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大祓百鬼夜行⑫〜燃えよ龍籠城砦

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#カクリヨファンタズム
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#大祓百鬼夜行


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●渦巻く不穏な空気
 カクリヨファンタズムの果ての果て、山脈のように軒を連なる建造物がある。それは妖怪団地と呼ばれるマンモス団地であり、多くの妖怪がここに居を構えている。しかしながら、住民が多ければ多いほどにご近所トラブルは絶えず、大なり小なりの揉め事は絶えなかった。
 ともなれば、自然とトラブルを未然に防いだり解決する自警団のようなものが形成されるのは自然の理で、それは時が経つにつれて団地の地形を利用した『団地闘法』という武術に発展した。これらを体得した妖怪らにより結成されたのが『団地武装団』と呼ばれ、揉め事が起きた際にはそれぞれの棟を代表しての彼ら同士の勝敗で解決したり、年に一度は天下一団地闘法会なる格闘技大会が行われたりと祭りさながらに盛況を博した。
 そして、ここは広大なる妖怪団地の中で『龍籠城砦』と呼ばれるエリアである。その名の通り城砦さながらの大きさを誇る棟であるが、これは住民が増えるにつれて違法建築ばりの増築を繰り返して迷宮さながらになったことによるものだ。ここには多くの妖怪が住んでいたが、今は人気、いや妖気は微塵もない静かな空気が漂っている。
 団地の中心に異様な一団が静かに佇んでいる。この龍籠城砦でも随一の団地闘法の使い手である彼らだが、両手を組んだまま微動だともしようとしない。

『…く、クハハハハ! あいも変わらず邪神の骸魂たる龍神片の狂気が、私をたぶらかそうと頭の中で囁きよる。だが、まだ堕ちぬ。私たちはまだ堕ちぬぞッ!』
 徐々に狂気に帯びる乾いた笑い声が住民が消えた龍籠城砦の中に響く中、彼らは待ち続ける。彼らと全力で闘う猟兵の訪れを。

●グリモアベースにて
「カクリヨファンタズムの住民らが次々と失踪した原因が、予知で判明いたしました。『大祓骸魂』なる骸魂の元凶であり、UDCアースの大いなる邪神が一柱でもあるそれがカクリヨファンタズムの果てで蘇ったことによるものでした」
 シグルド・ヴォルフガング(人狼の聖騎士・f06428)は、神妙な神妙な面持ちでカクリヨファンタズム内に起きた逼迫する事態を刻々と説明する。

「大祓骸魂の目的は唯一つ、UDCアースの破壊。UDCアースが消失すれば、狭間に浮かぶカクリヨファンタズムもまた滅びる運命です。そして骸魂であれば誰でも気づく物でありましたが、大祓骸魂はカクリヨファンタズムの住民にも忘れられたが存在故に、誰もその姿を見ることができませんでした。それは我らのグリモアを用いても、視ることも予知することも叶えません」
 2つの世界に訪れた静かなる破滅の危機。既に打つ手もない状況と思われる中、ですがとシグルドはまだ望みがあると言わんばかりに言葉を続ける。

「しかし、一部の妖怪達は大祓骸魂の事を覚えていました。彼らに大祓骸魂を倒す力はありませんが、愛しきふたつの故郷を守るため一計を案じたのです……あえて大祓骸魂の軍門に降る。これがカクリヨファンタズムで発生していた妖怪失踪事件の真相でした」
 つまり、とシグルドは説明する。一部の妖怪らは大祓骸魂の存在を知っていて視認することは出来たが、その強大なる力の前に太刀打ちすることはできない。そこで妖怪たちは骸魂妖怪の軍団、百鬼夜行となることで視えない大祓骸魂の周囲に集まっていく。その密度が高くなればなるほど、UDCアースを目指そうとする大祓骸魂の存在を猟兵にも捉えることができるようになるのだ。

「自らの身を犠牲にしてまで骸魂と一体化する。それは並大抵の覚悟でなければなし得ないことでしょう。そして、敢えて敵の軍門に降りた彼らとの戦いも手心を加えることは許されません。何故ならば、全力で戦う事が大祓骸魂の力を弱めると共に、我らにその居場所を教える助けになるからです」
 情け無用の全力勝負。それが妖怪たちの本望であれば、これに応えるのが彼らの望みでもある。勿論、骸魂が祓われれば元の妖怪の姿に戻る。心を鬼にせねば、この大祓百鬼夜行の元凶たる大祓骸魂を討てないのだ。

