●天上界
「我が友よ、君の願いは叶わなかった。君は『書架』へと帰るがよい。我は天上界の扉を開く僅かな可能性を実行しよう」
猟書家にしてオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』は、手にした剣を、友と呼ぶそれを手放した。
『書架の王』の願いを叶えることができなかったことを悔やむ気持ちは、正しいものであったことだろう。
友を思い、彼のために何かを為そうとするのは正しいことであったのかもしれない。
己の愛と憎しみが満ちる天上界へと、彼と共に還ることを望んでいたが、それは全て猟兵によって阻まれてしまった。
骸の月は沈黙し、侵略魔術【Q】は失敗に終わってしまった。
けれど、『大天使ブラキエル』にはまだ手が一つだけ残されていた。いや、万に一つも可能性はないけれど、それでもやらずには居られない。
それほどまでの愛憎が彼の心の中を支配していたことだろう。
これまで友である『書架の王』のためだけに侵略を行っていたが、最早それもない。その胸中にあるのは愛憎だけである。
「……ああ、わかっているよ。それが万に一つもないことを。帝竜『ヴァルギリオス』さえ見逃し、あまつさえ封印された愚か者共が、今更地上の危機に扉を開く事もあるまいが……」
だが、それでもやらなければならない。
地上を地の海に変える。無差別に殺し尽くす。生命という生命を踏みにじり、降臨すべき大地に死を振りまく。
そこまでしてもなお、天上界の扉が開かぬというのならば、己の失望も正しいものであったと言わざるを得ない。
「己の存在を否定することを否定するのならば、開くがいい、神々よ。我が愛を裏切った、我が憎しみを育てた報いを受ける覚悟があるのならば」
『大天使ブラキエル』は大天使の光輪を輝かせ、岩腕を翻し、そして『絶対物質ブラキオン』を持って神々を誅せんと、月面より舞い降りるのだった――。
●生命の根絶
その日、アックス&ウィザーズは嘗て存在し、滅びた国々の『兵団』たちの再来という未曾有の危機に瀕していた。
言うまでもなく過去の化身オブリビオンの『兵団』である。
彼等は皆『岩石の腕』が移植され、その豪腕はあらゆる生命を一撃のもとにすりつぶすであろう。
言うまでもなく、冒険者たちではひとたまりもない。
けれど、何もせずに死ぬことだけはできない。
ある冒険者パーティがいた。彼等は天空城を探索していた折に猟書家に発見され、殺されようとしていたが、猟兵達に助けられた者たちだった。
「なんだ、こいつらは……! 一発でも受け止めたらまずいぞ!」
「わかっておる! だが、ここまで数が多いと……!」
「まって、あれは……同胞……!『アアチュ・アナ』のみんなが来てくれた!」
人間のバーバリアンとドワーフのパラディンがオブリビオン『兵団』と組み合いながら、エルフのシーフが告げる方角を見やる。
そこにあったのは、『エルフの森』、『聖なる木』である『アアチュ・アナ』からの援軍であった。
エルフアーチャーたちが一斉に矢を放ち、オブリビオン『兵団』を押し返していく。
「大丈夫か! 負傷者は下がれ、無理をするな!」
彼等は月面より飛来するオブリビオン『兵団』をいち早く察知し、駆けつけたのだ。だが、それでもなおオブリビオン『兵団』の数は膨大である。
「そんなことを言ったって、俺達が下がったら……!」
彼等の背後にあるのは街であった。言うまでもなく彼等が拠点にしている街であり、冒険者の街と言っても良かった。
そこには戦えぬ者たちだって多いのだ。ここで彼等が退いては、オブリビオン『兵団』の餌食になるだけだ。
「言の葉の神『シャルムーン』の加護を!」
だが、次の瞬間、冒険者やエルフのアーチャーたちに防護膜のように加護が付与される。何故、と思った瞬間現れたのは『シャルムーン』の信徒たちであった。
彼等の先頭に立つのは、クレリック『ライヴズ』。
彼もまた猟兵達に一度助けられた者だ。彼が周辺に巡礼していた信徒たちを束ねて、この街の危機に駆けつけたのだ。
「加護を過信しないでくれと言うしか無いが、それでも時間は稼げるはずだ」
『ライヴズ』は祈り、信仰の力でもって戦う者たちを援護する。
それでもまだ決定打になりえない。
過去の化身であるオブリビオンは猟兵にしか打倒できない。彼等ができるのは時間稼ぎでしかないのだ。
猟兵達が駆けつけてくれる、その瞬間を待ちわびるしかないのか。
答えは否である。
「いいや、ここは打って出るべきだ。我等の本懐は護ることである。猟兵は必ず来る。だが、彼等とて一騎当千と言えど疲弊もする。ならばこそ、私達が彼等の力を当てにばかりしてはいられない。奮起して、彼等の背を押すのだ。そうして、この背後にいる諸悪の根源を討たねばならない!」
『知識の神エギュレ』の『パラディン』であるソフィアが剣を掲げる。
その切っ先が示すのは月。
今は骸の月は喪われ、この世界に在りし銀光を放つ月より舞い降りし『大天使ブラキエル』を知らしめる。
彼女の言葉は街を護る者たちの心を奮い立たせ、猟兵たちの頼もしき力となって、戦場を蹂躙せんとするオブリビオン『兵団』と激突するのであった――。
●決戦
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回は緊急故に手短に説明をさせていただきます」
彼女の瞳が告げるただならぬ緊迫した輝き。
それはすでに聞き及んでいる者もいるであろう、アックス&ウィザーズ世界においてオウガ・フォーミュラである『大天使ブラキエル』が出現したことを示していた。
「はい、彼の目的は無差別大量虐殺。それによって彼の目的である『天上界』への扉を開かんとしているのです」
今、現地の街がオブリビオンの『兵団』によって襲われているのだという。
雑兵と言えど、『大天使ブラキエル』の『岩腕』によってユーベルコードの破壊力がお大幅に強化されているのだ。
それだけではない、『大天使ブラキエル』の腹心である『黒騎士シリウス』もまた『絶対物質ブラキオン』と呼ばれる『未知の単一原子で出来た鎧』を身にまとっているのだ。
「『黒騎士シリウス』の鎧は絶対に破壊できません。しかし、鎧の僅かな隙間を狙うしか攻略の方法がないのです……もしかしたのならば、これまでみなさんが助けてきた人々の力を借りればあるいは……」
しかし、それは現地で伝え聞くか、協力してもらうしかない。
なにせ既に虐殺は始まっているのだ。急ぎ、猟兵たちは転移を行い、この凶行を阻止しなければならない。
「言うまでもなく現時点での最強のオウガ・フォーミュラ……危険は言うまでもありません」
ですが、とナイアルテは、その瞳を爛々と輝かせ猟兵たちの背を押す。
今まで誰一人としてアックス&ウィザーズに生きる者たちを犠牲にしてこなかったのだ。
その力が今、結実していることを彼女は予知していたのだから――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はアックス&ウィザーズにおける猟書家との最終決戦、オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』との戦いになります。
ある街を襲うオブリビオン『兵団』と腹心である『黒騎士シリウス』。そして、月面より舞い降り、無差別大量虐殺により天上界への扉を開かんとしている『大天使ブラキエル』の企みを阻止するシナリオとなります。
●第一章
集団戦です。
とある冒険者の街を襲うオブリビオン『兵団』たちは皆、『岩腕』と呼ばれるユーベルコードの威力を大幅に強化する力を付与され、虐殺と根絶を行おうとしています。
ですが、これまでみなさんが助けてきた人々が防衛戦を行っています。
彼等と協力し、これらを打倒しましょう。
●第二章
ボス戦です。
『大天使ブラキエル』へと至る道の前に最強の腹心である『黒騎士シリウス』が立ちはだかります。
彼の鎧は『絶対物質ブラキエル』と呼ばれる絶対に破壊できない鎧です。
これを攻略するためには鎧の隙間を狙うしかないのですが、『聖なる木の葉』と『輝石の欠片』を持つ嘗てシナリオでみなさんが助けた人物たちが、それらのアイテムを託してくれます。
二つのアイテムによって『絶対物質ブラキオン』を無効化する影を生み出し、その影に触れた箇所だけは皆さんの攻撃が通るようになるのです。
●第三章
ボス戦です。
オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』との最終決戦です。
言うまでもなく強敵以上の強敵です。凄まじい力を持っており、必ず先制攻撃を持って皆さんを苦しめるでしょう。
第1章のプレイングボーナス……援軍と共に戦う。
第2章のプレイングボーナス……鎧の隙間を狙う/アイテムを使う。
第3章のプレイングボーナス……先制攻撃に対抗する。
またタグの『援軍対応シナリオ(海鶴)』と『アイテム対応シナリオ(海鶴)』が、今回の皆さんの援軍とアイテムに関連したシナリオです。
よろしければご参考ください。
それでは、オウガ・フォーミュラとの一大決戦、大量虐殺から人々を守り、猟書家の侵攻を阻止する皆さんの激戦の物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『兵士』
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POW : ハードスラッシュ
【剣による攻撃】が命中した対象を切断する。
SPD : ペネトレイト
【槍】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ : 無慈悲の乱雨
【10秒間の集中】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【雨の如く降り注ぐ矢】で攻撃する。
イラスト:楠木なっく
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
それは月面より舞い降りし輝きであった。
『絶対物質ブラキオン』を司る『大天使ブラキエル』の軍勢。
岩腕を持って、凄まじき力を振るう嘗ての亡国の『兵団』たち。彼等に意志はなく、けれど、目的はあった。
そう、あらゆる生命を根絶する。
虐殺を行うという目的のみが、彼等の虚ろなる器を満たしていた。
誰にも止められない。彼等に最早意志はないのだ。ただただ、生命を奪う殺戮機械でしかない。
「くそ――ッ! どれだけ湧いて出てくるんだよ!」
バーバリアンの人間の男性が吠える。
どれだけ打ちのめしても、次から次に湧き出てくるのだ。
「泣き言を言うな。男だろう」
そう言って盾で攻撃を受け止め、オブリビオン『兵団』を押し返す、『エギュレのパラディン』ソフィアが言う。
しかし、バーバリアンの男性が言うのもまた真実であった。
押し返しても押し返しても、次から次に『兵団』は湧き上がる。自分たちではオブリビオンを打倒できないとわかっていても、この場から退くことなどできないのだ。
「しかし、それでも我等には光明がある。そう、希望なくば、人は暗き道を歩むこともできない――ああ、来てくれた!」
シャルムーンのクレリック『ライヴズ』が光を見出すように空を見上げる。
そこにあったのは『大天使ブラキエル』の輝きではない。
あの輝きは転移の輝き。
あのときも、あの日も、そうだったのだ。
自分たちの生命を救い、世界に仇為すオブリビオンを許さぬと駆けつけてくれる英雄たちの姿。
その名を彼等はよく知っていた。
そう、彼等の名は――『猟兵』。
世界の悲鳴を聞き届け、世界を滅ぼす者の『敵』であり、彼等にとっての希望そのものであった――。
ミアステラ・ティレスタム
皆様、ありがとうございます
貴殿方の勇気がいつだってわたし達猟兵を奮い立たせる
最早愁いはありません
共にこの戦いに生き残り、そして勝利しましょう
この地に安寧を齎すために、わたしも祈りましょう
わたしは前衛にはたてないのでサポートをお願い出来れば幸いです
彼らに祈りを、我が同胞に祈りを
10秒、矢が飛んでくる前に此方は千の星雨を降らせます
祈ることはわたしの最大の力
彼らを、殲滅します
星の雨を降らせた後は、援軍の皆様を癒すための祈りを捧げましょう
これは優しいあたたかな恵みの雨
戦いはまだ続きます
少しでも皆様の傷を癒せるように心を込めて
その光を見上げた時、冒険者の街を護る者たちはどのような思いを描いただろうか。 やっと、と思っただろうか。
それとも、これからだと思ったことだろうか。
彼等にとって長く険しい戦いが始まったに過ぎないのだが、それでもアックス&ウィザーズ世界に転移してきた猟兵たちの姿は希望の光そのものであったことだろう。
「――来た、来てくれた!」
「ああ、だが此処からが正念場だ! みんな、気を引き締めろ!」
『エギュレのパラディン』であるソフィアが剣を掲げる。
そう、彼等は守られるばかりの者たちではない。
如何にオブリビオン『兵団』の数が多かろうが退くことはない。
彼等は死力を尽くして、街を守らんとしている。無慈悲にも行われる虐殺を防ぎ、喪われる生命を救い出そうと走るのだ。
だからこそ、ミアステラ・ティレスタム(Miaplacidus・f15616)は瞳を伏せたまま、祈るようにつぶやくのだ。
「皆様、ありがとうございます。貴殿方お勇気がいつだってわたし達猟兵を奮い立たせる。最早愁いはありません」
彼女の言葉は、冒険者や街を護るために駆けつけたパラディンに『シャルムーン』の信徒たちの心を奮い立たせたことだろう。
その場にいた誰もが喪われてはならない生命であり、彼が立ち上がったことこそが、猟兵たちの心を燃え上がらせるのだ。
ミアステラもまたその一人である。
静かに心が燃えているような気さえしたのだ。
「共にこの戦いに生き残り、そして勝利しましょう。この地に安寧を齎すために、わたしも祈りましょう」
降り立つミアステラを護るように冒険者達が前を固める。
「わかっているさ。貴方には指一本触れさせはしない!」
冒険者達が壁と成ってオブリビオン『兵団』と激突する。それをみやり、ミアステラは祈りを捧げる。
「祈りを以て謐奏の時を齎しましょう」
奏でられるは、謐奏詩(メディテーション)。
降り注ぐのは星の雨。
『兵団』が放つ矢の機先を制するように放たれた星の雨が『兵団』に降りしきる。それらは一つ一つが必殺の一撃。
千の星雨が『兵団』を貫いていく。
ミアステラの祈りは最高潮に達していたことだろう。
誰かを護ること。誰かを救うこと。
それは即ち自分の世界を広げることと同義であり、それこそが今の彼女の幸せである。
世界をめぐれば己が好ましいと思うものが増えていく。
このアックス&ウィザーズ世界だってそうだ。
喪われてはならない。喪いたくないと願う心が祈りと成って、星の雨の光を眩いものとしていく。
「これは優しいあたたかな恵みの雨。戦いはまだ続きます。少しでも――」
そう、少しで喪われる生命が、傷つく生命がないようにとミアステラは祈る。
降り注ぐ星の雨は慈雨に変わって。
誰かのためにと戦う者たちの傷を癒やしていく。
誰も喪わせはしないとミアステラの祈りが戦場に満ちて、彼女の思いを受けた戦士たちが再びオブリビオン『兵団』を押し返していくのだ。
「傷が癒えていく……これならば!」
冒険者達が一気呵成に走り抜け、クレリックたちの祈りが加護を強めていく。
戦いはいつだって激しいものであるけれど、それでも喪われてほしくないという祈りこそが、彼等を護るように戦場に光の雨が降り続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
悪足掻きは様式美のようだ
戦況は『天光』で逐一把握
業の影響と攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給
天楼で捕獲
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める
内から外へは何もできず逆は自由な理不尽の檻だ
見えず触れ得ぬのに閉ざされ、且つ対象外へは影響皆無。存分に憤れ
範囲は自身が相手取る程度で控えておく
傍らにおらぬとはいえ余計な心配はかけまい
出口は自身に設定
万一抜けてくるなら纏う原理の無限量の圧を乗せ打撃で始末する
※アドリブ歓迎
オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』が月面より舞い降りて、地上の生命という生命をすり潰して天上界の扉を開こうとしているのは、悪足掻きであると断じたのは、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)であった。
「まるで様式美のようだ」
自暴自棄に成っているとも彼の瞳には映ったことだろう。
蒼い光が戦場に満ちていく。
すでに戦場の状況は把握している。纏う十一の原理を無限に回し、降り注ぐオブリビオン『兵団』が放った矢の雨をそらし、ねじ伏せる。
彼等の腕は岩石で出来たような腕に変じていた。
ユーベルコードの威力は一矢が通常の威力を遥かに超えるものであり、それが雨のように降り注ぐのは脅威以外の何物でもなかった。
逸して阻むことをしなければ、貫いてくるほどの威力であった。
これが現時点で最強のオウガ・フォーミュラたる『大天使ブラキエル』が施したオブリビオン『兵団』の強化。
それは凄まじい力というにほかならない。
「だが、世界の外から汲み上げる魔力に底はない――惑え」
アルトリウスのユーベルコードが輝く。
それは天楼(テンロウ)。
自壊の原理で編み上げられた迷宮にオブリビオン『兵団』の一群を取り込み、概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める。
内側から外側へは何も出来ず、逆は自由な理不尽の檻。
「それでも矢を放つか。悪足掻きも此処に極まったな」
アルトリウスは『兵団』の動きをつぶさに見つめる。
そこに意志はない。或るのはただ自動的に動くという概念のみ。ただ、そうあるべきとされた自動機械のように迷宮の内側で矢を放ち続けるのだ。
強度は凄まじいが、物量で出口を導き出すのならば、この迷宮もまた万全とは言い難い。
けれど、その出口にこそアルトリウスが座すのだ。
「万一に抜けてくるのであったとしても、無限量の魔力の前には無意味だ」
冒険者の街を護るために力を振るう。
けれど、それで周囲を巻き込んでは意味がない。アルトリウスにとって、戦いとは常に一方的なものであったが、オウガ・フォーミュラである『大天使ブラキエル』が使役する配下たちは、一端とは言え『大天使ブラキエル』の力を宿した存在だ。
だからこそ、今もなお戦場で戦う冒険者たちを巻き込むわけにはいかない。
だからこそ、力を絞って範囲を狭めるのだ。余計な心配はかけられない。
「だが、それでもお前たちの滅びの定めは覆らない」
走る蒼い光と共に放つアルトリウスの拳が迷宮より抜け出ようとするオブリビオン『兵団』を穿つ。
一瞬の交錯。
放たれた打撃は戦いというほどの意味すらも齎すことはなかったことだろう。
アルトリウスの身に纏う蒼く淡い光が在る限り、冒険者の街を『大天使ブラキエル』が死に染め上げることは無いのだというように、偽りの月を喪い降臨する『大天使ブラキエル』を睨めつけるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
久瀬・了介
天使だろうが悪魔だろうが、オブリビオンであるなら殺す。理由など知った事か。
転移し状況を確認。敵兵隊多数、戦力強大。
味方陣営は…見知った顔がいるな。信頼出来る冒険者達だ。
なら問題無い。
「薙ぎ払う。撃ち漏らしを頼む。」
と味方に声をかけ前に出る。
UC【雷獄】で攻撃。オブリビオンへの【呪詛】を「ヴォルテックエンジン」に込め高圧電流に変換。両手を合わせスパークさせ【属性攻撃】【範囲攻撃】。前方広範囲に電撃を放ち攻撃する。
雷を媒体に【呪詛】を叩き込む。呪いで動きを【捕縛】し、【精神攻撃】で精神を乱し集中を妨げる。
敵戦力は減衰させた。後詰めの冒険者達に声をかけ掃討して貰う。自身もハンドキャノンで援護射撃。
オブリビオン『兵団』が放つ矢は岩腕によって強化され、凄まじい威力で持って冒険者達に襲いかかる。
それは一矢であっても容易く人の命を奪う威力を持っていた。
消耗激しい彼等は、それらをかわし切ることは難しかったことだろう。猟兵達が駆けつけてくれたという精神的支柱だけが、彼等の生命を燃やしていたが、それも長くは保たない。
降り注ぐ矢の前に己の死を覚悟した冒険者たちの眼前に一条の雷光が走る。
それは黒き稲妻であり、人の怨念が為せる業であったことだろう。
そう、その黒き稲妻を、嘗て天空城を探索していた冒険者たちは見たことが在ったのだ。
「あ、あれは――!」
「ああ! あの黒い稲妻は!」
ドワーフのパラディンが目を見開き、人間のバーバリアンが喝采をあげる。
そう、彼等は見ていた。冒険の最中、あの凶悪なオブリビオンに殺されてしまうかも知れないという状況にあって、久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)のヴォルテックエンジンが唸る音と、魂の衝動とも言うべき怨念を電流に変えて放出する音を!
「天使だろうが悪魔だろうが、オブリビオンであるなら殺す。理由など知った事か」
そう、了介にとって、それだけが戦う理由である。
転移した瞬間に彼は戦況を正しく理解していた。
冒険者の街を護る冒険者たちの数は多い。けれど、オブリビオン『兵団』の数はさらにそれを上回り、個体としての力もまた冒険者たちよりも勝っていた。
「敵兵隊多数、戦力強大」
わかっていたことだ。
これが絶望的な戦いであることくらい。けれど、決して諦めぬ、生存への道筋を見失うことなく見つめ続け、戦う者たちがいる。
「……見知った顔がいるな。信頼できる冒険者達だ。なら――」
そう、ならば問題など無い。
己の魂の衝動を電流に変えて『ヴォルテックエンジン』が凄まじい電撃を解き放つ。
ユーベルコードに輝く了介の瞳を前にして、矢の雨など無意味である。
凄まじい勢いで放たれる雷撃は降りしきる矢の尽くを打ち払い、焼き払っていく。
まさに雷獄(ライゴク)。
彼の周囲に在りて、オブリビオンは存在すら許されない。
迸る怨念は呪いに形を変えて、オブリビオン『兵団』たちの足を掴むように、それこそ地獄へと、骸の海へと引きずり込まんと蝕んでいく。
「薙ぎ払う。撃ち漏らしを頼む」
短く背にかばった冒険者パーティに告げる。
最早、言葉は多くなくてもいいだろう。彼等の実力はすでに知っている。ならばできるはずだという信頼が、了介の背中から伝わってくるのを彼等は感じていた。
「任せておいてくれ! だからアンタは存分に!」
「……任せた」
不思議な感覚だった。誰かに背中を任せる。例え、それが一時のものであったとしても了介の心は静かに燃え上がる。
彼等を喪わせてはならぬという魂の衝動がすり合わせた両掌から電撃のスパークをほとばしらせ、広範囲にオブリビオン『兵団』を薙ぎ払うのだ。
雷を媒体にした呪詛が叩き込まれ、倒しきれなくとも呪いが『兵団』の動きを止める。
「俺の怨念を知れ。矢を放つことなど、矢を番う暇すら与えん」
手にしたハンドキャノンの引き金を引く。
轟音が響き、それが合図に成ったように冒険者たちがオブリビオン『兵団』へと雪崩込んでいく。
彼等は確かにオブリビオン『兵団』に劣る。
けれど、彼等の心に燃える灯火こそ、了介や猟兵達が灯したものだ。
それが在る限り、人は負けることはない。
了介は、己の軍人としての責務と矜持を持って護るべきものを護るために黒き雷撃と共に戦場を迅雷のように駆け抜けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第四『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林
虐殺など、させるものですか。
着いたら即刻、先制攻撃の【四天境地・『雪』】にて。10秒の集中すらさせませんよ。
ああ、今回、湖面には皆さんも立てるように結界張ってありますよ。自由に動けます。
…敵には生命力吸収が絶えず襲いかかってますから、集中も阻害されます。
上がってきたとして、早業で矢をいかけますから、やはり打つ手は少なくなるでしょう。
というよりこの場合、岩が邪魔なのでは?
我らは守ると決めたのです。ですから…再び、この地へと降り立ったのですよ。
次々と転移してくる猟兵たちの姿を『シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』は見上げる。
戦いの趨勢は未だ決まらず、オブリビオン『兵団』の数は減らせど減らせど終わりが見えないかのようであった。
加護の力を持って冒険者たちに力を付与するのも限界が近い。
けれど彼等は奮起する。
彼等の加護がなければ『岩腕』によって破壊力を強化されたオブリビオン『兵団』の放つ矢の雨を防ぐことができない。
「堪えどころだ……! 加護を途切れさせるわけにはいかない」
しかし、彼等とて十二分に奮闘していたことだろう。
ただ、オブリビオン『兵団』の物量が凄まじいだけなのだ。数ですり潰されてしまう。後に残るのは虐殺の痕だけであろう。
「虐殺など、させるものですか」
その声が響いた瞬間、『ライヴズ』はユーベルコードの輝きを見たことだろう。
それは、白い雪のような長弓から放たれる氷の矢であった。
時折蒼く煌めくのは、それが馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)のユーベルコードによって生み出されたものである証である。
「凍れ、そのままに」
複合型悪霊の四柱のうちの一柱『静かなる者』が構えた長弓から放たれた矢が、オブリビオン『兵団』へと分裂して降り注ぐ。
それは一瞬の攻防であった。
オブリビオン兵団が矢の雨を振らせるために10秒という時間を要するが、『静かなる者』にはそれがない。
そして、一度放たれてしまえば、それは『時間凍結』によって永遠に訪れることのない10秒を彼等は強いられるのだ。
「これが四天境地・『雪』(シテンキョウチ・ユキ)。これが私の至った境地」
戦いを経て、その境地に至ったことを喜ぶべきであったことだろう。
虐殺などさせぬという意志が彼等の怨念を昇華させるのだ。
「あなたは……!」
クレリックを率いていた『ライヴズ』が見上げる。
彼の姿を知っているけれど、雰囲気が異なる。それはそのはずだ。あのときとは違う一柱が彼等の前に顕現しているのだ。
けれど、『静かなる者』は『ライヴズ』を知っている。彼等は四柱で一つ。
共有された記憶は、『ライヴズ』をねぎらうのだ。
「今は暫し休息を。あれらは今、矢をいかけることはできないでしょうから。貴方方の加護は冒険者たちにとっては命綱。その時間を私が作り出しましょう」
『静かなる』は弓を引き、次々とオブリビオン『兵団』を射抜いていく。
どれだけ数が多かろうが、ユーベルコードの効果によって『時間凍結』されたオブリビオンなど狙う時間もいらぬほどである。
なにせ、動きを止めているのだ。
動かぬ的を射よと命ぜられても、容易くてあくびが出るほどである。
「ありがたい……」
「いえいえ、あの『岩腕』は確かに威力を上げていますが、この場合あれが邪魔をしていますからね」
容易いのですよと『静かなる者』は矢を放ち続ける。
その姿は軽やかなものであったが、けれど絶技であったことだろう。
そして、『ライヴズ』は知る。
彼が如何なる思いでこの戦いに挑んでいるのかを。
「我等は護ると決めたのです。ですから……再び、この地へと降り立ったのですよ」
その瞳にあるのはユーベルードの輝きだけではない。
在ったのは過去の残影であったことだろう。自分たちの故郷もまたオブリビオンに滅ぼされた。
あの光景を二度と見ぬために。
それだけのために彼等は悪霊となり舞い戻ったのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
クルル・ハンドゥーレ
アドリブ連携歓迎
嗚呼、あんたにはあんたの言い分があるんやろ、ブラキエル
なら、私らは私らの言い分を――大切なもんをその力を尽くして護るっていう言い分を
あんたに叩きつけるだけや
10秒間の集中?
させへん!
限界突破+先制攻撃にて先手
UC展開
能う限りの敵を捕捉攻撃
そのまま範囲攻撃+マヒ攻撃+毒使い+鎧無視+破魔で追い討ちを
司令官クラスっぽいのがいたら積極的に狙う
弱っとる討ち漏らしは冒険者さん達どうかよろしゅう!
私はまた元気なんをどつき回しに行く!
背後は任せた!
冒険者達に鼓舞+結界術で強化保護
敵攻撃には見切り+盾受け+武器受け+カウンター+敵を盾にするで対処
冒険者が危なそうならダッシュで手助け
月面より降り立つオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』。
その姿は光輪を纏い、岩腕を振るい、そして『絶対物質ブラキオン』を持ってして、現時点における最強のオウガ・フォーミュラとしての威容を伝えるには十分な存在であった。
その輝きは確かに美しいものであった。
地上に降り立つ姿はまさに神の御使い。
されど、その胸に燃えるは愛憎。ゆえに、クルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)は視線を天に向けてつぶやく。
「嗚呼、あんたにはあんたの言い分があるんやろ、ブラキエル」
何故、神々に失望したのか。
何故、虐殺を行うのか。確固たる理由があるのだろう。それは誰にでもあることであった。
誰もが確固たる信念を持つ。
持たぬ者がいるわけではないのだ。だからこそ、クルルは己の言葉と意志で相対するのだ。
「なら、私らは私らの言い分を――大切なもんを、その力を尽くして護るっていう言い分を」
走る。ただひたすらに走った。
早く、疾く、戦場を走り抜け、一刻でも疾く、一人でも多くの生命を守らんとひた走るのだ。
「――あんたに叩きつけるだけや」
その瞳がユーベルコードに輝く。
手にした薄紅と白の花が咲き乱れ絡みつく薙刀の柄を握りしめる。それはユーベルコードの輝きを受けて、狂奔する雷霆と火焔の嵐を振り抜く。
霹雷炎獄陣(ヘキライエンゴクジン)。
それはまさにそう表現するほか無いほどの強烈なる力の奔流であった。
「きたれ霹靂、きたれ炎獄――此処を敵の奈落となさん――」
オブリビオン『兵団』が矢をいかけるのに10秒以上の集中が必要である。
けれど、それをさせぬのが猟兵である。
展開された雷霆と火焔の嵐がオブリビオン『兵団』を包み込み、尽くを燃やし尽くし、雷でもってその体を焼き焦がすのだ。
「猟兵、か……! 助かるぜ!」
バーバリアンの男性が顔を上げる。冒険者の一党の一人だろう。彼等はクルルの駆け抜ける先を見やる。
クルルが目指すのは、この虐殺の首魁である『大天使ブラキエル』だけである。
一刻も早く戦いの決着をつけるためには戦場を突っ切っていくしかないのだ。
「弱っとる討ち漏らしは冒険者さん達どうかよろしゅう! 私はまだ元気なんをどつき回しに行く!」
華奢な風貌に似合わない言動。
けれど、それがどうにも小刻みいいと感じてしまうのは、彼がまたバーバリアンであるからであろうか。
任せておけ! という言葉をクルルは背に受けながら、戦場を走る。
雷霆と火焔の嵐を撒き散らし、薙刀を振るい、任せた背後の頼もしさを知る。
例え猟兵でなくても、戦う者はいつだっているのだ。
それがオブリビオンとの戦いであったのだとしても、共に戦う者がいるということがこんなにもクルルの足を軽くする。
薙刀を振るい、オブリビオン『兵団』を両断しては戦場を舞うクルル。
その姿はまさに戦場に咲く花のように。
まるで御伽噺の最果てへと躊躇いなく飛び込むように、クルルの薙刀による美しい舞いは、戦場に花を咲かすように、オブリビオン『兵団』の一群を切り裂いていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
うーん最後の悪足掻き感
嫌いじゃ無いけどね
決戦って感じがするじゃん決戦って
雰囲気は大事だよ雰囲気は
さー頑張ってこー!
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
『斬撃波』で集団に遠距離から牽制を掛け、ちょちょっと時間を稼ごう
あ、っていうか他の冒険者とか居るじゃん
ちょっと時間稼いどいて!
えっと何処仕舞ったっけ…えっと…あれ?
