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最終決戦、大天使ブラキエル

作者：G.Y.

●骸の月の沈黙
「我が友よ、君の願いは叶わなかった。君は『書架』へと帰るがよい」
　オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』が手にした剣を虚空に放ち、誰にでもなく告げた。
　骸の月は、影を失った。それは、猟書家の侵略失敗を意味するものであった。
「我は、天上界の扉を開く僅かな可能性を実行しよう……もっとも、ヴァルギリオスさえ見逃し、あまつさえ封印された愚か者共が、今更地上の危機に扉を開く事もあるまいが……」
　そう言って、ブラキエルは月より舞い降りた。

　――全ての生物を無差別に虐殺する。

　それこそが、ブラキエルが天上界へと至る為に残された最後の手段。
　いいや、果たしてそれが『手段』となり得るかすら、ブラキエルは懐疑的であった。

●最終決戦
「皆様、猟書家との戦い、お疲れ様でしたわ」
　エリル・メアリアル（孤城の女王・f03064）は集まった猟兵達へねぎらいの言葉をかけた。
「皆様の働きのおかげで、アックス＆ウィザーズの骸の月の侵略を完全に押し返すことが出来ましたわ。これにより猟書家の目的……その世界でのオブリビオン・フォーミュラ誕生を阻止できたことになりますわね！」
　エリルが意気揚々と告げる。これでアックス＆ウィザーズは再び安寧を取り戻す筈……いいや、最後の仕事が一つ残っている。
「そう、オウガ・フォーミュラとの決戦ですわ！」

　オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』。
　おそらくは現時点の猟書家の中で最強の力を持っているであろうと推測される。
「骸の月の沈黙後、大天使ブラキエルは月面からアックス＆ウィザーズの各地へと降り立ち、世界中の生物を無差別に虐殺しようとしていますの」
　それが、ブラキエルの目的であった天上界への扉を開く最後の手段なのだという。だがそれではオブリビオン・フォーミュラ誕生の前に、世界が崩壊してしまう。結果はどうあれ、その行いを絶対に止めなくてはならない。
「その為に、ブラキエルは身体に纏った大天使の光輪から『岩の腕』を装備した毒牙虫軍団を呼び出すようですわ」
　その数は、空をも覆い尽くすほどであり、放置すれば周辺地域を手当たり次第に破壊してしまう。一晩もあれば、街が一つ地図から消えてしまうだろう。
「まずはその毒牙虫を撃退し、虐殺を防がねばなりませんわ」
　しかし、如何せん数が多すぎる。猟兵達だけで対処することは出来るのだろうか、とエリルは思案する。
「この世界の皆様の協力を仰げれば良いのだけれど……」
　だが、毒牙虫が襲い来る地域に、都合よく強い冒険者がいる、なんてことはいないだろう。
「けれど、それでも戦わなくてはなりませんわ。この世界を守るために」
　そう言い、エリルのグリモアが輝き始めた。
「皆様、無事を願っていますわ……いってらっしゃいまし」

●黒い空
　その日、荒野を旅する3人のパラディン達は、空が赤黒く染まるのを見た。
　その空から響く無数の羽音が、その正体を虫だと示す。
「なんという数だ……」
「まずい、あの向こうには街があるはずだ。急ぎ知らせに走らねば！」
　パラディン達は急ぎ、街へと向かって駆け出した。

「しかし、どうすれば良い？　何か手は……」
　彼らはふと思い出す。状況は違うが、以前同じように、ある街の危機を救うため共に戦った者達のことを。

●聖なる木の葉
　エルフの少女、エミリとクレアは、その時「聖なる木」に光がぼんやりと灯るのを見た。
「ねぇ見て。葉がこんなに光ってる」
「えぇ、こんなこと初めてだわ」
　エミリがその葉を手に取ると、どくんと心臓が跳ねるのと同時に、激しい胸騒ぎに襲われた。
「クレア……！」
　尋常ならざる表情に、クレアもまた葉に手を触れる。
「……！！」
　聖なる木が、危機を知らせている。
　葉を持ち、向かえと言っている。
　かつてこの森を守った者達への恩を今こそ、返すべき時だ、と。
「エミリ、皆を集めましょう」
「ええ、そして、向かいましょう」
　猟兵達のもとへ――……！

第1章 集団戦 『毒牙虫』

POW   :    針付き鎌 【毒針】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。 SPD   :    針付き鋏 【毒針付きの鋏】が命中した対象を切断する。 WIZ   :    １匹いれば 【忌避】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【３０匹の仲間】から、高命中力の【攻撃】を飛ばす。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

　空を覆い尽くさんと飛来する毒牙虫。その身体には不釣り合いな岩の腕が生え、ぶぶぶと大きな羽音を響かせながら、その街へと迫っていた。
「ふむ、随分狂った造形だ。よほど歪んだ美意識の持ち主か」
　それを見上げ、鳴上・冬季（野狐上がりの妖仙・f32734）は腕を組んだまま嘯く。まるで出来の悪い宝貝を眺めるかのように目を細める。
「無差別虐殺とは随分な「悪」であるが……この世界では忌むべき事であろう？」
　メナオン・グレイダスト（流離う灰色の魔王・f31514）は聞く。デビルキングワールド出身の彼であっても、それぞれの世界の流儀は理解している。
　それに小さく頷くのは、パラディンとエルフ達であった。
　彼らは、世界の危機を聞きつけ、この場に駆け付けたのだ。
「まずはあの虫どもを駆逐すべし、であるな」
　メナオンはそう言い、空を見上げた。

「雲霞のごとく居る敵に、個々であたるは愚策でしょう」
　冬季はパラディン達に告げる。如何せん数が多すぎる。一匹一匹倒していたのではきりがない。
「その通りだな。【グレイダスト・レギオン】――みな、力を貸せ」
　冬季の言葉に、メナオンは自身の纏う灰色砂塵を周囲に放出した。
　それらの砂塵が寄り集まり、鎧を纏った異形かのような姿へと形作る。続けて、その手には剣や槍、果ては投擲発射機や重機関銃までもが生み出される。
　そんな人工生命体の配下をずらりと並べると、メナオンは告げた。
「あの者達を援護しつつ、虫どもを掃討せよ」
　続けて冬季は手に雷公鞭を持ち、駆け付けた者達に言う。
「共に背を預けるでも共闘でも、私の陣内で戦うのであれば、多少のフォローはいたします」
　パラディン達に微笑み、冬季は雷公鞭を振り上げた。
　雷公鞭から雷鳴がとどろき、稲妻が天を衝いた。ビリビリと肌が引っ張られるような感覚を覚えたその直後、天から雷が降り注ぐ。
「敵の動きを多少なりとも止められれば、貴殿方も充分彼奴等と渡り合えるでしょう？」
　こうして、雷が上空の毒牙虫達を撃ち落とし、それを近接攻撃に長けた者達が迎え撃つ、万全の布陣が完成した。
「貴殿方の法術、期待しております」
「恩に着ります！」
　冬季の言葉にパラディンは前へ出ると、人間一人をすっぽりと覆えるような盾を構えつつ、毒牙虫へとメイスを振り下ろした。

