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大祓百鬼夜行⑪〜魔法少女随行録

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#カクリヨファンタズム
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#大祓百鬼夜行


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 どうしてこんなことになってるんだろう。
「さあ、その力を寄越すんだ!」
 そんなこと言われたって出来ないよ。バスの窓ガラスを叩く、どこか邪悪そうな小さな生き物から手の中の針を庇うように、体を丸めて耐えている。
 どうしよう――。
 わたし一人じゃどうしようもないのは分かってる。だけど誰に助けてもらえば良いんだろう。
 ああ。
 そういえばこういうの、何かで見たことある。正義の味方は、危なくなった頃に助けに来てくれるんだ。
 だからわたしは深く息を吸って、世界を超えて届けと、悲鳴を振り絞った。
「助けて――!」


「皆様、妖怪バスはご存知ですか? こちらではよく使う移動手段なのですが」
 物部・九耀(白水竜・f27938)の眸が瞬いて、首がゆるゆると傾いだ。
 カクリヨファンタズムの随所にあるバス停で待っていれば、何れ訪れる奇怪なバスだ。といってもそれ自体に脅威はない。望んだ場所へ運んでくれるだけの、カクリヨファンタズムナイズされた常識で言えば至って普通のバスである。
 さりとて世界の終わり際、このバスにもまた、少しばかり普段と違う。正確には乗り込んだ妖怪の一人が――というべきか。
「この世界に生まれてしまったほつれを縫い合わせることが出来る、お裁縫妖怪という方がいらっしゃるみたいですよ」
 彼女を乗せたバスは、こちらから働きかけずとも世界のほつれを目指す。後は目的地にあるほつれを何とかしてもらえば良い。
 ――のではあるが。
 ほつれに近付くほどに、バスと妖怪は困難に巻き込まれることになる。それを助けて遣って欲しいのだと、九耀は穏やかに笑んでみせる。
「此度乗り込んだお裁縫妖怪は、ええ、幼気な猫又の少女です。まだまだひよっ子、子供も子供、といったところでしょうかしら。その子が呼んでおります。助けに来てくれる――」
 猟兵を。
 否。
「魔法少女を」
 なにて?
「魔法少女を」
 厳然たる声で言い切った竜神は、何が楽しいのかいたく上機嫌に笑った。
「幼い少女にとって、危機を助けてくれる超能力の使い手は皆、魔法少女です」
 大変凄まじい語弊がある気がするが、ともかくこのグリモア猟兵の頭の中ではそういうことになっているらしい。
 というのも。
 与えられる試練は何ともファンシーだ。『ナマケール』みたいな名前の紫色をしたぷよぷよした生き物とか。怠けエナジーみたいなものを集めている明らかに悪そうな服装の三、四人組とか。
 そういうのがバスを囲んで、見付けたぞお裁縫妖怪――みたいな感じで迫って来るのだ。さながら日曜朝のテレビ番組みたいな感じで。
「兎に角ユーベルコードをぶちかましてそれっぽい名前を名乗れば魔法少女です。性別などこの際些事でしょう。魔法少女を必要としている生命があり、皆様には魔法少女になる資格がある。それが全てです。口上とかそれっぽく言ってみたらテンションが上がるのではないでしょうか」
 つまりこうだ。
 魔法少女としてお裁縫妖怪を助ける。魔法少女になりきればなりきるほどテンションが上がる。テンションが上がると、彼女は艱難辛苦に背を向けず、立ち向かう勇気を得られる。そうすると大体の困難は魔法少女パワーで何とかなる。
 簡単な話である。前提が簡単か否かは個々人の思うところ次第だろうが。
「ご理解いただけました? ではいざ! 参りましょう。これこそが世界を救う戦いですよ!」
 ほんまか?


しばざめ
 しばざめです。
 今回は全力でトンチキです。

 このシナリオでは『妖怪バスとお裁縫妖怪を、危険から守る』などして頂けるとプレイングボーナスを差し上げやすくなっていますが、内容は見ての通りの感じです。
 ユーベルコードを打って名乗れば魔法少女です。何かキラキラしたエフェクトとか口上とかつけてリリカルに戦うとお裁縫妖怪のテンションが上がります。

 完結を優先させて頂きますので、流れてしまった場合はご容赦ください。

 プレイングは受付が閉まるまで、最低でも公開から二十四時間は受け付けております。
 お目に留まりましたらよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『妖怪バスでほつれに向かえ』

POW   :    肉体や気合いで苦難を乗り越える

SPD   :    速さや技量で苦難を乗り越える

WIZ   :    魔力や賢さで苦難を乗り越える

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

曲輪・流生
◯◇
大事な役割を担って下さるお裁縫妖怪さんのピンチですね…!助けに行かないと!
お裁縫妖怪さんだって助けを待っているはずです…!

出来れば魔法少女ですか?
まほーしょうじょはちょっと分からないんですが…僕は少女じゃないですし…。
あ、でも…お裁縫妖怪さんが望むなら叶えてあげたいですが…(一通り魔法少女の資料を読んで)
が、頑張ってみます…!

お裁縫妖怪さん!今助けますよ!
(UC【化粧転身】で白無垢姿にぶわっと白い芍薬
の花びらが舞って)
大事な役目を担うその子を襲うのは僕は許しません!
(舞いながら花鋏で攻撃)
これでひとまず安心ですよ。
(優しい笑顔をキラッ⭐︎)

…こんな感じで大丈夫ですか???


アリルティリア・アリルアノン
「そこまでよ、ナマケール!」
裁縫妖怪ちゃんに襲いかかる怪人を制止する凛とした声!
突如として薄緑色に輝く光球が現れ、中から一人の美少女が飛び出す!
「ネガティブハートにスマイル配信♪バーチャル魔法少女(ウィッチ)アリルちゃん、ログインなーう☆」
お決まりの口上と共に、可愛くキメポーズ!
そう!魔法少女オブ魔法少女、アリルちゃんのエントリーです!
見ててね、みんなを困らせる悪いやつらはパパッとやっつけちゃうんだから☆

…くっ、こいつら強い!
こうなったらみんな、オーロラスティック(いつの間にか押し付けてたサイリウム)を振って応援して!
…やったぁ、力が湧いてくる!
今こそ必殺のUC発動!ナマケールよ、無に還れー!




 お裁縫妖怪さんを助けなくてはいけない。
 曲輪・流生(廓の竜・f30714)は使命感に燃えていた。重要な役割を担っている彼女を、否――そうでなくたって、助けを求める声を無視するなんてことは出来ない。
 のだが。
 彼はちょっと世間知らずだった。そしてとても真面目だった。魔法少女の何たるかはよく分からないっていうか、十五歳の少年は少女じゃない――という、至極根源的な問題にぶち当たっていた。
 基本に立ち返ると、流生は真っ当な竜神だ。一度は人の我欲に歪められてしまったが、彼自身の抱く気持ちは、純粋に誰かの願いを叶えたいという祈りから成る。
 だから突入する前に、すごく真面目に魔法少女の参考文献で勉強をしている。
 ――一生懸命に漫画とかアニメのファンブックを捲る彼の横を通り抜けて、一条の煌めきがバスへと着地する!
「そこまでよ、ナマケール!」
 今まさにバスの窓を割ろうとしていた怪物を貫き、薄緑色の光球が猫又少女の前に現れた。涙を湛えた目を見開く彼女の前で、光の中よりひとりの少女が現れる。
 豊かな金の髪。緑のメッシュに彩られたそれの間から、きりりと翡翠の眼差しを携えて、美しいふりふり衣装でばっちりポーズをキメた。
「ネガティブハートにスマイル配信♪ バーチャル魔法少女(ウィッチ)アリルちゃん、ログインなーう☆」
「わ、わあ……魔法少女だ……!」
 きらっきらに目を輝かせる猫又少女にウィンク一つ。魔法少女の中の魔法少女、魔法少女の申し子、アリルティリア・アリルアノン(バーチャル魔法少女アリルちゃん・f00639)、満を持してのエントリーである。
「見ててね、みんなを困らせる悪いやつらはパパッとやっつけちゃうんだから☆」
「ふん――相変わらず小癪ね、バーチャル魔法少女(ウィッチ)」
 付随するエフェクトまでも完璧な魔法少女がいるとあらば、ここに必要なのは正統派の悪役幹部だ。
 黒くて露出度が高くてタイトな服を着たつり目の女が歩み寄ってくる。因縁の相手みたいな感じだけど全然知らない人だ。
「あんたとは決着をつけなきゃならないと思っていたのさ。このあたし――オー・チャックが相手をしようじゃないか!」
「望むところだよ!」
「負けないで、アリルちゃん……!」
 何にせよ、魔法少女vs悪の幹部の空気は盛り上がっている。猫又少女も固唾を呑んで二人を見詰めていた。リリカルな空気を乗せてバスは定刻通り運航しております。
 実力は互角だ。アリルティリアの魔法を躱し、オー・チャックの暗黒魔術が拘束を狙う。それを紙一重で防いだアリルティリアが見たのは、不気味に吊り上がる敵の口許――。
「あんたたちの狙いは、そっちのお裁縫妖怪だろう!」
「避けて!」
 気付いたときにはもう遅い。エナジーを吸い取る(多分)弾丸が猫又少女に向かう。悲鳴と共に丸くなった彼女の前に、鋭い声が割り入った!
「させません!」
 立ち塞がるのは流生だ。魔法少女の何たるかを己なりに把握した彼は、絶対に邪魔をされないお約束のシーンに移る。そう、変身バンク――!
「お裁縫妖怪さん! 今助けますよ!」
 流生の体が光を纏う。僅かに中空に浮かび上がると、マジカルな背景映像が流れ出した(気がする)。体の一部にカメラが寄って(いる感じがする)、白い芍薬の花弁が白無垢となって現れる。
 降り立ったのと同時に花鋏を構えれば、芍薬の魔法少女がそこに立っていた。
「大事な役目を担うその子を襲うのは、僕は許しません!」
 振り返って見遣った猫又少女が、彼を涙目に見上げているから、キラッと星が煌めくような笑顔を一つ。
「これでひとまず安心ですよ」
「チッ、仲間がいたかい」
 思わず舌打ちをするオー・チャックだが、二人に守る者がいるならば戦いは互角といえよう。睨み合いの沈黙を破ったのは、眉根を寄せたアリルティリアだった。
「こうなったらみんな、オーロラスティックを振って応援して!」
「うん!」
「ぼ、僕もですか?」
 知らないうちに全員の手元にサイリウムがあります。オーロラっていうくらいなのでめちゃくちゃ虹色に光っているゲーミングサイリウムが。
 猫又少女がめちゃくちゃ振るのに合わせて、流生もおずおずと振った。緑の光がアリルティリアに集まる。応援エナジー的なもので怠けエナジーに打ち勝つのだ。
「頑張れー! アリルちゃんたちー!」
「……やったぁ、力が湧いてくる! 行くよ!」
「えっ、は、はい!」
 アリルティリアが杖を振りかざしたのに合わせて、流生も手にある花鋏を構えた。必殺魔法、それも合体技だ!
「ナマケールよ、無に還れー!」
 直撃!
 光を纏う無数の花弁が収束し、生まれた奔流がオー・チャックを呑み込む。光の渦を叩き込まれ、見事な悲鳴を上げながら、彼女の体が傾いていく。
「覚えていろ、バーチャル魔法少女(ウィッチ)ども――!!」
 二人の魔法少女の合体技により、オー・チャックは光を放ちながら爆発した。これで世界を脅かす敵がまた一人、無へと葬られたのだ。
 きらきらと輝く花弁に照らされて、一仕事終えた顔のアリルティリアの横で、流生がぱちくり瞬く。
「……こんな感じで大丈夫ですか???」
 完璧でした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キトリ・フローエ
○◇
魔法少女なら任せて!
こう見えても経験は一応あるのよ
またあの名前を名乗る日が来るなんて思っていなかったけれど

――スターリーフェアリー・マジカルキトリ!(きらっ★)
あたしの星で、あなたの心を照らしてあげるわ!