「そしてですが、その有志を予知できました。妖怪団地と呼ばれる妖怪たちの住まいに、我々の到来を骸魂に蝕まれながらも待ちわびる妖怪たちの存在を確認したのです。まずは団地闘法なる武術の使い手であるこの者らと、戦って頂きたいのです」
 当然ながら、彼らも手加減せずに本気で勝負を挑んでくるであろう。団地闘法とは、団地の地形を利用した武術である。使い手である彼は団地の地形を生かした戦い方を繰り広げる筈であれば、こちらも心置きなく団地の地形を利用して闘うまでだ。幸いにも、住民は彼を残して何処かに行ってしまったらしい。住民不在であれば、心置きなく暴れるだろう。

「それでは、これより皆様を妖怪団地のひとつ『龍籠城砦』へと送ります。ご武運をお祈りします」
 シグルドは一礼し、グリモアを展開する。フォースの輝きが猟兵を包み込むと、滅亡の危機に瀕するカクリヨファンタズムへと転送した。


ノーマッド
 ドーモ、ノーマッドです。
 ついに今回も戦争のシーズン到来となりました。
 此度は2つの世界が消滅の危機となる異例な戦いとなりますが、共に勝ち抜いて勝利をおさめる様頑張っていきましょう。

●シナリオ概要
 カクリヨファンタズムの果てにたたずむ妖怪団地の一角、龍籠城砦と呼ばれる場所で待ち構える龍神片との複数戦です。
 団地は増改築を繰り返して迷路のようになっており、さながらスラムのように入り組んでいます。元団地武装団である彼らは、この地形をうまく利用して猟兵達に襲いかかってきます。
 よってプレイングボーナスは、迷宮のように改造された団地を利用して戦うこととなります。ちょっとした入り組んで隠れそうな場所や、団地であるのを生かしての高低差を利用すれば、自ずと彼らと対等に戦い合えることでしょう。

 それでは、皆さんの熱いプレイングをお待ちします。
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第1章 集団戦 『龍神片』

POW   :    肉喰(にくはみ)
自身の身体部位ひとつを【大元の龍神もしくは混ざりあった邪神】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    龍乱舞
【回避と攻撃が一体となった神速の旧き套路】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    属性撃
【龍神が司っていた属性での攻撃(投射可能)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【をその属性によって染め上げて】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:白狼印けい

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ジェムス・ゴールドシップ
世界のために敢えて自ら捨て石になる覚悟、平和の礎とでもいうべきか。
ご苦労なこったな…俺からしたら『愚策』だが。
それしか手がないが故にそれを選ばざるを得ないという事がであり先を見据えたうえでの未来への『投資』は否定できんがね…

まぁその辺は商人ゆえの思考だが。まぁしゃーないからサッサと片づけてやろう
んで、入り組んだ地形での戦闘だったな…UCによる爆破攻撃といえば単純だが高低差があったり入り組んだ場所であるならば爆風による煙幕、さらには相手がよほど勘がいいとかじゃない限り爆発物と予測されないのを利用した先置きのトラップと最大活用することはできる

後はもう相手の動きに合わせてタイミングよく爆破するだけだ


神樹・鐵火
九龍城よりも酷い構造だな...
狭い通路で集団戦は分が悪いな
暴れ過ぎて建物が崩れたら元も子もない
私は繊細な戦い方が苦手なのでね
なら障害物が少ない場所でカタを付ける

中庭か屋上等の、ある程度面積に余裕のある場所で待ち構える
そこで聖拳の閃光弾を何発も上空に放ち、轟拳の炸裂音を使い、
わざと大袈裟に居場所を知らせて敵をおびき寄せる
敵が集まってきたら、【全力魔法】の霊拳と魔拳の【衝撃波】を伴う気功弾で各個撃破する
最後は『陰陽魔弾』で纏めて上空に吹き飛ばす
派手な花火になりそうだな
旧正月の爆竹や花火に似た光景はこの団地に似合うだろう