　雷光が降り注ぐ中、それを器用にかいくぐる毒牙虫達も存在する。
　だが、猟兵達はそんな虫を一匹たりとも見逃したりはしない。
「撃て」
　メナオンの号令と共に、配下達が空へ銃撃を開始する。天からの雷、地からの弾幕。それにあわせてエルフ達も弓を番えて放つ。
　冬季の黄巾力士も、その中に加わって銃撃を始めることにより、数多くの虫を撃ち落とすことに成功していた。
　だが。
　やはり、数にものを言わせた戦法を取る毒牙虫は、どうしても一定数の撃ち漏らしが生まれてしまう。
「危ない！」
　毒牙虫の一群が、急激な急降下によってエルフへと迫る。
「黄巾力士！」
　冬季が叫ぶ。それにあわせ、黄巾力士と共にパラディンが前に出た。
「お守りします！」
　無敵城塞。パラディン達は盾を力強く構え、毒牙虫達の攻撃を一手に引き受ける。
　黄巾力士もオーラの障壁を伴い防御を固める。その間にメナオンの配下達が剣で切り裂き、槍で貫いてゆく。
　猟兵達、そして駆け付けた者達との見事な連携は、飛来する毒牙虫達の猛攻をもものともしない強力な布陣となり、彼らの背に待つ街を守る防壁となるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　愛車テスタロッサを走らせながら、星野・祐一（シルバーアイズ・f17856）は空を見上げた。
「気味の悪い虫が当たり一面覆ってやがるな……」
　ぶぶぶと不快な羽音は地上まで響き、その数の多さを知らしめる。
　この集団が街へと飛来すれば、家も木々も、人も、根こそぎ失われた死の荒野と化すだろう。
「ならまずは害虫駆除と行きますか！」
　テスタロッサに搭載したブラスターライフルは既にフルチャージ。上空に照準を定め、祐一本人も両手に『雷鳴』と『流星』と呼ばれた熱線銃を構える。
「まずは挨拶代わりだ！！」
　極太の熱線がテスタロッサから放たれた。放たれ続ける熱線は軌道を変え、毒牙虫達を薙ぎ払ってゆく。そこに流星と雷鳴から放たれる弾幕が、撃ち漏らした毒牙虫達を撃ち落としてゆく。
　その時、祐一の耳にAIからの報告が入る。
『報告、此方に接近する生命反応検知』
「おっと……」
　祐一はテスタロッサのブレーキを入れ、スライドさせながら停車させると、そこにはエルフ達の姿があった。
「現地の人かい？」
　そう聞く祐一に、エルフ達は首を振る。
「私達は聖なる木の導きによって、この地で戦う方々を助けるためにやって来ました。あなたは？」
「ああ、俺はしがない猟兵だけれど……よかったらさ、一緒に戦おうぜ」
「勿論、喜んで」
　エルフ、パラディン、そしてこの場で戦い続ける猟兵達。すべての支援を受け、祐一は再びテスタロッサを走らせる。
　一人突っ込む祐一を、毒牙虫達も黙ってはいない。群れの一部が分かれ、祐一へと向かってゆく。
「今だ、頼むぜ！」
　そう叫ぶと、エルフ達が上空へ向かって魔法を唱え始めた。
　魔法は襲い来る毒牙虫達を分散させ、混乱させる。その瞬間を狙って、祐一は流星を乱れ撃ち、毒牙虫達を次々と撃ち落としていった。
　だが、それでも数が多ければ撃ち漏らしも発生する。祐一は毒牙虫達の攻撃を躱しながらも注意を引き付け続け、眼前のパラディン達へと目配せをする。
　すれ違いざま。パラディン達のメイスが祐一を追う毒牙虫に炸裂した。不意の一撃に毒牙虫は粉々に砕け飛び、祐一は再びパラディン達から離れ、注意を引き付ける。
「あと一息だ！　頑張っていこうぜ！」
　祐一のその励ましと陽動により、エルフ、パラディン達は毒牙虫を次々と撃破してゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

　大天使ブラキエルの放った毒牙虫は、猟兵達と、彼らを支援すべく集まったパラディン、エルフ達によって次々と数を減らしていた。毒牙虫が放たれた街に、いまだ被害が無いのは僥倖といえる。
「気持ち悪い虫……やっつけがいがあるってものよね」
　遠方で光が瞬く。風のように戦場を走り抜けながら輝くその光は猟兵達が今まさに戦っている証である。その光を見つめながら、花澤・まゆ（千紫万紅・f27638）は剣を構えた。
「パラディンさん、街の守りはお任せしました」
　援護を続けるパラディンにそう告げて、まゆは一歩、前へ出る。
（「向こうでは、あたしの好きな人も戦ってる……かっこ悪いところは見せられない」）
　そう思い、退魔の霊刀『小夜啼鳥』を抜く。それと同時に、パラディン達はふわりと甘い香りが溢れるのを感じ取る。それは、桜の香りであった。
「あれなる虫、斬って斬って斬りまくりましょう」
　幻朧桜の香りを纏わせたまゆが大きく翼を広げた。軽く跳躍すると同時に翼をはためかせ、毒牙虫の群れる空へと舞い上がった。
　その甘い香りに誘われたのか、毒牙虫が標的を変えた。
　接近するまゆを迎え撃つように毒牙虫もまた鋏を広げ、まゆへと突っ込んでゆく。
「空はあたしの舞台でもある……甘く見ないことね」
　毒牙虫の鋏がまゆへと届こうかという瞬間、毒牙虫の身体が真っ二つに裂けた。
　まゆは毒牙虫へ接近しながら衝撃波を放っていたのだ。まゆが虚空で刃を振えば、何匹もの毒牙虫が斬り裂かれ、大地へと墜落してゆく。
　だが、近付けば近付くほどに毒牙虫の数も多くなる。斬り伏せても斬り伏せても、新たな毒牙虫がまゆを狙って迫りくる。
　気が付けば、まゆの周囲には、彼女を包囲するように毒牙虫が押し寄せていた。
「何匹だって相手取ってあげるわ」
　まゆは霊力の籠った符を周囲に張り巡らせて結界を作り上げた。しかし、全方位からの攻撃には万全ではない。結界を破った毒牙虫の鋏がまゆの身体を傷つけた。
「……！！　けど！！」
　小夜啼鳥がひゅんと風を切る。周囲に群がる毒牙虫を斬り裂いて、さらにまゆは突き進む。
　多少傷がついたっていい。後ろは任せてあるのだから、自分の仕事は前へ突き進み、一匹でも多くの毒牙虫を斬り伏せることだ。
「猟兵のかっこいいところ、見せてあげる」
　刃が煌めき、小夜啼鳥が群れを薙ぎ払った。
　一刀のうちに大量の毒牙虫が斬られ、そのどれもが漏れなく地面へと落下してゆく。
　その様子を見て、まゆは一言呟いた。
「あたし、虫って嫌いなの」
　そして再び刃を構える。
「地面に這いつくばればいい」

