大祓百鬼夜行⑲〜オペレーション・レイルロード
●パンタ一基下がってんじゃねぇのか……!?
カクリヨファンタズムの一部の妖怪の間では、電車同士で速さを競う電車バトルが流行っていた。
「ルールは1本勝負、先にきさらぎ駅に到着したほうが勝ちだ!」
「それじゃあカウント始めっぞォ!! 5秒前! 4、3、2、1、GOッ!!」
今宵も電車バトルの幕が上がる。先行するのは黄色のラインが引かれた元東京の在来線。それを追走するのが札幌の引退して久しい緑色の地下鉄に、赤いボディの元名古屋の私鉄。そう、いずれもUDCアースでかつて旅客目的で走り、引退して廃棄された車両がカクリヨファンタズムに流れ着いたのである。
「はえー、流石は東京の在来線だぜ、伊達に快速運行してねぇ! 札幌の地下鉄の加速が止まって見えるぜ!」
「勝負になんねーよ、つーか線路をゴムタイヤで走ってどうすんだよ」
ゴアアアアアアア、と電車にあるまじき音が響き渡り、コーナーを曲がる度に火花が飛ぶ。先行する黄色の電車を操る妖怪は口の端をニヤリと釣り上げた。
「ストレートでちぎるのは不本意だが、こいつはバトルだ。二度とバックミラーに映ることはねぇ!」
しかし最初のコーナーで異変は起こる。遅れていたゴムタイヤの地下鉄がすごいスピードで突っ込んでいったかと思うと、そのままスピードの衰えもなく抜き去っていったのだ。
「なんだァあの地下鉄のライン! あんなに速くあそこのコーナーを曲がってったやつ、今まで見たことがねぇぞ!?」
地下鉄を運転する妖怪は気だるげにノッチを操作している。
「勝負に勝たねーと、あのクソ親父認めてくれねーだろうなー……やるしかねーか。仕掛けるポイントは、月の宮~夜海の右カーブだ!」
そして、それを追走する赤い名古屋の私鉄は札幌の地下鉄の動きを確かめているように走っていた。
「前にこいつに負けた時、あいつは妙な動きをしたんだ……! その正体をこのバトルで確かめる!」
それぞれの思惑を抱えながら、白熱する三つ巴のスーパーバトル。やがて「かたす駅」を通過して「伊佐貫トンネル」に差し掛かる。
「差が開かない……いや、詰められている!? この俺が!?」
在来線の妖怪は、なおも食らいついてくる地下鉄の姿に焦りを覚えていた。
「どうしたんだ、今日に限ってこの列車がやけにトロく感じる……!」
「コーナーである程度詰められるけど、立ち上がりの伸びは違うな……ストレートでドバっと差が開くのか」
「こうして後ろから見ているだけでもゾッとするぜ……! いつすっ飛んでもおかしくねぇぞあの地下鉄……!」
想定外の事態に必死に逃げる在来線、性能をものともせずにドライバーのテクニックで食らいつく地下鉄、その2編成の様子を伺い好機を待つ私鉄。
そして、トンネルを抜けた先で、3者は揃って驚愕する。
「……ッ、どこだ、ここは──!?」
そこは、UDCアースの浜松市を走る私鉄の路線であった。伊佐貫トンネルの出口が、UDCアースに何故か繋がってしまっていたのだった。
ここから先は予想もできない、結末すら見えない限界バトル。踏切の音が絶えず鳴り続ける中、3両はゴールなきバトルを続行する──。
●お互い幸せになるために
「……私ってなんでこうスピード狂の予知ばっかり引くのかしら」
グリモア猟兵、ベルゼ・アール(怪盗"R"・f32590)は盛大に溜息をついた。
「今回皆に行ってもらうのはUDCアースの静岡県浜松市。実はここ、『きさらぎ駅』っていう電車に関わる都市伝説の発祥の地と言われていてね。今回、市内を走る私鉄の沿線に骸魂を飲み込んだ妖怪が複数出たのよ」
それだけならば大した事件ではなかったのだが、この妖怪の群れが出現したこと伴って沿線一帯のカクリヨファンタズムとの境界が曖昧になった結果、カクリヨファンタズムの路線と繋がってしまったのだ。
「で、ちょうどカクリヨファンタズムのその路線では……電車同士を走らせて速さを競う電車バトルの真っ最中でね……レースが終わるまで踏み切り、閉じたまんまなのよね」
