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銀河帝国攻略戦④~颯爽たる帝国騎士

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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 いつからそこに居たのか、或はいつのまにかそこへやってきたのか。
 黒い影が光に引き伸ばされたかのように、その人影はいつの間にか立っていた。
 巨大宇宙船内部は、人々の寝静まった時刻である。
 巡回のオートロボット以外はほぼ出歩かないような、静かな区画を、漆黒の甲冑を纏った帝国騎士は、ただ早足で、しかし一部の隙も迷いも無く歩いていた。
 向かう先は、この船のコアマシン。その破壊を、ただ目指して黙々と歩を進めていた。

「皆さん、既にご存知の通り、現在スペースシップワールドは、帝国との戦争状態にあります。
 そんな中、宇宙船団の中には、先刻のミディア殿の旗の下、『解放軍』に迎合してくださる者も居るようです」
 グリモアベース、その一角に於いて、羅刹のグリモア猟兵、刹羅沢サクラは鋭い目を周囲に向けていた。
「今回、あたしが見た予兆によると、その『解放軍』に迎合してくださる宇宙船の一つを破壊しようと目論む、テロ工作員が送り込まれたとのことです。
 かの者の狙いは、宇宙船の中核、コアマシンの破壊。これをなされてしまえば、ミディア殿のワープドライブはおろか、宇宙船としての機能を損なうものとなるでしょう。
 一刻も早く、かの刺客を打ち破って頂く事となります」
 静かに語りながら、サクラは自身の刀の柄を強く握る。
 グリモア猟兵は、自身の予兆に対して積極的な干渉はできない。
 彼女の見た敵が強大であるほど、自身でその敵を討伐しにいけない事が悔やまれる。
「今回の舞台は、宇宙船内での戦闘となります。
 船員はほぼ居住区で休んでいる時間であり、かの者がやって来る地点とは離れているため、船員に危害が及ぶ可能性は無いと言っていいでしょう。
 しかし、当然の話ですが、万一コアマシンの破壊、及び我々猟兵の敗北があった場合はその限りではありません。
 メインとなる戦闘区域は、宇宙船の中央区画へ通じる庭園と呼ばれる区画です。
 そこは名前の通りの緑化ブロックで、広い芝生と街路樹が植えつけてある……平たく言えば公園のような場所です。
 視界は広く、戦うにはうってつけでしょう。
 相手となるのテロ工作員は、帝国騎士と呼ばれる光の刃と超能力を用いる黒い甲冑の騎士です。
 卓越した剣術もさることながら、人知を超えた能力を持っているようですね」
 一息に概要を語り終えると、サクラは自身を落ち着かせるように深呼吸をすると、改めて猟兵たちを見回す。
「帝国の規模は、幾千幾万と聞いていますが、反攻の牙、その一端は我々が担わねばなりません。
 どうか、皆さんの力を貸してください」
 そうしてサクラは、いつものようにぺこりと頭を下げるのだった。


みろりじ
 =============================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 =============================
 こんばんは、流浪の文章書き、みろりじです。
 折角のイベントなので、乗らねば損です。
 というわけで、1シナリオ完結のボス戦です。
 なるべくプレイングを拾って丁寧に書いていくつもりですが、今回は時間との勝負というのもありますからね。
 ……大丈夫だろうか。
 ま、まぁ頑張りましょう。
 皆さんと一緒に楽しいリプレイを作っていけるよう、頑張ります。
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第1章 ボス戦 『帝国騎士』

POW   :    インペリアルブレイド
【念動力を宿した「飛ぶ斬撃」】が命中した対象を爆破し、更に互いを【念動力の鎖】で繋ぐ。
SPD   :    ダークフォースバリア
自身に【鮮血の如きオーラ】をまとい、高速移動と【赤黒い電撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    インペリアルフラッグ
【念動力で形成した帝国の旗】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を『帝国の領土』であると見る者に認識させ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

江戸川・律
悪いけど
ココから先は通行止めだ
あきらめて退散するなら手を出さないのを約束してやるよ

早業+罠使い+戦闘知識+地形の利用を併用

ダークフォースバリアの
高速移動を封じる為に「レプリカクラフト」で
事前に赤外線連動の銃火器トラップと
純粋にワイヤーを足元に張り転ばせるトラップを
コアマシンに向かう通路に設置します

ハイテクに慣れるとアナログを見落としやすくなるんだよ
一つ賢くなったな

へぇ雷撃ね…
はぁ『雷穹龍グローレール』の雷撃に比べればなんぼのもん!!
一から修行し直して来い!!

ディテクティブ・ブラスターを構え
罠に掛かった帝国騎士のヘルメットに向けて
お仕置きとばかり連射します

アドリブ連携大歓迎です


タマ・ハンクス
そこまでだよ、悪逆非道な帝国騎士!
平和な宇宙を乱すなど、許されない

人呼んで、アルダワの銀虎とは、ボクのことだよ!

