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大祓百鬼夜行⑪〜地獄経由冥府逝き

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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●冥府へ案内しろ
 古びたバス停在る所に通りかかる物があるとすれば。
 それは誰かを拾い、遠くの地への旅先案内を行うバスの存在だ。用事もなく、バス停のベンチに座り込む者があるとすれば――当てなき旅を始めようとする者だろう。
 風のように疾走る"妖怪バス"が今日もまたどこからともなく妖怪の何者か、もしくは誰かを拾い集めて寄り合いバスは、穏やかな時間を駆け抜ける。
 乗った乗客の思う場所に届けるまで、バスは無休で走り続けるのだ。
 ただ――その車両に"車輪"など一つとしてないけれど。

「ね え え ん ま お う は ど こ に い る の か な」

 閻魔王。その名を知るのは、大抵が地獄の獄卒として働く者。
 生と死を分かち、闘う者たちの上司の名だ。
「……はい?お客様、どうかお席の方にお付き頂ますようお願いします。運搬中に立ち上がるのは大変危険です」
 安全運転しているとは、妖怪バス自体も思っていないのだ。
 真っ平らを走っていない。道路上だけを走っていない。
 時々空路を、風を足場に駆けているから、道は問わない。
 "妖怪バス"が進む先は、どんな環境だろうと、選ばれた時点でどこでも道である。
 暗黙の了解"妖怪バスへ乗車した時は、開いてる席に座りましょう"を理解しない客を拾ってしまったとは。

「お し え て く れ な い ん だ ね」

 ずももももと巨大な体躯で空間を埋め尽くすように乗客さえ飲み込んで広がっていく。
 きゃらきゃらと子供のような笑い声を放ちながら、その存在はバスの内部でバス妖怪を苦しめる。
「ひゃあああああ!!!」
 内部の異常に対する状況打破を行う前に始末書モノの業務に支障を出すことが確定した"妖怪バス"の悲鳴が、農村道に大きく大きく木霊した。

●地獄へ連れて行け
「前提として言おう。妖怪バスは、生き物だよ。すげえバカでかいネコだ」
 バス停のヤドリガミであるフィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)が話す内容を掻い摘んで説明しよう。
「どういう原理でバスの概念として働いているかは聞くな、俺様も答えられない。ただ、バスと猫が合体したそれが、妖怪バスなんだッてことで一つ」
 ヘッドライトで目を光らせてる顔。
 長い尾は後方に。乗口と下り口は共通で、脇腹の扉が一つだ。窓ガラスは自前のものではなく、"妖怪バス"として働く際に概念を取り込みはめ込んだものである。
「……アイツらは運ぶのが仕事なんだ。悪いことをする妖怪では、ないよ」
 襲撃されるのは、業務運行中での出来事になる。
 農村道をひたすら疾走る"妖怪バス"の中で異常事態が起こった。すなわち。
「バスジャックだ。こいつ多分、すげえ運が悪い日だッたんだろうなあ……」
 ご愁傷さま、といいたげに引きつった顔を見せてフィッダはマスクで顔を隠す。
「バスジャック犯は、元地獄の獄卒であッたとされる異形だ。そいつは上司の顔を知らねェらしく、バス停という目印がある限りどこまでも乗客を運ぶ"妖怪バス"から情報を聞き出そうとして一方的暴行兼業務妨害を働いているらしい」
 バス内部の事となると、運転手でありバスそのものでもある妖怪には排除行動は行えない。気まぐれなネコとは言え、"現在業務中"なのでなるべく定時で"時刻通りに次のバス停へ"到着しなければならないのだ。
「俺様もバスに縁がある身なんで、事件の対処を頼まれてくれないか。少し放ッて置くのは哀れに思うんだよ」
 バスジャック犯は骸魂を多数飲み込んで異常な姿へ変貌したオブリビオンだ。
 妖怪バスは、オブリビオンではない。
 ごく普通の、幽世運行株式会社において仕事をこなす働き者のひとりである。
「……正直、閻魔王ッてのにはちョッと興味があるけど、バス停がないならこいつは其処まで行くことはないんだ。俺様も、そんな話聞いたこと無いし……」
 バスは常に運行状態を維持している状態。
 すすめ、すすめ、つれていけ。犯人の要求は、それだけだ。
 停まった時点で怖い目に遭わされる気がして、半泣き状態で妖怪バスは駆けている。
「アンタたちには、なんとかしてバス内部の犯人を懲らしめて欲しいんだ」
 走るバスへの突入方法や、狭い車中での戦法を考える必要があるのだが――。
 さらりとフィッダは頼み込む。
「言ッただろ"バス停"のある場所をこいつは必ず通るんだ。さて、――俺の本体はなんだッたでしョうか?」
 状況の手伝いは行うと、バス停の少年は笑っていた。

