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大祓百鬼夜行⑭〜灼熱の焼き入れ

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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 UDCアースのとある町中。誰にも見えない見世物小屋がそこに現れた。人間はもちろん、邪神でさえその姿をとらえることは出来ない。それもそのはず、この見世物小屋は、今日この日までUDCアースにいなかったはずの『妖怪』の力によるものなのだ。
 その中には見世物で使うのであろう鉄板が一枚……いや、『一人』立っていた。
「ああ……見せたい……俺の……鉄板ショーを……!」


「あなたのメルでございます。大祓百鬼夜行の始まりでございます」
 そう言ってメル・メドレイサ(蕩けるウサメイド・f25476)が集まった猟兵たちにたい焼きを配る。ついに始まったカクリヨファンタズムでの戦争。その舞台は隣の世界であるUDCアースにさえ及んでいるという。
「この度皆さんに行っていただきますのは、UDCアースに突如現れた誰にも見えない見世物小屋。ここで本日ようやく地球に帰り着いた妖怪が、骸魂に捕らわれ猟兵を待ち受けているそうで」
 妖怪たちはこの一大事に自ら身を犠牲にしてあえて猟兵の敵となっている。彼らを解放するために、一件でも多く事件を解決することが大事だという。
「妖怪さんは鉄板の妖怪で、自分の体を使って作り出した鉄板料理を使って戦うことができます。ですがさらに彼は骸魂の影響で『ビックリ身体能力』なるものを持ち、攻撃にそれを上乗せしてきます。今回彼が持っているビックリ身体能力は、『己の体で焼いたものを激辛にする能力』」
 ……それは身体能力というのか。
「体から強烈なカプサイシンが染み出る特異体質を得てしまったようで、彼の体で作られたものはたい焼きだろうが今川焼きだろうがえげつないくらいの激辛になります。どれくらい辛いかというと、口どころか肌についただけでそこがただれるレベルで。あ、ちなみについた骸魂はリーパー、つまり死神的な何かだそうですよ」
 強力すぎる唐辛子ソースは劇物扱いになるというが、それの猟兵にさえ効くバージョンだと思えばいいだろう。しかしそれは何か別のリーパーではないのだろうか。
「先入観を取り払って言いますと、攻撃の全てに体がひりつき激痛が走る猛毒が付与されていると考えてください。食らったら痛みで動きが鈍ることになります。どうにかしてこれを防ぎながら戦ってください」
 彼は自分の体の鉄板と、この激辛体質を用いて鉄板焼きの『ビックリ殺戮ショー』として戦いを始めてしまうという。
「大事な初戦です。どうか抑えてくださいますようお願いいたします」
 メルはそう言って、UDCアースへと猟兵を送り出した。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。大祓百鬼夜行開始です!
 今回のプレイングボーナスはこちら。

『プレイングボーナス……ビックリ身体能力に対抗する』

 今回は鉄板の妖怪『おっちゃん』が相手となりますが、彼の体からは超激辛物質がしみ出すようになっており、全ての攻撃に喰らえば肌を焼け爛れさせるレベルの激辛が付与されています。この能力を何とかしつつ彼を攻略してください。SPD技につきましては、無敵状態で激辛鉄板料理を大量に作ってきます。
 物理的に影響があるレベルの辛さなので、好き嫌いでどうにかなるものではありません。いくら激辛好きだろうと喉はただれますし、なんならウォーマシンやキャバリアの装甲すら焼いてきます。
 一方で本質的には妖怪レベルに辛い唐辛子というだけなので、生活の知恵的な対処法が意外と効いたりするかもしれません。
 敵は骸魂のせいで猟兵に襲い掛かってきますが、倒せば元の鉄板妖怪に戻ります。手加減の必要はないので、遠慮なくぶっ倒して解放してあげてください。
 ちなみに難易度は『普通』なので判定はそこまで激辛ではありません。

 それでは、ピリッとスパイス効いたプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『元祖鉄板や『おっちゃん』』

POW   :    積み重ねた歴史の重み
単純で重い【鉄板や型の部分で相手を潰すのしかかり 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    百人前お待ちどぉ!
非戦闘行為に没頭している間、自身の【体 】が【鉄板料理に適した温度の熱を帯び】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ   :    出来立て食いねぃ!
【空腹 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【焼きそば、たこ焼き、今川焼き、たい焼き】から、高命中力の【熱々の麺、蛸の触手、餡子】を飛ばす。

