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大祓百鬼夜行⑩〜月をお食べ

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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「水面に映る月……美しくて、とても罪深い存在……」
 人はそれがそこにあると信じて……あるいはないと分かっていても、手を伸ばしては滅んでいく。
「その悲しい人たちをただ哀れむことしかできなかった私……きっとこれは、無力な私への罰」
 哀れむその姿が死を呼ぶと誤解され殺された。その悲しみが彼女を妖怪に変えたのか。あるいは、妖怪が死者の近くにいたから誤解を呼んだのか。
「でも、私にも償いの時が与えられた。今は私が月を与えられる。私が人の手に月を掬ってあげられる」
 悲しめど誰も恨まぬ彼女は、なお誰かのため、己のため、自ら月を作り出すことを選んだのだ。
「この、妖怪屋台で!」
 女はねじり鉢巻きを締め、屋台を引っ張り出した。


「皆さん、お疲れ様です。今日も大祓百鬼夜行の依頼です」
 ミルケン・ピーチ(魔法少女ミルケンピーチ・f15261)を装備した花園・桃姫が頭を下げる。
「今回向かってもらうのはカクリヨファンタズムの方です。もともとカクリヨファンタズムには『謎の屋台』というのがしばしば出没し、妖怪たちの憩いの場となっていました。今回その屋台の主人である妖怪が骸魂を取り込んだのですが、オブリビオン化の影響で『もてなし衝動』なるものが暴走してしまったらしく、無限に屋台の商品を作っては客を強制連行し、食べきれないほどの食べ物を振舞っているとか」
 それは実害はないのでは? という疑問にミルケンは首を横に振る。
「その振舞い方が尋常ではなく、正真正銘の無限盛り。このままでは本当にカクリヨファンタズム全体が食べ物で埋まってしまいかねない勢いです」
 カクリヨファンタズム名物お手軽カタストロフ、それにも近い状況だろうか。
「ですので皆さんにはこの屋台店主の妖怪さんを止めていただきたいのです。妖怪の名は『捉月』。金魚を擬人化したような妖怪で、水に映った月を掬おうとして死んだ人を哀れむうち、彼女が死に誘っているのだと誤解され殺されてしまった悲しい妖怪です」
 それはそれそのものか比喩表現か。とかく掴めぬものを掴もうとして死した者を哀れんだ、ただそれだけ悲しき末路を辿ってしまった妖怪。
「ですが彼女は誰も恨むことなく、今度は自分が月を人に与えるのだと屋台営業を始めたのです。今回はその屋台の品が暴走してしまっているのですが……その品というのが、『月』」
 まさか本物ではあるまいが、どういうことか?
「メイン商品は月見うどんをはじめとする『月見○○』系です。他にも三日月を意味するクロワッサンや、月餅、仙台銘菓なども仕入れて売っています。お酒も月のつくメーカーや銘柄のものを多く取り揃えているようです」
 材料のあたりからこだわっているので、味は中々なようだ。
「彼女は訪れた相手に対してこれらの商品を無限に提供してきます。もちろん戦って倒してもいいのですが、この大量の料理を食べまくるとなんやかんやあって相手にダメージが入り骸魂が剥がれます。ちなみに本気で戦うと結構強いので、食べまくった方が多分楽です。料理は料理でユーベルコードを使うが如く物凄い出し方をしてはきますが、それでも多分ご飯食べた方がいいです」
 無限料理よりきついとなれば、相当な実力なのだろう。それだけの力を持ちながら人への復讐を考えない、それもまた彼女の優しさであり悲劇の原因だったのかもしれない。
「彼女もまた自ら骸魂を飲み込み、敵となってしまった妖怪。これ以上彼女に苦労を背負わせないためにも、カロリーなど気にせず! たくさん食べてきてください」
 恐らくボディの方の意思て一部を強調した後、ミルケンは猟兵たちを屋台のある場所へと送り出した。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。シリアスと見せかけてギャグ。
 今回のプレイングボーナスはこちら。

