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天火の轍、地灼の戮

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #大天使ブラキエル #オウガ・フォーミュラ #関連シナリオなし #群竜大陸

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●白のクロニクル
 アックス&ウィザーズと呼ばれし世界の天にとまた昇る、満月。
 猟兵による抗いは月呑まんとする猟書家幹部の悉くを撃ち払い、
 天なる月は、遂に、その全き輝きを取り戻したのである。

 ――我が友よ、君の願いは叶わなかった。君は『書架』へと帰るがよい。

 纏う月暈めいた耀きを、せめてもの餞に。
 憂いの大天使はここまで片時たりと決して手放すことのなかった『剣』を虚空の先へと送り還す。

 ――我は、天上界の扉を開く僅かな可能性を実行しよう。
 ――……もっとも、ヴァルギリオスさえ見逃しあまつさえ封印された愚か者共が、今更地上の危機に扉を開く事もあるまいが……。

 最早かの天には求む『識』など無く。
 だが。それでも。
 ――我が友、書架の王よ。君が望むのであれば……今ここに武と殺戮を。

●岩腕の王の戦場へと
「ふっふふー♪ ついについに! 儀式魔術【Q】「世界を喰らう骸の月」の一角が崩れたんだね!」
 グリモア猟兵のひとり、巳六・荊(枯涙骨・f14646)が告げたのは決戦の開幕。
 アックス&ウィザーズの地におけるオウガ・フォーミュラにして天上界探索の任を引き継いだ猟書家『大天使ブラキエル』を討つべき機が今ここに訪れたのである。
「……ううん。崩れたんじゃなくって崩したんだって言うべきだよね。ブラキエルを月面から引き摺り降ろせたのはこれまでに尽力してくれた猟兵みんなのおかげなんだもん」
 誇らしげに、満面の笑みで語る彼女自身は今回が初の対「骸の月」予知となる。

「で、これから向かってもらう先は群竜大陸の龍脈火山帯。去年のちょうど今頃あたりに戦った『帝竜戦役』で帝竜ガイオウガを討ち取った土地だね」
 アックス&ウィザーズにおける『骸の月』は完全に沈黙し……完全に阻止された儀式魔術に代わって『大天使ブラキエル』が次に目論むのはこの地における虐殺だ。
 今回集められたオブリビオン軍団は虎や狼の姿をした炎の精霊たちだという。
「帝竜消滅後も依然として噴火活動の続く龍脈火山帯は彼らにとって庭も同然。地の利は完全にアッチ側にあるのに加えてブラキエルから移植された『岩腕』での増強がとってもシャレにならないんだよねー。精霊や獣の群れというより火砕流そのものと闘うイメージで臨んだ方がいいかも?」
 そんな軍団がまずは不毛の地へと集められた点、不幸中の幸いと呼ぶ他ない。
 虐殺の尖兵として彼らが龍脈火山帯から人里へと解き放たれる前に、急ぎ、討ち尽くすべきだろう。

「炎の精霊達の指揮を任されているのは女精霊使いだね。ユーベルコードをもってしても破壊不能な『絶対物質ブラキオン』に守られている最強の腹心のひとり。彼女が龍脈周辺の精霊力を抑え続ける限り、大天使ブラキエルへの道は決して拓かれない」
 破壊を可能とするアイテムはこの世に幾つか存在するはずなのだが残念ながら少なくとも今回は龍脈火山帯周辺にそれは存在しない様だ。
「だから『鎧』に守られない僅かな隙間を突いて貰うしかないんだ。ゴメンね。
 その精霊使いは拳や掌から隷属させた精霊達から絞り取った精霊力を放つユーベルコードを放ってくるんだけどね。その所為か、手のひらだけは『鎧』で覆わなかったんだ」
 元より強力な敵であるため弱点とまでは言えないかもしれないが、それでも猟兵の攻撃が通る可能性があるのは僅かにそこだけなのである。
「まあそれでも――彼女の後に控える大天使サマに比べればまだまだ可愛いものかもね。
 ……実際カワイイ獣耳っ娘だし♪」
 クスクスと笑いながら、荊の説明はいよいよ『大天使ブラキエル』へと移る。
「予兆で熱く語り掛けてた『剣』は使わないしそもそも持って来てもいないみたい。それでも『七大元素の一、ブラキオン』を司る大天使だけあって『大天使の光輪』『岩腕』、そして『絶対物質ブラキオン』と……ドレもコレも嫌になるぐらいのチートっぷり!
 必ず先制攻撃してくるから対策は必須だねー」

 書架の王を失い儀式破れてなお、かの大天使を神々すまう天上界へと駆り立てるのは、あまりにも強く深きその憎愛故か。
 だが彼の轍の下、轢き潰されるであろう犠牲はあまりにも夥しく見過ごせる筈も無い。
「最初の『猟書家最終決戦』がイキナリ現時点での首魁ともいえる彼からってのはかなりのハードモードだけど……今も多世界で好き勝手してる猟書家勢力に、ガツンと一発♪
 目にモノ見せてやっちゃおう♪」


銀條彦
 このシナリオは、「猟書家最終決戦シナリオ」です。
 アックス&ウィザーズ侵攻を率いたオウガ・フォーミュラ「大天使ブラキエル」との戦いとなります。

 第1章は獣の姿を取る炎の精霊たちとの集団戦。
 援軍ボーナスが存在しない、赤熱の火山帯での戦いです。
 敵すべてに『岩石の腕』が移植されておりユーベルコードの破壊力が大幅に強化されています。

 第2章は精霊らを使役し大天使ブラキエルへ至る道を阻む、腹心とのボス戦。
 『絶対物質ブラキオンの鎧の隙間を狙う』プレイングにはボーナス判定が加味されます。

 そして、第3章で大天使ブラキエルとの決戦となります。
 プレイングボーナスは『オウガ・フォーミュラからの先制攻撃に対抗する』です。
 完全に滅ぼすためには計20シナリオ以上で倒し続ける必要があります。

 御武運を。
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第1章 集団戦 『炎の精霊』

POW   :    炎の身体
【燃え盛る身体】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に炎の傷跡が刻まれ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    空駆け
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ   :    火喰い
予め【炎や高熱を吸収する】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『クッ――莫迦ナ!?』
『我等ガ……従ウハ……偉大ナル垓王…………』

「うん、そうね。ホントにバカみたい」
 邪気なき無邪気。可憐な獣耳の少女は、帝竜亡き地でいまだ荒ぶる炎精霊達を、次々といとも容易く隷属化させてゆく。
「帝竜はもうとっくにいないんだから。あんまりあたしの手を煩わせないでよね」
 類い稀なる魔力に加え、授けられた『鎧』纏う少女にとって火山地帯の赤熱など苦ともならない。
 猟書家の尖兵と化した炎の獣の群れに、『精霊使い』の少女は来たる戦いにおける無差別大量虐殺を命じた上で自らの戦列へと加えてゆく。

『グルルルアアッァ!!!!』
『コロセコロセスベテコロシツクセ!!!!!!』

「天上界かあ……むずかしいことはよくわかんないけど、こ~んなザコっぽいのじゃない強い精霊がいたらいいなあ!」
鈴久名・紡
漸く、始まりの一角に到達出来るのならば
その為に尽力すべきだろうな

洗浄に到着した時点で常時火焔耐性を展開

煉獄焔戯使用
弓矢に形を変えた禮火と葬焔で敵を射って先制攻撃
矢には禮火を使用し、禮火の氷結系能力を属性攻撃に変換して使用
先制攻撃後は手元に戻った禮火を本来の小柄の形態で振るう
氷結系能力とそれを利用した属性攻撃は継続
更に岩石の腕への部位破壊を狙い、鎧無視攻撃を乗せていく
天候操作で雨を呼ぶ事で敵が極度に有利になる状況の回避を試みる

敵の攻撃は結界術とオーラ防御で防いで凌ぎ
負傷には激痛耐性で耐える
以降の攻撃には生命力吸収も乗せて倒れないよう対処

お前達が慕う帝竜はとうの昔に還っただろう?
お前達も還るといい



 界渡りの光が掻き消えるとほぼ同時、
 鈴久名・紡(境界・f27962)の護りが彼の肉体から炎熱を遠ざける。
 龍脈火山帯という過酷な環境そのものに対するにあたりこの半竜神の青年がまず取った備えは十全に機能しているようだ。

「漸く、始まりの一角に到達出来るのならばその為に尽力すべきだろうな」
 猟書家侵攻の口火となった儀式魔術【Q】「世界を喰らう骸の月」の術者にしてA&W世界のオウガ・フォーミュラ――大天使ブラキエル。
 かの敵へと到る為にも、窮余の代替案として強行されようとしている無差別虐殺を阻止する為にも、まず為すべきは眼前押し寄せるオブリビオン軍団の殲滅である。

「弓矢を寄越せ、『葬焔』『禮火』」

 先んじたのは、黄泉路示す一射。
 ユーベルコードが求めたままに、漆黒の大弓にと変化した鬼棍棒に番えられた矢もまた元々は凍気司る神器。
 離れ誘う弓手からしろがねの軌跡が放たれればいつしか矧がれた斑文は、白灰に黒。

「欠片も残さず、灰燼に帰せ……」

 迸る神力宿した恐るべきその飛矢は、風を切り、接近すら許さず遠間の列を穿つ。
 凍てつく焔ばかりが燃え盛る煉獄にと呑まれた敵群は唸り声漏らす暇すら与えられず、文字通り、灰燼へと帰していった。
 戦果は既に上々。
 だが圧倒的な初撃を目の当たりにしようとも攻撃範囲外の精霊達に怯む気配は無い。
 岩腕振り上げて殺到する大群に囲まれての包囲戦を、幾重と重ねた不可視の領域で凌ぎつつ本来の形取り戻した『禮火』で斬り結び、氷術を以って薙ぎ払う。
 しばらくはそんな一進一退の攻防が続けられた。
 時には薄刃じみた氷柱を狙い澄ませ、堅守おかまいなしで岩腕を砕く事も度々。
 そして……充分な数を引きつけたと紡が確信し得たその瞬間。
 煤けた空へと向けて、突如、高く掲げられた神器が――冷たき雨を喚ぶ。
 ぽつり。
 灰黒斑の髪を濡らす不意の雨垂れを呼び水に、
 轟、と、
 辺りを厚く熱く覆っていた筈の噴煙はまたたく間に黒雲にと押し遣られ、滝の如き豪雨が龍脈の大地へと降り注ぐ。

「……帝竜の余燼へ捧げる干天の慈雨、といったところか」
『グ……!?』
『ガルルルァアアアッッ???』

 たちまちに、辺りは爆ぜるような水煙で占められ精霊達の攻勢を堰き止める。
 紡の雨は戦場に刻まれた傷痕へと染み入り効力を減衰させるのみならず、精霊達の身体で燃え盛る狂乱の赤炎さえも潤みを以って鎮め始めたのだ。

「お前達が慕う帝竜はとうの昔に還っただろう? ……お前達も還るといい」
 大地を、敵を、そして己自身をしとど振る雨中にと濡らしながら。
 敵たる炎獣達の消滅を看取る藍眸は、憐れを湛えた優しき彩を宿していた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天御鏡・百々
虐殺とはいただけないな
最後の悪あがきとしても、まったく見苦しいものだ
無論、我らがその悉くを阻止してやろう!

