大祓百鬼夜行⑫〜団地で大根を倒そう
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暮れなずむ夕日が団地を照らしている。
ただし、この団地に住まうのは人間ではなく『妖怪』。
しかも、その姿は人型ですらなく――。
「う、ぐおおおおっ!」
階段の踊り場で身をよじらせて苦悩するのは『大根』。
そう、食卓によく並ぶお野菜の大根さんである。
「はあッはあッ……! く、くそっこのままでは意識すらも骸魂に取り込まれちまいそうだ……!」
荒い息で大根。悲痛なる叫びが団地に響き渡る。
「誰か、誰かはやく……。俺達を解放してくれっ……!
俺達が……『俺達』で無くなっちまう前に――!」
とてもシリアスなシーンなはずなのだが、それが『大根』であることだけがとても残念なのであった。
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嬉乃・抹茶子が猟兵達に一礼する。
「集まっていただき、ありがとうございます。
大祓骸魂を討ち果たすために、皆さんの力をどうかお貸しください」
今回の依頼での敵は妖怪団地を根城にする大根妖怪さんである。
現在は骸魂のせいで凶暴化しているものの、本来は人間に食べられたいだけの温厚な妖怪である。
「彼らは大祓骸魂を顕在化させるために自らの身体を張ってくれています……。それに報いるためにも、私たちがすべきことをしていきましょう」
猟兵達がすべきことは単純だ。
とりあえず『大根』を倒せ。以上である。
なお、戦場は立体的な構造物が立ち並ぶ『妖怪団地』であり、この迷宮のような場所でうまく立ち回ることが出来れば戦いを有利に進められそうであるとのことである。
「見た目は大根ですが、オブリビオン化した妖怪なので油断しないようにお願いします」
そう説明を結び、抹茶子は転送扉の準備を始めてゆくのだった。
河流まお
河流まおと申します。精一杯努めさせて頂きますので宜しくお願いします。
今回はスピード重視で出来る限り速攻で終わらせていきたく思います。
たぶん、クリア条件に達した時点で終了予定なので、状況によっては全採用出来ない場合がございます。あらかじめご了承ください。
断章も無く、プレイング期間の指定も無いので公開されたら即スタートです。
それではどうぞよろしくお願いします。
第1章 集団戦
『大根』
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POW : 良いから大根を食え
戦闘力のない、レベル×1体の【陽気な大根達】を召喚する。応援や助言、技能「【料理】」を使った支援をしてくれる。
SPD : 大根食ってれば問題ないって
【大根料理】を給仕している間、戦場にいる大根料理を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ : 大根とは以下略
自身が戦闘不能となる事で、【自分達を食べた】敵1体に大ダメージを与える。【大根の効能】を語ると更にダメージ増。
イラスト:塒ひぷの
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
陽環・柳火
「大根だろうとなんだろうと、その心意気は中々のもんだぜ」
ちょっと心は痛むが倒せば元に戻るしな。思い切りぶちかましてくぜ!
