18
レイテナ都市防衛戦

#クロムキャバリア #レイテナ #バーラント機械教国連合

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#クロムキャバリア
#レイテナ
#バーラント機械教国連合


0




●レイテナの惨劇
 百年もの長きに渡り戦乱が続く世界、クロムキャバリア。
 とある大陸の東部に位置する国家レイテナ。古くより物流の中心を担い商業の発展で大きな経済成長を遂げた国だ。その国が擁する都市が、今まさに戦禍に見舞われていた。
 都市中央区画にほど近い幹線道路上。銃弾やビームブレードによって破壊され、灰黒い煙が立ち昇る高層ビル群の景観の最中、二種類のキャバリア達が双方大きく間を開けて射撃戦の応酬を繰り広げている。
「カルキノスが、よく動きやがる!」
 レイテナ軍で広く普及しこの都市でも守りを務めるキャバリア、ギムレウス。暗い青に塗装された装甲はあちこちが損壊しており、既に幾度もの戦闘で酷使された様子が伺える。その満身創痍のギムレウスのコクピットで搭乗者が操縦桿のトリガーを引き続けている。
「弾幕を絶やすな! 撃ち続けろ! 俺達の後ろに市民が居ることを忘れるな!」
 横に並ぶ友軍のギムレウス達に檄を飛ばしながらも敵機へマシンガンを連射する。発射された弾丸は素直な弾道で目標へと殺到した。敵機の名はGC-04カルキノス。所属はバーラントだ。
 大陸中央を支配する軍事超大国バーラント。
 地図上で見るならばレイテナから西に位置する国で、強大な軍事力を以て周囲の中小国家を侵略し続けている。そして今日遂にレイテナが侵略対象に選定されてしまったのだ。
「マヌケが! おせえ!」
 カルキノスの操者であるバーラント軍の兵士がフットペダルを踏み込む。軽快な左右へのスライドブーストで難なく弾幕を掻い潜ると更に急加速してギムレウスに肉薄、拠点攻撃用のバズーカを至近距離で叩き込む。
「があァッ! バーラントの蛮族どもがァ!」
 バズーカから射出された弾頭が炸裂。ギムレウスはコクピットブロックに直撃を受け一撃で大破した。左右に展開していたレイテナ軍のキャバリアも同様に後続のカルキノスより集中砲火を受け悉くが破壊されてしまった。
「チッ! 弱すぎる……素人だらけか、レイテナは!」
 武器をバズーカからマシンガンに持ち替え、機能停止したギムレウスのコクピットへ入念にとどめの射撃を撃ち込んで行く。撃ち抜かれた装甲の穴から人の血ともオイルとも付かない液体が溢れ、アスファルトの地面に零れた。

「……す、繰り返す。こちらA201小隊。避難中と思われるレイテナ市民の集団を確認した。これより攻撃を開始する」
 都市を侵攻中のバーラント軍全体に伝達された通信。どうやら先遣部隊が最重要目標を発見したらしい。最重要目標とはレイテナの市民であり、カルキノスで構成されているこの部隊も目標の探索のため市街を突き進みレイテナの防衛軍を駆除していたのだ。
「A101小隊了解だ! 俺たちの分も残しておいてくれよ! 行くぞ! 一匹残らず皆殺しだ!」
 隊長らしき男の号令を受けたカルキノス達のスラスターが一斉に青白い光を灯す。推進力を得て向かう先は先ほど通信にあった避難中の市民集団がいる地点。果たされる任務は民族浄化という名の虐殺。
 その日、レイテナの都市は血に染まった。

●惨劇阻止
「集まってくれてまずは感謝を。クロムキャバリアでのお仕事をご案内するわ」
 グリモアベースにて集った猟兵達を前に桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)が緩慢な動作で深々と礼をする。
「オブリビオンマシンによる都市襲撃を予知したわ。皆さんにはこれを是非止めて頂きたく」
 世界を知る多くの人々にとって、機動兵器による武力衝突は特段珍しい事態でもない。問題なのはオブリビオンが絡んでいるという点だ。

 水之江は自前のロッドを虚空にかざす。すると立体映像が投影された。作戦領域となる市街を再現したものだ。
「場所はとある大陸の東にある国レイテナ。その国が抱えている都市のひとつね。西の超大国との境目近くの都市が、たった今襲撃を受けているわ」
 曰く、襲撃側の正体はレイテナより西部の大国バーラント。バーラントが有する部隊にオブリビオンマシンが浸透、人知れず将校や兵士を狂気に誘いレイテナ襲撃の結果をもたらしたのだという。

「猟兵さん達は現地に急行、街を荒らし回っているバーラント軍のオブリビオンマシンを成敗してちょうだい」
 無自覚ながらもオブリビオンマシンによって凶行に走らされているバーラント軍は蛮行の限りを尽くしている。予知結果によれば最終的には都市に住まうレイテナ市民を一人残らず惨殺するつもりらしい。そこに猟兵が介入し事態を覆すのだ。

「でもって具体的に何をするべきか……結論から言うと全部の敵を撃破しちゃえばミッションクリアよ」
 水之江がロッドを軽く振るうと都市の立体映像が消失し、代わりにキャバリアの三次元モデルが投影された。そのモデルが『GC-04カルキノス』である事を知る猟兵も中には存在しただろう。立体映像を交えた説明が続く。

 バーラント軍は合計三波の戦力で都市への侵攻を行う。第一波は既に市街で交戦中なので、猟兵が割り込む形で戦闘開始となる。
「転移した瞬間から戦闘がスタートすると考えてもらったほうがよさそうね。敵戦力についてははっきりと予知できなかったけど、第一波のメインはカルキノスで間違いないわ」
 単純な構造と整備性に定評を持ち幅広く運用されている量産型キャバリアの傑作機だ。個々の単純性能は所謂ワンオフ機には及ばないものの、数で押す戦術は大抵の局面で雑に高い効果を発揮するため油断はできない。
「第二波もたぶん量産タイプのキャバリア、第三波が一騎当千のワンオフ機よ」
 予知結果が正しければ最後に出てくる機体にはバーラント軍の侵攻を指揮する人物が搭乗しているらしい。これを撃破すれば残存部隊は撤収し任務完了となる。

「敵戦力についてはこんな所ね。そうそう、バーラント軍のパイロットの処遇についてだけれど、殺らずに済むならそうしてあげた方がいいかも。どうも第一波と第二波担当の兵隊さん達は親友だったり血縁だったりと仲がよろしいみたいなの。わざと血祭りにしようものなら、怒り狂ってオブリビオンマシンが付け込む口実になるかも知れないわ。まあ、オブリビオンを憎んで人を憎まずよ」
 殺す気で挑んでくる敵を不殺で仕留めるのは言葉にするほど容易では無い。だが猟兵ならば話しは別だ。

「後は……レイテナ軍のキャバリア部隊だけれど、もう殆どボロボロの状態だから、援護は期待しない方がいいわね。猟兵さん達の到着と入れ替わる恰好で後退するらしいわ」
 実質的に敵に反抗できる力は猟兵のみ。猟兵が介入する件についてはレイテナ側と既に話しが付いている。急に降って湧いても焦って撃たれるようなことはないだろうと付け加え、補足事項の説明を続ける。

「作戦領域が都市部のど真ん中だから本来一般市民がいて然りなんだけれど、もう皆殺されてるか逃げてるかだから大丈夫よ。足元を気にせず戦えてラッキーね」
 抑揚の無い声で事務的に語る。既に事態は動いてしまっている。後は猟兵の力でまだ良いと言える結果に着地させる他ない。

「こんなところね。作戦内容は以上よ。レイテナ数百万の市民がミンチより酷い事にされるような未来を阻止するため、皆さんの力をお借りしたく。どうぞ宜しく」
 初めのように深々と頭を下げると、やや間を置いて事を始める。
 理不尽を破壊する力。究極にして最強の戦力たるイェーガー達を死地へ送り出す準備を。


塩沢たまき
 初めまして、塩沢たまきと申します。
 グリモア猟兵となって初リリースのシナリオとなります。不慣れながらも尽力致しますので何卒宜しくお願いします。
 以下は簡単な補足と注意事項となります。

●作戦目標
 敵部隊の殲滅。

●レイテナ
 今回オブリビオンマシンの襲撃を受けている国。

●バーラント
 オブリビオンマシンでレイテナの都市を襲撃している軍事大国。

●第一章
 『集団戦』です。
 わんさか出てくる量産型キャバリアを撃破してください。
 なお敵軍パイロットは明確に殺害する旨のプレイングを頂かない限り勝手に脱出するか生き残ります。たぶん。

●第二章
 『集団戦』です。
 引き続き量産型キャバリアとの交戦になります。
 第二章の敵軍パイロットは、第一章に登場した敵軍パイロットと何らかの形で親しい仲柄にあります。そのため第一章で惨殺してしまうとオブリビオンの狂気に飲まれてパワーアップするかも知れません。逆に生存していればプレイングボーナスが生じます。

●第三章
 『ボス戦』です。
 今回の侵攻を指揮しているバーラント軍の指導者が搭乗しています。
 機体に精神を蝕まれており、殺意全開で襲い掛かってくるので容赦なく撃破してあげてください。

●その他
 今回の舞台はクロムキャバリアとなりますので、高速飛翔体を無差別砲撃する暴走衛星『殲禍炎剣』にご注意下さい。
 キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
 生身でのご参加もお待ちしております。身体が闘争を求めるままに戦ってください。
64




第1章 集団戦 『GC-04カルキノス』

POW   :    マシンガンアタック
【RSマシンガンによる掃射と共に行う 】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【遠隔兵器で装備した友軍機】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    チョバム・アーマー
敵より【も丈夫な装甲のキャバリアを操縦している 】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ   :    ディストラクション・フェーズ
自身が操縦する【キャバリア 】の【装備を拠点攻撃用重爆撃装備に換装し、火力】と【攻撃範囲】を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●侵攻遅滞作戦
 レイテナの都市の外観を一言で表してしまえば大都会だ。UDCアースやヒーローズアースの先進国でも見られるような高層ビルの群生地帯。しかし見た目の様式こそ同じであれど設計思想には世界特有の文明形態が色濃く反映されていた。
 今回のように隣国から侵攻を受ける事態を想定した土木建築基準が採られているため、5m級の機動兵器を迅速に展開できるよう、特に巨大な建物同士の間隔は開けられている。建物自体も有事の際には遮蔽物となれるほどの堅牢さを持つ。交通の要を担う幹線道路は非常にゆとりのある横幅が確保されており、出動した防衛部隊は幹線道路を辿って市街のあらゆる場所へ速やかに移動できるし、一定の機動戦闘を行う分には十分な空間となっている。
 そして今、都市中央区画を巡る幹線道路上でレイテナ軍による侵攻遅滞を目的とした必死の迎撃戦闘が行われていた。
「CP(コマンドポスト)応答せよ。CP応答せよ。セントラルエリアの防御線が間も無く壊滅する。これ以上の維持は不可能だ」
 通信が返ってくる事は無かった。やはりもうCPは潰されていたか。レイテナ軍のキャバリアパイロットはおおよそ予想していた結果に動じず機体の制御を続ける。暗い青に塗装されたレイテナ軍仕様のギムレウスは、本来機体の象徴とも言うべき背部のロングキャノンがショートバレルのガトリングキャノンに換装されていた。市街地戦を想定したセッティングだ。
「避難民の移送は大丈夫なんでしょうか?」
 すぐ傍で同タイプのギムレウスに搭乗している兵士が訪ねる。通信の最中も倒壊し砕けたビルの残骸を盾にしながら、にじり寄る敵機へマシンガンの連射を継続していた。
「分からん。だが前の通信では東部へ逃がす算段が付いていたらしい」
 避難民の都市外への移送が終わるまで遅滞戦術を維持、後に指定座標まで後退せよとの命令を受けて数時間が経過した。初動でバーラント軍が都市部西側の市民を手当たり次第に殺し回った事で避難者総数が減少、お陰で皮肉にも想定より早い段階で戦闘領域の避難が完了していた。にも関わらず未だ後退命令が出ないという事は思っているほど移送が上手く進んでいないのかも知れない。或いはとうに終わっているのか。司令部との連絡が付かない現状確かめようがないのだが。
「なんにせよここを抜かれたらバスが集結している東区まで一直線だ。俺達の負けはレイテナ市民数千数万の死だぞ」
 バーラント軍の具体的な目的は明らかにされていない。だがこのレイテナの兵士には確信があった。奴らは間違いなく民間人を狙ってる。でなきゃ目の前に敵のキャバリアがいるにも関わらず、学校に突っ込んで子供達を追い回した挙句轢き潰したり、わざわざオフィスビルを覗き込んでシュツルム・ファウストをぶち込んだりするものかよ。さしずめ民族浄化ってのが狙いなんだろうが、ふざけるんじゃない。
 ギムレウスの身をビルの残骸から乗り出させてガトリングキャノンを撃ち放す。装甲車を簡単に穴あきチーズにしてしまう口径から飛び出た弾丸は、ロックオンしているバーラント軍のカルキノスの集団を薙ぎ払うはずだった。だがマズルフラッシュを見るや否やカルキノス達はそそくさと退散、こちらがしているようにコンクリートの残骸の影に隠れてしまった。
「ガトリングは弾切れか。おい、ビームライフルをくれ」
 回転砲身より乾いた音が虚しく響く。近場の友軍機よりライフルを受け渡されたギムレウスは即時射撃体勢を取った。
 こちらの事情に敵もいい加減気付いている頃だろう。友軍全体の総残弾数も底を尽きかけているし機体もズタズタだ。いま一気に攻め入られたら全滅は間違いない。後退指示が先か死が先か、それとも奇跡が先か。
「イェーガー、か」
 搭乗機にビームライフルを三点速射させながらパイロットは小声を零す。司令部からの最後の通信の末尾で聞いた名前。増援部隊としてイェーガーが到着する、それまで持ち堪えろと。軍に籍を置く以前から名前だけは度々耳にしていた。凄腕のキャバリアパイロットだの生身でキャバリアを一刀両断する超人だの、まことしやかに流れる噂が頭を巡る。詳しくは分からないが、こんな状況に陥ってしまってはもう本当に来るか来ないかも不確かな増援部隊に望みを懸けるしかない。事実なら、それは紛れもなく言葉通りの奇跡だろう。レイテナの兵士は、神頼みならぬイェーガー頼みを誰に語るでもなく内に仕舞い込み、絶望的な遅滞戦術を続けるのだった。
露木・鬼燈
鍛え上げた肉体と練り上げた技。
これを頼りに戦うのは楽しい。
でもキャバリアでの戦いもいいものなのです。
生身とは違った楽しさがあるよね!
とゆーことで、アポイタカラで出撃なのです。
戦場は市街地なので威力があり過ぎるのはマズいよね。
遮蔽物や障害物も大量にあるし機動力重視がいいかな。
<超過駆動>を発動して飛ぶのではなく跳んで戦うですよ。
市街地とゆーフィールドを利用した立体機動がいい感じなのです。
両手のマシンガンとフォースハンドに持たせたライフル。
そこに装填するのは徹甲榴弾。
コックピット以外にガンガン撃ち込んでいくですよ。
回避しきれない攻撃はダークネスウイングで防御。
機体出力も上がってるからへーきへーき。



●傾鬼者跳ぶ
 鍛え上げた肉体に宿した技を頼りに、我が身一貫で死合うのは楽しいものだと竜殺しの猟兵は語る。羅刹となれば尚更だろうか。だからこそキャバリアで人機一体となって死合うのもまた一興。
 レイテナ軍とバーラント軍双方にとってあまりにも突然の出来事だった。射撃戦の応酬の最中、幹線道路の傍らに新たな機体が言葉通りに降って湧いたのだ。両軍どちらのキャバリアでもない。だがレイテナ側の友軍信号を発している。
 道に精通するものならば異端の技術体系を垣間見る事ができたであろう特異なシルエット。独特な脚部のラインが特に眼を惹く。赤鬼を想起させる紅の装甲、覗く黒いインナーフレームに紫炎の光が走るサイキックキャバリア。操者の露木・鬼燈(竜喰・f01316)が我が半身の名を呼ぶ。戦の時間だ。
「アポイタカラ、出撃なのです」
 メインシステムの戦闘モードは既に起動済みだ。鬼燈はアポイタカラの眼前に展開中の機体を陣営毎にそれぞれ一瞥すると、左右のマニピュレーターが握るマシンガンとフォースハンドが装備したライフルを交差させ、銃身を打ち鳴らす。
 事実を飲み込むまで唖然に取られたバーラント軍のカルキノス達だが、アポイタカラから生じるプレッシャーを本能的に察した後の行動は素早かった。識別信号はバーラント側と一致しない。味方でないなら殺ってしまえとマシンガンの掃射を浴びせる。一個小隊の集中攻撃となれば強力かつ弾幕も厚い。だがしかし。
「足りない! 速さが足りない!」
 鬼燈のユーベルコードがアポイタカラに力をもたらす。本来なら自壊しかねないほどの出力を御する業。超過駆動によって動力炉が鬼の唸りにも似た稼働音をあげる。僅かに屈む動作をした後、スラスターが強烈な噴射炎を一瞬だけ吐き出すと瞬間移動さながらの速度で機体を跳躍させた。
「なんだァ!?」
 驚愕するカルキノスのパイロット。小隊全員が発射した弾は全て虚空を切ってビルの壁を無意味に砕いた。強力だろうが当たらねばどうという事は無い。更にカルキノス達の掃射がアポイタカラを追う。しかし乱立するビルの隙間を抜い、時にビルの壁面を足場とし跳ね回る三次元立体機動を繰り返す機体を狙えども、残光を虚しく撃ち抜くだけだ。そして鬼燈も一方的に撃たせ続けるつもりなど元より無い。
「狙いはばっちりっぽい!」
 回避機動を維持しながら二挺のマシンガンとフォースハンドのライフルをいよいよもってカルキノスの集団に向ける。発射される銃弾。装填されていたのは徹甲榴弾だった。
 頑丈さで知られるカルキノスの装甲をアテにしていたのだろうか、バーラントの兵士は回避運動がおざなりとなっていた。アポイタカラが発射した弾丸はカルキノスの装甲に食い込むとやや時間を置いて炸裂。手足を粉砕した。被害を受けてようやくバーラントの兵は目の前を跳び回る赤鬼の脅威に気付く。こいつは不味い。
「散開だ! 散らばれ!」
 途端に恐慌に駆られ闇雲にマシンガンを撃ち散らしながら左右へ回避動作を取るカルキノス達。だがもう遅い。オーバークロック中のアポイタカラから逃れられはしない。
 跳躍は回避を主目的としたものから攻撃の為に間合いを詰めるものへと変わって行く。敵の射撃が被弾コースに入るものもあるが、ジェネレーター出力増強の恩恵を受け一層高出力化したダークネスウィングが弾き返す。マシンガンで地面を撃ちわざと外した弾が爆発、足場を乱してカルキノスが転倒しかけた瞬間をフォースハンドが携えるライフルで仕留めて行く。だがコクピットブロックや動力炉は潰さない。主戦域が都市部である事情を考慮し、要らぬ被害を及ぼさず最小限の火力で目標を確実に沈黙させる処置だった。
 瞬く間に達磨にされたカルキノス達。つい先ほどまでレイテナ軍を狩っていた者達はたったひとりの羅刹によって狩り尽くされてしまった。だがいずれの機体の搭乗者も死に体になっている者はいない。鬼燈に掛かれば不殺など造作も無い。バーラントの兵は手心など知る由も無かったのだが。
「お……鬼が……赤い鬼がぁ……!」
 四肢粉砕されたカルキノスのコクピット内で歯を鳴らし震えるパイロット。オブリビオンマシンから開放されたのもあってか戦意と呼べるものはもう微塵も無い。放置していても害を及ぼすことはないだろう。鬼燈の戦術が結果として敵の心を圧し折る功を奏した。道路上に転がるカルキノスの残骸のそばにアポイタカラを着地させ、鬼燈は戦果を確認すると満足気に二度うなずくのだった。
「うんうん、生身とは違った楽しみがあるよね!」
 赤鬼が魅せた悪鬼羅刹の如き大立ち回りをただ茫然と見ている他無かったレイテナ軍の兵士達は、ほどなくして我に返ると漸く事態を飲み込んだ。奇跡が来た。イェーガーが来た。赤い鋼の鬼に乗ってやってきたと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
街を襲うなんて、そんなことやらせないよっ!
ブルー・リーゼ、シル・ウィンディア行くよっ!

空飛びたいけど今回は陸戦だね
【推力移動】で街中を3次元移動
ジャンプしたあとの着地は、建物の陰に隠れて硬直を隠すよ

ジャンプ時は【空中戦】の要領で索敵しつつ
敵機発見したら、ランチャーで撃ちぬくよ

敵が集団になったら
ツインキャノンとホーミングビームの【誘導弾】での【範囲攻撃】でまとめて攻撃

射撃機と思って近寄ってくれたら…
左手に持ったセイバーで敵機の腕部・脚部・武装を狙って【切断】!

囲まれたら【高速詠唱】でのエレメンタル・シューターで撃ち抜いていくよ
あったれーーっ!
攻撃時・UC使用時は、コックピットを避けて不殺だね



●青き閃光奔る
 レイテナ都市部の中央区画は酷い荒れ様だった。どの方角を見ても転がっているのは、大破し黒煙を昇らせているキャバリアの残骸。拠点攻撃用の兵器の直撃を受けて中程からへし折られた高層ビル。老若男女関わらず平等な比率の引き潰された骸。
 死屍累々な街並みの間を走る単機のキャバリアがあった。騎士を想起させる造形に硬質な照り返しを宿す白と青の装甲。機体の全高ほどもあろうかというビームランチャーと背面のツインキャノンが砲撃力の秀逸さを黙して語る。そして機体の輪郭を一回りほど巨大に見せるバインダータイプの大型ブースターユニット。簡潔に述べるなら高機動砲撃戦キャバリアと言った印象を与える機体だろう。
 シル・ウィンディア(青き閃光の精霊術士・f03964)が座する精霊機、ブルー・リーゼMk-Ⅱが、戦禍孕む風を裂いて跳ぶ。
「もうこれ以上街を襲うなんて、そんなことやらせないよっ!」
 敵を探す青い瞳がレーダーとモニターを見据える。惨状を見ても意思は揺るがない。持ち前の明るさ故か、数多の戦場を突破した経験と実力故か、亡き母との誓いか。ブーストレバーを握る指で四葉のクローバーをあしらったリングが銀光を煌めかせた。
 ブルー・リーゼが跳んでは着地し、また跳ぶ。置き去りにした背後ではアスファルトに蓄積された煤塵が巻き上がっていた。今は飛行したいところを堪えて跳躍を繰り返して進んでいる。殲禍炎剣を警戒している面もあるのだろうが、市街の地形条件を活用した立体機動を取るための意味合いが強い。結果的に推進剤の節約にも繋がっている。
 大きく弧を描く大跳躍。高度が頂点に達すると必然的に視野も広く深くなる。空中戦の経験で培った猛禽の目の如き観察眼。特徴的なシルの大きな目がレーダーより先に敵機を捉えた。
「見付けた!」
 道路が十字に伸びる前方の交差路にカルキノスを視認。間を置かずにロックオンマーカーが重ね合わされる。だがターゲットとはまだかなりの距離が開いている。シルに焦りは無い。跳躍の運動エネルギーが消失し機体の降下が始まる。ブルー・リーゼがビームランチャー『ブラースク改』を射撃姿勢で構え、狙撃モードでの充填を開始する。だが敵機もこちらを発見したようだ。コクピット内に被ロックオン警報に続けて誘導弾警報が響く。しかし狙われるのはシルも想定内だ。そして着地時の硬直を突かれることも。カルキノスより発射された拠点攻撃用の大型ホーミングミサイル。弾頭がガスの白煙を引きながらブルー・リーゼへ向かう。着地の瞬間を狙った必殺の一撃が、白と青の装甲を破砕するはずだった。
 シルがブルー・リーゼのスラスターを微かに噴射させた。生じる推力は極小だが、自由落下中の機体は弾かれたように横へスライドし着地する。着地地点の眼前には分厚いビルの残骸があった。そこへ着弾したミサイルが拠点攻撃用らしく大爆発を起こす。原型を留めないまでに砕かれた残骸の向こうに、無傷のままのブルー・リーゼの機影が立ち上がる。
「撃ち抜くよっ!」
 操縦者の魔力を変換し限界まで収束したブラースク改が狙撃モードで発射される。魔粒子の光線がカルキノスまで一直線に伸び脚部を貫いて溶解させた。二本の脚を同時に失ったキャバリアはなす術なく地面に伏せ行動不能となる。
「クソッ! やられた! ポイントB55だ! 来てくれ!」
 バーラントの兵士は報復にと友軍へ救援を請う。流石正規軍だけあって反応は早く、ブルー・リーゼのコクピット内モニターに表示されるレーダーが四方から次々に出現する反応を捉えていた。だがシルにとって元より想定通りの状況だ。武装のセレクターをツインキャノン『テンペスタ』とホーミングビーム砲『リュミエール・イリゼ』に合わせる。真正面の道路上にカルキノスの集団が現れた。こちらを見付けるや否やロケットを発射してくる。構わずトリガーを引くシル。テンペスタのバレルが九十度倒れ正面を向く。伸長する砲身内部で臨界までチャージしたビームが放出され太い光の柱としてカルキノスへ向かう。途中ロケットを巻き込んだビームは密集陣形を取っていたカルキノスの足元を直撃。爆轟と共に吹き飛ばしてコクピットを除く部位をほぼ全損状態に陥れた。
 まだ終わっていない。着弾を見届ける暇も無く機体を旋回させる。側面よりまたカルキノスが集団で押してくる。性懲りも無くまたロケット弾だ。リュミエール・イリゼのマルチロックが完了する数秒を待って発射、捕捉対象分の指向性ビームが一斉に目標へ飛び手足を射抜いて行く。
「敵は一機だ! 全方向から同時に仕掛けるぞ! 取り囲め!」
 漸く戦術を変更する気になったのか、残存しているカルキノスが全機武装をマシンガンに持ち替えるとブースト。実体弾の速射を浴びせながらブルー・リーゼへ急接近する。シルは殺到する弾幕を繊細なスラスター制御で擦り抜ける。ちらりとエネルギーゲージに視線を向けた。まだかなり余裕がある。跳躍移動の節約が活きたらしい。だが遂に銃弾の回避が苦しいところまで距離が詰まる。この瞬間をシルは待っていた。
「精霊達よ、我が声に集いて、全てを撃ち抜きし光となれっ!」
 高速で詠まれた術の言葉。ブルー・リーゼのツインアイの片方が主の声に応じたかのように一瞬だけ強く光る。
「あったれーーっ!」
 ブルー・リーゼがまだ使用していないとある武器を除いた全ての砲から、シルが練り上げた魔力が光弾となってばら撒かれた。火水風土の複合属性を持つ光弾は、マイクロミサイルの如く幾何学模様を描きながら周囲のカルキノスを穿つ。売り文句の装甲も耐魔法コーティングなど施されている訳でも無く、複合属性魔光弾を至近距離からまともに浴びて次々と破砕されて行く。
 包囲された危機的状況を利用し形勢を逆転したシル。だが不意にブルー・リーゼの影が大きく膨らんだ。
「羽付きが! もらったァ!」
 偶然出遅れ、攻撃範囲外に居たため無事だったカルキノスの一機がフルブーストで突撃し飛び掛かる。拠点攻撃用のブーストハンマーを振りかざし即死の一撃を叩き込んだ。
「は?」
 つもりだったのだが、眼前からブルー・リーゼの姿が忽然と消失した。ついでにハンマーも柄を残して喪失している。バーラント兵士の思考が完全停止した。
 理由は言ってしまえば単純だ。初めから予期していた攻撃をブルー・リーゼの瞬発力を活かして擦り抜けたのだ。シルは元より砲撃ばかり繰り返していれば敵機がこちらの近接戦闘適正を過小評価するのだろうと見当を付けていた。加えて回避ついでにハンマーを切り落としてやったのだ。今まで秘匿していたビームセイバー『エトワール』で。
「な、なあぁッ!?」
 狼狽えるも訓練された兵士らしく本能で武器をマシンガンに持ち替えようと兵装セレクターを操作するバーラント兵。だがカルキノスが武器変更を実行する事はなかった。
「斬るよっ!」
 幅広の刃に星の輝きを宿すビームセイバー、エトワール。光の軌跡が走ったかと思えばカルキノスの右腕が宙に舞う。続けてエトワールが横になぎ払われ頭部を切り捨て縦一文字斬りが左腕を喪失させた。「えい!」と短い言葉と同時に繰り出されたブルー・リーゼのスラスター噴射を伴う蹴り飛ばしが決め手となり、ハンマー持ちのカルキノスは仰向けに倒れ完全に沈黙した。
「ひっ! ひぃぃお助けぇッ!」
 搭乗していたバーラント兵の情けない声が集音センサー越しにシルの耳に届く。コクピットハッチを強制排除し脱出した後、恐怖に思考を支配されたまま何処ぞへと逃げてしまった。シルはやや安堵も含めた眼差しでその姿を見ていた。不殺の徹底は成された。周囲で聞こえ始めた同様の悲鳴が証となった。
「よし! 次!」
 刃に付着した血を払うようなモーションでエトワールの光刃を消失させると、再度大跳躍して目標の探索に戻った。晴天を思わせる青い瞳からはまだ気力は消えていない。彼女の魂と魔力が続く限りブルー・リーゼも戦い続けるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンネリース・メスナー
アドリブ歓迎

ギムレウスでカルキノス相手に壊滅なんて、確かに素人扱いは免れないわね
ふん、皆殺しにはする癖に味方が死のうものなら怒り狂うなんて軍人失格よ。軍人失格はさっさとキャバリアから引き摺り下ろしてあげるわ!