『プレイングボーナス……屋台グルメを食べまくる(戦わずともダメージを与えられます)』

 ボス『捉月』は月にまつわる食べ物を大量に供してきますので、これを食べまくることでダメージとなります。
 食べる際にはUCや技能を活用してもOK。【早食い】【大食い】みたいなそのままなものの他、【属性攻撃】で温度変化、【継戦能力】でペースを作る、【決闘】でフードファイトするなどどんどんこじつけてください。食べている限りは敵UCも『UCを使うが如く料理を提供する』形になります。
 注意点としては『食べる』ことが条件なので、食べるふりをしてこっそり捨てる、無限ポケット的なアイテムに放り込むなどすると目ざとく見つけてきます。おみやが欲しければ解決後に正気に戻ってから頼むか、持って帰る量以上にこの場で食べてください。
 一応正面からも戦えますが滅茶苦茶強いです。食べて弱らせてから戦う、もしくは食べるのに全力を注ぐことをお勧めします。
 料理はOPであげたもの以外にも、月にまつわるものなら指定すれば大体出てきます。お好きなものをご注文下さい。
 お酒もありますが未成年飲酒は禁止です。

 それでは、ツキのあるプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『捉月』

POW   :    ―――……来て、触れて。そしてひとつに。
自身の【周囲を飛び交う「月」】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[周囲を飛び交う「月」]から何度でも発動できる。
SPD   :    ―――……満ちては、欠けて。いつしかひとつに。
自身が【操作する「月」と共に呪歌を多重詠唱して】いる間、レベルm半径内の対象全てに【新月から生じる死の波動】によるダメージか【満月から生じる再生の波動】による治癒を与え続ける。
WIZ   :    ―――……願って、捉えて。やがてわたしのものに。
戦場全体に、【あなたが欲するもの幻を映し出す、水の帳】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:えな

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は小泉・飛鳥です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

七那原・望
うー……これは大変なのです。わたし、お肉とお魚食べられないし、何より超が付くほどの少食なのです。
どうしましょう……?

あ、そうです。果実変性・ウィッシーズモノクロームでくろとしろを呼んで手伝ってもらうのです。
妖怪達の食べ物なら霊体の二人でも食べられるかもなのです。

すみません、ねこさんにも何か食べさせてあげたいのですけど、猫向けのメニューないですか?

もしも取り扱ってたらアマービレでねこさんをいっぱい呼ぶのです。
みんな、今日は好きなだけ食べていいのですよー!

わたしも限界ぎりぎりまでは食べるのです。
もう無理ってなったらねこさん達を応援です。

ごちそうさまなのです。美味しかったのですー♪


ニクロム・チタノ
月見かぁ、大食いにはいい夜だね!
久しぶりに生トカゲや昆虫以外の物を食べられるよ!
そうだ、日頃加護を与えてくれるチタノや先代達にもいっぱい食べてもらうね?
私に反抗の祝印を
さあ、先代反抗者の皆さんとチタノも呼んだところでお月見パーティーしようか
月見バーガーや月見うどん、月見餅もあるね
あ、お酒はまだ子供なのでオレンジジュースお願いします
今日はチタノや先代達と一緒にたらふく食べるよ
これも反抗の加護
いただきます


中小路・楓椛
最近は戦闘に纏わる出費が嵩んで銘菓お取り寄せの余裕がなくて困ってたのですよね。折角なので喰い貯めしておこうと思います。
残虐ファイトが続いているので休息も必要なのです。

仙台銘菓ですか、あれ好物なのですよね。
ところで状況ついでにお伺いしますケド、山口銘菓もあります?こう、卵を月で拾っちゃう感じの名前の…あったらそれもお願いします。
工程として手間が掛かる分時間は稼げますよね(ぼそり)

ところでご店主、作りながらで良いのですが一寸聞いて貰いたいのです。誰かを哀れむのは良いのですが、物には限度というものがあると思うのですよ?
哀れむなと言うのではなく、代償は程々にという話なのですよ、ええ(【言いくるめ】)



