18
決戦! 大天使ブラキエル ~月より降臨せし者~

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #大天使ブラキエル #オウガ・フォーミュラ #ゴブリン収穫兵 #『黒輪竜』メランシオン #宿敵撃破

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アックス&ウィザーズ
🔒
#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
🔒
#大天使ブラキエル
🔒
#オウガ・フォーミュラ
#ゴブリン収穫兵
#『黒輪竜』メランシオン
#宿敵撃破


0





 アックス&ウィザーズ。砂漠のとある街。
 その街ではこの時期、月の満ち欠けに合わせて夜のバザールが開催されるのだという。
 普段は砂漠を越える者たちが通過点として立ち寄る程度のひっそりとした街が、その夜だけは大いに賑わう。蜃気楼のようだ、と誰かが云った。

「その月はなんだかおかしな様子だけどね」と露天商。「我々のする事に変わりはないさ。それにこの世には冒険者って奴らがいるんだから問題ないさね。何せ、彼らは伝説のドラゴンまで仕留めたって噂まであるんだからな」
 何があっても大丈夫だろう、と呑気に空を仰ぐのだった。
「……ん?」
 ふと視線を戻す。辺りが何だか騒がしい。
 乱闘騒ぎでもあったのだろうか。これだけ人が集まるのだから珍しい事ではない。大方、スリを働く客でもいたか、真偽の怪しい眉唾物の品に、真っ向から文句をつける者でもいたか。或いは屋台に並んでいる商品が隣にはみ出しているだのいないだので商人同士が揉めているとか、それとも行き交う人々が肩をぶつけたところから云い合いに発展したとか――せいぜいそんなところだろう。
 知らぬふりを決め込もうとした商人だが、直後、空気を劈く悲鳴が耳に飛び込んでくる。
「人殺しだ!」
「助けて! 助けて!!」
「ゴブリンだ! ゴブリンの群れが……」
(「ゴブリン?」)
 そんなはずはない。モンスターたちの動きが活性化している最近では、バザールを開催するにあたって冒険者たちを雇って周辺を警護して貰っているのだ。伝説のドラゴンを討ち取るような猛者ではないにしても、ゴブリン程度が束になってかかってきたところでびくともしない実力者たちには違いない。
(「まさか……彼らが取り逃したのか? 数が多くて、それで一匹二匹紛れ込んできてしまって……」)
 辺りは一気に悲鳴と恐慌に包まれた。逃げ惑う人々。列が乱れる。誰かが足をもつれさせてよろめき、それを撥ねのけて誰かが逃げる。
 自分も逃げなければ。商人は立ち上がろうとした。だが足が竦んで云う事を利かない。
 強張って見開かれた視線だけが、群衆の最後尾を追っていた。

「ギヒヒ、すげえ力が湧いてくるぜ! 大天使様様だな!」
「ギャハハ、見ろよ。ちょーっと踏みつけただけなのにミンチになっちまった。俺ァ塊肉にかぶりつくのが好きなのによ」
「おいおい女じゃねえか。女は繁殖に使えるんだから殺すなって云っただろ?」
「いーんじゃねェか。あんだけいるンだからちょっとくらい」
 そこには無数のゴブリンがいた。
 人間だったものを踏みつけて笑う者。
 諫める者も、口の周りを真っ赤に染めて人肉を貪っていた。
 彼らは確かにゴブリンだった。だが彼らが持つ細く短い筈の腕は、剣をも通さぬ分厚い岩のように変化している。
 その腕が握る剣に商人は見覚えがあった。街の警備を頼んでいた冒険者のものだ。
(「あれは……まさか、彼らが、やられ……!?」)
「すべては『大天使様のミココロノママニ』、だ」
「皆殺し。ミナゴロシ。あの冒険者のよーになァ……ミナゴロシってこたァ、女も殺さなきゃダメか?」
「俺らが役立てるくらいはいいだろ。健康なゴブリンを産んでくれそうな若ァい女と、あと一部の男もな。俺らの盾と駒になる」
「それ以外は」
「ギヒヒ、ぜーんぶ、殺せ!!」


「……って事件が起こりそうでやべーから、起こる前に阻止して、ついでに首謀者を叩いてくれって話よ」
 予知の惨劇を思い出したのだろう。うんざりとした様子で眉間に手を当てながら、猟兵たちを呼び寄せたジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)が告げる。
「今なら街が襲撃される前にゴブリンたちのアジトを叩ける。普段なら現地の冒険者でもやりあえる相手なんだけど、今は説明した通り岩の腕で強化されててな。……それを齎した首謀者ってのがあの、『大天使ブラキエル』ってわけだ」
 目を見張った猟兵もいただろうか。
 大天使ブラキエル。
 オブリビオン達の新しき長となる可能性のある、オウガ・フォーミュラ。

「奴は天上界へ至る僅かな可能性に賭けるために、地上の人間を根絶やしにしようとしてるみてえだな。追いつめられてとうとう大々的に仕掛けてきたってわけだ。そして仕掛けてきたって事は、こっちもようやく奴を迎え撃つ事ができる」
 ジャスパーの説明はこうだ。
 今から猟兵たちを転送するのは、ゴブリンが己のアジトから街へと進軍するまさにその瞬間。
 彼らは元々数だけは多い代わりに脆弱だが、今ではブラキエルから授かった力で強化されている。猟兵といえど一筋縄ではいかない相手だが、何も悪いことばかりではない。
「ゴブリンの奴ら、前々から攫った人間を馬車馬みてえにこき使ったり、繁殖用だの観賞用だのって名目で劣悪な環境で捕え続けたりしてたらしくてな。今回奴らが大規模に仕掛けてくれたおかげでようやくアジトが判明した。ここで叩いておけば囚われてる人たちを解放する事ができる」
 それに、とジャスパーは付け加える。

「以前、ブラキエル配下の猟書家『眠りの森の魔女ターリア』に命を狙われていたクレリックがいてな。名前をエイミーっていうんだけど……そいつが仲間のクレリックと共に駆けつけてくれてる」
 彼女たちが信仰する『言葉の神シャルムーン』の信託を悪用しようとしている存在。
 許してはおけないと、協力を申し出てくれたのだという。
「戦力は猟兵には及ばねえけど、彼女たちのユーベルコード『ジャッジメント・クルセイド』は命中率が高い。岩の腕を的確に狙って破壊したり、役に立ってくれる筈だぜ」
 うまく彼女たちと協力して立ち回れば、より効率的にゴブリンの群れを殲滅できるというわけだ。

「ゴブリン達と、あともう一体、こっちは予知が及ばなくて詳細がわからねえんだけど……ブラキエルの腹心の部下が行く手を阻んでくる。そいつらを討伐すれば、ブラキエル本人と対峙できる筈だ」
 長い鍔迫り合いを繰り広げてきたオウガ・フォーミュラと、これが最初の決戦となる。
「強敵だろうけど、あんたらならやってくれるって信じてる。頼んだぜ」


ion
●お世話になっております。ionです。
 第一章はオープニングにあります通り、強化されたゴブリンの群れとのバトルです。
 街ではなく彼らのアジトでやり合う為、人払いなどは不要です。
 ただしアジトには以前ゴブリン達に捕まった人々がいます。彼らはゴブリンから暴力や恐怖によって洗脳・支配されているため、戦闘中に「逃げろ」と声をかけるだけでは解放できないでしょう。
 そしてゴブリンは彼らを盾として使ったり、あるいは血肉を喰らって己を強化したりと残虐の限りを尽くします。
 うまく彼らを巻き込まないように戦い、勝利して「もうゴブリンに怯える必要はない」と示してあげることが、解放への一番の近道と思われます。

 クレリックが何人か、協力してくれるようです。
 代表のエイミーは拙作で登場しております(読まなくて大丈夫ですが、一応)
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=31292
 ユーベルコード『ジャッジメント・クルセイド』を武器に戦います。
 彼女たちと協力すると判定が有利になります。

●第二章・第三章はボス戦です。
 敵が強いため、クレリック達はあまり役に立たないかもしれません。
 特に言及がなければ、彼女たちはゴブリンに囚われていた人々を街に連れて帰る役を担って戦場から離脱したものとします。

●各章、開始時に追加オープニングを投稿し、それと同時にプレイング募集について案内予定です。
198




第1章 集団戦 『ゴブリン収穫兵』

POW   :    ヒューマンライド
自身の身長の2倍の【剣を装備した後、捕獲した人間(調教済)】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD   :    ホステージシールド
全身を【隠す様に、捕獲した人間を固定した盾】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃を盾で受け止め、固定した人間の負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ   :    食人肉料理~生~
戦闘中に食べた【捕獲した人間の血肉】の量と質に応じて【全身の細胞が活性化し、自身の負傷が回復】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 光纏いし大天使の抱いていた剣が、ふわり、と浮き上がる。
「我が友よ、君の願いは叶わなかった。君は『書架』へと帰るがよい」
 剣は全てを受け入れたかのように虚空へと消えていった。澄み渡る海のような眸が何もない空間をじっと見据え――そして、ゆっくりとまばたきをふたつした。
「我は、天上界の扉を開く僅かな可能性を実行しよう……もっとも、ヴァルギリオスさえ見逃し、あまつさえ封印された愚か者共が、今更地上の危機に扉を開く事もあるまいが……」
 眸に宿るものは失望だった。
 神々への失望。それでも至る可能性があるのなら、それに縋る事しかできない己への失望。
 地上の危機。それを起こす為に、矮小なゴブリン達にさえ力を授けた。略奪と繁殖しか頭にないような低能な連中だが、だからこそ分不相応な力に驕り、虐殺の限りを尽くす事だろう。
「危惧するべきは、猟兵……か」
 これまでにも、幾度となく行く手を阻んできた存在。
 己が大規模に仕掛けるとあらば、彼らもそれを察するのだろう。そしてそこから見つけるのだろう。首謀者への糸口を。
「もはや身を隠す手段も、そして必要も無い。我ら猟書家、求むるは「識」なれど、武と殺戮を躊躇いはせぬ」
 光が満ちる。岩の腕により力を巡らせるために。