 送った先でバスの時刻を適当に書き込んで、バス停にべたりと貼り付けるだけで多分事は済むとグリモア猟兵は笑うのだ。テレポートした先で少し待っていると――大型車両の"疾走る音が聞こえてくる"ことだろう。


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 これは戦争依頼に属する【一章で完結する】依頼となります。
 サムネ立ち絵はただの真の姿なので、妖怪バスの姿というわけではありません。

 プレイングボーナスは【走るバスへの突入方法や、狭い車中での戦法を考える】。

 田んぼだらけの農村道で、妖怪バスを待ち構えます。
 臨時バス停をOPにて設置していましたが、自分でなんとかできる事を思い浮かべた方は独自ルートでもOKです。妖怪バスは車内異常が解決したあと、次のバス停にたどり着くまでは止まりません。このシナリオでは疾走る車両のなかに飛び込んで、なんとか(物理)する事が求められています。

 乗客は存在していますが、誰も口を挟みません。地蔵顔を決め込んだ地蔵妖怪だらけです。背景音には妖怪バスの泣き言ばかり。妖怪バスもまた戦力には成れません。
 車内が壊される外装が壊れるくらいは多分、気にしなくて大丈夫です、妖怪バスの頭の中は、始末書のことでいっぱいですので……!
 爆弾を積まれているわけではないので、減速くらいなら出来るでしょうが……それ以上は交渉次第です。手は出せません。
 バスの内装は、ごく一般常識の範囲でご想像ください。

 ボスの見た目は、誰がみても子供に見えます。絶対おかしいもの、と理解しても子供に見えます。たどたどしく喋るので、会話には向きません。目的はOPに記載してあるとおり【上司のもとに連れて行け】です。

 全員採用は行えない場合がありますので、プレイングに問題が無くても採用を行えない場合が存在します。ご留意いただけますと、幸いです。
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第1章 ボス戦 『無邪気』

POW   :    あ そ ぶ
レベル×1tまでの対象の【身体や建造物など】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    ど こ か な
【生物を見つけること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【恐怖を与え動きを封じる視線】で攻撃する。
WIZ   :    あ れ が い い
攻撃が命中した対象に【強い興味】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【自身から発生した複数体の分身】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は霞末・遵です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鬼桐・相馬
●POW
元獄卒といえ理由を述べない者を閻魔王の元へ連れて行く訳にはいかない

臨時バス停に迫るバスへ〈ヘヴィクロスボウ〉に接続した〈宵鷲の鉤爪〉を射出、乗降口枠に引っ掛ける
勢いをつけ[ジャンプ]しガラスを割って車内へ突入

乗客へは注意喚起
しっかり座っていてくれ

元同僚へは〈冥府の槍〉で攻撃
乗降口付近での戦闘を意識する

外の風景に頑強な木や建造物等を捉えたらへワイヤーを射出し固定
UCを発動、派手に軌道を変えたバスを[怪力]で掴んで支えるよ
乗降口から敵を遠心力と共に蹴り出し燃え移らせた炎で[焼却]を