加えてレースのために本来単線だったはずの浜松の私鉄の路線が複線化し、線路の上では引退したはずの東京、名古屋、札幌の列車がデッドヒートを繰り広げている。
「このままだと開かずの踏切で沿線の道路は大渋滞起こすし、妖怪たちもレースに決着がつけられない。無理やり渡ろうとするとレース中の電車に跳ね飛ばされる危険があるし……つつがなくレースを行わせてあげないといけないわね。なので、沿線に現れた妖怪を退治してきて頂戴」
妖怪は線路の中にも入り込んでいたり、電車にまとわりついてレースを妨害しようとしたりしている。そこで、とベルゼは作戦を説明する。
「レース中の列車に飛び乗って、纏わりついている妖怪を退治してほしいの。沿線に現れた妖怪は例によって骸魂を取り込んだ妖怪だから、倒せば元の善良な妖怪に戻るわよ。ついでに、レースに参加する電車を運転している妖怪を応援してあげて。もしかしたらレースの結果に影響するかもしれないわよ」
まぁ、ド迫力の体験になることは間違いなしね、とベルゼは話を終えると、グリモアを起動してポータルを開く。
「じゃ、頑張ってね。くれぐれも振り落とされないように注意してね」
バートレット
どうも、バートレットです。
今回は電車バトルのシナリオをお届けします。どこかで見たようなアレです。
プレイングボーナスは以下のとおりです。
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プレイングボーナス……踏切と妖怪電車を利用して戦う。
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今回は妖怪電車に飛び乗って戦えば、プレイングボーナスの条件を満たすことが可能です。また、この条件に加えて、「レース中の妖怪を応援する」プレイングを行うと、さらに追加ボーナスを得られます。
今回レースを行っている車両は3編成です。東京の在来線だった車両と、札幌の地下鉄だった車両、そして名古屋の私鉄だった車両です。UDCアースに突入した時点では、東京の在来線が頭一つ抜けていますが、札幌の地下鉄が追い抜こうとしています。名古屋の私鉄は、札幌の地下鉄の追い抜きに呼応して、一気に2両をごぼう抜きしようと画策しています。一番多く猟兵から応援を受けた電車が、今シナリオで行われているレースの勝者となります。
それでは、皆さんのアツいプレイングをお待ちしております!
第1章 集団戦
『迦陵頻伽』
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POW : 極楽飛翔
【美しい翼を広げた姿】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【誘眠音波】を放ち続ける。
SPD : クレイジーマスカレイド
【美しく舞いながらの格闘攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 迦陵頻伽の調べ
【破滅をもたらす美声】を披露した指定の全対象に【迦陵頻伽に従いたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
イラスト:yuga
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
サリー・オーガスティン
■POW
電車でレース、かぁ……
「2台あったら競わせたくなる」のが人の性分、というのはボクも解るけれど、さぁ。ボクもスピード大好きだしね。
と、言っても。ここは止めなくちゃいけないよね
【ダッシュ、追跡】で追いかけて【操縦、騎乗、地形の利用】で、架線にひっかからないように応援対象の札幌地下鉄の屋根に飛び乗る!
タイヤで走る、という親近感と、タイヤならではの加速度が有利に働くだろうという期待で、推そう。
【スナイパー、誘導弾、2回攻撃、零距離射撃、なぎ払い、援護射撃】と、k【ヴァリアブル・ウエポン】で命中率強化した上で、妨害する妖怪を叩く!