大成功 🔵​🔵​🔵​

　街へと襲い掛かろうとする毒牙虫の大群は、猟兵達の働きがあってもなお、空にひしめいていた。
「空を埋め尽くすほどの大群ですね」
　ユーフィ・バウム（セイヴァー・f14574）は空を見上げて呟いた。
「ですが、全て撃ち落とすまで――」
　そう言い、巨大な大剣を持つ手に力を籠める。そして、応援に現れたパラディンやエルフ達に指示を出す。
「私が前衛で戦いますので、使える方は回復を。それ以外の方は遠距離から矢などで援護をお願いいたします」
「任せて」
「守りは我らが！」
　エルフ達が弓に矢を番え、その前にパラディン達が出て盾を構える。
「さぁ――参ります！」
　その胸には勇気を、そしてその身には気合を込めて、ユーフィは駆け出した。

　毒牙虫が彼らを喰らい尽くそうと一気に急降下を始めた。
　その大群にエルフ達が次々と矢を放つ。矢は大群の中に消え、群れがぞわりと膨らんだ。ほんの僅かに進行を止め、何体かは群れから離れ墜落してゆく様子が見えるが、全体の勢いは衰えない。
「はああっ！！」
　だがそこに、すかさずユーフィが振るった剣から放たれる氷の衝撃波が炸裂する。弾け飛ぶように最前列の毒牙虫が薙ぎ払われ、返す刀でもう一度、ユーフィは刃を振う。
　だが、次々と撃ち落とされてゆく毒牙虫の死骸の間を縫い、さらなる毒牙虫が飛来する。虫ながら、地表付近にいては衝撃波を受けると悟ったか、毒牙虫達は上空で旋回し、攻撃の隙を伺っているようだった。
「それならば……！」
　突如、ユーフィの持つ大剣が、唸りを上げた。
　爆発的なエネルギーが大剣から放たれ、その衝撃に乗ってユーフィが飛ぶ。そしてその勢いのまま群れに向かって大剣を振り上げる。
　統制を崩し、混乱する毒牙虫達。反射的な攻撃はオーラの障壁によって阻まれ、かえって隙が生まれてしまう。
　その隙を狙い、ユーフィは拳を振り上げた。
「我は掲げる、闇を貫く蛮勇の拳……」
　ユーフィの拳が暁のように輝いた。
「轟く！」
　その叫びと共に、拳が振り下ろされる！
　悪しき魂を打ち砕く蛮勇の拳は、暁光の杭となり毒牙虫を貫きながら、そのまま大地へと打ち下ろされた。
　大地に打ち付けられた毒牙虫は、もはや原型を留めていない。ユーフィは立ち上がると、再び空を見上げた。
　凄まじい闘気を放ち続けるユーフィによって、毒牙虫は蹴散らされてゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

　大地を黒い疾風が駆け抜けた。
　その正体は鋼の巨人。機械鎧『ブラックバード改』である。
　そのコックピットより戦場の状況を見定めるミスト・ペルメオス（銀河渡りの黒い鳥・f05377）は、即座にヘルファイア・デバイスを展開させた。
（「これだけの数が相手なら……！」）
　本来、9メートルもの巨体が小さな虫を相手にするのは不適といえる。だが、モニタに映るおびただしい数の敵を見れば、ミストの搭載した殲滅兵器はかえって有効であろうと判断した。
（「――攻撃開始」）
　ヘルファイア・デバイスによる圧縮エネルギーの散弾が、毒牙虫の群れへと放たれた。
　散弾は『面』での攻撃に近い。無数に撒かれた弾は毒牙虫を次々と貫き、群れを一気に焼き払う。
　だが、広範囲故の弱点も存在した。
（「現地の人は、巻き込まないように」）
　現地で応援にかけつけたエルフ、パラディン達にまで巻き添えにしてしまう可能性があったのだ。
　現在ミストは単独行動。散弾によって次々と撃ち落とされる毒牙虫達であったが、その死骸を盾にするように、新たな毒牙虫が襲い掛かる。
「……！！」
　ミストが咄嗟にシールドを展開した。突進してくる毒牙虫は盾の装甲に衝突して押し潰される。
　しかし、毒牙虫達はブラックバードを包囲するように周囲を飛び交い始める。鋭い毒針は、いかに強固な機械鎧といえど、その装甲の隙間を縫って損傷を与える危険性があった。
「くっ！」
　ミストがビームブレードを抜き、その場で大きく回転した。ビームの刃が毒牙虫達を焼き切ってゆき、毒牙虫達は跡形もなく蒸発する。
　近接戦闘となる想定はあった。しかし、一度数匹に接近されれば、瞬く間に群がられてしまうことは想定外だったと言えよう。
（「だが……！」）
　ミストはブラックバードの体勢を変えると、盾を構え、押し出すようにブラックバードを突進させた。
　鉄の壁にひき潰されるように、毒牙虫達が弾け飛んだ。群れから脱したブラックバードは急旋回すると、ヘルファイア・デバイスを向ける。
（「殲滅する！」）
　散弾が群れを焼き払う。窮地を脱したブラックバードであったが、その装甲には少なからずの傷がつけられていた。
（「それでも十分、可能な限り防げたでしょう」）
　損害状況を確認したミストはそう結論付け、再び毒牙虫達を殲滅すべく加速してゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

「は。虫か」
　御剣・刀也（真紅の荒獅子・f00225）は、空を覆う毒牙虫を見て一笑に付した。
「こんな雑魚どもをけしかけてくるか。ブラキエルって奴はよっぽど臆病らしい」
　そう言い、刀也は腰の刀に手を伸ばす。
「まぁいい。こいつらにはさっさと退場して貰おう」
　言いつつ、刀也が毒牙虫を見据える瞳は真剣だ。
「こんな奴等に足踏みする気は欠片もないんでな」
　獅子が吼えるが如く、刃が振り抜かれた。
　接近してきた毒牙虫を一刀両断し、次なる毒牙虫へと意識を向ける。
　リーチは此方が上、しかし虫の速度は侮れず、押し寄せる数は刀也の手数よりも多くなる。
　だが、刀也は負傷など気にせずに、むしろ飛び込んでゆく。
　エルフやパラディン達の支援は受けていない。その分刀也へと攻撃が集中し傷が増えてゆくが、それ故に反撃の刃は更に鋭く、一層の切れ味を増してゆく。
　突き立てられた針付き鎌が刀也の肉を割く。血が噴き出る度に、数十体の毒牙虫が斬り刻まれる。
　敵の軌道を見切り、残像で狙いを逸らす。すれ違いざまの一閃は、一瞬で毒牙虫の命を奪う。
　その戦いぶりはまるで鬼か修羅か。血を流し、傷だらけになりながらも、刀也の斬撃に衰える様子は感じられなかった。

　気が付けば、周囲を取り囲んでいた毒牙虫も残るは一匹となっていた。
「なんだ、この程度か。やはり所詮は虫。楽しくもない」
　額に刃を突き立てると、毒牙虫がびくんと痙攣し、それからぴくりとも動かなくなった。
　空にはまだ敵が残っている。だが、それらの命も、残り僅かと言えよう。
　刀也は刀を構え、再び駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

