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大祓百鬼夜行⑩~青海苔はお好みで

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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●漂うはソースの香り
 熱々に熱された鉄板に垂れたタレがじゅうと歌う。
 途端に辺りには焦げたソースの香りが広がって、道行く人々は香りに惹かれてそちらを向いた。
「はい、豚玉、イカ玉、スペシャル海鮮、焼き上がりました。ソースはたっぷりで? 鰹節は? 青海苔とマヨネーズはお掛けしてもよろしいでしょうか? はい、はい。では、そのように」
 淑やかな女性の声とともに、しなやかな手が振るわれる。
 じゅじゅう。
 ふかり、ふわわ。
 ぱぱぱぱぱぱ。
 シュッ! カカカカカ、カッ!
 流れるように追いソースと鰹節、青海苔とマヨネーズをトッピングされ、テコが動いたと思ったら一口サイズにカットされていた。
「お皿から召し上がりますか? それとも鉄板からでしょうか? どちらもお好きなようになさってくださいませ。さあ、お熱い内にどうぞ。――ああ、おかえりなさいませ」
 これでもかと長い鉄板の前に立ったメイド服の女性は、次々と客へお好み焼きを提供していく。それぞれの好みを聞いては最適な時間で、最高のお好み焼きを。
「このお店って、自分で焼くことも出来る? いやぁ俺さぁ、ちょっと何ていうの? こだわり? みたいなものがあってさぁ。お好み焼きにはちょっとうるさいんだよねぇ」
「勿論でございます、旦那様。皆様へ奉仕することがわたくしの務め。さあ、テコをどうぞ」
 大きなテコとボウルに入ったタネを渡された河童は、手慣れた調子でボウルの中身を混ぜ、鉄板で焼いていく。生地の表面がふつふつとするのを見守り、訳知り顔で音を聞き――そして、キラリ。河童の目が光った。
「今だ! っとう!」
 ジャッ! シュッ! ……べちゃ。
「あちゃー、失敗しちまったかぁ。まぁこういう時もあるある」
 ひっくり返すのに失敗した生地をテコでペチペチ形を整える河童。
 しかし、それを見ていたメイドは震えた。
「いけません、いけませんわ旦那様……!」
「え?」
「立派なご当主になれませんわ……!」
 ぺちん、何かが河童に触れた。
 こんにゃくみたいな感触だ。なんて思った河童の視界が、何故だか低い。
「なっ!?」
「さあ坊ちゃま、テコの使い方のお勉強をいたしましょうね」
 メイド――『ワーズ・キュレイ』は、とびきりの笑顔で微笑んだ。

●ウサギの道案内
「お好み焼きって食べたことある?」
 それをね、食べてきてもらいたいんだ。
 左右に耳を揺らしたフィオレンツァ・トリルビィ(花守兎・f19728)が言うことには、『お好み焼きがすごい勢いで焼かれていくから、食べ続けないとカクリヨファンタズムがお好み焼きで埋もれてしまう』とのことだ。なんだそれな状況だが、既に猟兵たちはそう言った戦場を幾度も乗り越えてきているはずなので、問題ない。問題ないはずだ。
「お好み焼き、ボクも一度UDCアースで食べたことあるけれど、あれ、おいしいね。いろんな具を入れていいって聞いているよ。皆はどんなのが好きかな。メイドさんに言うと焼いてくれるから、何でも言って大丈夫だよ」
 定番のお肉。海鮮はエビにイカにホタテに明太子に牡蠣に桜えびと、種類豊富に。それからトロォリとろけるチーズ。チーズとは違った食感とともに伸びるお餅。ピリッと辛いキムチに、食感を楽しめるちくわに蒟蒻、納豆まで。天かすたっぷりや、ネギたっぷりも美味しい。
「ボクは麺が入っているのとか……あっ、長芋が入っているのとか、好きだよ」
 紅生姜は多いのが好きだなぁ。
「あ、そうそう。メイドさんがたくさん焼いているけれど、自分で焼きたいって言えば焼かせてくれるよ。ひっくり返すチャレンジもできるんだって」
 けれど、けれどね。
「ひっくり返すのには気をつけて。失敗すると小さくされちゃうんだ」
 どうやらこのメイドさん、少年少女が大好きなのだ。少年少女にご奉仕することこそが至高の喜びだとか何だとか。よくわからないけど、とフィオレンツァはウサ耳を揺らした。
「罰ゲームみたいなものなのかも」
 それじゃあ楽しんできて。楽しんで、たくさん食べてきてね!

 いざ征かん、鰹節踊りソースが香る屋台へ!


壱花
 ご飯シナリオ滑り込みに来ました壱花です!
 受付開始が先になって申し訳有りませんが、屋台消滅を察知して馳せ参じました。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。1フラグメントで終了します。

●受付期間
 【5/16(日)8:31~ 5/18(火)23:59】
 再送にならない範囲でのお届けになるため、特に問題がなくとも不採用になる可能性があります。MS頁の「タイミング」のところを参照頂けますとハッピーです。

●シナリオについて
 グループでのご参加は【3名まで】。
 自由にお好み焼きを食べてください。ひたすた食べるも、自分で焼くもご自由に。
 公序良俗に反する事、他の人への迷惑行為、未成年の飲酒は厳禁です。

●ひっくり返しチャレンジ
 しない
⇨する

 ああ、失敗するだなんて。矢張り幼少期からテコ使いを学ぶ必要がありますね!
 ということで、ワーズ・キュレイによって小さくされます。頭脳は大人、身体は子供。一緒に来た人に冷やかされるのも良し、ワーズ・キュレイにテコ使いを学ぶも良し、です。(ただし、ワーズ・キュレイは少年少女に興奮しすぎると死んでしまうので、『イエス・ロリショタ・ノータッチ! キープ・ア・ディスタンス!』の精神で程々の距離感を保ちます。)

●プレイングボーナス
 『屋台グルメを食べまくる(戦わずともダメージを与えられます)』ことです。

●迷子防止とお一人様希望の方
 同行者が居る場合は冒頭に、魔法の言葉【団体名】or【名前(ID)】の記載をお願いします。
 お一人での描写を希望される場合は【同行NG】等の記載をお願いします。
 また、文字数軽減用のマークをMSページに用意してありますので、そちらを参照ください。

 それでは、皆様のアツアツなプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『ワーズ・キュレイ』

POW   :    なりふり構わぬ奉仕の形
対象への質問と共に、【自身の歪んだ愛】から【対象を若返らせる触手】を召喚する。満足な答えを得るまで、対象を若返らせる触手は対象を【若返らせるガスの噴出と絡みつく事】で攻撃する。
SPD   :    人々を魅了する奉仕の形
手持ちの食材を用い、10秒でレベル×1品の料理を作る。料理毎に別々の状態異常・負傷・呪詛を治療する。
WIZ   :    拒否権の無き奉仕の形
【無限に溢れる触手】を解放し、戦場の敵全員の【抵抗力と年齢】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はキルシ・キュマライネンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

キルシ・キュマライネン
倒しましょう。正々堂々メイドとして…!!

今回は彼女がホスト側なのでわたくしは給仕を受けてひたすら受けきるスタイルでメイドバトルですわ。見せてあげましょう我がメイド力を…。

ジャンジャン作ってくださいまし!よそ見をしていると食べつくしてしましますわ!UCなんて発動条件を満たせずとも、もとよりメイドに不可能はありません!!選択していますが発動しません!心意気です!!
ストップ!!違いますわ!!そこは焼き方が…失敗しましたわね…。反省ですわ…。おや、体が縮んで…(見た目あまり変わらない)

良いでしょうあなたの膝の上で鉄板焼きを作って食べさせます!攻守逆転ですの!!

(※改変協調歓迎です)



●今、メイドバトル(?)が始まる……!
 キルシ・キュマライネン(海生押しかけメイドモドキ・f28170)はメイドである。――ただし、非合法の、だが。あやかしメイド協会が認めてくれないのだから仕方がない。しかし協会が認めてくれなくとも勝手にメイドと名乗るし、メイド業を行う――いわゆるメイドモドキというものであった。
 けれど此度は、『ワーズ・キュレイ』がホスト側。
(一流のメイドたる者、しっかりとその給仕を受けて差し上げますわ!)
 給仕を受けて受けて受けきって食べまくるキルシvsお好み焼きを焼いて焼いて給仕し続けるワーズ・キュレイの、メイドバトルのゴングがキルシの脳内に響き渡った! カンカンカンカンカン!
「ジャンジャン作ってくださいまし! よそ見をしていると食べつくしてしましますわ!」
 テコを握り、きりりと眉を上げた同僚のメイド――ではないワーズ・キュレイへとそう啖呵を切るキルシ。
「豚玉、イカ玉……それから焼き上がったお好み焼きは順にわたくしへ!」
「はい、おじょ……」
 お嬢様と続ける予定だったワーズの表情に疑問符が浮かぶ。相手はメイド服だ。となると、同僚? いえいえ、他家のメイドであろうとも持て成すのが一流のメイド……!
 素早くキルシの眼前にお好み焼きを積み上げ、キルシはお好み焼きを黙々と平らげていく。焼いては食べる、焼いては食べるの攻防戦。
 少しソースの味に飽きてきたら、自分で焼くこともして少し時間を稼ぐ。
(いい感じに焼けてきましたわ。……今です!)
 えいっとひっくり返そうとした、その時。
「ストップ!! 違いますわ!! そこは焼き方が……」
 他の客の焼き方が気になってしまったキルシは、自分のお好み焼きから意識を逸してしまった。

 ――べしゃ。

 一瞬が(お好み焼きの)命取りとは、まさにこのこと。
 ハッとした時にはキルシの姿は(見た目あまり変わらないが)縮んでいる。
 しかしメイドたるもの、転んだついでに床を磨け、ご主事様の靴を磨け……とただでは起きない!
 お可愛らしいとうっとりとした笑みを向けてくるワーズ・キュレイの膝にちょんと座って、愛らしい顔で見上げてやる。
「こうした方が的確に教えて頂けると思いますわ」
「い、いけません。いけませんわお嬢様」
 作ったお好み焼きをワーズ・キュレイに食べさせるつもりで、キルシはにっこりと微笑んだ。
「ワーズ・キュレイさ――いいえ、先輩。上手に焼けるか見ていてくださいまし」

大成功 🔵​🔵​🔵​

椚・一叶
トリス(f27131)と
すごい勢いで焼かれていくなら
すごい勢いで食べていこう、トリス

お好み焼き、幅広い
迷ったら先ずは豚玉を
焼き立てを直ぐ食べれるのも、良いな
じっと焼かれていく様を見物
知ってるかトリス
鰹節がよく踊るお好み焼き、絶品

濃厚なソースの味がたまらん
すごい勢いで、と言いつつも
やはり味わうのは省きたくないもの

定番を食べたら
食べたこと無い変わり種、気になる
全部制覇できるか?
餅を限界まで伸ばしてもぐもぐ
お好み焼き、もう何入れても外れない
シェア、良いな
早速トリスが食べるのを頂こう、とごっそり大きめに切り分け
目指せ全制覇
…まぁ儂だけ貰っても、シェアにならないか
語り合う為にも、と自分の分皿ごと差し出す


鳥栖・エンデ
イチカ君(f14515)と
種類も沢山お好み焼きを
食べ放題だなんて最高だねぇ
すごい勢いで焼かれて食べてを楽しもう

焼くなら定番なお肉が好きだけど
海鮮のエビにイカにホタテに明太子に
チーズとかお餅とか麺が入ってるのも
おいしいと思うんだよねぇ
色んな具材や組み合わせや未知なものも愉しんで

鰹節が踊るなんてよく知ってるねぇ
焼かれてるとこ余りよく見たことなかったんだけど
…そういえば今回こうして誘ったの
お好み焼きならシェアしやすいかと思っていてね
忙しなく食べていくのも良いけれど
分け合ったなら全部制覇も出来そうじゃない?
あとで感想でも語り合おう〜っと
微笑ましい行動には敢えて何も言わずに
ひと口ぱくり、といただきまーす



