猟書家決戦~その可能性へ捧ぐ
●月より送る君の、
月を覆う『骸』が解けていく。『還って』いく。
僅かに残っていた影すら失われ、アックス&ウィザーズの月は元の輝きを完全に取り戻した。
見よ。この世界の『骸の月』は潰えたのだ。
見よ。我が可能性(こたえ)は潰えたのだ。
「……許せとは言わぬ。君も我も、及ばなかった。その事実がただ、こうして在る」
元より故郷の天上界に愛憎こそあれ、求めるものなど無かった己である。
唯々、友である書架の王『ブックドミネーター』が己に望んだから。
その為だけに空の月を染めた。それが、絶たれた。
程なく猟兵もグリモアで己を捉えるであろう。
ならば、どうする。こうまでして今生に可能性を求めた君を――どうする。
「我が友よ。君の願いは叶わなかった。だが、君を『骸の海』へは還さぬ」
蒼氷の如く冷たい精髄剣の刃に触れれば、剣は末端から氷片となって形を失い虚空へ溶けてゆく。
「我が君を連れて還ることは叶わぬであろう。ゆえに、君は『書架』へと帰るがよい。
我は、天上界の扉を開く僅かな可能性を実行する」
手の中の冷気が失われ、剣が消え去るのを最後まで見届けてから、月面より昏い『天』を見上げる。
(……もっとも、ヴァルギリオスさえ見逃し、あまつさえ封印された愚か者共が、今更地上の危機に扉を開く事もあるまいが……)
我ら猟書家、求むるは「識」なれど。
武と殺戮を躊躇いはせぬ。
●岩腕の王
予知を見たと久々にグリモアベースに現れたのは、城門のヤドリガミである出水宮・カガリであった。
「猟書家によって侵略されていた、アックス&ウィザーズの骸の月を。完全に押し返した。それはよかったのだが。
オウガ・フォーミュラ……まあ、あの世界での、猟書家の王だな。それが、動いたようなのだ」
これまでは、その王の方針の下に幹部達が手勢を引き連れ悪事を働いていたのだが、ついに王自らが出向いてきたのだ。
アックス&ウィザーズのオウガ・フォーミュラは『大天使ブラキエル』。本来猟書家勢力の全体を統率していた書架の王『ブックドミネーター』の遺志を継いだ猟書家であるが、その能力は全くの未知であった。
「ブラキエルに率いられた、オブリビオン達は。皆なぜか、岩の腕や鎧を生やしていてな。この岩が、異様に硬い。それゆえに、強い。とても。
それらが暴れ回って、あらゆる命を奪っている。人間、エルフ、ドワーフ、フェアリー。他にも、他にも。男も女も、老いも若きも。『命があるならば平等に』、奪っている」
それによって、ブラキエルに何の利があるのかはわからない。あるいは、この虐殺と殺戮自体が目的なのかもしれない。とにかく猟兵として、この殺戮を一刻も早く止めねばならないことだけは確かだ。
「行こう。理由なく、理不尽に殺される命を助けるために」
カガリが己のグリモアを展開する。開かれた黄金の門を潜れば、そこに広がるのは――最期の日を待つはずだった村だった。
●神龍を崇めるクレリック
そこは、猟兵達が対峙する前の帝竜ヴァルギリオスを打ち倒した勇者を輩出した辺境の村だった。
辺境でも誉れ高く、歴史もあるはずの村は今、片腕に異形の岩腕を生やした少女達の熱い視線を受けていた。
「あれがかつての勇者の村ですって?」
「勇者は蘇らなかったではないですか」
「勇者が信じていた神は何もしてくれなかったではないですか」
「ヴァルギリオス様は死して尚蘇られたというのに!」
「ヴァルギリオス様こそ、真なる神の遣わされた神龍……私達が神龍教のクレリックとして、教えを授けなければ」
彼女達は、布教のため。『偽なる神』を否定するため。
これからその創造物たる命を根絶やしにするのだ。
そうせよ、と。岩腕を授けたあの輝ける大天使は告げたのだから。
旭吉
旭吉(あさきち)です。
ブラキエルは書かないといけないと思って。
オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』戦をお送りします。
●状況
アックス&ウィザーズの辺境の村。
かつて帝竜ヴァルギリオスの討伐に向かったクレリックの勇者を輩出した歴史があります。
現在は遺跡となったクレリックの神殿も大事にされており、オブリビオンの襲撃を受けると住人は神殿へ逃げようとします。
(猟兵達が転送されるのは襲撃を受ける直前です。到着するとじきに岩腕を生やした集団が見えます)
ただし神殿は古いため、オブリビオンの岩腕には耐えられません。
一般人が殴られると一撃で死にます。猟兵でも肉盾は重傷を覚悟してください。
演出や台詞は盛っていきたいと思います(特にブラキエル戦)
あんまり派手な怪我はしたくないとか、装備に万が一にも傷を付けたくないとか、そういう方には参加をお勧めできないかもしれません(判定次第では軽傷・無傷で済む場合もあります)
ご参加の前に、ご一考くださいませ。
どなたかとご一緒に参加される場合、お相手のIDか【】で括ったチーム名をお願いします。特殊な呼び名などあれば書いて頂けると助かります。
●プレイング受付
1章は【5月7日(金)8:31~の受付予定】です(以降の章は都度ご案内します)
システム的に受付可能な限り受け付けます。
(完結スピード重視の方にはお勧めできないと思います)
できるだけ多く採用する予定でいますが、キャパ的事情により、問題が無いプレイングでも流してしまう事があるかもしれません。
ご了承ください。
●プレイングボーナス
プレイングボーナスが発生する章もあります(ない章もあります)
1章は【ありません】(ただし、住人の動揺を静めたり、オブリビオン側のクレリックの信仰を揺らがせるような何かがあれば、何かしらボーナスがあるかもしれません)
第1章 集団戦
『神龍教派のクレリック』
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POW : 信仰心の証明
自身の【神龍教への信仰心】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : 神罰の吐息
【天から降り注ぐ聖属性の突風】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に神龍教徒のみに及ぼす加護が満ち溢れ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ : 神龍降臨の儀
無敵の【神龍】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●敵の敵は
――我が帝竜を崇める輩に力を与えるのはおかしいか。
――否定はせぬ。本来であればその通りだ。
――君のような効率的な用兵は、その術も時間も、今の我は持たぬゆえ。
鏖殺せよ。殺戮の限りを尽くすがいい。
その信仰が本物であるならば。
マリアドール・シュシュ
【鳴華】○
マリア一人なら太刀打ち出来なくても
ソウジ、あなたとなら
共にあの大天使の所まで辿り着き、討ち取りましょう
まずは今出来る事をするのだわ
一般人の避難誘導、村と神殿の護衛を最優先
UC使用
92体召喚
一角獣を3体合体させ自分が乗る
各5体ずつ合体させ15体の一角獣を用意
逃げ遅れた人、怪我してる人、子供や高齢者優先的に一角獣の背に乗せて安全な所へ逃がす
安心して頂戴
マリア達が絶対に死なせないわ
神殿は駄目、どうかマリアを信じて…此方へ来て!(手を伸ばす
竪琴で心穏やかな旋律を奏で一般人の心を和らげる
4体の一角獣で敵の突風を受けて防御
敵の力は上げず
残り10体は村と神殿を極力守る
彼らの大切な故郷を失くさせない
ソウジ・ブレィブス
【鳴華】○
力比べなら僕がしてあげる
マリアドールちゃんの邪魔はさせてあーげない!
それに、困った人を止めないとかありえないでしょ
メッ、なんだからね
使うのは双鳴慈突、僕の身の丈くらいの大きい斧剣!
突風な神罰はあえて受けてもいいよ
向かい風だろうと吹き飛ばされてもいい
願わくば、上向きに飛ばされるのが理想的
重力落下って、いい言葉でしょ?
パフォーマンスを重視するつもり
信仰心は立派だね
でも物理にモノを云わせるなら
それ、信仰する意味ないんじゃない?
君よりあっちの彼女の願いの方が心に響くと思うけど
斧剣をフェイクに使おうかな
僕の足元は蒼を奏でる狼が吠えるから(にっこり
ああUCは急な方向転換、加速に必要な時に使うよ
●許されざる信仰
降り立って最初に見えたのは、小さな村だった。
生活空間と思しき家々が並ぶ辺りから少し奥まった場所には、かなり古そうな石造りの神殿が見える。古いが、放置はされていない――ひと目見て大事にされていることが窺える外観だった。
そのような大事なものなら。尊き想いと命が息づく、綺麗な場所なら。
「あ――」
マリアドール・シュシュ(f03102)の星芒の眸に、華水晶の髪に隠れた耳に、それらが届く。尊いものを『平等に』蹂躙する岩腕を持つ少女達と、彼女達による破壊の音だ。あの華奢な体のどこに、あれだけの重量を感じさせる腕を自在に使いこなす力があるのだろうか。自分には――ひとりでは、とても。
「心配しなくていいよ。力比べなら僕がしてあげる」
悪戯っぽくも頼もしいソウジ・ブレィブス(f00212)の声は、傍らに軽やかに。今のマリアドールは一人ではない。
「ソウジ」
「マリアドールちゃんの邪魔はさせてあーげない!」
一人ではないなら、できる。
今やりたいことはわかっている。今やるべきことはわかっている。
ならば、細かな言葉は不要――!
「共にあの大天使の所まで辿り着き、必ず討ち取りましょう。そのためにも今は!」
「困った人を止めないとかありえないでしょ!」
約束だけを交わして、二人は反対方向へ駆け出した。
「はああああっ!」
前方から襲来する少女達の応戦へ向かったソウジは、間近に迫った一人に身の丈程もある斧剣『双鳴慈突』を振り下ろす。少女が咄嗟に岩腕で身を守ると、その腕には傷一つ付かなかった。
「これは大天使様に頂いた御加護よ。ただの武器が通用するはずがないわ」
「この双鳴慈突も狐の力を宿してんだけどねぇ……でも、腕以外はどうかな!」
後方で懸命に尽くしているであろうマリアドールのためにも、村人達のためにも、このような少女達は一人でも多くここで引き留めねば。
今度は腕を避け複数人を巻き込むように横へ薙ぐ。軌跡を辿って紫の狐火が奔れば、少女達のいくらかは防御が間に合わず傷を負い、いくらかは腕で庇おうとして大きく弾かれた。このままいけば、体力が続く限りはここの維持は可能だろう。
その間に、どうか。
「神龍様、我らに御加護を。仇成すものに天罰を!」
少女が高らかに告げると、にわかに空が陰り始める。見上げればそこには暗雲が渦巻いており、やがて光ったかというと一直線に突風が吹き下ろしてきた。
すかさず地を蹴り、見えぬ突風を躱す――のではなく。なんと、ソウジはその場で天からの突風を浴びたのだ。
大地ごと抉り取った風は、塵芥のように空高くソウジを巻き上げる。突風の直撃に加えこの高さから地に落ちれば、いくら猟兵とて。
「……メッ、なんだからね」
脱力していた体に力を込め、地に向けて空を蹴る。空を駆け上がるためのスカイステッパーは今、地へ向けて幾重にも加速を重ねる力となる。
「信仰心は立派だね。でも物理にモノを云わせるならそれ、信仰する意味ないんじゃない?」
「何ですって……この力こそは神龍様の奇跡! 信仰の奇跡なのです!」
「だって、さ」
地上で迎え撃つ少女と、空から墜ちてくるソウジが交錯する瞬間。彼は確信して笑った。
「君よりあっちの彼女の願いの方が心に響くと思うけど」
一瞬注意を逸らして、力の限り斧剣を振り抜く。しかしそれは頑健な岩腕に阻まれ――それこそが、真の狙いだ。
「その目に映して逝きなよ。本当の奇跡って奴をさ!」
斧剣の陰から、ソウジの爪先が鋭く繰り出される。岩腕での防御は間に合うはずが無く、少女はその爪先を喉元へまともに受けることとなった。
その爪先から飛び出していた、蒼い鉤爪。『蒼を奏でる狼』にとどめを刺されたのだ。
背後で凶悪な突風の音を聞いたとき、マリアドールは一抹の不安に駆られた。
(……大丈夫。ソウジなら、大丈夫なのだわ)
自分を信じてくれた彼を、自分が信じなくてどうする。今は彼に報いることだけを考えねば。
ソウジと別れてすぐ、マリアドールは90体以上ものクリスタルユニコーンを召喚し、その内自分が騎乗する分も含め数体を合体させると村へと急いでいた。ユニコーンの脚力のお陰で岩腕の少女達より先んじて到着し、村に危機が迫っていることを知らせることができたのだ。
「安心して頂戴。マリア達が絶対に死なせないわ」
勇者の伝説を持つ村だからか、水晶の一角獣を引き連れた彼女のことを村人達はすぐに信じてくれた。そうと決まれば自分達はすぐにでも神殿へ避難を、と動き始める彼らをマリアは引き留める。
「神殿は駄目、今来ている敵は神殿の壁だって壊してしまうの! どうかマリアを信じて……此方へ来て!」
「あのぅ……そんな敵なら、神殿は壊されてしまうのでしょうか……」
「勇者クラヴィーア様ゆかりの、あの神殿は……」
命を守るために神殿を手放すことに、彼らは抵抗を感じているようだった。辺境の村の、唯一の誇り――過去に勇者を輩出した歴史。その象徴を失ってしまうことへの恐れだろう。
「ここにいる以外にも、マリアのクリスタルユニコーンはいるのよ。村の外で戦ってくれている仲間もいるわ。この村も、神殿も……あなた達の大切な故郷を、失わせないわ」
絶対、は約束できない。それでも、できる限りは。
不安を拭いきれない村人達に、マリアドールは祈りを込めて黄昏色の竪琴を奏でる。事は一刻を争うが、それでも彼らに不安と混乱がないように。
「大丈夫。生きていれば、帰ってこれるわ。マリアを信じて……」
風の音が近くで聞こえる。クリスタルユニコーンが敵の風を受けているのだろう。ソウジはどうなったのだろうか。
(……大丈夫。大丈夫よ、マリア)
仲間を信じられない者の言葉を、どうして他人が信じられよう。
彼と村人への決意を、マリアドールは竪琴の音色に込めた。
「わかりました。頑丈なのは神殿ですが……隣村へ繋がる道があちらに。距離が離れているので、安全かと……」
「ありがとう! お年寄りや子供、怪我人や病人がいれば先にユニコーンに乗せてあげて! 他の人達も急ぎましょう!」
避難へと動き始めた村人達を、マリアドールは懸命に誘導した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シキ・ジルモント
○☆
突風を回避しやすいように下手に接近せず、銃の射程を活かしてユーベルコードで攻撃
数を減らして住人や建物への被害を防ぎたい
岩腕は射撃で勢いを削ぎ、軌道を逸らして直撃を避ける
住人の守りを優先、攻撃が向くなら射撃で牽制して妨害、割って入り庇う事も考えておく
ダメージはあるだろうが、住人が被害を受けるよりはいい
敵が住人を惑わすなら、こちらも言葉で対抗する
勇者が蘇らなかった?いや、彼らは確かにあの場に存在した
俺たちは彼らに助けられて群竜大陸での戦いを制した、村に帰って来る事が叶わずとも彼らはこの世界を守ってみせた
それに引き換え、ヴァルギリオスが倒されても何もしてくれないのは「真なる神」の方ではないのか?
月水・輝命
〇☆
SPD
五鈴鏡は複製で。
ブラキエル戦……いよいよですのね。
まずは、彗、人々の避難誘導と安全を優先にしてください。「偵察」して、敵の居ない方へ。
安心させるように「慰め」るのも、お願いしますのよ。
わたくしは、クレリックの方々を退けに行きますの。
突風は、鏡像による「残像 」と、「オーラ防御」で何とでもなりますが……
水「属性攻撃」で、地面に水面を張っておきます。突風は水面に当たるので……折を見て、その水から矢とすることで岩腕を削ったり、捕縛し他の猟兵の方々の支援になるように動きますの。
水の上で、彼らが踊れないように。
水は変幻自在、そして鏡面にもなり得ます。ここから先は、一歩も通しません。
●防衛作戦
既に別の猟兵によって住人達の避難誘導が始まっていた村を見て、シキ・ジルモント(f09107)と月水・輝命(f26153)は僅かな安堵を得た。しかし、避難の完了にはまだ時間がかかりそうだ。一方で、敵の少女達はすぐそこまで来ている。
「彗。住人の皆様の避難誘導と、安全を優先に。いいですね」
仔虎の姿をとった聖獣である『彗』は頷くと、歩いて避難する村人の足元に寄り添い共に歩き始める。そうやって人々の心を和ませつつ、周囲への警戒も怠っていなかった。
「建物への被害も少ない方がいいだろう、命が助かっても家が無いのではな。連中はなるべく村の入口より手前で押し止めたい」
「同感ですわ。お手伝い致します」
シキに輝命が同意したその時、地響きが聞こえる。住人達が避難している方角とは逆、少し離れた所で応戦していた猟兵の奮戦を振り切って、一部の少女達が前進し大地へ岩腕を叩き付けていた。
「聞きなさい! 偽なる神を奉じる者よ!」
「私達こそが救い主。私達こそが、あなた達を長年の呪いから解放する者です!」
声高に告げる声はよく通り、避難に集まっていた住人の耳にも届いてしまった。
「呪い……? そんな馬鹿な」
「偽なる神? 何のことだ?」
「耳を貸す必要はありません、皆さんは早く避難を!」
輝命が避難を促す間にも、少女達のよく通る声はその教えを説き始めた。
「あなた方がその神殿に祀る神は、あなた方をとうに見捨てているのです! 見捨てていないのならば、なぜその神を信じていた勇者は命を落としてしまったのでしょう!」
「真なる神ならば、偉大なる勇者を慈しみ再びの命を与えたことでしょう。永遠の加護を与え、皆様の守護者としたはずです。なのに、何故でしょう!
それは、そのような力を持たぬ偽なる神であるからです!」
真に迫ったその声は、不思議な説得力を持っていた。有り得ないと思っていても、もしかしたらそうかもしれない、と疑いたくなってしまうような。
「ならこちらも言わせて貰おう」
その声に静かに、しかし力強く対抗したのはシキだった。
「勇者が蘇らなかった? いや、彼らは確かにあの場に存在した。
俺たちは事実、彼らに助けられて群竜大陸での戦いを制した。村に帰って来ることが叶わずとも、彼らはこの世界を守ってみせたんだ」
それに引き換え、と。シキが見据えた先の少女達は、不機嫌を露わにしてこちらを睨みつけている。
「ヴァルギリオスが倒されても何もしてくれないのはお前達が信じる『真なる神』の方ではないのか?」
「いいえ、いいえ! ヴァルギリオス様は一度倒された後、確かに蘇られました!」
「その後は? お前達の『真なる神』とやらだって、精々一回しか蘇らせてくれないのだろう」
「まだなだけです! これから時間をかけて、きっとまた……!」
少女達は明らかに言葉に詰まっていたが、そう時間をかけない内に開き直ったのか勢いを取り戻した。
「あくまでも私達の真なる神を否定されるならば、身を以て我らの神の教えを授けるまでのことです!」
「それはさせません。あなた方は、そこから一歩も進むことはできないのですから」
今度は輝命が強く答える。彼女が手にしていた五鈴鏡(ヤドリガミである彼女の本体ではなく、その複製)を少女達の足元に向けると、そこに広大な鏡――大きな水溜まりが生じた。当然、水溜まり如きを恐れはしない彼女達は気にせず進んでくる。
その時、足元の水が巻き起こり少女達の手足に絡みついてその行動を阻害した。
「シキさん!」
「…………――――!」
狙い澄まし、一瞬呼吸を止めてハンドガン・シロガネの引き金を引く。ユーベルコードの力で放たれた弾丸は、体勢を崩した少女の肩を正確に射抜いた。
「ぐうぅ……っ この程度、こんな水程度に、我らの信仰が! 神よ、我らの神よ!」
彼女達が救いを求めるように天へ祈る。それに応えるように生じた突風に対し、シキは建物の陰へ身を隠し、輝命は敢えて回避せず五鈴鏡からオーラを生じさせて受け止めた。
「水は変幻自在、そして鏡面にもなり得ます。あなた方の暴虐を全てうつしとり、うつしましょう」
なおも諦めず、水が絡みつくように滴る岩腕を振り上げる少女。満足に自由の利かないその胴体へ向けてシキがもう一発弾丸を撃ち込むと、少女は糸が切れたように水へと沈んだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ニクロム・チタノ
自分達の信仰のために何の罪もない命を摘み取って何が神だよ!
