大祓百鬼夜行⑮〜決して溶けぬ鉛の心臓
●しあわせな王子さま
西洋妖怪『しあわせな王子さま』は、これまでの自分の人生を振り返っていた。
彼は周囲に幸福を齎す妖怪として、多くの妖怪たちに慕われてきた。
他者に幸運を齎す。
それはしあわせなことだ。誰にでもできることだけれど、誰もがそのやり方を忘れてしまっている。
それを思い出せたこた自分の幸せであったと彼はツバメに呼びかけた。
だからこそ、やらなければならない。
「ツバメさん、黄金を持っていっておくれ」
自分の身体を包み込む黄金。それを剥がして持っていってほしいと願ったのだ。それは、西洋妖怪『しあわせな王子さま』と合体した骸魂が目を覚ますということだ。
剥がれた黄金の分だけ彼の『虞』が噴出するように周囲に撒き散らされる。
「『大祓骸魂』に続く『雲の道』は、僕の黄金がなくては作れないんだ」
言うまでもなく『大祓百鬼夜行』はオブリビオン・フォーミュラ『大祓骸魂』を止めるための戦いである。
猟兵達が、かのオブリビオン・フォーミュラを倒してくれると信じているからこそ、『しあわせな王子さま』は自分の黄金の使い所を誤らない。
例え、彼が望む未来に自分が居なかったとしても、構いやしないのだ。
もう自分は『幸せ』であったのだ。だから大丈夫と、自分の周囲を飛び回るツバメに呼びかける。
「そしてまもなく、たいせつな役目が始まる」
避けようのないことであるし、避けてはならないことだ。
恐ろしさはない。
だって、もう大切なことは全部知っている。後は、託すだけなのだ。
「僕は、猟兵達と殺し合わなければならない。僕達『親分』が全力で戦い、そして倒されれば、『大祓骸魂』が放つ圧倒的な『虞』も幾らか和らぐ。それが『大祓骸魂』に続く雲の道を作るための『必須条件』なんだ」
だから、と悲嘆にくれるように鳴くツバメに『しあわせな王子さま』は微笑んだ。
何も悲しいことはないのだと。
本当にであったものに別れなんてこない。ツバメと『しあわせな王子さま』は出会った。
幸せの意味も、誰かに齎すことも、どれもが尊いことだと知っている。人は愚かだというかもしれないけれど、けれど、忘れ去られることなんてなかったのだ。
「だからツバメさん、黄金を持っていっておくれ」
いつものほほえみで。
眩しいまでの輝きは、剥がれた黄金の下にある地金が見えたとしても一欠片とて喪われることはなかった。
「もし僕が死んだなら、雲の道をつなぐ役目は君にお願いしたいんだ」
頼んだよ、と『しあわせな王子さま』は、自身の膨大な『虞』を全て開放した。
これでよかったと言える日がきっと来る。
愛おしき二つの世界のために、その楔となるために、『しあわせな王子さま』は、黄金形態となりながら、青いサファイアの喪われた暗き眼窩を向けるのだった――。
●大祓百鬼夜行
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます」
短く言葉を切ったナイアルテの瞳は爛々と輝いていた。彼女の感情が波を立てている証拠であったことだろう。
彼女の言葉によって、猟兵たちは今回予知した事件が、ただならぬものであることを知っただろう。
「はい、オブリビオン・フォーミュラ『大祓骸魂』へと至る『雲の道』をつなぐために必要な西洋妖怪『しあわせな王子さま』を打倒しなければなりません」
UDCアース、『忘れられたものたちの終着駅』に西洋妖怪、親分である『しあわせな王子さま』は存在している。
まるで猟兵たちを待っていたように。
「親分である妖怪の皆さんを全力で戦い、打倒しなければ『雲の道』は繋がりません。それが『必須条件』なのです」
故に、『幸せの王子さま』は全力で猟兵達にを殺しにかかるだろう。そこに容赦もなければ情けもない。
あるのは、為さねばならぬという意志だけである。
二つの世界、UDCアースとカクリヨファンタズムを救うために必要なことを為すという鋼鉄の意志。
彼の覚悟を無駄にはできない。
「西洋親分の名に恥じぬ『虞』を全て解放した『しあわせな王子さま』の力は凄まじいものです……それはみなさんが窮地と呼ばれる逆境に際して『真の姿』を晒して戦わねばならぬほどの強敵です」
仕方のないことである。
そうしなければ、『大祓骸魂』は止められない。ましてや、そこまでたどり着くことすらできない。
それは全て妖怪たちの決死の覚悟である。
どう生きて、どう死ぬかを決めた妖怪たち。だからこそ、猟兵たちは覚悟を無駄にしない。一片も無駄にはできない。
「私達は絶対に誰も殺しません。人は殺されてしまうかも知れません。けれど。負けるようにはできていないのです。それを西洋親分『しあわせな王子さま』は覚悟でもって教えてくださったのです」
ナイアルテは猟兵たちを送り出す。
死闘を繰り広げなければならない。それほどまでの『虞』纏う『しあわせな王子さま』は、猟兵たちの『真の姿』を曝け出してでも、必ず打倒し救出しなければならない。
かつて誰かのために。
博愛でもって、誰かの悲しみや苦しみを労ろうとした『しあわせな王子さま』と、それ故に南に渡る時期を逃して凍えて死んだツバメ。
彼等の献身に猟兵たちは、戦うことで報いねばならないのだ――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『大祓百鬼夜行』の戦争シナリオとなります。
UDCアース、『忘れられたものたちの終着駅』にて西洋親分『しあわせな王子さま』を打倒し、『大祓骸魂』に繋がる『雲の道』を繋ぐ戦いのシナリオとなります。
西洋親分『しあわせな王子さま』は黄金形態となっており、完全に意識を保っていますが『大祓骸魂』の『虞』を克服する儀式として、『しあわせな王子さま』自身の膨大な『虞』を全開放しています。
それは言うまでもなく、力の強大さを示しています。
その『虞』故に猟兵は窮地でなくても『真の姿』に変身して戦うことができます。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……真の姿を晒して戦う(🔴は不要)。
それでは、大祓百鬼夜行を阻止する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『西洋親分『しあわせな王子さま』黄金形態』
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POW : あたたかな光
【黄金の光】が命中した部位に【「理性を破壊する程の幸福」】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD : しあわせな光
【黄金の輝き】を解放し、戦場の敵全員の【「不幸を感じる心」】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。
WIZ : 黄金をささげる
自身の装備武器を無数の【黄金】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:西洋カルタ軒
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アイン・セラフィナイト
誰かの為に、世界の為に、自分を犠牲にしてまでその義務を全うする。……並大抵の覚悟じゃない。
だからこそ、俺たちが討とう。
真の姿に変身する。
『暁ノ鴉羽』を展開、鴉羽の嵐を形成して花びらを押し返してみよう。(オーラ防御)
全ての花びらを防げるとは思っていない。詠唱の時間さえ稼げれば十分だ。
UC発動、イフリート、全てを焼き尽くせ!
火球を投射し花びらをまとめて『焼却』、圧倒的な炎で、西洋妖怪を『属性攻撃・範囲攻撃』。
けれど救った世界に貴方はいないんだろう。そんなことは絶対にさせない、俺達が妖怪全てを元に戻してみせる。
平和な世界は、貴方自身の目で見るべきだ。
『境界術式』展開、魔弾の雨で『全力魔法・蹂躙』だ!
『忘れさられたものたちの終着駅』に『虞』が吹き荒れる。
それは無数の骸魂と合体しながらも完全に己の意識を保った西洋妖怪の親分『しあわせな王子さま』から放たれていた。
オブリビオン化していながらも、その意識を乗っ取られることがなかったのは、彼の強靭な精神力の賜物であったことだろう。
博愛と献身。
それこそが『しあわせな王子さま』の持つ最大の力であった。
だが、それ故に猟兵と対峙しなければならない。
「僕を打倒してくれ。そうすれば『大祓骸魂』へと至る『雲の道』は開かれる。君達猟兵に託すことしかできない僕のちからのなさを恨んでくれてもいい。けれど、どうかお願いするよ」
二つの世界のために戦ってくれと、『しあわせな王子さま』は言った。
己の身を顧みず、誰かのためにと願う心は『虞』以上に猟兵たちの心に火を灯したことだろう。
「誰かのために、世界のために、自分を犠牲にしてまでその義務をまっとうする……並大抵の覚悟じゃない」
アイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)は吹き荒れる『虞』を真っ向から受け止めた。
その覚悟、その博愛、その献身。
どれもが彼にとって、決意をさせるには十分すぎる理由だった。
その瞳がユーベルコードに輝く。
「だからこそ、俺達が討とう」
「ありがとう、猟兵。全力で頼むよ。僕も、そのために戦おう」
覚悟は理解できる。
その黄金に輝く身体は所々、剥がれ地金が見えている。『大祓骸魂』へと至るための『雲の道』を作り上げるために、彼の黄金のが必要なのだ。
だからこそ、戦わなければならない。強大な『虞』を纏う『大祓骸魂』を打倒するために、愛おしき世界のために。
「深青を摩す炎天、孤剣刻む退廃の疵、地を這う星火の兆しは此処に―――!」
それは即ち、終焉を告げろ、再誕の祖よ(イフリート・フレア)と叫ぶアインの真なる姿であった。
極光の如き輝きを放つ鴉羽の嵐が吹き荒れ、黄金の花弁を迎え撃つ。
互いに無数。
けれど、吹き荒れる嵐のように花弁と鴉羽が激突し消滅していく。
それは僅かな時間稼ぎでしかなかったかもしれない。
けれど、それでいいのだ。僅かであってもアインの詠唱は止まらない。無数に空に浮かぶ超巨大の金炎球。
ユーベルコードに寄って生み出された炎球がアインの掲げた掌の上で明滅する。
「ああ、これが滅びの炎。ありがとう。ありがとう。猟兵。僕はこれでたいせつな役目をきっと果たせる」
全力で殺し合わなければならない。
それが『必須条件』。互いに世界を救わんとする意志があれど、辿る道行は異なるものだ。
例え、自分が死ぬことになっても、それを厭わぬ者がいたことを人は忘れてはならない。
忘れられないことが、生きた証であるのならば『しあわせな王子さま』は、本当に幸せだったのだ。
けれど、アインは叫ぶ。明滅する炎球と黄金の花弁が纏めて『しあわせな王子さま』を灼熱へと巻き込んでいく中、それでも叫ぶのだ。
「けれど、救った世界に貴方はいないんだろう。そんなことは絶対にさせない、俺達が妖怪全てを元に戻してみせる」
叩きつけられた炎が、黄金の花弁を吹き飛ばし、『しあわせな王子さま』の地金が見えた彫像の身体を打つ。
「だめだ、猟兵。僕たちにかまってはいけない。世界を、救うためには――!」
『しあわせな王子さま』の暗き眼窩から涙がこぼれた。
そう、望んではいけないのだ。決死の覚悟だったのだ。自分が平和な世界を見ることが叶わなくてもいい。
他の誰かが、平和な世界で生きてくれればよかったのだ。自分もなんて、望めるわけがなかったのだ。
けれど、アインは否定する。
「平和な世界は、貴方自身の目で見るべきだ」
境界術式が展開され、空に炎渦巻く魔弾が埋め尽くしていく。
その光景を最早ないサファイアの瞳がはめ込まれていた眼窩で『しあわせな王子さま』は見ただろう。
「ああ――」
それは決して滅びの光ではなく。
そう、誰かの献身と博愛が伝播するように。
確かに優しさでもって世界を救うのだと宣言するように、魔弾の雨が『しあわせな王子さま』へと降り注ぐのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メイスン・ドットハック
【SPD】
さすがは大親分となると貫録があるのー
その決断は尊重するけど、僕達は欲張りでのー。親分も救わせて貰おうかのー?