びしっとかっこよくポーズを決めて登場


「鎖より短い距離で戦うなら、不利はないよ
小さい体を利用しての密着戦闘

「キミのダークな電撃とボクのフォースな電撃、どちらが強いか、勝負だよ
両手の電撃を連続に光らせて目を眩ませる【2回攻撃】【目潰し】

くっ、さすがに帝国騎士、強い…
でも、ボクも決して引くわけにはいかない…
ボクの心の旗は、決して折れはしないんだよ!

(なんて言うとフラグみたいだよね。旗でフラグ…ぷっくすくす。いやいや、今は真面目に戦わないと。真面目な顔、真面目な顔…)


嶋野・輝彦
削り役、捨て石そんな人間が必要なら俺の役目だよ

【第六感】で帝国騎士の動きを予測
【先制攻撃】【覚悟】【激痛耐性】でダメージ顧みず突撃
【怪力】で攻撃が外れない様に押さえ込みながら
【零距離射撃】【捨て身の一撃】【鎧砕き】で攻撃
視界が良すぎるからな自爆特攻で相手の機先を制しに行く
素人がやる事だ、そのくらいが上等だろ?
その後も【怪力】で帝国騎士を逃げられない様に抑え込みながら(【第六感】で相手の動きを察知した方が逃げられにくいならそれも入れる)
【零距離射撃】【捨て身の一撃】【鎧砕き】で
【覚悟】と【激痛耐性】で耐えて耐えて耐えて攻撃
我慢比べだ、付き合えよ

死にかけたら置き土産に戦場の亡霊
削ったぜ、後は頼んだ


聖護院・カプラ
やはりテロを目論むのは銀河帝国。その尖兵、帝国騎士。
たった1人という見方もありますが、1人で十分という見方もあるでしょう。
油断はなりません、コアマシンや人員の元へ辿り着く前にその行いを改めさせねば。

帝国騎士のインペリアルフラッグは命中しても回避しても場に影響を及ぼす強力な技能。
であれば私の『存在感』を以て後光を『円相光』とし帝国の旗を停止させます。
当たるでもなく、避けるでもなく。旗は効力を発揮しないまま宙に浮くことでしょう。

攻めの手を入れるならその瞬間です。
2手、3手目を打たれる前に、皆さん帝国騎士を懲らしめてやって下さい。

なるべく緑に被害が出なければよいのですが……。



 黒い外套、黒い甲冑、そして怪しげに光を湛えるバイザー。
 洗練されながらも年季を感じさせる巨大な宇宙船の中に於いてその姿は、広い通路に一人歩いているとはいえ、酷く目立つものだった。
 帝国騎士の威容、しかし禍々しい空気を纏うその人影は、人通りの絶えた通りから緑化庭園へのゲートを前に足を止めた。
 戦う者の嗅覚か、或は彼の持つ特異な能力がそれを察知したのか、ゲートロックを解除して門が開ききるまでの僅かな時間で、腰から下げた筒状の器具を手に取って作動させると、その先端から赤黒い光が伸び、剣の刀身と化す。
「待ち伏せとは気前がいい……」
 表情の読めない頭部を覆うバイザー越しに低い声が漏れる。
 彼の目的であるコアマシンへ向かうには、この庭園を真っ直ぐに突っ切るのが最も近道であるのだが、それは今や容易ならざる修羅の道へと変貌してしまった。
 遠くまで見渡せる一面の芝生。視界をさえぎるものは、僅かな茂みと、あとは歩道に等間隔に植えつけられた街路樹程度だろうか。
 だが、確実に、居る。
 帝国騎士たる歴戦の勘が、それを告げていた。
 だからこそ、周囲視界の及ぶ遠くまで見回すつもりで見回していたせいもあるのだろう。
 一歩を踏み出したその足に、ほぼ視認が難しいほどのワイヤーが引っかかった。
「むっ!?」
 やられた、という暇もなく、思わず足を取られるままつんのめるのを前に向かって回転しながら跳ぶ事で回避。
 やけに卓越した、言うなればスタイリッシュな動きで芝生に着地すると、今度は周囲から銃器の金属音が響く。
 気がついたときには、着地地点を囲むように無人の銃火器が取り囲んでいた。
 最初のワイヤーは、この位置に誘い込むためのものだったようだ。
 最早回避も間に合うまい。容赦の無い砲火が降り注ぎ、帝国騎士を取り囲む周囲にもうもうと砂埃が舞った。