他の電車にあたると、レース妨害で拙いからね。
※アドリブ・連携は歓迎
●シンパシー
ポータルを通って現場へとやってきたサリー・オーガスティン(鉄馬の半身・f02199)は、目の前で繰り広げられている電車同士の高速バトルに思わず目をむいた。
「電車でレース、かぁ……」
種類も規格も現役時代に走っていた地域も違う電車が揃ってコーナリングを決めていく姿はどこかシュールで、自然と遠い目になる。
「『2台あったら競わせたくなる』のが人の性分、というのはボクも解るけれど、さぁ。ボクもスピード大好きだしね」
だからって電車でやるか、普通、とツッコミを入れたいところをこらえる。ひとまずは今回の事態の原因になった妖怪・迦陵頻伽の群れを退治して、彼らには元の路線で決着をつけて欲しいところ。
「ここは止めなくちゃいけないよね。行くよ!」
サリーは意を決して電車を追いかけていく。すでに複数の迦陵頻伽が纏わりついてレースを妨害しているが、3両の電車は未だレースをやめる気配はない。
「こいつら、最近の騒ぎの……!?」
「……骸魂を飲み込んだやつか!」
「ったく、よりによってこの大事なバトルの時に……!」
スピードを上げて振り切ろうとする3両の電車。追いかけるサリーが見つめるのは暗闇の中、赤い筋を引くテールライトだ。
「ここは架線に引っかからないように……!」
三角飛びの要領で沿線の電柱目掛けて一旦ジャンプした後、電柱を蹴って電車の屋根に飛び乗る。彼が選んだのはゴムタイヤで走る札幌の地下鉄だ。そのまま先頭車両までたどり着くと、窓ガラスを軽くノックする。地下鉄を運転する妖怪はその姿を見て一瞬驚いた後、その正体を察する。
「ん……? 猟兵さんか!?」
「手伝いに来たよ。邪魔してる妖怪はこっちで引き受ける。このバトルでは君を応援してるんだ。タイヤならではの加速力に賭けてみたい」
「……わかった、迦陵頻伽たちは任せたよ。そっちも色々大変みたいだけど、頑張ってくれ。俺は応援しかできないけど」
サリーも過去の事故の記憶を他所に、宇宙バイクでスピードを追い求める男であった。口には出さないが、互いにタイヤで走る乗り物を操る共感めいたものを感じる。二言三言の会話で互いにそれを理解して、それぞれが自分の仕事をこなす。地下鉄の妖怪はこの車体をより速く動かし迦陵頻伽を振り切ること、サリーは走行を妨害する迦陵頻伽を倒すことだ。
サリーは再び地下鉄の屋根に立つと、他の電車の走行を妨害しないように気をつけて、アームドフォートとマスケット銃を模した外見の愛銃を構える。重視するのは命中率。一発必中の覚悟をもって放たれた弾丸の数々が、次々と迦陵頻伽たちに吸い込まれていく。銃弾の直撃を受けた迦陵頻伽たちからは骸魂が飛び出し、我に返った妖怪たちは事態を察して急ぎカクリヨファンタズムへと帰還する。
「いける、いけるぞ! 後は早いところUDCアースから抜け出さないと……!」
「あぁ、それと、このバトル……絶対に勝とう!」
線路の上をひた走る地下鉄は、サリーの来援を受けて勢いづくようにさらに速度を上げて突っ走るのであった。
成功
🔵🔵🔴
エインセル・ティアシュピス
【アドリブ連携歓迎】
(応援先はお任せ)
にゃーん、すごーい!はやーい!
ようかいさんうんてんがじょうずなんだね!(きゃっきゃっと子猫が運転手の隣ではしゃいでいる!)
かっこいいにゃーん!このままがんばってゆうしょうしちゃおーう!
がんばれ!がーんばれー!
(【鼓舞】して妖怪の全力をキープしようとしている子猫、ポンポンを振って応援)
だいじょーぶ、じゃまするわるいようかいさんはぼくがやっつけちゃうからね!
【式神使い】でにゃんげいざーにおねがいして、でんしゃのうえでむかえうってもらうよう!
でんしゃへのこうげきはぼくが【結界術】でまもって、にゃんげいざーの【指定UC】でようかいさんにこうげきするよー!