妖怪バス、お前でかいネコだろ
体勢を整えて経路に戻れ

「妖怪バスへ乗車した時は空いてる席に座りましょう」
大事だな



●その獣は駆けていく
「本当に来るとは……」
 どどど、と力強く駆ける重厚感のある音が遠くから、砂埃を巻き上げて走ってくる。ヘッドライトの瞳で道をカッ、と照らしてはいるが、上下右左、に戦闘の頭は振られていた。まばたきの数を増やし、わかる人には伝わる光のモールス信号による"ヘルプ"を訴えているようである。
 ただ、こんな誰も居ないところでは、光に気が付くものというのはそういない。
 現在の"妖怪バス"に必要なのは、誰かからの緊急の助けなのだ。
 鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)にも、ヘッドライトの明かりは見えた。
「痛みがないことを祈ろう。もしもの時は謝罪の言葉を述べるとして」
 手早く準備するヘビィクロスボウ。
 黒塗りの重弩を、妖怪バスは見て取れまい。
 臨時バス停の脇を、通り過ぎる――瞬間に宵鷲の鉤爪に寄る射出が行われた。
 ぐぅん!と体が引っ張られ、思い切り飛び込んだことでふわあ、と相馬の体が空中に舞った。
 妖怪バスの上空を、ふわりと浮かんだ体。
 風を切って疾走る速度に、自由に遊ばれて持っていかれる。
 ――照準は逸れずに乗降口枠に掛かっていたな。
 ――まあ、横っ面から飛び乗り乗車するヤツがいるとは思っていないだろう。
 ワイヤー便りに妖怪バスの天井へと着地して、それから、ワイヤーの長さを短くなるまで回収して――勢いを付けてガラスを割って相馬は侵入を果たした。
 ぱりぃいいん。激しく窓が損傷した。緊急事態に付きこれは軽微の事案である。
 この間、臨時バス停から数百メートルの事である。
『う わ あ だ あ れ』
 耳障りなバスジャック犯の声を一度無視し、相馬が確認するのは内部の現状把握。
 まずは本来運転席の在る方――先頭側――――。
 ――妖怪バス、軽快に運行中。標的らしき存在は有り。
 ――想像したよりも激しい揺れは今のところ無い。
 それから、後部へ続く後半分。
「しっかり座っていてくれ、決してその場からは動くな」
 厳しめに乗客に声を掛ければ、カクカクと、頭を縦に揺らす妖怪たちの姿が目に入る。彼らは本当に、動かないと約束してくれることだろう。
『ね え え ん ま お う の い る ば し ょ は ど こ』
「……ああ、元同僚なのか」
 地獄の獄卒なら、知っていることの方が多いのに。
 目の前にいる"無邪気"なそれは何処までも子供に見えた。
『こ の ネ コ い じ わ る す る ん だ よ』
「意地悪してないですよー!うわーーん!」
 妖怪バスは泣き叫んでいる。業務上の口調も、何処へやらだ。
『ね え き み は ご く そ つ で し ょ お し え て よ』
「断る。元獄卒といえ理由を述べない者を閻魔王の元へ連れて行く訳にはいかない」
 案内も、所在も。全ての返答を黙秘する。乗降口付近を死守するように立ってそのように告げれば、"無邪気"なそれは叫びだす。
『そ ん な こ と い わ な い で よ』
 ぞわああと巨大な体躯に複数の頭がぶくぶくと増えていく。
 ――この存在は何だ。
 ――妖怪か。それとも、ただのバケモノの成れの果てか。
 子供というには恐ろしい怪力を込めて、固定された座席をぐいんと持ち上げて相馬へ激しく投擲!
 怒り混ざりの投擲だ。
 ぶぉん、と吹っ飛ぶは一人用座席――顔面狙いで容赦がない。
「持ち上げて遊ぶつもりか、ん。その程度か」
 手にした冥府の槍で串刺しにして、貫き縫い留めて燃やし斬る。
「お客様ぁ~~~困りますよぉ~~~!!」
「備品の事は後で文句は幾らでも聞こう」
 駆ける妖怪バスの進む先は、太い幹の木を植林するエリアに踏み込んでいた。
 妖怪である以上、道は問わない。
 ――ふむ、丁度いいな。
 ワイヤーフックは回収済み。片手でヘビィクロスボウを構え直し、太い幹に打ち込んで狙いが十分に掛かった事を確信する。
「ひとつだけ言う。大きく揺れるぞ」
『え え ? な ん の は な し ?』
「……脳天気な奴め。鬼の力、見せてやろう」
 遊んでやるとは一言も言っていない相馬である。
 魅せつけるものは"獄卒とは何たるか"。
 固定したワイヤーは強靭だ。進行方向とは逆の方向に引っ張られ、正面衝突でも起こしたように、妖怪バスは大きく揺れた!
 後ろに大きく仰け反って、大きくバランスを崩したのである。それはまるでゴムのように跳ね返った。ネコの足が浮いた気がする、というのは相馬の体験談だ。
 上下が逆転してぐるん、と視界が周った。
『お わ あ !』
 派手に、強引に軌道を変えたバスを相馬は怪力で支えていたので――回転に巻き込まれたのは"無邪気"なそれ、だけである。
 バス自体と相馬、乗客に異常はない。
 ひとりだけごろん、ごろんと派手に車内で回転する黒い黒いデカブツが、乗降口に近づいてくるのを相馬はニヤリと口角を上げて。
 槍から燃え移らせた炎で体ごと延焼に持ち込んで問答無用にドガァと蹴り出す。
『あ あ あ あ あ あ』
 抵抗はとても薄く、燃える塊の姿で耳障りな声がを放ちながら、黒い体躯はバスの外に転びでていった。悲鳴はどんどん遠ざかる。
「妖怪バス、お前でかいネコだろ。順路に戻れ乗客の安全を優先しろ」
「はわあ!?そ、そのとおりですね、すみません……!立て直しますニャー!」
 まるでネコが伸びでもするように体を一度だけ伸ばし、疾走る体制を取り戻し、妖怪バスは駆けていく。適当な開いた席に座り込み、暫し妖怪バスの走りをほのぼの堪能することにした相馬。
 ――景気、速度。それなりに悪くない。
「妖怪バスへ乗車した時は、開いてる席に座りましょう。うん、大事だな」