●目指すはテッペン! 全制覇!
 ほかほか、ほか。湯気が上がる。
 ふわふわ、ふわわ。湯気のリズムで鰹節のダンス。
 鼻孔をくすぐる焦げたソースの香りを嗅げば、お腹がぐうと鳴ってしまいそう。これならすごい勢いで焼かれても、すごい勢いで食べていけそうだ! 食べ放題だなんて最高!
「お帰りなさいませ、ご主人さま。お召し上がりになりたいお好み焼きはございますか?」
「えーっと、それじゃあ先ずは豚玉を」
「僕は……」
 椚・一叶(未熟者・f14515)は迷ったら先ずは定番の豚玉派。食べてる間に次食べたいお好み焼きが思いつくかも知れないし。
 鳥栖・エンデ(悪喰・f27131)は定番のお肉が好きだけれど、と少し悩む。普段食べないものも絶対に美味しい。手堅く定番どおりを狙うのも良いけれど、いろんな具材を組み合わせたり未知なものを愉しむのも食べ放題の醍醐味だろう。
「海鮮のエビにイカにホタテに明太子、それからチーズとお餅と麺入りで」
「豪勢だな、トリス」
「おいしい組み合わせだと思うんだよねぇ」
 他にもおいしい組み合わせを見つけたら教えてね、なんて話している間に、じゅう。
 手早くタネをかき混ぜた『ワーズ・キュレイ』の触手が、鉄板の上にふたりが注文したお好み焼きを焼いていく。
 じゅうじゅう、ふつふつ。お好み焼きが歌う。
 目の前でお好み焼きが焼かれると、ついついじいっと見守ってしまうのは何故だろうか。生地に火が通って次第に色が変わっていく様を見るのは結構楽しい。
「知ってるかトリス」
「ん?」
「鰹節がよく踊るお好み焼き、絶品」
「鰹節が踊るなんてよく知ってるねぇ」
「まあね」
 じゅううぅぅぅ! 鉄板が鳴いた。
 じいっと眺めている間に、焼きのクライマックス。ソースをたっぷりと塗られたお好み焼きが良い匂いをさせている。
「青海苔や紅生姜はどういたしましょうか?」
「あ、儂は掛けて大丈夫。トリスは?」
「僕もお願いしようかな」
「はい、それではどうぞ、お召し上がりくださいませ」
 ふたりの眼前にはふかふかの焼き立てお好み焼き。勿論鰹節もゆらゆら踊っている。
 早速いただきまーすと手を伸ばし、ほかほか熱々をはふっと頂いていく。
「お次のお好み焼きはどういたしますか?」
「次は餅入りで」
「僕は豚玉に、ネギ多め。それから天かすも」
「かしこまりました」
 美味しい美味しいと食べていると、次のお好み焼きが焼き上がる。ほかほかのお好み焼きは、餅もチーズもピザみたいにびよーんっと伸びて、伸び切ったそれをもぐもぐ回収するのも楽しい。お好み焼き、もう何入れても外れない。
「……そういえば今回こうして誘ったの、お好み焼きならシェアしやすいかと思っていてね」
「シェア、良いな」
 お好み焼きは口をつける前に切ってしまうから、シェアがしやすい。だから、いろんな味を楽しめる。早速エンデのお好み焼きを大きめに切り分けた一叶が貰っていき、儂のも持っていけと分け皿を差し出して。
「全部制覇できるか?」
「分け合ったなら出来そうじゃない?」
「む、これも美味いな」
「あとで感想でも語り合おう~」
「どの組み合わせが一番だったか覚えておかないとな」
 目指せ全制覇ー! おー!
 そうと決まれば新たな組み合わせを。
 すみませーんっとワーズ・キュレイに追加を頼む、ふたりだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルルチェリア・グレイブキーパー
※アドリブ歓迎

美味しいお好み焼きを食べに来たのよ!
……じゃなくてカクリヨファンタズムを救いに来たのよ!
美味しいお好み焼きを沢山食べるのは、ここを救うのに必要な事だから!
それ以上でもそれ以下でも無いのよ!ホントなのよ!

わぁ~♪ソースのとっても良い香りが食欲を刺激するのよ~♪
私はね、おそばが入ったお好み焼きが食べたいわ。
豚肉は大きいのを入れて、チーズやお餅も入れて欲しいのよ♪

美味しいものは皆で分かち合わないと!
UC【お子様幽霊たちの海賊団】で空飛ぶ海賊船を召喚
船員の幽霊の子達を誘って一緒にお好み焼きを食べるのよ!
皆でお好み焼きパーティなのよ♪




 ふわり、漂うソースの気配。
 すんすんと鼻を動かして、香りに惹かれるまま歩を進めれば、そこには大量のお好み焼き!
「美味しいお好み焼きを食べに来たのよ!」
 じゃなくて! 本当はカクリヨファンタズムを救うために来たのだけれど、正直に言ったらオブリビオンに警戒されてしまうかも知れないわ! 美味しいお好み焼きをたくさん食べるのはここを救うのに必要なことだし、其れ以上でも其れ以下でもないのよ! ホントよ、ホント! ホントなんだから!
 なんて、頭の中を言い訳で忙しくしているルルチェリア・グレイブキーパー(墓守のルル・f09202)の前に立った『ワーズ・キュレイ』は「おかえりなさいませ、お嬢様」スカートをつまんで挨拶をして、空いている席を勧めてくれる。
「お嬢様のお好みはありますか? 定番のものでしたらすぐにお出し出来ますが」
「そうね……私はね、おそばが入ったお好み焼きが食べたいわ」
「モダンでございますね。かしこまりました」
「豚肉は大きいのを入れて、チーズやお餅も入れて欲しいのよ♪」
「はい、ではそのように」
 ワーズ・キュレイがスカートを翻して調理を始めれば――なんと、10秒で出来上がる。驚きに目を瞬く間にもソースや鰹節の好みを聞いて、ルルチェリア特注お好み焼きが完成した。
「どうぞ、ごゆっくりと」
「ハッ! つい見入ってしまっていたわ。美味しいものは皆で分かち合わないと!」
 みんな~、ごはんよ~! と《お子様幽霊たちの海賊団(ゴーストキッズパイレーツ)》を呼び出して、幽霊船員たちの皆と今日はお好み焼きパーティ。
「あら、まあ。たくさんのお客様がいらっしゃいましたね。少々お待ち下さい、たくさん焼いていきますわ」
 3桁を超える団体客の訪れにワーズ・キュレイのテコが唸り、ルルチェリアはたくさんのお好み焼きから一口ずつ頂いて、たくさんの味のお好み焼きを愉しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

砂羽風・きよ
【菊】

これはもう俺の出番だろ!!
何食いたい?
スペシャル海鮮?それとももち明太?豚玉もいいよなぁ

全部いっちまうか!
理玖と俺ならいけるだろ…って追加してる?!

任せろ、任せろ
手慣れた手つきでしゅばば
チラッとメイドを見つつドヤ顔

どーせなら、理玖にも手伝ってもらおうかね
ひっくり返す時コテを入れるだろ?
そん時にふたつのコテでくっつけながら
ひっくり返すとやりやすいぞ

あ…
ま、まぁ、なれてねーし仕方ねぇな
頭わしゃわしゃ
すまんすまん、可愛くてついな

よっしゃ、見てろ
モリモリに盛ったお好み焼きの下にコテを入れて
こうひっくり返すんだ――
(あ、まだしっかり中が焼けてねぇ!)

…りく、これはちがうゆめだ

うん、いっしょに食べる


陽向・理玖
【菊】

やったー!
兄さんの焼きとか鉄板じゃん
うわっやべぇどれも美味そう
ここは豚玉いや海鮮変わり種の明太餅チーズも捨て難い…

全部!マジか!
さすが兄さん
尊敬の眼差し
いや食わねぇと埋もれるもんな
お好み怖い
じゃあモダン焼きにスジ蒟も追加で

うわーかっけぇ
手慣れた手捌きに見惚れ

えっいや俺返すのやってみたいけどあんまりやった事ない
こ、こうか?
恐る恐るコテ両手に返そうとじたばた
あっ

…くえるしべつにいいじゃん
なんだよこのばつげーむ
ぷくーっと膨れつつ撫でられ気を取り直し
鉄板からそのまま
あつっ
慌ててふーふー

わあ
きよくんそれかえす?
かえせちゃうの?
わくわく

あっ!?

ゆめかぁ…そっか
きよくんおこのみたべよ
とってもおいしいよ



●ミスは誰だってするものです
 お好み焼きと言えば――!
「これはもう俺の出番だろ!!」
 ばーーーーーーーん!!
 いよっ、待っていました。屋台の申し子! ドンドンパフパフ!!
「何食いたい? スペシャル海鮮? それとももち明太? 豚玉もいいよなぁ」
「うわっやべぇどれも美味そう。ここは豚玉……いや海鮮変わり種の明太餅チーズも捨て難い……」
 どれを食べたっていい。今日は食べ放題。食材は豊富にあるし、いくら焼いたって砂羽風・きよ(タコヤキカレー・f21482)の財布が痛むこともない。お好み焼き一枚おごってるやるよと言ったものの、やめて……おごりと聞いた途端に高級食材選択するのやめて……なんてことにはならない。牡蠣も明太子もイカもホタテも、一尾1000円を超えそうな立派な海老だって! 今日はあらゆるものをたくさん入れても良いのだ!
「全部いっちまうか!」
「全部! マジか!」
「ああ、大マジだ!!」
 今日のきよは太っ腹だ。身銭を切らないで済むのって素晴らしい!
 さすが兄さんと陽向・理玖(夏疾風・f22773)から向けられる視線も気持ちよく、きよはドヤドヤのドヤ顔でテコ(お好み焼き機材専門店の商品名の多くがテコだったので、今回は台詞以外はテコでいきます!)を握りしめ、さあ何から焼く? と聞いてくる。
「じゃあモダン焼きにスジ蒟も追加で」
「理玖と俺ならいけるだろ……って追加してる?!」
 でもまぁ、成長期だし? 若い胃腸にはいくらだって入るし?
 任せろ任せろと、きよは手慣れた手付きでしゅばばっと焼いていくのを、理玖は「かっけぇー」と更に尊敬した顔で見守っている。
 チラッ。
(――なに!? 両腕だけでなく触手も使って焼いているだと!?)
 しかも10秒でレベル分お好み焼きが焼ける。何故か焼けてしまう。生地の色が変わって、生地の声を聞いてからひっくり返す――とかそんなの関係ない! みたいな手付き(と触手)で、『ワーズ・キュレイ』が焼いていく。
(アイツ、俺よりすごいのでは? い、いや、そんなはずは!)
 このままではアイデンティティの喪失になりかねない。そんなことはだめだ。きよは理玖の視線と尊敬をキープし続けねばならない!
(くそっ、料理の妨害はしたくねぇんだが……!)
 《最後の晩餐~屋台飯~(ヤタイ・デ・チェックメイト)》!!!
 これで、ワーズ・キュレイの速度は5分の1だ。つまり、約一分で焼き上がる。
(それでも早え!!!)
 仕方ないので(料理人的なプライドを守るためにも)、きよはワーズ・キュレイを視界にいれないことに決めた。余談だが、張り合うためにいつもより素晴らしいテコさばきを見せたきよに理玖の瞳はそれはもうキラッキラだった。
「どーせなら、理玖にも手伝ってもらおうかね」
「えっいや俺返すのやってみたいけど……」
「ひっくり返す時コテを入れるだろ? そん時にふたつのコテでくっつけながらひっくり返すとやりやすいぞ」
「こ、こうか?」
 中空でポーズを取ってくれるきよのマネをして、理玖は両手に握ったテコを動かしてみるけれど――、
「あっ」
「あ……」
「――坊ちゃま?」
 ヒュンッと空気の音が聞こえるような速さだった。背後に何か気配を感じたと思った時には、理玖の視界は縮んでいる。
「……くえるしべつにいいじゃん」
「ま、まぁ、なれてねーし仕方ねぇな」
 身体が小さくなっても食べやすいように、ワーズ・キュレイが子供用の食器や身長合わせ用のクッションやらをセッティングしていってくれた。焼くのを暫し止め、ニコニコと見つめてくる視線が何だか生暖かい。
「なんだよこのばつげーむ」
「すまんすまん、可愛くてついな」
 わしゃわしゃと撫でられた髪を膨れながら直し、お手本見せてよと言えば、ニカッと自信に溢れた笑みが返る。まあ見てなって。
 くるんとテコを回して持ち方を変えて、シュッシャッと素早くお好み焼きの下へとテコを差し入れる。盛りに盛った欲張りセットなお好み焼きだって、きよに掛かれば朝飯前! ――の、はずだったのだが。
(あ、まだしっかり中が焼けてねぇ!)
「――坊ちゃま? お腹を傷めてしまいますよ?」
 ヒュンッとやってきたワーズ・キュレイに小さくされるだけでなくお好み焼きの主導権まで奪われた。欲張りセットなお好み焼きはワーズ・キュレイが美味しく焼き上げてくれたし切り分けてもくれた。優しい。ニコニコ見守られているけれど。
「……りく、これはちがうゆめだ」
「ゆめかぁ……そっか。きよくんおこのみたべよ」
 おこのみやき、おいしいね。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

愛昼禰・すやり

【ヲルガちゃん(f31777)】と


すや、すや…ん、あれぇ、
オルガちゃんだぁ、やはー
ひらひら手を振ってご挨拶
悪霊になって十八年、ふらふら彷徨っていた時にちょっと知り合った同胞
相変わらず寝心地よさそうねえ

うん?う〜ん、そうねえ
お好み焼き、焼いてもらっててねえ
寝ちゃったみたい〜
良かったらいっしょに食べるぅ?

