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雪中夜話

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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 如月の越後と言えば、家々が埋もれるほどに雪深い季節だ。行商や飛脚の往来が雪でしばらく止まることも珍しくない。そのため外から、あるいは内からの連絡が絶え孤立しやすい時期を狙い、そこでよからぬ企てを進めようという発想は自然のなりゆきかもしれなかった。
 そして人家の気配もうすい山中なら、なおさらの事。
 強い雪にふりこめられた廃城で、ひたひたとヒトならぬものの数が増えはじめていることを麓の住民はまだ知らない。

●雪中夜話
 雪中行軍というやつだけど、と水衛・巽(鬼祓・f01428)はごく端的に話を切り出した。
「サムライエンパイアの長岡藩、今で言うちょうど新潟市あたり――その山間部にある廃城にオブリビオンが棲みついたようなの」
 巽が軽く右手を振ってグリモアを回転させると、その背後へ深い雪に埋もれた山々が浮かびあがる。
 廃城と言うだけあって、件の拠点は火災の痕跡が色濃かったり石垣が一部崩れている部分も見受けられた。しかし遠目にも、かがり火を焚き歩哨が歩いているのがわかる。
「さいわい冬ということもあって、まだ麓の村や他の地域に勢力を広げようという気配はないわ。春を待たせてやる義理もないし、今のうちに対処してほしい」
 廃城に潜入し配下の餓鬼の群れを一掃したのち、首魁の鬼銃葬者を討ち取る――作戦の流れはとてもシンプルだ。
「決行は、雪が弱まる夜。――朝にはすべて終わっているように、頼むわね」


佐伯都
 こんにちは、佐伯都です。
 それではさくっと以下補足およびおさらいです。

●第一章に関して
 城門外から廃城内部に侵入するまでを扱い、ここで戦闘は発生しません(戦闘は第二章から)。廃城の見取り図は把握している前提でプレイングをかけて下さって大丈夫です。要するに『超かっこよく塀や堀や城門を突破』しましょう、という事です。

●第二・第三章に関して
 戦闘が発生し、敵オブリビオンのユーベルコード一覧や外見が参照できます。
 章移行時に一度状況説明をはさみますので、そちらをご確認のうえプレイングをかけていただくのがおすすめです(移行後、状況説明が出るまでタイムラグがある場合があります)。

●そのほか、夜間の作戦となりますが雪明かりがあるので光源は必要ありません。第二章以降も建物内部ですのでやはり光源は不要です。

 成功条件は『第三章ボス・鬼銃葬者』の撃破。

 それでは皆様の熱いプレイング、お待ちしております。
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第1章 冒険 『大雪の里』

POW   :    筋力を活かして対策する

SPD   :    素早さを活かして対策する

WIZ   :    知力を活かして対策する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マユラ・エリアル
ううむ背筋の凍るような雪中進軍
まあ寒さには強いがモコモコ着込みたくはあるな…
動き辛いから普通にするが

【WIZ】を利用
見取り図から隠れる場所の多そうな所を予想し、そこから潜入
白の衣装を着て雪に紛れるように【変装】して行動する
城外で少し距離を取り、双眼鏡で歩哨の動きを観測
ある程度パターンが掴めたら隙が出来ないか考え、隙が出来るタイミングにササっと近づいて鉤爪で塀をよじ登ろう
なるべく音を立てないように慎重に動こう

コソコソするのは好きじゃあないんだがな
まあ真っ直ぐ突っ込んで面倒な事になっても困るしな

●アドリブ等歓迎


佐之上・権左衛門
力業で強引にやってもいいんだけど、どうせならスタイリッシュ?に。
という訳でUC【常人ではあり得ない多段ジャンプ】で 放物線状に軽やかなジャンプで障害物を乗り越えて侵入しようか。
「さーて、いっちょいきましょうかね~」
併用出来るなら「ロープワーク・空中戦・目立たない」、「聞き耳・第六感」をフル活用して手薄な場所を探してみる(アドリブ・絡みばっちこーい)


三岐・未夜
……わ。廃城って思ってたよりおっきい。
壁高い……堀も深い……。
んー……うん、無理。

単身突破をあっさり諦めて、儚火を喚び出すことにする。
あの巨大な狐なら、主人よりもずっと身体能力が高い。
塀も堀も。難なく越えてくれるだろう。

おいで、儚火!
こっそりあの中に行くんだよ、任せた。
見取り図と共に【第六感】で越えるに良さそうな場所を探して、あとは儚火にお任せ。背に乗って、力強く地を蹴って塀も堀も飛び越えて行くよ。

ていうかさっっむい、真冬の新潟とか無理ほんと無理……儚火もふもふあったかい……。うー……早く終わらせて団地帰りたい……。



 ぶつ切れになった厚い雲が、はやい速度で星空を横切っている。雪雲の切れ間から月がのぞき、雪深い斜面に散開した猟兵達の姿を照らし出した。ある者は用心深く着込み、ある者は機動性を重視しあえていつも通りの軽装で。
 あらかじめ白色の装備で身を包んだうえで双眼鏡を覗いていたマユラ・エリアル(氷刃の行方・f01439)が、ふっと短く息を吐いた。強風と言うほどの風ではないが、さりとて無風でもないので吐息もすぐに散らされる。
 ある程度の風は出ていたほうが好都合だ。そのほうが硝煙が残りにくいし、侵入側にとってはごまかしの種もふえる。双眼鏡をおろし小さく呟いた。
「……コソコソするのは好きじゃあないんだがな」
 マユラは城壁の上を一定間隔で行きつ戻りつしていた歩哨の行動パターンを読んでいた。真冬の夜間なだけに暖を取るのか、あるいはごく単純に見張りに飽きただけかもしれないが、数回往復したのち歩哨はしばらく中座している。中座の時間はまちまちだったが、おおよそ五往復から七往復のあと、というパターンだった。
 よし、と胸の内で己に呟いてから、深い雪に溶けこむ色の外套を払い冬枯れの立ち木の陰から一歩踏み出す。
 まっすぐ突っ込んでいって面倒なことになっても本末転倒だ。もし陽動を狙う他の猟兵がいるとしたなら最初からそちらに任せてしまったほうがよいし、マユラ自身忍び込みを狙うつもりでもあったので方針に変更はない。
 時間をかけて、しかし時間をかけ過ぎぬよう慎重に雪へ脚をおろしてマユラは城壁までの距離を詰める。肩越しに振り返れば、他の猟兵達もまたそれぞれにスタートをきるタイミングを計っているようだった。
 誰ともなく、申し合わせた開幕の一言すらもなく。それでも猟兵達に不都合は何一つ起こらない。
 それまで物音に細心の注意を払っていたはずのマユラが放たれた矢のごとく走り出し、その次に佐之上・権左衛門(トレンチコートなバーバリアン・f00239)が動いた。すでに廃城の構造は判明しており、物陰が期待できる箇所はもちろん階段や廊下、行き止まりや床下への侵入経路もすべて把握できている。
 キャメル色のトレンチコートを大きく翻して、権左衛門が白銀の雪の表面を蹴りつけた。がさりと大きな音を立てるかと思われたその一歩は、しかし、宙を放物線状に駆けあがる跳躍へあざやかに変化する。
 ふッ、と鋭く息を吐いて戦場傭兵は末端に分銅を結わえたロープを投げた。
 歩哨が権左衛門へ完全に背を向けている数瞬、その間隙をついて分銅は煤けた甍の端をとらえる。滞空したまま、権左衛門は目指す地点へ力強くロープを引き寄せた。びょう、と雪を巻き上げ一瞬吹き渡った風の音に、ごくわずかな着地音もかき消される。
「おいで、儚火!」
 権左衛門が一気に廃城の一階屋根へ飛び移ったのを見届け、三岐・未夜(かさぶた・f00134)は相棒たる儚火を召喚した。雪上で黒狐の姿はひどく目立つだろうが、その背景がもし夜空であったなら話は変わる。
 見取り図はすでに未夜の頭の中にあったが、実際目にするとそれは存外大きなしろものだった。やすやすと登れぬ程度に城壁は高く堀も深い。戦国時代を経て使われなくなったという経緯を考えれば、おそらくは長岡城を守る支城のうちのひとつだったのだろうと想像できる。すなわち、激しい攻防を繰り広げるのを前提に築かれた山城だ。
 権左衛門のように多段ジャンプができれば話は早かったかもしれないが、未夜にそのたぐいの武器はない。しかし、儚火という心強い相棒ならばいる。それこそ城壁どころか、それよりも高い障害を難なく共に越えられると信じる相棒なら。
「こっそりあの中に行くんだよ、任せた」
 儚火の背に乗り、勘が導くままに走らせる。
「って言うかさっむい……! 真冬の新潟とか無理ほんと無理……!!」
 未夜の泣き言が聞こえているのかいないのか、儚火はぽつりと先だけが白い尾を引いて、松の木立を縫うように駆けた。マユラや権左衛門が消えていった廃城の側面を回り込み、石垣が大きく崩れている北側へと向かう。
 歩哨が掲げる松明の動きを横目に、未夜はすべて儚火に任せた。振り落とされぬよう漆黒の毛並みにしがみつき、その背に低く伏せる。ぐんと儚火が速度を上げて全力疾走に入った。物凄い勢いで両側を流れていく木々。その流れが途絶えて、ふっ、と重力が消えたような錯覚を覚える。
 未夜は儚火と共に宙空にいた。高く高く跳躍した儚火の黒い毛並みは夜空に溶け、歩哨の目にはとまらない。
 夢の中のような緩慢な落下の着地点は、廃城二階部分の庇。ゆうらりと尾をそよがせてやや得意気に振り返った儚火を、未夜は感謝をこめてひとつ撫でてやる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

