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大祓百鬼夜行⑪〜獄卒ハイジャック!〜

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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「赤池〜、赤池ですにゃ。本日も妖怪バスをご利用いただきありがとうございましたにゃ……って言ってもお客さんはいにゃいんだけど」
 そんなことを呟きながら「赤池」と書かれた標識の前に止まった巨大な猫。その胴体は空洞かつ、中に沢山の座席が置かれている様子が見えるようにするためか透明になっていた。
 そんな彼の正体はカクリヨファンタズム中を駆け回る妖怪、「妖怪バス」である。
「いったいどうしたんかにゃあ……。ちゃんと身だしにゃみには気を遣ってるんだけど」
 そんな彼はとある悩みを抱えていた。
 普段なら席に座れない客も出てくる時間帯にも関わらず、最近は始発から最後まで誰も乗ってこないこともザラなのである。
 このままではただのお散歩でしかない。ぶっちゃけ死活問題だ。
「まあ、いいにゃ。他の子も最近は売り上げが伸びにゃい、って言ってたし……僕だけじゃにゃいにゃら……うん」
 都合の悪いことからは目を逸らし、ともかく本日の業務はこれで終わり、後は倉庫に帰って寝るだけ……と体を伸ばしていると青い髪の女が迷いない足取りでこちらへ近づいて来た。
「あ、お客様。本日はもう僕は回送で……」
 女は妖怪バスの言葉を無視し、その首にいきなり光の鎖を巻きつけるとそのまま絞め上げにかかった。
「ぎ、ぎにゃっ……!?」
「……連れて行け」
「は……?」
 痛みと元々の声の小ささで女が何かを言ったことしか分からない。反射的に聞き返すと女は絞める力を強めながら口を開いた。
「私を閻魔王の元へ連れて行け。……三度は言わんぞ」

「皆様、『妖怪バス』はご存知でしょうか。簡単に説明すると運搬業を営む、大きな体躯を持った妖怪達の職名……といったところでしょうか。そんな彼らの中には百鬼夜行に参加せず、自分の仕事に従事続けている者もいます」
 そんな妖怪バスのうちの一体が、オブリビオンに現在進行形で襲われているのだとルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)は説明する。
「妖怪バスを襲っているオブリビオンは元『地獄の獄卒』であり、『閻魔王』の元へ案内するよう妖怪バスに要求し、強引に走らせている……というのが現在の状況です」
 「生と死」を分かつ能力を持ち、獄卒の武器などを提供している、などと断片的に現地住民から語られている閻魔王。
 しかし現時点でその姿を見た猟兵はおらず、百鬼夜行に参加しているか否かも、その居場所も特徴も完全に不明である。
「わざと泳がせて閻魔王の元まで案内させる……というのも一つの手ではありますが、相手はオブリビオン。閻魔王と出会ってしまうことで我々がさらに不利になる状況になってしまう可能性があります」
 それ以前に、閻魔王にたどり着く前に焦った妖怪バスが事故を起こしたりうっかり殺されたり、その進路に誰かが飛び出してしまうことで命が失われることだってあり得る。
 人間だろうと妖怪だろうと、罪なき者が酷い目に遭うことは避けられるべきである。
「本来でしたら各バス停で待っていれば止まってくれて乗ることが出来ますが、脅されている現状彼は常にトップスピードで走らされています。そのため彼の体内にいるオブリビオンを倒すには何らかの方法を使って、中に転がり込む必要があります」
 また乗り込めたとしてもオブリビオンは自前の鎖で自分の体と妖怪バスの体を繋いでおり、引き摺り出すことは難しいという。
 そのため妖怪バスの体内という閉所で、かつ妖怪バスを傷つけないように立ち回る必要があるそうだ。
「直接妖怪バスの体内へご案内することは出来ませんが、走っている地点から予想される通過地点に皆様を連れて行くことは出来ます。どうか罪なき妖怪バスを救ってください、よろしくお願いします」
 そう言って地図につけられた丸印をなぞったルウは真剣な面持ちで猟兵達に呼びかけた。


平岡祐樹
 妖怪バスといえば、トト○の猫バス。お疲れ様です、平岡祐樹です。

 このシナリオは戦争シナリオとなります。1章構成の特殊なシナリオですので、参加される場合はご注意ください。

 今案件にはシナリオボーナス「走るバスへの突入方法や、狭い車中での戦法を考える」がございます。
 これに基づく対抗策が指定されていると有利になることがありますのでご一考くださいませ。
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第1章 ボス戦 『十字皇の使い』

