4
大祓百鬼夜行⑨~月の海に燿く

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#カクリヨファンタズム
🔒
#大祓百鬼夜行


0




●月夜の光
 風が戦ぐ竹林に光が満ちる。
 幽世に住む者ならば、夜に竹が輝き出すのは当たり前だと知っている。明滅を繰り返す竹に宿っているのは輝きだけであることが多く、中には何もいないことが多い。
 しかし今は百鬼夜行の影響で全てが変異していた。
 微かな水流が渦巻く竹林では現在、ちいさな妖怪達が新たな生を得始めている。
「おいでなさい、姫達」
 リヴァイアサンの骸魂を宿した天女は水の羽衣を纏い、竹から現れるかぐや姫妖怪を誘っていた。妖達は骸魂が放つ邪気に当てられ、誘われるがままに天女に従う。
「滅ぼしましょう、滅しましょう」
「すべてを。世界を。私達すらも……」
「リヴァイアサン様の為に戦って死ぬのが私達の役目」
 虚ろな目をした姫妖達は心を操られているようだ。きっと本当は誰も傷つけたくはないだろう。生まれたばかりで死を迎えたくもないはずだ。しかし、骸魂の力に抗えないかぐや姫達は死を厭わぬ尖兵にされている。
 姫達を従えるリヴァイアサンは目を細め、妖しく微笑む。
「さあ、世界を海で満たしましょう。水面に映った月は何よりも綺麗でしょうから」
 光の竹林には淀みが溜まり、いずれ大渦が支配する領域へと変わる。
 やがてそれは、世界に滅びを齎す一端になっていく。

●羽衣と大渦
 カクリヨファンタズムの竹林は、夜になるとでたらめに光るのがお約束。
「特別なお祭りがある日だとか、強い霊力が宿っている竹には新しく生まれた妖怪がいる場合もあるんだけどね。ほとんどは何もいないはずなの」
 困った状況なのよ、と話した花嶌・禰々子(正義の導き手・f28231)は幽世の竹林について語り、現状について説明していく。
 現在、百鬼夜行の影響であちこちの竹から『光るかぐや姫の群れ』が出現している。
「彼女達は生まれたばかりの小さな東方妖怪ちゃんよ。けれど竹林に現れたリヴァイアサン天女の力を受けて、かなりの戦闘力を与えられているの」
 リヴァイアサン天女は辺り一帯を海にしようとしているらしく、そうなる前に対処しなければならない。しかし、骸魂に操られたかぐや姫達が天女に近付こうとする者に攻撃を仕掛けてくる。
「しかも、かぐや姫ちゃん達とは思いっきり戦い辛いの。もう少し育てばあたし達みたいに頑丈になれるんだけど、生まればかりだから全力で殴ったら死んじゃうのよ」
 そんなかぐや姫の大群を凌ぎつつ、リヴァイアサン天女を倒す。
 難しい状況だが、天女の方は倒しさえすれば骸魂から解放される。それゆえにどうにかして纏めて助けたいところだ。
 少し悩むような表情を見せた禰々子だったが、すぐに顔をあげた。
「でもね、君達ならかぐや姫ちゃんも天女さんも絶対に助けられって信じてるわ!」
 光が満ちる場所が昏い海域に変えられる状況は見逃せない。
 現在の竹林はこれまでの状態のまま。今ならまだ、全部を救うことが出来る。そういって双眸を細めた禰々子は力強く笑む。
「だってね、あたしは知ってるもの。みんなの心にも正義が輝いてるって!」
 そうして禰々子は皆の無事を願い、戦場に赴く仲間を見送った。


犬塚ひなこ
 こちらは『大祓百鬼夜行』のシナリオです。
 カクリヨの光る竹林に骸魂妖怪が現れ、かぐや姫を操っています。出来る限りかぐや姫を助けながら、骸魂を倒しましょう!

 今回は完結重視の運営です。
 【先着四名様】は確実に採用をお約束します。
 以降は時間が許す限りの少数採用になる予定です。成功度を達成できる数のプレイングを頂いてから一日~二日での完結を目指します。よろしくお願いします!(先着でも、公序良俗に反しているプレイングは採用できかねます)

●ボス戦『リヴァイアサン天女』
 骸魂に飲み込まれた羽衣伝説の天女。
 シンボルである羽衣は海の力を司る水の羽衣と化し、右腕や左脚は海水化しています。放っておくと辺り一帯を大渦に巻き込んで海域に変えてしまうので、その前に攻め込むのが今回の戦いとなります。
 倒すことで天女を解放できます。遠慮なく思いきり戦ってください。

