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大祓百鬼夜行⑯〜破滅のミリオンヒット〜

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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 UDCアースのとある不法投棄された場所に積み重ねられた箱型テレビ。
 そのうちの一つが、電気が通っていないにも関わらず突然画面が点き、映像を流し始めた。
 真っ暗な舞台の中央に座った女性に唯一のスポットライトが当たる。
「はっ!」
 掛け声の後、一心不乱に弾かれる三味線の音を聞く者はいない。しかし画面の片隅には「空前絶後の大ヒット」「ミリオン目前」という見出しが踊っていた。

「今回はUDCアースで行われているとあるライブ会場に突撃していただきます」
 そう言いながらルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)はとある山奥の、近隣に建物の表記ない場所を指し示した。
「ここに大量に投棄されたテレビを利用し、オブリビオンがある音楽番組を始めています。で、番組が完走してしまうと、その内容は本当の物になってしまいます」
 紹介している内容は何か、というと聞いた者から生きる気力を失わせ、自死を選ばせる物。番組ではそれが「世界中でミリオンヒットしている」ことになっている。
 もしこれが本当のことになってしまえば、四六時中あらゆるテレビラジオや街宣で流され、UDCアースの人々を病ませることとなるだろう。
 また、その合間合間に挟まれるCMもアーモンドミルクならぬ「青酸カリミルク」など人間が使ったら簡単に死ねるような物を平然と紹介しており、これまた成立してしまえば人々が容易に死ねる体制を敷くことが出来てしまう。
「邪魔さえ入らなければ勝手に相手が滅亡していくわけですから……中々にやり手のオブリビオンですね」
 というわけで、今回の目標は妖怪が本来狙っている番組内容の不成立。
 正面から演者を殴りにいって演奏を阻止する、番組の画面を編集して「大ヒット」という表記を変えてしまう、ライブに乱入して全く別の効力を持つ曲に塗り替えてしまう、条件は不明だが番組自体を打ち切ってしまうなどなど、不成立にする方法はいくらでもある。
 ただ、放送しているテレビを壊すことだけは意味がない。壊しても別のテレビにその役目が移され、続きから放送が流れてしまうからだ。
「制限時間はCM含めて30分。UDCアースに静かに忍び寄る危機を脱するため、ご協力よろしくお願いします」


平岡祐樹
 30分は深夜の音楽番組から取っただけで他意はありません。お疲れ様です、平岡祐樹です。

 このシナリオは戦争シナリオとなります。1章構成の特殊なシナリオですので、参加される場合はご注意ください。

 今案件にはシナリオボーナス「番組の企画に全力で乗っかる(戦わずともダメージを与えられます)」がございます。
 これに基づく対抗策が指定されていると有利になることがありますのでご一考くださいませ。
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第1章 ボス戦 『鬼火の三味長老』

POW   :    べべべん!
【空気を震わす大音量の三味線の演奏 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    鬼火大放出
レベル×1個の【鬼火 】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
WIZ   :    終演
【三味線の演奏 】を披露した指定の全対象に【生きる気力を失う】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はピオネルスカヤ・リャザノフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

榊・霊爾
暗い日曜日...だったか
聞くと自殺する歌の都市伝説があったかな

んー、数字ってのは都合よく幾らでも弄れるし、
素人目に見てもこれ絶対ダメだろと言うものでもゴリ押しでヒットを演出できるしね
ゴリ押しにはゴリ押しで対抗する
そうだね、打ち切りの定番放送事故だね

『虚夢』で演者の偽物を大量に押し掛けさせる
やれ、「自分が本物」だの「こいつはパクリ」だのと内輪もめが始まってリアルファイト開始さ
見苦しくなってきたら「しばらくお待ちください」のテロップと、雄大な自然映像を流してやればいいね