 ずぶずぶ、と泡のように上がる黒い滲みの存在が後部座席の方に在るなどと相馬は気がつくことは、なかった。異常事態は――未だ解決を果たしていないらしい。
 知りたい存在の居場所を知るまで、地獄の果てまでしつこく付いて周ろうとしているなどと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜羽々矢・琉漣
(ネ、ネコバスだ――!?)
あ、でも内部までふわふわじゃないんだね。窓ガラス無い方が突撃しやすかったんだけど……。

UCで召喚した”猫型の騎獣”に乗ってバスと並走。タイミングを計ってバスの天井に跳び乗る。
その後は騎獣を一度還して新たに”戦闘用アンドロイド”を2体召喚。窓ガラスをガシャーンとアクション映画ばりに割って突撃させて、相手の気がそいつらに向いたら俺も「Twilight」の【迷彩】で姿を隠しつつ車内へGO。
相手のUCは「生物を見つけること」が条件だから、生物じゃないアンドロイドは対象外のはずだし、俺も見つからなければ問題なし。
後は、座席を遮蔽物にしつつ「Nigredo」で「援護射撃」かな。



●ネコバスが疾走る

 ずぶずぶ広がる黒い滲みは、徐々に大きくなり小柄な"無邪気"な姿を取り戻す。
 元々の大きさよりも体積が、減ッていた。
 バスから蹴り出された部分もまた"無邪気"の一部であったから。
『ひ ど い な あ も う』
「酷いじゃないですよお客様!?」
 うわぁーん、と妖怪バスは再び叫び始める。
「今日は絶対厄日だぁあ~~~~~!!」

「そんなことはないんじゃない?」
 夜羽々矢・琉漣(コードキャスター・f21260)が妖怪バスの横を並走するように走っている。後部の尾、戦闘に頭。疾走る足は標準的に4足のようだがこれは――。
 ――どうみても、ネ、ネコバスだー!?
 まるでアニメの中に飛び込んだような。少し背伸びをして覗き込む気持ちは、内側までふわふわなのか、という点に尽きる。
「あ、内部までふわふわじゃないんだね」
「中まで獣毛仕様ですと、獣毛アレルギーのお客様にご迷惑が掛かりますし其のあたりにお客様差別とか、その、あっては大変ですので……寒い冬場以外は基本的にこのようにさせて頂いています……!」
「そうだよね。でも、助け出すにはちょっと破壊活動をしないとだよ」
 ――窓ガラス無い方が突撃しやすかったんだけど……。
 体力も筋力もあまり在る方ではない琉漣は、戦闘式・幻想現像によってサイバー空間から模倣された"猫型の騎獣"の上からどうも、と挨拶しつつ手を振った。
 妖怪バスと比べれば騎獣は仔猫のように見えるかも知れないが、額に番号を刻印されたそれは。
 琉漣の思う、呼び掛けに応え勇ましく行動する英雄の姿である。
「被害額の事はお気にされず大丈夫ですよぉ、仕事に支障が出てることが問題です……ってトラァ!?」
「大人しいから大丈夫。助けに来たよ」
「お、穏便めに助けてくださああい!」
 ぶわあ、と泣き始める妖怪バスの要請を受けて、琉漣はそのままバスを追い抜く。
 追い抜ききって、騎獣は体を反転させる。
 猫のような俊敏さでタイミングを図って飛び上がり、すとん、とバスの天井に着地を成功させた。
「お疲れ様、ありがと!」
 ごろごろと喉を鳴らして返事をした騎獣を一度還し、天井の上はとても広くなる。
 今必要なキャラクターをしゅぅうん、と改めて喚び出し2体の戦闘用アンドロイドが琉漣の隣に並び立つ。
「さあ、此処からが本番だ!」
 天井から窓の位置を確認して、アンドロイドに指示を出して作戦開始!

 ガッシャァアアアン!

