2
大祓百鬼夜行⑮〜たいせつな役目と失われた黄金

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#カクリヨファンタズム
🔒
#大祓百鬼夜行


0




●たいせつな役目
「ツバメさん、黄金を持っていっておくれ。剥がれた黄金の分だけ、僕と合体した骸魂が目を覚ますけれど、大祓骸魂に続く『雲の道』は、僕の黄金がなくては作れないんだ」
 西洋親分『しあわせな王子さま』はツバメにそう告げた。
 大祓骸魂を見つける為、妖怪達は命を賭して骸魂と合体した。西洋親分たる『しあわせな王子さま』も例外ではなく、その上彼は他の妖怪達に無い、大切な役目を有していた。
「僕は、猟兵達と殺し合わねばならない」
 そう言いながら、しあわせな王子さまは微笑んだ。

●幸福なる王子
「皆様! 西洋親分の居場所がわかりましたわ!」
 エリル・メアリアル(孤城の女王・f03064)は集まった猟兵達に告げた。
 現在発生している大祓百鬼夜行。骸魂の元凶である大祓骸魂へと至る為、カクリヨファンタズムの妖怪達は、あえて骸魂と合体し、百鬼夜行を形成した。
「その中でも、彼ら妖怪を治める親分達は大祓骸魂へと至る為には特に大切な役目を持っているようなんですの」
 そう言いながら、エリルの顔が曇る。少し黙ってから首を振り、猟兵達へと言葉を続ける。
「その大切な役目とは……皆様と全力で戦う事」
 その可能性は十分に理解していた。これまでだって、方法はどうであれ、百鬼夜行に下った妖怪達と戦ってきたのだ。それは親分とて例外ではない。
「そう、骸魂に乗っ取られた妖怪であれば助けられる。それもまた例外ではないのであれば、全力で戦い、倒すことで王子さまを助けることだって出来るはず」
 エリルは猟兵達の顔を再び見返す。
「皆様、王子を救ってくださいまし」

「今の王子は骸魂の影響で意識を奪われ、理性が崩壊していますわ」
 エリルは、猟兵達にしあわせな王子さまの現状を告げる。
 本来は全身に黄金を纏う美しい姿であったが、現在は表面の黄金が多く剥がれており、体内の骸魂の制御が出来なくなっているのだという。
「さらに、黄金の剥がれ落ちた肉体を崩壊させ、異形への変形や、弾丸のように飛ばす、皮膚や装甲を剥がし落とす呪いを用いて攻撃してきますわ」
 これを骸蝕形態というらしい。どの攻撃も非常に厄介だが、西洋親分は自身の能力も高い。まともに戦えば苦戦は必至だろう。
「けれど、ここからが大切ですわ」
 エリルが猟兵達に指を立てる。
「しあわせな王子さまは膨大な『虞』を持っていますわ。その影響によって、窮地にならなくとも『真の姿』に変身することが出来ますのよ!」
 真の姿とは、生命の埒外である猟兵達の持つ、通常とは異なる姿を指す。その力を用いれば、しあわせな王子さまと渡り合うことも可能となるだろう。
「ですから、皆様……負けないでくださいまし! 妖怪の皆様の想いを無駄にしないために!」
 そう言い、エリルはグリモアを輝かせた。

●失われし黄金
「つ……ばめ……さん、ありが、とう……」
 くすんだ色をした『しあわせな王子さま』はツバメに礼を言いながら、ぎょろりと失われた瞳を、気配のする方に向けた。
「さあ……役目を……果たす、と、き……」
 空を飛ぶツバメは、彼の想いに応えるべく、黄金を口に咥えたままその場を飛び去ってゆく。

 ――もし僕が死んだなら、雲の道を繋ぐ役目は君にお願いしたいんだ。

 その言葉が実現しないことを祈りながら――。


G.Y.
 こんにちは。G.Y.です。
 西洋親分『しあわせな王子さま』との対決が始まります。
 シナリオの内容はいたってシンプル。全力で襲い掛かってくる西洋親分を、全力で倒してください。
 西洋親分も骸魂に飲み込まれた妖怪ですので、救出は可能なはずです。