「ちっと熱いかもしれんが我慢しろよ!」
爆符『烈火乱れ咲き』で【弾幕】を叩き込みつつ炎の【属性攻撃】を刀に纏わせて斬り込む。
上の階にいる敵などは護符衣装を一部護符に変え、それを足場にして【空中機動】するなど立体的に起動して戦う。
敵が固まっていれば【全力魔法】で爆符を叩き込む。それで魔力切れを起こしたらUCで回復
「補給するのはにゃんジュールでもいいが……うまそうなもんがあるじゃねえか」
相手が支援に出してる大根料理があれば,それを奪って食う。大根妖怪いるし、それの死骸って考えで
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茜色の夕陽が世界を染め上げている。
そのどこか郷愁を誘うような光景に陽環・柳火(突撃爆砕火の玉キャット・f28629)は一瞬だけ目を細める。
カアカアと鳴きながら山に帰ってゆくカラスの姿がある。
この世界も、誰かの忘れられた記憶をもとに形づくられているのだろうか。
「……って、感傷に浸ってる場合じゃねーか」
まるで果てが無いように扉が並ぶ団地の3階通路。
ガチャリと扉の開く音と共に、ずんぐりとした大根の妖怪が顔を出す。
「うぐぐ……ゴアアァアアあッ!」
既に正気を失っているらしい。白い根っこを脚のようにして、大根が猪のように突っ込んでくる。
迫り来る脅威に対し、猫耳の少女は名刀『マタタビ丸』を抜き放ちながらニヤリと不敵に微笑む。
「大祓骸魂を忘れないために、あえて敵の軍門に下る、か――」
人魂のような炎が柳火の背後に次々とあらわれてゆく。
その色は、まるで彼女の気性を現わすかのような紅蓮の赤。
「大根だろうとなんだろうと、その心意気は中々のもんだぜっ!」
柳火が胸元から一枚の符を取り出すと炎が輪のように踊り廻る。
「ちょっと心は痛むが倒せば元に戻るしな。思い切りぶちかましてくぜ!」
爆符『烈火乱れ咲き』が起動される。満開の花が咲くように、炎が放射状に発射され大根を焼き尽くしてゆく。
「グギギ……ガアアアアっ!」
だが、倒れた仲間を乗り越えるようにして、第二陣の大根たちが柳火に殺到してくる。
「へッ、いい根性してるじゃねーか!」
大根だけに、心の根っこは強いのかもしれない。
「ちっと熱いかもしれんが我慢しろよ!」
名刀『マタタビ丸』に炎が纏わりついてゆく。渦巻く紅蓮の炎と共に、振り下されるは団地全体を震わせるかのような大上段からの一撃だ。
「――ッ!?」
一瞬にして野菜炒めになる大根たち。まあ、洗脳が解ければ元に戻る事だろう。
「……それにしても」
この階を制圧しても次から次へと上階から大根たちが降下してくる。
「そう焦るなよ。こっちから遊びに行ってやるぜッ!」
護符衣装を一部護符に変え、空中に身を躍らせる柳火。
落下するかに見えたその身体は、空中を蹴るようにして上階へと跳ぶ。
護符を蹴る事によってなされる空中機動だ。
「邪魔するぜー!!」
上階へと突貫する瞬間、次の爆符を起動させる柳火。
爆華を咲き乱れさせながら、団地を縦横無尽に駆けまわってゆく。
すぐさま4階も制して、柳火は焦土の中で周囲を見渡す。
さすがにちょっと飛ばし過ぎて、魔力を消耗してしまったか
「補給するのはにゃんジュールでもいいが……うまそうなもんがあるじゃねえか」
敵が繰り出してきた大根料理を投げつけてくる謎の技。
妖しさ満点の料理ではあるが柳火の【屍塊転燃(シカイテンショウ)】ならば消化には問題が無い。
「って……辛ぇ」
尻尾を下げながら微妙な表情を浮かべる柳火。
食べられるのが本望って言ってたわりには、あんまり美味しくない大根妖怪さんたちだった。
大成功
🔵🔵🔵
緋月・透乃
世界のために命を懸けるとは根性のある妖怪がいたもんだねぇ。大根だけに強大な根性ってところかな!
私も応えるために頑張るぞー!
それにしても大根かー。私はにんじんが好きだけれど、大根も美味しいよね!
しかし本来は食べられたいだけってなんだろ?食べられたら死ぬのでは……?
土地勘の無い迷路みたいな場所ってことで不意打ちをされる可能性が高そうだね。
そこで、手持ちの食べ物で【色々食べよう!】を防御力重視で発動させておいて、不意打ちされても大丈夫な状態にしておくよ。
そしてとにかく歩き回って敵を探し、見つけたらガンガン攻撃をしかけていく、と。つまりごり押しだね!
折角だから倒した奴も食べてみよう!