真の姿解放ということで、いきなりオブリビオンマシン形態「清盛」で参戦
背中のジェットウイング全開で機動戦を展開
しあわせな光で強化される前にレーザークローで黄金の光を発するところを削っていって、幸運を付与するのを阻害していく
また肩からミサイル・榴弾を発射して周囲を破壊して煙幕をつくり、光を届かないようにする
最後はUCを発動して、最高速度の加速からの高速斬撃で黄金を削る
とはいっても絶対に王子さまは救うからのー。犠牲は僕等の本意じゃないけーのー
骸魂の反応がある場所のみを狙って斬り裂く
魔弾の雨が『しあわせな王子さま』に降り注ぐ。
無数の骸魂と合体した彼の『虞』は凄まじいものであった。対峙する猟兵たちは皆、その『虞』故に、窮地に在りて晒すことになる『真の姿』を開放せねば、彼を打倒することすら叶わぬと知るだろう。
「これだけの覚悟をもってしても、まだ足りない。僕は君達に打倒されなければならない。それがたいせつな役目。僕たちにしかできないことなんだ」
あふれる『虞』は、全て解放されている。
故に、彼の放つ光は決死の覚悟である。『大祓骸魂』へと至るための『雲の道』は、妖怪親分である彼等が全力で戦うことが『必須条件』である。
即ち、彼等は死ぬつもりなのだ。
それを厭わないだけの心がある。それを献身、博愛と呼ぶにはあまりにも自己犠牲精神が過ぎる。
けれど、そうしなければオブリビオン・フォーミュラ『大祓骸魂』は討つことはできない。
「さすがは大親分となると貫禄があるのー」
魔弾の雨に晒されてもなお、建材である『しあわせな王子さま』を前にして、メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は首を鳴らす。
身体を打つ『虞』は凄まじく、けれど、それでもなおメイスンは、その瞳に一片の陰りもなく言い放つのだ。
「その決断は尊重するけど、僕たちは欲張りでのー。親分も救わせて貰おうかのー?」
真なる姿を開放することに厭うことはない。
オブリビオンマシンとなった『清盛』を駆り、彼女は『忘れさられたものたちの終着駅』を懸ける。
背に負ったジェットウィングを全開にし、凄まじい速度で飛ぶ。
「光を放つ前に止めるけーのー!」
しあわせな光。
それはユーベルコードであることは言うまでもない。不孝を感じる心を奪って自身を強化する力。
幸せを齎す『しあわせな王子さま』にとって、それこそが彼の力を増す要因の一つだ。
だからこそ、全力で当たる。
「それでいいんだ。僕と君達は戦わなければならない。僕は君達を滅ぼしたいとは思わない。けれど、それでもやらなければならないんだ。これが僕のたいせつな役目だから――!」
オブリビオンマシン『清盛』と激突する『しあわせな王子さま』。
地金が見える彫像の身体と5m級戦術兵器であるオブリビオンマシンが組み合う。これが西洋親分『しあわせな王子さま』の圧倒的な『虞』の力。
これよりも『大祓骸魂』は強大であるというのか。しかし、メイスンはためらわない。レーザークローで黄金に輝く、彫像の身体を削り取る。
「まだだ。まだ足りない。猟兵!」
レーザークローの一撃を振り払い『しあわせな王子さま』が飛ぶ。
それに目掛けて肩部からミサイルを放ち、榴弾でもって『しあわせな王子さま』の飛翔を阻止するのだ。
少しでも距離を離してしまえばユーベルコードで強化されてしまう。
だからこそメイスンは榴弾の爆風の中を突っ切って飛ぶのだ。
「こうなったらもう誰も止められんけーのー!」
ユーベルコードに輝く『清盛』のツインアイ。
それは、帝雷を纏いし機竜よ、稲妻となれ(トール・レーゲンブリッツ)と叫ぶ心があった。
稲妻は誰かの献身に答え、博愛の心に報いるために煌めく。
例え、それが『しあわせな王子さま』が死ぬことになったとしても止まらない。
だが、それでも望むのだ。
猟兵の誰もが望んでいる。誰も殺さない。死なせない。たった一人の生命だって見過ごせないからこそ、手を伸ばすのだ。
「絶対に王子さまは救うからのー。犠牲は僕らの本意じゃないけーのー!」
そう、それこそが猟兵の強み。
だれも死なせないと決めたことが、力になる。
振り下ろされるレーザークローが黄金を引き剥がしていく。黄金を剥がせば剥がすほどに合体した骸魂が目覚めるだろう。
それは同時に『しあわせな王子さま』と骸魂を引き剥がす行為でもある。
今、この状態の彼を打倒することが猟兵達が『しあわせな王子さま』を救うゆういつの手段。
「僕に構うな。こんなことに意味は――!」
無いんだと叫ぶ言葉をメイスンは遮った。
意味ならばあると。誰かのためにと己の身を削る『しあわせな王子さま』。ならば、それを救う者がいなくてはならない。
いつか見た結末を繰り返させはしない。
王子も、ツバメも。
冷たい冬の雪に埋もれさせることなどしない。
「意味ならあるけーのー! 僕達は欲張り。だから、救う。無理だと言われても救う。必ずのー!」
振るわれるレーザークローの超高速斬撃の一撃が『しあわせな王子さま』の身体へと傷を刻み込む。
それは、いつの日にか暖かな春の日を彼等が迎えられるようにと願う心に寄って振り下ろされるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
夜鳥・藍
「しあわせな王子さま」
昔読んだお話の人物もこの世界に来ているのね。少し悲しい。
あのお話は子供心に理不尽だと思ってたし悔しさを感じてた。だって死んでからじゃ、本当に報われたとは言えないんじゃないかって。
だから私の全力で戦って、あなた方の想いに報いたいと思います。決して誰も死なせない。
真の姿(基本いつもと変わらないが、顔全体を覆うようなベールと光の翼のような物が背に浮かぶ)に。
そのまま雷公鞭・青月をかざしUCを発動。黄金の花びらごと雷で撃ち抜き相殺します。
金は電気を通しやすいと聞きますし、よほどの事が無ければ落とせるはず。
また自分の雷撃と相手の花びらの間を縫って近づき、直接青月で攻撃します。
人の悲しみを知ることができるのであれば、それはしあわせなことであったことだろう。人を思いやることを知るからである。
けれど、人は時として生物としての本能と心の間で揺れ動くものである。
その差異を人はなんと呼ぶのだろうか。
理性であろうか。
それとも博愛であろうか。
見返りを求めない心は美しく尊いものである。
けれど、それを続けようとしてはならない。いつかそれは人を傷つける嘘という棘となるから。
「君達は本当に優しいのだと思う。けれど、今はそれを捨てなければならない。僕は僕のたいせつな役目を全うする。君達しか『大祓骸魂』は止められない。そのために僕は喜んで自分の生命を差し出そう」
滅びてもかまわないのだと『しあわせな王子さま』は言った。
黄金は剥がれていき、地金が見えていく。
けれど鉛の心臓だけが輝いて見えたのは、夜鳥・藍(kyanos・f32891)の気のせいであっただろうか。
黄金の花弁が煌めくように猟兵たちを襲う。
まるで黄金の吹雪。それを藍は少し悲しいと思っていた。『しあわせな王子さま』。あのお話は子供心に理不尽だと思ってたし、悔しさを感じていた。
「だって死んでからじゃ、本当に報われたなんて言えないんじゃないかって」
だからと、藍は走る。
あふれる『虞』が猟兵としての本能を呼び覚ます。
今自分が立つこの場所が窮地であると心と何より身体が理解している。顔を覆うベール。そして、背に光の翼のようなものが浮かび上がっていた。
手にした雷公鞭『青月』がかざされる。
「いいんだよ。僕たちは本来であれば忘れ去られて滅びる定めにあったんだから。むしろ、二つの世界を救うことができる。そのために自分の生命を使うことができることは誇らしいことだ」
微笑みながらも『虞』は変わらない。
今もなお『真の姿』を晒す藍を圧倒し続けている。ならばこそ、藍は叫ぶのだ。
「私の全力で戦って、あなた方の想いに報いたいと思います」
掲げる宝貝「雷公天絶陣」の輝きが、黄金の花弁を天より降り注ぐ雷で撃ち落とす。
その光景は天地開闢そのものであったことだろう。
世界を空と大地に分かつような雷撃迸る空。雷撃を纏った藍が走る。
だって、そんなの悲しすぎる。
救った世界のその後も見れないなんて。
報われていないのと同じだ。例え、本人たちがそうだったとしても、あの物語の最期をどうしたって悲しいと思う自分の心は偽ることができるものではない。
「僕のことを知っているんだね。けれど、それでいいんだ。僕たちは、それを覚悟しているのだから」
『しあわせな王子さま』が走る。
雷撃を受けてもなお、黄金の花弁は消えていかない。
互いに全力で戦う。
それこそが『必須条件』である。『大祓骸魂』へと至る『雲の道』を生みだすための儀式。
それは自分の死によって成り立つものだけれど、それでも藍は叫ぶのだ。
「決して誰も死なせない」
あなたも、誰も彼も。
誰一人として失わせない。それが『大祓百鬼夜行』を戦い抜く決意であり、猟兵の総意であったことだろう。
黄金の花弁を振り払うように振るった雷公鞭が振りかぶられる。
藍の瞳とサファイア喪われし眼窩が交錯する。そこにあったのは、失意でもなければ絶望でもなかった。
互いの瞳が見るのは未来であったけれど、そこに自分が存在しているかどうかの違いしかなかった。
だから、藍は手を伸ばすのだ。
よりよい未来を掴みたいと願う心が、何故育まれたのか。
「幼き日に見た貴方の物語。それが私の今の背中を押している。決して誰一人として取りこぼしてはならぬと、背を押すのです」
光の翼が開き、手にした雷公鞭がユーベルコードの雷撃を『しあわせな王子さま』へと振り下ろす。
その雷撃の一撃は、骸魂と合体した強大な『虞』を振り払ってでも、犠牲を否定するように『忘れ去られたものたちの終着駅』に轟くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
鈴久名・紡
既に幸せを得たから良い……?
