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大祓百鬼夜行⑮〜誰がために黄金は輝く

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行 #5/12以降に執筆開始を予定

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#大祓百鬼夜行
#5/12以降に執筆開始を予定


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「皆様、妖怪親分のお一方が、発見されました」
 グリモアベースへと集った猟兵たちへそう告げる、グリモア猟兵オクタ・ゴート(八本足の黒山羊・f05708)。しかし、その声色は沈んでいる。

 カクリヨファンタズムとUDCアースを巻き込む戦争、その最大の敵である大祓骸魂。既に「忘れ去られた」ことで、グリモアを以てしても察知できないという難敵。
 だが、二つの世界を守りたいという妖怪たちが、その身を骸魂――オブリビオンに渡すことで、敵への道筋を示してくれた。
 妖怪たちを束ねる妖怪親分たちもまた、猟兵たちに世界を託し、骸魂を身に宿している。
「西洋親分、『しあわせな王子さま』。彼が、今回の目標です」
 周囲に幸福をもたらす妖怪として多くの妖怪達に慕われてきた、西洋妖怪たちの筆頭である親分。
 彼は、一時的とはいえ骸魂を抑え込むことができている。こちらと、明確な意思疎通ができるほどに。

 しかし。彼はこちらを本気で殺しにかかってくる。
 きらびやかなる、黄金の技を以て。
「骸魂を取り込んだ「親分」が、本気で戦い倒される。その結果虞が薄まることによって、敵の首魁への道が開かれる。これは必ず、行われなければならない」
 そう。猟兵たちへ全てを託した妖怪たちの筆頭を、これから我々は倒さねばならない。
 二つの世界を守るため。彼らの故郷を救うために。

 今回の目標は、強大な虞を放っている。それは、窮地に立たずとも真の姿で戦う事ができるほどの圧。当然、親分という肩書を持つに相応しい実力を持っている。
 相手が本気では意味がない、猟兵たちもまた、全身全霊で戦う必要がある。惜しみなく真の姿を見せ、戦う必要が。

「彼らの覚悟に、応えねばなりません。――皆様、どうか、勝利を」
 深々と頭を下げる山羊頭。同時に転送が始まる。
 黄金の元へ。心優しき、王子の元へ。


佐渡
●今回のシナリオに関する注意事項
 このシナリオは「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「大祓百鬼夜行」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 佐渡と申します。今回のシナリオは、大祓骸魂への道を紡ぐため、西洋親分である『しあわせな王子さま』を倒すシナリオとなっています。
 今回の戦場では窮地でなくとも『真の姿』で戦う事ができます。敵は強大であり、惜しみなく『真の姿』を戦うことで、作戦を優位に進めることができます。
 皆様の全力の戦いを、そして敵へと向かう覚悟を、全力で描写させていただきたいと思いますので、何卒よろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『西洋親分『しあわせな王子さま』黄金形態』

POW   :    あたたかな光
【黄金の光】が命中した部位に【「理性を破壊する程の幸福」】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD   :    しあわせな光
【黄金の輝き】を解放し、戦場の敵全員の【「不幸を感じる心」】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。
WIZ   :    黄金をささげる
自身の装備武器を無数の【黄金】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵たちの訪れとともに、鳥たちが飛び去ってゆく。その口元に、美しい黄金を塗しながら。

 ツバメさん、黄金を持っていっておくれ。
 ぼくには大切な役目があるから。

 眩い輝きを放っていたのであろうその体は今や痛ましいほどに削り取られ、暗色の石の肌を晒し、剥き出した鉛色の心臓は静かに光っている。
 優し気な青玉の瞳が、猟兵たちに向けられる。もう一方の瞳の玉を失った、虚ろの孔も同じように。

