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君が望まぬ世界

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #大天使ブラキエル #オウガ・フォーミュラ #我が友よ、君の願いは――。

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#オウガ・フォーミュラ
#我が友よ、君の願いは――。


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●誰かが望んだ、君が望まぬ世界
「我が友よ、君の願いは叶わなかった」
 艶麗な面差しに刷いたのは、失意の色。眉を殆ど動かさず、白羽の狭間で青年は息を吐く。くたびれた素振りながら、かれの動かす腕は力を秘めていた。握った剣を宙空へ消し去り、名残惜しむでもなく「君は書架へと還るがよい」と口ずさむ。かれが口にした音色は、友への餞。そして地上に住まう民にとっては、来たる恐怖の兆しでしかなく。
 地へ舞い降りたかれは光輪の輝きを、小さな街ミレーニペーチの人々へ披露する。直後、岩石の腕を移植された夥しい数の武具たちが、瞬く間にミレーニペーチの街を包囲してしまった。
 陽射しで磨かれた黄金の鎧は、傷ひとつなし。
 艶やかな宝槍は貫く感触こそ知らねど、常に鋭さを失わず。
 冷めたまなこを秘める鮮やかな兜は、沈黙を守ったまま。
 裕福ではないけれど日々を穏やかに生きるミレーニペーチの人々は、眩まんばかりの財宝を前に気を失いかけた。
 狩りのために剣や弓を手にしたことはあるが、これほどまでに光輝の象徴とも呼べる武具を目にする機会などなく。だが金銀財宝も力も特に欲しいと思わず、ミレーニペーチの民は、手を伸ばそうとはしない。
 だからこそかれは、武具の山へ告げる。
「君たちを望まぬ愚者の放逐こそ、君たちが望む世界への足がかりとなる」
 カタタン、と鎧が鳴った。槍が揺れた。兜が民を、睨んだ。
 かれに呼応した武具の大群が、竜の咆哮を思わせる声を轟かせ、民へ迫る。
 そこでかれは、もう一種類――闇で塗り潰したような呪いの樹を招いた。
「君を分かち合う世界は愚の骨頂。君は奪い合いの中心、そこに居るべき存在」
 大いなる天使の一言が、枯れ木をざわつかせ、真っ赤な果実を震わせる。
 こうして二種のオブリビオンをミレーニペーチへ案内したかれは、騒々しさを遠目にまたひとつ吐息を零す。

 人々の望んだ世界を壊そうとする光は、ふと空を仰ぎ見た。
 己の望みから遠い世界で、痛むぐらいに澄みきった青空を。

●グリモアベース
 大天使ブラキエルの出現を、ホーラ・フギト(ミレナリィドールの精霊術士・f02096)は猟兵たちへ伝えていた。
「長閑な街ミレーニペーチを襲いに来たわ。急いで向かってほしいの!」
 ブラキエルは天上界への夢破れ、ミレーニペーチへ降り立った。
 すべては天上界へと繋がる、僅かな可能性に縋るため。だが肝心の『僅かな可能性』は、猟兵にとってより一層見過ごせぬもの――人々の虐殺で。
「まずはブラキエルさんが喚び出した軍勢を蹴散らしてからね!」
 姿を例えるなら、岩の腕を備えた財宝。それらが竜を連想させる動きで襲いくる。
「ずっとお宝として飾られてたり、宝物庫にしまわれてた財宝が元みたい」
 開放感を堪能するかのように、黄金の武具たちは戦いに励む。ブラキエルの影響で強化されているが、ミレーニペーチの人たちも奮闘してくれる。ただ人々は、狩り以外の戦いに慣れていない。猟兵がフォローするなり、手本を示すなりするのが良いだろう。
「相手はミレーニペーチの人たちを貶めたいみたいだから……」
 かれらの手を借りるのがいいとホーラが告げた理由は、そこにあった。
 盛り沢山の財宝竜を倒せば、次は呪樹のオブリビオンの登場だ。
 呪いの樹――不和の林檎は、「絶対物質ブラキオン」と呼ばれる鎧で守られている。いかなる物質を貫く矛でも壊すこと侭ならぬ、守りの力だ。壊せぬなら当然、倒すには鎧の隙間を狙うしかないが、簡単にはいかないだろう。
 しかも呪いの樹に成った林檎は、心を、思考を惑わせてくる。
「食欲がなくても美味しそうに見えたり、香りだけでくらくらきちゃう」
 そして林檎の誘惑は、平穏を望む者へ不和の気配を射す。
 ――この果実を食べないと幸せになれない。だから一番に手に入れなくては。
 ――この果実がないと誰かを幸せにはできない。だから誰にも渡してはならない。
 不気味な誘惑に晒されながらの戦いとなるだろう。
 こうして幾多の壁を越えた先で、漸く大天使ブラキエルとのご対面だ。
「ブラキエルさん、二十回倒せば滅ぼすことができるの。だから頑張りましょ」
 笑顔で説明を終えたホーラは早速、転送の準備にとりかかる。
「用意ができた方から声をかけてちょうだいね。転送します!」


棟方ろか
 お世話になります。棟方ろかです。
 一章は集団戦、二章と三章がボス戦でございます。

●一章について
 プレイングボーナスは『援軍と共に戦う』ことです。
 襲撃を受けている街ミレーニペーチの住民が、その援軍となります。
 共に戦う、と一口で言っても解釈は様々ありますよね!

●二章について
 敵は『不和の林檎』なる呪いの樹。成った幸せの果実は、人心を惑わすもの。
 プレイングボーナスは『鎧の隙間を狙う』ことです。

●三章について
 紛うことなき大天使ブラキエル戦。顔がいいですね。
 プレイングボーナスは『先制攻撃に対抗する』ことです。

 それでは、プレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『武具の財宝竜』

POW   :    黄金の鎧
全身を【黄金に輝くオーラ】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    貫く宝槍
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【体】から【貫徹力の高い突進攻撃】を放つ。
WIZ   :    恐怖の兜
【恐怖の兜】に【視線】を向けた対象に、【逃げ出したくなる恐怖や嫌悪を与える呪詛】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

レザリア・アドニス
ふむ…財宝、ですか
確かに眩しいけど、人を噛みつく財宝など、ただのゴミにすぎないの
残念、お前らは要らないわ

とりあえず、街の住民よりも、猟兵のほうがあいつらの相手になるべき
死霊騎士に守られつつ、戦場全面を見渡して、苦戦している住民がいれば、
蛇竜にその人を助けさせる
敵の攻撃を受け止め、住民には後方へ下げてもらう
危険…ですから、私の死霊(この子)を、援護してくれませんか?

敵がこちらへ呪詛の視線を投げて来たら、騎士に回避しつつ防御させる
避けきれない場合は、ヴェールを深くかぶって【呪詛耐性】で抗う
私には死霊(こいつら)がいるから、恐れる必要なんかないの
むしろ、お前らを見るのも嫌だから、さっさと滅んでいい



 淡桃の唇でレザリア・アドニス(死者の花・f00096)が刷いたのは、笑みではなく「残念」の一言だった。
 見据えた景色は、目映い黄金の峰。けれど人に害を成す色だ。
 そっと胸へ手を寄せ、少女は双眸を細める。人のために飾り飾られ、時に矛となる武具たちが、大天使に焚きつけられて民を襲おうとしている。生まれつき光を持ち合わせていながら、それを良しとせず。
「要らないわ……」
 白を失ったレザリアにとって、かの輝きは確かに眩しい。けれど。
「人に噛み付く財宝は、ただのゴミにすぎないの」
 棄てられた色を、忘れられた光を、今の彼女は惜しいなどと思わない。
 それをしかと声で拒みながら死霊を喚びだした彼女は、狼狽に浸った民が一望できる場へ立つ。騎士は兜の投げた視線から彼女を守り、蛇竜は民を恐怖と嫌悪感から庇う。
 街人たちは眼を瞠った。
 繊細な見目を持つ少女の強さを、猟兵の強さを目の当たりにして立ち尽くす。
「下がっていてください……危険……ですから」
「し、しかし猟兵さんだけに負担を強いるのは」
 勇士の心を聞き、レザリアは微かに口許を緩める。
「その代わり、あの子を、援護してくれませんか……?」
 レザリアが細い指を向けた先、黄金放つ武具へと巻き付く蛇竜の姿があって。
 蛇竜と少女とを交互に見やった街の人が、喉を震わす。
「怖くはないのかい? あれだけの数、不気味な敵がいて」
 率直な質問に少女は瞬ぎ、霧のようなヴェール越しに目線を流す。
「私には……あの子たちがいますから」
 眼差しで少女が示した死霊たちは、発言者の意を汲んでか否か、踊るように敵をいなす。
 途端、兜が嗤った。顔なき財宝たちが、彼女の死霊を呑み込もうとして、嗤う。まるで己の色と輝きが至上であるかの如き態度だが、レザリアは長い睫毛を揺らすのみ。
 兜の悪意に射抜かれても、少女は姿勢正しく前を見据える。
「さっさと滅んで」
 そうして死霊と共に紡ぐのだ。
 宝物として珍重されそうな武具の群れが、色褪せるときを。

 ――お前らを見るのも、嫌だから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

卜一・アンリ
敵UCに対しては援軍の人たちを【かばう】位置取りをしつつ
呪詛を退魔刀の【呪詛耐性】【オーラ防御】を載せた【破魔】斬撃で【切断】。

いい?結局これは貴人方が普段しているただの狩り。
違うのは、今回街に現れた害獣が岩と鋼の塊だというだけ。
私たちという専門家もいるのですもの。【気合い】を見せなさい。

UC【悪魔召喚「レライエ」】の力を宿す銃弾を【クイックドロウ】【乱れ撃ち】。兜の【部位破壊】を中心に腐敗させる。

援軍の人たちは弓矢なりで敵の足止めをして頂戴。
前線に立たせる気はないけれど万が一、負傷者が出たら同じくUCの弾丸を撃ち込み再生の治癒を施すわ。
気合いを見せなさいと言ったでしょう。痛いのは我慢なさい。



 卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)の眼差し二色、混じり合うように宝物の兜を貫いて、軽やかに地へ降り立つ。砂煙さえ忘れたアンリの足取りは、素朴な剣や矢が奏でる風切音を背に、舞う。
 そしてよろめいた男性へ迫る兜を、一発の銃弾が貫く。銃口を向けたまま立つアンリの勇姿は、絢爛でなく華やかで――救われた男性のみならず、彼女の周りで手や膝を震わせていた民衆の視線を、一気に吸い寄せる。だから彼女の玉音もよく響いた。
「いい? これは貴人方が普段しているただの狩り。違うのは、害獣が皮も肉もない岩と鋼の塊というだけ」
 端的に告げた真実は、見慣れぬ存在だからと恐れる民を奮い立たせる。
「そうだ、戦い方はわからなくても、いつも通りにやれば」
 自らへ言い聞かせるような囁きがひとつ落ちれば、呼応して周りも呟き出す。そうだ、そうだと伝播していく想いの発端に佇むアンリは、眼裏が痛まんばかりの輝きへ向き直った。黄金色に輝く武具の群れから受けるはずだった眩惑を、人からも街からも遠いところへと追いやるために。
 この街よりも遠く、陸地よりも遥か彼方。そう――。
「そう、いつも通りのやり方で骸の海へ届けてあげましょう」
 彼女の言に沿ってふわりと揺れた裾が、舞台を彩った。
 人間が有する欲望の戸を叩く財宝に比べれば、きっと静かで、たおやかな色だろう。だが。
「レライエ」
 呼べばアンリの拳銃は破天荒さを弾に篭め、彼女の四囲を黄金に染めた財宝たちへ、払いのけられぬ運命を撃ち込む。
 混戦の渦中にあっても、アンリの冴えた眼は敵を、味方に生じた隙を逃さない。跳弾と腐敗に苛まれた兜の呻き声が戦場でリズムを刻む一方、彼女の照準は矢を放ったばかりの町人へ向かう兜を射抜き、破壊した。
「長い息をつくのは後。今は気合いを見せなさい。私たちという専門家もいるのです」
「は、はいッ!」
 アンリに発破をかけられた町人が、丸まりかけの背を伸ばす。
 彼女の生き様や振る舞いが、人々の指針となった瞬間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キトリ・フローエ
多くの命と引き換えに拓かれる道があったとしても
その先にきれいな世界なんて在るはずがないわ

街に被害が及ぶ前に急いで戦いの場に向かいましょう
一緒に戦う皆と動きを合わせつつ
敵の動きを引きつけるように飛び回りながら魔力を溜めて
しっかりと狙いを定め、夢幻の花吹雪で範囲攻撃を
出来るだけ多くの敵の動きを鈍らせて、街の人達が攻撃しやすいようにフォローを
恐怖の兜も見えないように花弁で覆ってしまいましょう
それでも呪詛が飛んできたなら、破魔の光纏う花弁のオーラで弾き返すわ
姿形は違うけれど、狩りの獲物と同じよ!
倒さなければこっちがやられてしまうだけと街の人達を鼓舞
もちろん、あなた達の誰ひとりだって傷つけさせやしないわ



 穏やかな森に似ていると、キトリ・フローエ(星導・f02354)は感じた。
 見ず知らずの人々でありながらそう思い到ったのは、その勇姿を眼にしたからだ。平穏な日常を守ろうと、狩りに使う剣や弓矢を手にして立つ様。混じり気なき二粒の菫青石が捉えた『生き様』は、肌を震わせた。自分たちの居場所を守るために挑む人たち――それこそきれいな世界なのだと、総身で味わう。だから。
(……在るはずないわ)
 無数の黄金を招いた大天使の選択が、キトリには信じられない。
(多くの命と引き換えに道が拓かれたとしても、その先にきれいな世界なんて)
 応戦する民衆の周りを翔けた彼女が、花蔦の絡んだ杖を掲げる。
「花よ、今こそ目覚めのとき!」
 瑞々しい花吹雪で、邪気に沈む兜らを覆った。
 舞い踊る花弁は、人心を尊重しない武具よりも鮮烈な光を起こす。思わず、街の人らが見惚れるぐらいに。
 夢幻の花を模ったキトリの魔力が一帯に満ちれば、佳景の中でかれらも意欲が沸き起こるのを感じた。きらびやかな兜の群れが、戦く眼差しでかれらを射抜こうとも。たとえ、かれらの足が竦み、武器を握る指先に力が募らずとも。
「もうわかったでしょう? 姿形は違うけれど、狩りの獲物と同じよ!」
 キトリの一声が、かれらの恐れに寄り添う。
 キトリの花弁が、かれらを後押しする。
「ここで倒さないと、こっちがやられてしまうだけよ」
 兜の放つ視線も、財宝たちが織り成す竜を思わせる荒々しさも、少女の紡ぐ破魔が咲いて逸らす。まるでこの場が、キトリの生み出した花畑であったかのように。彼女の想う森を模したかのように。
 だからだろうか。
 フェアリーたる彼女は身体こそ小さいながらも、町人たちにとって大きく思えた。
「安心して、誰ひとりだって傷つけさせやしないわ」
 そしてキトリの言の葉もまた、目映い花嵐の狭間で風光る。
 鈍った兜の蠢きを前に、少女は細腕を下ろすことを知らない。
 遊ばせた花たちが兜の悍ましさを覆い隠し、兜から覗く双眸は、いつしか人々へ届き難くなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エルザ・メレディウス
アドリブ◎ NPCとのからみ◎

