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猟書家の侵略~決戦、『大天使ブラキエル』

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #大天使ブラキエル #オウガ・フォーミュラ

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 不毛の大地に、光が差す。
 明るく啓かれたその光景を見て、男は己の目的が阻止された事を悟る。

「──友よ」

 携えた剣に語り掛ける男。
 背に光り輝く光輪と豪奢な翼に、不思議な色合いを持つ岩石で出来た腕を持つその男の名は、『大天使ブラキエル』。書架の王と謳われた男の友にして、世界を渡る侵略者……猟書家達の首魁……オウガ・フォーミュラの肩書を持つ男である。
 男の目的は、只一つ。閉ざされた『天上界への到達』である。
 だがその目的は、潰えた。過去より今と未来を護る者達、猟兵の活躍により、阻止されたのだ。

「我が友よ、君の願いは叶わなかった。君は『書架』へと帰るがよい」

 呟き、剣を手放せば。填め込まれた蒼の宝珠が瞬いて、剣が虚空へ消えていく。
 去り行く剣(友)。その姿を見届けながら……。

「……我は、天上界の扉を開く僅かな可能性を実行しよう」

 呟くブラキエルのその瞳には、諦観の光は無かった。
 ……確かに、躯の月は沈黙した。あの大地に降り立った猟書家達は尽く返り討ちとされ、その存在を根底から滅ぼされた者もいる。
 成程。確かに、猟兵達の活躍は見事な物だ。だが、しかしだ。

 ──外から開ける手段を封じられたのならば、自ら開けさせれば良いだけの事よ。

 僅かにでも、あの懐かしくも忌々しい天上界へと到れる可能性があるのなら。諦める事など、出来るはずもない。
 ……天上に座す神々は、今も下界を見守っているだろうか?
 もし見守っているのならば、今から己が為す行いを見れば……助けの手を伸ばす為、扉を開くだろうか?

 ──いいや、それはないな。

 思いつつ、頭を振る。
 あの地の者達は、世界を滅びに導かんとした帝竜を、ヴァルギリオスさえ見逃して。あまつさえ封印すらされてしまった様な愚か者である。
 そんな者達が……。

「……今更地上の危機に扉を開く事も、あるまいが……」

 ……これから行うは、外道も外道。『無差別大量虐殺』だ。
 そしてそれを成したとて、扉の内側に篭る者達は愚かであり、本来の目的が達成される可能性など殆ど無かろう。
 それでも、大天使は往く。往かねば、ならない。
 その地に辿り着くことが友の宿願であり、その地に座す愚者を誅する事こそが己の存在理由なのだから。

 目指すは眼前に輝く蒼の星。
 その地に栄える生命の営みを滅ぼすべく。自嘲を残し、翼を広げ、羽撃かせ。大天使は、宙を舞った。



「お集まり頂き、ありがとうございます」

 グリモアベースに集まる猟兵達を迎え入れる、長く輝く銀の髪の女性。
 常は穏やかな微笑みの浮かぶヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)。だが今、彼女の表情は硬く引き締められたもの。
 その理由は……。

「オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』。その出現を、予知しました」

 ヴィクトリアが見た予知を聞けば、判るだろう。
 『大天使ブラキエル』。アックス&ウィザーズを狙い暗躍を繰り返した猟書家達の頂点に立つ、オウガ・フォーミュラと呼ばれる存在である。目的は、『閉ざされた天上界への到達』である。
 その目的を果たすために彼が放った猟書家達の暗躍は、猟兵達の活躍により阻止された。結果、躯の月はその活動を停止して、この世界に再びオブリビオンが躍動するような可能性が潰えたのは、つい最近の話である。
 ……そんな状況を受け業を煮やしたか。遂に大天使が自ら動きを見せたのだと言うのだ。
 さて、その動いた大天使が何をしようかというのかと。猟兵がヴィクトリアに尋ねれば。

「……世界の至る所で、『無差別大量虐殺』を引き起こそうとしているようです」

 苦々しげに返されたその答えに、猟兵達の表情も引き締まる。
 配下の失敗を受け、大天使のその目論見は潰えたかに見えた。
 だが、諦めきれない大天使は一縷の望みに賭けて事を為そうとしているらしい。
 それが、『無差別大量虐殺』。封印された天上界に見せつける様に事を為すことで、神々が自ら人々を救う為に門を開く事を狙っているのだという。
 ……当然、そんな暴挙を許してはならない。猟兵達の高まる戦意に頷きを返し、ヴィクトリアが言葉を紡ぐ。

「今回、大天使が顕れるのはアックス&ウィザーズ世界の辺境地域。開発の進む、とある開拓村です」

 その村は、かつて猟兵達により救われた村。
 群れ為す小鬼を。勇者の伝説を。不死者の嵐を。そして蘇る災厄をも乗り越えた、あの村である。
 ……あの一連の事件以来、村は平穏な日々が続いていたらしい。順調に開拓も進み、また付近にあったエルフが住まう森とも通商関係が結ばれて。町と言うにはまだ小さいが……それなりの規模の村へと、立派に成長しているらしい。

「そんな村に、大天使が降り立とうとしているのです」

 折しも、村では進む開拓とエルフの森との通称締結を祝う宴が行われている最中である。
 そんな陽性の活気を塗り潰すかのように、大天使は近くの丘へと降り立ち……喚び出したオブリビオンを嗾けようとしているらしい。

「喚び出されるオブリビオンに関しては、予知が出来ています」

 敵となるのは、ゴブリン。
 問題は、その数。圧倒的な大天使の力によって喚び出されるその数は、数えるのが馬鹿馬鹿しくなる程なのだという。
 更に問題となるのが……。

「通常のゴブリンとは違い、どの個体も『岩石の様な腕』を身に着けているようで……」

 その岩腕は不思議な力を持ち、放たれるユーベルコードの威力を大幅に強化するらしい。
 ……圧倒的な物量に、強化された火力。何とも厄介な敵ではあるが……。

「村の側も、座して滅びを待つほど大人しくはありません」

 幸いな事に、村にも自警団を始めとした防衛戦力は存在する。
 戦いの決定打とするには力不足かもしれないが……援護を受ければ、戦いを優位に運ぶ一助とはなるはずだ。
 ……彼らの援護を受け、押し寄せる小鬼の群れを殲滅すれば。大天使への道は、自ずと拓く。
 その時こそが、オウガ・フォーミュラとの決着を着ける時となるだろう。

「その道を拓く際に、これらの品々がきっと皆さんの役に立つはずです。是非、お持ち下さい」

 告げながら、ヴィクトリアが取り出し並べたのは、かつて猟兵達が猟書家との戦いの果てに得た品々。
 すなわち、光り輝く鍵、世界樹の分樹足る聖なる木の葉に、輝石の欠片だ。
 ……グリモア猟兵として、未来を視る彼女の言だ。ここは従った方が良いだろう。

「大天使ブラキエル。その野望の為に人々の犠牲を許す訳にはいきません」

 皆様の御力を、お貸し下さい。
 深く、深く。丁寧な礼をして。ヴィクトリアは現地に猟兵達を送り出すのだった。


月城祐一
 黄金週間? なにそれ食えんの???(シフト制並感)
 どうも、月城祐一です。このタイミングで、決戦かぁ……!

 今回は猟書家最終決戦。
 アックス&ウィザーズの天上界を目指す、『大天使ブラキエル』との決戦となります。

 参考までに、物語の舞台となる『開拓村』に関わる過去の事件は ↓ こちら ↓ になります。
(【小鬼の群れ】 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=5394 )
(【勇者の伝説】 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=7142 )
(【嵐の不死者】 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=8703 )
(【蘇る災厄】  https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=8705 )
 読まずにご参加頂いても問題はありませんが、宜しければ是非ご一読下さい。

 さて、捕捉となります。
 第一章は集団戦。敵は『ゴブリン』です。
 とは言え、敵は通常のゴブリンではありません、OP中に触れられた通りの特徴を持ち、数の方も膨大。津波の様な勢いで、村へと押し寄せてくるでしょう。
 そんな敵を迎え撃ち、殲滅する事が最初の目的となります。

 また、第一章では村関連シナリオで登場した自警団以外にも、
 ・シャルムーンのクレリック『アリシア』
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=29565 )
 ・エルフの森の弓使い達
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=30538 )
 ・熟練の冒険者達
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=29872 )
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=31416 )
 などの面々が登場します。
 指示を下せば余程無茶な物で無い限り従ってくれますので、上手く援護を受けると良いでしょう。

 第二章、第三章については、詳細は不明です。
 章の進行時に情報の開示を行いますので、ご了承下さい。

 大天使は地に降り立ち、その力を人々に振るう。
 その暴虐を阻止し、人々の今と未来を守れるか?
 皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
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第1章 集団戦 『ゴブリン』

POW   :    ゴブリンアタック
【粗雑な武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    粗雑な武器
【ダッシュ】による素早い一撃を放つ。また、【盾を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    足払い
【低い位置】から【不意打ちの蹴り】を放ち、【体勢を崩すこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 その日、村ではエルフの森との通商締結を祝す宴が執り行われていた。
 村に満ちる陽性の活気。最近村に赴任した司祭も、冒険の旅の最中だという冒険者達も、エルフの森から来た使節団の面々も。皆が皆、この空気に浮かれていた。
 だが、しかし。

 ──カッ!!

 近くの丘へ降り注いだ一筋の光。その閃光の前に、空気は一変する。
 一体何事か? 雷鳴か? いや、空模様は悪くないぞ。
 ざわつく村人達。不安げな彼らの姿を見て、村の最古参の一人であり、自警団の団長を務める男の胸に予感が過る。

(この感じは、どこかで──!)

 それは、以前感じた感覚。村が存亡の瀬戸際に立たされたその時に、感じた感覚だ。
 その事を、刹那で思い出し──。

「──敵襲! 自警団、持ち場へ着け!!」

 叫ぶ団長。瞬間、動揺する村人達の中から自警団に所属する男達が駆け出していく。
 訓練通りに持ち場へと動くその動きに、団長は満足げに頷いて。

「皆、避難所へ退避を! 客人方も……」
「いいや、我らも助力致しましょう」

 直ぐに表情を引き締めて、村人達や客人に退避を促すが。その声を遮ったのはその客人、エルフの森からやってきた使節団の代表であった。

「新たに出来た朋友の難事、見過ごしては友は名乗れん。それに……」

 ……この気配、そちらも覚えがあるのだろう?
 そう告げているかのような代表の目に、団長が頷く。
 あの光が降り注いだその瞬間から感じる、肌が粟立つ様な感覚。突き刺さるような悪意は、一度体験すれば忘れる事など有り得ない。

「その様子……お二人もですか?」
「あら、そっちのクレリックさんも?」

 そしてそんな感覚を覚えているのは、団長と代表だけでは無いらしい。
 村へ赴任したばかりの司祭、シャルムーン神を奉じるアリシアと言う黒髪のクレリックも、旅の最中に立ち寄った冒険者徒党の者達も。皆が皆、同じ様な感覚を感じているらしい。
 ……彼らに共通する事は、みなオブリビオンの襲撃を受け生き延びたという事である。
 そんな彼らが、共通の感覚を感じているという。つまり、あの光は……。

 ──丘の方面より、ゴブリンの軍勢! 数、多数!!

 オブリビオンの襲撃に他ならぬという事だ。
 見張り台から響いた声にその予測を確信に変えて、頷き合う一同。
 彼らには、『オブリビオン』という存在の特性と目的は判らない。けれど、オブリビオンを放置すれば世界を混沌に導くだろうという事は、経験から知っている。
 故に、彼らは武器を執る。この地に生きる人々の、現在と未来を護る為に。
 かつて彼ら自身を守ってくれた力ある者達……『猟兵』達の様に。

 ──そんな彼らの勇気は、守らねばならない。

 歪む空間。力持つ者が多数顕れるその現象に、武器を執る一同が顔を見合わせ……次の瞬間、歓喜に顔を綻ばせる。

「来てくれたか──猟兵(イェーガー)!」

 そうだ。どうにもならぬ苦難に再び襲われた時は。彼らの名前を、思い出そう。
 その戦士達の名は、猟兵(イェーガー)。迫り来る過去より、現在と未来を護る勇者達。

 ……顕れ立つ心強い援軍。その姿に、村の側の戦意は高まる。
 だが、敵の軍勢は圧倒的多数。果たして猟兵と協力者達は、村を護り大天使の目論見を挫くことが出来るだろうか……?

 ====================

●第一章、捕捉

 第一章、集団戦。敵は『ゴブリン』の大軍勢です。
 敵に関する基本的な情報はマスコメで触れている通りとなります。

 戦場は、村周辺の平野。遮る物も特に無く、戦闘に支障は無いでしょう。
 とは言え、その条件は敵にも利する物。数を頼りに押し寄せてくる敵軍勢をどう捌くか、皆さんの立ち回りが試されます。

 またマスコメでも触れています通り、この章ではNPC達の助力が受けられます。
 それぞれの特徴は、以下の通りです。

 アリシア:ヒーラー。攻撃能力はありませんが、治癒行動が可能。
 マテウス:アタッカー。『グラウンドクラッシャー』相当の行動が可能。
 リスティ:アタッカー。『千里眼射ち』相当の行動が可能。
 ヒシャ:タンク。『無敵城塞』相当の行動が可能。
 フーガ:アタッカー。『ウィザードミサイル』相当の行動が可能。
 エルフ弓兵:弓矢による援護射撃が受けられます。

 その他、『自警団』からも助力が受けられます。
 これらの援護を上手く使えば、戦況を優位に運べるはずです。
(上手く援護が受けられれば、プレイングボーナスが与えられます)

 捕捉は以上です。
 それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちしております!

 ====================
ヴィゼア・パズル
依頼を聞きつけ馳せ参じました。助太刀させていただきます。
【空中戦・空中浮遊】を常時展開
仲間との連携重視
「助力をよろしくお願いします。此方は纏めてダメージを与えますので…どうかトドメを。」
【属性攻撃・範囲攻撃・全力魔法】の技能発揮
「地を駆ける種であれば…その地面が泥で覆われれば…どうでしょうね?」
足元、味方前方、敵の足元広範囲を泥の大地へ。足を取られた所へ風の刃を嵐に変え、五月雨切りに迎え撃つ。
「地面と大気中、同時にやられる気分は如何ですか?では、もう少し行かせて頂きましょう」一帯の体力を削れるまでは続ける。
倒してしまっても構わないのでしょう?





「依頼を聞きつけ、馳せ参じました。助太刀させていただきます」

 まず真っ先に村へと降り立ったのは、ヴィゼア・パズル(風詠う猟犬・f00024)であった。

「援護をお願いします。どうか、トドメを」

 そうして一つ二つ、村の側の者達と言葉を交わすと。舞う風が如くヴィゼアの身体が宙を駆け、村の外縁部の一面へと進み出て……。

「……成程。説明の通りだ」

 己がその目で、迫り来る敵の戦力を確認する。
 事前にグリモア猟兵から説明があった通り、敵の数は圧倒的だ。四方八方から押し寄せる緑の肌の小鬼達の行軍は、まさに津波の如しと言った所か。
 その上、どの個体も例外無く、その腕を不可思議な光を放つ岩の様な物質に変じているようだ。
 成程、確かにコレは厄介だ。多少腕に覚えがある者がいるとは言え、あくまでもこの世界に生きる普通の人々の範疇である村の側の戦力では、この小鬼共の攻勢を凌ぐ事は難しいだろう。
 もし仮に、多少の抵抗は出来たとしても。遠からずその悪意の前に蹂躙されて、開拓村は惨たらしい結末を迎える事となった事だろう。
 ……だがその結末は、『猟兵の介入が無ければ』、という話である。

「地を駆ける種であれば……その地面が泥で覆われれば、どうでしょうね?」

 生命の埒外と呼ばれ、世の条理を捻じ伏せる程の力を持つ『猟兵』であれば。この程度の苦境を打開する為の術など、幾らでもある。
 己の内に宿る力を高めつつ、ヒトの耳には聞き取れぬ言葉を紡ぐヴィゼア。
 ヴィゼアは、精霊術の使い手でもある。そんな彼の声は、周囲に漂う風の精霊と地の精霊に確かに届く。
 大地が、風が。蠢き、慄き……。

「──おいで、狩りの始まりだ」

 戦場の地を、泥濘へと変える。
 ゴブリン達の戦力、そしてその腕の岩石。成程確かに、それは厄介だ。そこはヴィゼアも認める所である。
 だが、幾ら厄介な相手であろうと……地を駆ける種族であるならば、その脚を置く足場を突けば、簡単に無力化出来るのだ。
 敵の立つ戦場の地を泥濘に変える事で機動力を殺し、その力を十全に発揮出来ない環境へと変える事。
 ヴィゼアの紡いだ言葉。【星脈精霊術(ポゼス・アトラス)】の狙いは、そこにあったのだ。

 ──今ぞ! 放てェッ!

