにするぞ!

「うおー!勇者のトロンとシルバ(ロバ)が相手だー!シルバは人参と柿が好きだぞー!俺は肉だー!」

好きなもの、色々叫ぶ!
食べ物は何でも好きだぞ!

隙有らばグラップルで相手の喉を突いて声を遮断するぞ!

嫌いなものは悪いオブリビオンだー!

格闘で戦いながら翼を狙って体勢を崩し、トドメの一撃必殺をお見舞いしてみる!



 すすきの原の、東のほう。
 月の光を背にして、すすきの間からぴょこんと見えたのは、白狼の耳。トロン・クラフト(駆け出し勇者・f32567)の耳だ。その少し後ろには、ぱたぱたと耳をはためかせた白ロバのシルバ。
 ふたりは少し離れたところから、じいっと迦陵頻伽の宴の様子を窺っている。
 笛を奏でながら飛び舞う迦陵頻伽たちは、その笛と歌声で妖怪たちを魅了し、「こっちへこいこい」と誘い出して喰うという。中でもここで暴れているものたちは、子どもの肉が好物だとか。
 トロンは眉根を寄せて、腕を組んで考える。
「確か、子どもが大好物なんだよなー…俺も食われないように気をつけないとなー…」
 後ろでシルバが「ぶるる…」とちいさく。「気を付けようね…!」と言っているかのように心配げ。
 歌と笛の音は、風に乗ってかすかに聞こえてくる。
 あっそうだ、とトロンは目を輝かせて、ポケットから何かを取り出す。耳栓だ。その耳栓を、きゅむっと自分の耳に詰めて。もちろん、大事な仲間のシルバの耳にも、きゅむきゅむと。ぱーっと満足げな笑みを顔いっぱいに広げて。
「これなら多少は大丈夫そうだなー!よーしいくぞー!」
 そろそろと前進していくと、もちろん迦陵頻伽たちの歌声もより鮮明に聞こえるようになってくる。耳栓をしているものの、やはり全ては防げない。
「あれ、駄目かー?しょうがないな、こうなったらー…」
 トロンは空を仰ぐ。空には月が煌々と照っている。
 ――うん、いける!
 トロンはシルバにひとつ頷くと、すすきからバッと飛び出し大きな声で叫んだ!
「うおー!勇者のトロンとシルバが相手だー!シルバは人参と柿が好きだぞー!俺は肉だー!」
 ぎょっとしたのは迦陵頻伽たち。
 獲物を捕らえようと楽を奏でていたら、突然何かが、なぜか食べ物の名前を連呼して向かってくる。しかも、その後ろにはもうひとつ黒い影。
 月明りを背にしたものだから、迦陵頻伽たちにはトロントシルバの姿がすぐには認識できなかったのだ。
「にくー!にくーー~~!!」
 ぶるんぶるんと腕を振り回し、迦陵頻伽の群れへ突っ込むトロン。「肉!」と叫びながら戦う様はまさに狩り、迦陵頻伽たちの武器であり足である翼を的確に狙ってこぶしを振り上げ、敵の体制を崩す。声を出そうものならその喉を突く。
 ロバのシルバも負けじと「ぶるひぃん!」といななきながら、頭突きをお見舞いする。
 迦陵頻伽たちはおおわらわになって、無事なものは翼で逃げようとする。逃げる際には、背を向けるもの。その隙をついて、トロンはがしっと迦陵頻伽たちの足をつかんだ。
「逃げるのは卑怯だろー!悪いオブリビオンは嫌いだー!」
 ぐっと下へ降ろして、その背に一撃必殺、とどめの拳を喰らわせる。

 ――宴のあとに、残ったのは迦陵頻伽たちの倒れた姿。
 トロンはシルバの背に乗って、ふたりですすきの原を闊歩する。シルバの背に揺られながら、トロンはお腹を押さえて下がり眉。
「あー、がんばったから、腹減ったなー…」
 その言葉にシルバが「ぶるる…」と賛成の声を上げて。
 きっとこの後、グリモアベースに戻ってきたら。肉と人参と柿が、感謝のしるしに振舞われるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天星・雲雀
子供達は食べさせません!

