●ツバメさん、黄金を持っていっておくれ。
「……来るね」
黄金の輝きに包まれた西洋親分『しあわせな王子さま』はゆっくりと顔を上げた。
彼は猟兵たちの道を開く為、大祓骸魂に続く雲の道を作る為にその命をもかけようとしている。
「猟兵達、どうか僕の虞を越えて、二つの故郷を救っておくれ」
●光よ光よ
「諸君! 聞いてくれたまえ!」
ゴッドオブザゴッド・ゴッドゴッドゴッド(黄金存在・f16449)が猟兵たちに告げた。
大祓百鬼夜行、ここにまた一つの戦いが生まれることを。
「此度の相手は、西洋親分『しあわせな王子さま』! さすがは親分と言うべきか、その意識を完全に保っているのだが……」
彼が大祓骸魂の軍門に降ったのは、大祓骸魂に続く雲の道を作る為。
そしてその為にはしあわせな王子さまと全力で戦い、倒さなければならない。
「全力の親分に打ち勝つ事が、大祓骸魂が放つ圧倒的な虞を弱める為の必須条件! 故に手加減などしてくれぬぞ! 心してかからねばならぬ!」
その力は強大だ。骸魂の影響を抑え込み、膨大な虞を放つしあわせな王子さま。
普通に戦っては勝てるかどうかも分からない。
しかし、その為の手段は示されている。
「彼の膨大な虞は、諸君にも影響を与える! 猟兵の持つ真の姿……窮地にある諸君を助けたこともある力を、対峙するだけで解き放つことができるであろう!」
これは大祓骸魂の「虞」を克服する儀式だ。
カクリヨファンタズムとUDCアースのために命をかけて戦いの場に現れた親分を、全力で打ち倒すことが、彼の心意気に応える唯一の手段。
「何故かは分からぬが、彼の姿、想いには思うところがある……どうか虞を乗り越え、彼の願いを果たして欲しい! 諸君の戦いに期待しているぞ!」
納斗河 蔵人
お世話になっております。納斗河蔵人です。
今回は大祓百鬼夜行、西洋親分『しあわせな王子さま』黄金形態のシナリオになります。
膨大な虞を全解放して襲いかかってくるのも猟兵たちの力を信じているからこそ。
今回、下記のようにプレイングボーナスがあります。
プレイングボーナス……真の姿を晒して戦う(🔴は不要)。
ぜひ真の姿を解き放ち、しあわせな王子さまの願いに応えてください。
プレイングをお待ちしています。よろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『西洋親分『しあわせな王子さま』黄金形態』
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POW : あたたかな光
【黄金の光】が命中した部位に【「理性を破壊する程の幸福」】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD : しあわせな光
【黄金の輝き】を解放し、戦場の敵全員の【「不幸を感じる心」】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。
WIZ : 黄金をささげる
自身の装備武器を無数の【黄金】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
トリテレイア・ゼロナイン
(人々に幸福を齎す…彼の御話には騎士として敬意の念が多々
いえ…私の理想の体現といっても過言ではありません…ですが)
その覚悟、確かにお受け取りしました
全力を持って虞を祓わせて頂きます
ご安心ください
(御伽の騎士でなき己が、助け出す等と軽々しく言える筈も無く)
真の姿は騎士の超重装甲と体裁無くした黒いフレーム…戦機の姿
王子の剥がれた黄金の箇所を●情報収集
光が放たれる箇所を●見切り軽量化で●限界突破した●推力移動で回避
…この姿では、最初から隠すこともありませんね
2本を手に、脚部からも伸ばすは光掻き消すUC
斬撃、蹴りの連打で切り刻み
……
……
…どうか、諦めないでください!
必ず救う手段を見つけます!
必ずや!