「暗い日曜日……だったか。聞くと自殺する歌の都市伝説があったかな」
 作者が失恋のショックから記したとされるハンガリーの実在の曲を例に出しながら、榊・霊爾(あなたの隣の榊不動産・f31608)は三味線のチューニングを念入りに行うオブリビオンを見やる。
 その周りにはカメラとライトしかなく、指示を出す者の姿はない。戦う相手が1人だけというのは非常にありがたい話である。
 使う者がいないのになぜか転がっていたパイプ椅子を広げながら、榊は口を尖らせる。
「それにしても『空前絶後の大ヒット』か。数字ってのは都合よく幾らでも弄れるし、素人目に見てもこれ絶対ダメだろと言うものでもゴリ押しでヒットを演出できるしね」
 そうして半ば強引に表舞台に出た末にセミのように散っていった芸能人を何度見たことか。
 そんな諸刃の剣を相手が使ってくるのならば、こちらも同じ手で対抗しよう。
 目には目を、歯には歯を、ゴリ押しにはゴリ押しだ。
 榊はライトによって照らし出されたオブリビオンの影に向かって小声で呼びかけた。
『お前は誰だ』
 すると影がゆっくりと持ち上がって立体となり、粘土のように形を変えていく。そして複数体になったそれは、集中し過ぎて後ろの異変に全く気づいていないオブリビオンの後頭部を張り飛ばした。
「なんで貴様が妾の体を持っておる! 返せ!」
「何を言う、本物は妾じゃお前が返せ!」
「妾の晴れ舞台を邪魔するだといい度胸ではないか偽物めが!」
「妾の曲を自分の物として発表しようなど、なんたる厚顔じゃ! 成敗してくれる!」
「何を言う、妾が丹精込めて作った曲を贋作扱いじゃと!? 貴様こそが本物のパクリ野郎ではないのか!?」
 誰もが自分が本物であり、他は全員偽物だと主張する殴り合い引っ張り合いのキャットファイトが舞台上で展開されていく。しかし全員が同じ体躯である故に決着はなかなかつかない。
「こうなったら……全員火炙りにしてくれる! 燃え盛れ!」
 一進も一退もしない状況に我慢の限界を迎えた一体が周りに青い鬼火を浮かび上がらせ、他の者に浴びせかける。
 燃え盛る火を転がって消そうとする者、対抗するように鬼火を出す者、燃え盛る体で別の者に抱きつき同士討ちを狙う者など様々な反応を示す中、ある一体だけは三味線を抱えて逃げ出した。
「わ、妾を燃やすでない! ど、どうなってるんじゃプロデューサー!? こんなの、こんなの聞いとらんぞー!」
「……確か三味長老というのは三味線の付喪神でしたかね」
 おそらく自分自身を一番大事にしている彼女こそが本物のオブリビオンなのだろう。
 そんな彼女が泣き叫びながら舞台袖へ逃げていくと、この様子を映し出していたテレビに「しばらくお待ちください」のテロップと一面満開の花畑が映し出され始めた。
 そう、打ち切りの定番、放送事故である。
 現場にいるためその様子は確認出来ないものの、代わりに見張ってくれている猟兵からの連絡に相好を崩しながら、榊は偽者しかいない乱闘劇を見続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木常野・都月
ライブ…生放送っていうやつか?
よく分からないけど、生放送をメチャクチャにすればいいんだよな?

UC【小さな俺分身】で沢山俺を喚び出そう。
全員、整列!

皆、狐の姿になって、遊び回るんだ!
カメラのケーブルを齧ったり、楽器で遊んだり、機材で遊んだり…
やりたい放題していいぞ!
全員、かかれー!

俺も狐の姿になって、楽器の弦を弾いたり、噛み切ったり、好き勝手しよう!

これ、多分撮影してるカメラ…だよな?
俺、映ってるのかな?
(足でダシダシ叩いてみる)

ライトが眩しいんだよな。
あっち向け、蹴り蹴り。

音が大きいんだ。スピーカーの音何とかならないか?
このケーブル邪魔だな、ガリガリ。

わわっ!?追いかけてきた!皆、逃げろ!