ポーズを決めながら参上
周囲にキラキラの花びらを舞わせて(オーラ防御)
それっぽい演出もバッチリよ
あとは猫又の子にめいっぱいきらきらしてもらえるように全力で戦うだけね
大丈夫、あたし達はみんな貴女の味方
あたし達が全力で戦えるよう、たくさん応援してちょうだいね

軽やかに空を翔けながら、全力の夢幻の花吹雪で攻撃を
攻撃の花びらもそれっぽくきらきら光らせて
いっぱい来たら範囲攻撃で纏めて浄化してあげましょう


クロム・エルフェルト
○◇

――え。
着物で戦うのは、駄目?
形が大事?……ふむ。一理、ある。

えっと。控えよ、怠け者ども。
誰何の声を聞けば、「螺鈿九鈴鏡」を翳して焔で目隠し
焔の中で早着替え
フリフリ、ふわふわ
フリルいっぱい、ゴシックな服で参戦
憑紅摸の刀身に炎纏わせ、
名乗りは……。魔法少女、ナデシコ・フォックス。――推参っ。
ちょっと、違和感があるけど。がんばる、よ。

ちゃんと猫又の少女の目で視認出来る様、いつもよりゆっくり目の足捌きで距離を詰める
「流水紫電」のエフェクトも、キラキラしっかり発動させるのも忘れない
UC発動、マジカル抜刀術――スラッシュ……カメリアッ
まるで、幼い頃に戻ったみたいにドキドキする。これ、楽しい……!




「――え」
 事前の打ち合わせというか、何というか。
 ぱちくり瞬いて狐耳を揺らしたクロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)は、魔法少女をよく知らなかった。魔法少女とかいうリリカルマジカルな空気とは接点ゼロなので仕方がない。
 そのまま剣でズバッといくのが常道、みたいな雰囲気でいた彼女に、横合いから声を掛けたのがキトリ・フローエ(星導・f02354)だ。今はクロムの肩辺りにいる。
 何と言っても彼女は、魔法少女経験者なのだ。右も左も分からぬ初心者を放っておくことは出来ない。任せて、と胸を張って、丁度色々と相談に乗っているところだった。具体的には衣装とか変身バンクとか名乗りとかその辺。
 ――そして冒頭に至る。
「着物で戦うのは、駄目?」
「駄目ではないけど、魔法少女っぽくはない……かしら」
「ふむ。形が大事……と」
 型が大事なのは剣術もそう。そうか? そうだと思う。剣術と魔法少女を一緒にしたら多方面に怒られそうだけどそこだけ言えばそう。
「一理、ある」
 あっちゃったそうです。
 納得した狐の尻尾がもふもふ揺れた。ふかふかを見詰めていたキトリが頷いて、いつも通りのにっこり笑顔で羽ばたいた。差し伸べたちいさな手は、クロムを導くようにきらきら輝いている。
「あたしが先にやるから、続けてみて!」
 ここは魔法少女経験者が先陣を切るべきだ。何しろキトリは既に口上も魔法少女ネームも所持している。あのとき、一度限り名乗るはずだったその名を再び口にするとは、何と数奇な運命だろう。
 息を吸って、吐いて。少しの緊張と恥ずかしさを呑み込んで、ひとり小さく頷いたら、キトリの体はすいっと猫又少女の前に滑り込んだ。
 フェアリーの姿はとってもちいさい。故に振りかざした杖――この番組はエレメンタルロッドのベルさんの提供でお送りしています――と共に、大きく、少女の耳にも届くように叫ぶのだ。
「――スターリーフェアリー・マジカルキトリ!」
 くるくる回るマジカルロッドを映し、キトリにカメラ(概念)がズーム。キラキラ光る花弁が吹雪となる後ろ、光が集まってぽんぽんぽんっと弾ければ、完璧にキメたポーズの後ろでマジカルなエフェクトが散った。変身バンクは二度目以降はラスボス前まで短縮版です。
「あたしの星で、あなたの心を照らしてあげるわ!」
 ポラリスの輝きをその身に宿し、導きの魔法少女が今、ここに一条の光を灯す。
「あたしが来たからには、あなたたちの好きにはさせないわ、ナマケール!」
「チッ、現れたか、マジカルキトリ!」
 ファンシーな怪物たちはとてもノリが良い。これは多分どんなでも許される雰囲気だ。合わせてくれるタイプの奴である。
 ――さあ、続いて。
 後ろで見ていたクロムの瞬きに向けて、ちらっとキトリが目で訴えた。深く頷いて一歩を踏み出す。その足取りは既に剣に生きる強者のそれであった。
「えっと。控えよ、怠け者ども」
「まだいるのか!? 貴様は誰だッ!」
 どっちかというと何奴ッ!? 的な雰囲気ではある。BGM(概念)も和風な感じ。どこからともなく差し込んだ光を背負い、影がかかったシルエットは、和鏡を翳し顔を隠して立っていた。
 三味線の音(概念)と共に炎が舞い散る。培われた早着替えの技術は最早変身バンクと遜色ないスピード。逆光が晴れ、炎が開けたそこに立っていたのは、ゴシック系魔法少女だった。
 黒いフリルがたっぷりのドレスに赤い差し色が美しい。手にした刀も紅蓮を纏う、どこからどう見ても炎を扱うタイプの魔法少女だ。
「魔法少女、ナデシコ・フォックス。――推参っ」
 これでどうかな。
 完璧よ。
 アイコンタクトの間は一瞬だった。前に出るクロムの背を見詰める猫又少女に、ふわりと蒼光纏うキトリが近付いて、その手にそっと触れた。
「大丈夫、あたし達はみんな貴女の味方」
 少しでも安心出来るようにと、確かに笑みを刷く。
 ――だって魔法少女は、誰もを笑顔にする存在だから。
「あたし達が全力で戦えるよう、たくさん応援してちょうだいね」
「は、はい!」
 空へと馳せる妖精が手にした杖を翳せば、無数の花弁が光を反射して煌めいた。それだけで既にナマケールたちはだいぶ悶絶している。説明しよう! 美しいというのはそれだけで悪い奴に大打撃を与えるのだ!
 キトリの振り撒く光で足止めを喰らう彼らに迫るのは、いつもよりもかなり速度を抑えたクロムだ。飛び散る青のエフェクトが炎と混ざり合って強そう。
 何と言っても剣豪の一刀、基本的には目にも留まらぬ早さで繰り出されてしまう。気付けば敵が倒れていたとかそれこそ時代劇になってしまうのだ。
 故に見える速度での踏み込みになった。それでも抜刀術の威力は健在。キトリの花々がその後押しをすれば、弾けるように光が舞った。
「フルール・ド・リュミエール!」
「マジカル抜刀術――スラッシュ……カメリアッ」
 悲鳴と共に消滅していくナマケールたち。その一匹が悲鳴の中に高笑いを残す。
「覚えていろよ、魔法少女どもめ! すぐに我らの王が――」
「問答無用ッ」
「往生際が悪いわよ」
 べちん。
 勿論我らの王とかはいません。
 一つ息を吐いて、キトリは猫又少女に手を差し伸べる。輝く眸に上手くいったことを確信する彼女の後ろで、クロムは高鳴る胸に手を当てていた。
 まるで童心に返った心地。弾む心はマジカルリリカル魔法少女パワーを知り、新たな高揚を開拓した。
「これ、楽しい……!」
 まあね。魔法少女って、全ての幼女心を持つ者の憧れだからね。 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハイドラ・モリアーティ
【BAD】
▜▞▒▗▘▘▒▚▒▝▜▛▝▘▝░▛▙▒▙▛▒▛▚ーーーッッッ!!!
開幕【ξενογλωσσία】失礼!
リリカルでマジカルでマジ狩るな時間だオ゛ラァッッッ!!!
お砂糖とお菓子と愛と魔法と金とあと金と素敵なものでい~~ッッぱい!!
運行を邪魔する馬鹿野郎どもを悪党として大決定ッッ!!!
魔法少女エマちゃん華麗に参上ォッ!!

な~~んで23歳にもなって
こんなアホみたいなこと言わねえとならんのだ!!??
魔法少女採用基準大丈夫!?
ビジュアル的には問題なかろうがよ!!!
ああはい資料ね魔法少女はいずれ魔女になる漫画ね
なにて??
……エコーちゃん???
あの
うわ
グロ
ちょっと
魔法少女なんだが!!!!!????


エコー・クラストフ
【BAD】
魔法少女エマちゃん。……大丈夫、見た目的には遜色なかったよ
しかし……魔法少女って何? なんかファンシーなものなことはわかるんだけど
(ハイドラから借りた本を確認)なるほど

――地獄の底より這い出でて、蔓延る罪人、その尽くを血に染めよう
我が名は魔法少女ピュアインフェルノ(純粋な地獄)
殺し尽くしてやろう、オブリビオン共

開け、【底知れぬ処の穴】
見えるか? あの木に吊り下がったモノが
あれは灼熱の炎に焼かれた罪人さ。よく見ればうっすらと人の形が残っているだろう
そしてあそこのバラバラな肉が地獄の番犬に食い散らかされた罪人のパーツだ
お前たちもそうなる運命だ。さぁ、痛みと苦しみによってその罪を償え!




