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大祓百鬼夜行⑩〜カタヌキカタストロフ

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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●型抜きとは奥深いものである
 ここは西洋妖怪の多い住宅地。月明かりの綺麗な夜、ひっそりとその屋台は現れる。
 その不思議な屋台は妖怪達の密かな人気スポットとして賑わいを見せていた。
 ワインは勿論、クラッカーやフィッシュ&チップスなどが揃っており、客はまったりと夜食を楽しんでいた。
 最近では店主が東方妖怪から教わった『ある遊戯』を客に提供してみた所、それが見事にヒット。今では客は酒と肴を片手に、その遊戯に没頭するようになっていた。
「なんだこれ……どうしたらいいんだ……」
「もうちょっと、これで……」
 黙々と客が見つめるその先には、板と針。そう、『型抜き』だ。
「ぎゃー割れたー!」
 細い部分を割ってしまった客は悔しそうに割れた欠片を口に放り込む。本来であれば味は薄いのだが、店主がアレンジしてチョコ味やイチゴ味といったフレーバーを取り入れた為、成功しても失敗しても美味しい一品となっている。
「どうだ悔しいだろう? そうやってドツボにはまっていくんだ」
「食べ物で遊ぶなと散々言われたけど、これはまずいぞ……これが大人の遊びって奴か……っ!」
 ごくり、と唾を飲み込む。そしてもう一度型抜きを行う。今夜もまた一人、型抜きの面白さを覚えた妖怪が増えてしまった。
「パパもみんなも、型抜きが大好きなのね」
「そうだよアンネ」
 屋台を手伝う店主の娘、吸血鬼のアンネローズは型抜きを見つめる。
「お酒を飲んで、ご飯も食べながら、型抜き……お客さん、とっても幸せそう」
 そんな穏やかな時間がここでは流れている。アンネローズはお店も客も大好きだ。
「パパ。アンネ、良い事思い付いたわ」
 アンネローズはにっこりと笑った。
「もっとお料理作って、もっと型抜きも用意すれば、お客さんもいっぱい増えて……ずっとここで遊んでいられるのかも!」

 そんな純粋な思いを抱えた少女を、オブリビオンは取り込んだ。

●型抜き連続成功するまで帰れません
「アンネちゃん……も、もう……」
「あーあ、残念。でも大丈夫よ、型抜きはまだあるの」
 客が困った顔を見せても、アンネローズは気にせず型抜きと料理を運んで来た。山盛りのポテト、ジョッキのワイン、そしてタワーのように積み重ねられた型抜き。
 客のお腹は既にパンパンであった。しかし料理と型抜きの提供は終わらない。アンネローズはせっせと運び続ける。
「遠慮せずに、ずーっとのんびりしていいからね。型抜き、楽しいものね!」
 純粋な笑顔に客は叱る事すらできない。ただただテーブルに置かれる料理と型抜きを眺め、静かにポリポリと欠片を食べ続けるのであった。
 型抜きに失敗しては食べ、成功しては食べ、その間に大量の料理も食べ続け……。
「店主が休みだからって張り切りすぎじゃないかな……?」
「やばいよ、もう食べられないよ……型抜きも集中力切れてきたよ……」
 客のささやかな悲鳴など、少女には聞こえない。

●We Love Yatai
「型抜きくらいは俺だって知ってるぜ」
 誰に聞かれた訳でもなく、ハイン・ジャバウォック(虚空の竜・f28296)はひとりでにそう言った。
「でも娯楽ってのは押し付けるものではないよな? うん」
 と、前置きを終え、ハインは猟兵達に説明を始めた。
「さて、カクリヨファンタズムとUDCアースがヤベェ事になってるのは知ってるな。今回はそれにかかわる案件だ。とはいえ、武器を構える必要はねぇ」
 その口ぶりからして、どうやら戦闘は行わないようだ。
「幽世には、夜になると現れる不思議な屋台ってのがあってね。その一つがオブリビオンに狙われたんだ。だが、殴って解決できるような内容じゃなくてな」
 これこれ、と猟兵達に見せたのは、一枚の小さな板。
「その問題の屋台、大量の料理と型抜きを出して来るんだよ。オブリビオンによって『もてなし衝動』が暴走してるようで、妖力によって客を引き摺り込んで無限に食べさせようとするんだってさ」
 このままだと客は増え続け、料理も型抜きも増え続け、世界が埋まってしまう。
「そんな馬鹿な……って思うじゃん? 幽世なんてそういうカタストロフばっかだよ」
 自分の世界ながらおかしいね、とハインは笑う。
「ま、それが笑えなくなる前に、お前らには屋台に行ってひたすら料理と型抜きを楽しんで欲しいって事! ひたすら食べ続けると満足してオブリビオンの浄化にも繋がるって事なんだから一石二鳥だろうよ」
 オブリビオンに飲み込まれた妖怪、吸血鬼の少女の心が満たされれば自然とオブリビオンは消滅し、事件も解決するようだ。何としてでも少女を喜ばせなければ!