 溢れ出す怖気。場を満たす、名状しがたき虞。
 言葉なく、ただ猟兵たちに向けられる猛烈な圧。
 だが、同時に。彼は告げている。

 どうか、ぼくらの世界を救ってくれと。
 声なくとも届く、信頼が。

 世界を救うための戦いが、はじまろうとしている。
サンディ・ノックス
真の姿:金眼の赤い竜人(詳しくはキャラクターシートに活性化しているイラスト参照いただけると嬉しいです)

王子の覚悟に応えるよ
俺にできること…それは全力で戦うこと

真の姿に変身したらすぐ、UC青風装甲発動
加速して空を駆け、剣を構え空から王子に向かって急降下
ありったけの力をぶつける
仮に回避されても攻撃開始位置を変更して何度でも速度を乗せた攻撃を仕掛けるよ

相手から向けられる光は攻撃行動に気付いて咄嗟に躱すけれど、躱しきれなかった場合はその効果に警戒しておく
続いて起きる自分が壊れそうな幸せ…俺の望む愛するヒト達との永遠の日々の光景は「光の後に起きたことだ、攻撃だ」と判断して、剣を自分の足に突き刺し振り払う




 差し出される黄金の剥がれた石の刺剣。応じるように歩みだし、剣を構える猟兵が一人。
 覚悟に相応しいのは、等しき覚悟。

「――風よ」
 口の中だけで呟く言葉は、彼の身を包む瑠璃色の嵐に掻き消える。だが、その嵐に向けて王子が放つ金色の閃光は帯となって彼を包もうと猛追するだろう。うねりを上げ、不規則な軌道は音さえ置き去りにする。
 天へと逃れ、蒼の嵐を切り裂き現るのは、紅蓮の翼。
 サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)はその身を鎧に包む。そこに、穏やかな青年の表情はもうない。紅と黒、暗夜に潜む龍の牙、黒き騎士たる本当の姿。
 一度、大きく羽搏くと、墜落するような格好で彼は吶喊した。
「う、おオォォッ!」
 咆哮を上げ、自らを急かす。その度彼が帯びる瑠璃色の風が更に唸り、彼の速さとそれに伴う威力を増す。だが同時に王子の放った黄金の輝きは、彼が近づけばより眩く、強いものになってゆく。
 刃が王子を貫くその寸前で、彼の脳裏に描き出された光景。
 僅かに逸れた狙いが地面を深く抉り、騎士は地面に膝を付いた。

 ――その姿を、王子はただ静かに見つめる。過ぎたる幸福は往々にして毒となる。だがそれでも、せめて最期には穏やかな光を。
 刺剣が、未だ動かぬサンディの額を狙い、そして。
 その鉢金に罅を入れた代価に、かつて黄金だった刃は容易く圧し折れる。寸前で刃を掴んだのは、歯を剥き出しながら、嗤う騎士。もう片方の手に握られた自身の刃で、自身の腿を貫きながら。
「どうして、幸福の中から出たんだい」
 静かな、問い。それは動揺ではなくどこか悲哀に満ちたものだ。禍き力に身を包み、自らを傷付けながらでも戦うその姿は、幸福とは程遠いものであるがゆえに。
 しかし、彼は答えなかった。間近に迫る彼の前から天へと再び舞い踊り、同時に彼は空を蹴った。
 光さえ追い越す疾風。蒼と紅を纏った黒剣が、王子の虞を切り裂いた。

 彼が見たのは、遠き夢。愛する人と共に、平穏な永遠を生きる彼方の理想。
 だが、それは目の前の光によって齎されたものに過ぎないと、容易に気付けた。
 遅れて感じる熱と痛みに顔を顰め、足を抑えながら。サンディは僅かに軋む王子への答えを返す。
「身を削ってるのは、お互い様じゃないか」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・レヴェリー
黄金……わたしの元になった絵本の少女に、憧れていた時を思い出すわ
でも、いいの。誰もが憧れる『黄金』でなくても、確かに求められた『真鍮』がわたしよ