●幸運の白猫
沿線が丸ごと異界化した浜松の私鉄路線。当然、駅もその影響を受ける。本来単線の線路が複線に変わってしまったことで、駅舎もホームが複数に増加するという歪な状況に変わっていた。
その私鉄の路線上にある駅の一つ、小松駅のホームの屋根の上に、一匹の白猫が乗っていた。白猫は3両の電車が高速で通過するところでタイミングを合わせてそのうちの1両の屋根へと飛び移る。奇妙なことに、その白猫の背には羽が生えていた。
このようにして、エインセル・ティアシュピス(生命育む白羽の猫・f29333)は小松駅からの乗車に成功したのである。
一方、名古屋の私鉄を操る妖怪は、巧みなマスコン操作で慎重に車体を御していた。何しろ私鉄の路線とその沿線全体が異空間と化しており、本来ならば存在しないはずのカーブがあったり、体感距離が数倍にも広がっている。駅の位置関係は変わっていないようだが、このままではそれすらも狂い始めるだろう。加えて迦陵頻伽の散発的な襲撃も躱さなければならない。普段以上に神経をすり減らすところだ。
「こりゃ勝負どころじゃねぇなぁ……」
私鉄の手綱を握る妖怪は半分バトルを諦めかけている。とにかくこの狂った空間から抜け出したい、今はただその一心だった。そこへ、空気の入れ替えのために空けていた運転席の窓から白猫が入ってきた。
「にゃーん、すごーい! はやーい!」
驚くべきことに、白猫は少年の姿に早変わりしたではないか。すわ骸魂を飲み込んだ妖怪の新手かと身構えたが、すぐに違うことを察知する。
「坊主……もしかして猟兵か?」
「そうだよー?」
その正体はエインセルである。幾度かカクリヨファンタズムで発生した事件の収拾に当たっていたためか、彼の活躍は私鉄の妖怪も聞き及んでいた。
「白猫に化けるガキの姿した猟兵……そうか、お前さんエインセルか!」
「わー、ぼくのことしってるんだ!」
「知ってるも何も、ちょっとした有名人だぜ、坊主。どうだ、いい眺めだろ」
名古屋の私鉄は運転席の窓が広く取られている。前方の見通しが良く、線路上の光景が流れるのがよく見えた。
「うん! それにしてもようかいさん、うんてんがじょうずなんだね!」
「まぁな」
褒められて悪い気はしない。ましてや子供の前である。少し良い格好をしたいところだ。エインセルもそんな妖怪の気持ちを知ってか知らずか、どこからともなくポンポンを取り出して応援の構えに入る。
「かっこいいにゃーん! このままがんばってゆうしょうしちゃおーう! がんばれ! がーんばれー!」
「優勝ね……エインセルの坊主に応援されちゃあしょうがねぇ、気合い入れ直すか! 見てろよ坊主! 今はドンケツだが、ここから抜け出した所で前の2台を抜いてやるからな!」
とは言え、迦陵頻伽の群れによる妨害は止まない。どうにかしなければ、と妖怪は額の汗を拭った。その様子を見て、エインセルも妖怪の手伝いをしなくては、という使命感に駆られる。
「だいじょーぶ、じゃまするわるいようかいさんはぼくがやっつけちゃうからね!」
「やっつけるったってな……どうするんだ?」
「にゃんげいざーにおねがいして、でんしゃのうえでむかえうってもらうよう!」
「ニャンゲイザー?」
エインセルの言葉にオウム返しで聞き返すと、エインセルは窓の外に向かって手を振る。すると、私鉄と並走する形でエインセルの相棒たるスーパーロボット、鋼鉄猫帝ニャンゲイザーが飛んできた。
「にゃんげいざー、このれっしゃにちかづくわるいようかいさんをやっつけて!」
「任せろ! 運転士殿、周囲の掃討は私が担当する! 君は安心して腕を奮って欲しい!」
「……お、おう! 頼んだぜ!」
ロボットに話しかけられてしばし呆然としていたが、我に返ると再びマスコン操作に集中する妖怪。ニャンゲイザーは私鉄の上を飛びながら、近づく迦陵頻伽たちを次々と荷電粒子ビームで狙い撃っていく。さらにエインセルの手によって、車体周辺に結界が張られ、守りも万全の体制が整った。
「こりゃすげぇや……よし、こっから先は一気に飛ばすぜ! 横に座ってる坊主は不敗神話のエインセルだ! 見てろよ坊主、前の2台をちぎる瞬間、見逃すなよ!」
「わーい! がんばれー!」
なお、この時の体験が原因で、後にエインセルが所用で電車に乗った時、しばらく微妙な物足りなさを感じるようになってしまったのはまた別の話である。
成功
🔵🔵🔴
ゲニウス・サガレン
そんなに詳しくはないけど、生まれて初めて乗った車両はキハ600形ってやつでした。
閑話休題。
東京在来線に参上しよう。大学の文献で見たことあるけど、なんでも「満員電車」っていう朝夕にのみ人が大群を形成する現象があるらしいじゃないか!
運転妖怪を全力で応援します。
UC「眠れる力を呼び起こせ!」
行こうぜ、ピリオドの彼方ってやつのところへ!
あ、まとわりつく妖怪をやっつけないといけないんだったね!
アイテムを活用しよう。
「フライングシュリンプ」妖怪が電車に乗ろうとした隙を狙って体当たりで落とせ!
「沈滞の投網」空から来たらこいつで絡めとって、行動不能に追い込もう。
「スティングレイ短針銃」近くの敵には射撃だ!