シェーラ・ミレディ
廃城に潜入してオブリビオンを倒せばいいのだな?
成程、シンプルな話は嫌いではないぞ。
願わくば、金銀財宝を溜め込んでいて欲しいものだが……望みは薄そうだなぁ……。

歩哨の動きを観察し、行動パターンを把握。後に巡回の隙間を縫って潜入、といった所か。
必要なら「双宿双飛」で、空を蹴って歩哨の頭上を飛び越えるぞ。堀や塀も同様だ。
全く、この程度で僕を止められるはずがないだろう?

万が一にも見つかったなら、先制攻撃&クイックドロウだ。死体は手早く雪でも被せて隠してしまえば、少しは発見が遅れるだろう。
……とはいえ、銃声はどうしようもない。秘密裏に行動できればそれがベストだな。


水沢・北斗
知ってます?
一応私、サムライエンパイアの生まれなんですよね。
ていっても自我を得たのがってハナシであって製造は違う世界ですけど。
(城壁周囲に潜みつつ侵入ポイントを探しながら。なお独り言)

さて、どこまでいけるかはともかく初撃までは見つかりたくないんですよねー。
まず頭の中の見取り図と篝火を参考に歩哨がいなそうな城壁を見繕います。
で、後は割と簡単です。投げナイフ”アストラ”を数本壁に射ち込んだらそれを足場にして颯爽と城壁の上に。
ほら簡単!
技能:ダッシュ、ジャンプ、鎧無視攻撃

後は城壁から降りて出来るだけ暗がりを選びながら進んでいくだけですね!
あ……この前補充したアストラまた使い捨てちゃった!


笹鳴・硝子
【SPD】
UDC『晶』を召喚して騎乗
廃城の様子を探るように、距離を置いて山中をぐるりをめぐる(目立たない・迷彩)
歩哨が歩いているのはしっているけれど、こちらにもコースの良し悪しがあるのだ
「行けそうか、『晶』?」
『もっちろん!でもせっかくなら思いっきり走りたいなあ』
つまりは、障害物(岩とか木とか)が少ないコース、というわけだ
『おねえちゃん!ここがいい!』
「冬はバイクもお前も寒くて困りものですね。まあいいでしょう」
『いっくよー!!』
宵闇に光る金目の残像を残しながら山肌を滑るように駆け下りた【ざわつく影の獣の仔】『晶』は、雪を蹴り、廃城の石垣を飛び越える



 行けそうか、と尋ねた笹鳴・硝子(帰り花・f01239)に『晶』からひそやかな返答が帰ってきた。答えは是、なおかつ思いきり走ることのできる経路を無邪気に所望してきた獣の仔に、硝子は小さな溜息を吐く。
 歩哨が歩いている城壁を避けるのはまあいい。しかし、冬の山中でどこまでその希望を叶えられるかどうかは怪しいものだった。さきほど漆黒の毛並みの騎獣が主の猟兵と共に消えていった北側なら、山肌の傾斜もあわせ所望された内容に近いかもしれない。
「どこまでいけるかはともかく、できれば初撃までは見つかりたくないんですよねー……」
「その時はその時、万が一発見されたとしてもその時点で先制攻撃かつクイックドロウだ。地の利はあちらにあるかも知れないが、こちらもすでに内部は把握済み。そうそう不利なわけでもない」
 先行して廃城に潜入した猟兵達の手並みを見ていた水沢・北斗(ヤドリガミのアーチャー・f05072)に、シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は泰然と答えた。晶の希望をかなえるためそのまま廃城を北側へ回り込んでいく硝子の背中を見送ってから、北斗はアストラを取り出してウォーミングアップも兼ねた軽いお手玉を始める。
「要は潜入してオブリビオンを倒す、それだけだ。願わくば、金銀財宝を溜め込んでいて欲しいものだが」
 そこにはシェーラ自身の事情からくる個人的な願望も混ぜこんであったが、廃城の様子をあらためて眺めやったあと盛大な溜息が漏れた。一応の体裁を保つためだろうか、補修の跡が見受けられる箇所はいくつかあるものの、大きく損壊したような箇所はほとんどそのままに捨て置かれている。
 もちろん存在を嗅ぎ取られぬよう、無人の廃城と思わせるために放置しているという可能性もあるが、どちらかといえばそこまで考えてと言うよりも単純に、補修にかける時間が惜しいとか資材が惜しいとか、そういう空気感が見て取れた。
「……まあ、その望みは薄そうだな」
「薄いですよねー」
 苦笑した北斗は高く投げあげたアストラを、器用にすべて刃の部分でとらえる。城壁へ向ける視線の温度が下がったことを察し、シェーラは軽く目礼を送ってそのまま数歩離れた。これはと思う箇所を見つけたのだろう。
 シェーラが立ち止まるのを横目に、北斗は軽く右手を挙げてから冬枯れの立ち木の中を廃城へ向かって進む。歩哨に見咎められるそのぎりぎりまで近付いて、そしてゆっくりとアストラを構えた。
 城壁の上から歩哨の姿が消え監視が手薄になる瞬間を狙い、北斗は両手の指間に挟んだアストラを8本同時に投擲する。しかし、ナイフが石垣の隙間に突き立つ高い音は8よりずっと少ない。
 音が消せないのなら、その数を減らせばよい。北斗の投擲技術のほどを証明する手並みの鮮やかさに、シェーラは目を細めた。
「――ほら簡単。それじゃ、お先に失礼」
 右手を目元へかざし、石垣へ突き立てたナイフを足場に颯爽と城壁の上へ消えていく北斗の背をそのまま見送る。
 そろそろ自分も取りかかるか、とシェーラはおもむろにひとつ、歩を進めた。
 使うことのできる数は21歩。ここから城壁までの距離を眺めるかぎり、十分足りている。歩哨の巡回の間を縫って潜入することも考えていたが、ここは手っ取り早く双宿双飛で飛び越えてしまったほうがよさそうだ。なにしろ城門のほうに残っている猟兵が動く気配を見せていないので。
「まったく、この程度で僕を止められるはずがないだろう?」
 独り呟いて、シェーラは歩哨の往復が終わるのを待つ。北斗と同じく、城壁上から歩哨の姿が消えたのを確認して、木立の中から飛び出した。姿を隠す木々がなくなるその瞬間、なにもない宙空を蹴って高く跳ぶ。
 7歩で城壁の上を越え、石垣の陰にこちらへ背を向けた歩哨の姿を見つけさらに蹴る。9歩目で櫓の屋根近くまで到達し、シェーラはそこに無事着地した。
 晶を伴い廃城の北側に回っていた硝子は、そんな二人の様子を眺めて目を細める。折しも、おねえちゃんここがいい、とやや好みの激しい獣の仔がさかんに主張していた。ざわつく影で構成されている獣の身体が、やや興奮気味に揺らいでいる。
 廃城の北側は、そのまま御神楽岳に続いている。山城として築かれたとはいえ急峻な斜面は天然の要害といえるので、深さのある堀は見当たらないばかりか、申し訳程度の石垣も崩れたまま。
 さすがに直線は狙えないものの、雪深い斜面の角度は晶の満足のいくものだったようだ。
「冬はバイクもお前も寒くて困りものですね。……まあ、ここでいいでしょう」
 さすがに廃城の主も、御神楽岳を越えて誰かがやってくるなど思いもしていないはずだ。
 いっくよー、とひどく楽しげに影色の獣が一声咆哮する。晶が疾走をはじめたその瞬間、廃城の城門前から大きな爆発音と赤い火球が炸裂するのが見えた。
 丁度良い。歩哨や主の目がそちらに向いて好都合だ。構わない、そのまま、と硝子は小さく呟いて姿勢を低くする。すばらしい速度で晶は雪山の斜面を滑り降りるように駆け抜け、そして台のように突き出していた岩盤を蹴った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