POW   :    全き光
【光通さぬ漆黒の鎧と武器】で攻撃する。[光通さぬ漆黒の鎧と武器]に施された【無数の光の鎖】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
SPD   :    我らは嘗て在りし者の残滓、故に
攻撃が命中した対象に【十字の光】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【心を消し去る光の世界】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ   :    我らが望むは闇なき世界也
【無数の光の鎖】が命中した対象の【内臓や骨、肉】から棘を生やし、対象がこれまで話した【自分、他人にかかわる全ての事柄】に応じた追加ダメージを与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠白石・明日香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

岩倉・鈴音
バスジャックよそんなに急いでどこにいく。
あの世ならまっさきに連れてってやるぜー

乗り込み
停留所にバスが近付いてきたら飛び出してガン見、【ムサシビーム】で妖怪バスの客乗せ本能に訴えかけてスピードを落とさせたい。あとはしがみついて乗り込む。
乗せろ~

戦闘は手や足の【部位破壊】により 相手の動きを封じるとか鎖を狙って断ち切り絡めて拘束したりする。
狭いので貫通とか突いていく二回攻撃。

速くて戦えないときは次で降りますボタン押すことによりスピードを落とすことを妖怪バスに……ってもっとゆっくり走れバス猫!
ムッサシビィィム!!
ゆっくりしていってね。



 停留所でのんびり待っている岩倉・鈴音(JKハングマン・f09514)の元へ2つの光の球が近づいてくる。
 それは妖怪バスの瞳から放たれる、暗がりでも前方の視界を確保するための光。しかし客を乗せる気がない必死の全速力の前ではただの飾りでしかない。
「バスジャックよそんなに急いでどこにいく。あの世ならまっさきに連れてってやるぜー」
 そんな妖怪バスの前に鈴音は自ら飛び出していった。その研ぎ澄まされた侍のような目で睨みつけられた妖怪バスは鈴音を避けるために咄嗟に足取りを変える。
 鈴音は横を過ぎたところで手を伸ばし、強引に開きっ放しだった窓枠にしがみついた。人間なら確実に肩が逝かれる行いだが、JKハングマンの頑丈さなら無理が効く。
「乗〜せ〜ろ~」
 だが高速で動かれてはしがみつくだけが精一杯。妖怪バスの客乗せ本能に訴えかけるように呼びかけるが、本来客を入れるために開かれるであろう側面の扉は開かない。
 しかし代わりに中にいたオブリビオンが、勢いに流されて浮かんでいる鈴音を蹴り落とそうと窓に近寄ってきた。
「これは私の貸切便だ、ご退去いただこう」
「脅して乗っ取ってるのを、貸切とは言えま、せん!」
 鈴音は突き出された足に一瞬で取り付くと押し倒すようにバスの中へ飛び込む。
 狭い車内で壁と鈴音に挟まれ、足をへし折られかねない状況にオブリビオンは顔を歪ませながらも光の鎖を取り出した。
「おっと、拘束はノーサンキューであります」
 慌てて起き上がった鈴音はオブリビオンの腕を蹴り飛ばしながら距離を取る。
 ついでに手から零れ落ちた鎖も欲しかったが、揺れで崩れた体勢で無理にやればすでに車内に張り巡らされた鎖にぶつかってしまいそうで出来なかった。
「くっ、こんなに揺れたら狙いが……こうなったら」
 鈴音は近場にあった降車ボタンを叩くと、軽快な音が体内に鳴り響く。こうすれば次の停留所が見えた時に本能で減速してくれるだろう。
 しかし妖怪バスは停留所を一切止まる素振りすら見せず通り過ぎた。
「……ってもっとゆっくり走れバス猫!? ムッサシビィィム!! ゆっくりしていってね!」
 鈴音が前面からチラリと見える妖怪バスの頭部を睨みつける。その眼光に流石に恐怖を覚えたのか、足取りは鈍り始めた。
「いつ私が止まって良いといった。閻魔王の元に連れて行くまで、足を止めることは許さん!」
「ぎにゃー!?」
 しかし突然現れた大量の棘が妖怪バスの体を内からも外からも傷つけさせ、つんざくような悲鳴があげさせると同時に速度を戻させた。
「おいおい、酷いことをしますね。訴えられても知りませんよ?」
「獄卒を訴えるような馬鹿はどこにもいない、私が刑の執行人であるからな」
 両足を踏ん張らせた鈴音が突き出した勝虎巣を先程の突進で足に不安のあるオブリビオンは避けずに体をくねらせて鎧で受け止めた。
 しかし元々貫通力のあるその一撃は、鎧を通り抜けて確実にオブリビオンの骨を絶つ。
「いやいや。執行人であろうと罪を犯したら裁かれるものでありますよ?」
 鈴音は不敵な笑みを浮かべながら、折れた腕を呻きながら押さえるオブリビオンの誤った認識を否定した。