●通勤快速は伊達じゃない!
ゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)は知識欲の人であった。彼は以前、UDCアースやヒーローズアースにおける近現代の交通機関に関する知見を深めようと図書館で文献を漁っていたが、中でも日本の首都たる東京の在来線は特に知的好奇心をくすぐった。
「『満員電車』っていう朝夕にのみ人が大群を形成する現象があるらしいじゃないか!」
……というのが、その理由である。乗車率が100%を大きく超過し、200%近くにも迫るというその現象を知った当時の彼は仰天したものだった。しかもそれでいてよほどの事故がない限り時間通りに運行がつつがなく行われてしまうのだ。下手な神秘よりもよほど不可思議な現象と言える。
そんなわけで、その東京の在来線が走っているのを見た時、彼は即座に飛び乗っていた。すでに引退した車両とは言え、あのとんでもない現象を引き起こす電車をこの目で見られるとは、という興奮は、彼の身体を動かす衝動として十分すぎるものだったのだ。
「運転士くん、お取り込み中すまないね。状況はどうだい?」
「ちと厳しいな」
ノッチ操作の手を休めることなく、在来線の妖怪はゲニウスの問いに答える。
「何しろ足回りを最適化してねぇはずの地下鉄に良いように追い回されてる。ドラテクは間違いなく向こうのほうが上だな……そんな状況下でも何とか逃げ切ろうとしたらこの状況だ」
空いた左手で窓の外を指す在来線の妖怪。UDCアースの地方都市の住宅街がかなりの速さで流れていく光景が窓から見える。
「とは言え、今のトップは君だ。ここは意地の見せ所だぞ。東京都民の足の底力、見せてやろう。行こうぜ、ピリオドの彼方ってやつのところへ!」
ゲニウスのその言葉は在来線の妖怪の心に来るものがあった。言われてみればその通りだ。追い回されているとは言え、現時点ではまだこちらが先頭を走っているという厳然たる事実がある。ならば目の前の男の期待に応えなければ。
「わかったよ、こっちだって伊達にこの車両を走らせてねぇんだ。最後まで逃げ切ってやる!」
自然とマスコン操作にも力が入る。しかし、そこに水を差す迦陵頻伽の群れ。思わず舌打ちが漏れる。
「ッチ、しかしこいつが邪魔だな……!」
「おっと、そうだった。まとわりつく妖怪をやっつけないといけないんだったね!」
ゲニウスは自分の果たすべき使命を思い出し、即座にいくつかのアイテムを出して迫る妖怪たちを迎撃する。
「フライングシュリンプ! 妖怪が電車に乗ろうとした隙を狙って体当たりで落とせ!」
空飛ぶエビの群れが在来線の周りを飛び回り、取り付こうとする迦陵頻伽めがけて襲いかかる。さらにゲニウスは網を取り出すと、窓から投げ上げた。古代遺跡で見つかった金属繊維で編み上げた「沈滞の投網」は、たちまち空からの接近を試みる迦陵頻伽を絡め取っていく。近くの敵に対してはスティングレイ短針銃でエイの毒棘を射出し、神経毒を食らわせて叩き落としていった。
「すまねぇ、助かる。後はどうにかこのイカれた空間から脱出しねぇと……」
ゲニウスのアイテムを駆使した活躍ぶりに触発された在来線の妖怪は、プレッシャーをはねのけるように前へ前へと在来線に加速を命じる。より前へ、より先へ。マスコンを操作する手にも力が入り、夜の線路をただひた走るべく存分に腕を振るうのであった。
大成功
🔵🔵🔵
メリヲ・テフルヴイ
私鉄の屋根に乗って戦うよー。
あはははは!このスピード!この振動!電車ってこんな愉快な走りができるんだねぇ!
ユウロビイトだっけ、あの辺の曲を流したくなってきちゃうよね!
というわけで、レースの邪魔をする無粋なオブリビオンには、さっさと退場してもらおうじゃないか!
鋼鉄ノ刃翼発動、視界に入った敵に剣閃を放って斬り捨てていくよ。
剣閃で攻撃しづらい相手には、こっちから飛び上がって直接斬りに行く。同じタイプのユーベルコヲド同士なら速度で負けはしないし、このテンションで眠気なんか吹っ飛ばしちゃうよ!
さあ、チャンスは一瞬、一度きりだ!仕掛けるタイミングは、このイカレた線路地帯を抜けてすぐ――見逃すなよ!