さて、先ずは炎の精霊か
数が多く、岩石の腕も厄介だが……
近づかれる前に倒せば問題なかろう

『神扇花吹雪』にて『神扇天津』を桜の花びらに変じさせ
桜吹雪にて炎の精霊達を攻撃しよう
如何に岩石の腕を持とうと、殺到する無数の花びらには対処出来まい
(破魔117、誘導弾25、鎧無視攻撃15)

敵の攻撃をもしも受けるようであれば
神通力(武器)の障壁(オーラ防御120、結界術20)にて防御するぞ

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、連携歓迎
●本体の神鏡へのダメージ描写NG



「虐殺とはいただけないな。最後の悪あがきとしても、まったく見苦しいものだ」

 沸き立つ赤熱の大地に在ってなお悠然と歩む孤影は、あまりにも稚く。
 むろん童女とは外見のみ、古き善きヤドリガミである天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)の本質は神鏡にこそ宿る。
 かつて敵として帝竜と相まみえたこの火山地帯で、再び、世界を守護する為の戦いへと百々は其の身を投じたのだ。
 尖兵たる大軍勢に対して彼女が採った戦法は、奇遇にも、先の半竜神の青年猟兵にやや似通ったものとなった。
「さて、先ずは炎の精霊か。数が多く、岩石の腕も厄介だが……近づかれる前に倒せば、問題なかろう」
 すなわち。
 初手に膨大な神気に物を言わせた最大火力を問答無用の長射程で叩き込んだ後、仕上げの掃討へと持ち込む流れである。

 はらりと舞い踊るかの如き柔らかな所作で開かれたるは『神扇天津』。
 地獄じみた熱気と殺意ばかりが漲る戦場の只中で、俄かに。
 仄かな花の香を伴いながら、
 決して人のものならぬ浄魔の神気は膨れ上がるばかり。

「――天より伝わりし我が扇よ、桜花となりて舞い踊れ」

 たちまちに。
 そよと扇いだ金朱から放たれた奔流は、灼獄を薄紅の春へと塗り替える。
 其れは、無数の花弁1枚1枚すべてに神々の強き力宿らせた不可避の桜吹雪。
『ガアアアアアアァ……!?』
 精霊の中には岩腕や炎の尻尾を出鱈目に振り廻して打ち落とそうとするものも居たが、全て無駄な抵抗に過ぎない。
「如何に岩石の腕を持とうと、殺到する無数の花びらには対処出来まい」
 しかし、それでもなお殺戮に逸る群れのだれもが逃げようとも止まろうともせず。
 その後の精霊達は、数を恃みにただひたすら単調な突撃を繰り返しては百々の神通力に阻まれ返り討たれてに終始する事となる。
「見るに耐えん。彼奴らはもはや精霊とは名ばかり、抜け殻も同然では無いか……!」
 こうして空虚な全軍玉砕がすっかりと途絶えた頃には――。
 あれほど絢爛と吹き荒れた百花繚乱もまた儚く霧散させて、再び百々はただ独り。
 凛と輝くその紅瞳に勝利の昂揚は無く……。
 真実見通す神鏡が睨みつけた先は、日輪すら閉ざされた昏き地平の遥か彼方。

「待っておるがいい、猟書家ども。
 私欲のままに行わんとする外法非道の数々、我らがその悉くを阻止してやろう!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

忠海・雷火
人格:カイラ
強い執念。理解できないとは言わないが、虐殺などさせるものか

まずはUC使用、指定は「寒冷の地獄」。これで元の地形の炎と熱を断つ
迷路故の狭い地形を利用、通路で敵を盾にする形を取り、なるべく少数ずつと交戦する

対獣やガイオウガ戦での戦闘知識を、炎の精霊の行動予測に役立てる
予測や姿勢、視線から攻撃を見切り、刀で受けて流し、返す刃でカウンター。余裕があれば更に刃を返しての二回攻撃
周囲の敵数が増えてきた場合は、足を狙い薙ぎ払い。動きを鈍らせ、通路上の他の敵の障害とした上で、抜けてきた精霊から順に対処
物理が通り難ければネクロオーブで死霊を召喚。死霊の呪詛に周囲の冷気を乗せて攻撃し、凍った箇所を斬る


クーナ・セラフィン
よーやく元凶の尻尾…翼?掴めたね。
思い通りにならなかったら虐殺な辺り実に天使してる気がするけどそんなの許す訳にいかないからね。
騎士として、止めてやろうじゃないか。

さて、岩石の腕も炎の精霊だから直に触れるだけで熱そうだ。
符に防熱のルーン描いて使っておくけど…火山はともかく精霊は無理げだね。
跳ねてくる動きには的絞らせないようダッシュで回避、追い詰められて飛んで岩石の腕の一撃誘い、それを突撃槍で突いて後方にわざと弾き飛ばされ距離とったり。
視線を合わせて終焉が見えるならそういうのもやり易いだろう。
そして大振りの一撃を上下に躱しすり抜け胴体に突撃槍の一撃を喰らわせて退治していこう。

※アドリブ絡み等お任せ



 立ちこめる噴煙、煮えたつマグマ。
 死と炎の大地は、帝竜伐たれし後も決してその鳴動を止めない。

「よーやく元凶の尻尾……ううん、翼かな? 掴めたね」
 獲物たる鳥を追い詰めつつあるという実感に、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は小さく微笑んでみせる。
 男装のケットシーの眼差しが常以上に蒼く冷ややかなのは、防熱のルーン符に護られている以上にかの大天使に対する静かな怒りあればこそなのかもしれない。
「思い通りにならなかったら虐殺な辺り実に天使してる気がするけど、そんなの許す訳にいかないからね」
「強い執念。理解できないとは言わないが――ああ、虐殺などさせるものか」
 嘆息交じりに漏れた声は忠海・雷火(襲の氷炎・f03441)……の、別人格にあたる『カイラ』のもの。
 我が庭同然の地の利という点だけならばふたりの『彼女』のそれは誰よりも大きい。
 なぜならば雷火/カイラは、群竜大陸を分割統治する領主(ドラゴン・ロード)のひとりとしてこの地を治める立場に就いて久しいのだ。
 つい先月も、彼女は自領において炎の精霊や猟書家と一戦交えて来たばかり。
 そんな自らの実戦での経験を元に、カイラは最適と弾き出したユーベルコードの詠唱を紡ぐ。

「我、今ひととき道返の岩を払う。ここは此岸彼岸のあわいなれば、
 ――氷獄、冥きよ来たれ」

 戦場の全てが彼女の【空蝉冥路】の大迷宮にと鎖されて……垓王牙の気配色濃く残すカイラの愛刀『焔喰』が狭所を苦とせず縦横に揮われる。

 なるほど、カイラ達が有する『地の利』とは決して世俗の権力についてだけでは無い。
 龍脈火山帯領主という地位――それすなわち、過酷なこの地において最も多く帝竜ガイオウガと闘い、勝利し続けた猟兵であるという何よりの証なのだ。
 改めて思い至ったクーナは騎士として、そして龍脈火山帯と同じく旧帝竜領・創世雷雲領域において最も多く帝竜ワームを狩り続けた領主(ドラゴン・ロード)としての敬意を薔薇よりも艶やかな微笑にと替えて槍を振るう。
 幸い、カイラの寒冷迷宮に引き摺りこまれた事で、敵精霊らの『空駆け』は大幅な制限を強いられている一方で。
 極寒にさえ眼をつぶってオーラ防御を振り分ければ、奇襲攻撃の遮蔽にダッシュ機動の足場にと……ここはクーナにとってあまりに好都合な楽園なのである。
『……ガアアァアアアッッ!!!!!』
「それはもう視てるんだよ。残念だろうけどね」
 岩腕が大きく振り上げられた刹那の――【騎士猫は終焉を識る(スコアリーダー)】。
 するり摺りぬけて相対する炎虎の終焉すらも見透かして。
 すかさずクーナが突き立てたヴァン・フルールは敵の突進すら利用しての絶妙なカウンター。
 カイラはブレスレットに遊色を踊らせ、黒宝石のネクロオーブで死霊たちを召き喚ぶ。
 死を運ぶ冷たき呪詛もまた岩石の腕の防御を擦り抜けて多くの炎獣を屠ってゆく。

「たとえ炎の精霊どもがどれほど荒れ狂い大挙してこようとも、
 大地すら消滅させる帝竜の溶岩流に及ぶ筈も無い……」
「さあ、騎士として、止めてやろうじゃないか。
 あの物騒に情深い岩腕の王にして大天使ドノを」

 ――群竜大陸のロード達が氷獄の囚人全てを骸の海へと還すのにさして時間は要しないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
うっわ超あつそー
ケド思う存分狩れるとあれば自然と笑みも浮かぶもの
ちょいと派手にいきましょか

オーラ防御で熱凌ぎながら距離を取り、敵の動き見切り攻撃の直撃を避けるヨ
敵の体高程の【彩雨】呼びマヒ毒と水の属性纏わせたなら
手足を貫くか周囲を囲い、檻の様に撃ちこむわ
ほんの一瞬支柱の役割果たせば十分
その針を起点に範囲攻撃で水流起こし一気に敵を包み込んだら水蒸気爆発でも起こしましょ
ちゃんと周囲にお仲間がいないトコを狙うわねぇ

オーラ防御はそのままに混乱と目眩ましに紛れ、負傷覚悟で一気に接敵
今度は集めれるだけ集めた氷の針を傷口抉るように捩じ込もうかしら
同時に生命力を頂くけど如何程補えるやら
焼ける前に離れないとネ


徳川・家光
「こんな事もあろうかと、新たなユーベルコードを編み出してきました。その名も『天河大濁流』……!」
その言葉と同時に、直剣より膨大な水流を放ち、火山帯の大地もろとも、炎の精霊達を押し流します。

とはいえ、こちらが放つのはあくまで膨大な水。敵は溶岩、そして岩腕も装備しています。例え熱が奪われたとしても、まだ無視する事のできない質量を備えていると考えるべき。

なので僕は、濁流が流れている間に高台へと登り、僕の元に通じる道一本以外を水で埋め尽くしておきます。岩腕で武装したとしても、炎を奪われ一対一で、かつ高所を陣取っているならば、遅れを取る道理もないはず。

「色々な意味で正々堂々も何もありませんが、ご無礼を」



 永く灼炎に覆われ続け、連なる火山の隆起が各所で激しく頻発を続ける。
 地獄すら想起させる火山帯を前にコノハ・ライゼ(空々・f03130)の開口一番は、
「うっわ超あつそー」
 ふわふわとノンキでかつやたらに涼しげなその風情は彼持ち前の気質と隙の無いオーラ防御が成せる技。そんな彼の傍らには柔和な笑みを絶やさぬ赤髪の若侍がもう1人。
「まずは龍脈火山帯へ炎獣軍団を集めて『火喰い』させ、充分な増強図った上で精霊使いに支配させる。
 ……この期に及んで兵站を軽んじないその理性からは、却って目的を果たすまで大虐殺を止める積もりはないという大天使の強い殺意を感じますね」
 徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)その人である。
 グリモア猟兵が口にした、火砕流そのものと闘うイメージでとの助言から妖狐と羅刹の両名が導き出した答は……『火の氾濫には水とか氷とかの氾濫ぶっつけるんだよ!』で、見事に一致しているのであった(?)