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夕焼けに長い影を落とす妖怪団地。
次々と無尽蔵に溢れ出てくる大根たちに対し、緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)はにっこりと笑顔で微笑む。
「世界のために命を懸けるとは根性のある妖怪がいたもんだねぇ。大根だけに強大な根性ってところかな!」
なーんちゃって、と朗らかに笑う少女。
「さて、私も応えるために頑張るぞー!」
重戦斧【緋月】を軽々と振り回しながら、腰溜めに構える透乃。
「ゴアアォオオオッ!」
正気を失った大根が群れなして迫ってくる。
元は温厚な妖怪らしいが、今は倒すしかない。
「えいやっと!」
旋風のように振り抜かれる重戦斧【緋月】。
伐ッ、と野菜が両断される気持ちの良い音が響き、大根の群れが倒れてゆく。
「それにしても大根かー。私はにんじんが好きだけれど、大根も美味しいよね!」
あの歯応え、そして野菜とは思えないボリュームのある満足感……。
そう、大根は食卓の王様と言っても過言ではない野菜なのだ。
「しかし本来は食べられたいだけってなんだろ? 食べられたら死ぬのでは……?」
むむ、と頭を悩ませる透乃。
「でも、アンパンのヒーローさんの例もあるし――。そういうのもアリなのかな?」
まあ妖怪だし、数日で復活するとかそんなところだろう。
食べられることこそが本懐ならば、それに応えてやるのがこちらからの礼儀というものだ。
「折角だから倒した奴も食べてみよう!」
いただきます、と感謝しながら思い切ってかじってみると、みずみずしい大根の食感があった。
ピリッと舌を刺激する辛味。生野菜ならではの新鮮さが口の中に広がる。
「うう、辛い……」
思わず顔をしかめる透乃だったが、そこで食べるのを止めてしまうというわけではない。
「うーん、まずは醤油からかな……そうだっ、煮たら辛味が抑えられるかも……?」
と、どうすれば美味しくなるかを考えながらも、団地内を歩き回って敵を刈り取ってゆく透乃。
土地勘のない迷路のような場所なので敵の不意打ちはもはや承知の上。
だが、食事を己の力に変える透乃の【色々食べよう!(イロイロタベヨウ)】ならば、生半可な攻撃など問題ではない。
「あ~ん! マヨネーズもってくるんだったよ~!」
と、迫り来る大根妖怪を透乃は真正面からごり押してゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
備傘・剱
つまり、俺にこれを言え、そういう事だな?
オブリビオン、大根、おいてけ!
さぁ、どんどん、美味しく頂いちゃおうね
調理開始、発動
オブリ飯の真骨頂、魅せてやるわ
あん?ここは団地だって?なら、コンクリの土間があるよな?
其処にしばらく置くと、灰汁の抜けがいいんだよ
そして、米のとぎ汁があれば、なおいいんだがなぁ…
ふろふきにしても、田楽にしても、そして、おでんにしても、おろしでもいける大根、そして、大根菜は漬物にして、ご飯と酒のおともに!
知ってるか?
大根は日本人の大好物だという事を…
つまり、宇宙生まれの俺も、その血を受け継いでいるのだよ
さぁ、大根食祭りの開催だ!
食べたい奴はここに来い!お残しは許しまへんでぇ?
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異世界への扉を抜けると、そこは夕焼け空の団地だった。
今にも学校帰りの小学生が、今日の晩御飯はなんだろうと走りながら帰ってきそうな、そんな郷愁を掻き立てる光景。
そして今回の敵は『大根』ときたもんだ……
オーケー、オーケー。つまり、俺にこれを言え、そういう事だな?