 また、戦場の『しあわせな王子さま』の持つ虞の影響で、皆さんは真の姿に変身することが可能です。是非利用して頂ければと思います。

 プレイングボーナス……真の姿を晒して戦う(🔴は不要)。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております!
112




第1章 ボス戦 『西洋親分『しあわせな王子さま』骸蝕形態』

POW   :    骸蝕石怪変
自身の【黄金の剥がれた部位 】を【異形の姿】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD   :    部位崩壊弾
レベル分の1秒で【切り離した体の部位(遠隔操作可能) 】を発射できる。
WIZ   :    崩落の呪い
攻撃が命中した対象に【崩落の呪い 】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【対象の皮膚や装甲が剥がれ落ちること】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

黒城・魅夜
(真の姿:希望の悪夢という矛盾した姿を表す半仮面、漆黒の六枚翼を纏い、紅い闇の中に半ば体が溶け出している。物理存在というより半ば概念存在)

幸せをもたらさんとする王子よ
あなたの願いは尊く崇高
されど一つだけ間違っているのはその身を犠牲にせんとしていることです
あなた自身の幸せもまたあなたが救うべき幸せなのですよ
あなたの希望、この黒き翼が繋ぎ止めましょう

身に纏う紅い闇を「結界」のように周囲に展開し
「闇に紛れる」ことで攻撃を回避しましょう
併せて「オーラ」による「残像」を作り出し攻撃をそちらへ「誘惑」
一瞬の隙を「見切り」間合いを詰めます

あとは108本の我が鎖が骸魂を撃ち砕くでしょう
さあ──咲き誇れ鋼の血華


メナオン・グレイダスト
・SPD

『王子』。お前の覚悟に敬意を払おう。
だが……お前が、お前を慕うもの達を遺して潰えることは、この灰色の魔王が許さぬ。
力尽くで止めてやろう。――【グレイダスト・オーバーロード】。

膨大な灰色砂塵を放出しつつ力を最大限に解放し、『王子さま』に全力で挑む。
未だ把握していない自身の「真の姿」。外見こそほぼ変わらないが、荒れ狂う灰色砂塵の嵐を纏う。
外套を翻し、巨大な剣戟や様々な重砲の群れを制御し、時に部分装甲を展開し。
放つは質と量を伴う嵐の如き攻撃。剣戟で斬り、穿ち、重砲で砕き、貫く。
その一方で受けた損傷は灰色砂塵の生成と変化により何度でも補って。
――蹂躙する! 灰色の魔王を阻むこと能わず……!



 黄金を持っていっておくれ。
 雲の道を作るために。
 そう言って『しあわせな王子さま』の身体から黄金が剥がされた。
 黄金の下、露出した石が骸魂によって『ごり』と歪み、捻じれ、砕け散る。
 黄金の大半を失い『骸蝕形態』となったしあわせな王子さまは、落ち窪んだ空洞の瞳で、猟兵達を睨みつけた。
「幸せをもたらさんとする王子よ。あなたの願いは尊く崇高」
 黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は王子さまにゆっくりと歩み寄りながら告げる。
「されど一つだけ間違っているのは……その身を犠牲にせんとしていることです」
 王子さまはその言葉に反応する様子もない。しかし、それでもメナオン・グレイダスト(流離う灰色の魔王・f31514)は言葉を続ける。
「『王子』。お前の覚悟に敬意を払おう」
 メナオンの身体が、王子さまから発せられる虞によってぞわりと変化した。
「だが……お前が、お前を慕うもの達を遺して潰えることは、この灰色の魔王が許さぬ」
 纏ったマントの内側から、膨大な量の灰色砂塵が放たれた。砂塵は激しく渦巻き、メナオンを『真の姿』へと変えてゆく。
「あなた自身の幸せもまたあなたが救うべき幸せなのですよ」
 魅夜はそう言いながら、片目を手で覆う。その下から紅と黒の仮面が現れ、仮面の下の瞳が鋭く光る。背より漆黒で彩られた六枚の翼が現れる。
 魅夜は纏った紅の闇に身体を溶かし、魅夜は希望の悪夢となる。
「あなたの希望……この黒き翼が繋ぎ止めましょう」
 翼を大きく広げ、魅夜はしあわせな王子さまへそう告げた。