「九龍城よりも酷い構造だな...」
 グリモアの導きによりこの妖怪団地『龍籠城砦』に訪れた神樹・鐵火(脳筋駄女神・f29049)が、その迷宮っぷりに呆れながら苦言を零した。UDCアースにも似たような物があるのだが、この龍籠城砦とはと言うと方向感覚が狂いそうになる通路ばかりである。尤も住民が人間とは異なる妖怪故に多様な体の作りをしている為に最適化されたものであろうし、彼らにとっては妖気を感じ取ることで迷うこと無く自分の住処に辿り着けれるのだろう。
 だが、無軌道な増改築の弊害か至る場所が脆くもある。手入れをしようにも追いつかない実情、この不安定さが団地闘法に利用されているのでもあろう。土地勘が無いものが迷い込んで来れば、足場が腐った場所まで誘導すという地の利を知り尽くした者ならではの戦い方を運べれるのだ。

「暴れ過ぎて建物が崩れたら元も子もない。私は繊細な戦い方が苦手なのでね、なら障害物が少ない場所でカタを付ける」
 表向きは人間を装っている鐵火、またの名を『イクサビノヒメ』とも呼ばれる鋼鉄と炎を司る戦神は、ビル風が吹き抜ける縦穴に出ると壁を蹴ることにより上へ上へと跳び登る。この迷宮内で骸魂に飲みかけられた妖怪と対峙しようにも、手加減が利かない故にこの団地を内部から崩壊しかけない。ともなれば被害を最も抑えて『龍神片』らをおびき寄せる場所に最適な戦場……屋上を目指したのだ。

(ふむ、大なり小なりの気配がこちらを追い始めてるな)
 ひと蹴りする度に龍籠城砦全体が大きく軋む。この妖怪団地を知り尽くしている彼らにとっては、ショートカットして屋上を目指していると一目瞭然なのだろう。だが、そうであれば都合がいい。多少の手間が省けたと呟くと、屋上はすぐ目前であった。

「世界のために敢えて自ら捨て石になる覚悟、平和の礎とでもいうべきか。ご苦労なこったな…俺からしたら『愚策』だが、それしか手がないが故にそれを選ばざるを得ないという事がであり先を見据えたうえでの未来への『投資』は否定できんがね…」
 だが、鐵火が屋上へたどり着くと先客が既に居た。反射的に身構えると、異国情緒ある商人服姿のジェムス・ゴールドシップ(経済界のラスボス(多分)・f32116)が鷹揚とした態度で、自らは骸魂『龍神片』ではないと両腕を広げながら彼女とは交戦の意思が無いと伝えた。

「これはこれは、どうやら同じ考えの者が居たようだな」
「全くだ。それにしても、どうやって私より疾くここまで?」
「それは商人として企業秘密だな。教えてやってもいいが、そんな暇なんてないぜ」
 広々とした屋上に鐵火を、ジェムスを、もしくは両名を追ってきた龍神片が登り来る。顔を布で隠していて表情は読めないが躊躇すること無く二人へと迫りくる中、ジェムスは臆することなく悠然と立っている。すると、突如爆発音が轟いて屋上は黒い爆炎に包まれた。

「お前が来るのは予想外だったが、コイツらの数も多すぎたか。…さて、ひらりひらりと舞い遊ぶように、だ。優雅に舞う蝶に見とれてる場合じゃないがな…命が惜しいなら、ばだ」
 彼が手を上げて指示を送るように下げると、彼の身体から一見妖精の様な見た目の蝶の特徴を持つ疑似生命体が次々と飛び出てくる。そういえば屋上に関わらず蝶がひらひらと翔んでいたことに鐵火が気づくが、これらは彼のUCが作り出したトラップであったのだ。まるで機雷のように爆煙に紛れて次なる獲物を蝶は追う。しかし、先程の爆発で仲間が屋上から吹き飛ばされそうになったのもあってか、龍神片が怪しい蝶に警戒し始めている。