市街戦ならば任せない、伊達にズィガ帝国親衛隊の首都防衛隊にいたわけではないわ!
……とはいえ、結局は首都防衛隊は碌に戦うことなく敗戦したのだけど
あと市街戦用のカービンを忘れたわね。市街地でロングビームライフルは取り回しが不便で威力過剰ね
まぁそれぐらいは技量で補ってみせるわ
ふん、そんな邪気塗れの思念では自分の居場所と攻撃を予告しているようなものよ!
そのような見え見えの攻撃では反撃されるだけだわ



●亡き帝国の将校
「ギムレウスでカルキノス相手に壊滅なんて、確かに素人扱いは免れないわね」
アンネリース・メスナー(元エリート親衛隊・f32593)が、モニターの端に映る物言わぬ鉄塊と化した機動兵器に冷ややかな眼差しを向け、やれやれと言外に付け加え首を振る。纏う軍服を見て気付く者もいるだろうか。彼女は今は亡きズィガ帝国の首都防衛戦に於いて親衛隊のひとりに数えられたエリート中のエリートだ。防衛隊は禄に交戦する事無く敗戦を喫してしまったが、そんな身の上からしてもやはりレイテナ軍の防衛力はこの程度なのかと思わざるを得ない。カルキノス相手にこうも一方的に殺られるのか。若くして親衛隊、しかも国の本丸を守護する重役に就いていた経験があるアンネリースはカルキノスとギムレウス両者の性能について十分熟知していた。相手がオブリビオンマシンだという事を加味しても自分ならこんな無様は晒すまい。かまけているのはここまでだ。任務を果たすべくアンネリースは機体を前進させる。
 アンネリースが搭乗する機体はアマランサス・ラピート。高機動エース専用機を更に個人用に調整したものだ。菫色を基調とした装甲は一部が搭乗者の波打つ豊かな髪、或いは瞳に似た紫で塗装されている。シールドを含めた全体各所の金の装飾と頭部の鶏冠状のパーツが優艶なまでの品格を醸し出す。アンネリースと相互に見れば彼女専用機であることが語られずとも察せられるだろう。
「……市街地戦用のカービンを忘れたわね」
 何気なくウェポン・セレクターを見た際、不意に口から溢れた言葉。現在のアマランサス・ラピートはロングビームライフルを装備している。名が示す通りの長銃身高出力ライフルだ。狙撃任務にも対応可能な精度も持つ。強力なライフルなのだが果たして今の作戦領域の都合と参照して適切がどうかと訊かれれば疑問なところだ。長銃身故に取り回しが悪く威力過多。だが持ってきてしまったものは仕方ない。その程度の不利など容易に覆せる技量を元ズィガ帝国の親衛隊が持ち合わせていない道理など無いのだ。
 敵を探して荒廃した市街を通常戦速で進むアマランサス・ラピート。日光を受けた頭部の鶏冠が取り巻く環境とはいささか不釣り合いな輝きを見せる。黒焦げになったギムレウスの骸を踏みしめ一歩進んだ刹那、アンネリースは肌へ不快に吹き付ける生温い風のようなプレッシャーを感じた。優秀なサイキッカーだからこその察知だろう。敵が居る。
 アマランサス・ラピートがロングビームライフルを即時射撃位置で構えた。場所は開けた大通り。射線は通るが様々な残骸が転がっている。左右にはビルも立ち並んでいるしレーダー波を掻い潜って飛び出してくる敵機に留意せねば。元親衛隊員の頭脳が敵を倒すために最大稼働を始める。より不快感を増したプレッシャー。視界にもレーダーにも動体は無い。だが本能がトリガーを引かせた。見える。アンネリースの額を稲妻状の思念波が走った。
「そこですわ!」
 ロングビームライフルより放たれた高収束粒子弾が大通りを迸る。視線の先には未だ何もない。だがビルの狭間からカルキノスが前触れもなくゆらりと現れた。まるで自ら射線に飛び込むかのように。
「がっ!?」
 撃ち抜かれた頭部を丸々喪失するカルキノス。完全な不意打ちにオートバランサーも対応しかねたらしくそのまま横倒しになりシステムダウンする。
「ふん、そんな邪気塗れの思念では自分の居場所と攻撃を予告しているようなものよ!」
 サイキックセンスによる読み。否、感じた通りだ。アンネリースは電子センサーが知らせるよりも先に敵機の動向を感じ取り、FCS(火器管制機能)の補助無しのノーロックでライフルを発射し、あろうことか一撃で機能停止に陥れたのだ。絵面としては地味かも知れない。だが成した業はとんでもない芸当だ。
「いたぞ、レイテナの生き残り……いや待て、あの機体」
 続けて飛び出してきたカルキノスを操るバーラント軍の兵士が、全ての言葉を言い切るよりも先にアマランサス・ラピートのロングビームライフルによって機体を撃ち抜かれた。
「横っ腹もらったァ!」
 下衆めいた殺気が膨れ上がる。アンネリースの右手側の視界外から迫る振動音。スラスター全開でカルキノスがマシンガンを連射しながら突撃してくる。堅牢な装甲を頼りにタックルをぶちかます算段だろう。だがそれも初めから見えていたと言わんばかりのバックブーストで躱すと、衝突対象を失って目の前を素通りしようとした敵機へ左腕を突き出す。鞘となっていたシールドより切先を覗かせているナイトソードが衝角の役割を果たし盛大に跳ね飛ばした。
「そのような見え見えの攻撃では」
 またしても新たなカルキノスが距離を詰めてきた。得物はブーストハンマーだ。
「反撃されるだけだわ」
 振り下ろされる直前まで引き付けてシールドでカルキノスの手元を弾いて仰向けに擱座させた。パリィだ。ズィガ帝国の元親衛隊は高等な反撃技術で有言実行してみせると、ロングビームライフルを四肢に突き付け、続けてトリガーを四連続で引く。長銃身がむしろ役に立ったらしい。高密度に収束されたビームは厚い装甲も容易く貫通した。鉄の棺桶となったカルキノスのコクピットからパイロットが緊急脱出するがそれには目もくれない。
「こいつ強いぞ。しかもレイテナの生き残りなんかじゃない。あの機体はまさかズィガの……」
「構うな落ち着け、西と北から十字砲火だ」
 アンネリースが内心で示す通り、オブリビオンマシンの影響とは言え、他者を皆殺しにする癖に味方が死のうものなら怒り狂う都合の良すぎる腐り振りのバーラント兵達だが、やはり腐っても軍事超大国の兵士。指示を受けてからの動きは速やかだ。無論アンネリースとて敵が次に打つ手の兆候は感付いている。アンネリース専用アマランサス・ラピートのメインスラスターが噴射炎を放つと高速機らしい軽快な加速を発揮してくれた。座して包囲を待つ理由などない。まずは北を始末する。
 大通りの横幅一杯に広がりマシンガンで迎撃するカルキノス。アマランサス・ラピートは全てをシールドで防ぎ切ると速度を緩めないまま集団へ突進。纏めて跳ね飛ばした。
「横?」
 不快なプレッシャーが左右から押し掛かる。自分に向けられた下賤な思惟。アンネリースは自身の深淵に潜む暗く重い淀みが蠢くような感覚を覚えたが、スラスターによる機体制動のクイックターンで生じた重力加速度によって掻き消えた。ウェーブが掛かった紫髪が旋回方向につられて靡く。いま跳ね飛ばした敵は囮だったか。だから何だという。
「見え透いた殺気を隠せもしない。それでは軍人失格よ」
 アマランサス・ラピートがブーストで跳び上がる。すると左右双方から放たれた銃弾の嵐がバーラント軍同士に殺到する間抜けな結果となった。
「軍人失格はさっさとキャバリアから引き摺り下ろしてあげるわ!」
 生まれた隙をアンネリースは逃さない。滞空したままロングビームライフルの照準を素早く済ませると発射、天からの落雷のように降り注ぐ高熱のエネルギーによってカルキノス達は次々に手足を砕かれて行く。これで北側は潰した。
 包囲するつもりだったバーラント軍のカルキノス達の一方を僅かな時間と鮮やかな手際で駆逐したアンネリースを前に、残存しているバーラントの兵士達は戦意を削り取られてしまった。オブリビオンマシンは尚も狂気に誘う。だがそれ以上にアンネリースが恐ろしい。
「ズィガの亡霊め……!」
 カルキノスに乗る者の内の誰かがわざわざ相手に聞こえるよう全周波数の通信で吐き捨てた台詞。アンネリースの耳朶にも侵入するが、高潔なプライドが無反応という形で跳ね返す。
 アマランサス・ラピートがEパックを使い果たしたロングビームライフルを一旦投棄すると、シールドよりナイトソードを引き抜く。膨れ上がるスラスターの光。折れかけの戦意を奮い立たせ構えるバーラント軍。アンネリースが戦闘を繰り広げた区画の制圧が成されたのは、それからさして遅くない時間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天城・千歳
【SPD】
アドリブ、絡み歓迎

オブリビオンに操られているとは言え、容認出来ない所業ですね。
とは言え、オーダーは敵の無力化。ここはオーダーに従いましょう。

衛星が反応しない程度の高度でサテライトドローンを展開し戦場に通信、観測網を構築。
歩行戦車中隊、歩行工作車中隊で防衛ラインを構成。
観測網からの観測と各機のレーダー、センサー及び通信傍受による【索敵】
【偵察】【情報収集】で集めた情報を元にUCを使用【戦闘知識】に基づき【瞬間思考力】で最適な攻撃ポイントとタイミングを計り、【誘導弾】の【一斉発射】による【範囲攻撃】で【先制攻撃】します。
誘導弾は【部位狙い】で関節を狙い行動不能にし、搭乗者を確保します。



●遠隔戦闘
 現在都市を侵攻中のバーラント軍は、全てが例外なくオブリビオンマシンが及ぼす精神汚染の影響を受けている。沸き立つ殺意によって積極的に非戦闘員を惨殺し続けるその有様は到底まともな軍隊ではない。
「とは言え、容認出来ない所業ですね」
 損壊したオフィスビルの中ほどから市街を見渡す天城・千歳(自立型コアユニット・f06941)は足元で無造作に転がる何者かの遺体を見ると、事態に対する評価を下す。遺体を見る目は妙に機械的だ。それもそのはず、彼女の本質は宇宙戦艦の自立型コアユニットでありウォーマシンなのだから。現在は人型リモート義体にメインコントロールを移している。電脳魔術士だからこそ成せる芸当だろう。なお本体は建物外で乗物に偽装し市街の何処かに潜んでいる。だが何故リモート義体にメインコントロール権限を委譲しているのか。それは彼女が採る戦術プランにある。コマンドポストは小型な方が好都合なのだ。
「オーダーは敵の無力化。ここはオーダーに従いましょう」
 遺体より視線を剥がすと再び市街を見渡す。バーラント軍が実行した事は本来ならば即刻万死に処されて然りの重罪だろう。だがオブリビオンマシンにとってそれこそが思う壺であり、第一波のカルキノス部隊の惨死の如何によって第二波を担当する兵員の精神汚染度が増減するというなんとも忌々しい戦法なのだ。だが宇宙戦艦のコアユニットとして設定されたのもあってか、至って冷静沈着な思考傾向の千歳は粛々と依頼内容を遂行する。
「サテライト・ドローン起動」

 市街に潜む我が身の本体より解き放たれた、合成開口レーダーと各種複合センサーを搭載した無人機。殲禍炎剣の照射域に当たらない高度で街中のあちこちへと飛び立ったそれらは、千歳の視覚と聴覚を広げる新たな感覚機関となって観測網を構築する。放ったドローンの内いくつかが熱源と動体をカメラに捉えた。カルキノス、つまり敵だ。向こうはまだこちらに気付いていない。しきりに地面やビルの影、ビルの内部を探索している様子が伺える。逃げ遅れた市民を探しているのだろうか。傍受した通信と照らし合わせてもその可能性が非常に高い。千歳にとって有利な状況だ。続けて新たなコマンドを実行する。
「両戦車中隊移動開始」
 千歳の本体と同じく市街に潜めてあった歩行戦車と歩行工作車の中隊が移動を開始した。並行して千歳の人工頭脳がドローンから送信された各種情報を集約、過去の実戦経験や都市部における戦術論と照らし合わせ最適な防衛ラインを構築するべきポジショニングを算出する。所要時間は僅か数秒と掛からなかった。
「おっと……いたぞ、レイテナの残りカスどもが」
 新たに傍受した通信。移動中の歩行工作車中隊がバーラントのカルキノス部隊に視認されてしまう。有無を言わさずチョバム・アーマーの堅牢さを武器に轢き殺そうと突進してくる。速やかに後退する歩行工作車中隊。その様子をドローンが頭上から監視している。
「ラプラス・プログラム起動、状況の予測演算を開始します」
 一連の流れは予め千歳が意図したものだ。収集した情報が価値を果たす時が来た。まんまと歩行工作車に釣られるカルキノス。後退を繰り返していくにつれ数が雪だるま式に倍増する。これも意図の内にある。バーラント軍が流石に鬼ごっこを繰り返しては埒が明かないと、複数の方向から追い詰めようとする。だが千歳が操る歩行工作車達は悉くをすり抜け掻い潜り、手のひらで玉を転がすかのように哀れなカルキノス達をとある座標へと導いて行く。
 周囲に展開していた部隊の殆どを釣り上げた頃と座標への誘導が完了するのはほぼ同時だった。誘われるがまま大通りに出てきたカルキノスの集団。目にしたのは歩行戦車中隊が並ぶ防衛ラインだった。
「攻撃開始」
 千歳が短く指示を与える。一斉発射されるミサイル。カルキノスが条件反射で散開し回避しようとするも密集度が高すぎて味方同士で交通事故を起こす無様を見せた。更にラインを構築した歩行工作車中隊の攻撃も加わって十字砲火が成立する。着弾するミサイルが大小の爆光を咲かせると、宙にカルキノスの手足が舞った。
 十分な情報蓄積と慎重かつ冷静な戦術。戦闘機械らしい精密な戦い振りは、一斉発射されたミサイルのひとつひとつにも徹底されていた。いずれの弾頭も関節部を狙ったもので、搭乗者を殺さず機体のみを殺したのだ。千歳は先に宣言した通りオーダーを忠実に遂行した。ただの一度も仕損じた事は無い。
「カルキノス沈黙。周辺にキャバリアの反応無し」
 ドローンから送られる生体反応多数とのメッセージを確認後、ラプラス・プログラムの起動を解除した。ドローンと戦車中隊の無人機を駆使した遠隔戦闘。千歳は直接出向く事なくバーラントの軍勢を手玉に取り殲滅せしめた。担当区画の掃討は完了だ。再度無人機に新たな指定座標までの移動命令を与えると、自身のリモート義体もビルを後にする。戦場の風を受けた長髪が、後に引かれながら静かにそよいでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレーネ・ジルコニウム
【ガルヴォルン】
「市民を皆殺しにしようとするオブリビオンマシンは放置できません!
私設武装組織ガルヴォルン、紛争に介入します!
錫華さん、サージェさん、特殊部隊の皆さん、お願いしますね!」

異世界の技術が導入されているとも言われている機動戦艦ストライダーの艦長席で、錫華さん、サージェさんや、量産型キャバリアに乗った特殊部隊に指示を出します。

さすがに戦艦で街中に入るわけにはいきませんので、ストライダーは敵軍の第二波に備えて布陣しておきましょう。

「特殊部隊の皆さん、敵は重装甲のため量産型キャバリアの武装では効果が薄いです。
フォーメーションを組んで錫華さんとサージェさんの援護に回ってください」


支倉・錫華
【ガルヴォルン】

目的が市民の皆殺し?
それは戦争ではないね。

傭兵がいうのもなんだけど、
戦争にもルールってものはあるんだよ?

キャバリアを借りてる時間はないか。

「アミシア、スヴァスティカに都市迷彩よろしく」
『ワイヤーハーケン仕様で調整完了です』
うん、さすが。

今回大佐は指揮担当か。いろんな意味で安心だね。
「大佐、支倉錫華、でるよ」

それにしても市街戦で重爆?
遮蔽物の多い中、このスピードに当てられるかな?

わたしは建物を使った【蜘蛛の舞】で機動力勝負
一撃離脱で、相手の足を狙って撃破していこう。

サージェさん? 支倉錫華っていうよ、よろしくね。
押し返しすぎて突出するのだけ気をつけて。
大佐、タイミング任せるよ!


サージェ・ライト
【ガルヴォルン】

お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!(お約束)(艦橋にしゅたっ)

そんなわけで雇われクノイチ参上です
大佐、報酬はずんでくださいね!

いきます!かもんっ!『ファントムシリカ』!!

さって今日の私、実はキレてまーす
どんな事情があろうとも
世界の未来、子供たちの命を奪うなんてことは許しません!

エンジェライトスラスター起動!
セラフィナイトスピアで前面に斥力シールド展開
錫華さんサポート頼みます!
「突進で!勝てると思わないでください!!」
押し返して懐に飛び込んだら攻撃回数重視の【疾風怒濤】
「手数こそ正義!参ります!」

※アドリブ連携OK


支倉・燐華
ドランギムRC(燐華カスタム)で出撃です

市街戦想定のギムレウスとは、珍しいものを見た気分です
私のギムレウスRC(燐華カスタム)よりも珍妙なカスタム機ですね
市街戦ならばギムレウスより向いてる機体はあるでしょうに、私だって市街地でギムレウスは使いませんよ

カルキノスも悪い機体ではありませんし、そちらも装甲が自慢なのは認めますがドランギムには及びませんでしょう
ドランギムは重装甲とホバーによる高速移動が売りの高性能量産機ですので
市街地をホバーで高速移動して敵を翻弄して、ドラムマシンガンで牽制しつつジャイアントバズーカで脆弱部を狙って撃破していきます
コクピットは意図的に外してパイロット殺害は避けますが



●機動戦隊ガルヴォルン
 レイテナに属する都市の防衛部隊に配備されているギムレウスには、市街地戦を考慮したセッティングが施されている。背面のロングキャノンを短銃身のガトリングキャノンに置換したものだ。
「市街戦想定のギムレウスとは……」
 支倉・燐華(戦闘侍女・f31277)は何か珍妙な生物でも見たような気分になっていた。ギムレウスを扱う者として特性は深く心得ている。ひょっとして頑丈だからという理由だけで採用されたのではないか。経験則で言うならギムレウスより市街地戦に向いた機体は幾らでもある。事実、燐華はギムレウスRCでは無くドランギムRCで出撃していた。
 ドランギムとは重装甲と高機動を両立した量産型キャバリアの傑作機で、逆三角形の如何にもな体型に依らずホバー移動による軽快な高速移動が可能な機体だ。装甲の頑強さでは同じ量産型キャバリアのカルキノスを凌ぐとされている。加えて言うなら総合性能も標準より高い。
 そんなドランギムRCの大きな一つ眼が、乗り捨てられた市街地戦仕様のギムレウスをどこか哀れそうに見つめていた。
「再装填完了しました、どうぞ」
 友軍の量産型キャバリアからジャイアントバズーカが手渡される。ドランギムのために誂えられたような形状の重砲。マニピュレーターが砲身を握るとインターフェース上で灰色に非活性化されていたバズーカの項目が明るい表示に切り替る。弾数も最大だ。同時に僅かな休憩時間も終わった。ギムレウスの前を離れ自身に割り当てられた持ち場に戻る。
 外界と市街を隔てる南大ゲート前。そこのバスターミナルを補給拠点として北へ伸びる幹線道路上に形成されたガルヴォルンが支える最前線。燐華は再び渦中に帰って来た。
 バズーカを一発二発と続けざまに放ってホバーで地表を滑り防衛ラインの一番前まで躍り出る。しかし装甲を過信して無闇に姿をさらすような真似はしない。崩れた建造物の残骸を盾とした位置取りを行う。サイクロプスを想起させるモノアイが見つめる先では、白いガスの尾を引く弾頭がカルキノスの一機に着弾し、頭部を粉砕せしめていた。
「お待たせしました」
「ん……」
 隣に立つ機体に搭乗する支倉・錫華(Gambenero・f29951)が、ごく短く小さな発声で応じた。姉妹の間に最早言葉は不要といったところなのだろうか。彼女が駆る機体はスヴァスティカ SR.2だ。どこか甲冑騎士を思わせる全体像。曲線が目立つ装甲に保護されたインナーフレームには駆動部同士を繋ぐドラム状のギアが多く見られる。本来オリーブドラブの装甲色は都市迷彩に塗り替えられていた。錫華のパートナーユニットであるアミシア・プロフェットが出撃前に主人の命を受け塗り替えたのだ。更にワイヤーハーケン仕様の調整も施されている。市街地での立体機動を意識したセッティングだろう。この調整が後に想定通りの真価を発揮する。
 幹線道路上で繰り広げられる撃ち合いの応酬。痺れを切らしたのか一機のカルキノスが装甲を盾に強行突撃を敢行する。スヴァスティカはその迂闊さを逃さない。
「ワイヤーハーケン、行って」
 射出されたふたつの有線の刃がカルキノスに伸びて装甲に食い込む。自重の三倍を支え得る強靭なワイヤーが力強く巻き上げられる。途端にカルキノスは正面から転倒しスヴァスティカの眼前まで引き摺り込まれる。立ち上がる隙も与えないまま歌仙を抜刀し、細身ながら鋭利な片刃を関節駆動部に差し込む。魚でも捌いてるかのような慣れた手付きで一連の動作を終えると、コクピットブロックのある胴体を残すのみとなったカルキノスを後方に蹴り飛ばす。すると控えていた量産型キャバリア達がそれを受け止めてコクピットハッチを強制開放し武装解除させた。
 ガルヴォルンの戦況を数で支えている量産型キャバリア。いずれもセレーネ・ジルコニウム(私設軍事組織ガルヴォルン大佐・f30072)がユーベルコードによって呼び出した最精鋭が操者を務めている。けれども彼女は今ここにはいない。離れた安全な場所で指揮に専念しているのだ。都市の外で待機している機動戦艦ストライダー。その艦艇こそ私設軍事組織ガルヴォルンを率いる者の玉座。
「市民を皆殺しにしようとするオブリビオンマシンは放置できません! 我々ガルヴォルンが実力を以て排除します!」
 セレーネは艦長席に腰を深くかけたまま、毅然とした声音で宣言した。猟兵としての役割という意味合いも含むが軍籍を持つ者として断じて看過できるものでは無い。炎の色を宿す瞳に怒りが灯る。だが戦術を構築する頭脳は氷のままだ。大佐の階級章を付けた軍服姿が、年相応に少女らしい顔立ちの雰囲気を上書きしてしまうほどの気迫を醸し出す。年端も行かないなどと侮るなかれ。軍事組織の長は伊達では無い。
「そうだね、大佐。傭兵が言うのもなんだけど、戦争にもルールってものはある」
 カルキノスの集団へスネイル・レーザーの水平掃射を浴びせながら錫華が頷く。
「初めから市民の殺しが目当てなら、それはもう戦争ですら無いけどね」
 遮蔽物への退避が遅れたカルキノスが光線の弾幕をまともに浴びる。持ち前の堅牢な装甲によって多くを防いだものの、手足の関節を射抜かれ戦闘不能となり膝から崩れ落ちた。
「ごもっとも!」「いぇす!あいまむ!」
 よく通る声音で応じたのは外見から判別するに潜む気があまり感じられない世に潜むクノイチ、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)とサイキックキャバリアのファントムシリカに宿るソウルアバター、シリカ。燐華のドランギムRCの後を追う格好で最前線に並び、たびたび強行突破を試みるカルキノスをこれまた潜む気皆無な荒々しい槍捌きで返り討ちにしている。
「サージェさん? 押し返しすぎて突出するのだけ気をつけて」
ファントムシリカの後方からスネイル・レーザーで火力支援を行いフォローする錫華。落ち着いた口振りで喋る傍ら、ロックオンカーソルを合わせ精密に非殺傷部位のみを撃つ姿には、どこか冷淡な気配すら感じる。
「いえいえ!このぐらいなんのその!」「へーきへーき!」
 サージェとシリカが二人同時に喋るので通信が非常に賑やかだ。穂先に斥力を生じさせたセラフィナイトスピアを横凪に払う。二機同時に接近を試みたカルキノスがどちらも派手に弾き返された。
「サージェさんってやっぱり言うほど潜めてないですよね」
「そんなことないもん!!」
 セレーネの指摘にクノイチが条件反射で否定に入る。なおセレーネとてただ事態を傍観しているわけではない。
「特殊部隊の皆さん、敵は重装甲のため量産型キャバリアの武装では効果が薄いです。フォーメーションを組んで錫華さん達の援護に回ってください。あとサージェさんはそれ以上前に出ないように」
 極めて落ち着いた声音で随時指示を更新する。自ら召喚した精鋭部隊を駒として、主力のガルヴォルン機動部隊を援護し隙の無い布陣を維持する。更には現在主戦域となってる幹線道路上の後方、燐華達が都市へ進出する際に通り抜け真っ先に制圧した南部大ゲート前バスターミナルに補給コンテナを施設しバックアップの体制も整えていた。敵軍の第二陣に備える意味も込めて都市外の安全域に布陣したストライダーに座しているからこそ可能な戦術指揮だろう。戦況を俯瞰して見られるオペレーターが付いた兵は強い。
「大佐が指揮に専念してくれてると、色んな意味で安心だね」
「……?」
 セレーネは錫華の何気ない呟きが無意識に含む意味を察知したが、自らに起因する事もあってか具体的なところは分かりかねた。
「ところで大佐、こちらもかなり押し込んで来ましたね。敢行するなら今では?」
 燐華が問う。友軍の量産型キャバリアを伴いながらやや前進。拠点攻撃用の爆装に切り替えたと思わしき敵機をドラムマシンガンで磷付にしショルダーチャージで打ち据えノックダウンした。
「ふむ、確かにもうそろそろ良い頃合でしょう。これ以上引き伸ばす必要も無さそうですからね」
 セレーネ達ガルヴォルンは十分な兵站と戦力を一点に集中、粘り強く激しい抵抗を演出することで周囲に展開中の敵部隊を誘引、有利な体制で迎撃し続けることでの漸減を計っていた。戦略が想定通りの効力を生み出し南方面の敵部隊の絶対数はかなり減少している。
「大佐、タイミング任せるよ!」
 錫華の後押しを受けて目を閉じ息を深く吸い込む。そして艦長席から立つと腕を横に振るった。
「ガルヴォルン全軍へ! これより担当区域のバーラント軍の掃討作戦に移行します! 防御線を解除、攻勢に転じ押し返してください!」
 命令が降った瞬間に空気の流れが変わる。ゲート前を封鎖するような配置から一転し量産型キャバリアと支倉姉妹、サージェから成る機動部隊が北上を開始した。一番槍を取ったのはファントムシリカだった。
「いきます!かもんっ!れっつファントムシリカ!」
 背面に一対の羽のように展開されたエンジェライトスラスター。光が溢れフォトンリングが形成され推力が生じると同時に弾けて消失した。
「錫華さんサポート頼みます!」
「わかった」
 乱射したスネイル・レーザーが、サージェが狙う敵機以外を進路上より散開させた。
「さって今日の私、実はキレてまーす!」
 真正面からマシンガンの集中豪雨を受けるも、セラフィナイトスピアの穂先に生じたフィールドで弾道を逸らして構わず突き進む。
「どんな事情があろうとも! 世界の未来、子供たちの命を奪うなんてことは許しません!」
 加速を乗せた突き込みがカルキノスを弾き飛ばし、そして。
「突進で! 勝てると思わないでください!!」
 懐に飛び込み疾風怒濤の連続攻撃を叩き込む。
「手数こそ正義! 参ります! そにっくぶろー!」
「がぁぁァァ!」
 僅かな防御体勢を取るのも叶わず全ての連撃をまともに浴びるカルキノス。攻撃モーションが完了した時には原型を留めないまでに粉砕されてしまっていた。それでもコクピットは避けているのだからクノイチの技量とは侮れないものだ。これを口火にガルヴォルンの逆襲が始まる。
「カルキノスも悪い機体ではありませんし、そちらも装甲が自慢なのは認めますが……」
 ドランギムRCには及ばない。流れの変化を察知し逃げ腰になったバーラント軍を燐華が追い立てる。向こうも反撃してくるがマシンガンではドランギムの装甲は抜けない。鋼が装甲を叩いて弾ける乾いた音が集音センサー越しに聞こえた。氷上を滑るようなホバー走行で倒壊したビルの残骸をジグザグに躱し、カルキノスに肉薄するとドラムマシンガンの牽制射で足を止める。今までの交戦経験で脆弱武器は既知している。
「そこを取らせて頂きます」
 至近距離で放たれたジャイアントバズーカがカルキノスの脚部で炸裂。両脚を纏めて砕かれ地に伏すと、間も無くシステムダウンした。
「次、行くよ」
 ドランギムRCの横をすり抜けて錫華のスヴァスティカが前に出る。
「ぐっ! 舐めるな!」
 拠点攻撃用に爆装しているカルキノスが大型ロケットを発射する。その戦術選択は致命的なミスだった。
「それ、このスピードに当てられるかな?」
 ワイヤーハーケンをビルの側面に打ち込みワイヤーを巻き上げる。急激な上昇制動を行いロケットの射線上から消えたスヴァスティカは更にワイヤーハーケンを逆サイドのビルへ食い込ませ僅かなスラスター噴射で飛び付いた。
「当たらねえ! 蜘蛛かよコイツは!」
 蜘蛛の舞の如くなワイヤーアクションでビル間の三角跳びを実演した末、敵機の側面に舞い降り機体を急速旋回させる。マニピュレーターには歌仙が握られていた。
「足、切ったよ。わかる?」
 刃が煌めいた瞬間、崩れ落ちるカルキノス。もう戦う事は叶わないだろう。
「皆さんよくやってくれました。後は特殊部隊で仕上げです!」
 サージェと支倉姉妹が食い破った前線を更に広げるよう浸透して行くセレーネが放った量産型キャバリア。元々損耗し疲弊していたバーラント軍兵士達を追い詰めるのは容易い仕事だった。
 これでガルヴォルンが担当した都市部南側は完全に制圧。私設軍事組織は自らの矜持を力を以て示したのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鍋島・小百合子
WIZ重視
他の猟兵との絡み可

嬉々として民に手を出すとは卑劣な者どもめ
義によって成敗してくれる!