 突然の足場の変化に、ヴィゼアの眼下で蠢く緑の肌持つ小鬼達が騒ぎ立てる。
 その聞くに堪えない雑音を掻き消すかのように、村に使節として訪れていたエルフ達で構成された弓兵隊が矢を放てば……ゴブリン達は一方的に射抜かれ地に斃れ、躯を晒すばかりである。
 岩と化した腕を振り回す小鬼もいるようだが、そんな行動は悪足掻きにもならない。的確に急所を撃ち抜くエルフ達の弓の冴えは、見事の一言だ。
 約定の通りに援護射撃を敢行してくれたエルフ達。その動きに、口の端でニヤリと満足げな笑みの形を作りつつ。

「さて、こちらももう少し行かせて頂きましょう」

 力を注ぎ、地の泥濘を広めるヴィゼア。余力を使って風の刃を旋風に乗せて放てば、斃れる小鬼の数は加速度的に増えていく。
 大地と大気。この世界を形作る要素に、村の民という人の和。三つの要素を味方につけて、ヴィゼアが一方的に小鬼を討ち倒す。
 この方面は、彼に任せても問題は無いだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

クラリス・シドルヴァニス
いよいよオウガ・フォーミュラとの決戦ね。
まさか生きている間に天使に会えるとは思ってなかったわ。
だけど地上に降りて人々を虐殺する天使なら…死神と変わりないわね。

まずはゴブリンを駆逐しましょう。
協力者の皆さんには後方からの援護を御願いしたいわ。
自警団員は矢の補充や武具の修理、応急手当で冒険者を手助けして。
私は召喚したユニコーンに乗り、【ユニコーンチャージ】による
《騎乗突撃》を敢行。援護射撃が届いたところへ《切り込み》、
速度を落とすことなく《悪路走破》。
《動物使い》《動物と話す》で愛馬と心を通わせ、
ダウンした敵には蹄で《踏みつけ》て追撃を入れるのも忘れない。
敵軍を後退させて前線を押し上げていくわよ。





 迫り来る、緑の肌のゴブリンの軍勢。
 片腕のみを岩石と変えた小鬼達の姿に、クラリス・シドルヴァニス(人間のパラディン・f27359)の身体に震えが走る。
 その震えは、恐怖から来る物では断じて無い。戦を前に昂ぶる神経がさせる、武者震いだ。

(……いよいよ、オウガ・フォーミュラとの決戦ね)

 グリモアの加護を受けた猟兵でもあるクラリスは知っている。
 あのゴブリン達は、この世界を狙い暗躍した猟書家達の首領、オウガ・フォーミュラの眷属である事を。
 そしてそのオウガ・フォーミュラ……大天使と呼ばれる存在の力の、強大さも。
 ……まさか、生きている間に天使に会えるとは思っていなかったが、と。胸の内でだけ、小さく苦笑を零しつつ。

「だけど地上に降りて人々を虐殺する天使なら……死神と変わりないわね」

 次に呟くその言葉で、意識を引き締めれば。瞬間、体の震えもピタリと止まる。
 クラリスの生まれは、このアックス&ウィザーズだ。小さいながらも伝統のある貴族の生まれである。
 そんな彼女からすれば、生まれ故郷であるこの世界で生きる無辜の人々を鏖殺しようと言う大天使の目論見など、赦せる訳が無い。
 試練の果てに目覚めた『聖騎士』の矜持を示すかのように。クラリスの戦意は静かに、だが確かに熱く、燃え滾っていた。

「──いでよ、我が眷属よ」

 その熱く滾る戦意を具現化するかのように、首元を飾るペンダントに口づけを落とす。瞬間、溢れ出た力が光と変わり、一頭の一角獣の姿を形作る。
 顕れた美しき愛馬の頬を一つ撫で、その背にひらりと跨るクラリス。

「自警団の皆さんには、後方からの援護をお願いするわ。いざ──!」

 そうしてそのまま自警団を率いる団長に声を駆けつつ、クラリスが愛馬の腹を軽く蹴れば。大きく一つ嘶いた愛馬は主のその意思を淀みなく受け取り、小鬼の軍勢に向けてその角を突き立てんとばかりに駆け始める。
 勇猛果敢に敵の戦列へと向けて騎馬突撃を敢行する聖騎士。まるで物語に出てくるかのような戦乙女の様なその後姿に、どこか懐かしい姿を重ね見て……団長の胸に宿る戦意も、炎と変われば。

「自警団、騎士殿を援護せよ! 弓隊、放てェッ!!」

 感化されるかのように団員達の戦意も増々燃え滾り、放たれる矢玉は烈火の勢いとなるだろう。
 村の側から猛烈な勢いで放たれる矢嵐を前に、ゴブリン達は足を止め、身を守ろうとするかのようにその岩石の腕を翳して盾代わりとする。
 不思議な力を放つその岩石の前に、弾かれる矢。非力な攻撃に、ゴブリン達が嘲るかのような下卑た嗤い声を上げるが……。

「退きなさい!」

 その邪な嗤い声を掻き消すかのように、クラリスの裂帛の気勢が轟いて。
 そうして次の瞬間、騎馬突撃の直撃を受けて小鬼の身体が弾かれた様に宙を舞う。
 ……クラリスとその愛馬の騎馬突撃は、只の騎馬突撃では無い。
 息を重ねて心を通わせたその一撃は、ユーベルコードの域に達した業であるのだ。
 そんな、人馬一体と化した突撃を……自警団の援護で脚を止めた小鬼が避けられる筈も無いし、ユーベルコードの域に達した一撃を耐えられるはずもない。
 反撃の暇も与えぬまま、ただ一方的に。突き飛ばし、跳ね飛ばし、踏み砕き。無人の野を往くが如く、ゴブリンの軍列をクラリスが蹂躙していく。
 凄まじい勢いの単騎駆に、ゴブリン達にも動揺が走る。

「この調子で、敵を後退させるわよ……!」

 その動揺を肌で感じつつ、愛馬に語り掛けるかのようにクラリスが呟く。
 応えるかのように、愛馬はまた一つ大きく嘶いて……主の下した命を、遂行するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御剣・刀也
なるほど。平野は数で勝る方に地の利がある
が、それがどうした。負け戦越そ面白い。勝ち戦で当然の勝ちを拾うより、負けたと思う状態からひっくり返すのが面白いのよ
さぁ、単騎駆けと行こうか
この晴れ舞台、楽しまないで戦人だなんて言えるかよ!

ゴブリンアタックは、見切り、第六感、残像で避けながら、負傷を勇気で恐れず、ダッシュで駆け抜けながら、カウンター、捨て身の一撃で斬り捨てながら、戦場を楽しそうに縦横無尽に駆ける
「さぁさぁ、俺の相手はどいつかな?戦の晴れ舞台、名のある大将を倒して名を上げようって奴はいないのか?まぁいい。俺はこの負け戦を存分に楽しませてもらうぜ」





 戦場に響き渡る駿馬の嘶き。勇猛果敢な聖騎士の騎馬突撃により、ゴブリン達が足並みを乱す。
 ……その隙を、貫くように。

「オオオオオッ!!」

 響き渡る咆哮。同時に閃いた剣刃が、小鬼の一体を縦一文字に両断する。
 先行する聖騎士を追うように、こちらも単騎駆けを仕掛けた御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)の剛剣が炸裂したのだ。
 爆ぜ散る返り血を全身に浴びながら、刀也は嗤っていた。
 なるほど。確かに平野なら、数で勝る方に利があるだろう。
 事実、押し寄せる小鬼の軍勢はまさに圧倒的である。
 確かにこれだけの数があるのなら、小手先の戦術になど頼る必要は無い。
 只々平押し、力攻めに徹すれば、勝利を掴む事は難しく無い。小鬼どもの習性を考えれば、大天使の『無差別大量虐殺』という目論見も達成できる事は確実だ。

(──が、それがどうした)

 そんな状況に置かれた村と、そこに生きる人々を救う。
 そのシチュエーションが、刀也の心に火を着けた。
 刀也は、生粋の武人である。強き者との戦いを臨む修羅であり、卑怯な行いを嫌う戦人でもある。
 そんな彼にとって、勝って当然の勝ち戦など面白いモノではない。
 負け戦こそ、負けたと思う状況からひっくり返す戦こそが、何より面白いモノである。
 ……開拓村が置かれた状況は、まさにお誂え向き。刀也の為に設えられたかのような状況である。
 で、あるならば。

「この晴れ舞台、楽しまないで戦人だなんて言えるかよ──!!」

 滾らない訳が、無いではないか。
 流れる血潮は熱く昂ぶり、胸に宿る闘志を滾らす燃料と変わる。
 そうして滾る闘志の命ずる儘に。刀也が再び地を駆けて、小鬼に向けて刃を振り抜く。

 ──ギッ!!!

 断末魔の叫びを掻き消す程に早く、両断されるゴブリンの身体。
 だが、小鬼もただやられるばかりではない。数の優位を活かし、一体が屠られるその間に二体、三体が刀也に向けて飛び掛かる。
 振り上げられ突き入れられるのは、剣に槍に斧に鎚と、多種多様な武器の数々。
 そのどれもが手入れもされていない粗悪な品だが……小鬼達に与えられた岩腕の怪しい輝きの影響か、その威力は天下の業物に比する物と化しているのを、刀也は直感で感じていた。
 普通なら、距離を置いて避けるのが賢い選択と言えるだろう。
 ……だが、刀也はそれを良しとしない。

「──ハッ!」

 刀也が選んだのは、更なる前進。
 振り上げられた剣が振り下ろされるよりも早く刃を振るい。
 突き入れられた槍は半歩身体を逸して穂先を見切り。
 背後から迫る斧や鎚は戦場で磨き上げられた第六感で躱しきる。
 ……無論、無傷ではない。圧倒的多数の敵に群がられ、一つ、二つと刀也の身体には確かに傷が刻まれていく。
 だが、そんな傷など恐るるに足らず。むしろ戦場を楽しむ一要素と変わるばかりである。

「──さぁさぁ、次の相手はどいつかな? 戦の晴れ舞台、名のある大将を倒して名を上げようって奴はいないのか?」

 ……気づけば、刀也の周囲には小鬼の躯による屍山血河が出来上がっていた。
 その凄惨な風景を前にして、流石の小鬼達も怖じ気が付いたか。遠巻きに刀也を囲み、武器を向けるばかりである。
 そんな軟弱な小鬼達を挑発するかのように、刀也が一つ鼻を鳴らして。

「フン、来ねぇのか? それなら……こっちから往くぜ!」

 再び自ら、小鬼の群れへと飛び込んで。手当り次第に、斬り捨てていく。
 ……本来は、開拓村の側の負け戦となるはずだったこの戦い。
 その状況を存分に楽しみつつ。刀也はその力を思うままに振るっていく。

 敵の戦列へ、積極的に仕掛けた二人の猟兵。
 その働きは、敵の進軍をその場に釘付けとする程の鮮烈な物となるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニクロム・チタノ
相手はゴブリンと言えど今回は厄介だねでも知性はあんまり高くなさそう、ならエルフのみんな回り込んでください
降り注げ反抗の星屑
相手が星屑を防いでる隙に、エルフのみんな後ろから矢を降らしてください
鈍足効果のせいで思ったように動けないでしょ?
マテウスさん武器を思いきり叩き付けて
フーガさん、リスティさん体制が崩れた相手を狙い撃ちして
さあ自警団のみんな反抗開始だよ
敵は相次ぐ攻撃と鈍足効果で混乱している
ボクと一緒に残敵を掃討しましょう!
これより反抗を開始する
どうか反抗の竜チタノの加護と導きを





 ゴブリン。アックス&ウィザーズの世界においてよく知られるモンスターである。
 その性質は残忍かつ卑劣。だが小柄で力も強く無く、知性もそれ程高くは無い。
 腕を上げた冒険者であれば余裕で蹴散らせる。その程度の存在である。
 当然、生命の埒外と呼ばれる猟兵であれば。並のゴブリンなど、鎧袖一触と言った具合であるだろう。

「……ゴブリンはゴブリンでも、今回は厄介だね」

 だが、ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)が呟く通り。今回は少々事情が違う。
 まずは、敵の数。地を埋め尽くすかのようなその軍勢は……以前別の地で討ち倒した群れとは比にならぬ程の密度である。
 しかもその軍勢、一体の例外も無く片腕を岩石の腕と変えているらしく。不思議な光を放つあの腕から放たれる攻撃は、並の小鬼のソレを遥かに凌ぐ威力を繰り出す事だろう。
 そんな数と与えられた力に、酔ったように嗤う小鬼の姿を見れば。知性の方はそこらの小鬼と変わらぬ様なのが、救いと言えば救いだろうか?
 ……知恵の足りない相手ならば、いくら力が強かろうと。やり方次第では、この世界の人々でも何とかなるだろうか?

(その為にも──!)

 携えた妖刀の鞘を払い、剥き出しとなった刀身を天へと翳す。
 そうしてニクロムが意識を集中すれば。自身の内に宿る力と刃に宿る力が共鳴する。
 高まる力は光と変わり、刃を満たし。

「──降り注げ、反抗の星屑!」

 裂帛の気合と共に、無数の星屑と変わって放たれる。
 放たれたその星屑は、ニクロムに力を与えた『反抗の竜チタノ』の力そのものだ。
 その力を浴びれば、与えられた力に酔いしれていた暴虐なる小鬼は力を失い……岩腕の重みを支える事も出来なくなる。
 眼前に広がるその風景を見て、ニクロムが背に向け叫ぶ。

「さぁ、反抗開始だよ!」

 ──応ッ!!

 応えたのは、偶然村に訪れていたという冒険者達の徒党。
 彼らは皆、猟兵よりは格下の一般人だ。だが独力で天空城の地へと踏み入り、冒険を完遂した実力者である。
 そんな彼らであれば、ニクロムの力により力を大きく減じた小鬼程度などに遅れを取るはずもない!
 狂戦士が咆哮と共に振るう戦斧が。
 仲間を護る聖騎士の大盾が。
 森妖精の射手が放つ鋭き矢が。
 小さき術士の放つ炎の魔弾が。
 次々に戦場に閃き、唸りを上げれば。その度にゴブリン達が討たれ、戦場に屍を晒していく。
 ……猟兵達の介入が無ければ、きっと彼らはこの地で果てたはず。
 しかしその未来は、覆された。『反抗の竜』の加護により、大天使の暴虐の端緒は挫かれたのだ。

(『大天使ブラキエル』。大量虐殺を企む、暴虐なオウガ・フォーミュラ。そんな敵に抗う人々に……)

 だが、戦いはまだ続く。緑の小鬼は途切れる事無く後続が続いているし、何より大天使はその姿をこの場に見せていないのだ。

「反抗の竜チタノの、加護と導きを──!」

 諸悪の根源たる、凶悪なる大天使。このゴブリンの攻勢を凌ぎ押し返せば、刃を交える事もあるだろう。
 その時の為にと。ニクロムは再び己に力を授けた存在に祈りを捧げ……加護の星屑を撃ち放つのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アネット・レインフォール
▼静
成る程、ゴブリンか。
中には奴らを専門にスレイする者もいるのだろうな。
それは兎も角。

冒険者達は変わりないようで少し安心した。
敵は真正面から相手してもいいが…状況が状況だ。
遠近問わず連携や支援を頼らせて貰おう

▼動
先ずは式刀を手に付近の敵を斬り強化度合を確認

これが集団となると脅威度は計り知れないと判断し
間合いを取り【破塵降雨】で戦場に満ちた気を吸収開始

―思い出せ、あの頃の感覚を。

彼らと連携し念動力で刀剣を投射・旋回させ時間を稼ぎつつ
折を見て雷撃を前方へ放ち一掃を図る。
必要ならフォローや統率等の指示も検討

…しかし、だ。

手段の是非は兎も角、一度去った神々と呼ばれる存在が
再び姿を現すとも思えないが――





 加護の光が瞬く戦場。
 その光が煌めく度に、小鬼の身体から力が失われてその動きを鈍くしていく。

「シッ──!」

 そんな戦場に響く、鋭い呼気。同時に閃く剣閃が、粗末な武器ごとゴブリンの岩腕を両断する。
 与えられた無敵の力で放った必殺の一撃。その攻撃を腕ごとあっさり断たれた小鬼は呆然とした表情を浮かべるが……此方には関係のない事だ。
 返す刀と再び刃を閃かせれば、小鬼の首が斬り飛ばされて宙を舞う。

「……ふむ。これは中々、厄介だな」

 崩れ落ちる小鬼を一顧だにせず、掌に視線を落としてアネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)が呟く。
 岩腕を斬り飛ばしたその瞬間、掌に伝わった感覚はまるで鋼を斬った時の様な感触だった。つまり、それだけの硬度があるということなのだろう。
 猟兵であり卓越した武技を誇るアネットならば、斬鉄の類などお手の物だが……。

(冒険者達には、少々手に余るだろうか)

 内心で小鬼どもの脅威度を修正しつつ。チラと視線を向け、その先で戦う者達を眺め視る。
 視線の先に居るのは、かつての依頼で縁の生まれた冒険者達だ。
 猟兵の援護を受けた冒険者達は、その熟練の実力を遺憾なく発揮しているらしい。
 彼らはどうやらあれからも特に変わりなく日々を過ごせていたらしい。そこはまぁ、一安心である。
 とは言え、だ。彼らがその実力を発揮できているのは、猟兵の援護を受けられているからこそである。
 もし、その援護を失えば。彼らはたちまち劣勢に立たされ、数の暴力の前に戦場の露と消える事になるだろう。
 そうさせない為にも、まずは敵の数を討ち減らす事が重要だろう。
 ……幸い、この戦場の敵の動きは鈍っている。この状況ならば──。

「一発、どデカイのをぶちかます事も出来るだろう」

 呟き、後方へ向けて大きく跳躍して戦線から距離を取る。
 そうしてそのまま、引き抜いたままの刃を上段へ構えて……細く、長く、深く、息を吐き。

 ──思い出せ。あの頃の感覚を。

 戦場に満ちる闘気を取り込むかのように、息を吸う。
 思い返すのは、かつての記憶。数多の冒険を、戦いを駆け抜けた、あの日々の記憶だ。
 ……その記憶の中に、思い出すべきその感覚はある。
 稲妻を振るう大神を奉じる戦闘民族達。
 激しい戦いと、その果てに得た新たなる力。
 今必要なのは、その力だ。

「玖式──」

 身体の内に宿る闘気が、取り込んだ闘気と反応し、膨れ上がって溢れ出る。
 溢れ出た闘気はアネットの身体を、構えた刃を包み込み、凝縮されれば。バチリバチリと音を立て迸る、紫電へと変わる。
 そうして高まった、その力を……。