 カクリヨファンタズムに出没する妖怪屋台。かつては妖怪たちの隠れた憩いの場であったそれは、今は強制的に客を連れ込んで無限に料理を振舞い、やがてはその料理で世界を覆い尽くしてしまおうとする危険なものとなってしまっていた。
 その暴走屋台を止めるため、猟兵たちは客としてその屋台へと乗り込んでいった。
「月見かぁ、大食いにはいい夜だね! 久しぶりに生トカゲや昆虫以外の物を食べられるよ!」
「最近は戦闘に纏わる出費が嵩んで銘菓お取り寄せの余裕がなくて困ってたのですよね。折角なので喰い貯めしておこうと思います。残虐ファイトが続いているので休息も必要なのです」
 とはいえ、出てくる料理は普通においしいという話だ。ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)や中小路・楓椛(ダゴン焼き普及会代表・f29038)は最近続いた中々ハードな食生活の事もあり、今回の依頼には中々に乗り気である。
「いらっしゃいませ……ようこそお越しくださいました。ご注文は?」
 そんな猟兵たちを、屋台の主である妖怪が出迎えた。金魚を擬人化し直立させたような女性の妖怪『捉月』。死した人を哀れんだら己がその原因だと誤解され殺されたという、悲しい過去を持つ妖怪。なれどそれを恨まず次は屋台を率いて人に月を与えることを選んだ彼女を、猟兵たちは食べることで協力し、救おうと席に着いた。
 それと同時に早速大量の屋台グルメを用意し始める捉月。その量に七那原・望(封印されし果実・f04836)は少々困惑気だ。
「うー……これは大変なのです。わたし、お肉とお魚食べられないし、何より超が付くほどの少食なのです。どうしましょう……?」
 困惑するが、別に一人で食べきる必要はないということに気づく望。
「あ、そうだ……わたしは望む……ウィッシーズモノクローム! くろ、しろ、力を貸してください!」
「くろにおまかせですっ!」
「しろにもおまかせですぅ!」
 自分と同じ姿の双子の霊体を呼び出す望。さらには白いタクトを振り、大勢の魔法猫を呼び出す。
「すみません、ねこさんにも何か食べさせてあげたいのですけど、猫向けのメニューないですか?」
 その問いに、捉月はさらに乗せた切り身を取り出した。
「猫ならこれを……魚膾、つまりお刺身。部首としての月は肉を表すから、こういったものは用意しやすいの。ところであなたは菜食主義者みたいだから……これをどうぞ。ぐんま名月というリンゴよ」
 赤白様々な刺身に一斉に群がる猫たち。そして望としろくろも、栄養とするリンゴの登場に大喜びだ。
「みんな、今日は好きなだけ食べていいのですよー!」
 猫たちにそう言ってから、望たちもリンゴにかぶりついた。やや大振りで青海の強い果実は一見すっぱそうだが、そんなことはなくむしろ甘みが強い。
 そんな望の様子を見て、ニクロムも一人で食べるのではなくこの料理を大勢で分かち合おうと考えた。
「そうだ、日頃加護を与えてくれるチタノや先代達にもいっぱい食べてもらうね? 私に反抗の祝印を」
 ニクロムは【十三番目の加護】で反抗の竜チタノと自分の先代反抗者たちを呼び出す。一斉に現れた先代たちと竜が、屋台の周りに礼儀正しく整列し、料理の提供を待った。
「こんだけいると提供し甲斐がある……ご希望は?」
「さあ、お月見パーティーしようか。月見バーガーや月見うどん、月見餅もあるね。あ、お酒はまだ子供なのでオレンジジュースお願いします」
