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大天使の侵攻~ユグドの森の攻防戦

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #大天使ブラキエル #オウガ・フォーミュラ #ユグドの森

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● ユグドの森の上空に
 天空に浮かんだ月が、ひときわ大きく輝いた。
 骸の月による侵略から逃れた月は美しく輝き、広がるユグドの森を照らし出している。
 その夜の月に、黒い影が差した。月を背に現れた大天使ブラキエルは、大軍を従えゆっくり地上へと向かう。

「我が友よ、君の願いは叶わなかった。君は『書架』へと帰るがよい。我は、天上界の扉を開く僅かな可能性を実行しよう……もっとも、ヴァルギリオスさえ見逃し、あまつさえ封印された愚か者共が、今更地上の危機に扉を開く事もあるまいが……」

 一つ頭を振り聖木ユグドに向けて進軍を開始したブラキエルに、一筋の矢が放たれた。
 ユグドの森を管理するエルフ。その族長であるアーチャー・ラウルは、長弓から放たれた矢を掴んだブラキエルに向けて郎とした声を上げた。
「大天使ブラキエル! 貴様の目論見は潰させて貰う! この森は我らと……我らの盟友・猟兵達が守る!」
「大口を叩きますねエルフ風情が。あなた達の脆い絆など、彼らで十分。ーー行きなさい。手始めに彼らを絶滅させるのです」

 手を上げたブラキエルは、大天使の光輪を輝かせると付き従っていたオブリビオン達を差し向けた。一斉に襲いかかってくる岩石の腕を持つ堕落者たちに、エルフ達が一斉に矢を放つ。
 その様子を見下ろし腹心を連れて森の中心へ向かうブラキエルに、ラウルは叫んだ。
「お前の企みは、必ず阻止する! この森は我々が必ず守るのだから!」
 叫び声を上げながら襲いかかってくる堕落者たちが、襲いかかってくる。得物を手にした猟兵達は、鋭く駆け出すと戦いを開始した。

● グリモアベースにて
 グリモアベースに立ったリオンは、浮かび上がる映像に口の端を上げた。
「盟友、ね。嬉しいことを言ってくれるじゃない? ……てなわけで。以前皆が守ってくれたユグドの森の聖木ユグドを狙って、大天使ブラキエルが襲いかかってくるんだ。乗りかかった船だし、良かったら助けてやってよ」
 軽い口調で言ったリオンは、状況を説明した。

 時刻は夜。上空から現れたブラキエルは無数の岩の腕を装備した堕落者達を放ちこちらを絶滅させようとしてくる。堕落者達は、移植された「岩石の腕(岩腕)」によってユーベルコードの破壊力が大幅に強化されているため、一体一体が非常に強化されている。
 まずは彼らを倒さなければ、野に放たれた駄落者達は周囲の街を襲うだろう。

 エルフの森の族長の名前はラウル。彼と彼が率いるエルフのアーチャー達は森の地理に詳しく、また迷いの森の魔法も心得ている。彼らの助力を得れば、対等に戦えるはずだ。
「まずはこの堕落者たちを倒すのが先決だよ。皆、よろしくね!」
 グリモアを展開させたリオンは、猟兵達を森へと導くのだった。


三ノ木咲紀
 オープニングを読んでくださいまして、ありがとうございます。
 今回は大天使ブラキエル戦をご案内します。

 第一章の詳細はオープニングの通りです。
 夜の森でエルフ達の助力を得ながら敵を倒してください。
 助力してくれるのは、エルフのアーチャー・ラウル率いるエルフ達です。
 弓での牽制や、迷いの森の魔法で手助けしてくれます。

 対応シナリオ
 心と木々の燃える森
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=30208

 読まなくても全く問題ありません。
 プレイングボーナスは以下の通りです。

 第1章のプレイングボーナス……援軍と共に戦う。
 第2章のプレイングボーナス……鎧の隙間を狙う/アイテムを使う。
 第3章のプレイングボーナス……先制攻撃に対抗する。

 詳しくは断章にてご案内致します。
 また全体的に「やや難」ですので、いつもより厳し目の判定を致します。

 受付期間はタグにてご連絡致します。また戦争シナリオも同時に運営しますので、プレイングを受付した後再送をお願いする可能性があります。
 それでは、よろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『堕落者たち』

POW   :    【悲嘆】の盾と【失望】の剣(人間)
【自分の悲嘆話、或いは失望感を込めた盾】が命中した対象に対し、高威力高命中の【自分と同じ目に合わせようと振るう剣撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    【強欲】なる斧と【執着】する腕(ドワーフ)
【装備している高級な斧】から【価値ある物を狙う為の一撃】を放ち、【怯んだ対象から価値の高い武具を強奪する事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    【情欲】の弓と【嫉妬】の矢(エルフ)
【麻痺毒、または媚毒を塗った矢】による素早い一撃を放つ。また、【服を脱いで、相手に素肌を見せびらかす】等で身軽になれば、更に加速する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


● 邪霊に憑かれた成れの果て
 岩石の腕を背中から生やしたドワーフは、迎撃の態勢を整える猟兵達の姿に邪悪な笑みを浮かべた。
「ここがユグドの森じゃな。おうおう、金になりそうなものがゴロゴロしとるわい」
「あら。この程度で満足してちゃダメよ。この森で一番価値が高いのは世界樹の葉。今後五百年、この森と周囲に生きる全ての命を支える基薬と言われてるわ。それがあれば永遠の命で永遠に……。ふふ、素敵ね」
「分かっておるわい。文字通り「金の成る木」ってことじゃろう? じゃがワシは世界樹の葉だけじゃ足りんわ。この森の全てを奪って売り捌いて、山のような金を手に入れるぞい」
 欲情に目を輝かせるエルフに、ドワーフは斧を振り回し戦意を高くする。そんな二人の前に立ったリーダー格である人間の戦士は、長剣を抜き放つと森の奥に目を向けた。
「他のものはくれてやる。だが世界樹の葉は俺のものだ。あの葉を一枚煎じれば、死者が蘇ると言われている。オブリビオンとならず、生身の人間として。俺は必ず世界樹の葉を手に入れて、大切な人を蘇らせてみせる。ーー行くぞ!」
 戦士の号令に、ドワーフとエルフも一斉に駆け出した。

 彼らは『堕落者たち』。邪霊『イービルスピリット』に精神を汚染され、堕ちた冒険者達の成れの果て。ただでさえ並の冒険者を優に超える戦闘力を持っているが、現在は大天使ブラキエルより岩腕を与えられて更に強化されている。
 負の感情に支配された彼らを救う手立てはない。エルフ達の助力を得て、ここで倒してしまうのがせめてもの救いと言えるだろう。
御剣・刀也
堕落した冒険者か
一歩間違えれば、俺も堕ちていたかもしれん
お前らが人間に戻れないのならば、これ以上悲劇を繰り返さないよう、ここで引導を渡してやる。それが情けだ

【悲嘆】の盾と【失望】の剣で盾をぶつけようとして来たら、第六感、見切り、残像で避け、カウンター、捨て身の一撃で、防御の剣、あるいは引き戻した盾ごと斬り捨てる
零距離でぶつけようとして来たら、グラップルで受け流し、柔で相手の関節を壊しながら、投げて距離をとる
「名うての冒険者も、堕ちて修練を怠ったか?楽しくもない死合いだ。信念も矜持も無い奴とやるのはつまらん」



● 連携の大切さ
 月明かりに照らされたユグドの森に、堕落者達が放たれた。岩腕を生やした戦士は剣を抜き払うと、月明かりだけが頼りの森の中をひた走る。一心に森の奥を目指す戦士の前に立ちはだかった御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は、立ち止まった戦士の姿に眉をしかめた。
「堕落した冒険者か」
「そこをどけ!」
 威圧する戦士の姿に、刀也は静かに首を横に振る。彼は既にオブリビオンと化し、果てのない悲嘆と失望に突き動かされるままに破壊を繰り返すだけの存在と成り果てている。獅子吼を抜いた刀也は、油断なく戦士との距離を取った。
「お前らが人間に戻れないのならば、これ以上悲劇を繰り返さないよう、ここで引導を渡してやる。それが情けだ」
「どかないならばここで死ね!」
 一声吠えた戦士は、抜き放った剣を振り上げると猛然と刀也に向けて振り下ろした。上段から振り下ろされる悲嘆の剣を見切り回避した刀也は、カウンターで獅子吼を叩き込む。急所を貫かんとする切っ先はしかし、防御に動いた岩腕により阻まれた。
 カウンターの失敗を悟った刀也は、地を蹴り距離を取る。そこにエルフの矢が閃いた。
「油断大敵よ!」
 叫んだエルフの放つ矢が、刀也の肩に突き刺さる。幸い毒などは無いが、一瞬止まった動きを狙い澄ましたかのようにドワーフの斧が迫った。
「金目の物を置いていけ!」
 振り下ろされるドワーフの斧を、残像で回避する。着地したところを、戦士の剣が迫った。
 上段から加えられる攻撃を腕に巻いた武雄宇流斧で受けた刀也は、悲嘆に満ちた目で睨みつける戦士の目を揺るぎない視線で受け止める。その視線に、戦士は歯を食いしばると大声で叫んだ。
「邪魔をするな猟兵! 俺は必ず世界樹の葉を手に入れて、大事な人を蘇らせてみせる!」
「名うての冒険者も、堕ちて修練を怠ったか? 楽しくもない死合いだ。信念も矜持も無い奴とやるのはつまらん」
「信念? 矜持? 俺は必ず、世界樹の葉を手に入れ大切な人を蘇らせてみせる! それが俺の信念で矜持だ! お前だってそうだろう! 世界で一番大事な人を目の前で失ったら、お前だって……!」
 叫んだ戦士は、岩腕に装備させた【悲嘆】の盾をふりかぶると刀也に向けて叩きつけてくる。ゼロ距離からの攻撃を読んだ刀也は、ふいに愛刀を手放した。
 攻撃を受け止めている左腕を軸に身体を回転させ、戦士の身体の下に自分の身体を滑り込ませる。身軽になった利き手で戦士の腕を極め、梃子の原理で腕関節を破壊するとそのまま投げ飛ばした。
 身体と一緒に回転した盾が、空を切る。空を舞った戦士の身体が地面に叩きつけられ、即座に身体を起こした時には刀也の獅子吼の切っ先は戦士の鼻先に突きつけられていた。
 剣刃一閃。
 頭を断ち切られた戦士が、声もなく消える。息を吐いた刀也の耳に、叫び声が絡みついてくる。
『お前だってそうだろう! 世界で一番大事な人を目の前で失ったら、お前だって……』
 万が一。
 もし万が一、戦士と同じことが自分の身に起きたら、刀也はどうするだろうか。
 自分の目の前で、世界で最も大事な人が死んだなら。彼女の笑顔を取り戻す術があるのだと知らされたのなら。
「……一歩間違えれば、俺も堕ちていたかもしれん」
「おのれ! この斧を喰らえ!」
 倒された剣士の姿に、ドワーフが斧を振り下ろす。回避はしたが、そこに再びエルフが矢を降らせる。
 刀也にはユグドの森のエルフの助力もない。多勢に無勢を悟った刀也は、矢を回避すると一時撤退した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ニクロム・チタノ
あの岩石の腕は厄介だね
どうにか接近したいけど、そうだエルフのみなさん力を貸してください迷いの森で敵が惑わされてるあいだに後ろに周り込みます、それから弓矢で攻撃お願いします
さあ反抗せよ
チタノエリアを展開して矢を重力槍にして岩石の腕で防がせるそして重力槍を開放して重力を掛けて岩石の腕を重くする
さあ覚悟してもらうよ
迎撃するつもりだね?
でも予測済み、チタノエリアは矢だけじゃない無機物ならなんでも変化させられる、重力槍と蒼焔の盾にね
ここは周りの小石を蒼焔の盾に変えて敵の攻撃を防ぎながら接近まだ岩石の腕は重力で使えない
これなら行ける!
これより反抗を開始する
どうか反抗の竜チタノの加護と導きを



● 重力槍と蒼焔の盾
 攻防共に優れた動きを見せる岩腕に、ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は眉を顰めた。大天使ブラキエルにより強化された堕落者達の力は侮れない。戦局を見たニクロムは、腕を組むと唸った。
「うーん。あの岩石の腕は厄介だね。どうにか接近したいけど……」
 考えたニクロムは、後ろに控えるエルフ達を振り返った。堕落者たちは基本的に三人一組で襲ってくる。ならばこちらだって数で勝負することができるはずだ。
「そうだ。エルフのみなさん、力を貸してください! 迷いの森で敵が惑わされてるあいだに後ろに回り込みます。それから、合図したら弓矢で攻撃お願いします」
「分かった」
 頷いたエルフ達に頷きを返したニクロムは、迷いの森でさ迷わせた堕落者達の退路を断つようにヒラリと降り立つと、【反抗地帯(チタノエリア)】を展開した。
「さあ反抗せよ」
「なあにこの子。邪魔よ!」
 叫んだ堕落エルフが、つがえた弓を連続して放った。雨のように降り注ぐ矢は、ニクロムをハリネズミのようにすると思われた。
 だが、そうはならなかった。
 展開したチタノエリアにより青焔の盾となった小石が、地面から浮かび上がり防御障壁を形作る。堕落者達の初撃を凌いだニクロムは、腕を振り上げ振り下ろした。
「今よ! エルフの皆さん、お願いします!」
 ニクロムの号令に応えたエルフ達が、堕落者たちに向けて矢を一斉に放つ。上方から降り注ぐ矢の嵐に、戦士は【悲嘆】の盾を堕落エルフと自身の前に翳した。
「こんな矢で【悲嘆】の盾が破れるとでも……」
「ただの矢ならそうね。でも重力槍ならどうかしら!」
 ニクロムの声が響くのが早いか。エルフ達の矢がチタノエリアに入った直後、形を変えた。一本一本細い矢は、それ自体が重力槍と化して堕落者たちを貫いた。盾で守られなかったドワーフは、岩石の腕で頭を守ると唸り声を上げた。
「ぬう! 小癪な! こんな矢で貫けるほどヤワな岩腕じゃないわい!」
「貫けなくても結構。突き刺さった矢は重力槍。どう? 重いでしょ?」
 ニクロムの言葉を証明するように、ドワーフの動きが重くなる。自分を守り、攻撃力を高めるべき岩腕が足かせとなったドワーフに、重力槍と化した矢が次々と突き刺さった。
「卑怯者めが! エルフども、降りてきて戦えぃ!」
「嫌よ。誰が相手の得意分野で戦うと思う?」
 肩を竦めるニクロムに近づかせまいと、矢が降り注ぎ続ける。矢に貫かれ消えたドワーフの姿に、ニクロムはエルフたちを振り仰いだ。
「これなら行ける! さあ覚悟してもらうよ。これより反抗を開始する! どうか反抗の竜チタノの加護と導きを!」
「「「おー!」」」
 ニクロムの檄に応えたエルフ達が、力強い矢を放つ。ほどなく全滅した堕落者たちを確認したニクロム達は、頷き合うと別の堕落者たちへと向かっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

檪・朱希
WIZ
心配だけど……私に出来ることをやるしかない。
エルフの人達と、一緒にここを守るよ!
その為には、彼らと協力しないと。
ラウルやエルフの人達には、彼らの動きを牽制して欲しい。
そして、UC発動。雪と燿と一緒に、彼らを倒していく!
『燿、しっかり朱希を守るぞ』
『おうよ! いっちょやってやるぜ!』