「こんな事もあろうかと、新たなユーベルコードを編み出してきました。
 その名も『天河大濁流』……!」
 押し寄せる大群に対して、真っ向全力、勇ましくも高らかに響く裂帛の気勢。
 大上段の構えから打ち下ろされた神剣『鎚曇斬剣』の切っ先を伝って溢れ出た激流。
 家光のユーベルコードが創り出した大河の底へと為すすべなく呑みこまれた炎獣達をさらにコノハが追い撃つ。
「ふふ、それじゃコチラもちょいと派手にいきましょか。
 ――煌めくアメを、ドウゾ♪」
 マヒ毒、水流、傷口抉りとてんこ盛り。
 それは、針と呼ぶにはあまりに大きく変幻万色に美しい水晶の彩雨(アヤアメ)。

 敵軍の壊滅と混乱に乗じた家光が図ったのは各個撃破である。
 膨大な水量を駆使しつつも、敢えて、高台に待ち構える己へと通じる細道をたった1本残しておくことで狂奔する敵手勢に一対一の局面を強い続けていた。
「これならば遅れを取る道理もないはず」
 岩腕による強化や火山帯における敵の優位を重く見た彼は、あらゆる策をもって着実にそれらの優位を奪い、己の有利を確保する堅実な闘いに徹しようとしたのである。
「……色々な意味で正々堂々も何もありませんが、ご無礼を」
「勝てば官軍よぉ、家光ちゃん。徳川だけど」

 一方で、大規模水術を駆使した点だけは一緒でもコノハの狙いは大きく異なる。
 コノハのアメが敵の肉体を貫いたのはあくまで支柱がわり、準備段階に過ぎない。
 真の狙いは水蒸気爆発による殲滅の加速……火山活動そのものに水流をぶつけることで高圧水蒸気の発生を促したのだ。
「思う存分狩らせていただくわねぇ」
 共闘での相乗効果もあり、家光とともに高台から睥睨するコノハはもはや捨て身の接敵を行わずとも狙い撃ちし放題、生命力の入れ食い状態であった。

 ちなみに――。
 随分にビッグなスケールでド派手に大暴れかました両者だったが、彼らは一応、事前に領主猟兵にお伺いを立てていたらしい。
 そして彼女は別にストップなどは特には掛けなかった。曰く、
『ユーベルコードの1発や2発でおとなしく更地になってくれるような領土ならば苦労は無い』……だそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)。
ふむ。火の精霊か…ならこの魔術が適切だな。いくぞ露。
属性攻撃と範囲攻撃を付与した全力魔法で【凍てつく波動】行使
場合によっては限界突破し術の威力を上昇してみよう。
露との連携や協力で一体ずつ確実に倒していこう。
精霊達の攻撃は見切りや野生の勘と第六感などで回避を試みる。

精霊と親和性の強い露には心情的に少しキツイだろうか。
彼女が攻撃を躊躇する素振りを見せた場合のフォローも考える。
状況によっては露に声をかけてやるし身をかばい護ろう。
露は優しいからな。やれやれ…。


神坂・露
レーちゃん(f14377)。
えぇ!精霊さん達と戦うの?!うーん。気が引けるわ…。
でもでも悪いことしてるなら放っておけない。
 【蒼光『月雫』】で火の精霊さん達に…しかけるわね。
範囲攻撃と全力魔法を加えた魔法で…倒すわ。うん。
苦しまないようにしようと思うわ。従ってるだけだもの。
回避とかは見切りとか第六感とか野生の勘でちょちょっと。

…大いなる起源の下に迷わずにちゃんと還ってね…。
精霊さん達を倒した場所でそう小さくつぶやくわ。
…復活してくれるといいな…。難しいかしら…。
「大丈夫よ。えへへ♪ 心配してくれてありがと」



「ふむ。火の精霊か……」
 ならばと、シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は冷静沈着に魔道書を手繰り、最も適切と判断した魔術式を構築。
 一方で。
 悪いオウガ・フォーミュラさん退治だと勇んでくっついて、遠く群竜大陸にまで一緒に乗り込んできた神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)だったがいつもの天真爛漫はすっかりと影をひそめてオロオロと思案中。

「えぇ! 精霊さん達と戦うの!?」

 月光のみに育まれ永きを渡ったヤドリガミである露の本体はブルームーンストーン。
 あらゆる精霊と相性良くなかよしさんになれるという稀少な宝石である。
「うーん、気が引けるわ……でもでも悪いことしてるなら放っておけない……」
「露の性質は熟知しているつもりだ。心情的にキツイだろうが――」
 少女の心にすっかりと善良さと善良さの衝突事故が起こりかけているのを見かねたシビラは声を掛けようとするが。
「だ、だいじょうぶよレーちゃん。うん。全力でめいっぱいな魔法で倒す……わ」
 機微には聡い露は、シビラを先回りして強がって。
 ひどく無理のある笑顔を浮かべたまま、炎の精霊の群れへと戦闘を仕掛けてゆく。
「……従えられてるだものね」
 蒼く清浄な月光を想わせる水晶の棘が、旧き幾何学模様を描きながら全方位へと張り巡らされ――貫かれた獣姿の精霊達からは苦悶に満ち満ちた咆哮が巻き起こる。
 意を決した筈の少女の細い肩がまたビクンと震えるさまに、我知らず、庇うように寄り添ったシビラが【凍てつく波動(アブソリュート・ゼロ)】を解き放つ。
 私のこのユーベルコードは分子や原子に働きかけて身体機能を徐々に低下させてゆく魔術だから、眠るように死なせられる筈だ――鉄面皮のままで、でも必死に、用語を噛み砕いて露を励まそうとするシビラのさまに、今度こそ、露も迷いを振り切ったようだった。
 そして。
 すでに残り僅かな残存の精霊達を念入りに、そして可能なかぎり苦しませずにと心を砕きながら後しばし掃討戦は続けられた。

「――もうそろそろ、私だけで片付けても問題はない」
「大丈夫よ。えへへ♪ 心配してくれてありがと。 ……大いなる起源の下に迷わずにちゃんと還ってね……」
 昏い赤茶に煤けた空を、ふと見上げ。
 遠い遠いいつの日にか、炎の精霊達との『再会』を果たせるよう露は祈る。

(露は優しいからな。やれやれ……)

 そんな風に露を気遣い続ける自身の優しさにはまったくの無自覚なまま。
 天の月から舞い降りた大天使などよりも、
 己の隣の、この月光石の親友ひとりの方がよっぽど大きくそして手ごわいと、嘆息するシビラなのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『精霊使い『ユウ』』

POW   :    必殺・対消滅拳
【隷属させた炎と氷の精霊の力を纏う拳】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    闇よ、蹂躙せよ
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【手のひら】から【隷属させた闇精霊の暗黒拡散波動】を放つ。
WIZ   :    いっそ壊れちゃえ!
【全ての隷属精霊から抽出した精霊力】を籠めた【精霊力で形作られた大剣】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【闘争本能】のみを攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鳳凰院・ひりょです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

天御鏡・百々
『絶対物質ブラキオン』の鎧とは中々厄介だな。
しかし……物理的な攻撃力によらぬこれなら通るのではないか?

敵から距離を取って、『天之浄魔弓』から『清浄の矢』を放つぞ
至近にしか使えぬユーベルコードならば、距離を離せば安全だ
そして、この魂の穢れを射抜く光の矢ならば、鎧の影響を受けずにダメージを与えられるのではないか?
(破魔117、浄化21、鎧無視攻撃15)

それが通じぬようならば、素直に鎧で覆われていない手のひらを狙うとしよう
(追加で誘導弾25、スナイパー10)

敵は接近を試みてくるだろうが、光による目潰し10と
神通力の障壁(オーラ防御120)で足止めだ

●アドリブ、連携歓迎
●本体の神鏡へのダメージ描写NG


キア・レイス(サポート)
大得意 隠密・潜入・暗殺・遠距離攻撃・籠絡
得意 偵察・探索・支援・制圧・集団戦・時間稼ぎ
不得意 目立つ・コミュニケーション・ボディタッチ・格闘戦
特技(アイテム装備時)ピアノ演奏・歌唱・二輪車操縦

幼い頃から吸血鬼に飼われていた奴隷
吸血鬼の魔力を少量ながら持ち一部UCはそれを元に発動している
現代火器による戦闘と斥候・諜報・盗賊行為が得意な他、色香を使った誘惑が得意技
反面普通の人と関わったことが少なく踏み込んだ会話が苦手、他に不用意に身体を触られると不快感を覚え一瞬身体が動かなくなる

アドリブ歓迎
UCや装備品の説明文は読んで頂くと書きやすいと思います
また一部UC使用時の口調は覚醒時を使用してください



「あ~あ、あっけないわねぇ。
 この龍脈火山帯でならもうちょっと使えるかと思ってたのに」

 黒尻尾をゆらゆらと揺らしながら歩む少女の足取りはまるでおさんぽの風情。
 火山帯の熱気も足元の溶岩もお構いなしのヒール履きである。
 可憐なその身に備える高魔力と従えた精霊力、そして全身を覆う『鎧』あればこその、無防備。
「……ま。あらかた搾り取った後だからもう用済み、別に全然かまわないんだけど」
 無邪気に笑いながら、精霊使い『ユウ』が遂にその姿を現したのである。
 だが、ここは戦場。
 迎え撃つ嚆矢はすでに放たれていた。

「穢れしその魂、浄化してくれようぞ!」

 凛々しきその叫びに先んじて空を翔けた輝きは破邪の祈り籠もる【清浄の矢】。
 神弓たる天之浄魔弓に光の一矢を番えた天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)による長距離狙撃は狙い違わず討つべき敵に命中を果たす――しかし。

「きゃっ!? ……なーんて、物理攻撃じゃなきゃ通用すると思った??」
「『絶対物質ブラキオン』の鎧とは中々厄介だな」

 光矢は儚く四散し、穢れ穿つ効力は発揮されぬまま。
 自身も肉体を傷つけず魂だけを直接攻撃するユーベルコードを使う『ユウ』はすぐさま百々の弓射の意図するところを察知し、ペロリ、悪戯に舌を出して見せる。
 厄介なのはあくまで鎧であって『ユウ』当人ではないのだから百々にとってそんなものは挑発にもならないが……『ユウ』はすっかりと得意満面な様子で駆け出した。

(やはり、あらゆる攻撃を通さぬか。ならば、素直に手のひらを狙うとしよう)

 紅眸がすぅと怜悧に据えられ、近接戦に持ち込もうとする敵オブリビオンに対して全く臆せず二の矢三の矢が次々と射込まれてゆく。
 抜群の追尾性能を誇るそれらもまた絶対の『鎧』の前に防がれたが、それすらも百々の想定の内。
 神鏡たる眼力による見切りとまさに神技たる精密射撃の腕をもってすれば、敵の接近を敵自身それと知らぬままに誘導する事も易い。
 敵の両拳からそれぞれ氷と炎の精霊力立ち昇る気配を感知するや……再び放たれた光は矢ではなく目潰しの鏡光。

「ッ!! ……そんなの効かないって今度こそわからせてあげる!」

 咄嗟の反射によって『ユウ』の瞼は一瞬だけ閉じられた様子だったが、その視界はすぐさま取り戻される。絶対物質に守られた両眼には網膜焼けすら起こらなかったのだ。
 しかし、超高速の拳が百々の小さな体を打ち砕く事も、また、無かった。
 百々の神通力が堅き障壁としてそれ以上の敵の接近を阻み、射程内に踏み入る為にまず『ユウ』は障壁を打ち崩す必要があったからである。
 鎧VS壁のある種の膠着状態へと陥りかけた、その刹那の空隙を貫いたのは――。

「邪魔さえなければ外さない、それが難しいのだがな……」

 噴煙の狭間から浮き上がる長くなめらかな銀の髪――狙撃者は、もう一人。
 戦場に潜み続けていた猟兵にして暗殺者、キア・レイス(所有者から逃げだしたお人形・f02604)のアサルト銃が発したユーベルコードだ。
 狙撃スコープ越し、虎視眈々と戦況を見詰め続けた彼女の片眼は遂に【ホークアイ】を必中とする好機を得たのである。
 氷炎の対消滅を百々の障壁へ叩きつけた直後を狙いすませた弾丸が『ユウ』の手のひらを撃ち抜いた事でまず大きくその体勢が崩れ……。

