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大祓百鬼夜行⑲〜開かずのもふもふ踏切

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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●今日も朝から大渋滞
 UDCアースのとある地方都市。世にいう黄金の一週間とも呼ばれる大型連休が明けて長い長い休みが終わり、何処か憂鬱な顔の学生やサラリーマンらがとぼとぼと足を重くして歩いている。サラリーマンと思わしきスーツ姿の男は、学生たちの休みの間は何をしていたのか、何処に言ってきたのかという取り留めない話題を耳に傾けては、今となっては懐かしきあの頃の思い出を思い出してしまう。こうも残業続きで休みらしい休みも取れないと昔のうちに分かっていたならば、もっと遊んでいただろうと感傷にふけりながら遠くを眺めた。

「なんだぁ……あの黒山の人だかりは?」
 その先は踏切であった。まだ寝たりない頭をフル回転させて考えていると、男の脳裏に嫌な予感が過った。

(さては人身事故か? うわぁ、休み明けなのに勘弁してくれってんだ)
 重い溜息を吐き出しながら、どうにかしてこの踏切の先に行けないかと考えながら彼は人だかりを掻き分けていく。だが、彼の不安は杞憂に終わった。

「……なんだ。何も起きていないじゃんかよ」
 踏切の中には何も居ない。何も起きていない。さては別の踏切で起きたのかと考えを変えて遮断器が上がるのを待つが、一向に上がる気配はしない。ともあれ、人身事故でなければ会社に対して遅刻した理由とはならない。踏切の左右を確認したが、まだ電車の姿は一向に見えてはいない。さては遮断器が故障したんだなと、男は自分に言い聞かせてこの忌々しい踏切の音から一刻も早く離れようと遮断器に手をかけた。
 その瞬間、ゾクリと背筋に冷たいものが走る。ここを越えてはならないと本能が訴えかけ、何か恐ろしいものに触れてしまったかのように直様手を離した。具体的に言えば、なにかこう、もふっとふわふわしたものに触れたような感覚である、しかし、目の前には何もおらず電車が走っていない線路だけがあるだけだ。

「さっきのは何なんだ…?」
 男はここでようやく気づく。左右に居る者も、恐らく男同様に遮断機を潜ろうとして手にかけたのか、言葉にできない何かを怖れている顔持ちだったのだ。

 カンカンカンカン……。
 遮断器の警報機は、まだまだ鳴り止みそうにもない。


●グリモアベースにて
「まずは妖怪団地での激闘、お疲れさまでした。そしてですが、どうやらカクリヨファンタズムと密接に繋がるUDCアースにて、骸魂を宿した妖怪が悪さをし出したようです」
 猟兵たちの労をねぎらいながらも、シグルド・ヴォルフガング(人狼の聖騎士・f06428)は自身が予知した内容の説明に移った。

「骸魂を宿してケサランパサランとなった妖怪の一団が、変哲もない踏切と線路を迷宮に作り変えてしまったのです」
 人々からすれば一見なんともない踏切であるのだが、その内部は骸魂の影響を受けて妖怪電車がしきりなしに行き交う異空間となっているのだと、シグルドは語り続ける。

「幸いなことに、UDCアースの人々はこの踏切の迷宮へは入り込まずに居ます。しかしながら、このまま長引けば人々の生活に支障を与えてしまうのは必定です」
 普段であればUDC組織の出番であるのだが、こうも人が集まっては彼らも活動がままならないのが現状である。となれば、猟兵がこの踏切迷宮の内部に突入し、ここに巣食う骸魂ケサランパサランを倒してしまおうというのが今回の流れである。

「さて、このケサランパサランですが、人懐こく可愛らしい骸魂との報告が上がっています。戦闘力がないので苦もせず倒せるでしょうが、今回に限っては『妖怪電車』という要素が加わってしまいます。風に乗って漂う彼らは、妖怪電車の走行によって起こる風で異空間内を飛び交っているのです。もし、彼らを追って妖怪電車が走り合う線路の中に入ってしまえば……率直に申し上げますと轢かれてしまいます」
 不思議なことに、この妖怪電車はUCによる攻撃を受け付けないという。しかし、それは敵も条件は同じで、彼らもまた妖怪電車と接触すれば跳ね飛ばされてしまう。ケサランパサランは自身の身軽さを利用し、妖怪電車との接触を防いでいる。
 だが、猟兵にも妖怪電車への対抗策はある。警報機が鳴っている間は踏切を無理に渡らず、遮断器が上がれば安全に踏切の先を進めれるのだ。