「生身の肉体を侮っておるようじゃな?ほれ撃ってみよ」
敵機群に姿を見せれば挑発をかけ、物陰に隠れつつ爆撃を引き出させる
敵が爆撃の準備に入ればUC「煙人間変化」発動にて全身を煙状の体に変化
用意してた衣類をその場に残すことで爆撃で果てたように見せかけ敵の余裕をも引き出す
油断が頂点に達すれば反撃開始
煙体の飛翔能力で存分に飛び回りながらきゃばりあの鎧すら貫通する矢を長弓に番いては手足をもぎ取ってくれる!(視力、スナイパー、鎧無視攻撃、部位破壊、制圧射撃、乱れ撃ち、串刺し併用)
なお戦後処理に備え中の者は不殺に処す



●煙の女武者と鉄の騎兵
 クロムキャバリアに於いて、猟兵はユーベルコードを操る凄腕のパイロット、あるいは生身でキャバリアと渡り合う超人として闘争に疲れた人々に希望を与えている。鍛え上げられた肉体と鋭く研磨された業を修める猟兵ならば、我が身一貫で武闘に臨んだとしても、鉄巨人どもすら手を煩わせる相手足り得ない。
「きゃばりあ……か」
 鍋島・小百合子(朱舞の女丈夫・f04799)が瓦礫の一角に腰を下ろし独り言つ。色白な肌と相対的に艶やかな黒髪が、通りを抜ける燐火混じりの風を受けて揺らいで広がる。
 群生する混凝土造りの摩天楼と瀝青で埋め固められた街道。肥前鍋島藩出身の息女にとってこの世界の街並みはどう映っているのだろうか。身を地に沈めて崩れ落ちた鋼の巨兵。煤けた大地と焼け付いた鉄の臭い、微かに入り混じった殺劇の残滓が鼻腔を突く。
遠くで生じた爆轟が大気を震慄させる。それとは異なる地を這う騒めきを小百合子は感じ取っていた。数は複数。一定の調子を保ち徐々に近付いてくる。次第に大きくなるにつれ、騒めきは瓦礫を震えさせる振動へと変化した。
「おっと、生き残りがまだいたか」
 交差路の角にそびえる摩天楼の影より、白い鉄騎兵が姿を現した。鼓膜を痛め付けるほどに膨れ上がった騒音と地鳴り。瓦礫に座る小百合子の姿を見るや否や、複数の鉄騎兵が無遠慮に地を踏み鳴らして騒音を響かせ周囲を取り囲んだ。八方塞がりとなる小百合子。けれど気品と誇りを醸し出す表情に曇る様子は見受けられない。
「やれやれ、やっと来たか。待ちくたびれたぞ」
 微かな溜息を吐き捨てると、服に積もった煤を両手で交互に払い、気怠そうに立ち上がる。小百合子の声は特段張り上げられた訳ではないが、白い鉄騎の集音機関が聞き逃さずに拾い上げていた。
「はは、すり潰されるのをか? ご苦労なこった」
 丁寧にも外部へ拡声して応答する鉄騎兵の操者。周囲から下衆めいた笑い声が湧く。
「そなたらじゃな? 民を嬉々として殺め回っている卑劣な輩は」
「だったらどうする?」
 小百合子の双眸が鋭く細められる。
「義によって成敗してくれる」
 湧き起こる男女の大笑い。どれも違いなく周囲の鉄騎兵から発せられたものだ。鼓膜が劈かれんばかりの騒音だが小百合子には怯む素振りすら無い。
「そりゃあ怖いね。だがどうやって? 教えてくれよ」
小百合子が「よいじゃろう」と短く答え、すぐ傍らに立て掛けていた長弓を手に取った。おいおい冗談だろうと囃し立てる声が上がる。
「なんじゃ? この鹿島弓で射抜いてやると言っておるのじゃぞ? 下衆が操るきゃばりあの相手などこの身ひとつで十分じゃ」
 霊木より削り出された魔祓いの弓矢。奥ゆかしい和の情緒とは裏腹に、時に竜殺しや神殺しさえも果たしたであろう剛弓だ。だが鉄騎兵の操者達にとっては生身の人間が弓でキャバリアを仕留めるという気狂いに及んでいるようにしか解釈できなかった。思考を察して小百合子がやれやれと首を振るう。
「生身の肉体を侮っておるようじゃな? ほれ撃ってみよ」
 鉄騎兵の頭をしかと見据え、両の腕を大きく開き何処からでも殺ってみせよと攻撃を誘う。オブリビオンマシンの精神汚染の影響もあるであろう鉄騎兵の操者は、小馬鹿にされたと条件反射で連発銃式の榴弾砲を向けた。
「あァ!? 殺ってやるよッ!」
 怒りに任せるがまま放たれる榴弾。人の身体を弾けさせるには一発でも過剰な炸裂が合計六回続く。立ち上がる火柱と爆煙。粉々に爆ぜた瓦礫が空に巻き上がり音を立てて地に注ぐ。灰煙が晴れた後、和の国の文化に通じる着物がひらりと宙を舞い、小百合子が立っていた場所に落ちて広がった。
「生身の肉がなんだって? ミンチどころか弾け飛んだじゃねえか」
 鉄騎兵同士頭を向け合って嘲る。惨殺劇に満足したのか背を向け場を去り次の獲物を探しに向かう。しかし操者の一人が不意に違和感を覚えた。何かがおかしい。榴弾を撃ち込んで跡形もなく弾けたまではいい。何故跡形も無いと判別できたのか。服だけを残して消滅したからだ。いや待てその服はどうなっていた。小綺麗なままだったじゃないか。背筋を冷たい感触が這い上る。見間違いじゃないのかと身をよじろうとした瞬間、操者が見る世界が灰の砂嵐で満たされた。
「なんだ!?」
 状況把握が遅れたが、然るべき訓練を受けた兵士らしくすぐに事態を飲み込んだ。鉄騎兵の目を潰された。画面端で機体のコンディションを示す計器上では頭部が赤で表示されている。原因は理解したが一体何故。答えは簡単だ。
「殺ってやるのではなかったのか?」
 弾けた筈の女が、長弓を構えて崩れた摩天楼の上に立っている。小百合子は始めから死んでなどいなかった。挑発し発砲を誘って予め用意していた服を置き去りにするまでの茶番を演じた後、とある業を用いて爆発をやり過ごしてここまで駆け上がっていたのだ。
「あの女生きてやがった!」
 他の鉄騎兵も小百合子の姿を視認した。やはり正規軍だけあって反応が早い。狼狽えるより先に榴弾を放ってくる。崩壊寸前の摩天楼から身を乗り出している小百合子に逃げる場所は無い。
「我はもくもくと体を変えては……煙に巻く!」
 榴弾が炸裂し摩天楼を瓦礫に変える直前、小百合子の身体が煙に巻かれ消滅した。煙は空に昇って盲目となった鉄騎兵の直上に来ると、小百合子の貌を取って肉体を現した。煙人間変化によって茶番の爆轟を躱していたのだ。
「射抜くと言ったはずじゃぞ!」
 空中で身を翻しながら矢を番いて放つ。神速の二連射が鉄騎兵の両肩を貫いた。
「弓で抜かれただとォ!?」
 肩から腕までを鏃に貫通され、目に続いて腕まで失う鉄騎兵。着地した小百合子が続けて二連射を見舞う。膝に矢を受けてしまった鉄騎兵は足元から崩れ落ち、戦う為の手段を喪失した。
「女ァ!」
 推進装置を搭載した大槌が背後から迫る。大地を打ち鳴らす強烈な打撃。小百合子は今度こそ跡形も無く粉砕されたかに思われた。
「わらわの弓は、きゃばりあをも穿つぞ!」
 打ち据えられた鉄槌の上に煙が集いて小百合子が参上する。鏃以上に鋭い目が狙いを定め弦を放つ。正確に頭部を撃たれた鉄騎兵が後ろに仰反る。再度身を煙と化し宙に昇ると人体に具現化、空中のまま矢を番えて二番と三番の射撃を解き放つ。
「手足をもぎ取ってくれる!」
 口上通りの箇所に矢が突き刺さり、走る事も銃器を握る事も叶わない。小百合子の弓の業の前では重装甲などまるで意味を為さず木板同然だった。小隊を組む他の鉄騎兵も小百合子を追うが煙に巻かれて捕捉しきれず、摩天楼の上から集中的に矢を浴びせられ針鼠のような有様にされてしまう。
「ば、化物だ! 煙の!」
 身動きが取れなくなった鉄騎兵より搭乗者が操縦席の扉を強制排除して這々の体で飛び出す。
「女を捕まえて化物呼ばわりとは……とんだ身分じゃのぅ」
 煙となって空を飛んでは走り鉄騎兵に取り付くと、搭乗者の正面に回り込んで弓矢を向けた。
「なに、殺しはせんよ」
 降参せよとの意思を突き立てる。機体を失いオブリビオンマシンの精神汚染から脱したバーラントの兵には、憎悪と殺意の反動による恐慌が津波のように押し寄せていた。
「た、助けぐぎゃ」
 血迷って縋り付こうとした兵の頭を鹿島弓の下関板で殴り付けた。情けない悲鳴を最後に脳を強烈に揺さぶられた衝撃で気を失う。
「触るな、下郎めが」
 冷えた黒い眼差しが伸びた兵士を見遣る。この兵もオブリビオンに弄ばれた者のひとり。とは言え兵にあるまじき情けなさに虫酸が走らずにはいられなかった。幾分静かになった周囲を見渡すと、どの鉄騎兵も小百合子に射抜かれて転がるか挙動を止めるかだ。用いられた武器が弓矢ということもあってか損壊が少ない異様な光景でもあった。
「ふむ……十分じゃろうて」
 これで良しと頷くと鉄騎兵から降りて瀝青の街道に足を着ける。番た矢を筒に戻して肩の煤を払うと、真前に風に乗って流されてきた茶番劇で用いた衣類を掴む。此処における女武者の仕事は終わった。次なる役所は何処か、小百合子は淑やかに歩き出すと呼吸の跡だけを残してその場を立ち去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイミィ・ブラッディバック
WHITE KNIGHT、どう見ますか
「猟兵以外の友軍戦力は当てにできず、加えて見通しの悪い市街戦だ
広範囲に部隊展開して目を多くする、これしかあるまいよ」
全く同意見ですな
SERAPHIM LEGION、およびTYPE[JM-E]出撃

セラフリーダーよりセラフィム隊各機、市街地到着と同時に散開
敵を見つけ次第無力化してください
敵は実弾攻撃に対する耐性があるようです
クリスタルビットによる飽和攻撃を推奨します

粒子フィールドバリア展開
WHITE KNIGHTは索敵および敵の攻撃の予測を
予測結果を元に見切り、ダッシュで接近
伊邪那岐で牽制しつつ、CRESCENT MOONLIGHTの連撃にて各個撃破を狙います



●機械天使
 レイテナ都市白昼の騒乱。カルキノスを主力とするバーラント軍のキャバリア部隊は都市の西側から侵攻を開始、民間人へ無差別かつ積極的な攻撃を加えると同時に都市防衛部隊の尽くを撃破した。景観を残しながら打ち壊され荒廃した大都市。そこに再び新たな機体が現れた。
 黒と白からなる装甲に覆われた中量二脚の機体、ジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/開発コード[Michael]・f29697)が搭乗するクロムキャバリア、CAVALIER TYPE[JM-E]だ。もし機体から降りた搭乗者を見た者がいれば意外性を覚えるかも知れない。何故なら搭乗者の姿はTYPE[JM-E]とまるで瓜二つなのだから。
 周囲を解析しているのだろうか、血液の様な赤黒さのスリット型センサーアイに走査線が流れている。
「WHITE KNIGHT、どう見ますか?」
 ジェイミィが事象予測AIに問う。かつてスペースシップワールド中を恐怖の渦中に引き摺り込んだ銀河帝国軍の将であり、後に力をメガリス『白騎士の鎧』として利用される末路となった未来視の人工知能だ。今はこうして更に再利用されジェイミィの補助AI兼眼となっている。
 カメラと各種センサーから取り込まれた情報を複合して事象を予測、最良の選択肢を導き出す。今TYPE[JM-E]が立つ場所は都市部を循環する高速道路への侵入経路のひとつ、料金所の手前だ。例に漏れず両側面に立ち並ぶビル群共々大なれ小なれ損壊しているが。
「猟兵以外の友軍戦力は当てにできず、加えて見通しの悪い市街戦だ。広範囲に部隊展開して目を多くする、これしかあるまいよ」
「全く同意見ですな」
 至極真っ当だとジェイミィが即答する。まだ得られる周辺情報が少なすぎる。レーダーアンテナWMLD-A400"PROVIDENCE"でスキャンしようにも乱立する建造物にレーダー波を阻害されて捗るなんてものではない。振動や音でも索敵は不可能では無いが戦闘が都市部全体に拡散しているため騒音と反響で敵機の正確な位置は掴み難い。ここは目視に依る索敵と探索のため、白騎士の人工知能が言う通りに目を増やすのが適切だろう。
「では早速、SERAPHIM LEGION出撃」
 ウォーマシンであるジェイミィはキャバリアとの感覚をほぼ完全に共有している。人間で言うならば計器類や機体のコンディションが常に脳内の認識としてある状態だ。意識の中に『Unknown program: SERAPHIM LEGION PROGRAM ver.6.6.6 Activated.』とのコマンドメッセージとシステム音声が流れる。するとTYPE[JM-E]の周囲に次々とセラフィム・リッパーが降臨し始めた。数は12機で一個中隊を構成している。
「セラフリーダーよりセラフィム隊各機、散開し敵を見つけ次第無力化してください」
 無人制御されたセラフィム・リッパー達は命令を受諾すると速やかに行動を開始した。各方面に散り索敵を進める。無人機達の視界はデータリンクでジェイミィと共有されていた。うち一機が比較的近辺に潜んでいたカルキノスを目視確認。単独行動中だったらしく周囲に敵の気配は無い。セラフィム・リッパーが攻撃を開始する。先手を取った事もあってか連射されたライフルが全てカルキノスに命中した。だが大きく仰反るも踏み止まり左右に機体を振りながらマシンガンの雨で反撃してくる。
「敵は実弾攻撃に対する耐性があるようです。クリスタルビットによる飽和攻撃を推奨します」
 ジェイミィから戦術指揮が降りた。セラフィム・リッパーはスラスターを噴射し横へ滑るとビルを遮蔽物としてマシンガンを防ぐ。そのままビルを回り込み、自身を追うカルキノスの背後に出た。だが敵もレーダーで察知したのかすぐに気付いて機体を180度旋回させる。セラフィム・リッパーより放出される複数の浮遊式小型自動砲台がカルキノスを取り囲む。
「ちぃ! オールレンジ攻撃か!」
 全方向よりレーザーに襲われ前後不覚となる。闇雲にマシンガンで応戦するも細かく動き回るクリスタルを捉らえる事は叶わなかった。バックブーストし離脱を試みるが、カルキノスの機動性ではやや苦しい。発射されるレーザーが背面の推進装置を撃ち抜いた。爆発が生じ前のめりで転倒する。そこへ一斉にビットが群がる。防御が脆弱にならざるを得ない関節駆動部にレーザーを差し込むようにして発射、四肢を奪う。動力炉と操縦席が収納されているブロックを残して物言わぬスクラップと化したカルキノスが転がった。
「一機撃破、続いて二機」
他方面でも行われていたセラフィム・リッパーとカルキノスの交戦はジェイミィ側に有利に推移している。熟練兵が搭乗していたのか、オールレンジ攻撃に対応力を見せる個体もあったが、セラフィム・リッパー自身が斬艦刀で叩き伏せる事で難なく対処できた。複数の敵機と戦闘に縺れ込んだ状況では、遭遇した一機が戦闘遅延に専念している間に付近のセラフィム・リッパーが増援に向かい、先んじて交戦していた一機にかまけている背後を突く格好で速やかに鎮圧した。
「事もなく順調、良い傾向です」
「さて? それはどうかな」
 WHITE KNIGHTに真意を問い質すよりも前にけたたましい接近警報が鳴り響く。料金所のゲートをタックルで跳ね飛ばしてカルキノス小隊がTYPE[JM-E]の前に出現した。
「……ご存知でしたよね?」
 わざと教えてくれなかったのかとジェイミィの猜疑にWHITE KNIGHTは無言を返す。人工頭脳が戦術を速やかに構築する。セラフィム・リッパーを呼び戻すべきか。それには及ばない。むしろ要らぬ敵まで釣り上げて面倒な事になるだろう。ここは単機で突破する。
「なんだあの機体は?」
「セラフィムじゃないぞ」
 推察するに増援要請を受けて首都高速を経由し馳せ参じたのだろう。通信内容と合致しない機体を前に混乱が生じるが倒してしまえば同じだと小隊全員でマシンガンを集中射撃する。けれどTYPE[JM-E]に動く気配は無い。
「バリアだと!?」
 フィールドジェネレーター、EP-CVWMX-PF000XがTYPE[JM-E]の周囲にスフィア状の粒子結界を展開した。殺到した弾丸は尽く遮断され、百のひとつもTYPE[JM-E]の装甲を削るに至らなかった。
「残りAP変動無し。まあ当然ですが」
 残存装甲耐久度を示す値を確認する。WHITE KNIGHTがもたらしていた未来視でカルキノスの行動予測からフィールドによる相殺結果まで全てが把握の範疇だった。
「後は各個撃破といきたいところですが……」
 首都高速入口を背にしたカルキノス小隊と正面から対峙している状況のジェイミィ。ほんの数秒思考を巡らせ判断を下そうとした。
「正面を突破し跳躍機動で東側ビル群に離脱。以降は追撃を試みる敵機を伊邪那岐で牽制。後は各個撃破可能な状況が構築される」
「ご丁寧にどうも」
 どこか皮肉を含めたようなジェイミィの音声。爆光を放つスラスターから生じた推力が機体を猛然と直進させる。フィールドは維持したままだ。
「止めろ!」
 カルキノス小隊がマシンガンで迎え撃つもやはり銃弾の全てがフィールドに遮断される。なおも加速するTYPE[JM-E]が小隊に突進、寸前で散開し損なった一機がバリアタックルで跳ね飛ばされる。宙に浮くカルキノス。
「ムーンライト、アクティブ」
 抜き放たれたBX-CVWM-FS-2C "CRESCENT MOONLIGHT"から月光を宿す荷電粒子の刀身が形成される。異なる世界と異なる時代で姿形を変えても同名で語られる魔剣や聖剣達、エクスカリバーやクラウ・ソラスに連なる至高の刃。ジェイミィはその一刀を握る猟兵だった。
 TYPE[JM-E]とカルキノスが交差する。刹那で振り抜かれたプラズマソードが両足を丸々切除した。結果を目視する事なくTYPE[JM-E]は少し屈んだ動作を取ると大跳躍、東側に並ぶコンクリートの群生地帯へと機体を投じた。
「耳付きが! 逃すかよ!」
 転がる友軍機には目もくれず追撃に移るカルキノス小隊。TYPE[JM-E]を追ってビル群へ入る。機体が二機通り抜けられるかどうかという狭い空間だ。辻斬りには最適な場所だろう。レーダーに標的らしい反応は無い。各個に分かれて索敵を開始する。WHITE KNIGHTはこの動向を未来視していた。
 敵を見失ったカルキノス小隊。一方のジェイミィはセラフィム・リッパーとWHITE KNIGHTがもたらしたデータにより次回の行動傾向に至るまでを掴んでいた。ビルの角に息を潜めて待つTYPE[JM-E]のスラスターに火が灯る。急加速し角から飛び出て90度のクイックターン。正面直線上にカルキノスを視認した。向こうもこちらへ反転する。レーダー波に掛かった事で存在を察知されたらしい。けれどもう遅い。RS-WMX-009PM "伊邪那岐"の速射で身動きを封じると急接近、CRESCENT MOONLIGHTが再度抜刀された。迸る荷電粒子に月光色の粒子が散り躍る。刃が首元に差し込まれ溶断、横凪の一閃は縦に繋がる。地に落とされる腕部。胴を打ち据えた蹴りがカルキノスの機能を停止させた。
「右だ」
 分かっておりますともと言わんばかりに後ろへ機体をブーストさせる。たったいまTYPE[JM-E]が居た場所にミサイルが数発飛んできてビルに衝突し爆散した。金属の破片がフィールドに触れては跳ね返される。TYPE[JM-E]は敵機の方向へ向き直ると再度伊邪那岐を連射。射撃を続けたまま機体を左右に振りながら肉薄する。持ち前の装甲強度で堪えて反撃を試みるカルキノス。だが連続被弾の衝撃でモニターにノイズが走り捕捉がままならない。伸びる月光の刃。一刀目の切り上げが腕を斬り飛ばす。やや姿勢を下げて続く水平横切り。機体が股関節部分から上下に分断される。頭部に差し込まれた刺突が最後の一撃となった。
「これで終わりだ」
 ジェイミィが次の敵を探すよりも前にWHITE KNIGHTが状況を報告する。
「おや? もっと居たはずでは?」
 疑問符を投げかけるジェイミィへセラフィム・リッパー達の行動ログが送信されてきた。なるほど、残存機は先程の間に処理されていたか。周囲に敵反応無しとの情報を確認したのち、CRESCENT MOONLIGHTへのエネルギー供給を止め刃を消失させた。
「異なる区画も制圧が完了している。振動探知、音響探知共に静かだ」
「それは大変結構ですな。他のイェーガーの皆さんの働き振りも見事なものだったのでしょう」
 残弾数が数発しか無かった伊邪那岐のマガジンをタクティカルリロードすると、機体を反転させて制圧終了後の目標地点へと向かう。戦果は申し分無し。今日もWHITE KNIGHTの未来視は好調だ。ひょっとして結果まで視えていたのではなどという考えが人工知能を過るが、黙して次のなすべき事を果たす。

●第一波撃退成功
 レイテナ都市を襲撃したバーラント軍の第一波の無力化は完了。市内を闊歩する鉄の悪鬼は漏れなく成敗された。防衛軍壊滅という不利な初動からここまで巻き返したのは、イェーガー各個人の卓越した技術と力そして戦術あってのものだ。しかも死者を出さずに殆どを生捕りか敗走に追い込んだ上での大立ち回り。第一波を生贄に第二波の戦意を煽る算段を組んでいたオブリビオンマシンは、さぞ歯噛みしている事だろう。
 第一波でのイェーガーの振る舞いが予知された未来をより良い形で変える要素となった。だがまだ戦いの終結には至らない。束の間の空白を置いて事態は新たな段階を迎える。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『オブシディアンMk4』

POW   :    ホークナパーム
【油脂焼夷弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【高温の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ピアシングショット
【スコープ照準】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【RSキャバリアライフル】で攻撃する。
WIZ   :    マイクロミサイルポッド
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【誘導ミサイル】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●侵攻者達の指揮官
 西部国境から都市の中間に位置するレイテナ領の街。規模としては中程度だが人口密集度は高い。現在はバーラント軍の占領下にあり都市部へ侵攻するキャバリア部隊の出撃拠点となっている。こちらでも市街地戦が発生していたが損壊の程度は低い。早期に大勢が決したためだろう。
 街の中央には巨大な駅施設があり、正面口前のロータリーで大篝火があがっている。火元に積み上げられているのはどこか有機的な印象を持つ黒いゴム状の物体。周囲には肉が焼ける異様な臭気が立ち込めていた。その炎を、腰の後ろに手を重ねて組み直立したまま静かに眺めているバーラント軍の将校の姿があった。
 この女性が後にストラ・アージェ大佐だと猟兵達の知るところとなる。今回のレイテナ侵攻を指揮する指導者で、バーラント西部方面軍の軍閥に名を連ねる有力者だ。
「報告します。本部より再度入電がありました。速やかに部隊を撤収させ出頭……」
 背後から掛けられた下士官からの早口な報告。ストラは背を向けたまま口に人差し指を添えて「しー……」と蛇の威嚇音のような声を出して下士官の言葉を遮った。
「前に言った通りですよ。今の我々はレイテナ軍により強力な電子妨害を受けているのです。いやはや、まったく忌まわしい」
 目を伏せわざとらしく首を振る。下士官はこれ以上言っても無意味だと判断すると、口をつぐんだ。
「それより侵攻部隊の第二陣はどうです?」
 やや間を置いて下士官は答える
「出撃準備は間も無く完了します。しかし、やはり捕虜の状態を確認してからの方が良いのでは?」
 敗残兵から知らされたのか、はたまた誰かにリークされたのか。イェーガー達の作戦行動によって都市侵攻第一波を務めたバーラント兵の殆どが身柄を確保されている、或いはなんらかの形で生存しているとの情報を得ていた。厳密にはイェーガーの介入とは知らずレイテナ本国の増援部隊が行ったものだと思い込んでいるのだが。ストラは再度首を振る。
「だめだめ、そんなんじゃ遅いんですよ。それに情報の信憑性が保証されていません」
「ですが仮に事実だった場合人質に取られる可能性が……」
 今回都市を襲撃しているバーラント軍の兵士には、同じ連隊内に兄弟家族や更には友人恋人がいる。名目上では戦意高揚を狙った政策だとされているが、実際のところ軍による人質政策だ。
「ええ、はい。君の心配は分かります。私とて多くの部下を失って悲しいのです。だからこそですよ。君たちが早く解放してあげないと」
「……レイテナが我々の兵を人質とした場合の対処は?」
 ストラが緩慢な動きで下士官に向き直る。表情は中立を保っており思考は感じ取れない。
「言ったでしょう? 解放してあげなさいと」
 咄嗟に何かを言い掛けた下士官。開いた口にストラの人差し指があてがわれる。
「言いたいことはわかっておりますとも。でも大丈夫、全て上手く行きますよ。今抱えている君のモヤモヤも、機体に乗ればすぐに良くなる。オブシディアンMk4がぜーんぶ忘れさせてくれますよ」
 祝福がなと言外に付け、両の口角がつり上がる。顔を迫らせ耳元で囁く。甘く生暖かい吐息が掛かるが色香などというものでは無い。人の命を何とも思っちゃいない貪欲な爬虫類の口臭だ。下士官は身の毛がよだつ感覚を覚えた。
「ほらそろそろ時間でしょう? 後は頼みましたよ。くれぐれも私が出る幕の無いよう、お願いしますね」
 ストラは両手を下士官の肩に這わせ身体の向きを反転させると、背を押して送り出した。下士官は了解の意を示すでもなく振り返るでもなく、足早に然るべき持ち場へと向かう。下士官の後ろ姿が見えなくなると、一層薄気味悪い笑顔を口元だけに浮かべて、傍らに駐機させてある自身のキャバリアを見上げた。
 アマランサス系列の機体。センサーカメラがストラの姿を映し返す。
「憎悪が戦渦を呼び戦渦が闘争を呼ぶ。心躍る闘争を。これでまたひとつ、あなたが見せてくれた世界に近付けたでしょうか?」
 鋼の巨兵は答えない。黙して佇むのみ。オブリビオンマシンの狂気は、確かにひとりの将校を蝕んでいた。

●束の間の空白
 イェーガーの一騎当千の働き振りによって辛うじて残存したレイテナ軍。イェーガーと共に都市中央区画で集結している。
「イェーガーの皆様、心より感謝します。もしあなた方がいなかったら……」
 首を垂れるレイテナ軍の士官。満身創痍だが取り敢えず動けるらしい。グリモアベースで行われたブリーフィング通り、イェーガーの到着と入れ替わる格好でレイテナ軍は後退。もう戦力と呼べるものがない彼らが残っていたところで役に立つでもなく、むしろ気兼ねする点が増えてイェーガーの足を引っ張るだけだろう。代わりと言っては不適切かも知れないが、後方支援部隊がイェーガー達の補給と機体整備の担当を申し出た。前衛が早々に壊滅してくれたお陰で後方部隊は物資をたんまり残したまま退散、第一波撃退に伴う撤収支援のため戻ってきたところをイェーガーと出会した形となった。
 イェーガーによって捕らえられたバーラント軍の兵士達はレイテナ軍の撤収に合わせて移送される手筈となった。市民を虐殺されたレイテナ軍にとっては今すぐにでも撃ち殺してしまいたい相手だが、我々までバーラントと同じ獣になっては駄目だと法に則る裁きを受けさせる運びで結論を得た。万が一感情任せの蛮行に走れば今度はイェーガー達に愛想を尽かされてしまうという恐れもあったのだが。
 なおバーラント軍の兵士達にはもうまともに立つ気力すら無いらしい。オブリビオンマシンの精神汚染が解けた振り返しが来ているのかも知れない。しかし一部の兵士は尋問する事で今回の侵攻の指揮を執っているバーラント軍ストラ・アージェ大佐の存在や、まだ控えている侵攻部隊の情報を得る事が出来た。これもイェーガーの不殺戦術による賜物だろう。
 因みに、レイテナ本国からの増援が都市に向けて全力で急行中だが到着までにまだ時間を必要とするらしい。結局最後までまともに戦えるのはイェーガーだけだ。

●第二波の戦力
 まず結論から述べてしまえば、イェーガーの成すべき事は第一波撃退時とさして変わらない。ただ戦うだけでも目標は遂行される。
 カルキノス部隊が全滅した際を想定して用意されたバーラント軍第二陣の戦力の中核を構成するのは、『オブシディアンMk4』だ。百年戦争の間に多彩なバリエーションが生まれた量産型キャバリアで、総合的に見る性能はカルキノスを上回る。ナパームキャノンや精密な射撃、多連装短距離マイクロミサイルには注意を要するだろう。鉈型の実体ブレードも備えているし機動力も決して鈍重では無いバランスの取れた機体だ。
 そして搭乗者となるバーラント兵士だが、予知の事前情報にあった通り、第一波を担当した兵士達と親しい仲柄を持った人員ばかりで構成されている。もし第一波の兵士を必要以上に惨殺するような事があれば、オブリビオンマシンに付け入られ狂化してしまっていただろうが、先述の通りイェーガーが生かして捕らえたのでその懸念は無くなった。
 いずれにせよ戦いは避けられないが、必要以上に手を焼く事態には陥らない。後退するレイテナ軍の捕虜輸送車との通信は常に繋がっているので、交戦中イェーガーが何かしらの説得が必要だと考えた時にはその材料となるかも知れない。もちろん悪速斬で成敗してもなんら問題はない。手っ取り早いのは後者だろう。
●戦闘開始
 希望したイェーガー達への補給と整備が完了し、後方支援部隊を含むレイテナ残存軍が捕虜を連れて撤収する。それと時期を同じくして再度始まるバーラント軍の都市侵攻。肩を落とした黒曜石の戦列が続く。割れた大地をひたすら踏み締めて。闘争の主な舞台は先と同じく都市の内部。時刻は昼下がり。戦いが終わる頃には夕闇が忍び寄るだろう。鋼の悪を叩いて砕くため、イェーガー達は再度立つ。
シル・ウィンディア
守るために…、ブルー・リーゼ、行きますっ!