成功 🔵​🔵​🔴​

空亡・劔
この最強の大妖怪である空亡劔を差し置いてこんな大異変を起こすなんて生意気よ
しかも猫バスを無理矢理乗っ取るとか許されざるよ!

あたしだってちゃんと守ってるのにっ

突入は
【天候操作】で強風注意報
【念動力】で自らを浮遊させ風に乗り猫バスと並走して突入よ!

【戦闘知識】で敵の動きを見据え
【結界術】でバス内部に結界を張り戦いでバス自体を傷つけないように

【属性攻撃】で氷属性を二刀に付与

切り捨ててやるわよ
光の鎖やら攻撃は【見切り】
氷の【弾幕】で牽制
やはり接近戦ね
距離を詰めて二刀による【二回攻撃・切断】

あくまで猫バスを猫質にするのね
ならば
時を統べし者を使用
氷の弾幕を敵周囲に展開し着弾寸前にして

そして時は動き出す



「猫バスを無理矢理乗っ取るとか許されざるよ、あたしだってちゃんと守ってるのにっ!!」
 様々な怒りがごちゃ混ぜになった声をあげる空亡・劔(本当は若い大妖怪・f28419)の背中を、内面の気持ちを表すかのように吹き荒れる突風が押していく。
 まるでモモンガのように滑空する劔は偶然にも妖怪バスの体が針だらけにされ、苦痛の声をあげる瞬間を見てしまった。
「ひどい……」
 思わず声が漏れ、怒りの炎はさらに激しさを増す。丸見えの窓から片腕を折られ、片足を捻って満足に動けないのを視認した劔は妖怪バスの内部に結界を張り、戦いでバス自体を傷つけず、かつ鎖に自分達の体が触れた判定にならないように細工をする。
 そして偏差射撃ならぬ偏差突撃で妖怪バスの中に飛び込んだ。
「切り捨ててやるわよ」
 突然突っ込んできた劔の二刀から発せられる冷気が周囲の空気を凍らせ、それらが劔の念動力によってオブリビオンへ放たれていく。
 対してオブリビオンは光の鎖を片手で振り回して盾のようにすることでそれらを片っ端から弾き、抵抗した。
「やはり接近戦ね」
 氷の粒が床に覆われた結界を叩く中、一気に距離を詰めた劔の刃が回され続ける鎖を分断し、オブリビオンの体を無防備にさせる。
 しかし追撃を仕掛ける前に妖怪バスの悲鳴が外から聞こえてきた。反射的に外を見れば、皮から伸びていた棘が急激に反り返り妖怪バスの体を突き刺していた。
「外を気にしてどうした、トドメを刺さないなんて随分余裕そうだな猟兵よ!」
 その光景に思わず手が止まってしまった劔の体をオブリビオンが膝蹴りで突き飛ばす。
 手すりに巻きついた鎖に体を引っかけた劔へオブリビオンは続け様に妖怪バスと同じように棘で八つ裂きにしようと試みる。しかし結界によって触れてないことにされた劔の体に変調は起きなかった。
「ふむ……先程内に生えなかったから何か小細工をしたのかと訝しんでいたが……どうやらその通りなようだな。ならこいつを死なぬ程度に痛めつけつつ、それで鈍った所をチマチマと叩いていくしかないか」
「わたしじゃなくて、あくまで妖怪バスを猫質にするのね……」
 猟兵だけでなく、直接関係ない妖怪バスまでも痛めつける宣言を平然としたオブリビオンに、劔の理性は頂点を越えた。
「これ以上は絶対に傷つけさせない。最強の大妖怪である空亡劔の前でこれ以上の好き勝手はさせないわ」
 背中に展開された蒼い水晶の翼が周囲にいる猟兵ごとオブリビオンの時間を止める。
 内側の異変に気づかずに動き続けている妖怪バスの走りに合わせて横へスライドしていくオブリビオンの周りに、怒りのあまり目から光を失った劔は鋭利な氷柱を一瞬で生み出した。
「あなたもこの子と同じ目に遭いなさい。……そして時は動き出す」
 自分の意識が消し飛ぶ前に水晶の翼が霧散し、甲高い音が鳴り響く。
 突然立ち位置を変えられたオブリビオンは段差に引っかかって転び、直後に降り注いできた氷柱に矢達磨にされて悲鳴をあげた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