ボクはその信仰に反抗するよ!
岩石の腕、あんなモノで攻撃されたら神殿が壊されて沢山のヒト達が犠牲になるなら
反抗の加護あり
岩石の腕の一撃が来る瞬間に超重力領域を展開して岩石の腕を重くする
そんなに大きな岩重力を掛けたらたちどころに重くなって振り回すのは難しくなるよ
そこに急速接近して岩石の腕に飛び乗る、こんな近くじゃあ殴れないね?
反抗の雷装で威力の上がった一撃を叩き込む!
さあ、これより反抗を開始する
どうか反抗の竜チタノの加護と導きを
フェルト・フィルファーデン
本当に、人の命をなんだと思っているのかしらね。
ええ、アナタ達がそのつもりなら、こちらも一切の容赦をしないわ。覚悟なさい!
それだけあの竜を信仰しているのなら、その竜を見せてあげる。
電子の蝶よ、幻を見せてあげて。あの帝竜、ヴァルギリオスの幻を!
ふふっ、その紛い物の神龍とやらは本物に敵うのかしらね?【挑発】
動揺すれば弱体化は必至。その上隙も生まれるわ。
その隙を狙い、騎士人形の弓矢で狙い撃ち、一撃で仕留める!【スナイパー】
敵の数を減らしつつ村を狙う攻撃は騎士人形の盾に障壁を付与。
【盾受けxオーラ防御】
【庇い守って誰も傷つけさせないわ!
天使よ、待っていなさい。アナタの思い通りには、何一つさせはしない!!
●真なる信仰
ニクロム・チタノ(f32208)とフェルト・フィルファーデン(f01031)は、共に憤っていた。
何かを信仰したっていい。この村の住人も信仰する神があって、そのために神殿があって、それを大事にしている。
だが、この岩腕の者達はどうだ。それが崇める神はどうだ。
「自分達の信仰のために何の罪もない命を摘み取って何が神だよ!」
「本当に、人の命をなんだと思っているのかしらね。ええ、アナタ達がそのつもりなら、こちらも一切の容赦をしないわ。覚悟なさい!」
他の猟兵の攻撃によって行動を束縛される個体も出始める中、彼女達の怒りに対して神龍派の少女達も己の正当性を口にする。
「罪がある故に罰するのではありません。これは救いなのです! 我らは偽りの神に誑かされる人々を救うために、人々をこの世から解放するのです!」
「この世から解放して、君達と同じオブリビオンにすることが救い? そんなふざけた信仰……ボクは反抗するよ!」
ニクロムが駆け出し神龍の少女に打って出ると、少女もこれを迎え撃つ。外見だけなら細身に見えるニクロムを一撃の下に消し飛ばさんと、少女が岩腕を振り抜いてきたその瞬間にニクロムは両手を翳した。
「あ……!?」
「そんなに大きくて重そうな岩の腕、重力をかけたら立ち処に重くなって振り回すどころじゃないよね」
それに加え、ニクロムは重力に負けて地へ落ちている岩腕へ飛び乗る。
「こんなに近くじゃあ、この腕で殴れないね?」
「ああ……神龍様、神龍様……どうか……」
「これより反抗を開始する。どうか反抗の竜チタノの加護と導きを」
「――どうか私に試練をお与えください!!」
威力を増した反抗の雷装で、間近の距離から一撃を叩き込む。確かな手応えを感じたし、岩腕が動き出す様子はない。まずは一人――
「あ、ぁ……神龍、様……ヴァルギリオス、様……これが、貴方様の試練……!」
神龍の少女は瀕死の浅い呼吸の中、それでも恍惚とした表情で呟く。この不利な状況を『試練』と認識することで、彼女は自身を強化したのだ。それが、彼女達『神龍派』の信仰なのである。
「まだ息があることは驚いたけど、どうせ君はもうもたないんだ。今度こそ骸の海に還してあげるよ」
「それとも……そこまであの竜を信仰しているのなら、見せてあげましょうか」
岩腕の上から見下ろすニクロムの隣りに飛来したのはフェアリーのフェルト。その彼女の周囲に電子の蝶が群れを成すと、やがて一体の巨大なドラゴン――八つ首の帝竜、ヴァルギリオスの形を取ったのだ。
「ふふっ、どうかしら?」
幻のヴァルギリオスが咆哮を響き渡らせると、岩腕を封じられた少女は呆然と見上げる。
「ヴァルギリオス、様……いいえ、違いますこれは、これは……!!」
その動揺は、あまりにも大きな隙。
「ヴァルギリオス様は、もっと、もっと……こんなはずでは、ヴァルギリオス様――!!」
彼女の信仰が『本物』よりも完璧な、帝竜以上の神龍を創造する。しかし、信者が『本物』に疑念を抱いた時点でその信仰は揺らいでしまっているのである。
そのような信仰の元に想像され、創造された『神龍』など。たかが知れていた。
「アーチャー、仕留めなさい!」
右手の薬指に意識を集中して、騎士人形を解放する。現れた人間サイズの女性人形は弓を引き絞ると、いまだ動揺の中にある少女の額を一射の元に射抜いた。
「まだ他にもいるみたいだよ」
「ひとまず壁を作るわ。ランス&シールド!」
村を狙う少女が他にもいることをニクロムが告げると、フェルトは今度は左手の中指から槍と盾を装備した男性騎士人形を解放する。解放された人形は他の少女へと向かいその進路を盾で妨害する。
「庇い、守る。誰も傷付けさせないわ!」
「ボクもまだ始めたばかりだからね。反抗を続けさせてもらうよ」
何一つ、思い通りになどさせない。
妖精姫と反抗者の二人は、最前線での反撃を開始した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
禍神塚・鏡吾
技能:大声、全力魔法、恐怖を与える、だまし討ち、集団戦術、ブレス攻撃、地形破壊、陽動
アドリブ・連携歓迎
「テロリズムによって天上界の住人を刺激し扉を開かせる、というところでしょうか?
天上界自体には興味がありますが、実行させるわけにもいきませんね」
まずは神竜教徒達ですが……一つその信仰を試してみましょうか
「聞きなさい! 貴方達が崇める神龍は、我ら猟兵に下りました」
「証拠をお見せしましょう!」
電脳魔術でヴァルギュリオスの幻を作り、神竜教徒を威圧します
それだけでは納得しないでしょうから、ブレスを装ったレギオンの攻撃で敵を何体か巻き込んで地面を抉ります
「御覧なさい、最早神龍が貴方達を守る事はないのです」
ティオレンシア・シーディア
○☆
はぁ…狂信者ってどこの世界でもどいつもこいつもどうしてこう厄介なのかしらねぇ。ホントやんなるわぁ…
ただの人間のあたしじゃ強化された連中の一撃耐えられるわけないし、なんとか遠間からの撃ち合いでどうにかしたいわねぇ。
エオロー(結界)で〇オーラ防御を展開、ミッドナイトレースに○騎乗して●轢殺を起動。最大戦速で空中駆け回りつつグレネードで○爆撃するわぁ。破片・焼夷・閃光に煙幕、種類はいろいろあるわよぉ?
当然これだけで倒せるわけないし、隙を見せた奴から流鏑馬で撃ち抜いてきましょ。
イサやソーンで妨害するもよし、ウルやシゲルで吹っ飛ばすも良し。これでも汎用性と対応力には多少自信あるのよぉ?
ヴィクトル・サリヴァン
〇☆
よーやく首領の登場だね。
しかし速攻で実力行使に出る辺り、識より暴力のが本質っぽいような。
ともあれ虐殺なんてさせないよ。
敵襲来前に村人達に接触。
邪教徒が襲撃かけてくるみたいだけど安心して、ヴァルギリオスも倒してきた俺達が倒すからと堂々と言い少しでも不安和らげよう。
信じなくても見てるといいから、と邪教徒達迎撃に。
戦闘では支援重視。
高速詠唱からの水と氷の魔法で敵の足元に水を広げて凍らせ動きを縛ったり、銛を邪教徒にぶん投げ攻撃してく。
…蘇ってから負けてるよねその帝竜、そんなのが神龍なの?と挑発したり疑念抱かせたり。
UCでは氷と砂嵐を合成、氷の礫混じりの砂嵐で視界奪いつつ神殿への接近を妨害してみる。
●神秘の『像』
既に神龍教の少女達と交戦を始め、街の防衛や住民の避難誘導も始めていた猟兵達。しかし、未だ多勢に無勢である。
「よーやく首領の登場だね。しかし速攻で実力行使に出る辺り、識より暴力のが本質っぽいような」
「テロリズムによって天上界の住人を刺激し扉を開かせる、というところでしょうか?」
あの少女達に力を与え殺戮を行わせているというオウガ・フォーミュラ、大天使ブラキエル。ヴィクトル・サリヴァン(f06661)も禍神塚・鏡吾(f04789)も未だ現実で目にしたことはないが、目の前の状況からその性格と目的に思いを馳せてみる。
「大天使が使うのが、狂信者によるテロリズムとか。はぁ……ホントやんなるわぁ……」
狂信者とは、その多くが狭い視野によって勝手に教義を誇大解釈し、教えのために破壊に走るような者達だ。動機は単純な上、自他の命を省みない。思い込みの強さ故に、誰の迷惑も顧みない。たとえ、尊ぶべき元の教えからかけ離れてしまっていても。それ故にどの世界でも厄介なのだ。
本来であれば、天使とはそういう者を窘めるべき立場ではないか。それを敢えて、加護まで与えて暴走するに任せるとは――ティオレンシア・シーディア(f04145)は、愛くるしい声で盛大に溜息をついた。
「そんな大天使がいた天上界ですか。それ自体には私も興味がありますが」
「でも、虐殺で開かれるような道はだめだよね」
ヴィクトルが改めて虐殺の阻止を明言すれば、鏡吾は「勿論です」と頷き、ティオレンシアも「そりゃあねぇ」と同意。猟兵達は皆、その為にここにいるのだ。
既に避難が始まっていても、その経路がひとつだけでは、侵略の手が追い付いてしまうのも時間の問題であったろう。まだ避難できずにいた住人達は、目の前の光景に大いに戸惑っていた。奇妙な岩の腕を生やしている少女を次々と打ち倒していく猟兵と、攻め寄せてくる岩腕の少女達。猟兵達は自分達を逃がしてくれるようだが、彼らは本当に勝てるのだろうか。
「人数では俺達が負けてるからね。彼女達も確かに強いみたいだ。信じにくいのも無理はないよ」
そんな住人達に声を掛けたのはヴィクトルだった。
「でも、安心して。彼女達が信じているヴァルギリオスは、俺達が群竜大陸で確かに倒してきた。この村の勇者のような、過去にヴァルギリオスに挑んだ人達も力を貸してくれた。そんな村を、絶対に滅ぼさせはしないよ」
どうしても信じるのが難しければ、そこから見ていて、と言い残しヴィクトルは少女達の迎撃へ向かった。
一方、神龍教の少女達に声を張り上げていたのは鏡吾だ。
「聞きなさい! 貴方達が崇める神龍は、我ら猟兵に下りました!」
「有り得ません!! 神龍様は我らの神の御遣いでいらっしゃいます!!」
「では、証拠をお見せしましょう!」
思い描くのは、実際に目にしたかつての帝竜ヴァルギリオス。それを電脳魔術による魔力の変換で、立体的な『像』として映し出す。『魔法の鏡』である鏡吾にとって、望む『像』を結ぶことは難しいことでは無かっただろう。それが『真実』であるかは別にして。
「騙されませんわ、ただ神龍様を象っただけの像など。むしろ不敬ですわ!」
「そう言うだろうと思っていましたよ。ならば御覧なさい――ヴァルギリオス!」
鏡吾が呼ぶと、ヴァルギリオスの『像』はその八つ首のひとつが大きく口を開き、神龍の少女に向けてブレスを吐いた。岩腕の加護により強化されているとは言え、少女達の何人かはそのブレスによって断末魔をあげる間もなく消し飛んでしまった。
「これでわかったでしょう。最早神龍が貴方達を守ることはないのです」
実際には『像』から放たれたドラゴンブレスは、鏡吾自身によるブレス攻撃の魔術と、ユーベルコードのエレクトロレギオンを組み合わせた再現である。威力としては実物には劣っているだろうが、地面に残った傷跡は十分に真に迫るものであったはずだ。
「いいえ……いいえ……いいえ、いいえ! いいえ!! 有り得ません!!!」
それでも、生き残った少女は頑なに否定する。認めてしまえば、己が己でなくなってしまう。何のためにオブリビオンになってまで。
「そもそもさ、蘇ってから負けてるよねその帝竜。そんなのが神龍なの?」
とどめのように、合流したヴィクトルが尋ねる。真実、『死して蘇った』ところで、『真なる神』の遣いとは猟兵に負ける程度の存在なのかと。
「ヴァルギリオス様は……ヴァルギリオス様は……例え負けても、何度でも蘇られます……蘇って必ず、この世を正されます……! 再び蘇られるその日まで、私達はヴァルギリオス様の教えを広めるのです!!」
少女達が集まると、岩腕を天に翳して一斉に跪いた。
「御遣い様、神龍様。どうか我らに試練とご加護をお与えください! その姿を現してくださいませ!」
敵前で無防備な姿を晒してまで行われるのは、神龍降臨の儀式。もちろん、本物の帝竜ヴァルギリオスの召喚などできるはずもない。『彼女達が最強だと勝手に信じている神龍』としての姿だ。
「これだから狂信者っていうのは」
暗雲が垂れ込め、『神龍』の嘶きが響く中。大型のバイク型UFO『ミッドナイトレース』を駆って空中に飛び出したのはティオレンシアだ。
「ゴールドシーン!」
呼びかけに応えたペン型の鉱物生命は、エオローの守護結界を彼女に施す。防壁を得たティオレンシアは最大最速で突っ込み、降臨の儀式を行う少女達へあらゆるグレネードを投下していく。その様はまるで空爆だ。
「ヴァルギリオス様……試練を……我らに試練を……!」
それらの攻撃による負傷すら試練と定義し、その『試練』に『打ち克つ』ことで彼女らは力を得る。岩腕は硬さを増し、腕以外も容易には傷付かなくなっていく。無敵の神龍さえ召喚できれば、自分達の信仰は報われる。ただそれだけに縋って。縋る以外に、存在できる方法が無くて。
「ふーん……そういうことするのねぇ」
「ならその儀式を止めさせてもらうよ!」
ヴィクトルが高速で詠唱すれば、集まって儀式を行う彼女達の足元が瞬間で凍り付く。儀式のための動作が鈍った少女に銛を投擲すれば、強化されているとは言え傷は付く。
その少女に狙いを絞って、鏡吾はヴァルギリオスの『像』からのブレスで。ティオレンシアはクレインクィン『アンダラ』から炸裂弾を流鏑馬の要領で射出する。
三人から集中して狙われれば、流石の少女も『試練』に耐えきれず消滅していった。しかし、まだ他にも残っている。
「ああ、空に! 神龍様!」「我らの神龍様が!」
「神龍だろうと、無敵だろうと、何度でも滅ぼすよ。俺達はヴァルギリオスを倒した猟兵なんだからね」
雲の狭間から姿を見せかけた神龍の姿が、ヴィクトルが巻き起こした氷の礫の嵐にかき消える。嵐は少女達をも巻き込み、ティオレンシアの『シゲル』のルーン、更に鏡吾のブレスを受けて、熱波と吹雪で千々に吹き飛ばされていく。天変地異を一身に受けたような集中攻撃は、神龍への疑念を挟む余地も無く少女達を消し去っていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ヴォルフガング・ディーツェ
○☆
はは、『教えを授けなければ』?
思考とは高度な知性に許された尊き自由
邪教徒風情が奪うなど、片腹痛い…目障りだ、消え失せるが良い
神龍派とやらが一直線に村人を狙うなら好都合
進路に立ち塞がり、持参の医療キット薬剤を「薬品調合」「毒使い」で幻覚作用を持つ猛毒へと変える
そして敵の頭上で鞭にてキットを破壊し「範囲攻撃」技能で広範囲に散布しよう
下拵えは充分
【指定UC】で複数回死のルーンを刻む
一つ講義をしよう
鼓動を止めるのにナイフも、病も要らぬ
「自分が死に瀕している」、そう自覚させる事で真に止まることもあるのだ
「精神攻撃」「呪殺弾」で言葉を呪詛に替えて
後は騙るだけだ、ヴァルギリオスが如何に惨めに死んだのかを
シン・コーエン
神殿を護る為、相手の前に立ちはだかり、「ヴァリギリオスは蘇ったが、俺達猟兵によって骸の海に送り返された。
君達の理屈ではヴァルギリオスを倒して、尚生きている猟兵に立ち向かうのは愚かな事だが、それでも戦うか?」と。
戦闘になれば、「では、やるか。」と自然体で。
相手の攻撃は強力ゆえに、第六感で予測して、見切りで回避する。
囲んで攻撃してくる場合は残像を残して、ダッシュとジャンプで離脱する。
同時に灼星剣の2回攻撃・風の属性攻撃・鎧無視攻撃で相手を斬り裂く。
相手集団がUCの間合い内になれば、灼星乱舞発動。
炎の属性攻撃を籠めた灼星剣で右から左と、その逆の2回攻撃(&鎧無視攻撃・貫通攻撃)で纏めて撃破する。
●永遠延々
神龍の少女達も、流石に村を正面から『布教』するのは難しいと判断した。
ならばどうするか。
この村も、拠り所を持っている。自分達にとってヴァルギリオスがそうであるように、この村には『偽なる神』と勇者を祀った神殿がある。
それを砕こう。滅ぼそう。そうして誤った神から民を救い出そう。
神罰たる神龍の聖なる息吹によって!