壥・灰色
巽が言うから来たけど……
いや、寒いな。本当に

おれはどうにも隠密行動にはあんまり向いてない
なので、真正面からいこう。寒いし

壊鍵、炎殺式
起動

周囲に炎の弾丸を浮かべ、煌々と自身を照らしながら
(というか暖まり、周りの雪を溶かしながら)
真正面から近づく。当然歩哨がこっちに来るだろうし、騒ぎが起こるだろう
織り込み済みだ
敵が気付き、様子を見出したら、不意を突いて吶喊する

正門を破壊しそのまま通過の狙い
周囲に浮かべた炎弾
多分百二十発ぐらいかな
一斉射撃
再詠唱
一斉射撃
二百四十発が城門に殺到するだろう
必要ならもう一遍ブチかましてやる

どいてもらうよ
用があるのは、中なんだ。……あと、寒いし。暖房効いた部屋の中が恋しいんだ


花剣・耀子
雪中行軍。雪中……。
……ええ、まあ。行くわ。行くけれども。
この積雪だとはしゃぐレベルは超えているわよね。知ってる。

寒いのは然程好きではないのよ。
手早く終わらすか温まるかのどちらかが良いわ。
最短距離で向かいましょう。

そもそも城は攻めづらいものだけれど、廃城というのは幸いね。
堀はまっすぐ、鋼糸を張って飛ぶように。
門もその要領で抜けられたなら早いとは思うのだけれど、
やってきている猟兵は他にも居るもの。
通り道は開けて損する事は無いわね。
綻びがあるなら、それを起点に斬りましょう。

それで敵が寄せられたって、相対が遅いか早いかの違いでしかないのよ。
あたしは手早く終わらせたいし温まりたい。
派手に征きましょう。



 葉を落とした木立の中、花剣・耀子(Tempest・f12822)と壥・灰色(ゴーストノート・f00067)は何かを待っている。すでに周囲にほかの猟兵の気配はなく、思い思いにそれぞれ散ってしまっていた。
「……寒いのは然程好きではないのよ」
「――奇遇だね。おれもあまり好きではないよ」
 やや平坦に呟いた耀子に、これまたあまり抑揚のない声で灰色が応じる。
 二人が見据えているのは廃城の城門。さすがにここだけは無修復とは行かなかったのだろう、急拵えではあるがしっかりと鉄板の補強が入った扉が据え付けてある。
 びょう、と雪原の表層の雪を巻き上げて風が渡った。ぶつ切れの雲が月光を時折遮っていくせいで、廃城に薄い影が通っていく。
「……友達に言われたから来たけど、いや、寒い。本当に」
「……ええ、そうね。この積雪だとはしゃぐレベルを超えているわね。いえ知っていたけど」
 灰色の言う友人なる人物が耀子もまた知る人物であることは、お互い知っていたかどうなのか。それを差し引いても、寒さに対する意見がよく共通していることに灰色と耀子は気付きはじめている。曰く似たもの同士というやつだ。
 びょう、びょう、と雪国の容赦ない風が吹きつける。どちらからともなく無言のまま、横目で視線を交わした。
「できれば手早く終わらすか、暖まるかのどちらかが良いわ」
「いいね。暖房効いた部屋が恋しくなってきた所だ」
 意見が完全に一致したところで、灰色は無造作に脚を踏み出した。ぶわりと粉雪を巻きあげた風が足音をさらっていく。
 そもそも城は攻めにくいものだが、廃城というのは幸いだと耀子は考えていた。往時の備えをされていればこの人数で落とせるようなしろものではないはずだが、防備の崩れた今は相当に与しやすい。
「おれはどうにも、隠密行動にあんまり向いていない。なので、真正面からいこう」
「それで構わないわ。最短距離で向かいましょう」
 じりりと灰色の周囲に純粋な熱が凝りはじめたのを見届け、耀子は懐から鋼糸を抜く。
 壊鍵、炎殺式――と。そう声もなく吐いた息が真横に吹きすさぶ。
 青白い月をまたひとつ、雲が横切った。起動の意志が血液じみて魔術回路を流れ、灰色の周囲に炎の弾丸を具現化する。ひとつ、みっつ、ななつ、――たくさん。
「派手に征きましょう。それで敵が寄せられたって、相対が遅いか早いかの違いでしかないわ」
「同意しかないね。必要なら何度でもブチかましてやるさ」
 突然、冬枯れの木立の中に数多の炎が浮き上がったことに気付いた歩哨は何人いただろう。百を越える炎の弾丸を引き連れ、灰色は悠然と木立を抜けた。城門の横の狭間(さま)へ最初に顔を出した歩哨めがけ、一斉射撃を仕掛ける。
 爆音と一緒に城門を包んで膨れあがる赤い火球。ぶわりと熱い爆風を受け、耀子は目を細めた。やってきている猟兵は耀子と灰色、その他にもいる。通り道は開けておいて損をすることはないし、ここで目を惹くことができれば先に潜入した猟兵の仕事がやりやすくなることも間違いない。
 綻びがあるならそれを起点に斬ればよい。堀にかかる小さな橋ごと爆炎で吹き飛んだ城門の向こう、歩哨である餓鬼の群れが恐れ戦いて座り込み、あるいは焼け焦げて倒れているのが見えた。
 鋼糸を引きだし、一気に攻め込むべく耀子は城門――否、今となっては城門跡となった場所へ駆け出す。手前の堀は鋼糸を張って飛び越えればよいだろう。
「――どいてもらうよ。用があるのは、中なんだ」
 ひたすらに平坦な灰色の声音が耀子の背中を追いかけてきた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『餓鬼』