「なるほどな。私も引っかかる可能性があったということか。まあいい、相手が蝶に気を取られていればこちらもやりやすい」
 すると、今度は先程の爆発音とは異なる破裂音が屋上内に響き渡った。鐵火が全ての魔力を込めた霊拳と、魔拳からの衝撃波に伴う気功弾によるものである。未だ晴れぬ黒煙に紛れて彼女は拳を振るう。大気をビリビリと震わせるひとつひとつの一撃が重く、仮にこれが迷宮の内部で繰り広げていればこの建物が倒壊してしまう可能性があったのも頷けるものだ。だが龍神片も中々やるもので、既のところで全身を貫く衝撃に耐え抜くが、その余波は周囲に飛び交うジェムスが作り出したUCの蝶に誘爆する。予測もできずに不意に爆発すると龍神片は態勢を崩してしまう。その僅かな隙を逃さず、鐵火の拳が追撃を行っていく。

「そろそろ頃合いだな。破ァ!!!!」
 これ以上龍神片が屋上に来ないと見るや否や、陰陽として成立している霊拳と魔拳の波動を衝突させあうと、鐵火を起点として今までとは比べ物にならない衝撃波が爆ぜる。
 陰陽魔弾。屋上全体を打ち大鼓としたかのように、重い波動が下から突き抜けて龍神片をひとり残さず上空へと打ち上げられると同時に、彼らの身体からなにかぼんやりとする光が出てきた。龍神片の骸魂だ。あたかも衝撃によって宿主の妖怪から排除されたそれは一際強く発光したかと思えば、露となって消え去っていく。残されたのは、彼女と骸魂が祓われて気絶している妖怪たち。そして、何食わぬ顔で平然と佇むジェムスだけである。

「お互いに派手な花火であったな。旧正月の爆竹や花火に似た光景はこの団地に似合うだろう」
「ああ、全くだ」
 この隠れる場所もない屋上で、どうやってジェムスは鐵火が渾身を込めて放った陰陽魔弾を逃れたのか。恐らく詮索しようとしても、この掴みどころのない男はのらりくらりとはぐらかすだろう。ともあれ無用な詮索は無粋であると事務的な言葉のみを交わしつつ、両名は妖怪たちに気付けを施していくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイン・セラフィナイト
団地自体が迷宮か。こういう場所って隠れるのにもってこいなんだよね。例えば室外機の陰とか、階段の裏とか。

配置してある室外機の陰、階段の裏側、部屋の中のタンスとかに隠れながら、ボクを探しに来ただろう龍神片を迎撃するよ!

UC発動、ボクの使い魔たちを団地全体に拡散させるよ。
鴉たちと五感を共有しながら、敵の位置を確認した後、鴉からボクの魔弾を浴びせてみよう。(属性攻撃・全力魔法・動物使い)
『地形破壊』で団地の一部を破壊して牽制したりするのも良さそうだね。
見つかりそうだったら別の場所に移動してみる。

さあ、かくれんぼだよ。ボクを見つけられる?



「うわ!? 何だろう、さっきの揺れと花火のような音……」
 突如として妖怪団地全体を襲った揺れと爆発音に、どこか大人びながらも幼い精霊術士であるアイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)が胸を押さえながら音が聞こえた上層を見上げた。彼は周囲を見渡し、辺りに龍神片の気配が無いことを確認すると通路にせり出している室外機の影に隠れながら目を瞑り、深く意識を集中させる。
 瞼の奥にはテレビのダイヤルを回してチャンネルを次々と切り替えるように、一見すると似たような通路や三叉路、この龍籠城砦を遠巻きに見たかのような光景が浮かび上がってくる。これらは彼がこの妖怪団地に踏み入る前に解き放った、99匹からなる不可視の鴉が捉えた物である。だが、いくら視点を切り替えても不思議なことに屋上にから上空を見下ろしているはずの鴉からの視界が送られてこない。

「……うん。これはもしかして気絶しちゃった、のかな?」
 一旦目を開くと、アインはううんと唸りながら考え込む。先程の衝撃音で気絶したとすれば、上空を翔んでいた鴉が落ちてしまったとして原因は考えられる。だが、それは一体何者によるものかとなれば、判断材料は乏しいのが実情であった。見つけた対象を追跡する使い魔と五感を共有していて監視カメラさながらに観測できるUCではあるが、生憎ながら録画するような能力は併せ持っていない。
 仕方ないかと呟いて立ち上がろうとしたその時、視界が見覚えのある路地を映し出す。