あったあった
充電済みエナジーカートリッジ×12!
さてと、じゃあ行くかな
【Code:P.D】起動
全カートリッジロード
12種の雷龍最大スケールで召喚
行っておいで
そして戦ってる皆を助けておいで
私も突撃しようかな!
龍を伴って私も突撃
『なぎ払い』『串刺し』にして数を減らそう
結局の所、侵略儀式魔術【Q】であっても世界の侵略は叶わず、天上界の扉も開かれることはなかった。
それは即ちオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の敗北である。
ならば、この無差別大量虐殺は如何なることであろうか。
この虐殺に意味があるのか。
天上界とは即ち神々が封印された場所である。その扉を開いてでも、地上に生きる生命を虐殺より救わんとするのであれば、彼が愛した神々である。
けれど、『大天使ブラキエル』はすでに失望している。神々がどれほど偉大であろうとも、彼等は決して守らない。
生命を作り出しても護ることはしないのだ。
だからこそ滅ぼす。生命の尽くを滅ぼして、神の無意味さをもって知らしめようとするのだ。
「うーん、最後の悪足掻き感。嫌いじゃないけどね。決戦って感じがするじゃん決戦って」
雰囲気は大事だよ、と月夜・玲(頂の探究者・f01605)は蒼き刀身をきらめかせながら、アックス&ウィザーズへと降り立つ。
二振りの模造神器の力がほとばしり、その超常の力を権限させる。その姿を認め『エギュレのパラディン』、ソフィアは目をむいた。
そう、いつぞやの猟書家との戦いで絶対城壁のユーベルコードを発現させた自分を盾のように掴んで敵の猛攻を防いだ猟兵だ。
「貴殿は――!」
またぞろ無茶をしようとしているのではないかと、ソフィアが叫ぶ。
あ、やべ。と玲の瞳が如実に語る。しかし、もう留まらないのだ。
「あっ……えっと、ちょっと時間稼いどいて!」
またか! とソフィアが叫ぶがもう遅い。玲はやるとなったやる人なのだ。もうそれがわかっているし、慣れてしまっているソフィアは自分がちょっと堅物ではないなと思う程度には色々諦めていた。
「えっと何処に仕舞ったっけ……えっと……あれ?」
探していないときには手に寄ってくるくせに、探しているときには逃げるように掌からこぼれていく。
探しものとは得てしてそういうものであるのかもしれない。
玲が探していたのはエナジーカートリッジである。彼女のジャケットのポッケやらタイトスカートのポケットやらを探ってようやく見つけたカートリッジを宙に舞い上げる。
それは十二を数えていた。
迸るユーベルコードの輝き。
「あったあった。カートリッジロード、プログラム展開。雷龍召喚――Code:P.D(コード・プラズマ・ドラゴン)!」
顕現するは雷で構成された5mを超す巨体。
そう、龍である。雷で構成された体に槍や剣が効くわけがない。オブリビオン『兵団』たちは雷の龍に蹂躙されていく。
「行っておいで、そして闘ってる皆を助けておいで」
そんでもって私は、と玲はぺろりと下唇を湿らせる。手にした模造神器を振り払い、雷龍と共にオブリビオン『兵団』の一群へと雪崩込む。
それはまるで曇天を切り裂く雷鳴のように、凄まじい勢いでオブリビオン『兵団』を霧散させ、骸の海へと帰すのだ。
「お説教は後で――! 聞きたくないから、またとんずらするけどね!」
ソフィアが何かを地上で叫んでいるが、雷龍のいななきにかき消されて聞こえない。いや、聞こえていたかも知れないけれど、聞こえないふりをした。
だって、後でまたこってり搾られるのは嫌であるし、何より迫る『大天使ブラキエル』は現時点での最強のオウガ・フォーミュラである。
生命の保証はない。
けれど、何も心配することはないのだ。
「さー頑張ってこー!」
玲はいつものように。
飄々としていながら、どこか爽やかさを感じさせる笑顔と共に戦場を蹂躙していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
この世界の猟書家の首魁は天上界に只ならぬ執着がある様子
新たな世界が気にならぬと言えば嘘となりますが…
その足掻きで新たな血が流れるなどあってはならぬこと
騎士として加勢いたします!
機械馬に騎乗しUC使用
推力移動を限界突破し敵軍へ突撃
『岩腕』は脅威なれど…その力、十全に振るわせはしません
馬上槍の機関砲や格納銃器の乱れ撃ちスナイパー射撃で武器落とし
突撃速度や怪力で振るう大型ウォーマシン故の槍のリーチ、大型機械馬の踏みつけで圧倒
混乱から脱し始め、突撃に対し迎撃陣を敷きましたか…今こそ好機ですね
御伽噺にも名高き森の民の弓…その力、お見せください
エルフの弓兵隊放つ矢の雨で崩れた陣地に追撃の突撃敢行
オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の天上界に対する執着は友である『書架の王』のためでもあった。
だからこそ、彼は天上界の扉を開くことを最大の目的とし、己の愛憎渦巻く胸中のままに最後の一手を打つ。
それは悪足掻きであったのかもしれないけれど、騎士道精神を炉心に宿すトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)にとっては関係のないことであった。
「新たな世界が気にならぬと言えば嘘となりますが……」
そう、天上界。
アックス&ウィザーズ世界の何処かに存在するという神々が封印されし世界。
それをオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』が求めていることは猟兵たちにとっての共通認識であり、今まさに行われようとしている無差別大量虐殺は、その扉を開くためのものだ。
「その足掻きで新たな血が流れるなどあってはならぬこと。騎士として加勢いたします!」
機械馬『ロシナンテⅡ』と共にトリテレイアはオブリビオン『兵団』がひしめく戦場に駆け込む。
機械騎士の突撃(マシンナイツ・チャージ)は、剣を構えた『兵団』を蹴散らし、冒険者の街を守らんとしていた冒険者やパラディン、クレリックたちを救う。
スラスターを噴射させながら突撃してきたトリテレイアは、まさに楔であった。
そう、無差別大量虐殺を行うオブリビオン『兵団』へと打ち込まれた楔であり、この戦いに挑んだ者たちの生命をつなぐ楔だ。
「『岩腕』は脅威なれど……その力、十全に振るわせはしません」
馬上槍に装備された機関砲と格納銃器が火をふき、オブリビオン『兵団』の力を削ぎ落としていく。
機械馬である『ロシナンテⅡ』がいななきをあげるように前足を振り上げ、オブリビオン『兵団』を踏み潰し、圧倒する。
その姿はまさに御伽噺の騎士そのものであったことだろう。
「すげぇ……あれが、猟兵。それも機械仕掛けの騎士ってわけか!」
人間のバーバリアンがトリテレイアの加勢に手を上げて応える。しかし、エルフのシーフが即座にオブリビオン『兵団』がトリテレイアの突撃に対応したことに気がつく。
「……ッ! 奴ら、すぐに陣形を変えたわ!」
「初撃の混乱から立ち直り、突撃を警戒して迎撃の陣を敷きましたか……その手並みは確かに『兵団』と呼ぶものでしょう」
ですが、とトリテレイアのアイセンサーが輝く。
そう、トリテレイアの存在は確かに一騎当千のものであった。
けれど、彼のユーベルコードが、騎士としての姿が戦いに馳せ参じた者たちに与える影響は大きい。
オブリビオン『兵団』に意志はない。
ただ与えられた役目を全うするだけの戦術はあれど、意志はないのだ。ならばこそ、こちらには士気高揚という策がある。
トリテレイア自身が、その士気をあげる存在そのものであり、楔なのだ。
「今こそ好機ですね。御伽噺にも名高き森の民の弓……その力、お見せください」
「任された。機械仕掛けの騎士よ。我等の弓の力を今、見せるときだ!」
エルフアーチャーたちが一斉に弓を構える。
トリテレイアは事前にエルフたちに指示を出していたのだ。
自身がオブリビオン『兵団』の一群を切り裂き、その陣を変えさせる。そして、迎撃のために体勢を整えた『兵団』をさらにかき回すトリテレイアと機械馬の突撃は、簡単に対応できるものではない。
トリテレイアとエルフたちの射撃は、互いに『兵団』の陣形を突き崩し、連携するように交差して『兵団』の一群を食い破っていくのだ。
「お見事です。流石は森の民。さあ、皆様。敵の陣形は崩れました。今此処に、この凶行の首魁への道を開き、戦いを終わらせるのです!」
トリテレイアの号令と共に冒険者達が駆け出す。
そう、この戦いを終わらせる。
虐殺も、天上界の扉を開かせることも許しはしない。トリテレイアはそのために駆けつけ、己の騎士道精神に殉じるために、戦場を切り裂くように突撃するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
さあ、いよいよ決戦だね
皆が守ったこの世界を壊させる訳にはいかないからね
自分と前衛で戦う冒険者やソフィア達に
邪神の施しを使用
鋼玉の彫像に変えて
怪我を治しつつ強化するよ
たぶん矢の嵐くらいなら簡単に弾けるんじゃないかな
ガトリングガンの範囲攻撃で数を減らしたり
援護射撃で周囲を援護したりしよう
接近されたら強化された肉体能力と重量を活かし
殴ったり蹴ったりして反撃
やっぱりプレートアーマー相手には鈍器だよね
分霊は使い魔と一緒に鉑帝竜で
相手の陣形を乱して貰ってるよ
希少金属の装甲は武器や岩の腕で
簡単にどうこうできるものじゃないから
大きさを活かして暴れて貰おう
陣形が乱れて孤立した兵士を
援軍と一緒に各個撃破していこう
「さあ、いよいよ決戦だね」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はアックス&ウィザーズ世界に降り立ち、オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』が放ったオブリビオン『兵団』と、彼等が襲う冒険者の街を防衛する、かつて救った者たちの姿を見た。
確かに猟兵は世界の危機に駆けつける。
オブリビオンを滅ぼし、殺されそうに成っていた者たちを助けた。
けれど、今は彼等が猟兵の背中を押してくれている。ならばこそ、晶は力強くうなずくのだ。
「皆が守ったこの世界を壊させる訳にはいかないからね」
すでにオブリビオン『兵団』と冒険者たちの先端は開かれ、多くの敵を猟兵達と共に霧散させていた。
無差別大量虐殺を行おうとしていた目論見は、此処に打倒されているが、未だ油断はならない。
何故なら、未だオブリビオン『兵団』は健在であり、少しでも気を抜いた瞬間にユーベルコードの矢の雨が降り注ぐのだ。
今もなお、冒険者やパラディンを苦しめているのは『岩腕』によって強化された矢の攻撃であろう。
放たれた矢の雨を横薙ぎに薙ぎ払ったのは、晶のガトリングガンから放たれた弾丸であった。
高速で放たれる弾丸は矢を弾き飛ばし、あわや矢に貫かれるところであった冒険者たちを救うのだ。
「あ、あなたは――!」
嘗て晶に救われた冒険者たちとパラディンが、その姿を認め、その瞳に希望の輝きを灯す。それに晶はウィンクして微笑み、もう何も心配要らないというようにユーベルコードを発現させる。
「後で元に戻すから、少しだけ我慢してね」
晶の瞳がユーベルコードに輝き、その輝きは邪神の施し(リビング・スタチュー)となって前衛で戦う冒険者やパラディンのソフィアへと彫刻化の魔法陣をもって彼女たちの体を鋼玉の彫像へと変え、一時的では在るが矢の攻撃を防ぐだけの剛性をもたせるのだ。
「こ、これは……!?」
彼女たちが戸惑うのも無理なからぬことであった。けれど、事実彼女たちは矢の雨を受けても傷一つ追うことはなかったのだ。
晶は戦場に躍り出て、鋼玉の彫像と化した己の拳と蹴撃でもってオブリビオン『兵団』の鎧に包まれた体を打倒していく。
それは即ち、鈍器による内部への衝撃を与えることによって、打撃を通すこと。
「やっぱりプレートアーマー相手には鈍器だよね」
そういって笑う晶の言葉に即座に順応したのは冒険者達であった。普段から荒くれ者が多く、同時に場数を踏んでいる彼等にとって、肉体が鋼に変わるということは容易に受け入れられることであったのだ。
彼等もまた晶と同様に拳や蹴撃で次々とオブリビオン『兵団』を打倒していく。
「陣形をばんばか崩しましょー」
邪神の分霊は希少金属の装甲を纏った鉑帝竜と共にオブリビオン『兵団』の陣形を突き崩すように大暴れしている最中だ。
例え、岩腕で強化されたオブリビオン『兵団』であっても、巨大な鉑帝竜を前にしては無意味であった。
「簡単にどうこうできるサイズ差じゃないからね。その大きさを活かして大いに暴れておいてよ!」
晶の言葉に邪神の分霊は可愛らしく、手を振って答えている。
本当にそれだけ見れば、ただの少女に過ぎないのだが、それでも頼もしい味方であることは、この時は間違いないのだ。
「助かったぜ、お嬢ちゃん。この調子で、奴らを蹴散らそうぜ!」
冒険者達が次々に晶と共に戦場に駆け込んでいく。
いや、僕は男なんだけど、というつぶやきは反響する鋼とプレートアーマーがひしゃげる音にかき消されていく。
その様子をみやり、晶は訂正する暇もなければ、気力もなく。
けれど、戦うことはやめず、やれやれと肩をすくめながら戦場を突き進んでいく。その様子を鉑帝竜の上から見つめていた邪神の分霊が微笑みながら見ていたことに、晶は気が付かなかったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
一矢報いる、って言うとそれなりに聞こえるけど、潔くない、ね。
援軍のみんなとははじめましてになるけど、協力して絶対に倒しきるよ!
『大天使ブラキエル』あなたが『無差別に殺しきる』というのなら、
わたしたちは『あなたと配下の兵士だけ』を倒すよ。
無差別大量虐殺なんて、絶対させないんだから!
わたしは【等価具現】で相手の遠距離攻撃を相殺して、援護をメインに行動するよ。
数はちょーっと多そうだけど、わたしの全力見せてあげるよ!
初撃を凌いだら【M.P.M.S】を配置して遠距離攻撃をしかけるね。
最前線で近接戦闘をしているところのちょっと後ろを狙っていこう。
いまは数では劣勢だけど、相手の層を薄くすれば有利になるよね!
侵略魔術【Q】による世界の侵略は猟兵たちの手に寄って防がれた。
それは即ち天上界への扉を開く手段をオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』が喪ったことを意味する。
だが、ここにきて行われる無差別大量虐殺は何の意味があるのか。
それは『大天使ブラキエル』の知る天上界に満ちていた愛ゆえに。神々が真に神々であるというのならば、この虐殺という未曾有の危機に天上界の神々は扉を開いて人々を救済しようとするだろう。
けれど、それが万に一つの可能性であることを『大天使ブラキエル』の憎しみは理解していた。
この期に及んでもなお、神々は沈黙し続けるであろうことを彼は予見していたのかも知れない。
斯くて人々の生命は、己の手によってのみ守られることを強いられる。
だが、猟兵たちは舞い降りるのだ。
「一矢報いる、って言うとそれなりに聞こえるけど、潔くない、ね」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は戦場に降り立ち、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「同位、検索……具現化シークエンス起動。戦場のみんなとは、はじめましてになるけど……安心して!」
理緒はユーベルコード、等価具現(トウカグゲン)によって電脳世界の情報を元に具現化したオブリビオン『兵団』が放つ矢の雨の等価存在を生み出し、相殺させるのだ。
「矢の雨が、やんだ……!? なんだ、あの力は!」
「いや、ともかく、こちらの矢だけが奴らに届く! 今が押し返すときだ!」
冒険者やエルフのアーチャーたちが理緒の援護に矢を放ち、次々とオブリビオン『兵団』を打ち払っていく。
理緒は微笑み、けれど、月面より舞い降りたオウガ・フォーミュラへと指差す。
「『大天使ブラキエル』、あなたが『無差別に殺し切る』というのなら、わたしたちは『あなたと配下の兵士だけ』を倒すよ」
その瞳はユーベルコード以上に、意志の輝きを湛えていた。
そう、必ずや『大天使ブラキエル』の目論む無差別大量虐殺は阻止する。そんなことはさせやしないと理緒の心は燃えるのだ。
「無差別大量虐殺なんて、絶対にさせないんだから!」
エルフアーチャーたちの放つ矢と共に理緒の展開したミサイルランチャーが火を吹き、戦場に群れるオブリビオン『兵団』を焼き払っていく。
最前線では未だに冒険者たちとオブリビオン『兵団』との戦いが続く。けれど、電脳魔術によって制御されたミサイルはオブリビオンだけを狙って放たれ、爆風でもって彼等を薙ぎ払う織田。
「数では劣勢だけど、敵の層を薄くすれば有利になるところが出てくるはず! みんな、層の薄い所から攻撃していって!」
そうすれば、オブリビオンであろうとも『兵団』として維持できなくなる。そうなれば、各個撃破が可能となる。
彼等の強みは数による圧だ。
それを喪った個としてのオブリビオンは恐れるに足りない。
「ありがとう、猟兵。君達の助力に必ずや応えてみせる。あの月面より降りし天使への道は我等が開く!」
『エギュレのパラディン』ソフィアが剣を掲げ、理緒に告げる。
オブリビオン『兵団』は割れるように霧散し、『大天使ブラキエル』への道を理緒の前に拓く。
まだ腹心とも言うべきオブリビオンが存在しているが、それでも彼等は理緒の背中を押す。
任せたわけではない。託されたのだ。
それを理緒は理解し、力強くうなずく。
「わたしの全力見せてあげるよ! きっと無事でいてね!」
理緒はそれだけ告げると、開かれた道を走る。
冒険者達が、エルフたちが、クレリックたちが開いてくれた道を往く。あの雷光の如き輝きを放つ凶行の首魁へと、理緒はひた走るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーフィ・バウム
この世界に育った1人として
そして今は、世界を救う猟兵として
暴虐は終わらせましょう
この世界で猟兵と関わった人々『援軍』と共に戦うことを意識
1人ではない
それが無限の【勇気】を私にくれる
敵軍勢には、武器での【なぎ払い】【衝撃波】を
叩きつけ、一度に多くの敵を巻き込むよう攻撃
たえず動き、囲まれないよう注意
囲まれそうであれば【吹き飛ばし】た後で
【ダッシュ】で囲みから抜けます
死角を突かれなければ!攻撃を【見切り】、
避けきれないものは自慢の【オーラ防御】で弾き
動きを止めず攻撃を続ける
武器の間合いをくぐり、近接戦に来た敵には
残念でした、こここそ私の間合いですっ
十分に【力溜め】た《トランスバスター》で叩き伏せます
アックス&ウィザーズに生まれ育った猟兵にとって、オブリビオン・フォーミュラを打倒したことは喜ぶことであったことだろう。
オブリビオンが過去より滲み出る原因、オブリビオン・フォーミュラの存在さえなければオブリビオンは現れることなく無辜の生命は喪われることはない。
けれど、世界を侵略する猟書家、オウガ・フォーミュラたる『大天使ブラキエル』は無差別大量虐殺によって天上界への扉を開かんとしている。
それは到底許容できるものではなかった。
ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は、この世界で育まれた猟兵である。そして、今は世界を救う者である。
ならばこそ、この暴虐は止めなければならない。
オブリビオンが染み出す限り、世界に理不尽な殺戮は止まることはない。
その褐色の肌が汗ばむほどに全力でユーフィは戦場を駆ける。戦場には、無差別大量虐殺の標的となった冒険者の街を守らんとする者たちが、オブリビオン『兵団』と熾烈な戦いを繰り広げている。
「一人ではない。それが無限の勇気を私にくれる」
ユーフィの胸に去来したのは、孤独な戦いではないという感情であった。
それを勇気と呼ぶには、あまりにも暖かなものであったことだろう。彼女の背中を今押すのは、共に戦う大勢がいるということである。
これまで猟兵達が救ってきた生命が、今此処に結実し、彼女の力となっているのだ。
剣を振るわれようとしていた冒険者の間に走り込み、ユーフィは裂帛の気合と共にオブリビオン『兵団』へと拳を叩き込み、間一髪で救う。
「もう大丈夫です! 絶えず動き、囲まれないようにしましょう。あなたの背中はわたしが、わたしの背中はあなたが。そうやって戦いましょう!」
ユーフィは即座に倒れ込んだ冒険者を引き上げ、背中を合わせる。よく見るとエルフのシーフであることがわかる。
「ありがとう……! なら、もっと大勢と連携しましょう。徒党を組んで、誰かが危機に陥ったのならば、助け合いましょう」
それに頷きユーフィは益々持って、その瞳に輝くユーベルコードの光を強める。
こんなにも心強いことはないのだ。
「行きますよぉっ!これが森の勇者の、一撃ですっ!」
鍛え上げられた肉体から放たれる拳技。
その尽くが一撃必殺であった。オブリビオン『兵団』の胴を貫く拳は、鎧など無意味であることを告げる。
囲まれぬようにと周囲を見回し、冒険者たちと背中を預け合って戦い続ける。
力がどんどん視の内側から溜まっていくのをユーフィは感じただろう。
意識せずとも、最大の一撃を放つことができるように身体が動いているのだ。
自分が助け、自分を助けようとしてくれている者たちに報いるために、そのユーベルコードの輝きが一層高まっていく。
「トランスバスター! 受けてください! これが私の一撃です!」
溜め込まれた力と共にユーフィはオブリビオン『兵団』の懐へと飛び込む。
それはあまりにも素早い足さばきであった。
一瞬で懐に入り込んだユーフィの身体が弛みない練磨の果てに至った、最小にして最短。そして、最速の動きで持って力のロスを極限まで削ぎ落とした動きで拳を放つ。
「残念でした、此処こそ私の間合いですっ」
十分に溜め込まれた力を解き放つユーベルコードにまで昇華した拳の一撃がオブリビオン『兵団』に叩き込まれ、吹き飛ばされた身体が次々と土埃を上げて周囲のオブリビオンを巻き込んで叩き伏せる。
その活躍ぶりは、『森の勇者』の名に恥じぬ勇猛果敢な戦いとして、この戦いに参加した者たちの記憶に深く刻まれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
オブリビオン兵団なんて、ろくなものじゃないわね。町に被害が出る前に討滅しなきゃ。
大天使の討滅はそのあと。
まずはオードブルからいただきましょう。
「全力魔法」「範囲攻撃」酸の「属性攻撃」「結界術」「呪詛」「道術」「仙術」の紅水陣を、戦場全域に展開するわ。
アヤメに「環境耐性」の符を持たせて、陣の中に「地形の利用」をして入り込ませ、兵士達を闇討ちさせる。
行ってらっしゃい。帰ってきたら可愛がってあげるからね。
クレリック、あたしに魔力供給をお願い。
陣をもっと硬く広くして、術式を維持する負担も軽減させてもらうわ。
あたしの陣は全て溶かし尽くす。
鎧の木偶人形は血色の靄に巻かれて、さっさと骸の海に還るがいいわ。
戦いの趨勢は数で決まる。
さらにはその質が勝るのであれば尚更である。オブリビオン『兵団』はそうでなくとも、オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の持つ『岩腕』の力を付与され、そのユーベルコードが放つ矢の一撃一撃が必殺なり得る力へと昇華していた。
数が揃っている以上、冒険者の街を護る冒険者たちに『シャルムーン』のクレリックの加護がなければ、被害は甚大なものとなっていたことだろう。
それが亡国の嘗て在りし『兵団』の恐ろしさであった。
「オブリビオン『兵団』なんて、ろくなものじゃないわね。街に被害が出る前に討滅しなきゃ」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、オブリビオン『兵団』をオードブルだと評した。
メインは未だ遠き『大天使ブラキエル』である。
彼へと至る道は未だオブリビオン『兵団』によって阻まれ、開かれては居ない。
けれど、冒険者たちやクレリック、エルフのアーチャーたちが猟兵を一刻も早く、この凶行の首魁へと辿り着けるようにと奮戦しているのだ。
ならば、ゆかりもまたそれに応えなければならない。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
彼女の紫の瞳がユーベルコードに輝く。
紅水陣(コウスイジン)。
それは真っ赤な血のような、全てを蝕む強酸性の雨の降りしきる陣であった。
あらゆるものを腐食させる赤い靄は、オブリビオン『兵団』と言えど無事に済むわけがない。
だが、腐食していても、亡国の『兵団』たちは弓を構える。
『岩腕』によって強化された腕は、腐食させる強酸性の雨の中でも、最後の一射を放つべく引き絞られ、そして、その矢が放たれる――ことはなかった。
「あやめ、よくやったわ」
そう、ゆかりの瞳に映っていたのは式神のアヤメである。事前に紅水陣の環境に耐性をもたせる符をもたせ、オブリビオン『兵団』の中に入り込ませていたのだ。
彼女の振るった小太刀がオブリビオン『兵団』の弓引く腕を切り落とし、次々と矢が放たれるのを阻止したのだ。
彼女の奮戦をみやり、ゆかりはご褒美の約束が効いているのだろうかと、自分から言っておいてなんであるが、彼女の奮戦に一番喜んでいる自分がいる。
けれど、これで終わりではない。
「クレリックの皆、あたしに魔力供給をお願い」
「一体何を……できなくはないが」
『シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』がゆかりの提案に疑問を抱くが、そんな時間はない。
それは『ライヴズ』も理解できている。猟兵の言葉であるからこそ、クレリックの集団がゆかりに魔力を供給する加護を持って、注ぎ込んでいく。
「来た来た……陣をもっと硬く、広くして術式を維持する負担を軽減……あたしの陣は全てを溶かし尽くす」
ゆかりの瞳が燦然と輝く。
供給された魔力に寄って拡大された陣が広がり、戦場に赤い靄が広がっていく。
例え、頑強なる鎧に身を包んでいたとしても、この陣の中では木偶人形と化すのだ。
降りしきる雨が靄を生み出し、血のような赤い陣の内側でオブリビオン『兵団』は呻くこともなく、次々と溶け、霧散し消えていく。
「さっさと骸の海に還るがいいわ」
ゆかりは薙刀を振るい、陣の中を突っ切っていく。
邪魔するものはいない。すでに陣の中で溶け、消えていった嘗ての『兵団』の残滓を足場にゆかりは飛ぶ。
月面より舞い降りし『大天使ブラキエル』、その雷光の如き輝きを放つオウガ・フォーミュラへと一直線に駆けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
こうまで期待されているのであれば、応えなければいけませんね。
他の世界も大変な時期ですがこちらも手を抜きはしません。
では、反撃を始めましょうか。
以前の戦いのように敵を狙うのにいい場所を『アアチュ・アナ』のエルフ達から聞いて一緒にその場所から敵を狙います。
前線は他の猟兵や冒険者たちが止めてくれている、あの槍がこちらに届くことはありません。ならば……
【霜天弓】を使用、『スナイパー』の技術で正確に降り注ぐ氷の矢の雨で敵の集団を貫きます。
あちらも同じようなことができるようですが、射程も精確さも負けるつもりはありません。
無差別大量虐殺の標的となった冒険者の街をめぐる攻防は苛烈を極めた。
冒険者たちは『シャルムーン』のクレリックの齎す加護によって、オブリビオン『兵団』の攻撃をわずかに留めることができた。
それでも焼け石に水であることは言うまでもない。
彼等は希望を捨てない。
何故ならば、すでにこの戦場には彼等の希望の光たる猟兵が転移してきているからだ。多くの猟兵達が、この未曾有の凶行を止めようとしている。
その事実が彼等の心が折れずに、未だ戦い続ける理由になっていた。
「俺たちが道を開けば、必ず猟兵達が敵の親玉ってやつを打倒してくれる……!」
冒険者達が死力を尽くして戦う中、後方からはエルフのアーチャーが放つ矢が飛ぶ。
オブリビオン『兵団』を食い止めながら、常に動き矢を放つポジションを探っているのだ。
「こうまで期待されているのであれば、応えなければいけませんね」
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)はアックス&ウィザーズ世界に降り立ち、戦場を一望する。
彼女は狙撃手である。ゆえに、位置取りは重要である。彼女にとって世界は一つではない。
今もまたアックス&ウィザーズ以外の世界では大きな戦いが始まっている。だが、それがセルマの手を抜く理由にはなっていない。
必ずやオウガ・フォーミュラたる『大天使ブラキエル』を打倒しなければならない。
セルマの姿を認めたエルフのアーチャーが手をふる。
以前エルフの森を助けた時に見知った顔であったことだろう。あの時のように敵を狙うのに適した場所を彼等から伝え聞く。
「まだ街中に敵の侵入は許してない。けれど、時間の問題だ。このままだと数で押し切られてしまう……頼む、あなた達だけが頼りなんだ」
エルフたちは自分たちの力が及ばぬことを悔いているようであったが、セルマはそうではないとかぶりを振る。
「いいえ、私達には貴方達の力が必要です。共に行きましょう」
セルマの瞳はユーベルコードと決意に輝く。
エルフたちがいなければ、今頃冒険者たちは援護無く、前線を留めることができずに後退していただろう。
だからこそ、セルマはエルフたちの働きに感謝するのだ。
彼女たちは戦場を走り、オブリビオン『兵団』の展開するさまが見下ろすことのできるポイントへと急ぐ。
今は冒険者や他の猟兵達がとどめてくれている。ならば、敵の攻撃がこちらに届くことは気にしなくていい。
「あちらも同じようなことができるようですが、射程も正確さも負けるつもりはありません。貴方達と私ならば、それができます」
セルマは霜天弓(ソウテンキュウ)を構える。
嘗て手練れの冒険者に教えてもらった技をセルマ自身の氷の力を組み込んだ技である。
彼女の瞳は、エルフたちと共にオブリビオン『兵団』に狙いをつける。一列に並んだ彼女たちの鏃がオブリビオン『兵団』に狙いをつける。
「霜天を切り裂くは無尽の流星……!」
しかし、セルマの鏃は天を向く。
そう、それこそが彼女のユーベルコードである。彼女の瞳が捉える存在全てに降り注ぐ百を超える冷気を纏った矢の雨。
それらは、全てが違えること無くオブリビオン『兵団』のみに降り注ぐ。
前線で戦っていた冒険者たちは目を剥いたことだろう。
目の前で鍔迫り合いをしていたオブリビオンが空より飛来した冷気を纏った矢に脳天を貫かれ、倒れ伏すのだから。
「――ッ! マジかよ……! とんでもねぇな、猟兵ってやつは!」
それに負けじとエルフのアーチャーたちが放つ矢がオブリビオン『兵団』に飛来し、次々と打倒していく。
そう、エルフたちもまた弓の名手である。
セルマほどの威力はなくとも、それでも前線で戦う者たちの援護にはなるのだ。誰ひとりとして欠けさせてはならない。
その思いはセルマも、エルフたちもまた同じであった。
種族も、立場も違う者たちが一つの目的のために、無差別大量虐殺を阻止せんと動く。
これまで猟兵達が積み重ね、紡いできた結果だ。
「『大天使ブラキエル』。貴方が見誤ったのは私達の力ではありません」
セルマはすでにその答えを得ていただろう――。
大成功
🔵🔵🔵
シーザー・ゴールドマン
ふむ、天上界には私も興味があったのだが今回は縁がなかったようだ。
ブラキエル君の悪足掻きには期待できるほどの成算を感じないしね。
まあ、彼自身理解はしているようだが。
ともあれせっかく帝竜から救った世界だ。彼の愚行で滅ぼされるのは面白くないし討伐するとしよう。まずは雑兵からだね。
冒険者達と『兵団』の戦いに介入。
『ヤーヌスの双顔』を発動して半径100メートルほどの戦場を支配。
(もちろん、シーザーは移動します)
敵は岩腕、敵UCの降り注ぐ矢も含めて不可視の魔力により破壊。
味方の冒険者は同じく不可視の魔力により回復させて、戦局を有利にする様に指示を発します。(戦闘知識)
さあ、もう少しだ。頑張りたまえ。
天上界、それはアックス&ウィザーズ世界の何処かに存在するという世界である。
それを求めたのが『書架の王』であり、その友である『大天使ブラキエル』であった。しかし、彼は天上界に対する失望を顕にしている。
それは何故かと問われるのであれば、他ならぬ神々への憎しみである。
失望は憎しみに変わるのではなく、愛あるからこそ憎しみへと転ずることは、人の世もまた道理である。
ゆえにその憎しみに深さは言うまでもなく。
失望の深さが知れよう。かつて帝竜『ヴァルギリオス』がアックス&ウィザーズに住まう人々を滅ぼさんとした時でさえ、神々は動かなかった。
天上界の扉を開いて人々を救うことはしなかった。それが『大天使ブラキエル』の失望を買ったことを彼等は理解していただろうか。
「ふむ、天上界には私も興味があったのだが、今回は縁がなかったようだ」
真紅のスーツに身を包んだ偉丈夫、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)がアックス&ウィザーズに転移し見たのは、月面より舞い降り、無差別大量虐殺を引き起こさんとする『大天使ブラキエル』の軍勢、オブリビオン『兵団』と冒険者の街を護る冒険者たちの姿であった。
あちらこちらにエルフのアーチャーや『シャルムーン』のクレリックの姿が見受けられる。
それらは全て猟兵達が助けてきた者たちであった。
何もかもが無駄ではなかったのだ。猟兵達が救ったものすべての結実が、今此処に集まっていると言っても過言ではなかった。
「ブラキエル君の悪足掻きには期待できるほどの成算を感じないしね。まあ、彼自身は理解しているようだが」
シーザーは『大天使ブラキエル』の失望の深さは知らずとも天上界の扉が開く可能性が著しく低いことを理解していた。
だからこそ、シーザーはこの世界を護る。
帝竜から救った世界であるし、『大天使ブラキエル』の愚行で滅ぼされるのは面白くないと感じていた。
シーザーは元より猟兵である。オブリビオンと対峙すれば、滅ぼさなければならないと感じるのもまた道理である。
「まずは雑兵からだね――ヤーヌスの双顔(デウス・アルビテル)を見るがいい」
笑いながらシーザーはオブリビオン『兵団』と冒険者たちが激突する前線に割って入る。
彼のユーベルコードの輝きもって、不可視の魔力による破壊消滅が引き起こされる。
対峙した者たちは理解が及ばなかったことだろう。
矢を放とうとしていたオブリビオン『兵団』たちはこぞって不可視の魔力を受けて破壊され、消滅していく。
「なんだ、アレも猟兵だっていうのか……!」
宙に飛翔する真紅のスーツに身を包んだシーザーの姿に前線で戦っていた冒険者たちは唖然と見上げるほか無い。
そして、次の瞬間にはもうシーザーの姿はそこにはない。
絶えず彼は移動し続ける。
彼の半径100メートル以内の存在は破壊消滅していく。味方である冒険者たちの傷はいつのまにか更かしの魔力に寄って完全復元に至る再生によって傷を癒やしていくのだ。
まさに奇跡である。
その御業を持って、シーザーは飛翔する。
「敵の前線は崩壊寸前だ。後方の『兵団』はこちらが引き受けよう。さあ、もう少しだ。頑張りたまえ」
シーザーの声が空より響く。
冒険者たちは、自分たちの傷が癒えたことも、そして戦っていたオブリビオン『兵団』がほぼ壊滅状態になっていることに驚愕しつつも、猟兵の一騎当千ぶりを、そして生命の埒外にある存在であることを、改めて認識させられるのであった――。
大成功
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フィア・シュヴァルツ
弟子のルクスと
「フハハハ!