ふわふわ〜よいにおい〜
にこにこしちゃうねえ
ソースにマヨネーズ、あっ、かつぶしもかける〜
ゆらゆらかつぶし、見てるとねむくなぅ…んにゃ、だめだめ
目覚ましに、ひとくち
ん〜おいひ〜
チーズの風味、もっちりお餅に海老がぷりぷり
贅沢な一枚だあ
ヲルガちゃんもおいし?
んふふ、お肉たっぷりねえ
なあ、少しちょうだい?


ヲルガ・ヨハ

【すやり(f30968)と】

生とは戦
生とは喰らい続ける事
ならば即ち
此処も戦場のひとつ

音に香りに誘われ視線向ければ
……あれは
溢せば、”おまえ”の歩が止む

転寝に勤しんでいるようだな、すやりよ
ふわり返る声に面紗の奥で笑みを敷く
雲のよにカクリヨを彷徨う同胞(はらから)だ
そうであろう
われの特権だ

嗚呼、われも席を探していた
隣を貰おうか

好みを伝え
すやりに運ばれたそれを見遣る
嗚呼、そちらも旨そうだな
……よもや船を漕がぬかと思ったが
踏みとどまったようだ
焼き上げられたものを一口
香ばしいソースに肉多めの豚玉
キャベツの歯応えに
賽切りはんぺんは雲を食むよう
自然と笑み浮かぶのも頷ける

嗚呼、これも旨いぞ
ではしぇあとしよう



●邂逅はお好み焼き屋台
 じゅわあぁぁぁぁ、じゅううぅぅぅ。
 ソースが歌えば、香ばしい香りが漂う。耳に鼻に、そして腹に訴えかけるそれに誘われれば、竜神とて思わず視線を向けてしまう。
「……あれは」
 ヲルガ・ヨハ(片破星・f31777)の声に、彼女を抱いたからくり人形が足を止めた。
 ヲルガの視線の先にはお好み焼きの屋台。随分とまあ鉄板が長く連なってはいるが、屋台だ。それと――。
「転寝に勤しんでいるようだな、すやりよ」
「すや、すや……ん、あれぇ、」
 鉄板の前で気持ちよさげに微睡む、見知っている同胞(はらから)に近寄り声をかければ、こくこくかくりと頭がひとつ落ちて。もぞりと上がる顔が、微睡みから抜けきらぬままにその瞳にヲルガを映した。
「オルガちゃんだぁ、やはー」
 緩慢な動きでひらひら振られる手に、ヲルガは相変わらずよのと笑みを佩く。
 雲のようにふらふらとカクリヨファンタズムを彷徨う竜神の悪霊――愛昼禰・すやり(13月に眠る・f30968)はいつもこんな調子だ。いつでも眠たげで、いつでもどこでも寝ている。
 今日もそうだ、お好み焼きを焼いてもらってじいっと見ていたはずなのに、じゅうじゅう聞こえる音は心地よくて、気付けばすやぁと夢の中。
「相変わらず寝心地よさそうねえ」
「そうであろう。われの特権だ」
 自身を抱く人形の腕を撫で、面紗の下で笑った。
「ヲルガちゃんもお好み焼きを食べにきたの~?」
「嗚呼、われも席を探していた」
 生とは戦であり、生とは喰らい続ける事。即ち此処もまた戦場のひとつ。
 お好み焼きが脅威であるのならば、われが食らい尽くしてやろう。
「良かったらいっしょに食べるぅ?」
「そうだな、隣を貰おうか」
 知らぬ顔でもなし、断る理由もない。少し横に寄ったすやりがどぉぞぉと両手で歓迎してくれたスペースへと人形がヲルガを降ろした。
「お帰りなさいませ、お嬢様。何を焼きましょうか?」
「肉多めの豚玉、はんぺんを入れて呉れ」
「かしこまりました。……お休みになられていたお嬢様の分は、僭越ながら新しいのをご用意させて頂きました。こちらをお召し上がりください。ソース等はいかがいたしましょう?」
「わあ、ありがと~。ソースにマヨネーズ、あっ、かつぶしもかける~」
 寝ている間に焼きすぎてしまったお好み焼きは、焦げ目や硬めが好きな客へと提供される。別の鉄板で焼かれていたお好み焼きを眼前に置かれたすやりの瞳は、ゆらゆら揺れる鰹節に釘付けだ。
 ふわふわ、よいにおい。夢の扉が開きそう。
 ゆらゆら、ねむたく。頭も一緒にゆらゆらり。
「ねむくなるぅ……んにゃ、だめだめ。いただきまーす」
 眠ってしまわないように、目覚ましのひとくちをぱくり。
 ふわふわの鰹節がソースにしんなりしおしおになって、口に運べばソースと一緒に豊かな香りが口の中に広がってい。もきゅっと噛めば、返ってくる弾力はお餅と海老。もっちりもっちりしたお餅と違って、ぷりぷりな海老は噛めば弾けてしまいそう。トロリとトロけたチーズの味もよく合っている。
「ん~、おいひ~」
「嗚呼、そちらも旨そうだな」
 また船を漕ぎ出すのではないかと見守っていたすやりが何とか自力で睡魔に打ち勝ち、彼女が食べ始めてすぐにヲルガの眼前にも食べごろのお好み焼きが完成していた。『焼けるところをじっくり見ていたい』等の希望が無ければ、ここの店主は10秒で食べごろなお好み焼きを提供してくるのだ。
 すやりのお好み焼きがもっちりタイプなら、ヲルガのお好み焼きがキャベツの歯ごたえが楽しめるタイプだ。キャベツをたっぷりと使ったお好み焼きは食む度にキャベツの新鮮さを伝えてきて、時折口内に転がってくる賽切りはんぺんがまた雲を食むような食感で飽きさせない。
「ヲルガちゃんもおいし?」
「嗚呼、これも旨いぞ」
「なあ、少しちょうだい?」
「ではしぇあとしよう」
 豚肉とキャベツたっぷりのお好み焼きも、餅とチーズの海老でトロもちプリプリのお好み焼きも、どちらも美味しそう。簡単に分け合えるのもお好み焼きの醍醐味。
 そうしてシェアしあって、いいとこ取りのお好み焼きを、また頼もう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻


美味しそうな香りがする
之がお好み焼き…初めてだ
お好みを、焼くのだろう

サヨが好きな物から食べたい
餅を?それは想像できないな

わかった
巫女に美味しいお好み焼きを振る舞えるよう頑張るよ
鉄板焼きのさよちゃん……頼もしい
言われるがまま具材と生地をまぜ恐る恐る鉄板へ

もういいかな?
えいとひっくり返し──噫!
ま、待ってくれ、次は上手く……!
小さく?!
子供時代などない私が小さい、なんとも動きにくく……サ、サヨ!!

…サヨに抱っこされるのは悪くない
童子の様にサヨの膝の上に座り、童子のようにお好み焼きを食べさせられる
美味だが、恥ずかしい

だが悪くない

サヨ、次は明太子のがいいな
餅は?
噫、きみと
味覚さえも彩られていく


誘名・櫻宵
🌸神櫻


お好み焼きよ!
カムイはお好み焼き初めてでしょう?
お好みを焼く……まぁ遠からずよ

まずは定番の豚玉から、海鮮や変わり種まで食べてみましょ!明太子やチーズ、お餅入も美味しいの!

任せて!私は鉄板焼きのさよちゃんと呼ばれた事もあるのよ!(主に自称)
焼き方だってばっちり教えてあげる!
何事も経験よ、カムイ

上手よ!
混ぜたら鉄板の上に……そう!じゅうじゅうしてきたらひっくり返すの
そーれ!
あら、失敗

私の神様は意外とぶきよ……カ、カァイイ!!
何その小さい、カムイ
抱っこさせて
うふふーほっぺすりすりしちゃう!

食べさせてあげる、美味しいでしょ?
次は私が焼いてあげるわ

カムイがどんどんグルメになって…私も嬉しいのよ



●味覚さえもきみと同じ
 ――之が……。
 黒い鉄板は手を翳せば熱気を感じられ、他の席からは茶色の何かをはふはふと食べる人々の姿が見える。茶色の何か――それは時折白とか緑とか薄茶や紅に彩られており、まぁるくて少し平たい……朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)の見たことのある料理に似ていた。
「サヨ、茶色のパンケーキだ」
「違うわ。或れがお好み焼きよ!」
「之がお好み焼き……」
 確かに随分と香りは違うけれど、パンケーキは甘いだけはなく惣菜パンケーキなるものもある。見た目は似ているのだ。食べる前からカムイは『これは美味しい』と確信した。
「カムイはお好み焼き初めてでしょう? どんな料理か知っている?」
「お好みを、焼くのだろう」
「お好みを焼く……」
 好きな具材を入れて焼くのだから、当たらずも遠からず。誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)はそれ以上のツッコミはせず、実食しましょうとカムイの手を引いて席へと着いた。
「カムイは何から食べる?」
「サヨが好きな物から食べたい」
「そうねぇ……それじゃあまずは定番の豚玉から、海鮮や変わり種まで食べてみましょ! 明太子やチーズ、お餅入も美味しいの!」
 カムイの脳内で七輪の上で焼かれる餅がぷくぷくと膨らんでいく映像が流れた。お好み焼きもぷくぷくと膨らむのだろうか……。
 手を振り振りメイドこと『ワーズ・キュレイ』を呼び、欲しいタネと自分で焼きたい旨を伝えれば、素早く準備を整えてくれる。
「焼き方を教えてあげるわ」
 覚えて帰ったら、他の子たちといつでも食べることが出来る。材料はどれも入手が難しくないし、大人数で大きな鉄板を囲むのも楽しいだろう。
「任せて! 私は鉄板焼きのさよちゃんと呼ばれた事もあるのよ!」
「鉄板焼きのさよちゃん……!」
 私の巫女は何とも頼もしいことだ! とキラキラな眼差しを向けるが、それは櫻宵の自称である。
 生地をよく混ぜ、戦々恐々としながらもとろりと鉄板へと乗せれば――。
 じゅぅぅうううううう!
 湯気と音とが立ち上がり思わず動きを止めるが、カムイカムイと呼ぶ櫻宵の声にハッとして両手に握ったテコで形を整えていく。形は、カムイの好物のパンケーキのような形。けれど膨らみはパンケーキよりもあって、ふかふか感よりはぎっしりしていそうだ。
「じゅうじゅうしてきたらひっくり返すの」
「もういいかな?」
「ええ、いい感じよ。そーれ!」
 櫻宵の掛け声に合わせ、えいっと素早くひっくり返したが……。
「――噫!」
 世は無情。初めてのお好み焼きはべしゃっと鉄板に落ちた。
 しかし、悲しんでいる暇はない。
 背後に気配を感じてハッとする。
「私の神様は意外とぶきよ……」
「ま、待ってくれ、次は上手く……! 上手く焼け……噫……」
 挽回のチャンスを得ようとしている間にも身体がしゅるると縮んでしまった。
 視線は低く鉄板が見づらいしし、腕は短く動きづらい。
「……サ、サヨ!!」
「カ、カァイイ!!」
 腕を持ち上げて動きづらいんだアピールをしているのだが、櫻宵の瞳には抱っこしておくれのポーズにしか映らない。すぐさまハグしてほっぺスリスリしてギュウギュウしてから膝に乗せた。ここがあなたの指定席です。
「サ、サヨ……」
「なぁに、カムイ? はい、あーん」
「あ、あーん」
 恥ずかしい。恥ずかしいのだが、抱っこされるのは悪くないと思ってしまうし、食べさせてもらえるのも嬉しい。巫女の膝に座るなど、小さくならねば出来ないことだ。
 恥ずかしい。美味しい。だが悪くない。
「どう? 美味しいでしょ?」
 それに櫻宵もニコニコとしあわせそうだ。
「サヨ、次は明太子のがいいな」
「ええ、焼いてあげるわね」
 餅も入れておくれと口にする神の味覚はどんどん成長している。新たな世界を知っていく姿が愛おしくて、チーズもいれましょうねと微笑んだ。

 ところで。
「サヨが食べている方には青海苔がかかっていないね」
「あ、あら。そうね。それは……」
 何故? と純粋な視線が向けられる。
 ――だって恋しい相手に青海苔まみれの歯は見せられないじゃない!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐那・千之助

ラプラス殿(f17180)と

ラプラス殿、実はお子さま舌?
私は肉!定番の豚玉じゃね
半分こ嬉しい
彼女の舌に合わせてネギや大葉など渋いのは無し
野菜食べてるかな?キャベツ沢山で

くるりん…(そわ…
ラプラス殿せぬの?我慢してない?
料理は不得手じゃが私の第六感が導いてくれる
あ、あーっ(崩壊

銀髪紅眼の幼児化(昔の色合い
当主ってくるりんスキル必須なの?
って私の恥を撮るでない…!

それより仕事じゃ
しかしコテも箸もうまく使えず
ぐっ…
食べねば任務失敗じゃからな
これは猟兵として選択すべき事
口を開け
…おいしい…!
子ども向けの味。適温。食が進む
つ、次はそっちのお好み焼きを…

なんと…!神すごい…ん?
お見通しなら止めぬかー!?