イラスト:くずもちルー

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は甲斐嶋・詩織です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フロース・ウェスペルティリオ
おお。百人前も出してくれるなんて、とても気前の良い妖怪さんなんだねぇ。
ふふ、熱々でとても美味しそうだねぇ。
一度に全部食べるのは難しいので、少しずつ頂こうかと。
というワケで、お料理を出来た端から『黒花印の目録本』へと”元祖鉄板や『おっちゃん』の鉄板料理”のページとして放り込むよ。

食べる際には激辛成分を体内でコーティングした上で一ヵ所に隔離して、程よい辛さに調節するねぇ。
ほら、牛乳で胃をコーティングして辛さ軽減させるみたな感じ?
多くなってきたら、まとめて体外にぺいってします。


夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
さて、それでは参りましょうかぁ。

『激辛料理』も『のしかかり』も、当たらなければ意味は有りません。
【燦華】を発動して全身を『光』に変え『光速での回避』で対応しますねぇ。
この状態であれば『狭い隙間に入り込む能力』も使えますから、『見世物小屋』の様な構造であれば、緊急時に退避できる場所も多いでしょう。

また、相手の身体は『鉄板』ですから、防御面も硬そうですぅ。
『FCS』により『FRS』の弾頭を『氷結弾』に、『FSS』の弾頭を『焼夷弾』に変換し、交互に[砲撃]を行うことで『温度差』による劣化を狙い、そこに『FBS』による斬撃と『FMS』によるレーザーで追撃を仕掛けて叩きますねぇ。



 骸魂に飲まれ、己の体を殺戮ショーの道具へと変えてしまった妖怪『元祖鉄板や『おっちゃん』』。彼は今ショーの仕込みとして、己の体を使い大量の激辛料理を作っていた。その数何と百人前。
「おお。百人前も出してくれるなんて、とても気前の良い妖怪さんなんだねぇ」
 その姿を見たフロース・ウェスペルティリオ(蝙蝠花・f00244)が、気負った様子もなくそう言った。だが、敵もただ仕込みをしているだけのわけではない。この状態の彼は一見無防備であるが、非戦闘行為である料理に没頭している故外部からの攻撃を一切受け付けない無敵状態。たとえ隙だらけでも、攻撃する意味は一切ない。それを理解していながら、フロースはその料理行動が終わるのを、本を携えただ待っていた。
「さて、それでは参りましょうかぁ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)も浮遊兵装を自分の周りに浮かせ、おっちゃんが料理するのを見守っていた。だが、こちらはただ待っているのではなく、後の戦いに備え弾頭を換装し、攻撃できる時に備える。
 やがて調理を終えたおっちゃんが各種鉄板料理を持ち、ゆらりと二人の方を向いた。
「お待ちどうさま……激辛激熱鉄板料理百人前だぁ!」
 その料理を纏めて、まずはフロースに投げつけてくるおっちゃん。その種類は焼きそば、たい焼き、たこ焼など様々だが、どれもこれも真っ赤に染まり見ているだけで目が痛くなりそうな程だ。