「▜▞▒▗▘▘▒▚▒▝▜▛▝▘▝░▛▙▒▙▛▒▛▚ーーーッッッ!!!」
 日本語に訳すと『リリカルでマジカルでマジ狩るな時間だオ゛ラァッッッ!!!』あたりになる。
 モジバケ上等のゼロイチエフェクトで、飛来したサイバーパンク魔法少女がめちゃくちゃなドス声で叫んだ。
「お砂糖とお菓子と愛と魔法と金とあと金と素敵なものでい~~ッッぱい!! 運行を邪魔する馬鹿野郎どもを悪党として大決定ッッ!!! 魔法少女エマちゃん華麗に参上ォッ!!」
 ハイドラ・モリアーティ(冥海より・f19307)は初っぱなから破れかぶれだった。
 だって無理じゃん。確かに見た目は永遠のティーンエイジャーだけど二十三だよ。そろそろ二十代も半ばにさしかかってくる頃合いだよ。繰り返した年齢で言ったら百年くらいあるからもう百二十三歳。拒絶と怒りが際限なく湧き上がってくるユーベルコードだけど正直この状況に対しては別に発動してなくてもめっちゃ拒絶してるし怒ってる。
「魔法少女採用基準大丈夫!?」
 ユーベルコードが使えて名前を名乗れたら全員魔法少女なので大丈夫です。
「魔法少女エマちゃん」
 繰り返しながらじっと見詰めるエコー・クラストフ(死海より・f27542)の眼差しが優しいのは、同情とか憐憫とかではない。
 純粋にハイドラが可愛いので全てよしである。基準は全てハイドラ故に、彼女が可愛かったり楽しんでいたりすれば大体の場合はいいねポイントが溜まります。溜まって良いことがあるかどうかはハイドラだけが知っている。よくないねポイントもあるけど今回は多分溜まらなさそう。ほんまか?
「……大丈夫、見た目的には遜色なかったよ」
「ビジュアル的には問題なかろうがよ!!!」
 もっとなんか心の奥底的なところが物凄く軋むのだ。リリカルマジカルやって良い歳は百十年くらい前に置いてきぼりにしてしまった。
 だが珍しく九つ首全ての意見が合致した魂からの叫びは、マジカルな空気とリリカルな敵に掻き消されて消えていく。悲しいね。
「しかし……魔法少女って何? なんかファンシーなものなことはわかるんだけど」
「ああはい資料ね」
 エコーは海賊だ。海賊は魔法少女を知らない。とはいえハイドラにはもう一から説明するようなメンタルは残っていないのだ。自分のネタを他人に説明するのと似た地獄の羞恥を感じる。
 故に懐から取り出したるは(一部の)国民に大人気の(深夜枠)魔法少女アニメのコミカライズ。少女がいずれ女になるように魔法少女もまた魔女になるタイプの奴だ。それは教えて大丈夫な方の魔法少女か?
 受け取ったエコーはぱらぱらと本を捲った。求めているのは物語の方ではなく魔法少女性なので、ちょっと分かればそれで良いというわけである。
「なるほど」
 ぱたん。
 本を閉じる音が清々しいくらい綺麗に響いた。嫌な予感は何となくする。見ろよあのエコー・クラストフの顔を。動揺が一切見られない。いつも通りやれば良いんだね、みたいな目をしている。
 取り出された剣が鈍く煌めいた。深海の色をした眸がいっそう強く孕む光の色を、ハイドラは知っている。
 復讐だ。
「――地獄の底より這い出でて、蔓延る罪人、その尽くを血に染めよう」
「なにて?」
 魔法少女にあっちゃいけない効果音(概念)が見える。
「我が名は魔法少女ピュアインフェルノ。殺し尽くしてやろう、オブリビオン共」
「エコーちゃん???」
 やっぱ駄目だったじゃん!!
 魔法少女を呼んだつもりが純粋な地獄が顕現していた。マジの純粋な地獄なのでこの場にいるオブリビオン勢力は誰も助からない。ごらんこの高熱の雨を。触れるとどろどろするだろう。綺麗な血だよ。
「見えるか? あの木に吊り下がったモノが。あれは灼熱の炎に焼かれた罪人さ」
「うわ」
「よく見ればうっすらと人の形が残っているだろう」
「あの」
「そしてあそこのバラバラな肉が地獄の番犬に食い散らかされた罪人のパーツだ」
「グロ」
 もうこれ魔女じゃない? 魔法少女経由しないで一直線に魔女になってない? ここだけBGMが禍々しい。もしかして魔女になるところだけ読みましたか?
 阿鼻叫喚の地獄はしかし、深海の如き静寂に満ちていた。嗚咽の一つすら許されない。なぜなら最早悔いることすらも遅いからだ。こんなところで故郷と親和性覚えたくなかったなあ、みたいな顔をしたハイドラ以外は、息を吸うことすらもままならないだろう。エコーの威圧感が凄いからだ。
「お前たちもそうなる運命だ。さぁ、痛みと苦しみによってその罪を償え!」
「魔法少女なんだが!!!!!????」
 あなたが教えましたが!?!?!?!?!?
 明らかに何かを間違えたままですがバスは定刻通りに運行予定です。でも敵はドン引きしちゃってるし青年誌レベルのグロさを誇る惨憺たる地獄絵図に泣いてる子まで出てきちゃってる。よい子に見せちゃいけない光景が繰り広げられ、子供に聞かせちゃいけない断末魔が響く中、大丈夫かなあ――とか振り返ったハイドラの目に映った猫又少女は、きらっきらの目でエコーを見詰めていた。
「ダーク魔法少女も……かっこいい……!」
「ああそう……」
 なら良いや。
 良いのか?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

救うとも

我が愛しの巫女が夜なべして作ってくれた
魔法少女衣装
着てみたらパッツパツであった
之ではいたいけな少女は号泣…私はやはり厄災であるのだ…
くぅ…巫女の期待に応えられぬ口惜しさ!

かくなる上は化術で似合の女姿に化ける!
噴火しそうな羞恥はサヨ…ちぇりぃへの愛で誤魔化し鎮静させる
カグラとカラスはこっちを見てくれないがそれでいい
見るな
結界だけ張って少女妖怪を守ってくれ

完璧なサヨの魔法少女っぷりに見蕩れるがいい

…遂に来てしまった

は、はぴねす!ぷろみす!!プリティ☆ゴッドかむりん 参上!

しにそうだ
私が

これもそなたらが彼女を襲うからだ
赦さんぞ!

合わせ神罰を喰らわせて、まじかる喰桜で悪を切断してくれる!


誘名・櫻宵
🌸神櫻

むむ!いけないわ、かむりん!
かぁいい子が悪漢的な奴らに絡まれている!
助けなきゃ!魔法少女の名が廃るわよ!

よーし!変身よ!

キラキラした桜吹雪と共に、春暁に桜花が咲き誇るように可憐に舞い降りる
『麗華』効果で魅惑のきらきら大増量

桜花絢爛、花魁魔法少女!ちぇりぃ☆ぶろっさりぃ!
可憐に華麗に満開よ!

投げキッスにウインクのさぁびす

次はカムイ!ビシッと決めて
…女の姿に化けるなんて!ずるいわかむりん!!
可愛すぎるわ魔法お姉様かむりん!

二人の愛の合わせ神罰魔法で悪いやつは木っ端微塵の微塵切りするわ
桜の神罰巡らせ
屠桜ステッキで衝撃波と共に薙ぎ払う

裁縫少女にしっかりばっちり
世界をちくちくしてもらうんだから!




 ――救うとも。
 救いを求める仔に背を向けるなど、朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)の矜持が許さない。でもそのために何か別の矜持は犠牲になった。
 だってしょうがないのだ。
 今カムイの隣でとってもきらきらした眼差しを向けている、想い通ぜし愛しの巫女である誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)が、夜なべして衣装を作ってくれたのだから。
 それにこれをやらないともう櫻宵はカムイとお昼寝してくれない。控えめに言って地獄だ。進んでも地獄だが。前門の魔法少女、後門の巫女。進退窮まって腹を括った神は、更なる追い打ちに沈んでいた。
 パッツパツなのだ。
 何がっていえば服が。櫻宵が徹夜で作ってくれたやつが。
 この事実から自分が一番目を背けたい。幼気な少女は号泣必至だ。いつかの罪業は眠りに就いたはずだけど、もうどう見ても色んな意味で厄災としか思えない。それに何よりこれでは巫女の期待に応えられないのだ。
 口惜しさと羞恥で今すぐ舌を噛み千切りたくなっているカムイの横に立ち、櫻宵の方はいつになくテンションが高かった。傾国の美女も逃げ出す美貌を彩る艶やかな桜がもう満開。初夏すら感じる風の中、花見シーズンもかくやとばかりの桃色が吹き荒れている。
 ノリノリであった。何ならここに来る前からこんな調子だった。二人分の衣装を拵えるくらい準備万端なのだから当然のことでもある。
「むむ! いけないわ、かむりん! かぁいい子が悪漢的な奴らに絡まれている!」
 きゅぴんと向けた指先は、今まさに何かぷよぷよの紫色したゼリーみたいな雑魚敵に囲まれている猫又少女を示していた。
「助けなきゃ! 魔法少女の名が廃るわよ!」
「う、うん……」
 助けたくないわけじゃない。
 助けたくないわけじゃないんだけど。
 まだ葛藤から抜け出せていないカムイを尻目に、櫻宵は地を蹴った。そのままシームレスに背景がリリカルに変わる。変身バンク中はそういう風になると相場が決まっている。
「よーし! 変身よ!」
 瞬く桜吹雪が、美しい彼の身を覆う。伸ばした手の先に現れたステッキ(刀)を握れば、溢れ出る花弁が髪を攫って結い直す。纏う衣装をなぞったそれらはうつくしき春色の打掛へと変わり、枝垂れ桜の翼が空へと伸びた。
 そこに在るだけで誰もを魅了する、紛うことなき花魁――そして魔法少女でもある――の姿が、春暁を告げて咲き誇る。
「桜花絢爛、花魁魔法少女! ちぇりぃ☆ぶろっさりぃ! 可憐に華麗に満開よ!」
 投げキッスとウインクはさぁびすだ。今回ばかりはお代は要りません。
 大人っぽい服装に少女のような雰囲気がミステリアス。人を惹き付けてやまない櫻宵の姿に、普段ならばうっとりと目を細めるであろうカムイも、今ばかりはそんなことは言っていられなかった。それはそれとして愛しい巫女の姿は目に焼き付けているけれども。
 バッチリ決めて! みたいな顔をされている。期待感が凄い。これほどの信頼、応えなくては彼の神と胸を張れなくなってしまうが、心拍数も跳ね上がっている。彼を前にしているときとはもっと別の感情で。
「かくなる上は――」
 舞い散る桜吹雪がカムイの体を隠してくれている。この刹那を使う他に機はない。そう、まるで変身バンクかの如く、その身が姿を変えた。
 化術。
 それは神や妖怪といわれる、人の領域を超えたる者が携える力。自在に姿形を変えることの出来るそれにて、生まれるのは一人のうつくしき女性――そう、朱赫七・カムイ feat.レディである。
 大噴火しそう。恥ずかしすぎる。もう爆発しそうだけど、それは櫻宵――否、ちぇりぃ☆ぶろっさりぃへの愛も同じ。というかそっちの方が強い。だから何とかなる。これはちぇりぃへの愛を証明するための儀式とか試練とかそういうのだから不可抗力だ。
 普段は見守ってくれるカグラとカラスが全然こっちを向いてくれないけど。びっくりするほど顔を背けてるけど。でも結界はちゃんと張ってくれるのは二人の良いところだ。
 そのまま見るな。見ないでくれ。カムイは心で念じた。ついでに猫又少女もこっちを見ないで欲しい。完璧すぎる魔法少女ちぇりぃ☆ぶろっさりぃに目を遣っていてくれ。
 祈りながら、カムイは練習したとおりのポーズを取って、叫んだ。
「は、はぴねす! ぷろみす!! プリティ☆ゴッドかむりん 参上!」
 しにそう。
 主にカムイの心が。
 体が震えそうになるのを必死に堪える彼に、櫻宵の視線が突き刺さる。そうして巫女は、可憐なる神の御姿に向けて、鋭く声を飛ばしたのだ。
「……女の姿に化けるなんて! ずるいわかむりん!!」
「えっ」
「可愛すぎるわ魔法お姉様かむりん!」
「えっ?」
 感動してた。
 凄く感動した。既に櫻宵ぷろでゅうす魔法少女プリティ☆ゴッドかむりんなのだが、もっと着飾りたくなった。でもそんな巫女の視線も神的には恥ずかしいみたいです。
「これもそなたらが彼女を襲うからだ! 赦さんぞ!」
 もう破れかぶれである。顔を真っ赤に染め上げたカムイの神罰が、彼のまじかる喰桜と櫻宵の屠竜ステッキに巡った。ちょっと名前が物騒じゃありませんか?
 ともあれマジカル神罰パワーが二人に至上の幸運を与える。桜色のキラキラ衝撃波が生み出されて、少女を襲う恐るべき敵は全て薙ぎ払われていく。
「裁縫少女にしっかりばっちり、世界をちくちくしてもらうんだから!」
 最後まで、ちぇりぃ☆ぶろっさりぃの決めポーズは完璧だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百鳥・円
【あめいろ】

キラキラジュエルでピカッと変身!
今宵纏うのはいっとうのアレキサンドライト!
宝石パワーをたーんと込めて
マジカルなまどかちゃんの登場です!

あら〜〜ふふふ!可愛い!
しずくくんもよ〜く見せてくださいな!

さてさてお仕事しましょーか
かじゅーのおねーさんは元々ウィザードでしたね?
その箒で飛ぶん……え?なんて?
全員乗るんですか乗れるんですか?

ティアを膝の上に抱えて腰掛けましょ
しずくくーん、落ちちゃダメですからねー?

最高のラジオが掛かって最高潮!
はーい、こんばんは。魔法少女です
ピンチとあらばお助けしますよん

そーれ!アレキサンドライトフォース!

二彩の宝石から放たれる蝶を操って
さっくり解決しましょーか!