「聞き耳」による「情報収集」と「索敵」で、全体の戦況の把握は欠かさない。
霊刀【霞】で「なぎ払い」の「斬撃波」、もしくは【暁】で「スナイパー」。二人と共に、確実に仕留める。

ユグドの木は見てみたいよ。でも、永遠の命まで欲しくない。
だって……限りある命だからこそ、この世界は素敵だと思えるから。
だから私は、ここを守る。



● 樹上の連携
 ユグドの森に降り立った檪・朱希(旋律の歌い手・f23468)は、ブラキエルの消えた月を見上げると唇を噛んだ。逸る気持ちを大きな息と一緒に吐き出した朱希は、頭を振ると思考を切り替えた。
「心配だけど……私に出来ることをやるしかない。ラウルさん」
「はい」
 呼ばれて振り返った族長のラウルは、長弓を肩に掛けたまま朱希と向かい合った。緑の髪をした優しげな眼差しの青年は、朱希の次の言葉を待った。
「ラウルさん、エルフの人達と一緒に彼らの動きを牽制してください。その間に仕留めます」
「分かりました。任せてください」
 頷いた青年は、従うエルフのアーチャー達に指示を出す。その間に目を閉じた朱希は、詠唱を開始した。
「蝶を導く者達よ、見えぬ鎖を断ち切る術を……ここに!」
 朱希の詠唱に、タロットカードが輝きを放つ。やがて現れた二人の少年は、顔を見合わせると笑みを浮かべた。
『燿、しっかり朱希を守るぞ』
『おうよ! いっちょやってやるぜ!』
「二人とも。エルフの人達と、一緒にここを守るよ!」
 朱希の呼びかけに、燿と雪が頷く。二人を従えた朱希は、ラウル達と共に森の中を索敵して回った。
 やがて発見した堕落者達は、牽制に放たれたエルフの矢に立ち止まると樹上を見上げた。
「あら、かわいい子達がいるじゃない? 私の好みよ。おねーさんと一緒に遊びましょうよ。ね?」
 燿と雪を交互に見た堕落エルフは、しなを作ると投げキッスを放つ。背筋をぞわわとさせた燿は、自分を抱くと嫌悪感を顕にした。
『うわ、勘弁してくれよ。顔色悪いのは趣味じゃねえよ』
『そんな色仕掛けが通じるのは色狂いだけだよ、年増のエルフさん』
「ちょっと二人とも」
 燿と雪の軽口を思わずたしなめるが、否定の言葉が出てこない。そんな朱希達の態度に青筋を立てた堕落エルフは、服を脱ぎ素肌を顕すと毒の矢をつがえた。
「その小娘よりもアタシの方がいい女だって、教えてあげるわ!」
 身軽になった堕落エルフが放つ【情欲】の弓と【嫉妬】の矢が、朱希に向けて放たれる。麻痺毒のたっぷり塗られた矢が朱希に突き刺さる寸前、雪が動いた。
『危ない!』
 朱希を庇い突き飛ばした雪の腕に、堕落エルフの矢が刺さる。麻痺毒が身体に回りその場に膝をつく雪に、燿は急いで駆け寄った。
『雪! しっかりしろよ!』
『燿……』
「朱希さん! これ以上牽制が効きません!」
 ラウルの声に、朱希は戦況を確認する。エルフが朱希たちを引きつけている間に、剣士とドワーフは先へ急ごうと駆け出している。それを樹上からの攻撃で牽制していたが、岩腕の防御もありうまくダメージを与えられていない。
 気持ちを切り替えた朱希は、燿を振り返った。
「燿! 行くよ! 雪、少し我慢してて」
『分かっ……』
『ちっ! そこで大人しくしてろよ雪!』
 立ち上がった燿と連携した朱希は、拳銃【暁】を構えると堕落エルフに向けて銃弾を放つ。岩腕を振り上げ防御したところに、狙い澄ました射撃が通った。見えぬ鎖纏う拳銃『鴉』を構えた燿の攻撃が、堕落エルフを貫いたのだ。
『痛いじゃない。なによ、あんたも永遠の命と若さが狙いなの?』
「ユグドの木は見てみたいよ。でも、永遠の命まで欲しくない。だって……限りある命だからこそ、この世界は素敵だと思えるから。だから私は、ここを守る」
 朱希の決意に、堕落エルフは目を見開く。おかしそうに嗤った堕落エルフは、狂った目で朱希を見上げた。
「若いっていいわね! いずれアンタが死の恐怖を、老いの恐怖を目の前にした時どうするか見ものだわ!」
『黙ってろよおばはん!』
 腹立たしげな燿の攻撃が、堕落エルフの喉を貫く。消えた堕落エルフを確認した朱希と燿は、牽制攻撃を仕掛けるエルフ達の援護へと走るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ビッグ・サン
ユグドの森ですか
世界樹の葉を求めて、古い昔に来た場所である
今回も目的は世界樹の葉だ

もちろん力づくでなどとは考えていない、エルフを助ければ少しは交渉の余地が生まれるであろう

エルフに友好的に話す
この先にある沼地に冒険者を誘導します
沼にはまった冒険者を包囲して攻撃すれば楽に倒せると思います

沼をミミックで覆いエルフの家っぽくミミックを擬態させておく

古くから冒険者をしているので、冒険者には顔が広いので、お互いに知った中かもしれませんね
冒険者仲間なので良ければパーティを組みましょうと取り入る
エルフの村を教えると沼地に誘い出します

彼らがミミックの家に入ったら偽装を解き、沼地に落とします

そしてエルフに任せます



● 交渉相手の求めるものは
 エルフの森の中に入ったビッグ・サン(永遠を求める研究者・f06449)は、わずかに見覚えのある森の様子に目を細めた。立ち入ったのは随分昔のはずなのに見覚えがあるのは、この森がそれだけ変化を嫌うからなのか。
「ユグドの森ですか。久しぶりですね」
 独りごちた声は、誰にも聞かれなかったようだ。ビッグは古い昔、世界樹の葉を求めてこの森に立ち入ったことがあった。あの時は色々あって失敗してしまったが、今回は必ず手に入れるつもりだった。
 もちろん力づくでなどとは考えていない。エルフを助ければ少しは交渉の余地が生まれるだろう。一つ頷いたビッグは、エルフに近づくと友好的に助力を申し出た。
「作戦があるのですが、手伝ってもらえませんかね」
「作戦?」
「この先にある沼地に冒険者を誘導します。沼にはまった冒険者を包囲して攻撃すれば、楽に倒せると思いますよ」
 ビッグの作戦に、エルフ達は頷くと底なし沼に張り出した樹の上で待機する。沼をミミックで覆いエルフの家っぽく擬態させたビッグは、近づいてくる堕落者たちに歩み寄った。

「やあ。あなた達も冒険者ですか。私もですよ」
「誰だ!」
 警戒し【失望】の剣を抜き放った剣士に、ビッグは両手を上げて戦意が無いことを示す。油断なく構える堕落者達を観察したビッグは、見知った冒険者かも知れないと記憶を探った。
 ビッグは長い時間を生きている。アックス&ウィザーズの冒険者界隈には顔が広いから、お互いに知った仲かも知れない。
 名だたる冒険者の名前は知っている。だが、写真も無いこの時代、直接会わなければ顔は分からないのが常だった。そして、残念ながら知った顔ではなかった。
 警戒する戦士にニコニコ笑ったビッグは、手を挙げたまま肩を竦めた。
「実は私も冒険者でしてね。ここで会ったのも何かの縁です。良ければパーティを組みましょう」
「パーティ?」
「もちろん、タダでとは言いません。この先にエルフの村を見つけましてね。そこに行けば情報や金目の物が手に入りますよ」
「金目のものじゃと!? それはいい村の場所を教えろ!」
 色めきだつドワーフを抑えた剣士は、鋭い目でビッグを観察する。あくまでも友好的なビッグの姿に、剣士は鼻を鳴らした。
「エルフの村なんかに用は無い。俺が望むのは世界樹の葉ただひとつだ」
「そうねえ。わざわざ村に行って余計な時間を食うよりも、早く世界樹の葉を手に入れたいわ。こうしている間にも老いているのよ」
「うう、金目のものは惜しいが……」
 首を横に振る堕落エルフに、ドワーフも渋々頷く。交渉の失敗を悟ったビッグは逃げの一手を打とうとするが、それより早く剣士が動いた。
「お前が何者かは知らないが、交渉するならもっと相手をよく研究するんだな!」
 声と同時に剣が閃き、ビッグの頭を跳ね飛ばす。その場に倒れたビッグは、三人が立ち去るのを確認するとむくりと起き上がった。
「やれやれ。交渉は失敗ですか。仕方ありませんね」
 連れていたぬいぐるみが、頭を繋げた男の周囲をくるりと飛び回る。交渉を持ちかけた男はフレッシュゴーレムで、替えはいくらでも効くし仕込ませた再生蟲が頭くらいならすぐに繋げてくれる。ビッグに損害は無いが、利益もない結果に小さく息を吐いた。
「まあ仕方ありませんね。次の一手を考えましょうか」
 一つ頷いたビッグは、沼地で待機するエルフ達の許へと歩いていった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

フェルト・フィルファーデン
かつては名のある冒険者だったでしょうに……哀れなものね。
だとしても、これ以上アナタ達の好きにはさせるわけにはいかないの。
さあ、覚悟なさい!

まずは速攻でUC発動。【先制攻撃】
兵士人形達を呼び出し飛び回って敵を撹乱してもらうわ。
5体1組で守りを固めつつ死角から攻撃を加え、付かず離れず絶え間なく敵を攻め続けるわ。決して無理しすぎないこと。お願いね?

人形の兵士達には毒は効かない。あの子達が戦ってくれている隙にわたしは騎士人形の弓矢でエルフ達と共に敵を狙い撃ち確実に一撃で仕留めるわ。
【援護射撃xスナイパー】

この世界をこれ以上誰の好きにもさせないわ。待っていなさい、猟書家!!



● 統率力の勝利
 月明かりに照らされた森路を、三人の冒険者達がひた走る。青白い月光に照らされてなお青白い顔をした三人は、迷うこと無く森の中を奥へ奥へと駆け抜けていった。
「急げお前達! 世界樹の葉はこの先に……」
「待って!」
 仲間を急かす剣士に、堕落エルフは弓をつがえると矢を放った。
 闇に呑まれた矢に誘われるように、小さな影が堕落者たちに襲いかかる。高速で飛び交う影に急いで応戦する姿を木陰から見たフェルト・フィルファーデン(糸遣いの煌燿戦姫・f01031)は、フェルトが放った人形たちに応戦する姿を見ると小さくため息をついた。
「どんな事情があったって、これ以上アナタ達の好きにはさせるわけにはいかないの」
「なんだこいつらは! 人形?」
「人形遊びの趣味は無いぞい!」
「素早くて狙いが定まらないわ!」
 最初の衝撃が収まった堕落者たちは、背中から生やした岩腕も使って応戦を開始する。フェルトが放った525体の人形は、ほどほどの強さを持ち一撃で消滅する。ただ攻撃を仕掛けただけでは各個撃破されて終わりだったが、そうはならなかった。
 統率の取れた動きを見せる兵士の人形は、5体1組で守りを固めつつ死角から攻撃を加えている。付かず離れず絶え間なく加えられる波状攻撃は、互いに連携が取れているのだろう。撹乱しながら着実に攻撃を仕掛けては、無理をしすぎることなく離脱して戦力の損耗を最小限にする。
 腹立たしげに武器を振るう堕落者たちの注意が逸れた時、フェルトは手を上げ合図した。
「今よ! さあ、覚悟なさい!」
 フェルトの声に呼応したエルフ達が、一斉に矢を放つ。樹上から攻撃を仕掛けるエルフ達の矢雨に紛れたフェルトは、敵を一撃で倒すべく狙いを定め好機を待った。
 視線を定めるフェルトの視線が、こちらを見上げた堕落エルフの視線と交錯する。
 動いたのは同時だった。

 素早く動いた堕落エルフが、麻痺毒の塗られた矢を放つ。
 威力を高め、急所を狙い定めていたフェルトが矢を放つ。
 
 自分を狙い放たれる【情欲】の弓と【嫉妬】の矢が、フェルトの腕をかすめる。激痛が走り身体の動きが鈍くなるが、致命傷には至らない。
 矢の行方を見ていた堕落エルフは、口元に笑みを浮かべるとゆっくり崩折れた。心臓に一本の矢を立てた堕落エルフは、フェルトの視線に小さく口を動かした。
「ふふ……。世界樹の葉、があれば、こんな傷……」
「かつては名のある冒険者だったでしょうに……哀れなものね」
 フェルトが投げる哀れみの視線を受けた堕落エルフは、そのまま消えていく。ほどなく戦士とドワーフも倒したフェルトは、エルフの薬で腕の傷を治療し解毒すると勝利に沸くエルフ達を振り返った。
「この世界をこれ以上誰の好きにもさせないわ。待っていなさい、猟書家!!」
「行きましょう! 堕落者たちはまだ他にもいるはずです!」
 士気高く拳を握るエルフ達に頷き返したフェルトは、次の堕落者たちへ向けて駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユディト・イェシュア
骸の月の侵略は退けました
今度こそ故郷に平和をもたらすために

あの森がまた狙われているのですね
盟友の言葉に恥じないよう全力を尽くします
夜の森は迷いの森の力がなくても迷いそうですね
エルフの皆さんに地理を聞いておき
こちらが有利に動けるようにしておきましょう

ラウルさん…誰かに似ている気がしますが…
はい、必ずこの森を守ります

堕落者たち…あの邪霊に憑かれた存在
彼らの目的は世界樹の葉のようですね
強力な岩腕を与えられても
宝物を前にして欲望に目が眩んだその隙を狙いましょう

盗賊やモンスター退治が冒険者のあるべき姿
あなたたちはもはや倒されるべき存在
せめて最後には負の感情から解き放たれるように
破魔の力を込めて攻撃します



● ラウルとの邂逅
 エルフの里に立ったユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は、エルフ達に指示を出す族長のラウルを振り返った。
「骸の月の侵略は退けました。今度こそ故郷に平和をもたらすために、微力を尽くします」
「心強い言葉、ありがとうございます。皆さんが来てくれなければ、どうなっていたことか」
 ラウルが浮かべた笑顔に見知った姿を思い浮かべたユディトは、小さく首を傾げた。緑髪の長身エルフのラウルは、ユディトが知る緑髪の長身エルフに似た面差しがある。思わずじっと見てしまったユディトの視線に、怪訝そうに首を傾げた。
「何か?」
「いえ。誰かに似ているような気がして」
「そうですか」
 苦笑いを零したラウルは、チラリと視線を逸らすとすぐにユディトに戻す。真剣な眼差しのユディトに、ラウルは申し出た。
「何かお手伝いできることはありますか?」
「夜の森は迷いの森の力がなくても迷いそうですね。この辺りの地理を聞いても良いでしょうか? こちらが有利に動けるようにしておきましょう」
「分かりました。地図をお見せします」
 森の地図を示すラウルに、ユディトは地理を頭に叩き込む。迎撃に良さそうな場所を確認したユディトは、頷くと払暁の戦棍を握り締めた。
「盟友の言葉に恥じないよう全力を尽くします」
 エルフ達に誓いを立てたユディトは、森の奥へと立ち入っていった。