ラプラス・ノーマ

千之助(f00454)と一緒!

お好み焼きだー!
えっへへー、おねーさん美味しい奴くーださいっ
えっとね、コーンとチーズ入ってる奴がいいなー
千之助は?どーする?
よっしゃ、じゃあ半分こだー

えっ、くるりんチャレンジするの?
……ショタせんちゃんの未来が見えちゃったけど、止めないでおくね☆
ちみっこせんちゃんが出来上がったらゲラゲラ笑いながら写真を撮る
ひーひー、可愛いーなー!

中身がそのままなのは知ってるけど
子供扱いをしてあげようねぇ
ほら、ふーふーしてあげる
あーんして!
んふっ、ちみっこせんちゃんが好きだと思ったからコーンチーズチョイスなのだよ☆
らぷこにはお見通しだゾ♪

帰りはだっこ?それともおんぶ?
なーんて!



●面白いからに決まってるじゃん!
 ふかふかほかほか、お好み焼き。鉄板の上に焼きたてのお好み焼きがたくさん並んでいるだけで、なんだかよくわからないがテンションが上がる。お好み焼きだー! な、気分になるのだ。
「えっへへー、おねーさん美味しい奴くーださいっ」
「おかえりなさいませ。どれも絶品ですよ」
 基本的なものならすぐに提供できますよと笑みを向けてくる『ワーズ・キュレイ』へどうしようかなぁと言いながらもいそいそと空いている席についたラプラス・ノーマ(見つめるのは30秒先の未来・f17180)は、トッピング一覧を眺めながらえーっとね、と口にする。
「コーンとチーズ入ってる奴がいいなー」
「ラプラス殿、実はお子さま舌?」
「ふふー」
 佐那・千之助(火輪・f00454)の問いには、そうだよとは答えずに。
「千之助は? どーする?」
「私は肉! 定番の豚玉じゃね。薬味や香草の類は無し、キャベツたくさんで」
「承りました。ご自分で焼かれますか?」
 ワーズ・キュレイはふたりに問いながらも素早くテコでお好み焼きを返していく。今日の彼女は10秒でレベル分お好み焼きが焼けるハイパーメイドなので、そのテコさばきは実に鮮やかだ。
(くるりん……)
 それはもう、くるりん、くるりん、くるりん……とひっくり返していく。ちょっと楽しそうだな、なんて思ってしまう。
「私は自分で焼こうかの」
「えっ、くるりんチャレンジするの?」
「ラプラス殿せぬの? 我慢してない?」
「あたしはいっかなー。それよりさ、お好み焼き半分こしない?」
「半分こ!」
 千之助は話題を逸らされたことに気付かず、良いねと笑った。
 じゅううう、じゅううううぅぅぅ。
 ラプラスが注文した分は千之助が自分で焼くお好み焼きが焼き上がるタイミングで持ってきてもらうことにし、千之助は今、真剣な表情でお好み焼きを見つめていた。
 正直、料理は不得手だ。未来が読める? いやいやいや。だが、待って欲しい。お好み焼きだよ、お好み焼き。材料を混ぜて焼いて、ひっくり返して焼けば誰だって美味しく食べられるお好み焼きである。料理が不得手だろうが、これくらい出来るに決まっている。テコだってお好み焼き切ったりするし広い目で見てみれば武器のようなものじゃろ? 黒剣を日々扱う千之助にとっては、武器の扱いなどお手の物。お茶の子さいさいというやつである。是式ができぬようではダンピールの名折れ! 今だ、とう!!

 ――べしゃっ☆

「あ、あ――っ」
「あっははははははははははははは!」
 鉄板じゃなくて机があったら叩いていた。そんな勢いで笑い倒すラプラスの目の前で、ヒュンッと拘束で近寄ったワーズ・キュレイが千之助を幼くした。ついでに注文していたコーンチーズなお好み焼きも置いていった。
「ひーひー、可愛いーなー!」
「私の恥を撮るでない……!」
 笑いすぎてお腹が痛いし目尻には涙も浮いてくる。連写モードで銀髪紅眼の子供を撮れば怒った顔をしているけれど、可愛いだけだから、ね?
 ちなみに、ラプラスはこうなることを既に予見していた。知っていたけど、教えなかった。その理由なんてわかりきっていることだし、失敗する? って聞かれなかったしね☆
「そ、それより仕事じゃ」
 笑い倒しているラプラスからプイッと顔を逸し、千之助ことちみっこせんちゃんは、残りをワーズ・キュレイが仕上げてくれた豚玉へと手を伸ばす。
 しかし、上手に食べられない。鉄板の高さは合わないし、箸もテコも上手に扱えない。このままでは任務失敗となり、『ええ~、食べればいいだけの任務もこなせなかったの~?』なんて後ろ指を差されかねない。一名は確実に言ってくる!
「ほら、ちみっこせんちゃん。ふーふーしたのあげるね。あーんして!」
「ぐっ……」
 目の前に差し出されるお好み焼きに、思わず怯む。姿は小さくなっているとは言え、中身はいつもの千之助。つまり、大人だ!
(しかし! 私は猟兵だ!)
 猟兵として、任務遂行のために恥をかなぐり捨て、親鳥からごはんを貰うひな鳥のように齧りつく。
「……おいしい……!」
「んふっ、ちみっこせんちゃんが好きだと思ったからコーンチーズチョイスなのだよ☆」
 子供の舌にぴったりな其れ。
「おいし? らぷこにはお見通しだゾ♪」
「なんと……! 神すごい……ん? お見通しなら止めぬかー!?」
「はーい、ちみっこせんちゃーん。次は豚玉も食べようねー♪」
「むぐっ!!」
 帰りはだっこ? それともおんぶ? なーんて!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

仕立屋・ギンキョウ
♢♡他おまかせ
「とりあえず、生もらえます?」

▼行動
熱々のお好み焼きを冷たい生ビールと一緒に頂く幸せスタイルで参戦。
焼いてもらえるっていいですねェ

「調味料は自分でやっていいですかね?」
まずは定番、シンプルにソースで。次は豚キムチーズを醤油で。ネギ多めにはポン酢とコチュジャンでチヂミ風……と、色んな味変をしてお好み焼きを楽しみます。

●ひっくり返しチャレンジ:する
▼成功の場合
「どやぁ……」
普段お好み焼き食べる時はひとりで焼いて食べますんでね。
あっしが焼いたやつ、メイドさんも食べます?

▼失敗の場合
「あっしのビールぅぅぅ!!」
ビール没収
こどもになったことで帽子や袖が邪魔で食べづらくなる


ルーファス・グレンヴィル
♢♡
さあ、お好み焼き食べようか!

相棒竜に目配せして
互いに、にやりと笑い合う

じゅうじゅうと焼いている間

…──なあ、ナイト、お前、

覚えてるよな、オレの過去
って言おうとしたのに
それ以上の言葉が紡げない

あ゛~~、イヤ、何でもねえ!

後ろ髪をガシガシと掻き乱して
ひょいっと自分でひっくり返せば

げ、やッべ、

動揺隠せず思い切りミスった
それに気付いて飛んできたメイドに
あっという間に小さくされて

くッッッそ、てめッ、
ナイトのせいだからな!

ぎろりと黒竜を睨み付けるも
けらけらと愉しげに笑っているだけ

畜生、こうなったら食べてやる!

小さくなっても、いつも通り
ナイトや他の連中をも巻き込んで
わいわいと楽しくお好み焼きを味わうだけ



●その後、ビー玉で苦戦する
 黒い鉄板は、湯気がもくもく、ソースはじゅうじゅう。近付きすぎれば熱いけれど、その熱を感じながら食べるお好み焼きは最高だ。
「とりあえず、生もらえます?」
 何をお出ししましょうと尋ねてきた『ワーズ・キュレイ』へと指をひとつ立て、仕立屋・ギンキョウ(僵尸の仕立屋・f33333)は生ビール中ジョッキを注文した。
「ぷっはぁ! うまい!」
 ごっごっご! とあまりの美味しさに三口ほど一気に飲んで顔を上げる。鉄板の近くは生ビールの美味しさも二割……いや、三割増し! まずは定番の豚玉を注文し、すぐに出てきた(このメイドは10秒で焼き上げるのだ!)豚玉をはふはふ、ビールをごくっ! ん~~~、うま~~い!
 口内に広がるソースは、濃いぐらいが丁度いい。生ビールとよく合う。よく合うからとても進む。生おかわり!
「調味料は自分でやっていいですかね?」
 あっという間に定番ソース味のお好み焼きを食べ終えて、次のお好み焼きからは味付けを自分の好みで。豚キムチーズを醤油で。ネギ多めにはポン酢とコチュジャンでチヂミ風。明太餅チーズにはバター醤油。次々とあれもこれも楽しむつもりで、ギンキョウは眼前のお好み焼きをはふはふと平らげていく。
「お帰りなさいませ、旦那様。こちらの席が空いておりますので、どうぞ」
 ワーズ・キュレイが新たな客を空いている席へと誘導する。ギンキョウの隣だ。
 席を案内されたルーファス・グレンヴィル(常夜・f06629)は邪魔するなと隣席に侘びてから席に着く。彼は一人ではない。相棒の竜『ナイト』が一緒だ。
「さあ、お好み焼き食べようか!」
 相棒竜に目配せをして互いにニヤリと笑い、早速注文。ナイトも喜ぶ肉マシマシのデラックス豚玉だ。ついでに生ビールも頼む。隣の席の男の飲み食いっぷりが実に心地よかったから。
「こちらでお焼きしましょうか?」
「ゆっくりしたいから、自分で」
 かしこまりましたとの声とともに、準備が整えられた。
 じゅう、鉄板に載せたタネが鳴く。ほかほかと湯気が立ち上がっていくのを見守るのは、なんだか落ち着く。だからだろうか、つい、ぽろりと口に出た。
「……──なあ、ナイト、お前、」
 覚えてるよな、オレの過去――と続くはずが、その先が紡げない。
「あ゛~~、イヤ、何でもねえ!」
 ビールのジョッキを持つ逆の手で頭をガシガシ掻き乱して、ジョッキを置いておもむろにテコを掴む。
 ――ひょい。
 軽くひっくりかえるはずだった。
 やッべ、と思った時には、後ろ髪がやけにゆっくりとふわりと浮いて、微笑む女の気配。ビールのジョッキもヒョイと奪われた。
「くッッッそ、てめッ、ナイトのせいだからな!」
 ギロリとにらみつけるも、幼い姿では迫力ゼロである。中空でお腹を抱えてケラケラ笑ったナイトは、ひとしきり笑って満足するとテコを握り、べしゃりと崩れてしまったお好み焼きを整えにいく。
 畜生と悪態をつこうと思ったら――。
「あっしのビールぅぅぅ!!」
 どうやら隣の客も小さくなってビールを没収されたみたいだ。
 スッとワーズ・キュレイから差し出される二本の瓶ラムネ。
「なあ、お隣さん。俺とのまねぇ?」
 その一本へと手を伸ばしたルーファスを、ギンキョウはずり落ちる帽子を抑えながらぱちくりと眺めて。
「好いご提案ですねェ」
 喜んで!
 残る一本に手を伸ばし、ギンギョウはルーファスが持つラムネ瓶へと打ち付けた。
 美味しいお好み焼きに、乾杯!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティア・メル
【猫飴】