「力尽くで止めてやろう――グレイダスト・オーバーロード」
 メナオンが外套を翻す。それに伴い放出された灰色砂塵が寄り集まり、剣や重砲等の形を作ってゆく。
「いけ」
 その号令に従い、灰色砂塵で生まれた重砲から砲弾が放たれた。
『…………』
 王子さまは無表情のまま、砕け落ちた自身の身体を寄せ集め、壁を作り出す。メナオンの重砲を受け止めると、壁は礫となって弾け飛び、猟兵達への反撃となる。
「受け止めろ」
 メナオンが剣に命じる。剣は礫を弾きメナオンを守るが、重砲は貫かれて砂塵へと帰す。それと同じように、礫は魅夜を狙い撃ち込まれていた。
「……っ!!」
 魅夜の胸に大きな穴が空く。衝撃に身体を反らせた魅夜であったが、その直後、身体が闇の中に溶けてゆく。
 それはオーラによって生み出された残像であった。魅夜は周囲の紅い闇に紛れ、自身の本来の姿を隠したのだ。
 それでは本体は?
「さあ──」
 既に、王子さまの間合いの内。闇の中、王子さまの背後より現れた魅夜は、その血を自らの鎖に流しながら告げる。
「咲き誇れ鋼の血華」
 108本もの鎖が、王子さまに撃ち込まれた。
『……がっ……』
 その力は王子さまの内側にある骸魂を穿ち、打ち据え、薙ぎ払う。
「――蹂躙する!」
 そこに、メナオンの灰色砂塵によって生まれた巨大な武器達が襲い掛かる。砕かれたはずの武器は再び寄り集まり、その数を減らすことはない。
「灰色の魔王を阻むこと能わず……!」
 質と量を兼ねた怒涛の攻撃が、王子さまへと放たれた。
『ぐぅ……ああぁっ……!!』
 骸魂が呻き声を上げた。瞳を失った王子さまの目から、ぽろりと涙が零れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

チル・スケイル
殺さずに勝つ余裕はまるでない…そもそも全力で戦ったとしても、勝てるでしょうか…
それでも行かなければなりません。吉報をお待ちください

真の姿は氷の竜人
多少崩れても、凍らせて修復できる

狙撃杖カシュパフィロを向け、全身の魔力を引き出す
しあわせな王子さまがどのような形で向かってこようと…ひたすらに、あるいは愚直に氷の弾丸を撃ち続ける。限界を越える魔力により、鉛の体をも凍らせてみせる
打ち勝てなければ崩落の呪いをマトモにくらい、死ぬ
ですが妖怪たちがそうするように、私も命をかける!

この『虞』と呼ぶ他ない、凄まじい圧力…
だがこれを越えられなければ、フォーミュラには挑めない!



 グリモアベースより転送される中で見た『しあわせな王子さま』の姿に、チル・スケイル(氷鱗・f27327)は戦慄していた。
 ここからでもわかる異様な威圧感。力の差は歴然といえた。
(「殺さずに勝つ余裕はまるでない……そもそも全力で戦ったとしても、勝てるでしょうか……」)
 思わず弱気になってしまう心を抑えて、チルは前を向く。
「それでも行かねばなりません。吉報をお待ちください」
 そうして、チルは戦場へと降り立った。