 注文と同時に出てくる各種月見シリーズにジュース。オレンジは大抵太陽に例えられるため、月の字が入る八朔のジュースが一同の前に並べられる。
「今日はチタノや先代達と一緒にたらふく食べるよ。これも反抗の加護。いただきます」
 反抗と作り手に感謝を示し、一斉に食べ始めるニクロムたち。チタノも含めて誰もかれもが幸せそうに、あるいは珍しそうに月見料理を頬張っていく。その姿を嬉し気に、しかし普段碌なものを食べていない彼女たちを哀れむように捉月が見ているのは、食べることによって骸魂の憑依が薄くなり捉月本来の性格が露になっているからか。
 そんな大所帯での食事風景の傍ら、楓椛が捉月に話しかける。
「仙台銘菓ですか、あれ好物なのですよね。ところで状況ついでにお伺いしますケド、山口銘菓もあります? こう、卵を月で拾っちゃう感じの名前の……あったらそれもお願いします」
 屋台の端に積んである有名仙台銘菓を見て、楓椛はまた別の剣の銘菓を訪ねてみた。
「あら、中々通なものをご存知で……確かこちらに。少々お待ちを」
 頻繁に出る品ではないのか、屋台の下の方に顔を突っ込みなにやらごそごそと探し始める捉月。無限に料理が出てくる屋台だからこそあまり使わない品を探すのは手間なのか、いささか時間がかかっているようだ。その様子に、うまくいったと楓椛は内心笑む。
「工程として手間が掛かる分時間は稼げますよね」
 さすがに一から作るわけではないが、大量注文と合わせて作業ラインが違いそうなものを注文すれば当然時間はかかる、飲食業泣かせの注文方だ。
「ところでご店主、作りながらで良いのですが一寸聞いて貰いたいのです」
 そんな捉月に、楓椛は改めて声をかける。
「誰かを哀れむのは良いのですが、物には限度というものがあると思うのですよ?」
 彼女の優しさと、それで起きてしまった悲劇。それについて楓椛は変わらぬ表情のまま言う。
「哀れむなと言うのではなく、代償は程々にという話なのですよ、ええ」
 山口銘菓を受け取り、その包みを開けながら楓椛は言う。ちなみにやはり無限提供の効果があるだけあって、ノーマルのみならず抹茶チョコ栗イチゴ桃、さらにはキャラクターコラボや高級版まで纏めて渡されたがそこはそれ。
 とりあえず一つ口に放り込みながら、周囲で大量の料理を食べる他の猟兵たちにも視線を向ける楓椛。
 猫たちと一緒に楽しく食べている望や、有難そうに月見料理を楽しむニクロムたち。その姿に、人の悲劇ばかり見てきた彼女の心を砕かせることができれば。
 もちろんただの言いくるめなのだが、これで彼女の哀しみの元凶を少しでも断つことができれば骸魂を剥がしやすくもなろう。彼女が楽になって、それが任務の成功につながるのなら。言葉を並べることに楓椛は何の躊躇もない。
「苦しめる方が楽ならそれでもいいんですけど、たぶんこっちの方が効率いいですし」
 その内心が本心か、それは彼女にしか分からないこと。
「リンゴならいくらでもたべられるのです。もっとないですか?」
「こんなにおいしい食事はいつぶりだろう。店主さんにも反抗の加護を」
 そろってお代わりする望とニクロム。その姿は楓椛の狙い通り捉月の心を軽くし、過去の嘆きと関係なく今の役目に邁進することを思い出させる。そしてそれは、食べることによる骸魂へのダメージへの上積みとなって、少しずつ彼女への憑依を剥がしていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
食べればよいというのは有難いですねぇ。
それでは、頂きますぅ。