　大町・詩乃（阿斯訶備媛・f17458）は、大天使ブラキエルの所業に呆れ果てていた。
「全生命の無差別虐殺なんて……そんなの見逃すわけないじゃないですか！」
　神として猟兵として。詩乃は使命感と共に、アックス＆ウィザーズの世界へと降り立った。
　空を見れば、大量の毒牙虫達が飛び回り、猟兵達、応援に来たエルフやパラディン達をも喰らい尽くそうと徒党を組んで襲い掛かる。
「私が囮になりますので、皆さんは防御を固めた上で、毒牙虫を攻撃してください」
　詩乃はそう告げると、一人前へと歩み出た。
「近付いてはダメですよ」
　背を向けながらそう言うと、彼らは頷き、体勢を整えなおす。
　パラディン達は前に出て盾を構え、エルフ達は弓を天へと向ける。そして詩乃は一人進み続け、龍笛『響月』を手に取った。
　一人突出した詩乃を、毒牙虫達は無視するはずがない。毒牙虫達は我先にと前へ出て、詩乃の血を吸うべく毒針を突き出した。
　その瞬間であった。
　どう、と激しい衝撃と共に毒牙虫達が吹き飛んだ。
「この結界を乗り越えようとしても、無駄ですよ」
　詩乃が言う。気が付けば、詩乃の周囲には結界が張り巡らされていた。
　それを乗り越えようとした『不届きもの』を結界の力が弾き返したのだ。
　だが、その程度で毒牙虫達は怯まない。数に物をいわせ、強引にでも突き破ろうと突進してくる。
　だからこそ。詩乃は響月を口へと当てた。

「この曲は貴方達の葬送の奏で」

　――――♪
　高く鋭く、そして清らかな音色が戦場中を駆け巡った。
　それは魂にさえも響き渡り、命を奪う力であった。毒牙虫達は、音色に包まれ、無傷のまま墜落してゆく。

「音に包まれて安らかに眠りなさい」

　ばたばたと、大地に毒牙虫達が積み重なってゆく。そのどれもが目立った外傷もなく、まるで抜け殻のように命を奪われていた。

　――――♪
　その音は、天高く響き渡った。
　演奏が終わった頃には毒牙虫達の放っていた不快な羽音さえも消え、周囲には静寂が戻っていた。　

大成功 🔵​🔵​🔵​

第2章 ボス戦 『ドラゴンゾンビ』

POW   :    異種再生 戦闘中に食べた【ゾンビや死骸、腐肉】の量と質に応じて【自らの体の欠損箇所を再構築し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。 SPD   :    戦場の記憶 【戦いを挑み返り討ちにあった冒険者達】の霊を召喚する。これは【生前と同じ手段】や【霊体を生かした攻撃方法】で攻撃する能力を持つ。 WIZ   :    生まれるゾンビの群れ レベル×5体の、小型の戦闘用【ゾンビ】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　空を覆い尽くしていた毒牙虫達の大群は猟兵達によって全て駆逐された。
　広がる視界のその奥に、輝く光輪を猟兵達は見る。
　それこそが大天使ブラキエルであった。
「流石、我が友を殺しただけのことはある」
　ブラキエルにとって、毒牙虫が駆逐されることなど想定の内なのだろう。余裕の姿勢を崩さずに、ブラキエルはその場に留まり、猟兵達を見据えている。
　今こそ決戦の時――。そう思えた瞬間、大地が割れ、地の隙間から巨大な影が姿を現した。
　それは竜の姿をしていた。だが身体は朽ち果て、ところどころに骨が露出している。ドラゴンゾンビである。
　ブラキエルが腕を振り上げると、虚空より謎の鎧が現れた。鎧はドラゴンゾンビの全身を覆い、朽ちた身体を隠してゆく。
「絶対物質ブラキオン」
　ブラキエルが告げる。
「壊すことの出来ぬ鎧に、疲れも痛みも忘れた竜。貴様等は我の元へ辿り着くこと等出来ぬと宣言しよう」
　猟兵達の前で、ブラキオンに身を包んだドラゴンゾンビが、大きく咆哮を上げた。

　絶対物質ブラキオン。それは『絶対に破壊出来ない』未知の単一原子と呼ばれている。
　そんな鎧で全身を包み込んだドラゴンゾンビは、まさしく絶対の障壁と言えるであろう。
　鎧を壊すことが出来ない以上、眼前の巨躯を倒す方法は、鎧のほんの僅かな隙間を狙う以外に無い。
　そう思われた時であった。
「聖なる木の葉の葉が……！」
　エルフの森の少女、クレアとエミリが叫んだ。彼女達の持参した『聖なる木の葉』が輝きを放っているのだ。

　――今こそ、力を授ける時です。

　突如、聖なる木の葉を器とするかのように、水が湧き始めた。
　雨露のように清らかで、聖なる力を秘めた水は、葉の先を伝って雫となって零れ落ちる。
　クレアとエミリは顔を見合わせ、猟兵達に告げた。
「皆さん、この雫を飲んでください。　そうすれば、たった一度だけですが、あの鎧を破壊することの出来る程の魔力が授けられます！」
　聖なる木の加護、ということだろう。
　絶対物質ブラキオンを砕くその力をいかに使うか。
　その判断は猟兵達に委ねられた。


　聖なる木の葉よりこんこんと湧き出る水が、滴り落ちる。
　その雫を手で受け止めて、詩乃はそれをく、と飲み干した。
「クレアさん、エミリさん。ありがとうございます。貴方達や聖なる木さんの想いは受け取りました」
　エルフの少女にそう告げて、詩乃はドラゴンゾンビへと振り返る。
「必ずブラキエルを倒します」
　そう言い、詩乃の身体がふわりと浮いた。
　若草色のオーラが、詩乃を中心に輝き始めると、世界を守るという強い意志をもってドラゴンゾンビへと向かってゆく。
「――やはり」
　ドラゴンゾンビは、周囲に転がる毒牙虫の死骸を喰らい始めた。死骸を喰らうことで、即座に自身の肉へと変え、自身の戦闘力を増強する。ブラキオンの鎧で覆われた姿からは伺い知ることは出来ないが、朽ち、腐っていた身体は修復を始めている事だろう。
「させません！」
　詩乃は、自身の神力を宿した薙刀に神通力を込めて空を斬ると、炎を纏った衝撃波が毒牙虫の死骸へと放たれた。
　どぅ、とドラゴンゾンビの前で炎が爆ぜる。炎は毒牙虫へと燃え移ると、死骸から死骸へ延焼してゆく。中央に立つドラゴンゾンビは揺らめく炎の中に食事が消えてゆく様を見つめた後、それを行った張本人……詩乃を睨みつける。
『ゴアアアアアアッ！！』
　激しい咆哮に炎がかき消される。ドラゴンゾンビは大きく翼を羽ばたかせると、詩乃目掛けて突進する。
「来ましたね……！！」
　詩乃は天耀鏡を構え、敵の軌道を見極める。それはただただまっすぐで、小細工等一切感じられない。必要が無いのかもしれない。絶対破壊出来ない鎧と、持ち前の巨体がなんの遠慮もなくぶち当たれば、それだけで脅威だ。
　だからこそ、詩乃は天耀鏡の盾を構えても正面からは受け止めない。オーラの障壁とともに、それを受け流す！
「くっ……！！」
　巨体の激しいエネルギーが衝撃となり、詩乃に伝わる。だが多くの力は分散されドラゴンゾンビは明後日の方向へと軌道修正を余儀なくされた。その懐に、詩乃は深く入り込む！
　詩乃は煌月を握り返し、聖なる木の魔力と、自身の破魔の力を籠める。
「沢山の方の想いと願いを籠めたこの一撃にて貴方を討つ！」
　叫びと共に、ドラゴンゾンビ目掛け、煌月が横薙ぎに振り抜かれた。
『ゴァッ……ガッ……！！』
　絶対に壊れないはずのブラキオンに、深い深い傷が刻まれる。その傷はドラゴンゾンビの肉を抉り、浄化の力を体内へと伝えてゆく。
『ガァアッ……アアアアア！！！』
　悶え、身体を掻きむしろうとするドラゴンゾンビ。しかしその爪はブラキオンの鎧に阻まれてしまうのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