POW   :    共喰い
戦闘中に食べた【弱った仲間の身体の一部】の量と質に応じて【自身の傷が癒え】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    飢餓の極地
【究極の飢餓状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    満たされぬ満腹感
予め【腹を空かせておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 夜陰に乗じて突然城門をぶち破ってきた襲撃者に対し、城内は騒然としている。ともかく城門から乗り込んできた襲撃者を排除せよと檄が飛び、歩哨である餓鬼はそこを目指して廊下や階段に殺到しているありさまだった。
 指揮を執っているだろう城の主、『鬼銃葬者』の居場所はまだわからない。しかしこの状況で廃城を抜け出すことは不可能に近かった。もちろん、襲撃者が城門を襲ったごくわずかな人数であるという思い込みも、鬼銃葬者の逃走を妨げる遠因の一つにあがる。
 実際はひたひたとその首を狙う刃が集まりつつあるということも、鬼銃葬者はまだ知らない。
 雪深い廃城を舞台に、猟兵達の本領が始まろうとしている。
 さあ、狩りの時間だ、と。
マユラ・エリアル
さてと、騒がしくしてくれた奴がいたお陰で楽に仕事をこなせそうだな
蹂躙させてもらおうか
油断はせん、手を煩わせてくれるなよ

●戦闘
in vitro worldの宝珠に魔力を込め氷の力を集める
『全力魔法』『属性攻撃』で【氷塊召喚】をブーストして発動
複数の敵が固まっている場所目掛けて氷塊を投擲
狙うのは地形、こちらの有利な戦場を作らせて貰うぞ?

氷で覆われた戦場を右手の鉤爪で駆ける
『力溜め』で一撃を重く、鉤爪で餓鬼を切り裂く
『2回攻撃』『なぎ払い』を用いて周囲の敵を一気に殲滅しよう
さあ鬼共よ、理想世界の名に溺れ再び過去に還るがいい!

●アドリブ・絡み等歓迎


佐之上・権左衛門
【POW 】(アドリブ・絡み歓迎)餓鬼・・・ならせめてもの慈悲とは言わんがこれを使わせて貰おう。
 UC 【あんぱん爆弾】を生成させ、群れの中に投げ込む。
まさか食い物が爆弾になってるとは思うまいて。
生き残ってるのがいたら愛用の斧で【範囲攻撃・2回攻撃・怪力・なぎ払い・気合い・衝撃波・吹き飛ばし】でまとめてフルスイング。
回避は【残像・第六感・武器受け・盾受け】で。



 【in vitro world】の宝珠に魔力を込めつつ、マユラが薄暗い廊下の先を伺っている。
「騒がしくしてくれた奴のおかげで楽に仕事ができそうだな」
「……どっか崩れなきゃいいんだが」
 ホラ耐震基準とかこう、色々ない時代だろうし。
 知らず知らずにガタが来ていそうな廃城だけに権左衛門は諸手で喜べないらしい。コートの裾に残っていた雪を落としながらぼそぼそ呟く権左衛門に、マユラは片頬だけで笑う笑い方をした。
「崩れたら崩れたで、そこに敵を巻き込むか、さっさと逃げればいい。城の保全は依頼のうちに入っていないだろう?」
「そりゃまあそうなんだが」
 城門へ向かう廊下は押すな押すなの大騒ぎで、指揮系統はずいぶん大雑把なものという事情が透けて見える。そこへさらに上階から降りてきた餓鬼の群れが加わるものだから、いつ将棋倒しが発生してもおかしくない。
 それはそれで足止めする必要がなくなるから好都合、とマユラはまったく表情を変えずに、いい感じに魔力が練り上がってきた宝珠をためつすがめつする。ちらりと権左衛門を見ると、マユラ同様、幅広の片刃斧を手に餓鬼でごった返す廊下を眺めているようだった。
 どちらからともなく、一呼吸ぶんを計る。
 その終わりに権左衛門が餓鬼の群れへスタートをきった。同時に、マユラは【氷塊召喚】を発動する。瞬時に手の中に転がり込んだ氷塊を投擲すると、何体かの餓鬼を道連れに、一瞬で見渡す限りの床が氷に覆われていった。
 走り来る権左衛門の足音に気付いた餓鬼が振り返っても、次の瞬間には首と胴が泣き別れにされる。片刃の斧を権左衛門が振りぬくごとに、ばっさばっさと餓鬼の首が飛んだ。
 二人の猟兵の存在をどこかに知らせようとしたのだろうか、指笛を鳴らそうとしたものもマユラの巨大なガントレットによって吹き飛ぶ。
「まさか食い物が爆弾になってるとは思うまいて」
 やや悪い顔で笑いながら、権左衛門は大混乱に陥った餓鬼の真ん中めがけ――どこからどう見てもあんぱんにしか見えないいくつもの何か、を投げ込んだ。
 互いに互いを喰らい合うほど飢えているだけに、権左衛門のあんぱんにしか見えない何か、は彼等の食欲をいたく刺激したらしい。逃げることさえ中断して、香ばしそうに茶色に焼けたソレへ手を伸ばす。
 瞬間、どこからどう見てもあんぱんにしか見えない爆弾が、餓鬼の群れのただ中で爆発した。爆発から幸運にも逃れることができたものも、権左衛門の斧が丁寧に拾って袈裟斬りにしていく。
「そらよっ!!」
 衝撃波を伴ったフルスイングで、我先にと逃げだそうとしていた餓鬼が引き倒され、さらに凶悪なほど鋭い鉤爪の餌食となる。
「さあ鬼共よ、理想世界の名に溺れ再び過去に還るがいい!」
 マユラ渾身の薙ぎはらいと権左衛門のあんぱん爆弾で、城門へ向かおうとしていた餓鬼はあっという間に一掃されつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
うまく潜り込めたが、随分城門が騒がしいな。
……ふむ、お仲間の陽動か。ならば便乗させてもらうとしよう。

物陰に隠れて敵をやり過ごしつつ、城門付近へ移動。
合流するまでは目立つのは得策ではないだろう。

到着したら密集した敵めがけ、背後から【華燭之典】の大盤振る舞いだ。
4丁の銃を次々に撃ち、反動で放り投げて腰と太腿のガンホルダーでキャッチ、また撃つといった曲芸じみた技を披露する。
腹が減っているのだろう? 遠慮はするな、馳走してやろう!

集団戦なので、敵に囲まれないよう注意。
周囲の状況に気を配りつつ、撃ちながら動き回るぞ。
ついでに味方の援護もできるようならやっておく。
同業者に恩を売っておいて損はないからな!



 お仲間の陽動か、とシェーラは城門方向が妙に明るく、そして騒がしいことに気付く。
 騒ぎを起こせば城内に潜入済みの猟兵の助けになるのは間違いない。しかし歩哨を含め城内の戦力が城門方向へ集中することもまた事実だった。
 しかしまあ、同業者に恩を売っておいて損はないだろうとシェーラは考える。この状況でかりそめの城主であるオブリビオンが自ら動く気になるかどうかはさておき、ただ餓鬼が釣り出されたのならまだしも、そこで掃討されたとなれば腰を上げざるを得なくなるのはまちがいない。
 ある程度の距離を保ちつつ物陰に隠れて餓鬼を追い、シェーラはうすく笑った。
 城の建物内部から城門方向へ向かう戸は、押すな押すなの大騒ぎになっている。さしずめ甘い物にたかるアリか何かだろうか。
 腰と太腿のホルダーから銃を抜き、シェーラは狙いを定める。
 金属音を聞きつけたのか餓鬼が一体、振り向いた。味方へ何かを警告するように開けた口の真ん中へ、【花鳥風月】と【千紫万紅】の弾丸が突き刺さる。
「遠慮するな、ささやかな馳走だ――腹が減っているのだろう?」
 そのまま投げ上げてさらにホルスターから【花紅柳緑】に【雪月風花】も抜いた。曲芸のように、投げ上げてはホルスターで受け、抜いて、を繰り返す。
「遠慮するなと言うのに」
 城門を前に、背後から襲われる形になった餓鬼達が混乱に陥ったのは無理ない事だったかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔴​

水沢・北斗
【笹鳴f01239、三岐f00134と合流して】

硝子さん、何でいるんです??
てゆかさっき気が付かなかったんですか???