「型抜きってさ……意外と難しいよな。他の客に迷惑かけなけりゃ、ちっとはユーベルコードとか使っても……良いんじゃねーかな」
 純粋に型抜きに挑戦するのも良いだろう。しかし飽きないよう、そしてお腹いっぱいにならないよう、どうにか工夫をしても良いかもしれない。
「ま、じゃあ楽しんで来いよ。胃袋……破裂させるなよ」
 なんて事を吐きつつ、ハインは猟兵達を転移させる準備を始めるのだった。


ののん
 お世話になります、ののんです。

 ●状況
 カクリヨファンタズム『大祓百鬼夜行』の戦争シナリオとなります。
 1章で完結します。

 ●戦場について
 夜、不思議な屋台にて料理と型抜きが無限に提供され続けます。
 料理を楽しみ、型抜きに成功し続けているとオブリビオンは喜び、心を満たされ、成功(ダメージ)となります。
 その為、大盛りな料理を食べつつ、大量の型抜きにチャレンジして下さい(型抜き成功の為にユーベルコードやアイテムを使用する事はOKです!)

 ●屋台メニューについて
 洋風の料理や飲み物が多め。日本酒もあるようです。
 お酒だけでなくジュースも揃ってますので未成年者でも問題なしです。
 また、型抜きは味がしっかり付いているらしく、食べても美味しいです。

 プレイングボーナスは以下の通りです。

 ====================
 プレイングボーナス……屋台グルメを食べまくる(戦わずともダメージを与えられます)。
 ====================

 ●プレイングについて
 受付は『#プレイング受付中』のタグ記載でお知らせしております。

 キャラ口調ですとリプレイに反映しやすいです。
 お友達とご一緒する方はIDを含めた名前の記載、または【(グループ名)】をお願い致します。
 同時に投稿して頂けると大変助かります。

 申し訳ありませんがユーベルコードは基本的に【選択したもののみ】描写致します。

 以上、皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『吸血夢魔姫『アンネローズ』』

POW   :    アンネのお願い
【可愛らしいポーズからの「お願い」】を披露した指定の全対象に【この子の言う事を何でも聞きたいと言う】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    変幻自在どろんチェンジ
【吸血夢魔姫『アンネローズ』の姿】【狼の群れ】【吸血蝙蝠の群れ】【魔性の霧】【これらに自在に変身する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    紅薔薇の嵐
自身の装備武器を無数の【真紅の薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:蟹守

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月凪・ハルマ
……なんともコメントに困る状況だな

俺自身、別に大食いってつもりもないけど……
まぁ、やってみるか

◆SPD

さて、まずは型抜きから
流石に全ての型を綺麗に抜くってのは無理だろうから、
最初の内はなるべく難易度の低い型を選び、同時に
どれくらいの力加減が丁度いいのか【情報収集】

あ、料理も頂かないとなんだっけか
えーと、それじゃそこのパンとチーズ、あと適当な肉とか野菜で
サンドイッチ作ってもらえる?オレンジジュースがあるとなお嬉しい

型抜きに慣れてきたら【瞬身】を発動
そのまま【早業】でどんどん型抜きを片づけていこう
合間に料理を食べる事も忘れない。てか普通に美味いなコレ

あとは浄化するまでとことん付き合うとしようか



 屋台の客席で困り果てている妖怪達。帰るに帰れないし怒る事もできない。その様子は猟兵達から見ても哀れに感じられた。可哀想なお客さん達を何とか解放しなければ!

