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大祓百鬼夜行⑮〜鉛のこころ

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行 #少人数採用予定 #締切日は【5月14日8時30分】 #プレイング〆切ました

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#大祓百鬼夜行
#少人数採用予定
#締切日は【5月14日8時30分】
#プレイング〆切ました


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●しあわせとは
「ツバメさん、黄金を持っていっておくれ」
 とおい遠い、雲の道へ。
 大祓骸魂の居場所へ導くための道は、剥がした黄金が無くては作れない。
 剥がれた黄金が多い程、自身と合体した骸魂が目を覚ましてしまうのだが……。
(些末事、だよ)
 終着駅に静かに佇む『しあわせな王子さま』は、虚ろな眼窩を側らのツバメへ向ける。
 剣の柄に嵌めこまれたルビーも、両目のサファイアもとうに差し出した後だった。

「まもなく、僕のたいせつな役目が始まるからね」
 王子様はつとめて穏やかに、従容とした様子で言葉を紡ぐ。
 大切な役目。猟兵達と全力で戦うという役目を、彼は受け入れていた。
(僕達親分が全力で猟兵とぶつかれば、大祓骸魂の虞も幾らかは和らぐ。だから、戦わなくてはね)

「ツバメさん。もし僕が死んだなら、雲の道を繋ぐ役目は君にお願いしたいんだ」
 黄金が剥がれ、鈍色があらわになる。
 静かに頷き飛び立ったツバメを見送ると同時、王子様の意識は深い闇へ落ちていく。
(故郷と住処を救う為なら、僕は壊れてもかまわない)
 彼は、骸魂に支配される直前まで……口元に穏やかな笑みを浮かべていた。

●うるせえ!救うんだよ!
「ハァ~~~???死なせねえですわよ???」

 イメルダ・スキュアリエル(好きな言葉は濡れ手で粟・f26513)の説明は冒頭からとてつもない圧縮が加えられていた。グリモアを持つゴーストに肩を叩かれ、彼女はようやっと落ち着きを取り戻す。
「……西洋妖怪の大親分『しあわせな王子さま』の所在が分かりましたわ。ええあの、あえて大祓骸魂の軍門に下った『妖怪親分』。その一人ですの」

 イメルダの説明と共に、グリモアの像にほぼ鈍色の王子の像が映る。僅かに残った黄金は、元の姿を思い起こさせるようだが……空虚に佇み言葉も無いその姿は、一種の異形のようにも見える。その『しあわせな王子さま』は大祓骸魂側に行きつつも、戦場を繋ぐ雲の道を作る事によって猟兵のサポートもしていた……のだが。
「雲の道の材料はこの方の黄金。しかも剥がれるにつれ、引き込んでいた骸魂が目覚めてしまうんですのよ。……わたくしが案内するタイミングでは、ほぼ骸魂に身体を明け渡した状態ですわね」
 その形態──骸蝕形態と呼称する──の攻撃は苛烈そのもので、異形に変わる鈍色の部位や、散弾にも似たパーツの破片、手繰る崩落の呪いなどが襲いかかってくるだろう。強力な妖怪でもある彼の全力に猟兵達も全力で立ち向かい、倒さなくてはならない。

「ですが、戦場には王子さまが受け持っていた虞が満ちています。それを使えば此方も真の姿を解放することができますわ。全力でのお相手も、しやすくなるのではなくて?」

 『しあわせな王子さま』は、周囲に幸福をもたらす妖怪として、多くの妖怪達に慕われて来たのだという。その献身の果てたる姿を倒し、しあわせを救ってきてほしい。
「向こうも全力で戦いに来ますわ。此方も全力で……そうですわね、ブッ倒し、ブッ救ってくださいませ」

 イメルダはそう締め括り、鏡のグリモアを操作して転移のゲートへ変える。
 転移先は寂れた終着駅。……ひゅうひゅうと、ドームに風が吹いている。


 王子は何も答えなかった。答える為の言葉も理性と共に失っていた。ほぼ鈍色に染まった身で、転移を終えた猟兵達に向き直る。
(嗚呼。よくきたね、猟兵さん)
 仮に理性と声と言葉があれば、そう話していたのだろうか。穏やかな笑みのまま、そのまま闇に飲まれたような表情で、王子は静かに立っている。
 予知の像でみたツバメの姿は、既にどこかに消えていた。


佃煮
 どうも。佃煮です。
 此度もまた、大祓百鬼夜行のシナリオにご案内します。
 やべえよやべえよ。MS人生初の戦争ボス戦シナリオだよ。がんばります。

●本シナリオについて
 このシナリオは「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結する、特殊なシナリオとなります。
 プレイングボーナスがあります。ご確認ください。