『ギア……アッ……』
　猟兵達の攻撃を受け、ドラゴンゾンビが悶える。ブラキオンで覆われたはずの肉体の隙間からどろりと腐肉か漏れ落ちた。
　ぼとりと大地に落ちた肉は、ぐじゅりぐじゅりと動き出し、小さな竜の姿へと変わってゆく。小型のゾンビ達が、本体を守るべく現れたのだ。
「ふむ、これもまた、なかなか狂った造形ですね」
　聖なる木の雫を飲み干し、冬季は目を細め呟いた。感心したのか、馬鹿にしたのか、その真意は伺い知れないが、少なくともそこに敬意のようなものは無さそうだ。
「は！　死がそんなに恐ろしいか？」
　刀也は『死体』である筈のドラゴンゾンビにそう告げた。しかし、やり方こそ異常ではあるが、傷付いた肉体を護る為の尖兵や、死骸から肉を喰らい傷を癒すその姿は、死してなお生に執着する生者のようであった。
「まぁ、それが普通だ。俺だって死ぬことは怖い……が」
　そう言いながら、刀也の全身からオーラが迸る。それは螺旋のように渦巻いて、刀身を蒼く煌めかせた。
　手にすくった聖なる木の雫をく、と飲み、刀也はドラゴンゾンビを見据える。
「俺は修羅にして戦人。死を踏み越え、生を掴む覚悟はできている。死人は死を恐れない」
　切っ先を向けて、刀也は言い放つ。
「死人の剣、受ける勇気があるなら受けてみろ！」

「邪魔な小物はお任せください。
　ゾンビが猟兵達へと迫るなか、冬季は一歩前に出て雷公鞭を振いながら告げた。
「八卦天雷陣・青天の霹靂」
　振るわれた雷公鞭が迫るゾンビたちを打ち据えると、ゾンビ達の肉体がばちんと弾けた。天から落ちた雷がゾンビを消滅させたのだ。
　落雷は落ち続け、ゾンビ達は生まれてはまた消滅してゆく。
「さぁ今です」
「ああ！」
　生まれた隙に、刀也が大地を駆ける。それと同時に、冬季は黄巾力士とともに空へと浮かび上がった。
「さぁ、私達も戦闘を継続です」
　冬季が雷公鞭を振り上げる。その采配に従うように、黄巾力士も武器を地上のゾンビへと向けた。

『グルルるぅ……！！』
　腐肉から生まれ出るゾンビ達が猟兵の相手をしている間、ドラゴンゾンビは周辺の毒牙虫へと目を向けた。
　猟兵の攻撃により、かなりの数が焼失してしまった。しかし、死骸の数はそれでも多く、傷を修復するには十分な量であった。
「喰らうか。どうしても死が恐ろしいみたいだな」
　ゾンビ達の間を抜けてドラゴンゾンビへと肉薄した刀也が笑う。ドラゴンゾンビが喰えば喰う程、傷は癒え、力は増強される。それでも焦らないのは、機を逃さない為。
『ゴアアアアアッ！！！』
　ドラゴンゾンビは背を向け、刀也へと尻尾を叩きつけた。大地が割れ、土煙が上がる。
　その中をかき分けて、刀也が現れた。直感、経験、そして勇気で攻撃を躱した彼の勢いは衰ぬまま、ドラゴンゾンビへと向かってゆく。
　だが、刀也の周囲には生まれたゾンビがうぞうぞと集まり始めていた。このままでは包囲され、近付くことは叶わない。
「そうはさせません」
　空中から銃弾の雨が降り注いだ。冬季の黄巾力士による銃撃が、ゾンビを蹴散らしたのだ。
「さぁ、進んでください」
　冬季は雷公鞭から雷と炎を放ち、刀也へ告げた。
　刀也は無言で頷き跳躍すると、大地に叩きつけれた尻尾の上へと着地し、そのまま胴へと向かって駆け上がる。
「俺は戦場では死人。なんでかわかるか？」
　全身の力を、その一太刀に集中させる。
「戦場では逃げるより前に進んだ方が生き残れる場合がある」
　再びの跳躍。刀也の身体が、ドラゴンゾンビの懐へ入り込んだ。
「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん！！」
　白刃一閃。上段より振り抜かれた刃は、聖なる木の加護を得てブラキオンを斬り裂き、その奥の肉を引き裂いた。
「見極める本能……それがないのがお前の敗因だ」
『ぎゃおおおおおッ！！』
　叫ぶドラゴンゾンビ。大きく口を開き悶える様子に、冬季はぴくりと反応し、黄巾力士へと目を向ける。
「分かっていますね、黄巾力士。では、行きなさい！」
　その合図に従い、黄巾力士がドラゴンゾンビへと突っ込んでゆく。
『があっ……！！？』
　開いた口に、黄巾力士が入り込んだ。喉へと滑り込み、心臓付近で動きを止める。
「壊れない鎧を着ているというなら、中でその鎧すら壊れかねない程の大爆発を起こせば効果倍増でしょう？」
　その言葉と共に、ドラゴンゾンビの身体から淡い聖なる光が漏れ始めた。
『がっ……！！』
　どむん、とくぐもった音が戦場に響き渡った。ドラゴンゾンビの牙が砕け、黒い煙と大量の血を吐き出す。
　直後、首元から胸にかけて、ブラキオンで覆われた鎧が砕け飛んだ。ドラゴンゾンビの胸元にぽっかりと大きな穴が空き、焼け爛れた肉がぼとりと落ちる。
　滝のように流れる血をそのままに、ドラゴンゾンビは生気の無い瞳で猟兵達を睨みつける。いまだ斃れようとはしない、だが、かなりの損傷を与えることに成功したはずだ。
　死を忘れたゾンビとはいえ、その動きを止める時は近い。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　絶対物質ブラキオンは『絶対』のはずであった。
　しかし、エルフの少女達が持参した聖なる木の葉の魔力はブラキオンを砕き、ドラゴンゾンビの肉を裂いた。
　祐一とまゆは互いに雫を手に掬い、口に含む。
「さぁまゆちゃん、作戦通りに行こうぜ」
「うん！」
　祐一の言葉に大きく頷いたまゆは、翼を広げて空へと飛び立った。