戦いとはありとあらゆる技術で出来上がったアーツ。
あなた達の狩りの能力は間違いなくこの戦いで勝つために必要な要素なのですから
どうかお力をお貸しくださいね

【戦闘】
UCを発動。まずは敵を【偵察】、相手の状況を確認します。【地形の利用】を上手く活かして、住民の皆様には所定の位置に落とし穴や罠を巧妙にしかけて貰います。 その後、UCの能力で敵を上手く【挑発】して【陽動】。  罠の場所へと相手を誘い出します

敵が罠にかかれば、こちらのもの
みなさま、得意の狩りの時間よ

【集団戦術】を気を付けて、住民の皆様が上手く連携して戦えるように
私も【槍投げ】で相手へ攻撃。皆様に先立って戦います



 白皙の頬に熱を乗せて、エルザ・メレディウス(執政官・f19492)は息を吐く。呼気に含んだ音色は、メレディノ騎士団の陽動部隊を呼ぶもの。出番よ、と宙空へ語りかければ専門部隊の姿がこの世に降り立つ。すると蠢く兜たちが、恐怖で溺れさせるべく陽動部隊を付け狙う。
 その光景も意識したままエルザが民を見やれば、街の各所にある入口を守り固めるかれらの姿を、勇ましいと感じる。居場所をを守ろうとする人々の意思を掬い、エルザの唇が紡いだのは罠を仕掛ける位置。生きる日々に必要な獣を狩るのに慣れた人々は、彼女からのお願いもすぐに理解し、動けていた。
 しかしまだ戦い方の定まらぬ一行もいる。だからエルザは足を止めない。
「どうか、お力をお貸しくださいね」
 人を纏める手腕に長けた彼女は、温かな笑みと声をもって呼ぶ。
「で、でも……私たちでは何をどうしたらいいのか」
 そうすれば悩む町人から返るのは、迷いの種。元さえ判れば芽吹き方を教えられるから、エルザは眦を和らげ、こくりと首肯をひとつ。
「狩りを致しましょう。あなたたちの狩りの能力は、この戦いの切り札となります」
 思わぬ単語だったのだろう。人々が瞬ぐ。
 ふふ、とエルザが吐息で笑えば、そこへ職務を全うした陽動部隊が合流する。お疲れ様と労うエルザに、愛らしい天使たちもふにゃりと頬を緩めるばかり。手際の良さに一驚する人々を振り返り、エルザは眼差しで戦場の一角を示す。
 つられた人々は、そこで目の当たりにした。
 同じ街の出身者たちが築いた簡素な縄の罠に絡まり、動きが鈍った兜の一群を。
「機運は熟しました。流れはもう、こちらのもの」
 細い片腕を掲げ、エルザが巨槍ハスタの輝きを民の眼に焼き付けさせる。槍だけではない。街を背に前線へ立った彼女の輪郭も、光を浴びて生じた影も――宝物たる敵より目映く、雲集を照らし導いてくれるもの。そう信じさせる力が、彼女にはあった。
「みなさま、得意の狩りの時間よ」
 エルザの放った槍が空を裂く。
 それは、悩む人々が揚々と動き出すための合図となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
望むものが手に入らなかったと言って駄々をこね
八つ当たりをする幼稚な愚者
大天使とやらはまさにそれですね
なんとも矮小で浅薄なフォーミュラもいたものです、ふふ

さて、大天使を片付ける前にそのしもべどもの掃討と行きましょう
私の力は影を使うものですが
相手が輝く宝物ならその影が打ち消されてしまうかもしれません
街の皆さん、燭台や松明、無数の篝火で宝物に負けぬだけの光を……
私の影を濃くするための光を与えてください
あとは私が引き受けましょう

高速の敵の動きを「第六感」で「見切り」、「残像」で幻惑しつつ回避
すれ違いざまに影を発動し相手を捉えましょう
一瞬でもわが影に交われば最後です
無限の虚無の中へ沈みなさい



 黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)が舐めるのは現実。
 かの大天使なる男が舐めるのは駄々。その差は歴然としていて、魅夜にとっては口端をもたげる味にしかならない。
(望むものが手に入らないからと言って、地上に住む人へ八つ当たりするなんて)
 幼稚だと思えた。揺らいだ瞳に当の天使はまだ映らぬが、しかし。
(なんとも矮小で浅薄なフォーミュラもいたものです、ふふ)
 吐息で微笑んだ彼女が、今その眼で知っているのは――影の味も知らぬしもべども。
 うっそりと眦を和らげた魅夜は、戦いあぐねている街の人へ声をかける。
「皆さん、皆さんの光を私に与えてください」
「光? どういうことなの?」
 首を傾いだ町人へ、魅夜は微笑んでみせた。
「私の力は、影を使うものです。皆さんの燭台、篝火、松明……そうした無数の輝きがあれば……」
 ゆっくり瞬きながら話せば、人々が目を瞠る。
「宝物に負けぬ光があれば、私の影は濃くなります」
 話を紡ぎながらも、魅夜の指は影を編む。その影を目の当たりにした民は、魅夜の願いを漸く理解した。
「……わかったわ、あなたの影で、どうかあいつらを」
「もちろんです」
 町人からの言を受け、魅夜は敵陣へと向き直る。すべてを溶かさんばかりの輝きから、宝槍の雨が降った。魅夜は飛び交う槍をいなし、鋭利な感覚をより研ぎ澄ます。
 甘いですね、と含んだ魅夜の吐息すら残像となって、矛を避けた。身躱す様を拝み、彼女の元へ火を寄せ集めた人々は、踊っているようだと感嘆の息を零す。そして。
「猟兵さん! 私たちがめいっぱい光らせるから!」
 魅夜の背にかかる、街からの声援。
 ごうと唸った松明を振り上げ、篝火を強め、民衆の作り出した灯火は威光となって、魅夜の影を支えた。影が深まるほどに増す、敵の末期。それを贈るため魅夜は影を走らせる。
「ありがとうございます。では、掃討といきましょう」
 彼女の影に触れたが最後。眩しい悪意で場を満たしていた穂先も柄も、闇と交わり、溶け合い――やがて溺れゆく。

 さあ、沈みなさい。無限の虚無の中へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レッテ・メルヴェイユ
お宝、です。

お宝が襲いかかって来ます。

皆さん協力をして戦いましょう。
【ガジェットショータイム】でガジェットを召喚します。
私の作った自慢のガジェットです。

皆と協力をします。
ミレーニペーチの人々は戦い慣れをしていないみたいですから
私がお手本を見せます。

兄のように強くありませんが戦いの心得はあります。
危なくなったら逃げることを優先してください。

敵陣に突っ込むだけが戦いではありません。
私も戦い慣れはしていないので様子を見ながら攻撃をしかけます。

郵便屋さんもたまには頑張るのです。
ミレーニペーチのみなさんも頑張りましょう。
鼓舞もします。



(お宝、です。間違いなくお宝です)
 レッテ・メルヴェイユ(ねこねこ印の郵便屋さん・f33284)が瞬ぐ。数多の郵便物を届けてきた少女でも目にする機会が無かった異観だ。豪邸の壁際に飾られるような見目をしていながら、敵は殺意を隠しきれていない。
 意識せず握りしめた拳はそんな彼女の決意を宿し、じんわり熱を帯びていた。
「猟兵さん……その……自分たちで大丈夫でしょうか」
 ふと後背へ投げられた問いが、レッテの頬をふくりともたげさせる。
「大丈夫に決まってます! 協力して頑張りましょう」
 震えを声音にも手にも乗せず、彼女は答えた。
 ミレーニペーチの民が戦いに不慣れならば、自分が前線で背筋を伸ばし、手本を見せねばとレッテは鼻を鳴らす。兄のように強くはないけれど、それでも――奇怪な音を鏤めて飛翔する光の槍を、彼女は見過ごせなかった。
「こんにちは、ねこねこ印の郵便屋をよろしくお願いします!」
 朗々と挨拶をしてレッテが招いたのはガジェット。
 郵便ポスト型ガジェットは投函口をこれでもかと開け、迫り来る鋭利な輝きを吸い込んでいく。届けるのが仕事でも、これを街へ届けるわけにはいかない。だから彼女はポストが満腹になるまで攻撃を引き受けた。
(敵陣に突っ込むだけが、戦いではありません)
 戦いの心得ひとつ、胸中で繰り返しながら。
 鮮やかに防ぐ様子を目撃して、雲集はざわめきながらも勇気をもらう。レッテに続けとばかりに得物を掲げたかれらは、ポストが吸いきれずに弱った槍へと仕掛けていく。これまでの仲間たちの分も合わせて、一本また一本と着実に数は減った。
 そして人々の威勢はレッテにも力を分け与える。槍が降ろうと雨が降ろうと変わらぬ明るさで、突進してきた矛の群れをポスト型ガジェットのごはんに換える。すると槍はいつしか、軍勢から影も形もなくなっていて。
「や、やった、やりました!?」
 陽をめいっぱい浴びたようなレッテの双眸が、その光景を映し出す。
「ではでは、今後ともご贔屓に」
 彼女はいつもの調子で帽子を正し、敵味方問わず挨拶を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リインルイン・ミュール
虐殺なんて許すわけにはいきません
順番に対処していきまショウ!


さて、全体で見れば火力は充分とみました
であればワタシは後方支援をしましょうかネ

UCで紡ぐのは抗い戦う生命の歌。街を、そこに住む大切なものを護る為、恐れに打ち勝ち戦場に立つ勇気の歌です
治療と同時に鼓舞の効果も出れば、敵のUC対策にもなる筈
住民でシンフォニアの方がお手隙でしたら、同じように歌って頂けると助かります
歌詞は違っても大丈夫、この場に立つ者の想いが一つだと伝える事が大事なのデス!

敵に接近されたら歌いつつ対応
武器での攻撃には念動力で軌道を逸らし、回避が難しければ武器受けや受け流し
隙を見て、籠手や鈍器に変えた黒剣で殴って衝撃を与えマス



 呼集に応じたミレーニペーチの人々と猟兵たちの奮闘は、リインルイン・ミュール(紡黒のケモノ・f03536)もしっかり見届けてきた。猟兵と人々の心が重なれば、黄金よりも眩しい力が、恐怖をも凌ぐ感情が生まれる。それを感じたからこそ、彼女も前線からさほど離れず構えていた。街の人たちへ、歌での援護を願いながら。
「さて、そろそろまた歌いまショウか。準備はよろしいですね?」
 戦局を都度確認していた彼女が、冴えた面の下で紡ぐのは――純一なる生命の音。脅威に抗い、そこに住む大切なものを護ろうと立ち上がった者たちへ、癒しと共に勇気を与える歌だ。リインルインの秘める想念を織り込んだ歌は、今という時間を生きる人々のため、戦場へと響き渡る。
 自分たちの敵は恐怖。だから打ち勝てばいつもの日常を掴み得るのだと、歌で人々へ知らせた。
 こうしてリインルインが鼓舞し続けたおかげで、疲弊から項垂れかけていた住民の足にも熱が篭る。兜がそんなかれらをねめつけても、覚えた熱や勝勢を拭い去ることは叶わない。沸き立つ民を崩すほどの威が、オブリビオンから失われていく。
「虐殺なんて許すわけにはいきません。ワタシたちの想いはひとつデス!」
「「おおおおッ!!!」」
 リインルインが高らかに宣言すると、一致団結の証たる歓声が響く。
 負の感情からの支配に抵抗し、顔を上げて立ち向かう人たちはリインルインから見ても頼もしい。
「焦らず順番に対処していきまショウ!」
 街も驚かんばかりに奮い立ったかれらの在り方を、リインルインは糧にした。そうして充填されていく熱を、歌に換えて解き放てば、陽を浴びたような心持ちだ。ひなたぼっこと称するのが正しいのかはリインルインにもわからない。だが覚えた温もりは間違いなく彼女の尾を揺らし、声音を漲らせてくれて。
(とても気分が良いデス! 皆さんと歌えるひとときは楽しいですね)
 歌詞は異なれど想いは一緒。だからだろう。
 誇らしげな彼女の歌は、いつまでも街の人たちの背を後押しし、猟兵の仲間たちの勢いを助けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
いくらピカピカのお宝でもこんな怪しげじゃあネェ
ま、オレにとってはご馳走の山な訳ダケド

ふふ、狩りは得意なのヨ
真っ向からじゃ住民の手に余るなら、罠を張るのがイイわネ
攻撃が住民に行かぬようオーラ防御広げ背に庇い、敵の動き見切り進路を探るわ
ソコへマヒ毒のせた【黒嵐】の影忍ばせ
近付いたトコで一気に風を巻き起こしましょ
封じれば呪詛も効かナイし、くーちゃん達に兜を覆ってもらうのもイイかも
その隙に遠方から弓で狙ってもらったり
必要ならば態勢整えたりも出来そうカシラ

オレは引っ掛け損ねたり抜け出した敵を狙って距離詰め、「氷泪」の雷を撃ち込もうか
2回攻撃で傷口抉って紫電で喰らいつきしっかり生命も頂戴しとかないとねぇ



 どう爆ぜようと変わらぬ五彩を、纏った波動に塗りたくる。
 恐怖に色があるならば、きっと寒色だろう。射抜いた者の顔を青褪めさせる、凍てついた色だ。しかしかれらの身を成しているのは、それから縁遠い金や宝石を連想させる艶やかなもの。紫雲を滑らせた兜もまた同じ。目が痛むぐらいに輝いていて、ピカピカのお宝なのはいいケドねぇ、とコノハ・ライゼ(空々・f03130)は呟いた。
 吐息混じりの囁きを、兜は聞かなかったのだろう。前へと踊り出たコノハをしかと狙い定め、かれらは眼差しを重ねていく。否、街の人らへ向かおうとした視線をコノハが吸い寄せ続けた。くるりと向きを直す兜があれば、目線の先へ飛び込む。民へ迫ろうとしたなら進路を遮る。彩色した波動でもって、禍々しい要素を掻き消しつつ。
 ふふ、とやがてコノハは吐息で笑った。
(狩りは得意なのヨ。こういう相手は尚更ネ)
 浮き立つ心が手足にも乗ったのだろうか。コノハの忍ばせた影は、闇で閉ざされた兜の両目よりも深く、濃く――どことなく楽しげに過去の骸を撫でていく。きっとかれらは、大天使から授かった加護を『触られた』とも気付かない。コノハはそれを憐れにも思わなかった。
 継ぎ接ぎだらけの怪しさで作られた兜は、美しい見た目をしながらもやはりオブリビオン。だからこそ。
「ま、オレにとってはご馳走の山な訳ダケド」
 紡いだ言がかれらへ届く頃には、忍び寄った影より出ずる管狐が旋風を起こしていた。
 黒き嵐が吹き荒れ、ひりつく感覚に苛まれた兜をくるむ。視線ごと動きを奪ってしまえば、あとは。
 コノハがひらりと片腕を静かに掲げると、待機していた街の人々が矢を番える。鏃が後方から天を翔け、次から次へと兜を貫いた。
 恐れる時間を作らせなければ町人たちだって戦えると信じ、コノハは矢雨の狭間を駆け抜けていく。民の矢を退けた個体へ、うすいうすいアオを届けるために。
「コッチが、オレの色」
 管狐が嬉々として跳ねる傍で、その眼差しが黄金の兜を捉える。
 捉えられたが最後、眩しいかの色はあおに溶けて光も命も失った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

英比良・與儀
【虹誓】

めんどくさそーな敵だなァ
ああ、そうだな。お前は守護者だ
今日のしっかりやってくれよ
……おい、張り切りすぎてドジすんなよ

武具か
ヒメの炎と俺の水で鍛えたもんはいいもんになる
が、お前の言うとおり、適度ならだな
過剰にやってさっさと脆くしてやるか

ヒメの炎受けたやつめがけて水を放つ
いくらだって水かけて冷やしてやるよ
なんかこう、消火活動してるみてェな気持ちになるな…

脆くなるなら俺も前にでて攻撃してもいいがヒメが俺を守りにくくなるだろう
だから周囲に視線を巡らせ、助けたほうがよさそうな街の人がいればヒメを上手に動かす指示だして、かばえる位置に

そりゃ、いい仕事したらちゃんと褒めてやるよ
けど、調子のんなよ


姫城・京杜
【虹誓】

俺は守護者、守る事が矜持
だから虐殺なんてさせねェ
街の人は勿論、與儀の事は絶対守る!
ああ、俺に任せとけ!(どや

すげーキラキラしてるな
武具は適温で熱して冷やせば硬くなるっていうけど
過度だと逆に脆くなるからな
そうだろ?な、與儀!(嬉し気
神の炎を敵に見舞うぞ!