●プレイングボーナス
 真の姿を晒して戦う(🔴は不要)。

●真の姿について
 どういう姿で、どんな思いで変わるか。どう戦うか。
 イラストがある方もない方も記入があると嬉しいです。めっちゃ参考にするので。

●妖怪について
 カクリヨファンタズムのオブリビオンは「骸魂が妖怪を飲み込んで変身したもの」です。飲み込まれた妖怪は、オブリビオンを倒せば救出できます。
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第1章 ボス戦 『西洋親分『しあわせな王子さま』骸蝕形態』

POW   :    骸蝕石怪変
自身の【黄金の剥がれた部位 】を【異形の姿】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD   :    部位崩壊弾
レベル分の1秒で【切り離した体の部位(遠隔操作可能) 】を発射できる。
WIZ   :    崩落の呪い
攻撃が命中した対象に【崩落の呪い 】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【対象の皮膚や装甲が剥がれ落ちること】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

三上・桧
火車さん、王子さまは全力で戦うことをお望みだそうですよ
『ならば叶えよう。魔女は願いを叶えるものじゃ』
『だが、自己犠牲に荷担する気は無い。王子とやらも救ってやろうではないか』
ええ、そうしましょう

真の姿を解放
火車さんは魔女に
自分は使い魔たる狛犬に

武器「飛び出す虫図鑑」より大量の蝶を召喚、戦場全体を飛び回らせましょう
その後、王子さまの死角にいる蝶に【白馬の王子様】で移動
王子さまに組み付き、爪と牙を突き立て動きを止めます
火車さん、お願いします
ロケットランチャーで攻撃を
結界術と火炎耐性でどうにか身を守りますので、思いきって吹き飛ばして下さい

『これ、一度撃ってみたかったのじゃ!』
楽しそうですね



 しあわせな王子の像の内。みしみしと軋んだ音がして、食い破られるかの様に表面にひび割れが広がった。そのまま像の崩壊は進み、こぼれ落ちた破片が宙に浮く。その鋭い先端は明確な戦意をもって猟兵へ向き、ついで王子の頭がゆっくりと此方を見据えた。強固な意志を宿していたであろう目こそ無くなっていたが、がらんどうの眼窩であろうとも彼の望みは不思議と伝わってきた。半端な慈悲はよくない、壊れても構わない。━━やくめを、果たさないと。その様を真っ直ぐに見据える一人の猟兵がいる。
「火車さん、王子様は全力で戦うことをお望みなようですよ」
『わかっておるよ。ならば叶えよう。魔女は願いを叶えるものじゃ』
 抱える猫又の火車さんに視線を落とし、三上・桧(虫捕り王子・f19736)は彼女に問う。当然、といった様子で聞こえた返答にこくりと頷くと、火車さんを駅の冷えた床へ降ろす。
『だが、自己犠牲に荷担する気は無い。王子とやらも救ってやろうではないか』
『ええ、そうしましょう」
 ぴょん、と飛びおりた火車さんは桧の方へ振り向いて、二股に分かれたふさふさとした尻尾を静かに振る。桧と火車さんが視線を合わせた直後。漂う虞によって、一人と一匹は真の姿を解放した。変じた姿は双方の人と獣の姿が丁度逆になったかのようで━━黒いドレスに身を包んだ淑女と、金色のクワガタ光る首輪の狛犬だ。魔女と使い魔、といった雰囲気に桧たちが変化を終えたと同時、王子の像から溢れた破片が降り注ぐ。
その狙いを妨げたのは、戦場を舞い飛ぶ蝶だった。桧が前足で開いた虫図鑑からは種類様々な蝶が現れ、視界を奪うように飛び回る。
 その一羽が王子像の視界外に飛んだと同時、次の破片の群れが発射されるが。土煙が晴れた時には桧たちの姿が無い。桧は死角の蝶を辿って瞬間移動をしており、火車は避けつつもいつの間にか、大きなロケットランチャーを担いでいる。桧が思い切り王子の背中に爪と牙を突き立て、組みつく様に移動を封じたのが、ロケットランチャー発射の合図。
「火車さん、お願いします」
『おうよ! これ一度撃ってみたかったのじゃ』
 どこか浮き足立った様子で砲撃を降らせる火車さんに、桧自身は結界で身を守りつつ内心ポツリと零す。楽しそうですね、と。

「━━!」
 ぎり、と王子の眼窩が桧へ向く。紡ぐ言葉は無いが、ひび割れた笑みが安堵に見えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