(これは……ボクがさっき通ってきた通路だね)
 曲がり角の壁際にポツンと置かれた、たぬきの置物が赤い帽子を被ったかのようなレトロな郵便ポストの周囲が脳裏に浮かび上がっている。つい先程に珍しがって興味深そうにあれこれ触っており、そういえばお腹にあった扉を開けて中を覗いたよねとアインが思い返す中で、通路から人影がにゅっと突き出すように現れる。その正体は龍神片の一体でたぬきの置物ポストの前で止まると、まじまじと何かを眺めているようである。

(手紙を確認しに来たのかな……?)
 息を静かに飲みながらアインがそこで止まっている鴉からもたらす光景に何をしているのだろうと不思議がる中、何やら思い出したかのようにあっと気づく。

(もしかして……きちんと閉めていなかった、のかな?)
 つまり、龍神片は普段は閉まっているはずである郵便ポストの取り出し口が開けられた痕跡があるのを確認しているのである。そして、この妖怪団地にはそんなイタズラをするわんぱく妖怪など居るわけがなく、今居るとすればこの龍神片の骸魂を宿した妖怪と猟兵において他ならないのだ。

「不味いなぁ。隠れないと」
 このまま室外機の影に身を潜めていては気づかれてしまう上に、白兵戦に持ち込まれてしまえばこちらが一方的に不利である。鴉からの視界を一旦切って周囲を見渡すと、幸いなことに入居者の部屋と思わしきドアがあった。静かにドアノブを回すと、キィっと金属が擦れ合う音と共にドアが開いた。これは幸いとばかりに部屋の中に滑るように入ると、静かにドアを閉めた。
 大きく深呼吸し、再び先程のたぬきポストに意識を向けたが、既に龍神片の姿は消えている。先程来た通路を戻っているわけでもなく、こちらに向かっているのだろうとアインは息を潜めながら鴉をこちらに集結させるよう向かわせる。彼らは羽音もしない故に気づかれないだろうが、今はこの龍神片を追跡しているだろう。

(さてと。あの龍神片は今何処に居るんだろ……)
 上手くやり過ごせたら背後を突ける。そんな望みを抱きながら視界を映すと、アインは息を呑んだ。迫り出した室外機、その脇にあるドア。そして、その前には龍神片が居るのだ。心臓が早鐘を打つ中、彼は部屋の中を見渡した。和風の趣き漂う格子が施された扉の人ひとりは入れるタンスが口を開けている。

(あれだ!)
 今にでも駆け出したい焦りを抑えながら、アインはタンスの扉を閉めて身を潜めると同時に部屋のドアが先程聞いた金属が擦れ合う音とともに開かる。タンスの中から様子を伺うアインの前に龍神片が中の様子を見渡している。このまま閉めてくれればと願うが、彼の思いとは裏腹に部屋へと入ってきて周囲を見ましている。そして、彼がタンスに顔を向ければ自然と目が合ってしまう。

(気づかれた…!?)
 龍神片がタンスの前に歩み寄ると、思わずアインは手にしている杖をギュッと力強く握ってしまう。薄い扉を挟んだ中、心臓の鼓動が反対側に漏れてしまうかのような錯覚がアインを襲った。だが、龍神片はタンスの扉を開けること無くそのままきびすを返すと外へと出ていった。張り詰めた緊張の糸が緩む中、彼は反撃に出る。

(ボクを驚かしたお返しはしなきゃだね。万象馳せる自在の翼、魔を震わす声を以て羽撃け!)
 アインは外で待機している鴉らに命を下し、彼の身体を通して撃たれた魔弾が龍神片に襲いかかる。暫く間をおいてアインが部屋から出ると、不意打ちを食らった龍神片がのびている。その隙に骸魂を祓ってようやく安堵したが、別の龍神片の姿を捉えた鴉が再び主へ警告を送った。

「……さあ、かくれんぼだよ。ボクを見つけられる?」
 先程の魔弾で察知されたのであれば、あの龍神片もここに来るであろう。となれば、欺かなければならない。杖を振るい放たれた魔法で鍵がかけられている扉を次々と破壊しては開け、次なるかくれんぼが始まったのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ガイ・レックウ
【POW】で判定
『妖怪の覚悟…無駄にはしない!!」
【戦闘知識】で団地の構造を観察しながら、物陰に身をひそめつつ【制圧射撃】で牽制しつつ、相手より高い位置を取り、【拠点防御】のスキルで守りながら位置取りを調整。
【オーラ防御】で防御を固め、自身の身を晒し、囮にして近づいてきた相手にユーベルコード【封魔解放『鳴神』】と【怪力】での【なぎ払い】で一掃するぜ