「最初の相手は……君かな?」
圧倒的威圧感。あらゆるものを呑み込む膨大な虞に似合わぬ穏やかな表情で、しあわせな王子さまは告げた。
対峙するのはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。
目の当たりにした西洋親分の姿は、黄金だからと言う理由ではなく眩しく見える。
(人々に幸福を齎す……)
それはなんと素晴らしいことだろうか。トリテレイアは伝えられし童話を記憶から呼び起こす。
己を厭わぬ自己犠牲の精神。形は違えど、それは騎士として敬意の念を抱かずにはいられない。
(いえ……私の理想の体現といっても過言ではありません)
そんな王子さまは二つの世界を守る為、骸魂を喰らった。
彼に報いるならば、取るべき行いはただ一つ。
「悪いけれど、僕は全力をもって君を殺す。そうしなければいけない理由があるからね」
「その覚悟、確かにお受け取りしました。全力を持って虞を祓わせて頂きます」
トリテレイアが顔を上げるとその体からは騎士然とした超重装甲が剥がれ落ち、大地を揺らした。
巻き上げられた砂埃が晴れれば、そこにあったのは黒く光る剥き出しのフレーム。
これこそが理想という鎧を纏わぬ、真の姿。
「……いい覚悟だね。全身全霊をもって、戦おう」
「……ご安心ください」
御伽の騎士でなき己が、助け出す等と軽々しく言える筈もない。トリテレイアはそれ以上の言葉を紡がず、センサーの光を動かした。
(何とあたたかな光か)
送られてくる情報に、トリテレイアは衝撃を覚える。
しあわせな王子さまが分け与えてきたという幸福……自身を『殺す』為に放たれようとしていてもなお、そこに籠められた願いは変わらない。
「大事なのは見た目? それとも心かい?」
「本当に貴方は……」
覚悟は既に決めた。あの光のあたたかさに甘えてはいけない。
何のために生まれ、何のために生きるか。それを決めるのは誰か。
眩い光が、誰もが憧れてやまない幸福が降り注ぐ。
だがトリテレイアは迷うことなく駆けた。
光の隙間を縫って、漆黒が王子さまへと近づき、そして。
「騎士として恥ずべきこの戦法、敢えて使わせて頂きます」
横薙ぎに一閃。間髪を入れずに爪先で蹴り上げる。『大出力可変式/足部隠蔽収納式擬似フォースセイバー(フォースセイバー・イミテイト)』……
理想を取り去った偽物の一撃が、虞を振り払ったのだ。
「これで、大祓骸魂が放つ圧倒的な虞も幾らか和らぐ」
剥がれ落ちた黄金。しあわせな王子さまは力なく笑った。
「後のことはつばめさんに託した。心配はしないで」
「違います、私は……」
「骸魂を喰らった僕は何度でも現れる。何度も倒されれば死ぬかもしれないけれど、二つの故郷を救うためならば悪くないよ」
「……」
本当にお伽噺から抜け出たような存在だ。物語と同じような結末を迎えても良いと思っている。
「……どうか、諦めないでください! 必ず救う手段を見つけます!」
「ふふっ」
思わず飛び出た、戦いの始まりには言えなかった言葉。
そこには確かに、無骨なフレームの騎士が居た。
「信じるよ。大祓骸魂が潰えたら……また会おうね」
「必ずや!」
大成功
🔵🔵🔵
岩永・勘十郎
「お前さんに恨みはないが、斬らせてもらう」
と敵の本気度を感じ、自らもそれに応えるべく右手に刀、左手に片鎌槍の二刀流となって立ち向かう。あまり見せぬ本気の姿。
「いざ参る!」
敵との間合いを【見切り】、槍での攻撃と刀での攻撃を巧みに使い分ける。敵からの攻撃は【戦闘知識】を駆使した【瞬間思考力】で数え切れぬ程のパターンを予測、その中から最適解を導き出し【残像】が残る程の速度と【早業】で回避。
「さぁ、そろそろ終わりにしよう」
戦を終わらせ安心させるべくUCを発動し剣撃を繰り出す。もちろんそれをガードする敵だが真空波となり飛ぶ斬撃まで対処はし切れぬはずだ。その斬撃に敵の魂その物を斬る力を込めているが故に。
静寂の中に、足音が響く。
岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)は口を開くことなくただ歩み続ける。
やがて、目的の地へとたどり着き、足を止めた。
「来たね、猟兵」
待ちわびていた、とでもいわんばかりに西洋親分、しあわせな王子さまは告げる。
その穏やかな表情に反して、全身に襲い来る莫大な虞は勘十郎の全身をビリビリと震わせる。
彼は本気だ。二つの世界を救うためならば、自分を倒せなかった猟兵が死ぬことも仕方がない。
この気迫と圧力からはそれだけの覚悟が感じ取れた。だから勘十郎はこう答える。