攻撃時はコックピットを避けます

【推力移動】でジャンプを繰り返して索敵
敵機を発見したら
【スナイパー】モードのビームランチャーで攻撃だね
敵のUCは【推力移動】から【空中機動】に移行しての
【空中戦】で回避行動
敵攻撃は【第六感】で感じて【瞬間思考力】で動きを【見切り】
高度には注意しつつ、バレルロールも取り入れつつ【残像】を生み出しての回避だね
被弾しそうな時は【オーラ防御】で致命箇所を重点的にカバーするよ

攻撃はランチャー・ツインキャノン・ホーミングビームの【一斉発射】!
接近時はセイバーで【切断】

敵機がまとまったら【高速詠唱】で放射線状に《指定UC》を撃っていくね



●青き閃光と黒曜石
 都市防衛戦線はまだ続く。束の間の空白を経て再度切られた戦いの口火。イェーガー対オブリビオンに毒されたバーラント軍。初手を取るのは果たしてどちらか。
「ブルー・リーゼ、行きますっ!」
 守るために青白の精霊機は再び市街を跳ぶ。先のカルキノス戦で実践した連続大ジャンプによる移動でキャバリアやビルの残骸を跳び越えて行く。前回の戦闘開始時の状況とは異なりまだ敵機は市街に浸透しきっていないが、もう入り込んでいる事に違いは無い。跳躍移動で西側に進軍する片手間に青い双眸が敵機を捜索する。ビルとビルの狭間で巻き上がる砂埃が見えた。跳躍方向を前から横へとシフトし、砂埃が立つ大通りへとブルー・リーゼを跳ばす。
「オブシディアン……!」
 進軍するオブシディアンMk4の一団の前方に着地した。双方が互いの存在を認めてロックオンマーカーを重ね合わせる。初手を撃ったのはブラースク改だった。出会い頭の一発はこの狙撃モードに限る。ランチャーに縮退保持されていた魔粒子がビームとなって迸る。カルキノスの残骸を巻き込んで突き進む細い光柱。オブシディアン隊は即座に散開するも一機が逃げ遅れ片腕に直撃をくらい大きく怯む。とっさに鉈を握る左腕で庇えたのはよく訓練された軍人だからだろうか。まだ倒れてはいない。反撃のアサルトライフルが連射される。射撃姿勢を見るや否やブルー・リーゼは背部スラスターを噴射しジャンプ。射線を飛んで躱すと再度ブラースク改を放つ。今回は脚部に命中した。足を失い横倒しに転倒するオブシディアン。その間に側面に迂回してきた他の敵機がブルー・リーゼに迫る。
「横から来てもっ!」
 スラスターの機体制動で前に飛び、殆ど閃きに近い反射神経で視界外の攻撃を躱す。背後で建築物の壁を銃弾が撃ち付ける音が聞こえた。
「逃すかよ!」
 更に前方から新たなオブシディアンが現れる。同時にシルの耳朶で騒ぎ立てる誘導弾警報。オブシディアンのショルダーランチャーからミサイルが放たれた。発射されたミサイルは空中で複数の弾頭に分裂、数十を超える数のマイクロミサイルとなってブルー・リーゼを追い立てる。
「逃げないと当たっちゃうでしょ!」
 跳躍移動による節約をしていたのでエネルギー残量には十分余裕がある。スラスター推力を引き上げ急速後退したブルー・リーゼ。なおも複雑な起動を描きマイクロミサイルが追ってくる。だがここは市街地。誘導弾の射線を切る障害物はそこら中にある。バックブーストの後着地すると反動を側面へのジャンプに転換する。追尾対象を見失ったマイクロミサイルの群れは素通りするか無理に誘導を続けようとしてビルに衝突し爆散した。だがまだオブシディアンが後を追って来る。ブルー・リーゼは追手に背を向け匍匐飛行で直進、道端で無造作に転がるカルキノスだったものや瓦礫をすり抜けオブシディアン達を置き去りにせんばかりに加速する。
「この位かな?」
 背面のバインダー状のスラスターを広げエアブレーキを掛けた。急激な減速により生じる重力がシルの身体をコクピットのシートに押し付ける。微かに呻くも機体を制御する手は休めない。ブルー・リーゼが後ろに振り返り焼けたアスファルトの地面に足を着ける。望遠モードのカメラが、団子になって未だしつこく追撃を試みるオブシディアン達の機影を捉えていた。
「もっと引き付けてからっ!」
 ブルー・リーゼが両足で力強く道路上に踏ん張りを入れ、腰を落とす。そしてブラースク改を連射モードに切り替え、背面のテンペスタのバレルを90度前方に倒して伸ばしチャージを開始、指向性ビーム兵器であるリュミエール・イリゼのマルチロックオンを完了する。次第に狭まるブルー・リーゼとオブシディアン達の相対距離。ロックオン警報が鳴り響いた時、シルがユーベルコードの詠唱を開始する。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ…。我が手に集いて、全てを撃ち抜きし光となれっ!!」
 ブラースク改が魔粒子弾を速射しフルチャージが完了したテンペスタの双口が光の咆哮を発射、リュミエール・イリゼから放出された虹色のビームが自ら意思を持っているかのように捕捉対象へと向かう。更にそれら全ての武器を触媒として解放されたエレメンタル・ファランクス。大小様々な弾や線が光の濁流となってオブシディアン達を飲み込んだ。回避運動を取るには距離が近過ぎるし横に逃げようにもビルに遮られて叶わない。地形が仇となった。正面からまともに受けてしまえば防御もさして意味をなさず、光の中で分解されて行く。だがいずれの光も搭乗者に致命傷を及ぼす箇所には着弾せず、戦闘力だけを奪い消し去った。
 ブルー・リーゼの光の解放が終わりテンペスタの砲身が縮んで起立すると、非活性状態に移行する。シルは瞬間的にかなりの魔力の減少を感じた。少し時間が経てば回復するだろうが、パイロットが生身である以上は疲労と消耗はどうしても付き纏うものだ。レーダーを見遣り敵機が本当に消失したかを確認する。だが反応がひとつ残っていた。
「まだだ!」
「うそっ?」
 光の濁流に揉みくちゃにされた中、辛うじて大破を免れていたオブシディアンがいた。しかし本当に辛うじてといった有様で、ライフルを構える右腕と鉈を振りかざす左腕を残して胴から脚に至るまでズタズタの状態だ。同じオブシディアンだった残骸を跳ね除けフルブーストで特攻してくる。シルはその姿を認めるとブルー・リーゼにエトワールを抜刀させた。余剰出力で散った星の煌めきが粒子となって迸る。各部スラスターより発せられる爆光。足が地面より離れて正面方向へ機体を急加速させる。
 双方が同じ直線軌道で急速接近し合う。ライフルとマイクロミサイルの有効射程に入った瞬間、オブシディアンが攻撃を開始した。ブルー・リーゼは残像でも見せんばかりのバレルロールマニューバで射線を掻い潜り加速を緩めず接近、ミサイルをエトワールの横凪で切り払う。ついに射撃弾が回避不能な距離まで達するも掌に収束した魔力障壁を盾に弾丸を弾き肉薄する。
「終わって!」
 交差する精霊機と黒曜石。鉈が獲物を叩き切るより先にエトワールが刹那で振り抜かれた。星の光刃が閃く。衝突する事なくすれ違った二機がやや間を開けて地に足を付け静止する。膝を着いて倒れ込んだのはオブシディアンMk4だった。
「ふう、ちょっと焦ったかも?」
 とは言うがブルー・リーゼはあれだけの敵機とミサイルに追い立てられても、殆ど損傷らしい損傷を受けていない。咄嗟に近接戦闘へ移行した際の反射神経や判断力も見事なものだ。シルの操縦センスと機体の相性がよく合致している左証だろう。ブルー・リーゼがエトワールを正面に構えて刃の側面を自身に向けると、切っ先に平手を添えて発生装置本体の根本までゆっくりと下ろした。その動作につられて星光を宿す刃も消失する。やや汗ばんだ額を拭うと、シルはブルー・リーゼを跳躍させる。まだ戦い続けられる。晴天色の双眸は新たな敵影を追っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

露木・鬼燈
超過駆動の後だし機体は労わらないとね。
へーきだとは思うけど、念のため。
とゆーことで、負荷を掛けないように立ち回ろう。
今回は忍としての業も用いてテクニカルに、ね。
基本先ほどと同じように動きと攻撃方法で。
まぁ、UCなしで同じ動きはムリですけど。
なので簡易的なものだけどね。
代わりに使うは秘伝忍法<海渡>
キャバリアのシステムにUCの力で強制介入。
IFFを書き換えたり誘導システムを乗っ取ったり。
モニターやHUDの改竄なんかもね。
やろうと思えば同士討ちも狙えるけど…
流石にそれだと死者がでそう。
混乱させるに留めるのがいいと思うです。
敵の数が多ければ多いほど効果的。
そんな感じの忍的でテクニカルな戦いっぽい!



●目を盗む
 第一波撃退戦でイェーガー陣営の初戦を飾ったアポイタカラ。危機的状況にあったレイテナ軍の前に突如として現れ瞬く間にバーラント軍を殲滅せしめた赤鋼の鬼。だが代償が無かったわけではない。
「超過駆動の後だし機体は労わらないとね。へーきだとは思うけど、念のため」
 鬼燈が述べた通り、ユーベルコードの保護があったとは言え本来なら自壊する出力で機体を稼働させたのだ。しかも急激な三次元立体機動を取ったため、駆動系などにも相応の負担があったであろう事は想像に難くない。鬼燈はアポイタカラの機体コンディションを確認する。HUD(ヘッドアップディスプレイ)上での各部位のワイヤーフレームモデルの表示は良好を示す緑色となっている。しかしもっと細かな数値上でのステータスを見るとやはり負荷の蓄積が見られる。特に脚部に集中しているようだ。
「とゆーことで、負荷を掛けないように立ち回ろう」
 物は大切に。冗談では無くこの後も強敵との戦いが控えているのだ。オブシディアンを倒して終わりでは無い。それに鬼燈が選択できる戦術は力押しだけに限らず化身忍者らしいテクニカルな働きも可能だ。
「いたぞ、レイテナだ」
 今のアポイタカラは高速道路上に立っている。都市を循環しているこの道を使ってオブシディアンMk4をこれから探しに行こうとした矢先、向こうから来てくれた。考える事は人なら誰でも同じらしい。勘違いされている点は気にも留めず戦闘行動を開始する。
 ロックオン警報に続いてオブシディアン隊から一斉に放たれたピアシングショット。精密で鋭い射撃がアポイタカラに襲い掛かる。一方のアポイタカラは警報が鳴った時点で膝を曲げ、高速道路の地面を蹴って跳躍していた。一見同じ立体機動戦法に見えるも、第一波の時の荒々しい動作とは対照的にしなやかな挙動となっている。技量で機体への負荷を抑えているようだ。
「ん? 狙いが正確っぽい?」
 数発の銃弾がアポイタカラの装甲を掠めて火花を散らす。装甲の表面を僅かに砕かれた程度なので損傷と呼べるものは無いが、指摘の通り高感度スコープで補正された照準は思っていたより正確らしい。自由落下を終えて、高速道路と同じ背丈のビルの屋上に着地するアポイタカラ。寸前でスラスターを噴射し関節への衝撃を和らげると共に、ショックアブソーブの硬直の隙を打ち消した。所謂着地狩りを狙っていたオブシディアンのパイロットだが、残念ながら読まれており横へひらりと身を翻して回避されてしまう。
「弾は、さっきと同じ榴弾でいいでしょー」
 カルキノス戦で猛威を振るった榴弾。狙った箇所に当てられる手腕があるのなら機体だけを殺すのにも都合が良い。フォースハンドが掴むライフルと両手に構えたパルスマシンガンで密集陣形を取るオブシディアンへ銃弾の雨を見舞う。いずれの武器もリロード要らずの魔改造品だ。
「くっ! 囲んで追い詰めろ!」
 散開回避に間に合わなった一機が頭部や腕部に榴弾を受け擱坐した。複数のオブシディアンが側面へ迂回を試み、もう一方のオブシディアンがジャンプブーストでアポイタカラが立つビルに飛び付き土俵を同じくして撃ち合おうとする。アポイタカラは捕まるつもりなど無く、跳躍するとオブシディアンの後方に抜けて空中でバックブーストしながらライフルを数回撃ち放つ。背面に榴弾を受けメインの推進装置が爆発、更に誘爆を起こし黒煙を吹き上げ行動不能となった。
「なーんか、増えてるっぽい?」
 衝撃を巧みに逃して着地したアポイタカラ。鬼燈はレーダー上で西側から更に迫る敵軍のマーカーを見た。高速道路上という事もあって敵の増援が急行してくるのも早いらしい。しかも一部は下の一般道路やビル群を迂回して包囲する動きを見せている。あまりに一度に多くを相手取るのも不可能では無いが厄介だ。この後の展開に備えて機体の負荷も抑えておきたい。理想を言うなら極力直接手を下す事無く終われれば尚良い。
「ふむふむ、じゃあここは秘伝忍法<海渡>の使い所っぽい!」
 アポイタカラのコクピット内のHUDに様々な情報表示枠が新たにポップアップする。電子介入を開始し、バーラント軍が使用している戦術データリンクの改竄を試みるのだ。相手は特段強力な電子防壁を有していたわけでもなく、ハッキング自体は短時間で成功した。
「冷静に追い詰めろ。タイミングを合わせて一斉射だ」
 その間に包囲網をほぼ完成させつつあったバーラントのオブシディアン隊。高速道路上からビルの上から下方の一般道からとじわじわ距離を詰める。ある一定の距離まで迫った時、アポイタカラのコクピット内にけたたましい警報が響いた。ミサイルだ。データリンクを介して同一目標を全機で狙っているらしい。
「今だ! 全機ミサイル発射!」
 アポイタカラを取り囲む全てのオブシディアンから一斉に放たれる誘導弾。短距離を飛ぶと数十発のマイクロミサイルに分裂、白いガスの尾を引きながら蛇のようにのたうち目標へ突撃する。
「お返ししまーす」
 近場にいるバーラント軍のキャバリア全ての敵味方識別装置が書き換えられ、ミサイルの照準先が発射した本人へと置換される。アポイタカラに向かっていたマイクロミサイルは直前で向きを変えると、フリスビーを咥えた犬のように飼い主ならぬ発射主の元へ全速力で戻って行った。小さな爆光がオブシディアンMk4の黒い装甲に咲き乱れる。あまりにも唐突過ぎる出来事に対処する間も無く行動不能になり、崩壊する包囲網。けれど機動性と追尾性の代償に炸薬の充填量が少なくなったマイクロミサイルの特性のためか、そこそこの数のオブシディアンが生き残っていた。
「やられた! データリンクを切れ! 各機スタンドアロンモードだ!」
 こういった状況の対応手順は教則本としてあったらしい。戦術データリンクに侵入されIFFを改竄された事を察した隊長機が他の兵士達にも命令を下す。しかし鬼燈が改竄したのはIFFだけでは無かった。
「何処だ? 赤いのは何処に消えた?」
 先程から直立不動のアポイタカラ。相対距離にして数百メートルも無い距離にいるにも関わらず、姿が見えないと喚くオブシディアン。試しにアポイタカラが手を振って見せたが挙動不審に周囲を見渡す様子は変わらない。数秒待ってオブシディアンのパイロットは自機にされた事がなんなのかを理解した。
「あいつ! オブシディアンの目を盗みやがったな!」
「正解っぽい!」
 引かれるトリガー。弾ける薬莢。迸るマズルフラッシュ。弾頭がオブシディアンの頭部に突き刺さり少しの間を置いて爆発。衝撃でシステム周りにもダメージが響いたのか、首無しキャバリアと化したまま動きを止めた。鬼燈はバーラントのデータリンクに侵入した際、ミサイルの誘導やIFFだけでは無くモニターシステムそのものを改竄してアポイタカラが存在しない場所の映像を出力させていたのだ。
「現代を生きる忍は電子の海でも活動するっぽい!」
 化身忍者は電脳忍者となりてバーラント軍のキャバリアを掌握。僅かな労力で多くの敵機を撃破に至らしめた。結果的に無用な死者を出すまでも無く掃討を終える事が出来た。アポイタカラが抱える直接戦闘の負担も軽減できたであろう。もうここに用は無い。周囲を二度三度見渡す鬼燈の動きにつられてアポイタカラの首も動く。レーダー上にも目視でも新たな敵機が存在しない事を確認すると、忍者めいた静かな大跳躍で高速道路を進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンネリース・メスナー
アドリブ歓迎

次はオブシディアンMk4ですか
カルキノスとはローハイミックスなのでしょうか?

オブシディアンは確か狙撃も出来ましたね。市街地では難しいでしょうが、わたくしのラピートは目立ちますから注意がいるでしょうね
親衛隊機は式典参加もあってエングレービングが施されて、特にわたくしは皇帝の孫ですから鶏冠を含めより派手に装飾されてますし
いえ、どうせ目立つならば逆手に取りますか
スラスターとジャンプでビルからビルに跳躍しながら索敵です
そんな移動したら敵に見つかるでしょうが、狙われた際の敵意を感じたら先手を取って敵意の元にロングビームライフルを放っていきます
伊達に親衛隊のエンブレムが鷲と髑髏ではありませんわ



●猛禽
 国家ならば誰しも扱う兵器は強力なものを望むだろう。良質な兵器を多数揃えられるなら言うまでもなく剛健な軍隊を形成できる。しかし兵器とは金が掛かるものだ。多くの国にとって軍事費は無限ではない。高額高性能な量産機ばかりを揃えるというのは予算の都合、軍事大国のバーラントにとってもあまり現実的では無いらしく、それなりの価格で大量調達可能なカルキノスとやや高額だが良質なオブシディアンMk4という二機種のキャバリアで戦線の主力を支えている。
「所謂ロー・ハイミックスなのでしょうか?」
 キャバリアの運用教義が行き着く先はどこの国も同じかと、サブモニター上に表示されたオブシディアンの三次元映像と基本性能類の数値を横目に元親衛隊のアンネリースは索敵行動を続ける。レーダーにはまだ反応は見られない。アマランサス・ラピートのセンサーカメラが周囲をなぞるように見渡す。現在位置はオフィスビル街の屋上。都市中に立ち並ぶビル群の中でも特に背丈が高いそれらが集中している区域だ。ビル一つの面積も広くキャバリア戦での足場にするのに丁度良い空間でもある。となれば跳躍した際には殲禍炎剣が気になるところだが、照射警報が鳴らない辺り三次元機動を行う分には問題無いらしい。
 良くも悪くも非常に見晴らしが良好な環境条件。索敵のために下方を見渡すには申し分無く、先制攻撃を行う場合には頭上を取れる。同じビルの屋上まで敵機が登ってくれば互いに射線が通り易い。
「どうせ目立つならば逆手に取りますか」
 ついでにアンネリースが操る専用アマランサス・ラピートも大変目立ちやすい。式典用のエングレービングが施されている上に、頭部では陽光を受けた鶏冠が誇らしげに存在を主張している。加えてナイトソードの鍔には紅の宝玉が埋め込まれているし、その剣の鞘となっているシールドには鷲と髑髏の象徴的なエンブレムがあしらわれている、言わば豪華絢爛な貴族仕様と解釈されても不思議ではない機体だ。そんな機体がビル群の屋上から屋上へと飛び跳ねていれば気が付かないという方が無理な話しだろう。
「さて、ちゃんと見付けてくれればよろしいのだけれど」
 アンネリースがフットペダルを踏み込みラピートをブーストジャンプさせる。極短時間だけの噴射で大きく放物線を描いた軌道で前方のビルへ飛び移る。その上昇軌道が頂点に達した時だった。不意に鋭いプレッシャーがアンネリースの背中に突き刺さった。
「要らない心配でしたわね」
 脚部スラスターが光を噴き出し機体を横に逸らさせる。同時に正面を向いたままロングビームライフルを後方に向けて放つ。直後、側面を複数の弾丸がすり抜けた。アンネリースはそれがオブシディアンMk4の狙撃だと既に予知していた。半身のスラスターだけを噴射し即座に機体を百八十度旋回させる。地上からこちらを狙う敵機の姿を目視で捉えた。だが先に発射したロングビームライフルが命中しており、脚を撃ち抜かれて擱座している。ノーロックどころか視認すら必要としない背面撃ち。技量と機体性能、そして何よりもアンネリースのサイコ・センスが互いに相乗し合った結果なのだろう。
「増援を呼びましたわね。手間が省けてなにより……」
そこら中で膨れ上がる殺気をラピートに搭載されたサイコサンサーが受信して増幅する。いずれも自分に向けられている鋭い視線。アンネリースの長い後ろ髪が静電気に当てられたかのように逆立つ。ビルの屋上に着地するラピート。ブーストジャンプで登ってきたオブシディアンが前方に二機並ぶ。ラピートと敵機の双方が同時にライフルを構え撃ち放つ。片方をシールドで受けもう片方を横方向へのクイックブーストで避けるラピート。撃ち放ったビームは一方のオブシディアンの右腕を貫いた。
「遅い! そこですわ!」
 スラスターに光を爆ぜさせ急加速し突進、片腕を失ったオブシディアンをシールドチャージで屋上から退場させると衝突時の衝撃をブレーキにして一方のオブシディアンに向き直る。ライフルの間合いでは無いとウェポン・セレクターを鉈に合わせ断ち切らんと接近するオブシディアン。だがアンネリースはその動きを直感で感じ取っていた。ラピートが後方に飛び退き空中へ躍り出る。宙を切ったオブシディアンの鉈。その腕にロングビームライフルが発射され肩口から下を喪失する。仰反るもライフルの照準を合わせ連射。ラピートは見切っていると言わんばかりに機体を左右に振りながら距離を開けロングビームライフルを八連射した。
「なんで当てられるんだよ!」
 オブシディアンのパイロットも回避運動を取るが、右方向へ機体を滑らせても先んじて放たれていたビームに右腕部を貫通される。間髪入れない残り七つの光線に両足と頭部を射抜かれ機能停止に追い込まれた。
「伊達に元親衛隊ではありませんもの」
 シールドのエンブレムがオブシディアンから生じた炎の光りを照り返す。下方より吹き付けたプレッシャー。ビルの狭間の道路でオブシディアン達がラピートに集中射撃を行う。
「思ったより多くお越しになられてるのですわね。そう必死にならずとも、きちんと全員お相手して差し上げますから」
 背面にスラスターの噴射光を引き連れて即座に射線より姿を消すラピート。ロングビームライフルの照準はもう付いている。高度を維持したままビルの狭間をすり抜け一射二射と超高熱の光線を撃ち放つ。オブシディアン達は散開して回避するも、何機かは空から降ってきた光の柱に貫通され小爆発を起こしその場で停止する。
「オブシディアンがハイを担っているのでしょうが、わたくしの相手には少々及びませんわね」
 眼下に生き残りの一機を見定め落下速度も相乗させたフルブーストで急速接近。猛禽に狙いを定められたオブシディアンは少しでも距離を開けようとスラスターを噴射し後方へ退くがラピートの速さからは逃れられない。アンネリースは真正面から浴びせられる銃弾を殆ど直感的なバレルロールにより紙一重で躱し、獲物との距離がゼロになる直前、シールドを突き出した。先端部の刃が衝角となってオブシディアンの頭蓋骨を砕き、物言わぬ骸に変える。
「次はどなたが?」
 機体が旋回すればアンネリースの髪もつられて踊る。黒曜石色の骸を踏みつけてラピートは再度高層ビルの屋上へと跳び上がった。後を追うオブシディアンの群。それらは程なくして、亡き帝国の鷲に食い尽くされるのだが。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天城・千歳
【SPD】
絡み、アドリブ歓迎

さて、第二波が来たようですし迎撃に移りましょう。

サテライト・ドローン群は引き続き戦場に展開して情報、観測網を形成。
地上に展開した歩行戦車、歩行工作車のレーダー、センサーと合せて【偵察】【索敵】【情報取集】を行い、UCを発動【戦闘知識】【瞬間思考力】で最適の迎撃方法を判断。
敵部隊に対して【誘導弾】の【一斉発射】による【弾幕】【制圧射撃】【範囲攻撃】で【先制攻撃】を行い、一気に相手を制圧します。
弾頭はEMP弾頭を使用し電磁パルスによる【マヒ攻撃】で敵を無力化。
攻撃を抜けて来た敵は【砲撃】【スナイパー】【部位破壊】で関節を破壊して制圧します。
惑星上で反応弾は使えないしね。



●歩行戦車隊行進曲
オブシディアンMk4を中核としたキャバリア部隊は都市西部より侵攻を開始、各隊に分かれ内部へと浸透している。内一つの隊の行軍の推移をビルの狭間から密かに監視する目があった。サテライト・ドローンだ。複合センサーを搭載した観測用ドローン群はオブシディアンに悟られる事なく様々な角度より隊の動向を撮影し、母機の元へとリアルタイムで情報を送信している。
「さて、第二波が来たようですし迎撃に移りましょう。サテライト・ドローンは監視を継続。現在構築している観測網を維持」
 千歳は第一波攻撃戦から引き続きリモート義体にメインコントロール権限を委譲して無人機のオペレーティングに専念している。目に見えた違いがあるとすれば足場にしている乗物の正体が自身の本体という点だろうか。敵軍との距離がかなり開いている現況のところは建造物の内部へ身を潜める必要も無さそうだ。
 この都市の地図は既に頭の内にある。先の戦闘でも得られた情報と照合し、敵軍のより正確な位置を三次元的に割り出す。位置さえ掴んでいれば後の仕事は千歳にとってさしたる手間でも無い。盤に並ぶ駒を動かして詰めて行けば良いだけだ。
「歩行工作車部隊転進。所定位置へ移動後索敵を開始。歩行戦車部隊は次の指令があるまで工作車部隊の移動位置側面で待機」
 ビルをジャングルに見立て、横並びに侵攻して来るオブシディアンの群れ。歩行工作車にも索敵を命じ地上の目で目標を追う。敵はかなりの広範囲に展開しているようだ。千歳のラプラス・プログラムが起動し現在把握している情報を代価として戦術を組み立てる。敵軍を一箇所に纏め上げ迎撃し一網打尽を狙う。やる事は第一波の時と大きく変わらない。
「歩行戦車部隊前進。目標を視認後攻撃を開始」
 様子見から接触、交戦へと状況は移り変わる。オブシディアン隊の付近に潜んでいた歩行戦車部隊の一部を突出させ砲撃による攻撃を行わせた。砲撃自体は命中するもオブシディアンは致命的な損傷を免れ反撃へと転じる。攻撃を受けた報告は周辺に瞬時に広がり、歩行戦車を取り囲まんとして様々な方向より敵機が迫る。歩行戦車は攻撃を中断し逃げの一手に専念。サテライト・ドローンが頭上からナビゲートを行い倒壊したビル群を潜り抜けてオブシディアン達を所定の場所へと誘き出す。一部の敵機は十字砲火に追い込もうと側面より迂回して来るが、千歳はその動向を先んじて捉えてそれも加味した誘導ルートを割り出した。彼女自身の様子は側からはただ立ち尽くしているようにしか見えない。だが人工頭脳の内部では今も戦闘が繰り広げられているのだ。
「歩行戦車第二小隊以下所定の位置へ到着。歩行工作車全中隊攻撃準開始、弾頭はEMP弾を選択」
 千歳からの命令がサテライト・ドローンを介して各歩行車輛中隊へ送られる。歩行戦車が釣り上げたオブシディアン達は既にかなりの数に膨らみつつある。そして漸く何度目かのビル街のカーブを曲がり大きな十字路へとオブシディアン隊が到着した時、予め控えていた歩行工作車隊の19式複合兵装ユニット改1型が8連装ミサイルを放った。射線上には残骸こそあれど誘導を阻害するようなものは無い。オブシディアン側もミサイル警報で危機は察知しているのだろうが見てから避けるのには相対距離が詰まり過ぎている。迎撃もまた然り。ましてや囮の歩行戦車を追い回してる内に極度の密集陣形となってしまったため散開しようにも出来ない状況だ。
「なんだ? 機体が……」
 オブシディアン達に着弾したミサイルは青白い稲妻の爆光を咲かせた。だが美しささえ感じさせる派手な光とは裏腹に、外観上の損壊は少ない。しかし内部では強力な電磁パルスによって機体制御に不可欠な電子系部品が悉く焼き切られていた。EMP爆弾自体はそこまで珍しい兵器でもないので、オブシディアンにも当然そういった攻撃の備えはあったはずだが、千歳が用意した兵器が強力過ぎたのだ。
 大多数が行動不能に陥る中、僅かに生存したオブシディアンが歩行工作車にライフルの照準を向ける。ピアシングショットによる精密で鋭い射撃に幾つかの歩行工作車が損害を受けるが、それさえも必要経費だった。
「歩行戦車全隊へ、目標を速やかに無力化せよ」
 歩行工作車に狙いが向いている間に側面を易々と取れる格好となった歩行戦車隊。僅かな時間間隔を空けて単装レールガンが斉射される。まず第一小隊の放った高速弾体がオブシディアンのアンダーフレームを砕いて攻撃を中断させると同時に移動力を封殺、続く射撃が腕部や頭部に加え推進系を貫徹し最早何の役割も果たせないジャンクパーツにと変貌させた。これで千歳が誘引したオブシディアン隊は壊滅、周囲には戦意喪失してコクピットから這い出て倒れたバーラント兵を除いて動体も無い。誘引段階の手間はあったが、いざ攻撃段階に入れば後は早いもので、僅かな接敵期間で多くの敵機を無力化して見せた。
「違うオプションもあったけど、惑星上で反応弾は使えないしね」
 千歳のリモート義体が、外見に似つかわしい生の言葉を人知れず吐く。駆除するだけなら誘引が完了した際、いやひょっとしたらもっと先に終了していたかも知れない。反応兵器を落としてしまえば良いのだから。しかしその戦術選択は作戦立案の時点で候補から消えていた。実行した場合の深刻な環境汚染や国際情勢などを巡って生じる問題点もよくよく熟知していたからだ。天城千歳は宇宙戦艦の自律型コアユニットとして製造されたウォーマシンだ。戦闘こそが常なれど、だが闇雲に戦術目標だけを履行する機関では無い。元来そうでなければ彼女の存在意義を遂行するなど到底無理な話しなのかも知れないが。兎も角これで都市を侵攻するオブシディアンの一部の脅威は払拭された。
「歩行戦車並びに歩行工作車は指定座標まで後退し弾薬を補給。サテライト・ドローンは警戒監視を引継ぎその場で待機」
 千歳の思考は疲労を知らず途切れも知らず、まだ戦いの渦中にある。受諾した任務の全項目が確実に完了するまで、隷下の無人機達の監視眼が解かれる事は無い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティー・アラベリア
奉仕人形ティー・アラベリア、ご用命に従い参上いたしました
なるほど、今回は市街戦でございますね♪
楽しく焼き払うと後が大変でしょうし、ここは精密作業と参りましょう☆
戦闘機動機構と反重力魔術を併用し、自在な空中機動を実現しつつ、建物の合間や内部を移動経路として敵部隊に接近致します
偃月杖と97式を使用し強襲し、重力の制約を受けない機動で翻弄しつつ、四肢を切り落として解体しちゃいます♪
敵ミサイルは上空で無規則機動を取りつつ防空探信儀と近接防御妖精、95式を併用して迎撃致します
攻撃や回避に紛れこませる形で自爆妖精を敵機体内部に浸透させ、奇襲的に自爆させることで敵の混乱を助長させ、そのまま蹂躙しましょうね☆