「この『虞』と呼ぶ他ない、凄まじい圧力……!」
 戦場に降り立つと同時にチルは全身の鱗が逆立つ感覚を覚えた。しあわせな王子さま、西洋親分の持つ力は、彼自身の実力とは別に、周囲に渦巻く『虞』にも起因しているようだ。
「だが、これを越えられなければ、フォーミュラには挑めない!」
 チルはそう言い奮い立つ。『虞』を自身の力に変えて、身体を変化させてゆく。
 その白い肌が文字通り透き通り、周囲の空気を冷気で満たす。ふぅ……と息を吐き、現れたのは氷の竜人。それこそがチルの『真の姿』であった。
『…………』
 王子さまは無表情のまま、チルの変化に戸惑う様子も奢る様子もなく、ただ機械的に手を伸ばした。
 砕けた身体を浮かし、岩の礫としてチルへと放つ。
「……くっ!!」
 突然の攻撃が、チルの肩を抉る。ぱきんと割れたその身体は氷そのもの。だがチルは焦らず、砕けた傷口を凍らせ、修復してゆく。
「多少崩れても、凍らせれば……」
 だが。
「ううっ……!?」
 肩から走る鈍痛に、チルの顔が歪んだ。修復したはずの身体が、再び剥がれ落ちたからだ。
「崩落の呪いですか……」
 相手の皮膚や装甲を剥がし、落とす『崩落の呪い』。王子さまは先の礫に、その呪いを込めて放っていた。
「ですが、ひるむわけにはいきません!」
 呪いの速度を和らげるべく、チルは身体の修復を続けながら、狙撃杖カシュパフィロを王子さまへと向けた。
「全身の魔力を、弾丸に込めます!」
 狙うは王子さま。そこに奇策は一切ない。ただ愚直に、ひたすらに、チルは氷の弾丸を撃ち放つ。
「鉛の身体をも……凍らせてみせる!」
 チルの放つ氷の弾丸が王子さまへと命中すると、表面の熱を奪い、白い霜がかかった。
 何度も、何度も弾丸をぶつけ、王子さまから自由を奪う。だが、同時に呪いを受けた身体の崩落は進んでゆく。
「あっ、く、うぅっ……!!」
 痛みに、狙いがブレそうになる。だが、力を振り絞り、チルは自身の魔力を限界まで引き出してゆく。
「打ち勝てなければ……私は死ぬ」
 王子さまへと氷の弾丸を放ち続けながら、チルは世界の為大祓百鬼夜行にくわわった妖怪達の顔を思い出す。
「ですが……妖怪たちがそうするように、私も命をかける!」
 魔力が、限界を越えた。
 吹雪を思わせる弾丸の嵐が、王子さまを氷で覆い尽くしたのだ。
「はぁっ……!!」
 がくりと膝をつくチル。肩の崩壊は止まり、ぱきぱきと音を立てながら氷が盛り上がって傷を修復してゆく。
 妖怪達の想いは確かに、猟兵達に力を与えた。
 王子さまを支配する骸魂はまだ消えはしない、だが、その想いはきっと王子さまにも届いたはずだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジェイミィ・ブラッディバック
王子よ、その気高き魂に救済を齎す時が来た
これより裁定を開始する

WHITE KNIGHTにて攻撃を予測、飛翔して空中で回避する
装甲、翼を簡単に失うわけにはいかん
CHESEDとGEVURAHを交互に通常出力にて斉射、これでも戦艦の砲撃並みの威力はある
これで簡単に倒れることはあるまいが、射撃でダメージを蓄積させる

さぁ、裁定を下す時だ
タキオン粒子散布開始
TACHYONIC HALO FIELD展開、これより101秒間は「私が勝利する」因果が確定
私の勝利を妨げる崩落の呪いは無効となる!
LONGINUSをパイルバンカーモードに
空中ダッシュで接近しランスチャージ