だって……ねぇ?その大きい黒いので城壁飛び越えるとか普通に目立ちそうですし?
それなら硝子さんには囮になってもらってその隙に安全に……。
あ、当然無事は祈ってましたけど!

まぁ合流しちゃったものは仕方ないです。
いつも通り援護するので適当に暴れながら上を目指しましょう!
(弓を取り出しつつ)
技能:スナイパー、鎧無視攻撃、2回攻撃、誘導弾、援護射撃、範囲攻撃
『徹甲、炸裂、誘導の三術式を添付。目標、進路上の餓鬼……硝子さん、巻き込まれないで下さいねー!』

*なお三岐がいる事はまだ知らない(はず


三岐・未夜
【笹鳴・硝子、水沢・北斗と合流】

儚火を還して、二階の庇から下を見る。
……なんか、知ってる顔いない?
多分、一瞬見えたアレは「晶」だ。
つまり、硝子が来てる。
……もしかして北斗もいたりして。
あ、ふたりともいた。

まあいいや。
ふたりとも僕に気付いてないみたいだし、上から援護射撃でもしようかな。
火矢を【属性攻撃】で強化して、【操縦、誘導弾、援護射撃、範囲攻撃】でふたりの手助けをするよ。
僕の方に敵が寄って来たら火矢の一部を僕の防衛に使用。
【誘惑、催眠術、おびき寄せ、時間稼ぎ、フェイント】で敵を火矢の方に引き寄せて、【操縦】で誘導して隙を作るよ。
僕自身は【見切り、第六感】で避けられるだけ避けるつもり。


笹鳴・硝子
北斗ちゃん(f05072)みゃー(f00134)と合流


城門の騒ぎは好都合でしたね
偉そうなヤツは大概上にいるものですし、上を目指しましょう

「…おや、さっきの投げナイフは北斗ちゃんでしたか。奇遇ですねえ」
気付かないわけがないじゃないですか
でも視線逸らしましたよね?
せっかく晶に乗せてあげようと思ったのに、この前落っこちたのがそんなにトラウマでした?

これ、ひょっとしてみゃーもいるフラグだったりします?

【WIZ】
「具現せよ、磐具公――攻め落とす」
戦霊『磐具公』を先行させ、技能も使用して精霊銃で援護しつつ上を目指す


援護の火矢に気づいて、
「いましたね、みゃー」
こういうの、フラグ回収って言うんですよね



 ……何か今、知った顔が見えた気がする。廃城二階の庇から未夜が下を覗くと、覚えのある黒い獣の影が北側櫓の近くを通り過ぎた。
「『晶』?」
 儚火を還し、城門方向での騒ぎを聞きつけた歩哨に見つからぬよう注意しつつ庇の上を移動する。はっきりと確認できたわけではないが恐らくアレは晶だ、晶がいるということは硝子がいるという意味でもある。
「……もしかして北斗もいたりして……」
 いやまさかね、と思いつつ北側の庇に飛び移ろうとしたところで、まさしく北斗と硝子とが何やら話し込んでいる場面に遭遇した。そのまさかだったらしい。
 廃城への突入が比較的早めだったせいで、未夜は硝子と北斗がこの依頼に参加しているということをまったく知らずにいた。こんな事もあるのだな、となかば感心しながら未夜は背の矢筒から破魔矢を引き抜く。こちらに気付いていないなら気付いていないで、ならば援護でもしてやろうかという気分になっていた。
「それにしても硝子さん、何でいるんです?」
「何故いると言われても。依頼だからだとしか。……しかし、やはりさっきの投げナイフは北斗ちゃんでしたか、奇遇ですねえ」
「……って言うか、さっき気がつかなかったんですか」
「気付かないわけないじゃないですか。……でも視線逸らしましたよね? せっかくまた晶に乗せてあげようと思っていたのに、この前落っこちたのがそんなにトラウマでした?」
 ひそひそこそこそ、餓鬼のいない方向を選んで北斗と硝子は廃城を東へ回り込んでいく。その間にも城門方向からは盛大に爆発音やら何かが崩れる音が響いていた。
「だって……ねえ? その大きい黒いので城壁飛び越えるとか普通に目立ちません?」
 そのような考えは硝子の頭にはまるでなかったようで、そうでしょうか、と首をかたむけている。
「そんな悪目立ちするくらいなら硝子さんには囮になってもらって、その隙に安全に――ああいやいえその。当然、無事は祈っていましたよ!」
 なにやら勢いで色々だだ漏れてしまった北斗は、ひとつ咳払いをした。
「ともあれ、合流しちゃったものはもう仕方ないです。ええ」
「もう仕方ないって何ですかもうって」
「言葉のアヤですあんまり突っ込まないでもらえませんか」
 ……なんだ随分仲良さそうだな、と未夜は微笑ましい気分で見守っている。ともあれ北斗と硝子はそのまま上階を目指すことにしたようで、火災か何かで焼け焦げて、半分朽ち落ちてしまっているくぐり戸をすりぬけた。硝子が戦霊『磐具公』を先行させて進もうとする室内に、まだ残っていたらしい餓鬼が二体飛び出してくる。
「援護します。硝子さん、巻き込まれないで下さいね!」
 耳障りな短い咆哮に、北斗が眉根を寄せた。
 北斗が素早く矢を番え、硝子が磐具公と共に精霊銃で応戦しようとした瞬間、二人の背後から赤く炎の尾をひいた破魔矢が飛来した。予期しない援護射撃は見事餓鬼の眉間をそれぞれ射抜き、仲間を呼ばれる前にあっさり決着する。
 その援護の気配に硝子は思い当たるものがあったのだろう、ぱっと振り返るとにんまり猫のように笑った。
「――やはり。いましたね、みゃー」
「ばれたか」
「確かこういうの、フラグ回収って言うんですよね」
「そうそうフラグ回収――ってちょっと待った何のフラグの話!!?!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

壥・灰色
花剣(f12822)と

彼女の得手は心得ている
スピード型のインファイターだ
携行した刀による高速での機動戦が持ち味

であれば今回は援護に回ろう
突入しての電撃戦を同時にやるのも吝かじゃないが
餓鬼もまた素早く動くものに対して一芸がある筈だ
そこからマークを外して、好き勝手にやらせてもらう

炎殺式、起動
今度は一斉射はしない

花剣が駆け抜け、斬るその後ろを追跡
彼女の素早い動きに反応して敵が集まってくるなら、その横っ腹を炎弾で掃射、灼き尽くす
無論そうならなくとも、自分に集る敵、花剣が対応しきれなかったものに関してもそのように援護し、対応

少しは暖まってきたな
早いとこ、首領の所まで行くとしようか


花剣・耀子
灰色くん(f00067)と

きみの得手も見たくはあるのだけれど、それは後の機会に譲るとするわ。
援護してくれるというのなら、有り難く。
ご期待に添うよう、手早く終わらせましょう。

ええ、――斬り果たすわ。

あたしは正面から。
左右と後ろには灰色くんへの信を置いて、正面を斬り拓くように。
剣線が届く限りの敵へと【《花剣》】。
後を追ってくる炎弾を切っ先で絡めて引きながら加速、
炎を華と散らしましょう。

互いを喰い合うなんて、流石は餓鬼と言うところね。
普段ならめちゃめちゃに厄介だったのでしょうけれど。
お生憎様。風は炎を巻き上げるのよ。
喰うところもないくらい、跡形も残さず塵にしてあげる。