 なるべく派手な音が立つように、アクション映画ばりに窓を割って2体が突入を完了させた。
『う わ あ あ 』
 気の抜けた声が聞こえてくる。ずもももも、となにかが動くような音も。
「……明細フィールド起動」
 自分の周囲に状況に合わせた光学迷彩を展開して、2体が割砕いた窓から刺入を開始する。
 風景に溶け込むような迷彩を身に纏っている琉漣の姿は簡単には見破れまい。
『だ あ れ ? あ そ び に き た の ?』
 戦闘用アンドロイドは無言を貫くが"無邪気"は生物だと思いこんで話しかける。
 バスジャック犯にとって、生物か生物ではないかは重要ではないのだ。
『ね え ね え お し ゃ べ り し よ う ?き み は い き も の で し ょ う』
 意識を向けるアンドロイドを生物と勝手に過信して、じぃいと"子供"は視認し続ける。動きを封じることは、当然出来ないので、2体は引きつけるように動き続けるのだが、疑問を感じる様子はなく、じぃいとみ続ける行動をその異形は続けた。
 ――生物を見ていると思っているのかな。
 UDC組織のサポーターとして活動してきた琉漣にとって、目の前の存在が本当に"子供"かどうか大変疑わしい。
 邪神の類も、時おり姿形を偽る。
 これもまた、そういう概念の集合したモノなのではないか、と疑念が尽きない。
 ――絶対におかしい。
 ――これが、元地獄の獄卒?ただの無邪気な子供だったりしない?
 ――骸魂のどれかが、獄卒だったって思うと理解は出来そうだけど。
 沢山取り込んだという骸魂の数だけ、姿に異変を出して人格が崩壊している場合も考えられた。
 ――生物じゃないアンドロイドは対象外なはずなのに気がついてないし。
 ――他の乗客や俺も見つかってない。
 ――隙だらけというのは、この事だね。
 誰も座っていない座席の影に改めて身を隠し、遮蔽物として息を殺して少しの間考察に勤める。
 狙撃に特化した長銃身の銃、Nigredoでの狙撃準備は考えている間に完了済みだ。
「話を聞ければどれでも良いんだろう?じゃあ、――」
 誰よりも早く動く腐敗と鈍化の呪詛弾をその身に浴びて。
 長く長く、独り言を呟き続けるといい。
 撃ち込む援護射撃の弾丸が、"無邪気"の体に吸い込まれる。
 少しの時差を開けて、耳を塞ぎたくなるような絶叫がバスの内部に木霊した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パルピ・ペルポル
閻魔王に会ってどうするつもりなのか…聞いても意味なさそうね。

空中で待機して妖怪バスが通りがかる瞬間に天井に降りましょ。
ちょっと固めだけどもふもふはいいわね…いやもふもふは後でするとして。
飛ばされないよう毛をつかみながら乗降口まで近づいてこっそり潜入ね。
徳用(巨大)折り紙を通常サイズに切って作った万羽鶴を周囲に展開、目くらましにしている間に雨紡ぎの風糸を念入りに張り巡らせて。
糸に引っかかったらそのまま絡めて火事場のなんとやらでがっつり捕獲して。
穢れを知らぬ薔薇の蕾も使ってさらに拘束を強めてそのまま糸と茨で攻撃するわ。

運転中は座席に座るか手すり吊り革を持たないと危ないからね。



●事件解決後存分にモフモフさせて貰いました

「閻魔王にあってどうするつもりなのか……聞いても意味なさそうね」
 きっと目的を教える口をもっていないのだろうと解釈するパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は自前の翅で、ふわあと空で待機していた。
 元々小柄な種族で、空も飛べるのだ。ダイレクトお邪魔しますをせずとも目立たないように勤めれば、おそらく平和的に行動を起こすことが出来るはず――。
 妖怪バスが通ると確定した道の上空で待機していれば――ほら。
 どどど、と砂埃を巻き上げる妖怪バスがひとつ。すごい速度で駆けてくる。
 戦闘に見えるネコの顔はとても涙目なのか、ヘッドライドの明かりはやや曇り気味だ。ヒゲと尾と持ち前の感の良さを駆使して走っているのだろう。
 人間で表現するならば、手放し運転でもしている状態だろうか。時速は大分交通法の違反ギリギリを攻めているが――。
「ここ!」
 通りかかる瞬間にひゅーんと天井に降りて、猫背――天井に降りる。
 ――ううん?ちょっぴり固めなのね。
 手触りは確かにモフモフとした猫のそれなのだが、バスという概念と合体している為か靭やかさはあまり感じられなかった。
「ごろにゃあん。モフモフは控えめで勤務しているのです。ご要望が多ければ、フッサフサで営業するのですが」
「あら。そうなの?たまにはモフモフ強めでもいいと思うのよ?」
 後でもふもふさせてね、とパルピはポンポン、と背中の毛羽立ちを少し撫で付けて、お願いする。
「け、検討しておきますお客様」
「ありがと。よぉし、じゃあ――」
 風圧は結構強い。
 モフモフを楽しんでいたが妖怪バスの毛から手を離してしまえば、簡単に吹き飛ばされてしまうだろう。飛ばされないよう、毛を掴んで、ゆっくりながら乗降口まで近づいて。小柄な彼女はひっそりと潜入を試みる。
 入り込もうとした直前、射撃の音が幾つか聞こえてきた後――激しい叫びが聞こえてきた。内部で誰かが先に、何かを行ったのだろう。
「一度や二度、咎められても滅気ないのね?」
 よおく窓周りを確認すると他の猟兵が派手に壊した窓もあり、介入した後があった。隙間も綻びも小柄なパルピには通り抜けられそうな大きさだった。
 簡単に、バスの内部に入り込むことに成功するのである。