街の人には、水と炎で脆くなった敵を弓とかで射て貰って
助かる!とか、やったな!とか声掛けしつつ
戦闘力増した敵から倒してく

敵の攻撃は、絶対皆には通さねェ
炎や鋼糸で巧みに敵の動きを阻害し庇う
俺は器用だからな!(どや
與儀の声聞きつつ立ち回るけど
與儀の事は特に、強引に身を挺してでも絶対守る

ちゃんといい仕事したら、後で褒めてくれよな、與儀!(張り切り



「めんどくさそーな敵だなァ」
 端正な見目から想像つかぬ英比良・與儀(ラディカロジカ・f16671)の第一声は、此度の敵がいかに煩瑣な存在かを世に知らしめる。片眉を上げて紡いだ彼に、姫城・京杜(紅い焔神・f17071)も首肯しながら敵をじっと見据えた。あれが民に害を為そうとしている存在なのだと、己が眸をもって認識するために。
「虐殺なんてさせねェ。俺は……」
 噛み締めた音が、戦場の熱気に混じる。
 いつになく焦熱を秘めた様子の京杜へ、與儀は溜息を吐く素振りで答えた。
「ああ、そうだな。お前は守護者だ」
 言わずとも知っているとばかりに、與儀は無雑そのものな京杜の想いをしかと肯定し、片腕に水の気を帯びる。
 そして待ちあぐねた鎧たちを眼差しで制し、どうしたものかと唸る彼へ、朗らかな声がかかった。
「武具は適温で熱して冷やせば硬くなる、っていうけど……」
 思ったままを口にした京杜へ、與儀もゆっくり顎を引く。
「ヒメの炎と俺の水で鍛えたもんは、いいもんになる。お前の言うとおり、適度なら」
 語尾を強調した花浅葱の双眸が、ここぞとばかりにいたずらめいた。京杜が言おうとした続きを理解しての眼差しだ。だからこそ京杜は。
「! だろ? やろう與儀!」
 弾んだ返事は、どこまでも跳んでいってしまいそうなほどで。
 間髪入れず、守ることこそ矜持とする彼の宿意に――赤が応えた。
 ひらり一葉が燃え盛る。主の意に沿い燃ゆる色は、赤く赤く紅葉のごとく、目映さで痛い景色を染めていく。
 矢継ぎ早、與儀の青が彼の色彩を一変させた。伸ばした指先が示す先、透明ながらも青々とした水が鎧を叩く。熱された直後に感じた青の衝撃は重たく、鎧もたじろいだ。しかし二柱の神の手で変わりゆく世界に、かの財宝が適応できるはずもない。
「しっかりやってくれよ」
 多くを語らず與儀が伝えれば。
「ああ、俺に任せとけ!」
 不敵さをこれでもかと顔に盛って言い放った京杜に気付き、おい、と與儀は声をかける。
「張り切りすぎてドジすんなよ」
 終いに付け加えた言の葉も、互いの力で生んだ佳景へと消えていく。
 黄金をより輝かせる赤、赤に被さる青。その繰り返しが、蠢く鎧を容赦なく弱らせた。やまぬ赤を鎮めようと重ねる己の仕種に、いつしか與儀の胸裏に浮かんだのは。
(なんかこう、消火活動してるみてェな気持ちになるな……)
 ちょっと複雑な、もどかしい心。
 けれど気持ちに惑わされはせず、敵に顔がなくても與儀には分かった。はじめと違い、愁然とした黄金色が鎧を染め上げていることに。
 まごつく鎧の群れを前にふたりの視線が重なり、そして。
「よし、今だ! 一斉射撃!」
 浮き立つ心を微塵も隠さず、京杜が叫ぶ。すると後方でふたりの活躍を拝んでいた街の人々が、矢を番え、強度を損なった鎧の群れへ雨を降らせる。矢雨は、火と水に弄ばれた財宝たちへヒビを入れ、貫き、砕いていく。
「やったな! 仕留めたぞ!」
 京杜が諸手をあげて成果を称えれば、集まった人々から歓声が湧く。與儀も連ねて民の前に立ち、降り注ぐ黄金の残滓から歓声ごとかれらを護った。そんなふたりをまるで戦友のように、仲間のように喜ぶ民衆の姿は――他でもない京杜の気さくさと、與儀の頼もしさが引き出したもの。
 二人分の手があれば、多くの民を守れる。そうして動いた彼らを、街の人たちも自然と慕いつつある。そのときだ。
「與儀ッ!」
 呼び声がこびりつく。狭間を縫って與儀に迫る一閃はしかし、彼の柔肌を貫くことなく紅の葉に――京杜に呑まれた。
「っ痛……後で褒めてくれよな、與儀!」
 黄金の残滓を払いのけながら告げた彼に、與儀の唇は常と変わらぬ調子を紡ぐ。
 今し方、京杜へ無体を働いた鎧を水で戒めて。
「そりゃ、いい仕事したらいくらでも褒めてやるよ」
 一拍、考える間を置いて目線を上へ外した與儀は、すぐに次の句を結わえる。
「けど、調子のんなよ」
 素気ないながらも彼の音色は柔く、京杜はふにゃりと咲った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
つまり地に足付けて生きてるって事だろ?
いい事じゃん
いらないもん押し付けんのは良くねぇぜ

龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波撒き散らしつつ残像纏いダッシュで手近な敵に接敵しグラップル
拳で殴り他の敵に吹き飛ばし
纏めて廻し蹴りでぶっ壊す

狩りしかした事ないって言うけど
狩りなら慣れてんだろ?
追い込んでくれ
纏めて倒せる
住民に頼み
足払いでなぎ払い

開放感に満ちすぎて
動きが見え見えだな
攻撃見切り

武具なら継ぎ目があるはず
何体か戦ってりゃ大体分かるしな
戦闘知識に暗殺用い
弱いとこ狙って一気に叩く
戦闘力なんか増やさせねぇ
一気に倒せば生命力も吸収出来ねぇだろ
拳の乱れ撃ち

穏やかな街に武具は必要ない
消えろ
UC



 街で生きる人々の熱気を傍に感じながらも、陽向・理玖(夏疾風・f22773)は戦場を満たす悪意の濃さに眉根を寄せた。迫り来る鎧があまりにも眩しい。果てで滲んだ朝陽を思い起こして、理玖は龍珠を弾く。ちらついた虹色ごと握りしめ、龍の横顔を模したドライバーへ装着すれば。
「変身ッ!!」
 構えと掛け声を合図に、少年は力を得た。
 陽の恵みを受けた髪も、あの夏空を閉じ込めた瞳も、総て装甲でくるんだ彼の戦闘スタイル。溢れる気から判る力強さに、町人たちが歓声をあげる。
 背にかかる数々の声を知りつつ、理玖は地を蹴った。砂塵をも連れて駆けた彼は、残像の動きすら敵へ掴ませない。代わりに波打つ衝撃で一団を揺らがせ、均衡を保てなかった鎧へ飛び込む。かの者が理玖を認識する頃には時既に遅く、拳固で鎧の輝きごとかち割る。
「いらないもん押し付けんのは、良くねぇぜ」
 殴り飛ばしてから、そう挨拶した。
「地に足付けて生きてるって、いいことじゃん。無粋な敵だな」
 鎧が理玖へ岩めいた腕を伸ばそうものなら、間髪入れず疾風怒涛の廻し蹴りで望みを壊す。
 そして理玖は僅かに人々を振り返った。
「やりやすいように獲物を追い込んでくれ!」
「獲物……」
 耳に馴染む響きは、未だ戸惑っていた人の心へ届く。
「慣れてんだろ、狩り。追い込んでくれれば纏めて倒せるぜ」
「ああ、わかった! 任せてくれ青年!」
 返事を聞きとめて理玖が首肯する。狩りを日常としているかれらの行動は早く、目映い武具をもって迫ろうとした敵は判断が遅れた。だから理玖は、自身の向けた願いを果たした民衆の声を零さず掬う。
「今だ兄ちゃん!」
「任せろ」
 呼びかけられるや、理玖の踵が鎧の継ぎ目へ入る。続けて勢いを殺さず彼の脚力が宝物たる鎧飾りを破砕した。力を高めさせる余裕など与えまいと、鋭く睨みつけながら。
「眠気覚ましにもならねぇ。……消えろ」
 散りゆく欠片を連れ去るように、風が吹く。
 理玖の言を現実にするその疾風は、安穏な日々を送る街には必要のない鎧たちへ、輝きの死を与えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『不和の林檎』

POW   :    疑似顕現:ラードーン
召喚したレベル×1体の【蛇竜】に【百の頭と無数の口】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
SPD   :    堕ちた犠牲者
【弓矢や剣、槍や斧等】で武装した【果実に魅了され死んでいった冒険者達】の幽霊をレベル×5体乗せた【飛竜】を召喚する。
WIZ   :    誘惑の光
【その果実】から【催眠光】を放ち、【生じた果実に対する渇望と独占欲】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠水貝・雁之助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 戦いとは縁のなかった街ミレーニペーチから、山脈のごとき財宝は消え去った。猟兵たちの手で終わりを刻まれた武具の残り香を越え、次に目にしたのは何処までも黒く塗り潰された樹木。
 そして真闇だからこそ狂気となる、毒々しい果実の赤が出迎えた。
 かの者こそ正しく、大天使ブラキエルが呼んだもうひとつのオブリビオン。
 呪いの樹を守護するのは、天使の加護たる絶対物質ブラキオン――破壊できない現実を猟兵たちへ植え付ける鎧だ。極限まで薄く揺らめくそれは、確かに樹を覆っているのに判断が難しい。
 ゆえに、倒すには鎧の『隙間』を狙うしかなくとも、簡単にはいかない。

 ――この果実を食べないと、幸せになれない。

 声とも言葉とも例えがたい何かが、樹木から訴えかけて来る。
 よくよく辿れば、感情を持たぬ者も、意志を強く持つ者も、ありとあらゆる生者を惑わせる林檎の仕業と知れる。知ったのはいいが、掻き消そうにも送られてくる想念は止まない。
 日常を幸せと呼ぶのなら、その日常を取り戻したいと願うようになるだろう。
 戦いを幸せと呼ぶのなら、刺激に恵まれた時間を過ごしたくて林檎を欲するのかもしれない。

 ――この果実がないと、誰かを幸せにはできない。

 甘酸っぱい香が広がっていく。
 嗅覚で感じているようで、そうではない。感覚へ直接届いたかのような不気味さだ。黒い枝から落下しない林檎は、休まず猟兵たちへ語りかける。呼びかける。誘い続ける。願いが何であれ、無意識に林檎を求めたくなる。林檎を独占したくなる。
 なぜなら大天使ブラキエルは、呪いの木へこう告げた。

「君を分かち合う世界は愚の骨頂。君は奪い合いの中心、そこに居るべき存在」

 だからこそ名に違わぬ『不和の林檎』は、猟兵の心へ不和を射し、そして襲う。
 底なしの樹洞だけが、ただただ猟兵を見つめていた。
卜一・アンリ
【ダッシュ】で接敵、林檎の誘惑は【狂気耐性】【気合い】で抵抗。

煩い。煩いわ。
オウガに追い回され、影朧に家族関係壊されて。
うんざりなのよ、オブリビオンに人生振り回されるのは。
貴方たちがいる時点で私は幸せじゃないの。
手に取る気もない、手に取らせる気もない。
粉微塵に砕いてやるわ……!

UC【黄金の雨のアリス】の【クイックドロウ】【乱れ撃ち】で『鎧の隙間を狙う』。
【弾幕】を当てて鎧の隙間の位置を【情報収集】、把握次第そこを【スナイパー】。
敵UCも同じくUCで迎撃しつつ【逃げ足】で樹木の傍に飛び込み、他ならぬ【敵を盾にする】。御自慢の絶対物質、利用させてもらうわ。

煩い。あぁ煩い!
そんな果実、要らないわよ!



 煩い。
 卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)は唇をきゅっと引き結ぶ。
 そうしないと、色褪せた唇を噛んでしまいそうだから。
 煩いわ。
 卜一・アンリは走り続ける。
 そうしないと、純黒からの誘いに熱が弾けてしまいそうだから。
 内側から掻きむしるそれは、萎むどころか沸々と起こる感情だった。
 警鐘のごとく鳴り続けるそれを散らすように、アンリは気力を振り絞って地を蹴った。悪魔を宿した拳銃にまで熱は達し、煩い煩いと彼女自身も喉の底で繰り返す。果実に堕ちて死した冒険者たちが手を伸ばし、かれらを連れた飛竜が吠えようと、銃爪に迷いなど生じない。
 死者の無念さが引きずり込もうとしてくるからこそ、彼女は。
「粉微塵に砕いてやるわ……!」
 狙い定めぬ銃口からは、渦巻く情を模ったかのような黄金が乱射された。
 むやみな攻撃ではない。すべては目に映る表面ではなく潜む闇を――撃ち抜く場所を見定めるべく。
「うんざりなのよッ」
 銃弾を浴びた敵めがけ、アンリが言い放つ。
「貴方たちがいる時点で、幸せじゃないの。幸せなんて持てないの」
 めらめらと二色に燃える眼差しは、それを恐れた樹の影をより濃くさせる。
 幸せになれない、と樹木が繰り返そうと彼女は俯かなかった。
「だから手に取る気なんてない。誰かの手へ渡らせる気もないわ」
 それは果実が欲しいからではなく、オブリビオンによって人生を壊されぬために。
 オウガという名であろうと影朧という名であろうと、変わりない。アンリの知るオブリビオンは人々の今を、未来を奪う。身をもって知ったからこそ彼女は、震える手でまた――銃爪を引く。
 刹那、飛竜が纏う鱗の裏へ、虜囚が纏う幻惑の狭間へ、そして大樹が纏う加護の継ぎ目へ、弾は突き進んだ。
「そんな果実、いらないわよ!」
 叫び声は、願いよりも明瞭にアンリの生き様を表す。
 そうして一瞬を彩るアリス・ザ・レインメーカー。
 黄金の雨が降り注ぎ、狂気としか呼べぬ絵めいた光景を、画板ごと切り裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レザリア・アドニス
美味しそうな、林檎…
よくわからないけど、これが欲しい、わ
そうですね、こいつを倒せれば、林檎を手に入れられるよね
なら、何躊躇ってるの?