それで納得など出来る訳ないだろう
万全な状態でなくとも、全て終わったとき
その結末を親分が見られるよう、尽力を
その覚悟には覚悟を持って
竜神形態の真の姿を解放し煉獄焔戯使用
神力を矢に変化させて先制攻撃
同時に天を駆けて接近し鎧無視攻撃
敵の攻撃は浮遊する盾に変化させた禮火と葬焔で防ぎつつ
見切りと残像も利用して回避
回避が間に合わない場合はオーラ防御を展開
負傷した場合は爆破された場合は激痛耐性で凌ぎ
操作は抵抗して対処
以降の攻撃には生命力吸収を使用して戦場に立ち続けよう
救われた世界を見せてやる
多分、それは皆が想うこと、願うこと
終わった先にあんたが居ないのでは
余りにも悲しいじゃないか
もういいんだ、と西洋親分『しあわせな王子さま』は言った。
無理に自分を救おうとはしなくてもいいのだと。その『虞』は最大限に発露し、凄まじき力となって猟兵たちを苦しめる。
それは窮地に猟兵が立たされることによって初めて可能となる『真の姿』を晒すほどであった。
だが、それでもなお『しあわせな王子さま』は倒れない。
オブリビオン・フォーミュラ『大祓骸魂』へと至るための『雲の道』を繋ぐために必要なのは、西洋親分『しあわせな王子さま』を全力で殺し合い、打倒すること。
それが必須条件。
だからこ、『しあわせな王子さま』は自分の生命は気にしなくていいのだと言ったのだ。
「わからないのかい、猟兵達。僕はもう幸せだったんだ。十分に満たされているんだ。これ以上の幸せよりも、誰かのための幸せを願いたいんだ。人の世も、カクリヨも、悲しみと苦しみが満ちている。僕はそれを無くしたいんだ」
放たれる暖かな光。
黄金の光は、彼が真に西洋妖怪の親分であることと、猟兵達に決死の覚悟を託したことを知らしめる。
しかし、鈴久名・紡(境界・f27962)は頭を振った。
「既に幸せを得たから良い……? それで納得などできる訳ないだろう」
彼の姿は竜神としての真の姿であった。
迸るユーベルコードの輝きが、神力となって発露していた。煉獄焔戯(レンゴクエンギ)と呼ばれるユーベルコードは炎となって、彼の手に一矢を齎す。
黄金の輝きを前に怯むことなく空を疾駆する。
「万全な状態でなくとも、全てが終わった時、その結末を『しあわせな王子さま』、あんたが見られるように」
覚悟には覚悟でもって応えなければならない。
それが紡の信条であったことだろう。同じカクリヨファンタズムに住まう種族。竜神としての力は『しあわせな王子さま』の放つ『虞』に誘発されたからであろうが、それは彼の決死の覚悟が引き出したものである。
「その時僕はもういないはずなんだ。僕の代わりはいる。けれどたいせつな役目は僕以外にはできないんだ。だから、君達に」
託したんだと『しあわせな王子さま』が言う。
悲痛なる決死の覚悟であったことだろう。
これは自分たち猟兵のエゴであるなんてわかっている。
黄金の輝きを漆黒の鬼棍棒が打ち払う。けれど、それでもなお、黄金の輝きは紡へと降り注ぐ。
氷を操る白銀の神器が輝き、黄金の輝きを防ぐ。それでもなお、理性を破壊するほどの幸福が紡の身体の中に入ってきて、その身を破裂させる。
噴出する血、激痛が、彼の心を苛むだろう。
けれど、それでも倒れない。
「これしきの痛みなど。あんたの決めた覚悟に比べれば」
痛みなどあるわけがない。
必ず見せなければならないのだ。
「救われた世界を見せてやる」
弓引くは煉獄の神力象りし、一矢。その瞳にユーベルコードの輝きがある限り、彼の心に宿った覚悟は消えることはない。
痛みは彼の歩みを止めることなどないのだ。
むしろ、痛みこそが彼の決意を底上げしていく。煉獄の如き炎が収束し、一矢を引き絞る腕が軋む。
それでもかまわない。
多分、それは皆が想うこと、願うことだ。
誰かの幸せのためにと己の献身と博愛でもって死ぬ覚悟をした『しあわせな王子さま』。
彼が幸せだったと言ったことに偽りはないだろう。
誰かのために。
それだけのために生命を擲つことができる尊さを知らしめたのだ。けれど、そう、その幸せを分け与えた者たちの願いや思いはどうなるというのだ。
「終わった先にあんたがいないのでは――」
どうしようもなく。そう、どうしようもなく。
「――余りにも悲しいじゃないか」
放たれた煉獄の一矢が空を駆ける。
閃光の一条が『しあわせな王子さま』を貫き、されど溶け落ちぬ鉛の心臓を露出させる。
決して諦めない。
猟兵達は諦めが悪いのだと言うように紡は、己の放った一射が必ずや『しあわせな王子さま』を救うと信じて、猛る煉獄のままに、その瞳を決意と共に燃やし続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
わたしは自分の『真の姿』がまだわからないけど、
『しあわせな王子さま』の想いには応えたいな。
そしてもちろん、しっかり助けるよ!
『幸せ』を過去形にしちゃいけない。
あなたが誰かに幸せを運ぶなら、あなたにはわたしたちが幸せを運ぶよ!
幸せはこれからも、あなたとあなたのまわりにあり続けるからね。
【黄金の光】には【狂気耐性】や【呪詛耐性】それと電脳アイテムを総動員して、対抗。
攻撃は【Nimrud lens】を発動させて、黄金を溶かしていって助けたいな。
あなたの想いは溶鉱炉でも、わたしの【Nimrud lens】でも融けない想い。
『雲の道』へはわたしたちが預かっていくから、ツバメさんといっしょに待っていてね!
凄まじき『虞』纏う西洋妖怪の親分『しあわせな王子さま』の力は、猟兵達を窮地に追いやる。
それほどまでの力でもってしてもオブリビオン・フォーミュラ『大祓骸魂』を打倒するには叶わない。
オブリビオンである以上、猟兵以外に打倒する術はなく、そして西洋親分『しあわせな王子さま』には覚悟があった。
己の生命を賭して、為さねばならぬ、たいせつな役目があったのだ。
それは全力で猟兵と戦い打倒され、己の身を包む黄金でもって『雲の道』を紡ぐこと。
必要なのは、全力の戦いである。
猟兵を殺す。それ以上でもなければ以下でもない。そのうえで倒されなければならないのだ。
「わかっているんだ。僕だけでは、勿論のこと。他の妖怪たちでも『大祓骸魂』は止められない。二つの世界を救うためには、僕たちが犠牲になるしかないんだ」
わかってくれと、叫びながら『しあわせな王子さま』は戦う。
放たれる黄金の輝きは、猟兵達に理性が破壊されるほどの幸福をもたらし、その肉体を弾けさせる。
血潮が流れ、傷つけることを『しあわせな王子さま』は厭う。
けれど、それを為さねばならぬからこそ、彼は力を振るう。自分が滅んだとしても、自分が為したことは誰かのために成ると信じているからだ。
「わたしは自分の『真の姿』がまだわからないけど、『しあわせな王子さま』の想いには応えたいって思っている。勿論、絶対に助けるよ!」
これだけの『虞』に晒されてもなお、己の『真の姿』を知らぬ者はその力を発露することができない。
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、それでも誰かのためにと願う『しあわせな王子さま』の覚悟に応えなければと戦場を駆ける。
「ダメだ、猟兵。それではダメなんだ。僕を助けようとしては!」
戦いは甘いものではない。
非常なものだ。黄金の輝きは理緒の身体を撃ち、その身を内側から爆ぜさせる。血が吹き出し、理緒は足を止め――なかった。
関係など無かったのだ。痛みよりも先に彼女の思いが発露するのだ。
「『幸せ』を過去形にしちゃいけない。あなたが誰かに幸せを運ぶなら、あなたにはわたしたちが幸せを運ぶよ!」
己の身を削る博愛と献身。
それがあったからこそ、人々の心は豊かになっていく。
誰かを思うことはこんなにも素晴らしいことだと教えてくれる。
その一端を『しあわせな王子さま』は担っていたのだ。子供の頃に絵本で読むこともあっただろう。
何を感じ、何を学んだのかは、各々の心の中にあるものだ。
「幸せはこれからも、あなたとあなたのまわりにあり続けるからね」
噴出する血が腕を伝う。
走るのを止めない。自分が持てる全ての電脳アイテムを総動員して黄金の光と『虞』に対抗する。
力が足りなくてもいい。
誰かを思う時、誰だって猟兵は、誰かを救うことができる。
バイスタンダーを気取るわけじゃあないけれど。
「あなたの想いは溶鉱炉でも、わたしのNimrud lens(ニムルド・レンズ)でも融けない想い」
知っている。わかっている。
これは力が足りないからではない。理緒の瞳がユーベルコードに輝き、大気を屈折させ、レンズを生成させる。
黄金を融かす程の光が収束され、熱線と炎となって『しあわせな王子さま』へと放たれる。
かつて、二つに割れた鉛の心臓は溶鉱炉でも溶けることはなかったという。
ならばこそ、理緒は叫ぶのだ。
「『雲の道』へはわたしたちが預かっていくから、ツバメさんと一緒に待っていてね!」
必ずやり遂げてみせると。自分たちが願う未来に『しあわせな王子さま』は必ず一緒に微笑んでいてほしいと願うように、理緒は収束された光でもって黄金を焼き払い、『しあわせな王子さま』に見せるのだ。
彼が手放して、ありえないと背を向けた未来を。
必ず彼の目の前に。
喪われたサファイアの瞳よりもまばゆい未来を見せてみせると――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第四『不動なる者』盾&まとめ役
一人称:わし 質実剛健
武器:黒曜山(剣形態)、四天流星
真の姿『崩山領域』(20/9/14納品分)
『しあわせな王子さま』。陰海月に与えた本に載っておったのう…(UDCアース在住。読んだ陰海月は泣いた)
その覚悟に応えねば。死なせるつもりもないがの。
四天流星を投擲して視認させ、錯誤の呪詛と結界術を発動。位置を誤認させて、黄金の光を回避できるように。
父よ、ここに業を。骸魂のみを斬れるように【四天境地・山】を使用。未来への斬撃ゆえに、回避は困難よ。未来の位置においてあるからの。
猟兵とは基本、欲張りだと聞いておるよ。『我ら』もなんじゃが。
光の一条が西洋親分『しあわせな王子さま』に放たれ、その黄金を引き剥がしていく。
されど、まだ足りない。
その身体は無数の骸魂と合体した『虞』を纏う強大なる『しあわせな王子さま』である。
彼の役目は、今此処に結実している。
猟兵を必ずや『雲の道』にてオブリビオン・フォーミュラ『大祓骸魂』の元へとたどり着かせてみせると『しあわせな王子さま』は戦う。
全力で猟兵たちを殺しにかかる。
そうしなければ、『必須条件』をクリアできない。そのために彼の献身と博愛こそが猟兵を苦しめるのだ。
纏う『虞』は猟兵たちをして窮地にしか開放できぬ『真の姿』を強いる。そうしなければ勝てぬと判断できるほどの圧倒的な『虞』。
「ダメだ、これでは――猟兵、頼む。僕は、僕のたいせつな役目を果たしたい。だからどうか」
全力で戦って殺してくれと叫ぶ覚悟を前に猟兵達はかぶりを振る。
諦めるわけにはいかないのだ。
何故なら、猟兵とは生命の埒外にある以前に諦めの悪い者達である。
土台無理だと言われたとしても、それを飲み込める者ばかりではない。
「その覚悟に応えねば。死なせるつもりもないがの」
未来を写す漆黒の剣を手に、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の四柱の一柱『不動なる者』が黄金の輝き放つ『しあわせな王子さま』へと走る。
『しあわせな王子さま』――『陰海月』に与えた絵本にあったタイトルである。
あれは涙していた。
どうしてこんなことになるのだと。誰かのためにと献身でもって、誰かの悲しみと苦しみを取り除かんとした者が何故死ななければならなかったのかと。
けれど、あの物語の肝要たるところは、博愛と献身を教えるものではない。
誰の心にも、それがあると知らしめるための物語である。
「ならばこそ、わしらこそがその定めを覆さなければならない」
どうしようもない結末も。
避けようがない未来も。
切り開いていけることこそが、人の強さだというのならば、明日を悲嘆した誰かのために明日を見せることだって猟兵ならばできるはずだ。
放たれたクナイが『しあわせな王子さま』の喪われたサファイアの瞳があった眼窩に映る。
「このままで、僕が君達を殺してしまう。ここで一気に畳み掛けなければ!」
それでも手を抜くことはできない。
だが、それは誤りであった。『不動なる者』は何も加減などしていない。放たれた錯誤の呪詛が、彼の認識を阻害する。
放たれた黄金の光は、『不動なる者』には降り注がない。
「父よ、ここに業を」
四天境地・山(シテンキョウチ・ヤマ)。再現されるのは己の父の技である。
不可視の斬撃が放たれる。
その一撃は未来への視認不可能な一撃。それはまるで放たれた斬撃に『しあわせな王子さま』が自ら身体を動かして当たりに行ったようにも見えたことだろう。
「これは――」
『虞』纏う『しあわせな王子さま』でさえ、己が何をされたのかさえわからなかったことだろう。
そのユーベルコードの一撃は『しあわせな王子さま』の黄金を引き裂く。
地金を切り裂き、鉛の心臓が見える。すでに多くの猟兵達がそうしたように、『不動なる者』もまた手を伸ばすのだ。
『しあわせな王子さま』が喪われた未来ではない、誰もが望む未来を。
多くの西洋妖怪に慕われた『幸せ』を知る『しあわせな王子さま』。彼の帰りを待つ者が多くいるのだ。
ああ、と瞳喪われが眼窩から涙がこぼれ落ちるだろう。
「猟兵とは基本、欲張りだと聞いておるよ」
彼等が『しあわせな王子さま』を諦めないと言っているのだ。
ならば、それは真のことであるのだろう。誰も彼もが諦めない。手を伸ばせる距離にある生命を諦めない。
死せる者も、生きている者も、肉体を持たぬ者だっている。
けれど、その誰もが願っているのだ。
より良い明日を願う心こそが『虞』を祓うのだと。
「『我等』もなんじゃが」
だから、手を伸ばすのだと『不動なる者』は、己の名の通り、救うことを頑として諦めずに、黄金の輝き放つ『しあわせな王子さま』と打ち合うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
董・白
※アドリブや他猟兵との連携OKです。
【心境】
「幸福とは人それぞれかもしれませんが、…これはちょっと悲しすぎますね。」
でも、本当に幸せなのでしょうか?