「いやはや、柔よく剛を制するとはこのことなのでしょうね。さて、時間に追われるUDCアースの人々をこれ以上待たせるわけには行きません」
 シグルドは静かに念じ、フォースより展開したグリモアを展開してゲートを開かせる。

「このゲートの先は、踏切内部の異空間です。踏切を渡る際には左右の確認をきちんと行い、妖怪電車との不意の事故にはくれぐれもお気をつけ下さい」


ノーマッド
 ドーモ、ノーマッドです。
 大型連休も遂に終わってしましましたが、憂鬱になることなく着実に戦争を進めていきたいところです。

●シナリオ概要
 場所は打って変わって、UDCアースのとある踏切です。
 一見するとただの踏切ですが、一度足を踏み入れるとその中は無数の妖怪電車が行き交う踏切の迷宮となっています。
 骸魂のケサランパサランは妖怪電車の走行で吹き抜ける風に乗り、あっちに行ったりこっちに行ったりとふわふわ漂っています。ですが、それらを追ってうっかり線路に入ってしまえば、妖怪電車に轢かれてしまい大ダメージを負う危険性があります。
 線路を越えるには迷宮内の踏切を越えなければならず、こちらも定期的に遮断機が下りて、電車の到達を告げる警報機を無視すれば問答無用で轢かれることでしょう。
 妖怪電車は猟兵と骸魂の攻撃を受け付けず、これらを脱線させたり止めたりして無力化ことはできません。基本的には踏切のルールを守りつつ、骸魂とうまく戦う必要があります。

 よってプレイングボーナスは、『踏切と妖怪電車を利用して戦う』、となります。
 骸魂ケサランパサランも妖怪電車が走る線路の先に渡るには踏切を越えていかねばなりませんので、これらを利用すれば自ずと道は切り開けるでしょう。

 それでは、皆さんの熱いプレイングをお待ちします。
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第1章 集団戦 『ケサランパサラン』

POW   :    もふもふ体当たり
【もふもふの体での】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【仲間】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    ふわふわ膨らむ
全身を【ふわふわ膨らませて一回り大きな姿】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ   :    ふよふよ漂う
【ふわふわの体で誘うようにふよふよ漂う姿】を披露した指定の全対象に【ケサランパサランを追いかけたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

空亡・劔
この最強の大妖怪であるあたしを差し置いてこんな大異変を起こすなんて
生意気にも程があるわ!(おこ

この電車はヤバいわね
まだ人類の脅威にはなってないようだけど

【天候操作】で本日は霧雨よ
そのもふもふ
水を吸ったらさぞ重くなるでしょ?


電車の踏切だけは安全に行く
あたしは最強だけど無駄な怪我はしないわよ!
常に踏切の状況は把握
ちゃんと踏切は閉まるんだからそれを護ればいいのよ
【二回攻撃・属性攻撃】
常に冷気を発して凍結を狙いながらも二刀での斬撃で切り捨てるわ

けせらんが踏切に入った瞬間
UC発動
電車が直撃する瞬間解除
そして時は動き出す…!

あんたら…自分達だけが安全だと勘違いしていない?

時を止めて切り裂きを続ける



「この最強の大妖怪であるあたしを差し置いてこんな大異変を起こすなんて……生意気にも程があるわ!」
 ──プァァァン。
 妖怪電車が鳴らす電子音の警笛が重なり合い、踏切迷宮内を残響する。電車が行き交うことで舞い上がる風に、この異常事態を引き起こしたケサランパサランがたんぽぽの綿毛のように煽られて浮遊するのを空亡・劔(本当は若い大妖怪・f28419)は苦々しくも睨みつけた。