「ライブ……生放送っていうやつか? よく分からないけど、生放送をメチャクチャにすればいいんだよな?」
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は首を傾げながら、オブリビオンの潰しあいを眺めていた。ある意味すでにメチャクチャになっているが、テレビ番組は見ていても音楽番組とは縁遠かった都月にはどんな状況が正常なのか分かっていない。
 ともかく、相手が大勢になってしまったならばこちらも大勢で対応するのみだ。
「『出てこい俺達』全員、整列!」
 都月が号令をかけるとあちこちから一回り小さい都月達がわらわらと集まってくる。そして言われた通りに列を成したところで都月は更なる指示を出した。
「皆、狐の姿になって、遊び回るんだ! カメラのケーブルを齧ったり、楽器で遊んだり、機材で遊んだり……やりたい放題していいぞ!」
「いよっしゃー!」
「やってやるぞー!」
「全員、かかれー!」
 黒一色の綺麗な毛皮に包まれた姿に転じた都月達が方々に散っていく。
「ライトが眩しいんだよな。あっち向け、蹴り蹴り」
 細い足場を駆け回り、近くに寄っただけで熱い巨大なライトを前足でたしたしと叩く。しかししっかりと固定されたライトは動く気配がない。
「これ、多分撮影してるカメラ……だよな? 俺、映ってるのかな?」
 その下でもカメラに向かってとりあえず足でゲシゲシ蹴ってみたが、支える者がいなくても大きなテレビカメラを小さな狐の体躯では倒すことは出来ない。しかしライトを動かすことを諦めた別の都月の、天井にぶら下がっていたロープを使ったターザンキックがそれを横倒しにした。
「あ、ほら映ってるよ!」
「え、見せろみせろ!」
「あれ、いなくなった。その場にいないとダメみたい」
「そんなぁ、つまんないの」
「あ、それじゃあ俺がそっちに回るから、お前見ててよ」
 そんな和気藹々としたやり取りをしていると、舞台袖に引っ込んでいたオブリビオンが姿を現した。
「こんな時こそ、妾の音楽の腕を見せつけるとき! 皆、妾の曲を聞いてくれ!」
 三味線の演奏が始まると、怒号を鳴らしていたオブリビオン達が一斉にその勢いを失っていく。
「音が大きいんだ。スピーカーの音何とかならないか?」
「あ、このつまみを回せばいいはずだよ……違った、俺ってなんてバカなんだ……」
「なんで偽物のくせして本物にとって代わろうとしたんじゃ……」
「ツクモガミの風上にも置けん……」
「もういい、死のう……」
 異変を察知した都月達はスピーカーを切ろうとしたが逆に大きくしてしまい、偽物ともども生きる気力を失っていく。
「このケーブル邪魔だな、ガリガリ」
 しかし遠くにいた都月がなんとなく齧ったケーブルがちぎれたことにより、三味線の音を捉えるマイクとスピーカーの接続が外れた。
 突然小さくなった音に顔を上げたオブリビオンの視線と、ケーブルをちぎった都月の視線が交錯する。そしてその足元に転がった物体を認識した瞬間、オブリビオンは演奏を止めて叫んだ。
「狐、お前、何てことをしてくれたんじゃー!」
「わわっ!? 追いかけてきた! 皆、逃げろ!」
 顔を真っ赤にさせてにじり寄ってくるオブリビオンに危険を感じた都月達は一目散に逃げだした。