物部・十王
おぉぅっ…地獄で働いていた獄卒とはのぅ。
ならば、先に向かって飛んでいくことにするのじゃ。
この状況、オブリビオンの驚異を放置するわけにはいかんしのぅ。
だから、到着次第、バスの上に乗らせていただくのじゃ。
そして、わしが付く頃はおそらく、闇が濃いところであろう。よって、【目立たない】【闇に紛れる】でこっそり、窓から侵入してやるのじゃ。
そして、奴の背後に来たら、七星七縛符で貼り付けて動けなくしたら、牙でトドメにさせていただくのじゃ。



「おぉぅっ……まさか地獄で働いていた獄卒とはのぅ」
 下手人のまさかの素性に物部・十王(東方妖怪のスピリットヒーロー・f29685)は思わぬ声を上げて驚く。
「ならば、先に向かって飛んでいくことにするのじゃ。この状況、オブリビオンの驚異を放置するわけにはいかんしのぅ」
 そう告げて十王はまるで見えない道があるかの如く、月に照らされた空を駆け出していった。
 いくら速いとはいえ、休憩も無しに走り続けさせられている上に痛めつけられ血を流し、地面を蹴る摩擦などを受ける妖怪バスよりも空を駆ける十王こ方が障害となる物が少ない。同じ条件なら分は悪かっただろうが、ここまでのハンデを得れればぐんぐんとその間の距離を詰めていける。
 そして辺りが大きな木々に覆われて月光が遮られる地点に迫ると十王は逃がさないとばかりに、棘と血だらけになった背中へと飛びついた。その衝撃に妖怪バスの口から悲鳴が漏れる。
「すまんのう。ちっとばかしの辛抱じゃ、堪忍しとくれ」
 現在進行形で叫び続けているオブリビオンの耳には幸か不幸か、今の声は聞こえなかったらしく新たな棘が生えてくることはなかった。
 だが窓を覗き込み、そのまま中へ入ろうとする十王の体をバス全体に張り巡らされた光の鎖が照らし出したことで、その姿は露見してしまった。
「ぐう……おい妖怪バス、わざと猟兵達がいる場所を狙って走ってるわけではなかろうな!」
「そんなわ、ふぎゃーっ!?」
 オブリビオンは唸り声を上げながら飛び上がるように立ち上がると妖怪バスを棘で苦しめつつ新たな鎖を取り出し、その窓を封鎖しようと投じる。
 しかし十王はまるで軟体生物のように体をくねらせると窓と鎖の僅かな隙間を縫って車内に侵入した。
「その程度でわしは止められぬぞ」
「ならこれならどうだ!」
 十王の挑発にオブリビオンは鎖の力を解放させて妖怪バスの足裏に棘を生やす。すると跳ねるように走っていた妖怪バスの脚は地面に突き刺さって抜けず、勢いそのまま前へ飛び込むように転んでしまった。
 その動きに合わせ、体を固定していなかった猟兵やオブリビオンはその場で転び、体のあちこちを打ちつける。
 しかし十王は180cmを超える巨体からは想像できないほどの機敏さで車内にある座席や手すりをつたい、打撲を避けた。
 そして倒れ込み、氷柱が溶けて丸見えになったオブリビオンの背中に向けて十王は飛びかかり、掌を叩きつけた。
「これでもう棘は生やさせんよ」
 後に残ったのは様々な紋様が描かれた護符。その紋様が怪しげに光り出すと、まるで金縛りにあったかのようにオブリビオンは痙攣しながら身動きが取れなくなった。
「形種族は違えど、同じ猫科の体を持つ同志。その仇取らせてもらおうぞ」
 十王はオブリビオンの首元から肩口の付近に向けて噛みつきにかかる。
 持ち前の巨大かつ鋭利な牙はその辺りを覆う黒い鎧を噛み砕き、その奥に隠れた柔らかい肉を抉り取った。