『けさら~ん』
 骸魂ケサランパサラン。これ自体には猟兵を積極的に攻撃しようとする意思は見えず、一見すると無害にも見える。だが、彼らがこの踏切の迷宮を生み出した原因でもあり、異次元空間外では人々の目から見えなくとも、何らかの力場による作用から電子機器や電車の異常による誤作動を生み出している。このケサランパサランをどうにかせねば、UDCアースにおける人の流れや貨物列車を含めた物流が滞り、刻一刻と経済的な損失が膨らんでいくばかりだ。

「この電車はヤバいわね。まだ人類の脅威にはなってないようだけど」
 幸いなことか、この妖怪電車はまだ表の世界には顕現しておらず、いまのところでは踏切迷宮内に限定して走っている。だが、骸魂の影響でこれらもUDCアース内を蹂躙する可能性は大いに有り得る。そうならない為にも、一刻も早くこの何も考えないで幸せそうな骸魂をなんとかせねばと、劔は背中から蒼い水晶の翼をせり出しながら展開させた。

「そのもふもふ、水を吸ったらさぞ重くなるでしょ?」
 頭上をふよふよと漂うケサランパサランを見上げながら、劔はにやりと笑う。彼女を起点として蒼い水晶の翼から冷ややかな空気が辺りを包むと、上空より霧雨がしとしとと降り出してくる。ケサランパサランの体毛は細かい水滴を弾いていたが、徐々に水分を吸っていけばその重みで高度が下がっていく。彼らは霧雨が振っていない踏切の向こう側へと逃れようとしたが、そこが劔の狙い目でもあった。

「猟兵も…あんたらも…あたしは人類の脅威と断ずる。だから…止まれ」
 水晶の翼から、何物も触れる事の出来ない水晶の欠片の羽群が放出されると、それらが妖しく輝きだしてケサランパサランの周囲を取り囲む。すると、UCが生み出した水晶の欠片に封じられたしおらしい毛玉が空中内で静止した。

 ──カンカンカンカン…。
 そして、踏切が幽霊電車の到来を告げる警報を、無機質な電子音を繰り返しながらけたましく鳴らし始める。だが、ケサランパサランはまるで空間が凍結したかのように止まっているままだ。

「そして時は動き出す…!」
 水晶片が踏切の外へと散ると、ケサランパサランを拘束していた時間の束縛が解かれたが、妖怪電車のヘッドランプが彼らを照らし出したのと同時にであった。妖怪電車と衝突したケサランパサランは水分を吸った重みも相まって、普段なら風と共に受け流すところが間に合わずに露と消える。
 妖怪電車が通り過ぎた後には、彼らを象っていた白い毛が幾つか散り散りとなって踏切の周囲を漂っていた。

「あんたら…自分達だけが安全だと勘違いしていない?」
 徐々に塵と化していくケサランパサランの残骸をキッと睨みつけ、劔は遮断器が上がった踏切を霧雨と共に渡り歩き出る。そして、その先で漂うケサランパサランを見つけ出すと、再び冷ややかな空気を纏わせながら彼らの元へ近づいていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

パルピ・ペルポル
風に舞うもふもふ…よいわね。
ルールは守ってもふもふしないとね。

自身の周囲に雨紡ぎの風糸を展開しておくわ。
で、線路に入らないよう気をつけつつケサランパサランと同じく風に乗って接近して糸で絡めて捕獲してもふり倒すわ。
気がすむまでもふったら線路にぽいするわ。無論もふ中も油断なく。近寄ってきたら捕獲して順番にもふもふするわ。
あとは踏切上がってるうちに空中にこっそり雨紡ぎの風糸を蜘蛛の巣状に展開しておいて引っ掛かるようにしておいてと。
頑張って電車来る前に抜け出してね、抜け出せるなら。

当然だけど現実世界でこんなことしちゃダメだからね。よいこも悪い子もまねしないでね。



『けさら~ん、ぱさら~ん』
 仲間が妖怪電車と衝突して霧散と消えた。骸魂が飲み込んだ妖怪は一体であるが、そこからポコポコと際限なく分裂したのがこのケサランパサランである。故に彼らは群にして個、個にして群。宙を舞う毛玉は互いに意思を共有しあい、一種の防衛本能から集まろうとしている。それぞれのケサランパサランがお互いにぶつかりあうと、融合して一回り大きな毛玉となる。その様子をフェアリーのパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は、うずうずとした様子で観察していた。