成功 🔵​🔵​🔴​

リステル・クローズエデン
では、その執念。試させていただきましょう。

その1
薬品調合と毒使いでサプライズボムに
マヒ攻撃、目潰しの薬品を仕込み。
投擲ワルツや物を隠す。罠使いで仕掛け
発動する。


その2
闇に紛れ、投擲と武器落としで
演奏の邪魔をする
あと、ユーベルコードも使用する。

その3
あまり、意味ないかもしれませんが、
ハッキングと物理でカメラを妨害します。


ふむ、決定打はお任せします。


ギターを弾きますか。



「待ていたずら狐ー!」
「……何が何でも番組を成立させようという執念。確かにそれは素晴らしいものです」
 鬼火を振りかざしながら都月を追いかけ回すオブリビオンの姿をリステル・クローズエデン(なんか青いの・f06520)は感心しつつ、暗がりから眺めていた。
「では、その執念。試させていただきましょう」
 そう言ってリステルは麻痺毒と目潰しの薬品を仕込んだサプライズボムを投げつける。見えないところから転がってきた球体を都月に首ったけだったオブリビオンは上から踏みつけてしまい、バランスを崩して派手に転んだ。
 その衝撃でオブリビオンの元からサプライズボムも三味線も離れていく。
「いたた、何に躓いたんじゃ……?」
 突然の出来事に混乱するオブリビオンが顔を上げる前に、リステルは素早く三味線を回収して距離を取る。しかしあくまでも本体であるそれの位置は手に取るように分かるらしく、オブリビオンは連れ去られたことに気づいてないのに的確にリステルの歩んだ後を追い、隠した場所までたどり着いてしまった。
「派手に飛ばしてしまったもんじゃのう、でも転んだ程度でここまで飛ぶものか……?」
 物陰に隠れるように置かれているにも関わらず、オブリビオンは床を滑った結果偶然そこに滑り込んだと思っているらしい。ただその勘違いはこちらにとっては好都合である。
『五行金術、来たれ。笑いの神』
 三味線を拾おうと手を伸ばしたオブリビオンの頭部へ一斗缶に金属のバケツ、金ダライが立て続けに激突させる。当たるたびに巻き起こる甲高い音は聞く者を驚かせるが、音だけが派手になるように作られているため頭や首への衝撃は大したものではない。
「な、何じゃ、何なんじゃ……もう」
 しかし立て続けに起こるアクシデントに心が折れかけているのか、オブリビオンはその場に蹲ってしまった。
「諦めないでくださいよ、もっとあがいてください。ほら」
 動けなくなったところでリステルは残り時間の短いサプライズボムを蹴り飛ばし、オブリビオンの元へ寄せる。火傷を共わない爆発と同時にばら撒かれた液体を真正面から浴びたオブリビオンは目を押さえながらその場で転がり出した。
「目が、目がぁぁぁぁ」
 徹底的な頭狙いの攻撃に、もうオブリビオンは追跡や演奏どころでないようだ。
「ふむ、あなたの執念はその程度でしたか。……決定打はお任せします」
 どんなことが起きても番組を成立させてくれると思ったのに、演奏よりも自分の実を優先したオブリビオンに失望したリステルはステージを後にする。しかし向かう先はグリモアベースでもテレビの前でもない。
「さてと、ギターを弾きますか」
 まだやれることは残っている。リステルはカメラの信号をハッキングして切り替えると、暗闇の奥にあった扉に手をかけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

尖晶・十紀
演者として番組に出演、放送内容を堂々と書き換えて対策

こんばんは。ガールズパンクアイドルユニットIAAdr担当、尖晶十紀です
……普段はバンドでの生ライブがメインだからこういうソロでテレビに出たり、ていうのはなくて……ちょっと緊張するね

音楽で真っ向勝負を仕掛ける
相手が生きる気力を奪うならこっちは生命讃歌を皆を鼓舞し元気付けるための歌を、激しいパンクロックの音楽にのせて歌い上げるよ

それでは聞いてください
「ファッキン グリムリーパー」です

♪諦めて、負け犬のまま終わるより
死神に中指立てて、言ってやろうぜざまぁみろ!!