岩元・雫
【あめいろ】

なにて???
本当に何?待って?
おれ何も説明されてない
魔法少女???
日曜朝は三本全部見る派だったから解るよ
嘘、解るけど分からん
現状が

逃げ…られませんよねー
クッソ斯う為りゃヤケだ
…えーっと

弾ける泡沫、流る歌!
魔法人魚のエントリーだ!

何か違うけど何でも良いか
……は?
いや流石に全員一緒に乗るのは…性別が…
…お、落ちても死なないから
おれこっち……

気分は魔女っ子のぶら下げるラジオ
ねこ連れて来た方が其れらしかったかしら
今日のおれはラジオです(?)
羞恥心を投げ打って、七色蝶々と唄紡ぐ
BGMは任せて頂戴
一夜の夢を謳ってあげる

飛んでる敵を誘惑して乗り物に出来たら
箒からそっと手を離す
…腕捥げるかと思った


ティア・メル
【あめいろ】

んにー難しいんだよ
口上?っていうやつ

じゃーん!
何様俺様ぼく様っ
魔法少女ティアメルだよん

わわっ
みんなとってもかぁいいね
雫ちゃんも一緒に行こう
うんうん、似合ってるよ

箒に乗るって魔女っぽいよね
眸がきらりら輝く
全員で乗るには少し短いかもしんないね

円ちゃん、お膝借りてもいい?
ありがとう
ぎゅーっとお膝の上に乗って抱きつく
雫ちゃん、だいじょうぶ?

やっほー!
魔法少女の一味だよ
ぼくの華麗な歌声で魅せてあげる
誘惑溶かして歌うは花飴
降り注ぐ花びらがしゃらしゃら舞う

みんなの技もすごいなあ
惚れ惚れしちゃうや
ぼくも負けないくらい歌っちゃおう

さくっと解決しちゃおうね
みなぎるパワー!ルラルラル!


歌獣・藍
【あめいろ】
流星の如く流れるナイフは貴方のはぁとを貫くわ!
お耽美魔法少女あゐ★ぽよよ!
…で、いいのかしら?

ふふ、みんな素敵よ
しずく、どこへいくの?
これからみんなで
『どらいぶ』するわよ!

パチンと指を鳴らせば
箒が現れる
えぇ、ご名答よまどか
さ!みんな
ーーー乗って!(1人箒に跨り3人を見つめる)
当たり前よぅ!
どうにかすれば乗れるわ!
しずくはぶら下がるの?

じゃあ行くわ…よッ!?(ギュンと勢いよく飛び出す箒)
まぁ!凄くスリリングね!
みんな落ちないように
捕まっていて頂戴ね!

到着!さぁみんな
一気に片付けてしまいましょう!
私は箒に乗って上から援護するわ!
…あら。
なんだか今日のナイフ
とてもキラキラしているわね…?




「キラキラジュエルでピカッと変身! マジカルなまどかちゃんの登場です!」
「なにて???」
 岩元・雫(亡の月・f31282)はまたぞろ引き摺られてきてしまった。
 彼はシリアスな場面ではいつだって引き摺り込む側にいる。だけどこと支離滅裂な文脈においては真逆の存在だった。何だか分からんうちにノリに流されてよく分からないところにいる。まるで海流に流されるクラゲの気分。クラゲと違うところは自分の意志で流されてるわけじゃないところだ。
 まあね。目の前で知り合いがめちゃくちゃキラキラの衣装に変身してたら、そりゃね。
 彼の眼前の百鳥・円(華回帰・f10932)は、それはもうふわふわのきらきらのゴシックドレスで立っていた。少女めいた悪戯な表情に、甘いフリルがよく似合う。けれど体のラインをしっかり見せる服と紫の差し色からは、妖艶な大人の女性の魅力も感ぜられる。胸元に光るアレキサンドライトが宝石パワーを巡らせて、ラグジュアリーな謎の魔法少女が爆誕していた。
 その隣で彼女の手を握っているティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)は、んにんにと口癖を漏らしながら、何やら考え事の気持ち。
 円とは真逆の白いロリータに、ピンクと青のリボンが煌めいた服。王道のふんわり系に、ニーハイのアシンメトリな意匠がちょっと辛めのアクセント。どこからどう見ても魔法少女の格好をした彼女は、しかし口上が思いつかなくていた。こういうのって考えるのが難しいのだ。少しの時間唸って、不意ににこっと笑った彼女がぴょこんと跳ねた。
「じゃーん! 何様俺様ぼく様っ。魔法少女ティアメルだよん」
 うーん、かわいい。
 これには隣の円もにっこり。雫は宇宙猫だ。何の説明もされないままじゃしょうがないね。
「流星の如く流れるナイフは貴方のはぁとを貫くわ! お耽美魔法少女あゐ★ぽよよ! ……で、いいのかしら?」
 多分一番乗り気の口上だった。ちょっと物騒ながら完全にキメてきた歌獣・藍(歪んだ奇跡の白兎・f28958)の衣装は、ここにいる誰よりも大人っぽい。藍色を基調にしたマーメイドドレス調、シンプルなそれに白が混じって、彼女の無邪気で無垢な雰囲気に大人の美しさをプラス。多分敵方から魔法少女に覚醒したタイプの遍歴を持っていると思われる様相だ。
 ここに三人の魔法少女が集った。互いの衣装に目を遣って、にこにこ笑い合えばいつものお喋りが始まる。
「わわっ、みんなとってもかぁいいね」
「あら~~ふふふ! 可愛い!」
「ええ、ふふ、みんな素敵よ」
「本当に何? 待って? おれ何も説明されてない」
 なんもわからんのは雫だけだった。さてじゃあ行きましょうか~みたいなノリになってるけど雫にはなんもわからん。いや、正確には分からないわけではない。
 彼は普通の男子高校生だった。それも日曜朝の三本立てをちゃんと見ているタイプの、サブカルにそこそこ触れている方だった。だから具体的に何をすべきなのか、じわっと正解が脳裏に染み出しているくらいのところを必死に押しとどめている。
 そろーっと鰭を翻し、三人の魔法少女から離れていこうと試みる。このまま良い感じに送り返してもらったら大丈夫だったりしないかな、とか考えていた。
 が。
「しずく、どこへいくの?」
「ほらほら、しずくくんもよ~く見せてくださいな!」
「んに、そうだよ。雫ちゃんも一緒に行こう」
 回り込まれてはいないが眼差しには捕まった。交代不能を悟って一度目を瞑った雫は、けれどどこかでこの事態を想定してもいた。
 海の色をした漣っぽい服を、水とかでちょっと気持ちキラキラさせる。そういうとこ真面目なのだ。
「弾ける泡沫、流る歌! 魔法人魚のエントリーだ!」
 何かプロレスの入場っぽくなったけど、この空間においては殴れば魔法少女なのであながち間違いではない。
 投げ遣りに叫ぶ顔にはもう諦めと羞恥と何かが混ざっていた。来ちゃった時点で魔法少女です。頑張ってくれよな。
「うんうん、似合ってるよ」
 へんにゃり笑ったティアの笑顔が眩しい。
「さてさてお仕事しましょーか」
 ぱんぱんっと二回手を叩いた円の合図に応えて、藍の指がぱちんと鳴った。現れるのは箒である。
 そう――言わずと知れた魔(法少)女の移動道具だ。
「これからみんなで、『どらいぶ』するわよ!」
「ああ、かじゅーのおねーさんは元々ウィザードでしたね? その箒で飛ぶんですか」
「えぇ。ご名答よ、まどか」
 颯爽とまたがる姿は流石本職というべきか。手慣れた調子で魔力を流せば、簡単に浮き上がったそれがエンジン(?)を吹かすように見える。
「箒に乗るって魔女っぽいよね」
 甘やかな飴色の眸がきらきらり。ティアはすっかり藍の姿に無垢な憧憬の眼差しを投げていた。藍が笑みを返せば、お姉さんと妹みたいでとても微笑ましい光景だ。
 きりっとした顔で全員を見渡した魔女はしかし、まるで決め台詞を口にするかの如く高らかな調子で声を上げてしまった。
「さ! みんな――乗って!」
「なんて?」
 流石の円も真顔でツッコまざるを得なかった。
 箒の耐荷重とか絵面がどうこうとか色々な問題がある。けれどもここで大前提として出さなきゃいけない問いはもっと根源的というか根本的というかそういうのだった。
「全員乗るんですか乗れるんですか?」
「当たり前よぅ! どうにかすれば乗れるわ!」
 意外と場当たり的な発言をする藍が、さあ早くって感じで急かしてくる。真剣に方法を考え始めた円の横で、唇に人差し指を当てて考え込んでいたティアが、ぱちりと瞬いて声を上げる。
「全員で乗るには少し短いかもしんないね」
 となれば。
 にこっと笑ったティアと、異彩の虹彩がかち合う。それだけで以心伝心、おんなじことを考えていると分かってはいるけれど、まるで確認するようにティアは小首を傾ぐのだ。
「円ちゃん、お膝借りてもいい?」
「んふふ、勿論ですよう」
「ありがとう」
 そうと決まれば迷いなくまたがった円は、膝の上にちょこんと座るティアに後ろから手を回した。
 シートベルトだー、と言ってははしゃぐ声。にこやかにそれを見詰める眸。悲しいかな、全員に失念されている事実がある。
 雫は男だ。
 いや全くそういう気はない。気はないけど性別が違うとやっぱりドギマギするっていうか水差したくないっていうか挟まる自分が解釈違いっていうか。
 色々なところで迷いに迷って、その手はそっと箒の外側に触れた。
「……お、落ちても死なないから、おれこっち……」
「あら、しずくはぶら下がるの?」
 ぱちくり瞬いた藍の声に、ティアと円の眼差しも彼を見る。確かに人魚の彼ではまたがれない。何やら挙動不審な雰囲気に目を合わせて首を傾いで、けれどまあ、彼の希望ならそれもいいのかな、みたいな感じで納得した。
 ともあれ大波乱の魔法少女一行の支度は整った。きりりと眉尻を持ち上げた藍は、気合い充分、四人の体重を支える箒へと魔力を流し込む。
「じゃあ行くわ……よッ!?」
 ギュンッ。
 俺に付いてこられない奴は置いてくぜ! みたいな勢いで箒が飛んだ。
「まぁ! 凄くスリリングね! みんな落ちないように捕まっていて頂戴ね!」
「はあーい」
 ぎゅっと箒を掴むのは円の役目。ふたりぶんの体を支えてくれる彼女にぎゅーっと抱きついて、ティアはにこにこ笑った。
 ――さて。
 自身と愛しいひとと運転手が守られたなら、残る問題は凄まじいGをモロに喰らっているであろう彼だ。ごうごうと肌を撫でる向かい風の中でも届くよう、ふたりは声を張り上げる。
「しずくくーん、落ちちゃダメですからねー?」
「だいじょうぶー?」
「だ、大丈夫」
 死なないのである。
 魔女っ子がぶら下げてるラジオみたいな感覚だ。危ないから置いてきたけどねことか連れてきた方がそれっぽかったかもしれない。使い魔だし。
 箒ジェットコースターは滞りなく目的地に向けて空を切り裂いた。凄まじいスピードにきゃあきゃあ声を上げながら、バスに最接近したところで、円とティアは目を合わせる。
 タイミングを合わせてジャンプ! 華麗に着地した白黒の魔法少女の華麗なコンビネーションに、思わず歓声を上げたのが猫又少女だ。
「やっほー! 魔法少女の一味だよ」
「はーい、こんばんは。魔法少女です。ピンチとあらばお助けしますよん」
 ばっちりウインク、決めポーズ。きらきら輝く眸には夢と希望が満ちている。
「さぁみんな、一気に片付けてしまいましょう!」
 音頭を取る藍の後方、未だ掴まったままの雫も魔法少女として崇敬の眼差しで見られています。
 凄まじく恥ずかしいがそれはそれ。今日の彼はラジオ故に何も感じぬ。誘惑の歌を紡げば溢れる幽世の極彩色。蝶が溢れ出せばビートは上々、鳴り響く最高のラジオに円の気持ちも最高潮だ。
 ドレスの裾をつまめば、現れるのは二つのアレキサンドライト。深紅と深蒼のそれらを空へと放れば、無数の蝶が極彩のそれへと混ざり行く。
「そーれ! アレキサンドライトフォース!」
 羽ばたくそれらが放つのは、うつくしい赤と蒼の弾幕。炎が融かし、氷が固め、まるで飴細工の如くきらびやかな戦いに、猫又少女はすっかり見とれている。
 そんな少女の前に、突然現れた紫の影。悲鳴を上げる彼女を襲わんとしたそれを、貫く刃がある。
「……あら。なんだか今日のナイフ、とてもキラキラしているわね……?」
 ぱちくり瞬く藍が生み出す数多の剣も、今日は魔法少女パワーで藍色と苺色に煌めいている。多分心にあるあゐの結晶です。元より魔法を使う彼女ならば空中からの支援はお手の物、飛び回る箒の上から弾幕を追加する。
 誘いの歌声と蝶、飛び交う剣、キラキラ輝くそれらに飴色の歌声溶かし、ティアもまた奮起していた。そのうつくしい弾幕に加える魅惑の歌声。煌めく沙羅双樹の花弁がしゃらしゃら舞えば、甘き死が彼岸の淵より手を招く。
 重なったひかりは何ともうつくしく、ティアの双眸を強く魅了した。負けないくらいに声を重ねて、四人にしか奏でられないユニゾンに、己のひとつを高らかに混ぜ込むのだ。
「さくっと解決しちゃおうね。みなぎるパワー! ルラルラル!」
 ――そうして地上が光に満たされた頃。
「……腕捥げるかと思った」
 飛行型の敵を捕まえて、その背で肩を押さえる魔法人魚が一人、いたとか何とか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
クラウン(f03642)と○