「オブリビオン、大根、おいてけ!」
料理人としての本能をその瞳に燃やし、備傘・剱(絶路・f01759)が夕日に向かって叫ぶ。
嬉しいほどに団地の中から湧き出してくる純白の美しき野菜『大根』――。
おお……なんてこった最高かよ。
「さぁ、どんどん、美味しく頂いちゃおうね」
【調理開始】を発動させながら、獲物を前にした獣のような笑顔を浮かべる剱。
「オブリ飯の真骨頂、魅せてやるわ」
夕日の照らす団地で、一瞬の光が瞬く。
繰り出されたのは鉄箸による神速の刺突。
「――ッ!?」
貫かれた大根がジタバタと手足を揺らす。
「うむ、いい大根だ――」
美脚大根コンテストでも入賞できそうな、新鮮で瑞々しい美しさ。満足そうに頷いた剱はそのまま団地の一室へとその足を運んでゆく。
今回の依頼は団地。それを聞いた瞬間、剱にはある確信があった。
「そう、ここは団地だ。なら、コンクリの土間があるよな?」
思った通り、と微笑む剱。
「其処にしばらく置くと、灰汁の抜けがいいんだよ
そして、米のとぎ汁があれば、なおいいんだがなぁ……」
台所の調理器具棚を確認しながら剱は呟く。
なお、そう言っている瞬間にも大根たちは剱に絶え間なく襲い掛かっているのだが……。
準備の片手間とばかりに剱に処理されてゆく。
「ふろふきにしても、田楽にしても、そして、おでんにしても、おろしでもいける大根。そして、大根菜は漬物にして、ご飯と酒のおともに!」
食材に感謝して余すところなく食す。
今は骸魂のせいで正気を失っているとはいえ、人に美味しく食べられることを本懐とする大根妖怪にとっては、この男はまさに救世主と言えるのかもしれない――。
「知ってるか?
大根は日本人の大好物だという事を……。
つまり、宇宙生まれの俺も、その血を受け継いでいるのだよ。
さぁ、大根食祭りの開催だ!
食べたい奴はここに来い! お残しは許しまへんでぇ?」
え、これ全部食べ切るつもりなのっ!?
次々と剱の手で仕上げられてゆく大根料理。
ある意味で妖怪討伐より難易度の高い完食ミッションが始まろうとしているのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ジェムス・ゴールドシップ
大根…ああ、おでんが食べたい
そんな気分だがまぁいい、消す
大根の効能やら食べろとか取りあえずはいったん置いといてだな…塵一つ残さねぇよ
入り組んだ地形であること活かして爆風からの煙幕による視覚妨害やら不意打ち気味の起爆やらとことんやってやる
ついでに焼き畑もやっておいてやるから次はまともな品種育てような
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沈みゆく夕日が団地を茜色に染めている。
燃えるような夕焼けの中、今、団地の一角で爆破が巻き起こった。
響き渡る轟音と、衝撃で砕け割れてゆく窓ガラスたち。
まるで爆破テロか、発破解体か――。
いや、その一発だけではない。
次々と連鎖するように爆発が巻き起こり、団地を文字通り揺るがしてゆく。
塵すら残らず消えた大根たちは、僅かに香ばしい匂いだけを世界に残して消滅し、
「大根……ああ、おでんが食べてえな」
何日か寝かせて、しっかりと味の染み込んだあつあつのおでん……。その味を眼を細めながら思い出してジェムス・ゴールドシップ(経済界のラスボス(多分)・f32116)が呟く。
そんな彼に、爆発を逃れた大根が上階から降り注いでくる。
「そんな気分だがまぁいい、消す」
ジェムスの周囲に、幾何学模様を描きながら優雅に舞い踊る蝶が出現する。
パチンとかジェムスが指を弾くと、蝶の鱗粉が閃光を放って瞬き――。
鼓膜を破壊するような轟音が再び団地を揺らす。
「大根の効能やら食べろとか取りあえずはいったん置いといてだな……塵一つ残さねぇよ」
【千変万化の泥の蝶(スーパーフライ)】。
まるで情け容赦なしでその力を振うジェムス。
入り組んだ地形を生かして死角から襲い掛かろうとする大根たちであったが――。
この全方位をまとめて破壊する圧倒的な攻撃に為すすべなど無い。
「ついでに焼き畑もやっておいてやるから、次はまともな品種育てような」
さて、植えるのなら何がいいだろうか。
出来れば金になりそうなものがいい。
そんなことを考えながら――。
爆炎を纏うジェムスが団地を制圧してゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
レナータ・バルダーヌ
大根は根菜、つまりゴボウの親戚といっても過言ではありません。
ゴボウ農家としては捨て置けませんね。
ここはお台所……えっ、お料理勝負?