「──破塵降雨(ハジンコウ)」

 刃を振り下ろし、解き放つ!
 解き放たれた紫電は、一直線に敵の戦列へと伸び進み、纏めて多くの小鬼を絡め取り……その肉の体を蹂躙し、焼き尽くす。

「『ゴブリンは、皆殺しだ』……だったか?」

 どこかで聞いた、『ゴブリン殺しを専門とする者』の決め台詞を冗談っぽく口にしつつ。

(大天使ブラキエル。奴の手段の是非は兎も角として、だ)

 アネットが思うのは、今回の事件の首謀者である存在の事。
 奴の狙いは、『天上界への到達』。だがその地の扉は、今もまだ閉ざされたままである。
 その閉ざされた扉を向こうの側から開かさせる為に。奴は今回の『無差別大量虐殺』を目論んだとされている。
 ……だが、扉の向こうの者達。所謂『神』と呼ばれる者達は、かつての世界の危機にも無反応であった。
 その事を、実際に危機を救った猟兵達は良く知っている。
 故に、だ。

(一度去った『神々』と呼ばれる存在が、再び姿を現すとも思えないが──)

 どうしてもアネットには、大天使の目論見は無駄に終わる様にしか思えない。
 その推察は奇しくも、大天使自身が胸に抱いている思いと同じ物であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

琶咲・真琴
WIZ
現場に到着と同時に
冒険者さんやエルフさん
自警団の皆に声掛けし
協力を仰ぐ

今から防壁を築きます
皆さんは通り抜けられるので
ヒット&ウェイで防壁の側にいるゴブリンに対処してください

詠唱系の技能を全稼働でUC発動

何重にも味方はすり抜けられ
敵だけをカウンターでなぎ払う白炎の迷宮を
戦場に張り巡らせて防衛戦に余裕を持たせる


ボクは迷宮の奥地で空中から(空中系全技能使用)
第六感・索敵・偵察などで敵の軍勢の状況を確認しながら
自警団や冒険者さん達への援護射撃と
エルフさん達に有効な射撃方面を知らせてサポート

自分の下に敵が来そうになったら
お祖父ちゃんお祖母ちゃんが光線や功夫などで迎撃


絶対に、皆を守る


アドリブ
連携歓迎


霧鵺・アギト
ブラキエル…もう手段は問わないということか…。
とはいえ、村人達の暮らしを脅かす理由にはならないな。
共に村を守ろう。

しかしすごい数だな…。
多勢ということでこちらも広範囲を攻撃できる技で対抗したいところだ。
巻き添えが出るといけない、なるべく僕から離れている事だな。
出来るだけ多くの敵を引きつけるために弓兵達で陽動をしてもらえると助かる。
敵の攻撃は【瞬間思考力】である程度予測して【見切り】を試みる。
多少の負傷は構わない。
目一杯、自身の周囲に敵を誘導したら【指定UC】発動。

僕はあいにく片付けが苦手でね…。
これで少しは綺麗になっただろうか…?





 開拓村を巡る小鬼の軍勢との戦い。その戦況は、猟兵の側に大きく傾きつつあった。
 だが、どれだけ足を止め、押し返し、斬り崩しても。敵の攻勢が、止まらない。
 圧倒的な数。その一点を前面に押し立てた猛攻を受け続ければ、凌ぐ側も疲労が貯まる。
 少しずつ、少しずつだが……村側の戦士達の心に、焦りが浮かび始めていた。

「大丈夫、任せて下さい」

 そんな戦士達に掛かる、声変わり前の少年特有の高い声。
 振り返ればそこにいたのは、琶咲・真琴(1つの真実に惑う継承者・f08611)の姿があった。
 ふりふりのウサ耳メイド服を着込んだ可愛らしい姿。およそ戦いの場には向かない装いであるが……『猟兵(イェーガー)』という存在にとって姿形など大きな意味が無いことを、戦士達は知っている。

「……一体、何をなさるおつもりですか?」

 そんな真琴の意図を問うたのは、シャルムーンのクレリック、アリシアであった。
 どうやらこの方面の村側の戦力の指揮権は、彼女に一時的に預けられていたらしい。その指揮下に入っていた自警団の戦士やエルフの弓使いも、物言いたげに真琴を見つめていた。

「そうですね。今から防壁を築きますので、皆さんには壁を活かしてゴブリンへの対処をお願いします」

 そんなアリシアや戦士達の疑問に答える真琴。
 今から真琴が展開しようとしているのは、ユーベルコードで作り出す白炎の迷宮である。
 力無き者を護り、悪意ある者を阻み行手を阻むその白炎を壁とする事で、防衛線に余裕を持たせようと考えたのだ。

「ふむ。しかし防衛線に余裕を持たすには、敵との距離が問題ではないか?」

 そんな真琴の提案に、霧鵺・アギト(叡智を求めし者・f32015)が口を挟む。
 ……確かにアギトの言う通り、押し寄せる敵の軍勢はもう目と鼻の先である。この状況で防壁を展開したとして、戦線の維持は出来るかもしれないが余裕が生まれるかは難しい所であるだろう。
 だが逆を言えば、だ。この場に押し寄せるゴブリンどもの先鋒さえ排除出来れば、余裕を持って壁を構築する事は難しくないという事である。

「──僕の力が、役立てるはずだ」

 幸い、その為の力が、アギトにはあった。
 口元に手を当てながら披露されたアギトの修正案を受ければ、真琴も村の戦士達もそれを諾として。為すべきを為すべく、動き出す。
 ……その場にアギト、唯一人を残して。

「……しかし、すごい数だな」

 迅速に動く味方の動きに満足気に頷きつつ、振り返り小鬼の軍勢をその目で改めて確認して……ため息混じりに言葉を零す。
 押し寄せるゴブリンの軍勢。その緑の肌の色のせいか、その様子はまるで緑色の津波である。
 これだけの数を使役する、大天使ブラキエル。もはや手段は問わぬと言わんばかりの采配ではないか。

「とは言え、村人達の暮らしを脅かす理由にはならないな」

 だが、そんな敵の目論見を許す訳にはいかない。
 どんな理由があろうとも、力ある者が無辜の民を一方的に傷つけて良いはずなど、ありはしないのだから。
 押し寄せる敵の軍勢を睨みつけ、その胸の内に戦意を燃やす。
 昂ぶる戦意。呼応するかのように魔力も高まるが……。

(──有効射程距離は、ここまで。敵の速度、密度も計算に入れれば……)

 その頭の内では冷静に、アギトは状況を見極めていた。
 そんなアギトの佇まいは、ゴブリン達の目には格好の獲物と映ったか。まるで誘蛾灯に誘われる羽虫の様に、アギトに向けて小鬼が殺到する。

『ニンゲン! クウ! コロスッ!』

 聞くに堪えない醜い雑言を喚きながら躍り掛るゴブリン。
 盾を捨て粗悪な武器を振り上げたその速度は……並のゴブリンと比べると、天地ほどの差だ。
 これも、大天使が授けたという岩腕の力によるものなのだろうか。まるで疾風の如く迫る小鬼のその一撃を……。

(問題ない。半歩、体を反らせば避けられる)

 常人離れした瞬間思考能力で以て予測を立てて、アギトが躱す。
 空を切った自慢の一撃に、小鬼は呆けた表情を浮かべるが……次の瞬間、怒り狂って再び刃を振り上げる。その一撃もまた、躱し、捌き、凌ぐアギト。
 だが襲い来る敵は一体のみではない。更に数体、小鬼が刃を閃かせて躍り掛れば流石に躱す事は難しくなって。アギトに身体に、一つ二つと傷が刻まれる。
 ……普通なら、ここで焦りを覚えるだろう。だが、アギトの心に焦りは無い。

(──演算、完了)

 むしろこの状況こそが、アギトの狙った状況なのだから。

「さて、片付けの時間だ」

 流れる血をそのままに呟けば。高まる魔力が唸りを上げて、解き放たれる。
 解き放たれた魔力は、炎と氷。相反する二属性が、まるで戦場を薙ぎ払うかのように撃ち放たれれば……押し寄せる小鬼は尽く魔力の波に捉えられ、燃え上がり、氷り付き、その姿を塵へと変えていく。

「これで少しは、綺麗になっただろうか……?」

 魔力を撃ち尽くせば、ゴブリンの先鋒は綺麗サッパリ消え失せて。戦場に奇妙な空白地帯が出来上がる。
 そうしてアギトが視線をチラと空へと向ける。そこにいるのは……真琴であった。

(敵の流れが、途絶えた……!)

 アギトが地で敵先鋒を惹き付け殲滅するその様子を、真琴は戦場の上空から観察していた。
 だが別に、ただ見守っていただけではない。アギトの戦いそのものには関与は出来なかったが、真琴は真琴で、その務めを果たしていたのだ。
 その務めというのは、上空からの敵の監視と味方への指示。敵の後続の動きを逐一地上の味方へと伝え、彼らが援護射撃を行う為の適切なサポートに徹していたのだ。
 的確なタイミングで行われた援護射撃は、敵の後続は僅かに脚を鈍らせた。結果、敵の先鋒と後続は分断され……戦場に大きな空白地帯が出来上がる事に繋がったのだ。

「これだけの空間があれば!」

 アギトを中心に出来上がった空間は、半径90m四方に渡る広大なもの。
 これだけの空間があれば、展開できる壁は何重にも重ねる事が出来るだろう。
 本来の目的である戦線の余裕の確保も、十分果たせるはず。

(絶対に、村を、皆を、守るって決めた。だから──)

 覚悟は強く、固く。しかし何者をも幻惑する白炎の如く滾らせて、真琴が力を練り上げる。
 家を飛び出してから積み上げてきた全ての力を注ぎ込み、その手に集め……。

「──ボクは、意地を通す!」

 その力を、解き放つ。
 少女のような小さく華奢な掌から放たれたその力が、無数に分かたれて地に降り注げば……空白地帯に白炎が湧き立ち昇る。
 白炎が形作るのは、巨大な迷路だ。悪意持つ者が無理に踏み越えようとすれば炎に焼かれる事になる為、突破しようとするならば素直に迷宮に挑まねばならない。
 だが、しかし。

「村の皆さん、今です!」

 悪意持たぬ者には、その炎が牙を剥く事は決して無い。むしろその身を守るかのように、暖かくその身を包む程である。
 空から駆けられた真琴の声に、アリシアがその手に握るメイスを振るう。
 その合図に従うかのように、自警団の戦士が、エルフの弓兵が。炎を乗り越え、迷宮を越えて……戸惑うゴブリンの群れに、襲い掛かる。

 ──深追いは無用! 落ち着いて、一撃離脱を心掛けるのです!

 凛と響くクレリックの声。真琴の意図を正確に読み取ったその指示を聞けば、真琴の口にも微笑みが浮かぶ。

 圧倒的多数の敵に綻びかけた、戦士達の戦意。
 その綻びを繕うかの様な、真琴の策。
 アギトの力添えも確りと嵌った事で、その策は想定通りの形となって結実したのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

秋月・信子
●SPD

開拓村へ押し寄せるゴブリンの大群ですか…
『あら、懐かしい?あの時も似た状況だったわよね』
この開拓村の人たちも、随分と長いお付き合いをさせて頂きました
『ま、情が移ればそうなるわよね。にしても、こんな時もあろうかと教えておいた爆発物の扱い方が、まさか役立つ日が来るだなんてね』

まずは自警団の方々と行動を共にして防衛線の構築に移ります
第一波を切り抜けたポイントに指向性地雷を多重に設置し、第二波が到来しましたら可能な限り【おびき寄せ】た後に纏めて【吹き飛ばし】ます
『で、私は図体のデカいピースメーカーで【索敵】ね。予想以上に数が多ければ、エルフの弓隊に協力を仰いで【援護射撃】するから安心なさい』





 村の周囲の平原地帯。その各地で、猟兵達はその力を振るい小鬼の攻勢を押し留めた。
 そしてその力は、この場でも発揮されていた。

「指向性地雷、一番、二番。点火──今ッ!」

 ──ズドン!!

 数の利を活かし、村の直近まですり抜けて来たゴブリンの小集団。
 そんな連中を纏めて薙ぎ払ったのは、秋月・信子(魔弾の射手・f00732)が設置した罠……『指向性地雷』と呼ばれる兵器であった。
 地雷、と言う名を持つように。この兵器は地に敷設され、起爆する事で敵にダメージを与える兵器である。
 だがこの兵器の恐ろしさは、それだけではない。内部には多数の金属片が内蔵されており、起爆時にある一定の方向へ向けて金属片を鋭く叩きつけるという特徴を持つのだ。
 起爆時に放たれる金属片の威力は、対人のみならず時には装甲を持つ軍用車両にも通じる程の物。
 そんな強烈な兵器を、しかも多重に起爆したのだ。多少の強化が施されているとはいえ、小鬼程度に凌げる筈もない。
 起爆と共に立ち上った土煙が晴れれば、そこに立つ者の姿は無く……ズタズタに引き裂かれた小鬼の躯が残るばかりだ。

「──開拓村に押し寄せるゴブリンの軍勢、ですか……」
『あら、懐かしい?』

 ポツリと溢れた信子の呟き。その声に反応したのは、信子の半身にして力の源。信子自身が『姉』と慕う、影法師であった。
 信子を始めとした猟兵達とこの開拓村に縁が結ばれたのは、今を遡る事を二年前。
 あの時も、この村は小鬼の軍勢の脅威に晒されていた。その脅威を除き、背後に潜む黒幕を討ち取る一連の戦いは、信子の記憶にもまだ新しい。
 ……思えば最後の戦い以来、この村との交流は無かったが。だがあの戦いの日々で生まれた絆は強く、深い。

『ま、情が移ればそうなるわよね』

 そんな信子の内心は、心が通じ合うが故に『姉』にはお見通しである。
 数多の苦難を、共に戦い抗って乗り越えた、『戦友』。
 そんな村に、また再び危機が訪れようとしている。理不尽な理由で、大天使が暴虐の力を振るおうとしているのだという。そんな事は、断じて許す訳にはいかない。
 義侠心に心を燃やす信子。そんな信子に、『姉』は誂うかのような口調だが……。

『……にしても、こんな事もあろうかとって教えておいた爆発物の扱い方が、まさか役立つ日が来るだなんてねぇ』

 万が一の最悪の事態を想定して習得していた技術が日の目を浴びた事に、どこか安堵を覚えたかのように『姉』がボヤく。
 ……そう。『姉』もまた、村に対して情を移しているのは同じ事である
 戦いを終えて、姉妹でこっそりと嗜んだあの味。初めての共同作業と言っていいその経験は、良い思い出として信子達の胸に刻まれている。
 そんな思い出の地を、小鬼風情に穢されていいはずがあるだろうか。いいや、無い。

『信子、その調子でゴブリンどもを消し飛ばしなさい』
「えぇ、此方は任せて下さい。『姉さん』はそのまま……」
『判ってるわよ』

 不埒者を残さず討てと、『通信機越し』に発破を掛ける『姉』の声。
 その声に信子は苦笑を浮かべて答え……その視線を、僅か離れた場所へと向ける。
 そこにいたのは、一体の巨人。鋼の装甲と数多の電子機器が組み合わさった、鋼の巨兵。
 量産型キャバリア『ピースメーカー』。そのカスタム機である。
 ……『姉』は今、あの機体のコクピットにいる。全長5mというその特徴を活かし、敵の目を引き付けつつ索敵に当たっているのだ。
 とは言え、だ。

『……他の連中のおかげで、相手の数も多少は減って……ん?』

 敵の攻勢は、各方面の猟兵達の奮闘によりその勢いを減じつつある。
 無尽蔵と思われた敵の物量も、漸く打ち止めかと。『姉』が機体のカメラアイを度々光が瞬く小高い丘へと向けたその時、ふとした違和感に気付く。
 コンソールを操り、カメラをズームし確認する。
 そこに映るのは、見慣れた緑の肌。醜悪で矮躯の、小鬼の群れだ。
 だがその中に一体、他とは違う者がいる。並の小鬼より一回り大きなその身体に、全身を覆う無骨な鎧を身に着けている。
 恐らく、あれは小鬼の上位種なのだろう──。

 ──ゾワッ。

 その鎧を見た、その瞬間。『姉』の背が粟立つ。
 カメラ越しに見ても判る。
 あの鎧は、この世に非ざる物質で作られた物。
 どんな攻撃でも壊す事の出来ない、大天使の加護を受けた……まさに、『無敵の鎧』であるのだ、と。

『……状況が変わったわ! 信子、仲間を集めなさい! 敵の切札が来るわ!』

 牽制するかのようにキャバリアの重機関銃を構えて撃ち放ちつつ、通信機越しに叫ぶ『姉』。
 その叫びを聞いた信子は事態の変化を即座に理解し、各地に散る猟兵達を掻き集めて迎撃の準備に移るだろう。

 大天使に使役された、小鬼の猛攻。
 開拓村を巡る攻防戦は、新たな段階へと移ろうとしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『ゴブリンキング』

POW   :    ゴブリン親衛隊の召喚
戦闘用の、自身と同じ強さの【杖を持ち、炎の魔法を放つ、ゴブリンメイジ】と【剣、盾、鎧で武装した、ゴブリンナイト】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    王の激励
【王による、配下を鼓舞する言葉】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ   :    ゴブリン戦奴の召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【奴隷ゴブリン】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 小鬼の大軍勢による猛攻。
 数の暴力を前面に押し立てた平押しは、猟兵達の活躍の前に喰い止められた。
 だが……戦いは、終わらない。
 数の暴力では埒が明かぬと大天使が判断したかは定かではないが……村へと迫る敵の切札の存在を、猟兵が察知したのだ。
 通報を受け、その場へと集まる猟兵達。自警団の団長やエルフ使節団の代表、冒険者達に、シャルムーンの司祭と言った面々もその場に集まって。

 ──ギィィィ……!