背中から生え、棺の別れ花のように咲き乱れるホルン。丈の長いドレス……わたしの真の姿はあまり動き回れないけれど……それに見合うものはお見せするわ
この真鍮のホルン達は『友想器』。音色によってお友達の力を借りるもの
そしてその性質はこれが形を変えても健在よ

燃え上がる焔のような、水の波濤のような、煌めく星のような。花弁の擦れ合う旋律は【白昼奏でる真鍮の夢】……真鍮だって、黄金に負けないんだから


……もしもあなたが、この場所で尽きても……わたしは、あなたを忘れないわ




 幾つかの剥がれ落ちる黄金。それでも王子は、なおも猟兵たちへと向き直る。虞で未だ濃密に、場を満たしたまま。

 アリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)。戦場へと降り立つとともに、彼女は静かに瞼を閉じた。そして、たおやかな光がヴェールのように彼女を包むとともに、その装いは大きく変化していた。
 シックな丈の長いドレス。その背から芽吹き、咲く花のように真鍮の大ぶり管楽器が溢れ出す。数多のベルが顔を覗かせ、向日葵のように王子へと揃う。
 その様に相対するように、折れたはずのレイピアが浮き上がったかと思えば、風と共に黄金の花弁へとその姿を変えた。

 ――二人は優美な一礼を交わす。それは相手への礼節であり、刃を交える合図でもある。けれど、すぐに始まった二人のそれは、闘争と呼ぶには余りにも美しかった。
 黄金の花弁が舞い踊り、応じるように奏でられる全身を震わすような旋律。
 花が鋭き刃となってアリスを狙えば、獅子が焔の盾となり、白鯨は波の壁を生む。その間に星降るように降りかかる爪激は、大輪の黄金が遮った。
 まるで絵本や絵画を切り抜いたような、そんな光景。けれど、それは確かに間違いなく死闘だった。
 誰もが憧れる『黄金』と、確かに求められた『真鍮』。
 不変で輝き続ける『黄金』と、変化し美しくなる『真鍮』。
 決して、それは甲乙を、優劣をつけるべきものではない。それでも。

「なんと、すばらしいのだろう」
 『黄金』は、胸を打たれた。
 それは、育まれていく友情への賛美。奏でる音色から伝わる、彼女の経てきた歩みへの感動。その鮮やかな彩りに、彼は、こころから魅せられていた。

 真鍮が、黄金を弾く。終曲へと向かう転調に、彼女の友は息を合わせる。
 一瞬のようでもあり、悠久にも似た演奏は。午睡の中で揺らぐ夢のように、穏やかに終わりを告げた。
 虞は削れ、骸魂と共に、王子の頬には一筋の疵が走るだろう。それは、さながら涙のように。
 意識を失う彼へと、彼女は静かに声を掛けるだろう。
「……わたしは、あなたを忘れないわ」
 ここが本当に終曲だったとしても。彼の物語に幕が下りたとしても。
 彼の戻る世界と、『しあわせの王子さま』を守るための言葉と、覚悟。

 ――果たして、王子がそれを聞き届けたかは。彼に寄り添う燕だけが知るだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎
真の姿『煉獄焦土』橙髪の人間

なるほど、相当な覚悟ときた。なれば、わしも答えよう。

性質的には同じよな。互いに『運気』に作用する。
ああ、わしは不幸とは思っておらぬよ。もとより戦場が生きる場だからの。

『運気』は差し引き0、互いに『普通』で落ち着くか?
だが、差は出てくる。…わしのほうは、生命力も吸収しておるからな!
それは明確に動きに出よう。そうなれば、一に刺突、二になぎ払いによる二回炎属性攻撃よ。怪力でもあるから、衝撃はいかなるものかの。