これと言った願いは特にないけど、とにかく欲しい
ああ、鎧がすごく邪魔です
両手を広げて白花の嵐を呼び出す
さて質問、隙間さえ有れば、どんなに狭くても入れるのは何ですか?
風で毒花の刃を鎧の隙間に送り込んで、樹の身を削る
たとえ私が動けなくても、この嵐は止まらないのよ

…ん?奪い合わないかって…?
そんなことは後にしても構わないんじゃないか
先にお前を倒して林檎を確保する方がいいと思いますよ
さあ、その美味しそうな林檎を差し出しなさい
かんなくずになりたくなければ…ね



 大樹の影の輪郭を目で辿って、少女はひとつ息を落とした。
 理由なぞ明らかにされずとも、美味しそう、と感じる本能は拭えない。わからないけど欲しい。
「近くで見ると、もっと美味しそう……」
 言葉にしてみれば一目瞭然。喉が渇きそうだった。揺らめく果実は、瑞々しく少女を誘う。
 こくりと喉を鳴らして、少女は指先で宙を掻く。林檎へ触れるより先に、木の持つ色彩を確かめるように。
 すると影へ沈んだ樹が応える。
 ――幸せは、ここにある。この果実にこそ、幸福の甘い甘い汁が眠る。
 声がどこから響くのかもあやふやだ。もしかしたら声ではなく、少女の思考へ直接意思を伝えているのかもしれない。そう思えるほど声とも判断つかぬ歪んだ音で、林檎を食べるよう勧めてくる。幸せを誰にでも平等に分け与えるかのごとく、善意を示した様相だ。
 しかし少女は長い睫毛を揺らして瞬き、善意という名の鎧の向こう側を見つめた。
「欲しい、わ。欲しいから……」
 先ほど宙を掻いたばかりの指で、白を呼ぶ。
「嗚呼、鎧がすごく……邪魔です」
 そうして舞い散ったのは、淡く煌めく鈴蘭の花。白雪にも見紛う輝きをちらつかせて、無数の花弁は少女と樹の周りで踊り出す。
「さて、質問」
 言いながら白花を招いたばかりの指を、そっと口許へ寄せる。
「隙間さえ有れば、どんなに狭くても入れるのは何ですか?」
 答えは返らない。それに晒され続けているはずのかの者では、当たり前すぎて気付かないものだ。だから『風』に運ばれた花が、禍々しい樹木すら削り取るよう、するりするりと鎧の継ぎ目へ滑り込んでいく。
「どうして奪い合わないのか、って……?」
 やまぬ花嵐の中、ん、と少女はまたひとつ吐息に近い声を零して。
「お前を倒して確保する方がいいと思いますよ。さあ、林檎を差し出しなさい」
 薄桃色の唇を撫でていた手は、今度こそ真っ赤な果実へ向ける。
「かんなくずになりたくなければ……ね」
 少女、レザリア・アドニス(死者の花・f00096)に幻惑の色は――届かない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
私の幸せも私の愛する人の幸せも
答えは同じ、私が私であることです
そこにあなたの介在する余地はありません、つまらぬ妄念を弄ぶ腐った果実よ
つまりあなたは己自身の味そのもので人を誘う自信がないということを
自ら認めたも同じですね、ふふ

この悪口は私の本心であると同時に呪詛を伴う精神攻撃
意図は私自身の呪詛によって相手の呪詛を中和すること
さらに狂気耐性と呪詛耐性によって誘惑を跳ねのけます

敵軍に対して鎖を舞わせ範囲攻撃の衝撃波を放ち迎撃
同時に樹へその衝撃波の届いた結果を第六感と合わせ見切ります
樹が衝撃波を無効化している場所と、僅かに揺れた場所をね
ええ、つまりそこが「鎧の隙間」
見つけたら時を超えた一撃でとどめです



 ゆらりゆらりとかつての犠牲者たちが、黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)へ手を伸ばす。まるで黄泉へと誘うかのようだが、魅夜は戸惑いを欠片も浮かべない。
 彼女のまなこが捉え続けるのは、黒に沈んだ大樹と、そこに吊り下がった真っ赤な果実。何故なら、かの者が問い掛けてきた言葉は――果実を得なければ、幸せになれないとする誘惑は、魅夜にとって黙したままではいられないものだったから。
 魅了され、死した者たちが織り成す蠢きのそばで、彼女は凛と立つ。ああ、うう、と呻く霊魂たちにも目線を向けずに。
「私の幸せも、私の愛する人の幸せも答は同じ」
 一歩、また一歩と踏み出しながら、呪われた樹の放つ惑わしへ返す。
「私が私であることに他なりません」
 思案するように一拍置き、どす黒い樹の根を見据えた。
「……そこにあなたの介在する余地はありません、つまらぬ妄念を弄ぶ腐った果実よ」
 魅夜が連ねても不和の果実は答えない。動じない。苛立ちも焦燥も、抱かない。
 ただ滴らんばかりの赤に輝くばかりだが、敵の無言すら魅夜の想定内だ。彼女はふと吐息へ笑みを含む。
「つまり、あなたは己自身の味そのもので、人を誘う自信がないのです」
 断言に近い物言いを向けても、混じり気なき呪樹は悠然と佇む。抗いもせず聳えるだけの景色が続く。
 静を主とする時間だからか、短いようで長く感じた――感じた時間そのものも、彼女は支配する。
「自らそれを認めたに等しいのに、まだ居座り続けるのですか」
 呆れを含んだ息を零し、魅夜が手繰り寄せていくのは終わりへ至る道。昔日に樹の犠牲となった冒険者の霊から、どれだけ矢が飛び、刃が振るわれても、魅夜の占有した『時』を崩すことままならず。一群の連撃と交差するように、魅夜の鎖が宙を舞う。
 そして鎖に合わせて起こした衝撃波で、樹木を守る加護の隙間――揺れが他と異なる箇所を探しだした。
 これほどわかりやすい穴はないと、魅夜が口端をそっと上げる。見つけてしまえば、こちらのもの。
 魅夜は機を逸することなく、一撃を底なき影色をした樹木へ入れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

陽向・理玖
【月風】

俺は…
戦ってる時何も考えなくて楽だった
けど今は…

はっとし
…瑠碧
来てくれたんだ
軽く手握ろうと
大丈夫ありがとうな

俺は戦う事を幸せとして生きてるんじゃない
仲間と他愛もない事で喜んで
大切な人が側に居て
たったそれだけの事が俺の幸せ

だから
こんな林檎必要ねぇ
振り切る様叫び

変身状態維持しUC起動

衝撃波飛ばし空気の流れや揺れで隙間探りつつ
残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る

俺の攻撃は点だから
見つけ切れないかもだけど
瑠碧なら見つけてくれる

蛇竜は一匹たりとも通さねぇ
瑠碧は俺が守る
攻撃は腕の装甲で武器受けし全て激痛耐性で耐え
蹴り飛ばし吹き飛ばし敵相討ち狙い
泣かせんじゃねぇ

ここか
隙間見切り拳の乱れ撃ち


泉宮・瑠碧
【月風】

遅れて辿り着き
理玖、と呼び恋人の元へ
手を繋げば心配そうに
…また無茶をして、いませんか?

呪いの樹…
樹木で…私の慈しむ、植物なのに…
切なく見て

…林檎があれば

私に湧くその意識に…涙します
林檎に頼らなければ、何も出来ないと
自分の無力を再認識して
故郷の里が…炎に呑まれた時の様に

私では…理玖も、幸せに、出来ない…?

悲しみが誘惑に勝り
理玖の叫びで我に返れば
無力でも…理玖の、助けに…
杖を手に相克中和で浄化の雨を

場の異常や、召喚の消去と共に
伝う雨で木肌の不自然な凹凸や
淡い光の反射で鎧の継ぎ目の判別を
違和は第六感でも察せれば

目印の意味も込めて
鎧の継ぎ目へ氷の矢を撃ちます

あの子が…樹が、もう、眠れますように



 まるで導かれたかのように、ひとりの少女が訪れる。
 それでも樹木の影はじいと佇むばかりで、泉宮・瑠碧(月白・f04280)の肌を寒気が滑りゆく。寒々しい樹木ながら、そこに成った鮮麗なる赤はどんな情よりも人心を抉るのだろうと、彼女は思う。思いながらふと顔をあげた先に、見慣れた人影を知る。
 湧き出す蛇竜が迫る中、陽向・理玖(夏疾風・f22773)は『幸せを得る』という甘美な響きで眩みかけていた。
(俺は……)
 変身したまま佇む彼の影が、樹木や果実の影と重なる。どちらも果てを知らぬほど黒い。
(何も考えなくて楽だった。戦ってる時は他に目をやる余裕なんてなかった。けど……)
 独りの時間を舐め続けてきた彼は、苦々しい味をよく知っている。そして日々を生き、多くの人に触れ、経験を積んできたことで覚えた感情もあった――だからこそ考えてしまう。自分にとっての幸せを、あの赤く瑞々しい果実は理解しているのかもしれないと。
「理玖」
 そのとき、声が届いた。
 透き通った玉音での呼びかけは、夥しい数の幽霊が生み出す声に阻まれようと、彼の耳朶を打つ。
「……瑠碧……来てくれたんだ」
 渇きかけの喉で名を紡ぐと、声が掠れる。それほどまで理玖は林檎の誘惑を前に時間を忘れつつあった。
 瑠碧はは夜の森を想起させる冷たさを覚え、咄嗟に彼の手を包み込む。触れた先から熱が零れていきそうで、きゅっと握りしめた途端、変身した後のスーツ越しでも感じ取れるぐらいに、理玖の指先が震えた。
「……また無茶をして、いませんか?」
 また。
 その音は問われた側へ一瞬、呼吸を忘れさせる。ふと瑠碧へ目線を合わせてみれば、微笑み揺蕩う水晶がどこか沈んで映る。彼女にそんな顔をされては、理玖も胸の痞えを吐き出さずにいられない。ありがとう、と自然に結わえた謝意までもが、救われた彼の想いを物語る。
 だから彼は地を蹴った。瑠碧から分けてもらった温もりを糧に、蛇竜の軍勢へ突撃していく。
(俺は、俺は戦うことを幸せとして生きてるんじゃない)
 林檎の魔力でかき消えたはずの胸の内が、理玖自身にも明らかにされつつある。
(仲間と他愛もないことで喜んで、楽しんで、大切な人が側に居て……たった、それだけ)
 色づいていく。林檎がぶら下げる幸せとは違う、己の思う幸せに。だから。
「こんな林檎ッ……必要ねぇ!」
 叫びが空気を震わし、七色の輝きに世界がどよめく。波打つ衝撃で悪意に満ちた枯木が動じて。
 彼が前へ飛び出した間も、清澄なる瑠碧の眼差しは、不和を招く呪いの樹へと注がれていた。倒さねばならぬ存在が、自身の慈しむ植物。胸が締め付けられる気分だ。苦しいとも痛いとも言い難い感覚に苛まれ、青き双眸が揺らめく。
(林檎に頼らなければ……何も、できない……?)
 濡れた睫毛を伏せて、瑠碧は馳せる。
 どれだけ瞳が潤もうとも、頬は火に当てられたように熱い。
 眼裏に浮かんだかつての故郷も――林檎のごとく赤くて、熱かった。
(私では……私の力では、理玖も、幸せに……)
 ――できない?
 たった四文字で織られた言葉が、彼女へ絶望の兆しを植え付ける。
 だからか、そんな彼女を手招こうと、蛇竜だけでなく犠牲となった冒険者たちまでもが、迫った。
 だが理玖は瑠碧に近づかせまいと、腕へ巻き付かせた蛇竜をぐいと引き寄せ、そして。
「泣かせんじゃねぇ……!」
 勢いをつけて蹴り飛ばす。
 刹那、閉ざしかけていた瑠碧のこころが、理玖の叫びによって引っ張り上げられる。
「……理玖」
 思わず、もう一度名前を呼んだ。そうすることで瑠碧の意識も冴えていく。
 彼女はふるりとかぶりを振って、涼やかな杖を掲げた。直後、平穏を妨げる悪意ごと流そうと、清らかな雨が降り出す。ぱたぱたと落ちる滴の奏は、瑠碧の願いを叶えるかのように大樹を伝い、果実を、そしてかつての犠牲者たちの霊をも撫でていく。森が泣くときに似た風が、戦場を洗い流していった。
 鎮魂のための雨が降り出してまもなく、彼女は指差した。木肌に違和感を抱いて。
「わかった、あそこだな」
 応じた理玖が繰り出すのは、覚悟。己を突き動かす原動力をそのまま拳へ込めて、闇よりも深い幹へ掴みかかれば――加護を纏っていた樹皮が裂け、枝が折れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

英比良・與儀
【虹誓】

いやな感じだな
ただの樹、って鎧纏ってる時点でただのじゃねェか
ヒメと声をかける
何かに引っ張られてる顔だ

俺も、そんな誘惑と思っていたのに――
あの林檎、あれはやれない。俺の従者にも
――それがおかしいって思うのに不思議なもんだ

どうしても貫きたい願いはもうないが、変わらぬ日々を送りたいと思う
それは俺の従者がいないと話にならない

頭振って濁される思考を払い、ヒメはと見る
言葉にすると下手な事言っちまいそうだから視線向けるだけ

何時もの調子に戻る従者に笑って
まだあの林檎を欲しいと思うが攻撃を
禁断ってのは甘い響きだが、己を律するのは得意
従者ができるんだ、主ができねェなんて話にならねェ
耐えてみせる


姫城・京杜
【虹誓】

それはいつだって思ってる事だ
俺はどうなってもいい
與儀が幸せであれば

だから林檎から目を逸らせない
…この果実がないと、與儀を幸せにはできない

名を呼ぶ声に、漸く主へ視線向け
だって與儀、あの果実がないと與儀を…
だから與儀にだって、と言いかけて
伸ばそうとした手に神の炎宿すけど

向けられた花浅葱の色に気付いて、ハッとなる
俺は守護者だ
この炎は與儀を守る為のもの
與儀を守る事、それが俺の幸せだ

邪魔な蛇竜は炎で燃やしたり、大連珠握った拳でぶん殴って
燃ゆる鋼糸で鎧の隙間を縫う
俺は超器用だからな!
でも最優先は與儀を守る事
攻撃は絶対庇い肩代わり

與儀には傷ひとつつけさせねェ
ちゃんと守って、褒めて貰わねェとだからな!