『…… ね え え ん ま お う は ど こ に い る の 。い つ ま で か く し い る つ も り な ん だ よ お』
 ぜえぜえ、ひゅう。息切れするような音。
 きゃらきゃらと笑う声で不釣り合いな怒る声。
 "無邪気"な黒い異形は黒い面積をずずずと広げ拡大行動に移っていた。
 徳用折り紙セットを広げ、通常サイズに斬って作り出すのは万能鶴。
 何百回の折返しにも耐える強度を持つ素材で作られた鶴は、周囲へと展開。ふわあ、と万能の鶴がバスの内部のに数多くぽとぽとと音を立てて翼を休めて佇むだろう。それらは、目立ちにくいパルピが飛びながら配置を施したのだ。
『ん ん ? こ れ は ど こ か ら き た の ? い つ か ら い た の ?』
 "無邪気"の返答を行うものは誰も居ない。
 下にばかり気を取られている間に、パルピは天井ギリギリを飛び雨紡ぎの風糸を念入りに張り巡らせる。
 蜘蛛の糸より細く、柔軟性と強度を兼ね備えた透明の糸だ。
 新しい乗客が一人増えた事にも気が付けない注意力では――おそらくこの包囲を見破ることはない。
「さっきからずっとここにいるのよ、わたし」
『え 、ど こ ?』
 顔を上げた瞬間、糸に掛かった大型の体躯。
『う わ あ な に こ れ な に こ れ !』
 振りほどこうとする度もっと複雑に絡まる。これはさながら蜘蛛の糸。
 パルピの狙いに、異形の"子供"は見事に嵌った。
「ご覧の通り、捕獲網よ!」
 パルピ自信も糸をもっと絡めるように飛び回り、火事場のなんとやらを発揮してぎゅううと捕縛の網を狭めて、にっこり。
 糸沿いに白い薔薇の茨も伸ばし、拘束力を高めてぎりぎりと引っ張る。
 穢れを知らぬ薔薇の蕾は、徐々に流血に染まり赤でふわりと花開いた。

 糸で抑え込み、捕縛したままダメージを与えるパルピの現在の居場所は天井から下がるつり革だ。自分はしっかり捕まった体制で、ひとりで動くのがままならない"無邪気"がバランスを崩し、転び転がる様を眺めることになる。ごろっ、ごろ、と壁に当たるが受け身は取れない。ぐぇえと痛そうな声が聞こえてくるが、なるべく無視に努めた。なにしろこのバスは安全運転の保証を、最低限として明言しているからだ。
「ふふ。座席に座るかつり革を持たないと危ないってこれで身を持って理解出来た?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

尾守・夜野
とりあえず到着したら、バスに黒纏を伸ばし引っ掻けるか引っ付くかし、屋根部分に乗り上げよう

その状態で窓にUC発動
本人のでなく、無機物なら抵抗されねぇだろ
取り込んだ隙に入り、瞬間出して後ろ手ではめ直す
ズレたらすまん

「おいたが過ぎるんじゃねぇの?お遊びの時間は終わりだぜ」
攻撃は敢えて受けようか
致命傷以外なら身代わりの宝珠で何とかなるはず
負債は未来の俺に託す

「ははっ俺に興味が?
…俺は閻魔王の場所を知っているといったらどうする?
大人しくするなら連れてってやるよ」
騙し誘惑し俺のフィールドへと誘き寄せ、取り込んでしまおうか
ずっとは無理だが時間稼げるし
…別に中で倒せば問題ない

その間俺本体はバスのを慰めてるぞ


陽川・澄姫
あらあら、それはおかわいそうに。
ともあれ、元関係者がご迷惑をかけているようなので、後始末しましょうか。

向かってきた妖怪バスの尻尾などに妖力で強化した髪を伸ばして絡めた後、念動力を使って体を持ち上げて妖怪バスの上に着地します。
それから窓を開けるなりして車内に入るとしましょう。

閻魔様は死者を裁くのに忙しいのです。
あなたのような不届き者は私の糧にでもなってもらいます。

先程同様に強化した髪を幾つかに束ね、槍状にして串刺しにしましょう。
大きな穴が空けば空くほどUCで力を吸い出しやすくなるので、滅多刺しにします。

敵の攻撃は髪や扇で打ち払い、発生した分身は髪で捕まえて車外に投げ捨てて排除しますね。



●仏の顔も、なんとやら

『あ あ あ あ く る し い よ』
 拘束から抜け出して、ぜえぜえと"子供"は肩らしい部分で息をする。
 くぱぁ、と口のような裂け目が生まれて、言葉の通り、だらりと長い舌が飛び出してきた。
『バ ス は つ れ て っ て く れ る ん で し ょ う』
 乗客の言う場所に"バス停"が存在したら。誰かがバスを待っていたら。
 順路として経由して、いつかはたどり着くのが妖怪バスの進路だ。
「タ、タクシーでは、ないんですよぉ~……!うわぁあん」
 にゃーご、と大きな鳴き声を上げて、妖怪バスは未だ止まらぬ運行を続けている――。