「今こそその穢れきった魂、祓ってくれよう!」
「しまっ……ッ!!!」

 大天使の威を借る傲慢な攻勢から一転、
 高速飛翔で空中へと逃れようとした『ユウ』だったがそれも遅きにと失する。
 驚きと痛みで完全にがら空きとなった隙間を至射抜くなど、神弓にとってはもはや児戯にすら満たない。
 再び精霊力を放射する暇など与えぬままに光たる神の一矢が『ユウ』の肉体を透過し、深く深く、魂へと突き立てられる。
 まるで始めから打ち合わせていたかのような、即座の産物とは思えぬ連携――おそらく百々は途中からキアの存在を感知し、彼女による奇襲を作戦に織り込んだ上で立ち回っていたのであろう。

(穢れきった……か)

 白磁の人形を想わせる無表情な美貌はそのままに。
 だが。
 ペコリと礼儀正しい所作で一礼した童女から発せられる光輝は、半魔たる眼帯の乙女にはひどく眩しく感じられたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鈴久名・紡
絶対物質の鎧か……中々に厄介だな

煉獄焔戯使用
鎧に守られない部位を確実に捉えるには
距離を詰めた時が最大の好機

先の精霊戦同様に
弓矢に形を変えた禮火と葬焔で先制攻撃
先制攻撃後は刀の届く範囲まで距離を詰めつつオーラ防御を展開
禮火と葬焔を刀の形に変化させて振るう
刀には禮火の氷結系能力を利用した属性攻撃
葬焔の炎は熱はないが、試す価値はある
精霊の力を相殺出来れば僥倖

敵の攻撃は見切りと残像で回避
必要であればジャンプで軽く後退して対処

回避不能時はオーラ防御と二刀で受けて防ぎつつ
鎧砕きと部位破壊を乗せた刀で反撃
以降の攻撃には生命力吸収を乗せて対処

多少でもダメージを入れられればいい
猟兵は俺1人ではないのだから



「絶対物質の鎧か……中々に厄介だな」
 鈴久名・紡(境界・f27962)は静かに呟き――だが其れが大天使へと到る最後の障害であるというのなら打ち倒すのみ。
 まして今度の敵は、力尽くで精霊達に望まぬ隷属を強いて使い棄てた精霊使いだ。
 彼らの無念を晴らす為にもと再び『禮火』と『葬焔』がそのかたちを弓矢にと転じ……遠く視界の端にオブリビオンの敵影を捉えるや速射された【煉獄焔戯】。
 乗せた威力たるや先の戦いのそれを遥かに凌駕したが、標的となった『ユウ』はブラキオンの『鎧』に覆われた部位での防御でそれを無効化させる。

「コソコソチクチクと……もう、さっきからホントうっとうしいわね猟兵って」

 イライラと見るからに不機嫌そうにぷぅと片頬ふくらませる様はヤドリガミのグリモア猟兵が『カワイイ』と評した通り、見る者によっては愛らしいと映るのかもしれない。
 だがしかし紡にとって、自らの欲の為にあらゆる悪事を厭わないこの無邪気は邪悪の域に達した不快な存在でしか無い。
 絶対の『鎧』を楯に真正面から迫る『ユウ』に対し、弓矢を再び二振りの刀にと変化させ自らも一気に間合いを詰める紡。
(鎧に守られない部位を確実に捉えるには……)
 荒ぶる赤熱の大地の上、激突する両者。
 精霊使いというより俊敏な格闘家じみた構えから灼熱と冷気が同時に繰り出されようとした瞬間を狙い澄まし、まるで鏡合わせのように。
(――ご自慢の拳撃を打ち込んで来るこの瞬間こそが、最大の好機)
 『禮火』の刃からは冽々たるその氷結の神力が解き放たれ、本来は熱宿さぬ『葬焔』の漆黒刃もまた俄かに閻王の炎を立ち昇らせる。
 両者共に攻撃動作は一呼吸。
 交差する二対の氷炎。刹那、龍脈の鳴動すらも掻き消して戦場に轟いた爆発音と衝撃。

「なっ、そんな……!!」
「炎荒ぶるこの地で氷の精霊力に拮抗することは容易い。が――」

 精霊力が対消滅が起こる寸前のタイミングで氷炎を打ち込み威力を相殺するという紡の狙いは、半ば以上成功を収めていた。
 氷精の力は火山帯の影響により弱体化を余儀なくされており、一方、地形とは関係なく神器から氷結の術を起こす紡にはその枷が無い。
 しかし。
 炎対炎のぶつかり合いでは、地獄ならぬこの龍脈の地は、貪欲に炎の精霊力を取り込み続けた精霊使いにと味方した。
 絶対の自信をもって放とうとした必殺拳が封じられた『ユウ』の動揺は大きかった……が、ユーベルコード本来の大威力削がれてなお高火力を誇る炎拳は焔刃や闘気防御すらも寄せ付けず、青年の脇腹を強かに抉る。血の焼ける臭い。
 それでもギリギリの処で後ろへと跳び退いて躱す跳躍回避が間に合い、致命傷を免れたのはこの半竜の猟兵が備える実力あればこそだろう。
 ――そして。

「くっ……しつっこい!!!」

 その後も二刀と二拳は幾合と斬り結び続ける。
 『ユウ』の両手のひらの内、氷の精霊力を発する側だけを執拗に狙い続けた紡の斬撃は着実にダメージを重ねてゆく事となった。
 眼前の青年の粘りに辟易しつつもその刀傷を軽微と侮る少女は、いつの間にか、自らの生命力が啜られている事にもまた気づかない。

 おそらくは、今この場、彼自身の手で女精霊使いを仕留めることは叶わない。
 それでもいい。少しでも多くのダメージを与えて後続に――彼らの勝利にと繋げられればそれでよいのだ。

(猟兵は俺1人ではないのだから……)

 軋む体の痛みを闘志のみで強引に捻じ伏せて二刀を握り締めて戦うその姿に、
 ――いつしか気圧されていたのは少女の側であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

神坂・露
レーちゃん(f14377)。
見た瞬間から何となく理解できたわ。同じ精霊使いだって。
この子が精霊さんを…って考えたら身体が勝手に動いたわ。
リミッター解除の後に限界突破して全力魔法を高速で詠唱ッ!
で破魔と継続ダメージ込みの一点集中ブレス攻撃でするわ!
使うのは勿論【月狼の吐息】。
予備動作をなるべく無くして早業でしたけど効果あるかしら。

継戦能力で限界突破とかした能力を継続させながら戦うわ。
この女の子の間合いに入ったら危ない気がするから距離を取る。
回避や距離の取り直しは見切りとか野生の勘とか第六感でする。
一点集中と範囲攻撃の二つのブレスを状況で使い分けてみるわ。
押さえつける感じで使うものじゃないわ!


シビラ・レーヴェンス
露(f19223)。
普段朗らかな人物が怒ると怖いとは知識として知っていたが…。
お構いなしに周囲のことも考えず突然に全力でブレス攻撃とは。
…露でも…この子でも…怒る時があるんだな…。ふむ…。

さて。このまま見ているだけでは露の身が危険だな。
封印を解いた後にパフォーマンスと限界突破を用いて魔術行使。
全力魔法と範囲攻撃に破魔と貫通攻撃を付与した【禍の魔杖】だ。
悠長に詠唱なぞしていたらあの子が危険だから高速詠唱で行使する。

紅の剣は露と私を護り囲むように置きつつ少女へ全方位で放つ。
只の紅い剣だと思ってくれた方がいいが…流石に看破されるかな。
とりあえず腕か肩を狙おう。少女の攻撃力を削ぐ。



 討つべき猟書家の首魁、大天使ブラキエルの腹心にして猟兵の行く手を阻む敵。
 ――精霊使い『ユウ』。
 完全に傀儡と化した炎の精霊軍団との激戦を経た今、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)にとって彼女は大天使以上に倒すべき……憎むべき敵となっていた。

(ひとめ見た瞬間から何となく理解できる。あたしと同じ、精霊使いだって。
 ――この子が精霊さんを……っ!)

 胸の奥底で煮え滾り、遂には噴き上がるこの熱は自らの怒りか、
 それとも、虐げられた精霊達が発した嘆きなのか。
 考えるよりも先、突き動かされるようにして――ヤドリガミの精霊使いは、ふだんからずっと無意識の内に架していた自らのリミッターを、露は解き放つ。
 突進を続ける幼き猟兵の気迫はただ闇雲に距離を詰めようとしているのだろう。
 と、油断させ切ったその瞬間。

 ――……LLuaaaaaAa!!!!

 予備動作も詠唱句も排し、露の喉奥から鳴り響いたのは獣じみた一吼え。そして。
 ユーベルコードの長距離砲であった。
 最大出力の光線ブレス、【月狼の吐息(ハティ・ウォークス)】の光条が大地を直線状に薙ぎ払う。

「ステキ! なんて濃密な精霊力の塊!」

 そう眼を輝かせた『ユウ』の体は、再び龍脈火山帯の空高くを飛翔していた。
 早撃ちでの奇襲からは超音速をもってしても完全には回避し切れなかったのだが、命中部位はブラキオンの『鎧』に覆われた片脚だったためにノーダメージ。敵たる少女からはまだ余裕の笑みが零れる。

(またまた何となくだけど、この女の子の間合いに入ったら危ない気がする)

 露は最初からそんな野性の直感に基づいて充分に距離を置こうと考えて仕掛けていた。
 やや想定外だったのは【月狼の吐息】の長射程ほどでは無いにせよ暗黒拡散波動もまた広域をカバーできる敵唯一の遠距離攻撃手段であったこと。
 互いにスナイプ能力や追尾性能を備えない撃ち合いならば、大天使に守られ制空権まで握った自身の方が圧倒的に有利と考えた『ユウ』にとってもそれは望む所であったのだ。

「周囲お構いなしで突然に全力のブレス攻撃か――『普段朗らかな人物が怒ると怖い』、
 知識としてそれは知っていたのだが……」
 悲しみを怒りに変えてという表現もまた漠然とした比喩の話ではなく、このようなものを指すのであろうかと。
 初めての現象を目の当たりにしたシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は思わず、ふむと、深く思索に耽ってしまいそうになってしまう。

(……露でも……この子でも……怒る時があるんだな……)

 あるいは。
 おっとりのんびりがすっかりと影を潜め、狂戦士の如くに荒ぶる友の姿にシビラもまた普段のペースを崩しつつあったのかもしれない。
 いつもみたいにを『えへへv』と笑いかけてくる事もなくこちらを振り返りもせず……そのくせ弾むような足取りでまっしぐらに駆け出すさまだけはいつも通りのその背中。
(いや――それよりも。このまま見守るだけでは露の身が危険だな)
 さて、と、気を取り直した不老のダンピールもまたヤドリガミの全力に呼応すべく己が九鍵の封を解く。
 赤く荒涼たる火山地帯の只中にあってなお何処までも白銀はその禍を深めてゆく。

 鬩ぎあう夜光と夜闇の攻防はなおも続く。
 ととん、青白き光彩撒き散らしながら。跳ねる。躱して。また駆ける。
 借り物の『鎧』など無くたって露にはこれまでの長きに培った技と経験がある。
 そしてなによりも……【禍の魔杖(レーヴァティン)】を行使するシビラからの援護に守られているのだから。