 その料理を、フロースは『黒花印の目録本』へと取り込んだ。
 本という名を持つが実際には収納用のアイテムとしての側面の強いそれに、”元祖鉄板や『おっちゃん』の鉄板料理”という項目を作って次々とそこに放り込んでいくフロース。受けられるものは本で受けて、近くに飛んだものは手に取って押し込む。だが、触れるだけで危険な劇物という事前情報の通り、ただ掴んで入れるだけでその部分が焼け、ブラックタールの体ですら火傷に似た損傷とひりつきを負わせる。
「これはこれは、随分と熱い料理で……」
 その焼ける体に、フロースは避け切れぬ料理をあえて取り込んだ。触れたところは熱以上の辛さで焼かれ相応にダメージがあるが、それでも料理をこぼさず体内に取り込み外への影響はないようにしている。
 さらに続けて、おっちゃんは重量ある高熱の自分自身の体を武器に、るこるの方へと倒れ込み攻撃をかけてきた。
「大いなる豊饒の女神、その象徴せし欠片の一つを我が身へ」
 その倒れ込みを、るこるは【豊乳女神の加護・燦華】を使い光となって躱す。流石に直線的なその動きでは早く動く相手を捕らえることは出来ず、魔法的な力があるわけではない立ち上る激辛臭もとりあえずは無効だ。
 最もそうであってもアリスラビリンス並に常識の通じないカクリヨファンタズムの妖怪だ。どんな不思議な力で辛さを強化してくるかも分からない。早々に戦い自体を終わらせる必要があると、るこるはのしかかりを外し無防備な背に浮遊兵装たちをけしかけた。
「鉄板は固そうですのでぇ」
 そう言って撃ちかけられるのは、さっきの料理中に換装しておいた冷凍弾と炸薬弾。氷と炎を交互に撃ちかけられれば、当然のように温度差で金属は脆くなる。
 その脆くなった体に、別の兵装からさらにレーザーまで撃ちかけて一気にダメージを加算させていくるこる。
「ぐおぉ……だが、こいつはまだある……!」
 ダメージの中、インターバルを取るため再び料理を作り出すおっちゃん。そしてある程度できたところでその料理を投げつけるが、それはやはりフロースが自分の体に取り込んだ。
「どういう体をしているか知らないが、それだけ食えば体も持つまい……!」
「そうだねぇ、普通に食べたらそうなるねぇ。でもほら、牛乳で胃をコーティングして辛さ軽減させるみたいな感じ?」
 唐辛子の辛味には水は逆効果。牛乳で防御するのが良いと言うのは激辛を食べる時の知恵だ。それに従って体内に牛乳の幕を張り、さらにそれを自分の体の一部で包んで中和してそのまま辛み成分を体外にぺいっと排出するフロース。タールの体だからできるその技で、おっちゃんの激辛を致命傷にならないレベルまで中和しフロースは料理を取り込み続けていた。
 そして料理を投げるために防御が解けたところで、再び襲い掛かる温冷の砲撃。
「ぬおぉぉぉ!!」
 辛い物の防御や固いものの砕き方。生活の豆知識が元になったような戦法に、おっちゃんは鉄板の体を叩き伏せられるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クルル・ハンドゥーレ
アドリブ連携歓迎