 息を潜めながら迷路のような団地という特性を活かして一体一体倒していく猟兵が居る中、逆に己の存在を醸し出して迷うこと無く龍神片集めていく者もいる。

「妖怪の覚悟…無駄にはしない!!」
 ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)もその内のひとりであり、身を挺して骸魂と一体化した妖怪らに心を打たれた猟兵でもある。自己犠牲の極地とも言える彼らの犠牲に応えようと、ガイは団地の迷宮内を駆ける。

『イたゾぉおおおおッ!!』
 その姿を龍神片の一団が追う。あの様子では、骸魂の侵食が重度にまで進行している。だが、団地武装団の意地は消えておらず、あくまでも団地闘法で勝負しようとあらゆる物を利用してガイを追跡していた。

「へっ。どうやらまだ完全に骸魂に食われていねぇようだな!」
 路地の先を見通す視点を脇に反らせば、いい感じの段差がある。ガイはフェイントをかけ、フックシューターを上の階の窓枠に設けられた転落防止柵に向けて打ち出した。巻き上げれば自然と彼らの頭上を取ることとなり、突撃銃型アサルトウェポンを片手に持ちながらセレクターをフルオートにしたまま引き金を引けば、銃弾の雨が龍神片らへと降り注ぐ。だが、それも数秒後には撃ち切ってしまい、ガイは舌打ちをしながらフックシューターの特殊ワイヤーが大きく揺れて弧を描く中で引掛けを解除した。落下する中、自由になった両手でマガジンチェンジをして開かれたチャンバーを引き戻すと、背後を取りながら再び制圧射撃を敢行する。

『おノレぇエエエエエッ!!』
 銃撃の雨を掻い潜った龍神片の腕が肥大化したかと思えば、異形と化してくる。五指は龍のアギトとなり、瞳を爛々と赤く輝かせながらガイを喰らおうと牙を向かせた。

「おっと、そう来やがったか」
 再び撃ちきったアサルトウェポンを投げ捨てながら受け身を取り、彼は体勢を整えるや否や腰に下げた純白の鞘に手をかけ、身体の動作を利用して流れるように抜刀する。
 相克・百鬼雷迅刀『ヴァジュラ』。メガリスとして覚醒した迅雷を司る魔神の力を宿した白銀の退魔刀に閃光が迸った。

「さあ、荒れ狂え! 百鬼従えし、魔人の雷よ!! 悉く粉砕せよ!!」
 封魔解放『鳴神』。封魔神刀に封じられた荒れ狂う魔人の雷が、彼に食らいつこうとする骸魂に宿る邪な龍神に向け放たれた。龍の頭となった腕は退魔の雷により焼かれ、ヴァジュラの刀身が首ごと断ち切らせる。龍神片の腕が失われたと思われたが、UCが解除されれば元通りに五指は健在であった。それもその筈で、ガイが斬ったのは骸魂本体そのもので、UCで顕現した邪神の欠片が雷に焼かれて消滅したのだ。すると、当然それは元の妖怪の姿と戻り、ガクリと身体を崩すとそのまま気絶してしまう。

「まずは一体ってとこか」
 ガイはアサルトウェポンを拾い直すこと無く、そのままヴァジュラを構える。それもその筈で、銃弾を受けた龍神片は健在で、口惜しそうに身体の至るところから龍を象った邪神の頭部が迫り上がっている。

「いいぜ。纏めて祓ってやらァ!!」
 ──ドンッ!!
 路地に雷鳴が轟き、封魔神刀に宿る魔人の雷を開放すれば、後に残るのは元の妖怪たちの姿である。

「これでいっちょ上がりか。おい、大丈夫か?」
 カチンと刀を納め、ガイは妖怪ひとりひとりに声をかけながら身体を揺すって意識があるのを確認する。団地に陣取る龍神片との戦いも佳境を迎えようとしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シン・ドレッドノート
アドリブ連携OK