「やはり来たか」
裏道から現れた少女達を神殿前で待っていたのは、シン・コーエン(f13886)とヴォルフガング・ディーツェ(f09192)だった。
「一直線に村人を狙うものとばかり思ったが、信徒とはその徴の破壊を死よりも恐れるという。邪教徒風情にも、その程度の思考があったとは」
「邪教……? 邪教とは、我らのことですか? 尊き神龍様が邪であると!?」
少女の一人が憤れば、ヴォルフガングは耐えきれないとばかりに嘲笑する。
「邪教であろうよ。思考とは高度な知性に許された尊き自由。それを奪わんとするものが、邪教でなくて何とする。片腹痛いわ」
「君達は、勇者達に打ち倒されてなお蘇ったがためにヴァルギリオスを尊いものとするんだろう」
シンが確認するように問えば、少女達はその通りだと息巻く。
「ヴァルギリオス様は、死を乗り越えられたのです! 例え猟兵によって打ち倒されても、いつかきっと再生を果たされます! 死と再生を繰り返される、永遠の存在なのです!」
「最初にヴァルギリオスを倒した勇者は相打ちだったが、俺達猟兵はヴァルギリオスを倒して尚生きている。俺達は、ヴァルギリオスより強い。そんな俺達に立ち向かうのは愚かなことだと思うが、それでも戦うのか?」
問うシンに対して、少女達はヴォルフガング諸共二人を取り囲むように展開した。
「それで引き下がる賢さがあれば、初めから神龍などと崇めることもなかろうよ」
「……そうか。では、やるか」
話は尽きた。疾く殲滅あるのみ。
少女達が天に祈って突風を呼ぶ。吹き下ろした先には二人が纏まっていたはずだが、シンは残像を残して消え、ヴォルフガングは何かを少女達に投げて転がった。
「……目障りだ、消え失せるが良い」
それは治癒の霊薬から配合を変えることで完成した、幻覚作用のある毒薬入りの薬瓶。ヴォルフガングは少女に投げたそれを邪鞭で打ち据えて破壊し、中身を彼女達の頭上からぶちまけた。彼女達の多くは咄嗟に岩腕で自身を守り、毒薬を直接浴びることを免れた。
「これしき、何だというのです。あなた達にこそまず、我らの教えを授けましょう! さあ、さあ!」
「命を奪うことが布教だというなら、これも教えになるか」
毒薬を防いだ岩腕を振り上げた少女の背後に回り込んだシンが、灼星剣に風のエネルギーを纏わせ二連撃を放つ。防御を無視して切り裂く風は、振り上げられた岩腕ごと少女を斬り付けて絶命させた。
「ひとつ、講義をしよう」
ヴォルフガングの呪われた指先が、宙に死のルーン『ユル』を刻む。死から再生することもないよう、停止のルーン『イサ』も添えて九度。代償に我が身に刻まれる痛みはとうに慣れ親しんだものだ。
「鼓動を止めるのにナイフも、病も要らぬ。『自分が死に瀕している』、そう自覚させることで真に止まることもあるのだ」
言葉が声で放たれる度、毒を浴びた少女には脳に呪いの刃が刺さり、心の臓に呪殺の銃弾を撃ち込まれるようであった。そのような幻覚を与える毒だったのだ。
「では、具に詳らかにしようか。お前達の崇めるヴァルギリオスが、如何に惨めに死に、その度蘇り、また惨たらしく殺されたかを。ああ、氷漬けにされて蘇り、駒として何度も使い捨てられた話もしようか」
「神龍様……は……っ、それでも……何度でも……っ」
無惨に惨めに殺され続けるヴァルギリオスのイメージが、まるで己のことのように刻みつけられる。毒とルーンに侵されたある者は割れそうな頭を、ある者は弾けそうな胸を押さえ、止まりそうになる呼吸の底から訴える。神龍はそれでも、どのように死のうと、何度殺されようと、何度でも蘇ると。それ故に尊いのだと。
彼女達の信仰心だけは、本物だった<それほどにくるっていた>。
「その信仰の強さだけは認めよう。だが、その存在を認めるわけにはいかない」
風を纏っていたシンの灼星剣が、彼のオーラを注がれ炎を宿し巨大化する。灼熱の星の大剣となった灼星剣をシンが振りかぶると、右から一閃、左から一閃振り下ろし、神龍の少女達を灰燼と帰したのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
アレスが人を守りてぇっつーならその時間くらいは稼いでやるよ
今回は無茶しねぇから
歌で身体強化してダッシュで先制攻撃だ
軽く一閃、続けざまにもう一度斬りつけたら
攻撃を見切り素早く退避
俺一人じゃあのでかブツ相手に分が悪いっつーのは十分にわかってる
だから無理に今、攻撃をいれるんじゃなくて
挑発しながら回避に専念だ
何を信じるも自由だが
それを武力と共に人に押し付けてんじゃねぇよ
こっちに夢中になるのはいいが
足元がお留守だぜ!
斬撃波の風圧を使って普段より高く跳び
ニヤリ笑って後ろに下がる
アレスが相手をしてる間に力をためて
さあ、でかいのを落とすならでかいヤツだ
アレスが作った隙に
【彗星剣】を叩きつける
アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎
ああ…僕もすぐに其方へ向かうから
待っていて
村人へ落ち着いて避難するように呼びかけよう
僕達が貴方達の元へは通しません
…この地で生まれた勇気と
生きる人々の明日を…未来を、“過去”の手によって奪わせない
どうかこの言葉が届くようにと
皆を守り抜く誓いと鼓舞を声に乗せて
呼びかけたらセリオスの元へ駆け
彼の前に出て盾からオーラ防御…『閃壁』を展開
何かを信じる心
それを一方的に押し付け、否定し、潰そうとするのは布教ではなく…脅威だ
この先へは通さない
衝撃も耐える覚悟で全て受け止める!
止めれば【天聖光陣】展開
岩腕以外の部位を狙い穿つ光柱と
目眩しの光柱を放つ
倒しきれなくても構わない
これらは援護の光だ!
●その可能性(のぞみ)を絶ち
人々の避難は粗方が済み、神殿への襲撃も猟兵が防衛した。家屋への被害も出ていない。
神龍教の少女達も猟兵達の奮戦の甲斐あり、その多くが既に骸の海へと還されていた。もはや強力な『神龍』を召喚することもできないだろう。
「私達が……皆消えてしまったら……」
「いつか再生される神龍様を、誰がお迎えするのです……この地の人々はまだ、誰も……」
「せめて、一人だけでも……!」
いくら猟兵の力が強大でも、村人の全員を全て守り切るなど不可能なはずだ。
探せ、探せ。未だ彼らの目に留まらぬ、この地を去る事を拒む一人を。
その一人を布教する<ころす>だけで、我らの望みは繋がれる――!
アレクシス・ミラ(f14882)は、焦っていた。避難するために集まっていた村人によれば、ひと家族足りないという。病で動けない老婆と、耳が聞こえない孫娘の二人だ。耳が聞こえなければ避難の呼びかけは元より、岩腕の少女達に襲撃されても姿を見るまでわからないだろう。そんな距離まで接近されてしまったら、まず助けられない。
「村の入口で押し止めてたって聞いたけど、裏道もいくつかあるんだっけか」
彼と共に行方不明の家族を探すセリオス・アリス(f09573)。村人に教わった家は探したがもぬけの殻だった。
「老婆は自分で動けないだけで、耳は聞こえるのかも知れない。村の騒ぎを聞いて、二人で助け合って逃げ出したとしたら……それでも、もし見つかってしまったら」
最悪の状況も考慮に入れながら、アレクシス達は村中の物陰や路地、小屋を探す。しかし、余程入念に隠れているのか一向に見つからない。
セリオスの目から見ても、アレクシスの焦りは明らかであった。守りたいのに、見つからない。唯の一人も溢したくないのに、見えない所で溢してしまったら。
(……俺の時も、そんな顔で探してたのかよ)
離れ離れになった二年間に、僅かばかり思いを馳せて。セリオスは大袈裟に肩を竦めた。
「しょーがねぇな。そんなに守りてぇっつーなら、その時間くらいは稼いでやるよ」
「セリオス!」
「大丈夫だって。今回は無茶しねぇから」
アレクシスの前へ進み出ると、セリオスは歌声を響かせた。
それは己に力を満たす歌。我は此処に在りと告げる歌。我を見よ<きけ>と訴える歌。
この歌に導かれるのは神龍の少女か、聾の娘か。
またあるいは、傍にいる『彼』か。
「――聞こえているなら、聞いてください!」
歌が響く中、幾許かの落ち着きを取り戻したアレクシスが声を張り上げる。
「僕達は、貴方達を助けに来ました。恐ろしい敵を、貴方達の元へは通しません!
……この英雄の地で生まれた勇気と、生きる貴方達の明日を……未来を。『過去』の手によって奪わせはしません。決して!」
歌と共に、この誓いもどうか届けと祈る。
切実に願うアレクシスの耳に鋭い金属音が聞こえたのはその時だった。
「出やがったな、でかブツ……ッ!」
素早く間合いを詰めた先制攻撃の剣は、一閃は神龍の少女へ届いた。しかしもう一閃と試みた一撃は、見た目からは想像できない俊敏さで岩腕に阻まれてしまった。返す動きで叩き潰されそうになるのを、間一髪で回避する。
一瞬前にセリオスが居た場所は、大地が大きく抉られていた。
「かくなる上は……あなたなら……あなた一人なら……!」
「ああ、確かに俺は分が悪いだろうな。そんなもんブチ当てられたら一溜まりもねぇよ。『鳥』に当てられるなら、だけどな!」
岩腕が叩き付けられる度、凶悪な風音が響く。避けても避けても、長い髪が掠る。剣で軌道を逸らそうとすれば、衝撃に火花が散った。
「――あ」
そして、それは一瞬だった。
足元の石に踹が引っかかって、ほんの僅かにセリオスの体勢が崩れた。
体が傾く進路上に、己を粉砕するであろう岩腕が見える。それが近付くのが、妙にゆっくりと見えて――
「セリオス――ッ!!」
慣れた声がすぐ近くで、と思った時には、視界が白く染まっていた。
驚きはしなかった。わかっていたからだ。
「すまない、遅くなった……っ」
「遅ぇよアレス!」
セリオスを背に守ったのは、少女とセリオスの間に白銀の盾で割り込み、光の壁『閃壁』を生じさせたアレクシスだった。
そのアレクシスも、岩腕を受け止めた衝撃ですぐには動けない状態だった。
「おい、でかブツ」
その様子に気付いたか、セリオスが意識を引いて時を稼ぐ。
「神龍だろうが何だろうが、何を信じるも自由だ。だが、それを武力と共に人に押し付けてんじゃねぇよ」
「何かを信じる、心……それを一方的に押し付け、否定し、潰そうとするのは……布教では、なく……、……脅威、だ……っ!」
アレクシスの話も聞くと、少女は岩腕を一旦退かせる。
「脅威。では、あなた達は脅威なのですね。ヴァルギリオス様より猟兵が優れているとかもう蘇らないとかありもしないことを並べて否定したではないですかヴァルギリオス様は必ず時を経て再生されるのですから私達は教えを絶やす訳にはその為に一人でも同志を」
「達者なのは口だけかよ!」
壊れた絡繰りのように早口で猟兵への怨嗟を並べる少女の足元へ、セリオスが斬撃波を放つ。傷こそつかなかったが、バランスを崩した少女と入れ替わるように残りの神龍の少女達が現れた。
「撤退はさせない。払暁の聖光を今、此処に――!」
セリオスが後方へ飛び退いた時には、アレクシスがユーベルコードの準備を整えていた。『天聖光陣』から放たれた幾つもの光柱は、目も眩む程の輝きで以て少女達を灼き尽くさんとする。
「いいえ……いいえ、いいえいいえいいえ!! これは、これこそはヴァルギリオス様の試練……これを耐えてこそ、私達は……!!」
「だとしたら、そのヴァルギリオス様はお前達を生かす気がねぇんだろうな」
アレクシスのユーベルコードにさえ耐えきってみせた少女達に向けて、セリオスは高らかに純白の剣『青星』を掲げる。
「これは、試練なんかじゃねぇ。もう一度死ぬんだよ、お前らは」
根源の魔力を得て白蒼の輝きを放つ『青星』を振り下ろし、その可能性(きぼう)を絶つ。
その光が描く軌跡は、さながら――暁から曙へ至る空を駆ける、一条の彗星のごとく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『『紫陽細剣』ハイドレンジア』
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POW : 祝散華~スカッタード・ブラッサム~
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【レベル 】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
SPD : 装飾花~オルナメンタル・フラワーズ~
レベル×1体の、【柄の花びら 】に1と刻印された戦闘用【の自身の分身たる装飾花】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 赤色変化~シフト・レッド~
【猟兵の取得🔴を自身のレベルに転写する 】事で【赤紫陽形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠幻武・極」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●紫陽花の剣
神龍教派の少女達が落ちた。
だというのに、あの大天使は顔色ひとつ変えない。
私はかつて、ヴァルギリオスを打ち倒すものとして花妖精に造られた紫陽花のレイピアだった。
しかし、私を授かった勇者は命を失い、私自身も失われた。
オブリビオンとなってからはヴァルギリオスを守護する祝華武装として、この人の姿を得た。
今となってはそのヴァルギリオスもなく、あろうことか――そのヴァルギリオスと敵対していたはずの大天使に仕えている。
猟書家でもない私を、彼が比較的近くに置く理由。
それがよくわからないまま、今日まで仕えてきた。
「……彼女達が落ちたなら、私が行くべきですね。
ひとつだけ教えて下さい、ブラキエル様」
大天使は答えない。拒否はされなかったので続けた。
「申し上げにくいことですが。こうなった以上は、貴方の『最後の願い』も果たされないのではないですか。私が彼らに打ち勝ったとしても――」
「今の貴様であれば、わかるのではないか。移ろう紫陽花の剣よ」
大天使が僅かに指を動かすと、祝華武装の上から鎧のような何かが装着された。石の鎧のような外見だが、重くはない。力が満ちるようですらある。
「『絶対物質ブラキオン』の鎧を与える。万物の攻撃からその身を守れよう。鎧の隙間だけは守れぬが、貴様なら些事であろうよ」
「ブラキオン……まさか、ブラキエル様はあの七大――」
その問いに答える気は無いと言うように、大天使は目を閉じた。
移ろう紫陽花の剣。今の私を明確に表した名だった。
紫陽花ならば、花の色の最後は何処にしようか――。
===========
※『絶対物質ブラキオンの鎧』について
未知の物質「ブラキオン」だけで構成された、特殊な鎧です。
正面からのゴリ押しではまず砕けない、魔術面でも物理面でも絶対的な防御力を誇ります(鎧無視攻撃等も十分な効果は期待できないでしょう)
ただし全身を隙間なく覆っているわけではないため、鎧の隙間を頑張って狙う攻め方になるでしょう。
ハイドレンジア自身の精神面については、複雑な経歴と心情を持ってはいますが寝返ることはありません。
しかし、何かしら訴えかけることができれば攻撃が鈍ることはあるかもしれません。
2章プレイングボーナス……鎧の隙間を狙う、ハイドレンジアの心情に訴える
●その答えを求め
岩腕の少女達から勇者の村を守り抜いた猟兵達。
最後に残っていた村人の避難も終え、見据えたるは『光』だ。
彼女達が来た方向に燦然と輝く『光』。そこから次に現れたのは、石のような鎧を纏った細剣の少女だった。
「『紫陽細剣』ハイドレンジア。あなた方に恨みはありませんが……紫陽花の剣として、役目を果たします」
光を背に一人で現れた彼女は、その花の剣を構えた。
シン・コーエン
○★
「それがブラキオンか。…すまんな。ブラキエル戦の練習台になってもらう。」
彼女や分身達の攻撃は、空中浮遊・自身への念動力による移動・空中戦能力で空を自在に舞い、第六感で読んで見切りで躱したり、灼星剣で武器受けしたり、オーラ防御で弾いたりで対応。
分身全員が間合い内にいる時にUC発動。
灼星乱舞の3回攻撃で分身達を全て斬り焼き尽くす。
彼女は健在。
故に、即座に残像による数多の分身を生み出して幻惑しつつ彼女に接近。
灼星剣を消し、2回攻撃の1回目では、早業で抜いた村正の貫通攻撃で鎧の隙間に村正を差し込む。
2回目では村正に籠めた炎の属性攻撃で貫きつつ、体内に向けて衝撃波を放つ!
「さらばだ。安らかに眠れ。」
●乱舞の始
初めにハイドレンジアと対峙したのは、彼女のレイピアより幅広の刀身を持つ灼星剣を手にしたシン・コーエン(f13886)であった。
「それがブラキオンか」
彼がまず興を引かれたのは、紫陽花の細身に纏われた石の鎧であった。絶対物質ブラキオンがどのようなものなのか、詳しいことはわからない。わかるのはただ、単純な石の鎧ではない、ということ。先の少女達に岩腕を授けたあの大天使が授けたものなのだから、ただの石であるはずがない。
それとは別に、もうひとつ。
「……すまんな。ブラキエル戦の練習台になってもらう」
『恨みはないが役目は果たす』――戦士として、その忠誠を軽んじる気は無い。しかし、シンにとっての『本命』は彼女を倒した先にある。
大天使の加護を受けた彼女との戦いは、その『本命』を前に何よりの実戦練習となるだろう。
「練習台とは、祝華武装も侮られたものです。お覚悟!」
言うや否や突き出されるレイピアの切っ先を、シンは宙へ高く飛び退くことで避ける。飛び退いても間を置かず宙へ向けて追撃してくるのを、灼星剣で振り払って更に飛ぶ。
(石の鎧にあの細腕とは思えない、一撃の重さ……!)
「装飾花(オルナメンタル・フラワーズ)、展開!」
宙へ飛んで距離が離れたシンへ向けて、紫陽花の小さな花が乱れ飛ぶ。花々は瞬く間にハイドレンジアと同じ姿形となってシンを取り囲んだ。取り囲んだ彼女達は全方位から串刺しにするように紫陽花のレイピアを構え、突き出そうとする。
「取り囲む花は、纏めて焼き払うまで……一掃する!」
それは、先に神龍の少女を灼き払ったのと同じ紅の煌めき。燃え盛るように巨大化した紅い灼星剣を振りかぶると、シンは自身へ襲いかからんとするハイドレンジア達へ向けて円を描いた。一度、二度。更に身を撚りながら三度。
そうして『花々』を一掃しても、まだハイドレンジア本人は無傷で残っていた。
「それで勝ったつもりですか」
「いや、そうは思わん」
再び紫陽花の分身を生み出す彼女に対抗するように、シンも電光石火の動きで多くの残像を残しながらハイドレンジアへ間合いを詰める。
シンの残像達は、合体したハイドレンジアの分身達に粉砕されていく。しかし、粉砕した傍から残像が増えてハイドレンジアに近付く。
灼星剣を消して、『村正』を抜く。その鍔は、奇しくも猟書家であった上杉謙信の遺品であった。
「――鎧の隙間は、ブラキオンの効果が及ばないんだったな」
細首に沿わせるように、『村正』の刃を素早く突き刺す。絶対防御の石の鎧の、その隙間へ。
「……ぁ、っ」
「さらばだ。安らかに眠れ」
餞の言葉を残して、鎧の内側から炎の衝撃波を放つ。
鎧は壊れずとも、その破壊は確実にハイドレンジアの体を破壊した。
成功
🔵🔵🔴
ニクロム・チタノ
ハイドレンジア、もうアナタ達の戦いは終わった、骸の月は押し返されたんだこんなことしてなんになるの?
どうあっても続けるのこんな意味のない虐殺を
だったらボクも猟兵そして反抗者としてこの圧政に反抗するよ!
む、変身した!なんて速さださっきまでと全然違う【オーラ防御】を展開して攻撃に耐えながらなんとか勝機を探さないと
ぐ、オーラが破られたでも動き見切ったよ!反抗の一撃を
ハアハア、ボクの一撃は鎧に弾かれた、やっぱり強いねでも
圧政を縛れ反抗の鎖
この鎖は超重力を生む
鎧は壊れなくても身動き取れないでしょ?