「風に舞うもふもふ…よいわね」
 白くてふわふわした毛玉、思わず飛びついてもふもふしたい衝動が彼女の中で沸き起こる。だが、それもケサランパサランがもたらすUCによるものだ。とりわけパルピのような妖精が飛びついたところで取って食うわけでもなく、もふもふな毛玉の中に引き寄せられることはならないが、妖怪電車が絶えず行き交っている閉鎖空間とも言える踏切迷宮内においては少々勝手が違ってくる。
 もふもふの魅力に目を奪われ飛びついても、彼らはふよふよと宙を漂うだろう。お互いに同化しあって居る中、仮にサンドイッチ状に板挟みになってしまえば脱出するのは困難となる。おまけにそれが踏切内で遮断器が下りえしまえば、ケサランパサラン共々彼女は妖怪電車と衝突することとなるのは明白だ。

「それなら、ルールは守ってもふもふしないとね」
 そうならないよう、パルピはある対策を講じた上でケサランパサランの毛玉に抱きついてモフり始める。彼女がモフっているケサランパサランが宙を漂いながら別のケサランパサランとぶつかろうとしたが、不思議なことにその毛玉はパルピよりも距離を離して静止したのだ。
 彼女は自身の周りに、蜘蛛の糸より細く柔軟性と強度を兼ね備えた透明な糸を張り巡らしていた。こうすることでケサランパサランがぶつかり合う心配がなくなり、心置きなくもふもふを堪能すべく顔をうずめた。

「……この子、飽きてきたなぁ。てぇい!」
 暫くケサランパサランをモフり続けていた彼女だったが、別のケサランパサランのモフり具合を確かめたくなれば掴み上げて踏切の中へと投げ込む。すると、毛玉は地面に叩きつけられること無く再び静止した。よく見るとここにも雨紡ぎの風糸がクモの巣状に張り巡らされており、ケサランパサランは引っかかったのだ。パルピは次のケサランパサランをモフってまた飽きてくれば投げ落とし、また別のケサランパサランをモフってはの繰り返しで、どんどんと線路上にケサランパサランが溜まって行った。

 ──カンカンカンカン。
 遮断器が下りる警告音がなり始めたが、ケサランパサランは張られた糸から抜け出せずにいる。そうしている内に遮断器が下りると、ゴウっとパルピの直ぐそばを妖怪電車が通り過ぎていく。警報機が鳴り止み遮断器が上がれば、先程溜まっていたケサランパサランは妖怪電車とぶつかり消えていた。

「当然だけど現実世界でこんなことしちゃダメだからね。よいこも悪い子もまねしないでね?」
 元々この迷宮内に漂うケサランパサランを退治してしに来ているのだ。彼女としては趣味と実益を兼ね備えた作戦であり、人差し指を立てながら誰かに向かってメッとするようにウィンクをしてみせる。そうして、再びケサランパサランをモフりながら退治していくために、踏切内に雨紡ぎの風糸による捕獲網を張り巡らせていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK


んー、直接の害がないと、緊迫感が無いなあ。
まあ、ほっといたら駄目なのは確かだし、何とかしようか。

さて、電車の起こす風に乗って飛んでるなら、
風を使えばこっちに引き寄せられそうだね。
竜の肺腑は暴風のブレスを吐くのに使うことが多いけど、
逆に言えばブレスと同じ勢いで息を吸い込むことも出来るんだよね。
【倍増変異】で肺の性能を上げて、ケサランパサランを吸い寄せようか。