待たせたね
僕らを呼んでくれて、ありがとう
助けを求める君の声――、ちゃんと聞こえていたよ

ひらりフレアスカートの裾翻し
リボンをくるくるキメーポーズ
二人合わせてソルムーン!

転んだ彼女に白手袋で覆った手を差出し
真っ直ぐな世辞に恥ずかしさも何処かへ
――なんてことは無いけれど

フリルの海も着こなす僕
――ううん、ルナルナはかわいくて当然
だって僕だもの
ソルもかわいいよ

ルナルナは月を冠する魔法少女
使う魔力は月の雫
天の恵みは宛ら雨の様に降り注ぎ
身体に沁み入り力が溢れる

襲い来るマブシンジャーには回し蹴りをお見舞い

ドロワーズを穿いてはいるけれど
魔法少女のスカートの中を見るなんて最低だね


クラウン・メリー
まどか(f18469)と◯

助けを求める声が聞こえたのなら
俺達は火の中水の中だって現れるよっ!

フリルスカート摘まんでくるりと一回転
ステッキをくるくるキメポーズ!
二人合わせてソルムーン!

うんうん、まどか――ううん。
ルナルナとっても可愛い!
俺も――ソルもとっても可愛いっ!

ソルは太陽を冠する魔法少女
俺の魔力は光!みんなを明るく照らすよ!
ステッキに魔法を込めて
火の輪という名のプロミネンスを放ち
太陽のように熱く燃え上がらせてあげるっ!

まだまだお楽しみはこっからだよ!
ステッキを布で隠せば――あら不思議!
黒剣に早変わりっ!
悪い子にはちょっぴりいたーいおしおきが必要だよね?

ふふー、俺達二人揃えば怖いものなしだ!




 少女は逃げていた。後ろから追ってくる紫色の怪物たちを振り切るように。
 どれほどの時間が経ったかも分からぬまま、切れた息が足を縺れさせた。小さな悲鳴すらも喉を掠れさせるだけに過ぎず、立ち上がることすらままならない彼女は、ゆっくりと忍び寄る影の気配だけを感じて息を詰める。
「待たせたね」
 ――魔法少女を待ちわびる少女の元に降り立った影が二つ。逆光を浴びたシルエットのうちひとつが、穏やかな声で彼女へと歩み寄る。
「僕らを呼んでくれて、ありがとう」
「助けを求める声が聞こえたのなら、俺達は火の中水の中だって現れるよっ!」
 次いで溌剌とした台詞が注ぐ。きらきらと瞬くようなエフェクトを纏いしふわふわの衣服に、対照的な二人の性格。ここまで来たら皆まで言うな。
「助けを求める君の声――、ちゃんと聞こえていたよ」
 猫又少女は悟った――この人たちは、わたしが求めた助けなのだと。
 カッ!! 三つくらいのライトが不意に二つの影を照らした。
 愛らしいフレアスカートの裾が翻る。たっぷりのフリルに包まれた身にしかとリボンとステッキを握り締め、くるくると回してリリカルな変身バンク。よく似たシルエットに細かな意匠の違いが作画レベル(概念)の高さを物語る。どこで止めても崩壊しない二人のうつくしい顔立ちが、凜々しく光に照らされるのだ。
「「二人合わせてソルムーン!」」
 左右対称の決めポーズまで息ぴったり、太陽と月の力を得た魔法少女――クラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)と旭・まどか(MementoMori・f18469)の登場に、少女の後方にいた怪物たちがにわかにどよめきだした。こんなところで魔法少女と接敵するなどとは思わなかった、というような風情である。
 多分お互いのことは全然知らないんだけど、この辺のノリはお互い何となくやわっと合わせられるようになっているらしい。そういうわけで彼らが攻撃タイミングを待っているうちに、まどかは少女に手を差し伸べた。
「大丈夫?」
「は、はい、あのっ……ありがとうございます」
「もう平気だよ。後ろに隠れててね!」
 白い手袋に覆われた手を、少女がしかと握り返すから、少年としては中々に恥ずかしい格好へのあれやそれやもどこかへ飛んでいってしまい――はしなかったけれど。
 クラウンの方はこういうのに慣れっこだ。何しろ彼の生業はパフォーマンス。道化としてサーカスステージに立つときとさして変わらぬままに、にっこり笑って幾度も頷いた。
「うんうん、まどか――ううん。ルナルナとっても可愛い!」
「僕――ううん、ルナルナはかわいくて当然」
 だって僕だもの。
 三百六十度どこから見ても誰も否定できないくらい、ロリータファッションはまどかの容姿によく似合っていた。似合いすぎて初見で彼が『彼』だって見抜ける人はいないと思う。フリルの海も性別もなんのその、美しさとかわいさは全てを超越する魔法なのだ。
「ソルもかわいいよ」
「うんっ、俺も――ソルもとっても可愛いっ!」
 同じく衣装に身を包むクラウンもまた、笑顔も眩しい完璧な魔法少女だった。道化師のメイクが不思議なほどによく馴染むのは、彼の雰囲気が本物の太陽にも似た明るさを孕むからだろうか。にこにこ笑顔にビタミンカラーの差し色が華やかだ。
 互いの衣装の似合いっぷりにひとまず心を満たして、二人はくるりと敵へ向き直った。
「行くよ」
「覚悟してねっ、マブシンジャー!」
 今回の敵はマブシンジャーだそうです。
 ソルとルナルナはその名の通り、太陽と月の力を借りる魔法少女だ。表裏一体、互いを照らすふたりの力は、魔法に満ちて互いをより強化する。
 ルナルナの魔力は月の雫。月桂より降り注ぐ天の恵みが瞬く間に戦場を埋め尽くし、煌めく月の光のエフェクト(概念)と共に静かに身体へ染み入っていく。
 まどかが祈るように組んだ手を天に向けて開けば、それだけで全ての人々に漲る勇気が与えられるだろう。淡い光が背中を押すように、その身に満ちる力はより強く、はっきりとした輪郭を持つ。
 ルナルナが力を与えてくれたなら、前に出るのは光の魔力を持つソルだ。願いを込めて掲げるステッキに光が集まれば、月によって齎された輪郭をより強く、太陽の輝きが煌々と照らす。
 生まれた火の輪はプロミネンス。サーカスちっくなところがクラウンのメイクと相まってベストマッチだ。放たれたキラキラの炎がマブシンジャーを焼き払えば、浄化された彼らは光の粒子となって消えていく。
「まだまだお楽しみはこっからだよ!」
 くるり。
 ステッキを回して笑うクラウンめがけ、一匹の怪物が躍り出た。すかさず割り入ったまどかの鋭い回し蹴りに為す術なく吹き飛ばされたそれを、彼の不機嫌な眼差しが睨む。
「魔法少女のスカートの中を見るなんて最低だね」
「えっ」
「悪い子にはちょっぴりいたーいおしおきが必要だよね?」
「えっえっ」
 魔法少女はよい子の味方ゆえ、勿論ドロワーズは履いています。ということを鑑みるとなかなか理不尽な感じだった。乙女心は秋の空って言うからきっと正しい。
 マブシンジャーたちが狼狽えている間に、クラウンがステッキへと布を被せる。ととんっと先を叩いて一気に布を引けば――あら不思議! マジカルステッキは命を刈り取る黒剣に早変わりだ!
 ずばしっ。
 不届き者には成敗を。ざっくり切り裂かれて爆発したマブシンジャーの爆風を背に、二人は顔を見合わせた。
「ふふー、俺達二人揃えば怖いものなしだ!」
 ねっ、なんて笑うその顔に、まどかもちょっと笑い返したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

穂結・神楽耶
(魔法少女衣装:アイコン参照)

――天が喚ぶ
――地が喚ぶ
――人が喚ぶ
助けてほしいと声がする――

(なんかいい感じのBGM)
(焔粉によるキラキラエフェクト)

世界の平和を守るため
あなたの明日を守るため

魔法少女まじかるかぐや、ここに参上!
地獄の業火に変わって折檻です!
(背後でUCを利用した爆発)

お嬢様、ここはわたくしにお任せください。
あなたのような方が応援してくれるなら絶対に負けません!

そして覚悟はいいですか、ワルワル菌にやられた皆さん。
焔のきらめきに包まれて今までの行いを悔いなさい!

いざ必殺――
なんかいい感じの技名って考えるの難しいんですよアターック!!!