バルディート・ラーガ
ヌウ……なンとも痛ましいお姿であられること。
自らを削ぎ落としてでも人の営みを守られンとするその御心、
ひとかどの人外たるあっしめも敬意を表さにゃならねエやね。

この姿。人々が想像するよな"龍"のイメージをお借りした
蛇の化け術の賜物。あえて悪く言やア、紛い物ドラゴンにございやす。
ひと皮剥いちまえば内を満たす詰め物、地獄の炎がどろどろと
這い出して来るよな有り様。像の兄サンよかよっぽどかもしれねエ。

ンですが、こんなンでも見様見真似で空も飛べるとくらア。
見目から入って箔付けすンのも、悪い事ばかりじゃアねエさね。
さアて、如何です。互いに表皮の剥がれてからが本番、
中身の悪辣さで力比べと参りやしょうかい!



(ヌウ……なンとも痛ましいお姿であられること)
 ぼろぼろと鈍色の身が崩れ、その中にいっそ虚しいほどに黄金の破片だけが明滅するホームの明かりに反射している様。それでも尚笑みは崩れず、王子の像は静かに崩落の呪いを手繰っている。黙ったきりなのではなく、言葉を紡ぐ力さえも戦う方へ変え(られて)いるのだろう。
 骸魂に呑まれた姿であろうとも『戦わなくては』と相対する彼を、バルディート・ラーガ(影を這いずる蛇・f06338)
(自らを削ぎ落としてでも人の営みを守られンとするその御心、ひとかどの人外たるあっしめも敬意を表さにゃならねエやね)
 先行く猟兵と同じく、バルディートもまた虞によって姿を変えていた。スラリと伸びた細い身体は龍のパブリックイメージを形にしたような。翡翠のいろの鱗を持つ、威風堂々とした龍のすがた。宝玉の原石にも似た一本角が、点滅するホームの電灯を受けてちかちかと瞬いた。
 ほんの少し顎を開けば、そこからは地獄の火の粉がこぼれ落ちる。

 降ってくる火の粉を王子は虚ろな目つきで見上げ、軋む音をさせながら鈍色の手を向ける。
 足がひび割れ、動いた破片がいくつか龍の脚に掠ったかと思えば……途端、包む鱗に大きく亀裂が入る。崩落の呪いといわれるそれを、敢えて受け止めたバルディートは、にぃと口角を吊り上げた。滴る血液は地獄の炎に変わり、真っ黒な蛇となって傷さえも覆い隠す。
「……っとと。像の兄さんよか余っ程かもしれねェな」
 ひと皮剥けば地獄の炎。龍のすがたで獄炎の中身と、黄金におおわれた鈍色の中身。さてさてまがい物加減は……と考えかけて、バルディートはすぅと思考を切り替える。
「見目から入って箔付けすンのも、悪い事ばかりじゃアねエさね」
 紛い物の龍だって、見真似でも空が飛べる。するりと舞い上がる際にも崩落は進むが、獄炎はこぼれ落ちて蛇も大きくなってゆく。
「さアて、如何です。互いに表皮の剥がれてからが本番、中身の悪辣さで力比べと参りやしょうかい!」
 炎の熱で鈍色が崩れる。大きくヒビを作った王子へ、バルディートは降らす獄炎と共にそう告げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

しあわせな王子さまの虞…ん、使わせて頂く
真の姿解放
瞳が青に染まり、うさみん☆は幅広の大刀を持つ

見た目は変わらない、でも、心にあるこの想いは更に大きく

皆の幸せを想ってボロボロになった王子さま
わたし達の為に、ありがとう
だから今度はわたし達が、貴方の、貴方が幸せになる為に頑張る
こんなとこで朽ち果てさせない

UC発動
発射の軌跡は第六感を働かせ、ジャンプ、高速移動で回避
うさみん☆と幅広の大剣にした灯る陽光で武器受けし、オーラを放出してまつりん共々防御
多少は当たっても気にしない、衝撃波を放ち一気に間合いを詰め、大剣を王子さまの胸に

教えて?貴方の夢、貴方の願い
一緒に叶えに行こう


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と。

いま踏んでる雲は、王子さまの金箔?
へえ、王子さま親分って、スゴいね!

妖気……虞?
あ、これ吸い込んだら白炎出せそう!
(白炎が狼型オーラになって立ち昇る。芯の少年の姿は保ったまま、髪が腰下まで、伸びた部分は銀に染まる)

ん。いったんKOしていいんだよね。
おっけ、全力で行くよ!