被害が出る前にさっさと骸魂を倒しましょう。

音楽には音楽で相殺です。オトモ!敵の曲調を乱す様なのを頼みます。

【行動】事前にUCで、自分にだけ聞こえる範囲で(髪飾りの裏から)小さくなった狐火の『オトモ』達に演奏してもらいます。(技能:火炎耐性で余裕です)

遠くのざわめきより近くの演奏ですね、鳥さんが何言ってるかなんてわかりませんよ。

芒に隠れて移動します。
風になびいた芒の音が小さな足音を消してくれます。

近づいたら宝貝『真球鍋』の分身機能で数を増やして投擲。
衝撃で閉じる蓋が、手足羽先を巻き込んで飛べなくします。

さらに投擲した先で分身させて、膨大な数の真球鍋が敵に殺到して倒します。



 迦陵頻伽たちの歌が、とん、てん、しゃんと鳴り響く。色とりどりの羽をばさりばさりと動かして、笛の音に合わせて舞う鳥人たち。あの音は魅了の音、子どもたちを喰らうための、まやかしの美しさ。
 その宴が、すすきの原の真ん中で繰り広げられている。

 すすきの原の南の方で、天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)はすすきに身を隠し息をひそめて宴の様子を観察していた。
 聞こえてくる楽の音は、今は遠い。だが、力の弱い生まれたばかりの妖怪たちは、微かでも引き寄せられてしまうだろう。
 ――被害が出る前に行動しなくては。
 雲雀は覚悟を決め、狐火の「オトモ」を召喚した。雲雀の周囲に、赤青ふたつの狐火がぽっと灯る。
「オトモ!敵の曲調を乱す様なのを頼みます」
 雲雀がそう命じると、オトモたちは小さく分裂して、牡丹の花の髪飾りの裏に、小さな花のような姿に変じてくっついた。
そして奏でられるのは、笛のみならず、和太鼓や三味線、尺八などを用いた賑々しい音楽。
 雲雀のぴょこんとした耳のすぐ傍で、雲雀の耳にだけ聞こえるように。オトモたちは、まるで牡丹の形のヘッドホンにするみたいに、牡丹の髪飾りを蓋代わりに引き寄せる。
「遠くのざわめきより近くの演奏ですね、鳥さんが何言ってるかなんてわかりませんよ」
 オトモたちの働きに、雲雀は満足そうにくすくす笑う。
 そんな雲雀の頬を、風がくすぐって。折よく風が吹いてきた、これに紛れれば足音も消せるだろうと、雲雀は身を隠しながら迦陵頻伽たちとの距離を詰めていく。

 さやさやさや。
 迦陵頻伽たちはそれぞれの笛を手に、すすきの原の真ん中で獲物を呼ぶ。

 ――おぬしを喰ろうてやろうぞなあ
   みぎのめだまは わしのもの――

 物騒な謳い文句が歌い終わらぬうちに、迦陵頻伽めがけて鍋が飛ぶ!
 その鍋は空中で四つに分裂し、かぱりと開いた鍋が迦陵頻伽の翼や趾に当たった瞬間、その衝撃で蓋が閉じて、ぱっくりはさみ込んで。
 まるで虎ばさみのようなこの鍋は、宝貝「真球鍋」。
 雲雀が投げたこの鍋は、飛んでくる間に分身してその数を増やし、周囲にいた迦陵頻伽全ての手足に食いついた。
 迦陵頻伽たちに戸惑いと混乱が生じる。
 ぎゃあぎゃあと鳴いて飛べないうちに、さらに分身して数を増やした真球鍋が、迦陵頻伽たちの身体へどかどかどかと殺到する。
 宴の途中、思いもよらぬ攻撃を受けて。
 きゅう、とのびた迦陵頻伽たちを覗きこんで、雲雀は腰に手を当てびしっと指さした。
「子供達は食べさせません!」
 ぷんっと踵を返した雲雀のあと、すすきの原に風が吹いて。
 ――焼き鳥のような香りが漂ったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノヴァ・フォルモント
煌々と降り注ぐ月明かりは同時に深い闇も生み出す
すすき野を見渡せる程の距離
木々の陰に居る自分の姿は視認出来ないだろう