この一撃にて、君に救済を与えよう



 猟兵達、来てくれてありがとう。
 僕が君達に倒されれば、大祓骸魂へと繋がる雲の道を作ることが出来る。
 けれど、手加減は出来ないよ。
 全力で殺し合うことが条件だ。

『うぅあ……あああ……』
 黄金の剥がれた石の顔で、しあわせな王子さまが呻き声を上げる。骸魂に意識を支配され、今や王子さまとしての人格は無い。
 しかし、その想いは猟兵達へと伝わっていた。
「王子よ、その気高き魂に救済を齎す時が来た」
 ジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/開発コード[Michael]・f29697)はそう告げる。
「これより裁定を開始する」
 ジェイミィの瞳が翠に光る。ジェイミィの背から白翼が生まれ、後光がさす。同時に事象予測AIが王子さまの攻撃を予測し、ジェイミィは高く飛翔した。
 その位置めがけ、王子さまが剥がれ落ちた黄金部分が砕け、礫となって放たれた。
「装甲、翼を簡単に失うわけにはいかん」
 礫を受ければ、装甲や翼が剥がれ落ちるだろう。それを予測したAIは礫をすんでで躱し、反撃とばかりに両手に構えた破城ビームライフル『CHESED』を放つ。
「これでも戦艦の砲撃並だ」
 放たれた光線が王子さまへと直撃し、その身体が砕ける。だが砕けた石は即座に浮き上がって、もとの形に組み上がる。
「やはり簡単には倒れないか」
 もう一方の『GEVURAH』を放ち、王子さまの風穴を開ける。それを交互に続け、王子さまの身体を砕き続ける。
 王子さまの身体はその都度、即座に修復してゆく。その上で一部の破片を放っては、ジェイミィを狙い続ける。
「まだだ」
 AIの予測に従い、ジェイミィは礫の弾幕を越えてゆく。その先に、綻びが見えた。
「さぁ、裁定を下す時だ」
 ジェイミィが宣言する、同時に周囲の空気が一変した。
「START FOMULA: Imperet illi Deus, supplices deprecamur.」
 タキオン粒子が散布される。その中を、ジェイミィが翼を広げ、王子さまへと向かって加速してゆく。
「これより101秒間は『私が勝利する』因果が確定する。……私の勝利を妨げる崩落の呪いは無効となる!」
 ジェイミィの身体に、王子さまの礫が直撃する。だが、それを強引に弾き返しながらジェイミィはLONGINUSを構える。
「パイルバンカーモード。この一撃にて、君に救済を与えよう」
 一撃! 王子さまをジェイミィが貫いた。激しい衝撃と共に、王子さまの身体が砕けてゆく。
 そして、10秒が経過した。世界の因果は全て元に戻り、王子さまの中の骸魂も、彼の身体を再び修復してゆく。だが、その攻撃は確実に骸魂へと届いているようだ。
『あぁ……あと、少し……だ……』
 王子さまは、そう呟くように猟兵達に告げるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

岩永・勘十郎
「命をかけて戦う以上、手加減はしない。故にワシを殺してもお前さんは謝らなくていいし、ワシもお前さんに謝らない」

そう言って羽織っているマントを脱ぎ棄て本気の姿として戦う勘十郎。刀を構えた勘十郎からは相手に【恐怖を与える】【殺気】が溢れ出る。そして青眼に構えから隙は悉く消え去って。

「だが、雲については感謝しかない。だからせめて、慈悲で斬ってやろう」

とUCを発動し、敵の攻撃を【戦闘知識】を駆使した【瞬間思考力】で数え切れないほどのパターンを予測、最適解を導き出し回避する。そして一瞬間の隙を【見切り】、その殺気を纏う斬撃を相手に叩きこんだ。敵の中に潜む骸魂を斬り裂くべく。