 ぞわりと肌膚を伝う違和感。それが英比良・與儀(ラディカロジカ・f16671)の眉間へ僅かな谷を生んだ。
「……いやな感じだな」
 意識せず零した呟きさえ、冷たく身体の上を這いずり回るようだった。闇よりも深い色で模られた大樹を前に、ぶら下がる果実の赤々とした輝きを前に、総身が危険を訴えかけてくる。外見だけでも恐ろしいのに、あれがただの樹ではなく加護を受けて鎧を纏っているという事実が、また與儀の心を震わせた。
 だから何気なく名を呼んだ。ヒメ、と口にすると同時に振り向いて與儀は知る。
 姫城・京杜(紅い焔神・f17071)の目つきが、いつもと違うことに。
 藍が滲むまなこは、幸せをもたらす林檎ばかりを映す。誰かを幸せにするために、あの果実は必要。普段であればまともに聞き入れもしないだろうに、林檎の魔力は京杜の思考を容赦なく掻き乱した。そもそも思うところが、ないわけではない。
(いつだって、思ってることだ。與儀が幸せであれば俺は……どうなってもいいって)
 京杜は目が逸らせなくなっていた。
 何かに引っ張られてる顔だと、與儀はすぐに察する。
「俺も、そんな誘惑と思っていたのに……」
 油断ではなかった。呪いの樹が織り成す影も、果実の落とす気配も、自分には縁遠いものだと信じて疑わずにいた。なのに本能が果汁滴る林檎を欲する。齧り付いたときのしゃくりとした食感も、溢れる香りも思い浮かんで――あれは、やれない。たとえ従者にも。そう思考が傾いていく。
 意固地になってまて貫きたい願いなぞ、與儀にはもはやありはしないけれど。変わらぬ日々を、幸せと呼べるのなら。
(送りたい。いつまでもずっと、ありふれた日常を)
 揺蕩う金色の幕の狭間で、水を映した瞳が欲に濡れる。けれど滴はこぼさず、代わりに熱が拳へ募っていく。これからも食み続けたい時間は、與儀ひとりでは意味のないもの。ゆえに與儀はぶるぶると勢いよくかぶりを振った。想い出も未来への展望も濁す果実の誘惑を払いのけて、傍らへ目をやる。
 すると京杜も彼へ視線を向け、手を伸ばす。その手に神の炎を宿しながら。
「だって與儀、あの果実がないと與儀を……だから與儀にだって……」
 言い募らせたものは、最後まで言い切れずに途切れた。
 射抜くような花浅葱。それが思考の沼へと沈みかけた京杜を引き戻す。
(……何を、やってるんだ……俺は、守護者だ)
 守るべき相手に、守りたい相手に、自身の赤を向けかけたことが、京杜の顔を青褪める。
 どうして、と指先が震えた。自分が仕出かしそうになった、とんでもないことを想像してしまい、目を瞠る。
(この炎は與儀を守る為のものだ。與儀を守る事、それが……)
 俺の幸せだ。
 ひとつ静かに深呼吸をして、京杜は幸せの印たる與儀を確かめる。
 ふ、とそこで與儀は呼気で笑った。
 いつもの従者が、そこにいる。これほどまでに嬉しいことだとは與儀自身も思わず、頬の緩みも抑えきれない。両腕で水の気配を招いて、改めて従者の面差しを確かめる。
「いくぜ、ヒメ」
「……ああ!」
 応じるのを見て、與儀は水を編む。胸の疼きは未だ與儀に残っている。林檎がほしい。あの林檎を自分だけの物にしたいという疼きが。
 それでも応えた水打が、彼の想念も連れて蛇竜を叩く。京杜も大連珠をしかと握る。燃ゆる赤で戦場を彩りながら、火の先端が入り込む隙間を猛る赤き糸で探った。
「見つけるのは難しくないんだ、何せ俺は超器用だからな!」
 胸を張る京杜はもう、加護が築いた鎧の下を指し示していて。
 ならばと與儀が小さく首肯し、炎の描いた道筋に沿って一撃を――闇に爛れた樹皮と果実へ贈った。まるで従者が世話になった礼をするかのように、目映いばかりの水の力を乗せて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
金ぴかの次は真っ黒かぁ
しかも守りは堅いときたから厄介ネェ

不和をというならうっかり他のヒトを襲わないよう、くーちゃんはしまっておくわネ
その上で誘われるまま手を伸ばすフリで、樹に近付くヨ
美味しそうな甘い香り、光にそのまま惹かれてしまいたい所ダケド、呪詛の耐性で誘惑を払うわ
感情を弄られる感覚ってヤなモノだし、なにより幸せは自分で決めたいの
誰かの幸せも、そのヒトが決めるモノ
そんな強い意志で

間近までいったならだまし討つよう【天片】発動し一気に木肌……に見える鎧へと這わす
朝焼け色の花弁で捕食しようとすれば、喰えるモノと喰えないモノの違いは感覚で分かる筈
「喰える」隙間へ花弁を潜り込ませ生命力を頂戴するわ



 コノハ・ライゼ(空々・f03130)は半ばうんざりしていた。
 眼が痛むほどの金ぴかだらけな状況を打破したかと思えば、次にきたのは。
(真っ黒かぁ)
 色彩の落差に思わず溜め息を落とすも、だからといってコノハも空編む指を止めない。
(でも守りが堅いのは厄介ネェ)
 口角をそっと上げて、コノハは管狐を呼び戻す。
「くーちゃんは留守番ネ」
 そう片目を瞑って呼びかけた後、かれは赤き果実の招きに応じる。
 甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐり、知っている味を思い起こさせていく。
 しかも黒く淀んだ樹木に成った林檎は、そこに存在する他の何よりも真っ赤で――美しい。そう思えてくる。
  幸せを望まぬ者など、もしかしたらいないのかもしれない。
 だから樹木は底なしの色で淀み、佳味なる果実で幸せを否が応でも認識させる。幸せになるには食べなければと思い込ませる。輝きへ、手を伸ばしたくなる。
 そうして不和の虜となったであろう過去の人々を思いながら、コノハは自身の心にまで忍び寄ろうとする魔の光を、じっと見据えた。
「そうね、鮮やかな光に惹かれてしまうのも人だもの」
 小さく笑ったコノハが次に結ぶのは、いつまでも己を誘惑する果実に対する強い意志。
「残念ダケド、感情を弄られる感覚ってヤなモノだし、なにより幸せは自分で決めたいの」
 果実を前に堂々と宣言すると、悔しがっているのか歯軋りに似た音が散らばる。
 ぎしりぎしりと耳へ届く。折れた枝木の軋みが。今にも落ちそうな果実が、しがみつく様が。
「誰かの幸せも、そのヒトが決めるモノ」
 余計なお世話を仕掛ける果実の間近で、コノハが彩りを展開した。
 するといびつな木肌へ這わせた風蝶草の花弁は、『喰えるモノ』と『喰えないモノ』を判別していく。
 無敵の鎧は喰えずとも。生命力に溢れる果樹は、美味しいかはともかく喰えるモノで。
「与えるばかりも退屈デショ? だから頂戴するわ」
 まもなく朝焼けを切り抜いたような花弁が、加護にくるまれた樹を――捕食し出した。
 幸せ知る色を刷いた眦を和らげて、コノハが色彩を奪っていく。かの者の生命力と共に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リインルイン・ミュール
剣で隙間を狙える程には、思考がクリアになりそうになく
ならばワタシは歌うだけデス。今までそうしてきたように


キミ(果実)が呼ぶから意識も向きっぱなし、故にこの歌は届きマス
音の波で鎧が震えるのであれば、鎧を無視して届くのでしょうが
例え鎧が遮音性だったとしても、どこかに隙間がある。外界に繋がるそこから声は届くでしょう
聴こえないなら面で声を増幅しますよ

呪いへの耐性とオーラ防御で多少影響を遮って、動かず歌う事に集中
ワタシはヒトの為のケモノ。ヒトが幸せである事が大事なのです
ワタシが独占すること自体が、ワタシの幸せに繋がりまセン
ヒトの未来、幸せへの祈りを込めて歌いましょう。それはキミへの呪詛に変わるやもですネ



 シアワセという響きは、いつ聞いても温かく、口ずさめば笑みも綻ぶ音色だ。
 誰もが手を伸ばしたくなる音だから、果実にかじりつきたくなる衝動を抑えきれないのもまた、仕方ないことだとリインルイン・ミュール(紡黒のケモノ・f03536)は顔をもたげる。いつもなら研ぎ澄まされた感覚で、大樹が纏う鎧の綻びも狙えるはずなのに。今ばかりは何故か、意識に斜幕が掛かったようなもどかしさがある。
(ヒトの感覚でいう、眠気に近いのかもですネ)
 リインルインはふとそんなことを思い、果樹へ目をやった。
 改めて視認してみるも、思考は澄むことなく淀んでいる。名もなき林檎を渇望してしまう。ならばとリインルインは意を決した――ワタシは歌うだけデス。
 これまでもそうしてきた。いつも通りに歌うだけなら、ぼんやりした意識でも叶えられる。からだがそれを覚えているから、旧きものへ歌を捧げ出す。赤き林檎の誘いに沿って、手招きに応えるように。
 すると底知れぬ闇で模ったらしき樹木が震え、林檎も左右に身を揺らす。
 くたびれた枯木は、聞き覚えのない歌が生む波に苛まれていた。ただの歌ではない。リインルインが紡ぐのはカースド・ダージ。哀歌は、シアワセで不和を起こそうとする果樹を泣かせた。枝先や果実からそぼ降る情を辿って、リインルインの歌は、内なるものとの繋がりを――境界を目指す。
 外なる鎧と、内なる樹木を結ぶものこそ、加護の隙間。
(ワタシはヒトの為のケモノ。ヒトが幸せである事が大事なのです)
 かたちを自由に為せる存在が、あえて獣の姿を選んでいるのも、すべては。
(ワタシが独占すること自体が、ワタシの幸せに繋がりまセン)
 だから林檎の甘言がリインルインの意識をいかに霞ませても、その根をもぎ取ることはない。
 かの者にも顔はないけれど、鎧の隙間からじわじわと侵食されたことで、動揺と呼べるものが果実から滲んだ。それを感じてリインルインが声を強めれば、樹も身震いした。
「キミが呼んだから、わかったのです。ああですが、ヒトを想うこの歌は……」

 キミへの呪詛に変わるやもですネ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キトリ・フローエ
あなたを手に入れれば、幸せになれるの?
誰かのお星さまになって輝けるの?
どうしてか手に入れなければならない気持ちになって手を伸ばす
でも…
…いいえ、いいえ
そんなはずはないわ
だったら、何故あなたはオブリビオンとしてここにいるの?
それに、どうしてすぐに気付けなかったのかしら
見た目は林檎なのに血の色みたいで全然美味しくなさそうよ!

呪詛耐性と破魔の力を籠めた花弁のオーラ防御で誘惑をはねのけて
変に庇っているところがないかしっかりと見定めるわ
そういう場所があったら、きっとそこが鎧の隙間
しっかりと狙いを定めて全力籠めた空色の花嵐で攻撃を

願いを叶える力は誰かに与えられるものじゃない
自分で手に入れるものでしょう?



「あなたを手に入れれば、幸せになれるの?」
 キトリ・フローエ(星導・f02354)が問うと、林檎は洗い立てのような滴を滑らせて応えた。
 ――食べないと、幸せになれない。
 繰り返された言葉の矢が、ちくりと胸へ刺さる。逃げ道を奪われる気分だ。こうしなければ得られないという、迷いなき一言は。他の誰かが先にもいでしまったら、幸せは手に入らないと焦る。
「あなたを口にすれば、誰かのお星さまになって輝けるの?」
 瞬く星をキトリは思い描く。
 いつだって仰ぎ見れば星たちが居てくれた。星がもたらす力を知っているから、キトリにも拭いきれない念が生じてしまう。誰かにとっての特別な星になりたくて、手を伸ばす。いつだったか星を掴もうとしたときのように。
 夜空を映した彼女の瞳は、いつしか林檎だけを見つめていた。
(……いいえ、いいえ)
 触れる寸前、かぶりを振って足元を見下ろす。
 地よりも深きへ引きずり込みそうな根が、キトリを見守っていた。冷や水を浴びせられた気分だ。
「そんなはず、ないわ」
 赤を拒絶するために、腕を引っ込める。
「だったら、何故あなたは……オブリビオンとしてここにいるの?」
 その存在自体がすべてを物語っているのだと、思考が澄んでいく。
「どうしてすぐに気付けなかったのかしら」
 落とした吐息をもって漸く、キトリは誘惑の光から――逃れた。
 もう一度顔を上げてみると、あれほどまで欲しかったはずの果実が、今は。
「血の色みたいで、全然美味しくなさそうよ!」
 空色の花弁へ魔を打ち破る力を点して、赤光に守られた枝を狙い定めた。
「それと、よく覚えておいて」
 言いながらもキトリの花嵐が、景色を明るく彩る。たったひとつの実を支える枝は、彼女の色によって切り離された。ぼたりと落ちた果実があっという間に溶けていく。
「願いを叶える力は、誰かに与えられるものじゃない。自分で手に入れるものでしょう?」
 花咲くことすら知らずにいた枯木は、最期の最期で空色の輝きを開花させ、消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『大天使ブラキエル』

POW   :    岩腕
単純で重い【岩石でできた巨大な腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    絶対物質ブラキオン
【「絶対物質ブラキオン」の鎧】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、「絶対物質ブラキオン」の鎧から何度でも発動できる。
WIZ   :    大天使の光輪
自身が装備する【大天使の光輪】から【破壊の光】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【徐々に石化】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 呪われし大樹と果実の消滅によって、猟兵たちの歩は未来へ進む。
 すると大天使らしい風貌を一欠片も崩さず、ブラキエルはそこに居た。洗ったような睫毛を重たそうに持ち上げて、来たる猟兵たちの姿を捉えたかれは、ふ、と短い息を吐く。
「猟兵は境界を越えるもの。私の知らぬ『識』を持つもの」
 無事に猟兵たちが辿りつき、一驚したのだろうか。人も世も突き放すばかりの物言いだったブラキエルに、関心の端くれが垣間見える。変わらずその双眸は、何を映すでもなく宙空ばかり宿していたが――大事に抱えていた剣も、今は無し。けれどかれは拠り所を他へ求めず、己の内に眠る想い出へと心傾けた。
(友よ、君の願いは確かに叶わなかった。だが、知り得たものが有る)
 ブラキエルはふと、そんなことを考えて。
「此処へと到る道、財宝に眩惑せず、不和の果実に溺れない」
 猟兵の成してきた事実を淡々と述べた。
 そして失意を顔に塗りながらも、かれは感情を忘れた眼差しで猟兵を睨む。
「天上界への道を鎖したのも、頷ける。ならば今こそ、我が手で消し去ろう」
 豪奢とも言える翼を広げ、ブラキエルは告げる。
「我が友の願い、枯らすわけにはいかぬ」
 人々の望んだ平穏な世界を、猟兵たちが守り抜いた世界を、身勝手窮まりなく壊そうとしたかれは。
 ただひとりの友のため、今ひとりきりで猟兵と対峙する。

 そう、かれこそがオウガ・フォーミュラ。
 此度の邂逅により、大天使ブラキエルとの最終決戦が幕を開ける。
黒城・魅夜
その傲慢にして強欲な白い翼を
我が漆黒の翼によって撃ち砕いてあげましょう
私こそは悪夢の滴、あなたに絶対の悪夢をもたらすもの

「オーラ」と「結界」の二重防御を展開
これにより天使の先制攻撃を防ぎましょう
くっ、なんという威力、受け止めきれません……

と見せかけて、ふふ
攻撃を受けた瞬間を「見切り」、「衝撃波」を使って大気を歪ませた隙に
私の「残像」と入れ替わって、そちらへ攻撃を「誘惑」したのです
あなたが攻撃したのは私の幻…
あなたが夢見た儚い望みと同じただの幻です