● 一対多の戦いに
 森の中を進む堕落者たちの姿を確認したユディトは、周囲の草花や枝、精霊達や小動物を乱獲しながら進むドワーフの前に立つと切なそうに眉を顰めた。
「堕落者たち……。あの邪霊に憑かれた存在」
「なんじゃい、若造が!」
「あら。素敵なボウヤ。お姉さんと遊ばなぁい?」
 しなを作る堕落エルフの前に立った戦士は、【失望】の剣を構えるとユディトに向けて戦意を顕にした。
「そこをどけ。俺は必ず、世界樹の葉を手に入れる! そして大切な人を蘇らせる!」
「あなた達の目的は世界樹の葉ですか。僕は必ずこの森を守ります!」
「やってみせろ!」
 吼えた戦士が、【失望】の剣で斬りかかってくる。払暁の戦棍で受け止め切り払ったユディトに、ドワーフが色めき立った声を上げた。
「おお! その戦棍、なかなかの業物じゃな! 欲しい! 欲しいぞい!」
 鼻息荒く駆け出したドワーフが、高価な斧を振り上げユディトに迫る。払暁の戦棍を奪うために放たれた攻撃に、ユディトは力強く踏み込んだ。
「あなたの弱点は、その鞄です!」
 襲い来る高価な斧を回避し、鞄に向けて強烈な一撃を放つ。目の色を変えたドワーフは、斧を捨て鞄を庇うと叫んだ。
「ええい! この鞄は誰にも渡さんぞい!」
「せめてその執着からは解き放って差し上げます!」
 振り抜いたユディトの一撃が、ドワーフの脳天を砕く。財宝の入った鞄を守り抜いたドワーフは、満足したように消えていった。
「盗賊やモンスター退治が冒険者のあるべき姿。あなたたちはもはや倒されるべき存在」
「どうかな! 盗賊やモンスターに返り討ちにあった冒険者の話なんて、吐いて捨てるほどある!」
「返り討ちにしてあげるわ!」
 ドワーフを倒したユディトに、戦士の剣が迫る。払暁の戦棍で咄嗟に受け止めたが、続く堕落エルフの矢がユディトの肩に突き刺さる。
 走る激痛に眉を顰めたユディトは、何とか戦士の攻撃をいなすと矢を引き抜き後ずさった。エルフから詳細な地理を聞いていたため退路は確保されているが、攻撃の助力要請はしていない。戦意の高い戦士と堕落エルフに対抗するには、ユディト一人では荷が勝ちすぎる。
 唇を噛んだユディトは、森の奥へと撤退した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

この森に来るのは初めてだが
エルフも長老も、妙に好意的だな?
…まあ、大天使ブラキエルの手の者が来るなら
どこを襲おうが斬るだけだが

「早業」で指定UC発動
エルフたちには弓矢で冒険者らを牽制するよう攻撃してもらうよう要請
移動範囲が制約できれば占めたもの
ダメでも一瞬怯んでくれたらそれでいい

隙を見せたドワーフを「視力、戦闘知識」で把握し高速移動で接近
「2回攻撃、怪力、鎧砕き、部位破壊」で厄介そうな岩石の腕の破壊を狙う
無理なら足の腱を切断(破壊)し動きを止めよう
反撃は前兆を「見切り」、「ダッシュ」で離れ回避

貴様ら欲に塗れた者に渡すものは何一つない!
骸の海で後悔しろ!!


森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

けっ、大天使サマとやらもいけ好かねえことしやがる
ここを狙って俺らが黙っていないとでも思うか、え?

ユグドの森のエルフたちの力を借りるため檄を飛ばす
てめえら、もう状況はわかっているな?
あのいけ好かねえ大天使サマの目的はてめえらの虐殺だ
俺らも手を貸すから、全力で撃退するぞ!

堕落したエルフの矢なんて食らってたまるか
射撃の前動作を「見切り」、「高速詠唱」+指定UCでスパーダ召喚
紅の短剣全てに高温の獄炎を纏わせ、他の堕落した冒険者ごと一気にブチ抜いてやる(属性攻撃、制圧射撃、蹂躙)
万が一矢を撃たれても、獄炎で燃え尽きるはず
てめえら全員、獄炎の豪雨を浴びて燃え尽きやがれ!!



● エルフの事情
 ユグドの森の里に立った森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)は、森から感じられる戦闘の気配に眉を顰めると盛大に舌打ちし拳を掌に打ち付けた。
「けっ、大天使サマとやらもいけ好かねえことしやがる。ここを狙って俺らが黙っているとでも思うか、え?」
「猟兵の皆さんの力を借りることができて、とても有難いです」
 族長のラウルが力強く頷いた時、首筋に感じた違和感に眉を顰めた。具体的、という訳ではない。チリと不快な空気を感じ取った陽太は、すう、と目を細めると気配を探った。
 エルフの主力は先行する猟兵達の援護に出払っている。今残っているのは戦闘力のない子供たちや老人達。余所者を遠巻きに見守る視線の中に感じるわずかな違和感を隠すように、ラウルが大きな声を上げた。
「偵察からの報告だと、森に放たれた堕落者たちはまだ残っている様子。一体でも残せばどんな禍根が残るか分かりません。森を守るために力を貸してくださること、心強く思います」
「……この森に来るのは初めてだが、エルフも長老も、妙に好意的だな?」
「そうか?」
 陽太の隣に立った館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)の言葉に、苦笑いしながら肩を竦める。わずかな違和感には気付かない様子の敬輔に、一歩前に出た陽太は更に気配を探った。
『余所者の力など借りずとも……』
『秘中の秘である森の地図を……』
『連中もどうせ世界樹の葉を……』
「てめえら、もう状況はわかっているな?」
 老人達の間に漂っている否定的な気配に、陽太は鋭い声で檄を飛ばす。途端に沈黙するチリとした気配が、陽太を固唾を飲んで見守る。こちらを伺うような気配に、陽太は続けた。
「あのいけ好かねえ大天使サマの目的はてめえらの虐殺だ。俺らも手を貸すから、全力で撃退するぞ!」
 陽太の声に、空気に漂うわずかな違和感が鳴りを潜める。更に言い募ろうとする陽太に、ラウルは楽しそうな声で笑った。
「猟兵の皆さんの方が、よほど状況を理解しているようです。ーーさあ、行きましょう。敵は待ってはくれません」
 ラウルの声掛けに遠巻きに見守っていたエルフが数人、前に出る。残った老人達からは、さっきまでのようなあからさまな違和感は感じ取れなくなった。エルフは余所者を嫌うというが、ここまで嫌う理由は陽太には分からない。ラウルに尋ねようとした時、敬輔が歩き出した。
「……まあ、大天使ブラキエルの手の者が来るなら、どこを襲おうが斬るだけだ」
「偵察が戻ってきました。堕落者の一団が森の奥へ向かっているそうです。こちらへ」
 ラウルの先導に従い、敬輔が先行して森に入る。一つ肩を竦めた陽太は、その背中を追いかけた。

● 果のない欲望
 二グループを視認した敬輔は、従うエルフ達を振り返ると一つ頷いた。
 森の中を進む堕落者たちの一団の行く手に矢が降り注ぎ、足を止めた背後の地面にも矢が突き刺さる。
 堕落者たが動きを止めた瞬間、敬輔が動いた。
「喰らった魂を、力に替えて」
「な、何事じゃ!」
 詠唱と同時に樹上から衝撃波を放つ。不意打ちを食らった戦士がよろけた瞬間を狙い枝を蹴った敬輔が、抜身の黒剣を叩きつける。袈裟懸けに斬られた戦士は、胸元を押さえながら下がると憎々しげな目で敬輔を睨みつけた。
「邪魔をするな! 俺は一刻も早く世界樹の葉を手に入れたいのだ!」
「どけ! こいつは俺が仕留めてやる!」
 後退した戦士の代わりに前に出た二人目の攻撃を見切り回避した時、ドワーフの奇声が響いた。爛々とした目を輝かせたドワーフは、背中に生えた岩腕に自慢の斧を持たせ振り上げると、黒剣を奪うべく振り下ろした。
「うほお! 何という切れ味じゃ! 欲しい! その黒剣、欲しいぞい!」
「貴様ら欲に塗れた者に渡すものは何一つない!」
「フン! この世の金目の物は全部ワシのもんじゃ!」
「させません!」
 斧を振り上げたドワーフに、ラウル達の牽制の矢が放たれる。一瞬動きを止めた隙を突いた敬輔は、斧を寸出で回避すると距離を取った。樹上からの攻撃に眉を顰めた堕落エルフは、矢をつがえると連続して解き放った。
「邪魔なのよ古臭いエルフが! 私の邪魔しないで!」
「……紅き剣を司りし悪魔の剣士よ、我が声に応え顕現せよ。そして己が紅き剣を無数の雨として解き放て!」
 反撃を読んでいた陽太は、エルフの矢を回避すると高速で詠唱を完成させた。
 陽太の背後がゆらりと歪む。次の瞬間現れたのは、捻じれたふたつの角を持つ漆黒と紅の悪魔の姿だった。悪魔スパーダを従えた陽太は、炎を帯びた短剣の逆光を浴びながら堕落者たちを見下ろす。悪魔を従えた陽太の姿に欲望を目に乗せたもう一人の堕落エルフは、てらりと光る嫉妬の矢をつがえた。
「あら、いい男じゃない。私とイイコトしましょう?」
「堕落したエルフの矢なんて食らってたまるか! やれ! スパーダ! てめえら全員、獄炎の豪雨を浴びて燃え尽きやがれ!!」
 媚薬が塗られた堕落エルフの矢と。
 獄炎をまとったスパーダの短剣と。
 すれ違いざまに放たれた陽太のユーベルコードは、堕落エルフの矢を焼き尽くすとその場を蹂躙する。容赦なく放たれる1000本の短剣は、衝撃波でダメージを受けた堕落者たちを容赦なく焼き尽くしていく。炎を避け一歩後退した敬輔は、ふいに炎を割って現れたもうひとりのドワーフの姿に黒剣を構えた。
「よこせ! その黒剣はワシのもんじゃ!」
「この黒剣は魂たちの依り処。お前みたいなドワーフには絶対に渡さない!」
「うるさい! よこせよこせよこせよこせよこせぇっ!」
 振り下ろされる斧の一撃を回避した敬輔は、足の腱を断ち切り動きを止める。地面に倒れ、這いつくばりながらもなお手を伸ばすドワーフに、敬輔は容赦なく黒剣を振り上げた。
「そんなに欲しいならくれてやる! 骸の海で後悔しろ!!」
 黒剣の一撃が、ドワーフに突き刺さる。鎧ごとやすやすと切り裂く攻撃に、ドワーフは腕を伸ばした。
「欲しい! ワシを切り裂くその切れ味! 欲しい欲しいほし……」
 ドワーフが伸ばした腕が空を掴む。力尽きたドワーフから黒剣を引き抜いた敬輔は、刀身についた血を払うと鞘に収めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
……オブリビオンの彼らにも色々思いがあるようですが
それでも、奪われる訳にはいきません
良かったら、ではないですよ。必ず、守ります。
世界樹だけではなく、この森やエルフの皆さんも

エルフの人達から森の地理を教えてもらい
事前に念糸を広範囲の木々に絡め、蜘蛛の巣のように張り巡らせる。暗闇の中の糸なら見つかりづらいでしょう(【地形の利用】【闇に紛れる】)

【アルカナ・グロウ】を発動し、
敵遭遇時に逃げる振りで攻撃を躱しつつ、巣までおびき寄せ
動きが制限されれば武器も振るいづらいでしょう
これならエルフの人達も安全に攻撃しやすくなるはず

あとはエルフの人達の攻撃にあわせてこちらも攻撃します!



● 念糸の罠
 深い森の中に身を潜めた桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は、森の中を進む堕落者たちの姿を樹上から見下ろすと眉を顰めた。
 先を急ぎたい戦士と堕落エルフの前に立って進むドワーフの足が、遅々として進まない。あちこちに生える草花や枝、珍しい動物たちを狩りながら進む姿に、エルフがじれたようにドワーフを小突いた。
「ちょっと! さっきから全然進まないじゃない! 早くしないと世界樹の葉が取れないわ!」
「ちょっと待つのじゃ! この森は本当に宝の山じゃ。見てみい、この月兎の髄液は美容効果抜群じゃぞい!」
「あら、いいじゃない」
「行くぞ! 俺は一刻も早く、大切な人を蘇らせる!」
 腹立たしげに兎の死骸を取り上げた戦士から、ドワーフが慌てて月兎を取り戻す。鞄の中にしまい込むドワーフは、舌打ちを一つ鳴らすと前を向いた。
「これはワシのじゃい! ったく、油断も隙も……ん?」
「……オブリビオンの彼らにも色々思いがあるようですが。それでも、奪われる訳にはいきません」
 欲望を漲らせる堕落者たちの前に立ったカイは、からくり人形の「カイ」を繰ると先頭のドワーフに向けて攻撃を仕掛けた。手にしたなぎなたで強烈な一撃を受け止めたドワーフは、間近に迫る「カイ」の姿に目の色を変えた。
「なんじゃ、こやつ人間じゃないぞい! 人形……? うほお、こんな精巧な戦闘人形見たこと無いわい! 欲しい! 欲しいぞ!」
 欲に目を眩ませたドワーフが、高級な斧を振り距離を取ると欲望に目を血走らせた。「カイ」を繰ったカイは、続けざまに放たれる矢を回避すると間近に迫った戦士の剣に目を見開いた。
「人形など、本体を倒せば手に入る!」
「くっ……!」
 「カイ」を繰ったカイは、戦士の攻撃を閉じた四色精扇で受け止める。防戦一方になったカイに、好機を見たドワーフが高級な斧を振りかざして迫った。
「嫌じゃい! まずはこの人形を手に入れるぞい!」
 斧を振り上げたドワーフが、カイと「カイ」を繋ぐ念糸に向けて斧を振り上げる。迫る強烈な一撃に、カイは地を蹴った。
「ここは撤退するしかありませんね……!」
 【アルカナ・グロウ】を発動したカイは、指を繰ると「カイ」を背後に撤退させた。爆発的に増大した反応速度についていけなかったドワーフの斧が、虚しく地を噛む。ギリ、と歯を噛み顔を上げたドワーフは、森の奥へと逃走するカイの姿に怒鳴り声を上げた。
「待てぃ! その人形置いてけぇ!」
 今までの鈍足が嘘のように走り出したドワーフを先頭に森の中を駆けた堕落者たちは、ふいに動きを止めた。地面を蹴った足が宙に浮き、武器を握った手が釣り上げられる。まるで蜘蛛の巣に掛かった昆虫のような姿になった堕落者たちに、振り返ったカイは片手を上げた。念糸で張り巡らせた糸の巣の上で待ち構えていたエルフ達が、一斉に弓に矢をつがえる。緊迫の中、ドワーフが叫んだ。
「なんじゃこの糸は! 強靭でしなやかな糸、絶対に売れる! 手に入れてみせるぞい!」
「奪わせません。良かったら、ではないですよ。必ず、守ります。世界樹だけではなく、この森やエルフの皆さんも。ーー今です!」
 上げた手を振り下ろすカイに呼応したエルフ達が、一斉に矢を降らせる。堕落者たちは必死に糸から抜け出そうともがくが、動けば動くほど手足に糸が絡まりその動きを封じていく。
「この! ワシのもんじゃ! この世の全ては、ワシのもんじゃ!!」
 叫んだドワーフの額に、矢が突き刺さる。全ての堕落者たちを倒したカイは、ドワーフが落とした鞄に歩み寄った。
「ひどいことを……」
 鞄の中に無造作に放り込まれた小動物の遺体たちを出したカイは、悼むように抱きしめるとそっとその場に埋葬した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『不死なる醜女ヒンメンベルク』