我は漆黒の魔女とよばれし大魔術師フィア!
A&Wが全裸の天使に率いられし軍勢に襲われていると聞き、助けてたんまりとお礼を貰いに来たぞ!」
おっと、いかん。つい本音が。
ともかく、ここは敵の軍勢を戦場ごと吹き飛ばし……
え、味方もいるからだめ?
「ええい、ならば仕方ない!
そこの剣士たちよ、そんなナマクラではなく我が生み出した魔法剣を使うが良い!
少しはマシだろう!」
【ミゼリコルディア・スパーダ】で生み出した魔法の武器を冒険者に与えよう。
「さあ、あとは勇者ルクスの出番だ!
その実力、敵兵士たちに存分に見せてやるが良い!」
え、我?
我は仕事が終わったから休むぞ?
魔力を使って腹も減ったしな!
ルクス・アルブス
フィア師匠と
師匠、本音だだ漏れにもほどがあります!?
たしかに明日のごはん悩んでましたけど!
師匠っ!?
ですから!?
それが!?
ごはんの食べられない原因です!(ずびしっ)
いちいちポーズをつけてツッコんだら、
し、師匠がぶっぱ以外のことを……。
しかも剣を渡すなんて!
師匠も光の勇者の師匠の自覚が出てきたんですね!
これでもう『ぺたん』とか『絶壁』とか
『タングステンカーバイト』とか言われないですね!
はい師匠、お任せください!
と、変身して【光の勇者、ここに来臨!】
かっこいい(?)決めポーズで、敵を圧倒したら、
【ルジェッリ】で兵士を倒していきますね。
さぁ、師匠、とどめを……って、
なんでおやつ食べてるんですか!?
無差別大量虐殺が引き起こされようとしていたアックス&ウィザーズ世界の冒険者の街は多くの猟兵の参戦によってオブリビオン『兵団』との戦いを優勢に進めることが出来ていた。
冒険者たち、エルフたち、クレリックたちやパラディンといった、これまで猟兵達が助けてきた者たちの存在が力となって虐殺を未然に防いでいたのだ。
けれど、それでもなお戦いは終わらない。
「フハハハ! 我は漆黒の魔女と呼ばれし大魔術師フィア! アックス&ウィザーズが全裸の天使に率いられし軍勢に襲われていると聞き、助けてたんまりとお礼を貰いにきたぞ!」
ワルの笑いが木霊する。
雰囲気だけなら、どちらかというと敵であった。けれど、冒険者たちはその余裕がない。言葉面の大魔術師という響きだけで、じゃあ、よろしく! という感じでフィアのついつい漏れた本音をスルーしていた。
スルーされたらされたで、微妙な気持ちになってしまうのは、一体全体どういう理屈なのだろうか。
まあ、それはともかくとして、うっかり本音が漏れたが悟られることのなかったことにフィアは胸をなでおろす。ないだろ、胸。とかそんな事言うやつは、後で大規模魔術が飛ぶので覚えておくように。
「師匠、本音ただ漏れにも程があります!? 確かに明日のごはん悩んでましたけど!」
弟子であるルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)も大概であるなぁ、と誰かが思ったかもしれないが、今は些細な問題である。
オブリビオン『兵団』の数は未だ建材であり、冒険者たちが粘っているからこそ、街の中にオブリビオンが入り込むことを水際で食い止めていたのだ。
「ともかく、ここは敵の軍勢を戦場ごと吹き飛ばし……」
「師匠っ!? ですから!? それが!? ごはんの食べられない原因です!」
ルクスが指差し、フィアを止める。
いつもそうだ。フィアはもう思考停止なんじゃないかというくらいのレベルで、大魔術をぶっぱしようとする悪癖があった。あ、やべ。悪癖って言ってしまった。
「え、味方もいるからいかんのか……ええい、ならば仕方ない! そこの剣士たちよ、そんなナマクラではなく我が生み出した魔法剣を使うが良い!」
フィアの詠唱と共に宙に現れたのは複雑な幾何学模様を描くミゼリコルディア・スパーダによって生み出された魔法剣であった。
確かに魔法の宿った剣であれば切れ味も違うであろう。
何より猟兵のユーベルコードに寄って生み出された魔法剣である。そんじょそこらの剣とは格が違うのだが、フィアの言葉は割とマジで冒険者の街に住まう鍛冶師たちがカチンと来ること請け合いの言葉であった。
聞かれていたら、それはそれでやばいのである。
しかし、そんなことなどつゆ知らず、ルクスは感激していた。
一々突っ込んでいた甲斐があったというものだ。師匠がまともなことをしている。
「し、師匠がぶっぱ以外のことを……しかも剣を渡すなんて! 師匠も光の勇者の師匠の自覚が出てきたんですね!」
ルクスは感激しきりである。
正直言わなくてもいいところまでいい始める。
「これでもう『ぺたん』とか『絶壁』とか『タングステンカーバイト』とか言われないですね!」
やかましいと普段ならフィアが言う所であるが、やけに静かである。
うんうん、とルクスは好意的に沈黙を受け取って一人うなずく。
「さあ、あとは勇者ルクスの出番だ! その実力、敵兵士たちに存分に見せてやるが良い!」
フィアは妙な間があった後にそう言って、ルクスを焚きつけるのだ。
「はい師匠、お任せください! 光の勇者、ここに来臨!(ユウシャトウジョウ)」
まばゆい光と効果線を纏ったカッコいいポーズでルクスが手にしたのはダブルべースのヴァイオリン。巨大なヴァイオリンである。
誰もが、え、という顔をした。
だって普通勇者と言ったら剣とかそういうのではないのだろうか。けれど、そんなことお構いなしにルクスは戦場を駆け抜け、殴打していくのだ。そう、鈍器である。
重さがあれば大概のことはどうにかなるのである。
それを知らしめるように光の勇者ルクスは次々とオブリビオン『兵団』を冗談みたいな鈍器で吹き飛ばしていくのだ。
「さあ、師匠、とどめを……って、なんでおやつ食べてるんですか!?」
奮闘するルクスの背後でフィアは優雅に寝そべり、茶菓子をつまんでいる。それはルクスがこっそり貯めていた非常食であった。
サクサクである。もうすっからかんである。
「え、我? 我は仕事が終わったから休むぞ? 魔力を使って腹も減ったしな!」
あれで働いたつもりなのかとルクスは唖然とする。
ただ魔法剣わたしただけじゃないですか! というツッコミが虚しく戦場に響き渡り、それはも大変に切実なるルクスの叫びとなって、戦っていた冒険者たちの頭に『あのお嬢ちゃん大変そうだなぁ』という共通の思いを巡らせるのであった――。
大成功
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ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
ノックノック
お空をノック
…って
ほんとにそれだけえ?
んもー!短気だなあ
少しはあの不撓不屈の悪魔(サタン)くんたちを見習ってほしいものだね!
え、彼のそういうところはどっちかっていうとその悪魔たちより神に似てるって?
ノ、ノーコメント!ノーコメントで!
みんな!ボクにいい考えがある!これ必勝の策と言ってもいいと思う…
ズバリ!こかして棒で叩く!
えーダメ?いい案だと思ったんだけどなー
クソデカ[球体]くんたちにわーっと敵の軍隊に突っ込ませて吹き飛ばしたり圧し潰したりこけさせたり攪乱させたりするよ!
向こうが壊乱したところをみんなで攻めよー!
ボクも一緒にわーっといってUCでドーンッ!!
オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の目的は天上界の扉を開くことである。
そのために猟書家を率いてアックス&ウィザーズ世界に侵攻を開始した。それは彼の友『書架の王』の願いであり、それを為すために彼は愛憎の地である天上界への扉を求めたのだ。
しかし、その企みは猟兵に寄って阻止される。
可能性は潰え、ついには天上界へと至ることは叶わず、偽りの月は消え去る。
月面より舞い降りる『大天使ブラキエル』は無差別大量虐殺をもって、人々を救わんとする神々の意志に期待したが、すでに失望を顕にしている彼にとって、それもまた万に一つの可能性もないことを自覚するだけの作業に他ならなかったのである。
オブリビオン『兵団』は『岩腕』によってユーベルコードを強化され、その一撃一撃が必殺の威力で持って冒険者たちを襲う。
今はまだクレリックたちの加護の力で保護されているが、効果が切れれば彼等もまた紙くずのように生命を散らされてしまうだろう。
それをさせぬと猟兵たちは次々と転移し、彼等を助け出している。
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)もまたその一人であった。
「ノックノックお空をノック……ってほんとうにそれだえ?」
彼にとって天上界への扉は、それほど重要なことのようには思えなかったのである。
ただ、それだけのために『大天使ブラキエル』は無差別大量虐殺という短気を興しているように見えたのだろう。
「少しはあの不撓不屈の悪魔くんたちを見習って欲しいものだね!」
誰のことを言っているのか、それは裏返せば神に近しいということは言うまでもないことである。だからこそロニはノーコメントを貫く。
言葉を託しても、答えを返すとは限らぬのが神である。
それを勝手気ままと言うのは人の勝手であると言ってのけるのが神たる所以であろう。
だがしかし、無差別大量虐殺は止めなければならない。そのためにロニはアックス&ウィザーズに転移してきたのだから。
「みんな! ボクにいい考えがある! これ必勝の策と言ってもいいと思う……」
突如現れたロニの言葉に冒険者達は戦いながら、耳を傾ける。
それだけの余裕が出来たのは喜ぶべきことであったが、未だオブリビオン『兵団』は健在であり、猟兵ならざる身である冒険者たちは藁にもすがる思いでロニの提案を聞くのだ。
「ズバリ! こかして棒で叩く!」
それでそれで?
え、以上ですけどというロニの顔に冒険者たちは解散解散と己の戦いに戻っていく。
それに不満げな顔をするのはロニであった。
「えーだめ? いい案だと思ったんだけどなー」
「それができないから、こうしてるんだって!」
人間のバーバリアンがオブリビオン『兵団』と鍔迫り合いをしながら叫ぶ。余裕はもうあんまりないのである。
その姿を認め、ロニはしょうがないなぁ、という体で超重の球体群をオブリビオン『兵団』へと突撃させ、蹂躙していく。
その光景は最初から、それをやってくれと冒険者たちに思わせるには十分過ぎるものであった。
「どーんっ! ボクを崇めてもいいんだよ! 神様だからね!」
それは一種の神々しさもあったかもしれない。
けれど、それ以上に理不尽だなと感じさせるには十分なものであった。神の気まぐれ。『大天使ブラキエル』が唾棄したものであるかもしれないし、人の身であれば、理解できないものであったかもしれない。
けれど、事実としてオブリビオン『兵団』は瓦解し、そこに雪崩込んでいくロニと冒険者たちは破竹の勢いで快進撃を続けるのだ。
まさに神撃(ゴッドブロー)の軍勢となって冒険者たちはオブリビオン『兵団』を吹き飛ばし、『大天使ブラキエル』への道を切り開くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!(お約束
いやーこのセリフがこんなに役に立つ日が来るとは
出遅れて友達は先に行っちゃいましたが
そちらは後で合流するとして
それでは希望を高らかに謳うとしましょう!
いきます!
まずは【VR忍術】水遁・濁流の術!
これで敵兵士の勢いを押し返します
アアチュ・アナを守ったこの水流が
エルフの皆さんの鼓舞になれば!
敵陣営が乱れたら今度は【VR忍術】炎纏いの術!
カタールに炎を纏わせて突撃です
あ、ライヴスさんお久しぶりでーす
支援よろしくお願いしますね!
後はクノイチらしく派手にかく乱するとしましょう!
※アドリブ連携OK
「お呼びとあらば参じましょう」
その前口上は無差別大量虐殺の標的となった冒険者の街に響き渡る。
城壁の上に立つ影。
その影が見下ろすのは大量のオブリビオン『兵団』と戦う冒険者たちが激突する光景であった。
誰もが死力を尽くして戦っている。
虐殺を、生命が喪われることを良しとしない者たちが、一丸となって戦っているのだ。
それはこれまで猟兵達が救ってきた生命であり、その結果が今、大きな力となってオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の目論見を阻止せんと大きな壁となって戦っているのだ。
「私はクノイチ、世に潜み……胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!」
お約束である。
今それどころじゃないんですけどぉ!? と冒険者の皆さんは思っただろう。叶うなら、ちょっと見ときたい気持ちはあれど、オブリビオン『兵団』との戦いはそんなに甘いものではないのだ。
しかし、前口上をしっかりお約束どおり言い終えたサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はご満悦であった。
「いやーこのセリフがこんなに役立つ日が来るとは」
出遅れてしまって友達である二人の師弟コンビは先に行ってしまったが、後で合流すればいい。
今はそれよりも優先されるべきことがある。
そう、絶望の最中にあるというのならば、高らかに謳うは希望である。
彼女の前口上は反撃の狼煙。
しかし、まあ例によってそのぉ、ちょっとまあ、露出がね。男性諸君には喜ばしいんだか、そうでないんだかわからないあれなので言及はしないけど。
「いいから、早く戦って!」
エルフのシーフがサージェに叫ぶ。
逼迫した事態ゆえに、そうなってしまっても仕方のないことである。しかし、サージェは余裕である。
何故なら、今前口上が決まったことのほうが彼女の胸を膨らませているからだ。
「はい! メモリセット! チェックOK! 参ります!」
専用メモリからコンソールにインストールされたのは、『水遁・濁流の術』である。
VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)。
それは様々な現象を再現するバーチャル忍術である。これによりサージェは幾千もの忍術を可能とするのだ。あ、幾千は言いすぎたやもしれない。
しかし、サージェの瞳はユーベルコードに輝く。
それほどまでの気迫が彼女には在ったのだ。
嘗て、この術で救ったエルフの森があった。火災に巻かれた森を消火し、多くのエルフたちの生命を救い出した術が今、オブリビオン『兵団』を根こそぎ押し流し、前線を押し込むのだ。
「『アアチュ・アナ』を救ってくれた猟兵……! やっぱり来てくれたんだ!」
エルフたちが歓声をあげる。
それに応えるようにサージェはさらにメモリをコンソールにセットする。
「敵陣が乱れましたね! ならば、今度は『炎纏いの術』!」
手にしたカタールに炎が纏われ、その斬撃は演舞のように火の粉を舞い散らせ、オブリビオン『兵団』を切り裂いていく。
「あ、『ライヴズ』さんはお久しぶりでーす!」
戦場を駆け抜ける最中、サージェは知った顔を見つける。『シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』だ。
彼の姿を認め、ひらりと掌を振ってウィンクする姿は確かに彼女が幾多もの『クノイチ』という概念を持って生まれた存在であることを思い出させる。
「我等の加護をどうか受け取ってください。矢除けにはなるでしょうから!」
『ライヴズ』から加護がサージェの体に付与され、さらに加速する突撃。それらをオブリビオン『兵団』が防ぐことなどできようはずもない。
獅子奮迅の活躍を見せるサージェは、まさに彼等の希望そのもの。
「クノイチらしく派手に撹乱するとしましょう! さあ、皆さんご一緒に! 手数こそ!」
「え……?」
「――正義です!」
若干締まらない雰囲気であったが、それでもサージェの号令と共に冒険者たちは『大天使ブラキエル』へ至る道を切り開くようにオブリビオン『兵団』を蹴散らすのだった――。
大成功
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バルドヴィーノ・バティスタ
(アドリブ・連携歓迎)
よォ騎士サマ!今度はご同類と一緒か?集まったところでどうにもならねェのにご苦労なこった!
…ま、向こう見ずだかお人好しだかが集まったおかげでわりかし粘れてンじゃねーの?
さぁて、軽ーく気の遠くなる数の兵士どもだがサクサクやってやっか!
意志のねェデクの軍勢だろうが、傷だの消耗だのが全く影響ないなんてこたねェだろ?
鎧だの剣にヒビが入ってるだけでも姿勢だの動きに影響は出てくるもんだ、
引き続きしっかり守り固めろよ援軍!耐えてくれりゃ、隙を見せた兵を『ブラッディヴァルチャー』の爪と<早業>で切り裂いてやる!
嘗て、『エギュレのパラディン』ソフィアは猟兵に生命を救われた。
だからこそ、彼女は己の生命を賭して嘗て慈善事業かと問われたことを為すのだ。別に偽善であってもいい。
ただ己は変わらないのだ。己が信じた神と、己が奉ずる信仰によって彼女は力を振るう。
今もそうだ。オブリビオン『兵団』の数は尋常ならざるものであり、その一撃は容易く生命を奪う。
だからこそ、退けない。退いてはならないのだ。
自分の背中には未だ戦うことも逃げることも出来ぬ生命が在るのだから。
「こらえろ……! 此処で私達が踏ん張らねば、生命が喪われる! 猟兵達が首魁へと至る道を私達が開かねば――!」
だが、限界は来るものである。
振り下ろされた剣がソフィアに致死の一撃を見舞わんとして、横から吹き飛ばされる。
その影を、その姿をソフィアは良く知っていたことだろう。
「貴方は――!」
「よォ騎士サマ! 今度はご同類と一緒か? 集まったところでどうにもならねのにご苦労なこった!」
バルドヴィーノ・バティスタ(脱獄狼・f05898)はあのときと同じように不敵に笑っていた。
ソフィアは不思議と、その笑い声とともすれば皮肉めいた言葉にどこか安堵を覚えたことだろう。
きっとそれを言えば、バルドヴィーノはこんな悪党を見て安堵するとは、とまた皮肉めいたことを言うかも知れないけれど。
それでもソフィアは言うのだ。
「いいや、どうにもなるのさ。貴方たちが来てくれたんだからな!」
ソフィアの言葉にバルドヴィーノは調子が狂うように、けれど、率直に言う。
「……ま、向こう見ずだかお人好しだかが集まったおかげでわりかし粘れてンじゃねーの?」
その様子はまるでふてくされたようでもあり、素直になれないようでもあったけれど、それで今は十分だった。
未だ戦いは続くけれど、いつかのように助けに来てくれたことが喜ばしいことであった。
だからこそ、ソフィアは剣を月面より舞い降りし『大天使ブラキエル』の座す方角を差すのだ。
「敵の首魁は向こうに。我等が道をひらく。だが、まだ敵の数が……」
「さぁて、軽ーく気の遠くなる数の兵士共だが、サクサクやってやっか!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
そう、バルドヴィーノには数は問題ではない。やるかやらないかだけの違いしか無い。それを悟ってソフィアは彼の道を開くのだ。
「意志のねェ、デクの軍勢だろうが、傷だの消耗だのが全く影響ないなんてこたねェだろ?」
獰猛に輝くユーベルコード。
玩弄する爪牙(テンポラダ・アビエルタ)たるダガーと血肉を喰らう生きた外套が揺らめく。
獲物はもうすでに見定めた。
後は――。
「引き続きしっかり守り固めろよ、援軍! 耐えてくれりゃ……オレが片付けてやんよォ!」
バルドヴィーノが吠えるように戦場に駆け出す。
その姿は黒い嵐のように戦場を蹂躙する爪となってオブリビオン『兵団』を次々と霧散させていく。
その瞳に映るのはオブリビオン『兵団』の消耗した兵士たち。
ヒビが入っているのを目ざとく見つけ、その隙間に爪を差し込み、切り裂く。そうでなくても関係ない。
己の道を阻む者すべてを切り裂く爪そのものとなったバルドヴィーノは、蹂躙するのだ。
「気張り続けるのもしんどいだろ?さっさと倒れて楽になろうぜ」
それはまるでいざないであった。
オブリビオン『兵団』に意志はない。けれど、彼等とて消耗しているだろう。けれど、とバルドヴィーノは呟いた。
彼の後方で戦う冒険者やエルフ、そしてパラディンたち。
彼等は、しんどいと言っても、消耗したとしても戦い続けるだろう。楽になることをしない。
何故、とは問わない。
そういう人種だからだ。そういう者たちだからこそ、バルドヴィーノは彼等に累が及ぶことのないようにと戦う。
おくびにも出さないけれど。
知られる必要なんて無いのだ。
「言っても聞かねー連中だろうしなァ。さあ、行くぜ、『大天使ブラキエル』。この爪で切り裂いてやる――!」
疾駆する爪牙が、『大天使ブラキエル』の喉元へと振り下ろされんと、一直線に戦場を駆け抜けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『黒騎士シリウス』
|
POW : その力……俺の物にしてやる!
対象のユーベルコードを防御すると、それを【黒炎が複製し 】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
SPD : 力がなければ何もできない……何も……何も!
【力を奪い去る呪詛の黒炎 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 力だ……もっと俺に力を……!
自身に【呪われし禁断魔術の力 】をまとい、高速移動と【呪詛の黒炎による斬撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
イラスト:森乃ゴリラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ステラ・アルゲン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』に迫る猟兵達。
多くの助けた生命が彼等の背中を押す。それは、彼等のこれまでの道程の結実であり、誰かのためにと戦う者たちにこそ宿る力の本質であったことだろう。
『大天使ブラキエル』もまた友のために天上界への扉を求めた。
だからこそ、彼の愛は神々への憎しみを凌駕するが、その憎しみを強めるだけであったことだろう。
その腹心たる『黒騎士シリウス』は、その鎧を持って猟兵達に立ち塞がる。
「我が鎧は『絶対物質ブラキオン』。我が主君、『大天使ブラキエル』様より賜った鎧を恐れぬのならば、猟兵よ。貴様たちの進軍は此処で止まると知れ――」
輝く漆黒の鎧。
それは不可思議な力によって守られた、絶対物質たる『ブラキオン』による破壊不可能なる鎧であった。
「『絶対物質ブラキオン』……だがッ!」
『エギュレのパラディン』ソフィアが、冒険者パーティとエルフの森のアーチャーたちを呼び寄せる。
彼等の手にはそれぞれ『聖なる木の葉』と『輝石の欠片』があった。
そう、猟兵達がこれまで猟書家の侵攻から守った人々が手にした品物。それがどうなるのかと思った瞬間、『輝石の欠片』がまばゆい光を放ち、その光を受けた『聖なる木の葉』が影を作り出して、『絶対物質ブラキオン』の鎧に影を落とす。
それは僅かな影でしかなかったけれど、猟兵達には分かったことだろう。
「そう、『輝石の欠片』が放つ光が落とす、『聖なる木の葉』の影。それが唯一『絶対物質ブラキオン』の力を損失させる! 猟兵! 影なる場所こそが、やつの弱点だ!」
ソフィアが告げる『絶対物質ブラキオン』の急所。
けれど、相対する『黒騎士シリウス』は『大天使ブラキエル』の最強の腹心。
それを容易くさせてもらえるとは限らない。
けれど、彼女たちは信じている。
どんなに困難なことであっても、そこに一縷の望みがあるのならば、必ず成し遂げるのが猟兵であると――!
アルトリウス・セレスタイト
銀河皇帝配下の黒騎士ほどでもなさそうだ
名前負けではないのか
戦況は『天光』で逐一把握
攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給
破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
「鎧」も対象から外す
『煌皇』を以て高速詠唱を無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、斉射
それを間断なく無限回実行
戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす
鎧は対象外。故に破壊する必要もなく透過して黒騎士を穿つだけ
無関係なものには無害ゆえ、遠慮も不要
物量と火力で圧殺する
※アドリブ歓迎
『黒騎士シリウス』は『絶対物質ブラキオン』によって守られている。
破壊不可能と言われた力。
それは鎧の隙間を貫く以外に彼に打撃を与えることはできない。それがオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』よりもたらされた力である。
「銀河皇帝配下の黒騎士ほどでもなさそうだ。名前負けではないのか」
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は嘗て戦ったスペースシップワールドのオブリビオンと比較する。
それは挑発であったのかもしれないし、ただ事実を述べただけであったのかもしれない。
どちらにせよ、それは『黒騎士シリウス』にとっては侮辱と同様であった。
「……試してみるがいい。代償は貴様の生命だがな!」
禁断魔術に寄って得られた力は黒炎となって噴出し、凄まじい速度を生みだす。
絶対に破壊されない『絶対物質ブラキオン』によって生み出された鎧を纏っている以上、『黒騎士シリウス』は防御をする必要がない。
どんな攻撃も鎧の間隙を縫う以外に有効な打撃を与えられず、全ての猟兵が正確無比なる攻撃を放つとは限らないのだ。
剣を振るう軌跡が黒炎を伴ってアルトリウスへと振り下ろされる。
だが、纏う十一の原理が無限にまわり、剣の斬撃を阻み逸してねじ伏せる。それは『黒騎士シリウス』にとっては、不可解な現象であったことだろう。
他の誰も理解できないことであったかもしれない。
それがどれだけ膨大な魔力を必要とするのかも、どうやってそれだけの魔力をペイしてるのかもわからない。
「別にそれを理解してくれとは言わんさ」
世界の外から組み上げて供給される魔力に寄って為さしめられた力は、ユーベルコードとなって輝く。
障害を無視し、万象を根源から消去する力。
ユーベルコード、破界(ハカイ)によって放たれた創生の権能が顕す蒼光の魔弾が『絶対物質ブラキオン』に激突し霧散する。
アルトリウスの認識からすれば、『絶対物質ブラキオン』もまた障害である。
障害であると認識した以上、『絶対物質ブラキオン』より生み出された鎧もまたユーベルコードの放つ蒼光の魔弾によって透過されるのだ。
「――……なん、だ? 何故、我が肉体に傷が……?」
一見すれば『黒騎士シリウス』の肉体には傷一つ付いていない。
何故なら『絶対物質ブラキオン』は破壊できない。傷一つとてつけられない物質だからだ。
けれど、それを透過する力があるのならば、防御を無視することだろう。
そして、『黒騎士シリウス』は見ただろう。
全天を覆う蒼光の魔弾を。
それら全てが『黒騎士シリウス』を狙っている。戦域を埋め尽くす魔弾は、アルトリウスのユーベルコードである。
「行き止まりだ」
ここが『黒騎士シリウス』の終点である。
放たれる魔弾は物量と火力でもって圧砕せんと『黒騎士シリウス』へと降り注ぎ、全天を蒼き魔弾の軌跡で埋め尽くすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
この場合、向くのは彼でしょうね。
※人格交代
『静かなる者』→『侵す者』
一人称:わし 豪快古風な武の天才
武器:黒燭炎
ははは、万全を期すのはわしらの誓いを違えぬため!
ああ、それこそわしらの利点なり。
ふむ、影の部分を狙え、か。ならば、なぎ払いより刺突に特化させた方がよいかの。
二回攻撃応用の、二度突き。二度目の突きに指定UCついておる。
まあ、手を弾くためになぎ払いするやもしれんが。
防がれ借用されようと、武器が違えば威力は落ちる。
四天霊障による結界術で、タイミングもずらすしの。
ああ、本当に。誰が虐殺など許すものか!