「屋台に型抜きっていうのも……なんともコメントに困る」
 型抜きなんてお祭りでしか見た事ない。いや、古き良きUDCアースの過去だからこそのコラボレーションなのか。幽世は不思議な場所だなと、改めて思える。
 とりあえず、と月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)は屋台へ近付き空いている席へ座る。すぐさま少女アンネローズは目を輝かせながらやって来た。
「いらっしゃませ! 型抜きとご飯、ゆっくり楽しんでいってね」
 早速と言わんばかり用意される型抜き。紙で作られた籠の中にどっさりとそれは入っていた。これを全部やるのか……と思うと正直げんなりするレベルの量はある。
「……先に料理も頂いておこうか」
 栄養補給は必要不可欠と悟ったハルマはアンネローズにサンドイッチとオレンジジュースを注文する。アンネローズは喜んで厨房に戻るのだが、オブリビオンによる妖力の暴走のせいか、料理はすぐに運ばれてきた。
「はいどうぞ。アンネ、頑張って作ったのよ」
「……ありがとう」
 目を疑った。これはサンドイッチじゃなくて巨大なハンバーガーだ。確かに肉や野菜、チーズをパンで挟んでいる。間違ってはいないけど何だか惜しい。
(「駄目だ、これじゃあいくら経っても先に進まない」)
 ジョッキのオレンジジュースを一口飲むと、気持ちを切り替え、ハルマはやっと型抜きを一枚手に取ってみせた。

 さて、まず選んだのは難易度の低そうな形のもの。失敗した所でデメリットはないのだ。そこから力加減やコツを覚えればいい。
 とす、と針に力を込めれば型抜きは簡単に砕けた。端の方は案外力を入れても平気らしい。
「太い場所は案外簡単だな。じゃあ次のやつ。問題は細い部分か……」
 小さく切ったハンバーガーを食べながら溝の外側を削っていく。隣のお客からアドバイスを貰いながら型抜きに慣れる事、六枚目の挑戦。
「わぁ、お兄さん上手なのね!」
 ハルマの手元を覗いてきたアンネローズが嬉しそうな顔を浮かべていた。丁度良く傍に来た今がチャンスだと、ハルマはひっそりとユーベルコードを発動させる。
「美味いサンドイッチを用意してくれたお礼だ。凄い技を見せてあげようか」
「すごいわざ?」
 興味を引いた所でハルマは適当な数の型抜きをじゃらりと並べた。針を握り締めれば、型抜きの溝に向かって全神経を集中させた。
 それはまさに早業。型抜きの極意をマスターしたハルマは目にも追えぬ速さで次々と四角い型抜きを形あるものへと変えていく。
 紙でも切っているかのように綺麗な形で完成されていく様子にアンネローズと客は感動し、思わず拍手を送るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
型抜きかぁ、結構前にお祭りで
梓と型抜き勝負したことを思い出すなぁ
あの時は俺が勝ったんだよねー

というわけで、型抜きが下手っぴな梓は料理の大食い担当
俺は型抜きの担当、と役割分担するのはどうかな?
食べ過ぎると眠くなって集中力も薄れてくるしね

まずは型抜きチャレンジの前にUC発動し
成功率をこれでもかと高めておく
妖怪たちは命を賭けて故郷を守ろうとしている…
それなら俺だってこれくらいの命は賭けないとね

抜き始める前や最中でも
こまめに余分な粉を払っておく
その際にこっそりとウェットティシュで拭いて
軽ーく板を湿らせて抜きやすいようにする
ダメとは言われてないもんね??
あとは己を信じて落ち着いてプスプスと


乱獅子・梓
【不死蝶】
あー、そんなこともあったな…
型抜き、あと少しというところで
壊れた時の喪失感は半端なかったな…

下手っぴと言われるのはかなり癪だがそれが最適解だろう
俺には焔と零、何なら更にドラゴンを呼べるから
人海戦術ならぬ竜海戦術が使えるし

なんか格好いいこと言っているが
遊びの為に軽率に寿命を代償にし過ぎじゃないかお前…

UC発動し、ミニドラゴンたちを召喚
今日は食べ放題だ!さぁ、じゃんじゃん食え!
サンドイッチ、フライドポテト、ウィンナーなど
軽快に平らげていくドラゴンたち
俺も日本酒をいただきながら食べていく
洋風の屋台というのもありだな
この料理の数々、お前のパパが作ったのか
美味いじゃないか、気に入った