POW   :    アメアリア・セルヴォ
【自身の血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【炎の魔槍グッシレンヤ】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    ファーン・ド・モルファーン
【魔眼より飛ぶ火花】が命中した対象に対し、高威力高命中の【大地より召喚した複数の凶刃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    ソンゾボルト・ユーゴッド
レベル×5体の、小型の戦闘用【従魔】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ハララァ・ヘッタベッサです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


● 美しきものに呪いあれ 真に美しきものに祝福を
 聖木ユグドへ続く一本の道を、猟兵達はひた走る。聖木ユグドの周囲に張り巡らせた強力な迷いの森の魔法は、正しい道順を通らなければ森の入口へ戻されてしまうというもの。
 エルフ達に道順を聞き、先を行く大天使ブラキエルの後を追う猟兵達の前に一人の老婆が現れた。
「ふぉふぉ。ここから先へは行かせはせぬよ」
 しわがれた声を絞り出す不死なる醜女ヒンメンベルクは、節くれだった杖を振り上げると無数の従魔を喚び出した。
 途端に、周囲の森がざわめく。従魔をーー否、従魔と化した狂った精霊達を放ったヒンメンベルクは、得物を構える猟兵達の姿を憎々しげな目で睨みつけた。
「ああ、憎らしや。見目麗しき猟兵どもめ。我は醜い。それだけの理由で我を追放した一族の連中を思い出させるわ! お前らもエルフどもも我が一族同様、呪いの中に沈めてくれようぞ!」
 高らかに笑ったヒンメンベルクは、振り上げた杖を炎の魔槍グッシレンヤへと変化させると切っ先を猟兵たちへと向け斬りかかった。魔槍を回避し、カウンターを叩き込んだ猟兵は、割って入る狂える精霊の姿に唇を噛む。強制使役された精霊たちは、苦痛の叫び声を上げながらもヒンメンベルクを守護して離さないのだ。
「呪いで使役したこの精霊共がいれば、お前らの攻撃など通らぬわ! この魔槍の露にしてくれよう!」
「させません! 皆さん、援護します!」
 樹上より一斉に矢を仕掛け牽制したエルフ達が、ヒンメンベルクを牽制する。その隙に駆け寄ったラウルは、猟兵達に一つずつ小瓶を手渡した。
「これは、特殊な葉を煎じた霊薬です。精霊に与えることでその力を無効化することができます。ですが、効果はほんの一瞬。ヒンメンベルクに強打を与える前に使用し、精霊達の防御を抜けることをお勧めします」
 言い終えるのが早いか。精霊たちの叫びに耳を押さえたエルフ達は、耐え切れないというように膝をつく。普段から精霊たちと親しいエルフに、ブラキエルに与えられた力で呪いを強化し精霊を使役するヒンメンベルクは荷が勝ちすぎる。撤退するよう進言する猟兵の言葉に、ラウルは頷いた。
「すみません。皆さん、お願いします……!」
「惰弱なエルフどもが! お前たちは後で存分に従魔達を食らわせてやろうぞ」
 追撃を阻止する猟兵に苦々しく口を歪めるヒンメンベルクは、道を塞ぐように魔槍を振り上げた。
「我が仕えるは真に美しく気高い大天使ブラキエル様のみ! かのお方の覇道を邪魔させぬ! ここでお前らを殺し尽くしてくれようぞ!」
 火花散る視線で猟兵達を睨みつけたヒンメンベルクは、猟兵たちへと踊りかかった。


 ヒンメンベルクはブラキエルより与えられた力を使い、ユグドの森の精霊たちを強制使役して防御結界としています。
 有効打撃を与えるには、この結界を何とかしなければなりません。
 ラウルが手渡した薬を有効に使えば、プレイングボーナスとなります。結界にされている精霊に触れれば良いので、具体的な使い方は任意にお願いします。
 使役されている精霊は、木の精霊が主ですが他の精霊もいるかも知れません。

 プレイングは6/4(金)8:31より6/5(土)午前中までにお寄せください。それ以降はロスタイムです。
 それでは、よろしくお願いします。
御剣・刀也
真の姿、いしはま絵師のJC参照

なんとも、小さいな。お前は
お前を脅威だと、俺は感じない。そうやって隠れて不意を突くことしかできない卑怯者だ
来いよ。格の違いを教えてやる

霊薬を獅子吼にかけて纏わせた後、ダッシュで一気に距離を詰めて精霊を獅子吼の一振りで無効化し、陣形が崩れたら更に踏み込みアメアリア・セルヴォによる炎の槍の攻撃を第六感、見切り、残像で避けながら、ダッシュで距離を詰め、勇気でダメージを恐れず捨て身の一撃で斬り捨てる
「どんな高説を語ろうが、守りを固めようが、お前は剣士じゃない。そんな奴に負けるわけ無いだろ。わかったか?卑怯者」


フェルト・フィルファーデン
八つ当たりもいい加減にしてほしいものだけれど……何はともあれ、邪魔をするのなら容赦はしないわ。さあ、覚悟なさい!

操られているのならこちらも操る力で対抗するまでよ。
従魔と化した精霊達をUCの力で眠らせ動きを止め、語りかけましょう。

これからあなた達を解放するわ。でも、それには時間が必要なの。
だからお願い、少しの間だけでいいからあなた達を縛るその者を拘束して。

上手くいって敵を拘束出来たら敵の頭上に放り投げた薬瓶を騎士人形の弓矢で射抜き【スナイパー】薬を雨のように降らせて精霊達を解放。
そして守る者が無くなった瞬間、一気に懐へ飛び込み、切り裂く!【早業】



● 卑怯者には鉄槌を
 槍を構え駆けるヒンメンベルクの攻撃に、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は愛刀・獅子吼を抜き放ち構えた。老婆とは思えない機敏な動きで放たれる槍の攻撃を獅子吼でいなそうとした刀也は、ふいに視界を塞ぐ精霊たちの姿に目を見張った。
 ヒンメンベルクに強制使役させられた精霊たちが、救いを求めるように腕を伸ばす。刀也に精霊の言葉を理解することはできないが、その表情、その仕草から苦しんでいることは読み取れた。
 視界を塞ぎ、覆いかぶさるように腕を伸ばす精霊たちが、刀也を包み込む。その隙を突き駆けたヒンメンベルクは、炎の魔槍グッシレンヤを突き出した。
「キッヒッヒ。そのまま抑えておれ精霊共! その美しい顔を槍で一突きしてくれよう!」
「八つ当たりもいい加減にしてほしいものだわね」
 ヒンメンベルクの不意打ちに駆け出したフェルト・フィルファーデン(糸遣いの煌燿戦姫・f01031)は、刀也に纏わりつく精霊たちの姿に語りかけた。
「精霊たち、落ち着いて! あなた達を縛る呪いから開放してあげるから!」
 フェルトの声に、精霊たちが一瞬動きを止め、フェルトのユーベルコードの気配に救いを求めるように顔を上げて手を伸ばす。
 その隙で十分だった。
 拘束が緩んだ隙間から獅子吼を突き出した刀也は、青白く輝く刀身で魔槍を受け止めた。刀也の顔を狙い振り下ろされた魔槍が、獅子吼と火花を散らす。
 刀也の抵抗を力で押し切ろうとするヒンメンベルクが加速するより早く、フェルトが動いた。
「Archer!」
 呼びかけと同時に放り上げた霊薬を、現れた絡繰人形が射抜く。雨のように降り注いだ霊薬は、刀也にまとわりついた精霊の力を無効化し、拘束が解除される。
 身を翻し力を逸した刀也は、地面に魔槍を突き立てるヒンメンベルクに獅子吼を構えた。
「小童どもめが……!」
「なんとも、小さいな。お前は」
 真の姿を顕し、青白いオーラをその身に纏った刀也は、魂の底から沸き上がる螺旋の力を獅子吼に纏わせた。右目に集まったオーラで間近に迫ったヒンメンベルクを睨みつければ、火花の視線がギリと応じる。
 地面から槍を引き抜いたヒンメンベルクは、一振りで土を払うと邪悪な笑みを浮かべた。フェルトの周囲に集まる精霊達を見た老婆は、あざ笑うように笑い声を上げた。
「精霊共を手懐けよったか。無駄じゃよ。ーー精霊ども! そのフェアリーを殺せ!」
「お前を脅威だと、俺は感じない。そうやって隠れて不意を突くことしかできない卑怯者だ」
 ヒンメンベルクの自信を鼻で嗤った刀也は、挑発するようにスッと手を伸ばすと指を曲げた。霊薬の効果は一瞬。ヒンメンベルクはまだ二度目の強制使役を行使していない。精霊を召喚させてから霊薬を使わなければ。ならば、使わせればいいだけのこと。
「来いよ。格の違いを教えてやる」
「それはこちらのセリフよ小童が!」
 刀也の挑発に、ヒンメンベルクは吼えた。
 猛然と突き出される魔槍を獅子吼で受け止め、いなし跳ね上げ攻撃を仕掛ける。裂帛の気合で放たれた刀也の攻撃は、ヒンメンベルクに届く寸前阻まれた。
 強制召喚された精霊たちは、続く刀也の攻撃をことごとく防ぐ。絶対の安全圏から繰り出される攻撃は鋭く、霊薬を使う隙はなかなか与えてくれない。攻撃は極力回避してはいるが、全てをいなし切ることはできない。ジリジリ削られる刀也に、ヒンメンベルクは見下す視線を投げた。
「ほれほれどうした! さっきの威勢はどうした小童が!」
 嗜虐的な笑みを浮かべたヒンメンベルクの槍が刀也に届く寸前、ヒンメンベルクの動きが止まった。

● 精霊たちの解放を
 時は少し遡る。
 刀也にまとわりついた精霊たちを引き継いだフェルトは、霊薬の効果が切れフェルトを包囲するように漂う精霊達に手を伸ばした。
「もう大丈夫。私の話を……」
「ーー精霊ども! そのフェアリーを殺せ!」
 助けを求める精霊達の動きが一瞬止まる。精霊の身体にまとわり付いた黒い呪いに縛られ、声無き声で叫び声を上げた精霊は、フェルトに向けて怨嗟の念を放った。
 精霊が上げる叫び声に、フェルトは左手をーー左中指を天高く上げた。
「Fairy knights doll-04 Lance&shield!」
 フェルトの召喚に応じて現れた糸繰り人形は、装備した盾を展開すると放たれた念を受け止める。盾と人形の間に隠れてやり過ごしたフェルトは、第一波が止むのを確認すると空へと飛び出した。
 安全圏から抜け出したフェルトは、放たれる第二波を回避しながら精霊達の頬に手を伸ばす。念がかすめた腕が激痛を訴えるが、構わず飛んだフェルトは、精霊たちに語りかけた。
「ヒンメンベルクがどれほどあなたたちを縛ったって、わたしが解放してあげるわ」
 フェルトが伸ばした指先から、癒やし眠らせるウィルスが放たれる。ヒンメンベルクの呪いを駆除するウィルスは、上書きするように精霊たちの意識を少しずつ解放していく。苦しそうな頬が緩み、呪いから解き放たれる。感謝するような笑みを浮かべる精霊たちに、フェルトは語りかけた。
「今は呪いをウイルスで上書きしているけれど、再び呪いを受けたらどうなるかは分からないわ。だから、これからあなた達を解放するわ。でも、それには時間が必要なの。だからお願い、少しの間だけでいいからあなた達を縛るその者を拘束して」
 フェルトの願いに、精霊たちは動いた。刀也と激闘を繰り広げるヒンメンベルクに向けて飛んだ精霊たちは、老婆の身体を抱き締めた。
 精霊の身体が木の根に変わり、ヒンメンベルクは動きを止める。その一瞬で十分だと言わんばかりに駆け出した刀也は、霊薬を獅子吼にかけるとダッシュで斬り込んだ。
「フン! 精霊共よ! その攻撃から……」
「無駄だ!」
 刀也の攻撃から、呪われた精霊たちが身を挺して庇う。精霊に向けて振り抜いた獅子吼の攻撃に、呪われた精霊は動きを止めた。
「何!?」
「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん!!」
 青白いオーラを纏った獅子吼が、渾身の一撃を放つ。袈裟懸けに断ち切る攻撃に合わせたフェルトは、刀也と同時に護身の剣を振り抜いた。
「さあ、覚悟なさい!」
 刀也の攻撃にのけぞった背中を、フェルトの剣で受け止めるように切り裂く。両面からの同時攻撃に晒されたヒンメンベルクは、魔槍を地面に突き立てると辛うじて立ち上がった。
「この……小童どもめ! 主君の大望、阻ませはせぬ!」
「どんな高説を語ろうが、守りを固めようが、お前は剣士じゃない。そんな奴に負けるわけ無いだろ。わかったか? 卑怯者」
「邪魔をするのなら容赦はしないわ」
 油断なく得物を構える二人を、ヒンメンベルクは憎々しげな目で睨みつけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニクロム・チタノ
若くなくても心が綺麗なヒトもいるよ、でもアナタは歪んでしまっているね!
なんとか精霊の結界を無効化しなくちゃ
反抗の加護あり
お年の割には元気だねあの魔槍には注意しないと
研究所で教わったよ死中に活あり、だったかな?
護りの蒼焔で体を覆って槍の一撃を半面で受ける
驚いた?この半面には反抗の加護があるんだよ!
狙いはここ槍が止まった一瞬、重力を掛けて動きを封じるそしてさっきもらった薬を使って結界を無効化する
この一瞬の隙に反抗の雷装を叩き込む!
罪の無い精霊を酷使する圧政者は許さない、反抗の一撃を受けてみろ!