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は複合型悪霊である。
四柱の悪霊は、各々の特性を持って戦いに臨む。時として、得手不得手があるが、彼等の誰かが対応できるのならば、即座に切り替え、相対する敵を討つのだ。
「この場合、向くのは彼でしょうね」
『静かなる者』が小さくつぶやき、『黒騎士シリウス』が全天を覆う魔弾の軌跡の中から飛び出してきたのを見やる。
『絶対物質ブラキオン』――それは絶対破壊不能と言われた『大天使ブラキエル』が持つ力の一端である。
その『絶対物質ブラキオン』によって構成された鎧は破壊できず、未だに『黒騎士シリウス』を健在足らしめている。
「なるほどな……破壊できぬというのならば、透過させればいい。しかし、受け止めたぞ、猟兵。我が黒炎よりいでし力を受けるがいい!」
放たれる蒼き魔弾が空より降り注ぐ。
その弾丸の如き魔弾の群れはを『侵す者』は見上げる。
目を覆うような光景であったが、それでも彼は快活に笑うのだ。
「ははは、万全を期すのはわしらの誓いを違えぬため! ああ、それこそわしらの利点なり」
武の天才たる『侵す者』には黒炎から放たれるユーベルコードの魔弾の軌跡をしっかりと捉えていた。
例え、どれだけ強力な武器であろうとも、扱う者によって狙いは変わるであろう。
ならばこそ『黒騎士シリウス』の放つ魔弾の軌跡は躱すに容易いものであった。
「ふむ……破壊不能の鎧に鎧われておるか」
だが、すでに『絶対物質ブラキオン』の攻略方法は得られている。これまで猟兵達が助けてきた生命が紡いできた結果が、猟兵たちを助けるのだ。
ああ、とため息を吐き出すように『侵す者』は胸に去来する想いを噛み締めたことだろう。
滅ぼされ、復讐を誓った己達。
けれど、彼が救った生命は今、悪霊である自分たちを助けるために力を課してくれている。
武の天才たる彼の瞳には、『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』が落とす『絶対物質ブラキオン』の影をしっかりと見据えていた。
「影の部分を狙え、か。ならば!」
手にした黒き槍を手に『侵す者』は火の如き早さで『黒騎士シリウス』の懐へと入り込む。
手にした剣と打ち合う剣戟の音が戦場に響き渡る。
放つ刺突の一撃を『黒騎士シリウス』は見事に受け止める。それは彼の卓越した技量であることが窺い知れる。
だが、こちらとて武の天才である。
一撃目は捨て、二撃目こそが本命である。
「一つのところに力を込めると……」
刺突の一撃を受け止め、跳ね上がった剣。しかし、『黒騎士シリウス』は『絶対物質ブラキオン』の力を過信している。
確実に攻撃を防ぐと分かっているからこそ、攻撃にしか意識が向いていない。
そこが、『黒騎士シリウス』の限界である。
人の力の結実を信じられず、奪うことしかできぬ者との違いである。
「四天境地・『狼』(シテンキョウチ・オオカミ)――ああ、本当に」
「なに――ッ!? 槍が、すり抜ける……だと!? 馬鹿なッ!ユーベルコードでもない一撃が、なぜ――!」
侮ったのは人の力の結実。
そして、ないがしろにしたのは、己のちからではなく他者の力。それを軽んじたものに勝利は訪れない。
「誰が虐殺など許すものか!」
裂帛の気合と共に放たれたユーベルコードの輝きが、『絶対物質ブラキオン』の鎧を透過し、その本体へと槍の穂先を届かせ、『黒騎士シリウス』の肉体を貫き、血を噴出させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ミアステラ・ティレスタム
いいえ、わたし達は止まりません
貴方を撃破して『大天使ブラキエル』への道を切り開きましょう
『黒騎士シリウス』、お覚悟を
まずは黒騎士シリウスの隙を作るために、バブルワンドで毒を含んだ泡を生み出し、彼の視界と動きを阻害いたしましょう
毒性の泡に触れれば身体が鈍くなってきますから
『聖なる木の葉』と『輝石の欠片』にこのような力があったのですね
有り難く使わせていただきます
狙うは影の場所
放つは必中の氷の弾丸
これで破壊可能となった部分を破壊し、貴方を凍らせます
凍った場所に重ねて破壊の氷の弾丸を追撃
望みが一縷でもある限り、わたし達の心は決して折れません
『絶対物質ブラキオン』を透過させる光の影。
それによって『黒騎士シリウス』は肉体そのものに傷を負わされ、血を噴出させる。その首なしの体に血が通っていたこともまた驚愕であるが、それだけの一撃を受けてもなお、倒れ伏すことのない力は、確かにオウガ・フォーミュラの最強の腹心と呼ぶにふさわしい威容であったことだろう。
「力だ……もっと俺に力を……!」
呪われし禁断魔術の力が、その肉体から黒炎を吹き上がらせ、手にした大剣に宿る。
その斬撃は大地を割り、空を穿つ。
だが、それでも猟兵は立ち止まらないのだ。
どれだけの力が、どれだけの絶望が、どれだけの恐怖が、その身を襲うのだとしても。
「いいえ、わたし達は止まりません。貴方を撃破して『大天使ブラキエル』への道を開きましょう」
ミアステラ・ティレスタム(Miaplacidus・f15616)は、その青い瞳を見開き、真っ向から『黒騎士シリウス』を見据える。
恐怖はある。戦いに際しての恐れ。不安。躊躇い。
けれど、それは全て護るべき生命が己の背後にあることを知った時、消えるのではなく塗りつぶされるのだ。
「『黒騎士シリウス』―――、お覚悟を」
ミアステラが放つ毒を含んだ泡が黒炎を受け止め、霧散し消えていく。振り下ろされた大剣の斬撃は重く、『黒騎士シリウス』が最強の腹心たる技量を見せつける。
「笑止! 我が剣を泡ごときで受け止められると思ったか!」
「ええ、確かに貴方の技量は凄まじいものでしょう。ですが、貴方は慢心している。貴方を覆う『絶対物質ブラキオン』の力を過信している」
ミアステラのはなった泡は毒性を持っている。
振り払ったとしても、その鎧の隙間から『黒騎士シリウス』の肉体を蝕んでいくだろう。
けれど、動きが鈍ることはなかった。
毒性を受けてもなお、それだけの動きを見せる。驚愕しきりであったが、ミアステラは何も恐れる必要などなかった。
これまで猟兵達が救ってきた命の結実たる『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』が生み出す影が、『絶対物質ブラキオン』の力を陰らすのだから。
「有り難く使わせていただきます」
その唇が紡ぐのは、煌奏詩(シュネル)。
ユーベルコードに輝く青の瞳が見据えるのは、人々の命が導き出した『絶対物質ブラキオン』にさえも影を落とす鮮烈なる輝き。
その陰こそが『絶対物質ブラキオン』を透過する場所である。
どれだけ堅牢なる鎧であったとしても、ミアステラの狙いは必中である。
「祈りを以て煌奏の時を齎しましょう」
生み出された無数の氷の弾丸。
それはなにものをも破壊し凍結する刃を持って、放たれる。絶対に破壊されぬ物質を破壊することは敵わないだろう。
けれど、彼女の放つ弾丸は狙いを違えない。
そして、生み出された影を狙うことなど造作も無いのだ。
打ち込まれた氷の弾丸が鎧をすり抜け、『黒騎士シリウス』の肉体そのものを傷つける。刃は肉を引き裂き、血を鎧の隙間から噴出させ、黒き鎧を赤黒く染め上げていくだろう。
その痛ましい姿にミアステラは瞳を伏せることなく、まっすぐに見据える。
「我が『絶対物質ブラキオン』の鎧が、無効化、される、だと……何故だ。何故お前たちは、強大な力に屈しない。お前達では『大天使ブラキエル』様は、倒せないというのに……!」
その怨嗟をミアステラは頭を振って否定する。
そう、何も恐れる必要など無いのだ。
「望みが一縷でも在る限り、わたし達の心は決して折れません」
嘗て、救った生命達が今彼女たちの背を押すように、それに負けてはいられないとミアステラは輝くユーベルコードと共に『黒騎士シリウス』を打倒せしめるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
今度は首無し騎士のお出ましね。
悪いけど、あなたも突破させてもらうわ。目標はあくまで大天使。
「式神使い」で式神十二天将召喚儀。
呼び出した十二人の天将たちを「集団戦術」で指揮して、黒騎士の相手をしてもらう。
弱点の影を突けるなら、そのまま貫いて。
あたしも参戦して、弱点を薙刀で「浄化」の「串刺し」狙い。
防御は『鎧装豪腕』を呼び出して、「盾受け」「受け流し」で対応する。
ユーベルコードを封じる黒炎は、「呪詛耐性」を当てにしてみましょう。
所詮借り物の力を、いくら誇ったって虚しいだけだわ。黒騎士シリウス、骸の海へ還るがいい!
クレリックの皆、あたしや式神の回復、お願い出来るかしら?
さあ、いよいよ大天使と決戦よ。
放たれた氷の弾丸が『黒騎士シリウス』の鎧を透過して、その肉体を傷つける。
打ち込まれた弾丸は刃を生やし、その内部を切り裂く。それは激痛を持って『黒騎士シリウス』を痛めつけるだろう。
本来であれば『絶対物質ブラキオン』によって破壊されることのない鎧である。
如何なる攻撃も鎧を傷つけることはできず、『黒騎士シリウス』は防御という点においては、今や最高峰に達していたのだ。
けれど、これまで猟兵達が助けてきたアックス&ウィザーズ世界の人々がもたらした『輝石の欠片』、『聖なる木の葉』によって生み出された影が『絶対物質ブラキオン』を透過せしめるのだ。
「馬鹿な……これしきのことで我が『絶対物質ブラキオン』の鎧が、破られるなど……!」
あってはならないことだ。
けれど、現に『黒騎士シリウス』は追い込まれていた。それに追い打ちをかけるように、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は詠唱する。
「急急如律令! 六壬式盤の導きによりお招き申す! 天の十二方位を支配する十二天将よ、我が言葉に応え顕現せよ!」
手にした呪符が燃え尽き、それと共に輝くユーベルコード。
式神十二天将召喚儀(シキガミジュウニテンショウショウカンギ)によって召喚された唐風の戦装束で武装した式神十二天将が戦場に走る。
「今度は首なし騎士のお出ましね。悪いけど、あなたも突破させてもらうわ。目標はあくまで大天使」
「抜かせ! 遅れを取ったが、貴様たちを此れより一歩も通すわけにはいかぬ!」
兜を抱え、大剣を振るう『黒騎士シリウス』が式神十二天将と激突する。
『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』によって露呈した『絶対物質ブラキオン』の弱点足り得る影。
しかし、ゆかりの指揮でもっても、『黒騎士シリウス』を突き崩せ無いのは、流石は最強の腹心と言ったところであろうか。
「やるわね、けど……!」
「いいや、貴様の負けだ! 猟兵!」
振るわれた力奪う呪詛の炎が十二天将の一体にぶつかり、その身体が霧散し消えていく。
それはユーベルコードによって生み出された存在を打ち消し、消滅させるのだ。
呪詛の炎は益々持って燃え上がる。
それが『黒騎士シリウス』の寿命を削る行いであったのだとしても、彼は躊躇うことはないのだ。
失うことを恐れては、何も成せないのだ。
「所詮借り物の力を、いくら誇ったって虚しいだけだわ『黒騎士シリウス』、骸の海へ還るがいい!」
だが、その程度でゆかりはひるまない。
十二天将はまだ数を残している。どれだけユーベルコードを封じる呪詛の炎が当たろうとも、ゆかりは立ち止まらない。
ここで立ち止まっては、本当に『大天使ブラキエル』の目論む無差別大量虐殺を許してしまう。
そうなっては喪われるのは自分の生命だけではない。
無数の生命が喪われる。それはあってはならないことだ。彼女の背を押すのはクレリックたちの加護の力であった。
放たれる加護の力を受けて、ゆかりと十二天将が走る。
その瞳に映るのは『絶対物質ブラキオン』を透過した影。
そこが『黒騎士シリウス』の急所であると知るからこそ、ゆかりは十二天将全てを犠牲にしてでも、彼の隙を生みだす。
「十二天将、その力を今見せなさい! あたしたちの背後にいる人々を護るために!」
裂帛の気合と共にゆかりは薙刀を突き出す。十二天将が炎に燃えながら、『黒騎士シリウス』を羽交い締めにした瞬間、ゆかりの薙刀の突きが透過した影を貫くのだ。
「グ、ァ――!?」
「力がなければ確かに生きてはいけないでしょう。けれど、人は優しいものよ。だから、生きる資格がある。それを奪わせはしないわ!」
ゆかりの薙刀が『黒騎士シリウス』を貫き、その血潮を噴出させる。
互いが弾き飛ばされ、『黒騎士シリウス』は大地に失墜するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
クルル・ハンドゥーレ
アドリブ連携歓迎
黒騎士?
邪道に堕ちた存在が騎士名乗るんもおこがましいわ
しかも、もろた鎧の絶対性なんぞを頼みにする時点でアウトやろ?
限界突破+先制攻撃にて先手
UC展開
鎧の隙間から侵食する猛毒ダメージ蓄積と
迷宮出口前を曲がり角とする事で敵立ち位置を限定
鎧無効の影が当たりやすくなる、敵行動・攻撃範囲を狭める事を狙う
皆ほんまありがとう!
大金星や!またひとつ輝かしい冒険譚が増えたで!
影めがけて攻撃
フェイント+部位破壊+毒使い+マヒ攻撃+破魔
体制崩すべくシールドバッシュ+吹き飛ばしも
冒険者達に被害出ぬよう鼓舞+結界術で強化保護
敵攻撃は冷静に見切り、
盾受け+武器受け+カウンター+オーラ防御、呪詛耐性で対処
『騎士』とは如何なる存在と定義することができようか。
主君に仕え、主君に忠を捧げる者。
清廉潔白を謳う騎士の物語はあれど『黒騎士シリウス』は如何なる騎士であったことだろうか。
頭部のない、その名残であろう兜を抱え大剣を振るう姿。
そこに嘗ての騎士としての矜持は最早ないだろう。力だけを求め、力のみによって主従が決まる。
ゆえに『絶対物質ブラキオン』を持って、彼の鎧は絶対に破壊できぬ難攻不落の壁となって猟兵に立ち塞がるのだ。
禁断の魔術によって黒炎を噴出させながら、『黒騎士シリウス』は大地より立ち上がる。
猟兵達に打ちのめされても、未だ消えず、己の主である『大天使ブラキエル』のために力を降る姿は確かに騎士であったかもしれない。
けれど。
そう、けれど、クルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)は認めない。
「黒騎士? 邪道に堕ちた存在が騎士名乗るんもおこがましいわ」
しかも自分の鎧ではない。
『絶対物質ブラキオン』による絶対性。それを頼みにする時点でクルルの思う騎士としての存在定義を満たしてはいない。
それが『黒騎士シリウス』であった。
「そういうことは、我を打倒してから言うのだな。口だけではなんとでも言えるわ――!」
凄まじい速度で黒炎を噴出させながらクルルに迫る『黒騎士シリウス』。その大剣の一撃はまともに受ければ、クルルの細腕では受け止められないだろう。
だが、クルルは猟兵である。
彼女の瞳がユーベルコードに輝き、吹き荒れるのは芳しい毒花の香り。無数に咲く鋼の荊が戦場を包み込む。
振るわれた大剣は毒花をちらしたが、クルルに届くことはなかった。
展開されたユーベルコードの迷路は、瞬時に主であるクルルと『黒騎士シリウス』の間に迷宮という名の壁でもって引き離すのだ。
「百花繚乱、徒然に、廻り廻りてゆく末は――花逍遙(ハナニサマヨウ)」
そう、確かに『絶対物質ブラキオン』の鎧はあらゆる攻撃を受け付けない。破壊することすら不可能と言われた堅牢さである。
だが、その鎧の隙間は違う。
隙間を縫って攻撃することは至難の業であろう。だが、クルルのユーベルコードによって生み出された毒花の香気は徐々に『黒騎士シリウス』の肉体を蝕んでいくだろう。
そして、迷宮を踏破し、出口を目指す以上クルルの不意打ちは確実性を増す。
「皆ほんまありがとう!」
クルルはこれまで救い、培ってきた人々の命の積み重ねが今結実したことに感謝する。もしも、彼等を救わずに『輝石の欠片』や『聖なる木の葉』がなければ、『絶対物質ブラキオン』を透過する影を生みだすことはできなかったことだろう。
手にしたそれらを持ってクルルは、一瞬の邂逅を待ち受ける。
出口を『黒騎士シリウス』が目指す以上、必ずクルルが待ち構える曲がり角を曲がってくる。
開けた戦場であれば、影は躱されてしまうかもしれない。
けれど、これだけ限定されていれば影を躱すこともできず、そしてクルルの不意打ちもまた成功する確立をあげるだろう。
「その程度の術策、我が踏破できぬと思ったか――!」
だが、その上を行くのが最強の腹心たる所以である。不意打ちなど警戒して当然。『黒騎士シリウス』は自身に投射される影を躱すこと無く正面から凄まじい速度でクルルに迫る。
「ほんまに。けれど、これが大金星や!」
輝く光が葉の形となって『黒騎士シリウス』に影を落とす。もうわかっている。真正面から『黒騎士シリウス』が突撃してくるのは。
だからこそ、クルルは薙刀の一撃をフェイントに紫電纏う大盾を打ち出す。
彼女の背後には冒険者たちが居る。
彼等に累が及ぶことをクルルは恐れただろう。だからこそ、その大盾が力を発露させる。
打ち込まれた大盾の一撃は『黒騎士シリウス』の視界を奪い、体勢を突き崩す。その瞬間を彼女は待っていたのだ。
「また一つ輝かしい冒険譚が増えたで! 誰かを護るということはこんなにも誇らしいんやって!」
それをクルルは知って体勢を崩し、投射された影に狙いをつける。手にした薙刀を振りかぶり、袈裟懸けに振るわれた斬撃の一撃が、絶対に破壊できぬと言われた『絶対物質ブラキオン』を透過し、その内側にある『黒騎士シリウス』の肉体へと言えぬ傷跡を刻み込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
その鎧はすごいって思うけど、鎧自体は怖くはないし、
鎧に頼っているっぽい『黒騎士』さんも、怖くはないかな。
装備は道具。完璧なものなんてないんだよ。
ほんとうに怖いのは、欠点を解って道具を使いこなしている人だからね!
その証拠にほら、みんなの力で『穴』ができたよ?
【E.C.O.M.S】でユニットを召喚して、『黒騎士』さんの周囲に展開したら、
『穴』をめがけてオールレンジ攻撃。
どんなに強固な鎧でも、影が落ちること防ぐことはできないし、
鎧に頼った防御に慣れた『黒騎士さん』は、全周囲からの攻撃を防げるかな?
525機中、一機でも飛び込めればわたしたちの勝ち。
そうすれば鎧の中で爆発させて、内部から壊してあげるよ!
『絶対物質ブラキオン』の脅威は、その絶対性である。
猟兵の放つユーベルコードであっても破壊できぬと言わしめた強固な守り。それこそが『大天使ブラキエル』の最強の腹心である『黒騎士シリウス』の誇りであり、頼みの綱でもあったのだ。
だが、それは今や覆されている。
猟兵たちの工夫と彼等が助け、培ってきた人々の持つ品々が『絶対物質ブラキオン』の絶対性を揺らがせたのだ。
その証拠にこれまでも『黒騎士シリウス』は鎧を破壊できずとも、『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』によって生み出された影が、『絶対物質ブラキオン』を透過させ、内部の肉体を傷付けたのだ。
「こうも容易く、『絶対物質ブラキオン』が攻略されるなど、あってはならぬ! 我が主の、力がこんなことで揺らぐことなど!」
あってはならないのだと『黒騎士シリウス』は叫んだが、その鎧の内側に刻まれた傷は浅くはない。
それでも黒炎を噴出させながら、かの『黒騎士シリウス』は戦場を走る。
ここで猟兵を止め、己の忠義を示さなければならないからだ。
「その鎧はすごいって思うけど、鎧自体は怖くないし、鎧に頼っているっぽい『黒騎士』さんも怖くはないかな」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は凄まじき速度で迫る『黒騎士シリウス』を前にしても怯むことはなかった。
その瞳に怯えはなく、あったのはユーベルコードの輝きであった。
『黒騎士シリウス』は訝しんだだろう。
ひ弱な身体。
とてもではないが戦士の肉体ではない理緒。けれど、その瞳に己への恐怖は一切ない。己の強大な力を前に恐怖し、慄くが道理ではないのか。
不可解な存在を前にした時、生命は激昂する。
「我を愚弄するか! その思い上がりを下してくれる!」
振るう大剣。
けれど、理緒は微笑んで言うのだ。
「装備は道具。完璧なものなんてないんだよ。本当に怖いのは、欠点をわかって道具を使いこなしている人だからね!」
何を言っているのだと、『黒騎士シリウス』は不可解な感情のままに大剣を振り下ろす。
だが、その一撃は正八角形のユニットに阻まれ、理緒に当たることはなかった。
「E.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)、作戦行動、開始。その証拠にほら、みんなの力で『穴』ができたよ?」
理緒のユーベルコードが輝き、展開された小型戦闘用のユニットが大剣を受け止める。一撃で消滅するユニットであるが、彼女を護るように展開されたユニットが大剣の動きを完全に止めるのだ。
「馬鹿な……この距離では貴様も……!」
「ううん、わたしの勝ちだよ。既に布石は打った。だから、もう後は詰めていくだけ」
彼女の言葉と共に八角形のユニットがオールレンジで『黒騎士シリウス』を取り囲み、突撃していく。
「どれだけ強固な鎧でも、影が落ちることを防ぐことはできないし――」
その言葉通り、『輝石の欠片』が光を放ち、『聖なる木の葉』が落とす影から『黒騎士シリウス』は逃れることはできない。
生み出される影が『絶対物質ブラキオン』を透過し、弱点を生み出していく。
その度に『黒騎士シリウス』は弱点をカバーしようと大剣を振るう。それは即ち防戦一方である。
理緒を仕留める余裕すらなくなっていく中、理緒はユニットに捕まって距離を保つのだ。
「鎧に頼った防御に慣れた『黒騎士さん』は、全周囲からの攻撃を防げることはないよね。全部で525機! その一機でも飛び込めればいいんだから」
理緒の操作するユニットが一斉に『黒騎士シリウス』を襲う。
確かに一撃で消滅するとは言え、周囲を取り囲み次々と弱点となった影に飛び込もうとするユニット全てを躱すことなどできはしない。
詰将棋のように『黒騎士シリウス』は追い込まれていく。
じりじりと包囲を狭められた瞬間、透過した影、『絶対物質ブラキオン』の内側へとユニットが飛び込んだ瞬間、ユニットが爆ぜる。
それは理緒のユーベルコードであり、内部より『黒騎士シリウス』の肉体に打ち込まれた楔そのものであった。
「言ったでしょう、わたしの、ううん……」
理緒はこれまで援軍として共に戦ってきてくれた人々を振り返り、笑顔で言うのだ。
「わたしたちの勝ちだよ――!」
大成功
🔵🔵🔵
久瀬・了介
不破の鎧、不死身の体、絶対の防御…そんな都合のいい話は無い。壊せない物も滅びない者も有り得ない。
戦友達がくれた勝機、使わせて貰う。
電力で加速した【早業】での高速移動。攻撃を回避しつつ銃で『影』を狙う。
仕掛けるは【死点撃ち】。致命打撃を与えるUC。
問題は二点。防御された場合俺に撃ち返される。そして、そろそろ敵自身にも己の鎧の弱点が、俺がどこを狙うか分かっているだろう事。
確実に当てる。【ダッシュ】し間合いを詰めつつ左手に隠し持った「爆破スイッチ」を使う。微かな火花が飛び敵の足元の地面を地雷の様に爆破、【体勢を崩す】。
懐に飛び込み、銃口を影に押し当て零距離射撃。【呪詛】を込めた【呪殺弾】を叩き込む。
戦いに絶対はない。
それは久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)にとって当然の摂理であった。
けれど、現に彼が相対するオブリビオン『黒騎士シリウス』は『絶対物質ブラキオン』と呼ばれる絶対に破壊されることのない鎧を纏い、猟兵たちの壁となって立ち塞がる。
「我は倒れぬ! 倒れてなるものか。我は、あの方の最強の腹心たる『黒騎士シリウス』! ならばこそ、ここで貴様たちを押し留め、必ずやあの方の願いを成就させるのだ!」
その気迫は本物であったことだろう。
そして、身にまとう『絶対物質ブラキオン』の鎧の堅牢さも。
しかし、了介にとって、そんなことはどうでもよかったのだ。
「不破の鎧、不死身の身体、絶対の防御……そんな都合のいい話はない。壊せない物も滅びない者もあり得ない」
彼の瞳に宿るのは憎悪と怨念の炎。
オブリビオンは必ず殺す。絶対があるのならば、己の殺意こそが絶対であると言わんばかりに了介のヴォルテックエンジンが回転を続ける。
魂の衝動に寄って生み出された電流でもって加速した了介の肉体が戦場を走る。
放たれる黒炎が彼を捉えることはできなかった。
それほどまでの加速を了介は電力によって可能としていた。本来であれば、人間の肉体がその加速に耐えられることはない。
けれど、彼は人間ではない。
デッドマンであり悪霊である。
例え身体が耐えられなくても、魂の衝動さえ残っていればいい。不滅の憎悪こそが彼を突き動かすのだ。
「そう、何も無駄にはしない。戦友たちがくれた勝機、使わせて貰う」
『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』が生みだす影。
それこそが『絶対物質ブラキオン』を透過する影となって、鎧をすり抜け『黒騎士シリウス』の肉体へと攻撃を通す数少ない急所と成るのだ。
それを狙わせぬと『黒騎士シリウス』は防御を固める。けれど、無意味だ。
了介のユーベルコードが瞳に輝く。
その名を死点撃ち(シテンウチ)という。
彼が急所を見抜いている以上、その一撃は必中たる一撃と成る。
「小賢しい! 我が急所を狙うか。だが、もう我にはわかっている。貴様たちが狙う影たる場所もな!」
そう最強の腹心の名は伊達ではない。
すでに『黒騎士シリウス』は己の急所たる場所を把握している。度重なる猟兵たちの攻撃。
それによって影が鎧を透過することを理解し、それに対応してきているのだ。
だが、それに何の問題が在る。
了介にとって、それは重要ではない。
わかっていることは、攻撃を確実に当てるという事実のみ。
「だからどうした。俺は確実に当てる」
俊足の踏み込み。
それに対応しきる『黒騎士シリウス』は大剣を振りかぶり、了介の身体を両断せんとする。しかし、次の瞬間、了介が握りしめた爆破スイッチより僅かな火花が『黒騎士シリウス』の足元の地面を地雷のように爆発を引き起こし、彼の視界と体勢を崩すのだ。
「ぬぅ――! だが、さかしいと言った!」
この程度の爆破で『黒騎士シリウス』が打倒できるとは思っていない。
それ以前に『絶対物質ブラキオン』の鎧がある限り、こちらの攻撃は届かない。だが、体勢は崩せたのだ。
それが命取りである。
「朽果れ」
つぶやくように。淡々とした言葉が響く。
一瞬の明滅。それは了介が手にしたハンドキャノンの銃口を『絶対物質ブラキオン』に落ちた影に押し当てる。
「馬鹿な……! この距離で、我より疾い、だと!?」
「わけないことだ。そして――」
躊躇うこと無く、零距離射撃が火を吹く。トリガーを引く音が遅れて聞こえるほどの一瞬。
轟音と共に弾丸が放たれ、『絶対物質ブラキオン』を透過し内部の『黒騎士シリウス』の肉体を貫く呪詛。
それは呪殺弾。
了介の存在意義であり、そして同時に変わらぬものである。そう……。
「オブリビオンは殺す。必ず殺す」
不変の殺意そのものであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
そんなもの、無視して本体に直接……ネタが被ってる!
そして傍から見るとそれはそれでちょっと大人げないな…とも思うボクだった
コホンッ!
みんな、ありがとう!
見ていて!みんなの力で!ボクたちはあいつを倒す!
『聖なる木の葉』と『輝石の欠片』をパシッと受け取ってUC発動!
二つを暴風のなかに巻き込んで舞い上がらせてランダムに『影』を生じさせるよ!
そんなものじゃ咄嗟に狙って攻撃できないだろうって?
この風はボクそのもの、勘【第六感】も合わせて攻めれば十分さ!
そして…一方キミはこの無作為に生じる影と攻撃を避けること防御することはできるかな!
さぁ八つ当たりなんかさっさと終わらせないとね!
『絶対物質ブラキオン』――それは頑強というレベルを越えた物質である。
オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』が司る物質であり、何者も傷つけること能わずと言われている。
ゆえに、その力の一端を付与された『黒騎士シリウス』の鎧は、あらゆる猟兵のユーベルコードを受け付けない。
鎧の隙間を狙うほかなかった難攻不落の鎧は今、猟兵達が嘗て救った人々の手にある『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』によって落とされた影によって、『絶対物質ブラキオン』を透過する。
その影を貫くことで『黒騎士シリウス』に打撃を与えることができたのだ。
しかし、真に驚嘆すべきは『黒騎士シリウス』の頑強さであったことだろう。
これまで多くの猟兵達が繰り出した攻撃は確かに彼本体に届き、傷を負わせていた。けれど、それでもなお倒れないのは、『黒騎士シリウス』が最強の腹心たる名実を持つからであったに違いない。
「ビューっと吹いてバーッと過ぎ去るものってなーんだ?」
だが、それすらも問題とせずに戦場を走るのはロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)であった。
暴風の化身(ゴッドウィンド)となった彼が身を変じたのは、肉を殺ぎ骨を削り有形無形を粉砕する神砂嵐であった。
彼が受け取った『輝石の破片』と『聖なる木の葉』が舞い上がり、輝きと落ちる葉の影がランダムに『黒騎士シリウス』へと降り注ぐ。
「『絶対物質ブラキオン』、そんなもの無視して本体に直接っていうのはネタかぶりだし、傍から見たらそれはそれで大人げないなって思っていたからね!」
なぞなぞついでにとばかりにロニは神砂嵐となって戦場に『絶対物質ブラキオン』を透過させる影を生み出していく。
「確かに貴様たちの力は認めるべきものである。だが、それだけの数の影を生み出したところで、お前がそれを狙えなければ無意味であろう!」
神砂嵐を防御した『黒騎士シリウス』の黒炎が同じ神砂嵐を吹き荒ばせ、さらに『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』の生みだす影を予測不可能にするのだ。
これでは影が落ちても、そこを貫くことなどできはしないだろう。
けれど、ロニは笑っていた。
「この風はボクそのもの。だから、勘で十分なのさ!」
理不尽である。
どれだけ鍛錬を積んでも、どれだけ研鑽を重ねてもそれを飛び越える者がいる。
それはどうしようもないことである。
「そんなことが可能なわけが――!」
『黒騎士シリウス』が呻く。
けれど、複雑に落ちる影を彼自身も覆うことはできなくなっていた。そもそも『絶対物質ブラキオン』による鎧の前に防御は無意味である。
それに慣れきった彼が、全ての落ちる影を把握することなど、土台無理な話であったのだ。
だが、その予測不可能を可能にするのが、第六感であるというのならば、ロニの一撃はきっと理不尽として『黒騎士シリウス』へと打ち込まれるのだ。
「防御なんてできるわけないよね! さぁ、八つ当たりなんかさっさと終わらせないとね!」
ロニは砂嵐そのものとなって、飛ぶ。
目指すは『大天使ブラキエル』だけだ。無差別大量虐殺を八つ当たりと評した、その凶行を止めるために、吹き荒ぶ嵐となって――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「さて、サージェも遅れて合流したことだし、ここは我らパーティの実力を見せるとしようか。
なになに、敵が纏っているのは破壊不可能な『絶対物質ブラキオン』の鎧、とな?」
ほほう、この漆黒の魔女に壊せぬものがあるというのか。面白い!