●械殺人形
 二重の戦闘によって荒らし尽くされた商業区画。UDCアースの中東を知るものならばそこと同じ空気を感じ取ったかも知れない。かつては多くの市民で賑わったであろう街道も今は残滓を醸し出すばかり。焦げた鉄の匂いが充満し、辺りに散るのは砕けたコンクリートの破片。他に目に付くものと言えばカルキノスの残骸と、それに踏み潰されたか落下した瓦礫で圧死した人間の遺体。そんな町並みを黒曜石の名を冠するキャバリアの隊列が肩を落として進軍する。恐らくは都市中央区画を目指しているのだろう。まだ交戦状態に至ってはいないものの、いずれの機体も警戒を張り詰めさせており、胸に収まるパイロット達も目とレーダーの監視でいずれ現れるであろう敵機を待ち構えている。
「反応あり。十時の方向」
 誰かの報告ひとつで隊列を成す全てのキャバリアが一斉に個々の歩行を中断し、その方角へライフルを向けた。二股に分かれた交差路。視認できる動体は無い。遠くで響く大気振動。不気味な静寂が続く。
「見てこい」
 隊長らしき機体に命じられたオブシディアンが射撃姿勢のまま交差路に立つ。途端に薄ら寒い視線を感じた。どこからか見られている。本能的に動いた搭乗者の首に合わせ、破壊されたショーウィンドウをオブシディアンの赤いセンサーカメラが覗き込む。人の気配を捉えたが、僅かな間を置いてその認識は訂正された。
 ショーウィンドウの中に佇む人影は長杖を持つマネキンだった。アリスの意匠を汲んでいると思しきエプロンドレス、フリルをあしらったヘッドドレスの下には柔らかな光沢の金髪が穏やかに波打っていた。一見すると不思議の国から這い出てきたかのようなメイド姿の少女だが、これは人間では無いと断定できる。根拠となる理由は拡大表示されたモニター上で手の関節部の構造を見れば誰でも分かる筈だ。義手などの例外を除いて球体関節を持った人間など存在するはずが無い。人工物らしく毒々しいまでに色白な肌と硝子のように透き通った青い目も人としては精巧すぎる。貼り付けたような笑顔も然り。
「何があった?」
 ショーウィンドウを覗き込むオブシディアンの元に隊長機が近付き直接接触回線で通信を入れる。
「いえ、人と見間違えただけです。ただのマネキンでした」
 レーダーの反応も誤認だろうと解釈して隊長機と共に再び隊列へと戻る。だがこのパイロットの認識には二つ大きな誤りがあった。まずマネキンは少女型ではなく少年型。そしてそれは服飾されたマネキンなどではなく恐るべき奉仕人形なのだ。
「おやおや、存外分からないものですね」
 去るオブシディアンの隊列の背を追って、双眸の中で青い瞳がぎょろりと横に動き、物言わぬ筈の人形の口から言葉が漏れた。ティー・アラベリア(ご家庭用奉仕人形・f30348)が語らぬ人形の振りを辞めて本来のミレナリィドールへと戻る。現状の発端は単純なものだ。建物の中を経由しながら索敵していた最中にバーラント軍の接近を感知し、偶々あった衣料品店のショーウィンドウの中でマネキンの真似事をしてやり過ごしていたのだ。元より人形なので真似事と言うには些か語弊があるが。
「それではでは、市街地戦でございますので楽しく焼き払ってしまいましょう」
 先程オブシディアン達と邂逅していた時となんら変わらない表情で、手にした長杖をキャバリアの集団の背後へと向ける。
「としてしまうと後が大変でしょうし、ここは精密作業と参りましょう」
 長杖の中程を握り球体関節特有の動作で一回転させると、それは光の粒子となって霧散した。自身がオブシディアン隊の警戒範囲の外にあることを確認しショーウィンドウから道路上に降りると、キャバリアがするように脚部から光を噴射し付近のビルの窓へ目掛けて跳躍、まるで重力の呪縛を感じさせない軽やかな足の運びで僅かな砂埃を巻き上げつつ優雅に着地した。ティーの脚部に仕込まれている魔力増幅器、99式戦闘機動機構から生じた推力と反重力魔術発現機構がもたらす重力制御による業だ。
「ビルの中を伝って参りましょう。折角お住まいの方々には引き払っていただいておりますので」
 誰に見せるでも無くエプロンドレスの裾を持ち上げ腰を折り礼をする。足の動きは緩やか、しかし一歩毎の歩幅が異様に大きい。反重力に依るものかシューズが地面に着いても足音は立たない。ビルの窓から窓へと飛び移り、瞬く間にオブシディアンの隊列に追い付き、頭上から見下ろせる位置まで到着した。キャバリアが足を踏み込む度に地面が揺れて天井から砂が振るい落とされる。ティーの肩にも掛かるが気に留める素振りも見せない。
「なるほどなるほど、良い高さに良い位置です。強襲するには最適でございましょう」
 今ティーがいるビルの階層は、地上から十メートルほどのところにある。丁度キャバリア二体分の高さだ。窓際の壁に張り付いて横目で見た眼下では前後に伸びたオブシディアンの隊列が直線道路を歩行している。
「では、ご用命を果たさせて頂きます」
 開いた手に粒子が集い長杖が形成される。しかしそれは杖と呼ぶには凶悪過ぎる外観をしていた。零式制圧型偃月杖。偃月状の巨大な魔刃を発生させる魔杖で、キャバリアのような大型目標に対しても十分な威力を発揮する白兵戦用の得物だ。手の関節の動きだけで三回転させ両手に構え直すと、窓から外へと飛び降りた。直下にはオブシディアンがいる。外に出たことでレーダー波に捕らえられたのか、オブシディアンの頭部がティーに向けられた。青い瞳と赤いセンサーアイが交差する。果たしてティーは敵機搭乗者の驚愕と困惑が入り混じった感情を見て取れただろうか。
「さっきのマネキ――」
 搭乗者が言い終えるよりも先に偃月の魔刃がオブシディアンの右半身を斬り落とし、爆発させる事もなく左右に真っ二つに割ってアスファルトの大地に沈めた。
「ご安心ください。主幹動力炉は切除しておりません。なにしろ精密作業ですので」
「攻撃しろ!」
 途端にティーの前後より激しい銃弾の嵐が殺到する。だがティーは柔らかな足捌きで踊るかのように身を翻し、僅かに横へ飛んだだけで避けて見せた。動きにつられてエプロンドレスの裾が広がり、着地と同時にまた元の形状へと戻る。
「こいつ、なんだ?」
 名状し難い悪寒を感じたオブシディアンの搭乗者。激しい攻撃に曝されているティーは一旦ビルの屋上へ跳躍した。後を敵機のマイクロミサイルが追ってくるが、標的の小ささと重力を無視した浮遊感のある動きに翻弄され掠めることすら叶わない。結局誘導を振り切られて目標を見失うと、ビルに衝突し無意味に爆散した。
「偃月杖はお気に召されたでしょうか? 次はこちらの97式をお試しくださいますよう」
 もう一方の手に喚び出された長杖。高密度魔力を散弾として高速発射する97式圧縮拡散型魔杖だ。ティーは再度オブシディアンの隊列の最中へ飛び込む。屋上から飛び出るや否や無数のマイクロミサイルが視界を埋め尽くした。瞬時に偃月杖を95式思念誘導型魔杖に変換する。高い誘導性を持つ高速魔法弾を斉射する魔杖だ。
「奉仕人形には勿体ないご歓迎、身に余る光栄でございます」
 白いガスの尾を引いてのたうつマイクロミサイルが眼前全てに迫っていると言うのにティーの表情は欠片ほども変動しない。ひょっとしたらこれ以外の表情が存在しないのではないだろうか。防空探信儀と躯体に内蔵した火器管制機構によって全目標の捕捉を終えた95式が発射される。マイクロミサイルとほぼ同等の数の魔法追尾弾がミサイルと衝突し合い弾けて爆散する。だが僅かに数が足りていない。
「では妖精の手もお借りしましょう。二種類ほど」
 ティーの周囲に出現した浮遊式小型自動端末、79式近接防御妖精が無数の魔力誘導弾を撃ちまくり残るマイクロミサイルの全てを撃ち落とした。視界を覆う爆煙から身を現したティー。脚部より生み出した推力で空中を蹴り、手近な一機に接近すると97式の拡散弾を連射した。圧縮魔力弾が壁となってオブシディアンの頭部や手足を粉砕する。
「着地の隙を狙え」
 誰かが放った言葉に従いティーの足が地に着く瞬間にライフルの斉射を浴びせるオブシディアン隊。けれどティーは着地寸前で宙にふわりと舞い上がったかと思えば射線を掻い潜って高速で猛然と直進、95式を偃月杖に再変換しながらオブシディアンの足と足の間をすり抜けた。すり抜けざまに振られた偃月の魔刃。アンダーフレームの両膝を切断され盛大な衝突音と土埃を上げて機体は地に沈み込んだ。
「甘いな嬢ちゃん」
 気が付けばティーは大きな十字の交差路の中央に出ていた。前後左右の通りにはオブシディアンが犇き、いつの間に登っていたのかビルの上にも展開した敵機がこちらへ銃を向けている。頭上を除く三百六十度全てをほぼ完全に包囲されてしまった。
「嬢? いえ、奉仕人形でございますので」
「全機ミサイル撃て」
 短く素早く容赦無く、冷徹な命令がその場にいるオブシディアン隊全てに下された。逃れ得ぬミサイルの飽和攻撃。奉仕人形の躯体は爆轟の中で原型を留めないまでに破砕されるはずだった。直後発生する爆発。爆轟の元はティーでは無く、オブシディアン隊だった。
「なんだ?」
 ティーを包囲していたオブシディアンから起きた爆発が連鎖する。腕や頭部に足と、外部に露出した関節部から炸裂が生じて次々に達磨となってシステムダウンする。要因はティーが防御妖精と共に放った自動端末にあった。
 92式浸透自爆妖精。体内に浸透後炸裂する不可視の自爆型妖精を、戦闘中密かにリリースしオブシディアンに寄生させていたのだ。だがバーラント軍の兵士には知る由も無く、ただ原因不明のトラブルにより機体が爆発大破して行く最中、混乱し続けるしか無い。
 もう決着は付いたと長杖を消失させる事で意思表示するティー。いつぞやのように誰に見せるでも無くエプロンドレスの裾を持ち上げ礼の姿勢を取る。
「蹂躙完了です」
 奉仕人形の口角が微かに持ち上がる。今回の戦場で初めて表情を動かした。その時青い瞳は、果たして何を映したのだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイミィ・ブラッディバック
おぉ、オブシディアンMk4!
パーツ取りのチャンスですな
「…いい機会だから言わせてもらうが、いい加減その貧乏性を何とかしろ」
ほら敵来ますよWHITE KNIGHT、貴方の腕が頼りです
(UC発動、主導権を交代)
あっこらジェイミィ…!

…仕方ない、ベストを尽くすか
敵の位置を予測…ふむ、敵レーダーにPROVIDENCEからジャミングを仕掛けよう
この位置関係ならば背後から駆動系にLONGINUSを打ち込めば良いか
ほぼ無傷でというオーダーだからな…
最小限の推力で、慣性移動を心がけつつ…気取られないように回り込み、駆動系を正確にランスモードのLONGINUSで貫く
…これで良いんだろう、ジェイミィ
「上出来です」



●バックスタブ
 人類の叡智と技術或いは魔術の神秘、はたまた認識の埒外にある太極の力が生み出した機動兵器群であるキャバリア。多くの機体は装甲に頑強な金属材質を用い、内部には機体を淀みなく作動させるために、複雑でありながら多少の損壊では機能を失わない精密さと頑丈さを兼ね揃えた機関が詰め込まれている。いずれも価格に換算すれば規格統一による製造費用の低さを差し引いたとしても兵器らしい高額なものとなるだろう。仮に損傷していたとしても。つまり売れば金になるし貴重な部品取りにも使えるのだ。
「おぉ、オブシディアンMk4! パーツ取りのチャンスですな」
 背丈の高いビルの屋上から見渡す市街の遠方に、黒い獲物の姿を発見してスリットアイを輝かせるウォーマシン。百年にも長期に渡って多くの国々で運用され続けて来たオブシディアンシリーズのMk4をジェイミィはさぞ気に入っているらしい。気に入るベクトルはやや屈折しているようだが。
「……この機会だから言わせてもらうが、いい加減その貧乏性を何とかしろ」
 白騎士の人工知能はジェイミィの思考も事象として予測出来ていたのだろうか。資源の再利用自体は褒められたものだが、わざわざ戦場の真只中でジャンク漁り紛いを始めるような事を言い出す主に対し、露骨に呆れた態度を示す。思えば自分もメガリス『白騎士の鎧』からリサイクルされていたのか。一方のジェイミィは貧乏性など正すつもりなど全く無いらしく、魅力的な獲物にすっかり執心。極力無傷で確保するための算段を画策し始める。結論はすぐに出た。DIABLO OS 2.0.0 ACTIVATED. REBOOT COMPLETEDとのシステム音声がコクピット内に響くと、自身のメインコントロール権限がWHITE KNIGHTへ半ば強引に委譲される。
「待て、何を思考しているか解るぞ。あっこらジェイミィ……!」
 ユーベルコードによる作用には流石に抗えないらしく、晴れてジェイミィの制御主導権はWHITE KNIGHTに明け渡されてしまった。
「まあまあ、そう言わずに。どの道敵機を成敗するのに変わり無いんですから。あ、可能な限り無傷で頼みますよ」
「傷付けなければ成敗出来ないだろうが」
「動けなくするだけで良いのですよ。後ろからこうチクッと」
 白騎士の鎧から作られた事象予測人工知能はどうあってもジェイミィの意思が変わらない未来を視ると、これ以上の問答は無駄だと観念して戦闘体勢へと移行する。
「仕方ない、ベストを尽くすか」
 WHITE KNIGHTに代わって[JM-E]が嘆息のモーションを取る。ジェイミィは後ろで見ているだけだ。適材適所という言葉だけでは納得しかねるところだが文句を垂れても進展は無い。さっさと片付けてしまおう。改めて此方と敵機の状況を確認する。現在位置は高層ビルの屋上。目視索敵のために登ってきたのだ。先程遠方に敵影を捕らえていたが既に視界外に消えている。向こうも此方に気付いているのかは定かでは無いが、狙撃されなかった点を鑑みるならば発見されている可能性は低い。
「敵の位置を予測……ふむ、敵レーダーにジャミングを仕掛けよう」
 一度敵機の姿を視認しているので事象予測は可能だ。WMLD-A400 "PROVIDENCE"より電子欺瞞を放射し自機の位置を存在ごと欺く。ただでさえ四方八方ビル塞がりのレーダー波が通り難い環境下でジャミングまで掛ければ背後より忍び寄る機体の気配を感じ取るのは並大抵の事では無い。ジェイミィの望む通り無傷で目標を仕留めるには最適な条件だろう。WHITE KNIGHTは[JM-E]をビルから飛び降りさせると着地寸前でスラスターを噴射して落下エネルギーを打ち消し、静かに降着させた。
 敵の居所は事象予測によって掴んでいる。ブーストと小ジャンプを繰り返して敵機の所在へと向かう。
「ほら敵がいますよ。貴方の腕が頼りです」
「静かにしていろ。孤立している、という訳でも無いか」
 ビルの影から微かに頭部を覗かせ、先の様子を伺う。巨大なオフィスビル街の隙間を走る複数車線の道路上、数機のオブシディアンがライフルを構え周囲を警戒する様子で進軍していた。明確な隊列やフォーメーションを組んではおらず、無造作に散らばっているようだ。しかしどの機体も進行方向は同じ。狙うならばまず最後尾を歩く機体だろう。WHITE KNIGHTの思い切りは早い。最小限の推力で小ジャンプ後の慣性を使いつつ、大きくビルを迂回して敵機後方に出る。重く暗い照り返しのガラス窓に、赤いセンサーライトの尾を引いて滑るように走る[JM-E]の姿が反射した。ジャミングに補助された静粛行動によって敵機に気取られる事なくここまで来れた。
「この位置関係ならばLONGINUSを打ち込めば良いか」
 ウェポン・セレクターをCVWMHP-2000 "LONGINUS"に合わせる。三種の形態に変形可能な機甲槍だ。今回はランスモードを使う。パイルバンカーもあるが無音のランスの方が適任だろう。狙いは駆動系。一突きで行動不能に陥れる。果たして[JM-E]が行動を再開した。大通りに出てやや大きく屈むと跳躍。落下の加速と機体重量を相乗させたLONGINUSの突き込みが、オブシディアンの背後を捕らえた。装甲と内部機構が砕かれる音が巨大壁となったオフィスビル街に反響する。
「なんだ?」
 やや先を進むオブシディアンが音に釣られて振り向く。だがそこには何も無い。先程まで後ろを歩いていた友軍の姿も。訝しげにナパームキャノンを向けたその背後に、槍を構え飛び掛かる白い巨影が躍り出た。
「結構なお手並で」
「当然だ。ジャミングで通信も封じてある」
 LONGINUSにオブシディアンを突き刺したままビルの影に引き摺り込み投棄する。座標さえ覚えておけば回収は後で良いだろう。異変に気付いて来た道を戻るオブシディアンの足音が聞こえる。その音に紛れて[JM-E]も再び移動を開始。貧乏性のウォーマシンによって始まったキャバリア狩りは、オブシディアンMk4の一団を絶滅させるまで続いた。
「……これで良いんだろう、ジェイミィ」
「上出来です。拍手」

大成功 🔵​🔵​🔵​

支倉・錫華
【ガルヴォルン】

戦い方としては同じ感じでいいかな。

補給もしてもらったし、敵もさっきより手強そうだし、
今回はライフルも使っていこうかな。

アミシア、ここからはサポートよろしくね。
『了解。目標選定とバランス調整もらいます』

大佐は前にでる、のかな?狙いは足元でよろしくね。
パイロット、そっちに行かせるので保護よろしく!

燐華とサージェさんはさすがの攻撃力だね。
こちらは任せていいかな。

ならわたしは【蜘蛛の舞】を使って、
索敵と囮メインにできれば奇襲かな。
敵の布陣を確認しながら相手を引き出して、大佐に伝えよう。

倒したパイロットには、
「あの戦艦。なんとかあそこまで行って」
と伝えて、ストライダーに避難してもらおう。


セレーネ・ジルコニウム
【ガルヴォルン】
「想定通り敵軍の第二波が来ましたね。
各機、ストライダーで補給および整備完了次第発進してください!
ここからはストライダーも戦列に加わります!」

機動戦艦ストライダーの艦橋の艦長席でガルヴォルンメンバーに指示を出しつつ、戦艦の制御AIのミスランディアおよびクルーに【機動戦艦全力攻撃】を命じます。

「ミスランディア、ストライダーの全砲門開放!
遠距離ミサイル発射後、接近してくる敵に対地攻撃開始です!」

敵のミサイル攻撃は迎撃ミサイルと対空射撃で撃ち落としましょう。

第一波で捕虜にした兵士は全員無事だとオープン回線の通信で伝えつつ、キャバリアから脱出してきた敵兵はストライダーに収容します。


支倉・燐華
【ガルヴォルン】

ドランギムRC、補給と整備は完了しました
敵の第二陣はオブシディアンMk4ですか、主力機は統一した方が兵站への負担が少ないとは思いますが
カルキノスとオブシディアンでは互換性があるとは正直……

後退したレイテナ軍から提供してもらった都市地図から各個撃破に向いてそうな場所を割り出してホバー機動で誘導します
パトローネファウストは誘導地点にワイヤートラップとして設置しておきます
狙撃にはホバーの機動力とスモークディスチャージャーで対処です
適宜ドラムマシンガンとジャイアントバズーカを使い分けて不殺を心がけて攻撃します
接近戦では肩や胸部のヒートダガーを使い捨てていきます、鉈より小回りが利きますよ


サージェ・ライト
【ガルヴォルン】

束の間の休息ですね
シリカ(猫)、補給しましょう(パンもぐもぐするクノイチと白猫又

さてお腹いっぱい時間も頃合い
いきましょう!

再び『ファントムシリカ』に乗って出撃

お、ストライダーの攻撃で足並みが崩れましたね
敵戦力把握と囮は錫華さんにお任せしてー
防御は大佐にお任せしてー
私は敵陣ど真ん中を上から狙います!

ミニシリカ、データの共有と距離の把握を

ストライダーの甲板から上空に飛び上がって
「天より降臨せし瞬光の爪牙よ、光を纏いし黒き翼よ、敵を穿て!!」(詠唱は毎回適当
キャバリアのみを破壊する効果を付与&
ばっちり詠唱付きの【快刀乱麻】で遠距離攻撃!
味方を巻き込まないようにしないといけませんね!