●目の覚めるような走り
「あはははは! このスピード! この振動! 電車ってこんな愉快な走りができるんだねぇ!」
サクラミラージュを故郷とする剣士、メリヲ・テフルヴイ(フリヰダムスヲウド・f22520)は名古屋の私鉄の走りに魅せられていた。UDCアースで人気の音楽ジャンル、ユウロビイトのひとつも流したくなってしまうほどの速度の世界はメリヲの脳内を刺激してアドレナリンをこれでもかと分泌する。
もちろん、そんなレースの邪魔をする無粋な迦陵頻伽の群れには、さっさと退場していただくほかない。そんなわけで、メリヲは屋根の上で二振りの愛刀「栄旺主」「憎苦主」を抜き、構える。
視界に入った迦陵頻伽に向かって刀を振る。一見空を斬っているように見えるが、その刀身からは遠距離の敵すら切り裂く剣閃が放たれている。剣閃は次々と迦陵頻伽に当たり、一撃のもとに地へと叩き落としていった。斬られた迦陵頻伽は飲み込んでいた骸魂を続々と消失させて、無害な妖怪に戻っていく。
しかし中には剣閃で攻撃しづらい迦陵頻伽もいる。そういった相手には直接飛び上がり、斬りに向かう。ユーベルコヲド「鋼鉄ノ刃翼」の力で、メリヲは5800km/hの速度まで飛翔することが出来る。当然、バトル中の電車と同等の速度を出すことなど朝飯前だ。
「すげぇな……あの姉ちゃん、俺のドラテクにしっかりとついて来ながら迦陵頻伽を落としまくってるぜ……」
私鉄の妖怪は窓からちらちらと見えるメリヲの戦いぶりに息を飲む。その姿に対抗心を燃やしたのか、私鉄の妖怪のマスコンさばきもより精度が上がり、私鉄は走りに鋭さを増して行った。
迦陵頻伽も負けじと超高速の連続攻撃を繰り出すが、眠気すら吹っ飛ばすほどの興奮状態にあるメリヲはやすやすとこれをかわしてみせる。ひらりひらりと踊るように一撃を浴びせながら、彼女はスピードの世界の中で熱狂を続けていた。
「さあ、チャンスは一瞬、一度きりだ!仕掛けるタイミングは、このイカレた線路地帯を抜けてすぐ――見逃すなよ!」
「あぁ、任せとけ!」
すでに半数以上の迦陵頻伽が落とされている。異空間化した路線から抜け出す時もそう遠くない。メリヲの応援を受け、来たるチャンスに備えて私鉄の妖怪は集中力を高めるのであった。
成功
🔵🔵🔴
空亡・劔
札幌の地下鉄の車両に乗るわ
この最強の大妖怪である空亡劔が乗ってるのよ!
負けたら承知しないんだからねっ!(激励
あんたらあたしの電車の棒買いするとは生意気よ!
このまま逃げ切る為にもあんたらには散ってもらうわ!
時刻み発動
【天候操作】で今より猛吹雪発生
【属性攻撃】で二刀に氷属性を付与して強化!
後は飛び回り敵に襲い掛かり【二回攻撃】で切り刻む!
あんたらも早そうだけどあたしも負けないわよ!!!
この電車が一番取るためにはあんたらは邪魔なのよ!
寧ろそれを邪魔する事こそ許されざるね!(既に当初の目的を忘れている大妖怪
ほらあんたは雪国の電車でしょ!この吹雪の中でこそ力を発揮するはずよ
気張りなさい!!!