さあ今度はこちらの番です
天使の血の味がどのようなものか楽しみにしていたのですよ
もっとも私に吸われた瞬間
あなたは因果と時空ごと消え去る定めですけれどね


レザリア・アドニス
大天使って…露出癖、なの?(小首傾げる)
まあどうでもいい
そこまで深く考えずに、ただ倒せればいいよね
『敵』であれば

【全力魔法】と【鎧無視攻撃】そして【破魔】で強化した炎の矢を撃ち出す
【高速詠唱】で攻撃の頻度を上げる
ブラキエルの所へ、一点集中して、雨のような攻撃を降らす
その友の願いも、お前の願いも、全て打ち破ってあげるね
一度倒したし、二度も、何度も、必要であれば倒して見せるの

石化を受けたらヴェールを被り、【時間稼ぎ】で石化を延ばす
炎の矢に【生命力吸収】を付加して、少しでも回復できれば

君が望む世界は、我々は望まない
君が望まぬ世界こそは、我々の理想なの


プリンセラ・プリンセス
連携・アドリブ可
~ですわ、は使わない丁寧なお嬢様言葉

先制攻撃は○第六感○幸運○見切り、馬に○騎乗しての機動回避。命中する場合は○オーラ防御○激痛耐性で耐える。
石化は呪詛耐性で。

竜の楯鱗を使用。
まず城壁で攻撃を遮蔽。その後続けて壁を斜め30度の角度で召喚。
すると城壁は重力に引かれてそのままブラキエルへと倒れかかる。
勿論一枚だけでなく二枚三枚と同様に重ねる。
城壁という大質量攻撃。しかもブラキエルの光輪によって石化して重量は増している。
さしもの大天使もこれには耐えられまい。
勿論生きていた時は瓦礫から出てきたところを○斬撃波の○だまし討ちで追撃する。


キトリ・フローエ
そうよ、あたし達は強いから
つまらないものに惑わされたりなんてないし
あなたがどれだけ強くたって絶対に倒してみせる
例えあなたがお友達のために戦っているのだとしても
あなたの願いを叶えさせるわけにも
この世界をめちゃくちゃにさせるわけにもいかないわ

破壊の光は花弁のオーラを舞わせて防御
ちょっとくらい石になったって構わない
だってその前にみんなであなたをやっつけるもの!
翅が動かないなら風の精霊の力を借りて空を舞いつつ魔力を溜めて
確りと狙いを定め(スナイパー)全力こめた黎明の花彩で反撃を
少しでも力を削ってみんなの攻撃に繋げたいわ
…過去に未来を消させたりなんてしない
未来はいつだって、今を生きるみんなのためにあるの



 消し去ろう、などと――なんて、傲慢な。
 唾棄すべき大天使の発言に、黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は溜息を落とす。
 レザリア・アドニス(死者の花・f00096)もかぶりを振って、静かなまなこでブラキエルを見据えた。
「大天使……あなたが何を思おうと、変わりません」
「ええ、傲慢にして強欲な白い翼を、打ち砕いてあげましょう」
 魅夜が首肯した直後、蹄音が戦場に響いた。
 白馬と共に駆けつけたプリンセラ・プリンセス(Fly Baby Fly・f01272)もまた、敵を捉える。
「あれがかの大天使ブラキエルですね……」
 認識すれば肌膚がざわついた。当のかれはまどろむような眼差しを猟兵たちへ向けて。
「猟兵の抗う術、徒爾に終わろう」
 未だ傲慢の姿勢を崩さず、気怠げに片腕をあげた。
「! 来るわ」
 キトリ・フローエ(星導・f02354)の叫びと重なり、ブラキエルの光輪から一閃が走る。それだけ見れば眩しく無害なものとも思えよう。だが猟兵たちは知っている。かれの生み出す輝きは、この世界の人々を無差別に殺すためのものだと。
 そうして破滅の曙光が拡がる中、霧のようなヴェールで目映さを流したレザリアは細い指で魔の力を結い、プリンセラは目を守るように逸らす。顔を背けても物陰へ隠れても、きっと後光とも呼べる神威は防ぎきれない。ならばとプリンセラが纏ったのは、薄日を思わせるほのかなオーラ。
「っ、確かに、たいへんな破壊への力を感じます……っ」
 焼けるようにひりつく光だ。けれどプリンセラはその最中、今一度ブラキエルを見た。
 近くでは、キトリの翅ごと石にして落とそうとする光を、花弁が振り払う。
「……ありがとう」
 石と化して散りゆく花の名残へ礼を述べ、キトリはブラキエルを捉えた。
「あなたの言った通り、私たちは強い」
 こうして向き合い続けていることが何よりの証左だ。だからキトリも瞬きせず敵へ告げる。
「つまらないものに惑わされたりなんてないし、あなたがどれだけ強くたって倒してみせる。絶対によ」
 彼女たちの放つ輝きと言葉へ耳を傾け、ふむ、とブラキエルが唸った。
 その間に護るための滴を結界へ流し広げた魅夜が、降りかかる脅威を前に口を開く。
「く、なんという威力……」
 骨の髄まで狂わす大天使の攻撃に、さすがの魅夜も眉根を寄せた。怯む様を、かれに見せ付けるように。
 するとブラキエルも色素の薄すぎる唇を震わせた。
「傲慢は人間の性、我らの抱きしものと異なるもの」
「言い方なんて、何でもいい」
 レザリアはかれの一言を切り捨てて、臆することなく輝きの狭間へ火の矢を飛ばした。
「ただ倒すだけ。『敵』であれば」
 口火を切った彼女に続いて、すうと胸いっぱいに気合いを吸い込んだプリンセラも宣言する。
「参りましょう、かの天使へ教えて差し上げるのです」
 プリンセラが築くのは竜の楯鱗。頑強なる城壁がやや斜めに聳え立ち、そこに集った勇士たちが雄叫びを挙げる。まるで勇士らが猟兵へ声援を送っているかのようだ。折しも羽ばたいたブラキエルが、城壁の醸し出す大戦の様相を前に一度だけまじろいだ。
「人ゆえの建造物、人ゆえの蝟集。我らを追う愚者の心の表れか」
 ブラキエルの淡泊ながら尊大な語り口調は、猟兵たちに近い想いを募らせていく。
 だからこそ、かれが先手を得て動こうとも――魅夜は凛としてかれの前へと歩み出た。
「先の一手、身も心も砕いた筈」
 瞠目がブラキエルの感情を物語った。先刻怯んでいたはずの魅夜の姿に、驚かざるを得なかったのだろう。
 だから魅夜は吐息で笑う。
「お気づきになりませんでしたか? あなたが襲ったのは私の残像……幻です」
 まぼろし、という音を拾ったかれが、魅夜へ不思議そうな視線を向ける。
「ええ、そうです。あなたが夢見た儚い望みと同じ、ただの幻です」
 魅夜はほくそ笑んだ。
「さあ、今度はこちらの番です」
 彼女の一声が伝播し、仲間たちも地を、宙空を、時代を蹴る。
 降り注ぐ天使の威光で、爪の先から染みる苦痛を知っても尚、プリンセラは流れる蜂蜜色の髪をさらりと手指で撫で、平時の己を蘇らせた。いつものように立ち、いつものように前を向く。彼女を織り成すのは、成し遂げねばならぬという覚悟。それが常にあるからこそ、プリンセラは――気高き城壁を補強する。
(もう少し、あと少し……)
 終端へ至る数を、ひとつひとつ点しながら。
 その間、動き難くなった翅の代わり、風の精の助力を得て天翔けたキトリが、杖の先をブラキエルへ向ける。
「なんとかするわ!」
 花の綻びをキトリは影から呼び覚ました。
 無数の花弁がブラキエルの知る風景を遮り、猟兵たちが浴びる破壊の光を鈍らせていく。杖を突き出したまま専念するキトリは、それでも総身を巡る苦痛と固まる感覚を拭えない。
(ちょっとぐらい石になったって……構わない)
 皆へつなげる――それもキトリの狙いだ。
「……何故」
 そこまでするのかとでも問いたいのか、ブラキエルが怪訝そうに眉をひそめた。
「例えあなたが、お友達のために戦っているのだとしても……」
 瞬く杖の光彩が、キトリの放つ生き様と合わさり、より鮮烈な花を生む。
「あなたの願いを叶えさせるわけにも、この世界をめちゃくちゃにさせるわけにもいかないから」
「……愚かな」
 ブラキエルはそれだけ吐き捨てた。
 矢継ぎ早、キトリの花弁が佳景を描く中で魅夜は一礼して、牙の力を高めだす。
「お任せください。次は私が」
 魅夜の知る絶の牙は、縁を枯らすべく、天使が纏う守りを吸う。そして咥内で広がる風味に、魅夜は首を傾げた。
「天使の血は、思っていた以上に美味しくないものですね」
 というよりも味がしないに等しいと、彼女は感じる。
 未知のものと思えばそうだが、どちらかと言えばこれは――悪夢を知らぬ悲しき者の味。
「教えてあげましょうか?」
 魅夜は喜色を唇に刷く。
「私は悪夢の滴。あなたに、絶対の悪夢をもたらすものです」
 彼女が朽ちぬ因果へ立てた牙は風穴をあけ、皆の攻勢を助けるものとなる。ブラキエルが読み取ったばかりの魅夜の牙で、猟兵たちを守護する輝きにも穴をあけていき、やがて光が迸った。光輪から解き放たれた、世も人も害う光だ。
 けれどプリンセラの築いた楯鱗が、再び仲間たちを灼きつく死の光から守る。そして。
 ほんの一瞬――その一瞬があれば、レザリアは魔法の矢を撃てる。
 大天使の光輪がどれだけ眩しくても。大天使の姿がどれだけ神々しくても。
「……撃ち込みます」
 レザリアは指先で魔術を編み上げ、火矢を生み出す。
 破魔を宿した矢雨は風穴めがけ、彼女を成す色彩と共に飛んだ。
「あなたの友の願いも、お前の願いも……我々は望まない」
 今度はわかりやすいよう、レザリアが語気を強めて言った。分からず屋の大天使へ、まっすぐに。
「君が望まぬ世界こそ、我々の理想なの」
 だから打ち破るのだと少女は続けた。何度でも倒して、何度でも打ち破り、望みを絶つと。まばたきすら忘れたレザリアからの言と炎の雨に、ブラキエルが目を細める。
 やがて翼を焼く熱により、ブラキエルの顔色にも陰りが滲んだ。はらはらと散り始めた羽根に、かれの心情が映る。
「我が友の願う世界を、猟兵にも人間にも触れさせはしない」
 そう応じたブラキエルをも飲み込んで、戦場に風光る。
 黎明の空を思わせるキラキラとした花の欠片たちが、キトリの意志に沿って天使の影から咲き誇った。
「あなたがどんなに願っても、未来はいつだって、今を生きるみんなのためにあるの」
「それこそ人の愚かさ」
 渋面でブラキエルが連ね、輪をまたもや燈すも。堂々と立ったプリンセラが眩しい勢いを途切れさせる。プリンセラの壁は、一味も二味も違った。斜度をつけた壁は、石化の光により一層自重に耐えかね、倒れ込む。
 そう、大天使がいる一帯へと。そこへ食らいつくようにして。
「動かないとお思いでしょうか? 人も壁も、動くものなのです」
 これまで微動だにしなかった壁だ。
 ブラキエルもまさか壁のほうから迫られるとは思わなかっただろう。
「この門は、あなたのために開かれはしません。決して」
 倒れた城壁が砕け散る。天使が起こした光の波ごと下敷きにして。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アメノ・ムラクモ(サポート)
 ヤドリガミのマジックナイトにして神器遣い。物静かな印象と神秘的で大人びた美貌を持つ空想好きな天然娘。23歳。
 基本的に、戦闘系は「トリニティ・エンハンス」による弱点属性攻撃、または「神器解放」による自己犠牲の一斉攻撃。
 冒険、日常系は「幻獣ユニコーン召喚」による早駆け、「十字兎檸檬改造零式」による力仕事、「木霊召喚」による相談、支援による解決を得意とします。
 普段の口調は女性的(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)
独り言は 無口(わたし、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)です。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


藤・美雨(サポート)
私は藤・美雨
デッドマンの猟兵さ
キョンシーじゃない、キョンシー擬きだよ

戦う時は近接攻撃を中心に
強化した肉体で怪力で暴れまわったり
装備した刃物でザクザク切り込むのが好きかな

死んでいるから怪我にはあんまり執着しない
危なくなればヴォルテックエンジンで自分を叩き起こすからね
負傷は気にせず気力で突っ走るのが好きだよ
その方が楽しい!

でも死んでるからといって人生を楽しんでいない訳じゃない
飲食とかは出来るし好きだよ
綺麗なものや楽しいものに触れるのだって大好きさ

他の猟兵に迷惑をかける行為はしないよ
例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動もしない
気持ちよく勝って帰りたいし!

あとはおまかせ
よろしくお願いするね!


ベッジ・トラッシュ(サポート)
◆戦闘時
戦うのは怖い!
なのでボス戦ではだいたい逃げ回っている。
(味方の手助けになる行動や、囮になるなどの功績を得ることはあるがだいたい無意識)
「こ、ここ…怖いのではないゾ!ベッジさんは様子をうかがってイタのだ!!」