準備運動は万端ね。
行きましょう。



 ふ、と小さく吐息を吐いた耀子の周囲に餓鬼の亡骸が積み上がっている。灰色の援護を受けながらの緒戦をあっという間に制し、城門周辺にもう動く者はほとんど残っていなかった。
 しかし相手はオブリビオン、いくらでも湧いて出てくるに違いない。城門で待っていたところで城主がやってきてくれるわけでもないので、耀子と灰色は早々に内部へ侵攻することにした。
「お互い、少しは暖まってきたかな」
「ええ。準備運動は万端」
 行きましょう、と続けた耀子の脚はもう前へ進み出している。何もかもが黒焦げ、という城門跡地を振り返りもしない。
 灰色としては突入しての電撃戦を同時に展開するのもやぶさかではないのだが、餓鬼も素早く動くものに対し一芸がある。耀子もまた高速の機動力を活かす戦い方を得意としていることも知っていた。――ならば。
 そんな事をつらつら考えていた所に、耀子が肩越しに振り返ってくる。
「そうね、この機会にきみの得手を見たくもあるのだけど」
「光栄だ。でも、それはまた次の機会にしよう」
 口に出して言わずとも考えていることがそれとなく伝わっている、あるいは察せられているという感触は心地良かった。そうねそれがいいのかも、と耀子は口角をひきあげるように笑い、そのまま全力疾走に入る。
 南側の長い長い廊下、その奥に槍を構えた餓鬼の群れを耀子はもちろん、灰色も捉えていた。つかずはなれずの距離を保って耀子を追従する。
「援護は、ありがたく。――斬り果たすわ」 
 嵐の名を冠する耀子のユーベルコードは、真っ先に思い浮かぶ風雨を伴ったそれではなく、どこか散る白花を思わせた。ぽぽぽ、と真後ろで錬成された炎の弾丸をクサナギで絡め取り、引き、加速させる。
 その一連の動作はどこか、円環に似ていた。
「散りなさい」
 炎が千切れて花弁になる、火をまとった白刃が嵐になる。
 千々に切り裂かれあるいは灼かれ、待ち構えていた餓鬼はあっけなく一掃された。そこで立ち止まる事なく耀子は城内をまっすぐに突き進み階段を駈け上がる。
 その耀子の行く手を阻むもの、そのすべてを焼き払い、あるいは撃ち抜くことで灰色は敵を排除し続けた。立ち塞がる事はもとより横から邪魔を入れる事さえ許さない。
 戦いの主戦場は、城主が鎮座ます三階に移ろうとしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓櫻宵(f02768)と一緒
アドリブや絡み等歓迎

はーい、バーサーカーオネェさんが通りまーす!
櫻宵、皆お腹を空かせてる
このままじゃ可哀想だから……一思いにおくってあげよ!

もう!歌で癒せるけど怪我しないようにしてよね
楽しげな櫻宵の背中を守るように筆を構えて
描くのはマヒ攻撃と雷の属性を乗せた沢山のご馳走の絵で行動阻害
食べられないご飯はいかが!たーんと召し上がれと全力魔法を広範囲に!
櫻宵の打ち漏らしはボクが仕留めて
空中戦や見切りで攻撃を躱す
キミが存分に舞えるように
さぁ、絶望を希望に塗り替えて
美しい華を咲かせよう
【女王陛下は赤が好き】でぱーんと決めるよ!

(やっぱり乙女というよりバーサーカーじゃん……)


誘名・櫻宵
🌸フレズローゼ(f01174)と
アドリブ歓迎

あら嫌だわフレズ
そんな美しくない呼び方
せめて
麗しき桜の乙女と呼んでもらわないと

うふふ
でも斬り放題なんて気前がいいわ
醜いのが残念だけれど
散り際位は美しく

フレズを庇うように前へ
油断大敵は当たり前
ダッシュで一気に踏み込んだならば破魔宿した刃で広範囲攻撃、なぎ払い、衝撃波で斬り伏せて
何度も傷を抉るように斬り
数が多いなら生命力も吸収させてもらっちゃいましょ
第六感を働かせフェイントや残像で攻撃をいなして見切りで躱し
時には怪力やグラップルも織り交ぜて
『鬼哭華』の歌をきかせたげる!
首を跳ねて、銅をなぎ
縦に斬るのもいいわね!それとも四肢を?
うふふ、もっと踊りましょ!



「はーい皆避けて避けて、バーサーカーオネェさんが通りまーす!」
「あら嫌だわフレズ、そんな美しくない呼び方。せめて麗しき桜の乙女とでも呼んでもらわないと」
 既に侵入者によって城門は破られ、向かった仲間も戻らない。主の下知は侵入者の排除であったが、もはやこれまでと勝手に持ち場を離れる者も増えだした、そんな矢先。
「でも、斬り放題なんて随分気前のいいこと。もっとも」
 ――醜いのが残念だけれど。
 そう呟いて含み笑った誘名・櫻宵(誘七屠桜・f02768)に、フレズローゼ・クォレクロニカ(夜明けの国のクォレジーナ・f01174)が笑み返した。
「櫻宵、なんだか皆お腹を空かせてるみたい。このままじゃ可哀想だから、――ひとおもいに送ってあげよ!」
「そうね、散り際くらいは美しく送ってあげないと」
 フレズローゼと櫻宵の二人組は、戦意喪失し餓鬼が右往左往する廃城二階の大広間にいる。【屠桜】を抜き艶然と笑みを強めた櫻宵は、我先にと廊下へ逃げ出した餓鬼の跡を追って鋭く二歩の距離を詰めた。
 大振りの動作で三つ四つ、餓鬼の首が落ちる。
「もう! 歌で癒せるけど怪我しないようにしてよね」
「大丈夫、これだけの数がいれば吸収で――」
 せめて一矢だけでも報いようとしたのだろうか、果敢にも向かってきた餓鬼が握る、錆びついた槍の穂先が櫻宵の頬をかすめた。ざり、と嫌な感触のあとに血がにじむ熱い感触。
 何の気兼ねもなく刀を振るえるという純粋なよろこびに、櫻宵は笑みを強めた。槍をあててきた個体は返す刃により胴のところで泣き別れにし、フェイントや残像を駆使して、華麗な舞踏を踏むように。フレズローゼの描く行動阻害とマヒ攻撃が、食べきれぬほどの色彩豊かな料理の絵として現れるのがとても皮肉で、残酷だ。
「さあ食べられないご飯はいかが! たーんと召し上がれ!!」
 きゃっきゃと楽しげな声に重なる、餓鬼の断末魔の叫び。矢継ぎ早に餓鬼を斬り伏せてゆく櫻宵の頬からは、何事もなかったかのように傷は消え失せている。
「もっと、もっと踊りましょ。『鬼哭華』の歌を聴かせてあげる!」 
 陶酔すら匂わせる桜色の瞳を細めた櫻宵の手元、鮮血の太刀が土色の肌のひねこびた四肢をはねてひときわ輝いた。斬風と、大威力の剣戟が餓鬼の残りを襲う。
 ばっ、と紅と白の薔薇の花弁が荒れ狂い、大広間の全てを覆い隠した。
 無数の屍も、黒ずんだ腐血の跡も。
 やや上気した頬で艶然と微笑み、櫻宵はもう己とフレズローゼの他に動くもののいなくなった大広間を眺めやった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『鬼銃葬者』

POW   :    鉄刀鉄火(てっとうてつび)
【呪いの炎を纏った刀による斬撃】が命中した対象を燃やす。放たれた【呪いの】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    銃王無刃(じゅうおうむじん)
自身が装備する【銃から放たれた呪いの銃弾を】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    渇殺自罪(かっさつじざい)
【刀と銃】から【悪鬼羅刹の闘気】を放ち、【恐怖】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は麻生・大地です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 天守閣と言うには広く、さりとて大広間と呼ぶには狭い、廃城の三階はそんな場所だった。
 長岡城の支城であるからにはかつてここに詰めていた武将がいたはずだが、部屋の調度はなにもかも持ち去られており殺風景なことこの上ない。
 その部屋の真ん中、じっと何かの考えをめぐらせるように異形の武者が座っている。
 そう、武者はただ待っている。
 雌雄を決する時を、ただ一人静かに待っている。
マユラ・エリアル
ふむ、待たせたな城主よ
雑魚は片付けた、残りは貴様との決着だけだ
それじゃあ決戦といこうか
私の全てを持って、貴様に滅びを与えてやろう

●戦闘
『戦闘知識』で敵の動きを見て、次にどう動くかを常に考えて戦う
例え闘気による恐怖を与えられようと、『気合い』を入れて動きを即再開だ
例えどれ程の恐怖だろうと、私は乗り越えて見せるさ
恐怖検定3級だからな、まあ嘘だが

攻撃には【氷刃展開】を発動
『全力魔法』『属性攻撃』でブースト!
氷の刃を武将の上下左右、全てを取り囲むように展開し逃げ場を断つ
そして一斉攻撃で一気に攻めるぞ

さあ、氷刃の檻に囚われ切り刻まれろ!