……これでよしっ!(カンペをしまう)




 ――天が喚ぶ。
 ――地が喚ぶ。
 ――人が喚ぶ。
「助けてほしいと声がする――」
 何やらちょっと重厚めなBGM引っさげ、焔と共に溢れる凜とした声。飛び散る焔粉の中を舞う一頭の蝶を追い、嫋やかな指先がひとつ、三味線の音と共にカメラ(概念)にインした。べべん。べけべん。
 どんどん早くなる拍子木の音と同時に、足許のファンシーなハイヒールがズームアップ。そのままゆっくりと持ち上がり、ふわふわふりふりの薄紅甘ロリと赤いリボンの意匠を映す。が、顔の手前でストップする。
 風がゆらぎ、焔蝶が横切る。ぐいっとカメラが引いて、そのまま抜き放たれた刀が光を反射する。
「世界の平和を守るため、あなたの明日を守るため。魔法少女まじかるかぐや、ここに参上! 地獄の業火に変わって折檻です!」
 ちゅどーん。
 魔法少女っていうかその手前にやってるタイプの特撮っぽい演出だ。この番組は沢山の炎蝶の提供でお送りしております。けれども、爆風を背に立つ穂結・神楽耶(あやつなぎ・f15297)は、そりゃもう王道の魔法少女スタイルで笑みを浮かべていた。
 神楽耶に羞恥などない。というかこういうのめちゃくちゃ楽しむタイプのお茶目な刀だった。だって少女だし。生まれて五百年とちょっとだけど永遠に少女だから年齢などまさしく些事だった。何なら生まれたときから少女だし。
 その視線が焔蝶を追う。中身は破滅の焔でドシリアスな感じのあれですが今回は演出要員です。ところでさっきからぐやちゃん何見てらっしゃる?
「お嬢様、ここはわたくしにお任せください。あなたのような方が応援してくれるなら絶対に負けません!」
「は、はいっ……!」
 元より守護の存在である神楽耶のきりっとした赤い眼差しに見守られ、猫又少女は素直に下がった。がんばれ、がんばれ、と控えめな声援が飛んでいる。それを楽しげに背に受けて、ずびしっと刀の切っ先を怪物たちに向け、曰く。
「そして覚悟はいいですか、ワルワル菌にやられた皆さん」
 今回の元凶はワルワル菌だそうです。
 ふわっとくるっと回れば焔が散る。さっきからずっと神楽耶の視界から外れないように結火が飛んでいるが、マスコットキャラクター的な感じだから問題はない。マスコットにしちゃ物騒だとかは言ってはいけない。
「焔のきらめきに包まれて今までの行いを悔いなさい!」
「ワ~ルワルワル! 魔法少女ふぜいが何を言うかァッ!!」
 なんかそれっぽい笑い声を立てた怪物が襲い来る。刀を構えた神楽耶は動かない。
 己自身を操る腕は、魔法少女であっても健在。刃に巡らせた焔の力が、カウンターの如く神速の一撃を放つ。
「いざ必殺――なんかいい感じの技名って考えるの難しいんですよアターック!!!」
 ここだけめちゃくちゃやっつけだ! あんなに口上考えたのに! でも敵は消し飛んだし焔と共に浄化されてシュワ~っと光になったので全く問題はありませんでした。魔法少女パワー。
 一仕事終えた顔で刃を収めた神楽耶は、こっそり結火から受け取った紙片をしまい込んだ。
「……これでよしっ!」
 あ!!! カンペだ!!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・くだち
へんなのがバスをかこんでいるんだ

すーって息をすいこんでおおごえをだすよ

「魔法少女はらぺこくだち はらぺこぱわーでやっつける☆」

キメポーズもするよ わたしのだいすきな魔法少女のまねだよ
くるんとまわって 天球儀をくるくる ウインクもすればいいかな
薔薇の娘のロサ 白薔薇と紅薔薇
魔法少女だから紅薔薇で つよく かれんにたたかうよ
紅薔薇のあかい薔薇をひらひらさせよう
薔薇をまといながらたたかうんだ 魔法少女だよ
あとはきらきらしたものがほしいな 天球儀をなげようかな
バスをおいかけているやつらはおいしい?
たべたいな だめかな 魔法少女だもんね
ひらひらきらきら キメポーズ

「ハートをたべちゃうよ☆」




 紫色でぷよぷよのへんなの。
 沢山のそういうのがバスを囲んでうにょうにょしている。何だか怖がっている中の女の子を助ければ良いらしいんだけど、こっちを見てくれなきゃどうにもならない。
 ので。
「魔法少女はらぺこくだち はらぺこぱわーでやっつける☆」
 すーっと肺じゅうに息を吸って、ぜんぶ吐き出す勢いの大きな声と共に、栗花落・くだち(maybe・f32550)ちゃん大参戦。びりびり震えるバスの窓と、一斉に振り返った敵と、ぱちくりその姿を見る猫又少女の前で、彼女の手の上にある天球儀が回った。
 魔法少女は全国の幼女(心を含む)の憧れゆえ、くだちにもだいすきな憧れの魔法少女がいます。キメポーズはそのまねっこ。なんといってもだいすきな存在だから、何も見なくてもばっちりだ。
 くるりと回れば天球儀がくるくる。ふわふわロリータに海の色した薔薇がきらり。ウインクすればBGM(概念)もすっかりリリカルマジカル魔法少女空間だ。
 そしてくだちはまだまだ変身を残しています。キラキラ輝く青薔薇がふわりと色を変えていく。薔薇の娘ロサのパワーで紅薔薇モードの可憐な魔法少女に大変身。ちなみに他には白薔薇モードがあります。今回だけかもしれない。
 紅薔薇は強く可憐な乙女のパワー。ひらひら舞い散る花弁を身に纏って、踊るようにきらきらくるくる。リリカルでマジカルな演出と力にすっかり浄化されていく敵たちを見ながら、くだちはちょっと足りないものに気が付いた。
 ひらひらに、ふわふわ。くだちは今どっちも持っているけれど、更にもう一つ、魔法少女といえばこれというものがある。
 そう。
 きらきらだ。
 どうしようかなって思いながら、見たのは手の中の天球儀。くだちが回るものだから、風を受けてひとりでにくるくる回っている。そうだ。これを投げよう。
 ぽぽいのぽい。ぴかっと光った天球儀が光を生んで、これでひらひらとふわふわときらきらが揃った。完璧な魔法少女になって、ますます浄化ペースが速くなっているところで、不意にくだちが自分のお腹に触れる。
 おなかがすいちゃった。くだちに襲いかかってきたりバスを追いかけたりする沢山の怪物たちがちょっとおいしそうに見えてきた。胃の奥がむずむずするみたいに空腹を訴えている。
 けれど今回の彼女は踏みとどまった。だって魔法少女だから。だいすきな魔法少女は敵を食べてはなかった。だから代わりに――。
「ハートをたべちゃうよ☆」
 ホップステップでひらひらきらきら。フリルが揺れてキメポーズ。
 浄化されていった怪物たちを見ながら、くだちもまた、猫又少女の憧れの魔法少女となりましたとさ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リア・ファル

オーダー了解!
『イルダーナ』で空から(魔法少女が)降ってくる!(お約束)

電脳魔砲少女、マジカル・リア
アナタの明日へナビゲートしちゃうよ!

普段通りの色使いながら、魔法少女っぽい格好へレイヤーを変更
(早着替え、変装)

それじゃあ、いくよ『ヌァザ』?
お供の猫が魔剣形態へと転身し、魔法詠唱を開始

【すべての魔術は三界に通ず】!
魔導書を束ねて、光の魔方陣を形成、ヌァザにパワーを集める

お裁縫妖怪さん、キミが望む明日はどんな明日かな?
思い描く夢と希望の力を束ねて、
七色の光魔法を撃ち放つ!

「ロックオン完了。今を生きるお裁縫妖怪の明日の為に!
フルバースト!」
(砲撃、全力魔法)




「オーダー了解!」
 魔法少女といえば空。空といえば魔法少女。ごめん後者はちょっと無理あったかもしんない。
 ともかくどこからともなく降ってくるのはお約束。今回のリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は、空駆ける愛機イルダーナの力を借りてそれを成し遂げた。
 サイバネティックな服装に身を包んだ少女が急降下。その最中に変身バンクの時間だ。ゼロとイチの演出に包まれた体は、なんとレイヤーを切り替えるだけで着替えが終わっちゃう。
 着地と同時にびしっとポーズ。飛び散る光も全部演出できちゃうのだ。
「電脳魔砲少女、マジカル・リア! アナタの明日へナビゲートしちゃうよ!」
 白を基調としたマーメイドドレスに、青いラインがサイバー感をもたらしている。体を覆ういつものスーツと同じ、全体的にタイトな印象ながら、ふんわりとした青のフリルが甘辛コーデのアクセント。いつでもどこでも飛んでいけるようなパンツルックが、愛らしさとスタイリッシュさを兼ね備えた、いわゆる『かっこかわいさ』みたいなものを演出する。
 きらきらサイバー魔法少女が爆誕したところで、肩に乗っかる猫をリアの眸がちらり。
「それじゃあ、いくよ『ヌァザ』?」
 にゃあと鳴いたお供も、今回はマジカル風味の味付けです。
 翳した手の中で魔剣へ変わる。けれど装飾がちょっとリボンとかで可愛らしい感じになっている。
 あとはユーベルコードと言う名の魔法を使うだけだ。後ろに庇った猫又少女を守るように、展開した魔導書から溢れ出る光が白くヌァザに集まっていく。
 後は、色をもらうだけだ。
 逆巻く風の中で、リアは問うた。
「お裁縫妖怪さん、キミが望む明日はどんな明日かな?」
「明日……」
 少しだけ少女が考え込んだ。ぱっと持ち上がった眸にもう不安の色はない。リアを真っ直ぐに見詰めて、彼女は大きな声で言ったのだ。
「ずっとずっと楽しくって、今日よりも楽しくって、幸せな明日です!」
「――うん、ありがとう」
 希望と夢に満ち溢れた幸せな日。いっとうの当たり前を守るのが、魔法少女であり人のためのモノであるリアの役目だから。
 ふんわりと笑って、彼女は大きく頷いた。束ねる力はこの世のどんな悪より強い、願いと祈りの七色。あっめちゃくちゃ本物の魔法少女っぽい。
「ロックオン完了。今を生きるお裁縫妖怪の明日の為に!」
 向けた剣の先から溢れる光に、しどろもどろの怪物たちがどよめいた。それを喰らったらまずいということは分かっているらしい。
 しかしこの世の悪は倒されるが運命。逃げ出そうと背を向けたとて、明日を切り拓く力には叶わない。
「フルバースト!」
 キラキラな光に撃ち抜かれ、悪役は浄化されていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レモン・セノサキ
まったくわけがわからないよ(棒読み)
魔砲じゃなくて魔法だったのか、それっぽく出来るかなぁ
「銀塊」を使って瞬時に武器を杖状に魔改造
「FORTE.50」、ケインフォーム!
空中浮遊で魔法少女感を演出しつつ遠距離から砲撃だっ

あ、え?名乗り?
やっべ考えてなかった、ええっとええっと
ま、魔砲少女マジカル・ルルモード、只今見ッ参ッ☆
……
ウワキツ!
精神が、精神が悲鳴を上げているぅぅ
身体は確かに少女なんだけどさぁ(れもんさんじゅうよんさい)

ああもう恥ずかしいったらありゃしない
ナマケモノな悪者はくずかごポイポイのポイだっ
ブルゥゥゥ……スフィアッ(はぁと)シューーートッ☆
ごっは、血反吐吐きそう

そこ●REC禁止ぃぃ!!




「まったくわけがわからないよ」
 むちゃくちゃ棒読みだった。
 感情がないタイプの外道地球外生命体より感情が籠ってなかった。なんたってこのレモン・セノサキ(金瞳の"偽"魔弾術士・f29870)純然たる魔砲少女である。ふりがなからイントネーションから魔法少女と一緒だったもんですっかり勘違いしてしまった。
 それっぽく出来るかどうかあんまり自信はない。というかやったことがない。でも大丈夫、世界には銃火器ぶっ放す魔法少女がいっぱいいるからね。
 ともかく魔法少女らしさを出していかねばならないとなれば、まずは武器だ。
 こういうのは大体ステッキと相場が決まっている。特に主人公はステッキが多いはず。魔法だし。
 ここに取り出したるはバトルライフル。驚異の三十八ミリ口径が唸る――のはいつもの話。今回は超弩級銃砲ではなくマジカルミラクルステッキです。
「『FORTE.50』、ケインフォーム!」
 それっぽく叫びながら形を変えれば何ともサイバーミリタリー系魔法少女といった感じ。更に空中を飛ぶように動けば尚のこと。砲撃にも蒼い光がプラスされて、何とも弾幕めいた美しさをプラスする。
 後はこのままいつも通りに殲滅すればよし! 一気呵成に畳みかけようとしたとき、不意にきらっきらした猫又少女と目が合ってしまった。
「魔法少女さんっ、お名前は?」
「あ、え?」
 やっべ。そういえば魔法少女って毎回名乗ってる。何にも考えてなかったという理由で、レモンはちょっと止まった。その後も三秒くらい間を置いた。
 だって――ねえ。
「ま、魔砲少女マジカル・ルルモード、只今見ッ参ッ☆」
 きっつい。見た目じゃなくてレモンの心がキツい。
 確かに十四歳の可憐な少女の見た目に魔法少女の名乗りもマジカルなエフェクト(概念)もリリカルなポーズもばっちりフィットしているが、彼女はヤドリガミである。重ねた年月と外見年齢が一致しないから先に進んでる心の方がしんどい。れもんさんじゅうよんさい的にはリリカルもマジカルも自分の領分じゃなかった。
 もうめちゃくちゃ恥ずかしい。この公開処刑を早く終わらせたい一心で、レモンは叫んだ。
「ナマケモノな悪者はくずかごポイポイのポイだっ」
 若干やけくそ。やけくそにならんとやってられんのは本当だった。FORTE.50(ケインモード)の切っ先に蒼き魔弾が収束するのを敵に向けて、解き放つ。
「ブルゥゥゥ……スフィアッ」
 ここではぁと。
「シューーートッ☆」
 血反吐が込み上げてきた。心から絶え間なく流れる血が。全然怪我してないのに胸の辺りが凄く痛い。頭も痛い。
 あっ今そこでカメラ回してる妖怪が視界の端に映っちゃった。
「そこ●REC禁止ぃぃ!!」
 データ消去、頑張ってください。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
おいコラ珍獣!
また性懲りもなく人を引っ張ってきやがって!
そりゃUDCアースの危機でもあるのは分かってるけどさ、
いくらなんでもアタシが出張らなくてもいいだろ!?
ほら周りにもいっぱいそう言う素質持ちがいるんだから!