手元まで吸い寄せたら、適当にかまってあげたあとぺしっと叩けば倒せるかな。
叩いて倒せないようなら、ふわふわに小石でも絡ませて踏切の中に放り込もう。

にしてもまあ、通り道が塞がれただけで甚大な被害が出るなんて、忙しないことだよ。


ティファーナ・テイル
SPDで判定
*アドリブ歓迎

「ムリ無い範囲で頑張るぞ!」
『スカイステッパー』を駆使して“踏切と妖怪電車を利用して戦い”縦横無尽に動き回りながら『神代世界の天空神』で敵の攻撃を空間飛翔して『天空神ノ威光・黄昏』で敵のUCを封印/弱体化させながら機会を見て『ガディスプリンセス・グラップルストライカー』と『超必殺究極奥義』で髪の毛/蛇尾脚/拳で敵の攻撃を受け弾き倒して、『ガディスプリンセス・レディース』で従属神群を召喚して『セクシィアップ・ガディスプリンセス』+『ガディス・ブースト・マキシマム』+『がディスプリンセス・セイクリッド』で♥ビーム/♥弾を駆使します!

「猟兵の皆!力を合わせて頑張ろう!」



『けさら~ん』
『ぱさら~ん』
 妖怪電車が行き交う度にケサランパサランが鳴き声をあげ、右へと左へふよふよと風に煽られて漂っている。

「んー、直接の害がないと、緊迫感が無いなあ」
 ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は、腕を組みながらどうしたものかと見上げている。現にケサランパサランは漂っているだけでこちらに襲いかかる気配はないが、強いて言えば転がるボールを追って道に飛び出せば車に轢かれるよう、迂闊に追って遮断器が下りようとしている踏切に入れば妖怪電車に轢かれてしまう程度だ。
 とは言え、無害そうに見えても彼らがこの踏切迷宮を作り出した張本人に他ならず、UDCアースの鉄道物流に実害が出ているのは事実でもある。彼らはUCでモフりたい衝動を与えてくるが、ここは心を鬼にして文字通りにひとつひとつ虱潰しをして行くしかない。

「いつまで考えてもしょうがないし、電車に轢かれないように闘神の本気とボクの勇姿を見せるよ!」
 そんなペトニアロトゥシカとは対象的に、ティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)は金色の翼を羽ばたかせながらスカイステッパーで跳び上がり、重々しい蛇身の尾を鞭に代わりにしてビュンビュンと振るっていく。

『けさぱさ~』
 幾つかのケサランパサランはティファーナの尾で薙ぎ払われ、ポンポンと小気味良い音とともに弾けて消えていく。だがなまじ数が多い分、薙ぎ払いで生じた風に乗ってケサランパサランが右往左往に散っていき、更には妖怪電車が作り出す風が彼らを集めては散らせるという有様だ。何とかして集めれば、途方も無い戦いになりそうである。

「む~。あいつら、一気に集まってしまえば一網打尽なのにぃ!」
 思うように倒していけないケサランパサランを睨みつけながら、ティファーナは彼らのように頬を膨らませている。そんな姿を見ながら、ペトニアロトゥシカはポリポリと頭を掻きながら彼女がこぼした言葉からあることを思いつかせた。

「あ~、そうか。電車の起こす風に乗って飛んでるなら、風を使えばこっちに引き寄せられそうだねぇ」
 ただ宙を漂うだけのケサランパサランは、風を利用して移動している。妖怪電車がただ走るだけで生み出される風や猟兵の攻撃によって生み出される風に煽られるのであれば、逆にその性質を利用してしまえということである。
 そうと分かればあとは行動に移すのみ。ペトニアロトゥシカは竜の肺腑により暴風のブレスを吐く要領で、自身の身体部位ひとつを倍化させるUC『倍増変異』により息を吸い込む。膨張していく肺で胸部を風船のように徐々に膨らませながら、際限なく吸い込まれる空気が彼女が吐きつけるブレスのような強い風を生み出して、ケサランパサランをこちら側に引き寄せる。

『けさら~ん、ぱさら~ん』
 だがそのように集められていく対策をしていてか、ケサランパサラン同士がぶつかり合うと合体し、倍々ゲームさながらに巨大化していく。それが巨大ケサランパサランとなった頃合いを見て、ペトニアロトゥシカは息を徐々に吐きながら膨らんだ身体を萎めませ、感触を確かめるように巨大な毛玉を両手で挟み込ませる。

(これは……癖になりそうだねぇ)
 ペトニアロトゥシカが力を込めると、もふんもふんと心地いい低反発性の弾力がする感触が返ってくる。このまま楽しんでもいいがこの感触であれば問題ないと見て彼女は両手を大きく左右に広げると、巨大ケサランパサランを挟んで勢いよく柏手を打った。