 派手な銃声が幾つも折り重なって、爆発音のようですらある。
 まるで暴風か竜巻だ。それが鳴り止むのを待たず、件のトラップを仕掛けた江戸川・律(摩天楼の探求者・f03475)が茂みから飛び出した。
 レプリカクラフトを駆使した仕掛け罠は、急ごしらえだったものの、律の卓越した罠知識も手伝って、その効果は寸分違わない精度で機能し、庭園を通りに来た帝国騎士を巻き込むことに成功した。
「ゲートに仕掛けたんじゃ、すぐにバレちゃうからな。ハイテクに慣れると、アナログを見落とすもんだよ。一つ賢くなったな」
 得意げに鼻を鳴らす律の言葉に応じるかのごとく、砂煙の中から赤黒い光が一閃し、瞬く間に銃声が止んだ。
 全弾撃ちつくすにはまだかかるはずだったのだが、斬り裂かれた砂煙から現れた帝国騎士の姿を認めて、律は背筋が冷えるのを感じた。
 身に纏う外套には多数の銃創が残り、所々千切れて無くなっているし、その下の甲冑にも幾つか銃創が見られるのだが……。
 問題なのは、律が仕掛けた銃火器のいくつもが真っ二つに斬られているか、或は何か強い力で捻じ曲げられたかのようにひしゃげ、宙に浮いている事である。
「マジかよ……」
 思わず口角がつり上がるのを感じる。嬉しかったわけではない。
 むしろ、仕掛けた罠全てを破壊し、光の剣を向けてきた帝国騎士に対し、恐怖すら感じている。
「貴様の手並みか。実に見事だ……。賞賛に値する」
「っへへ、そうかい。そりゃ、光栄……」
 軽口を叩きつつ、忍ばせたディテクティブ・ブラスターに手を伸ばそうとするも、抜きつける隙を見出せない。
 距離から考えれば、帝国騎士の手にするフォースセイバーよりも、ブラスターを撃つ方が速い。
 だが、それよりも早く、こちらを攻撃する術を持っている。
 律の予感が、攻撃を躊躇わせていた。
「だが、詰めが甘い。罠師が軽率に姿を見せるのは、感心しない」
「ご高説どうもな。だが、あんたも喋りすぎだぜ」
 肩を竦めて見せる帝国騎士に、今度こそ律はブラスターを抜き放ち構える。
 リボルバー式の携行銃だが、直撃させれば威力は重火器にも劣らないはずだ。
「ほう、撃つか。そんな小物で、私を撃てるのか?」
「ぬかせ。悪いがここから先は通行止めだ。ここで諦めて退散するっていうなら、これ以上手を出さないことを約束してやるよ」
 銃を突きつけられても尚、帝国騎士はどこか余裕そうに表情の無いバイザーをかしげてみせる。
「やはり甘い。抜いたなら、能書きの前に撃つべきだ」
「くっ、手前!」
 帝国騎士の挑発に乗る形で、律はブラスターの引き鉄を引く。
 放たれた光線は、小馬鹿にしたような帝国騎士のヘルメットを迷わず命中……せず、周囲の銃火器……律が用意し、帝国騎士の念動力でへし折られ浮き上がった残骸に遮られてしまう。
「言うたぞ。罠師が軽率に姿を見せるから、防がれる」
 帝国騎士の空いた手が紫電を纏う。
 来る……! そう思ったまさにその瞬間、
「やいやいやい、そこまでだよ、悪逆非道な帝国騎士!」
 閃光が差すかのような声が、帝国騎士の行動を中断させる。
 庭園中に反響するその声の出所がわからず、帝国騎士のみならず、律も思わず周囲を見回す。
 果たしてその声の主は、割と近くの街路樹の枝の上に立っていた。
 直立した銀色の体毛をした猫の姿をしたそれは、ほか二人の目に留まったのを確認するや、しゅばっと全身を投げ出すように木から飛び降り……ようとして枝に引っかかって結果的に頭から落っこちてしまった。
 しかしめげずに立ち上がり、大急ぎで律の傍らまで駆け寄ると、どこから取り出したのか金属製のバケツを台替わりにして立つと、しゅばっと帝国騎士を指差す。
「平和な宇宙を乱すなど、許されない!」
「いや、落っこちた流れ、スルーすんの!? ていうか、木の上でやっときゃよかったじゃんよ!」
 かっこよくポーズを取るネコの姿に、それまでぽかんとしていた律は思わず突っ込みを入れてしまう。
「ぬぅ、何者だ!?」
「いや、アンタも律儀に待つなよ!?」
 明らかに警戒した様子で、周囲に浮いていた銃火器の管制も捨て、フォースセイバーを構えなおす帝国騎士に対しても、思わず突っ込みを入れてしまう。
「ふふん、タマ・ハンクス……人呼んで(アルダワの銀虎・f04771)とは、ボクのことだよ!」
「ぬぅ! アルダワの銀虎だと!?」
 得意げに名乗ると同時に、バケツの上から矮躯をくゆらせるがごとく飛び出し、フォースセイバーの光刃を出現させ、きりもみ回転を加えながら斬りかかるタマの奇襲攻撃を、帝国騎士は同じくフォースセイバーで受ける。
 奇襲攻撃自体はすさまじいスピードではあったが、お約束のような問答に対して、一人蚊帳の外のような律は、もはや戦闘中であることすら一瞬考えから吹き飛んでいた。
 しかし、不意をついたとはいえ、ケットシーであるタマの小さな身体は、帝国騎士にとってもなかなか厄介な相手のようで、格闘戦に持ち込まれると、得意のフォースセイバー同士であってもましらの如く飛び回る動きに対して、決定的な一撃を加えることが出来ないようだ。