「しっかしあの見目麗しい大天使様は何を考えてンだろうな?」
 自身の『馬』の拘束具を外し、上に跨りながら、ゴブリンが云った。
「あーんな綺麗な貌で地上の人間を根絶やしに、なんてよ。天使様の考える事はよくわかんねェな」
「まあ俺らがうまくやりゃ、俺らが使う分くらいは残しといてくれるだろ」
「そーだな。……オラ、馬の分際で何をびくついてやがる。さっさと歩け」
 どん、とゴブリンが馬の脇を蹴った。馬は……馬と呼ばれた人間の男性は、ヒィ、と息を漏らして四つ足で歩きだした。
「テメェは今から奴隷にゃ勿体ない名誉を味わうんだよ。なんだかわかるか?」
「わかり……ません」
 濁った眸が逸らされる。ギャヒヒ、とゴブリンがけたたましく笑った。
「俺たちが新しい力を振るい、人間どもを殺して回るのを間近で目に出来るんだぜ。特等席だ。よかったな」
「ホラ、何か云うことあるだろ?」
「ぅ……あ、ありがとう、ござい、ます……光栄、です」
「ヒャハハ! そうだろう、そうだろう?」
 打撲だらけの身体。
 眸からは、もはや涙さえも流れない。


「冒険者の皆さん!」
 猟兵達が現地に赴いた直後、クレリックのエイミーが仲間を連れて駆け寄ってきた。
「アジトはあちらです。ゴブリン達の声に紛れて、人間の呻き声も聞こえてまいります……一体どれだけの仕打ちを受けているのでしょう」
 神よ、と祈る彼女の手は震えていた。
「神託がありました。皆様は人智を越えた強敵と相対するさだめなのだと……わたし達に出来る事はあまり無いかもしれませんが、それでも無残に傷付けられている彼らを前に、そして神を悪用する者たちを前に、出来る限りを尽くしたいのです。どうか、連れて行ってくださいませ」
 エイミーも、そして仲間のクレリックたちも、未知の力を持つゴブリン達にも一歩も退かない覚悟の眼差しで、猟兵達を見据えるのだった。
==================
 プレイング受付:05/05(水)朝8:31~
 終了日時は追ってお知らせします。
==================
鍋島・小百合子
WIZ重視

人を畜生のように扱う下劣な輩どもめ・・・!


「わらわとその兵で援護する故人質の救出をお願い仕る!」
UC「聖尼守護陣」発動にて召喚した102名の神官騎士とエイミー殿ら僧兵達を戦闘知識込みで指揮
30名をわらわと共に敵の抑えを担う前衛、22名と僧兵を人質の救出、残り52名を先二つの支援を主とした後衛として振り分け
前衛が流れ来る悪鬼を食い止め、救出がその隙に人質を後衛の元へ搬送
後衛は救出の人質搬送を受け入れつつ脱出口の確保並びに弓の一斉射と聖魔術による前衛と救出の支援を命ず(集団戦術、拠点防衛、継戦能力併用)
わらわは随伴兵と連携して薙刀片手に悪鬼共を捌いてくれる!(なぎ払い、範囲攻撃併用)




「ゲッ、あいつらが大天使様の云ってた猟兵ってやつか」
 出撃準備を整えていたゴブリン達が、突然の来訪者に貌を顰める。
「何で俺らの計画がバレてんだ?」
「心配すんな、今の俺達の敵じゃねえ」
 岩のような腕を見せつけるように上げながら、ゴブリンが猟兵を睨みつけ――ようとして、その目元がだらしなく緩んだ。
「グヘヘ、それに……随分な別嬪さんまでいるじゃねェか。さて、どうしてやろうなァ?」
「下劣な輩どもめ……!」
 吐き棄てるように云ったのは、武者鎧に身を包んだ鍋島・小百合子(朱舞の女丈夫・f04799)だ。
「人を畜生のように扱う悪鬼共、断じて赦してはおけぬ!」
「おお怖い怖い」
 揶揄うように肩を竦めたゴブリンが、直後地を蹴って飛び掛かってきた。
(「成程、確かに侮れぬな」)
 この世界で一般的な魔物である小鬼達とは比べ物にならない気迫と、速さだ。膚でそれを感じ取った小百合子は聖尼守護陣を展開し、英霊たちを召喚する。かつて宵闇の世界にて果敢に戦い、朽ちていった神官騎士たちだ。
 二人の騎士がメイスを交差させ、岩の腕を受け止める。
「!? 俺の腕が、受け止められ……!」
「エイミー殿達と二十二名、人質の救出をお願い仕る! 五十二名は後方支援を! そして残り三十名とわらわは……」
 ひゅ、と空気が唸る。小百合子の薙刀が閃き、岩の腕を薙ぎ払う。
「そんなもので」
 この腕を壊せるものか、と云いたかったのだろう。笑みを浮かべかけたゴブリンの貌が歪む。
 メイスと腕がぶつかった時、腕に生じていた微かな綻び。それを見逃さずに的確に刻まれた斬撃が、ゴブリンの腕を粉砕していた。
「そん、な……!」
「怯むな、かかれ!」
 ゴブリンが沸き立ち、小百合子率いる騎士団と真っ向からぶつかり合う。
「わらわ達の主たる目的は抑えじゃ、前衛は防御に重きを置き、後ろの者は障壁魔法を展開せよ。あの悪鬼共は鈍重に見えてすばしっこい。隙を突かれぬよう、撃破の時は必ず複数で動くのじゃ」
 自らも最前線で薙刀を振るい続けながら、まるで戦場そのものを見下ろしているかのように的確な指揮を送り続ける。小百合子の受けた教育と実戦の双方の賜物であり、そして何より、神官騎士たちとの信頼の賜物だ。生きた時代や世界は違えど、信じるもののために気高く戦い続けた女性たち。
「クソッ、生きたまま食える人質が奪われちまって傷の回復も出来やしねェ。こうなったらお前らを喰ってやる!」
 小柄な体躯には不釣り合いの大きな口が涎を滴らせる。
「やってみるがよい! 悪鬼共!」
 懐に飛び込んだ小百合子の薙刀が、ゴブリンの頸を切断した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「貴方達が生者であろうと死者であろうと。人を犯し喰らう貴方達とは共存出来ません…殺し合いましょう、存分に」

敵陣に突っ込みUC「桜花の宴」
敵に麻痺とダメージ与え、敵が人質で攻撃を受けたり喰らって回復したりするのを防ぐ
少しでも人質の被害を減らしエイミー達も戦いやすくなるよう、敵の攻撃は第六感や見切りで躱しどんどん敵陣深くへ
UC使用しながら高速・多重詠唱で桜鋼扇に雷属性付与し、麻痺した敵の目や首筋等急所を切り裂きながら進む

「命にも願いにも貴賤なく尊厳に差もないけれど。互いに捕食者である私達に妥協点は存在しないから…次はそうでなく会えることを願うのみです」
戦闘後小さく鎮魂歌を歌いつつ人質の救護に努める




 先陣を切った武者と聖騎士たちにより、ゴブリン達の陣営は大きく乱されていた。
「奥にまだ人質がいるだろ! 連れて来い!」
 岩の腕に大きな裂傷を刻まれたゴブリンが吼える。
「連れて来て、どうするおつもりですか?」
「そりゃ勿論喰うんだよ! 人間の肉を喰えばこの腕も戻……へっ?」
 突如聞こえた、静かだがよく通る女性の聲。
 合わせるように風が吹き、桜吹雪が舞い踊る。視界を覆い尽くすほどの花弁はまるで花霞。そこに在るだけで視界を眩ます桜花の宴は、触れれば身体の動きをも封じる力を持って。
 その中心に、桜と同じ髪色をした女性がいた。桜鋼扇を携え舞うのは御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)。
「そうはさせませんよ」
 桜鋼扇がふわりと踊るたび、桜はますます咲き乱れる。幻朧桜の精として、今この姿で在ってはならぬ者たちを導くように。
 エイミーが裁きの光を喚ぶ。大きく罅を刻まれていた腕は耐え切れず崩壊し、ゴブリンの絶叫が空気を劈いた。
「貴方達が生者であろうと死者であろうと。人を犯し喰らう貴方達とは共存出来ません……」
 天から落とされる光とは別の輝きが生まれる。桜鋼扇が軌道を変え、桜の代わりに白銀の雷を纏う。
「――殺し合いましょう、存分に」
 麻痺で動けぬゴブリンが最後に見たものは、軽やかな動作で己の眼前に踏み込んできた桜花と。
 彼女が扇を振るった瞬間、真っ白に爆ぜた視界だった。迸る雷に灼かれた目は最早何も映せず、そして映していたとしても、それを感覚として処理する機能の方も断たれていた。
 絶命したゴブリンがどさりと地に斃れ、その時にはもう、桜花は次のゴブリン目掛けて踏み込んでいた。
 軽やかな動きでオブリビオンを駆り続ける桜花は、彼らを赦さぬ正義の使徒に見えただろうか。
 実際の所桜花は、自分のことを正義だとは思っていない。自らもオブリビオンの虐殺を目の当たりにし、それでも彼らを救い導く道を探し続ける桜の精。
 彼女を悪をも赦す慈悲の存在と云う者もいるだろうし、邪教すれすれの異端だと云う者もいるだろう。
 そしてそんな彼女ですら――今出来る事は、限られている。
「命にも願いにも貴賤なく尊厳に差もないけれど。互いに捕食者である私達に妥協点は存在しないから……次はそうでなく会えることを願うのみです」
 桜の精として。傷つき彷徨う魂を新たに発生させる者は、その前に終わらせる。