……あ、しまった失言だった。
何張り切ってるんだよ他のヒトにも魔法少女への変身能力与えるって!?
バッカどう収拾付けろって言うんだよ!?
ちくしょう、こうなりゃ破れかぶれだ!
【ラジカル☆まじかる★チャームあーっぷ!!】

この変身した衣装についでにストールかなんか借りられると嬉しいね、
だってほら顔出し続けるの恥ずかしいじゃねぇか!
その後はスピーディに戦うけど、早く敵さん退散してくれー!?




 魔法少女免疫が存在するのかどうかはともかく、少なくとも数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)にはそういうのはなかった。
 というか未だに頭の上に乗ってるうさぎ……うさぎ? の正体も分かってない。あの魔法少女アニメによく出て来るタイプのマスコットキャラクターなのだけしか分からない。
「おいコラ珍獣! また性懲りもなく人を引っ張ってきやがって!」
「だって多喜ちゃん! UDCアースの危機でもあるんだよ!」
 かわいい声でうさぎが言った。
 それは多喜だって分かってるっていうか、そういうことで今回も頑張ってるっていうか、そういうところあるんだけれども。だからといって仕事は選びたいっていうか。そりゃ確かに幾多の魔法少女変身経験(?)はあるんだけど、それも割と主にこのうさぎのせいっていうか、本人にしてみれば結構やぶれかぶれみたいなところが大いにあるのだ。
「いくらなんでもアタシが出張らなくてもいいだろ!? ほら周りにもいっぱいそう言う素質持ちがいるんだから!」
 めちゃくちゃ逃れたい一心で叫んだ台詞が失言だったことに、一拍置いて気付いた。くるりと回りを見渡したうさぎに嫌な予感がしたのもつかの間。
「本当だ! よーし、みんなに魔法少女の力をあげちゃうぞ!」
 うさぎは張り切っていた。多喜が張り切って欲しいとは微塵も思ってない方向に。
「バッカどう収拾付けろって言うんだよ!?」
 リリカルマジカルな空気が全体を支配するより前に腹を括る。もうこうなったらやるしかない。何だかいつもこんな感じで最終的に変身している気がする。
 杖を掲げて叫ぶ声はもうなんか辛かった。
「ラジカル☆まじかる★チャームあーっぷ!!」
 リリカルでマジカルなBGM(概念)。光に包まれる体からライダージャケットが強制的に引っぺがされて、代わりにフリル満点のピンクなスカートがオン。輝く胸元のリボンにはハートの宝石があしらわれ、これが力の源であることを誰しもに悟らせる。
 さて。
 変身バンクが終わったは良いが、マジカル多喜は猫又少女を振り向かない。その代わりに後ろ手に掌を差し伸べて、言うことに曰く
「ストールか何か、ある?」
「ありますけど――どうしたんですか?」
「だってほら顔出し続けるの恥ずかしいじゃねぇか!」
 そうかなあ……みたいな顔をする猫又少女はまだ知らない。大人になってからこういうことを真面目にやるときのえもいわれぬ羞恥心を。
 ともかく渡されたストールをぐるぐる巻いて、謎の魔法少女感が強くなった多喜は、それはもう切実な勢いで敵をばったばったと倒した。
「早く敵さん退散してくれー!?」
 魔法少女パワーに群がる紫色したちっちゃいやつの狭間から零れる悲鳴が、跡形もなくなったそれらと共に止んだのは、果たしていつだったのか。彼女以外、誰も知らないことである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カツミ・イセ
僕の神様は言ったよ。『ノリにはノるが吉』って。
外見年齢的にもいけるでしょ!

空中浮遊しつつ。良い子の裁縫妖怪の声がする…助けを呼ぶ声がする…。
漣☆魔法少女『ヴィンチェレベレッツァ(=イタリア語『勝ち+美』=カツミ)』、ここに参上!
助けにきたよ!あ、長くて言いにくいなら、レベレで大丈夫!
本当の名を名乗らないのは、魔法少女の嗜み。

ふふーん、僕の『マーレピストーラ(=綿津見鉄砲)』をくらえー!(魔法の杖仕様にしてきた波濤王笏より、浄化属性でキラキラする海水発射)
この勢いで、悪い奴らはふっとんじゃえー!
あ、こっちこないでね!結界術(キラキラ☆虹色仕様)で弾いちゃうけど!

※あとで我に返って悶絶する…はず




「僕の神様は言ったよ。『ノリにはノるが吉』って」
 神様のお告げなら致し方ありません。カツミ・イセ(神の子機たる人形・f31368)は神の子機であるが故、告げられた言葉には基本的に逆らわなかった。
 まあまあ、外見年齢でいえば一桁台だし。寧ろこう、日曜の朝にやってるタイプの魔法少女って、一番年下の子はそのくらいの年齢だったりするし。
 見た目が大丈夫ならば後はカツミの心持ち次第。いける! と本人が思ったならいけます。殴って名乗ればオーケー出るタイプなので。
 とはいえノリにノるというのが神様の言葉なのでその辺はばっちりノっていきます。空中にふわりと浮かび上がって――そう、大体魔法少女は空を飛ぶものなのだ――紫色した怪物たちにいぢめられている猫又少女の方へと向かっていく。
「良い子の裁縫妖怪の声がする……助けを呼ぶ声がする……」
「そ、その声は!?」
 バッ!! と振り向く怪物たち。空を見上げる涙目の猫又少女。ふわりと着地した足から水が飛び散るエフェクトと、逆巻く水の背景(概念)の前で、カツミはしっかり決めポーズ。
「漣☆魔法少女『ヴィンチェレベレッツァ』、ここに参上!」
 イタリア語でヴィンチェレは『勝つ』、ベレッツァは『美』という意味になります。区切りはヴィンチェレ・ベレッツァということ。二つ合わせてカツミだ。凝ったネーミングに気合いの入り方が分かる。
 全体的には洋風のシルエットに、どこか中国っぽさを孕んだ意匠、ひらひらした羽衣が神依を感じさせる。どこからどう見ても水属性の魔法少女が、ぱっと猫又少女に手を差し伸べた。
「助けにきたよ!」
「ありがとうございます! えっと、び……ヴィ……」
「あ、長くて言いにくいなら、レベレで大丈夫!」
「はいっ、レベレさん!」
 和訳すれば実質本名なんだけど、本当の名前を名乗らないのは魔法少女としてのたしなみ。なぜなら魔法少女である間、普通の女の子ではなくなるからだ。そういうのが浪漫というもの。
 敵に向き直って、懐より取り出したるは波濤王笏。今回はマジカルステッキ仕立てです。
「ふふーん、僕の『マーレピストーラ』をくらえー!」
 綿津見鉄砲だってイタリア語にすれば魔法少女の必殺技っぽい。キラキラ浄化の光がエフェクトになってとってもリリカルだが、その威力は衰えたりはしていない。大量の海水が水鉄砲の如くぶつかるので、浄化されるエフェクトが出る前に水に飲まれていってる感もある。
「この勢いで、悪い奴らはふっとんじゃえー! あ、こっちこないでね!」
 来ないでねって言ったら来るのが悪役のお約束。ですが勿論カツミには届きません。虹色仕様のキラキラ結界術が彼女を守ります。その間にも溢れる水鉄砲が、どこまでも敵を押し流していった。
 ――はちゃめちゃ魔法少女を満喫した後で、我に返ったカツミに一つ、封印したい歴史が刻まれた……のかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

胡桃下・はるな
●アドリブ・連携歓迎
ん、ここ車内?
ああ、うん、こういうの知ってる
実際に見るとこうなるのね、そうかー…
…まあうん、さすがに放っておけない、か

悲鳴に席を立って、すたすたと歩み寄る
怖がっているでしょう、やめなさい
私?(ちら、と猫又少女に微笑んで
乗り合わせただけの…魔法少女よ!

【瞬間思考力】でそれっぽい口上と共に【存在感】全開の【FT】状態に変身!
くりこ・こくりこ・こりこくり!白面閃姫フォクシーテイル!
この子の夢は、壊させないわ!

【ダキニ・キー】を鞭状態にし【結界術】を展開
猫又ちゃんには近づかせない!
先に進むほどに困難…つまり厄が増すのなら、わたしの【指定UC】の本領よ!
必ず守ってみせるわ!




 満ちたマジカルミラクルな空気が、何となくここがどこなのかを忘れさせる感じ。
「実際に見るとこうなるのね、そうかー……」
 見たことある。知ってる。知ってるけれども。
 がたごと揺れるバスの座席に腰掛けて、黒髪黒目のごく普通の一般人――胡桃下・はるな(事件はヒロインと共に ~白面閃姫フォクシーテイル~・f31033)は眼鏡にそっと触れた。何と言ったって巻き込まれ気質、悲しいかな、もうこういうハイテンションな事態にはすっかり慣れてしまった。
 このまま平穏に事が進んでくれれば良いのにと思ったことは数知れず。しかしそれが成されたことなど一度もない。故に、今回も席を立つのは早かった。
「……まあうん、さすがに放っておけない、か」
 助けられる力があるのに、今そこで少女の悲鳴が上がるのを見過ごすなんて、人として出来ないことだ。故に凜と、今にも彼女に襲いかかろうとする紫の怪物たちへと声を投げるのだ。
「怖がっているでしょう、やめなさい」
 振り返った涙目の猫又少女が、潤んだ瞳ではるなを見上げる。めいっぱいに見開かれたその眼差しを受けながら、ゆっくりと前に進み出たその背は、まさしく救世主の如く。
「あ、あなたは……?」
「私?」
 おずおずとした問いかけに、はるなはちいさく笑った。
 ちらりと猫又少女を見遣る眸に、きらりと光る狐火の色。不敵な笑顔が、理知的な外見になぜだかよく馴染む。
「乗り合わせただけの……魔法少女よ!」
 変身バンクの時間だ!
 ひらひらと舞うのは蒼い炎。舞い散るそれらの奥で、懐から取り出された鍵がちかりと光った。
 中空に浮かんだ体がくるくると回る。巻かれたストールがふわりと外れ、緑の粒子に変わる。腰布と尻尾、それから狐耳にカメラ(概念)が向いて、一気にズームアウト。
「くりこ・こくりこ・こりこくり! 白面閃姫フォクシーテイル! この子の夢は、壊させないわ!」
 妖狐の力を完全解放。決めポーズと共に魔鍵が煌めいて本物の魔法少女っぽい。
 此度のはるか――否、フォクシーテイルの仕事は彼女を守ること。故に鞭状になったフォトンの鍵をしならせて、結界の如く張り巡らせる。
「猫又ちゃんには近づかせない! 必ず守ってみせるわ!」
「おのれ白面閃姫! 小癪なことを!」
 ボスっぽい奴が咆哮するのもフォクシーテイルの思うつぼだ。彼女の力は厄と不運を希望に変えるもの。彼らがより強大な困難を与えれば与えるほど、不屈の魂は煌めきを強くする!
 張り巡らされた結界の堅固さに、猫又少女はすっかり虜になってしまったらしい。
 きらきらと目を輝かせた彼女が、この後で狐へのなり方を調べだしたことは、もしかしたらフォクシーテイルすらも、知らないことなのかもしれなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
○◇

その子は絶対に渡さない…守ってみせる…!
……魔法少女…?