 なおも王子は止まらない。黄金は、未だ虞を放ち続け、猟兵たちへの殺意を隠さない。己の身を削り、砕くことをやめない。

 続いて相対するのは、鎧甲冑。西洋親分に対するその姿は、日の本の武者であった。槍を携え見据える焔色。馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その名に刻まれた一角、天賦の才と評されし武辺者。
 彼は王子に笑顔を見せる。覚悟への賛辞であり、同時に自らが全力を出すに相応しい者と認めたがゆえ。
 直後。
 ぞぶ、と。彼の周囲からもまた黒々とした胃の底を握られるような不快な瘴気が溢れ出す。それはある種虞にも近しい「何か」。
 これは、いけない。
 王子は光を放つ。剥がれた箔の分途切れ途切れに、けれどあらんかぎりの光が奪うのは、不幸を感じる心。不幸を感じられない事は、そのものが不幸。しかし、彼が咄嗟にそれを放ったのは、無論敵の技を相殺する目的ばかりではない。
 ――剣と槍とがぶつかり合う。鋼と石材がぶつかり合っているとは思えない、轟音、衝撃。単なる超常の身体能力だけでは説明できないほどの一合。

 それは、性質の似る能力同士の喰らい合い。
 不幸を感じる心を奪うことで、相手に自覚せぬ不幸を与える力。
 内に満たした呪詛を解き放ち、相手の運気等を奪い不幸とする力。
 光が呪詛を照らし、薄れた光を呪詛が飲み込む。
 一進一退の中で、互いの幸運は均されていくばかり。

「あなたは、どうして」
 それは、呻くような呟きだった。
 王子は理解しがたい。明日への希望を掴む為に戦う猟兵たちは、しかし余りに業を持つものが多すぎる。まるで、自らが幸運になろうとしないような。
 狼のような焔武者は、王子の言葉を鼻で笑う。それはお前も同じことだろう、そんな皮肉でもあったが。
「わしは、不幸とは思っておらぬよ」

 言い終えるが否や均衡は崩れる。
 虚を付き石突が王子を突き飛ばした。離される距離、さすれば間合いは槍の優位へと傾く。
 彼が喰ったのは運気のみにあらず。生命力、霊気をも貪っていた。幸運だけならばとんとんに並んでも、雌雄を決するは運のみではないのだから。
 一撃。紅蓮を纏うた大槍が、王子の守りを打ち崩す。
 己の身の上を不幸だとは思わない。戦場こそ、己の居場所であるから。

 二撃。続けざまに薙ぐ。半円状に広がる炎によって焼かれ裂かれる虞。
「仲間と共に、今なお歩んで行ける。これを不幸などというものか」
 死力を以て戦いながら、それでも敵を慮るお人好しに。呆れ混じりに呵々と笑いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レン・ランフォード
哀れみを抱いた主人格・蓮に代わって俺(錬)が前にでる
コイツの献身に応えるためには全力が必要で
それを引き出すのは哀れみではなく怒りだからだ
お前が献身せざる得ない状況を生み出したこの戦争への怒りを燃やし
降魔化身法発動…いざ融合変身
化身忍者としての真なる姿で、お前に応えよう

煙幕弾で輝きを遮断し接近、あとは倒れるまで攻撃あるのみ
敵の攻撃は第六感も合わせて見切り、残像を囮にカウンター
出血は気にしない、毒は耐える、呪縛は固まった場所で殴りつけろ
不幸があっても怒りで飲み込み、痛みは激痛耐性で耐え攻撃の手を休めない
コイツの負担を減らすためにも速攻でケリをつける

戦争が終わったら金箔張り直してやる…だから死ぬなよ




 繰り返す戦いの中で、黄金は剥がれ散っていく。場に満つ虞が揺らいでいくのは、王子の中の骸魂が弱まる証か、それとも王子の魂が削れるが故か。

 ――どちらだったとしても。戦場へ辿り着いたレン・ランフォード(近接忍術師・f00762)にとっては、関係がない。
 今必要なのは、彼への憐憫などではなく、孤独に戦い続ける王子へ答える全身全霊。そしてそれに足るのは熱く、強く、一等激しい感情。
「真なる姿で、お前に応えよう」
 眼差しは鋭く、口調は冷静に。だがその身に降ろす力と化身の姿は、三つの面に赫々の爪。手にした太刀さえ燃ゆる炎が如く銅色に染まる。
 羅刹か夜叉か、或いは修羅か。その様は、怒りに満ちていた。