 動く者がいなくなった頃。
 小さく、けれど確かな願いを込めた鎮魂歌が響き渡った。
 そして桜花は歩き出す。今生きている人々を救護するために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイン・セラフィナイト
ブラキエルの目的は人間たちを虐殺すること、明確すぎる目標になった分厄介だね。
まずはゴブリンたちを駆逐しないと。エイミーさんたちと一緒に突撃だ。
……とはいえ、何の策もなしに突撃はまずいよね。

UC発動、ノーム、アジト全体に超高重量の砂を拡散させて!(属性攻撃・範囲攻撃)
もちろん砂を吸着させる対象はゴブリンだけだよ。人間たちを捕食する前に、動きを封じてみよう。
エイミーさんたちに、動けなくなったゴブリンたちへ攻撃してもらうよ。

名誉、なるほどね。それなら、キミたちゴブリンにも言おう。
これからボクたちがあの天使を打倒する。骸の海でその光景を見ているといいよ。

……捕まってた人たちに手を差し伸べなきゃ。




「ブラキエルの目的は人間たちを虐殺すること、明確すぎる目標になった分厄介だね」
 変貌した腕を持つゴブリン達の様子を伺いながら、青髪の少年アイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)が呟いた。
 剣と魔法の世界に在る、「智」や「識」を求むる者。ある意味ではアインとかの大天使は近い位置にあり、そして最も遠い。
 自ら世界を巡り、人々から学び吸収するアインと、オブリビオンとして災厄によってそれを引き寄せようとするブラキエルでは。
「まずはゴブリンたちを駆逐しないと」
「でも、数が多いですね」
「うん、何の策もなしに突撃はまずいよね」
 小声で耳打ちしてきたエイミーにアインも頷く。いくら猟兵といえど強化されたゴブリンに囲まれれば無事では済まないだろうし、何より時間をかけていればそれだけ人質の身に危険が及ぶ。
「どうしましょう?」
「ここはボク達に任せて」
 ボク『達』、とアインは云った。仲間がいるのだろうかとエイミーは首を傾げる。アインの杖が仄かに輝いた直後、ゴブリン達が不思議そうに上を見上げた。
 アジトにしている洞窟から、さらさらと砂が零れてきたのだ。はじめは一ヵ所から微かに漏れているだけだった砂はあっという間に体積を増し、ゴブリン達に降り注ぐ。そこでようやく彼らは気づく。その異質さに。異様なほどの重さに。
 それは豊穣の祖、地の精霊ノームが齎す超高密度・超高重量の砂だ。
「う、動けねェ……!?」
「今だ、突撃しよう」
 アインの言葉を皮切りに、クレリック達も天から裁きの光を降らせる。狙った者を的確に射抜く彼女たちの力は勿論の事、アインの砂も狭い洞窟の中でゴブリンだけを正確に狙い定めていた。
 砂はアインの膨大な魔力によって、無尽蔵ともいえる程に増殖させる事さえ出来る。それを人質たちに危害を加えぬよう制御し続けているのも、アインの身に付けてきた知識や経験が成せる業だ。
「ぐぇ、くる、し……!」
 砂はますます重量を増し、ゴブリン達は地に這いつくばって呻く。
「キミたちが虐げてきた人たちの苦しみは、こんなものじゃなかったはずだ」
「へっ……」
 嘲るようにゴブリンが吐き棄てた。
「あいつらは俺らの血肉に、盾になるんだぜ……随分な名誉だと、思わねェ、か?」
「名誉、なるほどね」
 アインはあくまで穏やかな口調のまま頷いた。
「それなら、キミたちゴブリンにも言おう」
 裁きの光が振り下ろされる。眩い閃光がアインをも照らし出した。
「これからボクたちがあの天使を打倒する。骸の海でその光景を見ているといいよ」
 光が満ちて、言葉通りゴブリンは骸の海へと墜ちていった。

 怯え竦む人へと、ちいさな手が伸ばされる。
「ひっ」
「……もう大丈夫だよ」
 今すぐには信じられなくても。
 アインはまっすぐに彼らの目を見ながら微笑むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

地籠・陵也
【アドリブ連携歓迎】
住民の救助を優先する。
【高速詠唱】、【指定UC】でゴブリンの動きを封じ、同時に【多重詠唱】、動くのもままならないだろうから【オーラ防御】と【結界術】で動かなくても身を守れるようにしておこう。
ケアの方面はエイミーたちに任せて、一体でも多くゴブリンの動きを封じて住民を保護、それが終わったら攻撃に移る。

いくら俺でも喜んで人を傷つける魔物にかける情けは持ってはいない。
――喜んで人を傷つけたんだ、相応の"報い"を受けてもらおうか。

【部位破壊】、ゴブリンが今まで殴ってきた部分をバールのようなもので同じように殴ってやる。
反撃は【激痛耐性】と【継戦能力】で効いてないように装った上でな。




 この場所には恐怖が充満している。
 囚われている人たちは、それをそうと認識する事もなくなってしまっているかもしれないけれど。
(「助けなければ」)
 自分たちのような悲劇は二度とあってはならない。
 家族を失い、自らも心の大部分を喰われてしまった地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)の中に今も残る、強い恐怖と決意。
 今なら間に合う。人質たちが感じている恐怖も、彼らの家族や友人たちが感じているであろう喪失の恐怖も。破壊できる。
 素早く紡いだ呪文が、ゴブリンの足元に魔方陣を展開する。
「何だァ……?」
 怪訝そうにゴブリンが見下ろした直後、光鎖がしゅるしゅると伸び、その四肢を捕縛した。
「……?」
 今まさにゴブリンの贄にされかけていた女性が、目を丸くしてその光景をただ見つめていた。間近に迫っていた死から免れたのは理解出来ても、囚われ続けていた彼女はすぐに逃げるという選択が頭に浮かばないのだろう。
(「本当に惨いことをする」)
 すぐさまエイミー達が駆け寄って、女性に何かを語りかけていた。女性はまだ呆然とした様子だったが、それでもゆるゆると頷いた。
 クレリック達が肩を貸し、ゴブリン達から離れた物陰まで彼女を誘導する。陵也はほっと息を吐き、更に多くの魔方陣を展開する。陵也だけでも捕縛と救助を同時にこなす事は不可能ではないが、より迅速で確実な救助のために人手は大いに越したことは無い。それにケアまでは手が回らないから、彼女たちと合流出来て良かったと思う。
(「……それに今の俺では、適切にケアが出来るかどうか」)
 あの日以来、恐怖以外の感情が希薄になってしまった。他者に優しく在りたいと想いはあれど、人を元気づける為の心からの笑顔が今の自分にはとてつもなく遠い。
 だから陵也は今の己に出来る事をする。手に携えたのは工具のような鈍器。
「いくら俺でも喜んで人を傷つける魔物にかける情けは持ってはいない」
 何をされるのか理解し、ゴブリンが目を見開いた。だが陵也の貌には一片の動揺も見られない――少なくとも、表面上は。
「――喜んで人を傷つけたんだ、相応の"報い"を受けてもらおうか」
 鈍器が振り下ろされ、鈍い音と共に肉片が飛び散る。女性が傷を負っていた肩に。脇腹に。腕に。
 くぐもった悲鳴と共に、ゴブリンがもがく。一番強靭な岩の腕が束縛を逃れ、陵也の頭を打った。
 だが陵也は顔の半分を血で染めながらも、鈍器を振り下ろすのを止めなかった。
「俺の腕が、利かない……だと?」
 そうではない。殴られた痛みも。眩む感覚も。はっきりと陵也を蝕んでいた。
 けれどそれを表には出さず、陵也はゴブリンが動かなくなるまで彼らを打擲し続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゴッド・ゴッダー
大天使が何やら悪さを働いておる様じゃな!!
大宇宙の森羅万象を司る全知全能の至高神として、放っておくわけにはいくまいて!
天使など所詮我がしもべに過ぎぬ!
それに借りた力に溺れる子鬼なぞ、物の数ではないわ!!

人間を喰らおうとした所で神術(ユーベルコード)発動!!
この宇宙の生命は、元をただせば全て我が創造物!!
ゴッド・クリエイションで、人間の硬度を数億倍に高めてくれるわ!!
歯の砕けたゴブリンどもに神の鉄拳を叩き込んでくれよう!
ブラキエルの坊主に伝えるが良い!
偉大なる万物の父、ゴッド・ゴッダーが灸を据えに来た…!とな!!