●プレイングボーナス
『かぐや姫の大群に対処する』

 かぐや姫の妖怪達は手乗りサイズのちいさな少女の姿をしています。
 かなりの大群で押し寄せて、念力を使うことで邪魔をします。操られてはいますが、呼びかけることも無駄ではありません。真正面から戦う場合、気を失う程度に威力を弱めて倒すという戦法も有効です。

 どのような対処をしていくかは皆様にお任せします。得意な方法でどうぞ!
433




第1章 ボス戦 『リヴァイアサン天女』

POW   :    伝説の序章
【海の力を纏った黄金の槍による攻撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に空いた穴に海水が満ち】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    羽衣伝説
【水の羽衣が高速回転して飛行形態】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【が貫通力のあるウォータージェット】を放ち続ける。
WIZ   :    レジェンドオブリヴァイアサン
海の生物「【リヴァイアサン】」が持つ【海水で大渦を創り出す等】の能力を、戦闘用に強化して使用する。

イラスト:姫柴有佑

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はピオネルスカヤ・リャザノフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルーファス・グレンヴィル


へえ、竹って本当に光るんだな
いつか聞いた事がある昔話を思い出す
しかも産まれたのが手乗りサイズって……
不服そうに唇は尖り、後頭部を掻き毟る

ま、やるしかねえか
お前らの事も全部守ってやるよ

って格好つけてる暇がねえ!
押し寄せるかぐや姫の大群
得物を振り回して風を起こすと
うっかり怪我させそうだからなあ

ひらり、ひらり、と
遊ぶように攻撃を躱しつつ
──ま、オレにはコレしかねえか

来いよ、ナイト!

相棒竜の名を呼んで構える槍
一定の距離を保ちつつ
向かってくるかぐや姫には
手心加えた攻撃で真正面から相対する
誰ひとりとして殺さねえ
犠牲になんてさせねえから

あ゛? 天女? 容赦なんてしねえよ
我慢した分、一発、豪快にぶちこむぞ!



●終焉の始まりを
 今は昔――。
 もと光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。

 そのような昔話をいつかに聞いたことがある。
 ルーファス・グレンヴィル(常夜・f06629)は目を細め、光り輝く竹林を見遣った。
「へえ、竹って本当に光るんだな」
 まるで蛍の光のように淡く明滅する竹。百鬼夜行の異変によって生まれた妖怪もまた、昔話と同じように三寸ほどだという。
 ルーファスは自分の掌を広げてみる。その上に乗る程度の大きさの少女を思うと、不服そうに唇が尖った。片手を後頭部に当てたルーファスは髪を掻き毟る。
「ま、やるしかねえか」
 竹林の奥に踏み入ったルーファスは辺りの気配を探った。
 葉の香りに交じる水の匂いと渦巻く水流。それを辿っていくと、多くの気配と邪気が満ちる領域があった。其処には件のかぐや姫達と、その奥に控えるリヴァイアサンの骸魂を宿した天女が見える。
「お前らの事も全部守って――」
「リヴァイアサン様の邪魔はさせません」
「滅します。誰であろうと、私達が死のうとも」
 ルーファスがかぐや姫達に宣言し終わる前に、大群からそのような声が響いてくる。姫達の言葉で彼の声が掻き消されてしまった。しかも、既にかぐや姫はルーファスに迫る勢いで駆けてきている。
「って格好つけてる暇がねえ!」
 押し寄せてきた姫達は可愛らしいが、如何せん大群すぎる。
 普通ならば得物を振り回して対抗していき、周囲に風を起こすくらいは出来ただろう。だが、そうすると勢い余ってうっかり怪我をさせそうだ。
「仕方ねえなあ」
 ルーファスは地を蹴り、竹と竹の間を縫うように駆けていく。
 背後から念力が迫ってきているが、彼は闇に身を紛れさせることでかぐや姫達の狙いを狂わせていく。
 ひらり、ひらり、と駆けゆく姿はまるで追い掛けっこをしているかのようだ。
 生まれたばかりだというのに戦いに巻き込まれた妖怪達。本当は戦いより遊戯に興じる方が良かっただろう。
 ただ操られているだけの彼女達を葬る心算は、ルーファスにはない。
 軽く後ろを振り向き、かぐや姫の大群が散らばったことを確かめる。ああして駆けることで群れを分断させたのだ。
「――ま、オレにはコレしかねえか」
 ルーファスはそのまま彼女達に向き直る。
 腕を高く掲げ、呼ぶのは相棒竜の名。
「来いよ、ナイト!」
 応える聲と共にルーファスの手の中に槍に変じたナイトが収まった。大群と一定の距離を保ちつつも、彼はひとりひとりに狙いを定める。
 ふと、槍越しにナイトの意志が伝わってきた。絶対に守ってあげたい、と。
「分かってるぜ、誰ひとりとして殺さねえ」
 彼らは手心を加えた一閃で以て真正面から姫に相対する。
 犠牲になんてさせない。
 その思いと共に得物を振るっていくルーファスは次々と姫を気絶させる。悪いな、と告げた後に彼は天女の元に走り込んでいった。
 渦巻く水が大きくなっている。
 どうやら骸魂は周辺を海に変える為の準備を整えていたようだ。
「……姫達は貴方を止められませんでしたか」
「あ゛? あいつらには容赦したが、てめぇには容赦なんてしねえよ」
 リヴァイアサンを見据え、ルーファスは竜槍を鋭く構えた。これまで我慢した分、骸魂には全力で立ち向かう気概だ。
 ルーファスは思いきり槍を振りあげる。
「ナイト! 一発、いや何発でも! 豪快にぶちこむぞ!」
 刹那、槍の鋒が月光を反射した。
 そして――此処から更に激しい戦いが巡ってゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