 王子が剣を向け、光が放たれれば、修羅は轟、と吠える。
 手の内に隠した煙幕を叩き付けると、その姿は消え、光は不明瞭な塵に散らされ乱反射する。
 そこからどのような奇策を打って出るのか。警戒を緩めず、集中する王子。
 だが。その鼻先に叩き付けられたのは、何の小細工もない拳骨だった。

 そこからはもう、如何に言葉で飾り立てても隠し切れない程に泥臭い、殴り合いだった。
 敵の攻撃を直感と強化された身体能力で躱し、何度も何度も拳を叩き付ける錬。強靭な力の代償として与えられた毒でさえ意に介さずに、敵を殴り続ける。
 対する王子もまた、至近距離での攻撃では分が悪いと踏んで打撃を繰り出す。十全とは言わずとも命中した光の影響で的確な一撃を与え、有効な一撃を躱している。
 命を懸けた覚悟を乗せて、それが王子がとるべき行動とは異なっていようとも、拳でぶつけようとする。
 相手に応える。死闘がなければ虞は晴れない。ならば、相手の舞台に上がり続けなければならない。そう、彼は思っていたから。
 
 だからこそ錬は怒る。らしくない真似までして、戦い続ける王子。そこから滲む献身と優しさ。そんな彼が過酷な使命を負わなければならないこの戦争に。それを引き起こした元凶に。
 短期決戦を狙ったインファイト。戦術的な優位を取るためなどではない。
 ただ、彼を素早く鎮めるための、ただ真っ直ぐな願い。
「だから大人しく、寝てろ――ッ!」
「それでは、駄目なんだっ!」
 二つの拳が交差する。黄金と石材の間、胸板に炸裂する錬の拳と、歪な骸骨に罅を入れる硬く重い王子の拳。
 二人同時に倒れ、負傷の酷い錬は強制的にグリモアベースへ帰還させられるだろう。王子にもまた、決して少なくないダメージを与えた。

「黄金なら、後でいくらでも塗りなおしてやる。だから、死ぬなよ」
 怒り。暴力的で衝動的な感情を纏った彼の――いや、彼らの想いは、最初から変わらない。こんな形でしか伝えられない事への、消しきれぬ燻りを抱きながら。
 だが、確かにこのタイマンの軍配は、レン・ランフォードに上がったのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

朱酉・逢真
心情)真の姿ねェ。ってこたァ、俺ァこのでけェトリのナリしてたほうがイイと。なら飛ぼうか。空飛んで風乗って花びら避けよう。ところで旦那、王子サマよ。お前さん死んでもいいンだってェ?
行動)そンなら醜悪な死を見るがいい。金は腐らないってェ? お前さんの金は表面だけだろ。カラダや心臓は錫だと聞いたぜ。錫は酸化しづらいがしないワケじゃない。醜く汚く錆び腐る、己のカラダを見るがいい。お前さんの頼みはそのツバメかね? ごらん、地に落ちてウジが湧いている。これでは伝言は届かないねェ。死なせたくないと思えばいい。死にたくないと願えばいい。その思いがお前さんの助けだ。骸魂だけひっぺがすため、心から死を厭うがいい。


オニキス・リーゼンガング
友と連携/f16930
心情)絵本の話でしたら、王子の心臓は鉛製ですよ。うろ覚えが過ぎます。
とはいえ行動自体は悪手ではないはず。わたくしも手伝いましょう。
行動)王子様にはじっとしていただきたく。
この姿(*龍神)のわたくしはとても長いので、尾で絡め取りましょう。
悪霊、つまり死んでおりますから。死ぬような目にあったところで、なんとも。
そのまま煙魚たちを放ち、凍りついていただきましょうね。
金属ですから冷えやすいでしょう。わたくしは氷河で生まれ育ったので、冷たさは平気ですよ。
さあ、王子様。あなたと、あなたの信頼する友輩の死を直視なさい。そして否定するのです。それが、あなたの未来を作ります。