「くそ……折角の腕が、壊れ……!」
「お前っ」
 苦痛に貌を歪めるゴブリンの一体が、人質の胸倉を掴んで引き寄せる。
「ひ……っ」
 虚ろだった眼差しに感情のいろが宿る。けれどそれは恐怖という名のものだった。
 ゴブリンの貌が近づき、涎が糸引く口が迫って来る。
(「おれ、食わ、れ……」)
 目を逸らしたいのに、逸らせない。逃げるという意思などとっくに失い、無気力という名の盾で苦痛をやり過ごしていた筈の自分が、死の間際に今更本能的な恐怖を感じている。
(「いやだ、死にたくない、神様――!!」)
 ああでも無情にも。歯はやせ細った躰に迫って、突き立てられて――そして、折れた。ぼきり、と。
「……え?」
 きょとんと目を瞬かせれば、同じように間抜けな貌できょとんとしているゴブリンと目が合った。
「……ぎ、ギャアアアアアアアア!?」
 遅れて続く悲鳴。
「俺のっ、俺の歯が!」
「お前、何をした!」
「ひっ! 俺は何も……」
「我が答えてやろう!」
 突如響く老人の聲。空気さえ震わせるような重さに誰もが圧倒される。
 そこには立派な白髭と鍛え上げられた肉体を持つ男性が立っていた。それだけではない。頭に宿る光の環も、薄布纏うその姿も、雷光宿るその杖も、それはまるで――。
「……か、神様?」
「ほう。察しが良いな人間よ」
 ニヤリ、と立派な歯を見せて老人が笑う。
「そう、この宇宙の生命は、元をただせば全て我が創造物!! ゆえに、我の力を少々注ぎ込んでその硬度を一時的に数億倍に高める事など造作もない!!」
「……何だこのジジイ」
 ゴブリンが怪訝そうな目を向ける。
「俺らについてるのは正真正銘の大天使様だぜ。神だとかなんだとかうさんくせェ」
「ハ、天使など所詮我がしもべに過ぎぬ! それに借りた力に溺れる子鬼なぞ、物の数ではないわ!!」
「そーかよ、なら……やってみやがれェ!!」
 ゴブリンが四方八方から老人に襲い掛かる。老人は逃げるでも避けるでもなく、ただ仁王立ちのままそれを迎え撃つ。
「良いだろう。大宇宙の森羅万象を司る全知全能の至高神。その力のほんの片鱗ではあるが――味わうが良い!」
 ゆらり、老人が動く。
 神の魔法でも、ましてや奇跡などでもなく。ただ純粋に鍛え上げられた鉄拳が、無数のゴブリン達を瞬時に叩き伏せ、蹴散らしていた。
「な……ッ」
 目を剥くゴブリン達は知る由もない。
 彼は正真正銘の神なのだ。
 本来ならばゴブリン如き相手どる必要さえもない。自らの創作物である以上、わざわざ手にかけずとも文字通り種族ごと滅する事さえ容易い事だろう。
 ただ――それでは『ツマラナイ』ではないか?
 だから彼は今も、ゴブリン達の命を一撃で奪う事はしなかった。ただのたうち回る小鬼達に告げる。
「ブラキエルの坊主に伝えるが良い! 偉大なる万物の父、ゴッド・ゴッダーが灸を据えに来た……とな!!」
 老人が――ゴッド・ゴッダー(ゴッデスト・f20871)が真実を告げている事を、頭の回らぬゴブリンも漸く理解した事だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リューイン・ランサード
心底怒りました!

一太刀でティラノサウルスの首を刎ね、素手で身体を引き裂いて心臓を”ひえもんとり”するシマドゥ島民を創造

島民にシマドゥ島戦法の釣り野伏実施を依頼
(島津家の得意戦法。全軍を三隊に分け、二隊を左右に埋伏。
中央部隊のみ敵に正面から当たり、敗走を装って後退。
敵が追撃してきたら左右両側から伏兵に襲わせ、中央の部隊は反転し逆襲に転じて三面包囲殲滅)
クレリックには伏兵に加わってもらう

リューイン+中央部隊がぶつかる寸前に後退
リューインは殿を務め、翼による空中戦で低空飛行しつつ、ビームシールド盾受けとオーラ防御で耐えて伏兵部隊まで誘引
「チェスト」と叫び、刀を振るってゴブリンの首を獲る軍勢で包囲殲滅




 リューイン・ランサード(竜の雛・f13950)。
 名だたる武人を数多く生み出した名家に生を受け、幼少より鍛錬を重ねてきた少年だ。
 ただ、彼をヘタレと揶揄する者もいる。リューインにしてみれば、記念すべき初冒険でいきなり大魔王の分身に遭遇して心が折れない方がどうにかしているだろうと思うのだが。残念ながら根っからの武人気質である家の人々には名を上げるまで帰って来るなと一喝されてしまい、仕方なく剣を振るう日々なのだった。
 そんなちょっぴり気弱だが心優しい彼が、今全身を震えさせているのは、何も強敵と化したゴブリン達がおそろしいのではない。
「心底怒りました……!」
 彼を震えさせているのは、他者を踏み躙り、力に溺れるゴブリン達への怒りだ。その怒りが、彼と共に戦う者達を想像から創造する。
 シマドゥ島民。異世界のとある島で出逢った人々をベースにリューインの術として編み出された彼らは、とびきり頼りがいのある、そしてある意味ではオブリビオンなどより余程おそろしい人々だ。
「首だ! 首だ! 首ドロップしろ!」
「俺は内臓をやる! ひえもんとりだ!」
 各々の武器を携え真っ向から進軍してくる個性的な面々に、流石のゴブリン達も、そしてエイミー達クレリックも、ひょっとしたら人質のみなさんも、ちょっとぎょっとしていた。
「皆さん、進軍です! 必ずや討ち取りましょう!」
 勇ましく宣言するリューインだが。
「なんだあの腕は!」
「俺の刃物が通らねえ! 恐竜だって一撃だってのによ!」
「撤退だ、撤退!!」
 あっさり負けを認め、撤退する奇抜な島民たち。
「……何だったんだ、あいつら?」
「まあいいじゃねえか、俺らの敵じゃなかったってことよ」
「よし、気を取り直して街を襲いに行こうぜ!」
 岩の腕を掲げ、『馬』に跨るゴブリン達。だが少し進んだところで、隠れるところなど何もなかった筈の砂漠から無数の島民たちが襲い掛かってきたではないか。
「なんだこいつら! どっから湧いてきた!?」
「相手してられっか。速度を上げろ、突破しろ!」
「駄目だ、数が多すぎる!」
 しかも正面からは、先程敗走した筈の島民とリューインが踵を返すようにして迫って来る。
 三面包囲。後方のアジトに逃げれば袋小路。
 島民はただの野蛮な首狩り族ではない。古くより伝わる戦法で獲物を捕らえるつわもの達なのだ。コンキスタドールさえ討ち取る彼らに今はクレリックと、リューインまでもが加わっている。
「相手は下劣なゴブリンたち。皆さん、遠慮なく心ゆくまで首ドロップしてくださいね」
 そしてリューインは竜の翼で空を駆け、混乱し動きの鈍ったゴブリンの群れに突っ込んでいく。
「僕も参ります。――チェストォ!!!」
 深夜の色持つ刃が、蒼く光る刃が彼らの首を刎ね、シマドゥ島民たちもわっと沸き立つのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
❄花狼

エイミーさん、お久しぶりです
この世界の危機にわたくしたちも力添えを…

そんな言葉すら失うほどの惨状
人々の命も尊厳も全て奪われ蹂躙され
悪鬼どもの非道な享楽のために消費される
ダークセイヴァーで繰り返された流血と悪意の残酷劇

許せない
許さない
この地獄を齎した悪辣なるブラキエルを
「大天使」などと決して認めない

歌うは【涙の日】
奴隷にされた人々は一切傷つけることなく癒し
その身に起きた残酷な運命を慰めて

そして悪鬼どもは神罰の光輝で焼きつくす
お前たちは楽に死ぬことすら許さない
生きたまま心身を引き裂かれ抉られる苦悶を思い知れ
存在ごと砕け虚無に滅せよ

嗚呼、わたくしはこれほどまでに
「冷徹な憎悪」を感じたことはない


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼

ヘルガ、俺もお前と同じ思いだ
借り物の力に驕り高ぶり悦に入る卑劣
人々を虐げ踏み躙り、苦痛と絶望を娯楽として消費する残虐さ
貴様らは絶対悪、存在すら許されぬクズだ!

【怒れる狼王】は悪鬼どもを決して許さない

ヘルガの祈りで命を取り留めた人質の身柄を抱え
クレリックに預け下がらせる
大丈夫だ。この炎は善き者を焼くことはない
君たちの無念は必ず晴らす

悪鬼どもよ、貴様らは一匹残さず駆逐してやる
紅蓮の炎で焼き尽くし、肉を裂き骨を砕いて
貴様が犯した悪辣を悉く思い知らせてやる
因果応報、報いあれ!