妖怪団地…私が幼少の頃に訪れたUDCアースの景色を思い出しますね。
記憶を頼りに、団地の構造を活かした作戦を練るとしましょう。

物陰に隠れながら団地内に侵入、貴紅(箒)に乗って壁沿いに空中浮遊して最上階の隅の部屋まで登ります。
「式、入口の警戒を」
『了解、油断しないでね!』
S.H.I.K.Iに部屋の入口側の警戒を頼みつつ、精霊石の銃を持って窓辺に隠れ、狙撃の体勢をとります。
団地の中を通る敵を見つけたら、敵に気づかれる前に【緋色の弾丸】で狙撃。
「一撃で仕留めます!」
破魔の力を込めた弾丸で、頭を正確に撃ちぬきましょう。

敵に気づかれた後は、部屋を移動しながら味方の援護射撃をしていきますね。


矢車・菊花
なるほど、団地自体が迷路になっているのね。
構造さえ把握すれば御しやすいのだろうけれど、今からじゃ無理ね。

戦闘に向きそうな……ある程度開けた場所、それにそこを見下ろせる場所の確保、あとはそこへ誘導するための餌ね……たとえば戦闘痕かしら?
準備が整えば見下ろせる場所で待機、敵を確認したら上からの奇襲攻撃。数が多ければ無理せず放置ね。

慌てずに、のんびりやりましょうか



「妖怪団地…私が幼少の頃に訪れたUDCアースの景色を思い出しますね」
 初めて訪れたはずなのに、何処か懐かしくも見覚えがある景色。妖怪団地の中心である円形状に空までぽっかりと縦穴上に空いた空間で、何やら飛んでいる物があった。それは真紅のラインと黄金の縁取りが高貴な印象を与える長射程の銃身が内蔵した純白の箒で、シン・ドレッドノート(真紅の奇術師・f05130)はこれで宙を音もなく飛び上がりながらも周囲を見渡して物心がつき始めた頃の記憶を懐かしんでいた。

「記憶を頼りに、団地の構造を活かした作戦を練るとしましょう」
 空飛ぶ箒の高度を更に上げて最上階付近にまで到達すれば、シンは整然と横並びに連なるベランダを物色して回る。そして、ある場所に目星をつけるとそこへ降り立ち、静かに扉を引けばカラカラと音を鳴らしがら抵抗もなく開いた。

「この部屋の住民が不用心で助かりましたね。式、入口の警戒を」
『了解、油断しないでね!』
 真紅に染められたマントの中からピョンと跳び出た小さい小人のようなものが、とことこと玄関まで走ってていく。本来であれば、愛機の貴紅<ノーブル・スカーレット(PCE)>での高速演算・情報処理能力を持つ小人(美少女)型キャバリア制御ユニットの通称『式』ではあるが、こうして機体から離れても活動できることから今では盗賊稼業の良き助手である。彼女が入り口の扉の鍵が掛けられているか、扉の先に龍神片が来ていないかと聞き耳を立てている様が何処か微笑ましく思いながらも、頼りにしてますよと式に語りかけながら準備に取り掛かった。

「なるほど、団地自体が迷路になっているのね。構造さえ把握すれば御しやすいのだろうけれど、今からじゃ無理ね」
 一方その頃、地上部分では矢車・菊花(徒花の如く・f33169)が龍籠城砦の入り組んだ構造に戸惑いながらも進み続けている。進みやすい道かと思えば行き止まりの袋小路に出たり、また目印らしい目印も注意深く探し出さねければ遭難してしまう錯覚をも覚えてしまうが、そうならない為にも彼女はある手段を講じる。

「ここも初めての場所ね……」
 そう呟くと、菊花は腰に下げている刀の鯉口を親指で押し上げながら構えてそのまま一気に抜き振る。百匹の鬼を斬り屠った妖刀『百鬼哭』。振るうたびに鬼の怨嗟の声が聞こえる呪われた刀であるが、刀身から溢れ出る妖気が周囲の壁や床を穢れさせていく。今まで辿ってきた道にも同様の処理を施し、また百鬼の怨嗟が宿るともなれば一匹一匹の怨念を個別に出すことは造作も無いこと。故にどの声が聞こえるかで彼女は今どこに居るかを判別でき、またこれは『餌』でもあった。