● 死中に活あり
 猟兵の連撃によろりと立ち上がったヒンメンベルクは、憎悪に満ちた目で猟兵達を睨みつけた。
「おのれ猟兵……! お前達もこの魔槍の錆にしてくれるわ!」
「若くなくても心が綺麗なヒトもいるよ。でもアナタは歪んでしまっているね!」
「抜かせ見目麗しき猟兵が!」
 憎悪の視線を真っ向から受け止めたニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は、繰り出される魔槍の攻撃を回避するとカウンターを繰り出した。
 踊るようにステップを踏んだニクロムが叩き込んだ反抗の妖刀の刀身がヒンメンベルクに沈む寸前、精霊が動いた。呪われた精霊は妖刀との間に割って入ると、その攻撃を全て受け止める。まるで分厚い空気の層を切り裂くような手応えに、ニクロムは眉を顰めた。
「なんとか精霊の結界を無効化しなくちゃ」
「無駄じゃよ。先程よりも精霊共の呪いを強化しておる。無効化などさせぬよ!」
 傷一つ負わないヒンメンベルクは、回避され突き刺さった岩から魔槍を引き抜くと嗜虐的な笑みを浮かべる。巨大な岩は抜かれた途端に破壊され、崩れて石ころとなる。
 自らの血液を代償に強化された魔槍の威力に肩を竦めたニクロムは、続けざまに放たれる攻撃をいなし、回避し、避けきれずに裂かれた腕の痛みを強引に無視した。
「お年の割には元気だねー。これはちょっとやばいかな? でも研究所で教わったよ。死中に活あり、だったかな?」
「活路を見出す前に、お前の頭を魔槍の露にしてくれるわ!」
 叫んだヒンメンベルクが繰り出す攻撃を回避しようとしたニクロムだが、腕の痛みに膝をつく。勝利の笑みを浮かべたヒンメンベルクは、両手で持った魔槍を素早く繰り出した。
「その美しい顔を、魔槍の露にしてくれるわ!」
「反抗の加護あり!」
 裂帛の気合で繰り出される槍の穂先が、ニクロムの顔に突き刺さる。勝利を確信したヒンメンベルクはしかし、すぐにその笑みを凍てつかせた。
「なに?」
「驚いた? この半面には反抗の加護があるんだよ!」
 美に執着するヒンメンベルクの攻撃を読んだニクロムは、反抗の半面に凝縮させた護りの蒼焔で槍の穂先を受け止めたのだ。膝をついたのは、衝撃を効率的に逃がすため。
 反抗の加護で魔槍の動きが一瞬止まる。反抗の竜チタノの加護で発生させた重力がヒンメンベルクの魔槍を絡め取り、動きを封じる。
 その隙に投げつけた霊薬の小瓶が壊れ、ヒンメンベルクを守っていた精霊たちが霊薬を恐れたようにその場を離れる。
 霊薬が作ったのは、ほんの一瞬の隙。だがニクロムにはそれだけで十分だった。
「反抗の一撃を受けてみろ!」
 裂帛の気合と共に、反抗の雷装を叩き込む。ヒンメンベルクを深々と割いたニクロムは、地面に叩きつけられた老婆に振り抜いた反抗の妖刀を突きつけた。
「罪の無い精霊を酷使する圧政者は許さない。反抗の竜チタノの名にかけて、ブラキエルの侵攻は必ず止める!」
「やってみせるがいい猟兵! あのお方は我よりも何十倍も強く美しいわ!」
 魔槍を杖に立ち上がったヒンメンベルクは、凛と見下ろすニクロムの美しい顔に憎しみの視線を投げつけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユディト・イェシュア
醜い…それだけが理由で
あなたが虐げられてきたのなら同情はします
けれど今のあなたはその心まで醜くなってしまった
外見ばかりが美しくてもそれはまやかしです
いずれ内面の醜さが表れて…同じことです

故郷を守るために
これ以上足手まといになるわけにはいきません

ラウルさんにいただいた小瓶
効果は一瞬なら使いどころを見極めなければいけませんね
精霊たちに守られながらのヒンメンベルクの攻撃は強力
俺は仲間を守ることに徹して攻撃をしのぎ
仲間たちが反撃の一手を叩き込めるようサポートします

仲間と息を合わせ
俺の小瓶も仲間の一撃のために使用します

ユグドの森の精霊たちを解放してもらいます
この森は何者の支配も受けない
必ず守ってみせます


ビッグ・サン
やれやれ、世界樹を探すのにエルフの情報なしでどうするつもりだったんでしょうねあの冒険者
まあ、まともな精神状態じゃなかったようですし仕方ありませんか

ん?ヒンメンベルクですか
不死者になったそうですが、不老ではないのであちこちガタが来てそうですね
ラウルさんは霊薬をどうもですよ
精霊の守りを突破できるのは良いですね
私も今度作ってみるとしましょう

さて、狂える精霊はドライアードが主ですね
こちらも狂える植物で相手しましょう
(ヒンメンベルクの周りの木々に薬品を撒いていく、木々が目に見えて動き出す。枝は伸びてしなり鞭のように唸る。実は破裂し種を散弾のように飛ばし、根は足に絡みつく。攻撃が通じなければ薬を撒く)



● 仲間を、故郷を守るため
 憎しみにギラついた目で世界をにらみつけるヒンメンベルクの視線に対して、ビッグ・サン(永遠を求める研究者・f06449)が考えていたのは全く別のことだった。
「やれやれ、世界樹を探すのにエルフの情報なしでどうするつもりだったんでしょうねあの冒険者」
 肩を竦めて思うのは、先程交戦した堕落者たち。森を奥へと進んだようだったが、その後のことは聞かないから他の猟兵達に討伐されたのだろう。
「まあ、まともな精神状態じゃなかったようですし仕方ありませんか」
「何をブツブツ言っておるか!」
「ん? ヒンメンベルクですか。不死者になったそうですが、不老ではないのであちこちガタが来てそうですね」
「抜かせ猟兵!」
 吼えたヒンメンベルクは、ギラついた視線をビッグに放った。火花散る視線は魔槍を手に駆けるヒンメンベルクよりも早く奔り、防御の手段を講じていないビッグを焼かんと迫った。
 飛んでくる火花にビッグが気づく寸前、白い影が走った。
「危ない!」
 ビッグと火花の間に割って入ったユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は、両手を広げ立つとヒンメンベルクの火花を受け止めた。
 その直後、ユディトの足元が黒く染まった。
 黒く割れた大地から現れたのは、複数の凶刃だった。鋭い刃物は毒に塗れテラテラと光り、立ち止まったまま動かないユディトに向けて殺意も高く切っ先を向けた。
「キヒヒ! その美しい顔を、美しい身体を! ずたずたに引き裂いておやり! 我を追放したあの族長と同じ目に遭わせるのじゃ!」
 ヒンメンベルクの声に、鋭い刃物は一斉にユディトを切り裂いた。高い精度の鋭い刃物はユディトを容赦なく切り刻み、大地にその身体を横たえるだろう。そう確信したヒンメンベルクは、地を高く蹴ると魔槍を大きく振り上げた。
「お前も我が一族と同様に、この炎の魔槍グッシレンヤの錆にしてくれるわ!」
 必殺の一撃が、ユディトに迫る。勝利に酔い口元を歪めたヒンメンベルクはしかし、揺るぎないユディトの視線を受けて訝しげに眉を顰めた。
「なに?」
「醜い。……それだけが理由であなたが虐げられてきたのなら、同情はします」
 腕を広げたまま凛として立つユディトは、渾身の力で振り下ろされた魔槍の一撃にも倒れずに、距離を取るヒンメンベルクの姿を見下ろした。
 人のオーラを見ることができるユディトは、ヒンメンベルクの周囲を守る精霊の姿に悲しそうに眉を下げた。呪いで強制使役された精霊たちからは、苦しみや怒りといった負のオーラが読み取れる。どんな理由があったとしても、こんなことは許されることではなかった。
「けれど今のあなたはその心まで醜くなってしまった。外見ばかりが美しくてもそれはまやかしです。いずれ内面の醜さが表れて……同じことです」
「うるさいわ小童が!」
 ユディトの言葉に、ヒンメンベルクは顔を紅潮させるとユディトに襲いかかった。自らの血で強化された魔槍は、一撃で岩をも砕くほど重く、強い。だがその攻撃のことごとくを受け止めてもなお、ユディトは無傷だった。だが、もちろんそれに代償はある。
 絶対の防御の代償として、ユディトは動けないのだ。
「ビッグさん、ヒンメンベルクの攻撃は全て受け止めます! だから俺ごと攻撃を!」
「いいんですか?」
 少し驚いたようなビッグの声に、ユディトは頷く。細い通路状になった森の中、仁王立ちするユディトを避けて攻撃するのは容易いことではない。仲間を、世界を守るためならば、自分が犠牲になるのを厭うユディトではなかった。
「故郷を守るために、これ以上足手まといになるわけにはいきません。俺の霊薬も使ってください!」
「それはいい。遠慮なく使わせて貰いますよ」
 ユディトの決意に相好を崩したビッグは、ユディトが握った霊薬を受け取ると行動に出た。

● 敵味方を区別しなければ……
 時は少し遡る。
 ユディトの防御で急場を凌いだビッグは、ラウルから受け取った霊薬を改めて見てみた。
 小瓶の中に入っているのは、とろりとした液体。どんな成分かはここでは分からないが、精霊の守りを突破できるという効果はなかなかに興味深い。今度作ってみるとしよう。
 そう決めたビッグは、改めてヒンメンベルクと使役された精霊たちを改めて観察した。使役の呪いを付加された精霊たちは苦しそうな声を上げているが、まあそうだろう。呪いの奥に見え隠れする精霊たちの様子を観察したビッグは、一つの結論を得た。
「さて、狂える精霊はドライアードが主ですね。ここは森の奥で、木の精霊の力が強いのでしょう。ならばこちらも狂える植物で相手しましょう」
 ユディトに気を取られたヒンメンベルクはとりあえず無視。二人の会話を邪魔しないように詠唱を開始したビッグは、自分のバッグの中から取り出した薬品をそっとヒンメンベルクの向こう側の木々に投げた。
 木の根に転がった薬は、地面に黒いシミとなって広がる。狙いが逸れたから効果が出るまで少し時間がかかるか。そう思い木の成長を促そうかとしたビッグは、ユディトの言葉に顔を上げた。
「ビッグさん、ヒンメンベルクの攻撃は全て受け止めます! だから俺ごと攻撃を!」
「いいんですか?」
 ユディトの声に、意外そうな声を上げる。さすがに味方猟兵まで攻撃するのは気がひけるからヒンメンベルクだけ攻撃しようと思っていたのだが、そう言ってくれるなら話は早い。
「故郷を守るために、これ以上足手まといになるわけにはいきません。俺の霊薬も使ってください!」
「それはいい。遠慮なく使わせて貰いますよ」
 ユディトから霊薬を受け取ったビッグは、自分の足元にも魔法薬を撒くと木々の成長を促した。時を見計らい、ヒンメンベルクに霊薬を掛けると詠唱を完成させる。
 次の瞬間、木が動いた。
 今まで風にそよぐだけだった木々が、目に見えて動き出す。枝は伸びてしなり鞭のように唸り、その場にいる全てに向けて叩きつけてきた。実は破裂し種を散弾のように飛ばし、まるでマシンガンの一斉掃射のように攻撃を仕掛けてくる。
 ヒンメンベルクを、ユディトを、自分の身体をも巻き込み放たれる木々の一斉攻撃に、ヒンメンベルクはたまらず撤退を開始した。
「やれやれ、これはいかん!」
「おや? 逃げられるとでも?」
 ビッグが言った瞬間、伸びた木の根は足に絡みつく。精霊の無効化が途切れたとしても、もう一個あるから問題なんてありはしない。 
「どうですかどうですか! 私が調合した肥料で、農作物もたわわに実っていますよ。味も量も戦闘力も、どれをとっても圧倒的ってやつですよ」
「ユグドの森の精霊たちを解放してもらいます。この森は何者の支配も受けない。必ず守ってみせます!」
「ぐふっ! 貴様ら、正気か!」
 ビッグの攻撃に一緒に晒されたユディトは、一歩も引かずヒンメンベルクに迫る。
 狂った森の総攻撃は、敵味方の区別なくその場の全てを蹂躙していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
扇に宿る精霊達(火・水・風・地の精霊)が動揺しているのが伝わる
……彼らも無理矢理扇に封じられているから、その苦痛はよく分かるんでしょうね
「たす、ける」「……うん」「たすけるっ」「…いく」
はい、助けに行きましょう。あなた達も力を貸してください

今回は使役されている精霊を助ける為に一気に勝負をつけましょう
木の精霊達に接近しても速度は緩めません
やってくれると信じているから
水と風の精霊が薬をまく間に駆け抜ける

従魔達は炎と石つぶて(地の精霊)で対応

彼らが拓いてくれた道を無駄にはしません
もう一度力を貸してください!
魔槍を【見切り】で躱して、そのまま彼らの力(【属性攻撃】)を乗せた薙刀で攻撃します。


檪・朱希
WIZ
精霊の言葉は聞こえないけれど、苦しんでるのは分かる。

雪が今は休んでいるから、燿と一緒に倒そう。UC発動、燿だけ召喚する。

作戦は、私が霊薬を隠し持つ。
「聞き耳」と「情報収集」、そして「索敵」で、敵の位置は逐一把握する。

従魔には、霊刀【霞】の「破魔」、「なぎ払い」による「斬撃波」で対応。
そして拳銃【暁】で「スナイパー」。わざと精霊達の防御を1箇所へ集めていく。
燿はその間、「魔力溜め」と「貫通攻撃」を意識した、氷「属性攻撃」の準備。

燿、行くよ。
霊薬を防御の薄い所へ投擲して、そこに燿の一撃を。
『よっしゃ! 凍てつく氷をくらいやがれ! 氷月花!』

これ以上、好き勝手にさせない。先に行かせてもらうよ。



● 精霊たちとの絆
 猟兵達の捨て身の総攻撃に晒され、酷いダメージを受けたヒンメンベルクは、節くれだった杖に縋るように立ち上がった。
「っ……! 猟兵どもめ! かくなる上は呪いを強化してくれよう!」
 歯噛みしたヒンメンベルクは、杖を振り上げると呪いの詠唱を開始した。聞き取りづらい呪文は低く響き、空気が負の色に染まっていく。
 ヒンメンベルクを守護していた精霊たちが、苦悶の声を上げる。一層強い呪いで縛られた精霊は、悲壮な声を上げながらそれでもヒンメンベルクの周囲から離れられずに飛び交うだけだった。
 ヒンメンベルクの周囲を取り囲む空気が変わったのを感じ取った檪・朱希(旋律の歌い手・f23468)は、その気配に眉を顰めた。
「精霊の言葉は聞こえないけれど、苦しんでるのは分かる」
「ええ。精霊たちはとても苦しんでいます」
 朱希の声に頷いた桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は、空気を染め上げるような呪いに唇を噛んだ。
 懐に仕舞った四色精扇に封じられた精霊たちが動揺しているのが分かる。手に取り掲げた扇から現れた火・水・風・地の精霊達は、苦しむ木の精霊達の姿にカイの周囲を舞った。
「たす、ける」「……うん」「たすけるっ」「…いく」
「はい、助けに行きましょう。あなた達も力を貸してください」
 力強く頷いたカイに、朱希もまた詠唱を開始した。朱希を守護する二人の霊のうち雪は今、先程の戦いの最中受けた毒からの回復が間に合っていない。
「燿!」
『これが俺の力だ!! 心象顕現!』
 現れた守護霊の燿が、銃を構え朱希を守るように前に出る。戦闘態勢を整えた二人の姿に、詠唱を終えたヒンメンベルクは肩を震わせ嗤い声を上げた。
「ヒャヒャッ。良い精霊どもを連れておるわ。我が使役下に置いてくれようぞ!」
『げ。冗談。それに俺は精霊じゃねえ! 守護霊だ!』
「どちらでも良いわい! 行け、従魔ども! 精霊どもを主から引き剥がし、我もとへと連れてくるのじゃ!」
 杖を掲げたヒンメンベルクは、現れた無数の従魔をーー呪いにより従魔と化した下位精霊達を召喚するとカイと朱希の許へと差し向けた。
 苦しげに呻く従魔達が、カイに迫る。呪いにより使役されている精霊たちは救えるかも知れないが、従魔にされてしまった精霊たちはもう救うことができない。いたましそうに眉を顰めたカイは、地を蹴り駆けてヒンメンベルクに肉薄する。主の許へ行かせまいと迫る従魔達は、カイが連れた精霊たちを奪おうと襲いかかってきた。
 普段封印されている精霊たちに、従魔は力を共振させ窮状を訴えその力を弱める。使役された木霊の力も加わり、ついに精霊たちはカイを置き去りに動きを止めた。
 ついてこない精霊たちに、カイは唇を噛んだ。従魔達に絡め取られるほど、カイを守護する精霊たちの意思は弱くない。だから大丈夫。だが、どうしても気になってしまうし万が一はある。一瞬心をよぎる不安を見透かしたように、別の従魔が木枝の槍で攻撃を仕掛けた。
 防御が間に合わない。衝撃を覚悟したカイは、背後から放たれる衝撃波で叩き落される木枝の槍にチラリと後ろを振り返った。
「援護するから、あなたは先に進んで!」
「感謝します!」
 頷いたカイは、ヒンメンベルクに狙いを定めるとまっすぐに駆け抜けた。やがて間近に迫ったカイの前に、木の精霊達が立ちはだかった。呪いを受けた木の精霊たちが、救いを求めて手を伸ばしてくる。その姿にも、カイは足を止めなかった。
 精霊たちは必ず来てくれる。そう知っているカイの思いに応えるように、精霊たちが現れた。
 カイの前に飛んで出た水と風の精霊が、霊薬を撒く。同時に木の精霊たちを足止めをし、その隙に防御を抜けたカイは、目前に迫るヒンメンベルクに薙刀を構えた。
「きよったな猟兵! この魔槍の露にしてくれようぞ!」
 繰り出される魔槍の一撃を見切り回避したカイは、土と火の精霊を乗せたなぎなたを突き出した。
「ぐ……ふっ! この力は精霊どもの……! 何故じゃ! 封印され使役されておるのは木霊どもと変わらぬはず。なのに……!」
「……彼らも無理矢理扇に封じられているから、木霊達の苦痛はよく分かるんでしょうね。ですが、私は精霊たちを信じていますから。呪いでしか関係を築けないあなたとは違います」
 カイがなぎなたを振り抜いた時、朱希の攻撃がヒンメンベルクに叩き込まれる。
 倒れ伏したヒンメンベルクを見下ろしたカイは、集まってくる精霊たちに手を伸ばした。