 冗談のような登場の仕方に呆然としたものの、その技術は決して引けをとるものではなかった。
「だが、こう、動き回られたら……狙いがつけられないな。くそ、もうちょい……」
 タマと帝国騎士が凄まじい剣戟を交わす最中も、律はブラスターで帝国騎士を狙おうとするのだが、激しい動きで翻弄するタマが常に射線に入るせいか、帝国騎士だけを撃ち抜くことが難しく、なかなか引き鉄を引けずにいた。
 そして、フォースセイバー同士の戦いも、徐々に趨勢が傾きつつあった。
「面白い動きだ。しかし、惜しいかな。いつまでもつ?」
「はぁ、はぁ……まだ、これからさ」
 ほぼノンストップで動き続けるタマに対し、帝国騎士は最小限の動きでそれを捌く。
 体力勝負となっては、常に機敏に動かねばならないタマの消耗は大きかった。
 幾度目かの攻防でセイバーを弾かれた拍子に、着地のバランスを崩したタマを逃さぬとばかりに帝国騎士の刃が迫る。
 思わず目を瞑るタマだったが、とどめの一撃はいくら待ってもやってこない。
「ぐぬ、貴様、いつの間に……」
 見れば、フォースセイバーを振りぬこうとした帝国騎士に組み付くスーツの男の姿。
「窓際は目立たねえもんだぜ。それとも、派手にやりあってて気付かなかったか?」
 本当にいつの間にか、その男、嶋野・輝彦(人間の戦場傭兵・f04223)は決死の形相で帝国騎士の背後から全体重をかけてのしかかるように組み付いたままで、未着距離からアサルトウェポンを連射する。
「おじさん、無謀過ぎるよ! 離れて!」
「うるせえ、俺ごとやれ!」
「何言ってんだ、アンタ!?」
 助けられた形となるタマが声を上げるも、輝彦は悪態をつき、律の怒号が飛ぶ。
 その間にも輝彦は、暴れる帝国騎士にしがみつきながらアサルトウェポンの銃弾を撃ちこみ続ける。
 その甲斐あって、甲冑の肩当や腕甲を破壊するも、
「ええい、離れろ!」
 帝国騎士の周囲を赤黒い電撃が走ると、それに全身を炙られた輝彦の拘束が緩む。
 その隙に身体を滑らせた帝国騎士は、輝彦に肘打ちを食らわせ、そのまま膂力だけで投げ飛ばした。
 茂みの方へ投げ飛ばされた輝彦は、それ以上動いては来なかった。
 帝国騎士はそれ以降、迂闊に接近を許さぬよう、周囲に電撃を纏い始める。
「ふー、困ったな……もうあんまり、チャンバラする元気がないよ……」
 いつの間にか電撃の範囲外まで距離をとったタマは、肩で息をしつつ傍らの律の足元をぽんぽんと叩く。
「あの電撃をどうにかして、チャンスを作る。律、ボクより前に出ないでね」
「それは、つまり……。わかった。今度こそ、全弾撃つ」
 タマの提案に、攻撃役を任された事を察して、律はブラスターを再び構える。
 それを確認して、タマは息を整えると、再び前に出る。
「たいした電撃だよ。でもそれくらいなら、ボクにもできる。キミのダークな電撃とボクのフォースな電撃、どちらが強いか、勝負だよ」
 そういうと、タマの両手から青白い電撃が迸る。
「ほう、面白い。つくづく猟兵とは、何が出てくるかわからぬものだ。ならば、食らうがいい!」
 タマのサイキックブラストと帝国騎士のダークフォースバリアが衝突する。
 青と赤、白と黒とが二人の間で交錯し、折り重なるようで決定的に弾きあって、激しく脈動するように衝突する。
 力と力、激しいフォースのぶつかり合いに、お互い足を止めざるを得なくなる。
 その瞬間を律は逃さず、狙い澄ましたディテクティブ・ブラスターが幾つもの光跡を残して射出される。
「ぐおおっ! おのれ、無粋な!」
 交錯する稲妻を介したせいか、連射したブラスターの光線は弾道を幾つか逸れたものの、帝国騎士に命中する。
 中でも、甲冑のはがれた肩に命中したものは、その身体を貫通せしめた。
 さらに身をよじった拍子にサイキックブラストとの均衡も破れ、青白い雷をその身に浴びる事にもなった。
「ぐわああっ!?」
 声を上げる帝国騎士。だが、それを食らっても尚、自身に鮮血のオーラを纏いなおし、帝国騎士は自身を電撃の如く加速させ、一気にタマへ肉薄する。
「そうくると思った!」
 高速移動してくる事を読んだタマは、ギリギリまでひきつけて、両手の雷撃をストロボのように輝かせる。
「ぬう!?」
 強い光に視界を奪われ、慌てて電撃を張り、またも拮抗状態になる。
「くっ、さすがに帝国騎士、強い……でも、ボクも決して引くわけにはいかない……
 ボクの心の旗は、決して折れはしないんだよ!」
 ギリギリの状況に立つと、ついついヒーローのような言葉が出てしまう。
 ただ心中では、
(なんて言うとフラグみたいだよね。旗でフラグ…ぷっくすくす。いやいや、今は真面目に戦わないと。真面目な顔、真面目な顔…)
 などと、笑いそうになっていた。相手が強敵であろうと常に心にユーモアを持ち続けるのは、彼が妖精の様な井出達をしているしているせいだろうか。