 現れたそのその存在を、迎え撃つ。
 並の小鬼より一回り大きな体躯。頭を飾る王冠と、粗末な王笏をその手に携えている。
 ……その側に、それなりの武装を纏った小鬼騎士や小鬼魔術師と言った存在が控えているのを見ると。恐らくこの存在は、ゴブリンの上位種にして支配者、『ゴブリンキング』であるのだろう。
 だが……。

「あれは、本当に小鬼の王なのか? 以前戦った者とは、まるで違うではないか……!」

 驚愕に目を見開く団長のその言葉の通り。通常のゴブリンキングとはその存在感の強さが桁違いである。
 恐らく、大天使に直接喚び出されその加護を得ているという事もあるのだろうが……その違和感の最大の特徴は、彼が全身に纏うその鎧にある。
 不可思議な光を放つその鎧。猟兵達が見れば、即座に気づく。『この鎧は、何があっても砕けない』と。

「あの輝き──まさか、『絶対物質ブラキオン』!?」

 その猟兵の気付きを裏付けするかのように、シャルムーンの司祭が口を開く。
 彼女が曰く。『絶対物質ブラキオン』とは、神話に謳われる未知の単一物質であるのだという。
 この物質の特徴は、『何があっても破壊されない』という事。彼女の知る神話でも、神がその力をぶつけても破壊されなかったという逸話が残されているのだとか。
 その話が事実なのだとしたら、恐らくは……ユーベルコードの力を用いても、破壊は不可能であるだろう。

「つまり、あの鎧の隙間を狙うしか無いという事か」
「だが、相手は全身鎧だぞ。リスティ、フーガ、隙間を狙えるか?」
「止まってるならともかく、動かれると……悔しいけど、難しいかも」
「こっちも。それに取り巻きの武具も、似たような光があるし……」

 そんな司祭の言葉を受けて、冒険者達が言葉を交わす。
 ……冒険者達の見立ては、正しい。
 猟兵達は過去、似たような装備を纏った敵を相手にした事もある。その時の対処法は、『鎧の隙間を狙う事』であった。
 今回も、それと似たような事をすれば攻撃が通じる可能性は高いが……相手の取り巻きの妨害も無視して、悠長に鎧の隙間を狙うのは至難の業である。
 何か他に、手は無いだろうか……?

「──『其の輝き。世界樹の輝きを引き出し、打ち消すべし』」

 その時、ふと呟く様な声が場に響く。
 一同が声に視線を向ければ、そこに立つのはエルフ使節団の代表。
 集まる視線に、恥ずかしげに一つ咳払いをして。

「我らの里に伝わる伝承でな。そんな一節が伝わっているのを、ふと思い出してな」

 しかし、この場には世界樹に由来する物など何も……。

 ──その道を拓く際に、これらの品々がきっと皆さんの役に立つはずです。

 瞬間、猟兵達の頭に過るのはこの地に訪れる前に聞いたグリモア猟兵のその声だ。
 グリモア猟兵は猟兵をこの場に送り届けるその直前、皆に荷物を預けていた。
 その荷物の中に、エルフの村の聖なる木に生る葉……世界樹イルミンスールの分樹の葉があったはず。その力を引き出せば、あの『絶対物質ブラキオン』に通じる力を得る事が出来るのだろうか?
 また、荷物の中にはフェアリーランドから得た『鍵』や天空城から得た『輝く輝石』もある。
 それらのアイテムも力を引き出す事が出来れば、この戦いを優位に運ぶ事が出来るのだろうか?

『ブラキエルサマノミナノモト! ニンゲンハ、ミナゴロシ!!』

 動き出すゴブリンの軍勢の切札。大天使の加護を受けた『ゴブリンキング』が牙を剥く。
 猟兵達は、『絶対物質ブラキオン』の力を超える事が出来るだろうか?

 ====================

●第二章、捕捉

 第二章、集団戦。敵は『ゴブリンキング』です。

 普通に相手をすればそれ程強い相手ではありませんが、今回の敵は特別製。
 大天使の加護を受け、『絶対物質ブラキオン』製の鎧を身に着けた強敵となります。

 断章の通り、『絶対物質ブラキオン』は通常の手段では『破壊する事が出来ません』。
 その為、攻撃を通す為には『身につけた鎧の隙間を狙う』事が必要となります。
 が、相手の鎧は全身鎧。配下である騎士や魔術師、戦奴と言った存在も『ブラキオン製の武具を身に着けキングを守る』様に行動を取る為、通常の攻撃でダメージを通すのが非常に難しい相手となります。

 しかし、猟兵は過去の冒険でいくつかのアイテムを手にしています。
 断章中に登場したアイテムの力を上手く引き出し、利用する事が出来れば、ブラキオンの力を突破する事が出来ます。
 どの様な手段で、力を引き出すか。またどの様に利用するのか。
 猟兵の機転が試される戦いとなるでしょう。
(上手くアイテムを利用出来たと判断出来るプレイングには、プレイングボーナスが与えられます)

 戦場は一章と同様、村近郊の平野。障害となる物は、特にありません。
 一章のゴブリン残存兵は村側のモブ戦力が上手く抑えていますので、そちらに意識を傾ける必要はありません。
 目の前の強敵との戦闘に、ご注力下さい。

 捕捉は以上です。
 それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちしております!

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ニクロム・チタノ
なるほどこの輝石ならあの鎧を壊せるかも
反抗をこの身に
チタノヤタテは八つの最強の盾を持つゴブリン程度の攻撃じゃあびくともしないよ
八つの盾で守りながら巨体で突進いくら最強の鎧でも押し付けられたら身動きとれないね!
盾を八つとも配下のゴブリンにぶつけて吹っ飛ばして邪魔できないようにしてからUC解除からの上から輝石を押し付けて鎧の一部を破壊
この能力は体力を消耗するんだ、ごめんあとお願い
みんなにもチタノの加護と導きを


御剣・刀也
真の姿、いしはま絵師のJC参照

絶対に砕けない物質ね
そんなもんに頼るとは。腑抜けか?お前ら
生に果てはあれど名に果てはなし。戦人の覚悟、その目に焼き付けろ!冥土の土産にな!

ゴブリン親衛隊の召喚されたら妨害してくる奴だけ相手して、ゴブリンキングの懐にダッシュで飛び込み恐怖を覇気で闘志に変え、勇気で反撃を恐れず、捨て身の一撃で斬り捨てる
ポケットに入るサイズの輝石を貰い、尽きぬ闘志と勇気で真正面からゴブリンキングに向かう。親衛隊の妨害は第六感、見切り、残像でいなし、進路の妨害はグラップルで投げ捨てダッシュで飛び込む
「雑魚が。どんなに強かろうが、そんなもんに頼った時点でお前の心は負けを認めてる。失せろ」





 『輝く輝石』。天空城で発見された、不思議な石である。
 黄金を求める猟書家が探し求めたその石の使用用途は、今を以てもまだ不明。グリモア猟兵の調査でも、その用途は判然とはしなかった。
 だが……。

(この輝石なら、あの鎧を壊せるかも……!)

 その石を一目見た、その瞬間。ニクロムはその目を大きく見開いた。
 まるで天啓が降りたかのように、ニクロムには判ったのだ。
 この石に籠められた力をぶつければ、『絶対物質ブラキオン』の力に綻びを与えられるだろう、と。

「反抗を、この身に!」

 その予知に似た感覚の命じるままに、駆け出すニクロム。
 異界に漂うアヤカシ……『チタノヤタテ』の骸魂をその身に宿せば、八つの盾を構えた巨体のオブリビオンへとその姿を変えていく。

『いくら最強の鎧でも、巨体と盾を押し付けられたら身動きはとれないよね!』

 ニクロムが変じたオブリビオンが、咆哮を上げながら突き進む。
 迫り来る八つの盾を携えた異形の存在に、しかしゴブリンキングは余裕綽々の表情だ。
 大天使から与えられた力が敗れるはずが無い。正義は我にありと言わんばかりに粗末な王笏を振り翳せば、付き従う取り巻き達も意気を上げ、迫る異形に立ち塞がる。

『ボクの邪魔を、するなぁっ!』

 そんな並み居る異形達を、八つの盾を振り回して弾き飛ばし、巨体を活かして押し通るニクロム。
 敵の戦列に、綻びが出来た。後は、王を狙うのみ──!

 ──グラッ……!

『うっ! も、う……!?』

 だがその瞬間、ニクロムの巨体がぐらりと揺らぐ。
 【キミに反抗の加護と祝福を(チタノヤタテ)】。その異能の特徴は前述の通り、『自身に骸魂を降ろす事で一時的にオブリビオンと化す』事である。
 そうして変じて得た力は、確かに強力。八つの盾は今見せた通りに、防御のみならず攻撃にも大きく寄与する武器である。
 だが、強力な力を振るうには当然代償が必要で。骸魂はニクロムの体力と気力を大きく吸い上げ、その身を消耗させてしまう。
 ……その消耗の限界が、このタイミングで訪れてしまったのだ。

「く、ぅっ──」

 変身が解けて、元の小柄な少女の身体へと戻るニクロムがそのまま地へと膝を突く。
 口から零れ出る悔しげな息。その姿に小鬼の王が、側近達が。嘲るように嗤う。
 ……だが、小鬼達は忘れてはいないだろうか?
 この地に集まった猟兵は、ニクロム以外にもいることを。

「──あと、お願い!」
「任せろ!」

 崩れ落ちるニクロムが投じた『輝く輝石』を、飛び越えながら受け取ったのは刀也だった。
 滾る戦意を躍動させながら戦場を駆ける刀也。バチリ、バチリと雷鳴の如く轟く闘気を見れば、その戦意の凄まじさを感じ取れるだろう。

(腑抜け共が……!)

 刀也は、憤っていた。
 『絶対物質ブラキオン』。絶対に砕けないという特性を持つ、未知の物質。
 そんな者に頼る小鬼の王も。先程やりあった岩腕を得た小鬼達も。結局の所、奴らは他者から与えられた力に頼ってばかりだ。
 他者から得た力。つまりは、自分で磨き上げた物ではない力だ。
 そんな力をひけらかす、奴らの性分は……生粋の武人気質を持つ刀也とは、水と油だ。

(生に果てはあれど、名に果てはなし……!)

 右に太刀を、左に石を。握る拳に、力を込める。
 瞬間、握る石の輝きが増す。刀也の闘志に反応したのか、淡い輝きは今や真白い閃光と化して刀也の身体を包み込み、纏う闘気を更に鮮烈な物と変えていた。
 その闘気を、世界に刻むかのように。

「戦人の覚悟、その目に焼き付けろ! 冥土の土産にな!」

 咆哮、一喝。戦場を揺るがしながら、刀也が駆ける。
 その闘気に、ゴブリンキングは一瞬たじろぐが……直ぐに自分の前に小鬼の騎士が立った事で、平静を取り戻す。
 そうだ、自分は大天使の加護を受けている。配下の者も、自分ほどでは無いが加護を得ているのだ。
 ならば、この程度に何を恐れる必要が──!

「雑魚が、退けッ!」

 翻る剛剣に、吹き出す血飛沫。
 崩れ落ちる騎士の姿に、ゴブリンキングの思考が止まる。
 何が? 斬られた? 騎士が? 大天使の加護を受けた武具を、身に着けているのに?
 ──そんな、馬鹿な!!

『ギィィィィィッッ!!!!』

 狂乱に陥った様に吠え立てる小鬼の王。自身の理解を越えた現象にただ叫ぶしか無いその姿は、まさに小物の所業である。
 そんな小物の行いを気にする事無く、刀也は崩れ落ち掛けた騎士の頭を掴み上げ、その身体を放り投げる。
 その先に居たのは、小鬼の魔術師だ。呪文を詠唱していたのか回避が遅れ、騎士の身体に押し潰される魔術師。
 これで、王の最側近は消えた。障害は、無い。

「どんなに強かろうが、そんなもんに頼った時点でお前の心は負けを認めてる──」

 握る刃を、再び構える。
 構えは、上段。ただ振り下ろすという動作に全身の力を乗せるその構えは、防御を捨てた攻撃重視の構えである。
 立ち会いの場でこんな構えをすれば当然、隙は大きくなる。その隙を突かれれば、敗北の可能性は飛躍的に高まるだろう。

 ──そんな事は、知ったことか。

 戦人の在り方を、目の前で喚く武人の風上にもおけぬ愚か者に刻み込む。
 今の刀也は、この一瞬、この一振りに全てを賭けているのだ。
 この切っ先に、一擲をなして乾坤を賭せん。『乾坤一擲』の精神のまま、刀也はその刃を……。

「──失せろ!」

 【雲耀の太刀(ウンヨウノタチ)】を、振り下ろす!
 振り下ろされた刃は、所謂「袈裟斬り」の軌道でゴブリンキングの身体を捉える。
 刃の鋼と、鎧の鋼がぶつかり合う甲高い音が響く。
 本来なら、無敵の絶対物質は刃を折って、小鬼の王は無傷に終わった事だろう。
 だが、今。刀也の身体と刃には、輝石の力が宿っている。その力が、鎧を形作る絶対物質の結び付きを僅かに弱め……。

 ──ギィッ!? ガァァァァァァァッ!!?

 鎧の左の肩口を砕き、罅を入れる。
 生じた衝撃に、悲鳴を上げるゴブリンキング。倒れ込み、肩を抑えながら後退るその姿を見れば……恐らく衝撃で、左肩に何らかのダメージを負った事が判るだろう。もしかしたら、骨が砕けたのかもしれない。

「斬り捨てる、までは出来なかったか……」

 だが戦人の覚悟、確かに示したぞ……!
 呟く刀也の口元が獰猛な笑みの形を作るが……その身体は、今の一振りで大きく消耗を覚えている。追撃は、難しいだろう。
 同じく限界を迎え、膝を突いたままのニクロムをその背に負ぶさって。二人は一旦、後退するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クラリス・シドルヴァニス
あれは、支配者階級のゴブリンね…
かつて父も、似たような魔物の軍勢と戦ったと聞いたわ。
あの王、絶対防御の鎧を手に入れて調子づいているようね。

…落ち着きなさい、クラリス。
《世界知識》でブラキオンに関する伝説を思い出し、
エルフの言葉をヒントにして正解を導き出すのよ!
輝きを引き出し、打ち消す…これね!
世界樹の分樹の葉に、聖剣の輝章と同じ紋章を指で描いて、
そっと《祈り》を込めるわ。
神よ、私をお導きください…!
発動する力は【斬光の印】。体を焼くような激しい痛みと共に
剣が光を放つ!
《激痛耐性》で耐えながら、ゴブリンの軍団に《神罰》の剣舞を。
借り物の力だけで、強くなったつもり?いい気にならないで!!





 戦場に響く、ゴブリンキングの聞くに堪えない喚き声。
 その無様な様子を、クラリスは眉を顰めて見つめていた。

(あれが、支配者階級のゴブリン……)

 今は亡き父も、かつては似たような魔物の軍勢と干戈を交えていたのだという。
 その戦いの果て、父は武運拙く戦場の露と消えたが──。

(──落ち着きなさい、クラリス)

 頭を振り、心の底から湧き上がりかけた昏い感情を振り払う。
 この戦いは、戦場に果てた父の無念を晴らす復讐の戦いではない。
 無辜の民を暴虐から救うという、聖騎士としての誇りある戦いなのだから。
 まずはしっかりと、状況を見極めなくては。

「……『絶対物質ブラキオン』、か」

 斃れた側近の騎士とは別の騎士に庇われながら立ち上がる小鬼の王の姿を──正確には、奴の身に付けた全身鎧を──睨みつつ、ポツリと呟く。
 ゴブリンキングやその親衛隊が身に着けている武具は、『絶対防御』の力を宿す未知の物質によるモノであるらしい。
 だが、その『絶対防御』が完璧な物では無い事は証明された。先んじて動いた猟兵が、王の鎧の一部を見事に砕き、深い罅を入れてみせたのだ。
 その時に用いていたのは、天空城から見つけ出されたという『輝きの輝石』。
 猟兵がその力を振るう、その瞬間。示した闘志に反応するかのように、確かに輝きを増していたような……。

(……『輝き』? そうか、これね!)

 ハッと何かに気付いたように、クラリスがその手にとったのは聖木の葉。エルフの森に在るという、世界樹イルミンスールの分樹の葉である。
 『其の輝き。世界樹の輝きを引き出し、打ち消すべし』。エルフの村に伝わるその口伝は、そう語っている。
 それはつまり、『絶対物質の輝き(力)は、世界樹の輝き(力)で打ち消せる』という事ではないか?
 ではその『輝き』はどう引き出すか?

(先程、石の力を引き出したのが『闘志』だとすれば。鍵となるのは、ヒトの持つ心の力ではないかしら。それならば……!)

 その葉に指で、自身が携えた聖剣と同じ紋章を描く。
 そうしてそのまま、猟の掌で慎ましげな胸の内に包み込むように掻き抱き。

「──神よ、私をお導きください……!」

 その静謐で清廉な祈りを、注ぎ込む。
 瞬間、クラリスの胸を過る温かな波動。柔らかく、それでいて力強いその力が、クラリスの身体を瞬時に満たし……。

「ッ! くぅ……ァあああああッ!!」

 その身体から、溢れ出る。
 ……クラリスの推測は、正鵠を得ていた。
 輝石や聖木の力を引き出すトリガーは、『ヒトの意志』であった。その意志力が強ければ強いほど、輝石や聖木は力を示して、絶対物質の力を打ち消す力を与えるのだ。
 その強力な力が今、クラリスの身体に注がれて。そうして彼女自身の力と結び付き……身体を灼くかのような激痛を、彼女自身に与えていた。

(これが、絶対物質を打ち破る力!)