慕っていた妖怪さん達は絶対幸福じゃないです…。
【真の姿】
生前の姿です。肌の色も人並みに戻ってます。
封魂符が魂ごと胸に格納して服装が当時の皇女服に変化してます。
この衣装…わりと不敬なんですけど(汗)
そんなこと言ってられないです!
【行動】
戦うことが彼らを救う道なので、全力で戦い頑張ります。
道術で強化した結界術で攻撃を受け止めます。
宝貝「太極符印」を発動します。
黄金は導電率が高いです。
落雷の豪雨で射貫きます!
猟兵たちの攻撃が『しあわせな王子さま』の黄金を引き剥がしていく。
それは彼の体に合体した無数の骸魂を活性化させることであったが、同時に骸魂をも引き剥がすことにも繋がる。
無数の骸魂と合体することができる『しあわせな王子さま』の『虞』は凄まじいものであった。
まるで質量を持った風のように猟兵達は対峙するだけで、己達が今、窮地にいるのだと理解できる。
「これでも、まだ『虞』は払えない……猟兵、これが、これ以上が『大祓骸魂』だというんだ。僕にはかまわず……!」
殺してくれと『しあわせな王子さま』は強大な『虞』を纏って黄金の花弁を撒き散らす。
その攻撃の一撃が致命のものであることを、董・白(尸解仙・f33242)は理解していた。
窮地。
されど、退くことはできない。
『しあわせな王子さま』の覚悟を、これまで妖怪たちが多く決意したように。
それを無駄にはできないのだ。
誰一人として取りこぼしてはならぬと決意する。
「幸福とは人それぞれかもしれませんが……これはちょっと悲しすぎますね」
博愛と献身。
それが『しあわせな王子さま』が多くの西洋妖怪たちに慕われる理由であったのだろう。誰かの苦しみに、誰かの悲しみに寄り添うことができる優しさを持つからこそ、彼は幸福を誰かに分け与えることができた。
だからこそ、此度の『大祓百鬼夜行』においても、自分の身を顧みない。
「だけど、本当に幸せなのでしょうか? あなたを慕っていた妖怪さんたちは絶対幸福じゃないです……」
封魂符が己の魂ごと胸の中に格納され、土気色の肌が血色の良い肌に戻っていく。
それが白の生前の姿であり、『真の姿』である。
当時の皇女服。不敬な格好と白は思ったけれど、今はそんな事を一手はいられないのだ。
彼女は死んだ。
死んだからこそ、手に入れた力がある。全力で戦うことが彼等を救う道であるというのならば、己はこれまで手に入れ、研鑽してきた力の全てを持って戦う。
そうすることでしか開けない明日があるというのならば、白はためらわない。
道術によって強化された結界術が黄金の花弁を受け止める。
「ダメだ、猟兵! それでは、僕を倒せない! 僕にはかまわないでくれ!」
悲痛な叫びが聞こえる。
その叫びを白は聞きたいとは思わなかった。
彼の意にそうように互いに殺す気で戦わなければならないのはわかっている。そうすることが必須条件だっていうことも。
けれど、けれどと言えるのが猟兵である。白という猟兵である。
「宝貝「太極符印」(パオペエタイキョクフイン)――!」
叫んだ。
そんなことはないと。これで良かったなんて言わせない。自分がいなくなった未来を、これでよかったなんて言わせて成るものかと、制御が困難なユーベルコードを発煙させる。
雷雲を呼び寄せ、嵐を生み出し、黄金の花弁を包み込む黒雲でもって『しあわせな王子さま』に待つ悲劇の未来を打ち砕かんと轟雷を轟かせる。
「誰も殺さない。誰も死なせない。そう決めたから」
だから、手をのばす。
取りこぼすことがないようにと手を伸ばす。嘗ては全てが自分の掌にあった。けれど、それは容易にこぼれ落ちていくのだ。
全部がなくなったとしても残るものがあるなんて、誰にも言えない。
だから、手をのばす。
今の自分の掌は空だ。けれど、だからこそ、掴むことができるのだと白は、掲げた手と共に宝貝『太極符印』の放つ轟雷を一閃させ、『しあわせな王子さま』に待つ未来を打ち砕くのだった――。
大成功
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村崎・ゆかり
いるのよね、自分が犠牲になって皆を救うんだって自己犠牲に酔ってる奴。
はっきり言って、ダサいわよ? あなたの命が世界と等価? 違うわ。あなたの命も私の命も等しく同じもの。だからこそ、一つとて見放すわけにはいかない。
西洋親分『しあわせな王子さま』、大人しく救出されて、慕う郎党に揉みくちゃにされるといいわ。
真の姿なんていつ以来かしら?
三面六臂の阿修羅のような姿に変ずる。剣に戟、斧、独鈷杵、戦輪で武装。
摩利支天九字護身法を修し、「オーラ防御」「呪詛耐性」で黄金の輝きに抵抗しながら、全力で武器を振るい『しあわせな王子さま』を破壊していくわ。
あなたの覚悟は確かに受け取った。でも命まではいらないわ。
轟雷一閃。
天より落ちる雷撃の一撃が黄金の花弁を穿ち『しあわせな王子さま』の彫像の体を強かに打つ。
ぶすぶすと白煙を上げながらも、それでもなお強大な『虞』を纏う『しあわせな王子さま』は倒れない。
全力で戦うこと。
それが『大祓骸魂』へと至るための『雲の道』を生みだす必須条件である。だからこそ、完全に意識を保ちながらも『しあわせな王子さま』は猟兵を殺すつもりで戦う。
そうしなければならないのだ。
それが彼のたいせつな役目である。それを成し遂げられたのならば、自分の生命などいらないと彼は思っているのだ。
けれど、それを良しとしない者たちがいる。
「いるのよね、自分が犠牲になって皆を救うんだって自己犠牲に寄ってる奴。はっきり言って、ダサいわよ? あなたの生命が世界と等価? 違うわ」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は三面六臂、阿修羅の如き姿を開放し、『忘れさられたものたちの終着駅』に降り立つ。
剣に戟、斧、独鈷杵、戦輪を手にした彼女の瞳は如何なる輝きを放っていたことだろうか。
その手はあまねく全てを救うために。
その瞳は苦しみを持つ者を見つけるために。
その顔は降りかかる全ての悲しみの源をにらみつけるために。
「あなたの生命も、私の生命も等しく同じもの。だからこそ、一つとて見放すわけにはいかない」
ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
全ての悲しみを思う心を奪う光が『しあわせな王子さま』から放たれる。けれど、ゆかりの心には、黄金の輝きは届かない。
「オンマリシエイソワカ。摩利支天よ、この身に験力降ろし給え」
光り輝くオーラが摩利支天九字護身法(マリシテンクジゴシンホウ)となって、ゆかりの体を黄金の輝きから守るのだ。
「西洋親分『しあわせな王子さま』、おとなしく救出されて、慕う郎党に存分にもみくちゃにされるといいわ」
ゆかりが走る。
真の姿を開放した彼女にとって、黄金の輝きは恐れるに足りないものであった。
「ダメだ、君は――! 君は僕を殺さなければならない。僕のことを気にかけてはダメなんだ!」
ああ、それでもとゆかりは思うのだ。
誰かのためを思えるからこそ、簡単に生命を投げ打つことができる。それが美しいだなんて、ゆかりは認めないだろう。
たった一つの生命さえも取りこぼすことはできない。
それをしないと決めたからこその、『真の姿』の解放である。
全ての悲しみと苦しみを救いたいと願う『しあわせな王子さま』だからこそ、己の姿は鏡のようなものであったことだろう。
戦うことでしか救えぬというのならば、己の力を際限なく振るう。それが猟兵である。
剣が『しあわせな王子さま』の腕を跳ね飛ばす。戟が纏う『虞』を引き剥がし、斧が砕く。
独鈷杵の振り下ろされた一撃が『しあわせな王子さま』の地金が見える頬を打ち据える。
戦輪が黄金で装飾された剣を叩き落とす。
「これでもまだ本気じゃないっていうのなら、信じてみなさいな」
自分の居ない誰かの幸せの未来ではなく。
自分と誰かの居る幸せな未来を。自分ひとりでは、それができないことを知っていたとしても、此処には彼を諦めない者たちで溢れている。
この手は何のためにあるのか。
ゆかりはもう知っている。
救うと決めた者全てに手を伸ばすためだ。
「貴方の行いは正しいのかも知れない。けれど、そればかりに固執していてはダメよ。たった一つのことに囚われていては、善も妄執の悪になることを――」
忘れるなとゆかりは剣を振り下ろし、露出された鉛の心臓を二つに分かつのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
分かりました。では私も全力で相手をしましょう。
真の姿で戦闘
この姿は制御が効かない、育ての親の亡骸であろうと凍てつかせ、焼き焦がす……なんて甘えている場合ではありませんね。
あくまで冷静に、落ち着いて戦闘を。
両手の銃を『クイックドロウ』、「フィンブルヴェト」からの氷の弾丸と「ラグナロク」からの炎の弾丸の『乱れ撃ち』をしあわせな王子さまと自分の間の地面に撃ち込み水蒸気を発生させ、光を遮ります。
攻撃を防いだなら銃を撃つのをやめ、息を潜めて水蒸気の向こうに彼が見えるのを待ち、姿が見えたら『スナイパー』の技術で彼の取り込んだ骸魂を狙い撃ちます。
生き残り、生き残らせること。いつだって私の望みはそれだけです。
猟兵の放った斬撃が、ついに『虞』纏う『しあわせな王子さま』の鉛の心臓を二つに分かつ。
けれど、それでも止まらないのだ。
例え、溶鉱炉にくべられたとしても彼の心臓は溶け落ちることはなかった。
それは真に尊いものであるからこそであろう。彼の心にあったのは、ただ一つだけであった。
たいせつな役目。
猟兵と全力で戦い、打倒されること。
そうすることで、彼の身を包んだ黄金は『大祓骸魂』へと至る『雲の道』を形成するのだ。
そのために必要なことは全力で猟兵を殺しにかからなければならない。
「なのに、なのに、なんで君達は――! 僕のことを諦めないんだ! かまってはいけないんだ、僕には!」
『しあわせな王子さま』の慟哭が響く。
猟兵たちの優しさが、想いが、『しあわせな王子さま』を救わんとする願いが、彼の鉛の死蔵を割ったのだとしても締め付ける。
「僕を殺さなければ、道は開けないんだ!」
叫ぶ『しあわせな王子さま』の前に立つのは、総てを凍てつかせ、全てを焼き尽くす炎を身に纏ったセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)であった。
「わかりました。では、私も全力で相手をしましょう」
さらけ出された『真の姿』。
それは制御の利かぬ力の発露であった。育ての親の亡骸であろうと凍てつかせ、焼き焦がす身に余る力。
けれど、甘えてはいられないのだ。
これは誰かの想いを守るための戦いだ。オブリビオン・フォーミュラ『大祓骸魂』を打倒するために必要なことではある。
けれど、セルマに取って、それは今二の次であった。彼女の瞳が輝くのは、生存の誓い(セイゾンノチカイ)によってのみ。
必ず生き残る。
必ず生き残らせる。
いつだってそうだったのだ。彼女の、セルマの望みはそれだけなのだ。
「いつだって私の望みはこれだけです」
これだけ。