 だが、その心の油断ともいうべき小笑いが、サイキックブラストに隙間を作らせていた。
 律の追撃も待たず、帝国騎士はその隙間を縫って、インペリアルフラッグを放った。
 赤黒いねじれた杭の様なそれは、巻かれた帝国旗であり、それ自身が投げ槍のように一直線にタマへと擲たれていた。
「私の出番のようですね」
 高速で迫る帝国旗が、その一声とともに動きを鈍らせ、周囲に光が降り注ぐと、その動きが完全に空中に縫い止められる。
 異様な存在感が、庭園の上方から強い光と共に降り立った。
 人とは程遠い巨躯、硬質な外殻を思わせる体は恐らく何かの金属だが、そのフォルムは怪しい宗教の象徴的な何かにも見える。
「次から次へと……今度は木偶人形か」
「あなたこそ、帝国の操り人形でいらっしゃる」
 片手で帝国旗を、片手で赤黒い電撃を放ちつつ悪態をつく帝国騎士に、現れたウォーマシン、聖護院・カプラ(旧式のウォーマシン・f00436)は能面の如き顔を向けたまま尚も慈悲深い声色で応対する。
「機械人形がフォースを扱うか……恐ろしいな、猟兵」
 三人に向かい立つ形で超能力を活用しながらも、帝国騎士は劣勢を憂うような様子は無い。
 だが、長い間膠着を続けるつもりもないようだ。
 タマとカプラの間で膠着を作っている間も、律からは攻撃を受け続けているのである。戦いが長引けば、それだけ帝国騎士の不利は明らかだ。
 そうして、その行動は一瞬。
 帝国騎士はその身にサイキックブラストの青白い電撃を受けつつもフォースセイバーを用いて、帝国旗を射出し続ける片腕の手首から先を切り落とした。
「なんと……!?」
 切り落とされた騎士の腕はそのまま宙に浮き、インペリアルフラッグを維持したまま静止していた。
 帝国騎士のインペリアルフラッグは命中しても回避しても場に影響を及ぼす強力な技能。
 であるからこそ、カプラのその『存在感』によるユーベルコード『円相光』の輝きによって、空中に縫い止めるという手に出たのだが……。
 よもや、掌一つ残すだけで、逆にこちらが縫いとめられることになろうとは。
 帝国の尖兵、ただの一人と思っていましたが、その一人で十分という事でもあるのですね。
 その力の強大さ、或はその覚悟の強さにカプラは心中で驚嘆する。
「そこで止まっていろ、私の敵よ」
 切り落とした手首から鮮血のオーラで新たな腕を象りながらカプラを一瞥すると、帝国騎士はフォースセイバーを手放し、両手に電撃を帯びる。
「そちらが両手を使うなら、こちらも両手だ」
 数を増やした電撃が迸り、タマと律を一気に飲み込む。
 油断と後先を考えなくなった帝国騎士は、もはや自身の身体への負担など無視して強大な電撃を二人に向かって放ち続ける。
「く、くそ、こんな雷撃……『雷穹龍グローレール』の雷撃に比べればなんぼのもん!!」
 自身を奮い立たせる律であったが、動く事もままならず膝を付く。
「うぐぐ……め、目潰しまでは、うまくいったのにな……もうちょっと、もうちょっと隙が……」
 サイキックブラストで抵抗し続けるタマもまた、命を削る帝国騎士の電撃に身動きが取れない。
 だが、その電撃が唐突にタマたちから反れる。
「き、貴様……またしても!」
「覚悟ってんならよ……俺にも、あるぜ……」
 煙を上げるスーツの男、輝彦が、またも帝国騎士に組み付いていた。
 電撃を放ち続ける帝国騎士に、自身もその雷を浴びながら、今度こそ離すまいと、人並はずれた怪力でもって、その顔はまさに死に物狂いという言葉が当てはまるものであった。
「くそ、何なのだお前は……!」
「ただの、サラリーマンだよ、この野郎……」
 呻くように、ただの一心に縋るかのごとく、帝国騎士にしがみつく。
 その得体の知れなさ、執念深さは、今や攻撃ですらないというのに、帝国騎士に一抹の恐れすら抱かせていた。
 とはいえ、必死にしがみつく輝彦も至近距離から赤黒い電撃を浴び続けたせいで、その体は徐々にずるずるとずれていく。
 しかしそれでも離すまいと、帝国騎士の千切れた腕を掴み続け、やがてその甲冑を素手でヒビを入れるほどまで握り締めた辺りで、輝彦の意識は明滅し始めた。
 ようやく、輝彦の拘束が緩む、というその刹那、
「うわぁぁぁぁ!!」
 裂帛の気合一閃。電撃の合間を縫ったタマのフォースセイバーが、輝彦の握り締めた片腕を切り落とした。
 たたらを踏む帝国騎士、フォースセイバーを構えようとして、重心がやや傾いたことに気付いたようだ。
 そうして、片腕を失った帝国騎士は、しかし、油断無く荒い息でフォースセイバーを構えるタマではなく、今しがた自分のものであった腕を硬く握り締めたまま倒れ伏す輝彦へと目を向けていた。
「……ふん、片腕一本……貴様は、それほどの男か……あなどっていた」
 だが、と改めてタマの方へと向き直ると、片腕のままフォースセイバーを構える。
「腕一本取った程度で、私を倒したなどと、思わぬことだな」
 