● 守護霊との絆
 時は少し遡る。
 ヒンメンベルクへ肉薄するカイを見送った朱希は、一点を目指す彼とは逆に意識を拡散させた。イヤホンを外し、情報を集める。聞き耳を立て索敵し、敵の位置や目的、行動を逐一把握していく。
 現れた従魔は、カイの精霊たちへ集まっていく。同時に朱希達の方に現れた従魔は、燿の周囲に群がると一斉に何事か語りかけた。
『うわっ! 何だお前達! 俺は精霊じゃねえから何言ってるのか分かんねえよ!』
「燿!」
 燿に纏わりつく従魔達を、霊刀【霞】で切り払う。破魔を乗せた霊刀は従魔達を次々に消し去っていくが、なにせ数が多い。なぎ払い対応した朱希は、悪化する状況にカイを見た。
 カイが連れた精霊たちが、従魔に取り囲まれている。同じ精霊という属性もあるのか、動きを止めた精霊たちの「音」が少しずつ変化していく。あちらも援護しなければ。唇を噛んだ朱希は、燿の声に顔を上げた。
『何してんだ朱希! 早くあっちを援護しろよ! こっちは俺だけでも何とかしてやる!』
「燿……わかった。お願いね!」
 必死に従魔を破壊する燿に頷いた朱希は、渾身の力を込めて斬撃波を放った。カイに向けて木枝の槍を放つ従魔を破壊した朱希は、チラリと振り返るカイに声を張った。
「援護するから、あなたは先に進んで!」
「感謝します!」
 頷くカイを見送った朱希は、カイの精霊たちに纏わりつく従魔達を次々と破壊していった。同じ精霊同士、手を出しあぐねていたカイの精霊達を、物理的に解放していく。従魔の拘束から解かれた精霊を見送った朱希は、燿を振り返った。
「燿! 大丈夫?」
『……ったりめーだっての! 行くぞ、朱希!』
 自分にまとわり付いていた従魔を倒し終えた燿は、肩で息をしながらも朱希の隣に立つと駆け出した。だがあれだけの従魔を一人で倒して、無傷とはいかない。燿の負傷は気になったが、今は信じて進むしかない。
 ヒンメンベルクを射程に収めた朱希は、拳銃【暁】を構えると攻撃を仕掛けた。朱希の銃弾に反応した精霊たちが、一箇所に集まり防御を厚くする。
 そこに、カイの攻撃が届いた。精霊の力を弱め貫くカイのなぎなたに呼応した朱希は、燿に視線をやると頷いた。
「燿、行くよ」
『よっしゃ! 凍てつく氷をくらいやがれ! 氷月花!』
 防御が薄くなった背中に投擲した霊薬が、効力を発揮する。そこに放った氷の銃弾が、ヒンメンベルクの背中を貫き大きな氷の花を咲かせた。
「小娘が……!」
「これ以上、好き勝手にさせない。先に行かせてもらうよ」
 朱希とカイの連撃を受けたヒンメンベルクは、その場にくずおれるように膝をついた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

ヒンメンベルクとやら、安心しろ
すぐさま俺の黒剣の錆にしてやる

指定UC発動
狂った精霊たちの叫びには「覚悟」を以て耳を貸さない
薬をわざと精霊たちに与えるように「投擲」したら
直ぐに黒剣を横薙ぎに振り「衝撃波」を発生させ薬を吹き飛ばし精霊らにかけ無効化を狙う
防御を抜けたら「早業、2回攻撃、属性攻撃(炎)」で追い打ちの衝撃波をもう1発叩き込んでやる

魔眼より飛ぶ火花は、魔眼そのものを潰して阻止しよう
「怪力、投擲」で投擲用ナイフを力いっぱい投げつけ、魔眼を潰す!
潰し損ねたら凶刃を「見切り」つつ漆黒の「オーラ防御」を盾代わりに逸らす

残念だったな
魔槍ではなく黒剣の露となるのは、貴様だ


森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

…この薬、直接叩き込まないとダメか
刃に塗って効果が持つようならそうしたんだが
持たなそうなら仕方ねえな

「高速詠唱」+指定UCで再度スパーダ召喚
紅の短剣には再度「魔力溜め、属性攻撃(炎)」で獄炎を纏わせ
戦闘用従魔の召喚と同時に一斉に紅の短剣全てを降らせ「制圧射撃、蹂躙」し焼き尽くす
ヒンメンベルクは無事だろうが構わねえ
従魔一掃と炎で目くらましが狙いだからな

俺はスパーダと炎を囮に「地形の利用、闇に紛れる、忍び足」で気配を断ち背後を取り
薬を心臓に投げつけながら二槍伸長「ランスチャージ、暗殺」
精霊無力化と同時に心臓をぶち抜くぜ!

俺らの前で力に酔って慢心したのが
てめえの敗因さ



● 黒剣と二槍
 最後の力を振り絞るように立ち上がったヒンメンベルクは、怨嗟の声を絞り出しながら折れた杖を握り締めた。
「おのれ……おのれ猟兵……!」
「ヒンメンベルクとやら、安心しろ。すぐさま俺の黒剣の錆にしてやる」
 黒剣を抜き放ち構える館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)の姿に、ヒンメンベルクはゆらりと顔を上げた。黄色い歯を剥き出しにして、しわがれた声で嗤うと完成したユーベルコードを容赦なく叩き込んだ。
「ヒャヒャ! この刃を受けてもその大口が叩けるのか、見ものじゃわ!」
 魔眼より飛ぶ火花に反応した敬輔は、投擲用ナイフを素早く投げた。次の攻撃を呼ぶ火花は、魔眼そのものを潰せば阻止できるはず。火花が届くより早く放たれたナイフはしかし、防御に入った精霊によって防がれた。ヒンメンベルクが放つ火花が、敬輔を焦がす。同時に、敬輔の足元に闇が広がった。
 大地より召喚された刃物が、敬輔を襲う。敬輔に向けて放たれる刃物は凶悪な殺傷力を持ち、てらてらと輝いている。刃物を見切り回避しいなした敬輔は、避けきれなかった刃物で受けた傷を押さえながら距離を取った。
 激痛に耐える敬輔の隣で、どこか呑気な声が上がった。
「……この薬、直接叩き込まないとダメか。刃に塗って効果が持つようならそうしたんだが、持たなそうなら仕方ねえな」
 敬輔の隣に立った森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)は、防がれたナイフに感心したような声を上げる。その声にピクリと眉を上げた敬輔は、何か言おうと思ったが口に出しては何も言わず小さくため息をついた。
「……言っておくが、俺はあのナイフに霊薬は塗っていないぞ」
「そうなのか? じゃあ……」
「とにかく行くぞ!」
「へいへい」
 声を遮る敬輔に肩を竦めた陽太は、ヒンメンベルクの前に出ると挑発するように言った。
「なんだ婆さん。もうボロボロじゃねえか。諦めて大人しく倒されろや」
「フン! 貴様らごとき小童どもの相手など、従魔どもで十分じゃ!」
 杖を振り上げたヒンメンベルクは、詠唱を開始すると従魔を喚び出した。あれらは呪いにより変質してしまった精霊たちだというが、あいにく陽太には精霊と交信する力は持ち合わせていなかった。
 陽太が交信できるのは、悪魔だ。
 現れた従魔達が、一斉に敵意を陽太に向けると木枝の槍を解き放った。無数にも思える槍の攻撃に、高速詠唱で詠唱を完了させた陽太は手を振り上げた。
「紅き剣を司りし悪魔の剣士よ、我が声に応え顕現せよ。そして己が紅き剣を無数の雨として解き放て!」
 陽太の召喚に応じて現れた捻じれたふたつの角を持つ漆黒と紅の悪魔は、獄炎を纏った1010本の短剣を一斉に放った。
 場が獄炎に包まれた。
 ヒンメンベルクが召喚した従魔の数を上回る短剣は幾何学模様を描き飛び、従魔達を次々と包囲殲滅していく。炎の中に消えていく従魔達を見送ったヒンメンベルクは、おかしそうな声で笑い声を上げた。
「ヒャヒャ。この程度のオモチャで、我が精霊共の防御が抜けられるとでも思ったか?」
「思わないさ」
 獄炎を割り駆け出した敬輔は、断末魔の悲鳴を上げる従魔達の声を振り切り駆ける。真正面から黒剣を構えて駆ける敬輔に、ヒンメンベルクは呪いで使役した精霊たちを差し向けた。
「あやつの足を止めよ!」
 ヒンメンベルクの側を離れ、敬輔に向けて精霊たちが手を伸ばす。その苦痛と悲嘆に満ちた声に耳を傾けそうになる己を叱咤し、覚悟を持って耳を貸さない。代わりに霊薬を与えるように投擲し、衝撃波で叩き割る。
 敬輔の攻撃に、精霊たちの動きが止まった。
 精霊の脇を抜けた敬輔は、目を見開くヒンメンベルクに肉薄すると黒剣を振りかぶった。
「何!?」
「遅い!」
 炎を帯びた黒剣が、ヒンメンベルクを袈裟懸けに切り裂く。振り下ろした剣を返して下から上へと振り抜き、とどめとばかりに衝撃波を叩き込む。
「残念だったな。魔槍ではなく黒剣の露となるのは、貴様だ」
「な……にを。我はまだ……ッ!」
 たたらを踏み、よろりと立つヒンメンベルクがふいに目を見開いた。
 自身の心臓を貫く二本の槍を、信じられないように見下ろし立ち尽くす。
 炎と敬輔の攻撃を隠れ蓑に背後に忍び寄った陽太は、気配を絶ち機を伺っていた。敬輔の攻撃を受けてのけぞった背中に、霊薬と共に二槍を同時に伸長させ、心臓を貫いたのだ。
「俺らの前で力に酔って慢心したのが、てめえの敗因さ」
 二人の連撃に、ヒンメンベルクは口の端から血を流しながらもにい、と笑みの形に歪ませた。
「この……我を、ここまで……。じゃが、我の仇は、我が主、大天使ブラキエル様が取ってくれようぞ……! あの方には、我よりも……強大な……」
 何かを求めるように伸ばされたヒンメンベルクの手が、ぼろりと崩れる。
 黒い灰となり消えていったヒンメンベルクを見送った敬輔と陽太は、震える森の気配に息を呑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『大天使ブラキエル』

POW   :    岩腕
単純で重い【岩石でできた巨大な腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    絶対物質ブラキオン
【「絶対物質ブラキオン」の鎧】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、「絶対物質ブラキオン」の鎧から何度でも発動できる。
WIZ   :    大天使の光輪
自身が装備する【大天使の光輪】から【破壊の光】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【徐々に石化】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


● 世界樹の守護者
 迷いの森の最後の角を曲がった猟兵達は、目の前に広がる景色に目を見開いた。
 青白い月明かりに照らされた大きな湖の中心には、銀の幹を持つ巨大な樹。湖の真ん中に浮かぶ島を抱えるように張り巡らされた根本から溢れ出す水は、ユグドの森だけでなくこの地域一帯の水源となっているのだろう。幾本もの川となり、この地より水の恵みを齎していた。
 清浄であって然るべきその地は今、大天使ブラキエルと呼ばれるオブリビオンと彼が引き連れる呪われし四大精霊達によって冒されようとしていた。

 湖の上を舞うブラキエルは、聖木ユグドへゆっくりと近づくと手を伸ばした。
「よくもここまで手こずらせてくれたものだな」
「それ以上近づかせません。大天使ブラキエル」
 聖木ユグドの下に立つ緑髪のエルフの女性が、ブラキエルの前に立つ。その姿を鼻先で嗤ったブラキエルは、女性には構わず聖木ユグドへと近づいていった。
「死にぞこないのエルフ如きが、我が道を遮るなど片腹痛い」
 口元に笑みを浮かべたブラキエルは、狂える風の精霊を女性に差し向けた。呪いを受けた風の精霊のに腕を伸ばした女性は、優しく精霊を抱き締めた。同時に、風の精霊の動きが止まる。己の魔力の全てを使い風の精霊を抑え込んだ女性は、現れる猟兵の姿に笑みを浮かべた。
「大天使ブラキエル。私にあなたを止める術はありません。ですが、彼らなら……!」
 最後の力を振り絞った女性は、渾身の力で湖へ魔力を放った。湖の上に飛ぶブラキエルの足元に、石畳の道が現れる。駆けつけた猟兵達に、女性は叫んだ。
「猟兵達よ、ブラキエルをお願いします! そして、狂える精霊たちの解放を……!」
「ヒンメンベルクは敗れたか。口ほどにもない。まあいい。我が自ら相手をしてやろう猟兵」
 振り返ったブラキエルは、感情の見えない声で手を差し伸べる。その手に応えた呪われた精霊たちが、ブラキエルの檄に応えてその周囲を舞う。空を舞うブラキエルは、駆けつけた猟兵達に狂える精霊を差し向けるのだった。

※大天使ブラキエルは、このシナリオでは以下の能力を得ています。。

 1 必ず【先制攻撃】をしてきます。
 2 【常時飛行状態】となり、そのままでは通常の打撃は通りません。
   また、矢に弱いと行った弱点はこれといってありません。
 3 使用ユーベルコードには、以下の精霊の加護を得ています。具体的には属性攻撃として扱われ攻撃力が増します。ヒンメンベルク戦のような絶対防御力はありません。

 POW 火の精霊
 SPD 水の精霊
 WIZ 土の精霊

  なお風の精霊は断章に出てきたエルフが命がけで押さえています。彼女に攻撃が行くことはありません。援護なども不要です。
 ブラキエルの足元に一本の通路のように伸びた石畳があります。他は深い湖となっています。

 プレイングは6/11(金)8:31~6/12(土)14:00頃まで。その後はロスタイムです。
 それでは、良き戦いを。
檪・朱希
WIZ
何も感じない、『音』……何も思っていないの……?