手の届かない相手にはパチンコで苦し紛れに絵の具弾を飛ばすこともある。

◆冒険時
基本的に好奇心が強く、巻き込まれ体質。

敵味方関係なく、言われたことには素直に従う。
怪しいような気がしても多少なら気にしない。
後先考えずに近づいて痛い目を見るタイプ。

◆他
口癖「ぎゃぴー?!」
お気に入りの帽子は絶対にとらない。
食べ物は目を離した隙に消えている系。
(口は存在しない)
性能に問題はないが濡れるのは嫌い。



 瓦礫の隙間から零れた光が、かの者ブラキエルを再び地上へ、空へ戻す。
 唇を引き結んだアメノ・ムラクモ(ヤドリガミのマジックナイト・f33310)は、静けさを湛えた双眸にその姿を映す。光輝に耽る天使の姿を、哀れみにも似た潤みで。
(友のため……それ自体は、素晴らしい想いなのでしょうけど)
 身震いし、アメノは降りかかる閃光の中、物語に登場するかのごとき天使の前へと立ちはだかった。
(でも、いけません。人に徒なそうだなんて、そんなのは)
 握り締めた手に、怒りとも困惑とも言い切れぬ情が募る。踏み出した足裏にも自然と熱が篭っていく。
 そうした彼女の一歩へ連ねるように、藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)がニッと口端を上げてみせた。
「あれが天使様ってわけかい。随分好き勝手してくれるじゃないか」
「自由は人間の欲、我らの所有物には成り得ない」
 ブラキエルからの返事に、美雨は肩を竦めて。
「お前はもっと飲み食いして、人生の楽しさを知った方がいいよ」
 彼女が呼びかける片隅では、ふるふると震えたひとりのテレビウムが、ずれて落ちかけた帽子を被り直す。
(怖い、戦うのは怖い!)
 いかに天使が落ち着いた面差しで浮かんでいようとも。いかに綺麗な翼を広げ、純一なる天使の要素をあらわにしていても。ベッジ・トラッシュ(深淵を覗く瞳・f18666)の本能が警鐘を鳴らす。あれを相手にしてはならないと。
「あれは何デス、何なのデス?」
 動揺を滲ませていると、鎧纏いしブラキエルが死の光で戦場を覆いだす。
「ぎゃぴー!?」
 ベッジの悲鳴が響き、すたこらと彼は駆け出した。
 どこへ行くと決めたわけでもなく戦場を走った少年は、ブラキエルの訝しい眼差しを、光の輪から生じた神々しい威光を受け止めるばかり。しかしちょこまかと動き回る彼の様相は、少なくとも大天使を困惑させた。
 抗うすべを行使し、己へ向かってくるこれまでの猟兵とは違う。それを異質に感じたのだろう。ブラキエルの関心が、ベッジへ降り注ぐ。
「こここ、こ、コワイのではないゾ! 決して!」
 甲高く打ち明けたベッジは、閃光の狭間で塗料を撒き散らす。
 すると白ばかりを着た天使は、いくつもの色彩に晒され、猟兵の色で翼を汚され、眉根を僅かに寄せる。そこへ。
「私、天使さんとお話できたらなと思っていました」
 ふとアメノが願いを紡ぐ。溢れたのは彼女の内にずっと眠っていたもの。今も燈り続けている、アメノのこころだ。だからそっと胸へ手を寄せ、瞼を閉ざす。
「お話してわかったのです。……あなたの殺戮行為は、防ぎたいと」
 ヤドリガミとして人間を眺めてきた彼女は知っている。
 かれらは天使の意志で滅ぼしていいものではないと。それが偏った思考からくる意志であれば尚更――だから。
「神器解放!」
 いくつもの刃が、かの光輪からの恵みをも遮るように輝きだす。
「たとえ私が砕け散っても、守ってみせます……!」
 今度こそ、という最後の言の葉だけは音に換えず飲み込み、アメノが斬りかかる。神秘を宿す彼女の眼差しがブラキエルを射抜き、つられて見やったかれの隙へ、一太刀を浴びせた。かの鎧がブラキエルを守ろうとも、想いの乗った一撃は思わぬ衝撃を生み出す。
 僅かながら均衡を崩したブラキエルへと、アメノの鋭い視線も突き刺さって。
「す、すごい……!」
 瓦礫の物陰へ飛び込んだベッジが、繰り広げられる光景に呑まれていった。
 我が身を省みず挑むアメノを称賛するように、美雨が手を叩く。
「いいねえ! 私も怪我は気にしない方なんだよ」
 送る拍手と同時にカラカラと笑った彼女は、己の片腕を贄に力を、痺れあがらんばかりの電流を得る。
 そして美雨は地を蹴った。しかしブラキエルの浸る時間は猟兵たちより一瞬早く、彼女の拳が届く前に、隆起した岩石の巨腕が美雨を叩いた。だが。
「喰らいな!」
 血反吐を吐こうと美雨は止まらない。渾身の一撃が、ブラキエルの翼を抉って。
「さ、気持ち良く帰るためにまだまだ頑張るとしようか!」
「はい、私もがんばります」
 アメノがこくんと肯えば、瓦礫の影からベッジも身を乗り出して。
「べ、ベッジさんも、ブラキエルをオレ色に染めてみせるのだ!」
 少年の手足の代わりに、絵の具弾を添えたパチンコが震える。
 ――多様な姿勢を見せた猟兵たちは、思わぬ光景だったのだろう。奇妙や奇怪といった言葉ばかりを頭に浮かべたブラキエルは、それでも翼を狂わされた事実にゆっくりとまじろいだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

リインルイン・ミュール
友達は大事ですよね。それは判りますよ
ですが、他を全て滅ぼすなんていうのは、止めさせて貰いマス


光は速く、遠くまで届く以上、何かで遮るくらいしか出来ないですネ
陰になる地形があれば利用する為にそこへダッシュ。発動迄に隠れるのは間に合わないハズ、走りながら尾剣を盾のように拡げマス
破壊力もあるので気休めですが、光輪に対して少し傾けるようにすることで反射角を作り受け流しの構え
更にその後ろで、身体をなるべく隠すように面と籠手で受ける姿勢、且つ念を前面に集中させてオーラ防御

何とか凌いだら、あとはUCの歌に集中
石化遅延にも有効かは不明ですが、支援にはなります
破壊ではなく生命の光を。皆で生きる明日を望む、皆さんへ


卜一・アンリ
かかってきなさい、大天使様。
悪魔憑きのアリスがお相手するわ。

先制攻撃に対しては【逃げ足】で事前に決めていた建物の傍に逃走。
敵UCの一撃が繰り出されるタイミングを【見切り】
裏手に待機していた牡丹を呼んで建物を砕き破りながら【カウンター】。
キャバリアの【怪力】とそれによる【地形破壊】に伴う瓦礫という即席の散弾の【騙し討ち】、敵の攻勢を挫くぐらいはできるでしょう。

首尾よく先制攻撃を凌いだら牡丹の肩に乗り【騎乗突撃】、体高約5mのキャバリアとしての【重量攻撃】で圧し潰すわ。
UC【奮い立て、私の鋼鉄巨人】!

この世界の方こそ貴方達の存在なんて望んでいなくてよ!
潰えて消えなさい、オウガ!!


エルザ・メレディウス
アド、連携◎

友の願い――。
…あなたのその瞳には感情の揺らめきが伺えます。
ここの人々の命を奪うことは決して見過ごせませんが、せめて敬意を持ち…あなたと対峙いたします

■戦闘
UC発動によって相手は大量の兵士が増えてしまうかもしれませんね。
――ならば私達は少数精鋭でお相手致します。

【情報収集】を怠らずに――。まずは、周辺の地理を確認。岩場などの影響で狭くなっている道や敵が少ない道の中から、ケントゥリアが進む場所を決定します

【集団戦術】を心がけて、あらかじめ確認しておいた道を全員が一丸となって進みます。
私は先頭に立ち、全員を【鼓舞】!

【捨て身の一撃】覚悟で…! 
目指すは、ブラキエルの首――ただひとつ!


コノハ・ライゼ
ま、オレは喰えりゃイイし互いの言い分にどうこう口挟む気もないケド
譲る気はナイわ。ソレでイイでしょ?

先制の一撃は動きを見切り、且つ第六感でより反撃に適した方向へと跳び避けるわ
直撃避けたとしても余波にやられぬようオーラ防御展開
致命傷に至らぬ攻撃は敢えて受け激痛耐性で耐えながら
カウンター狙い懐へ飛び込もうかしら

手にした刃で素っ首斬りつけてもイイけど
そう見せかけだまし討ちで影に潜ませた「くーちゃん」へ血を与え【紅牙】発動
死角に送り込み喰らいつかせるわ
敵が体勢整える前に素早く2回攻撃
傷口抉るよう噛み付かせ生命力を頂くわねぇ

こういう喰らい方も知って損はないンじゃなくて?
もう活用する機会はナイでしょうケド



 大天使ブラキエルは淡泊な音色を紡ぐ。
「猟兵との時間、我が友への手土産としよう」
 冗談めいた物言いですら無いのに、心なしかふざけているようにも思えて卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)が目を細めた。
「手土産? そんな余裕、あなたにあると思っているの?」
「余裕無きは人間、ゆえに人間は愚者となろう」
 相変わらずね、とアンリは息を吐いた。尊大そのものな天使の生き方は、やはりいけ好かない。
 するとそこで、エルザ・メレディウス(執政官・f19492)がブラキエルを見やった。
「お友だち、と仰いますけれど……見過ごせません」
 友の願いのため、つまりは友のために、これまで動いてきたのが『かれ』なら。
 きっと相いれることはないのだろう。そうエルザも痛感していた。友を念う気持ちが、わからない訳ではない。ただ気になっていたのは、かれの眼差しで。
「……あなたのその瞳には、揺らめきが窺えます」
「……揺らめき?」
 思わずといった調子でブラキエルが問い返す。自分の状態をまるで把握していないようだ。
 幾度と無く猟兵に打たれても未だ光に耽る天使の威容を追うように、リインルイン・ミュール(紡黒のケモノ・f03536)は疾駆した。しかし駆けた先はかれの元ではなく、戦場に散らばった戦いの名残――瓦礫の陰。
 光の速さを、リインルインは知っている。どんなに遠くへ逃れても届くもの。どんなに素早く遠ざかっても、追いつかれてしまうもの。だから駆けながらも彼女は、黒銀色の尾を拡げる。盾と化した尾剣が艶めき、突き刺すような光を反射させて逃がす。多少なりとも受け流せれば、石化までの時間は稼げる。そう信じて。
 眦を和らげたコノハ・ライゼ(空々・f03130)も同じように、城壁の名残を遮蔽物にするべく飛び込んでいた。
「絶好の隠れ場所ね。もう少し大きかったら、隠れ家にも成ったンでしょうケド」
 口端を上げ、コノハは皆が孕む緊張へ微笑んでみせる。
 猟兵の仲間が先刻鏤めていった城壁の残滓に、誰もが身を寄せる。その中でアンリは背を押し付けて座り、展開した光を正面から浴びるのを避けるていた。石としての強度を増していく瓦礫や大地の有様に、眉間のしわも深まる。
「あの光が厄介ね……」
 物陰でアンリが噛み締めるように囁く。
 それを耳にしつつ、エルザは考えを巡らせていた。敵の能力が、ブラキオンの鎧で受けたものを写し取るものならば。大量の兵士が増えてしまう事態は避けたい。彼女は思惟の末、屈強なる精鋭へ委ねると決め、皆の顔を見回す。
「道を……私と、ケントゥリアで、作りますね」
 静けさを湛えたエルザの一言は、猟兵たちへ意思を伝わせる。
「なら、あの腕は私がなんとかするわ」
「ではワタシは支え続けまショウ」
 アンリに続いたリインルインが、祈りの歌で戦場を満たす。
「じゃあ、コッチは懐へ飛び込もうかしら」
 コノハは頬を少しもたげた。ふふ、と呼気に笑みを含んで。
「天使の羽に包まれるのも悪くないデショ」
 ――そこが恰好の狩り場となるのだから。
 最後まで言わずとも、コノハの双眸が口以上に狙いを物語った。だから皆一様に首肯で応え、散開する。

 大地を踏み締め、エルザは立った。瓦礫の陰という陽の届かぬ場所から、立ち上がった。細長く息を吸い込めば、胸の高ぶりはあるが落ち着いたままだとわかる。ブラキオンなる加護を纏った天使もまた、変わらぬ姿を晒け出していた。
 だからこそエルザは改めて認識した。かれは、友のためならばすべてを壊せる存在なのだと。
「お相手……致します、ブラキエル」
 だから敬意を表し、対峙した。成り立たぬ互いの主張を抱いたままに。
 するとブラキエルが微かな吐息で応えた。かんばせに変化はなく、ただただふっと短く吐き捨てただけの仕種で。
「神の祝福を受けたローマ兵達よ……!」
 エルザは軍団旗を高らかに掲げ、喉を開く。
「……さぁ、今こそ私と共に!」
 旗がなびき、道を示せば――現れたローマ兵たちが吠え猛る。盾を構えて列を成した軍勢は、ブラキエルから見ても壮観だった。人の営みとも呼べる戦いの歴史。それを思わせる光景は、武で意を知らしめることも厭わぬブラキエルにとって、非常にわかりやすいものだ。
 ただかれ自身、人に寄り添わないだけで。
「進みましょう、この道を。すべての道はローマに通ず!」
 来たる未来こそ、まさしく中心部であり自分たちの目指すべき地点だと、エルザは号令をかけた。
 メレディノケントゥリアが突き進む。
 勇猛なる行軍を眺めながらフェイス・サームを紡いだリインルインは、孤独な死の光から抜け出して、孤独なかれを仰ぎ見る。
「友達は大事ですよね。それは判りますよ」
 なんとも人間じみた感情が窺える天使の言動を、彼女は否定しない。否定は、しない。
 変わらぬ面で言うものだから、まるで微笑んでいるようにも受け取れる雰囲気だ。
 だからだろうか。ブラキエルの視線がすっと彼女を捉える。
「ですが、他を全て滅ぼすなんていうのは、止めさせて貰いマス」
「大事だと知りながら、他を守る。猟兵も人も、そう言う」
 納得がいかないらしいブラキエルに、リインルインはかぶりを振った。
「わからないのデスね、アナタのソレが何なのか」
 含みのある返答に、ブラキエルが僅かに眉根を寄せて。
 直後、ブラキエルの視界内へと、コノハが踊り出る。
 石という石、岩という岩を練り固めたかいなが、誘いをかけるコノハを追った。圧するために振り下ろせば瓦礫が破砕され、崩すために振り下ろせば地面が割れる。その度に飛びのいたコノハはいつまでも軽やかだ。岩の剛腕に砕け散った破片が、飛沫となってコノハへ襲い掛かろうと、揺るがない。
 激痛に耐えて喰いしばる機会は、生きてきて数えきれないぐらいあった。だから此度もコノハは艶やかに舞う。
「言い分にどうこう口挟む気もないケド」
 狭間に、言の葉を結んで。
「譲る気はナイわ。ソレでイイでしょ?」
 コノハの一声に、ブラキエルが目を眇め、巨岩の腕を惜しみなく振るっていく。
 衝撃に激動する大地で、あらゆる息吹を叩き潰そうと――だが。
「牡丹ーっ!!」
 めいっぱいの声を、アンリが轟かせた。
 すると空気を震わす駆動音で応じた麗しき名を冠するキャバリアが、ブラキエルの腕へと掴みかかる。大いなる一打を自ら飛び込んで受けきり、火花を散らしながら牡丹は組み付いて。
「その調子よ!!」
 アンリが声援を送れば、それが牡丹の力となる。
 ヴォオオォォ、と地も空も唸らせる音で答えたキャバリアは、振り払おうとする岩腕を離さない。
「いくらでもかかってきなさい、大天使様」
 滲む金色に映る、真っさらな天使の姿態。アンリはそれから目を逸らさずに。
「悪魔憑きのアリスがお相手するわ」
 言いきった。宣言にブラキエルの口角が下がる。ともすれば不満をあらわにしてしまう。
 そのときもずっと、リインルインは歌をやめない。ブラキエルの光輪より解き放たれた死への導きが、どんなに甘く香しいものでも。
(破壊ではなく生命の光を。皆で生きる明日を望む、皆さんへ)
 歌声は、仲間たちの手足を奮い立たせる。抗う力を支える。
 前では、集団戦術の手腕を、行軍の先頭で指揮するエルザが遺憾なく発揮していた。
「ここで生きる人々の命は、奪わせません……」
 一丸となった人々の心が、動きが、どんなに強く逞しいのかを、ブラキエルへ示すために。
「さあ、目指すはブラキエルの首――ただひとつ!」
 エルザは精鋭と共に、ブラキエルがコピーした兵らとの戦に明け暮れた。心身が粉々に砕かれても構わない。この道を敷くためならばと。エルザ率いる軍団の姿勢に、ブラキエルはやはり顔つきを険しくさせる。理解し難いと、吐き捨てんばかりに。
 こうして彼女たちが戦の音で賑やかに場を飾り、敵の気を惹く一方。
 キャバリアの牡丹は、岩腕の殴打により一度は手を離したが、矢継ぎ早、瓦礫を散弾代わりに飛ばす。
 そして牡丹の肩へと飛び乗り、アンリは戦友と同じ敵を見据えた。
「この世界の方こそ、貴方達の存在なんて望んでいなくてよ! オウガッ!」
 彼女の叫びが響き渡り、天使の意識が逸れた刹那。
 連ねて、宣言通りの距離へ――ブラキエルの懐へコノハが飛び込む。
「ま、オレは喰えりゃイイし」
 己の血を代償に、牙を立てる。もっとも、牙を立てるのはコノハではなく。
「ね、くーちゃん」
 潜んでいた影狐だ。
 寄り添う時間を常とする管狐へ与えた紅が、牙を生む。影は黒くも牙の威は赤々として、白皙の腕へ喰らいついた。軋みがブラキエルに走る。命を吸われていると感知できるほどに。
「こういう喰らい方も、知って損はないンじゃなくて?」
 片手をひらりと泳がせてコノハは言う。取れる方法の幅を知らぬ天使へ。融通の自在さに目もくれぬ敵へ。
「歪んだ喰らい方、まさに猟兵たるが所以」
 どこか忌々しげに返したブラキエルへ、今度はリインルインが告げる。
「やはりワカリませんか?」
 ひとときで、リインルインが尋ね返す。
「アナタのソレは執着、ワガママというのデスよ」
 ブラキエルはこれ以上ないほど、瞳へ惑いを宿らせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

英比良・與儀
【虹誓】

どうあっても相容れない立場だからな
倒す、としか言いようがない
ヒメ行くぞ
ああ、俺の守護者
守りは任せる

先に来る攻撃を避けることは試みるが
無理なら耐えることを念頭に置いて動くしかない
ヒメが俺を守る
それを邪魔することはしない
立っていられたら、ヒメが倒れても次の手を打つのが俺の仕事

懐に転がってでも入り込み、至近距離から水の礫を見舞うだけ
もし、攻撃受けそうになっても
ヒメが踏ん張って助けにくるだろ
いくら傷を負っても、後で俺が治してやる
だから俺を好きに守ればいい

は、そうだな
俺は神だから、人の願いは気まぐれに聞いてやらないこともない
でも、お前の願いはかなわないほうがいい
だから、俺とヒメで挫く


姫城・京杜
【虹誓】

一度は守り抜いたこの世界を
何より與儀の事を、全力で守る
俺は守護者だからな!