この勝機を待ってたよアナタの動きが止まり鎧に隙間ができるのを
これが正真正銘の反抗の一撃だ!
フェルト・フィルファーデン
恨みが無いなら退いてくれると助かるのだけれど……そういうわけにもいかないみたいね。だったら、力尽くで退いてもらうわよ!
分身を並べられると厄介ね。だったら、片っ端から倒してしまいましょう。
味方を巻き込まないように注意しながらUC発動。合体させる前に冷気の糸で凍らせて一対一の状況に持ち込むわ。
ねえ、アナタ。本当にそれがやりたかった事なの?
竜に付き、天使に付き、世界を滅ぼす手駒としてその剣を振るうことが、アナタのやりたかったこと?アナタが本当に望んだ色は何!!
……隙が出来たら一撃で仕留めましょう。
さあ、わたしの騎士人形よ!その弓矢であの悲しき花を散らしなさい!
狙うは首元、鎧の継目よ……!
●戦う意味
「ハイドレンジア、もうアナタ達の戦いは終わった! 骸の月は押し返されたんだ」
鎧の内に猟兵の攻撃を受けよろめくハイドレンジアに、ニクロム・チタノ(f32208)が事実を突きつける。
「こんなことしてなんになるの? どうあっても続けるの、こんな意味の無い虐殺を」
「恨みが無いなら退いてくれると助かるのだけど……」
フェルト・フィルファーデン(f01031)も、恨みがないと言った彼女の言葉を投げかけてみる。無論、退くつもりが無いことは承知の上でだ。あの細剣にとっての役目とは、戦うことだろうから。
「恨みはありませんが……役目はあります。あなた方もそうでしょう。『世界をオブリビオンから救う』という、猟兵の役目があるのではないですか」
予想通り、淡々と語るハイドレンジア。猟兵とオブリビオンが相容れることはないのだ。
「それに、意味は作るものです。『意味があるから殺す』のではなく、『意味を作るために殺す』。これは、そういう戦いなのです」
「意味を作るために、って……? それじゃあ結局、虐殺自体には意味が無いってことじゃないか!」
反抗の妖刀を握るニクロムの手に力が籠もる。
「ボクは猟兵の役目を果たすよ。猟兵として、反抗者として、この圧政に反抗する!」
「力尽くで退いてもらうわよ!」
ハイドレンジアの意志が固いことを確認し、フェルトも絡繰騎士人形達を操る糸を繰り出す。
「花弁よ、散れ!」
空間に散る紫陽花の花がハイドレンジアの姿を取り、二人に襲いかかる。ニクロムは咄嗟にオーラを発して身を守り、フェルトは敢えてニクロムから距離を取った。目標の位置が大きく離れると、ハイドレンジアは分身達を二人に分けようとした。
「分身を並べられると厄介ね。だったら、片っ端から倒してしまいましょう!」
なおもニクロムから離れ続けた後に、フェルトは冷気で紡いだ電子の糸からその冷気を解放する。『姫』以外がその場にある事を許さぬ、騎士人形達を操る糸。そこから放たれた力は、あっという間に花の分身達を凍らせ消し去ってしまった。
「分身では追い付きませんか。ならば……」
ハイドレンジアの鎧の下から見える紫陽花の花が、青紫から赤へ――そう認識した瞬間には、ニクロムの眼前にもう彼女が迫っていた。
ハイドレンジアの花の細剣が連撃を見舞う。身を守っていたオーラさえ貫いてきた攻撃に、ニクロムが大きく後退った。
「ぐ、っ!」
「ニクロム様!」
更に追撃を加えようとするハイドレンジアに、フェルトが声を張り上げる。
「ねえ、アナタ! 本当にそれがやりたかった事なの!? 竜に付き、天使に付き、世界を滅ぼす手駒としてその剣を振るうことが、アナタのやりたかったこと!?」
「やりたかったこと……?」
フェルトの問いに、ハイドレンジアの剣が止まる。しかし、その間は長く続かなかった。
「武器は使われるものです。それが世界の救済でも、破壊でも、そこに私の願望は関係ありません」
「嘘よ! アナタが本当に望んだ色は何!! 本当はどんな剣になりたかったの!?」
「どんな……それは、役に立つ剣として……生前も死後も、役に立てなかった剣ですが……」
そこまで話してしまってから、ハイドレンジアはハッとする。追い詰めていたはずのニクロムが体勢を立て直してしまっていた。
「見切ったよ! 反抗の一撃を」
その一瞬を、ニクロムは逃さない。渾身の力で妖刀で斬り付けるが、当然のように鎧に弾かれる。やはり、この鎧は強い。
――だが、反抗の烽火は『揚がる』ことに意味がある。傷を刻めずとも、当たればいいのだ。
『圧政を縛れ、反抗の鎖!』
地面から生じたユーベルコードの鎖が、ハイドレンジアを雁字搦めに縛る。超重力を発するこの鎖から脱することは容易ではないだろう。
「鎧は壊れなくても、これなら身動き取れないでしょ? この勝機を待ってたよ」
今の『赤い』彼女は驚異的な素早さを得ているが、それも縛ってしまえば無力化できる。鎧を砕くことはできずとも、隙を生じやすくなっているはずだ。
「この程度……すぐに抜けて……!」
「フェルトさん! 早く!」
フェルトとニクロムが生み出した、乾坤一擲の反抗の機会。これを逃してはならない。
「さあ、わたしの騎士人形よ! その弓矢であの悲しき花を散らしなさい!」
フェルトの右薬指の指先から繋がる糸。その先に弓を装備した絡繰人形が実体化すると、番えていた矢をハイドレンジアへ向けて放った。
狙いは一点。首元の鎧の継ぎ目――!
「こ……の――ッ!!」
ガチャン、と鈍い音がして超重力の鎖が破られる。
しかし同時に、ハイドレンジアはその首に精密な一射を受けていた。
先に攻撃していた猟兵と同じ場所を狙われると、ハイドレンジアはその場に膝を付くのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
禍神塚・鏡吾
技能:言いくるめ、挑発、スナイパー
○☆
「私は魔法の鏡。紫陽細剣よ、貴女の疑問にお答えします
かの大天使が貴女を側に置いた訳、この局面で使う理由は、貴女が『勇者の剣』だからです」
「帝竜に挑んだ勇者達も今のブラキエルも、守りたい者があり、決して譲れないが故に勝ち目の薄い戦いに臨んでいます
貴女は彼にとって『希望』なのですよ」
彼女が目――必ず鎧の隙間になる――を此方に向ければ良し
照魔鏡の光がそこから侵入できます
「今度は私の質問に答えて頂きましょう
『貴女は、誰かの希望になる勇気がありますか?』」
簡単に答えそうな気もしますが
プレッシャーを与え、戦意を削ぐ事はできる筈
私が語った話は真実かって?
さてね
月水・輝命
〇☆
WIZ
避難も出来て、良かったですわ。
ハイドレンジアと、あれは鎧でしょうか。
あなたがオブリビオンということは分かりますが……どうにも、恨みがないというところで引っかかりますわ。
恨みもなく、想いの乗らない攻撃は……どれだけ加速しても至らぬばかりになりますのよ。
攻撃は「第六感」と「オーラ防御」で受け流す形。
相手の鎧の隙間に当たるよう、常にハイドレンジアの鎧の隙間周りに鏡面が映し出されるよう、想い描きながらUC詠唱。
その鏡から、わたくしは光「属性攻撃」を撃ちます。
他の方の攻撃も届くように結べたら……
何が出来るとも言えませんが、あなたの本当の想いを映してください。
その想いに、わたくしも応えましょう。
●『道具』として
器物がヒトの形を取った姿、という一点において。ハイドレンジアはヤドリガミと通じる存在であっただろう。
その証拠に、猟兵の攻撃で首元から致命傷となりそうな血を流しても、ハイドレンジアはまだ立っていた。
(住人の皆様の避難も出来て、良かったですわ。でも……)
月水・輝命(f26153)には、純粋に疑問があった。
「あなたがオブリビオンということは分かりますが……どうにも、恨みがないというところで引っかかりますわ。恨みもなく、想いの乗らない攻撃は……どれだけ加速しても至らぬばかりになりますのよ」
その傷が、その証です、とハイドレンジアの傷を指す。
「では……問いますが。あなたは、常に恨みを抱いているのですか。常に至っているというのですか」
「恨みはありませんわ。わたくしはまだまだ力不足で、至っている自信もありませんけれど……譲れない想いは、ありますわ」
手負いの彼女の問いに、輝命は胸に手を当て答える。その声には、確かな力強さを込めて。
「譲れない、想いとは……。想いだけで、届くのなら。私は初めから、失われる前から! 勇者の志を遂げていたはずではないですか! オブリビオンとなっても、ヴァルギリオスを守り通せていたはずではないですか! 今も、ブラキエル様の剣として……!」
疑問は怒りに。抱いていなかったはずの恨みに。
主の役に立てなかった、『道具』としての悔恨がそこにあった。
「私は魔法の鏡。紫陽細剣よ、貴女の疑問にお答えしましょう」
そこへ、童話の魔法の鏡のように『答え』を口にしたのが禍神塚・鏡吾(f04789)だ。
「かの大天使が貴女を側に置いている訳、この局面で使う理由は、貴女が『勇者の剣』だからです」
「勇者の剣だから……? 私はその勇者を守れず砕けたのですよ?」
問い返す紫陽細剣を、魔法の鏡はにこやかに肯定する。
「そうですね。しかし、帝竜に挑んだ勇者達も今のブラキエルも、守りたい者があり、決して譲れないが故に勝ち目の薄い戦いに臨んでいます。貴女は彼にとって『希望』なのですよ」
「それなら……今のあなたにもあるではないですか、譲れない想いが」
鏡吾の話に、輝命も笑顔で伝える。
「想いがあれば、至ることもあるかもしれませんわよ。……猟兵としては、全力で止めさせて頂きますが」
油断のならない相手に、鏡吾は照魔鏡の鏡を傍らに浮かべ。輝命は五鈴鏡の複製を手に持ち、備える。
「譲れない……守りたい……希望……? 私が勇者の剣だから……?」
困惑する彼女は敵前でありながら細剣を下ろし、考えてしまっている。言ってしまえば隙だらけの状態ではあるが――彼女が纏っているのは、ほぼ正攻法の通用しないブラキオンの鎧だ。
「鎧の隙間……わたくしの鏡でうつしましょう。鏡吾さんはそこから」
「いえ、ここはまず任せて貰えませんか。それこそ、勝ち目の薄い賭けではありますが……興味もあるので」
にこりと笑う鏡吾を信頼して、輝命は後方へ下がる。
[紫陽細剣。今度は私の質問に答えて頂きましょう――『貴女は、誰かの希望になる勇気がありますか?』」
ハイドレンジアが思わず鏡吾の方へ視線を投げた瞬間、彼のユーベルコードが罠のように発動する。照魔鏡から発せられた光が、彼女の目を照らしたのだ。
石の鎧では、目は隠せない。問いに真実で答えない限り、目を逸らそうとも光は目を灼き続ける。
「あああぁっ!! 目が……っ!!」
「答えなければ、このままですよ」
しかし、ブラキエルの腹心たる細剣がただ口論でやりこめられるはずがない。彼女は己の周囲に紫陽花の花を飛ばすと、いくらか合体させて分身を作りだす。
更に分身達共々紫陽花の色を赤く変えた『赤紫陽形態』へと変化すると、分身達は鏡吾達に襲いかかってゆく。
その分身達を囲うようにユーベルコードの姿見を召喚したのは、後方へ下がっていた鏡命だった。
「何が出来るとも言えませんが、あなたの本当の想いを映してください。その想いに、わたくしも応えましょう」
――鏡とは、うつしうつす物であるから。
輝命の姿見には眩い光が満ち、赤いハイドレンジア達の鎧の隙間を映して光を放射していく。
分身達はいずれもかなり素早かったものの、光は分身が移動した先に鏡面を向けるだけで攻撃できる。
一撃では消えなくとも、何度も浴びれば悲しげな断末魔と共に分身達は数を減らしていった。
「希望に……なる勇気は……っ」
最後の赤い分身が消えるとき、ハイドレンジアは問いの答えを口にする。
「――ある!!」
その瞬間。目へ照射されていた光が消え、ハイドレンジアは両目を押さえながらもその場に何とか立った。
「そうでなければ、私は……、私は……この戦いの場に、いない……!」
童話の魔法の鏡ではない鏡吾は、真実を語っていたかは定かではない。
しかし、彼女が心底そう想ったのなら――彼女は、その想いだけは抱き続けるだろう。
ふたつの鏡に灼かれ続けても、彼女の脚にはまだ力があった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ティオレンシア・シーディア
○☆
まあ、道具って基本使い手を選べないものねぇ。…極たまーに気に食わない使い手を喰い殺すような気合入ったのもいるけれど、そういうのはホント例外だし。
とにかく、まずは鎧の隙間を見極めないとねぇ。●明殺を起動して増えたのを撃ち落として数を減らしつつ向こうの反応から隙間を探るわぁ。あっちは弱点を把握してるもの、受け方なりに多少違和感は見えるはず。
隙間を〇見切ったら閃光弾と煙幕で〇目潰しして一気に突撃、攻撃を誘発させて〇カウンターで鎧無視の先制攻撃叩き込むわぁ。
ぶっちゃけ天使サマももうほぼ詰んでるわけだし。
最期くらいは自分の好きなようにやってみてもいいんじゃない?文句言うやついないわよぉ、きっと。
ヴィクトル・サリヴァン
〇☆
…敵味方移ろい過ぎじゃない?
まあ元が武器だしオブリビオンだし仕方ないんだろうけども。
元がかなり速そうだし隙間を狙うのも難しそうだけど…大天使を倒しに行かなきゃいけないんだ。
ここで足止めされてる暇はないよね。
…意志持つ剣で似てるから気になってるのかなー大天使は。
UC起動し嵐と雷を合成して雨と落雷で感電させてしまおうか。
重ねて高速・多重詠唱で氷属性の魔法を使い周囲の気温を一気に下げて動きを鈍らせ雷を当てやすくする。
鎧に隙間が空いてるならそこから電気は通るはず、雨で濡れた後なら猶更よく通電するだろうし温度低下も早くなる。
花は寒さに散るもの、散る前に一つ尋ねるなら…キミは何の為に戦いたかったの?
●赤転流転
長く残る道具ほど、多くの持ち主を渡り歩くものである。それ自体はそう不思議なことではない。
それはわかるのだが――それにしても、である。
「元が武器だし、オブリビオンだし、仕方ないんだろうけども………敵味方移ろい過ぎじゃない?」
『紫陽細剣ハイドレンジア』の混乱しそうになる経歴に、思わず唸ってしまうヴィクトル・サリヴァン(f06661)。彼女自身の意思ではないとはいえ、紫陽花の花言葉が移り気だと言ったのは誰だったか。
「まあ、道具って基本使い手を選べないものねぇ。……極たまーに気に食わない使い手を喰い殺すような気合入ったのもいるけれど、そういうのはホント例外だし」
ここまでの猟兵達の戦いを見る限り、今のハイドレンジアも気合は入っているようだが、少なくとも気に入らない使い手を喰い殺すような手合いとは違うだろうとティオレンシア・シーディア(f04145)は思った。それはオブリビオンゆえにフォーミュラに『逆らえなかった』のか、あるいはそもそも『反逆心を抱かなかった』のか。
「とにかく。それだけ派手に怪我してくれてるなら、ここが隙間ですって教えてるようなものよねぇ?」
ハイドレンジアの怪我――特に首の付け根や目の周囲――は、これまでに戦った猟兵によって負ったわかりやすい形跡だ。他にも目立たないだけで、鎧の隙間はあるのだろう。
ならば、重ねてそこを狙うだけ――ティオレンシアはユーベルコードで極限まで集中力を高める。
「否定は……できません。しかし、そのまま狙わせるつもりもありません!」
ハイドレンジアが負傷している眼を強引に見開くと、彼女の周囲に紫陽花の小花が散って人型をとる。分身たちは数体ずつが合体すると、ティオレンシアとヴィクトルへ襲い掛かった。
「うわ、速い!?」
ヴィクトルが驚いたのはその後だ。分身を含めたハイドレンジア達が『青紫』から『赤紫』へと変化し、その速度を格段に上げてきたのだ。もはや瞬間移動に近い領域ですらある。
『鎧の隙間』という弱点はわかっている。しかし、このままでは狙うべき所を捉えきれない。本体と違って怪我の無い分身たちは、過たずその切っ先を向けてくる。
(……大天使を倒しに行かなきゃいけないんだ。ここで足止めされてる暇はない……けど!)
今からユーベルコードを発動していては間に合わない――最悪命だけあれば勝ち目はあると、ヴィクトルが覚悟を決めた時。
「――あなたの隙、丸見えよぉ?」
速さの極限の領域を見切り、精密に鎧の隙間へと撃ち込まれるリボルバー。ヴィクトルの間近に迫っていた一体を、ティオレンシアが退けたのだ。
合体した分身は一撃では落ちなかったものの、態勢を整える余裕は生まれた。
「ありがとう、助かったよ。これはまずまとめて動きを鈍らせるのが先かな」
「そうねぇ……ここまで速くて強いとちょっと各個撃破もしんどいかも。本体がやばくなるほど強くなるタイプかしらぁ」
「鎧の隙間を見切るほどの目は持ってないけど、全身くまなく浴びせれば……!」
次の攻撃が来る前に、ヴィクトルは礼を言うと高速で嵐の雷雨を引き起こす。広範囲に及ぶ雷雨はハイドレンジア達の鎧の隙間にも雨水を流し込み、そこへ雷が落ちることで鎧の内からの攻撃を可能とした。
「まだまだいくよ!」
更に多重詠唱で一面に氷の魔法を放出すると、腕や足を凍らされた分身たちが目に見えて速度を落とす。
「これならいけそ……!」
分身たちを突破し、一気に本体を叩く――ティオレンシアは閃光弾と煙幕で彼女達の視界を麻痺させると、バイク型UFO『ミッドナイトレース』に乗り怪我だらけの本体へと到達する。
目を怪我していても反応速度の上がっている本体は、ティオレンシアに勘付くとすぐさま細剣を繰り出してくる。
「――これは、できれば切りたくない切り札なのよ」
弾丸の軌跡が、その細剣と交わる。速さの極致で行われる、反撃でありながら先制攻撃という後の先。その究極の形だ。狙ったのはもちろん、狙いやすい『首の付け根』へ。
オブリビオンであり、『人間』でもない彼女にとって、首や心臓への攻撃は即致命傷とはならない。しかし『人間』の形をしている以上、首への深刻なダメージは呼吸に支障をきたしてしまい立てなくなる。
「……意志持つ剣。似てるからキミが気になってるのかなー大天使は」
そんな彼女を見下ろしながら、ヴィクトルが呟く。
「花は寒さに散るもの。散る前に一つ尋ねるなら……キミは何のために戦いたかったの?」
「ぶっちゃけ、天使サマももうほぼ詰んでるわけだし。最期くらいは自分の好きなようにやってみてもいいんじゃない? 文句言うやついないわよぉ、きっと」
流されるまま、武器として様々な陣営を渡り歩くしかなかったハイドレンジアも。この最期の機会くらいは、好きに戦えばいいのに、と――ティオレンシアの言葉は救いのようでもあり、無責任のようでもあり。
「……、き……」
細い呼吸の中から、言葉らしいものが聞こえる。
「勇、気……で……あ、……た、ぃ……っ」
『勇気でありたい』
それが、流転の先で得た彼女の答えだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シキ・ジルモント
○☆
装飾花の合体前に敵に突っ込む
攻撃を回避し本体に接近を試みる
合体前であれば間を抜ける隙くらいは見つけられるかもしれない
味方を巻き込まない為にも出来るだけ接近してユーベルコードを発動
装飾花を攻撃に巻き込みつつ、ユーベルコードで本体へ反撃
ダメージは無くとも連撃で衝撃を与え体勢を崩し、鎧の隙間を見極めて射撃を叩き込みたい
零距離射撃の距離からであれば十分狙える
交戦中に相手の心情を探る
覚悟の差が僅かでもあるならその差を隙と見なし、踏み込み攻める
先の少女達は信仰が戦う理由だった、では目の前の『紫陽花の剣』は?