「ネコさんも大変そうですね」
 陽川・澄姫(現世の巡回者・f30333)は仄かに笑って、妖怪バスの到来を待つ。
 臨時バス停に釣られて何度寄り道順路を走っているのかは、おそらく考えてはいけない。
 彼らの順路はネコなので気分任せな部分も稀に出る。
 "いつか目的地にたどり着く"の精神が無いものが乗車するべきではないだろう。
「そんなコト言ってるばあいか?」
「助けるのですからこれくらいは外野の言って良い台詞でしょう」
 なんて返答が返ってくるほど、農村道は大変静かだ。
 遠くに通りかかるだろう妖怪バスの姿を見つけて、尾守・夜野(墓守・f05352)は準備を開始する。
 着用者の意思により形状を変える機能を使い、黒纏をロープのように伸ばすように努めた。
 目の前を通りすがる瞬間に鉤爪のように伸ばし、手応えで掛かったのを確認する。
「一人で行く分しか考えてなかったんだが、お前は?」
「ああ、私のことはお構いなく」
 澄姫の背後でふよ、と浮かぶのは妖力で強化した長く美しい髪。
 狙いを定めて、妖怪バスの後部――尾にぐるんと巻きつけて、捉えていた。
 行く先は分かっているのだから、あとは自身を念動力で持ち上げてバスの上に時間を掛けてでもたどり着けばいい。
 ――走らせる事をやめさせるつもりはないようですからね。
 ――妖怪バスが仕事を全うし続けている限りは、手は出せないでしょう。

 そうこうしながら澄姫は妖怪バスの天井に降り立ち、風を受けながら内部侵入を考える。
「私は平和的に窓を開けて入ろうと思うのですが……」
「開ける必要はない、少しだけ待て」
 夜野は天井部分に半ば乗り上げる形で窓に密着し、器用にそのままユーベルコードを発動。
 窓に手を触れて、ふぉぉおんと小さな音を立てて魔法陣を展開する。
 ――この窓自体は、バスの自前のものではないと聞いた。
 ――割られまくると困るだろうし、無機物なら抵抗もしようがないだろ。
 俺の世界(マイワールド)に吸い込み、少しの間だけ窓を現在地点から消失させる。
「今のうちに」
「はい」
 取り込んだ隙を作り先に澄姫を内部へ通し、夜野はあとに続く。
「窓ガラス、ちゃんと戻すか返してくださいねぇ~……!」
「窃盗する気は始めから無い」
 夜野は後ろ手に、すぐに窓を取り出しはめ込んだ。
 見た目上は何も変わらない。だが、不具合の良し悪しは妖怪バス本人にかわかるものではないだろう。
「はめ直した。ズレてたりしたらすまん」
「あっ疑いましたすみません!大丈夫そうですありがとうございますお客様!」
 修理代も馬鹿にはなりませんが、やはり始末書が――そんな呟きを聞き流しつつ、猟兵たちは内部に広がる現実を受け止める。