それは我に対する挑戦と受け取った!
ここは我が先陣を切るとしようか!
悪いな、ルクスとサージェの出番は残らんかもしれんな。
「ククク、ドラゴンですら消し飛ばす、我の最強魔法、竜滅陣を受けるが良い!」
どうだ、絶対物質でできた鎧とて、我の魔法の前には……
って、馬鹿な、無傷だと!?
「くっ、呪詛の黒炎が我に纏わりつき……
魔力が吸収されていく……」
お腹が減って……動けん……
ルクス・アルブス
【勇者パーティ】
『破壊不可能』っていうのが、
師匠のプライドを刺激してしてしまいました!?
師匠!
挑戦とかではないですから!
たまには言うこと聞きましょう!?
って、聞くはずないですよね。師匠ですもん。
ちょ、直撃!?
「やりましたか!?」
いくら『絶対物質』でも、師匠の魔法をまともに受けたら……!
効いてないじゃないですか、ぺたん魔女-!(都合2回目)
こうなったら!
魔法少女に変身して【クラリネット】を取り出すと、
師匠とサージェさんに回復かけっぱなし作戦です!
サージェさん!
これで少し痛いくらいで死なないですから、
安心して影をどついてください!
師匠は、帰るまでおやつで我慢してくださいね。
(おやつぶくろ差し出し)
サージェ・ライト
【勇者パーティー】
フィアさんルクスさんと合流
ここからが私たちの真骨頂ですね!
そう、シリウスの弱点はこれまでの縁
つまり皆さんが…って何してんのぺたん魔女ー?!
話聞いてました!?
ここまで来たら見守るしかありません
フィアさんならもしかして…!
よし、戦闘準備しよ!
「ここで貴方の命運を断つ、それが私たちです!」
【威風堂々】とカタール装着後
ルクスさんの支援を受けて突撃です!
「痛いのは嫌なんですが!!」
怪我くらいは我慢しますね(しくしく
残像を使ってかく乱しつつ
懐に踏み込み『影』を狙い澄ませての
「クノイチ正拳突きー!」
いえいえふざけてませんよ?
カタールってそういう使い方をする武器なので!
※アドリブOK
三人寄れば文殊の知恵。
まあ、そういう諺もあるくらいである。勇者パーティとして徒党を組む三人の猟兵達。そう、言わずと知れた光の勇者、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)のパーティである。
自称であろうが、なんであろうがそれに見合うだけの実力を持っているのが冒険者達にとっては今重要なのである。
「さて、サージェも遅れて合流したことだし、ここは我等パーティの実力を見せるとしようか」
フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は『黒騎士シリウス』と対峙する。
だが、かの『黒騎士シリウス』の鎧は『絶対物質ブラキオン』によって作られた絶対破壊不可能な鎧である。
「ほほう、この漆黒魔女に壊せぬものがあるというのか。面白い! それは我に対する挑戦と受け取った!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
その闘争心は、絶対とか破壊不可能とかいう言葉に反応しメラメラと燃え上がるのだ。鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥ではなく、殺してしまうタイプである。
「師匠のプライドを刺激しないでください!? 師匠! 挑戦とかではないですから! たまには言うこと聞きましょう!?」
ルクスが慌ててフィアを止めようとする。
そう、『絶対物質ブラキオン』は猟兵のユーベルコードであっても破壊できないのだ。
しかし、それをまったく聞かないのがフィアという悪魔である。
「ここからが私達の真骨頂。そして、『黒騎士シリウス』! あなたの弱点はこれまでの縁。つまりみなさんが……」
「縁だと? 個の力の前にはか細い人の力など無意味よ!」
フィアとルクスがわちゃわちゃしている間、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は『黒騎士シリウス』と対峙し、とてもシリアスな展開に入っていた。
確かに『絶対物質ブラキオン』はその名の通り破壊できぬ物質。
けれど、『黒騎士シリウス』は見誤っていたのだ。人々を救い、その人々のちからに寄って後押しされた猟兵たちの力を。
『輝石の欠片』、『聖なる木の葉』が生みだす影こそが、『絶対物質ブラキオン』に影を落し、その効果を透過させるのだ。
「ならば、受けるのです。縁の力を……って何してんのぺたん魔女ー?! 話聞いてました!?」
サージェが目を剥く。何故なら、彼女の背後で凄まじい魔力の奔流を持って大魔術である竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)が展開しているからだ。
言うまでもなくフィアのユーベルコードである。マジで何してんの? とサージェは思ったであろうし、ルクスも止められなかったのだ。
「ククク、ドラゴンですあら消し飛ばす、我の最強魔法。竜滅陣を受けるが良い!」
ククク、の行間にはルクスとサージェの出番を奪ってしまったことに対する殊勝な思いもあったのだろう。
だけど、それはよくあるフラグってやつである。
開幕ぷっぱが通用するのは雑魚戦までってアニメでやってた。アニメってなんだ。
「漆黒の魔女の名に於いて、我が前に立ち塞がりし全てを消し去ろう」
「師匠聞いてくださいってば! 師匠だから聞くはずないですもんねってわかってますけど、聞いてくださいー!?」
だが悲しいかな。
ぶっぱされた大規模破壊魔法は『黒騎士シリウス』へと放たれる。
凄まじい力の奔流が『黒騎士シリウス』を飲み込み、周囲の地形すらも変えるほどの一撃で持って、その姿を消し去り……いや、消し去ることはできなかった。
サージェもルクスも、フィアならばもしかしたらと思っただろう。
それに直撃したのだ。いくら『絶対物質ブラキオン』と言えど、フィアの魔法をまともに受けたらと、思ったのだ。
だが、それはあまりにも儚い一瞬の夢であった。
「どうだ、絶対物質で出来た鎧とて、我の魔法の前には……って、馬鹿な!?」
「効いてないじゃないですか、ぺたん魔女ー!」
本日二度目のぺたん魔女。
ルクスも前から遠慮ないと思っていたが、益々持って遠慮がなくなっている。いいのかな、それでと思わないでもないが話を聞かない師匠が悪い。
「無駄だと言った! 我の鎧、『絶対物質ブラキオン』は如何なる力も傷つけることは叶わず!」
黒炎を纏った『黒騎士シリウス』の放つ呪詛がフィアにまとわりつき魔力が吸収されていく……のではなく、単純に魔力不足でお腹の空いたフィアが倒れ込む。
それをルクスは支える。
その横をサージェがカタールを構え疾走する。どうせこんなことになるんじゃないかと思っていたのだ。
「ここで貴方の命運を絶つ、それが私達です!」
威風堂々(シノベテナイクノイチ)と姿を晒し、サージェは疾駆する。
その速度は凄まじく、『黒騎士シリウス』を前にしても大剣の一撃を容易く躱し、翻弄するのだ。
残像を生みだすほどの速度で走るサージェをルクスはクラリネット狂詩曲(クラリネットキョウシキョク)によってサージェを癒やし続ける。
それはいわばサージェに対する強力なバフであった。だが、ちょっとその、演奏の質というか、そのぉ。
「んぅんむ、んぅ、んぅんうぃむゃむぃむ!」
どういう音色!? となる音がサージェのツッコミ魂を刺激する。
ツッコミたい。
それってなんて曲目なんですか!? と。だが悲しいかな、とても今はその状況ではない。
気を抜いた瞬間に『黒騎士シリウス』の大剣の餌食になって痛い目を見てしまうからだ。
「ええい、クノイチ正拳突きー!」
どっせい! とサージェは『黒騎士シリウス』の懐に飛び込む。
痛いのは我慢すればいい。肝心なのは度胸である。
「サージェさん! 当たっても少し痛いくらいで死なないですから、安心して影をどついてください!」
ルクスの応援? 応援……だよね? がサージェの背中を押す。痛いの嫌なんですが! とサージェが叫ぶが、今はそれどころではない。
大剣の一撃をかいくぐり、サージェのカタールが突き出される。
「ふざけているのか!」
「いえいえ、ふざけてませんよ? これはそういう使い方をする武器なので!」
刺突の一撃。
それは勇者パーティのどたばた劇の最中、されど鋭い一撃となって『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』が生みだす影によって透過された『絶対物質ブラキオン』の鎧を貫き、『黒騎士シリウス』に見事に一撃を見舞うのだ。
その背後で一人フィアだけがよろよろとつぶやく。
「お腹が減って……動けん……――」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
「恐れぬのであれば進軍は此処で止まる」……その通りでしょうね。
ですが、私たちはそれが脅威だと理解し、正しく恐れ……打ち倒すための対策はここにある。止まりはしません。
呪詛の炎とはいえ「炎」であれば氷とは相克、「フィンブルヴェト」からの氷の弾丸で黒炎の斬撃を『見切り』相殺および回避しながら『聖なる木の葉』と『輝石の欠片』の準備ができるまで時間を稼ぎます。
動きを止めない……そうやすやすと狙い撃たせはしませんか。
ですが高速で動き回っていようとも、狙うべき箇所が極めて小さくとも……この一射は、外しません。
アイテムの準備ができたら一緒に戦った人たちの賛同を受け、【奇跡の狙撃手】で狙い撃ちます。
恐れとは即ち、生命に対する安全装置のようなものであったことだろう。
人は、生命は恐れがあるからこそ脅威を避けようとする。それは生存本能というものであったし、それを恥じることはない。
けれど、それでも人は恐怖を避けるのではなく乗り越えることを選ぶ。
そういう生き物なのだ。
だからこそ、連綿と紡がれてきた技術や文化が喪われながらも、形を変え、世代を越えて今という時間に光明を差し込ませるのだ。
「『恐れぬのであれば進軍は此処で止まる』……その通りでしょうね」
『黒騎士シリウス』の言葉を、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は反芻する。
恐れぬからこそ、『絶対物質ブラキオン』に対する手段を考えずに徒に時間を消費する。それを『黒騎士シリウス』はいいたかったのだろう。
けれど、それは間違いであった。
先行した猟兵達がそうであったように『絶対物質ブラキオン』を絶対のままに透過させる手段が、猟兵たちには在るのだ。
「ですが、私達はそれが脅威だと理解し、正しく恐れ……打ち倒すための対策がここにある。止まりはしません」
セルマの眼前に迫る『黒騎士シリウス』は鬼気迫る迫力があった。
禁断魔術によって己の速度を上げた黒炎吹き荒ぶ姿は、まさに最強の腹心というにふさわしい威容であった。
そこに恐れはある。
自分よりも強大なオブリビオン。個としての力は完全に『黒騎士シリウス』のほうが上であろう。
それを恐れと呼ぶが、人はそれを乗り越えることができる。
手にした『フィンブルヴェト』を構え、氷の弾丸を撃ち放つ。放たれた黒炎の斬撃と激突し、炎を相殺させる。
「ぬっ……! 氷の弾丸! 相克を狙うか、ならば知れ! 我が剣はその程度では留まらぬとな!」
大剣を振り回す姿は嵐のようであり、放たれる氷の弾丸の尽くを『黒騎士シリウス』は打ち払っていく。
「貴様たちの狙いは最早わかっているぞ。その遺物による我が鎧、『絶対物質ブラキオン』を透過させる影を生みだすのが狙いだろう」
だが、凄まじい速度で戦場を走る『黒騎士シリウス』に隙はない。
例えオブリビオンに堕ちたのだとしても、その技量に一切の陰りはないのだ。
だからこそ、セルマはその青い瞳をユーベルコードに輝かせる。
集中するのだ。動きを止めず、『輝石の欠片』の光をもって『聖なる木の葉』が落とす影の場所を一定にしないのだ。
それが『黒騎士シリウス』の二つの遺物に対する対抗策であった。
「即座に対応してきましたか……やすやすと狙い撃たせはしませんか」
ですが、とセルマの瞳はユーベルコードに輝き続ける。例え、どれだけ狙う箇所が動き続け狙いが定まらぬのだとしても、どれだけ小さい影であろうとも、セルマという名の奇跡の狙撃手(イネヴィタブル・スナイパー)は狙いを外すことはない。
どれだけの悪条件があったとしても、セルマは狙撃を成功させるという一念を持って、それをユーベルコードにまで昇華させる。
この一射は自分の生命を守るためのものではない。
彼女の背後にある人々を守るための一射である。ゆえに、冒険者の街を無差別大量虐殺から守らんと立ち上がった人々の願いが彼女の背中を押す。
ユーベルコードの輝きはさらにましていき、その力を増幅させる。
まるで大海に没した砂金の一粒を狙い撃つかのような超精密射撃。
それを可能とするのがセルマという猟兵であった。
「この一射は、外しません……!」
放たれた弾丸は狙い過たず、『黒騎士シリウス』の鎧へと吸い込まれていく。『黒騎士シリウス』は勝ったと思っただろう。
遺物が生みだす影は己の鎧のどこにも影を落していない。
放たれた弾丸は弾かれる。だから、防御を捨てたのだ。しかし、それが誤りであった。
セルマは奇跡の狙撃手である。
彼女に不可能はない。そう、針の穴のような小さな影が、『絶対物質ブラキオン』を透過させていたのだ。『黒騎士シリウス』すらも気がつくことのできなかった一点。
それをセルマは貫いたのだ。
「ば、かな……影、はなかったはず、だ……!」
「いいえ、私には見えていました。貴方は見誤ったのです。私たちの、いいえ……人々の恐怖に打ち勝つ心と、誰かを守りたいとう願いを」
セルマは動きを止めた『黒騎士シリウス』へと再び、氷の弾丸を打ち込み、人々の願いの一射を持って、彼を下すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シーザー・ゴールドマン
鎧を恐れぬのならば、か。
自らの技量ではなく鎧の力に頼るとはなかなかの情けなさだね。
良い玩具を手にした子供はそれを自慢せずにはいられないが――
まあ、シリウス君、君にはお似合いだとも。
オド(オーラ防御)を活性化。オーラセイバーを顕在化して戦闘態勢へ。
正確無比、千変万化の剣術でオーラセイバーを振るって戦います。
(怪力×功夫)
敵の動きを制限する攻め方で動きを見切り、機を見て鎧の隙間へ痛撃を。
(戦闘知識×見切り→部位破壊×貫通攻撃)
技量で翻弄した後にアイテムで生じた影を視ることで『マハーカーラの睥睨』を発動。爆破します。
自らを磨くことだ。まあ、来世があれば頑張りたまえ。
「鎧を恐れぬのならば、か」
真紅のスーツに身を包んだシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は相対する『黒騎士シリウス』を見下ろす笑う。
別に滑稽であったからではない。
彼が絶対と信じる『絶対物質ブラキオン』の鎧は、これまで多くの猟兵と人々の力の結実に寄って絶対性を喪っていた。
僅かな影という急所であったが、それでも絶対を貫く猟兵たちのユーベルコードは、『黒騎士シリウス』を、最強の腹心たるオブリビオンを追い詰めていたのだ。
「自らの技量ではなく鎧の力を頼るとは中々の情けなさだね」
それは嘲りであったのかもしれない。
自身の力ではないものを信じるというのは、シーザーにとっては理解し難い物があったのかも知れない。
「良い玩具を手にした子供はそれを自慢せずににはいられないが――まあ、シリウス君、君にはお似合いだとも」
「抜かせ、猟兵! 我が主の力の一端を知った程度で謗るか!」
『黒騎士シリウス』が激昂と共に大地を蹴る。
どれだけ傷付けられようとも、驚嘆すべきは忠義と体力であったことだろう。
並のオブリビオンであれば消滅していてもおかしくないほどの打撃を与えられているというのに、未だ『黒騎士シリウス』は倒れない。
振りかぶる大剣の一撃の重さをシーザーは知った。
けれど、それでも美丈夫の笑顔は崩れない。
「いいや、君は君自身の技量をこそ頼るべきだったのさ」
オドが活性化し、手にしたオーラセイバーの出力が上がる。その斬撃は『黒騎士シリウス』をして正確無比にして千変万花化。
その剣術は『黒騎士シリウス』の知らぬものであったことだろう。
「この剣術……! 動きが、制限される、だと……!?」
そう、シーザーの剣術は全て『黒騎士シリウス』を追い込むためのものであった。
全て見切られている。まるでワルツを踊る初心者をリードするようにシーザーのオーラセイバーは『黒騎士シリウス』を誘導するのだ。
『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』の落とす影が『絶対物質ブラキオン』を透過させる。
その一瞬を彼は見逃すことはない。
「自らを磨くことだ。それだけが人間に許された弛まない練磨の道。与えられたものでは、何も成せぬさ。今も昔もね」
振るったオーラセイバーが『絶対物質ブラキオン』を透過して、その肉体を切り裂く。
確かに『絶対物質ブラキオン』をすり抜けたとシーザーが認識した瞬間、彼の瞳がユーベルコードに輝く。
「マハーカーラの睥睨(デウス・ニゲル)……まあ、来世があれば頑張りたまえ」
その瞳が輝き、魔力が切り裂かれた肉体へと流れ込む。
それは一瞬の睥睨であったけれど、それでもその身を内より破砕させるには十分すぎる一撃であったことだろう。
血が噴出し、その鎧の内側では如何なる裂傷が生まれたかもわからぬまま、シーザーは己が下した『黒騎士シリウス』の技量を十全に感じ取ることができなかったことを惜しんだであろう。
「願わくば、君の剣技を純粋に楽しみたかったが……」
それも敵わない。
巨大な力はいつだって人を堕落させる。堕落せぬのは一握りの人間だけだ。ならばこそ、シーザーは仕方のないことだと割り切り、魔力の爆破の衝撃で空を舞う『黒騎士シリウス』に別れを告げるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
女神降臨を使用
さあ、このままどんどん行くよ
エルフ達に聖なる木の葉と輝石の欠片を使って
黒騎士の鎧に影を作って貰おう
ガトリングガンの範囲攻撃
どれかが影に当たればいいやの精神で
どんどん撃とう
黒炎の斬撃は神気で時間を停めて防いだり
ライヴズ達の加護で防いだりしながら攻撃を続けるよ
援軍達の方向に行こうとするなら
妖精型使い魔をけしかけて動きを停めさせつつ
制圧射撃で邪魔をしよう
まあ、この状況なら僕の体で影が遮られるように
接近してくるよね
そうしたら私の出番ですの
晶の背中から顕現して木の葉と輝石の欠片で
鎧の上に影を作りますの
神気で黒騎士の動きを硬直させたら
銃身をできるだけ近付けて射撃
全弾遠慮なく喰らっていってくれ
「小っ恥ずかしいけど、我慢我慢――さあ、このままどんどん行くよ」
その姿を見た者は、皆、女神降臨(ドレスアップ・ガッデス)という言葉が脳裏に浮かんだことであろう。
宵闇の衣と呼ばれる可憐なるドレスに身を包んだ佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はまさにそう形容するに値する存在であったことだろう。
エルフのアーチャーも冒険者達も、皆同じ思いであった。
彼等が手にした『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』によって周囲は『絶対物質ブラキオン』を透過する影を投射するのだ。
恥ずかしいという気持ちも最近は薄れてきている。
それは慣れというものであるのならば、仕方のないことであるのだが、それでも晶は釈然としないものを感じつつも、ユーベルコードに寄って力を増した携行ガトリングガンを構える。
「とりあえず、影に当たればいいやの精神ってやつだね。どんどん撃つよ!」
凄まじい勢いで火を吹くガトリングガンの銃口。
それは常よりも勢いが増し、『黒騎士シリウス』を襲うのだ。
「火器……! 無粋な真似を! だが……我の禁断魔術を持ってすれば!」
黒炎を噴出させ、圧倒的な速度でガトリングガンの弾丸を躱す『黒騎士シリウス』。
これまで多くの猟兵たちの攻撃を受けているとは思えぬほどの速度でもって晶へと肉薄し、黒炎纏う斬撃を振り下ろす。
だが、その一撃は邪神の権能『固定』の神気でもって受け止められる。
噴出した黒炎が吹き荒れ、周囲に破壊を齎すが、晶は一歩も引かなかった。
晶が引けば、背後にいる冒険者達をも巻き込む身体。それだけはさせないと妖精型の使い魔たちが飛び、『黒騎士シリウス』の行動を阻むのだ。
「僕の身体で影が遮るように動く――やっぱり、卓越した騎士なのは間違いないようだね……だから!」
「私の出番ですの」
晶の身体から顕現するは邪神の分霊。
彼女が手にしていたのは『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』である。接近し、『絶対物質ブラキオン』を透過させる影を鎧に投射せぬとするのが『黒騎士シリウス』の狙いであったのならば、それは逆転の一手であった。
接近しているがゆえに、それらを躱すすべはなく、『絶対物質ブラキオン』の鎧に影が投射される。
それは一瞬であったが、晶にとってはそれで十分な時間であった。
「我を舐めるな! この程度の窮地……――身体が、動かない、だと!?」
わかっていたことだ。
これだけの手を尽くしてもなお『黒騎士シリウス』は此方の目論見を打破するであろうと。だからこそ、晶は手を打っていたのだ。
晶の身に宿る邪神の権能は『固定』『停滞』である。ならばこそ、その神気によって『黒騎士シリウス』の動きは鈍り、決定的な隙を、そして投射された影を鎧の上に様々と刻むのだ。
「そっちの技量がわかっているからできたことさ。それが命取りだったね!」
ガトリングガンの銃口を鎧に突きつける。
絶対に破壊できない鎧。
ならば、その透過させ、内側にある肉体をこそ滅ぼす。引き金が引かれ、毎秒数百にも及ぶ弾丸が一気に放たれ『黒騎士シリウス』の肉体を滅ぼさんとするのだ。
「前段遠慮なく喰らっていってくれ!」
銃声が轟音となって響き渡り、ガトリングガンが空打ちする音を響かせた時、そこに立っていたのは、晶だけだった。
『黒騎士シリウス』は吹き飛び、その鎧は健在なれど、その身の内側はずたずたに打ち砕かれ、大地に倒れ伏すしかなかったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
主君への忠義は見事なれど、地上の虐殺を私の騎士道が許す筈も無し
押し通らせて頂きましょう
いざ!
剣盾用いた近接戦
斬撃防ぎつつ大盾殴打で立ち回り
成程、確かに痛痒も感じていない様子
それに…『影』への警戒も増したようですね
簡単には捉えられませんか
UC使用
鎧に落ちる『影』意識させる怪力の一撃放ち、プレッシャーで敵に回避強要
すかさず先端をアーム状に変形させたワイヤーアンカー起動
●操縦し物資収納スペース内のスローイングダガー取り出し●投擲騙し討ち
回避で体勢崩れ防御しようが無い鎧の隙間…関節部に噛ませ
『影』に意識を取られ…私達が良く知る鎧の欠点を忘れましたね
動きが阻害された一瞬の隙逃さず『影』に剣突き刺し
数多の猟兵が束になっても『絶対物質ブラキオン』の鎧を打ち砕くことはできない。
けれど、それでもなお人々と遺物の力を持って『黒騎士シリウス』の鎧は砕けずとも、その内側にある肉体を消耗させていた。
『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』による『絶対物質ブラキオン』を透過させる影の投射。
それこそが『黒騎士シリウス』の弱点であり、それ以外を突くことはできなかった。
だが、それ事態は猟兵たちにとって脅威ではなかった。
攻略する道筋が確立されているのであれば、恐れなどない。けれど、真に恐れなければならなかったのは、『黒騎士シリウス』の主君に対する忠義であったことだろう。
今の彼を支えるのは、ただそれだけであり、限界を越えてなお、立ち上がってくるのだ。
「主君への忠義は見事なれど、地上の虐殺を私の騎士道が許す筈もなし」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は己の剣と盾を掲げ、一礼する。
それは同じ騎士としての礼儀であったが、オブリビオンである『黒騎士シリウス』にとっては慇懃無礼そのものであったことだろう。
「程があるな、猟兵の騎士。だが、我とて『黒騎士シリウス』。貴様の名を聞こう」
「トリテレイアと申します。押し通らせて頂きましょう――いざ!」
白と黒の騎士が激突する。
互いの振るう大剣と剣が交錯し、大盾が振るわれる。
剣戟の音が戦場に響き渡り、殴打の音と金属同士が反響する音だけが戦場を支配する。
これまで多くの猟兵が与えた打撃。
その影響を些かも感じさせぬ剣技はトリテレイアをして、機械騎士である己と同じように痛覚を感じていないのではないかと思わせる程の太刀筋であった。
「『影』への警戒を増したようですね。簡単には捉えられませんか」
そのとおりであった。
初撃こそは無警戒であったが、これまで多くの猟兵が『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』が落とす影を突く攻撃を繰り出し、消耗せしめたのだ。
ならばこそ、それを警戒するのは道理であり、その警戒をもすり抜けるのが猟兵であると『黒騎士シリウス』は理解していた。
「一度や二度ならずとも、我が防御をすり抜けたのだ。当然であろう!」
大剣を振るう『黒騎士シリウス』。
しかし、彼は違和感を感じていた。ここまで警戒し、おごることなく剣を振るっているのに押しきれないのだ。
何故、と思う思考は同時に猟兵であるトリテレイアが何かを狙っていると直感めいたものを感じせるには十分なプレッシャーとなっていた。
そう、それこそがトリテレイアの熟練戦闘技巧(バトルアーツ)である。
正確無比なる機械騎士の連撃は次第に『黒騎士シリウス』の致命的な判断ミスを誘発させる心理的重圧を放つ。
「何故、そちらが押し切れないのか。それは……」
トリテレイアのアイセンサーが煌めく。
それはユーベルコードの輝きであり、これまでの経験が蓄積されたことによる練磨の一撃であった。
放たれた剣を躱す『黒騎士シリウス』。しかしそれが判断の誤りであった。
影を警戒するのならば、躱すのではなく剣で受け止めるべきだったのだ。
瞬間、トリテレイアの放つワイヤーアンカーがスローイングダガーを投擲する。その狙いは『影』ではなく、鎧の隙間であった。
超絶為る狙い。
そこに噛み込むようにダガーが食い込み、互いを一直線のワイヤーがつなぐ。
「此処で鎧の間隙を縫う、だと……!? まさか、貴様……!」
「ええ、私達がよく知る鎧の欠点を忘れましたね。『影』ばかりが貴方の弱点ではない」
トリテレイアのアイセンサーの残光が戦場に走った瞬間、彼の剣の一撃が『影』を貫き、『黒騎士シリウス』の鎧をすり抜け、その肉体へと深々と突き刺さる。
「見事、だ……」
互いに騎士としての戦いを。
それは最初にして最後の矜持であったのかもしれない。此処まで猟兵達が追い込み、トリテレイアが下した『黒騎士シリウス』は確かに此処でいま、その矜持を失うに値する敗北を喫したのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルドヴィーノ・バティスタ
(アドリブ・連携歓迎)
腹心相手にあの僅かな影狙ってけってなァ…
ったく「お前らなら出来る」なんて言葉と面で無茶ぶりしやがって。
いいぜ、あの鎧野郎の勝ち誇った風な言葉にもイラついてたところだ!
絶対を覆してやろうじゃねえか!
【専心然れど盲目】、操作すンのはオレ自身の視野だ、
視えた弱点の影に意識を集中させて<追跡>、
影を狙う以外疎かになンのが弱点だが、<早業>で不意を打つ間も与えず動きゃ一撃叩き込める!
力が無いなりに食らいつくのは得意技なンだよ、特に力を与えられて浮かれてるような輩にはなァ!
『氷面鏡・鏡片』、その綻び、<部位破壊>で貫いてやる!
騎士としての矜持すらも打ち砕かれた『黒騎士シリウス』に残されていたのは、もはや『大天使ブラキエル』への忠義だけであった。
最強の腹心としての矜持だけが数多の猟兵達によって刻まれた傷の痛みを、消耗の激しさを忘れさせる。
最早『絶対物質ブラキオン』は絶対ではない。
猟兵達がこれまで紡いできた人々の生命が、二つの遺物を持って、その絶対性に影を落とすのだ。
「ならば我は最後まで抗うとしよう。あの方のために、『大天使ブラキエル』様のために、我が忠義を持って――」
一人でも多くの猟兵を道連れにすると力を奪い去る呪詛の込められた黒炎を噴出させるのだ。
なりふりなどかまわない。
己の力のすべてを持って、猟兵のユーベルコードを封じようと戦場に立ち上がる姿は、最早騎士と呼ぶよりも幽鬼のようであった。
「腹心相手にあの僅かな影を狙ってけってなァ……」
呆れたようにバルドヴィーノ・バティスタ(脱獄狼・f05898)は、凄まじい気迫を見せる『黒騎士シリウス』を見やる。
最早なりふり構わぬ強敵を前に、『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』が落とす影を突けというのは、彼にとって無理難題であった。
けれど、彼の背中を押すのは『エギュレのパラディン』でるソフィアの言葉と表情であった。
なんだよ、と思わないでもない。
だってそうだろう。
「……ったく『お前ならできる』なんて言葉と面で無茶振りしやがって」
しかし、事実、彼女の言葉と表情にバルドヴィーノは背中を押され、戦場をひた走る。
そう、別にソフィアが言ったからやるわけではないのだ。
己はお調子者で三下を演じる脱獄狼である。 乗せられてやってもいいが、勘違いしてほしくはない。
「いいぜ、あの鎧やろうの勝ち誇った風な言葉にもイラついてたところだ! 絶対を覆してやろうじゃねえか!」
その瞳はユーベルコードに輝く。
やるべきことは決まっているならばこそ、専心然れど盲目(アテンシオン・ポル・ファボル)である。
己の視野を操り、『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』が落とす影に意識を集中させる。
それは執着心と言ってもいいほどの集中力であった。それ以外は何も視野に入れない。己を襲わんとする大剣の一撃も、黒炎も関係ない。
なぜなら、彼には一撃があればいいのだ。
誰も捕らえられない、誰も己を囚えておくことなどできやしない。
「オレは脱獄狼だからなァ! 力が無いなりに食らいつくのは得意技なンだよ、特に力を与えられて浮かれてるような輩にはなァ!」
それは一瞬の交錯であった。
咆哮を上げる『黒騎士シリウス』の大剣の一撃は確かにバルドヴィーノを捉えていた。
けれど、その刃が彼を両断することはなかった。
それよりも早くバルドヴィーノは二つの遺物が投射する影に迫っていたのだ。手にした長ドスを手に、その切っ先を『影』へと突き入れる。
ただ一つのことを為すために走るバルドヴィーノの感情はたった一つしかない。
目の前の気に入らない輩の持つ絶対性を覆す。
ただそれだけのために彼は走ったのだ。
「その綻びを貫いてやらァ!」
裂帛の気合とともに突き出した長ドス、妖刀の力が増し、忠義だけが支配する『黒騎士シリウス』の肉体を貫く。
噴出する血すらも一滴たりとて返り浴びることなくバルドヴィーノは『黒騎士シリウス』と交錯する。
彼の背後には貫かれ、血を噴出しながら倒れる『黒騎士シリウス』があった。
怪しく煌めく妖刀が濡れた血潮を吸うように。
されど、バルドヴィーノは託された『お前ならできる』という言葉に然と応えたのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
ほーん…
ふーん…
…いや絶対物質は分かるけど、ブラキオンて
もうちょっとなんかこう…無かった?