 何度も、何度も、叩き伏せられた。しかしそれでも王子は目覚める。その身を再び持ち上げて、次なる猟兵たちに戦いを挑むために。

 待ち構えた王子の前に散る、朱色の羽根と霧氷の粒。

 周囲を飲み込む無限にも及ぶような虞。それを以てしても拭い取れぬ別種の怖気、呼吸さえもを飲み込む厭気。戦場が捻じれ、揺らぎ、孔が開いたようにして空間が異質に変貌していく。
 強い酩酊に似た眩暈を感じれば、王子の世界は地獄へと変わった。
 腐り落ちた世界。自らの黄金が融け、石材は風化し、鉛の心臓にさえ錆が在る。友たる燕が自らを案じ寄り沿えば、忽ち病魔に侵されたかのように膿み、死に絶え、どこからともなく現る蛆に身を食まれる。
「どうだい、どうだい、王子サマ」
 嗚呼、なんと悍ましいことだろう。悲劇的なこの世界を愉しむかのように、嘲笑うかのように、凶鳥が、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)が眼前に現れる。

 ――これほどまでに、淀んだ世界の中に堕ち、なおも王子は花弁を散らす。濁った輝きの黄金を、花弁に変えて猟兵へと差し向ける。
 ばさと羽搏き逃げ仰せ、花は鳥の毛一本捉えられない。
 だが伸ばした腕が、次の瞬間には硬く凍り付く。もう動かせないように。現実とは思えぬこの光景の中で、僅かに己のままにできた体の自由が、忽ちの内に奪われる。
 水の中を漂う魚のように、ゆうら、ゆうらと漂う煙。惑わされずに自身の体を見渡せば、王子はそれを見るだろう。同じく腐り、羽虫を侍らせながら、しかし彼を締め上げるように巻き付く龍の姿を。氷よりも、北風よりも、なお冷たいその息吹を。
「そうですとも。死を、直視なさい」
 穏やかな声音ながら、背を突く言葉。冬龍、オニキス・リーゼンガング(月虹に焦がれ・f28022)は告げる。

 死を見、拒め。絶望を喰らい、唾を吐け。
 それこそが二人の謀略。はかりごと。お綺麗な自己犠牲を、高尚なノブレスオブリージュを。血腥い底に叩き落して、手放させようとするために。死にながら生を憂い執着する、骸魂をその身から剥ぎ取る為に。

 ――これほどの中で、それでも彼はその顔に、笑みを浮かべる。
「ああ、確かに。これは、頂けない」
 確かにそう呟きながら。

 確かに拒絶された。二人の作り上げた最悪の結末を、その死を。確かに心の底から、拒絶し、嫌だと跳ね除けられた。
 だがそれは――あくまで、「今」ではないだけだと。
「意固地な方だ」
「全くだ――救い甲斐のねぇ」
 僅かな賞賛と多分な驚きを以て、オニキスは呟く。
 彼の言葉を首肯し、呆れ混じりの悪態を吐き捨てる逢真。
 望む形とは些か異なる結末には終わった、だが彼らの領域は王子の精神に作用し、そしてその結果体内の骸魂を大きく弱体化させた。場の虞の揺らいだ渦が、それを証明していた。
 加えて王子自身も相応に疲弊している。実際に身体に受けたのは、オニキスの氷による移動の制限と巻き付き程度なものだが、効果とその大きさはその姿勢、呼吸、力の揺らぎとまた剥がれた黄金の数からしても明白だ。

「忘れるなよ、王子サマ。お前が消えれば、いずれそうなる。功績も献身も風化して腐れる。そうなれば、お前は本当にあそこに行くんだぜ」
「あなたは、」
 つらつらと、更なる言葉を重ねる逢真。それを諫めを半分に、憤りを半分に詰め寄るオニキス。
 だが、それを。王子は……『しあわせの王子さま』は、笑う。