●戦姫達よ
 人は動けば腹が減る。腹が減っては戦は出来ない。現代に於いては武士は食わねど高楊枝などとんでもない話しだ。激しい機動戦闘を終えたキャバリアが莫大な量の推進剤やエネルギーインゴットを欲するように、人体もまた熱量無くして行動は出来ない。
「サージェさん、まだ食べてるんですか?」
「ひっほほってふははい、もうひょっほ……んぐ」
「ふぁほほっほはげ」
「報酬減算しますよ?」
「それはだめ!」
 ガルヴォルンの戦隊長のセレーネからの通信に、判読不能の答えを返すサージェとシリカ。頬張っていたパンの残りを無理矢理喉に通すと漸くパイロットとしての補給作業を完了した。ファントムシリカのソウルアバターにまでその補給が本当に必要なのかは不明だが。
「さてお腹いっぱい時間も頃合い! いきましょう!」
「いざ鎌倉!」
「鎌倉?」
 シリカが放った謎の地名に怪訝な声を上げたのはミニシリカ。対話型インターフェースを搭載した独立支援AIで、シリカとは真逆の冷静で落ち着いた人格調整が成されている。サージェが乗るファントムシリカの現在位置はセレーネの座上艦であるワダツミ級強襲揚陸艦ストライダーの艦首先端。そしてストライダーは都市内にある陸上競技場で極低高度を維持した状態で待機している。バーラント軍の第一波と交戦していた際には都市外の安全圏で待機していたが、市街の脅威が消失し進入時の安全が確保されたため前線指揮及び火力投射を目的として市街まで進出して来たのだ。
「それにしても、りくじょーきょーぎじょーとは、まあ都合良くありましたねー」
 どこかのすきゅりんのようなイントネーションで喋るサージェが艦首から周囲を取り囲む雛壇型の観客席を見渡す。ストライダーは現在陸上競技場のトラックに収まるようにして身を潜めていた。巨大な機動戦艦と言えども船体を降ろすには十分な平地面積があるし、観客席が遠方からの目視を防ぐ遮蔽物となる。緩やかに内側へ向かうすり鉢状の傾斜構造はレーダー波から身を守ってくれる。
『なあに、街並みから推察出来る市民の生活様式や文化と照らし合わせて、この規模の都市ならむしろ無い方が不自然じゃろうて』
 機械知性体ユニット、ミスランディアがサージェに答えた。本来はセレーネが搭乗するクロムキャバリアであるスティンガーの操縦補助を行なっているが、今はストライダーの管制を担当している。位置取りを提案したのもミスランディアだ。
「大佐、もうそこまで来てる。かなりの数だよ」
 短く通信を入れて来たのは支倉姉妹の姉である錫華。スヴァスティカSR.2に搭乗し後の展開に備えて競技場外、ストライダー前方の市街の何処かに潜んでいる。彼女の様子を映したウィンドウが僅かに揺れているのは、付近でオブシディアンMk4の一団が行軍しているからだろう。
「レーザー誘導完了しています。いつでもどうぞ」
 続いて支倉姉妹の妹、燐華からの通信。こちらも姉と同様ドランギムRCで瓦礫とビル群の影に潜んでセレーネの指示を待っている。どうやら敵機にレーザー照準が可能な距離まで接近しているようだ。支倉姉妹より報告を受けて、いよいよセレーネが立つ。
「想定通りですね。錫華さん、燐華さんはそのまま照準を続けて待機。ストライダーの攻撃着弾に合わせて行動を開始してください」
「了解」
「わかりました」
 姉妹から至って簡潔な返事がガルヴォルンの戦術データリンクを仲介してストライダーの元へ届けられた。仲介しているのは通信波だけではなく、スヴァスティカ SR.2とドランギムRCが捕捉している対象の座標位置や照準情報も同時にリアルタイムで受信している。
「お? いよいよですねー」
「れっつぱーりない!」
「まだ夕方にもなってない」
 十分な補給を済ませたサージェとシリカとミニシリカも既に準備万端らしい。
「ミスランディア、ストライダーの全砲門開放! 同時に高度上げ! 頭を出します!」
『あいわかった』
 セレーネより下された指示に従いミスランディアが艦の制御を行う。ストライダー各所のハッチが開き多連装ロケットシステム型のミサイルポッドが顔を出す。それと並行して艦の高度が上昇。見る見る内に地上が遠ざかり観客席の最上階より荒廃した市街の遠景が覗き始めた。どこか海洋生物にも似た風貌を持つ巨大な船体が陸上競技場から身をもたげ完全に露出する。観客席という遮蔽物を失ったストライダーは当然四方から注目の的となる。
「なんだあれは? 戦艦か? 空母か?」
「どっちでもいい、攻撃しろ。ミサイルだ」
 途端に市中のあちこちから白煙の尾を連れたマイクロミサイルがストライダー目掛けて一斉に駆け込んでくる。セレーネは艦橋内に響くミサイル警報を気に掛ける事なく冷静に次の指示を下した。
「CIWS起動! 迎撃ミサイル発射!」
 ストライダーよりカウンターとして放たれるミサイル。オブシディアンMk4が放ったミサイルへ向かうと側近で爆発、無数のベアリング弾をばら撒きそれを撃墜した。迎撃ミサイル群をすり抜けた一部は船体の各部に効果的に配置された対空機関砲が自動で撃ち落として行く。
『ストライダー損害無し。ただし、今の迎撃で使用した弾薬により我がガルヴォルンの財政への損失額は』
「はい今度はこちらの番! ミスランディア! 対地攻撃開始!」
 機械知性体ユニットの言葉をセレーネの早口ではっきりとした発声が遮る。
「機動戦艦ストライダー、全武装一斉発射用意!」
 防弾パッドが仕込まれた胸を威風堂々と張り、メインモニター上に表示された市街の二次元地図を指差す。各所のマーカーは支倉姉妹が捕捉した敵機と先程の攻撃で逆探知した敵機を示している。
「てーーッ!!」
 セレーネと共にストライダーが咆哮する。解き放たれた対地キャバリア用ミサイル。白線をなびかせながら各々捕捉した目標へと向かう。
「全機回避!」
 荒ぶるミサイル警報にオブシディアンMk4達が反射的なブーストダッシュや迎撃行動に移る。ビルに隠れたり撃ち落としに成功した機体もあるが、相当数が餌食となったらしく市街の各所で黒煙が立ち昇った。
『着弾率はまあまあと言ったところじゃな』
 戦果を分かり易く簡潔に報告するミスランディア。それに対し「十分です」とセレーネは答えてガルヴォルン全軍へ次の指示を出す。
「以後ストライダーは対地攻撃を継続、機動部隊の皆さん! 仕事の時間です!」
「待ってました!」
「あいあいまむ!」
 ストライダーの艦首より淡い紫色と白を基調としたキャバリアが空中へダイブする。サージェのファントムシリカだ。サージェは眼下にミサイル攻撃を生き延びたオブシディアンMk4の集団を捉えると、ファントムシリカにセラフィナイトスピアを構えさせた。
「天より降臨せし瞬光の爪牙よ、なんたらかんたらどーのこーのであれやこれ、敵を穿て!!」
「適当にしない」
 ミニシリカの指摘もなんのその、いい加減だが割と機能しているらしい詠唱によって尖端にエネルギーが収束される。高熱源反応に気付いたのかオブシディアンMk4達がファントムシリカへマイクロミサイルの照準を向け、全機がタイミングを合わせ斉射した。無数の誘導弾とセラフィナイトスピアを真っ直ぐに構えたまま自由落下するファントムシリカの距離が詰まる。瞬間、サージェが吼えた。
「そうるっ!! ぶれいかーっ!!」
 セラフィナイトに集ったエネルギーが臨界を超える。それは大きな三日月状のエネルギー波へと変貌しミサイル群と交差すると切断爆砕。そのまま減衰することなくオブシディアンMk4に襲い掛かり集団を丸ごと切断処理する。やはりクノイチらしからぬ潜んで無い業とも思えるがそんな事はどうでも良い。
「殺ったー!」
「殺ってないもん!!」
 シリカに対するサージェの否定の通り、パイロット達は無事だ。放った快刀乱麻には初めからキャバリアのみに限定した破壊効果が付与されていたのだ。
「またつまらぬ物を……」
「後ろ」
 地上に機体を着地させた際に何処かで聞いたような台詞を決めようとしたが、警報代わりのミニシリカの声に中断された。
「どわぉ!?」
 クノイチめいた反射神経でエンジェライトスラスターを噴射し横に逸れる。何かが機体を掠め、その何かはビルに着弾すると爆発大炎上した。オブシディアンMk4の背部キャノンから発射されたホークナパームだ。
「火遁の術!」
「違う」
 セラフィナイトスピアを構えてナパームキャノンを撃ち込んできた犯人を実力で排除しようとするファントムシリカ。だがそれには及ばなかった。
「上、取ったよ」
 突如頭上より降り注いだ銃弾の雨にコクピットブロックと動力炉を除く全身を撃ち抜かれるオブシディアンMk4。スヴァスティカ SR.2のライフルFdP XFAM-120のフルオート連射によるものだった。
「サージェさんはさすがの攻撃力だね。こちらは任せていいかな」
 フレキシブル・スラスターを低出力で連続噴射しながらオブシディアンMk4を踏み付けスヴァスティカ SR.2が着地する。
「はい錫華さん! 任されました!」
 相対するファントムシリカは敬礼のモーションを取ると迫り来るオブシディアンMk4の迎撃へと向かった。
「アミシア、ここからはサポートよろしくね」
『了解。目標選定とバランス調整もらいます。それと今の内にライフルのリロードを』
 オペレーティングを支援するパートナーユニットに促される通りにFdP XFAM-120の弾倉を交換する。若干弾薬が残っていたが戦闘中に切れるよりは良いだろう。錫華は「さて」と呟きアミシアが提案した優先目標選定結果をチェックする。
「ビル街に結構残ってるね。出て来ないのは大佐の戦艦のミサイルが怖いからかな?」
『そうでしょう。こちらから出向いて倒すしかないかと』
「そうだね。わたしが派手に動けば囮にもなるし。この場所なら……蜘蛛の舞が使えるか」
 射出したワイヤーハーケンの刃をビル側面に食い込ませ、ウィンチで巻き上げる。スヴァスティカ SR.2の機体が釣られてそちらに跳び、跳んでいる最中更にビル側面へワイヤーを射出してそちらへと運動ベクトルを向ける。地形環境を利用し推進剤を殆ど使う事なくビル街を駆け抜けていると、すぐに狙いの敵機の元へと到着した。
「来たぞ! ミサイルを使え!」
 オブシディアンMk4はスヴァスティカ SR.2を発見した途端にマイクロミサイルを放つ。錫華はアミシアによって可視化された弾道軌道を読み、僅かな隙間へと機体を飛び込ませる。
「ついてこられるかな?」
 敢えて攻撃する事なくワイヤーアクションでミサイルをすり抜けただけではなく、オブシディアンMk4のすぐ傍を素通りして挑発する。
「こっちこっち」
 ライフルを牽制目的で撃ち更に意識を誘う。オブシディアンMk4もライフルで反撃するがスヴァスティカ SR.2はワイヤーを巧みに扱った地に足を付けない三次元機動で回避しビル街の曲がり角に消える。後を追うオブシディアンMk4だが、角を曲がった先で見た物は何もない荒れた路上だけだった。
「上だよ」
 オブシディアンMk4の搭乗者を襲う強烈な衝撃。上から何らかの重量物が降って来た。振り払おうともがくオブシディアンMk4の肩に乗ったスヴァスティカ SR.2がワイヤーハーケンを食い込ませ固定、駆動部の隙間にライフルを連射すると内部機構を破壊する事で活動を停止させた。死んだオブリビオンマシンより搭乗者がコクピットハッチを強制排除して脱出する。そこにスヴァスティカ SR.2が銃を向けた。
「う、おお!?」
 狼狽るバーラント兵。しかし銃口から弾は排出されず代わりに明後日の方向へと向け直された。
「あの戦艦。なんとかあそこまで行って」
「へ?」
 拡声機によって増幅された錫華の落ち着いた声。呆気に取られるバーラント兵に対し再度呼び掛けが行われる。
「あなた達がさっき攻撃した戦艦。わかるでしょ? そこに行って。死にたくなければね」
「わわわっわかりました! 行きます絶対!」
 千鳥足で走り出すバーラント兵。最後の死にたくなければとは戦闘に巻き込まれてという意味で言ったのだが、どうも曲解されたらしい。この状況では致し方無い。それより余計な説得の手間が省けたことに価値を見出すべきだろう。オブリビオンマシンの精神汚染から脱した振り返しで判断力が鈍っているのかも知れない。だがもし狂気を増幅されていたらそうもいかなかっただろう。第一波の戦闘で錫華達がバーラント兵の多くを生捕りにした戦術の結果が活きて来た。
「大佐、パイロット、そっちに行かせるので保護よろしく!」
「了解です! 錫華さんは作戦行動を続けてください」
 ストライダーとの短い通信を終えた。
『どうやらこちらの動きに敵が釣られたみたいです』
 アミシアの報告を受けてレーダーに視線を向ける。敵を引き出す事にも成功したらしい。
「大佐へ指定ポイントにミサイル発射要請を入れて」
『了解です。あと燐華さんが来ます。間も無く接触』
 新たな反応がレーダーに表示された。識別は友軍で同じガルヴォルン所属。機体識別コードは燐華のドランギムRCだ。
「あら」
「燐華、そっちは?」
 スヴァスティカ SR.2とドランギムRCが相見える。
「多数の反応が見えたので」
「なるほどね、じゃあ半分任せていい?」
 ドランギムRCに装備するジャイアントバズーカを射撃姿勢で構えさせながら燐華が答える。
「お仕事とあらば。ついでにハーケンの予備ワイヤーを貰っても?」
「ん、いいよ」
 錫華は用途は聞かない。姉妹というのもあるのか大凡は察しているのだろう。切断された際に備えて所持していたワイヤーの束を手渡したスヴァスティカ SR.2はドランギムRCに背を向ける。
「じゃあよろしく。また後で」
「はい、また後で」
 スヴァスティカ SR.2がワイヤーハーケンを射出し蜘蛛の舞の如しなマニューバでビルとビルの間を飛び跳ねる。迫り来るオブシディアンMk4の群の一部にライフルの斉射を浴びせるとそれらを引き連れビル街の向こうへと立体跳躍する。その錫華の挑発に乗せられなかったオブシディアンMk4達が燐華が操るドランギムRCにライフルの精密射撃を放ちながら接近する。ドランギムRCの大きなモノアイはその動作を捉えており、滑らかなホバー機動で回避して見せると反撃のバズーカを発射。大型弾頭が散開回避し損なったオブシディアンMk4のオーバーフレームを粉砕した。
「オブシディアンMk4ですか、主力機は統一した方が兵站への負担が少ないとは思いますが……」
 機体を180度旋回させながら尻目に見た黒曜石のキャバリアに対して燐華はふとそんな感想を覚えた。第一波で大量のカルキノスを投じて来たバーラント軍だが、果たしてオブシディアンMk4との互換性は如何なものなのか。武器は良いとしてもオーバーフレームとアンダーフレームはどうだろう。量産型キャバリアなのでやれなくは無いだろうが、きっとバランスが崩れる。レイテナ軍の市街戦用ギムレウスといいこの戦場に投じられたバーラント軍レイテナ軍双方のキャバリアには妙な違和感がある。そんな事は一旦隅に置いて、機体を走らせらながら手持ちのマップデータを精査する。
「ふむふむ、この地点まで誘い込めれば各個撃破できそうですね」
 追い縋ってくるオブシディアンMk4はお陰様で大漁だ。これでも姉が引き連れて来てくれたのだから、もしあの時姉と鉢合わせしていなかったら仕事が倍に膨らんでいただろう。遠方で爆音の連鎖が聞こえた。ストライダーの攻撃だろうか。恐らくサージェも元気に暴れ回っているはず。後は自分の仕事を果たすのみ。
「幸いこれも頂けましたし、まあ上手くやってみましょう」
 バズーカを脇に抱えて姉から貰ったワイヤーを使いパトローネファウストにある仕掛けを手早く施すと、バズーカを構え直して機体を反転。バックブーストしながらバズーカを二回連射する。スラスターを継続噴射して追ってくるオブシディアンMk4の足元に着弾、アスファルトの地面を砕いて盛大に転倒させた。同時に各個撃破するための狙いの地点まで到着。閑静なマンション街だろうか、道幅が狭い。
「私の機体にはちょっと窮屈ですけれど、仕方無いですね」
 言葉とは裏腹に窮屈さを感じさせない軽快なホバー捌きでマンションの影に飛び込む。ここではドラムマシンガンの方が取り回し易いと兵装を変更。加えてスモークディスチャージャーを起動する。ドランギムRCはマンション街を縦横無尽に滑走し白煙を充満させる。そしてある仕掛けを建物と建物の間にセットした。オブシディアンMk4がピアシングショットで狙撃しようとするも機動力と視界不良に翻弄されて照準もままならない。
「どこだ? どこにいる?」
「密集陣形を取れ」
 円陣防御で全方位を警戒するオブシディアンMk4達。けれどそんな事は無意味と白煙の向こうからドラムマシンガンの集中射撃が殺到する。
「纏める手間が省けて何より」
 質実剛健な搭乗機とは対照的にしたたかな攻撃を加えて行く燐華。姿の見えない敵機の恐れに駆られたバーラント兵が闇雲なブーストダッシュでその場を離脱しようとする。しかし何かに足を取られて転倒、直後炸裂に見舞われ大破した。
「面白いぐらいに簡単に引っ掛かってくれましたね」
 燐華の表情には笑いは無く、呆れた色が微かに見える。姉の錫華から受け取ったワイヤーと自前のパトローネファウストを組み合わせたトラップが発動したのだ。なおアンダーフレームを破壊しただけなので搭乗者は無事だろう。
「残り一機……」
 多数の敵と交戦し続けていたので手持ちの弾も残り少ない。燐華はヒートダガーを抜かせると白煙の中こちらを見失っているオブシディアンMk4へ一気に接近した。
「そこか!」
寸前の所でドランギムRCの接近に勘付いたオブシディアンMk4が鉈を振りかざし迎え打つ。だがドランギムRCの方が一足早かった。
「鉈より小回りが効きますので、ね」
 ホバー機動の加速を伴ったまま体当たりし、鉈を握る腕へとヒートダガーを突き立てる。そのままマンションの壁に衝突させ機体重量で押し込むともう一本のヒートダガーを抜刀し駆動系を切断した。センサーカメラより光が失われ力なく崩れ落ちるオブシディアンMk4を見て、燐華は深く息を吐いた。
「終わりです」
 スモークディスチャージャーによって生じた白煙が晴れ、元の荒れたマンション街が現れる。散乱するオブシディアンMk4の残骸。そしてそこから脱出して戦意を喪失したまま項垂れるバーラント兵達。燐華は己の役割が果たされた事を悟った。
「お仕事完了です」
それからややあって、場所はストライダーが待機していた陸上競技場。ガルヴォルンに完膚無きまで無力化され武装解除したバーラント兵達が、一堂に暗い面持ちで集合していた。いずれも戦意どころか魂が抜け落ちた様子で、反抗を起こす気配など微塵も感じられない。
「捕虜にしたバーラントの兵士は全員無事です。現在はレイテナ軍に搬送されていますが。貴官らには戦時国際法に基いた処遇を保証します」
 小さな体躯からは想像出来ないよく通る声音が響く。ストライダーの甲板上でセレーネがバーラント兵達に呼び掛けを行なっている。
「いいですか皆さん、おはしですよ。おさない、はしらない、しなないです」
「おかしじゃなかった?」
「真面目にやって」
 ストライダーの直下ではサージェとシリカとミニシリカの三人住まいなファントムシリカが誘導を補助していた。機体のあちこちに焦げ跡や細かい損傷が見られる事から、あの後の大立ち回りが想像できる。バーラントの兵士達はサージェの誘導に何ら異論も唱える様子もなくただ従っている。
「よろしいのですか? ストライダーに収容してしまって」
 やや遠巻きに誘導の様子を監視している燐華。ドランギムRCに搭乗したままであり、事が起ころうものなら即座に仕事を始められるよう内心での構えを取っている。
「たぶんね。あの様子じゃもう戦えないだろうし、それにこの後来る相手の事を考えたら、余計な手出しをされない場所に閉じ込めておいたほうが良い」
 ドランギムRCの隣に立つのは錫華のスヴァスティカ SR.2だ。支倉姉妹はどちらも監視の役を任せられている。錫華はまだ後一戦を控えていることをよくよく意識し、更に今回の侵攻を指揮している者の人物像を予想してセレーネが提案したストライダーへの捕虜収容に同意していた。
『他方面の猟兵より通信、制圧完了とのこと』
 アミシアがガルヴォルン全軍へ通信を送る。
『確認した。さて残るは最後の清算だけじゃな』
 ミスランディアが同様に応じる。第一波に続き第二波もイェーガーのほぼ圧勝に終わった。だが惨劇の演出脚本を手掛けた監督役がこのまま黙って去るなどという事はあり得ない。レイテナ都市防衛戦最後の戦いがそう間を置かずに始まるだろう。昼下がりを経て沈み始めた太陽が戦禍で荒れた街並みを緋色に染める。焼ける夕陽の彼方から来たるオブリビオンマシンは憎悪を以てイェーガーと相対する。やがて遍く全ての世界を滅ぼすために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『アマランサス・ラピート』

POW   :    BSロングビームライフル
【一瞬の隙も見逃さない正確な狙いの銃口】を向けた対象に、【高出力高収束のロングビームライフル】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    BXビームソード
【スラスターを全開に吹かすこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【高速機動で間合いを詰めてビームソード】で攻撃する。
WIZ   :    RS-Sマイクロミサイルポッド
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【肩部マイクロミサイルポッド】から【正確にロックオンされたマイクロミサイル】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はルイン・トゥーガンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第二波迎撃成功
 都市部西側より侵攻を開始したオブシディアンMk4部隊は全てイェーガーによって破壊もしくは無力化された。身柄を確保されたバーラント兵達はオブリビオンマシンの精神汚染から開放された代償に心身共に著しく消耗し戦意喪失。第一波に続き第二波の戦力も壊滅させられたバーラント軍には既に組織的な戦闘を継続する戦力は存在しない。予知結果が正しければ、イェーガー達が体勢を整え直した頃には残る最後の障害が現れる。

●第三波の戦力
 成すべきは敵の撃破ただひとつ。
 最終撃破目標である第三波の戦力について、イェーガーは尋問したバーラント兵より既に情報を得ていた。敵はアマランサス・ラピート一機のみ。このオブリビオンマシンを撃破すれば本任務の全行程は完遂される。
 アマランサス・ラピートとは汎用機アマランサスを熟練パイロット用に改修した中量級の高機動キャバリアだ。高速機だからといって軽装甲という訳でもなく、バランスに秀でた中量級らしくい標準的な耐久性に加えてシールドも備えているので長期戦に縺れ込んでも粘り強さを見せる。防御と回避手段を駆使し、易々と直撃を許してはくれないだろう。作戦領域が市街地であるためトップスピードを完全に活かす事は難しいかも知れないが、ジャンプブーストや鋭敏な機体挙動での三次元機動を行って来る事は想像に難くない。兵装はロングビームライフルとビームソード、両肩部マイクロミサイルポッドというスタンダードな構成で、派手さこそ無いものの搭乗者の技量を最大限反映する機体性能と相まっていずれも数値以上の威力を発揮するだろう。
 搭乗者は都市侵攻部隊を指揮するバーラント軍の女性将校、ストラ・アージェ大佐。惨殺劇の主犯格であり、暴れ馬で知られるアマランサス・ラピートを完全に手懐けるほどの並ならぬ操縦技能を有する実力者だ。狙った獲物を逃さない獰猛で鋭い反射神経は、アマランサス・ラピートが持つ精密な射撃と瞬時に近接戦闘の間合いに詰められるだけの速力を更に補強する。交戦中は互いの距離や位置に関わらず目を離すだけでも危険な相手となるだろう。
 なお、現在のストラは凄まじい殺意をイェーガー全員に向けている。人が放つ思念波に敏感な種族や生業で無くとも容易に感じ取れるほどのプレッシャーだ。オブリビオンマシンの精神汚染度がそれだけ深刻化している証でもある。生死は任務遂行の如何に問われていないため生殺与奪の権限は直接交戦するイェーガーにあるが、仮に生かすつもりにしてもまずは力でねじ伏せ機体を破壊する以外の道は恐らく残されていないだろう。倒さねば殺られる。敵はイェーガーを撃てる隙を決して見過ごさない。

●惨劇の主犯
 昼下がりを経て傾いた陽が地平線に沈み始めた刻。照る夕焼けが都市一帯を燃えるような緋色に染め上げ、落ちた影を引き延ばす。散在する鉄の巨兵と惨死した市民の骸がやがて迫る夕闇に飲み込まれんとしている。繰り返された戦いで疲弊したレイテナの都市を超高速で疾駆するキャバリアの姿があった。
「やはりこうなりましたか」
 オブリビオンマシン、アマランサス・ラピート。長距離航行用のロケットエンジン一体型のプロペラントタンクを装備している。その機体の胸に収まる操者がストラ・アージェ。階級は大佐。鋼鉄の狂気に蝕まれるがまま兵を率いて悪虐に走り、バーラントと面する国境地帯を越えてレイテナ西部都市に至るまでの市民を殺戮せしめた女性将校。手駒の悉くをイェーガー達によって壊滅させられた事で遂に自らが最前線へと引き摺り出されたのだ。
「あなたが教えてくれた通りの結果となりましたね。いやはやまったく、イェーガーというのは……」
 表情を悲しげに曇らせ俯く。孤独なコクピットの中で、隣に座る友に語りかけるような口振りで独り言葉を零す。都市を巡る高速道路伝いに超低空を滑空するアマランサス・ラピート。四肢の関節より暗く脈動する波動が生じた。導かれた先に敵がいる。彼女が言うあなたとやらがそれを見せてくれている。ただしそれがストラの思い込みでないという保証は無いが。
「私とあなたが望むのは闘争。その点ではお互いの理念は一致していましたね。戦いの中にしか私の生きる世界は無い。憎悪が戦渦を呼び、戦渦が闘争を呼ぶ。あなたが見せてくれた世界。もう少しだったのに……」
 戦い続ける悦びに取り憑かれた者の妄執が潰えて、取って代わるよう膨れ上がる怒気。薄気味悪くも悲観すら見せた表情が途端に修羅の如き形相へと変貌した。
「奴らが私の前に現れて、邪魔をして、やっと見え掛けた世界が……」
 恨みで両肩がじわじわと持ち上がり、操縦桿がより強く握り込まれてグリップの擦れ軋む音がコクピットに充満する。踏み込まれたフットペダルが機体を更に加速させた。
「イェーガー、イェーガーども! 君達が! あいつらがッ! お前達さえいなければァッ!!」
 鎌首を擡げ威嚇する毒蛇を想起させる表情で並ぶ牙を剥き出しに吼える。わざわざ呪詛を皆に聞かせるよう通信対象を全周波数に合わせているらしい。身を隠すつもりは無く、オブリビオンマシンの狂気に突き動かされるがまま呪うべき敵へ向かって猛進している。穢された末に破綻したストラの人格と機体が及ぼす怨恨が肉体の中で混濁化し、遍く世界の破滅への渇望がイェーガーへと集約された。
「殺してさしあげますよ! 絶対に殺すッ! 必ず殺してやるッ! イェーガーども!!」
 搭乗者が放つ明確な殺意にセンサーカメラの光が応える。アマランサス・ラピートの関節部より溢れ出た暗い淀みがより一層強く脈打つ。流れる市街の景観を何もかも置き去りにして駆け抜ける。推進剤を使い果たしたロケットブースターが投棄された頃、間も無く殺意を向けた対象達へと邂逅する。

●戦闘開始
 イェーガーとオブリビオンマシン、後世で西レイテナ事変と呼ばれるこの歴史に謳われるのはどちらか片方だけ。二者の戦いに引き分けは有り得ない。対決はどちらかが砕け散るまで続く。惨劇最後の舞台となるのは割れて爛れた騒乱の都市。時は夕刻。沈み行く太陽が全てを哀愁滲む緋色に燃え上がらせる。やがて夕陽の世界が終わりを告げる頃、その時都市を染める色は血か宵闇か。幕引きの手はイェーガー達に委ねられた。レイテナ都市防衛戦最後の戦いが始まる。
露木・鬼燈
相手は自分と同じ高機動型。
装備構成からして射程も大きくは違わない。
これは技量が試される戦いになりそう。
面白くなってきたですよ!
そろそろ近接戦闘を披露するときかな?
フォースハンドにライフルを装備。
装填するのは塗料の代わりに硬化樹脂を充填したペイント弾。
機動力を削いでやるのです。
近接戦闘に備えて両手両足にはダークネスセイバーを展開。
降魔化身<魔猿之型>を発動。
これにブースターを合わせれば生身に近い動きができるはず。
忍の業を見せてやるっぽい!
市街地という環境を利用して立体機動からの潜伏。
忍らしく不意を討つっぽい!
そして素早く立体機動で離脱。
再び潜伏からの不意討ち。
時には真正面から攻めたり、ね。


シル・ウィンディア
オブリビオンマシンの好きにさせるわけにはいかないよねっ!
がんばろうか、ブルー・リーゼ!

敵は高機動型、でもバランスはすごくいい機体だね
高度に注意しつつ【推力移動】で跳び回り
【空中戦】の要領で回避・攻撃を行うね

攻撃はビームランチャーを中心行うよ
敵のロングビームライフルは動きを【見切り】
【瞬間思考力】で回避・【オーラ防御】・ランチャーによる相殺を選択して実行

敵UCはホーミングビームと連射モードのランチャーでの撃ち落としを狙いつつ
バレルロール・【残像】での攪乱・障害物を利用した回避を行うよ

こっちの攻撃は休息接近してのセイバーでの【切断】
受け止められたら蹴りを入れてからの《指定UC》

全部もってけーーっ!


カシム・ディーン
やれやれ
殺し合いとかそんなもんの何が楽しいんだか
「でもご主人サマ戦いは割とノリノリだよね?」(鶏立体映像
はっ
僕は戦うのが好きじゃない
勝つのが好きなんだよ
「だよねー☆」

【戦闘知識・情報収集・視力】
敵の動きと癖の把握
更に機体構造から攻撃の方向性まで冷徹に分析

【属性攻撃・迷彩】
水光属性を付与して熱源も隠蔽しつつ光学迷彩で隠れ

UC発動
神速で飛び回り
【念動力・スナイパー】
砲撃兵装より念動光弾を乱射
牽制し
敵が間合いを詰めてくれば
唐突に兵装を放り捨て…

【武器受け・二回攻撃・切断・盗海攻撃・盗み】
ハルペーで受け止めて連続斬撃による反撃からライフル強奪
至近距離でミサイルポッド狙

戦い好きならスマ●ラで遊んでろ!