 骸魂に意識を奪われた『しあわせな王子さま』は、猟兵達に全力で戦うことを求めた。
 それは互いに命を賭けることに外ならず、その覚悟は猟兵達に刃を鈍らせることを許さない。
 だからこそ、岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)はこう宣言する。
「命をかけて戦う以上、手加減はしない。故にワシを殺してもお前さんは謝らなくていいし、ワシもお前さんに謝らない」
『うぁ……あ……』
 王子さまは言葉にならない言葉を返しながら、黄金の剥がれた部位をめきめきと変化させてゆく。
 同時に勘十郎も羽織ったマントを脱ぎ捨てた。その全身から殺気が溢れ、ゆっくりと刀を抜く。ぴしりと寸分の狂いなく青眼に構えた勘十郎からは、一切の隙が消え去っていた。
「……だが、雲については感謝しかない」
 王子さまの黄金が大祓骸魂へと至る雲の道を作る。だからこそ、今二人は対峙しているのだ。
「だからせめて……慈悲で斬ってやろう」
『うあぁあああっ……!』
 そう告げる勘十郎に対して、王子さまが先に仕掛けた。異形となった部位は巨大な牙のように大きく開き、勘十郎を噛み砕かんと襲い掛かる。
 勘十郎は冷静に、その動きをまっすぐに見つめながら、構えを崩さない。
 正面? 側面? 足や腕を狙うか? 様々な攻撃パターンを瞬間的に予測しながら、王子さまの一挙手一投足を見逃さない。
「……!!」
 異形の攻撃が放たれ、ほんの僅かに勘十郎は身体を捻る。重く鋭い一撃だが、それを最適解の動きで躱しきる。そうして生まれた一瞬の隙に、勘十郎は刃を振り上げる。
 全身に溢れた殺気を込め、王子さまの内部に潜む骸魂を見据える。
「万有を……返す!」
 振り下ろされた刃は、王子さまの身体をすぅ、と抜けた。
 王子さまにまるで傷はない。だが、敵は呻き、異形に変化させた身体をもとに戻してゆく。
 『六道・龕灯返しの太刀』それは肉体以外の概念や事象……すなわち骸魂のみを切り裂く必殺剣であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メイスン・ドットハック
【WIZ】
話し合いが通じる相手でもなさそうじゃのー
それでも覚悟があるのは感じるけー、是が非でも救出してやるけーのー

最初からオブリビオンマシン形態「清盛」の状態で参戦
崩落の呪い命中を回避する為に、散らばる破片を巻き上げながらジェットパックによる飛行加速を展開
さらに肩から発射されるミサイルや榴弾によって、戦場を破壊しつつ飛行空間確保と西洋親分の身体を削る

機が熟したらUC「機竜の大海、空にありて天罰を下さん」を発動し、無尽蔵の落雷で戦場を圧倒
ドラゴンヘッドのブレス放射装置からの雷を放出しつつ、レーザークローの斬撃を叩き込むべく、急加速接近

あまり時間もないし、手短にいくのー! 正気に戻れのー!