アドリブ絡み歓迎
歌詞捏造改変可



 クラシック音楽が流れる花畑の映像が途切れ、中継が戻る。しかしそこに映し出されたのは都月とオブリビオンの追いかけっこでも、立て続けの頭部への攻撃でもなく、テレビ局ならどこにでもあるであろう控室であった。
「妖怪歌合戦をご覧の皆さんこんばんは。ガールズパンクアイドルユニット『IAA』dr担当、尖晶十紀です」
 番組名は分からないが、それっぽい名前を言いつつ画角の中央に陣取って座っていた尖晶・十紀(クリムゾン・ファイアリービート・f24470)は頭を下げる。しかしユニットのはずなのに控室にいるのは十紀一人だけ。
 それもそのはず、今回は「IAA」の曲ではなく尖晶十紀初めてのソロ楽曲の宣伝であるからだ。
「……普段はバンドでの生ライブがメインだからこういうソロでテレビに出たり、ていうのはなくて……ちょっと緊張するね」
 自己申告している通り、十紀の視線はしきりにカメラのレンズではなく外の方へと所在なさげに動いていた。しかし自分が何をすべきなのかは分かっている。
「相手が生きる気力を奪うならこっちは生命讃歌を皆を鼓舞し元気付けるための歌を、激しいパンクロックの音楽にのせて歌い上げるよ。それでは聞いてください、『ファッキン グリムリーパー』です」
 そう言って右腕を前に伸ばすと映像が切り替わり、場所も真っ暗なステージへと変わる。その中央に置かれたドラムのシンバルを十紀は力強く叩き鳴らし、マイクに声を入れた。
「諦めて、負け犬のまま、終わるより、死神に」
 普段はジフテリアにボーカルを任せているが、十紀だって決して下手ではない。そうでなければソロ曲を出してみよう、と話にそもそもならない。何より、自信を持たずにステージに上がって歌うなんてあらゆるボーカリストに失礼だ。
「中指立てて言ってやろうぜ、ざまぁみろ!!」
 十紀だけに当てられていた光が一気に拡大し、ステージ全体が露わになる。同時に控えていたサポートメンバー達も演奏を開始する。
「カマかけられたって、揚げ足取られたって、やるのは結局私でしょ」
 人の失言や失態を狙い、重箱の隅をつつくような言動を繰り返す輩を死神に見立て、それに屈しずひたすらに前を向いて進み続けようと叫ぶ応援歌。それが十紀が選んだデビュー曲。
「愛も足もない骸骨に、付き従うなんて……バカみたい!」
 初めてのお披露目にも関わらず歌詞や叩く対象、リズムを間違えることなく堂々と十紀は歌い上げる。その姿はこの曲に並々ならぬ思いを注ぎ込んでいることを感じさせた。
「諦めて、負け犬のまま、終わるより、死神に」
 そしてサビに入ると歌声はさらに高らかに、訴えかけるようにノビを増していく。
「中指立てて言ってやろうぜ、ざまぁみろ!!」
 歌い終えてからも畳みかけるように激しさを増した演奏が余韻を残すように終わり、右下にリステルを始めとするサポートメンバーの名前が表示される。そして次の演者が三味長老であることを伝えるテロップが出た後に番組はCMへと移行した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

怨燃・羅鬼
なるほど☆アイドルのらきちゃん☆としては
嘘の番組で本当にするのは良くないネ!

というわけでらきちゃん☆TOPアイドルとして羅威武バトルを挑むネ!
くふふ☆これでらきちゃん☆が勝ってば世界中でミリオンヒットだネ!


羅射武舞逝苦をくるくる回してパフォーマンス&『ダンス』!
時はアイドル戦獄時代!歌だけじゃ生き残れない☆
インパクトもなくっちゃネ!【串刺し】

会場に怪炎を放ちスポットライトを点火!さぁ!ここからはらきちゃん☆のステージだぁ!