●赤鬼と精霊と神機と
沈み行く夕陽が宵闇の気配を這い寄らせ、燻んだ灰のビル群を緋色に燃え上がらせる。消え行く太陽を直前に漸く惨劇の幕引きを果たす時が来た。全てに清算を付けるべく、各々戦い続けていたイェーガー達による連続戦闘が始まる。
「やれやれ、殺し合いとかそんなもんの何が楽しいんだか」
 迫る殺気に臆するどころか呆れすら見せるルーンシーフ、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)の座する界導神機『メルクリウス』が夕焼けを受け、白銀の装甲に紅蓮の照り返しを宿す。天輪を示す背面の高機動ウィング『タラリア』はより一層金色を煌めかせ、鎌剣『ハルペー』を持つ機神然とした佇まいに重ねて神々しい空気を醸し出していた。
「でもご主人サマ戦いは割とノリノリだよね?」
 そんな機体とは対照的に気安な声音で喋る鶏。一瞬見ただけなら困惑せざるを得ない状況だが、カシムの頭部には鶏がお行儀良く止まっている。しかしこれはただの喋る鶏ではない。メルシーの愛称を持つメルクリウスの対話式インターフェースにして立体映像なのだ。
「僕は戦うのが好きじゃない、勝つのが好きなんだよ」
「だよねー☆」
 本作戦最終のフェーズにて増援として到着したカシム。そしてメルクリウス。光刃の大鎌を横薙ぎに振るうと肩に掛け、タラリアの力を以て地上から足を離し浮遊した。いつでもフルブーストで飛び込める。勝利の為の戦意は十分と界導神機の姿で語る。
「オブリビオンマシンの好きにさせるわけにはいかないよねっ! がんばろうか、ブルー・リーゼ!」
「これで最後っぽい?」
 この都市を巡る戦いで常に先駆けの刃となってきたシルのブルー・リーゼMk-Ⅱと鬼燈のアポイタカラがビル群の屋上に並び立つ。電光石火とも言うべき行動の素早さといざ攻撃に転じた際の俊敏さで、作戦最終段階に於いても先陣を切って走る。
「殺すッ! 私に殺されてくださいッ! イェーガー!」
 破綻した人格から発せられる声音は、抑揚も口調も安定しない。突き刺すようなストラの殺気と怒気。彼方からロングビームライフルより生じた光が迸る。ロックオン外からの長距離射撃だが狙いは正確だ。
「誰が!」
 ブルー・リーゼMk-Ⅱが放ったブラースク改の収束魔粒子ビーム。異なる性質のビームが空中で正面衝突し、電流が迸る炸裂音を轟かせ周囲を閃光とイオン臭で満たす。その閃光を破ってカシムのメルクリウスが光刃の大鎌を振りかざしアマランサス・ラピートに肉薄する。縦一文字に下された光刃。片鱗が粒子となって軌跡に舞い散る。アマランサス・ラピートは四肢の挙動による能動的質量移動によって半身を翻し紙一重で躱すとシールド先端部を突き出した。
「おおっと」
 カシムの初撃は命中を狙ったものでは無い。探りを入れるための一撃だ。そういう技術はあるのか、盾を打撃武器として運用しているのか、なるほどなと冷めた頭脳で敵の動向を分析する。メルクリウスは空中機動翼によって急速上昇して盾の打突を回避。水と光の属性制御が実現する熱源と視認による探知を不可とした光学迷彩で姿を消失させ間合いを離す。
「面白くなってきたですよ!」
 赤鉄の鬼が残影を残してビルの狭間を跳ぶ。敵はアポイタカラと同じ高機動型でコンバットレンジもそう変わらない。戦いは技量と技量のぶつかり合いとなる。第二波撃退に至るまでのこの都市に於ける戦闘経験は竜喰の羅刹の身に染み付いている。地形を味方とし立体機動で連射されるビームを防いでは躱し距離を詰めた。フォースハンドが握るライフルがマズルフラッシュを吐き出す。当たるものかとスラスターを噴射し回避機動を取ったアマランサス・ラピート。足を弾が掠めるがこの程度で止まるものでは無い。筈だった。
「おやおやこれは……」
ライフルに装填されていたのは通常弾でも徹甲榴弾でもなく、硬化樹脂を充填したペイント弾。被弾量は極僅かだったがそれでも極限の機動戦闘時には致命的な障害となり得る。
「今ならっ!」
 シルは生じた微小な隙を逃さない。ブラースク改を連射モードに切り替え光球を速射する。射撃に追い立てられたアマランサス・ラピートは機体を右へ左へと振る。標的に着弾し損なった光球がビルの壁面を粉砕し灰煙とコンクリートの雨を散らせる。脚部の一部に硬化樹脂を浴びていたため機動に綻びが生じた。次は捌き切れないとシールド防御での対処を選択。ブラースク改よりなおも指切り三点バーストされ続けている魔粒子が盾表面に衝突し弾けて霧散した。シールド表面は重層に耐ビームコートされていたらしく貫通はしなかったものの、この被弾はアマランサス・ラピートのパイロットにとって衝撃的だった。
「当てた……小賢しいですねイェーガーとは!」
「それはどうも」
 光学迷彩を解除したメルクリウスがタラリアの天輪にマウントされていた砲撃ユニットより念動光弾を乱射し防御体勢を固めるアマランサス・ラピートへ集中射撃を加える。更にそこへシルのブルー・リーゼMk-Ⅱがブラースク改の速射を重ねる。背にしていたビルが諸共に光弾の応酬で粉砕され、生じた灰煙が立ち込めて機体の姿を覆い隠す。
「やった?」
 と言いつつもシルはトリガーを引き続ける指を緩めない。射撃攻撃はまだ継続している。
「うーん、まだっぽい?」
 灰煙の向こうに消えぬ殺気を感じ取った鬼燈のアポイタカラも、両手のダークネスセイバーの構えを解かない。
「まあ、これっぽっちで落ちる相手じゃ」
「ないんだろーねー」
 メルクリウスは攻撃の手を中断しているが、カシムもメルシーも同じく戦闘体制は維持したままだ。ハルペーを振るった時の感触、シルと鬼燈に攻め立てられていた時の様子。それらを冷徹に分析していた限りでは、この程度で落ちる相手では無いとの確信がカシムにはあった。そして確信は事実に変わる。
「その通り!」
 灰煙の向こうに殺気が戦慄く。アマランサス・ラピートの関節部より放射された黒い脈動が立ち込める煙を押し除けた。ただのシールドだけでここまで持つはずが無い。やはりオブリビオンマシンが成し得る業なのか。刹那放たれたマイクロミサイル。白いガスの尾を引くだけではなく、弾頭自身が黒と紫を混沌に織り交ぜた闇の皮膜で包まれていた。
「ほらやっぱり!」
 光学迷彩を再起動させ瞬時に姿を眩ますメルクリウス。目標を喪失したミサイル群は場を擦り抜けるが、一発一発が意思を持っているかのように標的を探しなおも複雑怪奇な軌道を描く。
「やばっ!」
 背部のバインダー状の大型スラスターに光を灯したブルー・リーゼMk-Ⅱが、射撃を中断して弾かれるように後方へとブーストダッシュした。後を追うマイクロミサイルをシルは視線の動きで全て捕捉し、サブのウェポン・セレクターをリュミエール・イリゼに合わせる。間髪入れずに放たれたホーミングビーム。ブラースク改の速射も加えて全て撃ち落とす。
「やっぱりこうなるっぽい?」
「こうなるんです。これがァッ!」
 アポイタカラは両手だけでは無く両足にまでダークネスセイバーを展開して微かな間を置いて赤黒い光刃を連続四閃する。切り落とされ爆散するマイクロミサイル。視界全体を覆う爆煙がすぐに破られ赤いキャバリアが殺意を纏って飛び込んで来た。切り結ぶアマランサス・ラピートとアポイタカラ。加速を伴う重い太刀筋をダークネスセイバーの四刀で受け止める。アマランサス・ラピートがスラスターを盛大に噴射して押し切ろうとするがアポイタカラも負けじとブースターで押し返す。
「そうは!」
「問屋がなんとやら!」
 アマランサス・ラピートの両サイドからブルー・リーゼMk-Ⅱのエトワールとメルクリウスのハルペーが迫る。アマランサス・ラピートは推力を後方に偏向しアポイタカラとの鍔迫り合いを中断すると、片方を盾で受け片方をビームソードで弾き一旦離脱。後退時に追い討ちのライフルがアポイタカラより発射され、反応が遅れた事で幾らかの硬化樹脂弾を浴びる。重ねて続くであろう連撃を阻止するべくブルー・リーゼMk-Ⅱにミサイルを、メルクリウスにロングビームライフルを放ちアポイタカラに再度超高速で接近を掛ける。敵は明らかに鬼燈へ狙いを集中させてきている。
「忍の業を見せてやるっぽい!」
 向けられた殺意を意にも介さず鬼燈はアポイタカラを後方へ跳ばせると続けて横に跳躍。追うアマランサス・ラピートだが角を曲がった途端に見失う。
「隠れたところで!」
「魔猿の如く、なんてね」
 ユーベルコードの作用に依って猿の化生の魂がアポイタカラに宿る。身を眩ませたアポイタカラは都市に立ち並ぶビル群を森に見立てて跳んでは消えてを繰り返す。レーダー上で見れば一瞬機影を捉えたかと思えば消失しまた別方向から現れるといった状態だ。次第に消失と出現の間隔が短くなってゆく。
「後ろですかッ!」
 ストラは背後で赤黒い光が走るのを直感で感じ取った。反射的にアマランサス・ラピートの半身のスラスターを噴射して急速旋回しビームソードを抜こうとする。だが僅かに挙動が遅れた。原因はアポイタカラが放ったライフルの弾。纏わり付いた硬化樹脂が重量バランスを乱したせいだ。
「忍らしく不意を討つっぽい!」
 立体機動からの潜伏。潜伏からの立体機動。都市という地形は魔猿となったアポイタカラの支配下にあった。ビルの間を三角跳びし接近、スラスターを噴射してアマランサス・ラピートと交差する。一瞬で装甲に刻み込まれた四閃の刃。ビームソードが振り切られた時には既にアポイタカラの姿は無い。次は後ろから来る。しかし機体の反応が追い付かず、またしても交差の瞬間に斬り込まれる。直撃は避けられているが着実に損傷は蓄積されている。
「よく動いてくれますねぇまったく!」
 このままでは削り殺されると堪らず直上へ跳躍しビル群から機体を覗かせるアマランサス・ラピート。しかしそれは鬼燈の誘うところでありシルの狩場でもあった。
「出て来たっ!」
 バレルロール機動しながらブルー・リーゼMk-Ⅱが急速接近する。ロングビームライフルを応射するも残像すら残して駆ける青白の精霊機には掠めもしない。数秒と掛からず互いの距離は詰まり、抜刀したエトワールを袈裟斬りに振り下ろす。直前でビームソードで受けるアマランサス・ラピート。明滅するスパークが夕陽の緋色さえ押し除け世界を黄と青に明滅させる。加速で得られた運動エネルギーをスラスターを全開にして生じた推力に乗せてアマランサス・ラピートを押し切らんとするが、なおもオブリビオンマシンは殺意と憎悪を以て踏み止まる。けれどそれはブルー・リーゼMk-Ⅱが繰り出した蹴りによって崩された。
「な……」
「ブルー・リーゼ、全開で行くよっ!!」
 蹴りが命中した箇所に魔術的刻印が刻まれ脈動する輝きを放ち始める。ブルー・リーゼMk-Ⅱに搭載されている全魔砲に魔粒子が急速充填され、照準が魔術的刻印に重ね合わされる。ストラの本能が強烈な警鐘を鳴らす。下がらなければ殺られる。体勢を整えた後チャージの隙を突くなどという余裕は無い。シールドを構えほんの一瞬にも満たない時間で急速後退する。そして青い閃光は放たれた。
「全部もってけーーっ!」
 所要時間はまさしく光が閃く程度に満たなかった。ブルー・リーゼMk-Ⅱから放たれた全砲一斉射。続けて再度急速接近して繰り出されたエトワールの斬撃がアマランサスを撃ち据え刻み込む。されど攻撃は途切れない。
「加速装置起動……メルクリウス……お前の力を見せてみろ……!」
 シルの猛射に重ねてメルクリウスが念動光弾を乱れ撃つ。タラリアの金色をより強く煌めかせ、超高速で飛び回りながら射角を変える盾の守りが意味を成さない箇所への攻撃。アマランサス・ラピートの機体が大きく傾く。
「まだまだまだまだァッ!」
 黒い脈動が障壁となって被弾衝撃を和らげた瞬間にシールドを振り払い光弾の暴風地帯を強引に離脱する。攻撃の方向性を捉えていたカシムの思惑通りだ。なぎ払われるビームソード。ハルペーの長大な光刃で受け反撃の連続斬舞。攻撃の隙間に繰り出した蹴りでロングビームライフルを叩き落とし、直後の一閃が肩部ミサイルポッドを引き裂いた。
「そんなに戦いたいなら! 家で対戦ゲーでも遊んでろ!」
 膨れ上がる爆炎。ミサイルが連鎖誘爆したらしい。巻き込まれて無駄な損傷を受ける必要は無いとメルクリウスは即座に離脱する。夕陽を前にしてもなお強烈な光を放つ爆炎球。下がったメルクリウスの隣にブルー・リーゼMk-Ⅱが並び、直下のビルの屋上にはアポイタカラが跳び移って来た。
「今度は?」
 油断なく爆炎の向こうの反応を探るシルが訊く。
「んー、まだまだっぽい」
 するとアポイタカラが首を振った。
「なんというインチキな……」
 搭乗者の意思を代弁するようにメルクリウスがやれやれと嘆息した。
 爆炎が治まった後、宙に滞空していたアマランサス・ラピートの姿が現れた。三機ががりであれほどの連続攻撃を加え爆炎の中で落ちたかに思われたが、やはり消えぬ殺気の通り健在。しかもちゃっかりロングビームライフルも回収している抜け目の無さ。だが損傷は大きく、刻み込まれた銃創や切断痕を深い淀み色に蠢く不気味な粘液質な物体で補っているようだ。これもオブリビオンマシン化によって生まれた性質なのだろうか。
「ははは、素晴らしい。素晴らしく忌々しいですよ。よくも、これだけのッ!力をッ!」
 捨て台詞を吐き出すと機体を反転させ、背面のスラスターを強烈に噴射させると即座にその場を離脱した。
「あっ! 逃げる!」
 後を追おうとするブルー・リーゼMk-Ⅱをメルクリウスが呼び止める。
「大丈夫大丈夫、あの先には……」
 他の友軍が控えていると言葉にするよりも先に、察したらしいシルから追撃の意思が無くなった。
「うーん? 再生するっぽいし、時間稼ぎのために逃げたっぽい?」
 アポイタカラの首が傾げられる。鬼燈はアマランサス・ラピートと実際に切り結ぶ中で、第一波と第二波のオブリビオンマシンを相手取った時とは全く異なる異質さを感じていた。殺戮を煽る人ならざる鋼鉄の悪意。あれこそが今回の惨劇を引き起こした元凶で、カルキノスもオブシディアンMk4も奴から生じた残滓に過ぎなかったのではないかと。
「まぁまぁ、お仕事は十分果たしたでしょう」
 カシムの頭頂部に鎮座した鶏が翼を大きく伸ばした。もうアマランサス・ラピートの反応は探知の外にある。敵意も希薄と化していた。
「そうだね、後は他のみんなに」
「任せるっぽい」
 遂に第三波でまでイェーガー達の一番槍となって獅子奮迅の戦いを示したブルー・リーゼMk-Ⅱとアポイタカラが互いに頭部を見合わせる。決着はまだ遠い。だがカシムとシルと鬼燈によって切られた初戦は確実にアマランサス・ラピートを削いでは抉り、幕引きまでの手を進めた。滾る夕陽は三機のキャバリアの激闘を讃えるように熱く赤く燃えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鍋島・小百合子
POW重視

ふぇ・・・敵兵を捕縛して国に突き出しては戦に乗り遅れてしもうたぞ
この凄惨な戦場を作り出した将を懲らしめねばな

「肥前が女武者・鍋島小百合子。推して参る!」
高らかに名乗りを上げればUC「黄金勇霊装」発動
黄金の甲冑に身を包み己が勇気に比例した戦闘力を得ては飛翔能力で空を飛び回りながらの空中戦を展開
敵きゃばりあの鉄砲に対してこちらは上空から長弓で応戦
鷹の目の如く視力を持って敵きゃばりあの鉄砲持つ腕部の部位破壊を狙う(スナイパー、鎧無視攻撃、乱れ撃ち、制圧射撃、弾幕併用)
敵の必中狙撃は回避不能と判断して長弓から放った矢による衝撃波で相殺もしくは薙刀のなぎ払いをもって武器受け防御を試み


天城・千歳
【SPD】
絡み、アドリブ歓迎

さて、指揮官機が出て来たようですし迎撃に移りましょう。

引き続きサテライト・ドローン群による観測網を維持。
歩行戦車、歩行工作車及び本体のレーダー、センサーと合せて【偵察】【索敵】【情報収集】し、UCの演算結果を元に【戦闘知識】【瞬間思考力】で最適の迎撃パターンを選択する。
選択したパターンに従って部隊の陣形を組み直した後、敵が射程に入り次第【先制攻撃】で【誘導弾】の【一斉発射】【範囲攻撃】による【制圧射撃】を行い、突破して来たら【砲撃】【レーザー射撃】で対応。
敵の攻撃は【見切り】【ダッシュ】【ジャンプ】【地形の利用】で回避し、避けられない攻撃は【盾受け】で防御。


ティー・アラベリア
ここまでねじくれ曲がった狂気も久々でございますね
これで技能機体共に一流なのですから、敵手として申し分ありません
まぁ、大抵の方々にはいい迷惑でしょうけれど

あの火力と速度は些か面倒ですね
こういう時は動きを固めましょう、そのための92式です
砲撃と95式の誘導弾を組み合わせ、徹底的に敵の動きを制圧いたします
街の区画がいくつかなくなるかもしれませんが、まぁ、必要経費と言うことで
敵の誘導弾は建物を盾にして数を減らしつつ、探信儀と97式、近接防御妖精で残りを処理いたしましょう
回避と制圧を維持し、敵を開けた場所に誘導した後UCを発動
圧力を増した砲撃と誘導弾で敵を拘束し90式の全力射撃を味わっていただきましょう



●武士が舞い機兵が進み人形が灼く
「この凄惨な戦場を作り出した将を懲らしめねばな」
 キャバリアの骸と瓦礫が無作為に転がる幅広な幹線道路上。その中央分離帯に立つ女武者、小百合子が鹿島弓を携え堂々とした立ち姿でまだ見えぬ敵機を双眸で見据える。静寂な様子だが、その身には弓の弦の如き張り詰めた戦意が巡り滾っている。生身の人間でありながら彼女の放つ矢は機兵の装甲を容易く穿つ。この世界で謳われるイェーガーの超人性を体現した者のひとりだ。
「ドローン部隊配備完了。さて、指揮官機が出て来るようですし迎撃に移りましょう」
 戦術指揮に徹して無人機の監視眼と二種類の歩行兵器群を巧みに操り敵機を悉く手玉に取り続けた千歳。現在はメインコントロール権限をいよいよ本体へと移管している。つまり既に自らが戦うべきタクティカルビジョンを構築しているという事だろう。本体である青い機体でこちらも小百合子と同様に幹線道路上に待機している。
「ここまでねじくれ曲がった狂気も久々でございますね」
 そして長杖を地に突いて傍に立っている奉仕人形のティー。ミレナリィドールとしても人間とオブリビオンマシンの混濁した狂気から発せられる敵愾心を感じ取っているらしい。しかし刃物のような殺意を向けられている割にはどこか嬉しそうにも見える。
「これで技能機体共に一流なのですから、敵手として申し分ありません」
「じゃな」
「そうなのでしょうか?」
 思う所と方向性は多分違えど強敵との対峙を歓迎するティーと小百合子。千歳は解せぬ様子で前者一人と一体を観察してた。
「まぁ、大抵の方々にはいい迷惑でしょうけれど。来ましたね」
「視えたな」
「サテライト・ドローンが目標を視認」
 三者がほぼ同時に言葉を放つ。夕焼け空の彼方から次第にスラスターの噴射音が迫る。常人では未だ点すら見えないが、鷹の目の如きな的を射る目を持つ小百合子と遠隔制御された複数の監視眼を従えている千歳にとっては造作も無い事だ。ティーも躯体に内蔵された火器管制機構で視認しているらしい。奉仕人形は気が利くし眼も利くのだ。なお小百合子は千歳から片耳に着用する形の小型端末を借り受けている。そのため距離が離れていたとしても意思疎通に問題は無い。
「手負いか。向こうの面子もさぞ派手に闘(や)りおったのじゃのぅ」
 夕陽の空に向かって鹿島弓に矢を番えて弦を引き絞る小百合子。双眸が鋭く細められる。敵を射つ際に狙いを絞る際に見せる表情だ。
「ですが損傷箇所を何らかの手段で修復しているようです。あのような情報はありませんでしたが」
 千歳も言葉に出さずとも敵を待ち受ける体勢を整えている。サテライト・ドローンは無論、配備完了した歩行戦車隊と歩行工作車隊に加え千歳本体のレーダー波でより正確な位置を感知済みだ。狙撃の準備も万端である。
「なるほど、では修復不能な程度の火力投射を行えばよろしいと。お任せ下さい。まぁ、区画がひとつやふたつ犠牲となりますでしょうが、下手物を駆除できるなら安い経費です」
 ティーは92式と95式それぞれの魔杖を両手に携えると、胡蝶のように身軽な動作で宙に跳び上がってビルの屋上へと着地した。先ほどまでの立ち位置を見下ろせる場所で、周囲のビル群の背丈もほぼ変わらないため射線も通り易い。火力で押すには最適な場所だろう。反面敵から狙われ易くもあるが、火力で押し切ってしまえば問題は無い。火力は力で力は正義だ。
「ほぅ、下手物か。構わぬ、おぶりびおんましんとやらは、元来そう言うものじゃろう? 成すべきはひとつじゃ」
 弓を引き絞ったまま小百合子は大きく息を吸い込み、双眸の目蓋を降すと一拍子置いて再度目蓋を上げた。
「我は纏う勇に相応しき極みの鎧……輝け!」
 小百合子の全身に金色の螺旋が駆け巡ったかと思いきや、その螺旋は眩い光と化して威風堂々とした甲冑に姿を転じた。
「肥前が女武者・鍋島小百合子。推して参る!」
 向けられた殺意を真正面から受けては砕く小百合子の迸る勇気。恐れを知らぬ女武士の名乗りが勇気に転じて黄金鎧に更なる輝きを与える。黄金の甲冑武士となった小百合子が構える鹿島弓が果たして矢を放ち、発射時の強烈な風圧と風切音を纏って彼方のアマランサス・ラピートへと一直線に伸びる。僅かな静寂が去った後、遙か遠方の夕陽の空で光が爆ぜた。
「ビームを矢で迎撃しましたか」
 千歳はサテライト・ドローンを介し矢の末路を見ていた。小百合子が放った矢はアマランサス・ラピートが発射した長距離狙撃ビームと衝突し対消滅したのだ。
「ただ射っただけじゃ」
「目標、交戦域に侵入します」
 向けられた殺意が増大するのを感じた小百合子は地を蹴り瞬時に飛翔する。千歳はラプラス・プログラムを起動すると同時にシールドを全面に展開。直後に降り注ぐビームの連射に見舞われた。
「損傷率確認。盾の防御行動で相殺可能。ただし直撃弾はその限りでは無し」
 盾受け出来る分には問題無いとの情報を実践を以て得た千歳。反撃に長銃身高出力の大型ブラスター銃を単発連射する。いずれの弾も回避されたがこれは想定内。敵の反応速度や運動性を知るためのものだ。
「目標は損傷していますが、機動性に大きな低下は認められません」
「つまりなんじゃと?」
 空中で留まっている小百合子の元にもビームが飛んできた。しかし片手で抜いた薙刀を振るい引き裂いて阻止する。
「近付いて撃てという事です」
「そうこなくてはな」
 小百合子が宙を走り接敵を試みる。アマランサス・ラピート側も超高速でこちらに向かってきているため、相対するのにそう数秒とも掛からないだろう。
「ですがあの速力で飛び回られては些か面倒でしょう。ここはお任せを」
 ティーは両の足でしっかりと地を踏み締めると92式火力投射型魔杖と95式思念誘導型魔杖を脇下で抱え込んでアマランサス・ラピートへと向ける。長杖先端の球体触媒が発光を強めると、それは魔力で形成された砲撃弾となって迸った。先んじて放たれる92式。続いて単体目標を多重ロックオンした95式から放たれた誘導弾が後を追う。制圧を目標とした広域砲撃がアマランサス・ラピートの足を止めた。続いて殺到する誘導魔弾を視認すると、これは避けられないと悟ったらしくシールドでの防御を選択する。
「歩行戦車隊及び歩行工作車隊は列変更、火力支援開始」
 千歳本体と戦列を共にする無人機群が道幅を目一杯使って横一列に並ぶ。更に前後には同じ列が形成されている。得られた情報を元に照準補正を完了し、全機からミサイルが一斉に放たれる。ティーの火力支援で磔にされている状態で重ねて異なる方角から殺到するミサイル群。もう回避は諦めているらしく、シールドによる防御を頑なに解かない。魔法と実弾二種類の爆煙がアマランサス・ラピートを覆い隠すがティーはまだその先の殺意が消えるどころかより強く脈動している事に勘付いた。直後にティーへ射出されたマイクロミサイル。一部を95式の誘導弾で迎撃、残る分はビルの屋上から飛び降りて誘導を切り対処した。着地した横目で見た爆煙は既に晴れ、代わりに損傷を受けながらも未だ現在なアマランサス・ラピートの姿があった。
「おや、92式と95式に耐えますか。大した盾ですね」
「黒い粘液状の物体がシールドを覆い、ある種の緩衝材となっている模様。ただしダメージは蓄積しています」
「ならばその盾を握る腕、射ち抜いてやろう」
 千歳とティーの火力支援の行末を見ていた小百合子が動き出す。身に纏った黄金の甲冑が煌く粒子の光の尾を遺す。応の言葉も無く千歳はブラスターライフルと隷下の無人機による砲撃で、ティーは緩やかな動作で前進しながら距離を詰めつつ92式で対空砲火を浴びせる。アマランサス・ラピートにとっては地上より二方向からの火線を受け堪らず上空に逃れたいところだが、これ以上高度を上げては殲禍炎剣の照射危険域に入ってしまう。被弾は止む無しと強引に被弾を無視して迫る小百合子にロングビームライフルを放つ。
「正面からではの!」
 狙いは見切っていると竜王御前を縦に振り下ろし、ビームを真っ二つに裂く。当初から回避は捨てて防御と迎撃に徹するつもりで思考と反射神経の全てを注いでいる小百合子だからこその芸当だ。格闘戦の間合いに入った黄金甲冑の女武者を叩き潰してしまおうと盾を打ち据えるアマランサス・ラピート。されどそのモーションはティーと千歳の支援砲火によって阻害されてしまった。
「その腕、討ち取る!」
 意図とは異なる方向に突き出された盾を潜り抜け、小百合子は左腕関節が狙える位置に潜り込んだ。鹿島弓に高速で矢を番え神速の連射を放つ。いずれの矢も関節部を確実に射抜き、鏃が内部構造に至るまでを穿って盾を接続している左腕関節から下を丸々脱落させた。火花を散らす伸びた配線や骨格が露呈した腕部関節から、黒く澱んだ粘液状の何かが滲み出るのを小百合子は見た。
「む……」
 腕を切らせて命を断つつもりか。長銃の代わりに光刃剣を抜いたアマランサス・ラピートの腕が振るわれる。咄嗟に竜王御前で受けた小百合子の躰が空中で弾かれるも、痛手は無い。
「一旦お下がり下さい。それ以上は殲禍炎剣の危険域ですので」
 95式の誘導弾の接近に気付いたアマランサス・ラピートが小百合子への追撃を諦め転進、ビル街へと身を投じた。小百合子も狙撃の格好の的になるまいと一旦地上へ退避する。
「盾は射ったが、いつまでも片腕のままとは行かぬじゃろうな」
「ほう? それは」
 やはりかと言った反応を見せたティーだが、表情はどこか得体の知れない期待すら見せている。
「目標の装甲修復を確認。修復速度は極緩慢ですが」
 直接目視した小百合子は無論として、千歳もサテライト・ドローンの仲介し喪失した腕部から何かが滲み出でいるのを確認していた。原理は不明だが事実として先の戦闘で負った損傷は粘液で埋められていたのを既知している。腕部喪失後に見た結果で疑う余地は無くなった。
「やはり極大火力で区画ごと消滅させる他ありませんね」
「じゃがどこに誘う?」
「現在座標位置を推奨します。敵反応と間も無く接触しますので」
 千歳に小百合子が何だとと問いかけた瞬間、スラスターを噴射する爆音が轟いたかと思いきやビル街の狭間から隻腕のアマランサス・ラピートが躍り出た。
「殺すッ!!」
「これはこれはお早い立ち直りで」
 凄まじい気迫で撃ち放たれるロングビームライフルの洗礼。ティーはふわりと後方に大きく飛び退くと躯体内の魔導炉の稼働率を急激に上昇させ始めた。
「申し訳ありませんが暫しお時間を下さいますよう」
「心得た」
「了解。歩行工作車部隊前へ。歩行戦車部隊は現在地点で支援開始」
 足を止めたティーの声に小百合子が応じビームを竜王御前で斬り払いながら前へと出る。更に千歳隷下の歩行工作車達も連装レーザー砲を撃ちまくりながら前進。歩行戦車隊のレールガンやミサイルもそこに加わる。何機かがロングビームライフルに撃ち抜かれ損壊するも死を恐れぬ無人機兵達の行軍は止まらない。千歳自身もシールドを構えてティーを身を挺して守護する。真っ先に飛び出た小百合子がアマランサス・ラピートに肉薄し竜王御前を振るう。
「こやつ……!」
 薙刀は虚空を切った。アマランサス・ラピートはティーを狙っているらしい。エネルギー反応の増大から嫌な気配を察したのだろう。歩行工作車隊のレーザー弾幕をも強行突破で掻い潜りティーとの距離を詰める。だがその間には千歳がいる。
「どうか! 道を開けていただきたいッ! 殺さなければいけませんのでッ!」
「不可能です」
 千歳のラージシールドを貫かんとロングビームライフルを一点集中で精密射撃するアマランサス・ラピート。千歳はひたすらに耐える。猛進する敵機との距離がゼロとなった。
「お待たせしました」
 ティーの声を受けて外部機動ユニットのブースターを噴射し横へとスライド移動した千歳。遮蔽物が無くなりティーの躯体がアマランサス・ラピートに曝け出させられたが続くマイクロミサイルの雨霰を事前に展開されていた近接防御妖精が悉く撃ち落とす。そして。
「甘く蕩ける魔力を、たっぷりとご賞味あれ!」
 臨界に達したティーの魔導炉から生み出される魔力が90式爆縮破砕型魔杖に集約された後、解き放たれる。敵を破壊するために作り出された魔杖。凄まじい爆炎球体がアマランサス・ラピートのいた空間を飲み込んで塗り潰す。
「先に街の区画がいくつかなくなるかも、とはお断りしておりましたので」
 地上に太陽が生じたかのような熱量と衝撃波。破滅の宣言の通り周囲のビルを飲み込みながら火球は膨れ上がり、限界まで膨張すると圧力で押し潰されるかの如く急速収縮。読んで字の如くな爆縮を起こして区画を球体状に抉り取り、盛大な武力行使の爪痕を遺し消失した。
「物騒じゃのぅ」
 巻き添えを喰らい掛けた土壇場で黄金甲冑の高速飛翔能力で離脱していた小百合子が舞い戻って来た。
「目標は極めて深刻な損傷を受けました。ですがなお戦闘行動は継続可能です」
 尋常ならざるエネルギー反応を事前に感知していた千歳も先んじて退避していたため損傷は無い。けれどもサテライト・ドローンの一機が縮退を開始する火球から脱出する満身創痍のアマランサス・ラピートを捉えていた。
「まあ、そのぐらいの相手でなければ、これを使う意味はありませんでしたので」
 ティーはそれだけ言うと直立不動で表情も変えないまま、凍りついたように動かなくなってしまった。不審に思った小百合子が目の前で手を振ってみたりもしたが反応は無い。
「動力炉のオーバーロードによる一時的な機能障害かと推定されます。時間経過で自動復旧するものかと」
「おーばー……なんじゃと? 兎も角大事に至らぬなら良いがな」
 千歳の状況解析の片仮名言葉は小百合子は今ひとつ理解し兼ねたが、あれだけの大技を使えば立ったまま寝るのも致し方なかろうと一応は納得する。
「さて、どうするかのぅ。この人形っ子も捨て置く訳には行かぬじゃろうて」
 小百合子にとってアマランサス・ラピートがどこに離脱したかは定かでは無い。だがもう長くは無いとの見当は付いていた。身に刺すような殺気も薄い。
「こちらは当区域に待機していれば宜しいかと。どこへ離脱していたとしても、この都市の内であれば他のイェーガーと必ず交戦状態に入るでしょう」
 千歳は先程の戦闘でそれなりの数の無人機が行動不能にされてはいたものの、サテライト・ドローンはまだ機能している。しかし探知可能な範囲では機影を捉える事は叶わなかった。
「御用命ならば鬼ごっこをするというのもやぶさかではありませんが……」
「起きておったのか」
 ウォーマシン特有の音声の後に予期せぬ元から声が続き、小百合子と千歳の視線が立ち眠りしていたはずの奉仕人形で交差した。
「はい、つい先程。おはようございます」
 受け答えが出来るなら特に問題は無いだろうと両者の懸念は払拭される。アマランサス・ラピートが去った後のこの場には、乾き切った空気と炸薬の残り香ばかりが漂っていた。後は全て爆縮の際に消失してしまった。
「あれだけ深傷を負わせていれば、わらわの役回りは過不足無いじゃろう」
「後は他のイェーガーに委ねて問題無いものかと」
「そうでしょうか? まだ使用してない兵装もあるのですが」
 女武者と戦闘機兵と奉仕人形の各々が見るレイテナの空は朱色に燃えている。種族も戦術の方向性も全く異なる三者だが、いずれも切れる手札で敵に痛打を与えて見せた。終劇への駒を大いに進めたイェーガー達を、宵闇に蝕まれゆく夕陽が黙して謳っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アンネリース・メスナー
アドリブ歓迎

捕虜の言う通り、本当にアマランサス・ラピートですか
敗戦後に流出した設計図からの複製機か、それとも
どちらにせよ、故国の汚名を増やしかねないその機体は、ズィガ帝国親衛隊にして皇家の血をひくものとして破壊させてもらいます!