「何の変哲もない只の紅い剣だ……とは流石に思ってはくれないか」
「ウソつき! それ、ぜったいにヤバいヤツじゃないっ!?」

 精緻な幾何学模様の軌跡を描いて飛来する赤き切っ先が『ユウ』の肩口や腕先めがけて息も吐かせぬ波状攻撃を繰り返す。
 千の剣となって降り注ぐシビラのユーベルコードの苛烈さに曝された敵精霊使いは、絶対物質に守られてなお多くの警戒リソースを回避に割かざるを得ない。
 加えて、直線と面攻撃とを変幻自在に織り交ぜた露のブレス攻撃までもが息ぴったりに襲いかかるのだから。
 ジリジリと追い詰められてゆく焦燥感に『ユウ』は意を決し、ここまでの比ではない規模の精霊力を両掌に集めて大剣の形にと凝縮させる。
 己に対してのこの銀髪の幼女猟兵コンビの闘争心の強さは、精霊使いの怒りこそが起点だと踏んだ彼女はまずその心を削ごうとしたのである。
 だが、今まで以上に隷属精霊を苛むその術はかえって露の怒りを煽るばかり。

「精霊使いにとって精霊さんは大切なおともだちよ。
 あなたみたいに押さえつける感じで使うものじゃないわ!」

 戦闘本能に直接攻撃を加えられてなお膨れあがるばかりの思いの丈と、
 限界振り切って久しい筈の状態から振り絞られたブレスは極限にまで圧縮され……。
 桁外れのスケールで照射されたレーザーカッターを思わせる閃光が、遂に、至近から『鎧』の隙間を灼き貫いたのである。

「精神のみを傷つける非物理剣――つまりガードの足しにも為らない『盗品』を握って、剣の間合いにまで踏み込んだ君の失策だ」
「っ!! うるさいうるさいっ!
 精霊の力もブラキエル様の鎧ももうぜんぶあたしのものなんだから……っ!!」
 赤剣と同時、
 追い撃たれた冷徹なシビラの指摘もまた手負いの獣となった少女にとって手痛い一撃。

 敢然と挑み、後にと繋げ、粘り強く重ねられて来た猟兵達の奮闘は今確実に大天使の腹心を追い詰めつつある。
 ――戦いの天秤は、既に大きく傾いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クーナ・セラフィン
精霊の次は精霊使いか。
何とも不似合いな恰好をしてるけれど頑丈なのはよくわかる。
…どんな堅牢な城にも弱点はあるよね。

引き続き溶岩地帯をどぼんしないよう駆けつつ、いい感じに間に飛び込める幅の地形を探し間に飛び込む。
唯一の弱点を狙うには向こうの攻撃の瞬間を狙うのが一番。
こっそりオーラと突撃槍に破魔の力を付与して備えておく。
攻撃する方向を絞らせつつ攻撃してきた瞬間にカウンターでUC起動、連続ジャンプで一気に切り込んで掌に突撃槍の一撃を突きこもう。
拡散波動は槍の穂先で散らしオーラで防いでダメージ抑え込む。
攻撃に転じる時こそ最大の隙、借り物じゃあまだ学ぶ前だったのかもしれないけどね。

※アドリブ絡み等お任せ



「精霊の次は精霊使いか」
 ふと、故郷の精霊術士達と精霊使いを名乗る黒尻尾の少女とを思い比べ……。
 心などまったく無視し通わせ合わずとも魔術としてあらゆる精霊を行使し得た『ユウ』の才ははたして幸運といえるのか。あるいは不幸だったのでは無いか。
 そんな由無し事を――ふわり、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は脳裡に泳がせて。
「そして今度は天使からの贈り物。ブラキエルもまったく罪なことをしたものさ」

 先の戦いでは氷の迷路で戦う幸運に預かれたが現在の彼女は単騎駆け。
 騎士猫は、狩場探しにと勤しむ。
 ふわふわの毛並みに降りかかる熱灰をはらりと優雅な手つきで払いのけ、羽帽子のつばを揺らし、軽やかな踵でひょいと溶岩地帯を避けて。
 ――ひっそりとその爪を研ぎ澄ませながら。

「何とも不似合いで不恰好。
 頑丈なことだけはよくわかる……けどどんな堅牢な城にも弱点はあるよね」
「ふふん、負け惜しみ?」

 遭遇した『ユウ』は飛翔状態にあった。
 まだまだ強がってはいるが、彼女がここまでに負ったダメージは決して浅くない事などとっくに看破済み。
 先駆けて行った仲間達が各々この絶対防御の穴を突き得てきた、何よりの証拠だ。

「さあ闇よ、蹂躙なさい!」

 クーナの頭上、すっかりとその視界を暗黒に染めながら。
 少女の両掌から射ち放たれた漆黒の波は急速な勢いで拡がり、憎き猟兵にと迫る。
 迎え撃つケットシーが押し立てたのは、
 灼赤に咲くしろがねのヴァン・フルールの穂先。
 闇それ自体は決して邪悪なものではないだろうが……銀槍と纏うオーラそれぞれに付与された破魔の力は、漆黒の圧に触れた瞬間に消し飛びながらもクーナ本体へのダメージを僅かに軽減してくれた。
 斬撃に等しい激痛がクーナの全身に走り、しかし、湛えた微笑は決して崩さぬままに。
 果敢にも、闇の暗がりそのものへと我が身を溶け込ませる。
 重力の存在などすっかり忘れたかのような自由自在、空の踊り手(スカイステッパー)そのものと化した騎士猫はあっという間に『ユウ』の高みにまで達して肉薄し、そして。

「きゃああああああっ!!!!!」
「せっかくの『鎧』をまるで使いこなせていない。借り物じゃあまだ学ぶ前だったのかもしれないけどね」

 攻撃に転じる時こそ最大の隙……それは兵法の基礎も基礎だが、生来から魔力に優れたこの少女はその点でまるっきり素人同然であった。

 闇を切り裂いて奔った白百合の一撃は、
 易々と『鎧』の隙間を串刺しそのまま錐もみ状態で捕えた獲物を大地に叩きつける。
 戦場にと舞い散る鮮血は、薔薇の花弁にも似て……。

成功 🔵​🔵​🔴​

忠海・雷火
人格変更継続

先ずは様子見。UC以外を含む攻撃時の予備動作や癖を観察、その間は武器で受け流し、見切り回避で凌ぐ
ある程度把握した後、UC以外の攻撃で掌を此方に向けた瞬間に距離を詰め、刀で刺突する

というのは半分フリ
敵もその瞬間を狙われる想定はしている筈で、恐らくそこから拳を握り込みUC使用に持ち込んでくると予想
その動作予兆を見ると同時に後方へ跳びつつ、左手で短刀を投擲。目標は敵の目、鎧に弾かれるとしても、余程の胆力が無ければ僅かなりとも怯んで拳の突き出しが遅れるだろう
その隙と取った距離で威力の軽減を図りつつ、受けた分の痛みは激痛耐性で抑え行動
攻撃直後の隙、突き出された拳から覗く掌を狙いUCの針を投擲



 大天使の腹心となった少女と猟兵達の激突はここまで幾多と続き、そして――。

「ずうっっとノゾいてたよね、あなた」
「様子見という奴だ」
 忠海・雷火(襲の氷炎・f03441)の肉体を駆使して闘うのは先の戦いから引き続いて別人格の『カイラ』である。
 遠隔から浴びせた呪詛攻撃すらもブラキオンの守りはあっさりと撥ね退けた。
 すっかりと守備や回避に徹して消極的な『カイラ』に対し『ユウ』の魔法攻撃はずっと正拳突きの構えから繰り出されている。
 多くの猟兵に『鎧』の隙間を狙われ続けられた事で、流石に懲りたのだろう。

(……予想とは異なるが、修正は充分に可能。問題は無い)

 本来の『カイラ』の狙いは、近接から捨て身の一刀を浴びせた瞬間にそれを見越した『ユウ』は掌を庇いつつユーベルコードのカウンターを繰り出すだろう――ならばそこへ……と、いった流れのものであった。
 交戦状態に入った後しばらく、彼女が『ユウ』の予備動作や癖等のデータ集めに徹していたのもまたその為である。
 ……そのどれもが探る苦労は大して無くひどく分かり易かったが。

 龍脈が通るとはいえどここは灼熱の火山帯。
 他の隷属精霊に比べて氷の精霊だけは使い潰した分をすぐさま充填する事、『ユウ』の魔力もってしても難しいらしく……。
 その証拠に精霊使い『ユウ』にとって最大の必殺技ともいえるユーベルコード、対消滅拳は『カイラ』に向けてまだ1発も打たれてはいない。
 『死後』概念と直結して世界そのものを極寒や灼熱に塗り変える雷火&カイラのようにはいかないのだから。

 迸る炎の精霊力と、時間を掛けてようやくそれと釣り合うほど溜められた氷の精霊力。
 俄かに立ち昇ったそれらの気配に、骸刀を抜き放った『カイラ』は無謀な突撃を装って斬りかかり敵ユーベルコードのタイミングを誘導する。
 くらえと叫んだ少女の両拳が対消滅爆発を引き起こしたのと、ゆらり、大跳躍に紫黒の髪を揺らした『カイラ』が逃れ得たのがほぼ同時。
 跳び退き際、掌の隙間ばかりを気にしてまるで無防備な『ユウ』の眼球めがけて小さな短刀が投擲される。
 そんなものが『鎧』の防御を貫けるはずが無い――と頭では分かっていても。
 別の猟兵が先に試みた目潰しの光と同様、精霊使いの少女の瞼は咄嗟に閉じてしまうし、それが空振り直後であれば掲げた片腕で思わず庇おうとしてしまっても致し方ない。
 それは、ごくごく僅かな硬直時間。
 とはいえ最初から一瞬だと予測が出来ているのであれば、針一本ぐらいチクリと隙間へ通す程度は充分に可能なのであった。

「我が身に宿る餓犬よ。血道を辿り、内より喰い散らせ」
「――痛っ……な、なんなのぉ、コレッッッ!?」

 非正規『刻印』から射出されたその血針こそが径。
 ゾゾリ、ズズ……天高くにと浮かぶこの現世へと這い出た痩犬は少女の体内をしたたか貪欲に喰い、破り、荒らしてゆく――。

成功 🔵​🔵​🔴​

コノハ・ライゼ
あらぁ、可愛い顔して勿体ナイ
勘違いでふんぞり返ってるのって最高にみっともなくてよ?

煽ってペース乱し冷静さを失わせましょ
動き見切りながら、纏ったオーラ防御で致命傷は避け【翔影】
喚んだくーちゃん達をこれ以上なく鬱陶しく縦横無尽に駆けまわらせるねぇ
くーちゃん達が敵にダメージを与えられなくてもイイわ
だって注意力が落ちれば弱点のコトも忘れやすくなるし
目障りなモノはつい手で払ってしまうでしょう?