♪~♪~♪【大声・地形破壊・ブレス攻撃】



 CMが終わり、再び映像がオブリビオンのいるスタジオへ戻る。ステージの上には先程の爆弾による涙と痒みが取れないオブリビオンがしきりに目を擦りながら演奏の準備をしていた。
 その周りにはまるで警護するかの如く鬼火がフワフワと浮かんでいる。おそらく邪魔をしようと近づけば、間違いなく火だるまにあってしまうだろう。
「なるほど☆アイドルのらきちゃん☆としては嘘の番組で本当にするのは良くないネ!」
 しかし常にパフォーマンスなどで炎を扱っている怨燃・羅鬼(怒りの心を火に焚べろ・f29417)に取ってその程度の予防線は障害でも何でもない。
「というわけでらきちゃん☆TOPアイドルとして羅威武バトルを挑むネ!」
 そう一方的に宣言しつつ、羅鬼はステージ上に乗り込んでいった。
「何じゃ何じゃ貴様は! 妾の番なんじゃから他の奴らは引っ込んどれ!」
 苛立つオブリビオンの心を反映したかのように鬼火が一斉に羅鬼に降りかかる。しかし羅鬼はマイクスタンドを振り回してそれらを払い消した。
「な、妾の鬼火が、あんなマイクスタンド如きに!?」
「時はアイドル戦獄時代!歌だけじゃ生き残れない☆インパクトもなくっちゃネ!」
 そう主張しながらまるで槍のように反対側が鋭いマイクスタンドをオブリビオンの衣装の裾に突き刺し、三味線の弦に届かないようにする。
 これは演奏できないようにすると同時に、最高の特等席で聞いてもらうためだ。
「さぁ! ここからはらきちゃん☆のステージだぁ!『それじゃあ☆ラキちゃん☆歌いま~す☆』」
 会場には怪炎を放ちスポットライトも点火され、演出も万全である。元気よく腕を上げるとスピーカーから羅鬼の持ち歌のイントロが流れ始めた。
「こら、順番を抜かすな! というかそもそも貴様は出演者じゃなかろう! おい、聞いておるのかー!?」
 オブリビオンの必死の抗議は立て板に水。羅鬼は息を吸うとマイクに向けて、自慢の歌声を響かせた。
 ここで一つ豆知識。
 自分が聞いている声と、他人に聞こえている声は違うという。これは音を感じ取る耳に空気を振動させて伝えているか頭蓋骨の中で反響されて伝えているかの違いによって生じる物である……のだが、羅鬼の場合はそれが顕著すぎた。
 とてつもない爆音で放たれる音程がめちゃくちゃな歌に、周りにいた猟兵達は目をひん剥き慌てて自分の耳を塞ぐ。
 しかし片腕しか扱えないオブリビオンにそうすることは出来ず、酷く重過ぎる音圧に口から泡を吹き、体を痙攣させ始めた。
 ステージが揺れ、カメラが揺れ、狐の蹴りでびくともしなかったライトも揺れる。しかしその当事者である羅鬼は満面の笑みを浮かべながらパフォーマンスを続けていた。
「くふふ☆これでらきちゃん☆が勝ってば世界中でミリオンヒットだネ!」
 誰が編集してるか分からないテロップからミリオンヒットの文言が消え失せる。代わりにそのスペースには「怪気炎☆アイドル襲来」の見出しが躍った。

成功 🔵​🔵​🔴​

リリ・アヌーン
中身を入れ替えて攻撃力を無くした
リリちゃん人形型爆弾のスモークと爆発音で飛び入り演出
普段着のお気に入りのドレスで颯爽と登場よ

ネガティブな曲のイメージを全部ひっくり返すような
超ポジティブなパワーワードの曲を即興で組み立てて
アイドルみたいにダンスしながら
自前のマイクで大音量&元気いっぱい言霊乗せて歌っちゃう♪
すぐに覚えてしまうようなリズム感と歌詞もバッチリよ