 しあわせな王子さま。痛々しく剥がれた黄金の下に露出する箇所は骸魂によって醜くひび割れ、意識は完全に失われていた。
「話し合いが通じる相手でもなさそうじゃのー」
 メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)はそんな王子さまを見てそう感想を述べた。
 メイスンは自身のキャバリアをオブリビオンマシン形態とした『清盛』に搭乗し、王子さまへと告げた。
「それでも覚悟があるのは感じるけー、是が非でも救出してやるけーのー」
 ボロボロになった王子さまから感じられるその想いに応えるべく、メイスンはジェットパックの推力を上げた。
 その勢いは戦場に散った様々な破片を巻き上げて、メイスンは飛び上がる。
『…………』
 王子さまは手を伸ばすと、巻き上げられた破片達がぴくりと動き出す。どうやら、王子さまから零れ落ちた身体の破片も同時に巻き上げちえたようだ。『崩落の呪い』が注ぎ込まれ、メイスンを包囲する。
「なら壊すまでじゃのー!」
 メイスンはすかさず肩からミサイルを放つと、動き出した破片ごと周囲を破壊する。
 続けて榴弾を大地に向けて放てば、爆風は戦場とともに王子さまを巻き込んだ。
「このままどんどんぶっ放すのーっ!」
 メイスンがミサイルを放ち続ける。攻撃は自身の飛翔空間の確保とともに、王子さまへの牽制、そして攻撃までをも兼ねている。簡単に隙を見せない王子さまではあったが、綻びは確実に生まれたようだ。
「今じゃのー!」
 メイスンが清盛に指示を出す。清盛のドラゴンヘッドより、帝竜ワームほどの雷雲を呼び出した。
「あまり時間もないし、手短にいくのー!」
 雷鳴が轟き、王子さまを圧倒する。清盛はドラゴンヘッドからも雷を放ち王子さまを牽制すると、自身は一気に加速し、腕のレーザークローを光らせる。
「正気に戻れのー!!」
 重く鋭く、激しい一撃が王子さまを切り裂いた。
 体内の骸魂にまでも深い傷を与え、王子さまの身体が崩れたが、すぐさま元の形を取り戻し、猟兵達へと対峙した。
『……とう……』
 ありがとう、そう聞こえた気がした。王子さまを骸魂から解放するまで、あと少し。

成功 🔵​🔵​🔴​

ブラッドルファン・ディラィトゥオクア
之が大祓骸魂の虞か…他の戦場でもうっすら感じとったけど、流石親分衆や他所んトコの戦場た段違いやわ、引き受けてる量が違うとる
…ああ、濃過ぎてウチの中にも否が応でも入り込んできよるわ
人の子に忘れられたウチら妖怪は過去のモンか
忘れられたウチら、過去の堕とし子たるおぶりびおん…境目はどこなんやろなぁ
…ハハッ、虞にアテられてウチんナカもグチャグチャや、ドイツもコイツも表出たがっとる
西洋妖怪なんてアイマイなモン、内のヤツラ押さえられんくなったら姿保たれへんわ
凡ゆる西洋のモンが出てきよった…ウチちゅう形を失うた何か
異形の王子か異形のウチか…最後の一片まで削り合おうやないか、なぁ西洋の親分さんよ!



 戦場に降り立ったブラッドルファン・ディラィトゥオクア(西洋妖怪のレトロウィザード・f28496)は、その身に感じる『虞』を肌で感じ取った。
「之が大祓骸魂の虞か……」
 ぴりぴりとした感覚に、どうにも気持ちが落ち着かない。
「他の戦場でもうっすら感じとったけど、流石親分衆や他所んトコの戦場た段違いやわ。引き受けてる量が違うとる」
 その虞はブラッドルファンの身体を徐々に変化をもたらしていた。
「……あぁ、濃過ぎてウチの中にも否が応でも入り込んできよるわ」
 くすりと笑い、ブラッドルファンは顔を上げる。
 カクリヨファンタズムの成り立ちは、UDCアースに居場所を無くした『過去のもの』達の隠れ家である。
「忘れられたウチら、過去の堕とし子たるおぶりびおん……境目はどこなんやろなぁ」
 哀愁を漂わせて一人ごちるブラッドルファンは、自分のそんな姿に気が付いて笑う。
「……虞にアテられてウチんナカもグチャグチャや、ドイツもコイツも表出たがっとる」
 その言葉の通り、ブラッドルファンの身体が、彼女以外の何者かへと変わってゆく。彼女の中にあった様々な『西洋妖怪』が暴れ出し、混ざり合い、とりとめのない姿となる。
 その異様な姿を感知してか、王子さまも黄金の剥がれた部位を、牙や触手のような、異形の形質へと形を変える。
 いよいよブラッドルファンもおかしくなって、高らかに笑う。今ここに立つものは、異形同士。本来の形を失った者同士。
「異形の王子か異形のウチか……最後の一片まで削り合おうやないか、なぁ西洋の親分さんよ!」
 そう叫び、ブラッドルファンが王子さまへと駆けた。
 様々な魔力を秘めた泡を放ち、王子さまを牽制すると、ブラッドルファンは鋭い刃をたたえた箒『スラッシュ・ブルーム』に跨った。
 そのまま一気に加速をすると、スラッシュ・ブルームをその勢いのままに振り下ろす。
『……あ……が……』
 王子さまの身体に、深い深い傷がつけられた。
 彼の内部にある骸魂が、その痛みに悶え、苦しんでいる。
 もう一歩。もう一歩で救出が出来る。戦いの決着は近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久遠寺・遥翔
親分、あんたの覚悟は受け取った
なら俺は今の俺が出せる全力で挑ませてもらう!