「ようやく中心部に出れたわね。そして…掛かったようでもあるわ」
 開けた妖怪団地中心部の広場に出ると、今まで来た道を菊花が振り返る。恨めしそうに残響する鬼の哭声とは別の妖気を感じ取り、彼女は事がうまく運んだことでしてやったり顔となる。今まで存在を隠すこともなくばら撒いてきた鬼の妖気につられて、龍神片がこちらに向かっていることだろう。

「そして、もうひとり……いえ、ふたりの気配かしら?」
 頭を上に向けると、上層にある部屋の窓が空いているのを菊花は確認する。その先に居たのは、純白の本体と金の縁取りの入った銃身の長い銃を突き出しながらこちらに向けて構えているシンの姿である。彼は宇宙世界の技術により様々な機能を搭載したモノクルを狙撃スコープさながらに倍率を上げて菊花と視線を交わすと、パチリとウィンクをしてみせる。

「どうやら私が撒いてきた妖気に釣られたのは、骸魂だけでなかったようね。それなら、こちらも慌てずのんびり出来るわ。頼りにしてるわよ?」
 向けられた気配の正体が仲間であるのを確認するや、丁度先程来た道の出入り口の上から迫り出した構造物へと飛び上がり、獲物がやってくるのを息を潜めながら待つ。
 程なくして龍神片の一団がやってくるが、彼らは周囲を見渡すばかりだ。それもその筈で、彼らが辿ってきたのは百鬼哭の妖気であり、鞘に収められていてはその妖気も遮断されている。

「ご団体様一行はこれで全てのようですね。では、一撃で仕留めます!」
 ──タァン!
 乾いた銃声が中心部に響かれると、頭部を撃ち抜かれた一体の龍神片がどさりと倒れ込む。だが、ライフルの精霊銃で頭部を撃たれたはずなのに脳漿は飛び散っていない。シンが装填していた銃弾は破魔の力を込めた弾丸であり、それは妖怪の身体を通過して頭部にあった邪神の一欠片であり寄生する骸魂のみを撃ち抜いたのだ。
 突発的な狙撃に一同はシンが居る部屋に意識が向けられると、今度は菊花が動く。

「あなたたちが追ってきた妖気はこちらよ?」
 再び抜かれた妖刀から漏れ出す鬼の怨嗟が周囲に満ち溢れる。菊花は龍神片がシンへ注意を取られている隙に飛び降り、一匹を百鬼哭で袈裟懸けにした。
 致命傷でない一撃ではあったが、龍神片の身体に纏わりつく鬼の妖気が斬り傷から身体の中へと潜り込み、鬼の残滓は満たされない乾きを癒そうと龍神片の妖気を喰らいつくさんとばかりに貪る。身体の中から食い荒らされる痛みに龍神片が転げ回るが、菊花はそれを他所に他の龍神片へと妖刀を振るう。鬼が喰らうのは悪しき妖気のみ。つまり、それを喰らい尽くせば飢えを満たして消え去り、後に残るのは骸魂が失われた妖怪のみだ。尤も鬼の本体である魂は妖刀に封じられているので、飢えを満たすのは分霊のみではあるのだが。

「いやはや。いれぐい状態とは、このことでしょうか」
 菊花が斬り込んでくれたおかげで、今度は彼女の方に意識が向けられているのをシンはモノクル越しに観測した。だが、こちらも忘れてはなりませんよと、再び破魔の銃弾が骸魂を目掛けて撃ち出される。上からは破魔の銃弾、下からは妖気の斬撃。これらに対して龍神片も善戦しようとはしたが、シンの元に行こうとすれば菊花が、菊花の剣戟を封じようとすればシンが互いに援護しあうのには、いささか分が悪すぎた。
 最後に残った龍神片の頭部を隠す布ごと菊花が斬り伏せて、この龍籠城砦に蔓延る骸魂が全て消滅した。元の姿に戻った妖怪の手当を行うふたりであったが、気を失っている妖怪は結果的に団地闘法に負けてしまった訳なのだが、どこか全力を出しきったかのような達成感に満ち溢れた穏やかな顔をしていたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月06日


挿絵イラスト