成功 🔵​🔵​🔴​

パルピ・ペルポル
この妖怪バスは猫タイプのようね。
となると、もふ具合はいかほどかしら。

バス停前の空中で待機して、走ってきた妖怪バスの天井に降りるわ。
猫なら毛が生えているからそれをつかんで飛ばされぬよう。
やっぱりちょい固めね。もふもふは後でゆっくりさせてもらうとして。
ガラスがないなら窓からこそっと侵入しましょ。

念動力で雨紡ぎの風糸をバス車内に張り巡らせて。すでに鎖が張り巡らされているならそこにまぎれてより細かく。
火事場のなんとやらを使って一気に締め上げて。
そこに穢れを知らぬ薔薇の蕾も使って攻撃しましょう。
棘の痛みはご存知なのかしらね。



 バス停前の空中で待機していたパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)の元へ妖怪バスが走り込んでくる。
「この妖怪バスは猫タイプのようね。となると、もふ具合はいかほどかしら」
 一度足を止めさせられたからかその動きは比較的遅く、小柄なパルピが近づいても風圧で吹っ飛ばされるほどではなくなっていた。
 期待に胸を膨らませながら、パルピは速度を上げ切る前の妖怪バスの背中にダイブする。
「……やっぱりちょい固めね」
 しかし返ってきたのはどちらかといえば冷たいチクチクとした感触。緊張と疲れとこびりついた血で本来の柔らかさが失われてしまったのかもしれない。
「もふもふは後でゆっくりさせてもらうとして……ガラスがないなら窓からこそっと侵入しましょ」
 若干裏切られた気分を抱えつつ、パルピは懐から取り出した雨紡ぎの風糸を念動力で車内に流していく。
 すでに張り巡らされている鎖に紛れ、より細かくより狡猾に透明な糸は範囲を狭めるように広がっていく。
『我らは嘗て在りし者の残滓、故に』
 一方その頃、背中に貼られた護符を剥ぎ取ったオブリビオンが叫び、妖怪バスや一部猟兵を十字の光で包み込ませていた。するとその目から光が失われ、その場で棒立ちになり始める。
「心が無くなった今、貴様らはもうまな板の上の鯉に同じ。気がついたら死んでいる恐怖を……ああ、それすらも感じられなくなっているのか」
 そう言って鎖を手元で伸ばしながら、オブリビオンはゆっくりと一歩一歩前へ進み出す。しかし急速に張り詰められた糸がその足を止めさせた。
「ん……ぬっ……?」
 突然動けなくなった自分の体に疑問を覚える中、ひらりとパルピが車内に入り込む。
 攻撃をそもそも受けていない者に心を消し去る光は効力を発揮しない。間違いなく、体の変調の原因が見覚えのない彼女のせいだと確信したオブリビオンは憎悪に満ちた目を向けた。
「妖精……貴様、何をした」
「さあ、何をしたんでしょうね?」
 パルピはすっとぼけながら持ち前の怪力で気づかれないように指を動かして、じわじわと強く締め上げていく。
 攻撃しようにも知らぬ間に雁字搦めにされたことに呻き声をあげるオブリビオンに向け、パルピは思い出したように声を出した。
「あ、そうそう。さっきからこの子を刺していたみたいだけど、あなた自身は棘の痛みはご存知なのかしら?」
 いくらフェアリーの中で埒外の怪力を誇っていても人と比べたら良い勝負になってしまう。相手の土俵に引き摺り込まれないように引き寄せられそうになる体を堪えつつ、パルピは掌から茨を床に落とす。
 水と土を求めて急激に成長する蔓はオブリビオンの脚に絡みつき、糸で圧迫された肌に棘を突き刺した。
「舐めた、真似を……!」
 苛立ちに任せて歯を食いしばり、強引に動こうとするオブリビオンの体のあちこちに切り傷が入り、血を滲ませていく。それらを全て吸い上げた先にある白い蕾が、赤く色を染めていくとオブリビオンの呼吸は乱れ出した。
「悪いことは言わないわ。意識を手放す前に大人しく引き下がりなさい?」
「断る、私にはな……絶対に聞かねばならぬことがあるのだ!」
 しかしオブリビオンの目から強い意思を感じさせる光が失われる気配はなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