必ず、ブラキエルを倒すよ。
雪はもう、大丈夫そうだね。
『……手間をかけた』
『で、どーするよ?』
うん、燿、頼みがあるんだ。

作戦は、まずブラキエルの攻撃を防ぐことから。
雪には、異能の制御をお願いして……UC発動。
それぞれの蝶に、燿の氷「属性攻撃」を乗せてもらう。防御の青の蝶も、これで、より強固な守りにして防ぐんだ。
『どこまで出来るかわかんねーけど、全力でやってやらぁ!』

移動の緑の蝶、私を誘って。タロットも持って、「空中戦」なら私も出来る。

攻撃の蝶で、「弾幕」を張るように攻撃。
「聞き耳」の「情報収集」や「索敵」は欠かさない。
私の蝶、届いて!!


ユディト・イェシュア
大天使ブラキエル…あなたの企みはここで潰える
故郷もユグドの森も好きにはさせません

命がけで狂える精霊を抑えている女性
盟友と呼んでくれたラウルさんたちのためにも

先制攻撃にはホーリースクロールジュエルを投擲し
威力を少しでも軽減してから武器受け激痛耐性でしのぎます
森が破壊されるのは心が痛みますが
ここで負ければ全てが失われてしまいます

オウガ・フォーミュラの中でも最強と言われる存在
けれど俺たちは一人じゃない
仲間の盾となり攻撃を受け止めます
相手は空中
足場も狭い
攻撃を防ぐ場所も考えなければ

俺はどうなってもいんです
どうか皆さんは攻撃に集中を
狂える精霊たちを解放し
この森に平穏をもたらすために
俺に出来ることを全力で



● 故郷を、森を守るため
 月光の下、空高くを舞う大天使ブラキエルの姿を見上げたユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は、上空に払暁の戦棍を突きつけた。
「大天使ブラキエル……。あなたの企みはここで潰える。故郷もユグドの森も、好きにはさせません」
「吼えるな猟兵。脆弱な人間如きに何ができる?」
 口元に嘲りの笑みを浮かべたブラキエルは、炎の精霊を纏わせた岩腕を振り下ろした。迫りくる二本の岩の腕をまっすぐ見据えたユディトは、白い宝石が埋め込まれた巻物を腕に叩きつけた。
 岩腕にぶつかったホーリースクロールジュエルが、白い輝きを放つ。聖なる属性を帯びた攻撃は岩腕の威力を削いでいくが、攻撃を止めるには至らない。
 払暁の戦棍を水平に構えたユディトは、迫る岩腕を受け止めた。精霊の力で強化された腕は容赦なくユディトを叩き潰さんと迫る。全身全霊で抵抗し受け止めたユディトは、飛びそうになる意識の中浮かぶ面影に目を見開いた。
 風の精霊を命がけで抑えてくれている女性。
 盟友と呼んでくれたエルフの族長・ラウル。
「あなた達のためにも、倒れる訳には、いきません……!」
「ユディト……!」
 岩腕を押さえるユディトの姿に、檪・朱希(旋律の歌い手・f23468)は拳銃『暁』を岩腕に放った。連続して叩き込まれる銃弾に、若干狙いの重心が逸れる。その隙を突き身体を傾けたユディトは、半身を返すと岩腕を森へと逃した。
 飛んでいった岩腕が、森の木々へと突き刺さる。破壊された木々が炎上しているが、今のユディトにはどうすることもできない。ここで負ければ全てが失われてしまうのだから。
「ユディト! 大丈夫?」
「……っ、心配、ありません」
 襲う激痛に膝をつくユディトに、朱音が駆け寄ってくれる。額に汗を浮かべるユディトと朱音を守るように、二人の少年がブラキエルとの間に立ちふさがってくれていた。
 応戦する二人の背中を頼もしそうに見たユディトは、耳を押さえる朱音に首を傾げた。
「どうしましたか?」
「何も感じない、『音』……何も思っていないの……?」
「音? ……何か聞こえますか?」
 朱音の声に、ユディトも耳を傾けてみる。戦闘の音は聞こえるが、特におかしな音は聞こえてこない。なおも耳を澄ませるユディトに、朱音は首を横に振った。
「ううん。何でもない。……必ず、ブラキエルを倒すよ」
「もちろんです! ブラキエルはオウガ・フォーミュラの中でも最強と言われる存在。けれど俺たちは一人じゃありませんから」
 頷くユディトに頷き返した朱音は、自分たちを守る二人の少年に声を掛けた。
「雪はもう、大丈夫そうだね」
『……手間をかけた』
『で、どーするよ?』
「うん、燿、頼みが……」
「何をするかは知らぬが、遅い!」
 散発的な攻撃に飽きたように、ブラキエルが再び吼える。現れた岩腕をユーベルコードで防ごうとしたのだろう。詠唱の途中で先制攻撃を仕掛けてくるブラキエルに、朱音は目を見開いた。
「危ない!」
 咄嗟に駆け出したユディトは、二人の少年ーー雪と燿の前に躍り出ると再び払暁の戦棍を構えた。
 さっきとは比べ物にならないほどの攻撃が、ユディトに襲い掛かる。朱音を狙った攻撃の全てを受け止めたユディトは、目を見開く朱音に微笑みかけた。
「ユディト!」
「俺はどうなってもいんです。どうか皆さんは攻撃に集中を!」
 唇を噛む朱音から視線を戻したユディトは、迫る岩腕にユーベルコードを完成させた。無敵城塞でほぼ無敵状態になったユディトは、朱音に向けて放たれた攻撃の全てを防ぎ、受け止めきる。狂える精霊たちを解放し、この森に平穏をもたらすために。ユディトに出来ることを全力でやる。それだけだった。
 やがて全ての攻撃を凌ぎきったユディトは、空を舞う朱音の姿に信頼の笑みを浮かべた。

● 三色の蝶たち
 時は少し遡る。
 ユディトの無事を確認した朱音は、精霊の『音』に耳を傾けると眉を顰めた。本当ならば聞こえてくるはずの精霊の『音』が、何も聞こえてこない。怒りや苦しみの『音』を覚悟していたのだが、精霊は何の『音』も発せずただブラキエルに従っている。怪訝そうな朱音に、ユディトが首を傾げた。
「どうしましたか?」
「何も感じない、『音』……何も思っていないの……?」
「音? ……何か聞こえますか?」
 ユディトも耳を澄ませるが、何も聞こえないようだ。なぜ聞こえないのか分からない。分からないが、今はそれよりもやるべきことがあった。
「ううん。何でもない。……必ず、ブラキエルを倒すよ」
「もちろんです! ブラキエルはオウガ・フォーミュラの中でも最強と言われる存在。けれど俺たちは一人じゃありませんから」
 力強いユディトに頷き返した朱音は、自分たちを守る二人の少年の姿を改めて見た。堕落エルフの矢を受けた雪も、先程ヒンメンベルクの攻撃を受けた燿も、今はもう回復したようだ。
「雪はもう、大丈夫そうだね」
『……手間をかけた』
『で、どーするよ?』
 燿の問に、朱音は燿を振り返った。相手は空高く飛んでいる。地上からの攻撃では威力も下がるし、防御にも不利。こんな時に仕えるユーベルコードが一つあった。
「うん、燿、頼みが……」
「何をするかは知らぬが、遅い!」
 ユーベルコードを詠唱しようとした矢先、ブラキエルの声が響いた。見上げる暇もあればこそ。目前に迫る炎の岩腕に、朱音は唇を噛んだ。先制攻撃はユーベルコードが完成する前に襲いかかってくる。回避や真の姿を晒すなど別の手立てが無い限り、後手で発揮する力で防ぐことはできない。大ダメージを覚悟した朱音の前に、ユディトが躍り出た。
「危ない!」
「ユディト!」
「俺はどうなってもいんです。どうか皆さんは攻撃に集中を!」
 朱音に迫る攻撃を全て受け止めてくれるユディトの姿に、朱音は手を握り締めた。ユディトが攻撃を受け止めてくれている間に、詠唱を完成させなければ。顔を上げた朱音は、雪と燿に手を掲げた。
「コード、ドライ。リミット……アンロック」
 朱音より生まれた三色の光が、三人を包み込む。力を得た雪に、朱音は指示を出した。
「雪は異能の制御を。氷の属性を全ての蝶に乗せて!」
『分かった』
「燿は援護を!」
『どこまで出来るかわかんねーけど、全力でやってやらぁ!』
「移動の緑の蝶、私を誘って。ブラキエルに、空中戦を仕掛ける……!」
 タロットカード【蝶-Butterfly-】を掲げた朱音は、移動の緑の蝶をその身に纏うと石畳を蹴った。
 背中から生えた緑の蝶の羽が空を掻き、朱音を空へと運ぶ。舞い上がった朱音はブラキエルと同じ高度に達すると、攻撃の赤い蝶を放った。。
「私の蝶、届いて!!」
 朱音の想像が創造した攻撃の赤の蝶が、一斉にブラキエルに向けて放たれる。弾幕のように飛ぶ蝶の攻撃を受けたブラキエルは、忌々しげに光弾を放った。
「羽虫が、大天使に攻撃するなど片腹痛い!」
『羽虫にやられる気持ちはどうだよ大天使!』
 挑発的に笑った燿が、ブラキエルを牽制する。逸れる攻撃を回避した朱音は、畳み掛けるようにブラキエルに赤い蝶を放ち続けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フェルト・フィルファーデン
さあ、猟書家よ。終わりにしましょうか。
ここまで侵した数々の蛮行、その命で償ってもらうわ!

まずは敵の攻撃に対処しましょう。
敵が空を飛ぶのならわたしも空へ。
フェアリーにとっては空を飛ぶなど造作もないわ。【空中戦】
敵が接近してきたら、【フェイントをかけつつ距離を取って攻撃を【見切り回避に徹しましょう。
炎の精霊は、騎士人形の盾に障壁を付与して防ぐわ。
【盾受けxオーラ防御】

攻撃を躱したら即座に反撃よ!
飛行モードに変形したアーサーに乗り込み、超高速で飛び回り狙うは敵の翼。この矢はか弱き者を脅かすモノにほど力を増す。そう、アナタにはぴったりよ!
さあ、アーサーよ。その悪しき天使の翼を射抜き、地に落としなさい!


森宮・陽太
【POW】
アドリブ連携大歓迎

押さえ込んでくれるのはありがてえが長時間は厳しいだろ
速攻で終わらせてやる!
(しかしあの髪の色…まさかな)

岩腕は当たらなければどうってことはねえ
「挑発」で振り下ろし先を誘導し「残像」を囮に「ジャンプ」しながら腕を回避だ
精霊の力がなければ俺らを倒せねえのか、あぁ?

回避しつつ「高速詠唱」+指定UC発動し空中飛翔
ハルファスを憑依させた状態で「空中戦」を仕掛けてやらぁ
弱い炎弾を「弾幕」のようにブラキエルの目に降らせて目を潰し
その隙に死角に回り込んで二槍伸長「ランスチャージ」
狂える精霊の「浄化」も狙いつつブラキエルを「暗殺」だ!

てめえの居場所はどこにねえよ!
天上界は諦めな!


桜雨・カイ
ここでもまた精霊達が……もう少し待ってください必ず解放します

アイテム【糸編符】・【オーラ防御】でダメージを最小限に留める

【焔翼】で空を飛びながら対峙
【錬成カミヤドリ】発動
練成体の半数は、敵の周囲にいる精霊達とコピーへ。【属性攻撃】の力を乗せ敵の攻撃を相殺
残りは【武器破壊】で敵の武器を破壊

他の人たちの攻撃が届くよう、大天使までの道を切り開きます

私の操る糸は、私の意思。
この思いまでは封じ(石化)させません!



● 三連撃
 炎の岩腕を掲げるブラキエルの姿を見上げたフェルト・フィルファーデン(糸遣いの煌燿戦姫・f01031)は、騎士人形"Arthur"を従え空へと舞い上がった。フェアリーであるフェルトにとって、空中戦はお手の物だ。
「さあ、猟書家よ。終わりにしましょうか。ここまで侵した数々の蛮行、その命で償ってもらうわ!」
「脆弱なフェアリー如きに、何ができるというのだ?」
「その脆弱な存在に精霊を抑え込まれてるてめえはどうなんだよ!」
 挑発するように口元を歪めた森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)の声に、ブラキエルの眉がピクリと上がる。下ろされる視線の先には、気を失ったエルフの女性。この森で緑髪のエルフは数多く見かけるからそういう種族なのだろう。
(「しかしあの髪の色……。まさかな」)
 女性をチラリと見た陽太は、浮かぶ考えを振り払うと二槍を構えた。
「押さえ込んでくれるのはありがてえが、長時間は厳しいだろ。速攻で終わらせてやる!」
「ここでもまた精霊達が……。もう少し待ってください。必ず解放します」
 陽太の言葉を継ぎとなりに立った桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)もまた、使役される精霊たちの姿に痛ましげに眉を顰めた。精霊と親しいカイには、この森を守護する精霊たちが苦しめられているのがよく分かる。決意を込めたカイに、ブラキエルの笑い声が響いた。
「猟兵どもが、よく吼えるわ! 望み通り炎の精霊の餌食としてくれよう!」
 詠唱と同時に現れた岩腕が、猟兵達に雨のように降り注ぐ。炎を帯びた腕をまっすぐ見据えたフェルトは、身軽なフェアリーの身体を生かして縦横無尽に空を舞った。
 慌てて避けるのではなく、軌跡を見極めフェイントを掛けつつ回避。すぐそばを過ぎ去った岩腕から溢れた火の精霊がフェルトに襲い掛かるが、割って入った騎士人形が構えた盾に弾かれる。
 見切り回避に徹したフェルトに、巨大な岩腕が迫った。回避時に崩した態勢を立て直す暇もなく放たれた岩腕は、フェルトが全力で飛んでも回避し切ることは難しい。騎士人形の盾で迎撃態勢を取ったフェルトに、人影が割って入った。
「させません!」
 焔翼を纏い空を駆けたカイは、錬成カミヤドリで生成した本体の人形を惜しげもなく岩腕に放ったのだ。水の属性を帯びた人形は岩腕を押し留め、フェルトが回避する時間をつくる。やがて押し切られた人形が岩腕と共に視界から消えた時、カイは陽太を振り返った。
 誘導した岩腕をジャンプで回避する陽太に迫る攻撃を、複製体の人形で受け止める。情け容赦無く降り注ぐ攻撃を人形で受けきったカイに、フェルトは振り返った。
「カイ、ありがと! でも人形が……」
「あれは複製体です。私の人形は、ブラキエルに攻撃をするとコピーされてしまいます。でも岩腕はユーベルコード。複製はされません」
「なるほどな。少なくともあのブラキエルには有効みてぇだ」
 高速詠唱で悪魔ハルファスを憑依させ宙を舞った陽太も、感心したように頷く。攻撃の第一波を凌ぎきった猟兵達は、続く第二波に身構えた。
「私が大天使までの道を切り開きます。二人とも力を温存して、攻撃に備えてください!」
「分かったわ!」
「頼んだぜ!」
 頷きあったカイは、空を舞うと再び人形を繰った。容赦なく叩き潰そうと迫る岩腕をいなし、受け止め軌道を変えて。狂える精霊達を散らし、脆くなったったところへ攻撃を仕掛けて破壊していく。
 全力で岩腕を防ぐカイに、ブラキエルは忌々しげに舌打ちした。
「人形如きが、小癪な真似を!」
「私の操る糸は、私の意思。この思いまでは封じ(石化)させません! 二人とも、今です!」
 最後の人形で最後の岩腕を破壊したカイの声に、フェルトと陽太はついにブラキエルと同じ高度まで辿り着いた。