唐辛子の辛みと痛みを中和するには…ズバリ、酒や!
オリーブ油とか牛乳もええいうけど、酒一択に決まってるやろ!

日本酒用意
あーもう、もう飲みながらの焼きそばとかたこ焼きとかたまらんのに!
おっちゃん、後で美味しいんつくって貰うで!


激辛今川焼は酒のあてにはちょい勘弁や
【限界突破】【先行攻撃】で先手取りUC展開
激辛今川焼と鯛焼きは意地でも封じる

文字通り酒を浴び飲みつつ戦闘
酔う?酒飲みの矜持と【毒耐性】で頑張る
【見切り】【武器受け】【盾受け】【毒耐性】【激痛耐性】と飲酒と酒バリヤーで攻撃に対処
どうせなら豚玉作ってえな、おっちゃん!

攻撃は【フェイント】【マヒ攻撃】【破魔】【鎧無視攻撃】にて



 一度敗れても立ちあがり、その体から熱と目に染みる程の辛味を立ち上らせるおっちゃん。その姿に、クルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)はいかにして彼に対処すべきかを瞬時にはじき出していた。
「唐辛子の辛みと痛みを中和するには……ズバリ、酒や! オリーブ油とか牛乳もええいうけど、酒一択に決まってるやろ!」
 そう宣言する彼女の手には日本酒の瓶が。
「あーもう、もう飲みながらの焼きそばとかたこ焼きとかたまらんのに! おっちゃん、後で美味しいんつくって貰うで!」
 せっかくの鉄板料理も味を壊すくらいに激辛にされては台無しだ。なればこそ、早々に骸魂を引き剥がし彼には正気に戻ってもらわなければならない。その時のため、クルルは何としてでも敵に先んじて動かねばならなかった。
「縛り戒め虜囚となさん、時の涯まで、終の戦の果つるまで――」
 敵の準備が整う前。限界を超えて捻りだした速さで、クルルは【Gleipnir】を発動した。虚空から超重力を伴う無数の鎖が伸び、それがおっちゃんを戒める。
 速さに特化したため精密に全てを狙っている暇はない。だが、何としてもここだけは。その執念に答えるかのように、鎖はおっちゃんの体の型の一部……たい焼きと今川焼きを作るための部分を厳重に戒めた。
「激辛今川焼は酒のあてにはちょい勘弁や。激辛今川焼と鯛焼きは意地でも封じたる……!」
 彼の持つ激辛を酒で耐える作戦に、根本的に味が破綻していそうな激辛餡子は邪魔になる。的を絞った先制攻撃は功を奏し、その部分だけは確実に封じることに成功した。
「俺の料理をたい焼きと今川焼きだけだと思うなよ……」
 おっちゃんは立ったまま器用に体に生地や麺を落とし、たこ焼や焼きそばを作っていく。一見すればうまそうなそれだが、おっちゃんの体から染み出る超カプサイシンに侵され見る間に真っ赤に染まってしまう。
 やがて焼き上がり射出されるそれを、クルルは酒を文字通り浴び、飲みながら迎え撃った。
「くっそぉ……辛いし痛いわ! でも酒進む!」
 触れただけで体を焼く唐辛子だが、大量の酒でそれを中和するクルル。酒の毒は己の体勢で耐え、本質的には痛みである唐辛子の辛さも激痛耐性で我慢する。そして辛みが高まった瞬間を見切り、最大の武器であり盾と信じる酒を流し込むことでそれをつまみへと帰る酒飲み式闘法。
 己のためにも、おっちゃんのためにも、ここで酔いつぶれるなどあってはならない。明日の色々な心配を噛み殺しつつ、薙刀を握りしめるクルル。
 酒が入っているとは思えぬ確かな足取りで踏み込み、素早く薙刀を横ぶりにする。
「効かんぞ!」
 それを己の鉄板ボディで受け止めようとするおっちゃん。だが、刃が体に当たるその瞬間、その刃先は方向を変え、型の継ぎ目……いわば彼の関節とも言える部分に滑らかに突き入れられた。
「どうせなら豚玉作ってえな、おっちゃん!」
 注文と共に薙刀を抉り、抜く。
 破魔の力で骸魂を切り裂かんとするその一撃に、おっちゃんは大きく体を揺らがせ膝をついた。身を焼く激辛料理を摂取しながらここまでの一撃を繰り出せたのは、初手で相手の攻撃を絞り込んだのと、明日の健康を捨てて激辛を酒で迎え入れたからに他ならない。
「豚玉だな……承ったぜ……」
 うずくまりそういう言葉はダメージに耐えての強がりか、骸魂から顔を出したおっちゃんの意識が注文を聞いてくれたのか。
 クルルは後者であることを信じ、今だひりつく口を酒で洗うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミア・ミュラー
わたしがあの世界に行ったとき、妖怪さんたちは優しくして、くれた。今もわたしたちのために頑張って、くれてる。なら、みんなを助けることが恩返しになるはず、だから……精一杯頑張る、ね。

んー、見た目は美味しそうだけど、全部激辛なんだよ、ね?甘いたい焼きが激辛になるのは面白そうだけど、試すわけにはいかない、みたい。
触っちゃだめなら防ぐのが、一番。見世物小屋にあるいろんな道具を【雷盾】で雷の盾にして、麵とか触手を焦がして防ぐ、よ。金属の盾なら焼けちゃうけど、魔法でできた雷の盾ならそうはいかない、よね?防いだらお返しに雷を浴びせる、よ。痛いかもだけど、あなたたちを助けるため、だから……ごめん、ね。


アリス・フォーサイス
辛すぎるのはあまり得意じゃないんだよな。でも、この香ばしい香りをかぐと、好奇心が抑えられないよね。

辛味を抑えるマヨネーズとヨーグルトをかけて食べていくよ。冷たいヨーグルトをかけることで、ほどよく冷める効果もありそうだし。

ちびアリスを召喚してかたっぱしから食べつくすよ。辛さをおしえられればこの焼き加減、最高の食感が楽しめるはず。(アリスは本来、情報を食べるため、食べ物を香りや食感、そこにこめられた物語などを楽しみます)

