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大祓百鬼夜行⑯〜不正解は襤『褸滓』に詰られる？

作者：雨都瑣枝

●謎の番組
　大祓百鬼夜行……それは、カクリヨファンタズムの果てで蘇りし『大祓骸魂』を猟兵に倒してもらうため、一部の妖怪たちが身を呈して実行した捨て身の作戦。
　だが、骸魂の脅威はカクリヨファンタズムに留まらず、UDCアースにまで迫っていた。
　UDCアースのゴミ置き場。
　果たしていつから捨てられていたかわからない、長らく放置されていたはずのテレビに、突然異変が起きた。
「さあ始まりました！　カクリヨ縦断アルティメットクイズ！」
　『存在しない筈のテレビ番組』が映し出されたのだ。
「今日は夏から始まる新ドラマの出演者の皆さんに賞金総額４００万円をかけたクイズに挑戦していただきます！」
　どうやら出演者が船に乗って３Ｄ処理された海を進みながらクイズに答え、問題ごとに決まった賞金を積み立てていく番組らしい。
「視聴者の皆さんも、天翔人魚が出題する超難問クイズにぜひ参加してくださいね！　リモコンのボタンから……」
　もし１問でもクイズに間違えると、出題者の妖怪『天翔人魚』が船を転覆させてゲームオーバー、今まで獲得した賞金も全て失うルールのようだ。

●でっど『おあ』あらいぶ
「それでは、賞金２００万をかけた、最後の問題です」
　画面が海から切り替わり、謎の部屋が映し出される。
　壁一面に何やら歯車や配線をびっしりと張り巡らせ、机の上に置かれたデスクトップパソコンが常に作動している、妙にメカニカルな一室だ。
　床には何故か、コの字型の釘が落ちていた。
「正解はどれでしょう」
　デスクトップパソコンのモニターへズームするカメラ。
　そこには、木、羽根、セメント、子ども、胃のイラストが表示されている。
　これらが回答の選択肢らしい。

●
「UDCアースに捨ててあるテレビを使って、骸魂妖怪がクイズ番組を始めたわ」
　掻巻・褥（家庭内女神・f16422）が集まった猟兵たちへ向かって説明する。
「番組を放置すると、UDCアースの現実世界が『番組内容の世界に切り替わって』しまうのだ。
　即ち、１問でもクイズに間違えると問答無用で妖怪が海に沈めてくる——常々溺れ死ぬ危機に直面した世界になってしまうという。
「そんな事態を起こさないためにも、みんなには『天翔人魚』を撃破して欲しいの。幸い今回は戦う必要が無いわ」
　何故なら、番組で出題されたクイズに正解さえすれば、物理的なダメージを与えずとも天翔人魚を倒せるという。
「今までにも色んな謎解きをクリアしてきたみんななら、超難問クイズだって正解できるわ。頑張ってね♪」
　褥はそう笑って、猟兵たちを送り出した。
　——ちなみに転送先はカクリヨファンタズム、天翔人魚が勝手に番組撮影しているスタジオである。気軽に乱入して欲しい。

第1章 ボス戦 『天翔人魚』

POW   :    〈鮫〉 【噛みつき】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【記憶を読み取り、精神的な弱点】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。 SPD   :    〈天〉 敵より【高い位置にいる】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。 WIZ   :    〈恋〉 【噛みつき攻撃】が命中した対象の【心臓】から棘を生やし、対象がこれまで話した【恋愛話（真偽を問わず）】に応じた追加ダメージを与える。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●最初の回答者
　カクリヨファンタズム。
「問題を間違えると溺れ死ぬ可能性があるクイズ番組……それって、ただのデスゲームでは？」
　と、骸魂妖怪の地味ながらも非道な所業へ、憤るよりも先にドン引きしているのは青葉・まどか（玄鳥・f06729）。
　丸眼鏡とポニーテールに結った黒髪、そして豊かな胸が印象的な、探索者の少女だ。
　それにしても、デスゲームとはげにごもっともなツッコミである。
「クイズ番組にもエンターテイメントは必要かもしれないけれど、流石に過激すぎだよ」
　いかに好奇心旺盛でノリと勢いだけで行動しているかのようなまどかでも、時にはこうして良識ある苦言を呈するようだ。
「さあ、超難問クイズに新たな挑戦者が現れました！　賞金２００万円目指して頑張ってください！」
　突然の闖入者にも動じず司会をこなす天翔人魚。そのプロ根性だけは見上げたものだ。
「罰ゲームも娯楽番組の範疇でぜひお願いするよ」
　にこっと愛想良く笑うまどかが注目したのは、床に落ちている『コの字型の釘』。
（「コの字型の釘には『かすがい』なんて呼び方もあるよね」）
　そう。鎹をわざわざコの字型の釘などともって回った言い方をする不自然さから、まどかは鎹こそがヒントだと気づいたのだ。
（「かすがい、ことわざにもあるよね……『子はかすがい』」）
　まどかの連想は果たして正しいのか。
　自信を持ってフリップへペンを走らせるまどかだ。