「まずは、あたしが囮になるよ！」
　まゆが幻朧桜の香りを漂わせながら、ドラゴンゾンビの鼻先をかすめた。ドラゴンゾンビは鼻をひくりと動かすと、飛び去るまゆの後ろ姿を睨みつける。
　その横面に熱線が放たれた。ぎょろりと濁った眼球だけが大地を向くが、そこには誰もいない。
「よぉし、気付かれてないな……！」
　いいや、確かにそこには祐一がいた。迷彩を施し、地形に紛れ、誘導性の熱線を浴びせかけていたのだ。
「こちらですよ！」
　すかさずまゆが続けて衝撃波を放つ。それを受け、ドラゴンゾンビの注目がまゆへと向く。その間にも、ドラゴンゾンビにとっては不可思議な攻撃が地面から放たれる。
　それを鬱陶しいと感じたか、ドラゴンゾンビは動きを止めると、じっと『何か』を念じ始めた。
　周囲にひんやりとした空気が漂う。白靄が生まれ、その中から、人影がゆらりと現れる。
『グゥ……るるるぁぁ！！』
　雄叫びと共に、その人影が飛び出した。それらは、ドラゴンゾンビの呼び出した冒険者の霊であった。
　まゆを追う者、地上に潜む者を追うもの、多くの霊が解き放たれ、猟兵達を襲う。
「はぁっ！！」
　まゆが衝撃波を放ち、霊を退ける。だが倒しても倒しても湧いてくる霊に、まゆはたちまち包囲される。
（「まゆちゃん！」）
　祐一は心の中で叫び、『雷鳴』からチャージ弾を放つ。銃弾は霊達の包囲網を破り、まゆがその隙を突いて突破する。
「これで……！」
　突破する勢いのまま、まゆは符を手にドラゴンゾンビへと向かう。投げつけた符はドラゴンゾンビの鼻先へと貼り付き、ばちんとドラゴンゾンビの身体を痺れさせた。
「……効いたな！」
　祐一が叫ぶ。祐一がドラゴンゾンビに放ち続けていた銃撃は、相手への麻痺を促すものであった。それがいま、敵の動きを止めるにまで至ったのだ。
「祐一さん、行くよー！」
「オーケイ、まゆちゃん！」
　二人の身体から、聖なる雫の魔力が漲った。
「エルフの二人の気持ちを……無にしないように！」
　まゆが力の限り、刀を振り下ろす。空気を切り裂く衝撃波が、ブラキオンごとドラゴンゾンビを切り裂いた。
「雷鳴、リミッター解除！」
　祐一の言葉に、サポートドローンのEinsが祐一と同調し、武器のリミッターを解除してゆく。
　そして、祐一は銃口を、まゆの与えた傷口へと向けた。
「この一撃雷で終わりにしようぜ……！」
　祐一がトリガーを弾く。同時に強烈な光がドラゴンゾンビを貫いた。
『グォアアアアアアッ！！！』
　ドラゴンゾンビが悶え、苦しむ。黒い血が噴きあがり、腐肉がぐしゃぐしゃと崩れて落ちる。
「よし、脱出だ！」
　祐一はフィールドジッパーからバイクを取り出して跨ると、まゆへと合図を送る。
　まゆが祐一の後ろに座ると、祐一はアクセルを吹かしドラゴンゾンビから離れてゆく。
「皆さん、あとは任せました！」
　もはやドラゴンゾンビの『命』は僅か。最後の役目は、次なる猟兵に託された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「損傷軽微、許容範囲と判断。戦闘続行する」
　ミストは愛機ブラックバードの状況確認を済ませると、前方で不気味に蠢くドラゴンゾンビを眺める。
「……少なくとも、虫よりはやりやすいな」
　そう呟きつつ、ブラックバードはスラスターを噴かせ、まっすぐに進む。
（「アクセス……」）
　コックピットに乗ったまま、ミストが手を伸ばす。コックピット内に空間同士を繋ぐサイキック・ゲートが現れ、ゲートの先にはエルフの少女達の姿があった。
「その雫を、いただけますか」
　その言葉に、少女達は聖なる葉を傾ける。葉の先から雫が零れ、それをミストは容器で受け止めると、ミストの「ありがとう」の言葉とともにゲートがゆっくりと閉じられた。
　コックピットの中で雫を飲み干し、ミストは意識を集中させる。
（「ドレッドノート・デバイス展開、出力最大……！」）
　ブラックバードが長砲身重粒子砲を構える。ドラゴンゾンビの呼び出す冒険者達の霊を避けるため、距離をとって高速移動をしながら、ミストはじっと狙いを定める。
　ただ撃つだけでは駄目だ。聖なる力が、絶対物質ブラキオンを砕いたとしてそれが致命傷になりうるとは限らない。
（「座標計算、リンク……」）
　だからこそ、ミストは一撃必殺を狙う。
「サイキック・ゲート展開！」
　ミストが叫ぶと、先ほどのものよりも何倍も巨大なゲートが開かれた。それはドレッドノート・デバイスを飲み込めるほどの大きさを誇り、ミストはそのゲートめがけ、砲口を突っ込んだ。
　その先は、ドラゴンゾンビの体内。
（「全力の砲撃を撃ち込む……！」）
　ミストの身体に巡る聖なる木の魔力が、砲身を伝い、内部で集まるエネルギーに収束してゆく。すべてのエネルギーが最大に達した時、ミストは引き金を引いた。
『ぐがっ、あっ……！！』
　悶え、大きく咆哮する暇もなく。ドラゴンゾンビが内側から爆発した。
　ドラゴンゾンビを覆うブラキオンは砕け飛び、飛び散る肉片に混ざり大地に落ちる。
　ぶしゅぅと内部が焼け爛れたそれは、もはや腐った肉塊でしかなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

第3章 ボス戦 『大天使ブラキエル』

POW   :    岩腕 単純で重い【岩石でできた巨大な腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。 SPD   :    絶対物質ブラキオン 【「絶対物質ブラキオン」の鎧】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、「絶対物質ブラキオン」の鎧から何度でも発動できる。 WIZ   :    大天使の光輪 自身が装備する【大天使の光輪】から【破壊の光】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【徐々に石化】の状態異常を与える。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

『絶対物質ブラキオンが破られる……だと？』
　にわかには信じがたいといった表情でブラキエルは言った。
　猟兵達は常に猟書家達の、オブリビオンを阻んできた。
『たとえ絶対であろうと、貴様等にはそうではない、ということか』
　諦観ともとれるブラキオンの言葉。その言葉の通り、猟兵達はこれまでも不可能とされてきた物事をことごとく破ってきた。
　それは、大天使ブラキエルを前にしても同じのはずだ。
『だが、果たしてそうか？』
　ブラキオンの鎧を纏い、岩の腕をかざし、天使の輪がこうこうと輝く。
『我は大天使ブラキエル。これまでの者達と同じと思わぬことだ』
　ブラキエルがそう告げる。同時に圧倒的なエネルギーが戦場を駆け巡る。
　もはや猟兵以外のものの攻撃は意味を為すまい。
　猟兵達ですら、ブラキエルの攻撃には一歩遅れを取らざるを得ないだろう。
　先制攻撃にどう対処すべきか。その判断が明暗を分けることとなる。
『さぁ、ゆくぞ』
　今ここに、アックス＆ウィザーズの命運を賭けた最終決戦が始まった。