 痛みに白く染まりそうになる意識を必死に繋ぎ止めながら、クラリスの細指が両手剣の柄を握る。
 瞬間、光り輝く刃。刃に掛けられた封印が、見えざる鞘が解き放たれて。邪なる存在を切り裂く光刃を、世に晒したのだ。
 クラリスの身体を襲う激痛は、この封印を解き放つ代償である。だがその痛みは常のそれとは比にならぬ程に激しく……同時に刃の輝きも、常のそれとは比べ物にならぬ程に鮮やかであった。
 ……つまり今クラリスの身体を苛む激痛は、聖木の葉の力を引き出したが故の代償であると言えるだろう。ならばこの痛みは、邪なる者を討ち、無辜の民を守る為の試練であるとも言えるのではないだろうか。
 それならば──。

「この程度の、痛みなど!」

 痛みを振り切るかのように、叫び駆け出すクラリス。
 その行手を遮らんと、小鬼の騎士が立ち塞がる。
 小鬼の表情は、厭らしく歪んでいた。
 大天使という虎の威を借りた事で増長しているのか。麗しの聖騎士を打ち負かし、押し倒す妄想でも浮かべているのだろう。

「そんな借り物の力だけで、強くなったつもり?」

 そんな相手に不覚を取るほど、クラリスはヤワではない。
 携えた両手剣を、まるで細枝でも振り回すかのように軽やかに振るうクラリス。
 舞い踊るかのような見事な剣の冴えは、クラリスが積み上げてきた修練の賜物だ。
 鍛え上げられたその剣閃が、数度瞬く。その度に、小鬼騎士の剣が、盾が、鎧が。折られ、貫かれ、砕かれて。

「──いい気に、ならないで!!」

 最後にはその首が、一息に刎ね飛ばされる。
 血を噴き上げ斃れる小鬼騎士。その姿を一顧だにせず、クラリスがその刃を王に向けて突き付ければ……怒り狂う王の命を受け、小鬼の親衛隊がクラリスに向けて躍り掛る。
 護るべき世界の為、人々の為に。痛みを耐えて、聖騎士は刃を振るう。その度に小鬼の親衛隊が戦場に斃れ、骸を晒す。
 王に直接、傷を付けるには至らないが。クラリスの献身とその功は、まさに大と言えるだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

アネット・レインフォール
▼静
察するに…あの輝石は消耗も激しいと見える。
勿論、使えるに越した事は無いのだが。

全身甲冑とは言え中身は生物だ。
隙間を狙う以外にも溺死・焼死・感電・落下衝撃など手段はある。
これは冒険者達に任せるとして、だ

―俺は、絶対物質という名の過酷に挑むとしよう

▼動
先ず雑魚1体を結界術で閉じ込めフーガに火か水攻めを依頼。
更に葬剣を無数の鋼糸状にして
隙間から首や留め具を切断し絶対物質の武具を簒奪。

―王は兎も角、雑魚にまで与えたのは失策だったな?

奪った武器で一撃を試み、
素の絶対物質同士の衝突を冷静に分析。

UCを上乗せし【流水戟】も試すが、
斬りつつ武具を奪い冒険者達に投渡すフォローも検討。

輝石はダイスの神に任せる





「……ふむ」

 進む戦いを見つめて、アネットが一つ頷く。
 グリモア猟兵から託された品々。その効力は、見事に示された。
 絶対無敵の鎧を貫く為の助けを与えるその力。成程、確かに強力だ。

(だが、察するに……その分、消耗も激しいと見えるな)

 強力な力を振るう時、その裏では必ず代償が生じる物だ。
 その事実を示すかのように。先んじて動いた者達は、皆確かに力を引き出しては見せたが……その代償として、大きな消耗を抱えてしまった様にアネットには見えていた。
 ……まぁ彼らの使った力そのものが、消耗を是とする類の物でもあったが故の結果でもあるのだが。未だ姿を現さぬ大天使の存在を考えると、アネットとしてはここで消耗は控えたい所ではある。

(さて。そうなると、どう立ち回るべきか)

 絶対無敵の全身鎧。その脅威を、力を使わずにどう仕留めるか。
 アネットの頭を過るのは、剛剣の戦人が振るった一閃。その一撃に鎧を砕かれ、無様な悲鳴を上げた小鬼の王の姿だ。
 あの一撃は、王の身体を斬り裂きはしなかった。だが確かに、ダメージは与えていたはずだ。

(……つまり、衝撃は通るという事か)

 それならば、手段は幾らでもある。
 全身甲冑は砕けずとも。隙間を抜くのが難しかろうとも。
 ただ『中身の生物を殺す』だけなら、やりようはあるのだ。

「フーガ、済まないが──」
「えっ? ──成程、面白そうじゃない!」

 アネットが声を掛けたのは、冒険者徒党の小さな妖精魔術師。フェアリーランドの鍵を巡る戦いで出会い、天空城で縁を深めた冒険者、フーガであった。
 手短に要件を伝えれば、最初は訝しげな表情を浮かべていたフーガもその有効性を理解し、快諾する。
 ──準備は、整った。

「絶対物質という名の過酷に、挑むとしよう──!」

 呟き、地を駆けるアネット。
 そのままの勢いで、麗しき聖騎士を囲もうとするゴブリンナイトの一体に近づいて。

「シッ!」

 跳躍一番。強烈な飛び蹴りを叩き込む。
 聖騎士に意識が傾いていた小鬼が、その蹴りを躱せる道理などありはしない。いっそ見事と言える様な勢いで、小鬼の騎士は弾き飛ばされて地を転がるが。

『──ギィィィッ!!』

 すぐさま立ち上がり、下手人であるアネットへと向き直る。

(成程、確かに『表面的には』ダメージは無いようだが……)

 だが、武人として観察眼を磨き上げてきたアネットの目は誤魔化せない。
 立ち上がるその瞬間、一瞬足元がグラついていた事を。そしてアネットを睨む兜越しの目の焦点が合うのに、僅かな時間を要したことを。
 この事実が示すのは……蹴りや地を跳ねた衝撃が、小鬼の頭を強かに揺さぶっていたという事だ。
 ……やはり、見立ては間違っていなかったらしい。ならば、これからする事も通じるはずだ。

 ──パチンッ!

 高らかにアネットが指を鳴らせば、瞬間小鬼の身体が見えない壁に囲まれる。
 本来は敵からの攻撃を防ぐ目的で使われるその技術を、今回は小鬼を閉じ込める檻としたのだ。
 だが、これはあくまで前準備。アネットがやりたい事は、この後だ。

「──フーガ!」
「任せて!」

 呼ばうアネットの声に、答えるフーガが杖を構える。
 瞬間、高まる魔力が渦を巻き……周囲の空気から水分を掻き集め、形を作る。
 そうして生まれた水弾を──。

「──いけぇっ!」

 小鬼の封じ込められた檻の中へと放り込めば……更に一発、もう一発と。フーガは次々と、水弾を放り込んでいく。
 ところで、アネットが作り上げた結界の檻は、四方を封じる不可視の壁として構成されている結界である。
 だがそんな中、唯一塞がっていない箇所がある。
 それは、頭上。言わば小鬼が閉じ込められたのは、天井の無い箱の中であると言えるだろう。
 ……そんな空間に、絶やすこと無く水が注ぎ込まれればどうなるだろうか?

『ガッ! ゴボォッ……!?』

 答えは簡単。水に飲まれて、藻掻き苦しむ小鬼という図の出来上がりである。
 只でさえ、小柄な小鬼である。その上、未知の金属で出来た武具をその身に纏っているのだ。
 水の中を泳ぐ事も出来ずに、浮かび上がる事も出来ない小鬼。
 後はもう、水に呑まれて溺死するのみである。

「王は兎も角、雑魚にまで与えたのは失策だったな?」

 ピクリとも動かなくなった小鬼を囲む壁を消し、近づくアネット。
 念の為にと、鋼糸に形態を変えた愛刀で隙間を掻き斬りトドメを刺して、その武具を奪い取る。

「ふむ」

 剣を手に取り、具合を確かめる。
 小柄な小鬼が振るう武器の為か、ショートソードサイズの剣だ。
 一度二度と振るってみるが、中々どうして勝手は悪くは無い。

(では、『絶対物質同士の衝突』は、どうだ……?)

 剣を振り上げ、横たわったままの小鬼が纏う鎧を打てば。鋼同士がぶつかり合う鈍い音がして、剣は見事に弾かれる。
 ……しゃがみ込み鎧を見れば、傷一つどころか凹みすら無い。
 剣の刃にもまた傷はなく綺麗なままだ。

(成程。絶対物質同士だと、お互いがお互いを傷つけられないと見える)

 知見を得て、満足げに頷くアネット。
 とは言え、何か違う状況であれば──例えば、この武器にユーベルコードを乗せたなら──また違う結果が示される可能性はある。
 探求は、もっと深める必要があるだろう。

「その為にも、数を集めんとな」

 呟き立ち上がるアネット。
 冒険者達や、他の村の戦力の武器にも出来れば戦力の底上げにもなるはずだ、と。
 趣味と実益を満たすかのように、アネットはまた別の小鬼を捕え、その武具を剥ぎ取るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

緋奈森・鈴音
多数で無敵の鎧とか面倒だけど……戦いようは有るのよー。

火と風の魔力をフルに使って空気を圧縮した超高熱のドームを作って相手の集団を包み込むわー。
高熱を帯びた空気は鎧の隙間から侵入して中身を蒸し焼きにしていくし、呼吸も阻害するわ。
この空間にいる限り、高圧の空気で動くこともままならず、逃げることもできないわよー。
でも、おねーさんだけの力じゃここまでの大規模な空間を維持するのは難しいかも……だから、力を貸してね?
(鍵を手に取り、天上界に通じるように祈って解錠するように捻る)
天上界がどういう所かは知らないし、使い方も有ってるかわからないけど……、おねーさん達にこの世界を守る力を貸して!

「疲れたー!」





 『絶対物質ブラキオン』により組み上げられた、不壊の鎧。
 しかし、猟兵達にその神通力は通じない。輝石や聖なる葉の力を引き出し正面から乗り越えた者もいれば、搦手を突いて『鎧の中身』のみを仕留める者もいた。

「多数で無敵の鎧とか、面倒だけど……戦いようはあるのよー」

 そんな搦手を突いた者が、ここにも一人。
 くすくすと悪戯な、だが妖艶な笑みを浮かべつつ。魔力を練るのは、緋奈森・鈴音(火に願う華・f03767)。
 先に動いた者と同様、鈴音にも突くべき敵の弱点が見えていた。

「外側を幾らガチガチに固めても、中身はそのままじゃあ、ねぇー?」

 呟きながら練り上げる魔力に乗せるは、火と風の属性だ。
 ……人間を初めとした生命体は、その生命を維持する上で幾つかの弱点がある。
 例えば、熱。人間であれば42℃以上の高熱に長時間晒された場合、身体を構成する蛋白質が熱凝固を引き起こし生命の維持が困難となる。
 例えば、空気。酸素濃度の極端に低い環境に置かれると、物の数分で死亡するという資料がある程に、酸素とは人間の生命維持に重要な要素である。
 鈴音が魔力を練り上げ操ろうとしているのは、この二つの要素だ。
 火と風の魔力をフルに用いて超高熱のドームを作り上げ、敵の集団を包み込もうと考えたのだ。
 高熱を帯びた空気は僅かな鎧の隙間から内部へと侵入して中身の身体を蒸し焼きとするし、呼吸を阻害する事にも繋がる。
 更に言えば、圧縮された高圧の空気に晒されれば動くことすらままならない。
 一度囚われれば、決して抜け出る事の出来ない超高温の檻。鈴音が創ろうとしているのは、そんな牢獄であった。
 しかし、それだけの強烈な力を行使しようとするならば……当然、必要な力も相応に大きな力が必要だ。

(でも、おねーさんだけの力じゃ、ちょーっと足りないかもしれないから……)

 力を練り上げながらその手に握るのは、一本の小さな鍵。
 フェアリーランドから発見されたその鍵は、『天上界』を目指す兎耳の幹部猟書家が探し求めていた物だ。
 この鍵が、本当に天上界を開く鍵なのか。その事実は、判らない。
 そもそも天上界がどんな場所なのかも判らないし、そもそもコレは本当に『鍵』なのかどうかも、判らない。
 だが、その内に宿るその力は。『絶対物質』の力を打ち消すその力は、本物のはず。

「──おねーさん達に、この世界を護る力を貸して!」

 真摯に祈り、願うように。天へと向けたその鍵を、鍵穴へと差し込むように突き出して、解錠するかのように捻る。
 瞬間、鈴音の身体に流れ込んだのは膨大な魔力。遙か空の先から降り注ぐかのような力の奔流を受け、鈴音の魂が理解する。

 ──この力があれば、やれる!

「さぁ、行くわよーっ!」

 解き放たれる魔力。押し寄せる小鬼の親衛隊を包み込むように、火と風が暴れ、狂い、混じり合い……超高熱のドームを作り出す。
 その出来栄えの程は、離れた位置に立つ鈴音の玉の肌に浮かぶ汗が知らせてくれる。この出来栄えなら、王ならともかく親衛隊程度では抵抗する暇も与えないはずだ。

「──あー、疲れたー!」

 事実、数分後に鈴音が上げた声がその成果を示す。
 ぐっと両手を突き上げ背筋を伸ばす鈴音の後ろでは、数体の小鬼騎士が湯気を立てて倒れ伏していたのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

霧鵺・アギト
なるほど、心の力か…面白い理論だ。
他の猟兵が道を示してくれたならそれに報いるのみ。

まずは詠唱系技能を駆使して親衛隊の対処を。
敵の炎の魔法はこちらの水魔法で相殺。
その被せた水を利用して氷の【全力魔法】を放ち、凍らせる事で行動の阻害を狙おう。

ゴブリン親衛隊の攻撃を遮ぎれたら【指定UC】発動。
世界樹の葉に【破魔】の力を込めて利用させて頂くとしよう。
そしてこの輝く鍵…。
鍵があれば差し込んでみたい…全人類がきっとそう思う…!
分身と協力し、鎧の隙間に差し込んだ鍵に雷を落としてみたらどうなるかな?
仮説を立てたら証明してみたくなるのが悪い癖だよ。
僕の意志は正義なんかとは違うが、ある意味強いのかもしれないよ?





 狂乱し、喚くゴブリンキング。その癇癪染みた命を受け、押し寄せる親衛隊。
 だが如何に強力な武具を身に纏う親衛隊の騎士であろうと、所詮はゴブリン。
 猟兵達と正面からやり合うには明らかに力不足であり、その差を埋める機転すらも搦手を突く猟兵には及ばない。
 ならば、と。同じく親衛隊に属するゴブリンメイジ達が杖を並べれば。一斉に、炎の魔弾を撃ち放つ。
 小鬼にしては、随分と息のあった行動だ。メイジともなれば、多少は知恵が働くのだろうか?
 ……とは言え、だ。

「些か安直な行動ではあるな──!」

 そんな攻撃が、猟兵に通じるはずも無い。
 アギトがその手に握る錫杖を振るえば、練り上げた魔力が水へと変わり、放たれる。
 炎と水。相反する二つの力がぶつかりあえば、相殺するのは自明の理。
 ……いや、完全には相殺はしていない。術者の力量の差か、炎を打ち消してなお蒸発しきらなかった水が、そのままゴブリンメイジを濡らしていく。

「ふむ、好都合だな」

 自分たちの術が打ち消されるとは露とも思っていなかったのか。小鬼術士達が混乱したように喚く。
 そんな耳障りな雑音を無視して、続けて錫杖を振るうアギトが打ち出したのは、氷の波動。
 まるで極地で吹き荒ぶ風の如く冷たい風が吹き抜ければ……身体を濡らした小鬼術士達の身体はたちまち氷付き、氷像と化すばかりだ。

「さて、これで邪魔者は消えたな」

 小鬼の王を視界に収め、アギトは聖木の葉を掌に握る。
 力を通せば、その力に反応するかのように葉の力がアギトに流れるが……葉から溢れる力はこんな物では無いことは、アギトには判っていた。

(──なるほど、心の力か。面白い理論だ)

 先んじて動いた猟兵が示した道。彼らの献身により、託されたアイテムの力を引き出す方法は理解した。その労苦には、報いねばならない。
 だが、しかしだ。

「鍵、鍵か……」

 葉と共に握る、鍵。不思議な輝きを放つ小さな鍵に、アギトの知的好奇心が刺激される。
 開くかどうかは別として、鍵があればとりあえず差し込んでみたいと思うのが人情というものだろう。
 先程、魔術を使った猟兵はこの鍵を天に翳していた。『空間を開ける』と言わんばかりのその選択は、まさに目から鱗と言った所だが……なればこそ、アギトとしては別の方向性も試してみたい物である。
 しかし、一体何を試すべきか。その答えは、アギトの中では決まっていた。

(あの、無敵の鎧の隙間。そこにこの鍵を差し込めば、どうなるかな?)

 その上で、鍵に雷なんぞを落としたら更にどうなるだろうか?
 ……一度仮説を立てると、証明してみたくなるのは学者の性という物で。アギトとしても、この性は悪癖であるとは思っている。
 だが、止められない。この好奇心が納得を得るまで、この『意思』は止められないのだ。

「僕の意思は正義とは違うが……ある意味、もっと強いかもしれないよ?」

 『意思』の力を受ければ葉は輝いて。アギトの身体に、力が満ちる。
 全身を満たす力を受けて、アギトが駆け出す。
 気づけばその背には、もう一人の人影があった。アギトの生命力を代償に喚び出した、自分自身の分身だ。
 葉から受けた力によって、アギトの生命力は溢れ出んばかりに満ちている。故に分身のその力は、本体であるアギトに比肩する程に高い。
 そんな二人に襲われれば……王とは言え小鬼の延長線上でしかないゴブリンキングに、適切な対処が出来るはずも無い。

 ──ギィィィッ! ギャッ! ギャアッ!!