その戦う理由を信じて貫く覚悟があるのか?
俺には、ある。この世界を守ると「勇者」達に約束したからな
●戦う覚悟
無敵の鎧をまとっているはずの紫陽花の剣は、今となっては鎧も髪も赤く染めて膝をついていた。
その多くは首からの血。生身の人間であれば、とうに息絶えているだろう。
オブリビオンであっても致命傷となっていて不思議ではないその傷で、それでもこの場で立とうとするのは――。
シキ・ジルモント(f09107)は、特別寡黙というわけではない。煩いわけでもないが、弱みを見せたがらない性質上『必要以上には話さない』。
今回もこの少女の動きを鈍らせるため必要であるから、いくらか言葉を考えていただけだ。
そして、言葉は決まった。
「…………」
その姿を眼中に捉えると、弾丸の如き疾さで駆け出した。
目指すは零距離。拳銃の弾が外しようがない、必中の距離――!
「……、……!」
瀕死といって差し支えない様相の少女は、近付く戦意を感じ取って応戦の構えを見せる。石の鎧で覆われた腕を掲げ、空間にありったけの紫陽花を咲かす。
咲いた紫陽花は少女の形を取り、なるべく合体して攻撃に耐えようとするのだが、その隙にシキは分身達の間を駆け抜けてしまう。
合体しない分身が攻撃してきても、応戦せず回避に専念する。止まれば囲まれ狙われてしまうとわかっているからだ。
「ハイドレンジア。『紫陽花の剣』。答えろ」
その距離を詰めながら、シキは彼女に問う。
「先の少女達は信仰が戦う理由だった。褒められた信仰ではなかったが、最後の一人が消えるまで彼女達の信仰は揺るがなかった。
今のあんたはどうだ。あんたの戦う理由は」
勇者、帝竜、大天使。
持ち主を転々と渡り歩いてきた紫陽花の剣に、変わらず信じ続けているものは残っているのだろうか。
「……この、戦いで。得た答えがあります」
「ほう?」
その答えを聞く前に、シキは格闘と銃撃の嵐を辺りに見舞った。近い者には拳や脚を。遠い者には銃弾の嵐を。
ブラキオンの鎧を着ている本体はもちろん、その鎧ごと分身している他のハイドレンジア達も、これは大きなダメージとはならないだろう。だが、それぞれの反応から鎧の隙間を見極めることを忘れない。
弾が跳ねた鎧に、ハイドレンジアが触れる。
「私が、戦うのは……。主の勇気と、希望を……絶やさぬために。勇者であれ、オブリビオンであれ。私を使う者は皆、そうであるように……!」
かつて勇者の為の剣であった紫陽花の剣が、『私を使う者は皆』と力強く言い切った。
それが、長い遍歴を彷徨い移ろう中で得た答えならば。否やを唱えるものでもない。
「俺の戦う理由は、約束だ。この世界を守ると、『勇者』達に約束したからな」
譲れぬ理由が相対する。どちらかが立っている限り、果たされぬ理由だ。
確かな理由を得た彼女は、己の血で塗れた本体たる細剣を手に、シキと正面から向き合う。
「今の、私は……大天使の剣、ですから。彼が、望むのなら……私は一人でも多く、命を滅ぼさねばならないのです。あなたも、含めて」
「そうだろうな。俺もお前を逃せない」
彼女が迫る。シキの背後からも、分身を全て合体させたもう一人のハイドレンジアが来る。
シキは――目の前のハイドレンジアへとハンドガンを持つ手を伸ばして、可能な限り距離を縮めて。細剣が衣服を裂き肌に赤い筋を引くのと引き換えに、その銃弾を彼女の首元へと撃ち込んだ。
成功
🔵🔵🔴
セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
剣として、な
つまりお前にとって
後ろに控えてるヤツはそんだけ大事ってことか?
アレスの剣としてある己を鑑みて
純粋な疑問で問いかける
そうでないならなぜ剣を
敵の思いがどうであれ
目的は…相容れないのは確実だ
歌で身体強化して
靴に風属性の魔力を送り旋風を生成
炸裂する勢いで加速する
敵の動きを見切り鎧の隙を狙ってくが
…ああ、くっそ
あっちも速いんじゃねらいづれぇ
アレス、俺が惹き付けるから…
役割を提示したら訂正の声
こりゃぁ…絶対譲らねぇなぁ
よし、わかった
んなら動きを止めるのは一瞬だ
きっちり決めろよ
アレスの合図で高く跳び【鳥籠の反響】を歌い上げる
さぁ、俺を見ろ、聞け!
そんで…隙をアレスに晒しやがれ!
アレクシス・ミラ
【双星】
○
…戦いの中で何かを探そうとしているように見える
…僕は、守るべき人々を…セリオスを守ると誓った
盾で在ることは僕の意志で、誇りでもある
君自身の意志はどうかな
『紫陽花の剣』
…僕達も退く訳にはいかない
剣による衝撃波でセリオスを援護し
彼への攻撃は庇いに走り、盾で防ぐが
っ速い…!
…セリオス
さっきは君が前に出てくれただろう
今度は僕が出る番だ
その提示に訂正を
…正直、一瞬でも君を囮にはさせたくないが…
合図は出すよ
セリオスを背に
【蒼穹眼】で相手の動きを予測しながら
彼には通さない覚悟と盾で攻撃を防ぎ、耐える
タイミングを見切れば
彼へ合図を
一瞬の隙と看破した鎧の隙間目掛け
光属性の刃『光閃』を突きと同時に放つ!
●願い、一片
――恨みなどなかった。
ただ、役目として。再び砕けるまで、戦えばいい。
そこに私の意思は――嗚呼、でも。
希望。勇気。可能性。
私は、叶うなら、本当は、だから。
●光、一条
首の付け根辺りを抑えて、紫陽花の剣である少女は血を吐いた。
猟兵の攻撃が其処へ集中しているのか、一度や二度は首を断たれているのではないかと思うほどの夥しい血痕がある。絶対物質の鎧は傷ひとつなく、彼女自身の血痕が唯一その鎧を汚していた。
それでも、光を背にした彼女は退かない。
「剣として、な……つまりお前にとって、後ろに控えてるヤツはそんだけ大事ってことか?」
そんなハイドレンジアの様子を複雑な表情で見ながら、セリオス・アリス(f09573)は純粋な疑問を投げた。
己自身は彼女のような文字通りの剣ではないが、共に在るアレクシス・ミラ(f14882)の『剣』として在り方を定めている。その理由は、セリオスにとってのアレクシスが『盾』であるから。
「……僕は、守るべき人々を……セリオスを守ると誓った。盾で在ることは僕の意志で、誇りでもある。君自身の意志はどうかな、『紫陽花の剣』」
問いかけるアレクシスもまた、『剣』であるセリオスのために『盾』で在ると決めていた。
互いが互いに、欠けてはならない存在なのだ。
「……私がおらずとも、ブラキエル様はお一人で十分にお強いのです。それでも……オブリビオンである事実は変わらずとも。あの方は、私をヴァルギリオスの呪いから掬いあげてくださった」
己の血で染まった手を首元から離し、ハイドレンジアは己の細剣を構えた。
「使い手を選べぬ剣に、意思など不要ですが。私はあの方の剣として、可能性を切り拓く役目があります。それが、願いです」
彼女の青紫の瞳が赤紫へと変化する。紫陽花は赤く色を変えてゆく。
「ま、思いがどうあれ、目的が相容れないのは確実だわな。行くぜアレス!」
「……ああ。僕達も退く訳にはいかないからね」
アレクシスに呼びかけ、己を奮い立たせ力を漲らせる歌を紡ぐセリオス。歌が終わるのを待たずにハイドレンジアが跳んでくるのを、アレクシスは騎士剣『赤星』を振り抜いた衝撃波で退ける。
対応したアレクシスにはわかった。あれは『跳ぶ』、という概念ではない。あれはもはや『転移』だ。速すぎて途中が『無い』。
「っ、速い……!」
「速さならこっちだって!」
己の強化を終えたセリオスが、風の魔力を得た靴で加速する。旋風の疾さで飛ぶセリオスがハイドレンジアを捉えんと挑み続けるが、その位置を正確に予測はできても反応速度で競り負け、逃げられてしまう。
このままでは勝ち目がない――セリオスが判断するのは、早かった。
「ああ、くっそ。あっちも速いんじゃ狙いづれぇ! アレス、俺が惹き付けるから……」
「……セリオス。さっきは君が前に出てくれただろう。今度は僕が出る番だ」
「はぁ? 速さで追いつけるのは俺なんだぜ? 俺がやるのが当然だろ――」
その瞬間、セリオスのすぐ間近で金属同士がぶつかる音がした。いやに耳に残る音は、『転移』したハイドレンジアの細剣がアレクシスの大盾とぶつかった音だった。
「君は僕に、ただ見ていろと言うのかい。君の盾である僕に」
目を合わさぬまま、怒りすら感じられる声でアレクシスは言った。
――それを、言われたら。
「はぁー……わかった。んなら動きを止めるのは一瞬だ。ぼーっと突っ立って見てる暇なんざねぇから、きっちり決めろよ」
「……正直、一瞬でも君を囮にはさせたくないが……合図は出すよ」
不承不承と言った様子ではあったが、彼はそれまで競り合っていたハイドレンジアの細剣を弾くとセリオスの前へと躍り出た。
絶対にセリオスを守り抜く――決して折れぬことにかけては自信のあったアレクシスの覚悟を以てさえ、ハイドレンジアの赤い剣はあまりにも速い。ユーベルコードの魔力を込めた眼(まなこ)で見通そうにも、その視界に『捉えきれない』。
方向を変えながらの苛烈な攻めに、盾を向けるのが間に合わず斬り付けられる事数度。『速さで追いつけるのは俺だけだ』と言っていた彼の言葉は正しかったかと、苦笑も漏れる。だが、逆に言えば――彼女は『アレクシスであれば』一方的に攻められると思うだろう。そこに勝機を見ようとするだろう。
彼女はこの状況でも、愚直なほどに諦めていない。どうしようもないほど勝利を掴みに来ている。
当たり前だ。己でもそうするだろう。守る者が、可能性が、諦めてどうする。
――『己がここで可能性を見出すなら、どうする』。
その瞬間、アレクシスの蒼穹の眼に赤い紫陽花が映った。
「セリオス!!」
呼ばれた黒鳥は跳ぶ。高く飛んで、呪いの如き魅了の歌声で高らかに歌い上げた。
(さぁ、俺を見ろ、聞け! そんで……隙をアレスに晒しやがれ!!)
「……、……っ」
歌声の主以外の存在を忘れさせるほどの、強烈な魅了。それこそがセリオスの『剣』だ。
その魅了に抗おうと集中すれば、自然と彼女の動きは止まる。
「そこだ――!!」
アレクシスの眼には、鎧の隙間が映っていた。幾度も狙われていた首元の他にも、小さな隙間ではあるが複数見える。
そのひとつ、胸の近くの隙間に狙いを定め、『赤星』の刃に光を宿すと『光閃』となす。逃さぬように身体ごと距離を詰めると、『光閃』の刃は真っ直ぐに鎧の隙間を貫いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ソウジ・ブレィブス
【鳴華】○
恨みはない、はこちらの台詞だね
僕は恨むほど君を知らない
でも、そんな鎧を身につけるほどから
余程のことがあったんでしょう?
仕込み靴の爪はそのままに、手には双鳴慈突を構えて
僕は隙間を探そうねえ、近距離で
任せてマリアドールちゃん、もしもの時は僕を巻き込んだって構わないから
(きっと、彼女はそんなことしないけれど)
(戦う仲間は信じるものさ)
……それ(鎧)はたやすく砕けない
UCによる突進や、突き上げでも、きっとね
ねえ、君の信念もそう?隙間なんてないんだ、っていえる?
君の色は、その色でいいの?
僕は今日の君しか知らないけれど最後に残す詩(こえ)は
それでいいのかな
せめて願いは声の限り叫ぶと良いと思うよ?
マリアドール・シュシュ
【鳴華】○
…マリアにはあなたが何を思い
何の為にその力を揮うのか、分からないわ
それでも
貫き通さなきゃ、ならないのよね(そこに理由がなくとも
マリア達とは、交わえないのよね(例え手を差し出そうとも
マリアも引く事は出来ないのよ
人々の笑顔の為に
ソウジ、準備は良いかしら
あの鎧の継ぎ目を狙いましょう
【透白色の奏】使用
鎧の隙間やで脆い箇所を的確に狙う
完全に敵視出来ない彼女へ、
竪琴で優しい微睡みの音色奏で体の自由を一瞬でも奪う(マヒ攻撃
その間に音の誘導弾で一箇所を狙い撃ち
曲調転換し小夜曲に
謳うは憂い詩(うた)
剣に揺らぎが見えたわ、ハイドレンジア
ソウジ、あなたが思う光(こたえ)を魅せて
移りゆく彼女の花の色を見届け
●紫陽花の花煩い
誰かを恨むには、憎悪が必要だ。憎悪する程の理由が必要だ。
ソウジ・ブレィブス(f00212)には、それがなかった。
マリアドール・シュシュ(f03102)にも無かった。
オブリビオンと猟兵は相容れない。相容れないから刃を交えるしかない。
だが、そこに常に『恨み』があるかと言われれば別だ。
「僕は恨むほど君を知らない。恨みはない、はこちらの台詞だね。
でも、そんな鎧を身に着けるほどだから余程のことがあったんでしょう?」
「それでも、貫き通さなきゃ、ならないのよね。マリア達とは、交われないのよね」
理由がなくとも、役目だから。手を差し出そうとも、役目なら。
役目とは、多分――少なくともあの細剣にとっては、それほど重いものなのかもしれないから。
たとえ、鎧の下で流れる血が紫陽花の装束を染め上げようと。腕の片方に力が入らなくとも。彼女は立ち続けようとするのだから。
「勇者の剣であった、頃なら……違う道もあったでしょう。ですが、ここにいる、この紫陽細剣は。ブラキエル様の剣として立つことを、諦めはしません」
言いながら、赤く変じ始めるハイドレンジアの髪と瞳。
彼女自身の夥しい流血で染まった鎧と相まって、まるで炎の花のようだった。
「マリアも引く事は出来ないのよ、人々の笑顔の為に……」
黄昏色の竪琴を構えて、マリアドールはソウジを見遣る。
「ソウジ、準備は良いかしら」
「任せてマリアドールちゃん、もしもの時は僕を巻き込んだって構わないから」
「それはいけないのよ。ちゃんとソウジに当たらないようにするわ」
からからと笑うソウジにマリアドールは驚く。巻き込まれて困るのはソウジではないか。
当のソウジは、心優しいマリアドールがそのような事をするはずが無い、という信頼の上での冗談のつもりであった。もしも本当に、万が一が起きてしまった時は――それはまあ、その時で。
ソウジがその頭部に一対の雄牛の角を生じさせると、赤花のハイドレンジアと正面から斬り結ぶ。手にした斧剣は振るう度紫の狐火が弧を描き、両脚の仕込み靴は常に爪先に鉤爪を光らせ彼女の隙を狙っていた。ハイドレンジアの攻撃を回避しつつも、マリアドールの元へは行かせない。この近接距離で鎧の隙間を見つけだすのが、ソウジの役目だ。
「……それ、やっぱり簡単には砕けないね」
何度か剣が交わった時、ソウジは徐に口にする。
頭部の角は飾りではない。突進してぶつかれば凶器になるし、雄牛のように突き上げることもできる。もちろん試したが、鎧はびくともしなかった。
「ねえ、君の信念もそう? 隙間なんてないんだ、っていえる?」
「……」
赤い瞳で無表情に攻め立てていたハイドレンジアの瞳が、僅かに細められた。
「……嬉しいです」
狂気でも、陶酔でもなく。それは正気で正直な心からの声だと、ソウジには感じられた。
ソウジが引き留めていてくれるお陰で、ハイドレンジアはマリアドールの元までは攻めてこない。
(嬉しい……?)
あんなに真っ赤になって。いくら剣だとしても、あんなに血だらけで。
痛くないはずが無いのに、何が嬉しいのだろう。
彼女のことはまだよくわからない。今の言葉で余計にわからなくなったかもしれない。
(よくわからない、けれど……恨むほど、敵視もできない……)
割り切らねばならないことはよくわかっている。ソウジにも報いねばならない。
だが、あの痛々しい姿で剣を振るいながら「嬉しい」と口にした紫陽花の彼女のことを、どうしてもそのまま倒してしまうことはできなかった。
(せめて、その痛みが少しでも和らぐように)
蜜華の瞳には、彼女の赤花はよく映えて見えた。捉えることは容易い。
竪琴で爪弾くは優しい微睡みの音色。魂の歓喜を、昂りを鎮めるように。戦わなくていいように――。
「ブラキオンは決して壊れない。それと同じように、壊れない信念であれたら……そのように、見出してくださったなら。私はとても嬉しいです」
その花の綻びは、ソウジの目にだけ映っていた。マリアドールには見せられないとも思った。
こんな風に綻ぶと知ったら、マリアドールは敵とわかっていても悲しむだろうから。
「……っと!」
そんなことを考えている内に、ハイドレンジアの剣がソウジを弾き飛ばす。受身を取ってソウジが彼女から大きく離れた時、マリアドールの竪琴の音が響いた。『音』は、鎧で防ぎようがない『耳』から流れ込んでくる。気付いたハイドレンジアが塞ごうとする耳へ、今度は憂い詩の小夜曲となった旋律が流れ込んでくる。
優しさと憂いに満ちた曲は、沸き起こっていた歓喜を鎮めてしまう。
「剣に揺らぎが見えたわ、ハイドレンジア。ソウジ、あなたが思う光(こたえ)を魅せて」
「サンキュ、マリアドールちゃん!」
彼女の援護を受けて、ソウジは斧剣を構える。
「……ひとつ聞くけど。君の色は、その色でいいの? 僕は今日の君しか知らないけど」
青紫ではなく、戦うための赤紫。
あれほど、『ただの少女』のような綻び方をするのに。
「最後に残す詩(こえ)は、それでいいのかな。せめて願いは、声の限り叫ぶと良いと思うよ?」
「……いやです」
――恥ずかしいではないですか。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴォルフガング・ディーツェ
嘗ての勇者が携えた剣、か
望まぬ身の上であろうと命を繋ぐか、娘
自らに「高速詠唱」「多重詠唱」技術を流用しルーンを刻もう
求めるは戦士と守護の力…「限界突破」と「オーラ防御」
花を炎を纏う鞭で焼き尽くしつつ接近
至近領域を確保しガジェットを魔爪形態にシフト
「グラップル」主体に「フェイント」や「残像」を織り交ぜ近接レンジを維持へ
問おう、紫陽花の娘よ
望まぬ色に染まり、主の汚名を重ねることが貴君の望みか?