ヘルガ、怒っていいんだ
世界には人の善意を食い潰す悪が多すぎる
お前の怒りも絶望も、俺がこの刃に変えて
絶望の闇を切り裂こう




 あの時のクレリックが駆けつけていると聞いて、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は真っ先に彼女に声をかけ、笑顔を交わそうと思っていた。
 けれども突如手に入れた力を誇示するゴブリン達の醜悪さが、そして何よりも彼らに虐げられる人々の惨状が、ヘルガから言葉を失わせる。
「……許せない」
 絞り出すような呟きに、エイミーも頷く。
「わたし達の神の言葉を利用し、人々を苦しめる存在が、大天使と名乗っているなんて」
 シャルムーンのクレリックであるエイミーは、この世界を蝕む存在を一般人よりは感知している。けれど世界の枠組みを超えてそれらを追い続ける猟兵と比べればその認識は遠く及ばない。まさか本当に大天使が過去の怪物として天と地に反旗を翻すなど、思いも寄らないのだ。
 そして、エイミーよりも遥かに多くを知り、ゴブリン達の言葉に嘘が無いと知っているヘルガもまた。
「この地獄を齎した悪辣なるブラキエルを、「大天使」などと決して認めない……!」
「ヘルガ、エイミー。俺も同じ思いだ」
 ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)もまた、ヘルガの言葉に深く頷くのだった。
 闇に支配された世界で育ったヘルガとヴォルフガングにとって、ある意味では馴染み深い光景。人々の尊厳や命などは悪鬼などの非道な享楽のための道具としか見做されない。苦痛と絶望。それらが自分にとって最も縁遠い物だと信じて疑わない者たちは、それをただ一時の娯楽として消費していく。
 力なき者から支配される。ヴォルフガングはその強さで闇の世界をひとり生き抜き、ヘルガは大切に匿われ護られ続けてきた。けれどその間にも、流血と悪意の残酷劇は繰り返されてきたのだ。――今も、なお。
 借り物の力に驕り高ぶるゴブリン達の眼差しは、吸血鬼の血という生まれ持ったものを盾に跋扈する彼らとそっくりだった。
「――貴様らは絶対悪、存在すら許されぬクズだ!」
「ギャハハ、クズだってよお前」
「お前も云われてんだよ、バーカ」
 指差し合ってけたたましく笑うゴブリンが、ヴォルフガング達に向き直る。
「いい獲物になりそうだなァ。男の方は体が丈夫で使い勝手があるし、女たちは別嬪揃い。特にその天使みたいな奴、……イイねェ、魂まで真っ白って佇まいでよ。実に汚し甲斐がありそうだ」
 舌なめずりをするゴブリンに、ヴォルフガングがかっと目を見開いた。
「きさ、ま……!」
 全身の血を駈け廻り暴れるような怒りを、今すぐに放出して暴れ回りたい怒りに駆られた。昔のように本能のまま怪物たちを駆り尽くしてやりたいと。
「やってイイんだぜ、こいつらの命が惜しくなければなァ!!」
 ゴブリンが跳躍し、ヴォルフガングに襲い掛かる。鈍重そうな腕が信じられない程の速度で迫り、間一髪躱したヴォルフガングのすぐそばで岩壁が音を立てて破片を散らす。
 ゴブリンの機動力を支えているのは家畜のように四つん這いにされ、生命力をも共有させられている人間だ。
「出来ねェだろ、正義の使者ってツラしてるもんなァお前!!」
 げたげたと笑うゴブリンが再び腕を振り下ろす。武骨な剣がそれを受け止めるも反撃はない。
 矢張り、と笑みを零しながらヴォルフガングを追いつめるゴブリンの背後、静謐なる歌が響く。
「主よ。御身が流せし清き憐れみの涙が、この地上より諸々の罪穢れを濯ぎ、善き人々に恵みの慈雨をもたらさんことを……」
「あ? お祈りかァ?」
「心配しなくても、姉ちゃんもすぐこいつと同じ目に遭わせてや……グァアっ!?」
 岩の指をぼきぼきと慣らし殴りかかろうとしたゴブリンの貌が、突如苦悶に歪む。
 ヘルガの歌に合わせ、天から降り注ぐ眩い光。内側から蝕まれ、喉を掻き毟り暴れるゴブリンが、とうとう「落馬」した。跨られていた男性にはゴブリンにつけられた以上の傷はない。
「安心してください。いかなる術で生命力をいびつに分かち合おうとも、神の意志が善なる人々を蝕むことなどありえません」
 それどころか、人々の身体からは傷が消えていく。あちこちで人々がゴブリンの呪縛から解き放たれ、自らの身体を目を丸くして見下ろしていた。
「どこも痛くない」
「体が軽い。私の体ってこんなに自由に動いたんだっけ」
「くそっ……お前ら、また痛い目に遭いたいようだな!」
 ゴブリンが吼える。反射的に人々が身体を強張らせるが。
「無駄だ」
 低く。地を這うような聲でヴォルフガングが告げた。
「悪鬼どもよ。貴様らは一匹残らず駆逐してやる」
 ヴォルフガングの身体が炎に包まれていく。怒りを燃料に囂々と燃え盛る紅蓮の炎がゴブリンを包み、炎纏う大剣がその身体を砕く。
「グォオ……!」
「因果応報、報いあれ!」
 ヘルガとクレリック達の光。地獄の業火の如き炎。双方がゴブリン達を蝕み、あっという間にその数を減らしていった。
「――ヴォルフ」
 ふと、ヘルガが呟く。
「わたくしはこれほどまでに「冷徹な憎悪」を感じたことはありません。でも……」
「ヘルガ。怒っていいんだ」
 迷いながらも戦場に立ち続ける彼女の肩に、ヴォルフガングの大きな掌が乗せられた。
「世界には人の善意を食い潰す悪が多すぎる。怒りは頼もしい武器となる。矛先を違えなければ」
 それは己の感情や衝動の儘に動く卑劣な悪たちとは違うものだと、ヴォルフガングは云うのだった。
「お前の怒りも絶望も、俺がこの刃に変える。共に絶望の闇を切り裂こう」
「――ええ!」
 ヘルガも力強く頷き、闇を打ち砕くための光を迸らせる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ビスマス・テルマール
等々猟書家の大元の一人が
痺れを切らして……それにしても
余りに酷い事を……人の尊厳に土足で踏み込んでっ!

『胸クソワルいニも程がアる……マスター行クぞっ!』

●POW
『オーラ防御&激痛耐性』で備え
『第六感』で『見切り』回避しつつ

エイミーさん達に『集団戦術』で援護を

ゴブリンの岩の腕と
UCの起点であろう剣を狙い撃ち

わたしも『一斉発射』で『属性攻撃(重力)』の『砲撃&範囲攻撃』で

妨害掻い潜りUCで奴隷騎乗する輩は
起点であろう剣を【高速詠唱】UCで
喰らい

逆に騎乗された奴隷を召喚する形で引き剥がし救出『庇う』様に『パフォーマンス』しつつ『優しさ』を見せ『手を繋ぎ』励まし安心させます

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎




「とうとう猟書家の大元の一人が痺れを切らして……それにしても」
 蒼鉛の手をぎゅっと握るのは、身体を形成する結晶と同じ名を持つ少女ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)。
「余りに酷い事を……人の尊厳に土足で踏み込んでっ!」
 自らの目的の為だけに大虐殺を企てるというだけでも許せない。その上、よりにもよって人間を家畜以下としか見做していないような魔物たちに力を授けるなどと。
『アア、胸クソワルいニも程がアる……マスター行クぞっ!』
 ビスマスが携えていた杖の先端、グラサン針鼠のクロガも唸る。
「エイミーさん達はあの岩の腕と……もしそちらが硬そうなら、剣の方を狙ってもらえますか?」
「お任せください」
 群竜大陸で出逢った――あの時は互いに子供の姿だったが――頼もしい少女に声をかけられ、エイミーが安心した様子で微笑む。続いて放たれた天からの光は岩の腕に命中し、その表面に罅を刻む。
 一撃での粉砕は難しくとも、同じ場所に当て続けられれば破壊も出来そうだ。
 ならば、とビスマスは重力宿した砲撃を広範囲に飛ばし、ゴブリン達の動きを阻害する。
「ぐっ、腕が上がらねえ!」
 剣を取り落としそうになって呻くゴブリンへと、クレリックの光が一斉に放たれる。
「グアア、俺様の腕が……!」
 信じられないものを視たように目を見開くゴブリン。大天使の加護を失ったゴブリンは、力も無ければ動きも遅い。新米冒険者が腕試しに戦うようなモンスターでしかない彼らは、あっという間に砲撃と光によって数を減らしていく。
「人間、俺の馬になれ!!」
 妨害を掻い潜ったゴブリンが素早く人質の拘束を解き、地面に這いつくばらせて騎乗した。
「ウヒャヒャヒャ! これでも俺を攻撃できるか、猟兵!?」
 勝ち誇ったように笑うゴブリンの下では、若い男性が蒼ざめた貌で俯いていた。生命力を共有する騎乗形態の特性上、ゴブリンを攻撃すれば彼にも危険が及ぶ。重力操作で動きを鈍らせるにしても、酷使されやせ細った男性の身体はゴブリンの重さに耐えきれるかどうか。
「そのくらいでわたし達が手も足も出なくなると思ったら大間違いです! ね、クロガさん!」
『ソウイう事ダ!』
 黒水晶の杖から黒炎が伸びる。男性が恐怖に身体を強張らせるが、それは彼らを蝕む力ではない。
 それはユーベルコードを喰らうもの。そして、喰らったものを自分たちの力として操るもの。
「んなっ……!?」
『コレで心置キナくゴブリンをブッ飛バセルぞ、マスター』
「さすがクロガさん」
 優秀な相棒を労いつつ、ビスマスは男性に微笑みかけた。
 ――大丈夫ですよ、と。
 強化された力がゴブリンを討ち、へなへなと崩れ落ちそうになった男性の手を、ビスマスが優しく握るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェルト・フィルファーデン
させないわよ……絶対に!!