「型抜きって言うとさぁ」
 空いた席に座った灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)がふと呟く。
「結構前にお祭りで型抜き勝負した事を思い出すなぁ。あの時は俺が勝ったんだよねー」
「あー、そんな事もあったな……」
 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)が苦そうな表情を見せれば、綾は得意気に笑った。
「という訳で、型抜きが下手っぴな梓は料理の大食い担当。俺は型抜きの担当ね」
 口に出してそう言われるとムッとしてしまうが、かと言って『俺が型抜きをやる』と言い返せる自信もなかった。悔しい。
「……確かに、俺にはドラゴン達が居るからな」
「そうそう。俺も少しは食べるから安心してよ」
 綾は紙で作られた籠いっぱいに用意された型抜きを適当に鷲掴むと、ざらざらとテーブルの上へ並べ始めた。その間に梓も少女アンネローズに注文を頼む。……が、暴走した妖力によって料理はあっという間に運ばれてきた。
「やっば、大盛りで来るって忘れてた。まぁいいか……さぁさぁ集え、そして思うが侭に喰え!」
「キュー!!」
「ガウ!」
 仔竜の焔と零の号令と共に周囲から大勢の小さなドラゴン達が現れる。食べ放題だと言われれば、お腹を空かせたドラゴン達は目を輝かせて早速喰い付いた。
「お兄さんドラゴン使いなの? 凄いのね!」
 アンネローズは梓のドラゴン達に驚きながらも笑顔を見せた。その食べっぷりが嬉しいのだろう。もっと用意するね、と厨房へ走っていった。
「じゃあ、俺も型抜きチャレンジ始めようかな」
 針を構えた綾が一呼吸入れれば、型抜きに顔を近付け普段から細く見える目をより細めた。それだけ集中しているという事でもあるが、隣に座る梓はそれと同時にユーベルコードの気配も感じた。
「お前、そこまでして……」
「妖怪達は命を賭けて故郷を守ろうとしている。……それなら俺だって、これくらいの命は賭けないとね」
 二つの世界を滅亡させない為に戦う妖怪達の為なら、自分の寿命を削る事くらい大した事ではないのだ。
「とはいえ遊びの為に軽率に寿命を代償にし過ぎじゃないかお前……」
「全力で遊んだら喜んでくれるんでしょ? なら一分くらい縮んでも問題ないよ」
「一分って」
 一分ほど縮んだらしい寿命について(色々な意味で)反応に困る梓など気にせず、綾の手はどんどんと型抜きを削っていく。
 周囲に散らばった欠片はドラゴン達がすんすんと匂いを嗅いでからぽりぽりと食べてくれるので、自然と綾の作業場は綺麗な状態を保っているのであった。
「キューキュー」
「ウェットティッシュは食べちゃ駄目だよ」
「ガウ……」
 型抜きを湿らす為に使用したティッシュをドラゴン達に取られ邪魔される事もあったが、それでも『あらゆる型抜きに成功する』ので問題はない。

「わぁ、お兄さんの型抜き、とっても綺麗。上手なのね!」
 アンネローズが綾の成功させた型抜きを眺めて拍手を送った。真剣に遊んでくれた事に対してとても嬉しそうだ。完璧なまでに綺麗に整形された型抜きを見て、ここまでできるものなのかと他の客も驚いている。
 まだまだ作れるよ、と意気込む綾。梓も日本酒を飲みながらアンネローズに話し掛ける。
「この店は料理も美味いし、型抜きそのものも美味くて十分楽しめる場所だな」
「ありがとう、いっぱい喜んで貰えてアンネも嬉しいの!」
「この料理ってお前のパパが作ったのか?」
「うん、いつもはパパが用意してるの。でも今日はいない代わりにアンネが頑張ってるのよ」
「そうか偉いな! そうしたらパパにも伝えておいてくれよ。この店、気に入ったって」
 その言葉に、アンネは元気に頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユニ・バンディッド
アドリブ歓迎
わーい型抜き楽しそう!持ち前の器用さや盗賊技術で挑戦するね!。
でも、こんなに料理を食べられないよ!食べる振りしながら収納の魔術カードを発動。食べきれない分はカードの中へと詰め込み回収するね。ほらみんなも頑張って!。
これは「傷」、「食傷の鉱脈」。みんなの食傷を盗っちゃえ。
【スローイング・ペイン】で食傷を盗み、針水晶玉に変換排出するよ!これでまだまだ食べれるよね。
ついでに気分転換も!盗った「食傷の水晶玉」を錬成・武器改造したダガーに埋め込んで空へ投擲。武器改造で追加した特性は「花火」だよ。かぎやー!。空の花火に夢中になっている間にも、どんどん盗るよ。
えへへ、ボクはあくまでシーフだもん。