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

アシェラ・ヘリオース
「今更に名乗る名も謂れもないが、過去が現在を食い潰すのは間違っている」
 銀河帝国とともに滅びた過去はあるが、何の因果か猟兵として現世に戻ってきた。
 前回は皇帝に殉じて共に滅びた。
 その事に悔いはない。 
 だが今回は皇帝を止めねばならない。全てはもう終わったのだ。

 帝国騎士の剣は良く見知っている。
 まだ十全ではない身だが凌ぐだけなら出来るだろう。
 前線でフォースソードを打ち合いながら持久戦。
 他の猟兵の活躍で僅かでも帝国騎士が崩れたら、【黒風鎧装】でフォース開放。
 あの騎士の剣の癖を突いて逆転の一撃を見舞いたい。
「帝国のフォース剣術の宗家は私だ。あの時から研鑽を怠ったようだな」


ハル・パイアー
「戦争の合間にピクニックとは良い趣味だ。だかそれにしては物々しいのではないかな?このような場所を踏み荒すのは実に惜しいが、任務だ。」

小官は帝国騎士の迎撃作戦に参加いたします。
《ゴッドスピードライド》で[騎乗]し、熱線銃の[誘導弾]機能アンロック。
高速機動で[操縦]しつつ障害物を避けて敵機の周囲を周回。敵の行動を[見切り]、回避を常に意識した状態で臨み、間断なく[早業]で熱線を連続照射。
引き寄せられた場合は牽引力を突進力に転化してバイク[ダッシュ]での質量攻撃を行使します。

「憩いの場が欲しいのならば侵略などせずに大人しくしている事を推奨する。では、お引き取り願おうか。」


ムルヘルベル・アーキロギア
さて、コアマシン防衛となると、ワガハイが得意とする広域破壊魔術はあまり使えぬな
なにより相手は帝国が誇る剣術の達人というではないか
面白い、ならばひとつ彼奴の流儀に乗ってやるとしようか
ワガハイは賢者を自認する者であるからして、普段はこんな真似をせぬのだがな
【蔵書票・過剰励起】……さあて、軽く準備運動に付き合ってもらうぞ
正面から格闘戦を挑み、仲間と連携して叩き潰してくれよう!

・UC設定
体内のナノマシン『エクスリブリス』を暴走させ、全魔力で身体能力を強化する
起動中は体の内側から淡い虹色が溢れ、ほとばしる魔力は蝶の翅のような形を描く(武装『胡蝶装』の演出)
出力は高いがPC自身は格闘戦に不慣れな所がある


クネウス・ウィギンシティ
アドリブ&絡み歓迎

「帝国騎士とは因縁深いようですね」

【POW】
方針:マシンガンの弾幕を敵に浴びせながら、接近しライオットシールド型パイルバンカーで爆破を防ぎながらゼロ距離でバンカーを打ち込む
技能:(UC:マシンガン)視力・一斉発射・援護射撃。(UC:パイルバンカー)武器受け・スナイパー・2回攻撃・クイックドロウ・零距離射撃

(マシンガン)
「公園ですか……良い広さですね。リロード完了、全弾持って行って下さって構いませんよ」

(パイルバンカー)
「ブースト展開。バンカー射出準備完了、仕掛ける!」

敵 POW UC 『●インペリアルブレイド』の『念動力の鎖』は抵抗なく受け入れ、オトリになります。


月鴉・湊
さて、おじさんは自分の仕事をさせてもらいますかね。
これ以上好きにはさせないよ。

他の猟兵達と戦闘している間に後ろに忍び足で回り込む。
そして、帝国騎士の死角に行き、機会を伺う。
相手は人知を超えた能力を持っているとしても、必ず隙が出来るはず。
その瞬間を狙い早業で奴の首を狙おう。