●２番目の回答者
　続いて。
「さあ、シンキングタイムはたっぷりありますから、ゆっくりお考えくださいね。いかがでしょうそちらの方は！　賞金が手に入ったら何に使いますか？」
「そうだね。みんなで美味しいものでも食べにいこうか。何がいいかな。なんでも奢ってあげるよ」
　場を持たせるべく話を振る天翔人魚へ、ゆったりと応じるのはルキ・マーシトロン（🧟‍♂️・f24589）。
「おっと太っ腹な発言が出ました！　出演者全員に焼き肉を奢ってくださるそうです！！」
　ルキの返答を受けて、すかさずボケに走る天翔人魚——司会者が板についてきたのかもしれない。
「それでは回答をどうぞ～っ！！」

●結果発表
　同時にフリップを立てるまどかとルキ。
「私の回答は『子ども』だよ。どうかな？」
「ああ、クイズの答えだったね。それは『子ども』じゃないかな？ 」
　観客席から歓声が上がる。恐らくは予め用意されていた効果音用の音源だ。
「お２人とも答えは子どもですね。どうしてそう思われました？」
「ほら、言うだろう『子はかすがい』って。床に落ちてるコの字型の釘……たしか『かすがい』というのではなかったかな」
　澱みなく説明するルキ。
「なるほど、床に落ちていた釘は本当にヒントだったのでしょうか……さあ、子どもはら正解なんでしょうか！？」
　スタジオ内に緊張が走る。
　ぶーっ！
「残念、不正解で～す！」
　でも惜しい、と呻く天翔人魚は、我知らずダメージを受けているようだ。どうやら完全に見当違いな答えではないらしい。
　子どもは正解ではなかったが、鎹がヒントのひとつであるのは間違いないだろう。
　ただ、ヒントは鎹だけではない。
　部屋の雰囲気や、部屋の内外ひっくるめた全域に注目すれば、新たなヒントに気づけるかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●勘を信じて
「ふっふっふー、ついに最後の問題ですか！」
　アリルティリア・アリルアノン（バーチャル魔法少女アリルちゃん・f00639）は、いかにも最初から番組に出演してましたという風を装って、自信満々に振る舞う。
「視聴者の皆さんにもアリルのかしこさは充分伝わったと思いますが」
　さすが自称バーチャル魔法少女なだけあって、アリルティリアの舞台度胸とサービス精神はかなりのもの。
「ここまで来たら完全制覇で賞金もゲットしちゃいましょう！」
　高額の賞金がかかっていても臆せず動じず、いつものノリで高らかに宣言するのだった。
「これが最後の問題？　う〜ん、う〜ん…？」
　だからシンキングタイムの最中も、間を持たせようとするアリルティリアの饒舌は止まらない。
「あっ、アリル分かっちゃいましたよ！　床にコの字が落ちているという事は～……」
（「ある単語からコを落とした言葉が答えという事！」）
　何より、目を爛々と輝かせるアリルティリア自身、純粋にクイズを楽しんでいるのが伝わってくる。
（「部屋の中にあるもので単語の中にコが入るのは「パソコン」！　そこから「コ」を落とせば答えは……ぱ、パソ……ン……？」）
　一瞬、瞳から光が消えたり、
（「全然選択肢と関係ないじゃないですかー！？」）
　何やら悔しそうに頭を掻きむしったりと、ひとりで百面相しているのも可愛らしい。
「えーい、こうなったらカンです！　答えは『木のイラスト』！ 」
　そんなアリルティリアが、まるでテスト中に鉛筆を転がすかのようなやけっぱちの心地で繰り出した回答。
　フリップの上半分にパソンと書いたのを×印で消しているのが笑いを誘う。
「さあ、答えは合ってるのでしょうか？　正解はＣＭの後で！」