泡沫・うらら
あらあら大層な夢だこと
水面に映る月が何よりも美しいのには同意しますけども
今もう既に陸地より海の方が広いやないの
これ以上広げてどないしはるおつもり?

産まれたばかりの幼子たちは泳ぎも得意やあらんやろ
自然の中にある水と
彼女の持つ海をも操り
幼子達の許へとお友達を届けましょう

ふふ、この子達と遊んでくれはる?

様々な海のいきものを成した群
触れれば最後、其は子らを取り巻く水と成り
腰ほど迄に巻き付いて動きを制限する

少しの間大人しくしといてね

困ったお姉さんが差し向ける三又の槍の一振りには瞬くも
同じく海に住まう生き物やもの
大渦も濁流も、大して怖くはあらへんよ

海で本当に怖いのは、そう
――凡てをも凍らす空洞の氷柱やから


都槻・綾
生まれたばかりの眼差しに
本来ならば
新しい世界への期待と煌きを映すはずだろうに

いとけない姫君たちの無垢ないのちが
奔流に飲まれ溺れるみたいに
戦に巻き込まれてしまっているから
知らずほんのり眉尻が下がる

小さな吐息に乗せた詠唱は
馨遥の柔らかな子守歌

次に目覚めた世界はきっと
美しく耀いていますよ
だから――今一度、おやすみなさい

小さな輝夜姫達も
荒ぶる天女殿も
眠りへと導こう
幼子達を決して傷つけやしない

例え
羽衣の君への誘眠は
極いっときだけだったとしても
隙を作れたら重畳

疾駆しつつの抜刀で踏み込み
凍てし剣閃で
冴え冴えと海の女神を斬り薙ぐ

さぁ
小さな姫君達も
身を挺した天女殿も
月影に清められたまっさらな世界に
まみえにおいで



●遍く海は遠く
 一帯を海に変え、全てを水で満たす。
 リヴァイアサンに飲み込まれた天女の目的は荒唐無稽なれど、今は本当に実現出来うるほどの力が渦巻いている。
「あらあら大層な夢だこと」
 月光が射す竹林。その最中に訪れた泡沫・うらら(混泡エトランゼ・f11361)は穏やかに双眸を細める。
 その隣には都槻・綾(絲遊・f01786)も訪れており、光る竹林を見据えていた。
 視線の先に見えるのは、ちいさなかぐや姫の大群。
 生まれたばかりの眼差しは鋭く冷たい。
(――本来ならば、新しい世界への期待と煌きを映すはずだろうに)
 綾は頭を振り、操られた姫達を思う。
 そして、その更に奥にはリヴァイアサン天女の姿もあった。
 いとけない姫君達。その無垢ないのちはいずれ、骸魂が起こす奔流に飲まれてゆくのだろう。意思を奪われ、戦に巻き込まれてしまった彼女達を見つめる綾。その眉尻は知らぬうちにほんのりと下がっていた。
「貴女は此処を海にしたいと願っているのですか?」
「ええ、そうです」
 綾が確かめるように問うとリヴァイアサンは短く答えた。うららはその声に対し、そっと言葉を返す。
「水面に映る月が何よりも美しいのには同意しますけども」
「でしたら、邪魔をなさらぬことです」
 対するリヴァイアサンは敵意を向けてきた。首を横に振ったうららは、自分は海を広げる手伝いをしたいわけではないと断じた。
「今はもう既に陸地より海の方が広いやないの。これ以上広げて、竹林を壊して、それからどないしはるおつもり?」
 うららは問いかけてみたが、リヴァイアサンは答えない。
 滅びを齎す存在として顕現した骸魂は海と陸の比率など気にもしていないのだろう。ただ、此の場所を自分の領域に作り変える。それだけの理由で多くのものを巻き込もうとしているに違いない。
「滅びを願う貴女とは相容れなさそうですね」
「お行きなさい、姫達」
 綾が身構えると、敵も攻勢に入っていく。
 リヴァイアサンが海水化した片腕を掲げると、その言葉に従ったかぐや姫の大群がうらら達に向かっていく。ああして操られている妖怪達も、周辺が海になってしまえばみんな溺れてしまうだけだ。
「産まれたばかりの幼子たちは泳ぎも得意やあらんやろ」
「わたくしの知ったことではありません」
「まあ、酷いおひとやね」