されど見よ。例え、どれだけの絶望と『虞』が襲おうとも、その瞳に輝く炎は消すことはできまい。
全てを凍てつかせる視線すらも陰ることはできまい。
今、彼女の瞳に在るのは生きることと、生き残らせることだけだ。それ以外の全てを彼女は投げ打つ。
体を駆け巡る制御不能な力が彼女の体をきしませる。
だが、彼女の誓いは真に正義より成り立つものであった。育ての親の言葉が耳に響く。
「冷静に。落ち着いて――私には」
それができるとセルマは走る。どれだけ彼女の体を理性が破壊されるほどの幸福が襲ったのだとしても関係ない。
手にしたマスケット銃は二丁。『フィンブルヴェト』から放たれる氷の弾丸が乱れ打たれるのと同時に『ラグナロク』から炎の弾丸が乱舞するように放たれる。
『忘れさられたものたちの終着駅』の床に激突し、水蒸気が発生され、黄金の輝きを遮って、セルマは走る。
彼女はポジションを見極める。
育ての親に教え込まれた技術は、彼が喪われた今も、彼女の体に染み込んでいる。どうあっても忘れることのできない光景が脳裏にちらつく。
「けれど、わかっているのです。生き残らせるということは救うこと。果たして、私にそれができるのか」
できないかもしれない。
けれど、誓ったのだろう? と幻が暖かく肩に手をおいたような気さえしたのだ。
幻聴だ。
都合の良い幻想だ。
わかっている。けれど、それでもセルマは引き金を引く。
水蒸気の向こうから現れる『しあわせな王子さま』の姿を捉えた瞬間、躊躇うことなく弾丸を打ち込むのだ。
氷と炎が一瞬で『しあわせな王子さま』の纏う『虞』を引き剥がし、霧散させていく。
一撃で止まらない。
次々と放たれ続ける弾丸。それは必ず自身が生き残り、生き残らせ続けるというセルマ自身から生まれた望みのままに、轟音を響かせ続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ニノマエ・アラタ
真の姿=イラスト参照
理由づけは何であっても構わない。
誰かのために、であろうと。
世界のために、であろうと。
……戦うことを選んだんだろう?
ならば、最期まで、納得がいくまで戦うだけだ。
強敵と戦えることの悦び、幸福。
じつに愉快だ。
全ての力を使い切り、限界を突破する!
俺が俺であるが故に。
戦いを選び、生を勝ち取り、何度も死を踏み越え。
……またその先へ往くために俺は妖刀を手にしている。
理性が破壊されようとも、
命を斬り裂き世界を救う一瞬のために。
幾度血に染まり。
黄金が剥げるごとく俺の皮膚が割かれようとも。
おまえの生き様がたとえ王子だったとしても。
さあ、膝を折ってもらうぞ。
頭を垂れてもらうぞ。
死に際も王子たれ。
軍服に身を包んだニノマエ・アラタ(三白眼・f17341)は、戦場となったUDCアースの『忘れさられたものたちの終着駅』に足を踏み入れる。
彼の歩みは一歩、一歩を踏みしめるようなゆっくりとした歩調であった。
戦いの場に際しては、あまりにも悠長なものであったかもしれない。けれど、それでもかまわなかった。
この戦場には膨大な『虞』が渦巻いている。
それは西洋親分『しあわせな王子さま』の纏う『虞』である。無数の骸魂と合体している彼は強大な存在であるが、彼を打倒しなければ『大祓骸魂』へと至る『雲の道』は開かれない。
だからこそ、遠慮をしていては勝てない。
いや、それ以前に勝てるかどうかすらも怪しいのだ。『大祓骸魂』はこれ以上だと言う。果たして勝機はあるのか。
「理由付けはなんで合ってもかまわない。誰かのために、であろうと。世界のために、であろうと」
アラタは静かに、鉛の心臓を露出させ、二つに分かたれた地金の見えた彫像の如き『しあわせな王子さま』へと対峙する。
その瞳に合ったのは、静けさだけであった。
凪いだような瞳にあってなお、その瞳はユーベルコードに輝く。
全ての業を断ち、悲願へと導く力が込められた妖刀『輪廻宿業』を構える。
「……戦うことを選んだのだろう? ならばあ、最期まで、納得がいくまで戦うだけだ」
その身にあるのは強敵と戦えることの悦び、幸福。
「ああ、それでいいんだ。僕のことなんかにかまわなくていい。僕も全力で戦わなければ、意味がないのだから」
放たれる黄金の輝きを妖刀が切り裂く。
輝きすらも斬り裂く一撃は凄まじいものであったことだろう。
これこそが、この世界に存在するための因すらも断ち切る妖刀、輪廻宿業(リンネシュクゴウ)の力である。
ユーベルコードに寄って込められた業は、斬撃とともに幸福を齎す光すらも切って捨てるのだ。
「俺が俺である故に。戦いを選び、生を勝ち取り、何度も死を踏み越え。……またその先へ往くために俺は」
妖刀を手にしているのだ。
例え、理性を破壊されようとも、生命を切り裂き世界を救う一瞬のために。
放たれる『虞』がアラタの体を軋ませ、内側から破裂させるように血飛沫を上げさせる。
けれど、かまわないのだ。
どれだけ自分の皮膚が黄金が剥げ落ちるように割かれようとも、幾度血に染まっても。
「おまえの生き様が例え王子だったとしても」
己がやるべきことは変わらぬのだと妖刀を振るう。
血に濡れた腕がだらりと落ちる。けれど、それでも『真の姿』を開放したアラタにとって、痛みは遠いものであった。
為さねばならぬと決めた両者がいる。
『しあわせな王子さま』もまた、己の鉛の心臓を分かたれてもなお動いている。
誰かのために。世界のために。
言葉にすれば、どれもこれも嘘くさく感じるかも知れないけれど、それが偽善であるとなじられようとも変わらることのないものがあったのだ。
「さあ、膝を折ってもらうぞ。頭を垂れてもらうぞ」
斬撃が黄金の輝きを切り裂いて、アラタの血道を開く。
今の彼に『虞』は何の力も持たないだろう。
恐れなど無いのだから。目の前の『しあわせな王子さま』は真に王子であったのだ。
だからこそ、敬意を評するだろう。
ただ、一言。そう、たった一言で告げるのだ。その誇りが、決意が、覚悟が陰ることのないようにと。
「死に際も王子たれ」
それだけが、彼の行いを真なるものにするのだと、アラタの放った妖刀の斬撃が『しあわせな王子さま』の身を縛り続ける骸魂たちを一刀の元に切り捨てるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ナーバ・キャンサ
西洋親分さん。貴方が全てを賭けてこの世界を、住む存在を愛おしむように、この世界に住む一人である僕は貴方を大切に思うんだ。その気持ちに応えるため全力で戦うけれど、死なせたりするもんか。
僕は自分の真の姿を知らない。だから虞を受けて変化する自分の姿(いつもより体積が多いブラックタール)にちょっと驚くけれど、すぐ戦闘に気持ちを切り替える。
タールの身体は化術を習得するまで自在に変化させて遊んでいた、すぐに使いこなせるよ。変形と『バウンドボディ』を駆使して、親分を拘束し投げつけてダメージを与える。
光で不幸を与えられると思うように結果が出せなくなるかな。構わないさ、出来る限り親分を消耗させれば僕達の勝ちだ。
「死なせたりなんかするもんか――!」
その叫びは懐かしいような、そんな声であった。
ナーバ・キャンサ(猫又もどき・f33334)はブラックタールであるけれど、カクリヨファンタズムを故郷だと思っていた。
種族だとかなんだとかは関係ない。
彼が流れ着いた世界、そこで彼は生きたのだ。その証が今ここに結実している。
『大祓骸魂』が引き起こした『大祓百鬼夜行』によって、二つの世界が破壊されようとしている。
UDCアース『忘れさられたものたちの終着駅』にて、ナーバは走る。
自分の『真の姿』を知らない。どんな姿が本当の姿なのか、化術で自分が好む猫又の姿に変わっているせいかもしれない。
知らないものになるのは恐ろしい。
けれど、西洋親分『しあわせな王子さま』の放つ『虞』の前に彼の身体はブラックタールとしての巨躯へと変化していく。
「西洋親分さん。貴方が全てを賭けてこの世界を、住む存在を愛おしむように、この世界に住む一人である僕は貴方を大切に思うんだ」
その気持ちに偽りはないのだとナーバは、さらけ出された己の真の姿に驚きこそすれ、気持ちが萎えることはなかった。
戦わなければという想いだけが、心のなかに火を灯すのだ。
『しあわせな王子さま』が願ったように。
他の親分たちも、妖怪たちも、皆が決死の覚悟で世界を救わんとしたように、ナーバもまた応えようとしていたのだ。
「それは捨てなければならないんだよ。僕は、此処で滅びなければならないんだよ。だから、遠慮なんてしないでおくれ。僕も、僕のたいせつな役目のために、それができない。君を殺すつもりで戦わなければならないんだ!」
『しあわせな王子さま』から黄金の輝きが放たれる。
その身はすでに黄金を引き剥がされ、地金の肌が見えている。
サファイアの瞳がはめ込まれていた眼窩は暗く、そして、切り裂かれた胸には鉛の心臓が露出している。
二つに分かたれた心臓であってもなお、彼が動き続けるのは、彼が強大な妖怪であるからだろうか。
いや、違う。
「皆が貴方を慕っている。その気持ちに応えるために全力で戦うけれど――」
ナーバの瞳がユーベルコードに輝く。
それは『しあわせな王子さま』が放つ黄金の輝きよりもまばゆいものであったことだろう。
バウンドモードに変わったブラックタールとしての己の身体を変形し、跳ねて『しあわせな王子さま』へと飛びかかる。
「――死なせたりするもんか」
ブラックタールの身体は変化して、何度も『しあわせな王子さま』を拘束するだろう。その度に黄金の輝きでもって不孝を与えられ、逃れられる。
けれど、諦めなかった。
『しあわせな王子さま』が他の誰かの悲しみや、苦しみを救うことを諦めなかったように。
自分の体が、自分の瞳が、黄金が、何もかもを喪ってもなお、誰かのためにと思うことをやめなかったように。
「僕も貴方のように戦うんだ!」
不孝を与えられて思うように力が出せなくたっていい。
だって、自分は一人で戦っているわけじゃあない。
ナーバと同じ想いと願いを持つ猟兵達が駆けつけてくれている。
猟兵の戦いはいつだって繋ぐ戦いだ。どれだけ強大な敵であったとしても、諦めることなんてしない。
伸ばせる手があるのだ。
自分の身体がブラックタールであったことを、ナーバは感謝したかもしれない。
これが定形を持つ身体であったのならば、『しあわせな王子さま』の力で引きちぎられて、戦えなくなっていたことだろう。
けれど、今は違う。
「何度でも! かまわないさ! 親分を消耗させれば」
そう、それでいい。
自分が打倒できなくても、後を任せられる猟兵がいる。自分の前に戦った猟兵達がそうしたように、自分も繋ぐのだ。
「僕たちの勝ちだ――!」
唸るように飛び交うブラックタールの身体でもってナーバは、『しあわせな王子さま』を消耗の泥沼へと引き込み、確かに削ぎ落とした『虞』の分だけ、彼の想いは結実したのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【勇者パーティ】
生活費的にも黄金はかなり切実に欲しいですけど、
黄金だけとか、師匠。そんな器用なことできるんですか?