「迎えに来たわ、ついてきて♪
あなたがいるから私も生きられるの~♪
下向いてたら気になってる子の顔見れないでしょ?
私が全部何とかしてあげる~♪
本当はみんな、あなたの味方だった~♪
自覚無いのね、あなたの笑顔って最高なのよ~♪」

UCで皆の気力も回復よ



「みんなありがとー!」
 羅鬼が笑顔で退散した後、残された者達は猟兵オブリビオン問わず真っ白に燃え尽きていた。
 そんな中で最初に再起動が入ったのはオブリビオンであった。しかしこれまでの妨害の数々に心はズタボロになったらしく、泣きべそをかきはじめていた。
「なんで、なんで、せっかく、地球の者達に、妾の曲を、聞いてもらえる、って、聞いたのに……。なんで、こんな目に、合わされるのじゃ、酷いのじゃ、ドッキリなのか? 誰か、ドッキリだと言っとくれ……」
 そんな中、ワインレッドのドレスを着た金髪の少女の人形が投げ込まれる。先程の目潰し爆弾のトラウマが蘇ったオブリビオンは小さな悲鳴をあげるが、肝心の足が動かない。
 そんな人形からスモークが焚かれ、音もなく爆散すると同時に誰かがステージ上でジャンプした。
「……あなたの想いは伝わったわ。でも、このまま演奏させることは出来ない」
 煙の中から現れたのはリリ・アヌーン(ナイトメア・リリー・f27568)。人形がそのまま大きくなったような見た目にオブリビオンは目を丸くしつつ言葉を失った。
「な、なぜじゃ!?」
「だって……あなたの演奏を聞いていたら、みんなの気持ちが沈んじゃうもの」
 リリの指摘にオブリビオンの目が点になる。
「どうせ聞いてもらうなら、みんなに笑顔になってほしいじゃない? ……人を傷つけるために今まで練習してきた訳ではないでしょう?」
 骸魂を取り込む前の演奏がどうだったかは分からない。ただ、オブリビオンの言動から伝わるのは自分の演奏を世に届けたいという想いだけだ。ならばやりようはある。
「大丈夫、ネガティブな曲のイメージを全部ひっくり返すような超ポジティブなパワーワードの曲を即興で組み立ててあげるから!」
 力強く頷くリリにオブリビオンはギュッと自分の器物を握りしめる。
「……私を信じてリードして」
 そして自分に向けられる視線と奏でられる音に、リリは正面から向き合った。
 演奏は聞いているだけで憂鬱になり、自分自身が信じられなくなる。だがリリは心の土俵際で踏み止まりながらマイクへ声を入れた。
「迎えに来たわ、ついてきて♪ あなたがいるから私も生きられるの~♪ 下向いてたら気になってる子の顔見れないでしょ? 私が全部何とかしてあげる~♪ 本当はみんな、あなたの味方だった~♪ 自覚無いのね、あなたの笑顔って最高なのよ~♪」
 生きる気力を失わせる楽器の音と、生きる気力を沸き立たせる声がぶつかり合い、打ち消し合い……後に残るのは心には届きにくいが、記憶の片隅には残る歌。
 薬にも毒にもならない内容に失望したのかテロップからあらゆる文言が消されて空欄だけが残される。
 復活した仲間からそのことを暗に伝える丸のサインが出たのを見て、リリはさらに高らかに歌い上げた。
 そうして演奏が終わり、やり切った表情のオブリビオンが心配そうに尋ねかける。
「これで、地球の者達に喜んでもらえるかの?」
「ええ、きっと」
 その返事に力が抜けるように崩れ落ちたオブリビオンの体から離れた骸魂が激しくジグザグに動きながらステージから逃げ出していく。
 後に残されたのは安らかな顔で寝息を立てる三味長老の姿だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月14日


挿絵イラスト