イグニシオンに【騎乗】
真の姿となりさらにUCを起動して装甲を犠牲に攻撃特化の形態をとる

【戦闘知識】による予測を【視力】による観測と【第六感】で補正した心眼で
相手の強化・弱体箇所を【見切り】
【残像】を織り交ぜて回避しつつ相手の死角を攻める
避けきれない部分は【オーラ防御】を【結界術】でコーティングした多重防御壁で受け薄い装甲を補いつつ
被ダメージは結界で受けた敵の攻撃から【生命力吸収】で回復
【空中戦】で碧き劫焔を纏った両掌による斬撃と【焼却】属性の【2回攻撃】を叩き込む

あんたが示した道を開いて、あんたも骸魂から今解放してやる!



『……あと、すこし……』
 西洋親分『しあわせな王子さま』は、無意識の中で笑っていた。
 剥がれた黄金によって意識は骸魂に奪われていた。しかし、猟兵達による全力の攻撃は骸魂を弱らせ、心の奥底で眠っていた意識を呼び覚ましたのだろう。
 それでも、全力で戦わなくてはならない。しあわせな王子さまは例え意識があったとしても、同じことをするだろう。
 ――最後まで、全力で戦う。
「親分、あんたの覚悟は受け取った」
 久遠寺・遥翔(焔黒転身フレアライザー/『黒鋼』の騎士・f01190)はそう告げて、王子さまを見返した。
「さぁ、いくぜイグニシオン! SYSTEM-IGNIS起動!」
 遥翔とともに、クロムキャバリア・イグニシオンが唸りを上げた。
 蒼いエネルギーの翼が放出され、表面の装甲が分離してゆくと、同時に攻撃特化の形態へと変わってゆく。
『……』
 王子さまはイグニシオンを迎え撃つべく、黄金の剥がれた部位を肥大化させ、異形の姿へと変わってゆく。
「右かぁっ!」
 遥翔は王子さまからの攻撃を予測すると、イグニシオンを一気に加速させた。
 だが、ばぐん、と王子さまが作り上げた異形の顎がイグニシオンを噛み砕く。いいや、噛み砕いたかに見えたそれはイグニシオンの残像であった。
 本体は、王子さまの死角にいた。
「あんたが示した道を開いて、あんたも骸魂から今……解放してやる!」
 両掌に碧き劫焔を纏わせながら、遥翔が叫ぶ。それに気付いた王子さまもぐるんと体勢を変えて迎え撃つ。
「はぁああっ!」
 守りはオーラと結界で補った。損傷を臆さず、腕を振り下ろす。イグニシオンの一撃は王子さまを捉えたが、同時に王子さまもイグニシオンを捉えていた。ほぼ相打ち状態だ。
「まだだぁっ!!」
 だが、遥翔はすかさずもう一方の腕を振り上げた。碧き劫焔が、今度こそ王子さまに潜む骸魂に深く、深く食い込んでゆく。
『あり……が……とう……』
 王子さまは笑った。直後、その体内に潜んでいた骸魂が砕け散る感触を遥翔は感じ取った。
 西洋親分『しあわせの王子さま』との戦いは終わった。
 この結果は、いずれ大祓骸魂へと続く、大いなる一歩となるであろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月17日


挿絵イラスト