「お前さんに恨みはないが、斬らせてもらう」
右手には小銃兼正を、左手には片鎌槍『轟天』を。
きっと、彼を知る者はその姿に驚きを覚えるだろう。――勘十郎が本気になった姿を見せることなど、滅多にないのだから。
「いい覚悟だ。分かっているようだけれど、僕は君を殺す。そうしなければならないからね」
しあわせな王子さまはそんな彼に淡々と応える。だが、その声色は少し嬉しそうにも思えた。
再び、静寂。
そして。
「いざ参る!」
死闘が始まる。
槍の一閃が王子さまの心臓へと迫った。だが、黄金の細剣はくるりと弧を描くようにその刃を絡め取り、柔らかくいなす。
かと思えば雷光の如き鋭い踏み込みで剣は勘十郎へと向かう。
しかし槍と剣では間合いが違う。そこで生まれた僅かな隙を見逃さずに右手の刀を振り下ろし、切っ先を逸らした。
一瞬の攻防。互いに傷を負わせるまでは至っていない。
(どう動く? 見つけ出すんだ、最適解を)
決着に至るまで幾度となくこれを繰り返すことになる。
だが、終わるときはきっと一瞬だ。一手間違えば王子さまの細剣は心臓を貫くだろう。
激しい攻防を繰り広げながら勘十郎は思考する。己の全てをかけて。
これまで培ってきた戦いの知識。その身に宿した仙力。様々な闘法、剣術。
そして心の内に秘められた、「人間の持つ純粋な残虐性」までもさらけ出して。
「……さぁ、そろそろ終わりにしよう」
死を間近に感じながら、勘十郎は笑っていたのかもしれない。
王子さまの願いを届ける為に、必殺の構えを取る。
「ああ、僕もそうしようと思っていたんだ」
それを感じ取ったのか、王子さまもまたその手に黄金の輝きを束ね、決着へと虞を練った。
先に動いたのは王子さま。あたたかな光が勘十郎へと迫り来る。
だが、その瞬間を彼は読んでいた。
光に包まれたのは残像だけ。勘十郎は既にその太刀を掲げている!
「万有を返す!」
一閃。『六道・龕灯返しの太刀(リクドウ・ガンドウガエシノタチ)』の巻き起こす真空波が王子さまを凪いだ。
「……見事だ」
「大祓骸魂もわしが斬る」
だから、安心しろ。
そう告げる勘十郎の目にしあわせな王子さまは満足げに微笑んだのであった。
大成功
🔵🔵🔵
リアナ・トラヴェリア
真の姿…、か。
それができるのなら見せてあげるよ!
黒い風よ、私とともに!
その暖かな光は本当はもっと傷つけない力だったんだろうね、でも今は暴走してる。過ぎた優しさは相手を壊すだけの暴力だから。
私の黒い風も黒い真の姿も光は吸収するだけ、私の中にまである理性には届かない。許容量を超えるよりも早く近づいて黒剣で斬りつけるよ!
一撃で足りなければ何度でも、あなたを、全ての妖怪を開放するために!
あなたの優しさは世界を守るため、その献身に意味を持たせるために私達はここにいる!
この『虞』が例え忌まわしいものであったとしても、世界を救うためには使わせてもらうよ!
骸魂よ、躯の海に還って!
溢れ出す、強大な虞。
この圧倒的威圧感を前に、猟兵の心と身体はあるひとつの感情を抱かざるを得ない。
生命の危機。しあわせな王子さまの放つ、偽りのない殺意。
戦いの中でこの感覚を覚えたことがある。それは。
「真の姿……か」
リアナ・トラヴェリア(ドラゴニアンの黒騎士・f04463)はぐっ、と拳を握りしめる。
猟兵が危機に陥ったときだけ解き放つことができる強大な力。
すさまじい虞が猟兵に宿るエネルギーを呼び起こそうとしているというのか。
「そのままでは立っても居られないだろう? 立ち上がるか、僕に殺されるか……二つに一つしかないんだ」
王子さまが問いかける。君はどうする?と。
決まっている。
「見せてあげるよ! 黒い風よ、私とともに!」
一瞬の静寂の後、黒い風が巻き起こった。
危機に反応して大きくなる『黒風鎧装』が今まで感じたことがないほどにまで膨れ上がっている。
「うん……それでこそだね。じゃあ、殺し合おう」
その向こう側で、リアナの瞳が強く輝いた。
「僕は君に幸福を与えよう。死に行く者への手向けだね」
しあわせな王子さまから光が溢れ出す。それはとてもあたたかな光。それ故に、怖ろしい。
きっと与えられた幸福に、囚われてしまうから。
「本当はもっと傷つけない力だったんだろうね」
大祓骸魂を倒すため、しあわせな王子さまは自ら骸魂を喰らった。
そしてその力は変質し、殺すための力にまで成り果てている。
「……過ぎた優しさは相手を壊すだけの暴力だから」
彼自身もきっと望んではいない。この光が人を終わらせてしまうことを。
「でもね、私の中にまである理性には届かない」
漆黒は光を呑み込み、リアナを守る。幸福を拒むことで彼女は理性を保ったまま戦い続けることができる。