 意味のない甲高い喚き声を上げながら、右腕一本で王笏を振り回す小鬼の王。
 狂乱のままに振るわれるそれは、当たれば確かに大きなダメージを避け得ないだろうが……アギトはそれを、軽やかに躱して。

「──シッ!」

 更に一歩、踏み込んで。構えた錫杖で王の脚を掬うように薙ぎ払えば、注意力の欠けた王は見事に転ぶ。
 苦悶の声を上げ、転がる王。その隙を突く様に。

「今だ!」
『任せてくれ!』

 叫ぶアギトに応える分身。分身に鍵を受け渡せば、隙だらけの小鬼の王が纏う罅割れた鎧の左肩口に──。

『ハッ──!』

 碧い稲妻を纏う鍵を突き入れれば。
 鍵に蓄えられた稲妻が、鎧の内側で弾けて小鬼の王の身体を灼いていく。

 ──ギャァァァァァァァッ!!

 まるで断末魔の如き悲鳴が、戦場に轟く。
 ……絶対不壊の鎧。その内側に稲妻を流せば、逃げ場の無い電流は中身を巡り焼き続ける。
 立ち上げた仮説の証明を見て、アギトの好奇心が満たされたのか。その口から知らず、息が零れ出る。

 ──ギィィィィィィイイイイイッッッ!!!!

「──何っ!? くっ……!」

 その一瞬の隙を突く様に、咆哮する小鬼の王。
 同時にどこからか現れたのは、小鬼の戦奴隷の大軍勢だ。
 地を埋め尽くすかのようなその数に、アギトは間一髪気がついて難を逃れたが……王の間近にいた分身は、一瞬で飲み込まれて消えていく。

 ──ニンゲン、ミナゴロシィィィィ!!!

 目を紅く輝かせ、吠える小鬼の王。
 猛々しく戦意を叫ぶが……だがその身体が満身創痍である事は、間違いない。
 小鬼の王との戦いは、最後の局面を迎えつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

琶咲・真琴
WIZ
死なせない
そんな事、させない!


詠唱系の技能をフル稼働でUCを発動
想い描くはボクの白炎
ボクの意思に呼応して燃え盛る、畏れの炎

更に世界樹の葉や『鍵』、『輝く輝石』の力を引き出し、この戦場で戦っている味方へその力を行き渡らせる能力を付与する

お願いです
ボクはここにいる人達を
皆を守りたいのです

どうか、力を貸してください
世界樹さん達

光は、ボクが皆に届けます!

ボクも白炎を輝うさに纏わせて切りこみ
迫りくる敵をなぎ払って一掃

お祖父ちゃんお祖母ちゃんは
空中からゴブリンキングの鎧の隙間を狙って(スナイパー・空中系技能など




アドリブ
連携歓迎





 咆哮を上げる小鬼の王。
 殺意に満ちたその声に、現れた小鬼戦奴の軍勢が動き出す。
 その足が進む先は、開拓村。猟兵が、村の戦士達が、その協力者達が護ろうと力を尽くす、その村だ。
 村を、守らねば。だが猟兵達の多くは小鬼の親衛隊との戦闘で手を取られている。協力者達は、その数が足りない。
 このままでは、村が危ない。

「──死なせない!」

 戦士達の意思が焦燥に飲まれかけた、その瞬間。響いたのは真琴の声だった。
 強い決意を込め、眦を決する真琴。その戦意に呼応するかのように、真琴の周囲に力が渦巻き、陽炎が沸き立ち……真白い炎が、生み出される。
 その炎は、真琴の意思が具現化した存在。悪意を挫き、正義を救ける為に燃え盛る、畏れの炎である。

「皆殺しだなんて、そんな事は絶対にさせない!」

 喚き立てる小鬼が放つ雑音を打ち消すかのように、凛と叫ぶ真琴。
 その決然とした姿に、炎が一際強く燃え上がり……瞬間、居合わせる猟兵や協力者達の内に、力が満ちる。
 顔を見合わせる戦士達。今の力は、一体……?

(お願いです。ボクはここにいる人達を。皆を守りたいのです)

 その答えは、真琴の炎の力による物だ。
 真琴が生み出した炎。その能力の本来の形は、炎ではない。
 【画龍の筆(ベリル・シーカー)】と名付けられたその能力は、『真琴自身が想い描いたモノ』を構築する事にある。その上で、『その場に最適な能力を付与する』という特性も併せ持つ能力である。
 その能力を用い、真琴が今回選んだ形が炎であったという事なのだ。
 そして肝心の、もう一つの特性。付与された、最適な能力というのは……。

(『聖木の葉』、『鍵』、『輝く輝石』。どうか、ボクに。皆に……力を、貸して下さい)

 猟兵たちに託された三つのアイテム。今回の戦いの、文字通りの要となる品々から引き出したその力を、仲間達に行き渡らせるという能力であった。
 三つのアイテムを胸に抱き、祈る真琴。
 共に戦う仲間を。無辜の民を。この世界を。ただ、守りたい。
 純粋なその『意思』を注がれたそれぞれの品が輝きを放てば……。

「その光は、ボクが皆に届けます!」

 光は真琴の身体から炎を伝い、心を共にする者達に力を与えるのだ。
 高まる力に、戦士達の戦意も燃え滾る。
 押し寄せる小鬼、何するものぞ。我らには共に轡を並べる猟兵が付いている!
 身体を張って、小鬼戦奴の進軍を食い止める戦士達。その勇気と献身に、小鬼の足並みが鈍る。
 ──隙が、出来た!

「行くよ、輝うさ──やぁぁぁああああ!!」

 携えた面を着けた黒兎のぬいぐるみを薙刀と変え、真琴が吶喊。
 鋭い鬨の声を上げながら振るう薙刀は、一振りで複数の小鬼を斬り裂いてく。
 戦場に吹き乱れる血霞。その鮮血が吹き上がる度に、小鬼の軍勢の進軍は更に鈍り……その戦意を、挫いていく。
 小鬼の王の悪足掻き。その一手は、純粋一途な意思の力に阻まれたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

秋月・信子
●SPD

影を通して感じ得た異質さ、影からの警告を改めて分かりました
アレは如何なる攻撃も受け付けない鎧だと
対キャバリア用兵器を持ってしても砕かれない神秘であると
これは神の御業、祝福という名のギフトに他ならないところですが、私達にも打つ手はまだ残されています
この鍵と輝石です

――概念、鋳造
銃を、鍵を、輝く輝石を影に溶かし一体化…鍵の金属を如何なる物も開かせる被服に、円錐状に整えた輝く輝石は弾芯に、それらを組合わえた弾頭を撃つに再構成された対物ライフル状の魔銃をアリスナイトの力を持って創造(ロールアウト)

魔銃、解凍…装填された対ブラキオン弾は一発限り
【スナイパー】として、ワンショットで決めてみせます





 親衛隊の多くは駆逐され、悪足掻きの如く喚び出された戦奴もまた駆除された。
 最早、小鬼の王は丸裸。その上で既に数度、猟兵の的確な攻撃を受けて満身創痍と言った様相を晒している状態だ。
 あと一押。押し込めば、勝利を掴めるはず。

「──概念、鋳造」

 その最後の一押しを決めるべく、信子がその力を解き放つ。
 ……最初に小鬼の王を発見したのは、信子の影だった。その影を通して、信子は誰よりも早く目の前の小鬼の王が纏う鎧の異質さを理解していた。
 即ち、あの鎧は通常の如何なる攻撃をも受け付けない鎧であると。人類の叡智の結晶とも言える巨大人型兵器、キャバリアの武器を持ってしても砕けぬ、神秘の存在であると。
 信子はその事を、重々理解していた。

「──形象、開始」

 成程、確かにその力は神の御業。大天使の祝福(ギフト)に他ならない。
 その力を前にすれば、並の戦士ならば、太刀打ちする事も敵わない。猟兵であっても、苦戦は免れない事だろう。
 そんな力を身に受ければ、小鬼が調子に乗るのも理解できる。

「──骨子、形成」

 だが猟兵達が積み上げてきた縁が、この事態の打破に繋がった。
 託されたアイテムを、ぎゅっと拳に握る信子。
 じわりと掌から感じる熱を取り込むかのように。最後の一言を、信子が叫ぶ。

「──形象、完了(ロール・アウト)」

 手に携えた銃を、『鍵』を、『輝石』を影に溶かす。そうして創造するのは、この状況を打破する力が篭められた武器。
 輝石は円錐状に整えて、弾芯を構築。その弾芯を、鍵を溶かして構築した被覆で覆う。
 被覆には、鍵から吸い上げた『閉ざされた場所を開く』という概念が付与されている。
 この概念弾を名付けるのならば、『対ブラキオン弾』。一発限りの、まさに切札だ。

「魔銃、解凍!」

 その概念弾を、同じく想像から創造した対物ライフルに装填すれば。信子の身体が迷いなく、射撃姿勢を取る。
 後ろ膝を地面に着けて、片膝立ちの姿勢を取る。左手をハンドグリップに添え、ストックを肩に当てて安定性を確保。
 俗に言う、膝射(ニーニング)の構えでスコープを除く。

(ワンショットで──)

 スコープ越しに、狂乱する小鬼の王の姿を睨む。
 狙うは、左肩。罅の入ったその場所だ。
 魔弾の射手として、数多の敵を撃ち抜いてきた信子である。この程度の狙撃で、今更心は揺るがない。
 すぅ、と深く細く息を吸い──止めて。

「──決めてみせます」

 銃爪を、引く。
 乾いた音と共に放たれた魔弾は、音を斬り裂き一直線に小鬼の王の左肩へと突き刺さる。
 鍵の概念が罅割れた鎧の纏う力を抉じ開けて。力満ちる弾芯が鎧を砕き、纏う肉体を貫けば。

 ──ズゥ、ン……。

 血飛沫を噴き上げた小鬼の王の身体が、鈍く重い音を大地に響かせ倒れ込む。
 その身体が一度二度、ピクリと痙攣するが……直ぐに限界を迎えたか。動きを止めて、塵へと還る。
 無敵の鎧を纏う、小鬼の王。大天使の走狗は、こうして斃されたのだった。

「これで、敵の尖兵は排除出来ました」

 支配者である上位種が駆除された以上、残る小鬼の残党もそう遠からず駆逐される事だろう。村の安全は、担保されたと言っていいはずだ。
 ならば、後は……今回の事件を引き起こした首魁。あの小高い丘に居るはずの、大天使を討つのみ──!

 ──カッ!!

 瞬間、猟兵達の立つ地に光が満ちる。
 目も眩むような眩い発光。その光が、収まれば。

「──やはり、小鬼風情では如何ともし難いか」

 猟兵達の前に、一人の美丈夫が立つのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『大天使ブラキエル』

POW   :    岩腕
単純で重い【岩石でできた巨大な腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    絶対物質ブラキオン
【「絶対物質ブラキオン」の鎧】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、「絶対物質ブラキオン」の鎧から何度でも発動できる。
WIZ   :    大天使の光輪
自身が装備する【大天使の光輪】から【破壊の光】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【徐々に石化】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




「──やはり、小鬼風情では如何ともし難いか」

 猟兵達の前に現れた、一人の美丈夫。
 金の髪に、青い瞳の端正な顔立ち。整った肢体の、彫像のように美しい男だ。
 だが、男の最大の特徴はそこでは無い。背には光り輝く雄々しき翼を持ち、その身体には力溢れる光輪(エンジェルリング)を伴っていた。
 ……その姿を見れば、猟兵達には判るだろう。
 この男こそ、この世界を狙う猟書家の首魁。天上界を求めし者、『大天使ブラキエル』なのだと。

「成程。『骸の月』を止めたその実力、伊達では無いようだ」

 居並ぶ猟兵を眺めつつ、ブラキエルが言葉を紡ぐ。
 凪いだ水面の様に、感情の色が薄い声だ。瞳の光も薄く、小鬼の軍勢が止められた事に特に感慨を抱いていない様に見受けられる。
 ……しかし、だ。

「だからと言って、我もここで引き下がる訳にはいかん」

 その声色に、僅かな熱が篭る。
 友の願い、その約束を果たす為。
 そして何より、今もまだ天上に座したままに事態を見守るばかりの愚かな者達を誅する為に。
 それが外道な行いであると知りながら、大天使は往かねばならぬのだから。

「我はオウガ・フォーミュラ『ブラキエル』」

 輝く翼を雄々しく広げ、大天使がその腕を広げる。
 広げた腕は未知の輝きを放つ岩石へと変わり、その身体には絶対不壊の鎧が張り巡らされる。
 七大元素が一、『絶対物質ブラキオン』を司る大天使が、戦闘形態を取ったのだ。

「猟兵よ。我の行いを止めたくば、我を討ち滅してみせよ」

 荘厳に響くその言葉を聞けば、猟兵達もそれぞれに武器を構えて天使へ挑む。
 辺境の開拓村と、この世界に生きる生命の未来を占う一大決戦。
 その火蓋が今まさに、切って落とされようとしていた。

 ====================

●第三章、捕捉

 第三章、ボス戦。敵は『大天使ブラキエル』。
 アックス&ウィザーズを狙い暗躍する猟書家の首領、オウガ・フォーミュラが相手となります。

 ブラキエルは第一章で登場した岩腕と、第二章で登場した無敵の鎧を装備した状態で皆さんと相対します。
 その上、その地力は猟兵を遥かに上回る為、『確実に先制攻撃を行います』。
 強力な敵の攻撃をどう対処するか、猟兵の立ち回りが試されます。
(上手く先制攻撃に対処出来たと判定されたプレイングには、ボーナスが与えられます)

 戦場は一章・二章と同様、村近郊の平野。障害となる物は、特にありません。
 また一章で登場したNPCや二章で登場したアイテムなども、ご要望があれば利用出来ます。
 戦場にあるありとあらゆる物を駆使するか。それとも自らの力のみで血路を拓くか。
 戦い方は、皆様次第となります。

 捕捉は以上です。
 猟書家最終決戦。大天使ブラキエル戦。
 皆様の熱いプレイング、お待ちしております!

 ====================
御剣・刀也
真の姿、いしはま絵師のJC参照

おでましか。天使様
お前の加護を受けた奴等はみんな果てた。お前にも譲れないものがあるんだろう
退けないところまで来てしまったなら、ぶつかるしかない。来いよ。お前と言う存在を、俺に刻んで見せろ

岩腕での攻撃は、腕があまりに大きいのであれば、武器受け、第六感、見切り、残像で捌こうとせず、勇気で恐怖を闘志に変え、ダッシュで一気に駆け抜け、懐に飛び込んだら捨て身の一撃で防御ごと斬り捨てる
普通の腕サイズならば、第六感、見切り、残像、武器受け、グラップルで捌き、捨て身の一撃で斬り捨てる
「天上の神だろうが、敵となるなら斬り捨てる。心配しなくても、敵になるなら直ぐに送ってやるよ」





 輝く翼を雄々しく広げ、遂に戦場に降り立った大天使。
 威に満ちたブラキエルのその姿を前にしても……。

「おでましか、天使様よ」

 刀也の戦意に、些かの衰えも無い。それどころか、昂ぶる戦意を更に滾らせ、紫電と変えて迸らせる程である。
 大天使の加護を受けて小鬼の軍勢は、既に果てた。猟兵達の武威と積み上げた縁の前にその加護を破られ、この戦場に骸を晒した。
 大勢は、傾きつつある。そんな状況で自ら戦地に降り立ちその力を振るうという大天使の振る舞い、何とも諦めの悪い事である。
 だがしかし、それも厭わずに自ら立ったという事は……それだけ、大天使にも譲れぬ物があるという事なのだろう。

「そうだよな。退けない所まで来てしまったなら、後はぶつかるしかない」

 吠え立てる不屈の獅子の如く美しい刃を、引き抜き構える。
 瞬間、迸る紫電が更にその勢いを増して。

「──来いよ。お前という存在を、俺に刻んでみせろ」
「吠えたな、猟兵。ならば、刻んでみせようか──!」

 挑発するかのように刀也が言葉を紡ぎ出せば、その挑戦を受けた大天使が動き出す。
 振り上がる大天使の腕。岩石と化したその巨腕の質量を正面から受けるのは難しいだろう。
 ならば、ここは前に出るべきだ。
 古書に曰く、『男児当に死中に生を求むべし。坐して窮すべけんや』。
 死中に活を求める、という故事の元となった言葉を体現する様に。刀也の身体が、敵との距離を詰める!

 ──轟ッ!

 頭上から響く轟音。大天使の岩腕が空気を切り裂くその音だ。
 チリチリとひりつくような殺気。自らの背筋を走るその感覚は、戦人たる刀也には馴染みのある感覚だ。
 一歩踏み間違えば、死は免れない。だがその感覚を、刀也は恐れない。
 ……いや、恐れを感じてはいる。その恐れを刀也は勇気で捻じ伏せ、己の闘志を滾らす燃料と変えているだけなのだ。

(──ほぅ?)