スペシャル海鮮、いいねっ
美味しそうなんだよ
ふふふー海のもの食べたら共食いになるかな
ぼくもおんなじもの食べるよ

ぼく、不器用だから
小さくなっちゃうかもしんないけれど
やってみたいな
よーし、頑張るんだよ
あう!失敗しちゃった
ありり?ロキちゃん、大きいね

んふふ、ここぞとばかり
いっぱい甘えちゃおう
膝の上に乗って背中を預ける
口が小さくて上手く食べられないなあ

ぎゅーってしてもらえるのが嬉しくて
ふよふよ笑いながら回された腕をぎゅっ
ぼくもほっこりするんだよ
ロキちゃん、大きいね
すっぽり包まれてる

ロキちゃんもやってみる?
手首をさ、こう
上手く使うといいんじゃないかな
頑張って
にゃはは
ロキちゃんも、お揃いっ


ロキ・バロックヒート
【猫飴】

香ばしい匂いがする
スペシャル海鮮を頼もうかな
ティアちゃんはなに食べる?
同じの?そういえば共食いになるね?
ちょっと面白い

へーひっくり返すのおもしろい
ティアちゃんひっくり返すのやってみる?
ちっちゃくなるかな?ってわくわくして見てたけど
ほんとにちっちゃくなっちゃった
あはは

ちっちゃいティアちゃんかわいー
膝の上においでおいでして
小さく切ってもらったお好み焼き
口元に持ってって食べさせたり
色々お世話したい
いっぱい甘えて~

ふかふかお好み焼き食べながら
目の前の小さい温もりぎゅーってすると
すごくほっこりするよ
ぎゅってしてもらえて満足

あ、でも気紛れに
俺様もひっくり返すのチャレンジしよ
手首をうまく…えーい
あっ



●楽しいおそろい
 ほかほか湯気立つ屋台へと、すんすん鼻を向けたなら。
 漂うソースの香りに足は勝手にふらりふらりと近寄って。
 たくさんのトッピングの文字が踊るメニューを前に、ティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)とロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)は真剣な面持ちで覗き込む。正直、どれも美味しそうだ。
「スペシャル海鮮を頼もうかな」
 ピッとロキが指差すのは、美味しい海の幸盛りだくさんのスペシャル海鮮。大きい有頭海老も焼いてくれて、最後に頭をせんべいにしてくれる豪勢なお好み焼きだ。
「ティアちゃんはなに食べる?」
「ぼくもおんなじものにしようかな。ふふふー海のもの食べたら共食いになるかな」
「そういえば共食いになるね?」
 面白いとくすくす笑うけれど、ティアはセイレーンという精霊種なので勿論何を食べたって共食いにはならない。
 お好み焼きを給仕するメイド『ワーズ・キュレイ』に注文をして、自分たちで焼くかどうか聞かれたふたりは、揃って手を挙げて「やきたーい」「焼く焼くー」と、よいこのお返事。
 斯くしてふたりの眼前にはふたつのお好み焼きのタネが置かれ、じゅうじゅうと音を上げている。ふたりの視線の向こうでは、ワーズ・キュレイが忙しく給仕をして回っている。お冷を出してお手拭きを出して、10秒あればすごい速さでお好み焼きを焼く。彼女のレベル枚数のお好み焼きが10秒以内にひっくり返され、客へと提供されていく。すごい早業である。
 それを見ていれば、やはり気になってくるもので。
「へー、ひっくり返すのおもしろいね。ティアちゃんひっくり返すのやってみる?」
「うん、やってみたいな」
 不器用だから失敗しちゃうかもしれないけれど。
 けれどでも、やってみたい。上手にできたらきっと楽しいし、大好きな子にだって今日の報告ができちゃうかもしれない。
 うん、と頷いたティアは両手にしっかりとテコを握り、きりりと眉を上げた。
「よーし、頑張るんだよ」
 ロキがワクワクと視線を向ける中、いちにのさんっとひっくり返す……が。
「あう!」
 べしゃっと落ちたお好み焼きにしょんぼりする間もなく、視界が縮んでありり? と首をかしげるティア。いつもより大きいロキが楽しそうに笑っている。
「ちっちゃいティアちゃんかわいー」
 その大きさだと鉄板も遠くて食べにくいでしょ? おいでおいでー。
 ポンポンと叩かれたロキの膝へ、ティアは遠慮なくお邪魔する。小さくなっても凹まないし、可愛いって言ってもらえるのも嬉しいし、甘やかしてくれるのは嬉しい。暖かな背もたれも心地よい。
「んふふー」
「いっぱいお世話してもいーい?」
「してしてー。お世話してほしいんだよ」
「それじゃあ、はーい、あーん」
 小さな口でも食べやすいようにワーズ・キュレイが小さく切ってくれたお好み焼きを、ちゃんとフーフー冷ましてからティアへあーん。
 はふっ、もぐもぐ。
「おいしいっ」
「はい、お次もどーぞ」
 あーん。
 ティアに食べさせて、彼女がもぐもぐとまろいほっぺを動かしている間に、自分も食べて。おいしいねって笑いながら、小さな温もりもぎゅー。
「くすぐったいんだよー」
 体の前に回った腕をぎゅっとして、子供の高い声でティアがキャラキャラと笑う。小さくなるといつもの友だちが大きな大人に見えて、すっぽりと包まれる安心感が何だか少しくすぐったい。
「俺様もひっくり返すチャレンジしてみようかな」
「ロキちゃんもやってみる? 手首をさ、こう……上手く使うといいんじゃないかな」
 経験者(失敗してしまったけど)からのアドバイスに、うんうん成程と頷いて。
「手首をうまく……えーい」

 ――べしゃっ!

「あっ」
「にゃはは」
 あんなに大きかったきみの視線があまり変わらない高さだ。
 くすくす笑い合う幼いふたりをニコニコと眺めたワーズ・キュレイは、ふたりが食べやすいようにとクッションや子ども用食器を用意していく。
「でもまあ、面白いしいっか」
「ねー」
 次は成功させるよーと笑って、ふたりはまぁるいほっぺにお好み焼きを詰め込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵雛花・十雉
【白日】

あぁ、そうか
鰹節たっぷりだもんね
ナツが気になるのも分かるかもしれない
火傷しないように気を付けて

お好み焼きはオレもたまに
なんだかんだで定番の豚玉が好きかな
なゆさんはお好み焼き食べたことある?
なんとなく食べたことなさそうなイメージが…お嬢様っぽいからかな
あ、海鮮も美味しいよね

先生すごい、チャレンジャーだなぁ
応援したいけど、小さくなったところも見てみたいような…いや、何でもない
ドキドキしながら見守るよ

え、オレも?
そうだね、ここでやらなきゃ男が廃るっていうか…
や、やります!
でも緊張するからあんまり見ないで…

小さくなったら照れを誤魔化しつつお好み焼きを食べる
うん、2人のも食べたい
3つに分けようか


榎本・英
【白日】

ナツがお好み焼きの匂いにつられたのだよ。
あれには鰹節がかかっているだろう?

しかしだね、ナツには早すぎると思うのだよ。
何よりもとても熱い。

ひっくり返しチャレンジはぜひともしてみたいものだね。
お好み焼きはたまに頂くよ。
私は普通のお好み焼きを頂こう。
二人は一体どのような物を食べるのかな?

ひっくり返しチャレンジだね。
失敗をしたら小さくなってしまうのか。
それは勘弁をしたいのだが、はたして私に出来るかな?
此処はお手本を見せたい所だね。

良ければ二人も如何かな?
失敗をしたら、小さい私はナツと戯れているかもしれない。
お好み焼きも頂くよ。ナツにはあげないとも。
良ければ二人のお好み焼きも分けては呉れないかい


蘭・七結
【白日】

よい香り。ナツが駆けてゆくのも解るわ
これがお好み焼き、の香りなのかしら
おふたりは……食べたことがあるようね
じゅうと焼ける音色が心地好いこと

ひっくり返し、は是非とも
成功するかしら。失敗しても愉しそう
けれど……嗚呼、小さくなるのは寂しいわね
お手本を見せてくださるかしら
その後に、わたしも行なってみましょう

わたしは、この海の幸のものが気になるわ
知らない具材もたんと盛られて、美味しそう

ふふ。英さんもときじさんも頑張ってね
成功か、失敗か
その何方であっても、手を叩きましょう
健闘を祈っているわ

では、わたしの番ね
くるりとテコを扱って仕立てましょう

三等分にして分け合うわ
一度で三度おいしいだなんて、ステキね



●にゃんて美味しいお好み焼き
「あっ、こら、ナツ……!」
 と、たたたたたた。
 榎本・英(優誉・f22898)の懐の中でうとうとしていた筈の子猫が、突然懐からピョンっと顔を出したか思ったら、鼻をスンスン、ピョン! 慌てて伸ばした英の手を尾がふわっと撫で、華麗に地面に降り立ち駆けていった。
 慌てて追いかけていく英の背中を見て、くすりと笑みを零しあった宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)と蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)はゆっくりと歩を進めた。子猫の『ナツ』の駆けていく先は解っている。きっとふたりが辿り着く頃には作家先生が捕まえて、ふたりの席を確保してくれていることだろう。
 程なくして追いつけば、鉄板の前に座してふたりを手招く英の姿。想像通りの姿に、ふたりはまた顔を見合わせて笑った。
「いや、なに。ふたりともすまないね。ナツがお好み焼きの匂いにつられてしまってね」
「よい香り。ナツが駆けてゆくのも解るわ」
「あぁ、そうか。鰹節たっぷりだもんね」
「しかしだね、ナツには早すぎると思うのだよ」
 お好み焼きは兎角熱い。ふわふわ揺れる鰹節ダンスもナツを誘惑しそうだが、ナツの舌には危ないものだ。ナツの脇の下に手を入れぶらんと持ち上げて、真面目に説いてみたが、当のご本猫はうにゃん? と首を傾げていた。
「おかえりなさませ、皆様。当店ではご自分で焼くことも可能ですが、いかがなさいますか?」
 メイド姿の店主『ワーズ・キュレイ』の触手にナツが瞳をキランと輝かせる前に、スススと煮干しが差し出されるのを眺めながら全員『是』を唱え、ぱらり、たくさんのトッピングが書かれたメニューを広げた。
「私は普通のお好み焼きを頂こう。……私はお好み焼きはたまに頂くけれど、ふたりはどうなのかな?」
「お好み焼きはオレもたまに。なんだかんだで定番の豚玉が好きかな。そういえばなゆさんはお好み焼き食べたことある?」
「わたしは、焼くのを見るのも初めてよ。お手本を見せてくださるかしら」
 ふたりが豚玉を選ぶ中、七結の指は海鮮の文字をなぞる。知らない具材の名前がたくさん並んでいる。
「お手本を見せたい所だね。なゆ、海の幸もお好み焼きにはよく合う」
「あ、海鮮も美味しいよね」
 ワーズ・キュレイを呼んで注文をして、三人の前の鉄板でじゅうじゅうとタネが歌い出す。出汁の香りが仄かに顔って、煮干しから顔を上げたナツが鼻をひくつかせた。
 準備をした時にワーズ・キュレイが『ひっくり返しをわたくしに命じてくださっても大丈夫ですので、その時はお呼びくださいまし』と言っていたが、さて――お好み焼きは、そろそろひっくり返すタイミングだ。三人の視線が交わり合い、最終的にふたつの視線が英に集まった。
 まずは、お手本を。
「では、私から行こうか。良ければ二人も如何かな?」
「先生、頑張って……って、え、オレも?」
 しかし、ここでやらなきゃ男が廃る。少しだけオロオロとしたけれど、十雉も覚悟を決めたのかキリッとお好み焼きを見据えた。
「や、やります!」
「ふふ。英さんもときじさんも頑張ってね」
「でも緊張するからあんまり見ないで……」
「それでは、いちにの……」
 にゃぁぁぁぁん!
 煮干しを食べ終えたナツが、ピョンと飛び出した。
「あっ、こら、ナツ!?」
「ええ!?」
「あら」
 べしゃっ×2。
 魚粉の匂いがする入れ物を見つけて飛び出したナツを捕まえるべく慌ててテコから手を離した英と、驚くままにお好み焼きが鉄板へと落下した十雉。その状態のまま、アッと息つく間もなく、ヒュッと背後に高速移動したナニカが、ぺたり。
「ネコチャン……少年……イイ……」
 ハッと振り向いた頃にはナニカは居ない。眼鏡がずり落ちた英の腕の中で、ナツがにゃごにゃご暴れるのみだった。
「あら、ふふ。おふたりともとても可愛らしいわ」
 両手がふさがっている彼のずり落ちた眼鏡を掛け直してあげてから、心意気と安全にナツを確保した素早さに拍手を送る。
「いや、うん、まあ」
「……ナツが食いしん坊で困ってしまうのだよ」
「では、わたしの番ね」
「この流れでやろうと思えるなゆは強いね」
 ふふっと微笑った七結がテコを両手に握り、えいっと小さな掛け声とともに。
 くるり。ぽてん。
「流石はなゆ」
「初めてとは思えなかったよ」
「おふたりのお手本を見ていたからよ」
 ふたりがべしゃりと形をくずしてしまったお好み焼きは、ワーズ・キュレイが既に整えてくれている。三人分のお好み焼きにソースをたっぷり塗って仕上げたら、三人の眼前には鰹節がダンスするほかほかのお好み焼きの完成だ。
「ナツにはあげないのだよ」
 手をちょいちょい伸ばそうとした子猫の足をふくふくとした手で抑えて、キッと睨みを効かせれば、諦めたのか子猫は英の隣で丸くなる。不貞腐れているのか、パタパタと尾が座布団を叩いた。
「良ければ二人のお好み焼きも分けては呉れないかい」
「うん、ふたりのも食べたい」
「一度で三度おいしいだなんて、ステキね」
 よければ小さなおふたりさん。わたしが切り分けてあげましょうか?
 小さな背丈では鉄板が少し高めで、腕も短い。七結の言葉に素直に頷いたふたりのために七結は切り分け、初めてとは思えないほど器用にテコを扱い小皿に載せてあげた。
 さあ、冷めない内に召し上がれ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラファン・クロウフォード
【箱2】 戒も俺も猫舌仲間。急いで食べる必要はないよな?フォークを使ってゆっくり味わって沢山食べる。最初の一口だけ熱々をパクリ。両手で口を押え肩を震わせて涙ぽろぽろ。やっぱむりぃ。味を変えてお茶を飲んで飽きずに食べる工夫する。戒、どっちが上手に焼けるか勝負やらないか?大海鮮ミックス豚玉ソバマックスキングを注文だ。サイズ的に無謀な戦いは承知。だが、上手くひっくり返せたなら戒の賞賛をゲットできるかも!豪快にひっくり返しチャレンジ。幼児化してハズカシイ!うわ。ちっちゃな戒が天使みたいにかわいい。顔溶ける。チーズコーン餅食べさせて。俺のラスボスも食べる?二人で力を合わせてひっくり返しに再チャレンジだ!