 尚も冷たく語るリヴァイアサンに対し、うららは肩を竦めた。
 その間にもかぐや姫達はうららと綾に迫ってきている。どうやら念力を用いて此方の動きを止めようとしているようだ。
「邪魔はさせません」
「全てを海に、全てに滅びを」
 そのように呟き続けている姫達の瞳には、やはり光は映っていない。綾は小さな吐息に詠唱を乗せ、馨遥の柔らかな子守歌を紡いでいく。
 戦わずともいい。従わずとも構わない。
「次に目覚めた世界はきっと、美しく耀いていますよ。だから――」
 今一度、おやすみなさい。
 綾が言葉と共に巡らせた馨遙の力は、ちいさな姫達を眠りに導いていく。
 荒ぶる天女も、いずれ眠りへ。
 幼子達を決して傷つけやしないとして、綾は力を巡らせ続ける。
 同時にリヴァイアサンはうららに狙いを定め、海水で大渦を創り出していた。このままでは姫達も巻き込まれる勢いだ。
 されど、うららは冷静に対処していく。
 先ず自然の中にある水を。それから相手の持つ海をも操る。其処から水で出来た海のいきものたちを召喚したうららは、姫達に微笑みかけた。
「ふふ、この子達と遊んでくれはる?」
 多すぎるかぐや姫に対して、うららは様々な海のいきものを成した群を遣わせる。それに触れれば最後、いきものは姫達を取り巻く水へと変じていく。
 無理に閉じ込めるのではなく、腰ほど迄に巻き付いた水は相手の動きを制限する。
「……!」
「ああ、動けません……」
「少しの間大人しくしといてね」
 かぐや姫はじたばたしているが、水のおともだちは彼女らを決して離さない。これで姫の行進は封じられた。綾の力で眠りに落とせば姫は抵抗も出来ないので、リヴァイアサンの大渦の軌道から逸してやることも出来る。
「さあ、後は羽衣の君だけです」
 骸魂への誘眠は、成功しても極いっときだけだろう。されど、少しでも隙を作れれば重畳だと考え、綾は更なる力を紡ぎ続けた。
 うららもふわりと游ぎ、リヴァイアサンに向き直る。
「さて、次は困ったお姉さんやね」
「どうやら貴方がたは一番に死にたいようですね」
 相手が差し向けるのは海の力を纏った黄金の槍。その一振りには瞬きはしたが、綾もうららも怯みなどしない。
「いいえ、潰える気などありませんよ」
 綾は瞬時に疾駆した。距離を詰めながら抜刀した彼は一気に踏み込み、凍てし剣閃で以て黄金の槍を弾こうと狙う。
 冴え冴えした一閃が海の女神を斬り薙ぐ。其処に続き、うららが攻撃に移った。
 うららとて同じく海に住まう生き物。どれほど渦が迫ろうとも退くことはない。
「大渦も濁流も、大して怖くはあらへんよ」
「余程の自信がおありのようですね。ですが、そんなもの――……?」
 うららと天女の視線が重なった。だが、不意に天女は違和を感じる。そのとき既にうららの力が発動しており、全てが遅かった。
「海で本当に怖いのは、そう……凡てをも凍らす空洞の氷柱やから」
 うららは静かに微笑む。
 その途端、敵の水流と海のいきもの達が衝突した。其処から形成されていくのはブライニクル現象。海の悪魔すら貫く激しい力が戦場に広がる中、綾がもう一度斬り込む。
「さぁ、小さな姫君達も、身を挺した天女殿も」
 ――月影に清められたまっさらな世界に、まみえにおいで。
 冷謐に凍れる真冬を思わせる刃が振り下ろされた。黎明の如き清澄な刀に貫かれた骸魂が揺らぎ、水流が零れ落ちてゆく。
 だが、リヴァイアサンの力はまだ完全に削りきれてはいない。
「貴様ら……よくも……」
 怒りの波動が満ち始めており、戦いが更に激化していくだろうことが分かった。
「姫君を守りましょう」
「そうやね、誰も殺させたくあらへん」
 綾とうららは頷きを交わし、穏やかな眠りに落ちている姫達を退避させていった。
 渦巻き続ける水に月を映させぬため。そして、この領域に平穏を取り戻すためにも、猟兵達は力を揮っていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎

海は俺も得意だ、そう簡単には死んでやらないぞ
ここからは通行止めだ、かぐや姫

WIZで判定
孔雀輪を使って【空中機動】【空中浮遊】をして移動
かぐや姫には攻撃が届かない場所まで上昇してから【忍び足】【早業】【ダッシュ】で近づき、敵が目視可能になれば風の【結界術】を自分と敵の周囲に展開して寄せ付けないようにする【逃亡阻止】
そのまま指定UCを【属性攻撃】【全力魔法】【早業】を使いながら発動し、敵を【切断】する
海に引き込まれれば【息止め】【素潜り】【深海適応】で対処
必要なら【激痛耐性】【覚悟】【気合い】でダメ―ジを受ける


大町・詩乃
誰も死なせずに解決します!

かぐや姫さん達に「貴女達はこれから生きる意味を自ら探すのです。誰かに役目を押し付けられて、そのまま受け入れてはいけませんよ」と説得。
響月を取り出して吹奏による音の属性攻撃・範囲攻撃・マヒ攻撃で傷つけずに無力化する。

彼女達を巻き込まぬ様、空中浮遊・自身への念動力で空を飛んで彼女達から離れ、リヴァイアサン天女に向かう。

黄金の槍は第六感で予測して、空中戦・見切りで回避。
海水の上に立つ彼女周辺に向けて、雷の属性攻撃・高速詠唱・範囲攻撃で弱めの雷撃を放って痺れさせ、一気に詰め寄ってUC:改心の一撃による平手打ちを放つ。