 空を切る拳。その懐へと潜り込む刀也。
 そんな刀也の姿に、感心したかのように大天使がほんの僅かに目を見開く。
 死の恐怖。その感覚は、生物であれば誰もが抗えぬ恐ろしい物だ。
 そんな感覚を、この勇士は勇気という『意思の力』で捻じ伏せてみせたのだ。その覚悟、称賛に値するものである。
 ──ならば褒美として、その一撃は甘んじて受けてやろう。

「オォォォォォォッッ!!!」

 轟く咆哮。閃く剛剣。
 懐に潜り、脇をすり抜けざまに振るわれた刀也の一閃が、大天使の胴を打つ。
 刃と鎧。鋼と鋼がぶつかり合う鈍い音が戦場に響き……静寂が、訪れて。

「……天上の神だろうが、敵となるなら斬り捨てるさ」

 ──だから、心配しなくても。敵になるなら、直ぐに送ってやるよ。
 その静寂を破る、刀也の呟き。
 残身を解き、刃を鞘へと納め入れ。天使に向き直る事無く、言葉を続ければ。

「そうか。それは実に……勇壮な事だが」

 ──我はまだ、斃れてはおらんぞ?
 答える大天使は、その言葉通りに今も健在。
 だがその姿を見れば、纏う鎧の右脇は砕けている事が。
 そして紅く滴る鮮血が滲み出て、大地を濡らしている事が判るだろう。
 修羅の振るう剛剣。乾坤一擲の雲耀の太刀は、確かに大天使の身体に傷を刻んだのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニクロム・チタノ
ブラキエルボクに宿るチタノと同じようにアナタは本来人々を導く存在のはず、それを・・・
反抗者としてアナタの圧政に反抗する!
ボクの真の名、紅明日香の名を以てチタノヤタテを降臨させる
チタノヤタテは八つの蒼焔の盾を持つこれを集結させて先制攻撃を防ぎきる、防ぐ裏で八つの重力槍を準備、岩石の腕で石化した盾を砕いた瞬間重力槍を射出
岩石の腕で重力槍を防ごうとしてるねそれこそボクの狙いだよ!
重力槍を開放して超重力を岩石の腕に掛けて地面に縫い付ける
この一瞬の隙、ここを逃せば勝機はない
反抗の妖刀で一気に斬り裂く
これより反抗を開始する
どうか反抗の竜チタノの加護と導きを





 天使。それは神話に謳われる、神の御使いである。
 多くの場合、神の言葉を人々に伝え、導くのが彼らの役割であるが……一部には、ヒトに加護を与え、その道程を見守る者もいる。

「大天使ブラキエル! アナタもボクに力を与えたチタノの様に、本来は人々を導く存在のはず……!」

 そんな存在と同じ『天使』の肩書を、目の前に立つ美丈夫も持っている。
 それならば、彼もきっと。かつてはヒトの守護者であったはず。
 ──それなのに。

「何故、こんな事を!」

 叫ぶ様なニクロムの問いに、大天使は答えない。
 語ることは無いというように、小さく一度首を振り……その身に纏う光輪(エンジェルリング)を輝かせる。
 放たれたその光は、七大元素を操る彼の力が乗せられた滅びの光だ。
 もし直撃を受けたなら、無事では済まない事は明白だ。

「そうですか。ならば──!」

 そんなブラキエルの態度に、ニクロムの心に火が灯る。
 強大な力を持つ、大天使。その力のままに、奴はこの地の生命を蹂躙せんとしている。
 その振る舞いは、まさに圧制者。暴虐の徒以外の何物でもない。
 故に、ニクロム・チタノは……いいや。

「ボクの真の名を以て! 降臨せよ、『チタノヤタテ』!」

 ──『紅・明日香』は、叫ぶのだ。
 希う少女の声に、具現化し顕れ出るのは巨大な異形。蒼焔に燃える八つの盾を持つ、『チタノヤタテ』だ。
 その巨体と盾を活かし、チタノヤタテが邪悪な光から少女の身体を覆い隠すが……。

 ──ピキッ……ビキキッ……!

 そうなれば必然、チタノヤタテの身体が天使の力を一身に浴びる事となる。
 身体が、盾が。チタノヤタテが、音を立てて石へと変じていく。
 その巨体と、盾の数々。チタノヤタテのその防御力は成程、鉄壁と呼ぶに相応しい物がある。
 だがその防御力が、仇となった。攻撃を真正面から受けた事で、その力を封じられていく。

「己の力を過信したな。その慢心、贖うが良い」

 巨大な彫像と化す異形。その像へ向け、大天使が岩腕を構え、振り抜く。
 構えも何も無い、只の力任せの一撃だ。
 だがそれだけに、その威力は絶大。殴られた巨岩が一瞬で砕かれ、塵と化し──。

「──それこそが、ボクの狙いだよ!」

 瞬間、響く明日香の声。
 同時に放たれた重力の槍が、大天使の岩腕を捉えれば。急激に増加した重みに、大天使の動きが鈍る。
 チタノヤタテ。その特徴は、先に触れた通りであるが……それが特徴の全てである、という訳ではない。チタノヤタテにはもう一つ、特性があったのだ。
 もう一つのその特性とは、『超重力槍の形成』能力である。
 その形成された槍を明日香は、チタノヤタテの身体に纏わせるように構築し、チタノヤタテの身体が大天使の一撃に砕かれた瞬間、射出してみせたのだ。
 ……肉と骨を断たせながらも返される、強力な一撃(カウンター)。そんな攻撃を避けるには、予知の域に達した直感が必要だ。
 流石の大天使にも、そこまでの直感は備わっていなかったらしい。重力の槍は、明日香の目論見通りに敵の体を捉えたのだ。

(ここを逃せば、勝機は無い!)

 乱れる、大天使の動き。生じた隙はほんの僅か。
 その隙を突くように、抜き放った反抗の妖刀を振り翳して──。

「やぁぁぁぁぁッ!!」

 大天使の首を断つべく、閃く刃。
 裂帛の気合と共に放たれたその一撃は……。

 ──ギィンッ!

 大天使の光輪が、受け止めた。
 身体を僅かに拗じらせて、鋭い剣閃を間一髪の所で防いだのだ。

「成程。慢心していたのは、我のほうであったか」

 自由を取り戻した大天使の岩腕が、少女の身体を弾く。
 その一打を剣で受けた少女の身体が弾き飛ばされ……敵との距離を、大きく空ける。
 ……武運拙く、明日香の一撃は届かなかった。大天使のその身体に傷を刻む事は、叶わなかった
 だがその戦い方は、間違っていなかったはずだ。
 その事実を示すかのように……明日香を見つめる大天使の目は、少女の勇気を称えるかのような光を灯していたのだから。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

クラリス・シドルヴァニス
初めて目にした天使の姿は教会の絵画より遙かに
神々しく、美しい。けれど、
地上の生命を消し去ろうとするこの者とは、
決して分かり合えない…!
どんな姿をしていても、やはりオブリビオンは
人類の敵なのね。

冒険者たちと一緒に出撃、それぞれの得意な方法で
私達を援護してもらうわ。
岩腕の一撃は当たると即死なので、冒険者やエルフの助言を借りながら
回避に専念させてもらうわ。
地面がぐちゃぐちゃになっても、セブンリーグブーツの
《地形耐性》《悪路走破》で怯まず前進。
先ほどと同じ要領で、世界樹の葉から物質打消しの力を引き出して、
【聖戦の印】発動。強敵相手なので命中率を重視し、
攻撃を的確に当てることを心がけるわ。





 光り輝く光輪(エンジェルリング)。真白い翼と、美しき彫刻の様な均整の取れた身体。
 クラリスが初めて目にした天使のその姿は、彼女が識るどんな宗教画に描かれた天使のそれよりも遥かに神々しく、美しかった。

(けれど……)

 この勇壮にして壮麗な大天使は、地上に生きる生命を消し去ろうとしているのだという。
 その果てに目指すのは、ただ天上界へ至る事。つまりは、完全なる私利私欲である。

(どんな姿をしていても。やはりオブリビオンは、人類の敵なのね)

 ……そんな存在と、分かり合う事など出来はしない、と。聖剣の柄を握るクラリスの掌に力が篭る。
 先程の小鬼の王との戦いで、身体の消耗は否定は出来ないが……高まる危機感に、人々の守護を掲げる聖騎士としての矜持が刺激されるこの状況を思えば。大人しく引き下がる事など、出来はしない。

「皆、援護を!」

 後ろに控える協力者に声を掛け、駆け出すクラリス。
 真正面から挑む麗しの聖騎士のその姿に、大天使が片眉を上げる。
 正面からとは、潔し。ならばその姿に敬意を払い……。

「我も全力を以て、押し潰そう──!」

 その岩腕が、大振りに振るわれる。
 ただでさえ、強力な力を誇る大天使である。その力を腕の岩腕で更に高めて放たれる一撃は、文字通り大地を砕く事だろう。
 そんな一撃を仮に受けてしまえば、死は免れない。掠っただけでも、大怪我は避け得ないはずだ。
 故にこの、一撃はなんとしても躱さねばならない。

「騎士殿を援護せよ!」

 ……その為の仕込みは、済んでいる。
 大天使が腕を振り上げたその瞬間、響くエルフの声。
 その声に従う様に、精密無比な森妖精の矢が、数打ちの刀槍が、冒険者の大斧や魔弾が。一斉に、大天使が振り上げた腕へと襲い掛かれば……振り下ろす腕の勢いを、僅かに鈍らせる。
 生まれた隙は、ほんの一瞬。その刹那の瞬間に、全てを賭ける!

「世界樹の葉よ、私に力を!」

 悪意を、挫くべし。人々を、護るべし。
 心に満ちるその想いを注ぎ込むように、聖木の葉に念じれば。先程と同じ光が、クラリスの身体を包み込む。
 消耗した身体に染み入るかのようなその力。まるで世界がクラリスの背を押すかのようなその感覚のままに、更に一歩踏み込めば。

 ──ズズンッッ!!!

 クラリスの背で、弾ける大地。大天使の豪打が地を穿ったのだ。
 揺らぐ大地。ズタズタに崩れる土壌。普通ならば足元を取られ満足に動くこともままならぬが……そんな事は、気にしない。
 もう一歩、強く。強く地を蹴り──。

「この剣に賭けて、あなたを討つ!」

 裂帛の気合を滾らせながら。世界樹の力が宿る聖剣で、大天使のその胴を薙ぐ!

 ──ザンッ!

 金属に打ち込んだ、とは到底思えない軽い手応えがクラリスの手に残る。
 普通なら、そんな軽い手応えに不安を覚えるだろうが……クラリスの胸には、不思議な確信があった。

「今の力……そうか、世界樹か」

 その確信は、間違いではなかった。
 呟かれた大天使のその声にクラリスが振り返れば、そこに居たのはこちらに視線を落とす大天使。
 その身に纏う鎧の左脇腹は綺麗な切り口が刻まれて、吹き出す鮮血が地を汚していた。
 だが、クラリスの手により負傷した大天使のその目に敵意は無かった。
 むしろ世界樹の力を引き出したクラリスを称えるかのように、静かな光をその目に湛えるばかりである。
 ……まさか、完全に戦意を喪ったか? その場に居並ぶ者達の胸に、僅かな期待が過るが……。

「世界すらも、猟兵達の背を押すか。だが──」

 我とて、この誓いを反故には出来んのだ、と。
 掌から溢れる波動で傷口を、破断した鎧を塞ぎ。大天使が、再び猟兵達へと向き直る。
 戦いの本番は、これからだ。そんな予感を、猟兵達は感じていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

プリンセラ・プリンセス
連携・アドリブ可

先制攻撃は○第六感○幸運○見切り、馬に○騎乗しての機動回避。命中する場合は○オーラ防御○激痛耐性で耐える。

陸獣を遡源とする魚は巨鯨が持つバハムートの語源としての能力を使用する。
バハムートはUDCアースの知識。ブラキエルが知るはずもなし。そのまま鯨としての能力を使うのがせいぜい。
だがプリンセラにはUDCアースで過ごした時期がある。その時に手に入れた知識ならば!
「バハムートにはこういうものもあります!」
ブラキエルに向かって自らを弾頭として上空から落ちてくるのは全長2kmの空中要塞バハムート級1番艦。
これほどの質量。いかに天使といえども耐えきれるものであるはずがない。





 破断された鎧が塞がれて、大天使が猟兵に向き直る。
 見れば、鎧には不思議な光が宿っている。その光を目にして、プリンセラ・プリンセス(Fly Baby Fly・f01272)の頭に予感が過る。

 ──あの鎧に攻撃を当てれば、『そっくりそのまま返されてしまう』だろう、と。

 下手に仕掛ければ、返り討ちに遭うのは必定。しかしユーベルコード以外の攻撃が大天使に通じるとは思えない。
 ならば、このまま睨み合って千日手を決め込むべきか?
 ……いいや、ダメだ。こちらが動かない事を良い事に、大天使が新たな眷属を喚び出して開拓村を蹂躙する可能性は否定できない。長期戦は相手に有利と考えるべきだろう。
 ならばここは……多少の不利は承知の上で、こちらから仕掛けるべきだろう。

「全竜は鯨であり、鯨は全竜である──」

 身体の宿す力を練り上げて、解き放たれる力ある言葉。
 その力に応えるかのように、空が戦慄き次元が歪む。

「ふむ。召喚術、『鯨』か」

 歪む次元と、漂う力の波動。その様子をちらと見て、大天使が呟く。
 プリンセラが今発現させたその力(ユーベルコード)は、【陸獣を遡源とする魚(ラカブ・バハムート)】と名付けられた異能である。
 その効力を平たく言えば、召喚術。それも大天使が呟いた様に、『鯨』に関する物を喚び出す能力である。
 ……一目見ただけで、プリンセラの力を看破するとは。流石は、『書架の王』の友であると言った所だろうか?

「──ふふ」

 だが、その力を看破されて。プリンセラの表情に浮かんだのは、微笑みだった。
 プリンセラのその様子に、首を傾げる大天使。そんな彼に問うように……。

「大天使ブラキエル。貴方は、『バハムート』という存在を知っていますか?」

 プリンセラが言葉を紡げば。大天使の困惑は、深まるばかりだ。
 ……プリンセラが言う、『バハムート』。それはUDCアース世界のとある神話伝承に登場する、巨大な鯨の幻獣の事である。
 プリンセラの【陸獣を遡源とする魚】は、その『鯨(バハムート)』の力を操る能力である。故に、大天使の看破は間違いではないが……それが彼女の能力の全てでは無い。
 彼女の能力の、その真価とは……。

「私の力は、『バハムート』の『語源』を抑え、派生する全ての存在の能力を扱う能力です」

 プリンセラが語る、その通り。簡単に言えば、『バハムートと名の付く全ての存在の能力を操る』ことこそが、その真価であるのだ。
 UDCアース世界には、神話体系をモチーフとした創作物が無数に存在している。当然その中には、バハムートをモチーフとする存在も数多ある。
 そんな数多ある、『バハムート』には……。

「……こういう存在も、あります!」

 次元を割って顕れ出るのは、超巨大な空中要塞。
 プリンセラは、UDCアース世界で過ごした時期を持つ。その頃に知った創作物に登場したこの要塞にもまた、その名を冠する要塞である。
 で、あるならば。『語源』を抑えたプリンセラがこの要塞を喚び出す事も、能うのだ!

「──あらゆる全竜よ、ここに!」

 天高く腕を掲げたプリンセラの腕が、大天使に向けて振り下ろされれれば。空に浮かぶ要塞が、自らを弾頭として大天使へ向けて落ちていく。
 圧倒的な質量を誇る、巨大要塞だ。その質量を以てすれば、いかに大天使と言えど耐えきれる物ではないはず──。

「──成程。我の識らぬ知識を用いる機転は賞賛に値するが……少々詰めが、甘かったな」

 だがその光景を前にしても、大天使の声に揺らぎは少ない。平坦に響いたその声は、不思議な程に明瞭に、プリンセラの耳へと届く。
 瞬間、翼を羽撃かせ飛び上がる大天使。空を翔けたそのままに、鎧で要塞を受け止めると……そっくりそのまま撃ち返すかのように。プリンセラに向けて、巨大要塞の質量弾が放たれるではないか!

「しまっ──えぇい!」

 己の失態に気付き、プリンセラが臍を噛む。
 自分の攻撃が、丸ごと自分に降り注ぐ。そこまでは、予想は出来ていたし覚悟もしていた。
 だが相手が地で攻撃を受ける事なく、空中に浮かび上がった上で返してくるとは、想定していなかった。
 避ける事は、出来ない。避ければ仲間や協力者、そして背後の開拓村が、質量弾に潰されてしまう。
 自らの身体で、受けるしか無い。覚悟を決め、携えた聖剣を引き抜き構え──。

「くっ、ぁぁぁぁああああああ!!!!」

 質量弾を、真正面から受け止める。
 腕に、脚に、身体に、押し寄せる重み。聖剣の鋼が軋み、保護するかのように身体を覆うオーラの保護が揺らめく。
 だが、まだだ。ここで押し負ける訳にはいかない。
 帝竜の打倒を果たした者として、世界を救った者の一人として。大天使の暴虐に、負ける訳には──!!