『師匠の作戦』にツッコんでいたら、
ツバメさんが間に入ってきて……。
そ、そんな潤んだ瞳でみないでください!
まさかあんな案がでてくるなんて思ってなかったんですよぅ。
言い訳しながらも『真の姿』に変身して、
攻撃をしかけようとしたら、師匠のお言葉が。
「そ、そうですね師匠!
勇者の辞書に罪という言葉はありません!」
『王子さまとツバメがいなくなれば、これは完全犯罪』
と自分を納得させたのは内緒。
「明日のごはんのために、ゆるしてくださーい!」
あ、サージェさん、もう共犯ですからね。逃げられませんよ?
フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
真の姿は外見変わらず。胸も変わらず。
「黄金のゴーレムか……
ツバメに自らの黄金を託して大祓骸魂とやらへの道を切り拓こうというのだな……」
だが、その黄金の使い方は間違っている!
なぜならば!
「お前の黄金は、全てこの我の物になるのだからな!
黄金を残し、そのツバメもろともこの世から消し去ってくれるわ!」(くわっ
全魔力を開放し、真の姿の力を出しつつ言い放とう。
「ルクス、サージェ!
我が魔術で奴の黄金を封じる!
その隙にツバメとゴーレムを倒すのだ!」
黄金の花びらとして放たれた黄金を【極寒地獄】の氷壁で凍りつかせよう!
「モンスターを倒してゴールドを手に入れるのが勇者の仕事!
つまり我らは悪くない!」
サージェ・ライト
【勇者パーティー】
(若干遅れて参上のクノイチ)
ふっ、今日という日は決着を付けるに最適な…
って、あるぇぇぇ?
あのぺたん魔女、何をふぃあふぃあしているのか!
(フィアさんの黄金我が物伝説を聞きながら)
そしてルクスさーん!?
罪悪感と戦ってないで帰ってきてルクスさーん!?
何か唐突に作戦始まってますけど
お呼びとあれば参じるのがクノイチ
え?共犯とか気にしないですよ?
私、(ポジ)シーフですし
盗みはお手の物ですから(笑顔)
そんなわけで【威風堂々】といきましょう!
ふっ、ここで私たちと遭ったのが不運でしたね
せめて幸せのうちに送ってあげましょう!
攻撃のついでに黄金をくすね取ったのは秘密です!
※アドリブOK
どれだけ強大な『虞』を纏っていても、度重なる猟兵たちの攻撃にさらされれば、西洋親分『しあわせな王子さま』とて消耗する。
複数の骸魂が合体した彫像の如き身体は黄金が剥げ落ち、その地金を曝け出している。
けれど、『虞』は猟兵たちをして窮地と認識させる。
それほどまでの相手なのだ。猟兵達は『真の姿』を持つ。
法則性はなく、さりとて人の形を取っているとも限らない。不定形にして、不確定。
故に生命の埒外の存在と言わしめるのだ。
「黄金のゴーレムか……ツバメに自らの黄金を託して『大祓骸魂』とやらへの道を切り拓こうというのだな……」
フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は、真なる姿を曝け出してもなお、変わらぬ姿のままつぶやく。
彼女は不死の悪魔であればこそ、不変でもありえるのだろう。
「そのとおりだよ。僕のたいせつな役目は、君達に黄金でできた『雲の道』を託すこと。そうやって紡いでいかなければならないんだ」
黄金の輝きと共に黄金の花弁が戦場となった『忘れさられたものたちの終着駅』に吹き荒れる。
黄金の輝きは理性を破壊する幸福を齎す。
「だが、その黄金の使い方は間違っている! なぜならば!」
フィアはその瞳を見開き言うのだ。
そう、欲望に塗れた瞳を燦然と輝かせる。
「お前の黄金は全てこの我のものになるのだからな! 黄金を残し、そのツバメもろともこの世から消し去ってくれるわ!」
やること為すこと全てが小悪党である。
そんな師匠を見るのは、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)であった。
確かに金欠である。生活費的には黄金はとても欲しいものであるが、黄金だけを残すとかそんな器用なことが師匠にできるのかなぁ、とルクスは半目であった。
基本ぶっぱ魔女である。
散々な言い方であるが、どう考えてもできる気がしない。
「ふっ、今日という日は決着をつけるに最適な……ってあるぇぇぇ? あのぺたん魔女、何をふぃあふぃあしているのか!」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は遅れてしゅたっと現れたけれど、フィアの黄金我が者伝説に突っ込む。
だって、弟子が突っ込んでも少しも堪えないのである。
まあ、サージェがツッコミを入れたところで、些かも揺るがぬのがフィアという魔女である。
そんな彼等の間に入ってきたのはツバメさんであった。
うるうるした瞳でやめてやめてと訴えるようであった。純粋無垢な瞳であった。というか、この瞳を前にしても普通に黄金を奪ってやろうと考えられる者はそういなか……――。
「ルクス、サージェ! 我の魔術で奴の黄金を封じる! その隙にツバメとゴーレムを倒すのだ!」
フィアの号令と共に極寒地獄(コキュートス)が放たれ、氷壁が黄金の花弁を封じ込め、凍てつかせる。
まさにぶっぱ。
容赦も情緒もない。
けれど、今はそれでいいのだ。そうすることが『雲の道』を作る必須条件なのだから。
「ルクスさーん!? 罪悪感と戦ってないで帰ってきてルクスさーん!? なんか唐突に作戦始まってますけど!?」
けれど、それでもお呼びとあれば参じるのがクノイチである。
犯行の共犯とかそういうのは気にしないのである。理性破壊されているし。もうシーフとしてのポジションとしての役割を全うすることだけが、今のサージェの胸に占めるものであった。
正直どうかなって思わないでもないけれど、威風堂々(シノベテナイクノイチ)としている所からして居直り強盗のようでもあったことは言わぬが華であろう。
「ふっ、ここで私達と遭ったのが不運でしたね。せめて幸せのうちに送って上げましょう!」
えぇ……とルクスは今だ罪悪感に苛まれていた。
あのうるうるとした瞳。
ツバメさんの訴え。あれを無視するなんてルクスにはできそうもなかった。けれど、その罪悪感を吹き飛ばすように、無駄にいい声でフィアが叫ぶ。
「モンスターを倒してゴールドを手に入れるのが勇者の仕事! つまり我等は悪くない!」
すごいこと言い始めた。
あーるぴーじーじゃないんですよ、と普段のルクスならそう返したかもしれないが、もう毒されているのだろう。
「そ、そうですね師匠! 勇者の辞書に罪という言葉はありません!」
いやあるじゃろ。
さらにフィアがささやくのだ。王子様とツバメがいなくなれば、これは完全犯罪、と。ああ、それサスペンス劇場とかで良く見るロジック。
もう勇者っていうか、容疑者っていうか。
「あ」
あ?
「明日のごはんのために、ゆるしてくださーい!」
まるで今までの自分の罪悪を振り払うようにルクスは巨大ヴァイオリンを振り回し、雑念を振り払う。
それがユーベルコードCaprice No.24(カプリスダイニジュウヨンバン)である。振り回した分だけ威力のあがる一撃は、『しあわせな王子さま』へと振り下ろされる。
赤信号みんなで渡れば怖くない。
そんな理屈が通じるのかと思うけれど、普段ならいざしらず、今の彼女たちは、ある意味で理性が破壊されているのだろう。
サージェと共にルクスは『しあわせな王子さま』の黄金を剥ぎ取るように攻撃を加えていく。
その背後でフィアがいいぞいいぞーと応援しているのは、ちょっとマジで勇者パーティと名乗るのが、ちょいあれな気もする雰囲気であるが気にしない。
「サージェさん、もう逃げられませんよ?」
「だから気にしませんってば。シーフですし。あ、いや、クノイチですし」
そんなこんなで二人は『しあわせな王子さま』の身体を覆う黄金を剥ぎ取る。しかし、攻撃のどさくさに紛れて掠め取った黄金は霧散し何処かに飛んでいく。
あれ!? と二人が思ったのも束の間である。
彼女たちが攻撃して剥ぎ取った黄金の全てが粉のようになって空へと舞い上がっていく。
「ありがとう、これが僕のたいせつな役目……僕の黄金は運ばれる。きっと猟兵のみんなのためになるように」
あ、違うんです。ひゃくぱー邪念だったんですと言い出せないルクスは、慌てながらも否定しない。というかフィアが余計なことを言わない内に口をふさぐ。
もがー! とフィアが騒ぐ背後でサージェはくすねとったはずの黄金の全部が霧散し、すっからかんになっていることにクノイチとしてのプライドをいたく傷つけられたかもしれないけれど。
まあ、自業自得だよね!
勇者パーティの三人は、図らずして『しあわせな王子さま』の願いを叶え、同時に『天網恢恢疎にして漏らさず』という言葉を噛みしめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
荒覇・蛟鬼
またまた。最初から分かっているのでしょう?