だが、それも長くはもたない。虞を宿した光はいずれその拒絶さえも明るく照らしてしまうことだろう。
その前に、終わらせなくてはならない。
リアナは手にした黒剣を掲げ、王子さまへと駆ける。
「あなたの優しさは世界を守るため。その献身に意味を持たせるために私達はここにいる!」
「その為に僕と君、どちらかがどちらかを殺さなければならないんだ!」
黄金と黒が交差した。黒が駆け抜け、黄金は地に落ちる。
「この『虞』がたとえ忌まわしいものであったとしても、世界を救うためには使わせてもらうよ!」
「そうだ、それでいいんだ。どうか二つの故郷を救っておくれ」
王子さまの言葉にリアナは目を閉じ、叫んだ。
「骸魂よ、骸の海に還って!」
それが最後。絶大なる虞と共に黒き風は霧散し、後には剣を納めたリアナが立ち尽くすだけ。
大成功
🔵🔵🔵
ハロ・シエラ
この圧……これが虞と言うものですか。
なるほど、凄まじい。
ですが、この姿になったからには怯む訳には行きません。
光と言う極めて回避が難しい攻撃ですが、ここは前もって闇の【属性攻撃】による【範囲攻撃】を仕掛けて辺りを暗い霧で満たしてから【ダッシュ】で突っ込みます。
霧が光を遮り、私自身はその【闇に紛れる】事で敵の手数と命中率を下げられるかも知れません。
それでも抜けてくる光は【第六感】で攻撃を察知し、光を反射するレイピアやダガーで【武器受け】するなどして凌ぎましょう。
この姿であれば、多少離れていても問題ありません。
ユーベルコードで普段よりも巨大化したレイピアに全力と【気合い】を込め、叩きつけます。
「この圧……」
一歩踏み出すごとに重苦しく変化していく空気。
ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は視線の先に待ち受けるしあわせな王子さまを見つめる。
「これが虞と言うものですか。なるほど、凄まじい」
「その小さな体では耐えられないよ。それ以上近づくならば殺す。そうしなければならないから」
ゆっくりと近づいてくるハロに向けて、王子さまは悲しげに瞳を揺らす。
「いいえ、そういうわけにはいきません」
退くわけにはいかない。
彼がどんな想いでここに立っているか知っているから。そして何よりも。
「この姿になったからには怯む訳にはいきません」
すらりと伸びた白い脚。掌から溢れ出る炎。ピンと伸びた獣の耳。左右で違う瞳の色。
いつの間にかハロの姿は秘められし真の姿をさらけ出していた。
虞を前に、恐れてはならない。カクリヨファンタズムを、UDCアースを救うために。
「そうかい。なら……僕も全力で」
「はい、私たちの願いのために殺し合いましょう」
「霧よ、黒い霧よ!」
ハロの術で戦場は闇に包まれる。
王子さまの光。虞を宿したあのあたたかな光を拒むことは難しい。
だが、こうして全てを闇で覆ってしまえばどうだろう。光は闇を照らすが、その幸福を一点に集めることはできなくなるのではないか。
冷たい闇の中に己を置き、ハロは王子さまの出方を窺う。
「なるほど、考えたね」
王子さまの光は闇の中であってもあたたかく辺りを照らす。
しかし、その全てを晴らすまでには至っていない。今のハロならば、十分に対抗できているのだ。
「でも、どうするつもりかな? 光に触れずに僕を殺すことが、君にできるかい?」
「……」
闇と光は拮抗しているが、これだけで彼を倒すことは不可能。
漏れ出した光をダガーの刃で反射させ、ハロは駆ける。これを続けていては位置を悟られ、収束して放たれた光が彼女を狙うだろう。
時間は、かけられない。
「……恐れてはいけません」
覚悟などとうに決めたはずだ。ハロはレイピアを握りしめ、目を閉じる。
膨れ上がった魔力、強化された体力。あの虞を越えるには、まだ足りない。
全てを注ぎ込まなければ。それこそが、『全力』だ。
「……来るんだね」
ハロの気配に王子さまは静かに語った。
一点に集中した光が、一直線にハロへ向けて放たれる。
ハロは今までにないほどに巨大化させたレイピアを掲げ、一気に振り下ろす。
「ちぇえすとぉおぉおぉおぉぉぉぉ!」
それは星をも砕く全霊の一撃。あたたかな光がハロの胸を照らしたが、『スターブレイカー』の輝きはほんの一瞬だけ早く王子さまへと届いた。
ハロの身体が糸が切れたように崩れ落ちる。
薄れゆく意識の中、光の中へと消えていくしあわせな王子さまの笑顔だけが目に焼き付いて離れなかった。
大成功
🔵🔵🔵
久遠寺・遥翔
親分、あんたの覚悟は受け取った
なら俺は今の俺が出せる全力で挑ませてもらう!