「僕がそうなっても。きみたちがいるじゃないか、猟兵」
 ――びしりと。頬に入った罅が、更に濃く、深い音を立てた。
 その台詞の後に残ったのは、霧のようにして消えかかる煙の魚と、始まりと同じ、朱色の羽根のみだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エィミー・ロストリンク
【POW】
黄金をもっていってというなら持っていくし、全力で戦うよー。
でもわたし達は欲張りなんだー。だから絶対に助けるよ、王子さま!

真の姿:セイレーンの力を解放し、大人になった姿
UC「メガリス海嘯拳奥義・大海氾濫掌」発動で、辺りに一面を覆い尽くすほどの大津波を発生
それにセイレーンの力を解放して人魚姫状態になって泳ぎ回り、黄金の光を避ける
避けられない場合はラクチェの要石で鉄水に変えて光を遮断するようにする

横の大津波の衝撃に慣れてきた頃に、上から大瀑布の圧力をかけてバランスを崩す
その隙に遊泳加速してからの拳を叩き込む

わたし達は妖怪達を救いたい。それは西洋親分さんも含まれているんだよ!

アドリブ絡みOK




 幾度も戦いを重ね、自らの黄金は次々に剥がれていく。場に満つ虞が減っていくことを感じ、王子は自らの役割が確かに果たされていることを理解した。

 だが、しかし。まだ決着には辿り着いていない。まだ、猟兵たちは諦めていないのだから。
 やり切った顔をしている王子の前に立ちはだかる小柄な影。エィミー・ロストリンク(再臨せし絆の乙女・f26184)は、その王子の表情が少しばかり不服だった。だが彼女のそんな内心を知る由もなく、王子は新たな猟兵にもまた、これまでと同じように躊躇も遠慮もない殺意を向けた。その、直後。

 ざぉう。聞こえるはずの無い潮騒が、王子に届く。首を傾げる間もなく、襲い来るのは巨大な青の壁。白く波に彩られ、澄んだ水の色で迫る。
 強大な威力と威圧感。しかし踊る海嘯の中を長い影が横切ったのを王子は見逃さない。彼は影に向かって黄金の光を放つも、逃げる影の速さと不規則な軌道、それに互いがぶつかり姿を生物のように変えながらうねる波の様子に翻弄され、命中には至らない。
 膝下近くにまで溜まった水。横の波に踏ん張る力さえまともに効かなくなる戦場。そこに、追い打ちをかけるように高波が上から飛沫を上げる。滝のように打ち付ければ並みの動きも変わる。揺れるような波から、上下に沈むような坩堝に。

「黄金をもっていってというなら持っていくし、全力で戦うよー」
 波が割れる。姿を見せるのはセイレーンとしての真の姿。ソーダ水が形作るは人魚の姿。それに伴い成長した彼女の浮かべる表情は凛と、しかし内に秘めたる想いは無垢なまま。
 尾びれが消え、人へと戻る。それは彼女の扱う奥義の前触れ。岩を削り、島を砕く海の力が拳に宿った。
「でもわたし達は、欲張りなんだー!」
 笑顔で、強気に。言葉と共に放つ技が狙いを定めるは、王子そのものではない。
 その内に宿る骸魂、そして立ち上る虞を、拳が砕く。
 ――猟兵たちが戦うのは世界を救わんとするため。それは、世界に生きる命を守るためのものでもある。

 ならば救うべき相手に、彼が含まれていないハズもない。
「確かに、ああ。それは、欲深い願いだ」
 王子は静かにそう呟いて、倒れ込む。穏やかに引いていく波が、彼の黄金に照らされ日の出の海の如く、輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久遠寺・遥翔
親分、あんたの覚悟は受け取った
なら俺は今の俺が出せる全力で挑ませてもらう!