「おでましか、天使様」
　刀也は大天使ブラキオンを見上げ、不敵に笑った。
「お前の加護を受けた奴等はみんな果てた」
　刀也は蒼炎を纏った刀で、戦場に散らばる死体を指すとブラキエルは意外にも素直に頷いた。
『そのようだ』
　だが、直後、ブラキエルの腕に貼り付いた大岩が、さらに肥大化してゆく。
『だが我はそのどれよりも強いぞ』
　その姿を見て冬季はくつくつと喉の奥で小さく嗤った。
「ふむ、多少見目が良かろうが此方の造形も狂ったものばかり……あれらがああであったのも、納得というものです」
　ブラキエルの姿はつぎはぎの異形と言っても良い。そのうえで背負った光の輪からもたらされる後光は神々しさと同時に禍々しさを誇っている。
　刀也はそれに圧倒されることもなく、刀を構え、大岩の腕を見据える。
「お前にも譲れないものがあるんだろう。退けないところまで来てしまったなら、ぶつかるしかない」
　その言葉にブラキエルは笑う。
『そうだ。我らはもとより混じり合うことのない存在』
　その言葉に頷いて、刀也が挑発的に返す。
「来いよ。お前と言う存在を、俺に刻んで見せろ」
『刻む？　笑わせるな。粉々に砕いてくれる』
　ブラキエルはそう言いながら、刀也へと向かい翼を羽ばたかせた。

「でかいな……！」
　ブラキエルの腕から生えた岩は、まともに喰らえば刀也の身体をぐしゃぐしゃに砕くことなど造作も無いだろう。
「なら……！！」
　逆に、刀也はブラキエルに向かって大きく踏み込んだ。大岩の死角を突き、ブラキエルへと一気に肉薄する算段だ。
『甘い』
「ぐっ……！！」
　大岩の軌道が変わる。突っ込む刀也を捉えるべく横薙ぎに腕を払う。
　血を吐き、吹き飛ばされる刀也。直後、彼目掛けて天より落雷が落とされる。
「……これは」
　雷に撃たれたはずの刀也に、傷は無かった。いや、ブラキエルによってつけられた傷さえも癒されている。
「雷火に焼かれた地が豊穣となる」
　それは、冬季の呼んだ癒しの雷であった。
　仙桃、及び仙丹を口にしつつ、自身に神を降ろしたのだ。
『邪魔をするな』
　ブラキエルの天使の輪が輝く。冬季目掛け、破壊の光が降り注ぐ。
「……っ！！」
　破壊の光の直撃を受け、冬季が血を吐く。だが、余裕の表情は崩さず、自身の手を見返した。
「……ふむ」
　冬季の腕が、指先から徐々に石化しているのだ。
「中盤で使い潰すのは速すぎでしたか」
　冬季は、先の戦いで爆発した黄巾力士を思い出す。黄巾力士さえあれば、直撃を防ぐことも出来ただろう。
　だが、言っても仕方がないと、冬季は笑う。
「皆さんのお手伝いをしましょう」
　そう言い、自身を含め、仲間の猟兵達に癒しの雷を与え続ける。
「助かったぜ」
　傷の癒えた刀也が、吐き出した血を拭って笑う。再び前へと出て、今度こそ一気に駆け抜ける。
『……何っ？』
　ブラキエルは肉薄した刀也を振り払うべく、もう片方の腕で薙ぐ。だが、刀也は怯まない。傷を受けてもまた雷が力を与えてくれるから。
『ぐぅっ……！！』
　そればかりではない、傷を癒す雷に紛れて放たれた本来の雷が、ブラキエルの動きを鈍らせていた。
「完全石化するまでは仕事をしませんと」
　ぴきぴきと、身体の動きが鈍くなってゆくなか、冬季が笑う。
「あとは任せました」
　そう言い、冬季の身体が完全に石となる。
「あぁ」
　刀也は小さく頷き、刃を振り上げる。
「天上の神だろうが、敵となるなら斬り捨てる。心配しなくても、敵になるなら直ぐに送ってやるよ」
『…………！！』
「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん！！」
　一閃。持てる力を振り絞って振り下ろされた刀也の刃は、ブラキエルの身体に深い刀傷を刻むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「驚異的だな……だが、無敵ではない」
　ミストは愛機ブラックバードの中で大天使ブラキエルを見つめていた。
　猟兵達の攻撃は確かにブラキエルに届いていた。
　絶対物質ブラキオンですら砕いてみせたのだ。
「ならば、倒せる……！」
　そう意気込み、ミストはスラスターを最大稼働させ、ブラックバードを飛翔させた。
『機械人形か』
　ブラキエルは空を翔ける黒い影を見上げて呟く。その腕に岩を纏わせると、天使の翼を大きく羽ばたかせ、一気にミストへと詰め寄った。
（「……来たか！」）
　急速な敵接近を告げるアラームに、ミストは咄嗟にビームシールドとビームアサルトライフルを構え、牽制射撃を試みる。
『無駄だ』
　銃弾を肥大化させた岩の腕で受け止めると、ブラキエルはそのままの勢いでミストへと体当たりを仕掛ける。
「くぅぅっ！！」
　ビームシールド越しからでも激しい衝撃がブラックバードに伝わった。シールドを構えた腕はその負荷に耐えられず、めきめきと装甲がひしゃげてゆく。
「うぅううっ！！」
　弾き飛ばされるブラックバードを制御しながらも、ミストはブラキエルを捉え続けた。
　がくがくと揺れ、負荷限界ギリギリのブラックバードを必死で制御しながら、機を伺い続ける。身体のみならず、精神までもをすり減らす極限状態の中、ブラキエルの攻撃をギリギリで躱す。
　――その先に、隙が見えた。
「シュラウド、――その力を、貸せ……ッ！」
　その言葉と共に、ミストがサイキックエナジーを全力で解放する。ブラックバードの姿が変わってゆく。
　同時に戦場に嵐が吹き荒れる。それは念動力で生み出された嵐。その風に乗り、ブラックバードはぐんぐんと速度を上げ、ブラキエルを翻弄してゆく。
（「残る全火力を投射し、削り切ってやる……！」）
　周囲を飛び交いながらミストが全兵装をブラキエルへ向ける。そして間髪入れずに、ミストがトリガーを弾いた。
『くっ……おおっ！！』
　嵐の如き銃弾は、岩と化したブラキエルの腕を削り、吹き飛ばし、砕いてゆく。そのままの勢いで身体を貫き、ブラキエルに大きな風穴を開けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

　猟兵達の攻撃は、確かに大天使ブラキエルへと届いていた。
『これが猟兵の力、というものか……』
　与えられた傷から零れる血を拭い、ブラキエルは呟く。だが、未だに余力は十分なのか、余裕の表情は崩さない。
　そんなブラキエルに対し、詩乃は怒りを露わにしていた。その身を天女の如き姿に変え、二枚の天耀鏡を周囲に浮かび上がらせる。
「この世界の神に代わり、徒に全生命を虐殺しようとする輩に神罰を与えましょう！」
　別世界とはいえ、神の一人として。天使の暴虐を許すわけにはいかないと詩乃はブラキエルへと立ち向かう。
「気負い過ぎるでない」
　そう言い、その後ろより現れたのはメナオンであった。
「魔王は遅れてやってくるもの」
　猟兵達の戦いを観察していたようだ。そんなメナオンの外套が突如ぶわりと広がった。
「そして逃れられるもの。――で、あるな？」
　大天使、それに対するは神と魔王。世界の命運を賭けるには十分すぎるカードであった。