イグニシオンに【騎乗】
真の姿となりさらにUCを起動して装甲を犠牲に攻撃特化の形態をとる
【戦闘知識】による予測を【第六感】で補正した心眼で黄金の光を【見切り】
【残像】を織り交ぜて回避しつつ相手の死角を攻める
避けきれない部分は【オーラ防御】を【結界術】でコーティングした多重防御壁で受け薄い装甲を補いつつ
被ダメージは結界で受けた敵の攻撃から【生命力吸収】で回復
【空中戦】で焔の太刀による斬撃と劫火による【焼却】属性の【2回攻撃】を叩き込む
あんたが示した道を開いて、あんたも骸魂から今解放してやる!
安心して戻ってこい!
ここは、忘れられたものたちの終着駅。
UDCアースではもはや語られることも少なくなった物語。
そんな場所で、久遠寺・遥翔(焔黒転身フレアライザー/『黒鋼』の騎士・f01190)は握りしめた拳を震わせ、言った。
「親分、あんたの覚悟は受け取った」
「分かってもらえたようで良かったよ。つまり結末はひとつ。君が死ぬか、僕が死ぬか」
対峙するのは西洋親分、しあわせな王子さま。
莫大な虞を背に遥翔へと剣を向ける。
「ああ、なら俺ができることもただ一つだ」
だが、怯むことはない。彼の身体は変質し、異形の騎士となる。
今となってはこれこそが真の姿と呼ぶべきものだ。
「俺は今の俺が出せる全力で挑ませてもらう!」
その名は焔黒騎士フレアライザー。そして現れるのはその相棒、イグニシオン!
「大きい、ね」
「ああ。だがでかいだけじゃないって事を、しっかりと見せてやるぜ!」
巨体の胸にその身を納めた遥翔はスロットルを回す。『SYSTEM-IGNIS(システム・イグニス)』、起動。
黒焔が巡り、目覚めの時を告げた。
「速い……そして勘もいいみたいだ」
戦端は開かれた。王子さまの放つ光は曇った空を照らし出す。
しかし黄金の光はイグニシオンの色を変えることはない。
どこに向かってくるのか分かっているかのように遥翔は駆ける。
まさしく縦横無尽、時に残像を残すほどの速さで死角へと回り込んでいた。
「……ふっ!」
だが、それも紙一重だ。遥翔は深く息を吐く。今はどうにか読み切れているが、王子さまもこちらの動きに対応してくるはずだ。
虞を祓うため、イグニシオンは防御を捨てて攻撃にエネルギーをつぎ込んでいる。
直撃を受ければこちらが危うい。チャンスは一度。
「だが、我は恐れとは無縁! その一度で力を示す!」
あたたかな光が眼前へと迫る。切り離した装甲を盾に遥翔は翔んだ。
爆発の衝撃がコックピットを揺らす。それでも揺らぐことなく、見つめるのは一点。
機神太刀"迦具土"が焔を纏う。全身全霊、叩き込む。
「まだだよ、僕の虞はそれだけでは破れない!」
が、王子さまの剣は一撃を受け止めた。その細い刀身のどこにそんな力があるのか、折れる気配すら見せない。
王子さまの全身が黄金に輝き、理性を奪うべく牙を剥く。しかしそれを甘んじて受けるつもりはない。
「こちらもまだ終わりではない! イグニスよ、その黒焔を全て放出せよ!」
叫びに応え、太刀の纏った焔が形を為して燃えさかった。
あたたかな光を呑み込み、激しい熱が周囲に漂う空気を祓う。
「あんたが示した道を開いて、あんたも骸魂から解放してやる! だから安心して戻ってこい!」
「ふふ、優しいんだね」
決着はついた。黄金の身体は黒く煤けたが、しかし王子さまの表情は穏やかだ。
遥翔の力強い言葉に二つの世界を託したのだろう。
「君の言葉を信じるよ。また会おうね」
しあわせな王子さまは倒れた。
しかし大祓百鬼夜行が終わりを告げれば、彼はきっと戻ってくるだろう。
遥翔はそんな確信と共に飛び去るツバメを見送った。
大成功
🔵🔵🔵
シノギ・リンダリンダリンダ
己が宝を、他の為に分け与えるその姿。大海賊として敬意を表します
大丈夫です王子。お前のその黄金は、全て、全部、引き剥がし道とし、お前の身を以て大なんとか魂を倒しましょう
さぁ、海賊の時間です
真の姿はドールのガワを捨てた、様々な呪詛と黄金で構成された霧のヒトガタ
その霧を周囲へ漂わせる
【我が腹】
どんな攻撃も、どんな感情も、どんな現象も
全てを腐らせ、蝕み、剥がれる黄金をさらに再生させる
己が内に眠る呪詛を霧の範囲内全てに与える
黄金化させ、伸ばした霧の爪で剥がす
黄金化させ、剥がす
剥がし、剥がし、剥がす
内から蝕みながら、全てを剥がす
決死の覚悟を決めたのでしょう?