主の遺志を、踏みにじる生に後悔はないのか
真っ当な性根だ、恐らく動きは鈍るだろうが…念には念を
言葉に「呪殺弾」の力を重ね、簡易の呪詛としよう
済まないね、俺は所詮畜生だ
鎧の間隙に【指定UC】を差し込み別れとしよう
●花の終わり
紫陽花の花で例えるなら。
枯れてはいないが、鮮やかな色のまま多くの小花が千切られたようなものだろうか。
最後に残った小花も、今にも落ちてしまいそうだ。
「嘗ての勇者が携えた剣、か。望まぬ身の上であろうと命を繋ぐか、娘」
ヴォルフガング・ディーツェ(f09192)は、血だまりに横たわりながらもまだ立ち上がろうとするハイドレンジアを見下ろす。
――こんなにも血を流して。
「望まぬ、とは。何のこと、でしょうか」
「望まぬ色に染まり、主の汚名を重ねることが貴君の望みかと聞いている。主の遺志を、踏み躙る生に後悔はないのか」
「――……」
起き上がろうとしていたハイドレンジアの動きが止まる。ヴォルフガングにとっては予想通りだった。
オブリビオンとなり、猟書家の手先となろうと、彼女はその細剣のごとく真っ当で真っ直ぐな性根の持ち主なのだ。
加えて瀕死の手負いとなれば――惑わせることは、花を手折るより容易い。
聞き取れぬほどの速さで己に刻むのは、ティワズ(戦士)とエイワズ(防御)のルーン。勝利のために死力を尽くす力と、身を守る力を宿して彼女に近付く。
彼女が動く気配はない。あの言葉はそのままでも彼女を惑わせただろうが、呪殺の『弾』も織り交ぜた呪詛として発したものだ。ただの問いではない。答えを聞く気は無い。聞いたところで変わらないものを聞いてどうする。
「済まないね。俺は所詮畜生だ」
「いいえ」
「!」
それまで俯いていた彼女の周囲に、花園のごとく紫陽花が咲き誇る。花妖精が鍛えし祝華武装『紫陽細剣』――その名を示すように。
「……私の今の主は、ブラキエル様です。主を選べぬ剣の身ですが、今の主を戴いたことを悔いることはありません。私が命を繋ぐのは、全てブラキエル様の為です」
嗚呼――可哀想に。
彼女の眼は、オブリビオンとは思えぬほど澄んでいる。いっそ、自分の方が澱んでいるかもしれない。過去から滲み出た存在でありながら、これほど『今』を生きているとは。
可哀想に。
そんな純粋で可憐な花も、炎ひとつで燃え尽きてしまうのに。
咲き誇る美しい紫陽花の花園を、燃える邪鞭で散らし焼き尽くしていく。亡者の苦鳴が音を汚す。塗り潰し、掻き消し、居場所を奪う。
「勇者の剣としても、オブリビオンの剣としても全うできぬ哀れな娘。それが望みだというならば、そのまま息絶えるがいい」
腕輪の形をしていた魔具は、口笛ひとつで両手に魔爪を生やす。花園の効果で呪詛を跳ね除けた所で、この剣にもはや満足な力は残っていまい。
距離を縮めれば、彼女も剣の間合いへ詰めてくる。鋭く、鈍らず。なおも澱みない動きで振るわれる剣を魔爪で絡め、捉えて。
「俺は血は嫌いなんだ。止まらなくなるから、ね」
その剣を、腐蝕の毒で侵す。猟兵達の攻撃で血に汚れた鎧の隙間に、更に連撃を加える。
あまりにも速過ぎる動きは、外から見た者がいれば止まっているようにすら見えただろう。『血さえ出なかった』のだから。
正確には、血が出る前に――紫陽花は、腐り溶けてしまったのだから。
焼け落ちた紫陽花の花園。
その場所へ、太陽よりも眩しい光が照り付ける。
太陽よりも間近にある、すぐそこに在る光。
――七大天使が一、絶対物質ブラキオンを司る大天使ブラキエル。
この世界のオウガ・フォーミュラである。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『大天使ブラキエル』
|
POW : 岩腕
単純で重い【岩石でできた巨大な腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 絶対物質ブラキオン
【「絶対物質ブラキオン」の鎧】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、「絶対物質ブラキオン」の鎧から何度でも発動できる。
WIZ : 大天使の光輪
自身が装備する【大天使の光輪】から【破壊の光】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【徐々に石化】の状態異常を与える。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●遙か書架の、
――君とは、可能性(とも)であり。
――可能性(とも)とは、君であった。
天上界<あの何も無い場所>に、君が可能性(こたえ)を見た時。
我が憎しみよりも、君を助けようと決めたのだ。
=====================
※プレイング受付は少々お待ちください。
3章のプレイングボーナスは「ブラキエルの先制攻撃に対応する」となります。
=====================
●大天使、降臨
辺境の村へ迫っていた危機は、そのほとんどが退けられた。
帝竜を崇めるクレリックの少女達も、かつて帝竜を守護していた紫陽花の剣も、今は無い。
「……無能は、所詮無能か」
紫陽花の少女の後方で輝いていた光が、にわかに質量を増す。
太陽よりも輝いて辺りを照らし尽くした後、光は金髪碧眼の大天使の姿を取った。
その言葉は、この地で信仰のために散った少女が役立たずであるかのように。散る瞬間まで、己に尽くした少女が無意味であったかのように。
少ない言葉は、そのように聞こえた――かもしれない。
「骸の月なき今、我が行いは無意味に映ったか。否定はせぬ。その事実は変わらぬゆえ」
クレリックの少女達の岩腕のように、その表情は不動であった。
紫陽花の少女の鎧のように、その声には熱がなかった。
「……この世界の民は、神によって救われるべきであった。彼らが、真に民を愛するものであるなら。
だが神は、その徴すら見せぬ。これほど『帝竜の残滓』が力を振るっても、尚」
顔色も声色も、岩のように不動であった中。大天使はわずかに目蓋を伏せた。
それは微かな悲哀のようであり、憤りのようであり。問いのようにも見えたかも知れない。
あるいは、何れにも見えなかったかも知れない。
「あのような場所に、今更何があるとも思えぬが」
独り言のように溢すと、たちまち大天使の光輪が輝きを増す。
光輪の光を受けた碧玉の瞳と金糸の髪は、人間離れした神々しさすら感じさせるだろう。
彼は信仰でも、絵空事でもなく、過去の事実として神を知る大天使である。
オブリビオンの猟書家として身を落としていようと、その能力も大天使の権能によるものだ。
「――我が最後の願いは、未だ潰えてはおらぬ。
我を阻まんとするならば、その命と引き替えと心得よ」
身に纏った花々が美しく咲き乱れては散りゆく中、碧玉が猟兵を見下ろす。
そこには悲哀も、憤りも、問いもなく。
あるのは、非常に純粋な――決意だ。
=====================
※プレイング受付は【6月1日(火)8:31~】です。
イラストの剣は持っていませんが、ブラキエルは必ずユーベルコードで先制攻撃をします。
対策の上、ご参加よろしくお願いします。
ニクロム・チタノ
ブラキエルこれ以上は無意味だアナタの願いは潰えたんだ
それでもまだこんなコトを続けるなら、ボクはアナタに反抗するよ!
ボクの真の名紅明日香の名を以てチタノヤタテを降臨させる
チタノヤタテは八つの盾と八つの重力槍をもつ
八つの盾を正面に集中敵の視界を遮りつつ光と衝撃を防ぐ、そして重力槍の射出の準備をする
石化した盾を砕いた岩石の腕に重力槍を射出する
破壊は出来ないけどそれでいい
重力槍を開放して岩石の腕に重力を掛けて地面に叩き落とす
バランスが崩れてふらついたところを狙って渾身の一撃を叩き込む!
これより反抗を開放する
どうか反抗の竜チタノの加護と導きを
シキ・ジルモント
○☆
真の姿を解放(月光に似た淡い光を纏い、犬歯が牙のように変化し瞳が輝く)
強固な守りでも、鎧なら先の『紫陽花』のように隙間はあると予想
まず銃を用いて積極的に攻める
相手の動きを観察して把握し、鎧の隙間を狙う隙を見極める為だ
隙を見極めるまで耐えて、攻め時と見たら一気に接近
接近途中で狼に変身して駆け、相手の目測を狂わせ攻撃を避けながら鎧の隙間を狙える距離へ
反射を防げる鎧の隙間へ、ユーベルコードを叩き込む
姿形もなりふりも構ってはいられない
どんな願いを抱えていようと、猟書家のそれが今を生きる者と相容れる事は無い
ならばこちらも猟兵として全力を賭して止める
あの天使をその決意や願いごと葬る事も、躊躇いはしない
●反抗の嚆矢
鮮やかな草花の他には一糸纏わぬ姿であった大天使の体を、石の鎧が覆ってゆく。猟兵達には見覚えのあるそれは、つい先ほど紫陽花の少女も装備していたもの――絶対防御を誇る、絶対物質ブラキオンの鎧だ。
「ブラキエル、これ以上は無意味だ。アナタの願いは潰えたんだ! わからないのか!」
「わかってもわからなくても、同じ事だ」
戦いの姿勢を崩すことのないブラキエルに問うニクロム・チタノ(f32208)。その隣で淡い光を纏い始めるのはシキ・ジルモント(f09107)だった。
「どんな願いを抱えていようと、猟書家のそれが今を生きる者と相容れる事は無い」
その光は、大天使の放った烈しい光とは真逆。月光の如く、静かで細やかなもの。
やがてその光が全身を包み込むと、シキの口端には狼の牙が。瞳も人外の力を宿して爛々と輝く。
普段の彼であれば、人前では憚る本来の姿――人狼の『狼』の力を色濃く現した姿だ。
「こちらも猟兵として全力を賭して止めるまでの事。願いも決意も、共に葬る」
その願いが彼にとってどれほど重く、その決意がどれほど譲れぬものであろうと。
躊躇えば葬られるのはこちらだ。手段も形振りも、構う余裕はない。
「そうか……そうだね」
元よりわかりあえる相手ではない。こちらも和解のつもりで来たのではない。
反撃を――確実なとどめを刺すため。終わらせるために。
「それならボクは、アナタに反抗する! ボクの真の名――紅明日香の名を以て!」
己の真名の解放と共に、ニクロムは内に宿る反抗の竜チタノヤタテを呼び醒ます。呼び起こされたチタノヤタテの霊体がニクロムを媒介に現実世界へ顕れようとした、その時。
『■■ ■■■■■――』
聞き取れない言葉だった。あるいは、この地上では失われた神代の言葉か。
ブラキエルが短く何かを呟くと同時に、大天使の光輪が一瞬で拡がり周囲を大地ごと砕く光を放ったのだ。
咄嗟に構えた反抗の小盾で光の直撃だけは免れたものの、ニクロムの全身を焼けつくような痛みが襲う。
痛む場所からは更に、別の感覚――『感覚が失われる』感覚が、広がっていく。
(これは……石化……!)
あの岩腕のように。鎧のように。この体も石になり始めている。
(嫌だ……このまま石なんかになりたくない! ここまで来たのに!)
ブラキエルは既に次の攻撃を用意しているのか、また光輪が光を増しつつある。石化が進んでいる状態であの破壊の光を受ければ――。
「…………」
発砲の音が、光の膨張を妨げる。
一発、二発。三、四――一瞬の詠唱に入るその直前に、シキが銃撃で鎧の隙間を探す。
あの『紫陽花』は無意味ではない。彼女と同質の鎧であるなら、この大天使も近い場所に隙はあるはず。例えば、首――それも、花で隠されている辺りに。
「紫陽花の剣から学んだか。だが、所詮あれは借り物の鎧……」
一度は抑えられていた光が再び膨らみ始める。あの光は全方位へ拡散するものだ。先の光は伏せてやり過ごしていたが、次はシキも狙われるだろう。
「ボクは……絶対に反抗する……」
爪先から膝まで石になりつつあるニクロムが、その意思だけは燃やし続ける。
大天使が何だ。こんな一方的で、意味のない蹂躙が。例え意味があったとしても、こんなものは許されない。許さない。
ニクロムの、『紅明日香』の反抗は、こんなものでは終わらない。始まってすらいない!
「これより反抗を解放する! いま一度来たれ! 反抗の竜チタノヤタテ――!」
一度は光輪の光に阻まれた顕現は、今度こそ成った。八つの盾と八つの重力槍を周囲に浮かべる『紅明日香』の守護竜だ。
その『反抗』の加護が、ニクロムの石化をいくらか押し留めてくれていた。
「今度は自由にはさせないよ!」
なおも膨張を続ける光に、チタノヤタテの八つの盾が迫る。拡散する前に押さえ込んでしまえばいい。更にその盾の隙間からは、八つの重力槍が全方向からブラキエルを狙っている。
「そちらは何も学ばなかったか……」
囲みこんだ盾は光の拡散を許さず、重力槍が一斉にブラキエルを突く。しかし、それらは全てブラキオンの鎧に阻まれて肉体に通ることはなかった
――肉体への傷、という意味であれば。
「!」
直後、宙にあったブラキエルの身体が地へ堕ちる。重力槍が与えた重力だ。
そして、これほどの大きな隙を見逃すシキではない。
人間の身体よりも能力を増した獣人の脚で駆け寄り、更に途中で狼へ姿を変えて一気に距離を詰める。
大きな翼が羽ばたいて、体勢を整える前。人型に戻り、その射線を妨げるものが無い一瞬を見極めて――撃つ!
ユーベルコードの一撃も、『鎧ではない場所』であれば反射はされないと踏んだ攻撃だ。
「そこだああぁぁっ!!」
ユーベルコードを弾かなかったその場所を、ニクロムもチタノの竜に狙わせる。
螺旋を描いてひとつの鏃となった八つの盾は、吸い込まれるように大天使の首を貫いたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フェルト・フィルファーデン
◆ケンと
(初撃の光を騎士人形で防ごうとした瞬間、刑天に乗り現れた愛しき殿方の姿を見て)
ケン!?……ありがとう、来てくれたのね!もう、無茶しちゃって……
ええ、あの猟書家さえ倒せば、今度こそ終わり。
さあ、ここから反撃よ!!
アナタに次の攻撃はさせないわ。
親友の想いが込められた護身剣と、ケンの想いが込められた騎士人形、この2つの想いがわたしの力になる!
翅と騎士人形、アーサーの剣から放たれる光で敵の破壊の光をかき消すわ。これでアナタの光は届かない!
そして更にケンの弩級人形の一撃に合わせて攻撃。いくわよ、アーサー!護身剣とアーサーの剣で高速飛行しながら切り刻む!
これ以上、アナタの好きにはさせない……!
ケンタッキー・マクドナルド
◆フェルトと
(先制でフェルトに向かってぶっ放される光に向かって
「刑天」に搭乗して盾になり庇う
丈夫な装甲人形だが流石に攻撃受けりゃこの戦いじゃ使えなくなるだろォな)
悪ィな刑天、後で直す
(コクピットから抜け出しつつ)
――よォ、遅れたけどギリ間に合ったみてェだなフェルト
この位無茶でも何でもねェよ
それよかあのスカした糞天使ブッ倒すンだろ?
一丁かましに行くとしよォや!!
装甲人形「GULLIVER」を"工房"から召喚、搭乗し速やかにハーケンを地面に射出
地面と岩塊どもから弩級人形を創り出しフェルトと連携して攻撃する
天使如きが頭が高ェんだよ
こちとら『神の手』だ、叩き落ちてろ――ブン殴れ"ブロブディンナグ"!!
●神の手
人間大の騎士人形アーサーの傍らに飛ぶフェアリーのフェルト・フィルファーデン(f01031)の姿は、重厚な装甲の妖精騎士とその供に見えたかもしれない。実際の主従関係は逆であるが。
そんな彼女は、先の猟兵達の攻撃でも死ななかった大天使の姿を目の当たりにしていた。
(首を貫かれても死なない……そうよね、オブリビオンだもの)
オブリビオンでも首領格に等しい、オウガ・フォーミュラ。真のオブリビオン・フォーミュラでなくとも、それに近しい『格』をあの大天使は既に得ている。
フェルトには騎士人形達がいるとは言え、油断はならない。ましてや今、彼女の傍で共に立ってくれる仲間は――この時だけは、いなかった。
「……それで相手になると思ったか」
首を貫かれたとは思えない、冷めた声が淡々と告げる。それは問いではなく、宣言だ。大天使が纏う光輪が俄かに光を増したかと思うと、彼の周囲から大地が砕けていく。小さなフェルトは、騎士人形の影に隠れてその光をやり過ごそうとして――
――轟、と風を裂く音がした。
それは騎士人形よりもずっと大きな、光を遮る影。フェルトがよく知る頼もしい鎧甲人形が、騎士人形ごと彼女を光から庇ってくれたのだ。
「刑天……?」
光が収束した頃、大きな影は末端から石化しながら膝をついてしまった。
「ケン!?」
思わず名を呼ぶ。この人形に搭乗しているのは、彼女の愛する――
「――よォ、遅れたけどギリ間に合ったみてェだなフェルト」
コクピットを抉じ開けて出てきた、ケンタッキー・マクドナルド(f25528)。人形の損傷に比べて、彼は無傷でいてくれた。
「ケン……ありがとう、来てくれたのね! もう、無茶しちゃって……」
「この位無茶でも何でもねェよ」
恋人に笑いかけつつも、傷付いた機体を労うように撫でるケンタッキー。頑丈な人形ではあるが、ここまで駆け付けるだけでも無理なスピードを出し続けた上にこの損傷では、もうこの戦いでは使い物にならないだろう。
「悪ィな刑天、後で直す……。それよかあのスカした糞天使ブッ倒すンだろ? 一丁かましに行くとしよォや!!」
ケンタッキーが、愛機を落とした大天使を見据える。
彼がこうして駆けつけてくれたなら、いくらでも勝機はある。
「ええ、あの猟書家さえ倒せば、今度こそ終わり。さあ、ここから反撃よ!!」
早くも次の攻撃に移ろうと光輪を光らせる大天使の姿に、フェルトはすぐさま護身剣を構える。先程は庇われた騎士人形も、今度は戦闘態勢に入って背の翅を持ち上げている。フェルトと同調しているのだ。
「アナタにもう次の攻撃はさせないわ。これ以上、アナタの好きにはさせない……!」
浅葱色の護身剣は、親友の。騎士王の名を冠した騎士人形には、恋人の想いが込められている。その身が無事であるように。その路を遮る危機を切り拓き、導けるように。
あの大天使が持っていないものを、こちらはいくらでも持っているのだから。
――負けるわけがない!