強化と弱体化を、野生の勘で見抜き。
装甲が上がり、射程が短くなるタイミングで。

ダッシュしてジャンプ、空中から。
灰色の腕だった部位に舞扇投射!
ツバメさんの定位置にも!
レイピアにも!

目くらましの爆発と、見えない絆。
……見えない、はずだよね?

親分にも子供の頃があったんだね。
ほら、戻っておいで!(正拳)



 王子が受け持っていた虞は、一部を残してすっかり剥がれてしまった彼の名残のように廃駅に満ちていた。
(しあわせな王子さまの虞……。ん、使わせて頂く)
 すぅ、と流れるそれを目で追って、木元・杏(シャー・オブ・グローリー・f16565)はひび割れの進む王子像を見据える。その目は駅の天井からは見えないような空の青色に染まっていた。
 傍らの人形がうさ耳を揺らして太刀を握り、そのまた隣で、白炎が狼の遠吠えのような形をとって、立ち昇った。
「おおぉ、すっごいねぇ。白炎出せるようになっちゃった」
 穏やかに呑気にわらった少年は、真の姿に変わった杏の兄、祭莉(マイペースぶらざー・f16554)。腰下まで伸びた髪の、銀の毛先をふさりと揺らして、妹に確認するよう首を傾げた。
「ん、一旦KOしていいんだよね?」
「うん。……全力で戦うって」

 明るい兄にこくりと首肯を返し、杏は静かに意志を固める。
 幸せを想い、幸せを与えるために朽ちて行くのを許容した王子。妖怪としても幸福を与え、与えた末に心臓がわれてもいいと、ほんとうに朽ちようとしている。
(わたし達の為に、雲の道をありがとう。王子様。……だから今度はわたし達が、貴方の、貴方が幸せになる為に頑張る)
 目以外の姿こそ変わらないが、その代わり心には助けたいという思いが満ちていた。ぽつり、零れた言葉は固まり切った決意のそれ。
「……王子様を、こんなところで朽ち果てさせない」
「うんうん! 戻ってきてもらわなくっちゃね」
 人形に、舞扇。双子は各々の武器をしかと構える。
 鈍色の王子は言葉を紡ぐことなく、空洞となった眼窩で二人を見返した。

 金属を熱すれば、泡だったりするのかもしれない。そう思えるような変化が王子に起こった。
 防御のように鈍色の部分が泡立ち、膨れ上がると一つがぱりんと音を立てて粉々に割れる。その破片が一斉に杏と祭莉に向いて飛んだ。
放射状に飛ぶそれを、杏は大きく跳躍して躱し、人形が太刀を振るうことで幾つかを弾き落とす。
 兄を狙って飛んだ破片を杏がオーラで防いだ直後、兄……祭莉は既に駆けだしていた。人形が太刀を構え直す横を潜り抜けると、膨れ上がった腕の部位に舞扇を投げつける。予知で見たツバメの定位置のようだった肩にも、ルビーの無いレイピアにも。
複数の扇が王子に突き立った途端、大きな爆発が起こる。
「──!」
「オトナには見えない絆。……見えない、はずだよね?」
 にっ、と祭莉が笑ってみせた。骸魂で覆われ見えなくとも、繋がれたという感覚は分かるのか。王子の膨れ上がった異形の部位も、軋む足も僅かに鈍る。
 直後、爆風を一気に巻き上げて杏の操る人形が飛んだ。
「教えて?貴方の夢、貴方の願い。だれかの願いをかなえるだけでなく、貴方自身の」
 一気に間合いを詰めたそれは、太刀を王子の胸へつきたてた。
もろに刺突を食らった王子の喉と口を僅かに動かしたのは、骸魂ではないような気がした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

嶷神・白檀
【彩黒】
真の姿→イラスト参照

しあわせの王子様、か。なんと献身的な事か。彼の為に…そうだな、全力でいこう。
ああ、小鳥。それがお前の、姿。私もあまり…見られるのは得意ではないな。

『毒片』で王子様を視界に捉えつつ、飛んでくる射撃物を羽根と鱗、必要なら手で落としたり。毒で弱らせながら彼の中のオブリビオンを叩こう…。
小鳥の援護もありがたく。…王子様には、つばめがいるのだろう?悲しい別れより、歓喜の再開をさせたい。だから、そう、…頑張れよ。死なないで。

(同行するオスカー君の事は小鳥呼びです)