●北国の底力
疾走する札幌の地下鉄に乗り込んだ元ヤドリガミの妖怪、空亡・劔(本当は若い大妖怪・f28419)。早速乗り手の妖怪に檄を飛ばして気合を注入する。
「この最強の大妖怪である空亡劔が乗ってるのよ! 負けたら承知しないんだからねっ!」
「まぁ、そうだな、負けてらんないよな……! 練習してきた秘策もあるし、こんなところから早く抜け出さないと」
秘策について気になって聞いてみれば、地下鉄の妖怪から返ってきたのは「見てればわかる」の答え。ならば見せてもらおうじゃないか、と劔は邪魔をする迦陵頻伽を倒すべく己の本体である殺神魔剣『空亡・紅』と生涯を共にする永久凍剣『二世氷結地獄・極』を構える。
「あんたらあたしの電車の妨害するとは生意気よ! このまま逃げ切る為にもあんたらには散ってもらうわ!」
劔の奥義、「時刻み」によって、空亡・紅が時空を切り裂く刃と化す。さらに二世氷結地獄・極の権能によって天候が操作され、当たり一面に突如として猛吹雪が発生。この天候変化の影響により、二刀に氷属性が付与された。
「さぁ、行くわよ! 北国の力、思い知れぇっ!」
劔は高速で飛び回りながら敵に襲い掛かり、二刀で次々と迦陵頻伽をなで斬りにしていく。迦陵頻伽も劔の速度に追いつこうと次々に襲い掛かってくるが、あと一歩及ばない。
「この電車が一番取るためにはあんたらは邪魔なのよ! 寧ろそれを邪魔する事こそ許されざるわね!」
既に当初の目的を忘れている大妖怪。とは言え結果として迦陵頻伽の数を減らすことに貢献はしているので、結果オーライというやつである。
「ほらあんたは雪国の電車でしょ! この吹雪の中でこそ力を発揮するはずよ、気張りなさい!!!」
そう言ってさらに発破をかけるが、ふと見れば運転士の妖怪は申し訳無さそうな顔。
「何よ、なんか言いたいことありそうね」
「いやな、この地下鉄……雪の中は走らないんだよ」
「へ?」
そう、札幌の地下鉄は基本的に地下を走る。一部の路線では地下から出て高架を走ることになるのだが、線路自体はシェルターで覆われている。つまり、雪の中を走ることがない。
「……雰囲気よ、雰囲気! 気にしたら負け! 良いわね!」
「まぁ……実際何とかなってるもんな……」
吹雪にも負けず、疾走するゴムタイヤの地下鉄。その姿からは北国の底力を感じさせるのであった。
成功
🔵🔵🔴
董・白
※アドリブや他猟兵との連携OKです。
【心境】
うん。初めて見ましたけど馬より早くて馬車より多くの人を乗せれるのは凄いですけど…。乗るってどうやるんです?え、これを観ろ(ポータブルDVDと列車強盗のC級映画)
【行動】
はい。教えてもらいました。
レース中の列車が通る予定の上を通る陸橋で待機。
屍身超越を発動して、タイミングを合わせて列車の上に飛び降りて乗り込みます。…ぐえっ。
うぅ。かなり痛かったですが、再生しながらなんとか列車内に乗り込みます。
途中他のレース中の列車を応援します。頑張ってくださ~い。
うぅ。やっと見つけました。
こんなので爆走してみんな迷惑してます。
破魔の霊符と雷公鞭の電撃でお仕置きです。
●キョンシー流の乗車方法
レース中の列車が通る予定の上を通る陸橋で待機する僵尸の猟兵、董・白(尸解仙・f33242)。実はこれから列車強盗のC級映画で観た「走行中の電車への乗車方法」を実行に移そうとしているのだ。
「うん。初めて見ましたけど、馬より早くて馬車より多くの人を乗せれるのは凄いですけど……」
出身世界の封神武侠界には無い乗り物には感心する部分もあるが、しかし本来はもっとまともな乗り方があるだろうと考える白。大丈夫だ、君は間違っちゃいない。
やがて陸橋の下を3両の電車が潜った時、白は迷うことなく封魂符を捨てながら陸橋から電車の屋根目掛けて飛び降りる。
「……ぐえっ」
うめき声を上げながら転がるように着地。どうやら東京の在来線の上に降りられたようだ。このやり方、僵尸だからこそ出来たようなものだな、と白は思う。実際着地時に四肢がいくらか欠損したが、飛び降りる際に発動したユーベルコード「屍身超越」の力によって再生できるので問題はなかった。
後ろに見える他の列車も応援することを忘れない。なんとか車内に乗り込むと、運転士の妖怪に声をかける。
「やっと見つけました」
「あぁ、猟兵さんか。大丈夫そうか?」
「僵尸ですから大丈夫です。それよりも早いところ片付けないとですね。こんなのでここを爆走したままだとみんな迷惑します」
その通りだ、と妖怪は頷いた。このままUDCアースの路線を走ったままでは現地の住民の皆さんに迷惑がかかってしまうだろう。自分たちのホームで走っているからこそ心置きなく爆走できるのだ。
そんなわけで、数がだいぶ減ったとは言えまだ残っている迦陵頻伽を倒すべく、再び白は車外に戻ってきた。とにかく今はレース中の電車をカクリヨファンタズムに戻さなくては。
破魔の霊符と雷公鞭を構える。屍身超越は太陽光に弱くなるが今は夜、特に支障は来たさない。襲いくる迦陵頻伽に雷公鞭を振るえば、電撃が走って感電した迦陵頻伽が地面に沈む。
「お仕置きです」
こんな事態を引き起こした迦陵頻伽たちに対してそう告げながら、霊符と雷公鞭を振るい続ける白であった。
成功
🔵🔵🔴
マリア・テミルカーノヴァ
【A&M】
アドリブ歓迎です。
私たちは名古屋の赤い電車に飛び乗ることにしますね。
名古屋の赤い私鉄と言えば展望席!