大天使の光と、騎士人形から発せられた光がぶつかる。装備する剣の翠蒼色の輝きが大天使の光を切り裂くと、大天使の光輪は一瞬にして光を失った。次の光を放とうとしても、もうその輝きが増すことはない。
「……ユーベルコードを封じたか」
「ケン! そっちはどう!?」
『いつでも出せるぜフェルトォ!』
応えたケンタッキーは、この時のために準備していたのだ。新たな装甲人形『GULLIVER』を『工房』の空間から召喚し、既に搭乗を終えたその躯体は起動している。
『見晒せ、これが弩級人形だ!!』
『GULLIVER』から次々に射出される無数のハーケン。それらは攻撃の為ではなく、これまでに大天使の光によって破壊された地面へ撃ち込むためのもの。無数の大繰糸が刺さった大地は、やがて巨人のような姿を取って起き上がり――弩級人形『ブロブディンナグ』となる。
フェルトも、ケンも、当人たちは小さなフェアリーだ。しかし、二人が操る人形達は人間よりも、あの大天使よりも遥かに大きい。
「いくわよケン! アーサー!」
『天使如きが頭が高ェんだよ! こちとら『神の手』だ!!』
形勢が、逆転する。
翼がある以上、大天使も飛ぶ事は可能である。しかしユーベルコードを封じられた今、土塊の巨人や騎士人形の剣を縫うように躱し飛び回らねばならないのは彼の方だ。
「『神の手』、か」
躱しきれず、弩級人形の一撃に翼から羽根と花を散らしながら大天使が零す。
「……皮肉なものだ。民を守るべき神よりも、妖精の猟兵の方が有能とは」
それは、失望であった。現実として神を知る彼が、『神を称する』妖精猟兵の実力を目の当たりにして、感じたものだった。
しかし、その失望に意味はない。彼に未来は訪れない。
「叩き落ちてろ――ブン殴れ『ブロブディンナグ』!!」
「皆、私に力を貸して――!!」
弩級人形の拳が落ちるタイミングに合わせて。騎士人形の剣と、フェルトの浅葱色の護身剣が交差する。
まるで、空飛ぶ鳥が撃ち落されるかのように。二体と一人の攻撃を受けた大天使は、真っ直ぐ地へと墜ちていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
月水・輝命
〇☆
WIZ
本体五鈴鏡を使用します。本気で参りますの。
無能、無意味……結果としてはそうなのでしょう。でも、彼らの想いはここにあった。それは、揺るぐことはありませんわ。
あの書架の王の想いも……いえ、今はあなたを止めることに集中を。
大天使ブラキエル、うつしうつすものとして、人を守りたい存在として、ここであなたを阻止致しますわ。
先制攻撃は「フェイント」を交えた「残像」、「第六感」で凌ぎましょう。本体にはなるべく当たらないように。
UCと「浄化」で、石化解除を試みつつ手数で攻撃しますわ。
はっきりと、何が言えるわけでもありませんが、人は、神様に救われずとも強い所がありますわ。
……あなたは、そう思いませんか?
禍神塚・鏡吾
技能:挑発、時間稼ぎ、念動力、式神使い、部位破壊、斬撃波
○☆
大天使を挑発し、惹きつけつつ足止めします
「『書架の王』の剣は手放したのですか?
最後まで一緒にいれば良かったのに」
「死なせたくないなら最初から一緒に戦えば良かったのに」
「友の未来のためにまだ何かできると思っているのですか?
例えこの戦に勝っても、貴方の隣に彼は居ないのに」
大天使は先んじて鎧の力を発動させ、受け止めたUCを複写する
ならばUCで攻撃しなければ良い
複製した鏡で彼を包囲し、装備武器のハングドマン・イン・ザ・ミラーを鏡から鏡へ次々移動させつつ、鎧の隙間を狙って斬撃波で攻撃させます
有効打にはならなくとも、仲間の為の時間稼ぎにはなります
●こい、ねがい、うつし、とい
大きな音がした。あの大天使が空から墜落したのだ。猟兵の攻撃によって。
余程の激戦だったのか、辺りには大天使の物と思われる花弁や羽根が散乱していた。
「……あなたが今、一人だからではないですか」
それらを見回して、問う。
戦う前に、彼は無能だと言っていた。無能は所詮、無能、と。
無意味だとも言っていた。自分の行動が無意味に映っていたか、と。
だが、それらは結果だけを見た話だ。
「神竜の彼女達も、紫陽花の彼女も。そして、あなた自身の……あの書架の王の想いも、きっとあった。それは、揺らぐことはありませんわ」
これまで使っていた複製の鏡ではなく、本体の五鈴鏡を胸に抱いて月水・輝命(f26153)は告げる。
「……想いだけでは変わらぬ。変わらぬものは、何も無いことと同じだ」
「では、最初から一緒に戦えば良かったではないですか」
傷付いた翼を広げ、再び空へ羽ばたこうとした大天使に向けられた挑発は禍神塚・鏡吾(f04789)のもの。
「猟書家最強の『書架の王』と、その後継たる実力を持つ貴方。初めから共に戦っていれば、確実に勝てていたのでは? 最愛の友を喪うこともなく……おや、そういえばあの『書架の王』の剣は手放したのですか? 最後まで一緒にいれば良かったのに」
「鏡吾様……」
彼の言葉選びと態度は、挑発としてあまりにも的確過ぎた。
立て続けに向けられる問いは、そのいずれも興味深そうに、不思議そうに、可笑しそうに。
「……猟兵には『見える時』があると、かつて友が言っていたが。精髄剣のことを知っているのなら、事実なのであろう」
猟兵と大天使ブラキエルが現実に対面するのはこれが初めてであるはずだ。しかし猟兵だけは、予兆を通して一方的にブラキエルを知っている。かつての『書架の王』などは、その予兆で猟兵が『見ている』ことを利用して『語りかけてきた』ことさえあった。
「だが」
ばさり、と翼が広がる。弱まっていた光輪の光が戻り、体は石の鎧に覆われてゆく。
「今更過去の話をしたとて、既に意味はない。我が最後の願いは、友が共にいたのでは果たされぬ。ゆえに帰したまでのこと」
「最後の願いとは? 友の未来のためにまだ何かできると思っているのですか?」
なおも挑発しながら、鏡吾は一歩進む。
「鏡吾様、それ以上近付いては!」
「例え、そうしてこの戦に勝ったところで――貴方の隣に、彼は居ないのに」
輝命の警告が聞こえているのか否か。鏡吾は殊更ゆっくりと、言い聞かせるように『答』を告げる。
――そこに、可能性(とも)はいないのに。
「……事実を否定はせぬ。貴様の言う通り、ここで勝利したところで友は戻らぬであろう。だが、示し、残すことはできる」
光輪がひと際輝いたかと思うと、光が大地ごと抉ってゆく。彼一人で世界を滅ぼせてしまいそうな、純粋な破壊の光。彼のオウガ・フォーミュラたる所以の一つだ。
鏡吾は光輪の兆候が見え始めた瞬間に錬成カミヤドリで己の鏡を複製し、彼を囲い込んでいた。鏡の中に映る包帯怪人は、その複数の鏡を移動しながら斬撃波を見舞う。
先の紫陽花の少女ほど、この大天使はまだ目立った隙がわからない。
「ここに、我が可能性(こたえ)を残す――!」
破壊の光が拡散し、鏡が見る間に割れてゆく。このままでは本体の、本物の鏡まで。
本体の器物の破壊は、ヤドリガミにとっての――死だ。
「いやはや……もう少し、私に注意を引ければ良かったのですが」
残り十、九。七、六、五。苦笑して僅かに振り返る。
「後を、お任せしても?」
三、二、一。
「させませんわ!!」
最後の一枚にひびが入った時、輝命が本体の五鈴鏡を掲げた。
本来は自力でどうにか回避するつもりだった光は、鏡吾が引き受けてくれた。
ならばここからは、己の鏡があの大天使を映す番――!
「大天使ブラキエル。うつしうつすものとして、人を守りたい存在として、ここであなたを阻止致しますわ!」
五鈴鏡から拡散されるのは、いくつもの浄化の矢。術式の陣を描きながら大天使を包囲すると、なだれ込むように彼へ降り注いだ。
「想いは、無意味では無いのです……!」
攻撃の手を緩めないまま、輝命はブラキエルへ続ける。
「神様に救われずとも、人には、想いがあります。人は、そういう強い所があるのです! そうやって生きていくのです!!」
やがて浄化の矢を撃ち尽くすと、ブラキエルが体の一部――鎧で隠しきれない胸部の隙間――を押さえながら地上に立っていた。
「……あなたは、そう思いませんか?」
問う声に、手負いの大天使は応える。
所詮想うだけでは、誰も救えぬし救われぬ、と。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シン・コーエン
真の姿(強敵との戦いに歓喜する修羅)にて臨む
これ迄の戦法は通じんだろう。
ならば、と腰の村正に手を掛け、居合斬りの体勢に。
真の姿効果による瞬発力に、足の裏から衝撃波を放って加速しつつのダッシュで一気に接敵し、神速の一撃を叩き込む!
…では、先制で返り討ちに会うのがオチだな。
故に、突進しつつ相手の岩腕攻撃のタイミングを第六感と見切りで読み、その場に残像を残して砕かせ、自身への念動力行使と空中戦能力による、無茶な空中機動で一気に相手の背後に回り込む。
余波はオーラ防御で耐える。
UC発動。
炎の属性攻撃を右の手刀に籠め、UC&2回攻撃の1回目で鎧の隙間に刺し込み、2回目で更に押し込みつつ衝撃波を内部に放つ!
●翼を断つ
目の前に立ちはだかる大天使は既に手負いだ。
しかし、相手はオウガ・フォーミュラ。これまでと同じ戦法が通じるとは思わない。
それほどの強敵である。
――そう。これは世界を滅ぼしかねない『強敵』との戦いである。
自覚と共に、己の根底が解放される感覚。
強敵との力同士の衝突に歓喜する修羅。それこそが、シン・コーエン(f13886)の『真の姿』だ。
「行くぞ!」
腰の『村正』の鍔に指をかけ、足裏からの衝撃波で大地を蹴る。推進力を得た体は、見る間に大天使との距離を詰めていく。
一足の間合いはすぐそこ。そのまま踏み込んで斬り付け――
(――では、返り討ちがオチだな)
一見不動に見える大天使。しかし緩やかに振り上げられた腕が石を纏い、巨大な岩腕に成長したのは一瞬のことだった。流石にこれをまともに食らって無事でいられるかは、この姿のシンでもわからない。
ならば、ここは。
岩の巨腕が振り下ろされる。巨腕は過たずシンの姿を打ち据えたが、そこには悲鳴も血飛沫も残らなかった。
「……残像か」
「こっちだ!」
その声は大天使の頭上から。念動力で自分自身を動かしたシンは、残像が消えた一瞬で背後へ回り込む算段だったのだ。
未だ不安定な体勢のシンへ、岩腕がその外見からは考えられない俊敏さで標的を変え襲い掛かる。しかしシンはこれも紙一重で身を捻り躱す。
シンの手には、いつしか『村正』は無かった。彼の刃は別にある。
愛刀にして分身でもある『灼星剣』がサイキックエナジーとなって彼自身の手に宿り、今は彼の手が文字通りの『剣』なのだ。
「大天使ブラキエル。その命――貰い受ける!」
今はあの石の鎧もない。この刃を遮るものは何もない。
炎のエネルギーを得て燃える手刀を、シンは大天使の背に素早く振り下ろした。
――が、ぎ、と鈍い音がする。
万物を断ち斬るはずの手刀を防いだのは、先程躱したのとは別の方向から防いだもう一本の岩腕。大天使ブラキエルがその権能で生み出すものならば、この岩腕もまたブラキオン製なのだ。『絶対物質』ブラキオンの防御は、この世界に於いて『絶対』である。
だが、その程度でシンは揺るがない。
「元々あの鎧があるものと思っていたからな。今更驚きはしない――!」
遮られた手刀の角度を変え、岩腕の表を滑らせる。『刃』の先端を背へ突き立てると、その翼を捥ぐように衝撃波を解放した。
大天使の翼が、草花と共に地に落ちる。
それは、二度と天へ還ることの叶わぬ彼の姿を表しているようであった。
成功
🔵🔵🔴
セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
紫陽花への態度に反射で怒りがぶわっと出そうになる
自分だって人のことを言えたものでもないのに
勝手な話だ
それでも溢れる衝動を押さえつけ
攻撃をこらえてアレスの後ろへ
どんな攻撃だって
絶対に、アレスは止めてくれる
それなら今やるべきは
【青星の盟約】を高らかに
アレスを鼓舞する思いも込めて
アレスがやり返す、そのタイミングで翼を広げ真の姿に変じたら
飛び、勢いをつけ
敵の羽へと炎の属性を纏った剣を叩きつける
1度で落とせるなんて思ってねぇからその分は手数で勝負
小さくなった体で小回りを利かせ徐々に削ってやる
アレスの支援がある時は強気に
相手が明確に態勢を崩したら
アレスの名を呼び
二人同時に全力を叩き込む!
アレクシス・ミラ
【双星】
○
無能とは…随分と勝手だね
貴様にも揺るがない何かがあるはずだ
…僕達も揺るがないものがある
この世界の今を守り、明日へ繋ぐ為
退く訳には行かない
…願いは、叶えさせはしない
先制にはセリオスの前に出て
盾からオーラ『閃壁』を友を守り抜く堅き意志で展開
出来る限り軽減させるように
衝撃が来ようと傷付こうと激痛耐性で耐える
…可能性ならあるさ
僕には剣がいる
反撃の可能性(【貴方の青い鳥】)は…此処に在る!
岩腕を見切り、盾で反らせば
真の姿を解放
二対の光翼で羽撃き
剣でカウンターの一撃を叩き込む
此処から連携だ
セリオスへの攻撃は庇い、盾で防ぎ
援護に雷属性魔法を上空から降らせよう
体勢を崩せれば
僕達二人の全力を合わせる!
●手放せぬ君
セリオス・アリス(f09573)の目には、翼の一つを失って地へ堕ちた大天使が映っていた。
あの紫陽花の剣は、彼は一人でも十分に強いと言っていた。絶対防御の鎧を自分の血で汚しながら、自分には可能性を切り拓く役目があると言っていた。その意志は、敵ながら健気にも見えて。あれほど傷だらけになりながら、主のために最期まで――。
(自分だって人のことを言えたものでもないのに)
その紫陽花を、あの大天使は無能だと言い捨てた。少なくともセリオスには、そのような意味に聞こえた。
だというのに、目の前の大天使の姿はまさにあの紫陽花の姿そのものではないか。
ひとつとは言え翼を失い、天へ還る術を失い。形勢逆転の術はとうに失われているのに、全く戦意の衰えを感じさせない。
あの健気な紫陽花が、彼に捧げたように。彼はきっと、書架の王のために。
――なんて、勝手な……っ!
「無能とは……随分勝手だね」
セリオスの代わりに、それを言葉にしてくれたのはアレクシス・ミラ(f14882)だった。反射的に怒りを爆発させそうになっていたセリオスの拳を押さえて前に出ると、あくまで静かに大天使を見据えていた。
「彼女は確かに、主の為に結果を残せなかった。それでも、あれだけ諦めなかった彼女を無能としか見られないほど、揺るがない何かが貴様にはあるのだろう。……僕達も揺るがないものがある」
金糸の奥で、互いの碧がぶつかる。
やがて血に濡れた花を咲かせながら立ち上がったブラキエルは、言葉少なに零した。
「あの紫陽花は、ただ及ばなかった。それだけのこと。無能とは、『この期に及んで何もせぬ愚か者共』だ。初めから期待はしていなかったが、ここまで期待通りの無能であったとは」
この期に及んで何もせぬ愚か者――彼は戦う前、『徴すら見せぬ神』についても口にしていた。その事であろうか。
しかし、紫陽花については「ただ及ばなかった」としか触れていない。彼女の献身は、彼にとってはそれ以上でも、以下でもなかったのだ。
「……だが、いかに神が無能であろうと。我は可能性を手放す訳にはいかぬ」
一対の巨大な岩腕が顕現すると、アレクシスも『蒼天』の盾を構える。
「この世界の今を守り、明日へ繋ぐ為退く訳には行かない。……願いは、叶えさせはしない」
守りたいものを守るために。手放したくないものを掴み続けるために。
互いに譲れぬもののために、拳と盾が激突した。
(どんな攻撃だって絶対に、アレスは止めてくれる……!)
岩腕の攻撃を受け止める度、アレクシスの盾は光のオーラ『閃壁』を発して後ろに庇うセリオスを守っていた。何度でも踏みとどまるアレクシスを、セリオスは信じていた。
「ぐ、ぅぅ……ッ!!」
しかし、地面に当たれば周囲を穿つほどの拳である。それを何度も受け続ければ、猟兵と言えど肉体が無事で済むはずが無い。
衝撃だけで肉の筋が断たれる。骨まで響いて折れているのではないかと錯覚する。
それらを、アレクシスはただ『友を守り抜く』という絶対の意志だけで、歯を食いしばって耐えていた。
(今の俺にできること……)
彼の盾を、共に支えることはできない。この身は彼の剣であって、盾にはなれない。
だが、盾を守るその腕を支えることは、できる――!
「――、――」
それは願いの歌。青星に願い、赤星に捧げる、鳥の囀り。
歌声は盟約となってセリオスに力をもたらし、痛みに呻くアレクシスにも力を漲らせた。
「……可能性を手放すわけにはいかない、と言ったな。ああ、僕もそうだ」
彼の視界に映るのは、盾を支える己の手。その指を飾っている、星鳥の指輪――盾よりも強い友の祈りは、彼の最大の可能性だ。
「僕には剣がいる。反撃の可能性は……此処に在る!」
気力を漲らせたアレクシスは、盾で岩腕を弾くと真の姿を顕す。二対の翼を負ったその姿に、セリオスも真の姿を晒せば、そこには三対の翼があった。
「はああああぁっ!!」
岩腕を弾いてから間を置かず、アレクシスは『赤星』から光刃を発して大天使の本体へと斬り付ける。セリオスもそれに合わせ、炎を纏った『青星』で同時に斬り込む。
狙うのは残った二枚の翼、そのひとつ。
ブラキエルには、剣がない。
守るべき剣(とも)は、帰してしまったからだ。
二対一の劣勢となっても、ブラキエルは岩腕を巧みに操り応戦した。
翼を執拗に狙うセリオスを殴り飛ばそうとした腕は、アレクシスが何度でも防いだ。
そのアレクシスを落とそうとすれば、セリオスの自由を許してしまう。
真の姿となったことで小柄な体格を得た彼は、小鳥のように俊敏に飛び回って攻撃を繰り返すのだ。
「雷よ、来たれ!」
アレクシスが喚べば、宙から稲妻の雨が降る。それを避けようと、ブラキエルの岩腕が両方とも宙に掲げられた時だった。
「アレス!!」
「セリオス!!」
何を、とは言わなかった。今しかないと、二人とも理解していたからだ。
身体に残っていた魔力の全てを剣に注ぎ込み、全力の一撃をブラキエルへと叩き込む――!