重いけど単純なら、攻撃の軌道見極める事は出来るはず
けど普通に躱しただけじゃダメだろうから
直撃避けた上で、衝撃少しでも軽くする様に手を尽くす

確り敵の予備動作見逃さず腕の一撃躱し
その際、天来の焔で確り身を守りつつ
鋼糸巻きつけて腕の一撃の軌道逸らすこと試みる

與儀を守る事が最優先
怪我だって厭わねェ
神の炎あちこち散らして派手に放ったり、声掛けたり
敵の意識が俺に向くように
お前が還るのは、天上界じゃなくて骸の海だ
意地でも倒れず持ち堪え、主は身を挺してでも守る
あとは與儀が何とかしてくれるから

お前達の望みは叶わない
俺達が叶わせない



 濡れそぼった翼を揺らめかせて、ブラキエルはひとつ息を吐く。
 共生の道など見えずに、英比良・與儀(ラディカロジカ・f16671)は混じり気なきまなこをそうっと細めた。
「ヒメ。いくぞ」
 言葉は簡潔ながら、強い眼差しで相対する存在を見つめている。
 彼の向く先を姫城・京杜(紅い焔神・f17071)も捉えていた。こくりと頷き想い馳せるのは、ブラキエルに蹂躙されようとしているこの大地のこと。
「一度は守り抜いたこの世界だ」
 守れたという証は、彼の中で静かに芽吹いていた。
 確かめるように手の平を見下ろしてみれば、ちりつく火の粉が窺える。心だけでなく身体も、守らねばと急いている。
「何より……」
 京杜はちらと與儀を瞥見し、ふふんと鼻を鳴らす。
「俺は守護者だからな!」
 誇らしげな笑顔が朗々と輝く。平時と変わらぬ調子の彼へ、與儀も口端を緩めて。
「ああ、守りは任せる」
 両者が紡ぐ応酬を、大天使ブラキエルはただただじっと眺めていた。眺めていたが、何を思ったかふと目を逸らす。そして二人の動きに感づき、随分と荒んだ巨腕を掲げる。ほぼ反射的なかれの一撃が、二人の描いてきた距離ごと世界を破砕しようと振り下ろされた。
 砕けた地面が欠片となって四方八方へ飛び散るも、舞い上がった赤き盾が二人の柔肌へ穴をあけずに済ます。破片が落ち着く頃になって、腕を突き出した京杜と、彼の後背に佇む與儀の姿をブラキエルも目撃した。天使の挙動はゆったりしつつも、かんばせが物語る――ブラキエルの抱いた一驚を。
 大いなる拳をブラキエルが引いた瞬間、京杜は黒革の首輪へ触れて。
(……大丈夫だ)
 己へ言い聞かせるように首肯した京杜の元から、紅が天翔ける。焔のごとき紅糸は、人と人とを繋ぐように、縁と縁を結ぶように、岩腕を世界へ繋ぎ止めた。阻みし者を砕く役目を負った腕は、軋みで苦痛を訴えながらも抗う。だが易々と糸から逃れられはしない。
 散りゆくひとひらだろうと、その色と熱さえあれば、京杜は結わえられるのだから。
「わからねェなら、教える」
 そして京杜は、猛き紅の中で言いきる。
「お前が還るのは、天上界じゃなくて骸の海だ」
 彼の一言は、ねめつけた双眸と共に熱くブラキエルを射抜く。情念とも呼べる彼の様相を察したらしく、天使は天使で面白くなさそうに息を落とす。
 するとブラキエルに代わり、岩石をかき集めて固めたような腕が、ぶちりと痛ましい音を立てて赤き糸を引きちぎる。
 一瞬の出来事だった。
 小さきものを押し潰すぐらい造作も無いのだと、そう言わんばかりに腕は、水を練りながら迫っていた與儀へ覆いかぶさる――だが砕き潰すための一打は狙いを外した。否、狙いは確かだったのに行く手を阻まれた。
「與儀っ……無事、だな?」
 音が力を帯びる。名が力を誘う。これからも変わらず呼ぶために、京杜は岩の着地点から與儀を突き飛ばし、半身を犠牲に守り切った。岩の下敷きとなりながらも鮮やかな彩りを浮かべ続けた彼に、與儀ではなくブラキエルが目を瞠る。何故、そこまでするのかと問うかのように。
「さすが俺の守護者」
 そんな天使をよそに、守護者を褒める與儀の口振りはやはり、いつも通りだ。
 何処からでも飛んでくるのが京杜だと、與儀にはわかっているから。
「いくらでも後で治してやる」
 心配も治療も後回しだ。與儀の眼差しは敵だけを見据えている。
 もたげた與儀の顔ではきらきらと光が滲み、ぱちぱちと弾けた守り手の紅が、流れる彼の金色に映った。混じり合う色調と共に青く透けた水が、震える。練られ、編まれてきた濃い水を與儀は解き放つ。困惑か驚きに、ほんの僅か狼狽したブラキエルの懐で。
 生命の源たる雫は、空も大地もあらゆるものを映して、今日も世界へ降り注ぐ。ただ降り注ぐ先にある、現在と未来を滅ぼす悪意の塊に対してだけ、冷たく刺すように叩いた。水の礫が岩をも打ち破り、天使を織り成す威光へ穴をあけていく。
「愚者こそ骸と化すべき存在、世界に不要な塵芥に過ぎない」
「は、不要な塵芥か。言いたい放題じゃん」
 天使の傲慢さを、與儀は鼻で笑い飛ばす。
 そして自身より遥かに大きなブラキエルを見上げながら、明瞭な音で志を紡ぐ。
「俺は神だから、人の願いは気まぐれに聞いてやらないこともない」
 人心が揺らぐほど、神は人の願いを常に浴びる存在で。
 そうして生きてきたからこそ、わかる。
「お前の願いは、かなわないほうがいい」
「……っ、そうだ」
 與儀の言を、岩の下から這い出た京杜も掬い、肯う。
「お前達の望みは叶わない。俺たちが、叶わせない」
「そう、俺とヒメで挫く」
 根から葉末まで移ろうことのない彼らの絆を、ブラキエルは忌々しげに、そして何処か懐かしむように睨みつけていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【月風】

変身状態維持

…友
オブリビオンなのに?
一瞬詰まるが頭を振り

あんたが友の為にも退けねぇってように
俺も退く訳にはいかない

ここは瑠碧が生まれた世界だから
もっと知りたい
一緒に旅もしたい
共に生きていきたい
だから

負けらんねぇ
覚悟込め

単純で重くて大きい攻撃ってのは
分かりやすいんだ
ましてやその腕岩石だろ
ぽろぽろ破片が降ってくるぜ
攻撃引き付け打点避け見切り
狙い逸らすように残像纏いジャンプしカウンター
同時にUC起動
加速しグラップル
蹴り叩き込む

背後に感じる気配が心強い
…俺は独りじゃない
自らを鼓舞
瑠碧の援護活かし
氷に合わせ限界突破
暗殺用い更に効果的にダメージ与えられる様穿つ

寂しいだろ?
友達待ってんぞ
拳の乱れ撃ち


泉宮・瑠碧
【月風】

ブラキエルがどんな思いでも
虐殺は、赦せません
…ごめんなさい

理玖も守ろうとしてくれる
この世界は…
人だけでなく、自然も生きているから

地の精霊へ願い
岩石の腕を可能な限り脆く
大地へ返る様にと

私は杖を手に転移光雨で精霊の通り道を開き
門から零れる精霊力は
理玖が傷付く度に治癒の光雨へ変えて治します

相手に放つUCでは無く
過去の命でもあるけれど
光雨は念の為
ブラキエルへは避けて

理玖と射線が被らない様に動き
転移は
避けられない攻撃の回避や
理玖の影から援護する際にも使用

樹の時と同様
光雨や相手の光の照り返しで
鎧の継ぎ目や届く箇所は逐次、理玖へ伝えて
氷の槍も撃ち込みます

天上界の事は忘れて、もう眠れますよう
…安らかに



 強敵という響きを集めたかのようなブラキエルを眼前に、変身したままの陽向・理玖(夏疾風・f22773)は、ぐっと腰を据えた。対峙する敵がいかに強くとも、やるべきことは変わらない。すると。
「猟兵は、友の道行きに転がる石つぶて。我が友の願い、害成すもの」
「……っ、く! なに、を……」
 ささいな一言が、理玖の胸裏を掻き乱す。
 我が友。ブラキエルが口にした響きは、理玖にとって聞き逃せない音をしていた。面差しこそ変わらぬというのに、理玖からすると友の話をするブラキエルの様子はどこか柔らかく、そして必死に思えた。
(友? 友のために動くって? オブリビオンなのに?)
 逡巡はほんの一瞬。けれどすぐさま理玖は、ぶんぶんと思い切りかぶりを振って、『敵』を見据える。
 そして何かに縋ろうとするブラキエルの姿は、泉宮・瑠碧(月白・f04280)の瞳を潤ませていた。
「どんな思いでも、虐殺は、赦せません……」
 ごめんなさい、と付け足した彼女は両の手を合わせ、清廉なる指を折りたたむ。
 どうか。どうか地の精霊よ――閉ざした瞼越しでもよく知った世界で、瑠碧はただひたすら祈りを捧げた。
 だって、この世界は。理玖も守ろうとしてくれる、この世界は。
(人だけでなく、自然も生きているから)
 人の営みに苦言を呈する天使もあれば、彼女のように天地も動植物も、すべてに備わった命を想う者もいる。
 森の巫女だから、という理由だけではない。
 瑠碧にとって、自分が生まれて歩いてきたこの世界は、大切な場所だ。彼と生きていくためにも。
 それは月影が揺らめくのに似た、やさしい色(いのり)だった。
 静謐な瑠碧の彩りを背に、理玖はひた走る。
 単純な攻撃は、理玖の目ならば容易く捉えられる。
 そんな状態で迷いなき巨腕が振り下ろされ、風切の音も重たく地へ向かう。なだらかな野を砕き、そこに咲く草花といった命を散らし、対抗する猟兵もろともすべて――理想の礎にしようとする。
 しかし羽根よりも軽く、風よりも疾く、理玖は天へと飛び上がっていた。地を殴打したばかりの岩腕の脇から、颯爽と。
 彼が動く間に、瑠碧の願いを掬い上げた地の精霊が、岩腕を朽ちさせていく。
「大地へ、どうか還りますように」
 瑠碧の言葉が空へ消えた直後、理玖は七彩に包まれる。
 次に彼の輪郭がブラキエルの目に映る頃にはもう、ライジングドラグーンへとフォームチェンジも済ませていて。
「俺も、退く訳にはいかない」
 はらはらと散る岩の欠片が、理玖と天使、両者の視界を遮る。破片の幕が異様にゆっくり降りていると理玖が感じたのは、きっと――自分にとって一瞬が大事で、かれにとって時間は詮無きものだから。
(負けらんねぇ……!)
 むんずとブラキエルを掴んだ理玖が、そのまま勢いも糧に蹴り入れる。
 凄まじい衝撃音と合わせて羽根を散らせた天使は、ぐらりと身を傾けながら理玖をじっと見つめて。
「何故だ」
 そう問うた。
 人に特別な関心を抱かぬブラキエルからの、あまりに口数乏しい質問に、理玖は短い息を吐く。
「あんたが友の願う世界を想うなら、わかるだろ。ここは……瑠碧が生まれた世界だ」
 彼女を生んだ世界は、もっと知りたい世界。
 彼女が歩いた世界は、一緒に旅をしたい世界。
 彼女が生きる世界は、共に生きていきたい世界。
「俺にとって、理由はそれだけだ。それが理由だ」
 理玖の言に、ブラキエルは眉根を寄せる。
 かれは、翼をもがれたとて苦痛を浮かべない。猟兵たちの猛攻により散った羽根を眺め渡すことも、惜しむ素振りもしない。けれど猟兵たちの言葉には、動揺した。
 その名残が消えぬうち、祈りを連ねていた瑠碧は杖をそっと掲げ、光の雨を戦場に喚んだ。まもなく精霊たちの通り道が、二人の元に敷かれていく。
「門よ。今こそ精霊の導きによりて、開かれん」
 瑠碧の想いは悪しきものも、負に苛まれるものも押し流す。悔しさも、悲しみも、痛みも洗い流すように。だから理玖がどれだけ傷つこうと、治癒の雫が拭い去ってしまう。そして慈しみの雨は、天使たるブラキエルへは注がれない。
 寂しげに瑠碧はブラキエルを視界へ入れて、ぱちり、濡れた睫毛をそのままにまじろぐ。
「君にはきっと、まだ……」
 そんなことを囁いて、瑠碧は凍てつく矛で純白を貫く。
 翼や加護の鎧で己を守るのも叶わず、ブラキエルは地へ堕ちた。そこへ。
(……俺は、独りじゃない)
 吸い込んだ息が澄んでいると感じながら、理玖は地を蹴っていた。自身の心が、神経が研ぎ澄まされていく。瑠碧の雨がそうさせ、瑠碧からのあたたかな眼差しがそうさせる。
 だから彼女という存在と生きている限り、理玖は――寂しくなんか、ない。
「なあ、寂しいだろ?」
 ブラキエルへ手向けた理玖の一言と拳が、死を忘れたはずの天使を瞠目させた。
「友だち、待ってんぞ」
 別れの挨拶はやさしい音で結われる。
 数々の絆や、手を取り合う心に追いやられて消滅していくブラキエルを、理玖は他には何も告げず見送る。代わりに、彼女が祈ってくれると解っていたから。
「お願い、します。天上界のことは……もう、忘れて」
 安らかに眠れますようにと、瑠碧は何度目かになる祈りを寄せ、光雨を招いた。
 今度は、今度ばかりは――かの大天使のための涙だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月18日


挿絵イラスト