何かこう、捻った物質名で来て欲しかったなーって…
ま、いいや
絶対なんて無いんだから、それを攻略してあげようじゃない
●
引き続いて《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
呪詛の黒炎ねえ…当たると厄介そう
とりま、全避けかな
こっちのUC発動までは『オーラ防御』で黒炎を弾き、『斬撃波』で『吹き飛ばし』封印回避といこう
そして【Code:C.S】起動
時間加速、開始
後は加速した時間の中で黒炎を避けつつ、影になった場所を切り刻む!
悪いけどまだ1人倒さないといけないのが残ってるからね
一気に圧倒させて貰うよ!
『黒騎士シリウス』が咆哮しながら、立ち上がる。
何故だと叫ぶ声は、己の鎧を構成する『絶対物質ブラキオン』の絶対性が尽く覆されたことに対してではなく、己の主君『大天使ブラキエル』への忠義が猟兵達に及ばぬことを嘆く咆哮であったのかもしれない。
「許されぬ。例え、『絶対物質ブラキオン』の絶対性が喪われようとも、我の忠義が喪われることはないはずだ。だというのに、我が敗れる……!? そんなことがあっていいわけがない!!」
その咆哮は凄まじい衝撃と、重圧となって周囲に吹き荒れる。
だが、月夜・玲(頂の探究者・f01605)の興味深げな瞳は些かも揺れ動くことはなかった。
「ほーん……ふーん……いや、絶対物質は分かるけど、ブラキオンて」
もうちょっとなんかこう……無かったのだろうかと彼女は思っていた。
欲を言えば、なんかこう捻った物質名で来てほしかったとさえ思っていただのが、それはまあ、どうでもいいかと頭を振る。
何故なら、絶対などないのである。
『絶対物質ブラキオン』。破壊不可能な物質であることは間違いないが、それを無効化する術ならば、すでに彼女の手の中にある。
『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』。
この二つが織りなす影が『絶対物質ブラキオン』を透過させる影を投射するのだ。
ならばこそ、これこそがすでに絶対などないことを示す証拠でもあるのだ。
掲げた二つの遺物が生みだす影が咆哮あげる『黒騎士シリウス』の鎧に影を落とす。
すでに相手は消耗激しく、鎧以外の全てが満身創痍であったことだろう。
ゆえに、玲は二振りの模造神器を振り払う。
対する『黒騎士シリウス』の鎧の隙間からは呪詛持つ黒炎が噴出し、少しでも主君に仇為す猟兵を消耗させようとしている。
「見上げた忠義かもしれないけれどさ……厄介っていう以上の感想はないよね!」
当たれば面倒なことになる。
ならば良ければいいのだ。
「ならばやってみせるがいい、猟兵! 我が肉体が滅びれど、我が忠義は滅びぬと知れ!」
放たれる呪詛の黒炎が玲を襲う。
けれど、それらをオーラで弾きながら、二振りの模造神器が斬撃で持って押し返す。
あの黒炎に触れれば、ユーベルコードが封じられる。
そうなれば、この後に控える『大天使ブラキエル』との対決に差し支えるでろうことは容易に想像できる。
ただの一度も受けてはならない。だからこそ、玲は躱し、そして己の模造神器の封印を解除するのだ。
「封印解除、時間加速開始」
その瞳がユーベルコードに輝く。
Code:C.S(コード・クロノシール)――模造神器に施された時間加速の封印を解除した玲にとって、黒炎の見せる軌跡は止まって見えるようなものであった。
彼女の瞳が捉えるのは、黒炎の描く弧と、二つの遺物が重なる『影』であった。
多くの猟兵が攻撃を畳み掛け、鎧の下の肉体はもう限界であろう。
ならばこそ、玲が引導を渡す。
加速した時間の中で玲は、一瞬で間合いへと入り込む。
青い模造神器の斬撃の残光が一瞬で『黒騎士シリウス』であったものを切り刻む。
「時間加速解除。封印開始……悪いけど、まだ一人倒さないといけないのが残っているからね……」
模造神器を納め、玲は振り返ることなくつぶやく。
彼女の背後で霧散し消えていく『黒騎士シリウス』。
断末魔の悲鳴すら響くことはなかった。
ただ、一言告げるのだ。もう終わったことであるし、もはや届くことのない言葉であるけれど。
「一気に圧倒させて貰うよ」
最強の腹心を打倒した猟兵達が見せるのは、オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』。
その瞳が睥睨し、放つ重圧はこれまで猟書家に感じたことはないであろう、凄まじきものであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『大天使ブラキエル』
|
POW : 岩腕
単純で重い【岩石でできた巨大な腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 絶対物質ブラキオン
【「絶対物質ブラキオン」の鎧】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、「絶対物質ブラキオン」の鎧から何度でも発動できる。
WIZ : 大天使の光輪
自身が装備する【大天使の光輪】から【破壊の光】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【徐々に石化】の状態異常を与える。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
月面より舞い降りた神々しい輝き。
それがオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の姿であることを猟兵たちは知るであろう。
放たれる凄まじき重圧は、まさに大天使と呼ぶにふさわしい威容であり、その力の強大さをうかがい知る事はできたであろう。
振るわれる『岩腕』の一撃は、ただの一撃で地形を破壊し、変えるほどである。
『絶対物質ブラキオン』はあらゆる攻撃を受け止め無効化し、ユーベルコードを幾度も放つであろう。
さらに頂いた大天使の光輪は破壊と石化を齎す光線を放ち、彼が視認した全てを滅ぼすだろう。
「これほどの虐殺の予兆を前にしても扉は開かない。やはり我の失望は正しかったようだ」
『大天使ブラキエル』は嘆いているようでもあったが、その表情からはそれを汲み取ることはできなかった。
凪いだ感情。
もはや、そこには虚無しかなかった。
天上界。嘗てかれの愛があった場所。そして、同時に深き愛があるからこそ憎しみが深くなった場所である。
懐かしき日々。
されど戻ることは必要としていなかった。天上界を求めたのは、彼の友である『書架の王』のためである。
友のため。
ただそれだけのために『大天使ブラキエル』は天上界を開かんとするために無差別大量虐殺を引き起こそうとした。
「それもまた徒労であったかもしれないな。だが、猟兵達、お前たちが居るかぎり、天上界の神々は座して見下ろすばかりであろう。あの愚か者共が自ら動かぬのは、そういうことだ。これほどの生命の危機があろうとも、神々は動かない」
それが許せない。
自らが作り出し、信仰を捧げられるだけの捧げさせた生命が危機にひんしていても。
それでも神々は動かない。
「神は欲しない。神は示さない。神は語らない。例え、それが愛おしき生命の危機であっても。だからこそ、我の失望を知れ、憎しみを知れ。おまえたちの尽くを滅ぼし、我が愛憎を神々に示すために――」
『大天使ブラキエル』の重圧は、さらに猟兵たちの身体を鈍らせるだろう。
圧倒的な存在。
その力が齎すのは、あらゆる猟兵に対するアドバンテージ。
猟兵が何かをする瞬間に、『大天使ブラキエル』のユーベルコードは輝くだろう。その刹那にこそ、猟兵は勝機を見いださなければならないのだ――!
ミアステラ・ティレスタム
貴方の思い通りになどさせません
この地に住まう人々のためにも貴方を止めてみせます
此処はわたしの故郷でもあります
わたしの生は楽しいことばかりではなかったけれど、それでもわたしはこの地が、この世界が愛しい
この想いを祈りの力に変えて、貴方を討ちます
祈りによって自身の周囲に氷の壁を創り出しましょう
破壊の光を氷壁で反射させます
祈りはわたしの力……どうかわたしにこの地を、この世界を護る力をお与えください
祈りが、想いが強ければ強い程、護る力が強固なものになるでしょう
状態異常には浄化で対応
貴方に捧げるのは、貴方を葬る詩
この絶対零度の檻は貴方を逃しません
これは貴方を滅するための祈り
わたしは破滅の序曲を奏でましょう
オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の威容は、輝きとなって猟兵達に降りしきる。
それは重圧となって猟兵たちの動きを鈍らせるだろう。それほどの存在なのだ。これまで相対してきた猟書家の中でも別格。
現時点での最強のオウガ・フォーミュラと呼ぶにふさわしい存在。
だが、だからと言って猟兵が立ち止まることはない。
オブリビオンと対峙した時、猟兵は滅ぼさなければならないと感じる。互いに滅ぼし合う存在であるからこそ、相容れぬ。
「貴方の思い通りになどさせません。この地に住まう人々のためにも貴方を止めてみせます」
ミアステラ・ティレスタム(Miaplacidus・f15616)は、その瞳を『大天使ブラキエル』へと向ける。
互いの視線が交錯する。
決して相容れぬ存在であることを互いに理解したであろう。
このアックス&ウィザーズはミアステラの故郷でもある。確かに彼女の生は彼女にとって楽しいことばかりではなかったけれど、それでも彼女のはこの世界が愛おしいと思うのだ。
「止められぬよ。我の愛憎の深さ、失望の深さ、神々への愛があればこそ我が失望は底知れぬものである」
『大天使ブラキエル』から放たれる光輪の輝き。
降りしきる輝きは、破壊の光となってミアステラを襲う。
「ならばお前たち猟兵はなんとする。力なくばお前達がどれだけ守りたいと願っても叶うことはない。どうするというのだ」
大天使の光輪の放つ光がミアステラの生み出した氷壁によって阻まれる。けれど、それは一瞬のことであった。
反射しようとした光は、されど反射することなどできずに石化し、砕かれる。
「この想いを祈りの力に変えて、貴方を討ちます」
石化した氷壁が砕け、光がミアステラを襲う。
痛みは確かに彼女の心を散り散りにするだろう。けれど、その痛みはもう知っている。
傷つくことは恐れることだ。
けれど、今の彼女は違う。過去とは決別して、彼女の瞳は前を向いている。今という時間から未来を見据えている。
だからこそ、彼女の瞳は祈りを力に変えるのだ。
「……どうかわたしにこの地を、この世界を護る力をお与えください」
その瞳はユーベルコードの輝きとなって、力を発露させる。
世界が憎悪によって破壊されるのならば、彼女は慈愛と祈りの心でもって世界を守らんとする。
願う力は破壊ではなく護るために。
強固のものとなって、彼女を襲う石化の力を浄化していく。
「貴方に捧げるのは、貴方を葬る詩」
奏でられるのは、葬奏詩(フューネラル)。
『大天使ブラキエル』の足元から氷の棺が取り囲み、その中へと押し込んでいく。
絶対零度の檻は、ミアステラが生み出した氷壁よりも強度を持ち、『大天使ブラキエル』の身体を覆い尽くしていく。
「我は滅びない。この憎悪の炎が燃える限り、我が心に愛が在る限り、愛憎無き神々を必ず」
引きずり出すのだと『大天使ブラキエル』はつぶやく。
けれど、その憎悪すらもミアステラの氷棺は押し込み、一時的であれ動きを止めるのだ。
「この絶対零度の檻は貴方を逃しません。これは貴方を滅するための祈り」
祈りでもってミアステラは破滅の序曲を奏でる。
例え、これが一時的な、破壊の力を凌ぐことしかできないのだとしても、それでもミアステラは祈るだろう。
この大地を守りたい。
ただその願いだけが、世界に満ちていくのだ。
悪意は伝播するという。
けれど、善意は人の心の中で芽吹いていく。そうやって世界は広がっていく。希望が満ちていく。
彼女の歌声が『大天使ブラキエル』を葬る詩なのだとしても。それはきっと人々に希望を齎すだろう。
それが祈りだ。
「祈りを以て葬奏の時を齎しましょう」
ミアステラは、祈り続ける。かの『大天使ブラキエル』の愛憎が幾ばくかでも報われるようにと。
そして、同時に報われることのないことを知りながらも、哀切を持って彼を送る氷棺を見上げるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
退場しろ
此方はお前ほど暇でもない
戦況は『天光』で逐一把握
先制含む攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給
始源を展開
万象一切に終わりを刻む破壊の原理を宿す魔弾として行使
因果の原理を以て非オブリビオンへは無害とする
敢えて鎧は対象内
『煌皇』を以て高速詠唱を無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、斉射
それを間断なく無限回実行
戦域を途切れることのない魔弾の軌跡で埋め尽くす
破壊の原理は全てを終わらせる
その鎧の絶対性すら例の外へは漏れぬ
「受け止める」事が可能か否か試すのも良かろう
※アドリブ歓迎
オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』を包み込んだ氷棺が砕け、そこから放たれる光は、あらゆるものを破壊し石化の力でもって世界を蝕む。
そう、どんな力であっても石化していく。
それはかの大天使の光輪が輝く限り、消えることのない力である。
「我の動きを一時でも止めたか……だが、終わらぬ。終われるわけがない」
『大天使ブラキエル』の言葉は冷ややかでった。
猟兵を見つめる瞳に感情はなかった。凪いだ心が揺れることがあったのだとすれば、嘗ての天上界に在りし神々との邂逅の時だけであったことだろう。
それほどまでに彼の愛憎は深い。
「退場しろ。此方はお前ほど暇でもない」
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は『大天使ブラキエル』を見上げ、告げる。
戦いは此の世界だけではない。
猟兵にとって、救うべきはすべての世界である。
淡い蒼光が周囲に漂い、破壊の光と石化の力が戦場に充満していくのをアルトリウスは感じていた。
破壊の光の力は凄まじいものであったことだろう。
纏う十一の原理を無限に回し、阻み逸しねじ伏せることはできても、石化の力は周囲の存在全てを呪う。
無差別なる攻撃。
『大天使ブラキエル』にとって、彼の視界に入る全てが天上界へと至るための障害そのものであった。
だからこそ、アルトリウスは膨大な魔力を世界の外から組み上げ、補給していく。そうでなければ、とっくにアルトリウスは敗れていただろう。
「世界の外から汲み上げるか。だから、それがどうしたというのだ。それが自分だけのものであると思ったのか」
未だ『大天使ブラキエル』の表情は変わらない。
光輪から放たれる光は、常に破壊を齎す。そして、互いに力が尽きることなどないのだ。
「舞え」
問答をするつもりはないと、彼のユーベルコードが輝く。万象一切に終わりを刻む破壊の原理を宿す魔弾を行使する。
それは、始源(シゲン)。
原理でもって干渉を可能とする魔弾が放たれ、無限に加速循環する天を覆う魔弾を生成し、斉射し続ける。
絶え間ない雨のような魔弾。
それを受けながら『大天使ブラキエル』は瞳を伏せた。
痛みを受けているのか、それとも耐えているのか。途切れることのない魔弾の雨は軌跡でもって埋め尽くされ、『絶対物質ブラキオン』をも透過して、『大天使ブラキエル』を撃つのだ。
「受け止める事が可能か否か試しているのか」
アルトリウスの観測は事実であったことだろう。最強の腹心である『黒騎士シリウス』もまた『絶対物質ブラキオン』による鎧を纏っていた。
その力を一端とした『大天使ブラキエル』の力は如何なるものであったことだろうか。
ダメージがあるのか、ないのか。
それはわからないけれど、それでも『大天使ブラキエル』は動かない。いや、動けないのだろう。
打ち込まれる魔弾は雨のように『大天使ブラキエル』をその場に釘付けにする。
移動をさせることはさせない。
此処で逃してしまえば、無差別大量虐殺を再び別の地で行うだろう。
それは阻まねばならないことであり、アルトリウスの魔弾の軌跡はそれを為さしめるように、蒼き燐光を放ち、世界にその戦いの軌跡を刻むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
『侵す者』のまま
だからと言って、見逃すわけはなかろう
それに、わしらは誰かの故郷であるこの世界を滅ぼさせない、という誓いがある
ははん?先制UC、わしのと性質が一緒だの?
で、あるならば。四天流星を投擲し、わざと視認させて位置の錯誤呪詛を発動
わしは前へ前へと進もう。ただし、足の速さを上げるための風属性制御は『疾き者(唯一忍者)』に任せておるから、いつもよりスピード出ておるんじゃよな
わし、武の天才でよかった
そのまま懐に入ったら、その勢いを保ちつつ、黒燭炎での突きをお見舞いしてくれる!
でな、実は。こちらのUC、武器の指定がない。ずっと影にいた陰海月の一撃でも、問題はないのよ
※
陰海月「ぷきゅ」べちん!
アックス&ウィザーズ世界に大天使の光輪の輝きが煌めく。
その破壊の光が止むことはあれど、『大天使ブラキエル』の存在が消えることはない。
圧倒的な破壊の力が、その『岩腕』に満ちていく。
ユーベルコードによる一撃は凄まじき重圧と共に猟兵を襲う。
身体が重いと感じる以上に『大天使ブラキエル』の強大さを知るだろう。けれど、それで立ち止まる猟兵は、この戦いに置いて誰一人として存在していなかった。
最強のオウガ・フォーミュラが相手であったとしても、猟兵たちの背後には護るべき者たちがいる。
その姿こそきっと『大天使ブラキエル』が天上界に座す神々に求めたものであったのだろう。
それがなかったからこそ、『大天使ブラキエル』は神々に失望したのだ。
「だからと言って、見逃すわけはなかろう」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は天よりの鉄槌とも言うべき『大天使ブラキエル』の『岩腕』の一撃が振り下ろされるのを見ていた。
その一撃は、ただの一撃であっても地上を破壊し、地形すらも変えることのできる威力であることを知る。
だからこそ、受け止めてはならない。
しかし、避けることも敵わないだろう。けれど、足は止められない。
ならば、なんとする。
「それにわしらは誰かの故郷であるこの世界を滅ぼさせない、という誓いがある」
そう、嘗てオブリビオンに故郷を滅ぼされた四柱の悪霊たち。
彼等の故郷は最早亡い。
だからこそ、誓うのだ。
もう自分たちのような存在を生み出させぬために戦うと決めたからこそ、四柱の一柱『侵す者』が放ったのは『四天流星』と呼ばれる認識錯誤の呪詛を込められた封印具の鎖であった。
「その誓いと我の愛憎。どちらが上であるなどと問わぬ。ただ、猟兵は滅ぼすのみ」
放たれた『岩腕』の一撃は封印具である鎖を砕いて有り余るものであった。
衝撃波が『侵す者』を襲い、凄まじい衝撃が身体を撃つ。
四肢が引きちぎれそうなほどの威力。
けれど、それでも『侵す者』は立ち止まらなかった。
前へ。ただ前に進む。
風の力を『疾き者』によって制御し、いつもよりも速度が出ている。その速度に順応できていなければ、今の一撃で『侵す者』、いや複合悪霊たる彼等は一撃のもとに消滅していただろう。
「わし、武の天才でよかった。掠めただけでこれだけとはの」
だが、恐れるに足りない。
それだけでは己の中にある故郷を喪った悲しみと苦しみ、そして怨念は消えはしない。
そう、恐怖では一片たりとて奪えるものではないのだ。
「だが、距離は詰めた。覚悟!」
大地を蹴って、飛翔する『侵す者』。その手にあった黒色の槍を振りかぶり、『大天使ブラキエル』の眉間を狙って放たれる突きは神速であった。
相対する『大天使ブラキエル』は身動き一つせず、溢れでるオーラの力で持って『侵す者』の放つ神速の一撃を防いで見せたのだ。
「無駄だ。猟兵。どれだけの怨念があろうとも、悠久の時をすぎれば、人の想いも擦り切れるというものである。ならば、お前たちは――」
「聞く耳持たぬ! オブリビオンが、過去の化身が、今を生きる者たちを踏みにじっていい理由などないのだ」
その瞳がユーベルコードに輝く。
それは火のように(シンリャクスルコトヒノゴトク)。
放たれた槍の一撃は、『大天使ブラキエル』のオーラを突き破り、けれど威力を減退させる。
だが、問題など何処にもない。
此処にあるのは『武の天才』である。それは技だけではない。戦術、駆け引きという点においてもまた彼は天才そのものであったことだろう。
彼の影に隠れた『陰海月』が這い出て、ユーベルコードの効果を引き継ぎ、その触腕を振りかぶるのだ。
その一撃は『岩腕』と同じく、地形をも破壊しつくさんばかりの一撃。
「ぷきゅ」
短く鳴いた『陰海月』の一撃は、凄まじい威力を伴って『大天使ブラキエル』を大地へと叩き落とす。
それはまるで流星が大地に堕ちたような、それを思わせるような尋常ならざる一撃となって、オウガ・フォーミュラを大地に叩き落とすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
久瀬・了介
神か。それが貴様の道理か。
何度でも言う。理由など知った事か。貴様らは過去の残滓だ。存在すらしない、単なる理外の現象だ。
ヴォルテックエンジンの【リミッターを解除】。過剰電流で肉体の【限界を突破】。岩腕の一撃を【早業】の【ダッシュ】で回避する。
肉体が急激に消耗する。長期戦は不可能。問題無い。仲間の猟兵達に加え、この世界を守る戦士達も集まっている。
一撃に全てを込める。【デッドマンズスパーク】。全電力を集中させた右腕を敵にくれてやる。
貴様は只の災害だ。何を唱えようと神には届かない。神はそこまで暇じゃない。
だから俺が相手をしてやる。全霊を込めて貴様の全てを否定してやる。
猟兵たちの度重なる攻撃に寄ってオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』は遂に大地に失墜した。
衝撃が土煙を上げ、しかしその中心である『大天使ブラキエル』が放つ重圧と輝きは未だ健在である。
消耗したという事実はあれど、その凄まじき力の奔流は猟兵たちの皮膚をジリジリと焼くようでもあった。
「神々の座す天上界。神々は、いや、奴らは地上に感心を示さない。自分たちを信仰する者たちに託宣を下すことはあっても、手を貸すことはしない。どれだけの艱難辛苦が生命を脅かしても、助けない」
その存在の何処に救いがあるのだと『大天使ブラキエル』は嘆いたが、その表情は一切の感情を発露させなかった。
在ったのは、ただの虚無。
だからなんだというのだと告げる言葉があった。
「神か。それが貴様の道理か。何度でも言う。理由など知ったことか」
久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)は、魂の衝動を電流に変えるヴォルテックエンジンを回しながら、その瞳を『大天使ブラキエル』へと向ける。
凄まじき重圧を受けてなお、彼の瞳はユーベルコードに輝く。
少しも臆することなど無く、振り下ろされる『岩腕』の一撃を見据え、一歩も引くこと無く、走るのだ。
「貴様らは過去の残滓だ。存在すらしない、単なる理外の現象だ」
放たれた『『岩腕』の一撃は、周囲の地形を変えるほどの拳であった。大地を砕き、抉り、クレーターの如き大穴を穿つ。
衝撃波となった突風が了介の肉体を切り裂くが、彼は気にもとめていなかった。
「ならばなんとする。その理外の現象が生命を奪うのだ。ならば神たる身こそが、生命を救うべきだとは考えないか」
『大天使ブラキエル』は慈愛に満ちた存在であったのかも知れない。
けれど、何度でも言う。
「知った事か」
了介の傷口から黒き電流が迸る。限界を超えた駆動。
それは彼の肉体を過剰電流で焼いていく。けれど、それすらも了介は頓着しない。何故なら、それをして勝てる相手ではないからだ。
いつだってオブリビオンとの戦いは、格上との戦いだ。
けれど、これまで何度だって猟兵は己たちよりも強大な存在に勝ってきた。
それは何故か。
「俺は確かに悪霊であるし、怨霊と呼ぶにふさわしいのだろう。だが」
肉体が急激に消耗していく。
長期戦は不可能であることを彼は理解していた。だが、問題はない。そう、何も問題はないのだ。
己の肉体が朽ち果てようとも、猟兵の戦いは常に数珠つなぎの戦いだ。一人が築き、一人が紡ぎ、一人がつなぐ。そして、最後の一人が勝利をつかめば、それでいいのだ。
そういう戦いをこれまで何度も続けてきたのだ。そして何よりも、このアックス&ウィザーズには誰かのために戦う者がいる。
「俺の後に続く者たちがいる。猟兵が、世界を護る戦士たちがいる」
だからこそ、己は戦えるのだと過剰に放出された膨大な電流が黒き稲妻となって戦場を駆け抜ける。
「何故縋らない。何故、高次の存在に祈らない。自分の力の範囲を越えた時、人は祈るはずだ。なのに、何故それをしない」
『大天使ブラキエル』へと迫る黒き稲妻。
それは了介そのものの肉体、その片腕をも代償に走る電流であった。魂の衝動を電流に変えるヴォルテックエンジンから捻出された電力全てが右腕に集まり、内側から爆ぜた。
痛みなど、とうに捨てている。
ただ、その炉心に燃える『オブリビオンを殺す』という殺意だけが了介を突き動かすのだ。
「貴様は只の災害だ。何を唱えようと神には届かない。神はそこまで暇じゃない」
だから、と了介が『大天使ブラキエル』に迫る。
伸ばされた『大天使ブラキエル』の手がオーラの結界を張り巡らせ、了介の進撃を阻む。
けれど、かまわなかった。弾け、爆ぜた右腕が黒き稲妻に寄って形を保っているだけだが、その拳の一撃はオーラを容易く打ち破る。
「だから俺が相手をしてやる。全霊を込めて貴様の全てを否定してやる――デッドマンズ・スパーク!!」
放たれた拳が凄まじき電撃となって『大天使ブラキエル』の左腕を焼き尽くす。
稲妻のように走った電撃の一撃は、ここに来て初めて『大天使ブラキエル』の肉体そのものを傷つけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーフィ・バウム
帝竜を滅ぼし、やっと訪れた平和です
いいようにさせるものか!
先制される岩腕の一撃は、
【戦闘知識】に【野生の勘】―今まで培った私の全てで
【見切り】、すんでで避けてみせます
【オーラ防御】を体に纏い、避けきれずとも致命を避け
周辺地域の破壊される衝撃を、むしろ生かすように
【ジャンプ】し【空中戦】ですよっ!
風の【属性攻撃】を宿す武器で【空中浮遊】、
翼持つ天使に追いすがり、【怪力】を生かした【鎧砕き】
【衝撃波】と力強い一撃を見舞う
立て直す暇も距離も与えない!