【渺喰】を発動、食べた品が即座に消化&吸収される状態にしますねぇ。
同時に『代償』として『満腹中枢の機能』が停止しますから、文字通り幾らでも食べられますぅ。

年齢的に難しい酒類を除き『端から端まで&全て特盛』でお願いしますぅ。
『月見ハンバーグ』や『月見丼』等は、おかわりしても良いですねぇ。
[大食い]の知識を生かし、味の変化等を利用して飽きない様食べる順番を調整しつつ頂き、可能なら何周でも周回しますぅ。

まあ【渺喰】は『即座に消化吸収を行う』以上、過剰なカロリー等の影響はそのまま残るわけですが。
一先ず気にしない方向で?


アリス・フォーサイス
 こだわりの月見料理か。お話がたくさんつまってそうで美味しそうだな。いただきます。

 この月見バーガー、ソースに酸味をきかせてるのか、しかもこの目玉焼きは月に見えるように工夫してあるんだね。すごい。この月見パイはあんことおもちのバランスが面白いね。あんこも甘すぎず、大豆の香りがたって素晴しい。こっちの月見アイスはソフトクリームに黒みつとわらびもちが入っているのか。上品な甘さでこれもいいね。

 ユーベルコードを使った身体能力強化を応用して、消化、吸収、代謝を急激に高めるよ。これでどんどん食べられるね。もっと美味しいお話を食べさせてよ。



 一人客をさばいても次の客がやってくる。繁盛店とはそういうものだ。その理に則るかのように、捉月の屋台にも次の猟兵がやってきた。だがどうせ元より骸魂に取りつかれているうちは客を強制連行するのだ。相手の方から来てくれるのは捉月にとっても今は好都合だ。
「次のお客さん……全力でもてなさないと」
 それは骸魂の意思か捉月自身の意思か。ともあれ、まだまだ無限に食事が出てくる屋台に次についたのは二人の猟兵だ。
「食べればよいというのは有難いですねぇ。それでは、頂きますぅ」
「こだわりの月見料理か。お話がたくさんつまってそうで美味しそうだな。いただきます」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)とアリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)の二人が、大量に出された料理と向き合った。
「大いなる豊饒の女神、その深淵へと私の身をお導き下さい」
「こうしたら、より美味しくなるんじゃないかな」
 そして二人は、さらにその料理を多く深く味わうべく、各々のユーベルコードを発動した。
「それでは私はとりあえず、お酒以外を端から端まで全部、特盛でお願いしますねぇ」
 るこるは【豊乳女神の加護・渺喰】を発動、満腹中枢を自ら停止させることで屋台のメニューを全て食べにかかった。その大量注文にも、どういう原理か即座に答えあらゆる料理を提供しだす捉月。
「まずは突き出しに海月の和え物、それからすぐ茹で上がる月見そばに月見うどん、菓子類は置いとくので適当な時に口直しに……」
 捉月の提供速度もすさまじいが、元よりとてつもない大食いのるこる。飽きず、大量に食べる方法など分かり切っていることだ。甘いしょっぱいのループを基本に、熱いものが続いたら冷たいものを食べて休憩にする。もちろん全て食べたところで一周程度で彼女が満足するはずもなく、そのまま二週目へと突入だ。
 その隣で、アリスは一つ一つの料理を構成する情報を分析しつつ食べていく。
「この月見バーガー、ソースに酸味をきかせてるのか、しかもこの目玉焼きは月に見えるように工夫してあるんだね。すごい。この月見パイはあんことおもちのバランスが面白いね。あんこも甘すぎず、大豆の香りがたって素晴しい。こっちの月見アイスはソフトクリームに黒みつとわらびもちが入っているのか。上品な甘さでこれもいいね」
 味だけでなく香りや食感、見た目に材料一つ一つの目立ち方隠され方、全体のバランスなど、その料理に関する情報を余すところなく分解、分析して自身の中に取りこんでいく。
 もちろんそんなゆっくりとした食べ方では量を食べないうちに満腹になってしまう。健康という面ではその方がいいのだが、今は健康を多少かなぐり捨ててでも早く、多く食べなければならない時だ。
 だが、そう言った不利な行動をとること自体が【物語中毒】の発動条件。あえて満腹を受け入れることで、ユーベルコードを使った身体能力強化を応用して、消化、吸収、代謝を急激に高める。そんなある種捨て身とも言える食べ方だが、それを甘んじて受け入れられるくらいこの屋台の料理は『美味し』かった。
 そして捨て身と言えば、るこるもある意味その形だ。
「まあ【渺喰】は『即座に消化吸収を行う』以上、過剰なカロリー等の影響はそのまま残るわけですが。一先ず気にしない方向で?」
 その気になればカロリーを排出するような技も持ってはいるのだが、ここでそれを放つということは捉月と戦わねばならないということ。本質的に邪悪な相手ではない上かなり強いということで、出来ればそれは避けたい所だ。アリスと違い代謝までが高まっているわけではない以上、カロリーはお持ち帰りすることになる。
「これでどんどん食べられるね。もっと美味しいお話を食べさせてよ」
 大量の料理を笑顔で食べ続けるアリス。その細身なスタイルを見つつ、るこるも同様に大量の料理を自らの豊満な体に詰め込んでいく。
「これは……もてなし甲斐が、ある……」
 明らかに息を切らしている捉月の様子に、食べることによって骸魂が受けているダメージの大きさと、二人が摂取したカロリーの量が如実に表れているのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