翻弄し弱点がみえたら、エスコートでもするように右手を差し出し掌に重ね
細い針と成した「Cerulean」で刺し生命を頂戴するわ
ようこそ我が皿の上へ、なんてネ
そのまましっかり握って傷口を抉る2回攻撃
遠慮はしないわよ



 この龍脈火山帯の地でここまで繰り返されてきた猟兵達による波状攻撃の前に、
 絶対の防御に守られていた筈の精霊使いの少女も今や満身創痍で限界寸前。
 オウガ・フォーミュラの腹心は天仰ぎ、
 高き岩山の麓ですっかりと泣き喚いて懇願を繰り返す。
 もっともっと強くてたくさんの精霊を召喚してくれと。
 鎧だけではなく岩腕も与えてくれれば弱点は完全になくなるのだと。
 ――助けて、と。
 しかしそんな少女に添うて応えた声は大天使のものではなかった。

「あらぁ、可愛い顔して勿体ナイ」
「――――猟兵……!」

 ころころと、華やぎ軽やかなのに何処か芯の底から冷えてしまうような笑み。
 精霊使い『ユウ』の前に姿を現したコノハ・ライゼ(空々・f03130)は出会い頭から言の刃で抉りつけてゆく。
「勘違いでふんぞり返ってるのって最高にみっともなくてよ?」
「う、うるさいっ!」
 隷属下に在るありったけの精霊力を己の身の丈ほどの大剣にまで凝縮させた『ユウ』は大上段から振り下ろす。
 恐るべき魔力で切れ味増した一閃は、しかし、千々に乱れた感情まかせ。
 その切っ先を見切るも舌先三寸更に煽ってみせるもこの妖狐ならば実に容易い。
「それとも……あぁもうすっかりと現実を理解らせられちゃったアトなのカシラ?」
 重量をともなわない精霊剣はどうにか猟兵の心を抉り返してやろうとばかり激しく振り回されたが、するりふわり、薄紗の如く纏われたオーラ防御にその畢くを絡め取られ悪戯に踊る紫染の髪一筋たりと触れること能わず。
 とはいえ、『ユウ』の強大な魔力備わた刃は、たとえマグレ当たり1発掠めただけでも危険だと警戒するコノハの内心は、艶やかに嘲笑咲かせる彼の佇まい程には余裕が有った訳では無いのだが――まあそれも戦いの機微(ハッタリ)というヤツである。
「猟兵だって次から次にうじゃうじゃ湧いてみっとなくても卑怯じゃないっ!?」
 そもそも無差別大量虐殺の大軍を持ち出したのはそちらが先――なんて反論正論の類をコノハはいっさい口にはしなかった。
 いかにも満足げな微笑浮かべて少女の恨み言に耳を傾けて。
 そして。
「ふふ、たったあれっぽっちでうじゃうじゃは大袈裟よぉ?
 せめてコレっくらいじゃナイと――さ。遊んであげなさいな、くーちゃん『たち』」

 足許にと落ちる影から、じわり、滲みだした黒管狐。
 ゴキゲンそうに喉を鳴らした一匹の影の獣は瞬く間にその数を百にと分かち羽を纏わせたのち、それぞれが、まるでじゃれつくように『ユウ』に向かって一斉に飛び掛かったのである。
 むろん絶対防御に守られた敵をこれだけで仕留められるとは考えていない。
 この【翔影】はあくまで行動封じの撹乱だ。
 『ユウ』はすでに自らが扱える限りの全精霊力を一振りの非物理剣に変換し終えた直後である。
 つまり、百何匹かのくーちゃんたちによるもふもふ責めに放り込まれたこの獣っ娘は、精霊力が回復するまでしばし、自慢の火力で吹き飛ばす事も逃げ切る事も出来ないままにただ藻掻いているぐらいしか術が残されていないのである。

「そんな攻撃はムダ――って、ちょ、尻尾やめて! ……ああああ、もうっっ!」

 説明だけだと逆にちょっとだけ楽しそうにも思えてくるが――猟兵という天敵の目前でそれらを堪能できる胆力をこの少女が持つはずも無く。
 焦り混乱するばかりのその腕の片方はいつしか剣からも離され、大きく払いのける動作ばかりに気を取られる事となった。
 大天使が彼女に与えた『鎧』があらゆる攻撃を通さない絶対物質であろうとも、『鎧』を纏う者の体に染み付いた感覚や反射までもが即座に馴染むとは限らない。
 ここまで幾人かの猟兵がそうしたように。
 コノハもまた、『鎧』の隙間暴く為にまず絶対とはなりきれなかった少女自身の間隙を突いてみせたである。

 つい、と、差し伸べられたコノハの手はまるで王子様からのエスコート。
 デタラメに振り回されるばかり行き場の無い少女の手を柔らかに受け止め、掌かさね、
 ――蠱惑さえ滲ませた薄氷の眼差しに少女の眼は、刹那、完全に奪われて。

「ようこそ我が皿の上へ、なんてネ」

 チクンと1回、最初の味見は浅く。すぐさま抉るように強く深々と啜られて。
 少女の手を貫いた衝撃は、青年の指先を飾っていたはずの指輪と同じ色した燻銀の針。
 それはまるでおとぎ話の呪いのはじまりのような、戦いの幕切れ。

 そして、少女の傲慢な生のおしまいひとつを引き金に。
 精髄産む高き山の頂きに顕れ出づるは……一柱の光輝。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『大天使ブラキエル』

POW   :    岩腕
単純で重い【岩石でできた巨大な腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    絶対物質ブラキオン
【「絶対物質ブラキオン」の鎧】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、「絶対物質ブラキオン」の鎧から何度でも発動できる。
WIZ   :    大天使の光輪
自身が装備する【大天使の光輪】から【破壊の光】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【徐々に石化】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鈴久名・紡
その目論見を見逃すつもりも赦すつもりもない
完全に骸の海へと還るまで何度でも阻止する
それだけだから

先制対応
見切りと残像で回避
回避が間に合わない場合は後方へジャンプして距離を取る
後方への回避も間に合わない場合はオーラ防御で防いで凌ぐ
負傷は激痛耐性で対処し
以降の攻撃には生命力吸収を乗せていく

先制攻撃回避後、竜神としての真の姿を開放

煉獄焔戯使用
禮火と葬焔は盾上に変化させて敵の攻撃を受ける際に使う
俺自身は氷結系の属性攻撃を乗せた神力で攻撃
竜形態なのも利用して空中機動を活用し
足場の不利を可能な限り解消

重ねた攻撃で負傷している箇所があるようなら
そこを部位破壊狙いで重点的に攻撃

次に対峙する者の助けになればいい



 顕れ出づるは一柱の光輝。
 見えざる力場が……龍脈の地を取り巻いていた結界が今ここに失われてゆく。
 それは核となっていた精霊使いの少女の命が喪われ、彼女一人に隷属を強いられていた全精霊が解放されたという証に他ならない。

 ――……あるいはそも元素の配合体たる生命は、何処までいこうと、単一集積体へ真に適合することなど無いのかもしれぬ。

 むろん大天使が纏う光輪をもってすれば再び繋ぎ止めることなど造作も無いのだろう。
 が、彼は決してそうしようとはせず。
 精髄産む高き山の頂きに佇み……さやかにただ、それらすべてが骸の海へと還るさまを見届けるだけであった。

 ――救い求める声に耳を塞いで顧みることも無く、只、高みより理のみを執行する。
 ――轍とは軛。再び天へ到らんとする我もまた理からは逃れられぬか。

 そして、天つ其の翼がいっせいに一打ちされればたちまちに。
 真白き大天使の体は、たかくたかく、焦天へと翔け上がる。
 天上への扉をこじ開けたい一心の彼が執り行おうとしているのは、地上での虐殺。

「その目論見を見逃すつもりも赦すつもりもない」

 鏖殺の道敷かんとする羽搏きの行く先へと、真っ先に立ち塞がったその猟兵は鈴久名・紡(境界・f27962)であった。
 赤き灼獄の地を駆ける青年の姿を認めるや――ブラキエルの指先が宙を一撫でする。
『果敢たる勇者よ、その死をもって愚かなる神々すらも刮目させてみよ』
「くだらない……」
 先制のユーベルコードの起こりとほぼ同時、紡の身体が残像だけを残して急加速。
 地を離れ空を舞い――されど襲い掛かった『岩腕』轟閃の破壊力たるや炎獣達とは比にならぬ、まさに天からの鉄槌。裂けた大地はその奈落からマグマの炎を噴き出す。
 紙一重で直撃を避け得たはずの紡も無傷では無かった。
 咄嗟の障壁すらも掠っただけで砕け散り……自身にと達した重圧は、全身の骨という骨を圧し潰さんほどの威力で紡を赤熱する大地へと叩きつけていた。
 たった一撃が猟兵の青年に刻みつけた深手は臓腑にまで達した筈で……。

「阻止してみせる」
『……龍脈を、御するか』

 だが、突如。
 火山帯において決して有り得ぬ程に清冽な水気が立ち昇り……膨れ上がった神気と共に一柱の蒼き竜神がこの決戦の場へと降臨を果たす。
「――始まりの一角であるあんたを」
 赤き荒涼たる大地は、もうすでに遥か眼下に。
 巨竜へと其の身を変化させ空高くにまで泳がせ、大天使と対峙する紡。
 全身を奔った痛みが、それを凌駕せんと燃やされた不屈たる闘志が、
 彼の魂を強く揺さぶり内なる血を呼び覚ましたのだ。
 溢れる神気にただ触れるのみでその形状を堅き盾と成した『禮火』と『葬焔』を従え、竜神から反撃に放たれた『鉄槌』は氷結の神威をのせた【煉獄焔戯】。
『これが埒外たる者達の武か』
 白皙たる大天使を包む天つ翼が、その凍気と衝撃とに曝されて、震える。
 絶対物質ブラキオンの護りの前には無力と識っていながらなおも禁じ得ぬは戦慄。

「完全に骸の海へと還るまで、何度でも。俺が今為すべきはそれだけだから……」
『ならば、我が武はそれすらも越えて進まねばならぬ』

 吹き荒れる蒼き絶対零度の到来。
 感嘆に微量の感慨籠もる呟きとともに大天使は僅かに目を細め、嘆息を漏らす。
 眼前の若き竜神の狙いは元より此れであったのかと。
 ――大天使の右の片眼には、
 万年氷にも似た痛苦と灰蒼のマーキングがいつしか施されていたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

コノハ・ライゼ
ふん、メインディッシュのお出ましネ

先制が光で攻撃とかホント殺意溢れててヤになっちゃう
けどわざわざくらってアゲル義理もねぇのヨ

オーラ防御に闇の呪詛纏わせ範囲攻撃で広く展開
少しでも光を遮りダメージを減らすわ
石化は呪詛耐性で凌げればイイけど、頭が無事で多少不自由する位なら放置ネ

カウンターの勢いで石化がまわりきる前に【月焔】生み、焔へマヒと毒の属性付与するわ
敵の周囲へと渦巻かせ動き封じるよう熱なき焔で燃やしたなら
すぐさま2回攻撃で生み出すすべての焔をひとつに集約
敵へと叩きつけ飲み込み、傷口を抉るよう焼きましょうか
モチロンそこから生命力も頂くわネ

奪い、喰らい続けるわ
そうすりゃオレの勝ち、デショ



 まるでそれは幻月環。
 熱帯びる風の中、天仰ぎ……、
 コノハ・ライゼ(空々・f03130)は不敵に口の端を上げる。

「ふん、メインディッシュのお出ましネ」

 大天使の輪に輝きが迸り、清浄なるが故に慈悲など知らぬ天の裁きが降りしきる。
 閃光と衝撃が、大天使の身に纏われた枯れずの花々を色鮮やかに揺らし……。
 押し寄せる至聖の眩光に対して一歩も退かず、コノハは呪詛を練りあげ自らが立つ大地を漆黒の帳で覆い包んだ。

「ホント殺意溢れててヤになっちゃう――けどわざわざくらってアゲル義理もねぇのヨ」

 大天使から迸った破壊の光をコノハから世界へ侵蝕した闇が押し止めたがそれは一瞬。
 黒の領域はみるみると撓んで爆ぜて……肌を灼いた激痛はしかし直ぐに散じる。
 痛覚失う石化がじわりと進行しつつある所為だろうが、そもそもコノハは痛みや異状化に対する耐性自体が高い。