「わーい型抜き楽しそう!」
 お祭りにでも来たかのようにユニ・バンディッド(贋作の悪魔・f31473)が屋台の客席を見渡す。確かに楽しそうに食べながら型抜きを行っている客もいるのだが、大量の料理を食べ切れず何時間も滞在している客は揃ってげんなりしている。
「でも元気がない人もいるね……そりゃそっか、妖怪にも悪魔にも限界はあるもんね」
 早く何とかしてあげなきゃ、と考えながら空いている席へと座ると、早速少女アンネローズが駆け寄って来た。
「わ、いらっしゃいませ! いっぱいゆっくりしていってね」
 注文を聞けば、暴走した妖力によってあっという間に料理とジュースが運ばれてきた。張り切ったと言わんばかりに全てが大盛り。ジュースもジョッキだ。
「わ、思ってたよりもいっぱい……!」
 とりあえずお腹は空いているので食べてみる。確かに美味しい事には間違いない。だからこそ、この大量な料理を残してしまうのは勿体ないと感じるのだが。
「うぅ、型抜きは頑張れそうだけど、料理を食べ切るのは難しいな……」
 ちょっとズルいかもしれないけど、とユニが取り出したのは収納の魔術カード。食べ切れない分を食べるふりをしながらカードに吸収させていく。
 猟兵達の介入によって店内は賑やかさを取り戻しつつあるのだが、それでも一番の問題は料理の量だ。
「妖怪さん達も頑張って! ボクが傷を……『食傷』を盗んじゃうから!」
 あらゆる傷という傷を盗むユーベルコード、スローイング・ペインを発動する。すると元気のなかった客から不思議と食欲が戻って来た。
「あれ? もうちょっと行けそうな気がしてきた……」
「少し休んだら胃が落ち着いてきたな……ポテトでも食べるか」
 食傷の消えた客が少しずつもぐもぐと食べ始める。ユニは大量の針水晶玉を抱えてて満足そうな笑みを見せた。
「それじゃ次は、傷を変換した針水晶玉をこうして、っと……」
 ダガーに玉を埋め込む作業をしていると、そこへアンネローズがやって来た。
「お姉さん、何をしているの? もしかしてお料理に飽きちゃった?」
「ううん逆だよ! 美味しかったから、ボクもお店を盛り上げてあげようと思って!」
 見ててね! とアンネローズにダガーを見せると、ユニはそのダガーを空高く放り投げた。月を囲む暗い空が一瞬、大きな音と共に煌びやかに明るくなった。
「わぁ!」
 アンネローズも客も空を見上げて驚いた。花火だ。ユニの投げたダガーが鮮やかな花火となって客を夢中にさせたのだ。
「お姉さん、花火職人だったのね!」
 食欲が戻りつつある客が花火に感動し盛り上がる。店内の雰囲気がより明るくなっていく様子に、アンネローズはきらきらと目を輝かせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
失礼ながらアンネローズ様はお若く見えますが
お一人で屋台を切り盛りされておられるのですか?
成程、お父様の代理で

(お父上も心配されている筈。猶更、骸魂から解放しなくては)

型抜きはお任せを
この手の作業は…機械の十八番ですので

(指で摘まんだ小さな針を超高速の工作機械如き精密動作で操り、完璧に繰り抜き)

(頭部装甲を開きその奥の穴…『口』に型抜きを放り込み)
私の疑似飲食機能は安物で、味にはそれ程鋭敏ではないのですが
型抜きの味の種類…ええ、客を喜ばせんとするお二人の真心に満ちておりますね

そのお礼がしたいのですが…
お父様の写真は御座いますか?