いいでしょう、受けて立ちます!
こちらは【愉快なゴボウさんディナー!】で、謎のゴボウ生物の亜種『愉快なゴボウさん』たちを呼び寄せ、ゴボウさんチームを結成します。
なるほど……テーマは「炒め物」。
でしたら、わたしはゴボウ料理の定番、きんぴらごぼうを作ります。
勝っても負けても、せっかく作ってくださったお料理にかける言葉はひとつです。
ごちそうさまでした!
ところでゴボウさん、この大根さんたちとは何か関係が?
『いいや。だが俺たちゴボウが走るんだ、大根だって動くくらいするだろ』
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依頼を引き受けたレナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)は熱い使命感に燃えていた。
「大根は根菜、つまりゴボウの親戚といっても過言ではありません」
その手には自家栽培のコボウ。
「ゴボウ農家として……この事件、捨て置けませんね」
でもこの大根、妖怪だし……とツッコむのは野暮というものだろう。
いざ! とゴボウを聖剣のように掲げながら出陣するレナータ。
異世界への扉をくぐり抜けると、視界に広がるのは――。
「ここはお台所……?」
集合住宅『団地』。転送先がキッチンであろうと、そう不思議ではないが、ことこの依頼においては奇縁を感じずにはいられない。
見れば、台所はすでに大根たちの住処となっており、突如現れたレナータに敵も驚いている様子だ。
「ゴ、ゴボウ――?」
レナータが持つゴボウを見て呆気にとられる大根たち。
無理もない。突然ゴボウを持った女が自分ちの台所に現れたら誰だって驚くだろう。
固まった大根たちの姿を、問答無用で襲い掛かってくるつもりはないようだと解釈したレナータはポンと閃いたように手を打ち。
「えっ、お料理勝負? いいでしょう、受けて立ちます!」
なにがどうしてそうなった!?
骸魂に操られていない状態であれば、敵からそうツッコまれていたかもしれない。
「カモン! 愉快なゴボウさんチーム!」
魔法のタクトのようにレナータのゴボウが振るわれると、謎のゴボウ生物が召喚されてゆく。
「なるほど……テーマは『炒め物』ですか」
台所のお鍋を見ながらレナータが「ふむ」と呟く。
対する大根さんチームは困惑の極み。
「でしたら、わたしはゴボウ料理の定番、きんぴらごぼうを作ります!」
クッキング・スタート! とばかりに開始されるお料理対決。
大根とゴボウ、根菜界の頂点を決める戦いが今、始まろうとしていた――!
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それは甲乙つけがたい勝負であった。
それぞれの陣営が素材の味を最大限まで磨き上げ、レナータの舌を楽しませた。
大根とゴボウ、そこに優劣などは存在しないのかもしれない。
どちらにも、それぞれの美味しさがあるのだ。
だからこそ――。勝敗を分けたのはレナータ自身の好みだった。
「集計結果が出ました……!
得票数はなんと一票差……僅差ではありますが、ゴボウさんチームの勝利です!」
うおおおおッ! っとゴボウチームから勝利の歓声が上がる!
オイ、なんだこの八百長は!?
敗北してガクリと膝をつくのは大根チーム。戦意を失い、骸魂の支配からも解放されたようである。
争うことなく勝利を収めたレナータ!
これにて一件落着、めでたしめでたし!
「ところでゴボウさん、この大根さんたちとは何か関係が?」
根っこが先割れて二足歩行するゴボウさんにレナータは疑問をぶつける。
『いいや。だが俺たちゴボウが走るんだ、大根だって動くくらいするだろ』
地に伏して敗北の悔しさに足をバタバタさせる大根さん。美脚。
脚の美しさ勝負にしなくて良かった……そう思いながら、レナータは夕日に向かって目を細めるのだった。
大成功
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マリウス・ストランツィーニ
世界のために自らを犠牲にするとは、簡単に真似できることではない。
あなた方を解放するために私も全力でお相手しよう。
大根料理?