貴女が悪い人でない事は知っています。
どうか戻ってきて下さい。



●風衝と雷撃
 光り輝く竹林に水流が渦巻いている。
 竹から生まれたばかりのちいさな妖怪達はざわめき、リヴァイアサンの為ならば死すら厭わない姿勢を見せいていた。
 月光が薄く照らす夜の景色を見据え、ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は戦いへの意思を示す。視線の先には多くのかぐや姫と、大渦を起こそうとしているリヴァイアサン天女の姿があった。
 竹林だと言うのに、徐々に辺りに満ちる潮の香りが色濃くなっている。
 それは死の匂いも同然だと感じたルイスは、リヴァイアサンに強く宣言した。
「海は俺も得意だ、そう簡単には死んでやらないぞ」
「そうです。それに、誰も死なせずに解決します!」
 同様に竹林に訪れていた大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)も、己の中で燃える思いを言葉にした。かぐや姫も天女も骸魂の邪気に操られているだけなら、詩乃にとっては絶対に助けたい存在だ。
 生まれたばかりとはいえ、かぐや姫達にも意志はあるはず。詩乃は意気込み、ルイスと共に骸魂に抗うことを決めた。
「私は説得をします。その間の対処はお願いできますか?」
「わかった、互いに力を尽くそう」
 詩乃からの願い出に頷きを返したルイスは矢面に立つ。見つめる先には姫の大群が迫っており、念力で此方の動きを止めようとしてきていた。
 されど、ルイスは慌てることなく真っ直ぐに敵を捉える。
「ここからは通行止めだ、かぐや姫」
 孔雀輪を使って空中機動の力を巡らせたルイスは、宙を浮遊して移動していった。
 ルイスはそのまま彼女達には攻撃が届かない場所まで上昇していく。首魁に向かっていく彼の行動を見守り、詩乃は姫達に視線を巡らせた。
「リヴァイアサン様に近付かないで」
「邪魔をするものは倒します」
「全てを滅ぼします……」
 そのような言葉を虚ろに繰り返すだけの姫達は見ていられない。詩乃はかぐや姫に言葉と思いを届けたいと願い、強く呼び掛けていった。
「かぐや姫さん達、聞いてください!」
「……?」
 詩乃が懸命に声を張り上げると、かぐや達の意識が此方に向く。
 好機だと感じた詩乃は思いの丈を伝えていった。
「貴女達はこれから生きる意味を自ら探すのです。誰かに役目を押し付けられて、そのまま受け入れてはいけませんよ」
 そして、響月を取り出した詩乃は吹奏による音を広げてゆく。其処から巡るのは属性を込めた範囲攻撃。更には麻痺を伴った音。動けなくすることでかぐや姫を傷つけずに無力化するのが詩乃の狙いだ。
「う、うう……」
「全てを、滅ぼし……たくない……」
 すると、かぐや姫達が苦しみはじめた。それは詩乃の攻撃によるものではなく、必死に骸魂の支配に抵抗しているゆえの苦しみのようだ。
「待っていてください。すぐに解放して差し上げますから」
 詩乃は動けなくなった彼女達を巻き込まぬよう、空中に浮遊した。自身への念動力で空を飛ぶことでかぐや達から離れ、リヴァイアサン天女の方に向かっていく。
 その向こうでは逸早く天女に接触したルイスがいる。
 彼は先程、忍び足からの早業で駆け、敵が目視可能になったところで風の結界術を張り巡らせていた。その力は自分と敵の周囲に薄い風を展開するもの。
 詩乃が足止めしてくれたかぐや達は勿論、新たな増援が来たとしても、余程のことがなければこの結界に入って来られないだろう。
 そうしてこの風はリヴァイアサンの逃亡阻止にもなっている。
「後はこの方を倒すだけですね」
「容赦はしない。やろうか」
 駆けつけた詩乃が近くに布陣したことを知り、ルイスは身構え直す。
 ルイスは風界連衝波の力を更に強く巡らせた。属性を加え、全力の魔力を加えた魔法力は素早く打ち出される。
 発動した衝撃波はリヴァイアサンを貫き、敵の身を切断していった。
 だが、相手も数多の妖怪を操れるほどの骸魂だ。不敵に笑ったリヴァイアサン天女は海の力を纏った黄金の槍を振り上げた。
「その程度でわたくしが倒せるとでも?」
 既に交戦に入っていた猟兵から受けた攻撃もあり、リヴァイアサンは気が立っているようだ。詩乃は振るわれた黄金の槍は第六感で予測し、一気に躱す。
「倒さなければならないのです。貴女を……いえ、骸魂を!」
 詩乃は空中に舞い上がり、繰り出される連撃を回避していった。
 其処から、海水の上に立つ彼女の周辺に向けて詠唱を紡ぐ。雷の範囲攻撃を広げた詩乃は弱めの雷撃を水に迸らせる。
 されど、リヴァイアサンもルイスを大渦に引き込もうとしていた。
 迫る大波に気付いたルイスは、無理に抗ってはいけないと察する。敢えて海に引き込まれた彼は息を止め、素潜りと深海適応の能力で対処していった。
 大渦が身体を穿っても、痛みは耐性と覚悟で何とかなる、気合いで以て水流から抜け出たルイスは、ひといきに狙いを定めた。
「――穿つ」
 其処から放たれた連衝波がリヴァイアサンを幾度も貫いていく。
 それにより、相手の身体が揺らいだ。詩乃はルイスが好機を作ってくれたと感じ取り、雷撃を次々と放っていった。そして――。
「く、ぅ……動けない……」
「今だ」
「はい、行きます……!」
 リヴァイアサンが身動きできなくなったところでルイスが呼び掛け、詩乃が応える。
 詩乃は敵に一気に詰め寄り、改心の一撃による平手打ちを放った、
 その一撃は対象を大切に想う人達の願い。痛みと共に昔の自分を取り戻して欲しいと願い、詩乃はニッコリと笑った。
「貴女が悪い人でない事は知っています。どうか戻ってきて下さい」
「あ、ああ……」
 一瞬、天女本来の優しい眼差しがルイスと詩乃に向けられた。だが、骸魂の力はまだ僅かに彼女の中に残っているらしい。
「まだ……まだ、だ……」
 天女の視線はすぐに冷たいものに戻り、その身が大渦に包まれる。
「あと少しというところだな」
「ええ、最後まで諦めません」
 ルイスと詩乃は強い意志を抱き、続く戦いへの決意を深めた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

疎忘・萃請
小さき月の姫君たちは
攻撃力が高くて打たれ弱い、か
なるべく会敵せず、天女を解放してやらねば

かぐや姫も、天女も、愛しきふたつの故郷も
全て救ってみせる

ぴかぴか光る竹林を、暗い森へと塗り替える
夜の森は鬼の遊び場
隠れ鬼の始まりだ

木の葉に紛れるように隠れ
木から木へ移り天女を探す
小さき姫君たちはきっと樹上まで来れないであろう
森を海へと変えられる前に、天女を見つけ出してやろう

樹上であれば、水に足を取られる事もないであろう
奇襲をしかけ、一発勝負だ
ひと息に飛び出し、明食鎖をぶち当てる
アタシだけでは無理であろうが
ここには、他の猟兵もいるのだ
一瞬でも動きを止められれば僥倖


ユヴェン・ポシェット
光る竹…クーと出会ったのも、そうだったな。
生まれた生命を助ける為にも俺達にできる事をしよう

タイヴァス、テュットは小さな妖怪達を頼む。
タイヴァスは羽撃きで風を起こし、動きを抑えてくれ。テュットも妖怪達に布を被せていって妖怪達を一時止めてくれ、それからクーのサポートも頼む。
クーは、お前に出来ることをやるんだ。怪我をしている妖怪がいないか探してくれ。そして、誰よりも妖怪達に寄り添えるのはお前だろう、だから彼らに声をかけ続けて欲しい。…無理はしなくていいから。