●アドリブ等大歓迎


シェーラ・ミレディ
餓鬼の親玉が般若面か、何とも似合いの醜さだな。
予想していた通り、財宝の類もないようだし……日の差し込む前に、決着を付けるとしよう。

僕は主に援護だ。味方に攻撃が向かないよう、敵の注意を引き付けようか。
敵の眼前を動き回って攻撃を誘い、その瞬間を見切ってカウンターだ。【相思相愛】を撃ち込んで相殺しよう。
続けて早業、二回攻撃。矢継ぎ早に弾丸を放ち、敵の動きを阻害するぞ。
多少の傷は仕方ないが……僕の身体に傷をつけて、タダで済むと思うなよ!

盗み、盗み攻撃で敵の銃や刀を奪えれば楽になるが……ま、チャンスがあれば試す程度だな。僕にかかればやれないことはないだろうが、無理をして手痛い反撃を食らってもつまらない。


三岐・未夜
【硝子と北斗と】
まさかいるなんて思わなかったけど、いたんなら協力した方がやりやすいに決まってるよね
ってことで、最後か
……コテコテの鬼さんって感じ
えー……あんなのと似てるなんて言ったら硝子の装備に悪いよ

んー、儚火は狭い場所だと動き辛いし、たまには僕だけで前に出よっかな
頼りにしてるよ柳切丸
退魔刀の力で己を強化し、【誘惑、催眠術】で敵を引き付けるよ。硝子と北斗が動きやすいように
僕自身も狙われたくはないし、【第六感、見切り】で躱せるだけ躱すよ。痛いのやだもん
……逃げるだけだと思った?
ふたりの攻撃で隙を見せたら、ゆめのはしを開いて【属性攻撃】で斬属性を付与
斬り捨てるよ【破魔、誘導弾、先制攻撃】


水沢・北斗
【笹鳴f01239、三岐f00134と行動】

気が付いたら3人揃っちゃいましたね。
そしたら何となくいつも通りなカンジでやりますかー。
え、私はほらいつも通り後ろから援護しますので。ええ。

ま、それはそれとしてですけど銃を持った相手なら教えてあげないといけないですね。
『銃器はUDCアース製が一番だってことを!』
相手が銃の複製を展開したらコチラも錬成ヤドリガミ。
片っ端から叩き落してあげますよ!
手数が足りない時でカバーを。
それ以外はボスを射撃。
技能:2回攻撃、スナイパー、鎧無視攻撃、見切り、誘導弾

『あ、これ(錬成ヤドリガミ)あんまり人前でやらないようにしてるのでこれを見た事は人には言わないでくださいね?』


笹鳴・硝子
【北斗ちゃん、みゃーと】

いつもの顔が揃いましたね
心強いです――が、
「なんかアイツむかつきますね。装備が似てるからでしょうか」
右手に精霊銃【穿】、左手に蕨手刀子【流】を構えると、まるで鏡映しの様じゃないですか
「訂正します、みゃー。装備が似てるんじゃありません。構えた姿が似て見える、と言いたかったんです」
つまり私が鬼――むかつきますね
「銃は北斗ちゃんにお任せします。陽動はみゃーに。――『磐具公』、刀は貴公に」
【迷彩・目立たない・見切り・援護射撃・スナイパー・鎧砕き・武器落とし・鎧無視攻撃・カウンター・2回攻撃】使用で精霊銃で心臓部分を狙う
磐具公へは【属性攻撃・衝撃波・高速詠唱】で攻撃の威力上乗せ



「何か、気がついたらまた3人揃ってますね……」
「まさか皆がいるとは思わなかったけど、いるなら協力した方がやりやすいに決まってるし」
 そんな北斗と未夜の呟きに、ええ何時もの顔が揃って心強いです、と硝子は二人へ請け負った。
 餓鬼がすっかり殲滅されてしまった城内は静けさに満ちている。猟兵達が階段を踏む音、障子を滑らせる音くらいしか聞こえない。
 斜めに月光が差し込んでいる廃城の三階、中央やや上座寄り、そこに鬼銃葬者はいた。円坐(わろうだ)すらない殺風景な板の間に、じかに座り込み猟兵達を待っている。
「待たせたな、城主よ。雑魚は片付けた」
 開口一番、そんな声をかけたのはマユラだった。
「私の全てを持って、貴様に滅びを与えてやろう。決戦といこうか」
「……左様か。配下は全て討ち取られたのだな」
 般若のような鬼のような、鬼神のような。怒りを露わにした形相の面をあてた武者がおもむろに立ち上がる。左手にはまだ南蛮のにおいを色濃く残した姿の銃、右手には呪いの炎をたちのぼらせる刀。ゆうらり、ただ両手を泳がせるような立ち姿。
「……なんかアイツむかつきますね」
「むかつくって何処が」
 どこか硝子の目が据わっている。なかなか唐突な物言いがついたのではてどこが気に入らぬのかと北斗が尋ねてみると、硝子が小さく首を傾けた。
「装備が似てるからでしょうか」
「……そう?」
 刀と銃を持てば皆そうなるものなのでそこをツッコむのは、という疑問を北斗は黙っておくことにする。
「えー……あんなのと似てるなんて言ったら硝子の装備に申し訳な――」
「いえ訂正します、みゃー」
 未夜の声を途中で遮った硝子が半目になった。
「装備が似てるんじゃありません、構えた姿が似て見える――つまり私が鬼である、と。なんですかそれ非常にむかつきますね」
 それはもしかしなくても言いがかりって言うんじゃないですかね、という北斗の小声の指摘は黙殺される。聴いちゃいねえ。
「ともかく、銃は北斗ちゃんにお任せします。陽動はみゃーに」
「了解。儚火は狭い場所だと動き辛いしね、頼りにしてるよ柳切丸」
「銃を持った相手なら教えてあげなきゃね。『銃器はUDCアース製が一番』ってことを」
 ふふんと鼻で笑う笑い方をして、北斗は得物であるポーラスターのボルトを引く。自身もライフル銃のヤドリガミであるせいか、銃に関してはそこそこうるさい。
 三人組の息の合った様子を横目に、シェーラはじっと鬼銃葬者の出方を伺っている。武者の正面に立つ未夜の援護に加わるが上策か。
「まったく、予想していた通り財宝の類もないようだし……陽が昇る前に決着をつけるとしよう」
 強いて言えば武者の得物がそこそこな年代物そうに思える程度か。もっとわかりやすい物の方が良いというのに。舌打ちでもしそうな勢いでシェーラが精霊銃を抜いた。
 ドッ、と不定形の念のようなものを発して武者は大きく歩を踏み出す。ちょうど視線の合ったマユラが眉根を寄せるものの、それが武者のユーベルコード『渇殺自罪』であることを知ると裂帛の気合いの声をあげた。武者の念を浴びたせいで金縛りのようにうまく動かせなくなっていた手脚が、自由を取り戻す。
「たとえどれほどの恐怖だろうと乗り越えてみせるさ――なにしろ私は恐怖検定3級認定だからな!」
 えっ何そんな便利な検定あるのという顔をした北斗の前へ、未夜が割り込んできた。ぞろりと鼻先近くまで呪いの炎が迫り、半ば仰け反るようにして北斗は身を躱す。
 『退魔刀柳切丸』で未夜が武者の攻撃を受け流し、そのまま捌ききった。
「中々やるな」
 居並ぶ猟兵達の動きを封じるつもりだったのだろうか、再び闘気を放たんとした武者へシェーラの『彩色銃技・相思相愛』が叩き込まれる。
「そんなものが僕に通用するとでも!?」
 すでに武者の闘気は見切られており、何か不測の事態でも起こらぬかぎり猟兵達にももう不覚は取りようがない。
 ばらまかれるような、精霊銃の銃撃。弾幕という言葉通り射線でカーテンを引くように、シェーラは撃ち続けた。
「まったく、多少の傷は仕方ないとは言っても……僕の身体に傷をつけて、タダで済むと思うなよ!」
 たしかに高価そうですね、と北斗が一瞬遠い目になる。クリスタリアンの比ではないが金のかかる装備というものはあるのだ、特にアストラとかアストラとか。
 アイコンタクトを送ってきた未夜の意図を察し、硝子は蝦夷の戦士を召喚する。
「『磐具公』、貴公に任せます」
 言われずとも彼女の意図を察しているかのように、右手の蕨手刀が構えられた。
「さあ、氷刃の檻の中で千々に刻まれろ!」
 マユラの全力はもちろん、属性も乗せられた『氷刃展開』。
 その台詞通り、武者の周囲が氷の刃で埋め尽くされ、囲まれ、閉じ込められる。ひどく濃密な、冷たい刃の檻。
「クッ――」
 どこにも逃れられないと悟り、鬼銃葬者はせめてもの抵抗と目元の前に左腕をかざす。一斉に襲いかかってきた刃が針鼠のようにその全身へ突き立ち、苦痛の声が漏れた。
「小癪な真似をする……!!」
 氷刃をふりほどき、武者は左手の短銃を放つ。その弾丸が宙で複数に、分裂するように増殖し散弾銃のように北斗達へ襲いかかった。
「そう来ましたか。片っ端から叩き落してあげますよ!」
 北斗の構えるポーラスター、その銃身の輪郭が一瞬ブレたように見え、そして――20丁ものライフルが北斗の周囲へ顕現する。武者のばらまいた銃弾は北斗によってことごとく撃ち落とされ、誰に傷を与えることもない。
 武者が体勢を立て成す暇を与えぬよう、硝子が呼び寄せた蝦夷の戦士が猛然と斬りつけた。さらに北斗、硝子と続き鬼銃葬者は劣勢に追い込まれる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