一分一秒の猶予も無いわね。まずは敵が動くより早くUC発動。【先制攻撃】
さあ、眠りに落ちて。わたしの意のままに動きなさい!
操ったゴブリン達を敵に突撃させて時間を作る。そしてその時間で囚われた人々を救出するわ!

騎士人形の盾で【庇い守り、騎士人形の弓矢による【援護射撃で牽制しつつ
恐れで動けない人々を【鼓舞し元気付けるの。
「もう大丈夫よ。わたし達冒険者が、アナタ達を絶対に守り抜くわ。だからお願い。勇気を出してわたし達に付いてきて!」

後は残りの敵を蹴散らしつつ脱出よ。誰も死なせはしない。あの天使の思い通りにはさせない!絶対に、この世界を今度こそ、救ってみせる……!!




 妖精たちが暮らす、しあわせな国。
 織物業が盛んなその国を、お姫様も愛していた。
 お姫様の周りには騎士たちがいた。時に彼らのお小言にうんざりさせられることはあっても、それが両親を早くに亡くした彼女が王族として困らないよう、或いはひとりの少女として寂しい想いをしないようにしてくれているのだと、彼女も知っていた。
 外部との交流こそ少ないが、だからこそ豊富な資源を十分に分かち合う事が出来た。国は明るく、国民達も朗らかで優しかった。
 しあわせだった。
 ――そう。すべて、過去形なのだ。

「あの天使の思い通りになんてさせるもんですか。さあ、眠りに堕ちて」
 姫――フェルト・フィルファーデン(糸遣いの煌燿戦姫・f01031)はゴブリンのアジトに辿り着いた直後、すぐさまありったけの魔力を駆使してウイルスを生成する。
「あァ? お前なにしたァ……?」
 目に見えぬ攻撃に眉間を顰めたゴブリンの身体から力が抜ける。かと思えば地面にくずおれる前に踏みとどまり、再度確りと岩の拳を握りしめた。
 電子の毒が蝕んだのは全体数の半分ほど。充分ね、とフェルトは口元を引き締める。
「わたしの意のままに動きなさい!」
 彼女の号令に従うように、ウイルスに侵食されたゴブリンが剣や腕を振り上げる。矛先は人間でも猟兵たちでもなく、仲間であったはずのゴブリン達だ。
「うわっ、何すんだテメェ!」
 電脳世界を魔術として昇華させ、目に見えぬ小さなものさえ操るフェルトの術はゴブリン達にとっては馴染みのないものだったのだろう。あっという間に戦場は混乱に包まれる。
 そこに降り注いだのは小さく、けれど鋭い無数の矢。十体の騎士人形たちが弓を絞り、盾で人質たちを護り続けた。
「もう大丈夫よ」
 その様子を呆然と見続けていた人々の前をふわりと飛び、フェルトがしっかりとその目を見つめて云った。
「わたし達冒険者が、アナタ達を絶対に守り抜くわ。誰も死なせない。だからお願い。勇気を出してわたし達に付いてきて!」
「……勇気を?」
「ええ。アナタ達の勇気が必要なの」
 ちいさなフェアリーが懸命に腕を伸ばして訴えかけている。自分より何倍も大きいゴブリン達の軍勢に一歩も退かず、それどころか護ってみせると胸を張って。
「……わかった」
 小さく頷く人間たちに、フェアリーは金の眸をきらめかせて頷き返すのだった。
 人質だった彼らは大きな一歩を踏み出す。同士討ちをするゴブリン達の流れ弾が時に迫ろうと、騎士の盾は決して彼らに其れを届かせない。
ゴブリンを蹴散らしながら進むフェルトの脳裡に、ふと過去の光景が浮かんだ。亡国。モンスターの跋扈する世界。駆け巡り続けた帝竜戦役と、その勝利。それでも尚この世界に襲い掛かる脅威。
(「もう、誰も死なせはしない。絶対に、この世界を今度こそ、救ってみせる……!」)
 強き想いを胸に、フェルトは浅葱色の両刃剣を振り続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
●POW
エイミーへ軽く挨拶
またよろしく頼むよ

〈冥府の槍〉を手にヒトへ跨るゴブリン達へ言う
虐げる愉悦を味わう為には自らの戦力低下も厭わない
――その心意気良いな、跡形もなく潰し尽くして[蹂躙]したくなる
漏れ出た己の性質は装備品へ流すよ

ゴブリンと人間を引き離すことを最優先に立ち回る
ゴブリンのみを槍で[串刺し]、或いは〈ヘヴィクロスボウ〉に〈宵鷲の鉤爪〉を連結しワイヤーを絡め纏めて引きずり落とす

もし二者の生命力が共有されたならば
エイミーのUCでその繋がりを断ち切ることは出来ないだろうか
俺もUCを発動し攻撃、ゴブリンのみに有効な攻撃を

解放された人間には手を差し伸べ立ち上がらせる
頑張ったな、もう大丈夫だ




「またよろしく頼むよ」
「はい。宜しくお願いします」
 群竜大陸では助けた者と助けられた者が、今回は肩を並べる共闘関係として。
 エイミーと鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)は軽く言葉を交わし、そして同じ方向へと向き直る。
 視界には虐げてきた人々に跨る歪な腕持つゴブリンたち。結構、と相馬は喉を鳴らした。
「虐げる愉悦を味わう為には自らの戦力低下も厭わない、か」
「ァ? お前馬鹿か?」
 わざわざ特別な力も持たない一般人を、それも弱らせた状態で生命力共有の術を施す。相馬にしてみれば効率の悪い戦術としか思えなかったが、当のゴブリン達はそうは受け止めていないらしい。
 ゴブリンの駆る人間が地を踏みしめ、相馬へと飛び掛かる。意志に反して動かされる『前脚』の関節がみちりと音を立てた。
 振り下ろされた腕を、相馬の槍が受け止める。紺青の炎が衝撃でぶわりと舞ったが、それがゴブリンを灼く事はなかった。
「ほらよ、現にテメェ、手も足も出なくなってるだろ」
 耳元まで裂けた口が醜悪に歪む。笑ったのだろう。
「俺を殺せるか? こいつを見殺しにして? なぁ正義の猟兵さんよォ!」
「――正義、か」
 随分と馴染みの薄い言葉を聞いたものだと相馬は思う。相馬の心を満たすのは色濃い己の性質そのものだ。
 嗜虐の性分。跡形もなく潰し尽くして蹂躙したくなる。そして今は、その本性を遠慮なくぶつけられる相手がいる。
 心と力の奔流を、暴走してしまう前に紺青の炎として安定させながら、相馬は肩越しに後ろを振り返る。
「エイミー」
「はいっ」
 神の裁き。狙い違えぬ天からの光が狙うのは、ゴブリンと人質の『繋がり』だ。
 鎖が割れるような音がして、人質の背からゴブリンが弾き飛ばされる。
「んなッ!?」
 成程、大天使の力で強化されているといっても所詮ゴブリン。生命力の共有といってもその繋がりは物理的で単純なものであるらしい。
(「これならワイヤーで無理やり引きはがすという手も通じただろうな」)
 しかしその役目はエイミーが担ってくれた。なら自分はその後を継ごう。
 加護を失ったゴブリンの身体が、相馬の身体や槍から排出される炎に包まれていく。
 最初は身を焼かれる熱さに絶叫していたゴブリンが、やがて胸元を掻き毟り苦しみ出す。内部まで到達した冥府の炎はその心に深い棘を突き立てるのだ。
「それはお前の今まで話した言葉に反応して鋭さを増す」
 泣き喚くゴブリンの口からは命乞いの言葉さえも漏れ出していたが、意にも介さず相馬は告げた。
「何者も閻魔王を欺くことなど、出来はしない」
 人々に欺瞞や侮蔑を向け続けていたゴブリンは、己自身の裡にあるものに喰い潰されるようにして絶命した。

「――頑張ったな、もう大丈夫だ」
 解放された人間に手を差し伸べる相馬。ゴブリンと対峙した時と変わらぬ薄い表情のままだったが、纏う雰囲気は幾分柔らかい。
「……あ、りがとう……」
 消え入りそうな声で礼を云いながら、人質だった男性は相馬の手を取る。
 痩せて骨の目立つ手を優しく握って立たせながらも、相馬は主を失ったアジトに迫る者の気配を感じ取っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『黒輪竜』メランシオン』