　天翔人魚の笑顔がどことなく引き攣っているのは、密かに受けた大ダメージを我慢しているからなのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●正解発表
「既に２００万積み立てられているなら、ここで降りれば良いのでは……」
　水鏡・怜悧（ヒトを目指す者・f21278）は、回答席に座るなり、サラッとボケてみせた。
「盛り上がらない？　そうですか」
　涼しい顔でひとりツッコミもこなす辺り、怜悧もといロキの秘めたお笑いポテンシャルは高そうだ。
「私、リアクション薄いのであまり盛り上がりは……あぁ、では私が正解したら、賞金で何か視聴者プレゼントしましょう」
　とはいえロキ本人はウケた自覚がないのか、場を盛り上げようと懸命に司会者とトークしている。
「何と、賞金で購入した商品を視聴者プレゼントですか！　これは初めての試みですね！」
　天翔人魚はもはや虫の息という可能性も高いのに、そうとは感じさせないハキハキした物言いで司会を続けている。
「何がいいでしょうか。一番面白いものをリクエストした人にプレゼント、にしましょう」
「ではでは、視聴者の皆さん、欲しいものを書いて公式ＳＮＳへリプライください！！」
　問題を正解されたら番組が終わってしまう——それは同時にUDCアースを超難問クイズ番組で塗り替える野望の頓挫であり、自身の死でもあるのに、クイズ番組の空気を保つべく決して焦りは見せまいとしているようだ。
「とはいえ、柔軟な発想は苦手ですのであまり期待しないでくださいね」
　ロキはそう断ってから、フリップへサラサラとペンを走らせる。
「さあ、ＣＭ中に現れた新たな挑戦者ですが、もう答えを書き終わったようです！」
　怜悧の立てたフリップには『木』と書かれている。
　ＣＭ前のアリルティリアと同じ答えに、スタジオが歓声に湧いた。
「さあ、正解は木なのでしょうか！？」
　緊張感を高める重低音のビートが鳴り響く。
　そして。
　ぴんぽんぴんぽーん♪
　明るいＳＥが響き渡って、スタジオ内を歓喜に包んだ。
「ぐはっ！　や～ら～れ～た～！！」
　司会者と船の妨害役の両方を担っていた天翔人魚が、ノリノリで敗北宣言をする。
「というわけで大・正・解～～！　正解は木でした！」
　せっかくですからお二人のどちらかに解説していただきましょう——とマイクを向ける天翔人魚。
「３Ｄ処理の海、配線に歯車にＰＣ……連想されるのは機械、つまり木か胃、でしょうか」
　先のアリルティリアは１００%勘で正解したため、怜悧が引き受けて説明する。
「そして落ちているのは鎹、同じ考え方であればカスが胃……ここで当たりを示すなら事前に２択にする意味もありませんから胃はハズレ、答えは木、ですね」
「お見事！　まさにその通りです！　それではお二人には賞金２００万円が授与されます！」
　見ると、３Ｄの海を渡っていた船は宝島に到着。
　いかにもファンタジーな見た目の宝箱から、賞金２００万円の小切手２枚が現れたのだった。
「それでは皆さん、また来週～～！」
　天翔人魚が笑顔でひらひら手を振る画を最後に、
　ぶつっ！
　ＵＤＣアースにて捨てられていたテレビの電源が突然切れて、画面は静寂を取り戻した。
　時を同じくして、天翔人魚も小切手と彼女に飲まれていた妖怪だけを残してスタジオごと消滅、猟兵たちはＵＤＣアースを謎のテレビ番組の脅威から守り抜いたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年05月14日 宿敵 『天翔人魚』 を撃破！