近接戦の【グラップル】【功夫】で押した後
上空で相手を掴んだまま【ダッシュ】し
全開のオーラを込めた《トランスクラッシュ》で
体を浴びせ、地面にねじ伏せますッ
黒き稲妻がオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の左腕を焼き尽くす。
だらりと落ちた左腕の傷跡は深く、けれど『岩腕』がギブスのように『大天使ブラキエル』の左腕を覆っていく。
振り上げた拳は未だ健在であることを知らしめるように、凄まじい威力で持って猟兵達に打ち下ろされる。
仕切り直すように打ち込まれた『岩腕』の一撃は大地を穿ち、クレーターのように地面を削り取るのだ。
その拳の一撃を見てなお、戦意を喪失しないのは猟兵を猟兵足らしめる勇気があったからであろう。
「帝竜を滅ぼし、やっと訪れた平和です。いいようにさせるものか!」
ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は突風のような衝撃波を受けながらも、戦場を突き進む。
そう、好きにはさせない。
アックス&ウィザーズは、オブリビオン・フォーミュラである帝竜『ヴァルギリオス』を打倒し、オブリビオンの湧き出ぬ世界である。
だからこそ、人々は平和を謳歌できるのだ。
そこに侵略を開始した猟書家の長であるオウガ・フォーミュラはユーフィにとって不倶戴天の敵であったことだろう。
「ならば、何故神々は天上界の扉を開かない。やっとの思いで訪れた平和であるというのに、神々はまだ人に試練を与えるのか。信仰を欲すれど、慈愛を与えぬということに対して、何故お前たちは失望を覚えない」
『大天使ブラキエル』の言葉は、全てが神々への失望に満ち溢れていた。
此度の無差別大量虐殺もまた、その引き金に過ぎない。
これだけの危機を前にして神々は天上界の扉を開いて人々を救おうとはしない。ならば、世界にとって害悪とはどちらなのか。
「故に我が鉄槌を下すと決めたのだ。我が友のために――!」
放たれる『岩腕』の一撃をユーフィは躱す。
紙一重で躱したのは野生の勘があってのことだろう。だが、見きったはずの拳は、掠めただけでユーフィの肉体に凄まじい衝撃をもたらし、身体の芯を揺さぶってくるのだ。
どれだけオーラを重ねても防げぬ程の凄まじい威力。
だが、致命的な傷を避けることはできる。
全身が痛み、身体のあちこちから血が噴出しそうなほどの痛みをユーフィは抱え、しかし、その心には勇気が灯っていた。
終わることはない。
必ずかのオウガ・フォーミュラを打倒しなければ、倒れることもできぬと、放たれた『岩腕』の衝撃を活かすように飛ぶのだ。
「風よ! 私の拳を!」
届かせて、と放つ拳の衝撃波が『大天使ブラキエル』の翼を撃つ。
それは強烈な一撃となって『大天使ブラキエル』をよろめかせるだろう。
渾身の一撃を放ってなお、よろめく程度でしかない。
けれど、それでもいい。一撃で倒せぬのならば、倒れるまで打ち込むまでだ。
「立て直す暇も距離も与えない!」
弛まない練磨の果て、功夫によって手に入れたユーフィの体術は、むしろ『岩腕』が枷にしかならないことを告げる。
そう、腕のウェイトが増したことによって威力は増しているのだろう。
だが、動きが鈍っている。こちらの攻撃は躱せない。ユーフィの腕が『岩腕』に伸び、凄まじき握力でもって、『大天使ブラキエル』の腕を離さない。
岩石の表面に爪を立て、ひび割らせながらユーフィはオーラを全開にする。
その瞳はユーベルコードに輝いていた。
「鍛えられた肉体を、めいっぱい叩き込みますっ!」
自分の闘気纏う肉体そのものを武器として、『岩腕』ごと『大天使ブラキエル』を大地へと叩きつける。
――トランスクラッシュ(クラッシュ)。
それは重量攻撃と呼ぶにはあまりにも練り上げられた闘気によって、鉄槌のように『大天使ブラキエル』の『岩腕』を砕き、その身体を大地にねじ伏せるように叩きつけるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
クルル・ハンドゥーレ
アドリブ連携歓迎
たとえオブリビオンとなり歪もうとも
あんたを突き動かす愛憎はあんただけのもの
あんただけの真実や
だから私は
私だけの真実、欲でもってあんたに対峙する
世界を護りたいゆう大それた欲で、ね
キャバリア搭乗
限界突破+戦闘知識+見切りで敵UCの光を見切り
少しでも自分や仲間がまともにくらわぬよう
キャバリアシールドと武器で盾受け+武器受け
オーラ防御+結界術で防御
石化は浄化で解除
負傷は激痛耐性で踏ん張り嗤う
UC展開
以降の敵UCを封じ超重力波で地に縫い付ける
シールドバッシュ+
フェイント+部位破壊+毒使い+マヒ攻撃+破魔で鎧に覆われてない箇所を攻撃
敵攻撃は冷静に見切り
盾受け+武器受け+カウンター
大地に叩きつけられたオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の身体が軋む音が響き渡る。
えぐられた大地はひび割れ、えぐれている。
それほどまでに凄まじい戦いを猟兵と繰り広げているのにも関わらず、『大天使ブラキエル』の表情は凪いだままであった。
変わらぬ表情。
それは彼の心が虚無で満たされているからであろう。
無差別大量虐殺を引き起こそうとしても、神々は人々を救おうとはしない。それが己の愛を捧げた存在であるからこそ、その失望の落胆は深淵よりも深きものであったことだろう。
「何故戦う。何故抗う。何故邪魔をする。天上界に住まう神々はお前たちに感謝をすることはしないだろう。これだけの戦いが起こってもなお、神々は天上界の扉を開かない。我が愛憎の深さを知ってなお、神に与するか」
しかし、その言葉がどれだけの真実を含んでいたのだとしても、相対するクルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)は、『大天使ブラキエル』の言葉を是としない。
「たとえオブリビオンとなり歪もうとも、あんたを突き動かす愛憎はあんただけのもの。あんただけの真実や」
そう、その愛憎の深さを知ったとしても、猟兵としてオブリビオンに対する姿勢は変わらない。
変わることはないのだ。
互いが滅ぼし、滅ぼされる間柄であることは不変である。どれだけの理由があろうとも、どれだけの悲しみがあろうとも。
それだけは変わらないのだ。
「だから私は。私だけの真実、欲でもってあんたに対峙する」
「愚か。それを欲と言う。愛とは対極にあるもの。その愚かしさが――」
人を人たらしめるのだと言うように、『大天使ブラキエル』の光輪が輝き、破壊の光を撒き散らす。
その破壊の一撃を紫電纏う機神の大盾が防ぐ。
だが、その大盾であっても破壊の光は防げない。さらに石化の呪いが大盾を蝕もうとした瞬間、虚空より現出するのは、異形の銕の機神。
クルルを掌に乗せ、無力さへの悲歎と瞋恚に呼応するようにクルルの力を増幅していく。
結界術とオーラ、そして浄化の力が周囲に撒き散らされる石化の呪いを浄化していく。
それは自分以外の者たちに累が及ぶことのないようにと値がうクルルの思いの力であったことだろう。
破壊の光がクルルの肌を焼く。
直接的に受けていないのに、それでもなお余波でこの威力である。血が噴出する。痛みが体中を駆け巡っていく。
だが、それでもクルルはいうのだ。
「世界を護りたいゆう大それた欲で――」
自分は戦うのだと。
どれだけ強大な存在であろうとも、屈することはないのだと心より叫ぶのだ。
その叫びに呼応するように異形の銕の機神が炉心を唸らせるように咆哮する。
「縛り戒め虜囚となさん、時の涯まで、終の戦の果つるまで――そのユーベルコードは皆に届かへんようにする!」
輝く瞳はユーベルコードに燦然と。
そして、Gleipnir(グレイプニール)と名付けられたユーベルコードによって虚空より湧き出た超重力波を纏う無数の鎖が『大天使ブラキエル』へと殺到する。
だが、それを躱せぬ『大天使ブラキエル』ではない。
翼が羽ばたき、宙へと舞い上がり、追尾する鎖を躱すのだ。
しかし、クルルは渾身の力を持って、異形の銕の機神と共に走る。大地を蹴り、砕け散りそうな大盾を構え、『大天使ブラキエル』の放つ破壊の光すらも物ともせずに走るのだ。
「愛では――足りない、から! だから人は祈るんやろ! 誰かのためになりますようにって!」
クルルの言葉は紫電纏う大盾を一つの質量兵器と為さしめ、その一撃を『大天使ブラキエル』へと叩き込む。
砕けた大盾の破片が舞う最中、『大天使ブラキエル』と初めて真っ向から視線がかち合う。
やはり、その瞳にあるのは虚無だけであった。
だからこそ、負けないとクルルは思ったことだろう。放たれた鎖が『大天使ブラキエル』を捉え、その身体を大地へと縫い付け続ける。
破壊の力を齎すユーベルコードを封じ、クルルは誰かのためにと願う心のままに、『大天使ブラキエル』を消耗させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
初めまして、大天使。すぐにお別れとしたいものね。
叩き付けられる岩腕は「見切り」、「式神使い」で操る『鎧装豪腕』の「怪力」で受け止めましょう。
黒鴉の式を周囲に打って、不意打ちなどないか、この相対を全方位から把握する。
振り回される腕をかわして、「全力魔法」炎の「属性攻撃」「高速詠唱」で、不動明王火界咒を全力で連打する。
たとえ絶対物質の鎧は壊せなくとも、物質である以上熱は蓄えるでしょう。その鎧が帯びた熱が、あなたの体を灼くわ。
人の世に神の降臨は必要ない。顕現したら、それは即座に地上の法則に縛られたモノへと堕する。あなたのようにね、大天使。
それ故に、神々は天上界の扉を開くことはない。さあ、燃え尽きて。
オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の破壊の光を齎す大天使の光輪を封じ続ける鎖が漸くにして引きちぎられる。
その足止めは、再び『大天使ブラキエル』を空へと舞い上がらせることなく、地上戦を強いた。
猟兵たちは一気呵成に攻め立てる。
どれだけ強大な力の差があったのだとしても、退くことはしない。
彼等が退いた後に残るのは無差別大量虐殺という凶行だけである。だからこそ、退けないのだ。
「無駄だ。どれだけ足掻こうが、我がユーベルコードの前には全てが無意味」
振るう腕、その左腕は猟兵の攻撃に寄ってだらりと垂れ下がっているが、それでもなお振り上げ、巨大な岩石の腕となって振り上げられる。
動きが鈍いと感じるのは、未だ猟兵のユーベルコードの残滓であろう。
「はじめまして、大天使。すぐにお別れとしたいものね」
その声が響いた瞬間、有無を言わさず『岩腕』の一撃が放たれる。
叩きつけられるような『岩腕』の一撃は掠めただけでも猟兵の身体を吹き飛ばすであろう。
事実、その一撃を見切り、式神使いの力で操る『鎧装豪腕』の怪力で受け止めた村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)の身体は吹き飛ばされる。
『鎧装豪腕』は砕け、一瞬にして消滅する。
地形をも容易く破壊する『岩腕』の一撃でゆかりが絶命しなかったことは幸運というほか無い。
言うまでもなく現時点での最強のオウガ・フォーミュラである『大天使ブラキエル』の一撃は、容易に致命傷となりえるのだ。
黒鴉の式神を放ち、大地を転がるゆかりはすかさず振り下ろされる追撃の『岩腕』を躱し、感覚を持って全方位からの攻撃を認識し、衝撃波にもてあそばれるように大地を蹴った。
「とんでもないわね……! ただ掠めただけで、これって!」
これがオウガ・フォーミュラとしての力。
伊達に『大天使ブラキエル』を名乗っていない。ギリギリの綱渡りのような攻防。一瞬でも気を抜けば、その瞬間に己の身体は薙ぎ払われていることだろう。
『鎧装豪腕』が稼いだ時間は有限である。
ここで決めなければ、後に続く猟兵にもつなぐことはできない。
「お前たちは不可解だ。己の個としての力を顧みない。比較しても、それを無視する。何故抗う。力の差は歴然だ。なのに何故、戦う。神はお前たちを救いはしない」
『大天使ブラキエル』の瞳にあるのは失望だけであった。
神々への失望。
愛在る存在として生み出されたが故の悲劇であろうか。愛とは即ち無償であると知る彼にとって、神々が人々を守らんと扉を開かぬことこそが、彼の失望を深めている。
「人の世に神の降臨は必要ない。顕現したら、それは即座に地上の法則に縛られたモノに堕する。あなたのようにね、大天使」
ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
例え、『大天使ブラキエル』が司る『絶対物質ブラキオン』の鎧があろうとも、物質である以上熱は蓄える。故に、その鎧を熱する炎があるのならば。
「ノウマク サラバタタギャテイビャク――」
放たれるは、不動明王火界咒(フドウミョウオウカカイジュ)。
白紙のトランプが投げ放たれ、噴出する炎が『大天使ブラキエル』の周囲に巻き付くように展開され、その肉体を蒸し焼きにするように熱するのだ。
どれだけ強固な鎧であったとしても、傷つけることができないのだとしても、『大天使ブラキエル』の内側の肉体を熱することで消耗させることができる。
地上に有りては地上の法則に従う。
ならば、その受肉したと言ってもいい肉体は消耗するのだろう。
「それ故に、神々は天上界の扉を開くことはない」
『大天使ブラキエル』にとっては失望であったとしても、人の世を生きる者にとって、それは神々との決別にほかならぬだろう。
見守るだけでいい。
助けなくていい。
自分たちには二本の腕と足があるように、神々の庇護を離れて生きていける。それを愛無しと呼ぶのはあまりにも傲慢である。
故にゆかりは告げるのだ。
「さあ、燃え尽きて――」
大成功
🔵🔵🔵
プリンセラ・プリンセス
連携・アドリブ可
「天上界なるものがこのA&Wにあることには興味がありますが、人々が犠牲になるのを見すごすほどではありません!」
相手の先制攻撃は十字戟の回転で○武器受けしてある程度防ぎつつ、○ダッシュで動き回り○第六感で回避。当たってしまう分は○激痛耐性で耐え、石化は○呪詛耐性と治癒の宝石の効果で○時間稼ぎして進行を遅らせる。
その間に詠唱ノートの筆記詠唱を利用して○カウンターとして「皇竜閃燼黒光破」を放つ。
詠唱ノートにかかれているのは10時間分。倒せるかどうかはともかくまったくダメージを与えられないということはないはずです!
猟兵の放つユーベルコードの炎がオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の肉体に消耗を強いる。
確実に、そして着実に『大天使ブラキエル』を追い詰めていた。
どれだけ強大なオブリビオンであっても、猟兵は諦めることはない。何故なら、彼等の戦いはいつだって数珠つなぎの戦いだ。
一人で倒すことのできぬオブリビオンであっても、二人であれば、もっと多くであれば倒すことができる。
これまでも猟兵はそうやって戦い抜いてきたのだ。
「足掻くか、猟兵。お前達の戦いは、我を止めること能わずと知りながらも」
大天使の光輪が輝き、その破壊の光が『大天使ブラキエル』の視界に映った全てへと放たれる。
さらには石化の呪詛が猟兵たちを苦しめる。
「天上界なるものがこのアックス&ウィザーズにあることには興味がありますが、人々が犠牲になるのを見過ごすほどではありません!」
手にしたツインブレードを十字に組み合わせるように合体させた『殺竜兵器クアドロプルブレイド』を振るい、プリンセラ・プリンセス(Fly Baby Fly・f01272)は破壊の光を防がんとする。
走る彼女の姿は閃光のようであったが、破壊の光はプリンセラを穿つ。
痛みが身体を走り抜けるが、歯を食いしばる。
もしも、自分が倒れてしまえば、彼女の護るべき人々は無差別大量虐殺の凶行に晒されてしまう。
それは絶対にさせてはならないことだ。
故に、王笏に取り付けられた魔力の籠もった宝石によって治癒の力が発言する。
「痛みはこらえることができます。ですが、喪われた生命は戻らない。ならばこそ、わたしは戦うのです」
踏みとどまり、石化が進行していた足元を治癒の宝石が止まる。
時間稼ぎにしかならないかもしれない。
けれど、初撃は防いだのだ。
「無駄だと言った。我が光輪の輝きは常にお前たちを照らすだろう。遍く光によってお前たちは滅びるのだ」
『大天使ブラキエル』の力は言うまでもなく、現時点での最強のオウガ・フォーミュラである。
そのユーベルコードの威力は言うまでもない。
「いいえ、滅びることはありません。人の営みが在る限り、それだけはありません」
プリンセラの手に蒼き書物と羽ペンが開かれる。
そこに紡がれていたのは、ユーベルコードに必要な詠唱の文言である。
筆記詠唱によって紡がれた詠唱時間は換算すると実に10時間に及ぶ。
この一撃で倒せるかどうかはわからない。けれど、そんなことは関係がないのだ。
重なる筆記詠唱とプリンセラの言霊。
瞬間、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「ボルト・レード・ペック・ラスタ 朱焔の竜よ吼え哮れ 覇王の契約の元に 全て灼き滅ぼす黒炎を纏い 我が剣となりて全ての敵を絶ち斬れ」
その輝きは一瞬で極大の光へと変わる。
それこそが――皇竜閃燼黒光破(ディザルブレスブラスター)。
「この一撃こそ、オウガ・フォーミュラたる貴方を打倒する一撃です!」
プリンセラの叫びと共に放たれる強大な破壊力の光線がアックス&ウィザーズ世界に迸る。
どれだけ早く動こうが、関係ない。
極大の光は一瞬で『大天使ブラキエル』を穿つ一撃となって、光輪の放つ光すらも塗りつぶして、彼の姿を光刃の中に飲み込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
神は動かない……それでいいのではないでしょうか。
絶対的な上位存在がいて、それの動く動かないに生き死にを委ねるようでは家畜と同じです。そんなものとして生きていくつもりはありません。
先ほどの敵が纏っていたのと同じ、あるいはそれ以上の強度の鎧、破壊は不可能でしょうね。
その上受け止めた攻撃をコピーして撃ち出してくる、と。
ですが、あの鎧を纏うことを優先したために岩腕も後輪からの破壊の光もない。
ブラキエルの剣を「フィンブルヴェト」の銃剣で『武器受け』、時間を稼ぎながら鎧の稼働域から鎧の隙間を『見切り』ます。
隙間が見えたなら【凍風一陣】『スナイパー』の技術で鎧の隙間からブラキエルを撃ち抜きます。
極大の光条がオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の身体を飲み込む。
その強烈な一撃は世界を塗りつぶすほどであったが、最強のオウガ・フォーミュラたる『大天使ブラキエル』は未だ消えることなく、光の中より出る。
彼の身体は『絶対物質ブラキオン』によって守られているが、その肉体は確かに消耗へと導かれていた。
だらりと下がった左腕。
焼かれた肉体。
されど、その瞳に浮かぶのは虚無だけであった。凪いだ表情は、『大天使ブラキエル』の神々に対する失望の現れでしかなかったことだろう。
「これだけの戦いがあってもなお、天上界の扉は開かない。神は動かず。そして、この世界に満ちる生命が喪われ続けてもなお、神々はお前たちを見下ろすだけだというのに」
それでもなお戦うのかと『大天使ブラキエル』は、対峙する猟兵、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)を見据える。
虚無しか浮かばぬ瞳をまっすぐに見つめ、彼女は告げる。
「神は動かない……それでいいのではないでしょうか」
彼女にとって神とはそういう存在である。
いや、違う。彼女の出身世界、常闇の世界ダークセイヴァーではヴァンパイアによって人々は隷属を強いられている存在でしかない。
そこで生まれ、育ち、猟兵となったセルマにとって神は存在しないものであったかもしれない。
「座して動かぬ神を是とするか、猟兵」
未だ『大天使ブラキエル』の表情は凪いだままであったが、彼が司る『絶対物質ブラキオン』による絶対的な防御は働いている。
「絶対的な上位存在がいて、それの動く動かないに生き死にを委ねるようでは家畜と同じです。そんなものとして生きていくつもりはありません」
彼女はいつだって隷属を強いられてきただろう。
そして、それに抗って生きてきた。今更その生き方を変えることはできない。
彼女の瞳はユーベルコードに輝いていた。彼女の瞳は『大天使ブラキエル』の行動を見据え、走る。
恐らく最強の腹心である『黒騎士シリウス』の纏っていた『絶対物質ブラキオン』の鎧と同じ、もしくはそれ以上の強度を持つであろうことは想像に難くない。
さらに受け止めたユーベルコードをコピーして打ち出して来るのだ。
下手にユーベルコードを打ち込んでは、後続の猟兵たちの妨げになってしまう。ならばこそ、セルマこそが、この『絶対物質ブラキオン』による鎧という力に対抗するジョーカーであったことだろう。
「神々の愛は隷属を強いるものではない。遍く全てに注がれるべきものであるはずなのだ。なのに――」
神々はそれをしない。
天上界に封じられた愚か者共。その失望こそが『大天使ブラキエル』をオウガ・フォーミュラ足らしめたのだろう。
「私は神を必要としない。いつだって、スコープの向こうにいるのは獲物だけです。それで十分なのです」
『絶対物質ブラキオン』の鎧による防御を優先することを強いられているのは、『大天使ブラキエル』が確実に猟兵達によって追い詰められているからだ。
だからこそ、破壊の光も『岩腕』による打撃もない。
今こそがセルマというジョーカーの切り時なのだ。
「『寒い』と思う暇も与えません」
すでに彼女の瞳は、『大天使ブラキエル』の纏う『絶対物質ブラキオン』の鎧の隙間を見抜いていた。
それは『黒騎士シリウス』の纏っていた鎧の隙間よりも、さらに僅かなものであったことだろう。
けれど、やれねばならないと決めた瞬間、セルマのユーベルコードは輝く。
――凍風一陣(イテカゼイチジン)。
マスケット銃『フィンブルヴェト』から放たれる弾丸が全てを凍てつかせる絶対零度の冷気を伴って一直線に走る。
「我が、『絶対物質ブラキオン』の間隙を抜く、か……――」
打ち込まれた弾丸は、『大天使ブラキエル』の肉体を穿ち、その絶対零度の冷気でもって内側から凍結させていく。
しかし、切ったジョーカーの代償はセルマにとっても大きかったことだろう。
集中を要した眼球からは流血し、その瞳を赤く染め上げる。
「『絶対物質ブラキオン』――その鎧にも隙間はあるようですね」
セルマは赤い涙のような血を拭い、己の放った弾丸の行く末を見つめ、『大天使ブラキエル』の肉体が凍りついていくのを見送るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「神を求めるか、愚かな。
神とは求めるものではない。己がなるものだ!
……え、違う?」
まあ、ともかく、このような全裸天使の言うことなど知ったことか。
我の最強魔術【極寒地獄】を受けるがいい!
ぬ、先制攻撃対策?
ククク、貴様が先制攻撃をして我が倒れようとも、我の屍を越えて戦ってくれる仲間たちこそが先制攻撃への対策よ!
お、我、今、いいこと言ったんじゃない?(注:先制対策が思いつかなかった模様
「ククク、我の身体は徐々に石化しておるが、貴様の身体も氷に閉ざしてくれるわ。
全裸だけに凍結は効くだろう!
さあ、サージェ、ルクス!
我の犠牲を無駄にせず、あやつを倒すのだ!」
……あ、我が石になりきる前にな!
ルクス・アルブス
【勇者パーティ】
人に害を為すなら、それはもう堕天使ですね。
そう!悪魔ということです。
光の勇者としては、倒すべき敵!
あっ、師匠、そういう意味ではないですから!?
え?神?師匠が神になったら、邪神ですよね?
あ、師匠、ごめんなさい!?
お願いですから、魔法は向こうにお願いします!?
と、とにかく!
わたしたちは勇者パーティとして、堕天使には負けま……。
師匠-!?
し、師匠……!
あ、でも、もうちょっとピンチにしたら、
いつもと違う師匠が見られるかも?
やります!
いますぐやりますから、
びみょーな表情でニラむのやめてください!
サージェさんの手裏剣にあわせて、突撃。
堕天使!
いきますよ、破壊力勝負です!
光の力、今ここにー!
サージェ・ライト
【勇者パーティー】
さて最終決戦ですね
フィアさんとルクスさんだけで勝てそうですし
私まったりしてよーっと
(フィアさんの先制攻撃対策を聞いて)
な…に…?フィアさんがまともなことを!?
そこまで言われちゃ仕方ありません
フィアさんいないのも寂しいですし
ルクスさんそこでSっ気出すのはやめましょう?
いきます!【くちよせの術】!
このUCなら直接当てませんし
コピーされたところで私の忍道具、使い方わかりますか?(イイ笑顔
「こっちは全力全開ですけどね!」
身長大の大型手裏剣をジャイアントスイングの要領で投擲
「これはおまけ!全部持って行っていいですよ!」
くちよせした各種手裏剣をありったけ投擲
ルクスさんトドメは任せました!
オウガ・フォーミュラたる所以は言うまでもなく『大天使ブラキエル』が強大なオブリビオンであることだが、その重圧の凄まじさはこれまで対峙してきたオブリビオンの中でも最たるものであったことだろう。
ただ対峙しているというだけで猟兵たちの肩にのしかかるプレッシャーは、『大天使ブラキエル』にイニシアチブを与える。
「人に害を為すなら、それはもう堕天使ですね。そう! 悪魔ということです。光の勇者としては、倒すべき敵!」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)は、それでもなお『大天使ブラキエル』を指差し、宣言する。
天使が堕落して堕天使になる。それが転じて悪魔と呼ばれるのであれば、それは彼女の言う通りであったことだろう。
光の勇者かっこ自称状態であるが、それでもルクスの心は燃えていた。必ずや無差別大量虐殺を引き起こさんとした首魁、『大天使ブラキエル』を討たねばならぬと感じていたのだ。
だが、途中で気がつく。
悪魔と言えば自分の師匠である。不死の悪魔であるフィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)もまた悪魔なのだ。ならば、弟子である光の勇者かっこ自称のルクスは師匠を討たねばならなくなってしまうではないか。
「あっ、師匠、そういう意味ではないですから!?」
慌てて訂正するが、フィアはどこ吹く風というか、完全にワルのワルである『大天使ブラキエル』の在り方にいらぬ対抗心をメラメラ燃やしていて効いていなかった。
「神を求めるか、愚かな。神とは求めるものではない。己がなるものだ!」
ばぁーん。
一瞬何を言っているんだろうこの人という雰囲気が主にサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)から流れ込んでくる。
最終決戦だけど、フィアとルクスだけで勝てそうだから自分はまったりしてようと思っていたサージェは、あんまりにもあんまりな理屈にそうはならんじゃろという顔をしたが、黙っていた。
下手に口を挟んでは必ず巻き込まれるというクノイチならではの危機管理能力が働いていたのだ。
「え? 神? 師匠が神になったら、邪神ですよね?」
ほーら、ルクスがまたいらんこと言った。
「……まあ、ともかく、このような全裸天使のいうことなど知ったことか。我の最強魔術を受けるがいい! 我が魔力により――ってあー!? なんじゃ、この光ー!?」
フィアが早速大魔術、極寒地獄(コキュートス)をぶっぱしようとして、忘れていたであろう『大天使ブラキエル』の大天使の光輪から放たれる先制の破壊の光に三人は逃げ惑う。
凄まじい力の奔流は言うまでもなく、その力は破壊だけではなく石化の呪詛すらも撒き散らすのだ。
「いきなり攻撃なんてずるいですよ! 師匠、お願いですからぶっぱはやめてって何度も! わたしたちは勇者パーティなんですよ。堕天使には負けま……師匠ー!?」
ルクスとサージェの目の前でフィアの足元が石化してく。
それは『大天使ブラキエル』のはなったユーベルコードの効果であろう。破壊の光だけではなく、石化の呪詛すらも放つ『大天使ブラキエル』の力はオウガ・フォーミュラとしての格の違いを見せつけるようでもあった。
正直言ってやばい。
「ククク、貴様が先制攻撃をして我が倒れようとも、我の屍を越えて戦ってくれる仲間たちこそが先制攻撃への対策よ」
フィアが不敵に笑う。
事実、フィアの行動に寄って先制攻撃を引き出し、その攻撃はフィアに集約された。自身が囮になることで、その後に続くルクスとサージェの動きを最速のものにしたのだ。
それこそが彼女の考える先制攻撃への対策である。
かなり頭脳派なことをいうフィアにサージェは違和感を覚えまくった。
「な……に……? フィアさんがまともなことを!?」
「し、師匠……!」
ルクスは感激しているし、サージェはそこまで言われたのなら仕方ないと思った。それにフィアがいなくなるのも寂しいとさえ思ったのだ。
フィアとしては、まったく先制攻撃に対する対抗策が思いつかなかったから、適当にぶっぱしただけであるが、まあ、結果オーライである。
「あ、でも、もうちょっとピンチにしたら、いつもと違う師匠が見られるかも?」
お、ルクスのクッソデカ感情が今芽吹いたぞ。
ちょっとSっ気出てきたのにサージェは、今はやめましょう? と空気を読むように促し、二人はユーベルコードを発言させる。
「ククク、我の身体は徐々に石化しておるが、貴様の身体も氷に閉ざしてくれるわ!」
フィアは己のユーベルコードの力によって氷壁を出現させ、『大天使ブラキエル』を氷壁の迷宮に落とし込むのだ。
「だが、お前も石化するだろう。自己犠牲を説くのはかまわない。それが人のあり方であろうから。だが、お前の仲間はどうだ?」
『大天使ブラキエル』は凍りつきながらも、冷静であった。
いや、もとより凪いだ表情、失望を宿す瞳の中に、焦りという概念は存在しなかったのかもしれない。
だからこそ、フィアは、あ、やべ! っと思ったことだろう。この流れだと自分が完全に石化してしまう。
ここは師匠らしく格好良くルクスとサージェに指示を飛ばさなければならない。正直に言えば、視線ではよしろと催促していたのだが、ルクスはなんか変な感情に囚われているし、サージェはマイペースだし。
「全裸だけに凍結は効くだろう! さあ、サージェ、ルクス! 我の犠牲を無駄にせず、あやつを倒すのだ!」
そんでもって我が石になりきる前にな! と小声で付け足し、フィアはヒザ下まで石化した状態で、精一杯格好つけるのだ。
「うぅ、あのびみょーな表情で睨むのはやめて欲しいなぁ……サージェさん!」
「任されました! いきます! しょーかんっ! かもんっ!」
サージェの瞳がユーベルコードに輝き、くちよせの術(ナンデモデテクルベンリスキル)によって、その手にもたらされたのは彼女の身の丈程もある巨大手裏剣をジャイアントスイングの要領で投擲する。
それは例え『絶対物質ブラキオン』によって防御され、コピーされたとしても、扱い方を知らなければ無意味である。
クノイチであるサージェだからこそ扱える忍術具。それ故、彼女はおまけと言わんばかりに口寄せした各種手裏剣をありったけ投擲するのだ。
「こっちは全力全開ですけどね! これはおまけ! 全部持っていっていいですよ!」
放たれた手裏剣の雨と共にルクスが戦場を駆ける。
放たれる『岩腕』の一撃が周囲に降りしきるような手裏剣の雨を叩き落とし、それでもなお迸る衝撃波がルクスの髪をなびかせる。
「堕天使! いきますよ、破壊力勝負です!」
ルクスの手にしていたのは巨大なグランドピアノ。
一瞬、ん? となるが、冗談ではない。巨大な質量即ち破壊力である。La Campanella(ラ・カンパネラ)と名付けられたユーベルコードであるが、その巨大質量を伴う一撃が『大天使ブラキエル』の脳天に振り下ろされる。
全ての攻撃を受け止め、なお倒れぬ『大天使ブラキエル』。
けれど、その頭に振り下ろされた一撃は、ルクス曰く。
「光の力、今ここにー!」
光の力……? とサージェは若干、どこらへんが? と思わないでもなかったけれど、突っ込むのはやめておいた。
言ったらキリがないし。
しかし、けれどだ。
その一撃は凄まじい威力と共に『大天使ブラキエル』の頭部を直撃し、凍結しかけた裸体ごと大地に失墜させる。
わ、嫌な音ぉ、とサージェは思いながら胴まで石化したフィアを抱えてルクスと共に離脱するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
んもー
其処個々の家庭事情にはとやかく言わないけどさー
でもね
一度失敗したくらいで諦めるってなにさ
失敗したって修正して、また挑めばいい
キミの愛や憎しみ、友情ってその程度のものなの?
ああ、それとも―――"友情ゴッコ"に飽きちゃった?
なら、キミの言う無責任な神とキミはそっくりだね!
そんな八つ当たりには世界を壊させない!
さあ、この世界の重みを教えてあげなよ!
例え砕かれようともなお必ず用を果たしてくれると信じて、
かつてA&Wの鉄という鉄を寄り合せて作られた巨大な[超重浮遊鉄球]くんを岩石腕に叩き付ける!
攻撃を相殺したところでUCをドーーンッ!!