お前にも望みが、願いがあったんだろう。
だが悪いな。俺たちを敵にしたのが運の尽きだ。
恨むなら俺を恨んでくれ。



 苦戦、そう言ってよかった。
 度重なる攻防により得られた戦果といえば、帝国騎士の片腕。
 引き換えに猟兵たちは、一人が昏倒し、一人は釘付けにされ、残りの二人は辛うじて戦う意思を残しつつも、それも長くは持ちそうになかった。
 さすがにたった一人で宇宙船に乗り込んで、コアマシン破壊を目論むだけのことはある。
 じわりじわりと距離をつめる帝国騎士を前に、いよいよ覚悟をきめようというところ、静まり返る庭園に、無骨な嘶きが鳴り響く。
 どるん、と意図的に、存在を誇示するかのように呻りをあげたそれは、宇宙バイクのエンジン音。
 注意を引かれた帝国騎士が音のした方向を見ると、表情のうかがい知れないバイザー越しにも、警戒する色合いが濃くなった。
「すまないな、相乗りさせてもらって」
「いえ、現場へ戦力を運搬するのも、相棒の強みの一つです」
 バイクを操る年若い少年に礼を言う、黒い外套の女性。
 帝国騎士が警戒したのは、むしろこちらの黒い装いの女性こと、アシェラ・ヘリオース(ダークフォースナイト・f13819)のほうであった。
 外套の隙間から覗く腰に下げたそれは、帝国騎士の手にするフォースセイバーとよく似たものに違いなかった。
「貴様……帝国の者が、反乱軍に加わるのか」
「まあ、なんだな。巡り合わせというやつかな……今更に名乗る名も謂れもないが、過去が現在を食い潰すのは間違っている」
「この場、この期に及んで……よくぞ言うたな!」
 敢えてだろうか。煽るかのようにフォースセイバーを抜剣、構えつつ、アシェラは真っ直ぐと手負いの帝国騎士を迎える。
 その言葉に激昂した帝国騎士は、一足飛びにアシェラへと肉薄し、フォースセイバーを振るう。
 本来は飛ぶ斬撃の間合だったが、アシェラの『帝国騎士』を彷彿とさせる格好と赤いフォースセイバー、そしてその構えなど、何もかもが銀河帝国のそれに酷似していたせいだろうか。
 まんまと誘いに乗って、フォースセイバーによる肉弾戦に突入していた。
 隻腕となったとはいえ、最前線を一人で往く帝国騎士の剣術は凄まじく、アシェラはその猛攻を受けるのみで精一杯であった。
 かつて銀河帝国の者であった記憶を有するとはいえ、その頃の全てを再現するには、現場ではまだ実力が追いついていない。
 だからこそ、アシェラはついてこない能力を、帝国式の剣術の知識を総動員する事で何とか凌いでいるのだった。
「その程度の腕前で、よくも帝国の騎士たる私を相手にしようなどと思い上がったものだな」
「手厳しい……が、認めざるを得ないな。手心を加えてくれると嬉しい」
 幾度目かの交錯。赤いフォースセイバー同士が打ち合うたびに、フラッシュを焚いた様な光が飛び散る。
 戦いは一方的に見えた。隻腕の帝国騎士が最初からアシェラを打ち据え、防戦一方に追い込んでいる。
 そういう風にしか見えないが、それがしばらく続くと、今度はそれが違和感となっていく。
 そうしてそれは、
「負傷者の退避完了。これより、援護に入ります」
 いつの間にか姿を消していたバイクの少年、ハル・パイアー(スペースノイドのブラスターガンナー・f00443)の呼びかけにより、確証へと変じる。
 宇宙バイクが呻りをあげて、帝国騎士へと吶喊……はせず、逆に一定距離をとって周回するように移動しながら、ブラスターによる連射攻撃。
「最初から、囮を買って出たというわけだ。それでこそ、騎士か」
 鍔迫り合いで動きが止まったところへの、タイミングのいい横槍。ややもすれば、アシェラへの誤射も考えられるが、照射されたブラスターの光線は、巧みに彼女への進路を逸れて、帝国騎士を追尾していく。
 無理矢理に拮抗を解いてアシェラを力任せに押しのけると、帝国騎士は迫り来るブラスターの熱線をフォースセイバーで受けて弾き、赤黒い電撃で反撃……しようとしても、片腕が既に無いためそれができない。
 さらにそれに加え、
「公園ですか、よい広さです。全弾持っていってもらって構いませんよ」
 涼やかな声と共に、熱線とは別の質量を伴った銃弾の掃射が帝国騎士に降り注いだ。
 クネウス・ウィギンシティ(鋼鉄のエンジニア・f02209)の実弾銃による掃射が手伝う形となって、ハルの熱線を受けきれなくなった帝国騎士はその場にダークフォースバリアを展開して銃弾の雨を凌ぐしかなかった。
 だがそれも、
「ブースト展開。バンカー射出準備完了、仕掛ける!」
 防戦一方となった帝国騎士に接近したクネウスが大きく振りかぶったライオットシールド型パイルバンカー『第六式雷電攻艦杭』が押し込まれる。
 艦船の分厚い外殻すら貫くという鉄杭が、一挙に三連射され、帝国騎士のダークフォースバリアが破壊される。
「クッ……貴様、こちらの手の内を知っているようだな!」
「帝国騎士とは、因縁深いようですからね」
 ゴーグルとバイザー越しに視線が交錯するのも一瞬、帝国騎士のフォースブレイドによる距離を無視した斬撃が、武器であり盾でもあるパイルバンカーのシールドに阻まれる。
「ハハッ、こっちじゃ!」