 

 ……一体どれだけの時間、耐えていただろうか。
 限界を迎え、プリンセラが遂に地に膝を突く。だが、プリンセラがその力を使い果たしたのとほぼ同時に、空中要塞は消え失せて……空の次元の歪みも、霧散する。
 仲間達も、協力者も、村も。プリンセラの背にあったモノは全て、守られたのだ。

「ほう、耐えたか。見事な物だ」

 そんなプリンセラの姿を褒め称えるかのような、大天使の声。
 地に降り立った彼の鎧は、その力を大きく減じていた。プリンセラの読み程では無かったが……大天使の力を削ぐ事には、成功したらしい。

「胸を張るが良い、娘よ。その力、確かに我に通じていたぞ」

 大天使の賞賛を聞きながら、遂に限界を迎えて倒れたプリンセラが光に包まれ戦場を去る。
 結果として、悔しい形となってしまったが……この結果は、賽の目が僅かに振るわなかっただけの事。
 それでも意地を通したプリンセラの一撃は、確かに大天使に通じたのだ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アネット・レインフォール
▼静
件の武具で冒険者達の被害を抑えられればいいが…。

…しかしこのプレッシャー。
並みの猟書家とは別格、と言った所か。

幸い体力は十分ある。
多少の被害や無茶は覚悟しておく必要がありそうだ。

▼動
予め絶対物質の武具を服の下に着用し
アリシアに回復を依頼。

腕の一撃は刀剣を足場に空中回避を試みるが
最悪、防御しつつ肉体を凌駕するかの如き闘争心で耐える。

【洸将剣】で書架の王の時間凍結氷結晶を模倣
(捨て石&皮肉用)

自身と戦場にある武具や敵の死体を
氷結晶で人型に覆い念動力で操作し
複雑な動きで攪乱&攻撃を。

隙間に絶対物質の剣を突き刺し、
鎧の中に氷結晶を生やす形で内部破壊を試みる。

機会があればダメ元で『神々』の話を聞こう


緋奈森・鈴音
引き続き、鍵に願って力を引き出すー。

重い一撃であるが故に些細な衝撃で攻撃の完璧な制御は乱れる筈。
相手の先制攻撃のタイミングを見切ってカウンターの要領でブラキエルの腕に近い生身の部分に手裏剣を一点集中させ、狙いをずらして初撃を回避するわー。
「(鍵を握って)一撃を躱す力と貫く力を頂戴……」
地形は破壊されるけど空中浮遊で足元に影響は出ないようにして、その地形の破片を利用して姿をくらませて更に手裏剣を投擲するわー。

刺さった手裏剣は抜くことはできず力を奪っていき、その分、おねーさん達を強化していくから、少しずつでも力を削いで味方を強化するように立ち回るわねー。

神々しくても人に害なすなら止めないとね……。





 光に包まれ、戦場を去る猟兵。
 勇敢なる亡国の姫を見つめる大天使の目は、どこか穏やかな光を湛えているように見えた。
 ……だが、しかし。

(──このプレッシャー、並の猟書家とは別格と言った所か)

 表情は穏やかであっても、その身体から発する戦意は凄まじい。
 その圧の強さ、百戦錬磨の武人であるアネットですら僅かに気圧される程の物である。
 とは言え、怖気付く訳にもいかぬだろう。
 ……幸い、先の戦いでは多少体力を温存していた為、アネットの身体には大きな疲労は無い。むしろアリシア(群竜大陸で知己を得た、シャルムーン神のクレリックだ)の回復術を受けた事で、いつも以上に軽やかに動けるような感覚もある程だ。
 この状況なら、多少の無茶をしても問題は無いだろうか?

「助かった。離れていてくれ」
「判りました。ご武運を──!」

 武運を祈るクレリックの言葉に頷きを返し、大天使へと向き直るアネット。同時に心の内で念じれば、彼の所有する愛刀の数々が次元を割って顕れて……アネットの周囲を、漂い出す。
 ……戦いの準備は、整った。だが、その力を振るう前に。アネットには一つ、尋ねたい事があった。

「戦り合う(やりあう)前に一つ、聞かせて欲しい事がある。天上界の『神々』とは、何者だ?」

 それは、大天使の目的の根底。天上界に座すという、『神々』の事だ。
 猟兵たちにとって、未知の地である天上界。そこへと至る道は、帝竜ヴァルギリオスにより封じられたままである。
 ……この戦いの後で、もしその地へと至る道が拓かれれば。その地に座すという『神』なる存在とも、遭遇する事になるだろう。
 友好的な関係を築けるのか、それとも敵対するしか道は無いのか。その未来は、今は判らぬが……何にせよ情報があるに越したことは無い。
 そう考えての、アネットの問いであったが……。

「その問いに答える意味は、無いな──!」

 ただ一言。首を振って大天使は拒絶を示し……その岩腕を、アネットに向けて振り下ろす。
 空気を裂く豪腕。雑だが強烈無比なその一撃を、アネットは跳躍一番躱してのける。
 大天使から滲むその感情は、嫌悪。どうやら大天使にとって神々とは、侮蔑に値する存在であるらしい。
 まぁ、この質問は元々ダメ元だ。この大天使にとってはそういう存在であると知れただけで、良しとしよう。
 ……それにしても、だ。

(この威力は、出鱈目だな……!)

 大天使の今の一撃で割れた地を見る。
 無数に罅割れ、ズタズタに崩れた大地。一体どれだけの力を込めて殴れば、こうなるというのだろうか。
 ……小鬼から奪った絶対物質の武具があったとしても、あの一撃は出来れば喰らいたく無いものだ。

「ならば、搦手だな」

 呟き思い描くのは、今この場に最適な武具。
 それは、時間すら凍らせる蒼い結晶。死者すら蘇らせ意のままに操る、絶対零度の力の象徴。
 その名は……『時間凍結氷結晶』という。
 アネットの力で生み出されたその結晶が、アネットの身体を、剣を。更には地に倒れ伏す小鬼の骸や放置された武具を覆っていく。

「──貴様、その力は!」

 その光景を見て、大天使が初めて目を見開いた。そうして同時にその瞳に宿るのは……憤怒だ。
 『時間凍結氷結晶』。その力は、かつてアネットが戦った『書架の王ブックドミネーター』が振るった力である。
 そんな友の力を、目の前の猟兵が模倣しようとしているのだ。

「我が友の力を、劣化させ模倣しようと言うのか……! 不遜極まるぞ、猟兵!」

 友の願いを果たさんと、今回の暴挙に及んだ大天使からすれば。許容できるはずもない。
 激して拳を振り上げて。全身全霊の力を込めた一撃が……。

 ──カッ!!

 アネットへ向けて振り下ろされる。
 まるで閃光が瞬いたかのような圧。目にも留まらぬその一撃は強烈な衝撃波を生み出し、動き出そうとした小鬼の骸や武具を消し飛ばす。
 流石のアネットも、その一撃には反応が僅かに遅れて。振り抜かれた一撃が、アネットの身体に突き刺さる──。

「一撃を躱す力と、貫く力を頂戴……!」

 その、瞬間。飛び来た忍者手裏剣が、横からブラキエルの腕に突き刺さった。

「ぐ、っ……!」

 僅かに呻く、大天使。拳の軌道と勢いがほんの僅かにズレて弱まれば、間一髪の所でアネットが拳を躱す。

(重い一撃であるがゆえに、些細な衝撃で攻撃の制御は乱れるはずよね?)

 苛立たしげに大天使が視線を向けた先にいたのは、鈴音だった。
 鈴音は、相手の攻撃のタイミングを見計らっていた。最も強烈な一撃が放たれる、その瞬間を。
 攻撃が強烈であればあるほど、その力を制御には苦労する物だ。その制御を狂わす為のほんの一瞬の隙を、鈴音は狙い続けていたのだ。
 ……そんな鈴音の立ち回りは、単独であれば通じるものでは無かっただろう。
 だがアネットの捨て石と皮肉を兼ねた『時間凍結氷結晶』を利用するという行動の結果、大天使は激して攻撃は大振りとなり……鈴音の一刺しが通じる隙を生み出すに至ったのだ。

「神々しくても、人に害なすなら止めないとね……!」
「おのれ、邪魔立てをするか!」

 握る鍵の力を引き出しながら、鈴音が再び手裏剣を放てば。激する大天使が再び拳を振り上げて地を砕く。
 爆ぜ散る大地。飛び交う礫が斜線を塞ぐが……その拳に、先程までの威力はない。
 【七赤金星・夜刀神(シチセキキンセイ・ヤトノカミ)】。鈴音の振るう、異能である。
 最初に放たれた手裏剣に篭められたその呪いが、大天使の力を吸い上げ、奪っているのだ。
 だがこの力の真価は、力を奪う事だけに非ず。奪った力を、他者に与えるのが、その真価であるのだ。
 ……では、その奪われた力が与えられているのは、誰なのか。

「──まさか、そこまで激する事になるとは思わなかったが」

 答えは簡単。アネットだ。
 淡々と響いたその声に大天使が視線を向けたのは、己の懐。
 どうやら鈴音が大天使から奪い、与えられたその力で、身体能力を引き上げて……一気に大天使の懐へと、潜り込んだらしい。
 アネットは、既に剣を構えていた。
 引き抜かれたその刃は、先の戦いで奪った絶対物質の剣。片手平突きの構えを取って、氷結晶を纏わせながら……。

「これで、終わりだ──!」

 真正面から、突き入れる!
 絶対不壊の属性を持つ武具同士のぶつかり合いは、お互いがお互いを傷つけられない事は先程証明されている。
 だが、大天使の鎧は度重なる戦いで大きく消耗している。ならば、先程とは同じ結果にはならぬはず──!

 ──ビキッ……ビキキッ、バキィ!!!

 アネットのその推測の正しさは、目の前の光景が示す。
 刃を突き入れられた鎧が砕けて……剥き出しとなった大天使の胴に、刃が突き刺さったのだ。

「ぐッ、ォ────!!」

 苦悶の声を上げる大天使。更に刃が纏う氷結晶がその身体を侵食すれば、その苦悶は声無き叫びへと変わるだろう。
 ……偶然噛み合った、アネットと鈴音の行動。だが偶然であったからこそ、二人の行動は噛み合ったとも言える。
 確かな手応えをその手に掴み、二人は残る者たちに後事を託して退くのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

霧鵺・アギト
そうか、貴様は後にも先にも行けないのだな…。
様々な道筋を模索し見出すその姿勢は嫌いではなかったが…
最後の手段は浅慮すぎて論外だ。
…残念だよ。

先制攻撃は、水の属性魔法を使い、光の屈折を利用して攻撃を逸らす。それで防げそうにない攻撃は【結界術】で防壁作り防御しよう。【多重詠唱】と【高速詠唱】を駆使して状況に応じて対処する。

先制攻撃を凌いだら、こちらも行動開始といこう。【見切り】で追撃をかわしながら【魔力溜め】をし、輝石や葉の力も借りて【全力魔法】で【指定UC】発動。
僕の持てる力全てで、貴様の導き出した解を否定しよう…!

いつか…君が友と屈託なく笑いあえる日が来ることを願うよ。





「ぐっ、ぅ……! まだ、だ。まだ、我は──!」

 大天使の表情から、余裕が消えた。
 不壊の鎧は砕かれて、胴には深い傷を負い。絶対零度の力に、その魂を蝕まれていた。
 その姿は、まさに満身創痍の一言であるが……それでも、大天使の戦意は萎えてはいなかった。

(──嗚呼、そうか。貴様は、後にも先にも行けないのだな……)

 そんな傷だらけの大天使の姿を見て、アギトの胸に憐憫の念が浮かぶ。
 天上界を目指す、大天使。彼はここまで配下を使い、様々な道筋を模索し、実行していた。
 アギトからすれば、目的を果たすという大天使のその執念は嫌いではなかった。
 だが、それだけに。模索した道が失敗に終わり、最後の最後で大天使が採った今回の策は……アギトには、あまりにも浅慮に過ぎる様に感じられていた。

「……残念だよ、大天使ブラキエル」

 故に、アギトが指を振りながら呟いたその言葉は。不思議な程に明瞭に、大天使の耳へと届き……。

「定命の存在の分際で、我を、憐れむか……!」

 その怒りの火に、油を注ぐ。
 自身が憐れまれるという事は、友との約束や、愚かなる神を討つという大義すらも憐れまれるという事である。
 そんな事を、赦してはならないと。苦悶に表情を歪ませながら、大天使がその光輪を瞬かせれば……全てを破壊し、石へと変える呪いの光が解き放たれる。
 だが、その光の波動は。

「繰り返すが……本当に、残念だ」

 アギトの身を侵す事無く。屈折し、歪められ、逸らされた。
 先程、大天使を憐れむかのような呟きを漏らしたその時。アギトはただ、意味もなく指を振っていた訳ではない。練り上げた魔力を指で操作し、自身の周囲に水属性の力場を張り巡らせていたのだ。
 光とは、基本的に直進する性質を持つ。だがその性質には、一つの大きな特徴がある。
 その特徴とは、『異なる物質の境界で進路が曲がる』という性質。俗に言われる、『屈折』という現象である。
 水の力場による屈折で、光を歪め、捻じ曲げる。アギトは光の性質を利用して、大天使の呪いを振り払ったのだ。
 叡智の徒として、日々世界の理を追い求める。学者であるアギトらしい、防御法であると言えるだろう。

「……もし、貴様が万全な状態であったなら。この程度の小細工、簡単に抜かれていただろうが」

 だが、事実は然にあらず。傷つき、怒り、冷静さを喪った大天使の攻撃は容易く防がれて。アギトの身体は、五体無事である。
 最早敵に、追撃の光を放つ余力も無い。
 ……もう、終わりにしよう。

「──さぁ、審判の時だ」

 杖を振るって呟けば、顕れ出るのは無数の時計の針の群れ。
 強い力の波動を放つ針の群れには、アギト自身の魔力のみならず、世界樹の葉や輝く輝石の魔力も上乗せされていた。
 まさに、全身全霊。アギトが引き出せる、全ての力を以て──。

「貴様の導き出した解を、否定しよう……ッ!」

 大天使に、叩きつける!
 幾何学模様を描き飛び交う針が、次々に大天使のその身を穿つ。
 身体を貫く激痛に、声なき声を上げる憐れなる者。せめてもの情けと、その有様を目に入れぬように背を向けつつ。

(いつか……君が友と屈託なく笑い会える日が来る事を、願っているよ)

 アギトは静かに、祈りを捧げるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

秋月・信子
●POW、真の姿

……コード・ヴァイス
【早着替え】でROSETTAの光を纏って真の姿となり、私の影をデコイとして岩腕の一撃で破壊される地形より飛翔
そのまま【空中戦】に移行して【空中機動】により追撃を回避します

如何なる使命や大義があろうとも、無辜の人々の血を以ってそれを成そうとするのは傲慢なる堕天使に他なりません
あれは天使の姿をしたオブリビオン
他世界の猟書家をも束ねるオウガ・フォーミュラ

そうあって欲しいと願いながら、トリガーを引きます
イマジネーション…岩腕をも貫通する【鎧砕き】の概念も付与した、書を焼き尽くし塵と化す『紅蓮の魔弾』
せめてもの手向けです
友と呼ぶ書架の王との再会を消滅前に視せましょう





 優美にして剛健、壮麗にして質実。
 人々の目を惹きつけた大天使は、今は全身を貫かれた満身創痍の姿を晒す。
 大天使の傷は、一目見ても致命傷だと感じられる程。流れた血潮は崩壊した大地を紅く染め、遠からず力尽きるだろう事は明白だ。
 だが、それでも……最早動く事もままならず、ただ滅ぶその時を待つばかりであるというのに。大天使の目だけは、死んではいなかった。
 圧倒的な意思の光を宿すその目。その目で見竦められれば、常人の脚は震えるばかりであろう。

(如何なる使命や大義があろうとも……)

 だが、しかし。信子の脚に、震えは無い。むしろその刺す様な視線を真正面から受け止めて、逆に睨み返す程である。
 かつてミッション系の女学園に通っていた信子にとって、天使という存在はそれなりに親しみのある存在である。
 だが、目の前の存在はどうか。姿形は確かに光り輝く天使の姿だが、無辜の人々の血を以て抱く使命や大願を果たさんとするその姿勢は……傲慢なる堕天使の姿、そのものではないか。
 そうだ、あれは天使の姿をしたオブリビオン。動乱を越え、平和の訪れた世界を脅かさんと蠢動し続けて者たちの王、『オウガ・フォーミュラ』。
 ……ならば、討たねばならない。

「……コード・ヴァイス!」

 手に握る端末を立ち上げ叫べば、端末から迸る光が信子を包む。
 瞬間、信子の衣服が光に解け……露わとなった白い肌に、白のインナースーツが、蒼で纏められた機械甲冑が装着されていく。
 この姿こそ、信子の猟兵としての真の姿。彼女自身の力を最大限に引き出す為の、決戦装束である。

「リフター、展開ッ!!」

 鋭い呼気を口から溢し、リフターを展開させた信子の身体が宙を舞う。
 そうして上空に位置取れば。これまでも数多の強敵を屠ってきた必殺の一撃を放たんと、構える武器は大型のバスターランチャー。
 大天使の妨害は、無い。やはり動く事もままならぬのか、ただ信子の動きを目で睨むばかりである。
 そんな堕天使のその姿を、ランチャーのスコープ越しに確りと見据えて……。

「──セット、ファイア!」

 その銃爪を、引いた。
 撃ち放たれたのは、燃え盛る紅蓮の魔弾。どんな強固な装甲も貫き、どんな魔書をも焼き尽くして塵と変えるかのような一撃である。
 ……その上で。

「……せめてもの、手向けです」

 そんな魔弾に更に乗せるは、もう一つの属性。
 迫る魔弾を睨む大天使の目が、驚愕に見開き……そして次の瞬間、その表情が悔恨へと変わる。
 そうして迎撃体勢を取る事も無く、何事かを呟くように口を動かして……悄然と、その身の滅びを受け入れる。

 ──済まない、友よ。我が力の至らなさを、赦せ。

 燃え上がり、その存在を無へと返していく大天使。その最後の言葉を、信子の耳は確かに耳にしていた。
 ……信子が魔弾に乗せた、もう一つの属性。それは、『幻覚』であった。
 自身の目的もあったとは言え。大天使が天上界を目指した理由の大きな所は、『友との約定を果たす為』である。
 そんな大天使の姿勢が、信子の琴線に触れたのだ。『近くて遠い、帰れない故郷で待つ友ともう一度逢いたい』と、そう願う信子の心に。
 信子の呟いた、その通り。信子の一撃は、友を求める同類足る存在への慈悲であったのだ。
 ……空へと昇る、一筋の煙。その行方を、信子の蒼い瞳はただ見守っていた。

 こうして、大天使による大量虐殺は防がれた。
 辺境の開拓村は、再び猟兵達の手により護られたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年05月21日


挿絵イラスト