壥・灰色
花剣(f12822)と共闘

鬼面の武者と相対
下の雑魚は、今ひとつ手応えがなかったが――
おまえは違いそうだな

おれは壊すために生み出された
その極致を見せよう、花剣

余剰魔力が肘から、牙のように青白く噴出
上着の袖は弾け飛び、青白く魔術回路が煌めく両腕が露わに

壊鍵、撃殺式
起動

前衛を一時的に花剣に任せ、彼女の絢爛たる戦いぶりを見つつ、銃撃には気を付けて隙を伺う
一瞬でも崩れたら、その隙を殺る

脚に回した「衝撃」を炸裂
足下で炸裂する衝撃の反作用を用いて加速
一歩目からトップスピードに乗り、ただ一打

一打でいい
二発目は要らない

――捉えられるならば、冥府の王でも屠ってみせる。

蒼き光弾と化した右拳で、彗星めいて武者を穿つ!


花剣・耀子
灰色くん(f00067)と

残ったのはおまえだけ。
相対する相手を待っていたなら、その甲斐はあったわよ。


――ああ、そんなところも近しいのね。
どうぞ存分に。
先鋒は任せて頂戴。

ちらと煌めきを見やってから、武者へ。
あたしは魔術の類に明るくはないけれど、
大きな渦を背にしているみたい。

一打と言っていたかしら。
では、その隙を作りにゆくわ。

生半な呪詛で止まるなんて思わないことね。
あたしへの攻撃は致命傷にならなければ捨て置いて、
後ろへ逸れる炎や銃弾は斬り払いましょう。
余所見なんてさせない。
切り結んで、あたしに惹き付けて、――隙なんて一瞬あれば事足りるのよ。

崩したら、灰色くんとスイッチ。
まばゆい蒼を見送りましょう。



 ぎち、と背後で灰色の上着の袖が鳴るのを聴きながら、耀子はクサナギを構える。何か後ろに、おおきな力の渦を感じるようだ。
「下の雑魚は、今ひとつ手応えがなかったが――」
 残ったのはこの武者のみ。抗するに値する相手を灰色が待っていたとするなら、その甲斐はあったと言えるだろう。
「おまえは違いそうだ」
 彼は、そう、ナニカを壊すために生み出されたのだ。その極致をここで見せよう、というのだろう。
 ――ああ、そんなところもこんなに近しい。そう耀子は思考の片隅で考える。
「どうぞ存分に」
 肩越しに振り返ると細く青白く、魔力が燃え上がっているのがわかった。当然ながらここから回転数を上げていくので、今のそれが灰色の実力というわけではない。
「このまま斬り伏せられるものと思うな」
 鬼面の武者自身劣勢に追い込まれていることは認めざるを得ないのだろう、それを覆すには己が力のかぎり抗う他はないことも。
 太刀から噴き上がる呪詛の炎。鋭い踏み込みからの横薙ぎをクサナギで受け流し、ついそのまま回り込もうとして、耀子は踏みとどまった。いけない。
 ただひとつ、一打ぶんの隙を作るのだ。
「堪えたか。女の分際で」
「ええ、生半な斬撃と呪詛で止まるなんて思わないことね」
 銃弾と黒い炎が肌と髪を灼く、そんな気がする。
 しかしそれでも耀子は下がらず、脇に流れず、踊るように前へ出た。襲い来るすべてを花のように絢爛に斬りすて、あざやかに払い、まるで自分だけを見ろと武者へ言わんばかりに。
 その目的はほどなく達成された。
「――散りなさい!」
 鍔迫り合いで拮抗した剣と剣、渾身で押し返し鬼銃葬者の体勢が崩れた一瞬を白刃が群れが狙い撃つ。その勢いのまま押し戻され一歩二歩、鬼面の武者が後退ったその目に、蒼い光。
 ――壊鍵、撃殺式。起動。
 その言葉の意味を武者は悟ったかどうかは誰も知らない。余剰魔力が灰色の上着の袖を弾いて、両腕へ白く青く光る魔術回路が這っているように見えた。
 床を伝わる強い衝撃が廃城を揺るがす。足元で炸裂させた衝撃によりたったの一歩で鬼面の武者までの距離を詰めた。ただ一打を打ちこむためには二歩では足らない。それではあまりにも遅すぎる。
 腕と拳から漏れるあおい燐光を直線状に引き、ほんの刹那で最高速度に乗った灰色の右拳が鬼銃葬者を真正面から捉えた。
 そう、たったの一度。灰色には一打だけでいい。二度はいらない。
 狙い澄ました『破砕型・撃殺回路』の打撃を受け鬼銃葬者の鬼面が粉々に割れ砕けた。月光が斜めに差し込む広間を、ボッ、と炎が噴出するような音を首元からあげながら吹っ飛ぶ。
 ゆっくりと宙を舞った鬼銃葬者の身体が一瞬で呪詛じみた黒い炎に覆い尽くされ、床に転がることもなく燃え尽きた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月21日


挿絵イラスト