渡塚・源誠
やれやれ、手荒なことする敵さんもいたもんだ

ちょーっと、ボクも手荒にいかせてもらうよ


通過地点の道上で妖怪バスが来るのを待つ


使うのはこの魔法手
まずはUCで手を「漆黒で不定形の混沌・闇の大きな塊」に変化
(移動力5倍、装甲半分)

さらに中指以外を立たせて4つ足、中指を頭に見立てて、造形を弄れば……
真っ黒なおっかない獣の完成さ


これを使って猫バスさんを【おどろかす】ことで動きを一時的に止めるよ

その隙に闇を一部バス内に侵入させて展開、真っ暗闇にしたら、光る鎖を頼りに、変形させた闇で敵さんに反撃を許さず【早業】の連撃を与えるね


(傍ら、いつもの笑顔で「し~っ」のジェスチャーを猫バスさんにして、外の情報を遮断する)



「何足を止めている! 貴様がのろのろと動いているから猟兵どもが更に乗り込んでくるではないか、走れ走れ!」
 流れ続ける血も体を締め付ける茨も糸も気にせず、オブリビオンは苛立ったように壁を何度も蹴り飛ばす。その理不尽な怒声と再び棘を突き刺されるかもしれないという恐怖が、虚ろだった妖怪バスの意識を取り戻させ、足を動かさせた。
「やれやれ、手荒なことする敵さんもいたもんだ。……ちょーっと、ボクも手荒にいかせてもらうよ」
 その進路を塞ぐように立ちはだかっていた渡塚・源誠(風の吹くまま世界を渡れ・f04955)の取り出したるは何の変哲もないマジックハンド。
『一見ただのおもちゃに見えて実は……ほら、この通り!』
 まるでマジシャンのようにその手を握っていると真っ白だった部分が漆黒に変色し、不定形の混沌とした大きな塊へと変貌していく。
 源誠よりもはるかに大きくなったそれの中指を頭に見立てて、それ以外を立たせて4つ足になるように造形を弄れば……。
「真っ黒なおっかない獣の完成さ」
 突然前方に現れた、首の長い何かの存在に妖怪バスは急ブレーキをかける。目前で止まってしまった妖怪バスに向け、塊は首を伸ばして中へ突っ込むと侵食を始め、外からの景色を遮断していった。
「にゃ、にゃにゃにゃ!?」
 内臓から食われてしまうのか、と慌てたように首を振る妖怪バスに向け、足元から顔を出した源誠はいつもの笑顔で「し~っ」のジェスチャーをして敵対性の無いことをアピールした。しかしその様子が見えないオブリビオンはまるで墨汁のように広がる闇に眉間を険しくさせる。
「なんだ、何が起きている」
 鎖から発せられる光を飲み込むように広がった闇は枝分かれすると、まるで腕のように形を変えてそれぞれ殴りかかる。オブリビオンはそれらを自分の腕についた鎧や小手で必死の形相で受け止めていった。
 互角のやり合いが続いていると塗りつぶされたかに見えた鎖が光量を増し、中から闇の塊を爆散させていく。そして外から見える景色が流れてないことに気づいたオブリビオンは怒鳴り声をまたあげた。
「何を悠長に止まっている! 変な闇の獣など轢き殺してしまえ!」
 手元から飛んだ鎖が妖怪バスの首元に巻きつき、一気に締め上げにかかる。しかし鎖が一周し切る前に源誠の漆黒のナイフがそれを切り捨てた。
「まったく、油断も隙もあったもんじゃないね」
「外にもいるのか、妖怪バスよ死にたくなければさっさと踏み潰せ!」
「死にたくなければ? ボク達に目をつけられてるってのにスゴイ自信だね?」
 飄々としながらも、言外にオブリビオンの思い通りにはさせるつもりがないことを伝える笑顔は妖怪バスを勇気づけ、その場で座ることを選択させた。
「貴様……裏切りおって! その選択重くつくぞ!」
「裏切りも何も、無理矢理従わされていただけでそこまで怒られる筋合いはないよねぇ?」
 オブリビオンの主張を鼻で笑う源誠に乗っかるように、妖怪バスは薄ら笑いを浮かべるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