そんな私は展望席からアメリアに指揮を出します。
(展望席がなければ運転台の真後ろです)
まとわりついた妖怪と戦うアメリアを、そして名古屋の赤い電車を運転する妖怪を応援するために、チアリーダーの格好をして【チアフル・ダンス】で精一杯応援しちゃいますね。
この応援があれば、まとわりついた妖怪を助けてあげることができるでしょう。
もし、展望席の私を狙ってきたらダンプカーすら跳ね飛ばすという赤い電車のバンパーで弾き飛ばしてくれると信じましょう。
勝利の栄冠は、きっと私たちのものです!
アメリア・ツァオ
【A&M】
アドリブ歓迎。
そんな私は名古屋の赤い電車に飛び乗るぞ!
で、展望席(または運転台の後ろ)のマリアの指揮を元に、【正確無比の一撃】でまとわりついた妖怪を撃ち抜いていこう。
もちろん、急所は外すさ。
数が多い敵でも、正確に撃ち抜いて数を減らしていくだけだ。
マリアを信じ、赤い電車を信じ、そして運転士の妖怪を信じる。向かってくる妖怪は私に任せて。
なんとか、先頭になってくれ。差してくれ、赤い電車よ!
もし他の電車が妨害してきたらダンプキラーでぶっ飛ばすんだ!
そして、一着できさらぎ駅にたどり着いた暁には盛大に鳴らしてもらおうか、勝利のミュージックホーンを!
(ついていなかったら普通の警笛……だな)
●ダンプキラー
名古屋の赤い私鉄には、ある逸話がある。
1961年の晩秋、踏切を無視して線路内に侵入したダンプカーと私鉄の衝突事故があった。ダンプカーは砂利が満載で、かなりの重さだったという。しかし、私鉄側の展望席に座っていた乗客は無事で、車体も原型を留めていた。このことから、展望車を備えた名古屋の私鉄は「ダンプキラー」の異名で呼ばれている。
その逸話を知る2人の猟兵、マリア・テミルカーノヴァ(電子の海を彷徨う光・f00043)とアメリア・ツァオ(心はいつも十七歳・f09854)は、この逸話に賭けてみようと思った。即ち、纏わりついた迦陵頻伽の攻撃も、ダンプキラーならば耐え、むしろ跳ね飛ばすのではないかと考えたのだ。
「話はわかった、気にせず進めばいいんだな?」
運転士の妖怪は2人の提案に頷く。
「えぇ、それでは僭越ながら……」
展望席に降りると、チアガール姿でチアダンスによる応援を披露するマリア。応援する対象は実戦を担当するアメリアと運転士の妖怪だ。もちろん、派手に動くので迦陵頻伽の注意をひく。
そこを狙うのがアメリアだった。
「まとわりついている妖怪は僕が退治する!」
展望席のマリアの指揮を元に、正確無比の一撃でまとわりついた妖怪を撃ち抜いていく。
もちろん、急所は外し、数が多い敵でも、正確に撃ち抜いて数を減らす。マリアを信じ、赤い電車を信じ、そして運転士の妖怪を信じる。向かってくる妖怪は私に任せろ、と言わんばかりだ。
うち漏らしたとしても、ダンプキラーのバンパーはやわじゃない。迦陵頻伽を次々と跳ね飛ばしていくのだった。
そして、猟兵達の応援の力もあり、ついに迦陵頻伽達は全滅する。新浜松駅のホームに飛び込むと、3両は元の世界へと戻り、そして──。
熱い電車バトルの末、勝利は差し切った赤い名古屋の私鉄列車が掴むのであった。
勝利のミュージックホーンが、きさらぎ駅にこだまする。
大成功
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