オスカー・ローレスト
【彩黒】

真の姿:可愛らしい小鳥が表紙の、一冊の童話集。中は赤い線で消されていたり、文字の上から赤い字で悲劇的な結末に書き換えられてたりしている。

ぴぃ……あんまり見せたい姿じゃない、けど……でも、そうも言ってられない、ね……(本の状態で浮きながら

俺は、サポートに回る、よ……【堕とす鳥】で王子様の動きを制限する、よ。俺への攻撃も、白檀への射撃も、妨害出来たら、と……

か、彼が本気でやる、つもりなら……手加減しちゃダメ、だよね……今回は加減、しないで、思い切りやって、おくれ……!(呼び出した鳥に



 鈍色の身体に大きく刻まれた亀裂で、ぐらり、身体が傾ぐ。それでも尚うつろな筈の眼窩がこちらを見据えているように見えるのは、骸魂に覆われ、見えなくなった筈の王子の意志の残滓だろうか。
(あのようになろうとも、役目を。……なんと献身的なことか)
 嶷神・白檀(竜神の悪霊・f28552)は王子のその様に、静かに溜息を零す。彼の為に出来ることは。そう考えて瞑目し、意識を切り替えた。
 変じた姿は桜の龍。溶けだした桜にも似た色の翼を大きく伸ばせば、皮膜から滲み出た毒液が廃墟となった駅の床に垂れ、しゅううと細い煙を立てた。
 傍らでふわりと浮き上がったのは、一冊の童話集だった。丁寧に、丁寧に装丁されたであろう表紙には小鳥が描かれており、駅を吹き抜ける寒々とした風に時折紙が煽られる。
 その本──真の姿をとったオスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)は、羽搏くようにくるりと表紙を上に頁を動かすと、白檀の少し後方に位置どった。
 白檀はオスカーを小鳥を見るように目線をやれば、翻るページの中、上から何重にもつけられた傷のような赤い異様な上書きの痕にぱちりと瞬きをした。
 その様子に、ぴぃ、と。表紙の鳥が小さく鳴く。きっと人の姿では目を伏せ、静かにかぶりを振っていたかもしれない。
「ああ、小鳥。それがお前の」
「あんまり見せたい姿じゃない、けど……そうも言っていられない、から」
 吃りつつもオスカーの声はしっかりとした意志を持っており、赤い傷の踊るページをはためかせ、後方に位置取りつつも隠れる様子はない。その様子を白檀は静かに見つめ、王子の像へ向き直った。毒を飲んだ身を晒すのもあまり得意ではないのだか、小鳥と同じくそう言っていられないのも確かだった。
「か、彼が本気でやる、つもりなら……手加減しちゃダメ、だよね……」
「そのようだ。彼の為に……そうだな、全力でいこう」

 ばきばきと音を立てたのは毒に煙を立てる床ではなく、王子の片腕だった。
 白檀が庇うように一歩進んだと同時、砕けた片腕の破片が飛ばされる。桜色の羽根と鱗がそれを迎えて勢いを削ぐと同時、後方にいるオスカーのページがぱらぱらと捲られた。
「思い切りやって、おくれ……!」
「おや。援護、ありがたく」
 本から飛び出てきたのは、ピィピィと高い声で鳴く小鳥。とうに走らなくなった列車の警笛にもにたその声が響くと同時、王子の放つ破片も、王子自身もなにかに押さえつけられたかのように動きが鈍る。小鳥の援護に後押しをされ、白檀の毒を含んだ羽根が、破片の雨に競り勝った。
「……王子様には、つばめがいるのだろう?」
「ツバメの為にも、助けたいんだよ……!」
 白檀とオスカーは、予知の像を思い起こしていた。ツバメ自身もやくめを果たそうと飛び去った、すがた。あの時ツバメが静かだったのは、王子の意を汲んだが故だったのかもしれない。だが。今生の別れになりそうな決断を誰が望んだか。ビターな結末よりは、幸せな王子に幸せな再会を。そう思うのは。

「だから、死なないでおくれ」
 その為に全力で戦い、再会のハッピーエンドへ。
 ぴしりぴしりと割れた亀裂が、ありがとう、という温かな涙のように見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 きぃ、きぃと鳥の声。身を砕いて倒れ伏す王子の側に、ツバメが降り立った。

 ツバメの瞳が見下ろす辺り、王子のひび割れから鉛の心臓が覗いている。それに半ば砕けた片手を添え、王子は静かに笑っていた。その笑みは骸魂に呑まれた時の虚ろなものではなく、穏やかな表情。未だ言葉だけが戻らぬまま、王子は僅かに猟兵達へ礼のように頭を下げる。笑みには確かに、先へ進む猟兵達への期待の光が宿っていた。

 纏っていた虞は消え、ひりつく空気は薄れていた。

最終結果:成功

完成日:2021年05月16日


挿絵イラスト