『光よ』
　ブラキオンが天使の輪を猟兵達へと向ける。光輪は禍々しいほどに眩しく輝き、その光が周囲を破壊しながら猟兵達へと放たれた。
「ゆけ」
　メナオンから放たれた灰色砂塵が多くの銃砲を作り出す。それらの銃口がもれなくブラキエルへと向けられると、メナオンの号令と共に一斉に発射された。
　銃弾は弾け、砂塵となって拡散すると、破壊の光を遮る幕となる。無論光をそれで防ぎきれるわけではない。メナオンは続けて自身の周囲の砂塵を操作し、部分装甲を生成して盾を作る。
　砂塵が舞う中、天よりぽつり、ぽつりと雨が降り始めた。詩乃の神通力によって呼び出された雨であった。
　破壊の光は雨すらも石化させながらも猟兵達へと迫る。雨は光を防ぐ手立てとしては十分とは言えなかったが、それはあくまでも布石でしかない。
　詩乃はその間に天耀鏡を巨大化させ、自身をすっぽりと覆う程の盾とすると、光の照射を受け止めるべく前方に構える。
「……くっ！！」
　破壊の光が詩乃を捉えた。光は天耀鏡へと直撃し――反射する！
『何……！』
　反射された光を自身の身に受けるブラキエル。かろうじてブラキオンの鎧で光を受け止めるも、それは猟兵達に反撃の機会を与える、大きな隙となった。
「やられっぱなしではいられぬ、な」
　メナオンが灰色砂塵を手の上で渦巻かせた。その渦は急速に密度を高め、魔法の鏡へと姿を変える。
「干天の慈雨を以って、私はこの地を治めましょう」
　詩乃も降り注ぐ雨に力を与えるべく、その神力を戦場へと溢れさせてゆく。
「従う者には恵みを、抗う者には滅びを、それがこの地の定めとなる」
　その言葉に従うかのように、雨を受けた戦場に不思議な力が広がってゆく。それは『アシカビヒメの神域』――詩乃が絶対支配権を持つ領域に良く似ていた。
「攻撃を止め、跪きなさい！」
『……！？』
　詩乃の凛とした声に、ブラキエルの動きが止まった。
　その間に、メナオンも動く。
「鏡よ鏡、であるな」
　作り出した魔法の鏡に手を伸ばすと、不思議な結晶体を取り出した。それを即座に叩き潰すと、周囲に凄まじいエネルギーが噴きあがった。
「“星幽の牢獄”――星霊界よりの力を受けるが良い」
　そのの奔流は唸りを上げてブラキエルへと放たれた。身動きの取れないブラキエルに、激しいエネルギーが容赦なく襲い掛かる。
『ぬ、おおっ……！！』
「今です！」
　詩乃は空へと浮かび上がると、懐刀『雷月』を抜き、一気にブラキエルへと突き立てた。
　その刃はブラキオンで纏った鎧の隙間を抜け、ブラキエルの身体へと突き刺さる。
「雷の力を、受けなさい！」
『ぐあああっ！！？』
　ブラキエルの体内で、雷の力を宿した衝撃波が広がった。内部より受けた傷に、ブラキエルはごぼりと口から血を吐き出す。
『ぐ、おぉ……っ！』
　絶対物質ブラキオンで覆われていようと、その体内は無防備だ。いかに大天使であろうと、それはまったく同じであったようだ。猟兵達の見事な連携は、ブラキエルに大きなダメージを与えることに成功したのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　大天使ブラキエルの力が弱まってゆく。
　絶対物質であったはずのブラキオンは破られ、深い傷がつけられた。
『それでも……我が友の為に……！』
　ブラキエルの言葉に、祐一が叫ぶ。
「お前の身勝手な動機で、世界を滅茶苦茶にされてたまるかってんだ！」
　まゆも続けて言い放つ。
「イケメンは好きだけど、敵なら容赦しない。大人しく此処で朽ち果てるといいんだ」
　そんな言葉に、ブラキエルはふっ、と笑う。
『友を思うことが勝手な動機か……まぁいい。もとより貴様等とは相容れぬ者共』
　腕に巨大な岩を生み出して、ブラキエルが叫ぶ。
『このままでは終わらん！　貴様達だけでも殺してくれよう！』
　翼を羽ばたかせ、ブラキエルが二人のもとへと急降下する。
「来たぜまゆちゃん！」
「うんっ！」
　ブラキエルの一撃に、まゆが符を放ち、オーラの障壁を生み出した。
「うぁっ……！！」
　激しい衝撃がまゆを襲う。オーラの障壁は重い一撃に長くは耐えられない。
「まゆちゃん！」
　一瞬でも稼ぐことの出来た時間に、祐一は大岩の一撃から逃れる。
「こっちだ！」
　祐一はそのまま流星による援護射撃でブラキエルの注意を逸らしつつ、弱点を探る。
「……っ、隙が出来た！！」
　まゆが結界術を解除し、自身の翼を抜く。
「ふるべ　ゆらゆらと　ふるべ」
　その呪言と共にまゆにもたらされたのは、手にした刃の鋭さ。その鋭さのままに岩の腕を裂き、まゆは前へ、前へと駆けてゆく。
『近付かせるか……っ！？』
「そこっ！！」
　退くブラキエルに祐一の射撃が阻む。その銃弾は仲間の猟兵達によってつけられた傷や、祐一が見抜いた鎧の隙間へと吸い込まれてゆく。
『ぐっ……うぅっ！！』
　一発一発がブラキエルの神経を貫き、その動きを鈍らせる。そこにまゆが迫る。
『おのれっ！』
　岩の腕でまゆを薙ぎ払う。
「ぐっ……あっ……！！」
　痛烈な一撃を受けて、まゆが吐血する。だが、まゆの目線はブラキエルを睨みつけたまま。
「あああっ！！」
　捨て身の一撃で半ば強引に刃を振り払い、岩ごと腕を切り裂く。
『何っ……！！』
　その一撃によって、ブラキエルを纏っていたブラキオンの鎧が解除された。
「今だ！」
　祐一が号令とともに『雷鳴』のリミッターを外す。エネルギーを限界まで溜め、その狙いを、心臓へと定める。
「いくぜまゆちゃん！」
　まゆは祐一の掛け声に頷くと、体勢を立て直し、刃を構える。
「こいつを喰らいやがれ！」
　雷鳴からすべてを貫き通すほどのエネルギー弾が放たれる。
『なっ……！！』
　銃弾が、ブラキエルの心臓を貫いた。間髪入れずに、まゆが上段から小夜啼鳥を振り下ろす。
「このまま……朽ち果てろ！」
『ば……か……な……！！！』
　一刀両断。ブラキエルが眩い光を放つと、外から徐々に身体が崩れてゆく。
　まゆの最後の一撃が、ブラキエルにとどめを刺したのだ。

　こうして、アックス＆ウィザーズを狙う猟書家の侵攻は食い止められた。
　オブリビオンの脅威は去り、再び剣と冒険の世界が幕を開けたのだ。
　各世界を侵攻するオウガ・フォーミュラ達の手は止まっていない。だが、今はその喜びを噛みしめよう。
　そして再び、新たな戦いの為に立ち上がろう。

　エルフとパラディン達に別れを告げ、猟兵達はその地を去るのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2021年05月20日