わたくしのラピートを、ただ飾り付けただけの機体と思ってもらっては困ります!
虐殺された者達の無念と魂でサイコセンサーがオーバーロードし、思念のオーラが立ち昇る
ロングビームライフルがゴン太ビームを放ってミサイルを呑み込み、撃ち漏らしや向こうのビームはオーラがバリアになって
一発で銃口が溶解したライフルを捨てビームソードを抜いて、そのビームソードも巨大化して斬撃を見舞いますわ!


セレーネ・ジルコニウム
【ガルヴォルン】
「敵指揮官がでてきたようですね!
指揮官さえ叩けば戦闘は終結します。
私もキャバリアで出るとしましょう!
ミスランディア、スティンガーの発進準備です!」
『お主、自分が指揮官である自覚あるかの?』

ストライダーの格納庫に向かい【重砲フレーム】に換装したスティンガーで発進します。

「敵は全距離対応の万能型ですね。
ですが、スティンガーはフレーム換装によって戦術を使い分ける専用機。
重砲撃ならば負けません!」

ロングビームライフルによる狙撃を受けながらも、ガルヴォルンメンバーを援護するようにミサイルやロケットランチャーで攻撃です。

「世界に戦乱を広げる者は、ガルヴォルンが排除します!」

機体破損描写歓迎


支倉・燐華
【ガルヴォルン】

データ照合、アマランサス・ラピート
今回はいませんがガルヴォルンにもアマランサスタイプを運用する人がいて助かりました、おかげで性能も分かる
エース用汎用型クロムキャバリアのアマランサスの高機動型派生機
量産機に過ぎないドランギムでは完敗ですね、装甲すら装甲材の差でやや劣りますか
しかもオブリビオンマシンですからこれ以上の可能性もあると

ですが戦い方次第です
殺気で狙いが分かりやすいですし
向こうの速度を活かしにくい入り組んだ場所で、スモークディスチャージャーとホバー機動でビームを何とか対処し
間合いを詰めてきたら拡散バズーカで迎撃し、斬られる瞬間にゼロ距離でパトローネファウストをお見舞いします


サージェ・ライト
【ガルヴォルン】
引き続き『ファントムシリカ』に乗って参戦

黒幕登場ですねー
1対1なら私より大佐や錫華さんの方が得意そうですし
それならその隙間、いただきましょう!

大佐の攻撃に合わせて『ルベライトビット』射出!
ミニシリカ、制御任せます、私の動きに合わせてください!
後はよしなに!

私はPシリカの操縦に専念
大佐の攻撃の合間を縫って
フローライトダガーを両手に突っ込みましょう!
「高速機動で負けるクノイチではありませんので!」
エンジェライトスラスター始動!
真正面からぶつかります!
「ビームソード1本でクノイチ二刀流がかわせますか!?
手数で追い込んでいってー!
錫華さんに繋げます!

トドメは合図に合わせて再度突撃です!


支倉・錫華
【ガルヴォルン】

オーラが見えそうな殺気だね。

相手も三次元機動か。
ワイヤーなしでできるのはびっくりだね。

大佐、全方位からくるから気を付けて。

サージェさんに追い込まれてても、まだ余力はありそうだね。

三次元勝負では、飛び回りながら、
【天磐】で攻撃を受けつつ【歌仙】で一撃狙い。

戦ってるうちにワイヤーとか狙われそうだな。

でもそれが奥の手。
ワイヤーを斬られたら、バランスを崩したように見せて誘うよ。

こっちに攻撃にきたところに、
もう一本のワイヤーを絡めて引き寄せ【歌仙】で動力部を貫こう。
わたしも動けなくなりそうだけど、そこはみんながいるからね。

相手の動きを止めたら、とどめを刺してもらおう。
「みんな、頼むね!」



●惨劇の終わり
 レイテナ西部の巨大都市。バーラント軍の侵攻を受けて今に至るまで、一体どれほどの人が死んだのだろうか。レイテナの兵士から市民まで、恐らく殆どが無念と苦悶の間に惨殺されたに違いない。夕陽が照らす荒廃した都市の大通りを駆け抜ける風は怨嗟の音色を纏っている。アンネリースは自機に搭載されたサイコセンサーを介して理不尽に殺された人々の恨み辛みを確かに感じ取っていた。
「それにしても捕虜の言う通り、本当にアマランサス・ラピートですか……」
 奇しくも敵将校の機体と亡きズィガ帝国の元親衛隊の搭乗機はルーツを同じくするキャバリアだ。敗戦後に流出した設計図からの複製機か、それとも。左右に並ぶビルに挟まれた道路上に立つアンネリース専用アマランサス・ラピート。鶏冠が夕陽を反射し紅に煌く。
「指揮官さえ叩けば戦闘は終結します。私もキャバリアで出るとしましょう!」
『お主、自分が指揮官である自覚あるかの?』
 遂にセレーネのクロムキャバリア、スティンガーが戦禍の都市に立つ。白い装甲に赤が映える中量二脚の機体が重砲フレームに換装された事で多連装ミサイルやロケットランチャーで完全武装化。道路上に立っている状況と相まってさながら爆装した重戦車のような印象を放っている。なおミスランディアの指摘は気に掛ける様子は無いらしく、これがガルヴォルン流の指揮官の在り方なのだろう。
「アマランサス・ラピート……こちらにも同型機を運用している人がいて助かりました。何も分からない相手と戦うよりもリスクは大きく減らせますから」
 故に燐華達はその性能を把握している。同時にドランギムで相手取るにはやや厳しい機体とも。機動性は元より防御面で比較しても、重装甲である筈のドランギムRCと装甲材質の点でやや劣る。加えてオブリビオンマシン化による性能増強作用を受けていないとも限らない。しかしそれも戦い方次第だ。幸い都市の地形はドランギムRCに味方してくれている。直接真正面から撃ち合うだけが戦ではない。
「オーラが見えそうな殺気だね」
 機影はまだ見えなくとも確実に猛烈な速度で迫りつつあるプレッシャーを感じ取った錫華。されど臆すつもりなど微塵もなく落ち着いた様子も崩れない。アマランサス・ラピートが相手だろうとスヴァスティカ SR.2とアミシアがいれば戦える。
「黒幕登場ですねー」
『やっとラスボス?』
『油断しないで、やられるよ』
 ファントムシリカに搭乗するクノイチ、サージェ達も既に戦闘体制は完了している。元々身軽なこの機体ならば高機動戦闘では遅れは取らない。リーチが短い分取り回し易く連撃が容易なフローライトダガーの二刀流にエンジェライトスラスターの推力偏向もある。両隣に立つアンネリースとガルヴォルンの面々達との連携で潰す動きのイメージも固まっている。
 今この区域に於ける全てのイェーガーが揃う。都市を巡る最後の戦いを始めるべく敵を待ち構えて程なくした頃、漸く最終撃破目標である敵機が夕陽を背負いながら高速道路上を超高速で滑走して戦闘領域に侵入を果たす。イェーガー達の視線の先に姿を現した。
「ごきげんよう、イェーガーども! お元気ですか?! それでは死ね! 殺す! 私が! そして死ねェッ!」
 全周波数で発せられた口調も抑揚も支離滅裂なストラ・アージェの声。大佐という将校らしさはさして感じ取れない。
「うへ、キャラぶれっぶれじゃないですか」
 オブリビオンマシンの精神侵食汚染が重篤化してる影響らしいが、サージェにとっては関係無いし知ったところでは無い。
「あれ……? なんかおかしくない?」
 錫華がアマランサス・ラピートの外観の異常に気が付いた。満身創痍なのは他のイェーガーとの交戦によるものだろう。それはいい。アンネリースとガルヴォルンのメンバーも間違い無く理解している筈だ。しかし異常はそこではない。
「なんです? あの泥のような、スライムのような」
 燐華も似たような反応を示す。機体のあちこちに垣間見える黒い粘液質な淀み。表面が水面宜しく波打っているようにも見える。その粘液にズタズタになった装甲が張り付いているといった様子だ。極め付けは左腕など到底キャバリアの骨格とは思えない状態となっている。粘液がそのまま有機的で不安定な形の左腕と化してシールドを貼り付けているらしい。有機的と言えばジャイアントキャバリアとも解釈出来なくは無いが、質感としてはUDCアースの邪神の方がより近い印象にある。
「アンネリースさん、アマランサス・ラピートにはあんな機能が?」
 セレーネの質問にアンネリースはとんでもないと首を振る。
「あんな魑魅魍魎染みたアマランサスなんて存じませんわ。少なくとも、わたくしの専用アマランサスにはあんな細工はされていない事を保証しますわよ」
 バーラントが勝手に弄くり回した挙句、変な特性を植え付けた可能性は否定出来ない。けれどアンネリースは直感的にそんな事では済まされないと理解していた。あれから生じている思惟は遍く破滅を願うもの。それはストラが発しているのか、オブリビオンマシンが発しているのか、或いは両者が混ざり合った物なのか。そしてあれが現れてから、夕焼けの都市を巡る怨嗟の音色がより一層暗く赤く激しくなったのを、サイコセンサーを介して感じていた。
「……わたくしから言える確かなことはひとつ。あれだけは絶対に破壊しなければならない機体ですわ。微塵も残さず」
 言われずとも相手がオブリビオンマシンなのだから当然だと答えるべきところだが、重苦しいアンネリースの声音にガルヴォルンの面々はただ迫る敵機を凝視し続けるのみだった。絶対に破壊するべきとの声の音程には、言葉以上の痛烈で暗い意味が含まれていると。
 バーラント軍の将校が搭乗するアマランサス・ラピートより有無を言わさず放たれるロングビームライフル。その一射が始まりの引き金となった。最早言葉など意味を成さない。決着は力によってのみ付けられる。惨劇の主犯とイェーガーが夕焼けの都市で衝突する。
「各機散開!」
「合点承知!」
 セレーネの指示にサージェが応答し、ガルヴォルンのメンバーとアンネリースは即座に回避運動を取る。初動の動きは想定済みで、散開すると同時にビルの影に隠れてやり過ごす。しかしセレーネの重砲フレーム仕様のスティンガーだけはそこに留まり反抗射撃を行う。
「全距離対応型だろうと、砲撃戦ならば!」
 すぐ横をビームが掠めるが怯む素振りも見せない。機体各所に搭載されたランチャーから発射された対キャバリアミサイルが白煙をなびかせアマランサス・ラピートへ一直線に向かう。むざむざ撃たれるかとストラは機体を横に滑らせビルを遮蔽物として誘導を切る。だが飛び込んだビルの狭間にはドランギムRCが待ち構えていた。
「速くとも、拡散バズーカなら……」
 拡散弾頭を装填したジャイアントバズーカか銃口を光らせている。回避は間に合わないと判断したアマランサス・ラピートはシールドを構える。巨大なショットガンのように散弾を吐き出すバズーカ。無数の弾丸がアマランサス・ラピートのシールドを強烈にノックし怯ませる。だがこれで押し切れるほど甘くは無いと燐華は知っている。スモークディスチャージャーを起動して白煙を撒きながらホバー機動で高速後退。怯みから復帰したアマランサス・ラピートがロングビームライフルを放つ。鋭く精密な射撃。光線がドランギムRCの肩を掠めて装甲表面を抉った。
「やはり当ててきますか」
 想定していたとは言え躱しきれなかったと歯噛みする燐華。しかし詰まった間合いから発射されたビームが掠めた程度で済んだのはやはり用意周到にスモークを焚いた事と決して敵を侮らない現実主義が成した功績だろう。
「その隙間取ったり!」
 ドランギムRCを追い立てるアマランサス・ラピートの横のビル群からサージェのファントムシリカが飛び込んで来た。二刃のフローライトダガーが敵機の喉元へと突き立てられる。アマランサス・ラピートは一方をシールドで受けバックブーストを掛けて少し間合いを離し、懐に潜り込まれないようにした上でビームソードを抜刀し二刃目を弾いた。
『そのまま続けて』
 弾かれ覚悟で連撃を叩き込むファントムシリカ。それを支援すべくミニシリカが三機のスフィア型遠隔攻撃端末をリリース、背後に回り込ませるとビームを連射させた。アマランサス・ラピートはビットの存在をレーダーで探知していたらしく、強引なスラスター機動でフローライトダガーの連撃から離脱すると跳躍し上に逃れた。しかし数発は完全に回避しきれず、致命傷ではないものの機体に刻み込まれた多くの傷をまた増やす事となった。
「そっちも三次元機動か。ワイヤー無しでそこまでできるのはびっくりだね」
 冷淡な声音に違わず錫華の思考は冷たい。スヴァスティカ SR.2がワイヤーハーケンを駆使した立体跳躍でビルの壁面を蹴ってアマランサス・ラピートに迫る。ワイヤーを使った動きなど読めているぞと言わんばかりに移動先に先行してビームを放ってくるが、スヴァスティカ SR.2はスラスターによる機体制動で急停止や急加速を織り交ぜ予測の先を予測し避ける。間合いが回避不可な距離まで詰まるとファンクションシールドの天磐で受け歌仙の高速一閃を見舞う。
「浅いかな」
 歌仙の刃がアマランサス・ラピートの胸部を走り抜けて切痕を残す。直後にその切痕に黒い粘液が充填されたかと思えば、カウンターのシールドバッシュが繰り出された。回避は無理だと思い切り天磐で受け敢えて弾き飛ばされる。その傍らでワイヤーハーケンを壁面へ食い込ませた。追撃のマイクロミサイルが来る。天磐にマウントしていたFdP XFAM-120のフルオート連射で撃ち落としながらワイヤーを巻き上げて離脱する。
「広いところに出させると厄介です! このまま火力で押し潰しましょう!」
『後で弾薬費の工面を考えねばな』
 もう勝った気になっているとも捉えられるミスランディアの相手をしてる暇もなく、ようやく駆け付けた重砲戦スティンガーがスヴァスティカ SR.2を追撃するアマランサス・ラピートにロケットの連射を見舞う。幹線道路や大通りよりは確実に狭いビル街の狭間で、派手なスラスター機動には制限が課せられているアマランサス・ラピート。一発目二発目までは上に横にと動いて回避するもビルに着弾した際に生じる爆風に煽られバランスを崩し、続くロケットに被弾。装甲を爆ぜさせるが更なる直撃は何としても避けようと盾で防御する。
「死んでと! お願いしているんですが! 何故邪魔邪魔邪魔ばかりするんですかねぇイェーガーの諸君はッ!」
 ロケットを防御しながらの半ば破れかぶれなロングビームライフルの反撃。重砲撃戦フレームに換装した事で機動性が大きく損なわれているスティンガーに回避は苦しい。
「うわっと! これはちょっと痛いですね!」
 反射的に機体を庇った腕部が撃ち抜かれ爆散する。スティンガーの姿勢が傾きロケットの連射が中断された。されどセレーネは引かない。
「ですがまだ大丈夫! 被弾は覚悟の上です!」
 多重ロックオンしたミサイルを連続発射する重砲戦スティンガー。対するアマランサス・ラピートはこれ以上の被弾は受けるまいとマイクロミサイルで幾つかを迎撃した後スラスターを力強く噴射して離脱を試みる。
「ガルヴォルンの大佐殿、もう少しご自愛くださいませ」
 唐突にビルの屋上から降ってきた新たなアマランサス・ラピート。豪華絢爛な装飾と菫色で見紛うはずもない、アンネリースの専用アマランサスだ。抜刀したナイトソードを真っ向に構え、落下速度と重量を乗算して押し切らんと振り下ろす。敵のアマランサス・ラピートはスラスターを全開にしてビームソードで受ける。強烈な衝撃に腕部関節の駆動系が火花の悲鳴を上げた。狭いビル街を明滅させるスパーク。アンネリース専用アマランサスには運動エネルギーの有利があるにも関わらずアマランサス・ラピートはぼぼ互角に切り結んでくる。
「一体どんな細工をしたのか存じませんけれど、故国の汚名を増やしかねないその機体は……ズィガ帝国親衛隊にして! 皇家の血を引く者として! 破壊させてもらいます!」
 わざわざ剣で決着を付ける必要などアンネリースには無い。この機体は絶対に破壊する。死者の怨嗟が殺してくれ壊してくれと耳元で囁く。アンネリース専用アマランサスが上方へとバックブーストを掛けた。突然押しかかっていた加重が消えた事でアマランサス・ラピートは意図せずビームソードを振り抜いてしまいガラ空きの身を晒す羽目となる。そんな隙を逃すほどアンネリースは甘くない。
「ズィガの裁きを受けなさい!」
 シールドをマウントしていた腕で携えたロングビームライフルをアマランサス・ラピートに向け光線を撃ち下ろす。光線は構えられたシールドを射抜き機体本体の装甲をも砕く。だがアマランサス・ラピートも同様の反撃を繰り出す。
「くっ!」
 アンネリースが顔をしかめる。アマランサス・ラピートが発射したビームの幾らかがアンネリース専用アマランサスの各部装甲を抉り、エングレービングを弾けさせ空中に金の鱗片を散らせた。
「各機! アンネリースさんの離脱支援を!」
「はいはい只今! ここぞの百花繚乱! あさるとこんびねーしょん!」
『アサルトコンビネーション』
 セレーネの指示にサージェが即答。行動は答えるより先に始動されていた。ミニシリカが制御するルベライトビットがアマランサス・ラピートを取り囲みオールレンジ攻撃を行う。それだけでは終わらずエンジェライトスラスターにより背面に一対の羽を生じさせて猛進。フローライトダガーで切り込む。
「まだまだ落ちませんよ! 私と! このあなたは! あなたはまだ死んではならない! 見せてくれた世界がまだ! 私の希望が!」
 ルベライトビットによって全身各部の装甲を削り取られるも驚異的な粘りを見せるアマランサス・ラピート。続くフローライトダガーの連撃で胴を切り刻まれるものの、切痕を黒い粘液が直ぐにカバーする。
「なので邪魔しないでいただけますか! イェーガーのあなたは!」
『あうち!』
 連撃の間合いを縫って突き出されたシールドの先端部がファントムシリカを突き飛ばした。サージェの代わりにシリカがそれらしいリアクションを取る。
「錫華さーん! 頼みまーす!」
 強烈な打突で弾き飛ばされたファントムシリカと入れ替わるようにしてスヴァスティカ SR.2が蜘蛛の舞でアマランサス・ラピートに接近を仕掛ける。いち早く動きを察知したストラは機体その方向へとにロングビームライフルだけを向けると一射。ワイヤーを撃ち抜いた。ワイヤーハーケンでビルに飛び付こうとした瞬間を狙った攻撃だ。オートバランサーでは御しきれない機体挙動の不全により盛大に身を崩すスヴァスティカ SR.2へ容赦ない追撃が加えられる。必中必殺のタイミングで放たれたロングビームライフル。光景を見ていた全員の表情から血の気が引く。
「でもそれが奥の手」
 スラスター機動で僅かに上体を逸らす。コクピットブロックのある胸部を貫く筈だったビームは肩の装甲を直撃し内部の駆動系内蔵骨格まで浸透した。代償に発射されたもう一方のワイヤーハーケンをアマランサス・ラピートに食い込ませウィンチを巻き上げる。ブーストダッシュで逃れようとするも推力が生じるよりも僅かに先にスヴァスティカ SR.2のすぐ傍らまで引き寄せられてしまった。
「アミシア、これを離さないで」
『無茶では済みませんよ』
 アマランサス・ラピートに機体ごと組み付き歌仙を動力部に突き立てた。これで終わるはず。けれどまだこのオブリビオンマシンはもがいて足掻く。やはりアンネリースの言う通り尋常じゃない。なんとか最後の一撃を決めねば。スヴァスティカ SR.2は動けないが問題は無い。仲間がいるのだから。
「みんな、頼むね!」
「今行きます」
 バズーカより拡散弾を連続発射しながら距離を詰めるドランギムRCへ、辛うじて動かせる片腕でロングビームライフルの照準を向け応射するアマランサス・ラピート。燐華は直撃さえ避けられれば回避は不要と強行突撃する。肩や胴やアンダーフレームの一部に至るまで装甲が削られる。コクピット内には被弾警報が鳴り響いているが構う事は無い。弾切れのジャイアントバズーカを放り投げ、遂にパトローネファウストを抜き放ち構える。これをダンクシュートしてしまえば流石の怪物紛いのこの機体とて。迫る零距離。振り下ろされるドランギムRCの剛腕。ロングビームライフルを捨て地に転がっていたビームソード発生機を手に取るアマランサス・ラピート。パトローネファウストが叩き込まれるより光刃が一閃される方が微かに速かった。宙を舞って回転するドランギムRCの腕とパトローネファウスト。
「惜しいですね」
 健在なもう一方の腕がパトローネファウストをキャッチした。同時に決まるダンクシュート。スヴァスティカ SR.2が拘束を解く。炸裂した爆風がドランギムRCとスヴァスティカ SR.2をビルの壁面まで盛大に吹き飛ばした。アマランサス・ラピートが在った場所に立ち昇る火柱と黒煙。しかし殺気が消えない。
「だめ、あれはまだ……!」
 錫華が全て言い終えるより先にビル街にキャバリアの重い足音が響いた。一歩また一歩と続き悪夢が黒煙の中から現世に生まれ出る。
「うそーん」
 当たりどころが悪過ぎたのか、シールド打突時の衝撃で制御系にエラーが生じているファントムシリカ。そのコクピット内でサージェは無意識に声を漏らしていた。
「はは……は、これですよ。やはり、闘争はこうでなくては。闘争は良い。私達にはそれが必要、だから殺すッ! イェーガー! 邪魔を邪魔を邪魔を! 私の邪魔をする者は皆、殺せばいい!」
 辛うじて原型が分かるか否かまで大破したアマランサス・ラピートの砕けたオーバーフレームの隙間から、内に座すストラの姿が垣間見えた。コクピット内も機体外部同様気色の悪い粘液で満たされているらしい。ここまで破壊されて何故まだ動けるのか。最早それは気に掛ける要素にはならない。こいつは此処から出してはならない。
「ガルヴォルンの大佐殿! 少々手間をいただきたく!」
 小破から中破といった状態のアンネリース専用アマランサスが重砲戦スティンガーの後ろに降り立つ。構える武器はロングビームライフル。
「分かりました! あれだけは今なんとしても」
 アンネリースが何をするつもりなのか勘だけで察したセレーネは、それ以上何も問わず視線をアマランサス・ラピートへと向ける。ファントムシリカもスヴァスティカ SR.2もドランギムRCも恐らくもう動けない。やれるのは二機だけだ。
「ええ、絶対に消し去らなければなりませんわ」
 セレーネの重砲戦スティンガーも少なくない損傷を受けている。だが今だけ保てば良いとアマランサス・ラピートとアンネリース専用アマランサスの間に立ち塞がる。
「ミスランディア、全武装の発射制御をワントリガーに集約。残りの全弾を叩き込みます」
『クルーのボーナスカットは確定じゃぞ』
「穴埋めは終わった後に私がなんとかしますよ! 終わった後があればですが!」
 セレーネの意思に応えて重砲戦スティンガーの全ランチャーが一斉に火線を伸ばす。残っていたロケットとミサイル全てが立て続けに連射されアマランサス・ラピートに殺到する。爆ぜる火球に散る鉄片。機体全てを砕かれ引き裂かれなおも敵は前進しビームで応射して来る。放たれたビームが重砲戦スティンガーの装甲を穿ち、ランチャーを撃ち砕く。
「まだ! もう少しだけ保ってください、スティンガー!」
 誘爆で片足が弾け飛び、膝立ちになろうとも最後の一発を撃ち尽くすまでツインカメラは怪物同然と化した標的を睨み続けていた。全兵装残弾無しとのアラートが表示されるのと同時にスティンガーの右腕が炸裂。衝撃で前のめりに倒れ込み行動不能となった。だがコクピットに損傷は無い。スティンガーは内に座すガルヴォルンの指導者を守護(まも)り抜いたのだ。
「アンネリースさん!」
「後はわたくしが!」
 倒れ込んだスティンガーの向こうにロングビームライフルを構えたままのアンネリース専用アマランサスが見えた。
「死ぃぃぃねェェェァァ!!」
 オブリビオンマシンのユーベルコードだからこそだろうか。もう撃てるなど、弾を残していたなどあり得ない無数のマイクロミサイルが、アマランサス・ラピートの両肩部に形成されたポッドのような箇所より放たれる。駆け込むミサイルを前にアンネリースは微動だにせず、ただ神経を研ぎ澄ましている。
「呪怨はわたくしが引き受けましょう。だからあれを滅する力を……我がアマランサスに!」
 いよいよ宵闇に蝕まれんとしている夕焼けの都市に風が吹く。アンネリース専用アマランサスが内包するサイコセンサーが赤とも紫とも付かない光の脈動を放つ。アンネリースのユーベルコードが触媒となって都市を巡る怨嗟の風と共鳴し始めた。引かれるトリガー。ロングビームライフルの銃口に円形の斥力場が発生し、通過するビームを極大化。光の奔流がビル街の通りを駆け抜け、ミサイルの群をアマランサス・ラピートごと呑み込んだ。
「イェーガー! おまえたちだけは!」
 やがて光が過ぎ去った後、半身を殆ど消失してもまだ動き続けるアマランサス・ラピート。その姿を見ても驚愕する様子も無いアンネリース。オーバーロードの結果バレルが溶けて使い物にならなくなったロングビームライフルを投機し、ビームソードを抜き放つ。
「さようなら! もう此処から消えなさい!」
 二機のアマランサスが共にビームソードを振りかざす。だがアンネリースが駆るアマランサスの光刃は刀身を数十倍に膨れ上がらせ、光の御柱の如き大太刀と成った。果たして振り下ろされたアンネリース専用アマランサスのハイパービームソードがアマランサス・ラピートの脳天から叩き込まれる。
「どうして、あなたが見せてくれた世界は……それなのに」
 オブリビオンマシンの得体の知れない不浄の何もかもが、光の中に焼き尽くされた。残滓すら感じさせられない消失。本当の意味で完全に消滅したのかは定かでは無いが、少なくともこの瞬間ではもう微塵も遺す事なくいなくなったのだ。
「終わり?」
 ドランギムRCを庇いながら立ち上がるスヴァスティカ SR.2から錫華の通信が発せられた。
「ええ、流石にもう」
 機体こそ破壊されたものの、燐華も無事健在であり身体に別状は無い。
「いやー、これでダメならもう何してもダメでしょーねー」
 声音からしてサージェも問題無いようだ。シリカとミニシリカの奮闘でエラーから復旧したファントムシリカも漸く立ち上がり、殆ど大破同然の重砲戦スティンガーへと足早に向かう。
「ふう……これで作戦最終段階は完了ですね。皆さん、お疲れ様でした」
 一気に押し寄せてきた強烈な疲労感に、セレーネは肩を落としてシートに深く身を沈めた。死を覚悟するほどの酷い壊され方の重砲戦スティンガーだがコクピット内のセレーネは特に目立った外傷は無いらしい。一瞬で全弾放出した事が誘爆防止に繋がりパイロットの生死を分けたのだろう。
「ご無事でなにより。では帰りましょう。正直、あまりここに長居はしたくありませんわ」
 ビームソードを握っていた手を腕ごと溶解喪失したアンネリース専用アマランサス。煌びやかな機体も満身創痍といった様子で、修理費が思いやられるところだ。
「ところで大佐、ボーナスがカットがどーのとか聞こえたんですけど、報酬大丈夫なんですよね?」
 サージェの指摘にセレーネの肩が跳ね上がった。クノイチの地獄耳を侮っていたのかも知れない。それに支倉姉妹としても気になる所だ。スヴァスティカ SR.2とドランギムRCの頭部が重砲戦スティンガーへと向けられた。
「まぁそれは、気にしないでください。ちゃんと払いますから。私が穴埋めすればなんとか」
『セレーネのコスプレ撮影会でかの?』
「やりませんよ!! それにレイテナから凄い額の報酬が降りるんですから!!」
 それでもストライダーでミサイルを撃ちまくった挙句、弾薬費をドカ食いする重砲戦仕様のスティンガーを出して全弾使い果たした上に機体をほぼ大破させたとなれば、ミスランディアの言葉も冗談では済まされないのだが。
「とーにーかーく、帰りますよ! ガルヴォルンは撤収です! あ、アンネリースさんもですよ」
「他のイェーガーの人たちもね」
「バーラント軍の捕虜の引き渡しも忘れないでください」
「お腹空いたー」
「あら……そういえばナイトソード、何処に投げておいたのだったかしら」
 各々が好き勝手に喋るため通信内容が凄まじく賑やかだ。やがて夕焼けの世界は終わりを告げて宵闇が都市を満たす。静寂たるそれは死者への慰めだろうか。イェーガー達が去った後の都市には、淡く穏やかな闇だけが残されていた。

●転換した未来
斯くして惨劇の幕はイェーガー達の戦いによって降ろされた。西レイテナ事変として歴史に名前を残す事となった今回の争乱において、バーラント側は東部方面軍の一部将校による暴走という公式見解を表明。この見解に対し国際社会が痛烈な非難をバーラントへ浴びせたなどレイテナは多額の賠償金を受け取った事で一応の和解を得たなどのニュースが錯綜したものの、突如として現れた猟兵が戦いに介入し、十人と少しに届くか否かの戦力でバーラントを追い返したという事実に比べればどれも取るに足らずな内容だった。ユーベルコードを操る凄腕のパイロット、あるいは生身でキャバリアと渡り合う超人。希望の象徴。理不尽を打ち壊す力。クロムキャバリアで謳われた猟兵その人によってレイテナ西部の巨大都市に住まう多くの市民は救われたのだ。
 本来なら数百万の市民が惨殺される筈だった結末は最良と呼んで差し支えない形で転換された。イェーガーが戦い続け勝ち取った未来。レイテナ都市防衛戦は全段階の作戦成功で任務完了。最後に歴史に謳われたのは、オブリビオンマシンを退け運命に抗うイェーガー達だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月16日


挿絵イラスト