イグニシオンに【騎乗】
真の姿となりさらにUCを起動して装甲を犠牲に攻撃特化の形態をとる

【戦闘知識】による予測を【第六感】で補正した心眼で黄金の光を【見切り】
【残像】を織り交ぜて回避しつつ相手の死角を攻める
避けきれない部分は【オーラ防御】を【結界術】でコーティングした多重防御壁で受け薄い装甲を補いつつ
被ダメージは結界で受けた敵の攻撃から【生命力吸収】で回復
【空中戦】で焔の太刀による斬撃と劫火による【焼却】属性の【2回攻撃】を叩き込む

あんたが示した道を開いて、あんたも骸魂から今解放してやる!
安心して戻ってこい!




 最後に現れたのは、銀の髪をした青年だった。
「親分、あんたの覚悟は受け取った」
 覚悟。世界を守るために自らを捨てるという決意は、余りにも重い。だが、いやだからこそ、久遠寺・遥翔(焔黒転身フレアライザー/『黒鋼』の騎士・f01190)は決意を胸に秘め、ただ毅然とした表情で自らの『鎧』を呼び出した。
 白銀が燃え上がる。走る赤の軌跡が蒼へと変わり、堅牢な騎士は鋭利な骨格を曝け出す。衝撃と共に噴き出すその蒼が宿す力は、虞の根源たる骸魂のものとよく似ていた。

 瞬きの間もなく金色が奔る。放たれるのは触れた部分を破壊する光線。しかし光条が貫いたのは、残影。直後、王子を吹き飛ばす衝撃は神速の爪撃。剥がれかけた黄金も、その下に眠る石材も、等しく震わせるその一撃には、迷いはない。
「全力で挑ませてもらう!」

 防御を担う大半の装甲を代価に手にした高速軌道と攻撃力。それらを存分に生かし分身と回避で王子を翻弄する遥翔。防戦一方の王子だったが、逆転の時は突然に訪れた。
 移動と移動の切り返しの地点に放たれる光。寸前のところで身を躱した白騎士に襲い掛かる、衝撃。その背後に落ちていた破片、その一部の鏡面に跳ね返った光が背中を穿ったのだ。
 幸福という名の幻影が搭乗する者の思考を鈍らせ、宿る骸魂の怨嗟を濁らせる。だが、これまでに蓄積し続けたダメージの影響か王子もまた膝を付いた。
 ――負傷はどちらも軽くない。それでもふたりは立ちあがる。
 世界を、守るため。志は同じくとも、手を取り合うのではなく、刃を交えることでしかそれは果たされない。
 裂帛の咆哮は、どちらのものだったのか。幾多の戦いで折れかけた刺剣を。アラートの止まない機体を。手にしたグリップを、操縦桿を。互いに手放さず。白銀と黄金は、交錯した。

 ……猛烈な闘いの余波によって、悲鳴を上げたのは戦場だった。地は裂け、天は轟く。
 限界を超えた愛機から飛び降り、遥翔は必死に王子の元へと向かう。しかし無情にも、彼と王子を隔てるようにして崩れ落ちる瓦礫。
 動かず、ただ静かに空を見上げた王子へ、彼は叫ぶ。手を伸ばす。
「俺たちは、あんたが示した道を開く! だけど、あんたたちのことも骸魂から解放する! だから、戻ってこい!」
 
 しかし、振り返った王子は。静かに微笑むだけだった。
 顔も、体も、大きく罅割れながらも、ただ、優し気に。

 戦場は崩れていく。王子は、ただ静かに、落ちていった。



 あるところに、西洋妖怪たちに慕われた、心優しい王子様がいた。
 彼は自らの黄金を捧げた。世界を守る者への道導とするために。
 彼は自らの友に祈った。黄金を届け、世界を見守ってもらうために。

 そこにもう、王子様はいなかった。
 しかしその誇り高き黄金の輝きは、猟兵たちの中に、確かに残されている。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月17日


挿絵イラスト