(ヒジから先は……もうすっかりタダのお荷物ねぇ。ま、アタマさえ無事なら問題はナシってコトで)

 自身の肉体に対しての見立てにも、何処か他人事の感が漂う。
 この青年は先の科白とは裏腹、完全に先手を打って放たれる光の攻撃を回避しようなどという腹積もりはハナっから捨てていた。
 より正確を期すのであれば避け得ぬダメージをマトモにはくらわぬようにとの軽減のみに対・先制攻撃行動を絞ったのである。
 その豪胆の甲斐あってコノハは己の想定よりも小さな損害で大天使の初撃を凌ぎ切り、のみならず反撃のカウンターを繰り出そうとしている。

『――なるほど。猟兵は理すらも喰らうか』
「とりあえずお出しされた料理を残さずちゃーんといただくのはテーブルマナーよネェ」

 つい先程闘った『オードブル』達が遺した精霊力はいまだコノハの胎に蟠り、闇の呪詛を強化する一助を担った。おそらくブラキエルはそれを感じ取ったのだろう。
 自由の利かぬ片腕をだらりと垂らしてなお臆する気配を決して見せない青年は、
 冴え冴えと揺らめく火群を生み出しうねり打たせてゆく。
 爛れよ枯れよ、囚われよ――不可視の『毒』含ませながら逆巻き、月面より降り立った大天使さえ呑まんと吹き荒れる其の嵐の名は【月焔(ツキホムラ)】。
 白亜の如き肌を飾った花々からは俄かに極彩色が奪われ、儚く散華する。
 熱無き焔の奔流は、しかし、大天使が鎧う絶対物質の前に頑として阻まれたまま。
 だが。
 しなやかにして獰猛な獣が浮かべた、一笑。

「……ふふ。その傷、暖めてあげようか」
『――――!』

 渦巻く【月焔】は吹き返しの第二波と共に集約を開始する。
 更なる暴風と化して向かう先は、かすかに眇められたブラキエルの右の眼である。
 氷結系を得手とする猟兵によって打ち込まれたのであろう徴を、敏きコノハが見逃す筈もないのだ。
 凍りついたまま伏せられたその睫毛は防御の隙の存在を何よりも声高に物語ってくれている。
 こうして極上のメインディッシュも、もうコノハの舌の上。
 冷たき天火よ――奪い、喰らい続けるがいい。赴くままに、飽くなきままに。

「そうすりゃオレの勝ち、デショ」
『……その通りだ、猟兵。
 総てを奪い尽くし得た者だけが、最後には、己が望みを果たしているのだろう』

 牙剥く氷泪の眼差しが天を仰いだ、その先で、白々と天焦がす幻月。
 真白き天使は、凍氷に鎖されたままに燻ぶり出した右瞳へ『剣』なき徒手をゆっくりと重ねるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)。
…天上で何をするのか聞いてみたい気もするが…。
この場では難しいだろうな。そういう余裕もないだろう。

さて。神の眷属に通用するか不明だが【禍の魔杖】を扱う。
封印を解き身体のパフォーマンスを上げ準備を整える。
そして限界突破後に全力魔法を籠め高速詠唱で行使。
紅の剣に範囲攻撃と貫通攻撃に鎧防御無視を付与する。

紅の剣で岩腕に構わずにブラキエル本人を狙う。
例の『鎧』の対策はスナイプ技能で隙間を狙ってみよう。
早業と念動力を駆使し露のフォローをしつつ攻めてみる。
単調な動きにならぬようフェイントを加えてみようと思う。
光輪の波動は極力見切り第六感と野生の勘で回避してみる。


神坂・露
レーちゃん(f14377)。
あなたね。猫の精霊使いに間違った使役の仕方教えたの!
あたしの身体のリミッター解除をしてから限界突破するわ。
で。破魔と受領攻撃を加えた全力魔法と多重詠唱で準備OKよ。
上げた威力は継戦能力で維持しながらブラキエルと戦うわね。

って~い♪…って【赦光『赫月』】を放つわー。
ブラキエルの先制攻撃を『赫月』の斬撃波で打消せるかしら…。
もし打消せなくても軌道を少しでも曲げられたらいいのだけれど。
それからそれから斬撃波に継続ダメージも加えておくわね。
掠り傷でも幾つもあれば後からじわじわ~って聞いてくるかもだし♪
攻撃は見切りとか野生の勘とかで避けるように頑張ってみるわ!



 大地は鳴動し絶えず灼熱を吐き続けているというのに。
 気流すら従えて翔ける翼の羽搏きだけはひどく鮮明で。

「――大天使……ブラキエル」

 猟書家たちの首魁にして岩腕の王。
 ようやく辿り着いた……などといった感慨の類とはやや縁薄いシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)の唇が平坦にその名を紡ぐ。

「あなたね。猫の精霊使いに間違った使役の仕方教えたの!」

 神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は依然として怒りに燃えている。
 しかしその怒り方は先のような完全に我を失って、というものでは無くなっている点に同行のシビラは内心で安堵を覚えていた。
 実の所、精霊使い『ユウ』はブラキエルに出逢う以前からああであったし、更に言えばオブリビオンとなる生前の死因がそもそも精霊魔法の悪用を重ねてとうとう当時の冒険者達の討伐対象となったというもので。
 ブラキエルが彼女を歪めたのではなく、歪み切った果てにブラキエルの下へと行き着いただけなのである。
 つまりは特に語って聞かせる必要ナシとしてケモ耳話に移ったグリモア猟兵の説明不足が引き起こした誤解なのだが……大天使は露の言葉へ否定も言い訳も返さず沈黙のまま。
 敵であれ味方であれ、天に到る轍の前に転がる石礫一つ一つを彼は一顧だにしない。
 気を留めるものがあるとすれば……。

『我が友、書架の王よ――君が求め続けた答の為に』
 阻むすべてあまねくに破壊をと、
 歌うように。
 大天使が纏う光輪から放たれた輝きが戦場を染め上げる。
 あまりにも疾くそして遍く広く全方位に降り注いだそのユーベルコードの暴威。
 見切れど逸らせど、そも躱し逃れるべき安全地帯は数キロ単位の先だと両者の勘が警鐘かき鳴らす。それでも――ふたりでならば。

「――っ……って~い♪」
 いつもの明るさ取り戻した露の一声がまずは反撃の楔となった。
 ダメージさえ継戦可能ギリギリにまで抑えられれば恐れるべきは何も無い。
 稀なる霊石のヤドリガミである露にとって石化などなんてコトは無い……とまではいかないせよ、既に自ら限界の先へと足を踏み入れた今の露であれば石化速度の鈍化程度の抵抗は充分に可能である。
「Dezlănțuiți cu nouă taste!!」
 シビラもまた躊躇なく封印解除しての全魔力の解放を果たす。
 赤き死の大地にあってなお、あかくあかく、
 いくつもの紅剣(レーヴァティン)の光が星のごとく戦場にと灯る。
 その切っ先の一つを、顔色ひとつ変えぬまま自らの石化部位に突き立てた彼女は強引に無効化を果たした後。
 絶対物質の鎧の隙間だけを狙い定める思念を乗せて、
 ユーベルコードは無数の斬音を奏で始める。

 ――オウガ・フォーミュラである己が地上でなさんとしている非道を咎め、否定し、
 無辜の命を守る為に戦い挑む。
 大天使が其のようで在れと神々に望んだ全てを、今、猟兵らが為そうとしている。

『なるほど、『識』求めるべきはやはり――』
「天上とやらに辿り着いて、何を為すつもりだ?」
 帝竜ヴァルギリオスに封じられし知られざる大陸『天上界』。
 今この戦闘下では難しいと解っていながらも、疼く知的好奇心からシビラは問わずにはいられなかった。
『……まずは神々を……天の牢獄にしがみつく愚か者共を、余さず誅する』
 大天使自身の口から思いがけず得られた返答は、
 だがシビラの興味をそれ以上引くものではなかった。
「なんだ、皆殺しをする為に皆殺しに励むのか。不毛極まりないな」
「そんなことのためにお月さまを食べようとしたの!?
 しかも精霊さん達にまで悪いことさせて……」
 先の精霊使い戦とは逆に、今度は露が援護にと回る形となり。
 切れ味はそのままに圧力増すばかりの『赫月』の炎波は、直線的であるが故に回避それ自体は容易い。
 だが、そちらに注意を割かれれば今度は複雑精緻な包囲攻撃を繰り返すシビラの紅剣のいずれかを右眼に被弾したちまち壊死の術式を注ぎ込まれてしまうのだ。
 信じ合い、補い合い続ける銀髪の少女達ふたりの紅の二重奏は大天使にすら傷負わせ、消耗を重ねてゆく。

 そして――高みにと在り続けた真白き光輝は遂に耐え切れず。
 ガクリと急激にその高度を落としてゆく。
 噴煙に霞む宙空へ。
 我知らず、自らが手放した『剣』求めるかのようにその右腕を泳がせながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

忠海・雷火
天上界に興味がないと言えば嘘になるが、生きている命の方が大事
故に、道は閉ざされたままで良い

破壊の光。遮蔽に使える地形があれば利用するが、近くにあるだろうか
無い、或いは間に合わなさそうなら死霊を可能な範囲で喚び出し盾にする&オーラ防御
被弾直前に足元の岩や溶岩を斬り上げ僅かでも遮蔽を作りつつ、片腕で頭部周りを庇いながら身を丸めて光に晒される面積を極力減らす
これでどの程度軽減出来るか判らないが、相当のダメージ量を覚悟し、気合いと激痛耐性で戦闘不能だけは避ける

何とか凌いだ直後にUC発動。石化が進む前に一気に距離を詰める
仮に反撃があっても吸収し己の生命力に回せる。残る片腕で只管に刃を振るい、敵を喰らおう


阿紫花・スミコ(サポート)
アルダワ魔法学園の生徒。暗い過去を持ちつつも性格は明るい。自信家で挑発的な一面がある。力があれば何をしてもいいというようなダークセイバーの領主達を心底嫌っている。機械系に強く様々な世界の機械知識を広く持ち自作ガジェットの研究・開発を行っている。

からくり人形「ダグザ」:巨大な棍棒で敵を粉砕する。
精霊銃「アヴェンジングフレイム」:黄金に輝くリボルバー。弾丸には炎が宿る。
ワイヤーギア:射出したワイヤーを引っかけ、巻き取りと、蒸気噴出で推進力を得る。

「力があれば何をしてもいいって思ってるんだろう?…お前が奪われる立場でも同じことが言えるかな!」

(エロやグロに巻き込まれなければどんな展開でも大丈夫です)



 墜ちたと思われた大天使はその翼を大きく翻し、依然、その耀きは天に保たれる。
 一度は追い落とされたブラキエルがその態勢を立て直すまでのそれらはごく僅かな時間の出来事で――しかし戦場となったこの地に慣れた者ならばそれは隙と呼ぶに充分。

「天上界に興味がないと言えば嘘になるが……」

 そう、ひとりごちながら。
 忠海・雷火(襲の氷炎・f03441)は火山の裾野を駆け出し、岩場へと飛び込む。
 それは破壊の光から少しでも我が身を守る為の抵抗なのだろう。
 ほどなく高みより眩き白光が放たれると同時、
 カイラの片手が渾身の力で帝竜喰いの刃を足元へと突き立てるや、俄かに大地の脈動が高鳴り、裂け目からは多量の溶岩が超高熱と共に噴き上がる。
 耐痛に耐炎を重ねた上で作り出された『盾』が天上からの光を大きく遮る。
 加えて。
 頭部さえ――詠唱の発声と脳さえ無事であればそれでよいと考えたカイラは空いたもう片腕すら盾の厚みとして捧げていた。
 灼きつける激痛は、皮肉にも、石化の始まりと共に徐々に和らいでゆく。