瀬古・戒
【箱2】
彼の隣にちょっと…は慣れたかな?

猫だから冷ましつつ箸で食う
はは!何してんだよ、可愛いか貴様
ほら水飲めって、舌へいき?
ふーふーしたげよか?なーんてな

トッピング…俺ねー、マヨ多めに青海苔、鰹節踊ってんの好きー
勝負?おっけ、やろやろ
俺はね、チーズコーン餅にする
何その強そうなメニュー名、ラスボスか?
ぷッはは!どんまい、って可愛すぎの笑いすぎで手元狂ったんじゃん!俺もちっちゃい
ねね、俺のが(餅で)纏まってない?俺の勝ちじゃない?ほらほら
しかし、ちっちゃいラファンかわいい……子供が出来たらこれくらい可愛いんだろうかなんて思うけど言わない
食べつつ頬ついたり脇腹ついたりイタズラ
子供だもーん
ほら、あーん



●あつあつ
 はふはふ、ふーふー。鰹節の踊るお好み焼きに慎重に息を吹きかける。
 ふーふー、ふーふー。もういいかな? と思っても油断してはいけない。外側が冷めてきても中は熱々という罠に行く度も煮え湯をのまされて来ている。だから、慎重に、慎重に……。
「ん、んま」
「ぁ……っつ!」
 箸で切リ分けて中まで冷ました瀬古・戒(瓦灯・f19003)は笑顔を浮かべ、最初は熱々が良いとフォークを挿してパクリと行ったラファン・クロウフォード(武闘神官・f18585)は思わず口を押さえた。口の中は大忙し。何とか舌に熱が触れぬようにと食んだお好み焼きの欠片を口内で跳ねさせて、その熱に肩を震わせて耐える。矢張り、熱い。熱すぎる。涙がポロポロ出てしまう。
「はは! 何してんだよ、可愛いか貴様」
 笑われたって、今はそれどころじゃない。
「ほら水飲めって、舌へいき?」
 背中を擦られながら差し出された冷水を受け取って、一気にごくごく。冷たい水で中の熱ごと喉の奥へと流し込んだ。
 自分たちが猫舌なことなど、自分たちが一番解っていることなのに。熱々を食べたがるところが可愛い。彼の隣にも慣れてきた戒はラファンの背を撫でて落ち着かせてやった。
 まずはふたりでひとつの豚玉を頼んだけれど、やはりこれは熱い。鉄板から皿に移して暫く冷ますことに決め、冷ます間に別のお好み焼きを焼く事を提案し合う。
「戒、どっちが上手に焼けるか勝負やらないか?」
「勝負? おっけ、やろやろ。俺はね、チーズコーン餅にする」
「俺は大海鮮ミックス豚玉ソバマックスキングにする」
「何その強そうなメニュー名、ラスボスか?」
 お好み焼きをひっくり返すのは、具材が多ければ多いほど嵩が膨らんで難易度が跳ね上がる。しかしラファンはそれも承知して、この無謀な戦いに挑むのだ。
 ――上手くひっくり返せたなら戒の賞賛をゲットできるかも!
 ひそかにグッと拳を握りしめ、じゅううと眼前で焼かれていくお好み焼きを見守った。
「そろそろだな」
「お、いくか?」
「見ていてくれ、戒」
 ザッ! お好み焼きの下に左右から大テコを入れる。それだけで感じる重量感。通常のソバよりも多いソバマシマシ状態のそれは、ゆっくり傾けては麺が崩れてすぐに駄目になる。勢いが大切だ。しかし、勢いを付けすぎても上に乗ったぷりぷりな海老や、麺の横からチョコンと顔を覗かせている白いイカが飛んでいってしまう可能性が高い。非常に難易度の高いお好み焼きであった。
 しかし、男にはやらねばならぬ時がある。
 ――俺は、俺の男気を戒に見せる……!
 ヒュッ――ザザザァーーーー。
「ぷッははははは!」
 解ってはいたけれど、盛大にとっ散らかった。
 すぐさま音もなく背後に立った『ワーズ・キュレイ』に小さくされ、ラファンは肩を落とす。
「ぷっ、ぷは、可愛い可愛い、まあどんまい」
 ラファンに声を掛けながらも、戒も手首をくるっとさせてお好み焼きを返す。ちょっとテンションが上がりすぎて目尻に涙が溜まってきた。
 厳しきかな、お好み焼き道。他に気を取られていては上手く返せぬのは必然の理。
「あ……」
 べしゃっと鉄板に落ちてしまったお好み焼きの前に、戒も小さくなってしまった。
「ねね、俺のが(餅で)纏まってない? 俺の勝ちじゃない? ほらほら」
 勝ちを譲らぬ戒に頷かねばならない状況のラファンの大海鮮ミックス豚玉ソバマックスキングは、ワーズ・キュレイが整えてくれている真っ最中である。
 ちょっとハプニングはあったけれど、お好み焼きは焼き上がり、ソースはたっぷり、マヨネーズは多め。青海苔でお化粧して、大きな鰹節を踊らせて、それからちゃんとふーふー冷ましてから頂いていく。
(ちっちゃいラファンかわいい……子供が出来たらこれくらい可愛いんだろうか……)
 ふーふー息を吹きかけるまんまるほっぺが可愛くて、ついぷにっと指で押してしまう。なぁにと振り向いたラファンの天使みたいな笑み――しかしこれは、実は小さい戒が可愛いと思っている顔だ。
「戒、チーズコーン餅食べさせて」
「いいよ。ほら、あーん」
「あーん」
 次はふたりで再チャレンジをしようと心に決めるラファンだが、まずは目の前のお好み焼きを食べきってから。大人でも苦しくなるに違いない大海鮮ミックス豚玉ソバマックスキングを食べきることが、暫くのふたりの共同作業となりそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メノン・メルヴォルド
【鮫魔】
お好み焼きも楽しみだけど
お友達のコスタくんと一緒だから嬉しくて、わくわく

ワタシはチーズとか
ん、明太もちチーズも好きなのよ(同じと笑って
それに定番の豚肉とキャベツも美味しいと思うし、今日はいっぱい食べよう、ね
ジュージュー美味しい香りに食が進んじゃう

Σ!?
突然のタコにビックリ
コスタくん、すごいの!(きらきら
どうやって取り出したの?

…んん?
悪戯だったと気づき
あわわ…えと、次回の悪戯待ってるのよ
美味しく焼いてもらいましょう?
たこ焼き風のお好み焼きになりそう

ひっくり返しにもチャレンジ
テコを持ち、えいっ!
失敗したらコスタくんにお世話してもらうね

お土産を持って帰ったら、あとでも食べられるから、いいね


コスタバルツァ・オリヴェート
【鮫魔】
お好み焼きを食うだけでいいなら、喜んで食べまくるぜ!俺は体は小せえけど、食うのは大好きだぜ

メノン、何が食べてぇとかある?
俺は海鮮系!エビ、イカ、タコ、ホタテ
あ、めんたい餅チーズも捨てがたいな

へへへ、食べ物と言えば悪戯
友だちとはいえ悪戯はやめらんねーぜ!
フェアリーランドの壺から取り出すのは…じゃんっ生きてるタコ!どーだ怖ぇか?!
ん?楽しそうだな?!て、手品じゃないぞ!
まぁいっか、タコも焼いてもらおっと

人間サイズのテコはきびしーから見物
メノンがちっちゃくなっちまったら
汚れをきちんと拭いたり服汚さねーように見てなくちゃな

もし食いきれない量なら壺んなかにこっそりしまってお土産にしちまうかな…



●たぶんタコは寝ていた
「メノン、何が食べてぇとかある?」
「ワタシはチーズとか……コスタくんは?」
 メノン・メルヴォルド(wander and wander・f12134)が開いたメニューの上をパタパタと飛びながら覗き込むコスタバルツァ・オリヴェート(駆け抜ける海の音・f29688)はお好み焼きより少し大きいくらいだけれど、食べることが大好きである。少し小さめに焼いてもらって分け合えば、色んな味が楽しめそうだなと笑った。
「俺は海鮮系! エビ、イカ、タコ、ホタテ。あ、めんたい餅チーズも捨てがたいな」
「ん、明太もちチーズはワタシも好きなのよ」
「じゃあこれは絶対に食べような」
「うん!」
 仲良しなお友達とお好み焼きを食べられるのが嬉しくて、メノンはにこにこと微笑みながらメイド姿の店主『ワーズ・キュレイ』へ「キャベツ多めの豚玉、チーズ入。あ、大きさは小さめで」と注文した。
 ワーズ・キュレイが焼くと、10秒で提供される。たっぷりとソースとマヨネーズの掛かった焼きたてのお好み焼きと一緒に差し出されたフェアリー用の食器を受け取り、ふたりは早速できたてのお好み焼きをはふはふと頬張った。
「んん、シャキシャキのキャベツがおいしいね、コスタくん。次はどうする? 海鮮いっちゃう?」
 どうする? と声を掛けながら横を見れば――にゅるん、うねうね。
「タコ!?」
「どーだ怖ぇか?!」
 友だちとは言え、悪戯はやめらんねーぜ! が信条の悪戯大好きなコスタバルツァは、フェアリーランドの壺から取り出したタコを掲げてメノンを怖がらせる悪戯を披露! の、つもりだったのだが……。
「コスタくん、すごいの!」
「ん? 楽しそうだな?!」
 返ってきたのはすごいすごいとキラキラな視線。……思っていた反応と違う。
「どうやって取り出したの? どこから取り出したの? 手品?」
「て、手品じゃないぞ!」
「……んん? 手品じゃないってことは……あっ」
 悪戯好きの友だちのために悪戯に引っかかってあげるのもまた優しさ。上手く引っかかってあげられなかった事に気がついたメルンは、両手を振り振り彼を慰めた。
「あわわ……えと、次回の悪戯待ってるのよ」
 ちなみにタコはワーズ・キュレイに渡し、次のお好み焼きの具材にしてもらうことにした。今度は焼いてもらわず、自分でひっくり返したいからと豚玉を食べながら焼けるのをのんびりと待つ。
「タコたっぷりのお好み焼きはたこ焼きになる?」
「どうなんだろうな。あれともまた違いそうだ」
 じゅうじゅうと音を立てていたお好み焼きも、そろそろひっくり返す頃合いだ。そろそろいいんじゃないかとコスタバルツァが顎で示せば、メノンは眉をきりりと上げて両手にテコを持つ。
「それじゃあいくね」
「おう、がんばれっ」
「えいっ! ――ああ……」
 べしゃりと崩れたお好み焼きと、小さくなったメノン。
 けれど中身は変わらないから、えへへ失敗しちゃったと笑ったメノンと楽しい食事の再開だ。
「メノン、口汚れてるぞ」
「ありがとう、コスタくん」
「手が届かないか? 俺が取ってやるぞ」
「ふふ、やさしいね、コスタくん」
 けれどもやっぱり足りない腕や小さな口になってしまっては、いつもどおりに食べれない。あれこれとコスタバルツァが世話を焼き、ふたりはお好み焼きをお腹いっぱい楽しんだ。

「ふう、満腹だ」
「ちょっと焼いてもらいすぎちゃったかな」
 あまってしまったお好み焼きを見て、チラチラと周囲を伺って、壺を――。
「なりません、お嬢様、お坊ちゃま」
「うわ」
「ひっ」
「お腹を壊してしまいますので、なりません。お包みいたしますのでお待ちくださいね。冷めても美味しいので、たくさんお包みしましょうか?」
 お土産も、しっかり手に入れた。
 帰ってからも、また食べよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

境・花世
【梟】

ふたりの初お好み焼きを祝って
ここはうんと贅沢にいこうか

禁断の全部乗せ特製デラックス!

手際よくまぁるく生地を整えて
じゅうじゅう油が跳ねれば
心もうきうきに踊るお好み焼き

黒羽には特別に
秘伝の技を伝授してあげよう
コテはガッと差し込んで、グワッと返すんだよ
……なんて師匠ぶっていた顔は、
ちいさい姿を見れば明太チーズより蕩けてしまう

ふふ、袖だけ絡げてあげようね

懸命な姿を綾と並んで見守れば、
不思議に満ち足りたような心地がする
おいしい匂いとあたたかな湯気と
かわいい子と、やさしいひとと──

やがて出来上がる一皿は
香ばしく風味豊かで絶品絶品
聞かずともわかるふたりの顔に
お代わりも焼かなくちゃ、とくすくす笑う


都槻・綾
【梟】

ふくよかなソースの香り
熱々の舞台で舞う鰹節の踊り子――

夢見心地で鉄板前へ

豚玉海鮮…あぁ、餅も麵も素敵
全部乗せも一興でしょうか

黒羽さんと共に
興味津々
覗き込むタネ

実は私も
焼きたてを味わうのは初めて
わくわくが止まりません

生地を手早く成形していくかよさんに
お見事とやんや拍手

調理は完全に人任せ
優美に腰掛け
味見に徹する心算

座布団大のお好み焼きに瞳を輝かせ
黒羽さんへテコを渡しましょ

さぁさ
お役目ですよ!