大天使の翼が、またひとつ堕ちる。
鮮やかな花の色も、煌びやかな金の髪も、今となっては赤の色だった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴォルフガング・ディーツェ
友の為にあらゆるものを踏み潰し願いが為の礎とする…実に傲慢だ、清々しい迄にね
残念だ、君は嫌いじゃあないが…紫陽花の騎士を殺めた者として、彼女にせめて顔向け出来る戦いをしなければな
【指定UC】を駆使し「空中戦」を展開
「残像」や「オーラ防御」も用い、地形を変える豪腕を回避し懐へ
「グラップル」による近接格闘で拳戟や蹴撃を絶え間なく叩き込みつつ、隙を突き「ハッキング」
特殊テックウェアの裾から生成した流体金属ケーブルを差し込み、高度圧縮した情報ウィルスを捩じ込み展開
生体の一時的なオーバヒートを狙い防御を突破
止めに「暗澹」の属性を付与した爪による「部位破壊」
返す「二回攻撃」の刃でより抉り、破滅をもたらそう
●翼を失った君へ
翼を失った天使とは、翼を失った鳥に似ていると思った。
手厚い看護を受けることができれば、命は助かるだろう。
しかし、鳥は逃れる術を失い、命が尽きるまで飼い殺しにされる。
元の場所へは絶対に、二度と帰れない。
大天使ブラキエルの風格ともなっていた大きな翼は、二枚が無残に抉り取られていた。
まだ翼を残す以上飛べないことは無いだろうが、もう満足には飛べないだろう。
残された翼で羽ばたこうと足掻く痛々しい姿に、ヴォルフガング・ディーツェ(f09192)は肩を竦めた。
「友の為にあらゆるものを踏み潰し、願いが為の礎とする……実に傲慢だ、清々しい迄にね」
その傲慢さは嫌いではない、としつつも。ヴォルフガングは一歩ずつブラキエルの元へ近付いていく。
「紫陽花の騎士を殺めた者として、彼女にせめて顔向け出来る戦いをしなければな」
「……心にもないことを。貴様の望みは唯、破滅のみであろう」
「結果としてそうなる、というだけの事よ」
交わるはずのない会話は、そこで終わる。ブラキエルの岩腕が宙に現れたからだ。
容赦なく襲い来る岩の拳を残像を残して躱し、宙へ飛んでも追い縋る攻撃をオーラで弾く。
腕の回避に追われる間にブラキエルを垣間見れば、彼は満足に羽ばたかない翼でついに宙へ飛んでいた。
あれならすぐに墜とせるのでは、とは思うものの。この一対の腕がどうにも邪魔である。
「では、動くか――指令、『惑えよ法則、従えよ蒼穹』」
ヴォルフガングを取り巻く領域が、書き換えられる。あらゆる自然法則は彼を助け、その飛翔能力は瞬間移動に近い速さに達する。
いくら岩腕がブラキエルの意のままに動くとは言え、速さでは今のヴォルフガングに及ばない。腕を抜けて一気にブラキエルの元へ到達すると、その肉体へ重力を増した拳や蹴りを立て続けに浴びせていった。
飛んで逃れようにも、翼の足りない彼の飛行など何の脅威にもならない。
「がはっ、ぐ……っ」
しかし、彼も一方的にやられるだけではなかった。攻撃が集中すると即座に岩腕を呼び戻し、ヴォルフガングを遠ざけようとしたのだ。
流石にこの動きには、ヴォルフガングも一時ブラキエルから離れた。
――ある『ハッキング』を仕込んで。
『ミスラの獣套』。
流体金属で構成された、見た目はテックウェアのようなヴォルフガングの装備である。
しかし、その裾から生成されたケーブルを一瞬でブラキエルに接続し、その間に高度圧縮された情報ウィルスを捻じ込んだのだ。
仕込みは瞬間の出来事。相手が大天使という、ある種埒外の存在である以上、効果の程度は賭けではあったが――。
「――……」
ブラキエルは隙を見せまいと、こちらから視線を外すことはない。
しかし攻勢に出ることもなく、彼の纏う花は異様に狂い咲いては一気に枯れたりと、調子に異常をきたしている事は明らかだ。意識を保つことさえ難しい情報量であろうに。
「大天使と言えど、その状態では苦しかろうよ」
小さく吹いた口笛に応えて、腕輪の魔具が魔爪へと変じる。
その魔爪を構えて再び距離を詰めると、狙ったのは――『心臓』だ。
「その魂に、暗澹あれ」
甘やかすように甘美に、堕とすように淫靡に囁いて。
雁字搦めのその肉体から、大天使の心臓を抉り取った。
成功
🔵🔵🔴
ティオレンシア・シーディア
○☆
…こういう手合い、ホント相性悪いのよねぇ…
地力のやたら高い「ただひたすら強い」奴と正面切ってガチンコとか、あたし一番苦手なんだけどなぁ…
ラグ(幻影)と摩利支天印(陽炎)で〇迷彩と残像を形成、一撃回避して○カウンター…
――ま、この程度の小細工じゃ無理よねぇ。
直撃だけは死ぬ気で回避するけど地形破壊の余波で戦闘不能、意地で掠り傷一発入れるのが精々――ってとこかしらぁ?
…ええ、「だからこそ」あたしの刃は、あなたに届く。
「ただの人間」、舐めないでちょうだいな?
今更カミサマがどうのとか正直本気で興味もないけれど。
「全部知ってて何もしない/できない」って、「存在しない」よりタチ悪いと思わない?
ヴィクトル・サリヴァン
〇☆
…愛していても手の届かない事くらいあるよね。
他の世界からも侵略者が来てるような世界の神ってそんな絶対的な力なくなってるのかもしれないよ?
まーキミの言ってる事が正しいのかもしれないけど。
それはさておき阻ませて貰おう。キミの命を貰ってね。
出来る限り他猟兵と連携、支援重視。
高速詠唱からの水の魔法で水の壁を何枚も作り視界を塞ぎつつ、距離を取り攻撃回避。
十分地面ぬかるんだら不意討ちで敵足元の泥を土魔法で操作し足に纏わりつかせてから硬化、移動を妨害。
攻撃の直撃受けそうなら結界とオーラ、水の壁を三重詠唱で作り衝撃逃がしつつ防御。
準備できたら攻撃の隙狙い敵胴体に銛投擲しUC起動。
さあがぶっとやっちゃって!
●神と人と、現実と
羽どころか、翼ごといくつか捥がれた姿。その胸には血塗れの孔がぽっかり。
彼が本調子を出せないことは誰の目に見ても明らかではあったが、それでもティオレンシア・シーディア(f04145)にとっては相性の悪い敵であることには変わりなかった。
「地力のやたら高い、『ただひたすら強い』奴と正面切ってガチンコとか、あたし一番苦手なんだけどなぁ……」
比喩でも、誇張でも、演技でもなく。正直な感想として溜息を洩らしたティオレンシア。
今回という今回は、流石に軽傷で済む作戦が思い浮かばない。本当に死ぬかもしれない。死にたくないが。本当に。
「……ま、無いよりはマシな程度だろうけど」
『ゴールドシーン』に頼んで、ルーン文字の『ラグ』と摩利支天印を刻んでもらう。幻影と陽炎――可能な限り、今大天使の頭上に現れたあの岩腕を避けるための策だが。
一瞬で迫りくる岩腕を見て思う。
(あ、これは無理。わかってたけど無理)
避けるだけならぎりぎりできるかもしれないが、その後攻撃に転じるビジョンがまるで浮かばない。
せめて掠り傷だけでも入れば――と、ここまで走馬灯のように思考が廻ったのがコンマ数秒。
次の瞬間にはもう、何を思う間もなく身体が弾き飛ばされていた。狙いを逸らす幻影と影炎の総動員でどうにか直撃だけは紙一重で回避した。しかし、それだけだ。地面を破壊した余波と、鼻先を掠めていった岩腕本体の風圧だけで、この体はきりもみされながらぼろ雑巾のように成り果てた。
なんて――なんて、あっけない。
「……立て。この程度ではなかろう」
少しすると、ブラキエルが歩いてきて寝転がるこちらを見下ろしていた。
近くにはあの岩腕。起きたらすぐ殺されそうだ、とは思うものの。
「残念ながら、『この程度』なのよあたし。強い剣も、魔法も使えない。堅い鎧も持ってないの」
『ゴールドシーン』を使えなければ、少し魔術の造詣がある一般人とさして変わらない。少なくともティオレンシア自身は、自分をそう認識している。
だからこそ、この距離ならば。この一瞬ならば。
「――!」
それは、最後の意地。
呪いも何も無い、ただの短刀。それを彼の足に突き立ててやったのだ。
「この程度、だからこそ。あたしの刃は、あなたに届く。『ただの人間』……舐めないでちょうだいな?」
その傷は遅効性。すぐには大きな影響を与えられない。もしかしたら、効果が及ぶ前に自分が殺されてしまうかもしれないが。
「……それもユーベルコードか」
「まあね……でも、ここまでだろうから。最後に言わせてもらうわよ」
まだ効果が出ないのか、ブラキエルが苦しむ様子はない。しかし、問答無用で岩腕を叩き下ろしてくる様子もない。弱者を待つ勝者の余裕のようであるのが、少し癪ではあるが。
「今更カミサマがどうのとか、正直本気で興味もないけれど。『全部知ってて何もしない・できない』って、『存在しない』よりタチ悪いと思わない?」
「……それが、天上界の神だ」
「同じよ。あなたも」
「…………」
それきり、ティオレンシアは黙る。ブラキエルもとどめを刺そうと、岩腕を振り上げて――襲い掛かる水の壁に気付いて距離を取った。
「ふー、危なかった。息は……うん、あるね。間に合ってよかった」
駆け付けたヴィクトル・サリヴァン(f06661)だ。ティオレンシアの生存を確認してほっと息を吐くと、ヴィクトルはブラキエルを見据える。
「神が人を愛してるなら、って言うけどさ。愛していても手の届かない事くらいあるよね。キミだって書架の王を助けられなかっただろう?」
「…………」
「それに、他の世界からも侵略者が来てるような世界の神って、そんな絶対的な力なくなってるのかもしれないよ?」
ヴィクトルの言葉は、正論に近かったのかもしれない。
事実として、大天使ブラキエルは友の危機に手を差し伸べることはなかった。
神々も、ヴァルギリオスに封印されてしまったが為に民を救えなかった。
そのために、こうして猟書家の侵略を許しているのかも知れない。
「……それゆえに愚かだというのだ。愚かでなければ、封印される事もなかろう」
「まー、キミの言ってる事が正しいのかもしれないけど」
それはさておき、と。ヴィクトルが話を切り上げる。
この大天使の命を以て、この世界での侵略を終わらせるために。
幾重にも重ねられたヴィクトルの水の壁を、岩腕が打ち砕いていく。
砕かれた水の壁は大地に落ちて、破壊され剥き出しになった土と混ざり一面は泥の戦場と化していった。
(空からも攻められるかと思ったけど、あの翼じゃ高くは飛べないのかな。歩き方も片脚庇ってる……?)
記憶が正しければ、ブラキエルはもう少し翼が多かったはずだ。翼の代わりに背から血が滴っているのは、そういう事だろうか。歩き方が不自然な理由はわからない。もしかすると、今倒れている彼女が。
(せっかく仕込んでくれたなら、無駄にはできないよね!)
既に泥が飛び跳ねるほど地面がぬかるんでいるのを確認すると、ヴィクトルはブラキエルの足元の泥を操作して纏わりつかせた。多少なら飛べるようだが、それでも妨害にはなるだろう。
移動ができないとなれば、次は岩腕で狙ってくるのだろうが――その前に。
「さあ、追い掛けて、齧り付いて――喰い千切れ!」
岩腕が襲ってくるのと入れ違いに、ヴィクトルの三又銛『勇魚狩り』が飛ぶ。
咄嗟に結界とオーラを発し、更に水の壁を重ねて三重の防御で岩腕に備えながら、銛が飛ぶ先を見守った。
銛は――身体を庇うように覆った翼に命中。そこへ向けて、巨大な水のシャチが飛び掛かって噛み付き、食いちぎった。
大天使の羽が散る。
彼の翼は、二度と宙を飛ばないだろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ソウジ・ブレィブス
【鳴華】○
神様は人を救うんだろうけど
没した天使様は何を救うつもり?
圧政?いいね、過去特有の傲慢だ、それは
先制攻撃は狐火を両手に纏って(オーラで)防御を試みるよ
僕はねえ、怪力にも多少自身はあるんだ
両手が酷く傷つくのは構わない、防ぎ切れればそれでいいよ
…どうしたの?僕は死んでないよ?(流血上等)
反撃開始(UC)
言っておくけど、やられた事はやり返すからね?
大きな腕には、大きな異形の手で
今を生きる僕たちが、願いを持って進めるように!
僕の願いは、願う人の願いが叶うことさ
…マリアドールちゃんに酷いことしたね?
僕は、女の子に手を挙げる人は嫌いだよ?(ニッコリ)
大丈夫さ、君の音と歌が届くように路は僕が創るから
マリアドール・シュシュ
【鳴華】○
無能の言葉に反応
…撤回して頂戴
彼女はあなたの為に剣を揮っていたわ
その信念は誰にも咎める事は出来ないのよ
そうね、あなたがいる限り願いはまだ此処に
助けたい気持ちそのものについては何も言えないわ
でも、マリアにも願いがあるの
世界に沢山の笑顔を
平和を
その為には
引けないのよ
竪琴構え
先制攻撃はケープで跳ね返すか髪飾りでオーラ防御
回避もするが全て避け切れず石化受ける
(…哀しい光
マリアとは違う)
っ…大丈夫
ソウジはブラキエルに集中して
彼の覚悟は本物よ
足元を掬われては駄目
マリアにはハープと歌があるから
薄紅のみつで詩(うた)紡ぐ
風魔法で敵の輪っかや羽へ攻撃
敵に優位と思わせUC使用
三章通して奏でた音弾を見舞う
●君へ、
及ばなかったのだ。君も我も。
この僅かな可能性さえ、恐らくは届かぬ。
このまま、我は無為に骸の海へ還るのやも知れぬ。
君の願いを閉ざし、『書架』へ閉ざしたまま。
――君の可能性と、なれぬまま。
●その可能性を断つ
痛々しい姿ではあった。
斬り落とされ、喰い破られ、抉り取られた翼がおよそ半数。
首を貫かれ、胸には大きな孔を穿たれて。色鮮やかな花々はすっかり赤一色。
その姿を見て、マリアドール・シュシュ(f03102)は複雑な心持ちになった。
この大天使は、あの紫陽花の少女を無能だと言ったのだ。それを、どうしても許せなくて。
――許せなかったのだが。
(……同じ、じゃないの)
もう飛べないであろう翼。もう永らえないであろうがらんどうの心臓。
縋るものがなくなっても、彼もまた――諦めていない。
(……同じ、だからこそ)
言っておかなければいけない、と。マリアドールは口を開いた。
「無能、という言葉……撤回して頂戴。彼女は、ハイドレンジアは、あなたの為に剣を揮っていたわ。その信念は誰にも咎める事は出来ないのよ」
「……英雄は、死して人の心に残るという。堕ちてもあれは英雄の剣であったか」
もはや翼の用を為さない翼を大天使が動かせば、血に濡れた羽が地に落ちた。
「撤回する気は無い。そも、我は無能な剣を側に置くことはせぬ」
「どういうこと、かしら……? 無能は所詮無能って、あなたは言っていたわ」
結果を残せなかった部下達が無能、という意味でないなら。あれは何を意味していたのか。過去特有の圧政者だと感じていたソウジ・ブレィブス(f00212)も、少しばかり彼の言に耳を傾けた。
「天上界の神々に、未だ地上の民を思う心あらば。その民が危機に晒されれば、自ら扉を開くこともあるやもしれぬと信じた。……それで道が開かれるのであれば、我が身諸共に滅される事も厭わぬ、と」
だが、現実は違った。この辺境の村への襲撃はオブリビオン以外に犠牲を出すことなく、民への犠牲が無いなら神が扉を開くこともない――彼の可能性は、完全に閉じつつあるのだ。
「既に、神にその力が無い、と言っていた猟兵もいた。心もなく、力もなき無能な神に、何故この世界を任せられよう。友が望まねば、我には価値のない者共だ」
「神を試すために民を殺すのは平気で、部下も使い捨てにできて、友が望まなければ神にも価値が無い? それって結局、没した天使様が救いたいのはその友だけってことじゃないの?」
無能の対象こそ違えど、やはり傲慢には違いないとソウジは思った。彼がしている事は、どうあれ『友一人のために世界を滅ぼす』事になるのだから。
「マリアドールちゃん! こいつはここで必ずぶっ倒すよ」
狐火を両手に宿したソウジがブラキエルと対峙すると、マリアドールも黄昏色の竪琴を抱き締めた。
「世界と引き換えにしてでも、あなた自身を犠牲にしようとも助けたい、その気持ちは……何も言えないわ。でも、マリアにも願いがあるの」
この大天使が滅ぼしても構わないとしたその世界に、沢山の笑顔を。恒久の平和を。
――願いは此処に。その為には退けない。
最初に動いたのは、大天使の傍らから現れた一対の岩の巨腕だった。狙いはソウジだ。狐火のオーラを発して身を固めているとは言え、その質量はソウジが圧倒的に不利であろう。
その両腕が、容赦なくソウジを叩き潰しにかかる。
「ぐ……っ」
その一撃を、ソウジは両手で受け止めて耐えた。
「はは……っ、僕はねえ、怪力にも多少自信はあるんだよ」
しかし、感じる。押されているのがわかる。踏ん張る足が地へめり込む。岩腕を押さえる腕が、今にもあらぬ方向へ曲がってしまいそうだ。
それは、とても痛いだろう。正直に言えば、今だって既に痛い。かなり痛い。叫びたいほどに。
(あと少し――もてばいい!)
「だが、それでは動けまい」
その努力を蹂躙するように、光が膨張する。ブラキエルが纏う大天使の光輪が一瞬で辺りを照らし尽くすと、光が照らした場所は瓦礫と成り果てた。
岩腕を押さえるばかりで動けなかったソウジは――。
「……っ、大丈、夫?」
「マリアドールちゃん……?」
マリアドール自身は、友人達の想いがその身を守る助けとなってくれる。
だから、そうすべきだと思ったのだ。
自分が影になれば、ソウジを助けられると。
「マリアは、大丈夫……ソウジは、ブラキエルに集中して……!」
髪の末端が、足の爪先が。手の指先が、固まってくる。石になり始めている。
「彼の覚悟は本物よ。足元を、掬われては……駄目……!」
「マリアドールちゃん!!」
こうなっては、一刻の猶予もない。
一刻も早く、あの大天使を打ち倒さねば。
「……マリアドールちゃんに酷いことしたね? 僕は、女の子に手を挙げる人は嫌いだよ?」
狐火を宿していた手が、その爪を凶悪に伸ばした魔獣のものへと変化していく。変化が肩まで及ぶ頃には爪は身長の倍ほどにまで成長しており、魔獣の腕は巨大な岩腕を気合ひとつで弾き返した。
にこりと笑いながら、ソウジは異形の手を構える。
「言っておくけど、やられたことはやり返すからね」
異形には異形を。襲い掛からんとする岩腕を、ソウジは悉く弾き返してみせる。
彼はあくまで、『岩腕を押し留める』だけだ。
ブラキエルの本体。次の攻撃に向けて再び光輪を輝かせている彼を狙うのは――。
(……哀しい光。マリアとは違う)
その光を見つめて、一抹の哀しさを覚えつつ。マリアドールの唇を彩る薄紅が風を呼べば、光輪の光の膨張を妨げようと吹き荒れる。
しかし、光はその程度では収まらない。マリアドールもそれはわかっている。
だから――『音』を。
神竜の少女達にも、紫陽花の少女にも聞かせた音を、ユーベルコードで召喚した宝石のベルで。その詩(うた)を紡いだ。
「今を生きる僕たちが、願いを持って進めるように! 願う人の願いが叶うように!
僕はその路を――創る!!」
ソウジが岩腕を打ち砕く。鋭い爪は代償に失ったが、路は開けた。
彼女の歌を遮るものは――どこにもない。
大天使の光輪に、亀裂が入る。やがて砕け散り、ついに彼は膝をついた。
「真の無能は……我であったか」
枯れゆく花々。崩れゆく肉体。
最期にその碧玉を閉じながら零した言葉は、ただ純粋な愛情に満ちていた。
「友よ。いつか……君の路が、開かれん事を……――」
舞い上がる風と共に、大天使の姿が消滅する。
後に残ったのは、血に濡れた羽根一枚だった。
成功
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