魔法少女らしくって事でミラ、アイ、クリュウの三匹の仔竜をマスコット的に連れて参加…。

【九尾化・魔剣の巫女媛】封印解放…。
魔法少女…マジカル九尾・璃奈…。
バスのみんなを守る為に参上…。…こんなんで良いのかな…?

「きゅ~♪」(ノリノリの仔竜達)

UCの効果で強化した黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、早業】により、黒い桜の花びらによる桜吹雪の様に呪力を放ってバスの周りの敵を吹き飛ばし、周囲の敵を【なぎ払い】…。

UCの効果による無限の魔剣を顕現させ、一斉斉射で敵を殲滅するよ…。

…今は格闘したり武器使ったりする魔法少女とかもいるみたいだし、良いよね…




 魔法少女。
 それは全国の幼女の心を持つ者の憧れである。故に多分、UDCアースあたりの文化に多少詳しければ聞きかじったことくらいはあるだろうし、それっぽさを演出するのも出来ると思われた。
 雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)もその辺の演出についてはちょっと分かっていた。なので一緒に暮らしている仔竜三匹――名前はミラ、アイ、クリュウ――を連れて来ている。魔法少女と言えばマスコットキャラクターだ。璃奈と生活を共にする家族は沢山いるのだけれど、その中で魔法少女と一番一緒にいそうなのは、この三匹だったのだ。
 ともかくびしりと、敵に向かって決めポーズ。仔竜たちも各々きりりと定位置につきました。定位置っていうか半ば即興だけど。その辺りの呼吸は一緒に暮らしている者同士、ばっちり連携が取れています。
「魔法少女……マジカル九尾・璃奈……。バスのみんなを守る為に参上……」
 闇属性魔法を操る無口系のキャラだ! 敵によって薄暗い過去とかを植え付けられちゃった方の背景がありそうな雰囲気が、より物語を深くする。恐らく放映されればキーキャラの立ち位置になるだろう。
 猫又少女の視線がめちゃくちゃきらきら輝いているのが分かる。格好いいタイプのダークヒロインも魔法少女の醍醐味だからね。
「……こんなんで良いのかな……?」
「きゅ~♪」
 独りごちる璃奈に向け、かわいい仔竜たちがうんうん頷いてはしゃいでいる。とってもノリノリだった。子供は楽しいところが好きだからね、みんなで遊べるのは楽しいよね。
 さて、ばっちり決まったので後は仕事の時間。
「その子は絶対に渡さない……守ってみせる……!」
 強い意志と共に纏うは闇の力(という名の呪詛)である。闇の力に光の心を持つ魔法少女璃奈(という雰囲気)の手の中で、薙刀の形をした呪槍が黒き桜へと変貌する。桜吹雪の如き呪力が拡散されて、バスに取り付くなんか紫色をしたちっちゃい怪物たちを吹き飛ばす。
 ころころと転がっていった彼らが体勢を整えるよりも、璃奈の次の一手が早い。
 魔剣と親和する血脈が、呼び起こすのは無数の呪われし刃。一斉に打ち出されたそれに貫かれ、黒いエフェクトと共にぽこぽこ消滅していくそれらを見送って、璃奈はぱちくり瞬いた。
 果たして剣で戦うのは魔法少女の概念的にいけるのだろうか。魔法っぽかったけど最終的には物理的な力で解決してしまった。
 まあ、でも。
「……今は格闘したり武器使ったりする魔法少女とかもいるみたいだし、良いよね……」
 マジカル武具は全て魔法少女(広義)の領分ゆえに、大丈夫です。

大成功 🔵​🔵​🔵​

草守・珂奈芽
魔法少女、つまりヒーロー!
期待しちゃうし憧れるよね、分かるのさ

翠護鱗からの結晶を空から雨あられ!
更に草化媛と精霊さん達で〈属性攻撃〉を込めて、バスの周りで渦を描くように〈範囲攻撃〉して視界を晴らすよ
虹のキラキラが不安を照らしますようにってね
「さあ前を向いて手を伸ばして!独りじゃないよ!」
かっこつけて、でもホントの気持ちで叫ぶのさ
お節介でもさ、素直な気持ちに応えて助けるのがヒーローって信じてるから!

それでも近付く敵には腕の鱗での防御と神通力の〈衝撃波〉で対抗するよ
接近戦は苦手でも翼と速さでホンロウして、その隙に結晶でも攻撃
そしてなにより笑顔は忘れないよ
希望を捨てずに笑えば力だって湧いてくるのさ!




 魔法少女――。
 いついかなるときも世の少女たちの心を助け、その憧れを一身に受ける、弱きを助けて強きを挫く者。
 それはつまり、少女たちにとってのヒーローなのだ。
 期待も憧れもよく分かる。だから草守・珂奈芽(意志のカケラが抱く夢・f24296)は、正義の味方としてその心に応えるだけだ。
 紫色の怪物たちが、猫又少女ににじり寄る。そのうちの一匹がぴょんと彼女に飛びかかろうとしたそのとき、空から降り注いだ翠色の光が貫いた。
 無数のそれらが瞬く間に怪物たちを一掃していく。地面を穿つ結晶に、思わず猫又少女が顔を覆ったそのときだ。
 煌めく風が優しく彼女の頬を撫でる。ふと強ばった体が緩んで、おずおずと持ち上がった眸に映るのは、雨上がりの如きおおきな虹だった。
 眸すら輝くような美しい蒼天。
 そのあわいに立った珂奈芽の翠の髪が揺れる。ぱっと差し出した掌に、猫又少女を助けるという確かな意志を込めて。
「さあ、前を向いて手を伸ばして! 独りじゃないよ!」
 ちょっとだけ格好をつけてみせて。
 けれどそれは全て、本当の気持ちだ。泣いて俯く女の子を放っておくなんて、正義の味方じゃない。ヒーローを求める誰かがいるならば、ちっぽけな弱い体でだって飛んでいく。
 お節介だと言われようとも、誰かに後ろ指を指されようとも。誰かが泣いて、誰かが求める、その素直な気持ちに応えて笑うのが、ヒーローというものだ。
 少なくとも、珂奈芽はそう信じているから。
 思わず伸ばされた猫又少女の指先は、もう先の涙を忘れている。きらきらと輝く蛍石の彼女が、あまりにも真っ直ぐで、うつくしくて。
 ――その後ろから飛びかかる影に、思わず叫んでいた。
「危ない――!」
 けれどそれすらも、珂奈芽にとっては見えていることだ。
「大丈夫」
 腕を翳せば鱗が応える。硬い音を立てて弾かれた怪物を引き離すように、生まれた衝撃波が体を吹き飛ばした。
 次いで広げる翼が空へと伸びる。飛び上がった珂奈芽の速度が、怪物の追随を許さない。弱く脆い体は、きっとその拳に当たるだけでも致命となりうるだろうけれど、彼女には空へ舞い上がるための翼と速さがある。
 彼女を捉えようとする拳を華麗に避けて、お返しの結晶が貫く。苦悶する怪物の咆哮に向けてもう一撃。例え爪がその身を掠めそうになったって、珂奈芽の目から闘志は消えず――。
 そして、笑みも消えたりなんかしないのだ。
「希望を捨てずに笑えば、力だって湧いてくるのさ!」
 だから――さあ。
「笑って!」
 伸ばされた手に応えるように、猫又少女は大きく頷いて、笑みを浮かべたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
わたしは望む……(変身バンク付でユーベルコード発動)愛の魔法少女、ウィッシーズラブ!

ナマケール!ステキなお裁縫妖怪さんを襲うなんて許さないのです!

お裁縫妖怪さん、もう安心なのですよ。愛を知らないナマケールなんかに魔法少女は負けないのです!

アマービレで猫のシュレディンガーさん(よくいるマスコットキャラ設定)を呼んで一緒に戦うのです。強化魔法とかで支援してもらいましょう。

愛の力で赤い光がキラキラ。第六感と野生の勘で相手の動きを見切って踊るように戦えばお裁縫妖怪さんはもっと喜んでくれますよね。

せかいに響いて、愛の魔法!ウィッシーズ・ラブハートシュート!(ユーベルコードではなく必殺技風の全力魔法)




 きらり。輝く一等星の煌めきを孕み、七那原・望(封印されし果実・f04836)はかつりと地面を踏んだ。
「わたしは望む……」
 目隠しによって謎めくその姿。胸の前で組んだ指の間から、きらきらと漏れ出でる薄紅色の光。いっとう瞬く桃色こそは、そう――望の心を埋め尽くす、とめどなき愛の感情!
 輝く光が体を覆う。中空に浮き上がると同時に背景(概念)はリリカルな演出に切り替わります。くるくると回る体に薔薇の花びらが集まって、きらめくふわふわシルエットが映し出される。
 ぽわん! とマジカルなSE(概念)と共に、紅色の衣装が露わになった。望の手元に現れるのは巨大な鎌――ファンシーな形とお花の意匠が魔法少女感を持つ――である。それをくるくると回し、びしっと敵に指先を向けたら、一カメ二カメ三カメで変身バンクが完了します。
「愛の魔法少女、ウィッシーズラブ!」
 ハートのエフェクトは愛の証。愛しき人と友達を胸に抱く限り、望――ウィッシーズラブは無尽蔵の力を得る!
「ナマケール! ステキなお裁縫妖怪さんを襲うなんて許さないのです!」
「来たな、ウィッシーズラブ! 今日こそお前も怠けエナジーに浸してやる!」
 今日こそっていうか今日しか会ってないっていうか。でもここはファンシー空間なのでそういうことになる。
 目隠しをした望が、それでも背に隠した猫又少女を振り返る。
「お裁縫妖怪さん、もう安心なのですよ。愛を知らないナマケールなんかに魔法少女は負けないのです!」
「は、はいっ!」
 すっかり前向きになった彼女は、新たな魔法少女の到来にすっかりのめり込んでいるっぽい。ここは更に喜んでもらわねば。
 白いタクトをそれっぽく振る。りんりん鈴の音が鳴って、現れたるは猫のシュレディンガーさん。今回のマスコットキャラクター的位置づけになりますので、勿論支援をしてくれます。強化の魔法が漲れば、愛の力と合わせてもう望は無敵なのだ。
 赤い光が舞い散れば、鎌が踊って愛の力でナマケールが浄化されていく。頭と胴体がお別れする前にシュワ~っと光の粒子っぽくなって消えていくので全く問題ありません。軽やかなステップに猫又少女はもう夢中だ。望のことをめちゃくちゃ崇敬の眼差しで見ている。
 ――さて、そろそろ決着の時間。ラブパワーが心に満ちたところで、白いタクトに集まった紅色のオーラが解放される!
「せかいに響いて、愛の魔法! ウィッシーズ・ラブハートシュート!」
 全力の一撃は本物の魔法によって――。
 断末魔と共にしゅわしゅわ消えていったナマケールたちの先に世界のほつれが見えて、すっかりリリカルマジカルになったバスは、波乱の運行を終えたのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月15日


挿絵イラスト