敢え無く崩れども
大丈夫大丈夫、と告げる相手が
何やらちんまり可愛くて
膝に座りますか?と
ふくふく綻ぶ

焼き上がる度に食べていくけれど
いっとう上手な一枚は
お手柄のあなたへ

皆で並んで頬張る様は
何だか親子のようかしら


華折・黒羽
【梟】


これが
おこのみやきですか…?
どろりとしたもの
色々な具が混ざり合っていて
然程美味しそうには…

ひっくり返すんですね
じうじうと音たて形を成していく丸いもの
渡された匙の様な道具で見様見真似
意を決し、それっ(べちゃり)

敢えなく失敗
幼い姿では着物の袖が長い
万歳しなければ焼けてしまいそう
あ、有り難うございます花世さん
…膝には、乗りません
綾さんの言葉に気恥ずかしさと不服顔

あ、お世話は結構です
二人の服端きゅっと掴み
二人に教えてもらって、頑張ります

早く食べたいのはやまやま
けれど自分で作り切って後に食べた方が
きっと倍美味しいに違いないから

返しては焼き
返しては焼き
上手くいった一枚口にすればほら
頰が綻ぶ程の



●最高の一枚を目指して
 満ちるソースの香りを胸いっぱいに吸い込んで、じいっと見つめた手の中。
「これが、おこのみやきですか……?」
 小さめのボウルに入った、何やらどろりとしたもの。スンと匂いを嗅いでみれば、仄かに香る出汁の匂い。それからこれは、削り粉だろうか。スンスンと匂いを嗅いでから、大きなスプーンで具材と一緒によく練っていく。正直、ドロドロとしてあまり美味しそうには見えないけれど、本当に美味しくなるのだろうか?
「実は私も、焼きたてを味わうのは初めてです」
 土産等で貰うお好み焼きは食べたことはあるけれど、と華折・黒羽(掬折・f10471)の隣から都槻・綾(絲遊・f01786)も興味津々な様子で覗き込む。覚えにある姿とそれは、随分と違うように思える。焼けば違うものに変じる点は陶器とも似ている気もして。
「黒羽、練り終えた?」
「はい。こんな感じで良いでしょうか?」
「うん、バッチリ! それを鉄板に流すように落として」
 境・花世(はなひとや・f11024)に頷き返した黒羽が獣の両手で持ったボウルを傾けて、トロォリと鉄板に落とした途端に、じゅう! じゅわわ!
「うん、いい音」
 禁断の全部乗せ特製デラックスお好み焼きの生地を手早く整えて、その横で豚肉と大きな海老を焼いて火を通す。イカと餅は生地に混ぜ込み済みで、麺は別。軽く火の通った豚肉と海老を生地に移して、空いたスペースに麺をじゅうじゅう。
 テコを華麗に操って焼いていく花世の動きに、お好み焼き初心者のふたりの視線は釘付け。完全に観客に徹している綾はお見事とやんやと囃し立て、黒羽は目をまんまるにしてじいっと見つめている。鉄板に載せた直前よりも生地が膨らんでいくのも、じゅうじゅう鳴くのも、何だか不思議だった。
「黒羽、そろそろ出番だよ」
「ひっくり返すんですね」
「はい、どうぞ。さぁさ、お役目ですよ!」
「お任せください!」
 綾に差し出された大きな匙の様なもの――大テコを握りしめ、きりり。二本差し出されたから、きっと二本とも使うのだろうと両手に持ってみた。
「黒羽には特別に秘伝の技を伝授してあげよう。ガッと差し込んで、グワッと返すんだよ」
「ガッと差し込んで、グワッ……ですね」
 言葉を反芻して、イメージトレーニング。何となくいけそうな気がする。
 ソースで味付けした麺も載せた縦にも横にも大きなお好み焼き。その左右にテコをガッと差し込んで――。
「それっ」

 ――ぼちゃっ。

 べちゃりというよりは、ぼとりに近い音がした。
「あ」
「大丈夫大丈夫」
「ふふ、初めてなのに上手いほうだよ。形を整えておくね」
 落ちたと思った時には小さくなっていた黒羽の姿に、明太チーズのように蕩けた顔の花世はお好み焼きの形を整えて、焼き上がればソースをペタペタ鰹節をはらり。マヨネーズと青海苔は好みが分かれたり歯の状態を気にしたりもするから、それぞれの皿に取ってからのお好みで。
「ふふ、袖だけ絡げてあげようね」
「あ、有り難うございます花世さん」
 余ってしまった袖を動きやすいように束ねてくれる花世へは感謝をして。
「黒羽さん、膝に座りますか?」
「……膝には、乗りません」
 お小さいと大変でしょうと告げるその頬をふくふくと綻ばせる綾へは不服顔。確かに身体は小さくなりましたが、心は常のまま。子供扱いは恥ずかしいのでやめてくださいっ。
「黒羽さん、美味しいですよ。これ」
「ふーふーしてあげようか、黒羽」
「あ、お世話は結構です」
 それよりもと、黒羽はぎゅうとふたりの袖を握る。
「きっと上手に焼けるようになりますので、見ていてください」
「うん。たくさん失敗してもいいよ。わたしたちが全部食べるから」
「ええ。お好み焼きのことは私たちにお任せください」
「あ、俺も後から食べますので、全部食べてしまっては駄目ですよ」
 なんて。身体が小さくなってもたくさん食べる気満々な黒羽が言うものだから、ふたりは彼の頭上で笑みを交わし合う。
 ――それから、いくつのお好み焼きが焼かれたことだろう。
 返しては焼き、返しては焼き。また、返す。
 具材は毎回違う。明太子チーズ、チーズコーン、牛すじと蒟蒻、明太子餅。返しに失敗してもどれも美味しくて、花世と綾の舌を楽しませる。
「それっ」
 返す内にひっくり返しやすい具の量が解ってきた黒羽が、ガッとやってグワッと返せば――ふわりと浮かんだお好み焼きが、ぽすん。キラキラと目を輝かせる黒羽に、綾と花世も食べる手を止めて拍手で讃えた。
 一等上手な一枚の最初の一口は、まずは黒羽から。幾度もひっくり返し修練を重ねた綺麗なお好み焼きはソースを塗られて、さあ美味しく食べてと黒羽の眼前に。
「いただきます」
 早く食べたい気持ちを我慢して焼き続けたお好み焼き。その味は如何ほどか。
 綻ぶ頬を抑えるその姿に、彼の頭上でまた、綾と花世は笑顔を交わした。
 穏やかな気配においしいにおい。
 眼前には温かなお好み焼きがほこほこと湯気を立て。
 隣を見れば、一等上手なお好み焼きを褒めながら頬張るやさしいひとと、満足げに耳と尾をピンと立てながらお好み焼きを頬張るかわいい子。
 それはまるで、親子の食事風景にも似て。――親しく集う人々と重ねた縁の輪が家族と呼ぶものだとしたら、この穏やかでしあわせな団欒は家族の其れではなかろうか。
 ともに在るひとたちの存在が、腹だけでなくこころもを満たしていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

唐桃・リコ
♢♡【花束】
オレは食ったことねえ
でっけぇのが食いてぇな
肉とチーズと餅は外せねえ
あ?納豆はやめろ、ニラもやめろ

小せえ葵、新鮮だな
なんだ、葵、食べたい物、取ってやろうか?
菊、オレはやんねーよ
オレは食えれば良いから、別に自分で焼かなくても良い
あ?あ?
うめーわ、ひっくり返せるに決まってるだろ、なめんな
……るせぇ、身体が小さい方が腹にたまんだろ

……言い出したヤツが失敗するのおもしれぇ
腹痛い、ヤバい、あー転げ回りてぇ
菊?写真とっとこーぜ、お前のだけで良いから
は?こんなに熱い物食えんの…?
ああ、意外と…美味いな


勿忘・葵
【花束】
♢♡

お好み焼き、か。
実は食べたことないんだ、俺。菊とリコはあンのか?二人が好きなやつ教えてくれ。
メニュー表を三人で覗き込みながらあーでもないこーでもないと賑やかに選びつつ
メイドさんばかりにたくさん仕事させるのも気がひけるな。俺も焼くの手伝うよ。
子どもになるかもなどという恐れは欠片もなく、まあ案の定失敗してガキの姿になるも、「難しいな」なんて呑気に笑い

…リコや菊もやってみないか?上手く焼けた奴が、お好み焼きの具材を好きに決められるってことで。
三人でじゃれながらお好み焼きを焼いたりテコ使いを学んだりして。
ようやっとありつけたそれに、頬綻ばせ
「……美味いな」


菊・菊
【花束】
♢♡

は?食ったことねえの?
ふーん、ぜってえ餅チーズは食っとけよ
あと豚キムチ、……は?ネギはいらねーって
キャベツ入ってんだろ野菜とかいらね。


お、勝手に焼いてんじゃん、便利だな
お前焼けんの、葵。

ぎゃは!