● 連撃
「これで対等ね、ブラキエル」
「何を言うかと思えば。物理で同じ高さまで上がっただけで我と対等など、片腹痛いわ!」
 背中の羽を羽ばたかせたブラキエルは、フェルトへ向けてまっすぐ解き放った。貫かれればただでは済まない鋭い羽根に、フェルトは従えた騎士人形に手を伸ばした。
「Arthur!」
「《Yes, Your Majesty.》」
 フェルトの呼びかけに応じた騎士人形が、飛行形態に変形する。アーサーに飛び乗ったフェルトは、最高時速10700km/hで駆け巡ると羽根を回避し、すれ違いざま剣で攻撃を仕掛ける。連続で攻撃を仕掛けるアーサーに、ブラキエルは剣を突き出した。大天使が持つ驚くべき動体視力で捉えた騎士人形に、カウンターの切っ先を突き出す。
「いくら高速で飛び回ろうと、我が目を逃れられると思うな!」
「そうかよ。ならその目を潰させて貰うぜ!」
 華やかに立ち回るフェルトの影に息を潜めた陽太は、ハルファスの権能の一つである炎弾を放った。弾幕のように張られる炎弾を剣で切り払うブラキエルに、姿を隠した陽太の声が響く。
「精霊の力がなければ俺らを倒せねえのか、あぁ?」
「言わせておけば良い気になりおって、猟兵が!」
 苛立ちを見せたブラキエルにできた一瞬の隙を、陽太は見逃さなかった。
 弾幕のように張られた炎弾が、ブラキエルの目に突き刺さる。視界を遮られ怯んだ時、フェルトの声が響いた。超高速で飛び回り、背後に回り込んだフェルトは、無数の光の矢を従えたアーサーの上に立つとブラキエルを見下ろした。
「この矢はか弱き者を脅かすモノにほど力を増す。そう、アナタにはぴったりよ!」
「この……!」
「さあ、アーサーよ。その悪しき天使の翼を射抜き、地に落としなさい!」
 振り返ろうとするブラキエルに向けて、フェルトは掲げた手を振り下ろす。従えた騎士を差し向ける王女のように凛とした姿のフェルトの命令に、アーサーは光の矢を一斉に放った。
 無数の光の矢が、ブラキエルの羽に突き刺さる。白く輝く光の矢は、大天使の名に相応しいブラキエルの羽を引き裂き地に落とす。
 高度を下げたブラキエルに、二本の槍が突き刺さった。高度を下げて死角に回り込んでいた陽太は、空を蹴り槍を伸ばしてランスチャージを仕掛けた。
 落下の勢いも味方につけた陽太の槍が、ブラキエルを深々と突き刺さる。腹から雨のように降り注ぐ返り血を浴びた陽太は、口元に笑みを浮かべた。
「てめえの居場所はどこにねえよ! 天上界は諦めな!」
「それだけは……それだけは言わせぬ!」
 残った羽を羽ばたかせ距離を取ったブラキエルは、憎々しげな目で猟兵たちを睨みつけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【POW】
アドリブ連携大歓迎

参ったな
空中にいる敵に俺の攻撃は届かない
ナイフ投げと衝撃波は撃てても、明らかに非力
…さて、どうするか

ひとまず先制の岩腕は回避しないと
「属性攻撃(氷)」で刃を凍らせた投擲用ナイフを「投擲」し精霊の威力を削ぎ
「視力、見切り」で腕の動きを観察しつつ「残像」を囮に回避だ

…ん?(黒剣の魂たちの囁きでアイデア降臨)
試す価値はありそうだな
後でちゃんと拾うから勘弁してくれよ

というわけで指定UC発動しつつ
黒剣を「怪力」籠めて全力でブラキエルの胴目がけて「投擲」だ!
おまけで「属性攻撃(氷)、衝撃波」で絶対零度の氷もつけてやる

貴様の目論見は既に潰えた
何もかも壊された上で骸の海へ還れ!


ビッグ・サン
「狂った精霊を使役できるのは、さすが大天使と言ったところですか」

通常なら狂った精霊は扱うことはできない
だから、精霊魔法がメインのエルフは、この精霊力が狂った状態では戦力が落ちる
だが、彼は問題なく精霊の力を使っている
精霊使いの戦いなら、一方的に勝利できる

「不意打ちでもしたいところですが、こうも見通しが良いと難しそうですね」

石畳を進んで炎の攻撃を受けましょう
本体は水の中に隠れておいて、相手がこちらを倒したと思って油断しているところを水の中でこっそり集めた霊の塊をぶつけましょう

森のさまよえる霊も天使に当たって浄化されるなら良しでしょう

倒したらエルフの集落に行きましょう
ユグドの木の話でもしますよ



● 生真面目剣士と自由な術士
 大ダメージを受け、地上近くまで降りてきたブラキエルの姿に、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は抜き放った黒剣を握り締めた。
 高度を落としたとはいえ、相手は敬輔よりも高い位置から降りては来ない。このまま斬りかかっても届かないし、ナイフ投げや衝撃波では明らかに非力。属性攻撃などで威力を上積みすることもできるが、有効打と言えるかどうか。
「参ったな……。さて、どうするか」
「不意打ちでもしたいところですが、こうも見通しが良いと難しそうですね」
 どこか呑気な声でブラキエルを見上げたビッグ・サン(永遠を求める研究者・f06449)の声に、敬輔は頷いた。
「ああ。しかも精霊を従え、空を飛んでいる。攻撃を当てるのも厄介だぞ」
「そうですね。狂った精霊を使役できるのは、さすが大天使と言ったところですか」
「炎の岩腕は、氷の属性攻撃で弱めた方が良さそうだ」
「通常なら狂った精霊は扱うことはできないんですよ。だから、精霊魔法がメインのエルフは、この精霊力が狂った状態では戦力が落ちるんです。でも、彼は問題なく精霊の力を使っています。敵ながらあっぱれという奴ですよ」
「そ、そうか」
 敬輔に向けてか己に向けてか。滔々と自説を語るビッグに、敬輔は思わずたじろいだ。丸腰で、何かを連れている訳でもないこの男の行動は、敬輔には読めないでいた。
 さっきより間近に迫るブラキエルの姿を興味深そうに見上げるビッグに、戦意は見られない。見たところ剣士ではなさそうだし、かといって弓などを使うわけでもなさそうだ。
 では術師か。敬輔が目星をつけた時、ブラキエルは憎々しげな声で応えた。
「不意打ちなど、もうさせぬ! 我に油断はもはやない。全力で相手してやろう猟兵!」
 吼えたブラキエルは、再び岩腕を召喚すると二人に向けて叩きつけた。敬輔とビッグに向けて降り注いでくる炎を帯びた腕に、敬輔は投擲用ナイフを取り出した。
「ひとまず先制の岩腕は回避しないと!」
 氷の属性を帯びたナイフを投擲した敬輔は、岩腕を強化する火の精霊の力を削ぐと迫る岩腕をじっと見据えた。闇雲に回避したところで、次の岩腕の攻撃に晒されては元も子もない。攻撃をよく観察し、見切った上で残像を残して回避した敬輔は、一向に回避する様子を見せないビッグの姿に目を見開いた。
「ビッグ、危ない!」
「え?」
 回避する素振りも見せずに石畳を進むビッグに、炎の岩腕が叩きつけられる。ビッグがいた石畳に連続して叩き込まれた炎の岩腕の攻撃が収まった時、そこに男の姿は無かった。
「ふ、ははは! 虫けら如きが、我に歯向かうからこうなるのだ! 次は貴様を叩き潰して……」
「精霊使いの戦いなら、一方的に勝利してみせますよ」
 どこからともなく聞こえてくるビッグの声に応えるように、周囲の空気が一気に冷えた。

● 黒剣とゴーストと
 本体であるフェアリーのぬいぐるみを水の中に潜ませていたビッグは、ブラキエルが叩き潰された男にーー男の姿をしたフレッシュゴーレムに気を取られているのを確認すると、詠唱を開始した。
 死霊術師であるビッグの召喚に応え、周囲の死霊が集まってくる。清浄なこの地に死霊の姿は少ないが、賢者の石でブーストした効果範囲内の森の中には浮かばれない死霊達がたくさんいる。その中に見知った顔もいた気がしたが、どうでもいいことだ。
「このあたりにいるゴーストを、すべて集めてぶつけてあげましょう。賢者の石でブーストされた魔力で呼び出す数は半端じゃないですよ」
 少女の召喚に応じた無数のゴーストが、一斉にブラキエルに襲い掛かる。生命力を奪うドレインタッチの攻撃を剣で切り払い、回避を試みるものの、数は力とばかりに襲い掛かるゴーストの攻撃に防戦一方に追いやられている。逆に言えば防戦できているということで。ビッグが思案を巡らせた時、敬輔の声が聞こえてきた。
「皆、落ち着け! ……ん? でも、そんなことをして大丈夫か?」
 ゴーストの召喚に、敬輔が少し慌てた様子で黒剣を抑えている。どうやら、あの黒剣の中にゴーストがいるらしい。ビッグの使役には応えないだろうが、影響は受けているようだ。
 黒剣の囁きに耳を傾けた敬輔の動きが止まる。何事か語り合った敬輔は、一つ頷くと顔を上げた。
「そうか。なら試す価値はありそうだな。後でちゃんと拾うから勘弁してくれよ。……ビッグ!」
「なんでしょう?」
 振り返るビッグに、敬輔は黒剣を投擲の態勢に入る。絶対零度の氷を纏った刀身が淡く輝いている。黒剣の光は周囲のゴーストを纏い、その威力を増しているように見えた。
「黒剣に合わせてゴーストを放ってくれ!」
「分かりましたよ」
 敬輔の意図に頷いたビッグは、集めたゴーストに指示を出す。呼吸を合わせて投擲された黒剣の勢いを加速するように、ゴーストがブラキエルに迫る。
 ゴーストに威力を増した黒剣が、ブラキエルの胴に突き刺さる。腹に刺さる黒剣の柄を信じられない目で見下ろすブラキエルに、敬輔は冷然と言い放った。
「貴様の目論見は既に潰えた。何もかも壊された上で骸の海へ還れ!」
「倒したらエルフの集落に行きましょう。ユグドの木の話でもしますよ」
 どこか呑気なビッグに、敬輔が怪訝そうな目を向ける。敬輔が何か言おうとした時、ブラキエルの咆哮が響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニクロム・チタノ
ブラキエルあなたの凶行もここで終らせる!
ボクの真の名紅明日香の名を以てチタノヤタテを降臨させる
チタノヤタテは八つの盾と八つの重力槍をもつ
まず先制攻撃を八つの盾で防ぎながらその後ろで重力槍を準備石化した盾を砕いて接近してきたところに重力槍を撃ち込む
狙いは岩石の腕、硬いね破壊は出来ない、でもそれでいい!
重力槍の効果で重力を岩石の腕に掛けて地面にブラキエルを引きずり下ろす
この一瞬の隙を突いて反抗の妖刀の攻撃を食らわせてあげる!
さあこれより反抗を開始するどうか反抗の竜チタノの加護と導きを



● 反抗の狼煙を上げよ
 腹に刺さった剣を引き抜いたブラキエルが、咆哮を上げる。憎々しげな声で意味のない声を上げるブラキエルに、ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は石畳の上に立った。
「ブラキエル。あなたの凶行もここで終らせる!」
「この……取るに足りない虫けらどもめがぁっ! 八つ裂きにしてくれる!」
「真の名・紅明日香の名を以て、降臨せよ! チタノヤタテ!」
 声と同時に真の姿を顕したニクロムは、八つの盾と八つの重力槍を持っている。姿を変えたニクロムに、ブラキエルは大天使の光輪を輝かせた。
「殺してやる! お前達全員、殺してやる!」
 憎しみの声と共に放たれる光輪を、チタノヤタテの盾で受け止める。ユーベルコードが乗らない盾で全てを受け切ることはできず、狂える地の精霊の力もいなしきれてはいない。
 走る激痛と重くなる身体に、ニクロムは歯を食いしばった。完全に防げないとはいえ、軽減はできた。今この地に立っている。それで十分だった。
「ボクの名、紅明日香の名を以て」
 光輪の攻撃を凌ぎきると同時に、八つの盾が砕け散った。石化した盾を目くらましに一気に接近したチタノヤタテの霊は、ブラキエルに向けて八つの超重力槍を放った。
 重い攻撃が、ブラキエルに迫る。迫る岩に口の端を上げたブラキエルは、岩の腕を作り出すとニクロムに向けて放った。
「遅い! そのような槍、この岩腕が叩き潰してくれよう!」
 八本の槍と二本の腕が、轟音を立ててぶつかり合う。せめぎ合ってしばし。譲ったのは重力槍だった。押し負けるように地上に引かれた重力槍は、そのまま石畳に突き立つ。その様子を見下ろしたブラキエルは、嘲りの笑みを浮かべた。
「さあ、次はお前を……っ!」
「さすがは岩腕。精霊の加護が無くても硬いね。破壊は出来ない。でもそれでいい!」
 ブラキエルに刺さった超重力の槍が、ブラキエルを地上に引きずり下ろす。抵抗し、羽ばたこうとするが、その羽は既に見る影もない。
 引きずり降ろされたブラキエルに、ニクロムは石畳を蹴った。ニクロムの手の届く場所に降りてきた、引きずり下ろしたこの一瞬の隙を、逃すわけにはいかない。
 反抗の竜チタノの力を宿した反抗の妖刀が、唸りを上げる。一気に駆けたニクロムは、自らを守護する竜に誓いの言葉を立てた。
「さあ、これより反抗を開始する! どうか反抗の竜チタノの加護と導きを!」
「この、忌々しい猟兵がぁっ!」
 憎悪を込めたブラキエルの剣が、ニクロムに迫る。その前にチタノヤタテが立ちはだかった。
 ニクロムの心臓を刺し貫かんと放たれた剣が、八つの蒼焔の盾に弾かれ宙を舞う。回転しながら弾かれた剣が石畳に突き刺さった時、反抗の妖刀がブラキエルの心臓を貫いた。
「さようなら。地に堕ちた大天使」
「貴様らさえ……いなければ、我は、天上界へ……。友よ、済まない……」
 月に向けて伸ばしたブラキエルの手が、白い羽根になり消えていく。最後まで地に足をつけなかったブラキエルを見送ったニクロムは、反抗の妖刀を鞘に収めると歩き出した。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年06月14日


挿絵イラスト