俺達は天女の方へ、海の力を持つ槍に対し極熱の黒き槍で対う。
海水をも蒸発させる程の熱で、あの者を解放する。行くぞミヌレ、全力でいくぞ



●凡てを掬い取る為に
 月光が揺らめき、竹林は輝く。
 輝く夜と表すに相応しい情景が目の前に広がっている。通常であれば美しい穏やかな景色ではあるが、今の此の場所には不穏な気配が満ちていた。
「光る竹……クーと出会ったのも、そうだったな」
 ユヴェン・ポシェット( ・f01669)は以前に訪れた魂魄祭を思い返し、自らが連れている真白な狐を見遣る。短く鳴いた稲荷狐は光る竹を懐かしそうに眺めていた。
「その仔も竹から生まれたのか」
 其処に声を掛けたのは疎忘・萃請(忘れ鬼・f24649)だ。
「ああ、そちらも同じか」
 萃請の傍には白足袋の黒猫、燐が控えている。ユヴェンは彼女の物言いから、稲荷狐と黒猫が同じ魂魄祭の生まれなのだと察した。
 所変われど、此の竹林で生を受けたかぐや姫達もクーと燐の仲間と呼べる。
「生まれた生命を助ける為にも俺達にできる事をしよう」
「そうだな、見過ごせはしない」
 かぐや姫も、天女も、この世界で平穏に楽しく生きるべき妖。
 愛しきふたつの故郷も全て救ってみせる。
 萃請が密かに決意する様を見つめ、ユヴェンは頷いた。視線を交わしあった二人は共に進むことを決め、竹林の奥に向かう。
 暫く歩いたところで光が宿っていない領域が視界に入った。おそらくあれはかぐや姫達が生まれた後の竹だ。
 小さき月の姫君達は力を与えられているが、その身は打たれ弱いという。天女を解放できたとしても姫達を犠牲にするわけにはいかない。
 周囲には水流が渦巻いており、リヴァイアサンの気配も濃くなっている。
「そろそろか」
「姫達とは会敵したくはないな。少し場を変えようか」
 ――もういいかい。もういいよ。
 ユヴェンに断りを入れた後、萃請は力を巡らせていった。言の葉と共に妖力が広がり、ぴかぴか光る竹林が暗い森の景色に塗り替えられていく。
「夜の森は鬼の遊び場。さあ、隠れ鬼の始まりだ」
 萃請は木の葉に紛れた。
 隠れ潜む萃請は、下駄の音すら立てずにそのまま枝上に駆ける。
 見事だな、と言葉にした周囲の森を見渡したユヴェンも樹々の合間に身を隠した。
 緑が生い茂る森であるならばユヴェンにとっても好都合だ。
「タイヴァス、テュットは小さな妖怪達を頼む」
 大鷲とクロークに姫達の対応を願ったユヴェンは、抱えていたクーを地面に下ろす。タイヴァスは羽撃きで風を起こして動きを抑え、テュットも布を被せていくことで妖怪達を一時的に止めていく狙いだ。
 役割を与えられたタイヴァス達の間で、クーは尻尾をぴんと立てていた。
「クーは、お前に出来ることをやるんだ。怪我を見てやったり、彼女らに声をかけ続けてやったりも出来るだろう。……でも、無理はしなくていいからな」
 ユヴェンの声に尾を振ることで答えたクーは一気に駆けていった。ユヴェンはその背を見送り、頼んだぞ、と告げる。
 きっと今、誰よりも妖怪達に寄り添えるのは幽世生まれのクーだ。
 狐妖に続いて、天女やかぐや姫達も救う。
 その気持ちはユヴェンにもクーにも強く宿っていた。
 そうして、ユヴェンは萃請の後を追っていく。背後からは妖怪を止める大鷲とクロークの動きが感じられ、クーの懸命な鳴き声も聞こえた。
「待たせた。かぐや姫達はもう大丈夫だ」
「そうか、それなら行こうか」
 木から木へ移り、燐と共に天女を探して萃請の横にユヴェンが駆けつける。姫達は樹上まで来られないので二人が相手をする必要はない。
「森を海へと変えられる前に、天女を見つけて……と、彼処か」
「ああ、居たようだな」
 萃請は水流が生まれている箇所を見つけ、ユヴェンも其方に目を向ける。
 リヴァイアサンとは既に別の猟兵達が戦っており、辺りには風の領域が展開されていた。ユヴェンは萃請に目配せを送り、自分が先に向かうと伝える。
「行くぞミヌレ、全力でいこう」
 竜槍に呼び掛けたユヴェンは先んじて跳んだ。
 一気に接敵した彼の手の中で黒き竜槍が熱く吼える。槍の姿であれど、ミヌレも操られた妖怪達を案じていた。天女に宿る骸魂を倒せば皆が助けられるのであれば、ミヌレも全力を出すのみ。
「新手ですか。鬱陶しいことです」
 ユヴェンの到来に気付いたリヴァイアサンは冷たく吐き捨てた。
 相手は海の力を持つ槍を構えたが、此方も極熱の槍で対抗していくだけ。刹那、双方の槍が真正面から衝突した。
 水流が巡るが、ユヴェンの放つ一閃は海水をも蒸発させる程の熱を持つもの。
「負けるか……。お前や姫達を解放するまでは!」
 ユヴェンとリヴァイアサンが鍔迫り合うように力をぶつけあう。
 その間に萃請は樹々の上を駆け抜け、敵の死角まで回り込んでいった。大渦が相手の周囲に浮かんでいるが、萃請は双眸を鋭く細める。あの間を縫って駆けて、飛び込んで――狙うのはただひとつ。奇襲による一発勝負。
 ひといきに飛び出した萃請は分銅鎖を振り上げた。勢いに乗った明食鎖が迫ってくることを逸早く察したユヴェンは、素早く身を引く。
 それによって均衡を崩したリヴァイアサンが、はっとして振り向いた。
 だが、そのときには既に鎖が背に迫っていて――。
「喰らうといい」
 妖の魂ではなく、この一閃を。
 萃請が放った一撃は深く、そして重く、骸魂を打ち貫いた。
 やがて、戦いは終わりに向けて巡りはじめる。誰の命も魂も取り落とさぬと決めた猟兵達は一気に骸魂に向かう。
 手繰り寄せたい未来は水底に沈む暗いものではない。
 たとえ昏くとも、やさしい月光の耀きが広がる平穏な世界だ。