「ぬう、蝶……!?」
 追撃を加えようとした帝国騎士の視界を、虹色に煌く蝶の翅が横切る。
 いつの間にか死角より接近していたムルヘルベル・アーキロギア(宝石賢者・f09868)のユーベルコード『蔵書票・過剰励起』によって、蝶のような燐光を帯びた状態の少年が、その華奢な肉体からは想像もつかないほどの素早さで帝国騎士の動きを翻弄する。
 クリスタリアンたるその肉体を構成する物質を活性化させた術式により、小さな学者の如き少年は、今や帝国騎士を手玉に取るほどの身体能力を得ている。
「ハハハッ、なかなか気分がいいぞ! 準備運動に丁度いいではないか……グハァッ!?」
 度重なる攻撃に、既にだいぶ動きの鈍った帝国騎士を、虹色の光を帯びた重そうな書籍と格闘だけで圧倒していたムルヘルベルだったが、それも一瞬のことだった。
 戦いなれない近接戦闘、そして使い慣れない身体の部位を瞬間的に酷使しすぎた代償として、身体の内側の機関が向上した蝶パワーについて行かなかったらしく、黄金色の吐瀉物を撒き散らして蹲ってしまう。
「うぐぐ……年寄りには、ちときつかったかのう……」
「少年、いや、御老体、あまり無理はしないでください。あとは……」
 年寄り臭い仕草でよろよろと立ち上がるムルヘルベルに近付いたクネウスは、戦闘態勢を崩さぬまま帝国騎士に向き直るが、すぐにその必要が無い事に気付いた。
「どうしたのじゃ?」
「いえ……もはや、勝敗は決したようです」
 武器を下げるクネウスに対し、怪訝そうな顔を向けるムルヘルベル。釣られるようにして帝国騎士の方へと目を向けると、
「ぐ、ぐふ……不覚……私が、背後を取られるとは……」
 帝国騎士のバイザーの隙間から赤黒いものがこぼれ出る。
 その拍子に姿勢を崩した帝国騎士の、更にその背後に、鴉の如き黒い和装の男が佇んでいた。
「……出会った咎人は知らぬうちに身を血に染める。それが「染物屋のカラス」の仕事だ。
 悪いねぇ、おいしいところを持ってっちまって。
 こういうのが、おじさんの仕事なモンでね」
 月鴉・湊(染物屋の「カラス」・f03686)は冷淡にいい放つと、仕事は済んだとばかりに、着流しの内に仕事道具を仕舞いこみつつ、背を向ける。
 一瞬の攻防。いや、防御の介在しない、必殺の一撃。
 比類なき剣術、絶対的な防御力、攻撃力を持った帝国騎士。しかし、そのほんのほんの僅かな間隙に、強力な一撃は不要。
 隙間の一閃を入れられれば、殺せる。
 それを体現しただけ、といえば簡単に聞こえるかもしれないが、これまでの壮絶な攻防を積み重ねたからこそ生じた間隙、とも言い得た。
「貴様……まだ、勝負は……ついていない」
 既に帰り支度の湊の背に向かって、血交じりの声を浴びせかけるが、湊の足取りは止まらない。
「駄賃分の仕事はした。後片付けは、他の役目だよ」
 そうして距離をとると、ようやく湊は足を止める。そして、
「お前にも望みが、願いがあったんだろう。だが悪いな。俺たちを敵にしたのが運の尽きだ。
 恨むなら俺を恨んでくれ」
 その言葉に続くかのように、プラズマ光が空気を焼く重低音が庭園の静寂を喰う。
 改めて周囲を見れば、猟兵たちは帝国騎士を囲むように、湊と同じように距離をとっていた。
 ただの一人を除いて。
 肩で息をする黒い外套、そして赤いフォースセイバー。
 只一人で満身創痍の帝国騎士に対峙するその構えは、帝国主流となったフォースセイバーの流派に酷似している。
 アシェラ・ヘリオースによる一騎打ちは、誰かが示し合わせたものではない。
 しかし、もはや致命的な一撃を貰った帝国騎士に戦う力はほとんど残されていない。
 いわばこれは、私刑といってもいい。
 だが、敵である筈の帝国騎士からすれば、いささか余分な心遣いに思えてならなかった。
 だから、湊に返答するわけではなかったが……、ただ、オブリビオンとして再び剣を振るう者として、
「恨み、そんなものではない。我らが主の粗暴な夢に付き合った、
 騎士の本懐……それだけのこと」
 血交じりのくぐもった声を、この場の誰が聞いていただろうか。
 そうして、帝国騎士はフォースセイバーを構え、最後の一撃に全存在を注ぎ込んだ。
「私の負けだな……」
「帝国のフォース剣術の宗家は私だ。あの時から研鑽を怠ったようだな」
 アシェラの言葉は刺々しいものだったが、その言葉尻には、寂しげなものがあった。
 そうかもしれない。と、足の感覚が失われてくずおれるのを感じつつ、帝国騎士は薄れていく意識の中で思う。
 いつから、あのようになってしまったのか。
 もう思い出せない。
 帝国騎士の取り落としたフォースセイバーが輝きを失う。それは、かの者の完全な死を意味していた。
 アシェラをはじめ、猟兵たちは、その最後を見届け、哀悼を捧げ、或は早々に切り替えてコアマシンの安否を確かめに、或は負傷や体調の不良を訴える。
 苦いものは残ったが、それでも幾千幾万と迫る銀河帝国の脅威のひとつは、これにより一つ潰えた事に違いは無かった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月07日


挿絵イラスト