『な、 ――防御にすらも、捨て身とは……』
 完全に虚を突かれた形となったブラキエルに脇目も振らず。
 重石の如きこわばりは既に彼女の肺腑付近にまで達しようとしていたが、構わず。
 絞り出された詠唱の声はよどみ無い。

「――狂える力、沸き立つ混沌よ。我が身が浴びる意志の主こそ汝の贄、汝の渇きを刹那彩る響音なり」

 灼熱に煮え滾る土砂降りの中、
 カイラを取り巻く気は荒ぶる禍々しきものへと一変し……。
 彼女の体内深くを侵し冷たき岩石にと変える破魔の力そのものを呼び水に、刻印伝い、【制約召喚・狂沌之齧】は大いなる力をカイラへと齎した。
 常は気怠げなその紅瞳はとある一点……これまでに幾人もの猟兵らが『戦果』を印した大天使の右瞳だけを捉えて揺るがない。

 そしてこれより先、彼女はただ意志の勝負にと委ねる覚悟であった。
 己が気力の続く限り……あるいは石化に侵食され切ってしまうまで『牙』として只管に剣刃を振るい続けるだけと。
 ――だが、猟兵はひとりではない。
 今や友たる『剣』とすら遠く隔てて孤独に闘う、眼前の大天使とは違うのだ。

「ダグザ!」

 溌剌と戦場に響くその声は、アルダワ制服に身を包む一人の少女から発せられたもの。
 頼もしき援軍として到着した神殺しの人形遣い、阿紫花・スミコ(ガジェットガール・f02237)である。
「大天使だなんて御大層にしててもダークセイヴァーの領主達とちっとも変わらない。
 力があれば何をしてもいいって思ってるんだろう? お前が奪われる立場でも同じことが言えるかな!」
 尽きぬ紅蓮の怒りをその胸に。
 光輪阻む壁として絡繰人形に巨大棍棒を振りかざしての大立ち回りを行わせつつ、スミコ自らは黄金銃を構えて後方から火力支援を展開。
 小さな炎の精霊銃に対し、龍脈火山帯はまたも強く味方してくれているようだった。
 正確無比を誇る【ブルズアイ】の炎弾射撃との共闘によって、敵弱点を狙うカイラの太刀筋もまたその精度を増してゆく。

「見知らぬ天上の世界などよりも、A&Wの上で今を生きている命の方が大事。
 故に、道は閉ざされたままで良い――」

 カイラとも雷火とも知れぬ、淡い淡い微笑が浮かんでは消えて。
 妄執断ち切る為にと振り下ろされた、耀く命啜る骸刀『焔喰』の一刺し。
 鎧の隙間の奥でいまや大天使ブラキエルの右眼は眼窩も露わに鮮紅にと染まり、
 ――遂にその蒼を完全に喪っていたのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クーナ・セラフィン
道中も厄介だったけど親玉は更にヤバいんだろうね。
でも怯みはしない。キミの背負った歪んだ妄執は私達が祓ってあげよう。
…しかしずっと鎧姿でよくない?脱ぐの趣味なの?

敵との距離に注意、風のルーン記述した符を数枚準備、一枚は自分に使えるよう備えておく。
小柄な体で地形利用、岩陰などに飛び込み隠れつつある程度距離取りつつ符で牽制攻撃。
破壊の光放つ瞬間を全力で警戒し、攻撃の瞬間オーラ防御しつつ自分に衝撃波放ち一気に距離を取り射程範囲外に逃れる。
石化の異常は魔術的なモノだろうから破魔で進行抑えつつ攻撃直後の隙に切り込みUC発動。
見た目から寒そうだし凍えて幻でも見てればいいんじゃないかな。

※アドリブ絡み等お任せ


天御鏡・百々
遂にここまで辿り着いたぞブラキエルよ!
お主の悪あがきもここで終いだ!
ここで成敗してくれる! 虐殺なぞさせてなるものか!

本体の神鏡から放つ光で目潰しを行い、その隙に岩腕の攻撃範囲から外れるように距離をとるぞ(目潰し)
それでも逃れられぬようならば、神通力(武器)の障壁(オーラ防御)を斜めに当てて、攻撃を逸らすようにする

可能な限り距離を取るように逃げ回りながら
天之浄魔弓(武器)より放つ『清浄の矢』で射抜いてくれよう!!
(破魔、誘導弾、浄化、鎧無視攻撃、スナイパー、祈り、神罰5)

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ連携歓迎
●本体の神鏡へのダメージ描写NG


ユーフィ・バウム
天上界がいかな世界であるかは分かりません
私にわかるのは、
人の命を奪い目的を達成しようとする貴方を
猟兵として、決して許さないということです!

大天使の先制の岩腕には、
天性の【野生の勘】、培った【戦闘知識】をフル稼働させて
【見切り】、自ら後方に飛んで衝撃を最小限に
ノーダメージとはいかないでしょうが、
痛みは【激痛耐性】で堪えるっ

人々の痛みに比べれば、このくらいがなんですかっ!
【気合い】全開!今度はこちらの番と向かっていく
【ダッシュ】で間合いを詰め、【力溜め】た
【鎧砕き】の攻撃をねじ込んでいきますよっ!

相手の再反撃は、【オーラ防御】を押し出すようにして
体勢を崩し、必殺の《トランスクラッシュ》で押し込むっ



 高き天から燃える地にと散ったあの花々のように。
 今、大天使の右のまなこから切望湛えた深蒼は完全に潰え……とめどなく鮮やかに、
 鮮烈な紅ばかりが零れてゆく。
 矜持か、それとも七大元素たるブラキオンを司るものの器には痛みを感知し伝達するという機能そのものが備わらないのか。ブラキエルは眉ひとつ動かさず。
 感慨もごくごく淡やかに、ただ、自らの流血に真白きその指先で触れたのみだった。

「遂にここまで辿り着いたぞブラキエルよ! お主の悪あがきもここで終いだ!」
 飛来する拳圧は、まさに災厄。
 天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)を取り巻く赤き光景が、
 一瞬で崩壊する。
 神鏡を掲げて光放とうとした百々だったが先制の一打の疾さを超えること能わず。
 だが。
 仮初の小さな体を護り抜かんとする円き鏡面は、暁光の如く、其処に湛えた輝きを堅くまったき障壁へと変えてゆき――――――、

「天上界がいかな世界であるかは分かりません。私にわかるのは、人の命を奪って目的を達成しようとする貴方を猟兵として、決して許さないということです!」
 ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)のしなやかな小麦色の肢体は、すっかりと怒りと闘志に満ち満ちる。
 大天使にして猟書家の首魁を向こうに回し、怖じるどころか森生まれの『蛮人』の心身は滾る一方だ。
 敵の初撃に対しすぐさま衝撃を殺ぐ為のバックステップに踏み切ろうとしたその時、
 彼女の脳裡で野性の勘と戦闘勘が声を揃えて叫んだ――横だ、と。
 はたして今ユーフィを襲った『岩腕』はこれまでの頭上から振り下ろす攻撃から一変。
 真正面から貫き手突きのように繰り出されたのである。
「!!!」
 強引な捻りで横跳びにと切り替えてギリギリの緊急回避。
 間に合った筈の防御を、だが容易く、『岩腕』の破壊力が追い抉る。
 焼ける地表を転がされ、かろうじて取れた受身。
 先迄ユーフィが立っていた場所は地下深く断ち割られ……その遥か後方まで長々と直線に刻まれた大地の痕が、命拾いをしたのだとの実感を強く抱かせる。
 ブラキエルの白翼は飛翔する事を止め、この決戦中で初めてその両脚を灼熱の大地の上に着地させていた。
「なりふり構わない気合い勝負はお互いさまってわけですね、望む所ですっ!」
 強きものは、今、肉弾戦の間合いにまで踏み込み、
 弱点たる隻眼を庇おうともしない。
 負けるものかと、軋む自らの全身を叱咤しながら空色の瞳が見開かれる。
「人々の痛みに比べれば、このくらいがなんですかっ!」
 咆哮じみた、少女の叫びが龍脈の地に轟き、そして――――――、

 猫の爪が傷深き鳥を狩るか、それとも猛禽の翼が小さき獣を捕らえるか。
 龍脈の地を狩り場とし、大地に屹立する陰という陰を盾としながらクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は疾駆する。
「ねぇ、ずっと鎧姿でよくない? 火山帯だと熱くて蒸れるのかな?
 ……それともやっぱり、脱ぐの趣味なの??」
 時にそんなへらず口を軽妙に織り交ぜてはみるものの。
 疾駆、するしか今は手立てが無い。携えた風のルーン符は未だ投じられぬまま。
 牽制などと心安く仕掛けられる相手ではないのだから。
(ここまでの道中も厄介だったけど……うん、親玉は更にヤバい)
 遍く広域にまで及ぶ破壊の光の射程から逃れ得るほど爆発的な衝撃波を生み出すのは困難であるとクーナは早々に断念しており、赤熱の火山渓谷とオーラでの防御が貴重な数秒の猶予を彼女に齎した。ルーン符全てをブーストに廻し、破魔をもって石化にと備えて。
 ほどなく。
 一呼吸ほど遅れてすべてが真白く眩み、歪んで――――――、

 かくして。
 美しくも果敢たる三者は三様に死線を越えて今いずれも、戦場にと在った。

「今こそ必殺のトランスクラッシュ! めいっぱい叩き込みますっ!!」
 真白き肌膚へユーフィの闘気と肉感的な褐色肌が重ねられ、
 渾身のフライングボディアタックが天にでも地にでもひとりで還れと大天使をぶっ飛ばす。
 畳み掛けられたのは、風花に惑えと穿たれた天を衝くクーナの槍技。
「――凍えて、幻でも見てればいいんじゃないかな!」
 灰銀のつややかな毛並みの下で今なお進む岩石化を包み隠しながら。
 騎士猫のウインクを合図に、灼熱の地は冷たき白銀にと塗り変わる。
 そこに横たわる筈の無い静寂の中へと鎖された大天使が夢見るのは、
 あるいは蒼氷であっただろうか。
 もはや身動ぎすら許さぬ幻夢へと兆したのはあれ程に還るを欲した、神域の息吹。

「ここで成敗してくれる! 虐殺なぞさせてなるものか!!」

 百々は『天之浄魔弓』に番えた一矢へ持てる限りの神力を注いで射放った。
 針の穴に糸通す程の絶技が【清浄の矢】の一射を鎧通しと為す。
 大天使ブラキエルの魂に直接、神たるものの光輝が届けられ――爆ぜる。

 初めに光輪がその輝きを止めて砕け、次に岩腕が儚く崩壊し、
 遂には絶対物質たるブラキオンまでもが無数の光の粒となって霧散した。
 月面より降り立った大天使自身の体もまた音も無く崩れ去り、
 ――だが、大地の赤熱にと溶け込む待たず世界から消える。

 伝え、そして、誇らねばならない。
 多くの猟兵が託し繋ぎ、重ねて、助け合った末のこの勝利なのだから。
 か細き喉ふり絞り、百々は戦場の隅々にまで決着の声を響き渡らせた。

「大天使……否。オウガ・フォーミュラ、討ち取ったり!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年05月22日


挿絵イラスト