 ──パァァン!!
 風船が弾けるような破裂音とともに、巨大ケサランパサランが弾けて消えた。だが、骸魂に呑み込まれた妖怪の姿は何処にも見当たらない。この中には本体であるケサランパサランが居なかったということであろう。

「いいなぁいいなぁ。ボクもそれ、やりたい!」
「いいよぉ。じゃあ、次やる時にお願いするねぇ」
 無邪気に目を輝かせながらせがるティファーナに、ペトニアロトゥシカはのんびりとした口調で言葉を返す。辺りを見回したが、このエリアのケサランパサランは既に居ない。となれば、あの踏切を超えた先にも居るのだろう。

 ──カンカンカンカン。
 ふたりが渡ろうとした時、警報機が鳴り響いて踏切の遮断器が下りた。何処からともなく妖怪電車がやってくる。この電車は一体どこからやってきて、どこへと向かっているのか。
 ペトニアロトゥシカは電車の風で髪をなびかせながらぼんやり考えていると、いつの間に遮断器が上がったのか、ティファーナに手を引かれてながら踏切を渡っていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木常野・都月
ふわふわだ。
ふわふわがいる。
ケセラン…だっけ?
触ったらダメかな…
さりげなーく、触れないかな。
よしよし、怖くないぞ?おいでおいで…

運良く触れたら、ふわふわを堪能しよう。
ああ、丸くて…ボールみたいだ…可愛いな。コロコロしている。
1匹くらい家に連れ帰れたら、どんなにいいか。

なぁ、ケセランは、骸魂…オブリビオンなのか?
だってこんなに…ふわふわモコモコなんだ。

オブリビオンなら…仕方ない。
氷の精霊様、ケセラン達をお願いします。

固まったケセラン達を、線路にばら撒こう。
ごめんな。本当はこんな事したくないんだけどな。

電車が来る…。
骸魂が消えて、戦争が終わったら…一緒に遊ぼうな。

名残惜しみながら、電車を見送ろう。



(ふわふわだ。ふわふわがいる)
 たんぽぽの綿毛のように妖怪電車が織りなす風が吹くまま、あっちへ行ったりこっちへ行ったりする白毛玉。それに合わせて頭を上げながら木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は、杖を握り締めながら目で追っていた。

「ケセラン…ケサラン、だっけ? 触ったらダメかな…さりげなーく、触れないかな」
 都月がうずうずと狐耳を小刻みに動かしているのは、妖狐の中に僅かに流れる狐の狩猟本能でもあるが、この場合はもふりたいという欲求の飢えを満たそうとするものである。だが、空を漂うケサランパサランとそれを見上げる都月は、さながら美味しく実ったぶどうを取ろうと跳んでも届かない狐状態だ。けれども、それを面白おかしく人間臭くも書き表した寓話では狐はきっとあの葡萄はすっぱいのだと言い残して諦めたが、幸運とは得るものではなく授かるものでもあるケースもある。

 ──ビュウ。
 風の動きが突如変わった。複雑に織りなす線路を走る妖怪電車が起こす風が合わさりあって下向きに吹き抜けた。すると、ケサランパサランは風に乗って都月へと向かい始めてきたのだ。

「よしよし、怖くないぞ? おいでおいで…」
 杖を投げ出し、両手を広げながら交戦の意思がない事を都月は示していたが、ここに来て誤算が生じてきた。なにせ上空に漂っている時は小さいと思っていたケサランパサンが彼に近づくにつれて、徐々に一回りも二回りも大きくなりつつあるのだ。

「よしよし、怖くないぞ? おいでおいで………まさか、こんなに大きいだなんて」
 顔に出していなかったが、都月がそう思うのも無理はない。何せ人にどれ程大きいかったか身振り手振りで示そうとすれば、背伸びしながら両腕を伸ばして大げさながらに誇張しているように見えるのが真実な程であるのだから。