私はその意志を尊重します
大人しく、死ね
「己が宝を、他の為に分け与えるその姿。大海賊として敬意を表します」
開口一番、そう告げたのはシノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)であった。
王子さまの黄金に輝く姿を上から下までじっくりと眺め、満足げに笑う。
「大丈夫です、王子。お前のその黄金は、全て、全部、引き剥がして道とし、お前の身を以て大なんとか魂を倒しましょう」
「ふふっ、そこまで言われると僕も心が軽くなるね」
力を振るうことに一切の加減などしないが、それでも優しきしあわせな王子さまの心が痛まぬはずもない。
だが、現れたのはまごう事なき強欲。本心か、演技かは分からないが全力をもって叩き潰せる相手といえよう。
「全力をもって僕は君を殺す。その言葉を真実とすることができるか、僕に示してくれ」
穏やかに、されど鋭く王子さまは告げる。
呼応するかのように、シノギの身体から溢れ出したのはどす黒い霧。
漂い、やがて輝けど昏き黄金をちりばめた人の形を為す。
「これが君の真の姿……」
呪いと欲望の化身、それこそが彼女か。彼の知る物語の登場人物にさえ、ここまでの存在は居なかった。
「決死の覚悟を決めたのでしょう? 私はその意志を尊重します」
四方から、呪われし声がする。ここは既に『我が腹(ワタシノオタカラ)』。
「大人しく、死ね」
強欲が全てを喰らう。
しかし、王子さまは変わらぬ穏やかさで告げた。
「勘違いしてはいけない。死ぬのは全力を出し尽くしてからだよ。僕も、君もね」
黄金の花びらが霧の中を舞う。
呪われし霧は黄金を腐食させ、蝕んでいく。しかし同じだけ虞は呪いを呑み込み、侵していく。
黄金が剥がれ落ちて剥き出しになった内側を黄金に変える。霧の中から伸びた爪が鈍く光る黄金を剥がし取る。
黄金は浮かび上がり、輝きながら霧の中へ踊る。呪いさえも蝕む幸福で欲望を狂わせる。
互いが互いの身を削り合う攻防。静かに、されど確実に決着のときは近づく。
「誰かのために。僕のために。幸福を与えたいという願いもまた、呪いのようなものさ」
ツバメは冬を越えることができず、王子さまも幸福を与えられなくなると共に人々から忘れ去られた。
やがて、それでも失われなかった鉛の心臓が金に色づき始める。
全てを奪う。全てを喰らう。腐らせ、蝕み、全て手に入れる。
剥がし、剥がし、剥がす。内から蝕みながら、全てを剥がす。
「どうかその強欲で、ちっぽけな欲望を全て呑み込んでおくれ」
虞がかき消えると共に、呪われた霧は再びドールのガワへと収まっていく。
「おっとと」
勝利はしたがその反動は大きい。ふらりと揺らめいたシノギの目に映るのは、鉛の心臓。
「……黄金以外に興味はありません」
もっとも尊いもの。海賊であるが故に、そんなものには手を伸ばさない。
雲の道を作る黄金。その全てを奪い尽くした以上、もはやここに留まる理由はない。
呪いと、黄金と共にシノギは進む。幸福に目を奪われることなく。
大成功
🔵🔵🔵