今は敵とはいえ、大根達は元は誇り高き妖怪。差し出された料理を断るなどと、礼儀知らずな事はできないな。
いただきます!
もぐもぐ……うむ、美味い。
しかしずっと食べているわけにも行かないな。
うっぷ、お腹いっぱいの状態で戦うのは少ししんどいが、「気合い」を高めて敵に「切り込み」、「なぎ払い」していくぞ!
さあ、目を覚ませ誇り高き妖怪よ!
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沈みゆく夕日が世界を茜色に染めてゆく。
夕焼けの中、妖怪団地を歩く軍服姿の少女の姿がある。マリウス・ストランツィーニ(没落華族・f26734)だ。
「……甦った大妖怪、か」
人々に忘れられたがゆえに『存在を知覚することが出来ない』という『大祓骸魂』。
「過去には、さぞ名のある妖怪だったのだろうな――」
終末を思わせる黄昏の空。
過去に縛られながら、過去の栄光を取り戻すために戦うマリウス。
(もし私が戦いの中で潰えれば、名家ストランツィーニの名も人々の記憶から忘れられてしまうのだろうか……)
いや、既にお家の為にと躍起になっているのはもはや私だけで、帝都の人々は既に忘れ去ってしまっているのかもしれない。
そんなことをふと思って、思わず苦笑するマリウス。
「どうにも、夕日を見ていると感傷的になってしまうな」
頬を叩いて、マリウスは気持ちを入れ直す。
「――来たか」
敵の気配を感じ取り、八重霞ノ太刀に手をかけるマリウス。
ボトボトと上階から落ちてくる大根妖怪たち。
「世界のために自らを犠牲にするとは、簡単に真似できることではない」
迫り来る大根妖怪を真っ直ぐに見据えながら、刀を抜き放ち構えるマリウス。
すうっと息を吸って、決意を新たにして。
「我が名はマリウス・ストランツィーニ!」
高く、全ての世界に響き渡るように、名乗りをあげるマリウス。
願わくば、この名が失われないように、誰かの記憶に焼き付くようにと、凛として叫ぶ。
「あなた方を解放するために、私も全力でお相手しよう」
自らの未来を切り開くように、切っ先は真っ直ぐ前に向けて。
マリウスは敵陣へとその身を躍らせるのだった。
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大根料理をこれでもかと投げつけてくる大根妖怪たち。
今は敵とはいえ、大根達は元は誇り高き妖怪。差し出された料理を断るなどと、礼儀知らずな事はマリウスにはできない。
「いただきます!」
意を決して、料理を受け止めるマリウス。
「――ッッ!」
えげつないほどの辛味がツーンと後頭部を翔け抜け、思わず意識が飛びそうになる。
避けられると思っていた大根妖怪は、自ら食べに行ったマリウスに対してやや驚いた様子である。
「……うむ、美味い」
溢れてきそうになる涙をなんとか堪えながら、笑顔を浮かべるマリウス。
「――!」
大根妖怪たちの攻撃が一瞬だけ止んだ。
人に食べられることこそが本懐だとグリモア猟兵が説明していた大根妖怪。
彼らを正気に戻すためには倒す他ないが、それでも――。
相手への敬意を示そうとマリウスは差し出された料理を完食してゆく。
「しかし、ずっと食べているわけにも行かないな」
お腹に溜まった大根料理が地味に重たいが、それでマリウスの剣技が鈍るというわけでは無い。
「さあ、目を覚ませ誇り高き妖怪よ!」
心優しき大根妖怪が自らを取り戻せるように――。
断ち切るは骸魂による支配の鎖。
斬り込む一太刀は、まさに一閃。
「――ッ!? へへ……あ、ありがとよ。マリウスの、嬢ちゃん」
ゆっくりと仰向けに崩れ落ちる最後の大根妖怪。
「お、俺達の大根料理……へへっ、嫌がらずに、食べてくれて、嬉しかったぜ……」
そう猟兵達に感謝を述べて、妖怪団地の大根たちは無事、倒されたのだった。
大成功
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