 真っ黒の体躯が内部全体を覆っていた。明かり等もちゃんとあるのに、ぼんやり存在する"無邪気"な異形が空間を支配している。
『つ ぎ か ら つ ぎ へ と ネ コ さ ん て い こ う し す ぎ だ よ !』
 幾つも重なる子供のような声が、嗄れて聞こえて耳障りな音色を奏でていた。
 受けた分のダメージが積み重なり、ぽろり、と先んじてひとつの骸魂が吐き出される形で零れ落ち。
 異形の中から逃げだして、風のように消えていく。
『も う い い よ、い く っ て い う ま で あ ば れ る か ら ね !』
「おいたが過ぎるんじゃねえの?お遊びの時間は終わりだぜ?」
 夜野へぐるり視線が集まる。"無邪気"な視線が集中する。
『だ っ て い き た い ん だ も ん 。じ ゃ ま し な い で よ !』
 単純だが、異形の腕――らしき一部が持ち上がり、夜野へ向けて振り下ろされる。
 泥のようなどちゃ、ぐしゃという嫌な音を引き連れて。
 ――攻撃はあえて受ける!
 致命傷以外は身代わりの宝珠が――指輪の力でなんとかなるはずだ。
 今の負傷は全部無視するのがいいと判断して、殴りつける攻撃を受けた。
『き み は お も ち ゃ と し て か ち が あ る ね 、い い ね た く さ ん あ そ ぼ う !』
 "無邪気"な強い興味は夜野の元に一気に向いた。
「ははっ俺に興味が?いいぜ、どんどん来いよ」
 この狭いバスの中、何処からでも現れる似た姿の"異形の子供"が襲いかかってきて無遠慮に殴ってくるのはさぞ冒涜的な光景だろう。
「……静かに見ておりましたが、地獄に連なる元関係者が此処までご迷惑をおかけしているとは」
 澄姫へ向けられた興味はない。
 だからこそ、澄姫の振る舞いは通常通りの落ち着いたものだった。
「他の同僚にも手厳しくされても尚、暴れるモノを放置するわけにはまいりませんし――後始末しましょうか」
 笑う澄姫の顔から、地獄の色が見え隠れする。
 笑っているようで、笑っているように感じられない。
「閻魔様は死者を裁くのに忙しいのです。あなたのような不届き者がお会いになることは出来ませんよ」
『い い や あ い に い く ね 、ぜ っ た い い く ね』
 この間、ボッコボコに攻撃を加えられる夜野が口の中に溜まった血を吐きつけて。
 数回咳き込み、挑戦的な表情をして、興味関心を利用して"無邪気"を焚きつける。
「……俺は閻魔王の場所を知っている、といったらどうする?大人しくするなら連れてってやるよ」
『お と な し く ? や だ !』
 数秒だけ考えるようにしたかと思い置きや、暴れる子供の癇癪(物理)が過激になる。どうしてもバスで向かいたいようだ。
「……折角の誘いを断るだなんて。あなたのような不届き者は私の糧にでもなってもらいます」
 妖怪バスへ渡ってきた時のように、妖力を通した髪をぐん、と伸ばし幾つかを槍の形状に構えて浮かべる。
「暫く耐えて頂きまして申し訳ありません。此処より迅速に黙らせますので」
『な ん だ と お !』
 無邪気な残虐性の塊は、夜野への集中攻撃を辞めて澄姫へと腕を振り上げる。
「遅いです」
 ずど。振り上げられた腕を髪の槍は貫通し、貫いてバスの側面に縫い付けた。
 攻撃こそ命中しなかったが、この強敵を倒せば、"閻魔王"の元へ行けるかもしれない。期待が"無邪気"の中で勝った。
 ずずずず、と盛り上がる黒い形状全て分身体。ずらりと並ぶ、本体の分裂体。
「増えたようで、増えておられないのでしょう?」
 近づく個体にを串刺しにして、大穴を空けて次の個体へ。
 舞い踊るような攻撃の連続は、狭い中で大いに高威力高命中を示した。
 乗客が皆頭を下げていた、というのもあるが。間違っても猟兵の攻撃に巻き込まれたものは誰ひとり居ないだろう。
『は あ は あ 、ぐ え え』
 舌足らずな子供もそろそろ暴れ疲れた頃合い。
 攻撃は髪や扇で打ち払えるほど強い攻撃では無くなっていた。分身体もいつの間にか本体に統合されて敵は単体。
 孔だらけの一つに戻っていた。
「苦しそうですね、もう休まれたら如何でしょうか」
 ぽああ、と穿たれた孔から"無邪気"が保持していた活力が溢れ、漂う色は仄かな白色。黒い形状に反し、活力は恐ろしいほど白色で、車内は白に染まった。
 この犯人の活力は、興味の続く限り活動を続けること。子供のように本当に"無邪気"なものだったらしい。
 活力の向かう先は澄姫のもと。使った分の力の回復に、当てるのだ。
 生命力でもある力を沢山奪われて、骸魂を吐き出し異形の存在はバタリと倒れ込んで動かなくなる。
 ちゃっかりバスに乗ったままの他の猟兵たちと協力して、身柄をキッチリ拘束した。これでバスジャックが再度実行されることはないだろう。
 次にバスが停車したとき近隣を警備する者達へ引き渡すまで猟兵が同行すれば、この事案は妖怪バスの始末書以外全てが片付く。

 ぺたりと車内に座り込んでいた夜野は、妖怪バスを慰めるように、当たり障りない野外トークを持ちかけていたという。
「おい大丈夫か。これで始末書も少なくて済むんじゃね?」
「だ、だといいのですが……!この実情で怒るお客様がおられないことは、大変頭が下がる思いです…………!皆様にもご尽力頂きましたし、もっともっと業務に励まなくてはと思うのですニャー」
 警報アラームとか、緊急通報システムの立ち上げを上に申請します、と言っていたがバスにそんなハイテク要素が足されるかは、彼の上司への説得次第だろう。
「にしても、獄卒連中も一枚岩じゃねえんだな」
「そうですねえ。仕事熱心な方はとても多いですから、いい職場なのでしょうね」
「……いい職場、ねえ」
 "無邪気"を消し飛ばし、にっこりと微笑んだ表情に今度もう、地獄の陰りが見えることはなかった。
「そんなことはありませんよ?場合によりけりです、元関係者は――まあ上司に逆らう輩など、いないほうがようでしょうが」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月13日


挿絵イラスト