「UDCアースにも関係があるし、無視はできないでありますね」
――とカッコよく言ってみたところでやる事は大食い。まあ、改造されたおかげで基礎代謝というか脂肪燃焼は常人のそれじゃないし、他の人と比べたら抵抗なく食べられる。――ないわけじゃないけど。

「ええい、やるでありますよ!」(覚悟,勇気)

熱い状態でもなんのその(火炎耐性)。冷ます事なく無駄な時間を使わずに月見うどんを食べる。そうすれば、伸びずに済むから早く食べ終わるし、お腹にたまりにくい。あと、綺麗に食べる事も忘れない(礼儀作法)。食べ物は粗末に扱わない。――やっぱり、早食い大食いでもそこは忘れちゃだめだよね。


木霊・ウタ
心情
自分で骸魂を飲み込むって凄いぜ
覚悟と想いに胸熱だ
大祓百鬼夜行を絶対に止めるぜ

行動
月見炒飯に月見餃子
そして月見拉麺
この3つをループ注文して食べまくる

時々は口直しに月見杏仁豆腐も
月の部分が杏煮になってる奴な

炎の力で代謝を高め消化吸収促進し
更に獄炎が直接カロリーを燃焼させるから
美味しい中華なら幾らでもイケるぜ

急ぎ大食いってよりは
(カタストロフを防ぐためにそれも大切だけど
きっちり味わう

他者に月を与えたいっていう
捉月の想いに応えてやりたいからな

捉月が満足するまで付き合う

人の為にって思いが満たされたら
きっと骸魂も祓える筈だ

事後
腹ごなしも兼ね
長めに骸魂への鎮魂曲を奏でる

お疲れさん
ウマかったぜ>捉月



 額に汗しながら屋台に向かう捉月。それは料理を作る負担からでもこのところの急な暑さからでもない。彼女に憑依する骸魂、それが深いダメージを受け剥がれかけているからに他ならない。
 もうあと一息。彼女の料理を最後まで食べきるため、またしても猟兵は屋台の暖簾をくぐった。
「UDCアースにも関係があるし、無視はできないでありますね」
 紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)は二つの世界に跨るこの戦いを少しでも優位に進めていくべく、この戦場の攻略に意欲を見せる。――とカッコよく言ってみたところでやる事は大食いなのだが。
(まあ、改造されたおかげで基礎代謝というか脂肪燃焼は常人のそれじゃないし、他の人と比べたら抵抗なく食べられる。――ないわけじゃないけど)
 そんな複雑な乙女心もあるが、まあとにかく手を抜くつもりだけはない。
「自分で骸魂を飲み込むって凄いぜ。覚悟と想いに胸熱だ。大祓百鬼夜行を絶対に止めるぜ」
 そしてこの戦いに意欲を燃やすのは木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)も同じ。すでに周知の事実として、多くの妖怪が自ら骸魂を飲み込みあえて猟兵の敵となることでこの戦いを止めようとしている。その心意気に必ず報いんと、ウタは一つ一つの戦場、一人一人の敵にに常に全力を持って挑んでいた。
「いらっしゃい……残る食材、全品大放出よ!」
 屋台の主、捉月がその二人にありったけの『月』を振舞った。これが最後と定めた料理はのは、屋台の看板メニューである『月見』シリーズだ。
 前に出された大量の月見に、二人は敢然と立ち向かった。
「ええい、やるでありますよ!」