白石・明日香
さてと、どう乗るかだよなぁ・・・
最近手に入れた宇宙船で上空からダッシュで追跡するか。バスに追いついたらバスの動きを見切って自動操縦に切り替えて飛び乗り突入。
猫は暴れるだろうからロデオの馬に騎乗する感じでバランスを維持してダッシュで敵に接近!
光の鎖の封印が解除される前に一気にケリをつける。
敵の攻撃を積み重ねた戦闘知識で見切ってかわし、間合いに入ったら怪力、属性攻撃(炎)、2回攻撃、鎧無視攻撃でたたっきる!
終わりだ。この世界の使いよ、何か言いたいなら聞くぞ



 オブリビオンの手によって必死に動き回る妖怪バスを見切り、ロデオの馬に騎乗するくらいの覚悟を抱いていた白石・明日香(十字卿の末裔・f00254)にとって香箱座りになった今の状態は願ってもない好機である。
「どう乗るか考えていたが、止まってくれるなら好都合だ」
 追走のために使っていた宇宙船を自動操縦に切り替え、明日香は出入口へ走って向かう。そして空中へ躊躇いなく跳び出すと重力に従って妖怪バスの背中に着地した。
「ふぎゃっ!?」
 背中に襲った衝撃に身動ぐ妖怪バスの上を体勢を崩さずに走り、明日香は体のあちこちからとび出ている棘に捕まると、窓を塞ぐ鎖を切断してから車内へと侵入する。
「また新しい猟兵がっ、お前はっ……!」
 鎖の破片が散らばり、明日香の足音と合わせて床を強く叩く音が響き渡り、焦りながら振り向いたオブリビオンの顔は驚愕の色に染まった後、恍惚の笑みへと変わった。
「ふ、ははっ、まさかもういたとは! なんたる僥倖、閻魔王に聞く手間が省けた!」
 そして嬉々としながら光の鎖を振るうオブリビオンの攻撃を明日香は積み重ねた戦闘知識で見切って躱していく。
「その雰囲気、皇を斃したか! ならお前を殺せば私が次の皇……いや、それ以上になれる!」
 壁や床を叩く光の鎖がその輝きを増し、先程まで傷一つついていなかったはずの妖怪バスを守る結界にヒビを入れていく。
「何を言ってるんだお前は」
 勝手に盛り上がるオブリビオンを冷めた目で見つめる明日香は合間を縫って間合いに入るとあらゆる魔法や精神的な護りを破る炎の斬撃で漆黒の鎧ごとオブリビオンの右腕を切り裂く。
 先程の左肩への噛みつきと合わせて、両腕との感覚の共有が断たれたオブリビオンの手から鎖が落ちて音を立てた。
「終わりだ。この世界の使いよ、何か言いたいなら聞くぞ」
 明日香は鎖を素早く蹴り飛ばして遠方に追いやるとオブリビオンへ赤一色の刀の切先を向ける。
 狭い車内ゆえに常に壁際に追い詰められた状態で、唯一の逃走経路とも言って良い最寄りの窓は自らの手で封鎖してしまっている。
「……ここは忘却の果てにある世界。だが、我が主が忘れ去られることはない。そのために我らがいる。そのためにお前がいる」
 唸り声をあげた後、オブリビオンは明日香を睨みつけながら呪詛のように言葉を紡ぐ。
「為すべきことを為せ。それこそがお前の……」
「ああ、そうさせてもらう。『虚無に還るがいい!』」
 横薙ぎに払われた斬撃がオブリビオンから浮き出ていた骸魂を消失させ、残された獄卒の体が糸が切れたようにその場に倒れ込む。
 体の中に入ってきた違和感を確かめるように手を開け閉めした明日香は最後に握り拳を作って頷いた。
「お前達のして欲しいこととオレのしたいことが一致してるかは知らんがな」

 こうして傷だらけになりながらも妖怪バスは本日の運行を終え、車庫に戻ってこれた。
 時間外労働による疲れで泥のように眠る妖怪バスを起こさないよう、付き沿った猟兵達は静かにシャッターを閉めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月19日
宿敵 『十字皇の使い』 を撃破!


挿絵イラスト