少しは悪魔を見習いなよ、天使くん
「んもー、其処個々の家庭事情にはとやかく言わないけどさー」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)にとって、オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の言葉は、落胆に値するものであったことだろう。
友のために天上界の扉を開く。
ただそのためだけに彼はあらゆる手段を講じ、果てはそれが叶わないと知るや、自暴自棄とも取れる無差別大量虐殺でもって天上界の扉を開かんとした。
それはあまりにも短慮である。
万に一つも可能性がないのに、生命だけは奪う。
それは神々に対するあてつけにも程があるだろう。そうまでして失望したのは『大天使ブラキエル』の愛が深かったからであろうし、オブリビオンと化したが故の歪みであったのかもしれない。
「でもね、一度失敗したくらいで諦めるってなにさ。失敗したって修正して、また挑めばいい。キミの愛や憎しみ、友情ってその程度のものなの?」
それは傲慢そのものの言葉であったことだろう。
その傲慢が神そのものであるというのならば、『大天使ブラキエル』の瞳は虚無を満たし、凪いだままの表情で告げるだろう。
「我と『書架の王』のとの間にある友としての感情を弄ぶか、神よ。天上界に座す神々でなくても、神は神。変わらぬものだな」
「ああ、それとも――“友情ゴッコ”に飽きちゃった? なら、キミのいう無責任な神とキミはそっくりだね!」
ロニの言葉は傲慢そのものであったが、『大天使ブラキエル』を煽る言葉であったことだろ。
だが、変わらない。
其処に在るのはやはり虚無であった。
自身と『書架の王』の間にある友情を余人が理解することなどできないという諦観んこそが、そこにあったのだから。
巨大な岩石でできた『岩腕』が振り上げられる。
「神に言葉は届かない。故に、神の言葉もまた我に届かじ。お前が猟兵であろうと、神であろうと、それは変わらない」
放たれた『岩腕』の一撃は空より降り落ちる流星の如き威力であった。
躱したとしても、その衝撃波はロニの身体を撃ち、骨身をきしませたことだろう。だが、それでもロニは走っていた。
吹き出し血潮が大地を染めても、それでも走る。
「そんな八つ当たりには世界を壊させない! さあ、この世界の重みを教えてあげなよ!」
放たれるのはかつてアックス&ウィザーズの鉄という鉄を撚り合わせて作られた巨大な超重浮遊鉄球が『岩腕』に激突する。
だが、オウガ・フォーミュラたる『大天使ブラキエル』のユーベルコードは数多の猟兵が消耗させてもなお、凄まじい威力を誇っていた。
相殺するどころではない。
だが、砕けた鉄球の合間をロニは飛び、その拳をユーベルコードに輝かせる。
「どーんっ!ボクを崇めてもいいんだよ!神様だからね!」
その輝きが放つのは神々しささえも感じさせる拳の一撃であった。
人はそれを、神撃(ゴッドブロー)と呼ぶ。
叩きつけられた拳の一撃は『大天使ブラキエル』の頬を撃ち、その肉体を大地へと叩きつける。
それを見下ろし、ロニは笑うのだ。
どれだけ傷を負わされようとも、変わらぬ者があるのならば、それこそが己であるのだと誇示するように。
そして、神たる傲慢さでいうのだ。
「少しは悪魔を見習いなよ、天使くん――」
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
貴方の愛憎が天井を焦がさんとし、地上の人々を焼き尽くさんとするならば
私は騎士として、その災禍を打ち払いましょう
討ち取らせて頂きます、オウガ・フォーミュラ
センサーでの情報収集と瞬間思考力で岩腕の軌道を見切り、怪力による大盾防御受け流しで盾と腕を犠牲に初撃防御
これで止まると、思わぬことです!(継戦能力)
UC起動し出力限界突破
残った腕と剣で岩腕を迎撃
剣と腕引き換えに岩腕を真正面から粉砕
脚部スラスターの推力移動乗せた脚撃で蹴り飛ばし
御伽の様に優雅にといきませんが…騎士とは屈せぬ物なれば
浮かした身体を射出し操縦するワイヤーアンカーで捕縛、大地に叩き付け
叩き付けの反動を利用し跳躍
推力全開、空中から踵落とし
式典・要人護衛用銀河帝国製ウォーマシン(トリテレイアシリーズ・シリアルナンバーゼロナイン)である、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)にとって、彼が守らねばならぬと定義するのは、いつだって戦う力持たぬ者達であったことだろう。
今まさにアックス&ウィザーズ世界にオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の無差別大量虐殺の矛先が向いている。
故に彼の機体は、その機械騎士としての出力と演算の限界を越えていた。
ユーベルコードの輝きにアイセンサーが残光を残して、戦場を駆け抜ける。
振り下ろされる『岩腕』の一撃一撃が、凄まじい衝撃波となって躱しても機体をきしませる。機体装甲させ歪ませる巨大な岩石の一撃の余波は、トリテレイアをして機体の損壊を気に留めていては、一瞬で葬り去られると実感させるには十分なものであった。
「貴方の愛憎が天上を焦がさんとし、地上の人々を焼き尽くさんとするならば、私は騎士として、その災禍を打ち払いましょう」
トリテレイアのアイセンサーが煌めき、『岩腕』の痛烈なる一撃が地形すらも変形させる最中を走り続ける。
「災禍。そう、これを災禍と呼ぶか、機械騎士。我にとっては、此れこそが我が愛憎を示す唯一の手段。天上界の神々の愚かさを知らしめる手段に過ぎない」
決定的な相違。
互いに守らんとするものが違う。他者を護る者と、己の中の何かを守らんとする者。
そこに相互理解はありえないだろう。
故にトリテレイアの炉心が燃える。
「討ち取らせていただきます、オウガ・フォーミュラ」
センサーが打ち下ろされる『岩腕』の拳の軌跡を見切る。大盾で受け流し、犠牲にしてでも接近を試みる。
盾が砕け、腕がひしゃげてもなお、己は留まらぬとユーベルコードの輝きが、彼の機体の出力の限界を超え、電脳が明滅するほどに過負荷を受けてなお、彼は疾走った。
「私の存在意義を、炉心に燃える騎士道精神を、貴方の愛憎が焼き尽くせると思わぬことです。我が機体は誰がために」
振るわれる『岩腕』の一撃を残った腕と剣で迎撃せしめるように叩きつけ、ついに『岩腕』の岩石を砕く。
両腕を喪ったウォーマシンに何ができるだろうか。
人型である以上、その両腕は武装を手にするためのものだ。その両腕を喪い、案山子以下に成り下がった機械騎士に『大天使ブラキエル』は何を思っただろうか。
「憐れとは言わぬよ。だが、見事とも言わぬ。結局の所、我とお前は相容れぬ」
共に誰かのためにと戦う存在であっても、決定的に違う。
猟兵とオブリビオン。
間に横たわる溝はあらゆる深淵よりも深いものであったことだろう。だからこそ、トリテレイアは己の限界を容易く超える。越えてみせるのだ。
振るわれた拳の一撃を脚部スラスターが噴射した勢いで蹴り上げる。
「御伽の様に優雅にとはいきませんが……騎士とは屈せぬものなれば」
トリテレイアの巨躯が宙に舞う。
両腕を喪ってもなお、その機体は戦うことをやめない。護ることを止めない。それが己の存在意義であると知るからこそ、『大天使ブラキエル』はトリテレイアをくださすのであれば、四肢の全てを砕くべきだったのだ。
人型であるからと、その精神が確かに人そのものであったのだとしても、『大天使ブラキエル』は一切の躊躇いを、一切の予断すらも許さずに一撃のもとに粉砕すべきだったのだ。
だが、その気づきは遅きに失する。
「騎士とは不撓不屈。諦めもしなければ、矜持を失うこともない。私の中にある騎士道精神がいうのです。愛憎の果にあるものこそが、真なるものであると。故に、私は、私の中にあるものにしたがって、貴方を討たせていただきます!」
宙に浮いた身体を射出したワイヤーアンカーが引き寄せ、さらに『大天使ブラキエル』の身体を絡め取る。
固定した『大天使ブラキエル』の瞳が見ただろう。
両腕を喪いながら、もはや死に体と見なした機械騎士が、その脚部を持って己に下す一撃の輝きを。
それを命の煌きと呼ぶには、あまりにも血の通わぬものであったが、それでも、その機体に宿った意志が、矜持が、今鉄槌のように『大天使ブラキエル』へとくだされ、痛烈なる踵おとしとなって、『大天使ブラキエル』を大地へと失墜させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シーザー・ゴールドマン
気になるあの子が無視するから当てつけにその子の持ち物を壊して見せる。
嫌なら無視せず止めてみろ。止めないなんて酷い奴だ。
まあこんな感じの事を君はやっている訳だが……なんともはや。
これ以上、生き恥を晒さないように止めてあげよう。感謝したまえ。
先制で放たれる岩腕の一撃を念動力で縛り衝撃波をぶつけることで刹那の遅滞を生じさせ、その隙に空中に舞い上がり回避。(空中浮遊)
そして、間髪入れずに極大の魔力弾を光速で放ちます。
(全力魔法×範囲攻撃×貫通攻撃×アララトの流星)
失望を知れ、憎しみを知れ、か。では君は神々の何を知っていたのかな?
大地へと失墜したオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の体が立ち上がる。
未だ『岩腕』は建材であり、叩きつける拳の衝撃波だけでも猟兵には容易に接近できぬほどの威力を誇っていた。
地形をも変える力。
それだけの力が、多くの猟兵たちを相手取ってもなお、遜色ないことは、現時点での最強のオウガ・フォーミュラであることを知らしめるには十分すぎた。
「気になるあの子が無視するからあてつけにその子の持ち物を壊してみせる」
シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は、立ち上がる『大天使ブラキエル』の姿を認め、彼の所業をそう評価した。
言い換えると、確かにそれが真であろう。
「嫌なら無視せずに止めてみろ。止めないなんて酷いやつだ。まあこんな感じのことを君はやっている訳だが……なんともはや」
シーザーにとって、それは生き恥であったことだろう。
目的も為せず、何も世界に残せぬということは、ただの恥の上塗りでしかない。
どれだけ『大天使ブラキエル』の胸に失望が去来したのだとしても、その深さを知ることができたとしても、その行いは褒められたことではない。
無差別大量虐殺を行って、天上界の扉を開く。
それは万に一つも可能性のないことを互いに知りながら、それでも実行に移す。それを自暴自棄と呼ばずになんと呼ぶのだろうか。
どれだけ言葉で飾り立てたとて、それが本質だ。
「これ以上、生き恥を晒さないように止めてあげよう。感謝したまえ」
「これを生き恥と呼ぶのはお前たちが人であるからだ。その価値観は我とは相容れない。有限ではない、無限に続く虚無こそが我の失望と知れ」
振るわれる豪腕の如き『岩腕』の一撃をシーザーは真正面から立ち向かう。
先制攻撃。
それがオウガ・フォーミュラが放つ重圧による猟兵達に対する圧倒的なアドバンテージである。
その攻撃が在る限り、必ず『大天使ブラキエル』は猟兵に先手を取り、圧倒的な破壊の力で持って彼等を殲滅せんとするだろう。
だが、それらを踏破してきたからこそ、猟兵は世界を守ってこれたのだ。
「その一撃、確かに大地をえぐる程の威力を持っているのだろう。だが――」
シーザーの念動力で『岩腕』の一撃を縛り、衝撃波をぶつける。
相殺を狙ったのではない。
そう、自分に襲いくる余波、その衝撃に遅滞を生みだすのだ。
シーザーは最初から躱すつもりだったのだ。けれど、『大天使ブラキエル』の一撃は早くて重い。
ならばこそ、一瞬のタイムラグを生み出すことによって空へと舞い上がり、『大天使ブラキエル』のはなった破壊の一撃を躱すのだ。
「これが戦術というものだ。力在るからこそ、この刹那を見逃す」
間髪入れず、その瞳がユーベルコードに輝く。
「砕けたまえ」
掲げた掌に浮かぶのは、アララトの流星(デウス・ルークス)。
光速で放たれる魔力弾の一撃は、一瞬の明滅とともに放たれる。世界を割くような一条の光となった魔力弾が『大天使ブラキエル』の胸を穿つ。
鮮血がほとばしり、その大天使の光輪を汚す。
口から血を吹き出しながらも、『大天使ブラキエル』の瞳は未だ虚無。痛みも、苦しみも、彼の抱いた失望を癒やすものですらなかったのだろう。
「失望を知れ、憎しみを知れ、か。では君は神々の何を知っていたのかな?」
何も知ろうとはしなかったのだろうと、シーザーは告げる。
宙より見下ろす『大天使ブラキエル』の表情は凪いだままだ。けれど、見ただろう。
その瞳に、僅かな怒りが湧き上がってくるのを。
揺らいだ、と感じたことだろう。確かに、あの絶対的な強さを見せていた『大天使ブラキエル』がゆらぎ始めている。
度重なる猟兵の猛攻。
それが今結実していく。世界のために、人々のために戦わんとした猟兵たちの力が、『絶対物質ブラキオン』を司る『大天使ブラキエル』を追い詰めている。
だからこそ、シーザーは告げるのだ。
「何も知ろうとはしてこなかったのだろう。愛という盲目故に、君は見誤ったのさ。それがオブリビオンとなったからかどうかはわからないが……嘗ての君を貶めぬために、私達が引導を渡してくれよう」
放たれた魔力弾の一撃が、再び『大天使ブラキエル』を穿ち、その翼を鮮血に染めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
過去に何があったのかは知らないけれど
無関係の相手を巻き込んでいい理由には
ならないはずだよ
悪いけど八つ当たりなら他所でやって貰おうか
破壊の光は神気で時間を停めて防御
防ぎきれなくとも大丈夫ですの
治療して彫像に変えて差し上げますの
石像になればそれ以上石化する事はありませんの
ですから安心して彫像になって下さいまし
…それはそうなんだろうけど
なんでそんなに嬉しそうなんだか…
ともあれ初撃を凌いだからには
反撃と行こうか
射撃で牽制しつつ接近し
強化された肉体で格闘戦を挑むよ
追撃は神気で防ぎつつ
邪神の施しで治療
即死しないなら何とでもなるさ
後は力の限り格闘で戦おう
これまでに巻き込まれた人達の分
熨斗つけて返させて貰うよ
『大天使ブラキエル』の光輪が燃えるように光を放つ。
その輝きは破壊の力であり、石化をも齎す呪詛の塗れていた。今まで凪いでいた表情がわずかに崩れたのは、己の滅びを予見したからであろう。
しかし、それで止まれるわけがない。
止まれるほど浅い失望ではないのだ。
そこには愛があった。嘗て天上界において『絶対物質ブラキオン』を司る七大天使の一人として存在していた『大天使ブラキエル』にとって、その愛の深さこそが、全ての元凶であった。
「我が愛憎を、我が愛を、我が失望を。それらの尽くを裏切るのが神だ。だからこそ、我が友が求めるのであれば――」
それこそが彼の、『大天使ブラキエル』の目的となった。
すでに手段も、目的もすり替わっているが、なお諦めきれずに自暴自棄に地上の生命を全て殺し尽くさんとするのは、誰の目においても八つ当たり以外の何ものでもなかったことだろう。
破壊の光が戦場を覆い尽くす中、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は内に宿した邪神の神気によって光を固定し、戦場を走る。
「過去に何があったのかは知らないけれど、無関係の相手を巻き込んでいい理由にはならないはずだよ。悪いけど――」
晶が飛ぶ。
地上に満ち溢れる石化の呪詛を躱さなければ、晶とて危ない。
懐に飛び込んで、あの『大天使ブラキエル』を地上にとどめて置かなければ、他の猟兵につなげることもできないからだ。
「八つ当たりなら他所でやってもらおうか!」
例え、邪神の神気を『大天使ブラキエル』の放つ光輪の輝きが押し切ったとしても、安心してほしいと内なる邪神がささやく。
そう、治療して彫像に変えてしまえば、一緒のことだと。
「石像になればそれ以上石化することはありませんの。ですから安心して彫像になってくださいまし」
微笑む気配があるのが薄ら寒い。
むしろ、石化することを望んでいるとも取れる邪神の気配に、晶は頭を振る。
なんでそんなに嬉しそうなんだと思わずにはいられない。その理屈は正しいが、どうにかして回避したいのだ。
しかし、それでもなお石化の呪詛は晶の足を止める。
「く……う、確かになりふりかまっていられないか」
晶の瞳がユーベルコードに輝く。
まっていましたとばかりに邪神の施し(リビング・スタチュー)が晶の体に彫像化の魔法陣を現れ、晶の体を超増加し、戦闘力を増す。
「我が八つ当たり……そうだろうな。その通りだ。あてつけなのだよ、これはな。だから、我は殺す。地上に遍く全ての生命を鏖殺するのだ」
すべて殺す。
ただ、それだけのために『大天使ブラキエル』は力を振るうのだ。
それだけの凶行を引き起こしてもなお、神々が降臨しないことをしっていながら、それでも殺す。
オブリビオンという存在の成れの果てであったのかもしれない。
「それはさせない」
晶は疾走った。破壊の光が再び晶を襲う。けれど、即死しないのならば、なんとでもなるのだ。
力の限り戦うと決めたのだ。
これまでに猟書家の侵攻に巻き込まれた人々の生命があった。傷付けられる謂れのない者だっていただろう。
それらの無念を、痛みを、全て熨斗つけて返さねばならないのだ。
晶の瞳がユーベルコードの輝き以上に、その怒りを持って迸る。
懐の内側に入り込み、彫像化した拳で『大天使ブラキエル』と拳を打ち合う。互いの肉体がきしみ、ひび割れていくのを感じながら、即座に晶の体は邪神の権能によって治療されていく。
「愛を知るのに、他者の痛みを知ることができないのなら!」
晶は叫ぶ。
誰かのためにと願うことができるはずなのに、それ以外を慮ることができないのならば、それは愛でも友情でもない。
「今此処で、教えてやる。誰かのために願うのなら、全てを自分が救ってみせるくらいの気概を見せてみろ。それができないで、誰かに頼る心があるから、失望なんてするんだ!」
晶の拳が裂帛の気合と共に放たれ、『大天使ブラキエル』の頬を打つ。
その衝撃のままに『大天使ブラキエル』は吹き飛び、空へと舞い上がることは許されず、彼の求めた天上界よりもはるか遠き大地に釘付けにされる他なかったのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
分かるよ
最後に破れかぶれで色々と試したくなるの
分かるけどさー、いくら大天使だからって礼節に欠けてちゃあダメだと思う…
具体的には服着ろ!
●
引き続いて《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
『オーラ防御』と両剣での『武器受け』
2段構えで岩腕の一撃を正面から受け止める!
そして『カウンター』
【Code:T.S】起動
伸ばした雷刃で『2回攻撃』で一気に攻撃!
全く親玉らしい戦い方をしてくれちゃって
折角だから真正面から受け止めたくなっちゃったじゃん
けど友の為とは言うけど少しは自分の為に動いたらどう
全部友を理由に行動してて、君自身が見えて来ないのはどうかと思うよ
だから神も動かなかったんじゃない?
オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』は大地に釘付けにされたままであった。
最強のオウガ・フォーミュラたる彼が空へと飛ぶ事を許されず、消耗を強いられているということ事態が異例の事態であったことだろう。
それを為したのが猟兵達である。
彼等の猛攻が、弛まない戦いが、『大天使ブラキエル』を大地に縛り付ける。
「万に一つの可能性がないとしても、我はそれを為さねばならない。神々の愛など偽りであると否定するために、全ての生命を鏖殺しなければ。我の失望もまた偽りであると証明したいがために」
そのために無差別大量虐殺をもって、神々の真意を測ろうとしている。
もはや、どちらが本当の目的であったのかもわからなくなっていた。
友、『書架の王』のために天上界の扉を求めたのか。
それとも、己の失望を否定したいために天上界の扉を開かせようとしたのか。
そのどちらが最初で正しかったのかも冴え、『大天使ブラキエル』は見失っていたことだろう。
「わかるよ」
短く応える言葉があった。
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は黒髪に映える一房の青い髪をなびかせながら、二振りの蒼い刀身を持つ模造神器を手に、『大天使ブラキエル』に向き合っていた。
「最後に破れかぶれで色々試したくなるの。分かるけどさー、いくら大天使だからって礼節に欠けてちゃあダメだと思う……」
それは無差別大量虐殺などという手段を選ばぬことを良しとせぬ言葉であったことだろう。
どんなに自暴自棄になっても人には越えてはならぬ一線があるのだ。
だからこそ、玲は対峙したのだ。それをさせぬと。その唇が言葉を紡いだ。それは哀れみからであったのかもしれないし、彼の抱える深い失望を慰撫するための言葉であったのかもしれない。
「具体的には服着ろ!」
違った。てんで違うことを思っていた。
だが、戦いはそうはいかない。間違ってましたでは済まされないのだ。放たれた『岩腕』の一撃が玲を襲う。
二刀の模造神器を工作させ、その一撃を受け止める。
先程までの冗談みたいな雰囲気が嘘のようなすさまじい一撃。衝撃が玲の骨身をきしませる。
受け止めるだけでも、大地に彼女のブーツの轍が刻まれるほどに押し込まれ、圧倒的な力量差を見せつける。
だが、玲の瞳は何も曇ってはいなかった。
『大天使ブラキエル』の失望に染まった虚無の瞳ではない。彼女の瞳には生きる意志があった。
ユーベルコードの輝きさえあったのだ。
「全く親玉らしい戦い方してくれちゃって! せっかくだから真正面から受け止めたくなっちゃったじゃん」
ぎしりと骨が軋む。
完全に攻撃を相殺できなかったのだ。筋繊維がちぎれ、あちこちが痛む。
「我が友のために。我が愛憎のために。お前達猟兵が個で劣ろうとも、戦いを諦めぬことはもう理解している。ならばこそ、お前たちを取り除く。世界から取り除き、あの懐かしき天上界へと至る。そのためには――」
全てを鏖殺する。
ただそれだけしか、『大天使ブラキエル』にはないのだ。
「けど、友のためとはいうけど、少しは自分のために動いたらどう? 全部友を理由にして行動してて、君自身が見えてこないのはどうかと思うよ」
そう、手段も、目的も、すり替わるほどに曇らせた失望。
それこそが、玲と『大天使ブラキエル』を分かつ最大の原因であったことだろう。
「だから、神も動かなかったんじゃない?」
黙れ、と叫ぶ声が聞こえたような気がした。振り下ろされた『岩腕』の一撃の前にかき消されたであろう『大天使ブラキエル』の叫びを玲は真正面から受け止める。
その瞳が輝くユーベルコードは、Code:T.S(コード・サンダーソード)。
迸る電流が模造神器から放出され、雷刃となって形成される。その抜刀は刹那の明滅よりも早く。
光速、神速を越えた踏み込みに寄って繰り出される斬撃は、一瞬の内に『大天使ブラキエル』の左腕を跳ね飛ばしていた。
「――っ!?」
蒼電が戦場に疾走った。
それは玲の放った斬撃の残光であった。
すでに彼女の背後には『大天使ブラキエル』の呆然と佇む背中しかない。
その間に落ちる、『大天使ブラキエル』の左腕が全てを物語っていた。
「失望も、愛憎も全て自分のためだったじゃん。それを忘れて、誰かのためにと願うことは悪いことではないけどさ。自分ってものをちゃんと主張したほうがいいよ。それじゃあ、ただの機械じゃん」
そんなものに負ける道理などないのだというように、迸る玲の蒼い残光が『大天使ブラキエル』の肉体に消えぬ傷跡を刻み込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルドヴィーノ・バティスタ
(アドリブ・連携歓迎)
ハッ、騒ぎ起こして構ってほしかったのか?
悪ィが八つ当たり相手になってやる気はねェな!
切った傷から血を啜れ『ブラッディヴァルチャー』!
全身覆える大きさにするには足りねェかもしれねェが、
体ン一部を重点的に覆って光防ぐことなら出来るだろ!
<瞬間思考力>で反応する頭、駆ける両足さえ無事ならなんとかなる!
重く鈍る体だろうが、どの世界にも浮かんで輝いてやがる月だろうが、
全部振り切って駆け抜けてやらァ!
【駆けて越えるは夜の月】、その悟ったような諦めきったような仏頂面に刃を突き立ててやる!
オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』の左腕が斬り飛ばされ、大地に落ちる。
噴出する血潮が『大天使ブラキエル』の白き翼を鮮血に染める。
だが、それでもなお霧散して消えていかない。
これがオウガ・フォーミュラ。これが猟書家の頂点である。
「我が愛憎が敗れる……我の失望が、我が友の望みが、完全に絶たれるというのか?」
『大天使ブラキエル』は呆然と、それでも凪いだ表情をわずかに歪め、大天使の光輪を輝かせる。
周囲に撒き散らされる破壊の光は、『大天使ブラキエル』を追い込もうとしていた猟兵の足を止めるには未だ十分すぎるほどの破壊力を持っていた。
「ハッ、騒ぎ起こしてかまってほしかったのか? 悪ィが八つ当たり相手になってやる気はねェな!」
バルドヴィーノ・バティスタ(脱獄狼・f05898)は戦場を疾走った。
光輪から放たれる破壊の光を無視するように、疾走って、疾走って、疾走った。己の肉体を破壊する光が当たっても、気にすること無く疾走ったのだ。
血が噴出する、肉を切り裂かれ、骨にすら到達する深い傷を受けてもなお、疾走った。
何故、そこまでするのかと誰もが思ったであろうし、『大天使ブラキエル』は留まらぬバルドヴィーノの姿を、虚無しかない瞳で見つめる。
「捕まえられるモンなら捕まえてみなァ! オレぁ、脱獄狼だぞ!」
そう、破壊の光も、石化の呪詛も、バルドヴィーノを捉えるには足りない。
愛憎も、失望も、友の願いも。
そのどれもが――。
「だからどうした、そんなので止められるオレじゃねェよ!」
バルドヴィーノが持つ何物にも縛られず、世界を駆け抜けた彼の二つ名が、まさに世界に体現する。
光輪の輝きが太陽であるというのならば。
彼は、駆けて越えるは夜の月(ノ・ケダ・ソンブラ)である。
全てを超越した速度を得た、バルドヴィーノは彼の噴出する傷口からあふれる血潮をすする外套『ブラッディヴァルチャー』を展開する。
これ以上傷を追うことは許されない。
あの虚無だけが支配する顔に刃を突き立てられない。
「もっとだ! もっと血を啜れ! 分厚く、あの光にも破られねェくらいにはできるだろうが!」
その叫びに呼応するように外套が破壊の光を防ぐ分厚き壁となってバルドヴィーノを守る。
彼の疾駆は宛ら弾丸のようであった。
一瞬の判断であった。頭、大地を蹴る足。それだけが無事ならばなんとでもなるのだと、痛みと高揚で冴え渡る思考が告げる。
最早何も関係ない。
重く鈍る体に鞭を入れる。その瞳が見上げるのは月である。
そう、どの世界にもある月。アックス&ウィザーズ世界の月は、煌々と輝いている。
偽りの骸の月ではない。真なる月。
あの月を再び偽りの輝きになどさせはしない。
彼のユーベルコードは、彼自身の全身を妨げるもの全てを無効化する。それは『大天使ブラキエル』の放つ光であっても同様であったのだ。
「――馬鹿な。我の光を、何故」
「知るかよそんなこたァよ! オレはただお前のその――」
迫るバルドヴィーノが長ドスを振りかぶる。
しかし、その一撃は『大天使ブラキエル』の光に振り払われ、弧を描いて大地へと落ちる。
「――悟ったような、諦めきったような仏頂面が気に食わねェ!」
それでも留まらない。
バルドヴィーノは止まらない。外套から飛び出したダガーを逆手に持ち、その一撃を見舞うのだ。
放たれたダガーの切っ先が『大天使ブラキエル』の眼窩に打ち込まれ、鮮血をほとばしらせる。
苦悶の表情はない。
けれど、バルドヴィーノは満足であった。
どんな光も、輝きも、力も。
バルドヴィーノを終ぞ捕らえることはできなかったのだ。放つ一撃の重さを彼は知らないだろう。
猟兵達が紡ぎ、繋いできた戦い。
彼の放った一撃は、アックス&ウィザーズ世界を明日という平和につなぐ楔となって打ち込まれたのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
猟兵が居るから神さまが動かない?
確かに猟兵は世界を救ったりしてるけど、
神さまが動かないのは、
そういう理由じゃないと思うよ。
今の世界はそこに住む人たちのもの。
神さまなんて、とっくに出る幕なくしてるんだよ。
だから神さまは動かない。
猟兵がいるのは、きっとあなたみたいな存在が居るから。
あなたたちが居なくなれば、
わたしたちも力を失うのかもしれないね。
のんびりするのにこんな力はいらないもんね。
でも!
今はまだ必要だからね。あなたみたいなのを倒すために!
【偽装錬金】で『ブラキオンの鎧』を複写。
最初は壊されるだろうけど、何度でも作り直して精度を増していくよ。
さぁ、この鎧をどうやって壊すか、教えてもらおうかな!
左腕を喪い、片目を喪い、消耗しきったオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』がよろめくように大地に、その足を下ろした。
よろめき、立つのもやっとであったが、彼が司る『絶対物質ブラキオン』の輝きは未だ、決着を拒むように輝いていた。
「神は動かない。神は欲しない。神は示さない。神は語らない。天上界の扉すら開かず、生命が鏖殺されようとしていてもなお、動かない」
それは何故か。
『大天使ブラキエル』の胸中にあったのは失望だけであった。
己に対する失望も在ったのだろう。
友である『書架の王』の願いすらも叶えることができず、今また猟兵に追い詰められている自分。
隻眼となった瞳は未だ凪いだままであり、虚無だけが占める瞳は虚ろであったことだろう。
だが、此処に最後の猟兵が立つ。
「猟兵が、居る……お前たちが世界を救うからこそ、神々は動かない」
「確かに猟兵は世界を救ったりしているけれど、神様が動かないのは、そういう理由じゃないと思うよ」
その言葉は静かなものであったことだろう。
おおよそ戦いとは無縁のような言葉の響き。争いを好まぬが故に、穏やかな日々を願うような声であったことだろう。
「ならば何故」
『大天使ブラキエル』の言葉は純粋な疑問であった。
気まぐれであったのかもしれない。考慮に値しない猟兵の言葉など無視して、攻撃すればよかったのだろう。
けれど、それさえも億劫であったのかもしれない。
「今の世界はそこに住む人たちのもの。神様なんて、とっくに出る幕なくしてるんだよ。だから神様は動かない」
けれど、とその声の主は続けた。
「猟兵がいるのは、きっとあなたみたいな存在が居るから。あなたたちが居なく成れば、わたしたちも力を失うかもしれないね」
世界の悲鳴を聞き届けるのが猟兵だ。
世界を破壊せんとするオブリビオンがいるからこそ、猟兵は世界を渡り、駆けつける。
だから、オブリビオン在りきの存在なのだろう。
それが真実がどうかはわからない。けれど、少なくとも、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)にとっては、それが真実であった。
だって、と言葉を続ける。
彼女にとって、猟兵の力は執着するものでもない。
「のんびりするのにこんな力はいらないもんね」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
『絶対物質ブラキオン』の構造を複写するユーベルコード。偽装錬金(ギソウレンキン)と呼ばれるユーベルコードが『絶対物質ブラキオン』を複写し、生み出された『絶対物質ブラキオン』と『大天使ブラキエル』が司る『絶対物質ブラキオン』がぶつかり、複写された存在が破壊される。
それは当然のことであった。
破壊されるのは当然であると理緒もわかっていた。けれど、何度でも作り直すことができる。
精度を高めていくことができる。
例え、すぐにはできなくても。それでも何度でもやり直すことができるのが人間の強さである。
「何故、足掻く。何故、抗う。何故、できぬと知りながらも繰り返す」
互いの『絶対物質ブラキオン』がぶつかり、消えていく理緒の『絶対物質ブラキオン」。
それは彼女ではたどり着けぬ極地であることを示していたが、それでも諦めない理緒の姿に、『大天使ブラキエル』は呟いた。
己が失望の果てに自暴自棄になったとしても、彼女は己のようにはならぬと直感的に理解したであろう。いや、彼女だけではない、他の猟兵たちもそうだ。
だからこそ、『大天使ブラキエル』は諦めてしまっていた。
恐れや、失望は足を止める理由になどなりはしないのだと気がついてしまったのだ。
「そんなの簡単だよ。だって、今よりも、今日よりも、そして、過去よりも。より良い未来を信じているからだよ。できないこともきっとできるようになる。それが足を止めない理由だからね」
理緒は戦いの場にはそぐわぬ微笑みでもって、ユーベルコードの輝きをたぐる。
ぶつかり合う『絶対物質ブラキオン』。
その粒子の輝きと共に、すでに限界を迎えていたであろう『大天使ブラキエル』の肉体が崩壊していく。
決して諦めぬ者たち。
その名を『大天使ブラキエル』は刻みながら、その存在を骸の海へと再び沈みこませる。
失望と愛憎だけが支配していた彼の胸中に、嘗ての彼の名に揺らした祝福と雷光を以て、猟兵たちはオウガ・フォーミュラからアックス&ウィザーズに再び平和という名の未来を勝ち取るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