 智華の前に出されたのは、月見シリーズの中でもメニューの一番上、迷ったらこれを注文しろという位置に書かれる看板中の看板、月見うどんだ。
 熱い状態でもなんのその。冷ます事なく無駄な時間を使わずに月見うどんを食べていく智華。こうすれば伸びずに済むからお腹にもたまりにくい。もちろんただ飲み込んでいくだけだったり、あるいは汁を辺りに飛び散らせるようなはしたない食べ方もしない。たとえ骸魂によって強要された衝動とはいえ、『もてなし』として相手はこれを出しているのだ。それに最大限の礼儀で答えるのは当然の事だろう。
「おいしいでありますよ、店主さん!」
 それは戦いとして敵に対する敬意か、客として料理人に対する感謝か。
 一方ウタが食べるのは月見炒飯に月見餃子、そして月見拉麺という変わり種。ラーメンはともかくチャーハンと餃子に月見というのも珍しいが、恐らく最初にうどんからの派生でラーメンがあり、そこから中華繋がりでチャーハンと餃子が生まれたと言ったところだろうか。
 その三つをループするように食べ、時にチャーハンに少しラーメンスープをかけたり、あるいはラーメンの上に餃子を乗せて見たりとちょっとした味変も忘れない。
 分かりやすい若い男のスタミナ飯、という感じの盛りと味に、ウタの体の中で獄炎が燃え上がる。炎の力で代謝を高め消化吸収促進し、更に獄炎が直接カロリーを燃焼させるという体内燃焼ブレイズフレイム。
「美味しい中華なら幾らでもイケるぜ」
 最もそんなもの関係なく、美味しいからたくさん食べるというシンプルな感情もそこにある。
 月を得ようとして死した者を嘆き、他者に月を与えたいと願った捉月の思いを少しでも叶えるため、ウタは出される限り料理を食べ続けた。人の為にという思いが満たされたらきっと骸魂も祓える筈だと、それを信じて。
 そして智華も、出されたものは綺麗にと、彼女の心にこれ以上の嘆きを起こさないためにも汁一滴残さぬ勢いでうどんを啜り続ける。
「食べ物は粗末に扱わない。――やっぱり、早食い大食いでもそこは忘れちゃだめだよね」
 生産者に、食材に、提供者に感謝を。物を食べる時に決して忘れてはいけない心が、器を空にしていく。
 やがて空になる端から出されていた次の料理が、ついに止まるときが来た。
 捉月の手が止まり、彼女の周囲に浮いていた小さな月が沈んでいく。捉月は一度がくりと膝を折り、屋台に手をついて立ちあがってねじり鉢巻きを取った、
「……今日は店じまいです。ありがとうございました」
 それは通り一遍の営業スマイルではない、感謝を称え目を潤ませた笑み。
「お疲れさん。ウマかったぜ」
「お腹いっぱい、こちらこそありがとう」
 二人も骸魂が落ちた彼女に笑みを返し、屋台から離れる。
 ウタは腹ごなしも兼ね、骸魂に捧げる長めの鎮魂歌を奏でつつ帰路につく。
 そして智華も、帰りに愛車を運転している途中眠くらないと良いが……とサイボーグの身ながら埒もないことを考える。
 こうして月の屋台は完売御礼、本日閉店となった。それでも、明日になればきっとまた彼女は屋台を引き、どこかの妖怪の元へ現れるのだろう。水ではなく出汁に浮く、箸で掴める月を携えて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月10日


挿絵イラスト