歌が聴こえる
美しい歌声だ
満月に照らされた穂はまるで黄金の様に輝いて
極彩色の鳥達が戯れに宴を開く
こんな時でも無ければ暫く聴いていたい所だが

この歌声は良くないな
気を抜けば誘われてしまう気がして

彼方の歌声が聴こえるならば
此方の歌声も届く筈だろう

始めは歌声だけを風に乗せ
彼らの声を真似て重ね交ぜるように
仲間が増えたと思っただろうか
残念だが俺の声が聴こえてしまったら
後は自ずとわかるだろう

本当に彼らの歌声は綺麗だ
生まれ変わった後もその声が失われぬ様に祈りを込めて
いま一時は、静かに眠ってくれ



 濃藍の空に月が照る。
 月下の鳥人は楽を奏で、その極彩色の羽を広げて誘うように舞い躍る。
 金色のすすきはまるで観客、鳥人の舞に合わせて踊るように彼方へ靡いて、此方へ靡いて。
 幽世の世界のはずれの不思議な宴。その景たるや、何かを寿ぐような、めでたい事のようにも見受けられる。
 すすきの原の北のほう、少し離れてすすき野を見渡せる木陰で、ノヴァ・フォルモント(待宵月・f32296)はその歌声を静かに聞いていた。
 闇の中にひっそり佇む端麗の青年は、地に降り立った月のような髪の色と、夕焼け残した朱色の瞳。
 うたうものとして、迦陵頻伽たちの歌に目を向け耳を傾ける。

(「――美しい歌声だ」)

 折も折、戦時で無ければ聞いていたいところだが――
 流れ聞こえる歌は、それでもやはり毒を含んだもので。

 ――こっちへこいこい 歌おうぞ
 ――こっちへこいこい 踊ろうぞ

 誘うように歌う声は、その内に毒を溶かした柔らかな水のように流れ、染み込んでいく。
 気を抜けば、ふらりと足を踏み出してしまいそうな。

(「…良くないな」)

 ノヴァは緑陰の中からそっと、その花唇をひらいて歌を風に乗せて送りだす。風に乗ったその美声は、迦陵頻伽の歌声に似せて。
 
 ――友か、友よ近くにおるのか
 ――今宵は宴、友よ此方へ――

 はたはたと、迎え入れるように翼をはためかせて喜ぶ迦陵頻伽たちは、果たして新たな友に出会うことも、新たな友を出迎えることも叶わず。一羽、一羽と眠りに落ちるように、ほとほと地へと堕ちていく。
 最たる美を幾重にも重ねたような、なんとも言えない、きれいな旋律。とろけるように、沁みるように、迦陵頻伽の耳へと届いて。それらは迦陵頻伽に夢を魅せる。
 そこらいちめんの黄金のすすき、空にぽっかり浮かぶ金の月と重なり合って、明るい天鵞絨のような敷物がひろがって。そのうえを清かな風が通り過ぎていく――そんな、夢。

 すべての迦陵頻伽が静かな永遠の眠りに落ちるころ。
 ノヴァは三日月のような金の竪琴に、そっとその指を添わせていた。

 ――彼らの歌声は、本当にきれいだから。

 生まれ変わった後も、どうかその声が失われぬ様にと。
 最後に一音、すすきの原に、縮緬のような余韻の波を立てて。

「――いま一時は、静かに眠ってくれ」

 ノヴァの祈りのようなうたが、終焉を告げる。


●終宴

 静寂を取り戻したすすきの原に、一陣の風が吹いて。
 うつくしい月星輝く空に、ひとつ。願いを叶うる星が、流れていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月13日


挿絵イラスト