POW   :    消え失せろ、愚物共!
【天覆う無数の黒輪に収束する極大エネルギー】を向けた対象に、【超広範囲を破壊し尽くす豪雨の如き魔弾】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    我が黒輪に刃向かう愚か者が!
【対象を追跡するレベル×20個の暗黒の輪】【対象の戦意を喪失させる暗黒のブレス】【体に吸着する超高重量高密度の黒い砂礫】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    緩やかに死に逝け、定命の者たちよ。
非戦闘行為に没頭している間、自身の【無数の黒輪が天を覆い、降り注ぐ黒の雨】が【当たった対象を呪詛で侵食する。その間】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アイン・セラフィナイトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「嗚呼、あの小鬼共。ブラキエル様より賜った力を活かしきれぬとは。何という役立たずだ……!」
 低く地を這うような聲。アジトの外にいたのは、黒と白の二体のオブリビオン達だった。
 白き者は此度の騒動を引き起こした張本人。大天使ブラキエル。
 そして黒き者は竜だった。周囲を漂う黒輪から禍々しいオーラを放つ、破壊者の頂点たる竜。全身を覆う鱗は大天使の光を受けて鈍く輝き、その強度を物語っている。
 そして、更に。
 大天使の光を受けたところから、その姿が白銀の鎧で覆われていくではないか。
「嗚呼――我の力とこの鎧があれば、定命の者など……!」
 竜は勝ち誇ったように吼え、そして大天使へとこうべを垂れる。
「ここは我にお任せ下さいませ。ブラキエル様は次なる地に災厄を」
「過信は禁物だ、メランシオン」
 大天使は静かに告げる。
「お前が討たれたら我は戻る。しくじるな」
「は」
 姿を眩ませるブラキエルに、メランシオンと呼ばれた竜は最後まで頭を下げたままだった。
 ――旧い言い伝え。その示すところを知る者は、伝承にも残るその竜の振る舞いに驚愕した事だろう。

『空に黒い輪状の雲が出たらすぐに逃げろ』

 それは『黒輪竜』メランシオンの黒輪。全てを蹂躙し破壊する高エネルギーの集合体。
 莫大な力に相応しく、その者は暴虐と尊大が竜を模っているかのような性質を持つのだという。――だが。
「今ではブラキエル様こそが最強たる破壊者。我はそれを担う矛であり、盾である」
 竜が全身を包む鎧を誇示するかのように胸を張った。尊大なる破壊者は、その力を遺憾無く発揮する為ブラキエルの配下となる道を選んだということか。
「七大元素が一つであり、ブラキエル様が司る『絶対物質』ブラキオン。どんな禁呪であろうと、或いは下らぬ奇跡であろうと、これで出来た鎧を打ち砕くことなど出来はしない。故に貴様らがあの方の元に辿り着く時は、未来永劫、訪れぬ」
 それでも歯向かうのならば。
「愚か者たちよ。我が黒輪の餌食となるがいい」


 第二章はボス戦であり、ブラキエルの最強の腹心である『『黒輪竜』メランシオン』との戦いです。
 膨大な破壊の力と、その力が精神となったような暴虐さを誇る竜ですが、更にブラキエルの鎧を纏っています。この鎧は『絶対に破壊できません』。チートですね。
 マスターさんの猟書家シナリオ執筆状況によってはプレイングボーナスが入る場合もございますが、当シナリオでは一切ありません。
 メランシオンを倒すための有効な方法はただひとつ。「鎧の僅かな隙間を狙う」ことです。
 未知なる物質ではありますが、鎧なので繋ぎ目はあります。色々工夫してみてくださいませ。
 相手は強敵。エイミー達クレリックは足手まといになってしまう可能性が高いでしょう。基本的には囚われていた人達を安全に匿ったり、あるいは街へ連れていったりして離脱しているものとします。

●プレイング募集について
 5/15(土)朝8:31~募集開始です。締め切りは後日。
ビスマス・テルマール
あのオブリビオン、見覚えがあると思ったら……クロガさんと出会った所で遭遇した

『アレとは別個体だロうな……上目線なのはカワらんガ鎧も含めてタチがワルい』

●POW
『早業』でUC攻撃力重視発動

【イカドリルロケットビット】を半数は『オーラ防御&属性攻撃(反射)』込め展開『砲撃&レーザー射撃』の『範囲攻撃&弾幕&一斉発射』放ちビットに乱反射

『空中戦&推力移動』で撹乱

『第六感&瞬間思考力』で『見切り』『残像』回避とビットを『念動力』操作『盾受け』

残り半数のビットに『属性攻撃(液化)』込め鎧の隙間狙い

クロガさんに【光学烏賊螺旋ロケット】を接続し隙間に『鎧無視攻撃&貫通攻撃』を発射

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


ゴッド・ゴッダー
ブラキエルのペットのトカゲか!
さあて先程の小鬼どもとどちらが強いのかの?
いずれにせよ大した差ではなかろうて!
この神の前ではな!!

納得できん様じゃな?
されば見せてやろう!このワシが如何に圧倒的な存在かという事をな!
暗黒の輪とブレスと砂礫はあえて避けずに全弾受ける!
で…戦意を喪失?トカゲ如きに、このワシが戦意など抱くとでも?
あえて言うならワシのこれは戦意ではなく神意よ!
喪失するもヘッタクレもないわい!
攻撃力を減らすぅ~?
その程度、貴様とワシではハンデにもならぬ!
思い上がりも甚だしいわ!
貴様如き、ユーベルコードを使うまでもない!
お望み通り鎧の隙間に神の杖を突き刺し、天から地へと叩きつけてくれようぞ!


リューイン・ランサード
怖くて強そうな竜のくせに不壊の鎧着ているとか、ずっこい!
等とグチっていても解決しないので頑張ります…怖いけど。

まずは豪雨の如き魔弾を防ぐ。
結界術で自身の周囲に防御結界を張り、ビームシールドで盾受けし、オーラ防御を身に纏う三重の防御で臨む。

自分の翼で飛びつつ仙術による分身創造で幻惑し、第六感・見切りで敵の視界を把握し、限界突破したスピードと空中戦で敵の視界外に移動し続ける巧みな移動で接近。

何とか敵の背後を取り、2回攻撃の1回目で、エーテルソードを鎧の隙間にグサッと貫通攻撃しつつのUC使用で魂を貫く。
2回攻撃の2回目で、突き刺したエーテルソードを起点に闇の属性攻撃を内部に放って精神を砕きます!




「あのオブリビオン、見覚えがあると思ったら……クロガさんと出会った所で遭遇した」
 ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)の言葉に、クロガと呼ばれたグラサン針鼠のクロガも頷く。
『アレとは別個体だロうな……上目線なのはカワらんガ鎧も含めてタチがワルい』
「怖くて強そうな竜のくせに不壊の鎧着ているとか、ずっこい!」
 思わず率直な不満を述べてしまうリューイン・ランサード(竜の雛・f13950)は、鎧越しにメランシオンにねめつけられてひゃっと身を竦めた。
「ふん。我らが同胞を与し、戦役を制した猟兵が聞いて飽きれるわ。随分な小物が紛れていると見える」
 メランシオンの周囲を漂う黒輪が、天へと舞い上がる。無数の黒輪が一斉に禍々しく光り、豪雨の如き魔弾が辺り一面に降り注いだ。
「無敵の防具にこの攻撃範囲と威力ってやっぱりチートじゃないですか!!」
 ちょっぴり涙目になりながらも、リューインは取るべき動作を的確に選び取っていた。自身の周囲に防御結界を張り巡らせ、それを突破してきた魔弾は滞空するビームシールドが弾き飛ばす。それさえも潜り抜けてきた魔弾の衝撃は、身に纏うオーラの鎧が和らげていった。
(「――っ、ここまでしてようやく往なせるってところですね」)
 三重の防御は、並の相手ならば攻撃を殆ど無視できるほどに強固なものだ。それでも脇腹を掠めていった魔弾のダメージに一瞬息が詰まる。
『何テ破壊力だ、ダガ防戦一方では押し負ケルぞ』
「こちらも畳みかけましょう!」
 ――Namerou Hearts Squeese !
 ビスマスが纏うのはイカ型鎧装ナメロウスクイーゼ。その周囲を飛び舞うのは、鎧装と同じくイカの形をしたその名も『イカドリルロケットビット』たち。鋭い胴部――余談だがあれは胴である――を最大の武器に、強化装甲にすら穴を開ける攻撃重視形態。
 反射の属性込めたオーラを乗せ、ビスマスが砲撃やレーザー射撃を繰り出せば、あちこちに乱反射する弾幕が黒輪の狙いを搔き乱す。
 弾幕を味方につけつつ、更に仙術によって自らの分身を編み出し四重、五重の防御を取ったリューインが魔弾を掻い潜りながら空を駆ける。メランシオンに迫るリューインの視界の隅、魔弾が大地に刻み込んだ大穴が見えた。
「こんなに強いなら最初のゴブリン必要なくなかったですか? わざわざあいつらに手を貸すとか、大天使は悪趣味にも程があります!」
「口が減らぬ小童だな。よほど消し炭にされたいと見える」
 黒輪の中心が、銃口のようにリューインへと向けられる。ごくり、とリューインが唾を呑んだその時。
「口が減らぬのは貴様の方だ! ブラキエルのペットのトカゲがよくもそう大口を叩けるものだな!」
 砲撃と魔弾が絶え間なく轟音を立てる戦場の中にあっても、ひときわ響く聲。
「……なんだと?」
「先程の小鬼どもとどちらが強いのかの? いずれにせよ大した差ではなかろうて! この神の前ではな!」
 砲撃が男の背後で爆ぜ、男の頭上に宿る光輪を際立たせる。
 爆発が収まった頃、そこには杖を携えた筋骨隆々たる男性が立っていた。
 ――ゴッド・ゴッダー(ゴッデスト・f20871)。戯れに猟兵を名乗る、全知全能の神その人。