あれ?もう終わり?それならこちらの番だね。楽しませてくれたお返しだよ。全力魔法の感触を楽しんでね。



 今猟兵の前に敵として立ちはだかっている鉄板の妖怪『おっちゃん』。彼は大祓百鬼夜行解決のため、自ら骸魂を飲み込んで猟兵の敵となった。
 それは彼のみではなく、今UDCアースやカクリヨファンタズムの各地で大祓百鬼夜行のため猟兵と戦っている妖怪全てに言えることだ。
「わたしがあの世界に行ったとき、妖怪さんたちは優しくして、くれた。今もわたしたちのために頑張って、くれてる。なら、みんなを助けることが恩返しになるはず、だから……精一杯頑張る、ね」
 ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)はかつて、そして今もな受けている妖怪たちの恩義に報いるべく、いま目の前で苦しむ彼を救うために戦いを挑む。
 それを迎え撃とうと、おっちゃんは自分の体で鉄板料理を作り始めた。それは粉やソースが焼ける香ばしい匂いを立て焼き上がっていく。
「辛すぎるのはあまり得意じゃないんだよな。でも、この香ばしい香りをかぐと、好奇心が抑えられないよね」
 アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)がその匂いを吸い込むが、すぐにそれは目を焼くほどの唐辛子臭に覆われ劇物へと変化していってしまった。
 この激辛料理はいわば彼の武器。本来ならそれを作るのを看過などできないのだが、この料理中彼は外部からの干渉を一切受けることはない。そうして安全に劇物料理を作り上げたおっちゃんは、二人に向けてそれを投げつけた。
「いでよ! ぼくの分身!」
 その料理を、アリスは小さな自分の分身を呼び出すことで受け止めた。ちびアリスたちは即座に合体してある程度の強さを保つ傍ら、アリス本人はカウンターを取って白い何かを料理に対してぶつける。
「辛い物にはマヨネーズ、そしてヨーグルト! 程よく冷えて食べやすくもなるはずだしね!」
 粉もの、ソースものとマヨネーズの相性は言わずもがな。大元の味が甘そうなものにはヨーグルトもかけ、乳製品による唐辛子防御効果も付与していく。
 そうして軽減された激辛鉄板料理にちびアリス達がかぶりついた。軽減してなお強烈な辛味にちびアリスたちは悶えてはいるが、合体の効果もあり倒されるほどのダメージには至っていない。そして辛さに徐々に慣れてきたとき、その奥にある料理本来の味わい、食感が見えても来た。
 アリスは香りや食感などの情報を楽しむため、あえて相手の料理を辛さを抑え込んだうえで食べる方向に出たのだ。それはおっちゃんの武器が『料理』であるが故の、好奇心と敬意からか。
「んー、見た目は美味しそうだけど、全部激辛なんだよ、ね? 甘いたい焼きが激辛になるのは面白そうだけど、試すわけにはいかない、みたい」
 ミアの方はおっちゃんを一刻も早く元に戻すため、飛ばされた料理を防ぐことを考える。だが、調理中の見た目、そして唐辛子に侵される前の匂いは間違いなくおいしそうなもの。それを思い出し若干の空腹感を覚えてしまったか、おっちゃんの体から麺や蛸が触手のように伸び、さらには餡子がトリモチ弾の如く放たれた。もちろんこれらも全て肌どころかものすら焼きかねない激辛つきだ。
「其は雷……遮り、迸れ」
 並の防具では防ぐことは出来ない。そう判断したミアは、【雷盾】を使い周囲にあった予備の鉄板を反撃能力を持つ雷の盾に変えた。
「金属の盾なら焼けちゃうけど、魔法でできた雷の盾ならそうはいかない、よね? 防いだらお返しに雷を浴びせる、よ。痛いかもだけど、あなたたちを助けるため、だから……ごめん、ね」
 ミアの予想通り、雷の盾は激辛に焼かれることもなく、その麺や蛸を伝っておっちゃんに電撃を流し込んだ。
「ぐおぉぉぉぉっ!」
 金属のおっちゃんに電撃攻撃はよく通る。さらにそこにアリスが、マヨネーズとヨーグルトを冷やすのに使っていた冷気魔法を全力で叩き込んだ。
「ぐぅぅぅぅぅっ!」
 おっちゃんの体から激しい蒸気と水の蒸発する音が立ち上り、その体がみるみる冷却されていく。そして最後に、その体を貫くようにもう一度ミアの雷が落ち、おっちゃんはどうと倒れ動かなくなった。
「……大丈夫、かな?」
 ミアが心配そうにのぞき込むと、おっちゃんはゆっくりと目を開けた。
「……すまねぇ。苦労を掛けたな」
「ううん、こっちこそ」
 ゆっくりと体を起こすおっちゃん。その体からはもう刺激臭は立ち上っていない。どうやら骸魂の憑依は解けたのだろう。
「お礼に奢りで食べ放題……と行きたいが、まだそうも言ってられねぇ。だが全部が終わった時、必ず最高の鉄板ショーをご馳走するぜ」
 おっちゃんはそう言って、自分の体をばんと叩いた。祝勝会はまだまだ先。大祓百鬼夜行は、まだ始まったばかりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月05日


挿絵イラスト