●光は此処に
 穿たれ、斬り裂かれ、打ち貫かれ、リヴァイアサンの骸魂が叫びをあげた。
 同時に渦巻いていた水流の勢いが収まっていく。骸魂の力が猟兵達によって削られる最中、全てのかぐや姫達は誰も傷つけられることなく無力化された。
「もう少しばかり眠っていてくださいね」
「私も最後まで皆さんをお守りします」
 綾の優しい力によって眠る姫達を守護する形で、詩乃が煌月の薙刀を構える。綾は其処から更に浄化を齎す馨を響かせた。
 骸魂が一瞬の夢路に誘われた刹那、うららが水の友を呼ぶ。
「うちらの力、めいっぱいに見せてあげる」
 リヴァイアサンの起こした渦を打ち消す水は鋭く巡っていった。苦しげに呻いた骸魂は天女の身体を支配したまま、その場から逃げようとしている。
 しかし、ルイスが張り続けている風の結界がその逃走をしかと阻止していた。
「かぐや姫は皆無事だ。後はその人だけだな」
「ああ、やろう」
 ルイスに続き、萃請が樹々で出来た迷路を更に作り出す。妖力の森は骸魂が逃れることを阻み、大渦すら巻き込んで広がっていった。
「どうして……ああ、海が森と風に喰われていく……!」
 骸魂は錯乱しながら狼狽える。
 最早、渦を作り出す力も残っていないのだろう。其処に駆けていくのはミヌレの竜槍を握るユヴェン。そして、ナイトが変じた槍を差し向けるルーファスだ。
 挟撃の形で黒槍を構えた青年達は一瞬だけ視線を交わし、意思を重ねた。
 もう遠慮も手加減も、衒いも要らない。
「ここで止める」
「海の侵略なんていらねえ。これで終わりだ!」
 右から駆けたユヴェンはリヴァイアサンの槍を極熱で弾き飛ばした。左から駆けるルーファスは骸魂が宿る天女の右腕に向け、黒竜の槍を突き放つ。
 二頭の竜が吼える轟音が響き渡った、次の瞬間――海の渦が弾けて散った。

 竹林に穏やかな光が輝きはじめる。
 かぐや姫達はすやすやと眠っており、骸魂から解放された天女も猟兵の介抱を受けていた。結界も森の景色も解かれ、辺りは普段通りの林に戻っている。
 やがて天女は在るべき場所に帰り、此処から生まれた姫達もこれから幽世の新たな仲間となるのだろう。
 すべてを無事に救った猟兵達は笑みを交わす。
 百鬼夜行の戦いはまだ続くが、此処で確かに守ったものがある。
 猟兵達を照らす明光はとても優しく、空に浮かぶ月は静かに燿き続けていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月11日


挿絵イラスト