『けさら~~ん』
 まるで運動会の大玉ころがしにでも使われる大玉ぐらいあろうジャンボケサランパサランであったが、質量はそれほどないのか都月程の体格でも十分に受け止めれ、なおかつふわふわな毛に身体の半分が埋もれてしまう。

「すごく……もふもふしてる。お日様の匂いもして……。なぁ、ケサランは、本当に骸魂…オブリビオンなのか? だってこんなに…ふわふわモコモコなんだ」
 妖怪にしろ精霊にしろ、悪い事を働く奴が居れば無害に近い者も居る。ケサランパサランは後者の方だろうが、何れにせよこの踏切迷宮を生み出した骸魂に他ならない。

(1匹くらい家に連れ帰れたら、どんなにいいか)
 当初は退治する気構えでゲートを潜った都月も、人をダメにしてしまいそうなもふもふを前にすると決心がゆらぎ始めてくる。暫く時が流れ、拳を震わせながら彼は決心した。

「オブリビオンなら…仕方ない」
 そう自身に言い聞かせながら、名残惜しそうにジャンボケサランパサランから離れて杖を拾い上げる。

『けさけさ~?』
 くりくりとしたつぶらな瞳で都月を見つめる白い毛玉の誘惑を振り払いながら、彼は祈りだした。

「……氷の精霊様、ケセラン達をお願いします」
 周囲の気温が急激に冷え始めてくるのが分かる。妖怪電車が風を切りながらレールを軋ませる音に混ざって、何かがぶつかり合う音が空間内に響き渡り始めた。上空に漂う小さなケサランパサランが氷漬けとなって、雹のようになりながらザッと降り始めた。その小気味の良くも何処か罪悪感を感じてしまう音とともに、目の前のジャンボケサランパサランも次第に氷漬けとなっていく。

(あとは、これも線路にまで運んで……)
 目の前の踏切まで押そうと都月は冷ややかな氷に手を添えた。

『けさら~ん、ぱさら~ん』
 しかし、ケサランパサランの無邪気な鳴き声が力を緩めようとしてくる。

「……ごめんね」
 謝りながらも彼は心を鬼にして、ケサランパサランを踏切の中心にまで押し運び終えると同時に妖怪電車の接近を告げる警告音が両側より鳴り響く。急いで踏切から出ると遮断器が降りる。そして、ケサランパサランはシャボン玉が弾けて消えるかのように、都月の目の前から居なくなり、ただただ妖怪電車の車列だけが走り抜けるだけだった。警告音が鳴り止んで遮断器が上がれば、そこには妖怪電車もケサランパサランも居ない踏切があるだけであった。

「……ひどいこと、したかな」
『ケケケ、大当たりぃ~~!』
 どこかやるせない気持ちが都月にこみ上げる中、上空より陽気な声がした。ハッとして見えあげると、そこにはまりものような大きさで球形の茶色い毛玉な妖怪が、両側より生えた翼を羽ばたかせて飛んでいる。

「君はもしかして、あのケサランパサランの?」
『おうよ。骸魂を取り込んで白い毛玉になった、妖怪ニタッラサンペってんだ。骸魂の本体だったオレ様が元の姿になれば、分身体も自然消滅していくぜ』
「……確かに、妖気が薄くなって、ケサランパサランも電車も消えていっている」
 ニタッラサンペと名乗った妖怪が示すように、上空をまだ漂っているケサランパサランも、踏切迷宮を右往左往している妖怪電車も何処か行ってしまったかのように周囲は静まりかえようとしていた。

『んじゃ、オレサマはこのまま妖怪電車に乗ってカクリヨに帰るぜ。世話かけたな』
「あっ…待って。その、骸魂が消えて、戦争が終わったら…一緒に遊ぼうな」
『ケケケ、おうよ。そん時はよろしくな』

 ──カンカンカンカン。
 再び妖怪電車が踏切を通るけたたましい警告音が鳴り響く。ニタッラサンペは別れの言葉を残すと、吸い込まれるように妖怪電車の空いた窓に飛び入る。平和になったカクリヨファンタズムで再会する約束を交わした妖怪を乗せた最終便の後ろ姿を、都月は名残惜しみながらも妖怪電車が見えなくなるまで見送るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月14日


挿絵イラスト