『猟兵ならば、必ず救ってくれる』と……
利用されるのは不愉快ですが、やってやりますとも。
■闘
【竜神飛翔】で真の姿である龍に変身しましょう。
あまり見せるものではないのですけど。
先ずは【空中浮遊】しつつ様子を伺い、親分様の放つ
『黄金の光』から逃れましょう。
基本は【第六感】を駆使しつつ来る瞬間を予測しつつ退避、
万一当たってしまった時は【狂気耐性】等で耐えます。
好機が来たら弱い雷で【範囲攻撃】を仕掛け身動きをとり辛くし、
そこから急速で【ダッシュ】し「がぶっ」と一噛み入れますか。
御心配なさらず……私は決して『世界の敵』ではございません故。
※アドリブ歓迎・不採用可
己の望む世界を少しでも実現させるべく荒覇・蛟鬼(無可有を目指す・f28005)は戦う。
世を乱す塵とはすなわちオブリビオンである。
今まさに二つの世界が乱されている。
UDCアースとカクリヨファンタズム。そのどちらもが脅かされる理由になっているのは、オブリビオン・フォーミュラ『大祓骸魂』が率いる『大祓百鬼夜行』だ。
その一翼を担うのが『しあわせな王子さま』である。
嘗ては西洋妖怪たちに慕われた者であったのだとしても、今の彼は破滅を呼び込む要因でしかない。
どんな理由があれ、どんな正義があれ。
蛟鬼には関係がなかった。善悪・敵味方問わず世を乱すのであれば、それを討たねばならぬ。
「それでいいんだ。今の僕は君の敵だ。嘗て在りしという言葉を使うまでもない。僕を滅ぼして、『大祓骸魂』を討ってくれるのならば」
それでいいんだと『しあわせな王子さま』は言う。
決死の覚悟だろう。けれど、蛟鬼は言う。
言わなければならない。これが皮肉でもなんでも無い事実だ。。猟兵である我が身であるからこそ言わねばならない。
「またまた。最初からわかっているのでしょう?『猟兵ならば、必ず救ってくれる』と……」
「ああ、わかっているよ。必ず二つの世界を救ってくれるのだと」
言葉が噛み合わないと感じたかも知れない。
そういう意味で言ったわけではなかったのかもしれない。けれど、それでも利用されているのは不愉快だと感じないでもない。
それでも。ああ、それでも己が目指す世界があるのならば。
「……やってやりますとも」
竜神飛翔と呼ばれるユーベルコードがある。
『しあわせな王子さま』が放つ『虞』を前にして己もまた窮地であると感じる。真の姿である竜神へと変身し、空へと舞い上がる。
あまり見せるものではないけれど、それでも放たれる黄金の輝きを躱さなければならない。
第六感とも言うべき超感覚を用いてもなお、黄金の輝きは『虞』の強大さと相まって蛟鬼の身体を爆ぜさせる。
血が噴出し、鱗が弾け飛ぶ。
けれど、それでも止まらない。どれだけの狂気をはらんでいたのだとしても、世を乱すものを尽く排除しなければならない。
破滅とはいつだって些細な塵が引き起こす事を蛟鬼は知っているのだ。
放たれる雷が『しあわせな王子さま』を打つ。
けれど、それは牽制程度にしかならない。
「御心配なさらず……私は決して『世界の敵』ではございませんゆえ」
雷と共に一気に『しあわせな王子さま』へと駆け抜ける。
それは天より飛来する雷と同じように神速でもって『しあわせな王子さま』へと迫るのだ。
サファイアの瞳はすでに喪われ、その暗き眼窩だけが蛟鬼を捉えている。黄金は剥がれ、地金が見えた彫像は斬撃の痕が痛ましい。
露出した鉛の心臓は二つに分かたれているが、それでもなお、止まらぬのは『虞』故であろう。
これ以上の『虞』纏うのが『大祓骸魂』である。
討てるだろうかと思う心があれど、けれど、決してそれを現実のものとはしない。
「救ってみせましょう。あなたがわかっていたように、あなたの言葉通りにするのは癪ですが」
だが、それもまた己の信条と重なる。
二つの愛おしき世界を守るために。ただ、その一点においてのみ、彼と『しあわせな王子さま』の目的は合致し、放たれた顎の一撃が『しあわせな王子さま』の片腕をもぎ取り、雷でもって霧散させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
御形・菘
貴方の想いに私も応えます
決して届かない、そして、誰にも知られたくない理想の姿を晒すことで
もちろん天地は今回留守番です
邪神オーラ、殺気、覇気や存在感と普段は分類される、「そういうもの」すべてを吹雪へと変換
世界をすべて覆いつくすつもりで展開
吹雪に身を隠しながら吶喊します
普段は左腕一本だけに任せる格闘を、単純に両手両足の四倍で
そして普段以上の膂力と頑丈さで行います
見映えなど一切気にせず、ただ確実に迅速に粉砕を
気を強く持った方が良いですよ
そうしないと、何もかも消えていってしまう
そんな状況では戦いに集中できないでしょうね
貴方の話を知ったのは最近のこと
憧れますよ、だからこそ私自身が止めたいのです
誰かのためになりますようにと、己の身を顧みない献身と博愛は尊いものである。
人はそれを偽善と呼ぶかもしれないし、自己犠牲が過ぎるともいうかもしれない。事実、相対する者によって『しあわせな王子さま』の言葉は別の意味にも捉えられただろうし、彼が滅びることを良しとしない者もいる。
その感情の漣は猟兵達の心にも伝播するのだ。
決死の覚悟。
別に西洋親分だけではない。他の妖怪たちも二つの世界を守るために、敢えて骸魂と合体し、『大祓骸魂』の軍門に降ったのだ。
「貴方の想いに私も応えます。決して届かない、そして、誰にも知られたくない理想の姿を晒すことで」
普段であれば、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)のまわりには動画配信用の撮影ドローンが飛んでいる。
けれど、今の彼女の周囲には、その姿はない。
彼女の理想の姿。それが強大な『虞』を前にして引き出されている。否、己がそれを晒すと決めたのだ。
その決意が彼女の姿を『真の姿』へと変えていく。
邪神のオーラ、殺気、覇気、存在感……普段ならばそう分類される全てを吹雪に変えていく。
彼女の存在はいつだって、人びとの目に触れるものであった。
誰もが彼女を知る。けれど、それは彼女が持つ一側面だ。全てを曝け出しているわけではない。
彼女にだって理想の姿はある。
「この姿は、あらゆる記録、そして記憶には残らない、残さない! そしてお前も消えろ!」
無縁散域(スベテアラズ)。
そのユーベルコードが彼女の金色の瞳を輝かせる。
人型。
鱗に覆われた四肢。四対の翼と荘厳なるオーラを纏い、顕現したのはこれまでも、これからもきっとずっと世界に存在が残らぬ姿であった。
「気を強く持ったほうがよいですよ。そうしないと、何もかも消えていってしまう」
吹き荒れる真の姿のオーラが拒絶の猛吹雪となって吹き荒れる。
黄金の輝きも拒絶の猛吹雪に触れた瞬間に溶け落ちるように剥落していくのだ。
「これが、拒絶の吹雪……いいんだ。僕が喪われて悲しむ人たちがいるかもしれないけれど、その記憶さえも消えてしまうのならば」
それでもいいと菘に『しあわせな王子さま』は言う。
喪われたサファイアの瞳があったであろう眼窩が彼女を見つめている。
それでこそ、と菘は思っただろう。
「貴方の話を知ったのは最近のこと。憧れますよ、だからこそ私自身が止めたいのです」
博愛、献身。
決して融けぬ鉛の心臓。二つの尊いものの片割れ。誰の心にも博愛と献身の心があるのだと知らしめる物語。
自分もそのようになりたいと、誰かの心に強く在り続ける存在になりたいと願う心が菘にもある。
だからこそ、彼女が止める。
見栄えなど気にもしない。ただ確実に迅速に粉砕する。ただ、それだけのために彫像の王子と打ち合う。
互いに全力であった。
打ち合う度にきしみ、ひび割れる音が響く。
「私の拒絶の吹雪が、あなたの存在を消し去ろうとも、私の心には残っている。ただそれだけでいいのです」
放たれた拳は隻腕となった『しあわせな王子さま』の身体に亀裂を走らせる。
けれど、どうしても鉛の心臓だけは二つにわかたれて以降、傷一つ付かない。それもまた彼女が知った物語の通りだ。
「ああ、どうか。どうか貴方の物語がいつまでも、私の心の中にとどまりますように――」
放たれる拳、蹴撃。
全身全霊を持って、菘は『しあわせな王子さま』という物語を、己の心に刻み込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
とても立派なお覚悟ですわ
そんな御方を喪う訳には参りませんの
ここは私に任せて欲しいですの
王子様の目的を果たしつつ
必ず命を救ってみせますの
…わかった、体を任せるよ
王子様、不穏な気配がするかもしれないけど
大丈夫だと思うから気にしないでね
さあ、カクリヨは骸の海に近い場所ですから
石化せずに力を振るえますの
黄金の花びらは神気で固定して防ぎますの
とても美しい光景ですわ
わたしもがんばるのですよー
超硬装甲なら黄金には負けないのですよー
ええ、よろしくお願いしますの
誰かを傷つける事はあまり得意ではありませんの
なので神気で王子様の動きを固定して隙を作りますの
動きが停まったところを
わたしが希少金属の爪で攻撃するのですよ
穿たれた胸。
剥離した黄金。露出した二つに分かたれた鉛の心臓。彫像の腕は隻腕と成り果て、黄金の剣は吹き飛び、そして地金見える身体はひび割れた。
「もう少し。もう少しで僕のたいせつな役目も終わる。これでいいんだ。これで。僕は滅びてしまうかも知れない。けれど、それでも二つの世界が救われるのなら」
それでいい。
自分は楔だ。壊れそうになっている世界を繋ぐ『雲の道』のように、楔となって世界をとどめ続ける。
そのために猟兵達に滅ぼされる覚悟だってある。心残りなんてない。あるのだとすれば、その責を猟兵に負わせることであったかもしれないけれど。
「とても立派なお覚悟ですわ。そんな御方を喪う訳には参りませんの」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の肉体に融合した邪神がつぶやく。
強大な『虞』は猟兵達に己の『真の姿』を発言させる。それほどまでの相手なのだ。加減ができるわけもなく、同時に全力でもって戦い打倒することが『雲の道』を作る『必須条件』である以上、仕方のないことであった。
だからこそ、自分に任せてほしいと邪神が晶に言うのだ。
『しあわせな王子さま』の目的を果たしつつ、必ず生命を救ってみせるというのだ。その言葉に邪念や嘘はないことを直感的に晶は感じ取っていたことだろう。
「……わかった、身体を任せるよ」
『しあわせな王子さま』には悪いけれど、不穏な気配は気にしないでもらおう。大丈夫だと思ったこともある。
そして、こういうときの邪神の思う心は、きっと晶と同じであったことだろう。
誰かのためにと己を犠牲にする精神。
それは博愛と献身であった。
けれど、だからこそ喪われてはならないと邪神も晶も思っていた。その一点においてのみ、二人は意志を一つにする。
「さあ、カクリヨファンタズムは骸の海に近い場所ですから、石化せずに力を奮えますの」
真の姿を開放した晶の体の主導権を握った邪神の権能が黄金の花弁を神気で固定する。
その力は普段の権能の発露よりも凄まじいものであったことだろう。
黄金の花弁が宙に浮かび、『忘れさられたものたちの終着駅』の荒廃した風景と同化する。
それは得も言われぬ風景であったことだろう。それを美しいと思う心はあれど、それを留め続けたいと願うことは、全く別のことであった。
「式神白金竜複製模造体(ファミリア・プラチナコピー・レプリカ)、おいきなさい」
ユーベルコードに輝く邪神の瞳が使い魔達と共に戦場を走る。
金属柱を元に構成された希少金属の超硬走行を纏う式神白金竜複製模造体が飛ぶ。
「わたしもがんばるのですよー! 超硬走行なら黄金に負けないのですよー」
使い魔たちも張り切っている。
まるで邪神の想いが伝播するようであった。黄金の花弁が固定される中、式神白金竜複製模造体が『しあわせな王子さま』を襲う。
けれど、『虞』を纏う『しあわせな王子さま』もまた生半可ではない。
爪の一撃を躱し、隻腕となっても攻撃を繰り出してくる。これだけ消耗させてもなお、立ちふさがる強大さ。
まさに死力を尽くした戦いだからこそであろう。
「誰かを傷つけることはあまり得意ではありませんの」
「それはお互い様だろうけれど。けれど、ままならないね」
互いにもとより他者を害することはなかったのだろう。けれど、やらなければならない。
邪神の神気が『しあわせな王子さま』の体を固定する。
一瞬の隙にしかならない。即座に固定の権能は破られるだろう。だが、その一瞬でよかったのだ。
「これで――!」
使い魔達が叫ぶ。
超硬の希少金属で生み出された爪が振り下ろされる。それは『しあわせな王子さま』の彫像の体へと振り下ろされ、ひび割れた地金を引き裂く。
その一撃は確かに『しあわせな王子さま』が望んだものであったことだろう。
たいせつな役目。
猟兵と殺し合い打倒される。ただそれだけのために彼は身をなげうった。それを美しいと邪神は思ったし、喪われてはならないと思ったのだ。
誰も殺さない。
誰も死なせない。
それは猟兵たちの総意であっただろうし、同時に晶の胸に去来するものであったことだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
櫻場・レク
どんな理由があろうと、現在に仇為す過去となった時点でオレに取ってただの敵である事に変わりはない。いいだろう、望み通り……灼滅してやる
真の姿の封印を解く
空中浮遊すると白銀に輝くハートの刻印が左胸へ浮かび上がり、リミッター解除&限界突破したサイキックルーツがサイキックハーツへと真化
『絶対に助ける』と言う「心の衝動」から溢れ出た余剰なサイキックエナジーがスパークし、オーラ防御化
心器サイキックシューターで増幅したUCで足止め
輝け!オレのサイキックハーツ!