おい、リコ見ろよ、ひ、ひひ俺よりチビじゃん葵ちゃ~ん?
ん?あーんしてやろうか、な?ん…やんねーよ、チビんなるんだろ。

………ネギ抜きに出来んの?
は?焼けるし、焼けるってんだろ、お前もやれよリコ。
みとけって、俺うめーから。

……………。

リコは永遠笑ってやがるし
さっきから葵がいつもより世話を焼いてくんのが心底ムカつく

んでも、餅チーズうめえから
今日のところは許してやる

ん、うま。



●ほくほく、ふかふか、やわらか
 じゅうと焦げるソースの芳しい香りに誘われて、唐桃・リコ(【Code:Apricot】・f29570)と勿忘・葵(memento-mori・f29553)と菊・菊(Code:pot mum・f29554)の三人は、熱々に熱された鉄板の前に座っていた。
「なんだここ、めちゃくちゃあっちい」
「熱いの我慢すれば美味いの食えるぞ」
「実は食べたことないんだ、俺。菊はありそうだけど……リコはあンのか?」
「オレは食ったことねえ」
「は? 食ったことねえの? 遅れてね?」
「はァ?」
「じゃあ、リコはどんなのが食べたい? 菊は好きなやつがあったら教えてくれ」
 ふたりの間でメニューを広げている葵越しに、バチリと火花が散る。けれど葵はそれを気にした様子を見せず、まーまーと笑って菊へとメニューを差し向けた。
「ふーん、ぜってえ餅チーズは食っとけよ」
「餅チーズ、美味しいんだ?」
「でっけぇのが食いてぇな。肉とチーズと餅は外せねえ」
 お好み焼きは食べたことがなくても、美味しい組み合わせは知っている。
「あと豚キムチ、……は? ネギはいらねーって」
「あ? 納豆はやめろ、ニラもやめろ」
 野菜はノーセンキューな菊と、香り物は嫌だと口を結ぶリコ。その間に挟まれた葵はふたりの言葉にうんうんと頷きながらも、すみませーんっとメイド姿の店主『ワーズ・キュレイ』へと声を掛けた。
 けれど団体の客がワッと押し寄せてきたタイミングだったため、ワーズ・キュレイは忙しそう。「暫しお待ちを」と声だけ残して遠くで水を出したりおしぼりを出したり食器を配膳したり、10秒あればレベル分お好み焼きを焼く! と、兎にも角にも忙しそう。
「お待たせいたしました。――はい、はい。ただいま」
「忙しそうだし、俺も焼くよ」
 とは言ってみるものの、ワーズ・キュレイは10秒で完璧なお好み焼きを3桁焼ける。せめて彼女を煩わせないようにと、葵は自分たちの分は自分たちで焼く事を申し出た。
「お前焼けんの、葵」
「まあ、失敗はするかもしれないけれど」
 ワーズ・キュレイが用意してくれたタネを鉄板の上に垂らして、じゅう。
 じゅうじゅうと焼き上がるのをジッと見つめれば、両脇から面白そうに見物する顔がふたつ。
「そろそろじゃね?」
「いけんの?」
「いってみるな……よっ、と」
 まあ案の定、失敗である。
「ぎゃは!」
「やっぱり難しいな」
「おい、リコ見ろよ、ひ、ひひ俺よりチビじゃん葵ちゃ~ん?」
「小せえ葵、新鮮だな」
 三人の中で一番大きな葵が、一番小さい。菊が葵へ指を指して笑う最中、素早く立ち回るワーズ・キュレイがお好み焼きを整えて仕上げ、葵には高さ調節のクッションまで用意してくれた。
「あ、すまない」
「いえ。いえいえ。とても目の保養にございます」
 結局手を煩わせたと思わなくもないが、小さくしたのは彼女だ。彼女がそれでいいのならいいか、と思うことにした。
「葵、手が届かないだろ? 取ってやろうか?」
「ん? あーんしてやろうか、な?」
 気遣ってくれるリコと、からかってくる菊。
「……リコや菊もやってみないか?」
「ん……やんねーよ、チビんなるんだろ」
「上手く焼けた奴が、お好み焼きの具材を好きに決められるってことにしよう」
「……ネギ抜きに出来んの?」
 菊が上手に焼けたらなと笑う葵の向こうから、リコがニタニタと笑う。お前に焼けるわけねーだろ、と。
「は? 焼けるし、焼けるってんだろ、お前もやれよリコ」
「菊、オレはやんねーよ。オレは食えれば良いし」
「とか言ってできねーからそう言うんだろ? だっせぇ」
「あ? あ? うめーわ、ひっくり返せるに決まってるだろ、なめんな」
「そこまで言うのなら、勝負するか?」
「あ? やってやろーじゃん」
 葵越しにバチバチと火花を散らし合うふたりの間で、葵は瓶ラムネくださいと注文した。
 そうして勝負の行方は、と言うと――。
「…………」
「…………」
 新たに小さくなったふたりが、椅子に座っていた。足が地面につかない。
 けれど先に平常心を取り戻したリコがだっせぇおもしれぇと菊を指差して笑えば、菊も「あ?」と睨みを効かせ始める。
「菊? 写真とっとこーぜ、お前のだけで良いから」
「言ってろ」
「まあまあ、ふたりとも。お好み焼きが焦げるぞ」
 ふたりの分も小皿に取り分けた葵が、はいっはいっとふたりの眼前にお好み焼きを置く。
「箸……は、使いにくいか? すみませーん」
 ワーズ・キュレイにお子様用フォークを貰って、ふたりの手に握らせる。明らかにふたりを子供扱いして、普段よりも世話を焼いている。ふたりとあまり変わらない身長だと言うのに。
 ムカついて何か一言言ってやろうかとも思ったけれど、眼前のお好み焼きが『食べて』と訴えてくるから、
「ん、うま」
 フォークをぐさっと刺してぱくりと食んだお好み焼きからは、白と黄色がびよーん。はふはふと伸びたふたつを追いかけて食べれば、胸に満ちる満足感。ムカついた気持ちがどこかへいってしまった。
 リコも「は? こんなに熱い物食えんの……?」と湯気で踊る鰹節を見ていたけれど、「切ってよく冷ますといいよ」と葵に言われて言われたとおりにしてみる。それでもふぅふぅ息を吹きかけて、それからぱくり。
「……美味いな」
「ああ、意外と……」
 ふたりの世話をしおえたとようやくお好み焼きを口にした葵の声に、リコも言葉を重ねる。
 悪くないと言おうとして、口を閉ざして。
 それから素直に口を開く。
「美味いな」
 柔らかなお好み焼きが、少しだけ牙を削いでくれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴島・類
【荒屋】♢

お好みで、と沢山選択肢が並ぶと
迷いますねえ

2人は何を入れてみる?
大体のものは美味しくなる懐深い料理だ
いばらさんも、目についたのや食感とかもありかも
え、こんな美味に例えてもらうとは光栄かも

良し
紅生姜に天かす
桜海老、烏賊等の海鮮玉にしよう

決まったら焼きに
僕も自分では焼いたことない
皆初めてなら失敗も笑い話
やってみようか!

めいどさんの手本にしたら良いかな?
綺麗な円だけど三様の個性が出たねぇ
よし、ここからが正念場…せいっ

あー…手が小さい…
でも、体格大きく頼もしい貴方も
健やかで華やかな君も
ちんまり可愛いく微笑ましい

はっ!ジャハルさん
もしや縮んだ影響で満腹感が増すやもですよ
ああ、交換も楽しそうだね


ジャハル・アルムリフ
【荒屋】♢

心の侭を許すが故の名、なのだな
ああ、確かに冴島に似ているやも

道具も調理法も目新しく
一つ一つを興味深く眺め
うむ、では俺は
肉と海老、そして此の、らーめんらしき麺
美味いものを寄せればより美味かろう
かたや目にも鮮やかな海の幸
かたや盛られた瑞々しい葉
鉄板の上、香ばしい三重奏を見守り

なかなかの厚みは如何にも手強そうだが
此度ばかりは剣をテコに持ち替え
二人に倣って一息に――
飛び出す麺は不可抗力といえど

…視界が低い
嘗て人の形でなかったという二人の幼い姿は
もしもの時間を覗くよう
皆にも見せてやりたいものだが

…む、確かに
お好み焼きも先ほどより大きく見える
貰うばかりではいかん
いばらも、こちらも食してみるといい


城野・いばら
【荒屋】♢
懐深い…類みたいなお料理なのね
アリスの食事や味に疎いいばらでも
楽しめるよう気遣ってくださる

じゃあ…フィオが言ってた長芋さん入れてみたい
あとキャベツさんをたっぷりで
いつもはシャキシャキさんが
どんな風に変わるか楽しみ
ふふ、二人はイロんな具が乗って賑やかね

大きなお月さんが出来て
上手に返せるかドキドキ
やってみようの合図でえーい
ぁ、もりもりキャベツさん崩れちゃった
って、まぁ!
小さいアリスな二人に吃驚
私もだけど…花に戻るのと違って落ち着かない
え、ジャハル足りないの?
いばらの食べてみると差出して

もしも、も好きが詰まったこの席も
二人が一緒だからこそで
食べるお顔がね
キラキラして見えて可愛い
うん!頂くわ



●なかよしお好み
 おかえりなさいませと出迎えられ熱を発する鉄板の前に座った三人は、メニューを覗き込んでいた。
「お好みで、と沢山選択肢が並ぶと迷いますねえ」
「心の侭を許すが故の名、なのだな」
 メニューに並ぶ、たくさんのトッピングの文字。単体でも美味しそうなそれらを自由に合わせても美味しいのだと言う。食べたことのない組み合わせから、経験のある美味な組み合わせまで。それから、それぞれの分量を変えてみることによってもその味わいは変化する。何とも懐深い料理である。
「懐深い……類みたいなお料理なのね」
「ああ、確かに冴島に似ているやも」
「僕、ですか?」
 ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)と城野・いばら(茨姫・f20406)のふたりはいつも真っ直ぐな気持ちを向けてくれるから、何だか少し面映い。冴島・類(公孫樹・f13398)はポリと頬を掻いて、「光栄ではあるけども」と照れたように笑ってから、ふたりはどんなお好み焼きにするのかと尋ねてみた。聞いた当人は、今少し悩み中。ふたりのを聞いてみれば、心が定まるかも知れない。
「うむ。では俺は、肉と海老、そして此の、らーめんらしき麺にしよう」
「いばらは……そうね。あの子が言ってた長芋さん入れてみたいわ。あとキャベツさんをたっぷりにしようかしら」
「それなら僕は、紅生姜に天かす、桜海老、烏賊等の海鮮玉にしよう」
 三者三様の、違うお好み焼きの具材を選択し、どれも美味しそうだねと笑い合いながらメイド姿の店主『ワーズ・キュレイ』を呼んで注文をした。
 自分で焼くことを選択した三人の眼前には、みっつのお好み焼きと焼きそば。ジャハルの選択した麺は別にソースで炒めてから、ひっくり返す前のお好み焼きに乗せるのだ。
 最初は白みがかった色だったのに、少しずつタネが固まって色が変わり、みっつの個性的なお月さまが夜闇のような鉄板の上に仲良く並んでいる。類の海鮮たっぷりの海鮮玉、いばらの沢山のキャベツと長芋のふたりのとは食感がまるで違うお好み焼き、そしてジャハルの肉と海老のお好み焼きが楽しげにじゅうじゅうと音を立てて焼けていく。
「めいどさんの手本にしたら良いかな?」
 そろそろ返し時。忙しく立ち回るワーズ・キュレイへと視線を向けてみたが――。
「……なるほど?」
「この大きなのをふたつ使うことだけはわかったの」
「……早すぎてわからないね」
「いや、ある意味それが的を得ているのやもしれぬぞ」
 ワーズ・キュレイのお好み焼きは、10秒間で彼女のレベル分焼き上がる。つまりどういうことかと言うと、おしぼりを出したり飲み物を出したり新しい客に席を勧めたりと他の客の世話をしながら、10秒の隙きを見つけては大量に焼く。常人離れしたすごい勢いで、シュパパパパパパパとひっくり返していくのだ。故に、素早さと勢いが必要なのではないかとジャミルは分析した。
「まあ、やってみようか!」
 上手くいくかもしれないし、上手くいかないかもしれない。どちらにせよ、みんなでの初めての体験は楽しいものとなるはずだ。
 類の言葉に頷いたふたりが両手にテコを握り、いばらと類がお好み焼きの左右からテコを差し入れている間にジャミルは焼きそばを自身のお好み焼きの上へ乗せる。
「……せいっ」
「えーい……ぁ、もりもりキャベツさん崩れちゃった」
 気合は充分だったが、やはりそう上手くいくものでもないようだ。ありゃ、と思った時にはヒュンッと背後に現れたワーズ・キュレイによって小さくされ、ふたりはちんまりとした姿になっていた。
 ふたりの勇姿は、忘れない。常ならば勇ましく剣を振るうジャミルも、此度の武器は大テコふたつの二刀流。眼前に敵がいれば斬るように、眼前にお好み焼きがあるならば返すのみだ。例えふたりのお好み焼きよりも難易度が高かろうが、ジャミルはそこで退くような竜(おとこ)ではない。お好み焼きの前に撤退したなどあっては、師匠にも笑われる。
 しかし、世は無常。お好み焼きは儚い。
 べしゃぁずざざざぁ……っと、麺が飛び出て鉄板上に飛び散った。
「まぁ!」
「……視界が低い」
「あ、ふたりとも、小さい」
 己の小さな手を見て、他のふたりも見て。
 いつもなら真っ直ぐに交わらない筈の目線。それがちょうど良く合わさって、楽しげに笑い合う。
「いばらは花に戻るのかと思っていたのに……」
 小さな姿は、知らなくて。落ち着かない。けれど、楽しい。
 小さな姿を経て成長していない類といばらではないけれど、類は小さな姿になるのは初めてではないから落ち着いたものだ。猟兵稼業をやっていると、色々あるよね。
「はっ! ジャハルさん。もしや縮んだ影響で満腹感が増すやもですよ」
「……む、確かに」
 小さくなったから、お好み焼きも大きく見える。普段から沢山食べるジャミルだって子供の体だから、胃が小さくて普通の量でも満腹感を覚えるかも知れない。
「え、ジャハル足りないの?」
 小さくなった三人のかわりにワーズ・キュレイが整えてくれたお好み焼きはソースを塗られ、小さな子供でも食べやすいように小さめにカットされている。いばらの食べてみる? と、いくつものカットされたお好み焼きをテコでぐぐっと移動させれば、ジャミルからも分厚さのあるお好み焼きが寄せられる。
「貰うばかりではいかん。いばらも、こちらも食してみるといい」
「うん! 頂くわ」
「ああ、交換も楽しそうだね」
 シェアしやすいのもお好み焼きの良い所だ。新たな良い面を知れたと笑った類は、こちらもとふたりに海鮮玉を勧めて。
「「「いただきます!」」」
 三人揃って小さな手をぱちりと合わせてから、熱々のお好み焼きをふーふー。(ちなみに、お子様用フォークをワーズ・キュレイがススっと出してくれた。)
 あつあつ、ほくほく。どれも美味しい。
 類の海鮮玉は、海の幸の出汁がぎゅっと染み込んで。
 いばらのお好み焼きは、キャベツのシャキシャキ具合を残しながらも長芋でふわふわ。
 ジャミルのお好み焼きは、ボリューム満点。
「たくさんおかわりをしてくださいね」
 何も一枚だけしか食べてはいけない、なんてことはない。
 明太餅チーズ、チーズコーン、牛すじ蒟蒻……ああ、次は何を焼いてもらおうか。
 小さなお子様三人は、キラキラの笑顔を浮かべながら、たっぷりとお好み焼きのひと時を楽しんだ。

●斯くして暖簾は降ろされる
「あら、もう材料が……?」
 提供したお好み焼きの数に応じて、暴走した『もてなしの心』は収束していく。骸魂の抜けたワーズ・キュレイは「そんなに作っていたかしら」と頬に手を当てた。
 たくさんの満腹そうな少年少女たちの姿に満足した彼女は集った客たちへと裾をつまんで礼をする。
「本日の給仕はこれにておしまいでございます。お楽しみ頂けたでしょうか」
 ここに、カクリヨファンタズムがお好み焼きに埋め尽くされるという危機が去ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月22日
宿敵 『ワーズ・キュレイ』 を撃破!


挿絵イラスト