(型抜きに新たな溝を掘り、親子のシルエットを繰り抜き)

さあ、どうぞ



 背の高いウォーマシンから見れば、吸血鬼の小さな子供など非常に小さく見えてしまう事だろう。アンネローズに『大きな妖怪さん用のお席』へ案内されれば、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は礼を言い、静かに席に座った。
「失礼ながらアンネローズ様はお若く見えますが、お一人で屋台を切り盛りされておられるのですか?」
「ううん、いつもはパパがいてアンネがお手伝いしているのだけれど、今日はいないから一人で頑張ってるの」
 それは体調が悪くなって休んだものか、オブリビオンの力によって何かが起きたものかは分からない。数ある出来事を推測する事はできるのだが。
(「どちらにせよお父上も心配されている筈。猶更、骸魂から解放しなくては」)
 見た所アンネローズ自身に悪意は感じられない。無意識にオブリビオンの影響を受け、あくまで善意として行動しているだけなのだろう。ここは焦らず彼女に付き合ってあげるべきだ。

「お兄さんは型抜きできる人?」
 アンネローズの質問に、トリテレイアは頷く。
「この手の作業は……十八番ですので」
「型抜き、小さかったかしら?」
「お任せ下さい」
 器用に針を摘まみ、型抜きに手を添え固定させる。型抜きの大きさや溝の形をスキャンすれば、針を持った手が自動的に動き始め、型抜きの外側を砕き始めた。高速で型抜きを貫き砕く針だが、精細かつ計算された力加減で動いている為、細い部分も割らずに見事くり抜いてみせた。
「わ、本当に上手なのね!」
 高速な手さばきによって次々と形作られていく型抜きに、凄いわ、と喜ぶアンネローズ。思わず夢中になったアンネローズは型抜きを自ら選んでトリテレイアに見せるようになった。
「この難しそうなものもできるの?」
「やってみましょう」
 快くリクエストにも応え、見事に完成させてみせる度にアンネローズは喜んだ。

 増えてしまった型抜きの破片をトリテレイアは自らの『口』に放り込む。彼の疑似飲食機能では味をしっかりと感知する事はできなかったのだが、欠片一つ一つの味がそれぞれ異なっていた事を認知した。
(「なるほど、型抜きの形だけではなく味にも種類があるとは……」)
 その数だけ、客を喜ばせようとしているアンネローズ、そして父である店主の真心を感じた。これだけ手間を掛けているのだ。今はオブリビオンの影響によって手段を誤ってはいるが、いかにアンネローズが純粋であるのかを知る事ができた。
「アンネローズ様、楽しい時間をありがとうございました。是非お礼がしたいのですが……お父様の写真は御座いますか?」
「うん、パパの写真はこれよ」
 何の疑いもなくアンネローズは厨房から写真立てを持ってきた。自身と二人で写った良い写真だ。トリテレイアはその姿を記憶すると、再び型抜きを始めた。しかし今回は溝を無視して針を動かし始めた。
 不思議そうに見守るアンネローズだったが、作られていく形に見覚えを感じた途端、わぁ、と口を大きく開いた。
「さあ、どうぞ」
 トリテレイアの大きな手の上に乗せられた小さな型抜き。それは写真と同じ、店主とアンネローズのシルエットを模ったもの。
「これが、私からの気持ちです」
 アンネローズは割れないよう、静かに型抜きを手に取る。思い出すのは父と楽しく店を行っていた日々。お店の手伝いをするのも楽しいけれど……。
「アンネ、やっぱりパパとお仕事するのが楽しいわ」
 一人で頑張ったのも楽しかったけれど、と呟いたその笑顔は、どこか寂しそうでもあった。

 朝を告げる太陽が昇ると同時に、アンネローズからオブリビオンの妖気が消え去った事を猟兵達は感じた。お店は終わりよ、とアンネローズが告げると、束縛されていた客はやっと自由になれた嬉しさで喜んだ。
「アンネちゃん、残ったものは持ち帰って食べるよ」
 骸魂の影響で悪気はないと知った客は残った料理を片付け、家へ持ち帰る事にしたようだ。しかし型抜きは持ち帰らなかったという。
 ――この屋台で型抜きをやるから楽しいのだ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月10日


挿絵イラスト