その隙に心剣サイキックフォースですれ違い様に精神攻撃の斬撃波を乗せた2回攻撃で鉛の心臓をX字に斬り付け
はああああああっ!!
生き延びたか。運が良かったな
人には生きる理由がある。
生まれきた理由がある。けれど、時としてそれは人と人との衝突を生みだすことは言うまでもない。
それを摩擦と呼ぶか練磨と呼ぶかは、人の心に問わねばならぬことである。
どれだけ正統であると感じる事柄も、他者にとっては非道であるかもしれぬことを理解しなければならない。
全てを背負ってこそ猟兵であるというのならば、櫻場・レク(〜Amazing this World〜・f33287)は戦わねばならぬ。
「どんな理由があろうと、現在に仇為す過去となった時点でオレに取ってただの敵であることに変わりない。いいだろう、望み通り……灼滅してやる」
彼女の真の姿が封印を解かれていく。
『しあわせな王子さま』の放つ黄金の花弁が舞い散る中、空へと浮かび上がるレクの左胸に白銀に輝くハートの刻印が浮かぶ。
己のサイキックエナジーのリミッターを外し、限界を越えた心の衝動が膨大な念動力を放出していく。
『絶対に助ける』という心の衝動のままにレクは吠えた。
溢れた過剰なサイキックエナジーがスパークを起こし『忘れさられたものたちの終着駅』をまばゆく照らす。
黄金の花弁を吹き飛ばしながら、真の姿へと変わったレクのオーラが迸るのだ。
両手から放たれた高圧電流、サイキックブラストが心器サイキックシューターが増幅し、『しあわせな王子さま』の動きを止める。
「輝け! オレのサイキックハーツ!」
その明滅は、世界を照らす輝きであったことだろう。
何もかもを飲み込むサイキックエナジーの奔流は『しあわせな王子さま』の黄金すらも眩ませるものであったかもしれない。
「それでいい。死闘の果てにこそ手に入れられるものがある。僕のたいせつな役目は、果たされる。決して歩みを止めないでくれ」
託すのだ。
愛おしき二つの世界。
彼等の思い出と愛が残る世界と、その残滓が生み出した世界。
迸るサイキックエナジーが光の剣を持って振るわれる。
レクのはなった十字の斬撃が『しあわせな王子さま』の彫像の如き体へと振り下ろされる。
肉体を損傷させるのではなく、心だけを貫く斬撃。
「はああああああっ!!」
裂帛の気合と共に斬撃は『しあわせな王子さま』を貫いただろう。
その二つに分かたれた鉛の心臓は傷つけること能わず。
けれど、その身に宿した無数の骸魂だけは確実にレクの斬撃でもって切り捨てられる。
数多の骸魂を内包した『虞』。
それこそが『しあわせな王子さま』の持つたいせつな役目である。戦い、倒され、『雲の道』を懸ける。
そうすることで猟兵達は『大祓骸魂』へと至る道を見つけることができる。
例え、己が滅びたとしても、必ず世界を救ってくれると信じているからである。
自分はもうそれを見ることは叶わないけれど。
だが、その想いもまた切り捨てられるものである。そう、決して誰も死なせない。殺さない。
それが猟兵たちの総意であるのならば。
「生き延びたか。運がよかったな」
後ひと押し。誰もが望む未来へとたどり着くために、『しあわせな王子さま』を救い、『大祓骸魂』をも討ち滅ぼす。
そのために、振るわれたサイキックエナジーの輝きは、きっと願った未来へと続いていることだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
遥・瞬雷
いい覚悟だね、王子様。
自己犠牲を良しとしない考えもあるだろう。皆が幸せになれればそれに越した事はない。
だけど世の中そう上手くはいかない。私は君を肯定するよ。男が決めた命の使い道、貫き通すべきさ。
【三面六臂術】。觔斗雲で飛翔し六振の七星剣を構える。
あたたかな光に抵抗。陰と陽の流転と調和が【仙術】の真髄。与えられた幸せに呑まれる事なく、呑み込み咀嚼し受け入れる。
君のくれる幸せ、有り難く思うよ。だけど私は欲張りなんだ。その上を求めさせて貰う。世の中全て上手くいくに越した事はないんだよ。
真の姿、白銀鎧の颯爽たる女武将に変化。【空中機動】で突進し【破魔】の力の込められた六振の七星剣の連撃で【切断】する。
すでに西洋親分『しあわせな王子さま』は満身創痍であった。
片腕を落とされ、身体を覆う黄金の殆どが喪われ地金を晒す。
鉛の心臓は二つに分かたれたが、今だ溶け落ちることはない。それは彼の決意が、覚悟が、想いが、願いが、形となったものであるからだろう。
人びとの苦しみを、悲しみを、少しでもぬぐいたと願う心があるからこそ、生まれた献身と博愛であった。
けれど、それは誰しもの心に在るものだ。
誰もが忘れているだけだと知らしめる物語の中にあるからこそ、『しあわせな王子さま』は、己の役目を全うしようとする。
「全力で戦って、倒される。ありがとう。猟兵達。君達は僕の願いに応えてくれた。けれど――」
まだ、とあふれる『虞』のままに『しあわせな王子さま』は一歩を踏み出す。
満身創痍であっても関係ない。最期の最後まで彼は己の役目を果たすために動くのだ。
あふれる黄金のかがやきを前に遥・瞬雷(瞬雷女仙・f32937)は小さく呟いた。
「いい覚悟だね、王子様。自己犠牲を良しとしない考えもあるだろう。皆が幸せになれればそれに越したことはない」
けれど、瞬雷は知っている。
世界はそんなに単純ではないことを。悪意が、失意が、絶望が、あらゆる陰が人の心にもまた同時に存在しているのだ。
温かい光があれば、冷たく荒ぶ風もある。
人は博愛と献身を偽善と呼ぶこともあるだろう。
けれど、それもまた人である。相反するものを矛盾のままに抱えて生きていく。それが生命というものであるのならば。
「私は君を肯定するよ。男が決めた生命の使いみち、貫き通すべきさ」
瞬雷の瞳がユーベルコードに輝く。
仙道の真髄。
三面六臂術(サンメンロッピノジュツ)という形を持っているが、それこそが彼女の持てる全ての力であったことだろう。
三つの顔と三対の腕を持つ神仙としての姿を曝け出し、己の寿命すらも削って瞬雷は『しあわせな王子さま』の持つ男の覚悟へと真っ向からぶつかるのだ。
觔斗雲と共に『忘れさられたものたちの終着駅』を駆け抜ける。
あたたかい黄金の輝きは、心地の良いものであったことだろう。いつまでも浸かっていたぬるま湯のようなものであった。
けれど、瞬雷は振りほどく。
どれだけ甘やかな、大切な、忘れがたい時間があったのだとしても、時は逆巻くことはない。
だからこそ尊いのだ。
「与えられた幸せに呑まれることはない。飲み込み咀嚼し、受け入れる」
脳裏に浮かぶのは幸せな記憶だった。
身体が弾けるような音が響き渡る。それほどまでの『虞』であってもなお、瞬雷は止まらない。
「君のくれる幸せ、有り難く思うよ。だけど」
そう、だけど。
瞬雷は困ったように笑ったかもしれない。
これだけの幸福をもらってもなお、と思う己の心の器。底に穴が空いているのではないかと思うほどの底なし。
「私は欲張りなんだ。その上を求めさせてもらう」
際限なんてないのだ。
誰もが幸せを願っているからこそ、果てがない。その見果てぬ場所を求めるからこそ、人は生きていける。
漫然と生きるのではなく、懸命に生きることができるからこそ、人は人であるのだから。
「世の中全て上手くいくに越したことはないんだよ」
「けれど、こんなにも人の世には悲しみ、苦しみが満ちているんだ。けれど、それは」
そう、それは。
「人の心があれば、乗り越えられる。どんなに険しく厳しい冬があったとしても、その先には春が訪れるように」
瞬雷の姿が白銀の鎧を纏う颯爽たる女武将の姿に変わる。
それが彼女の真の姿であったことだろう。宿星の剣に破魔の力が宿り、黄金の輝きをも切り裂いて、空を疾駆する。
「君にも、その未来を見せたいと願う者たちの願いを込めさせてもらう。みんなが望む未来に、君がいないことを望む者なんていない」
誰よりも優しく。
誰よりも気高く。
誰よりも尊い、決して融けぬ鉛の心臓を持つ者。
振り下ろされた六つの斬撃が『しあわせな王子さま』の身に宿る無数の骸魂を瞬時に切り捨て、その身体を開放する。
『虞』が人の心より生まれたものであるのならば、それを待た『祓う』のも人の心である。
猟兵と妖怪たちの願いが結実した輝きは、きっと配られた黄金や宝石よりも尊いものであったことだろう。
それを示すように、二つに分かたれた鉛の心臓が、燦然と輝くのだった――。
大成功
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