「神だと? ヴァルギリオスさえ見逃した愚か共でも、とうとうブラキエル様の力の前に天上界への扉を開く気になったか」
「はっ。それはあくまでこの世界における神々の問題。全宇宙を統べるワシが、わざわざ天使如きに行動を起こす道理はない。本来ならばな」
 竜はそれ以上の質問を重ねはしなかった。ただ黒輪だけがゴッドに向けられる。
「納得できん様じゃな? されば見せてやろう! このワシが如何に圧倒的な存在かという事をな!」
「よかろう。ならば貴様から――消え失せるがいい!」
 天覆う黒輪が一斉に火を噴いた。黒き豪雨が一斉にゴッドへと降り注ぐ。黒き光が炸裂し、硝煙が裂けたそこには。
 避けた大地の中心に、立派な白髪と白髭をたなびかせてゴッドが立っていた。
「あのおじいさん、回避や防御の術を使ったようには……」
『あア、見えなカッタな』
 メランシオンへとビットを向かわせながら、ビスマスとクロガが囁き合う。
「流石だ、人の子よ。どこぞのトカゲとは目の付け所が違うな」
「こ、こいつ……先程から破壊の具現たる我をトカゲなどと!」
 ならば、と黒燐から放たれる魔の光がその特性を変えてゆく。外なる破壊から内なる侵食へと。暗黒のブレスが燃え盛り、黒き砂礫が神の身体へと纏わりつく。
「手始めにその生意気な口を塞いでやろう。このブレスはありとあらゆる戦意を消失させ、この砂礫はいかなる物質よりも高き質量で貴様の動きを封じ、術の攻撃力を激減させる!」
「せ・ん・い~?? フン、そんなもの、元から持ち合わせてはおらん」
 神の杖と輪が光り輝くと同時、ブレスも砂礫も跡形もなく消え失せていった。
「トカゲ如きに抱く戦意などない! あえて言うならこれは神意! そして攻撃力を減らすなど……貴様とワシではハンデにすらならぬ!」
「なん、だと……?」
「もう少しハンデを呉れてやろうか。貴様如き――ユーベルコードを使うまでもない!」
 光り輝く杖の切っ先が、鎧の隙間へと突き刺さる。
 空駆ける竜は堕天の如く、地へと墜ちていく。

「て、敵がムチャクチャだと思ってたら味方はもっとムチャクチャだった……」
 リューインは地へ落ちるメランシオンを追うのもしばし忘れ、あんぐりと口を開けていた。自分もそれなりにインパクトのある方々を呼び出していたのはすっかり棚に上げている。
(「こんなムチャクチャな人がいる中で名を上げろとか、やっぱり僕の家はスパルタすぎるんじゃないでしょうか」)
 それでも実家には帰れないし、何より一度請け負うと決めた仕事を放棄するほどヘタレているつもりもない。いやそもそもヘタレじゃないし。周りが規格外なだけだし。
 云いたい事は山ほどあれど、リューインは翼を翻し自らも急降下する。神の一撃を受けて落ちる竜よりも早く。狙うはその背面。
「こぞ、う――!」
 再び黒輪を向けようとする竜だが、距離が近すぎ、そして自らの体勢が不安定すぎて狙いが定まらない。
「その首――頂きます!」
 霊力込めたエーテルソードが鎧の隙間に深々と突き刺さる。内部に根を張り、魂を喰らう一撃。
 一度引き抜き、刻まれた孔を広げるように再度突き刺す。清冽な清水の如き蒼光が竜の鱗のごとき黒に染まり、魂に穿たれた孔から広がってはその精神を破壊していく。
「ぐッ、貴様、ら……我を、舐めるな!」
「そちらこそ、わたし達を舐めないで欲しいですね!」
 ビスマスのロケットビットたちが迫る。ドリルのようにきりもみ回転し突撃するイカの先端には液状化の力。
「クロガさん!!」
『あア、任セロ!!』
 鎧の隙間から突き刺さるビットたちがその鱗を軟体化させ、更にクロガに接続・発射された光学烏賊螺旋ロケットが追撃する。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フェルト・フィルファーデン
今度は竜……これでまだ猟書家が後ろに控えているのだから、厄介なものね。
だとしても、ここで退くわけにはいかないの。さあ、覚悟なさい!

あの攻撃、下手に当たればそれだけで終わりね……ここはまず躱し防ぐ事に専念しましょう。UCによる高速演算で敵の行動を予測。攻撃の軌道を読み対処するわ。黒輪は体躯を活かし輪の中を潜り、ブレスは顔の向きから吐く前兆を読んで回避。砂礫は距離を取る事で極力接触を避けましょう。

そして隙を見て攻撃に転じるわ。騎士人形の弓矢で鎧の継目を狙う……
と、見せかける事でそちらに注意を集中させる。
真の狙い、それは鎧で覆えないその瞳。継目を狙う無数の矢を隠れ蓑に、確実に射抜いてみせるわ!




「ぬぅ……我らが同胞を討ち、戦役を終わらせた猟兵の名は飾りではないようだな」
 鎧の隙間から竜の身体に刻み込まれた傷。血の代わりに流れ出る暗黒エネルギーを撒き散らしながら、竜は黒輪に力を注いでいく。
 天から裁きの雨を降らせていた黒輪が分裂し、何百何千の小さな輪となって地上を駈け廻る。
 意志を持っているかのように自在に飛び交うチャクラムのような輪を掻い潜るフェルト・フィルファーデン(糸遣いの煌燿戦姫・f01031)。プラチナブロンドの髪の周囲、ちりりと雷のような光が迸る。意識の一部を電脳空間に繋げる事で、無数の黒輪を躱し続けていた。
(「下手に当たればそれだけで終わり……厄介なものね」)
 ゴブリンの群れを往なした直後、これだ。その上、後ろに猟書家まで控えているのだから始末に負えない。だが帝竜が滅び、完全なる平和とはいかずともひとつの区切りを迎えられたはずのこの地に、このような災厄があってはならない。
「逃げ回るだけか? 愚か者よ」
 竜はせせら笑うが、ヒュンヒュンと空気を裂く音と共に繰り出す黒燐はフェルトの髪一本捉えられていない。ならば、と動きを封じる黒い砂礫を降り注がせ、身を翻して避けるフェルトを挟み撃ちにするように暗黒のブレスを畳みかける。
「だとしても、わたしは、ここで退くわけにはいかないの――!」
 電脳空間を介して状況を把握し続けるフェルトには、まるで未来視のような正確さで竜の行動を読み取っていた。砂礫を繰り出す竜の目線。ブレスを吐く時の首の動き。その範囲内では、いかなる高軌道でも逃げ切る事は不可能だろう。
 だからフェルトは金の妖精羽をはためかせ、大きく旋回する事で竜の間合いから逃れる。同時にフェルトも攻撃の機会を失ったかのように見えるが、彼女には頼もしい『仲間たち』がいる。
「みんな、力を貸して! 鎧の継ぎ目が見えたわ。右肩が最も守りが薄い!」
 総勢十体の騎士人形たちが、それぞれの弓矢を構えて鎧の隙間を狙う。
「その程度の小さな弓矢、鎧の隙間を掻い潜られようと我の鱗を貫けるわけがない!」
 竜が哄笑し、騎士人形へと黒輪を差し向ける。個性豊かだが皆一様に亡国を慕い、忠義を尽くしていた彼らは、強大な悪に怯む事無く矢を繰り出した。
 矢が鎧に阻まれ、黒き鱗に阻まれる。勝ち誇ったかのように笑う竜によって、無数の黒輪が彼らに襲い掛かる――。
「……っ、は」
 その黒輪が空中で静止する。直後、からからと音を立てて地面に落ちた。
 メランシオンが震える手で貌を覆う。白き鎧の中、あかく燃える眸に、騎士人形の矢が深々と突き刺さっていた。
「貴様、初めからこれを狙って……!」
「どんなに鎧が立派でも、視界を全部覆うわけにはいかないでしょう?」
 そしてどんなに屈強なる魔物でも、眼球の強度というものはたかが知れている。
「力に溺れる者は足元を掬われるのよ。大きなドラゴンさん」

大成功 🔵​🔵​🔵​

地籠・陵也
【アドリブ連携歓迎】
ドス黒い"穢れ"が渦巻いている……絶対に止めないと!

無敵の鎧だからって環境の変化から完全に装備者を護れるとは限らないハズだ。
【指定UC】と風の【属性攻撃】を【高速・多重詠唱】で使用するぞ。
【範囲攻撃】の応用で可能な限り広範囲を冷気で包んで極限まで気温を下げていく。
あくまで「気温を下げている」だけで「攻撃しているワケじゃない」し、生命維持が不要なだけで気温による体温の低下による支障は出るハズ(【継続ダメージ】)だ!
気温変化は俺は【氷結・環境耐性】で、仲間は【オーラ防御・結界術】でカバー。
呪詛は片っ端から【浄化】して、少しでも奴を弱らせてみんなの攻撃が通りやすいように支援する!


御園・桜花
非戦闘行為をさせないため制圧射撃で敵の行動を邪魔する
他の仲間や自分の行動で敵の非戦闘行為を邪魔できたらUC「桜吹雪」
鎧の隙間の仲間で入り込んだ桜の花びらで敵を一気に切り裂く

UC使用後は高速・多重詠唱で歌に破魔の属性乗せて歌い、敵の集中を乱す戦法に切り替え
他の仲間の攻撃補助にシフトする
敵の攻撃は第六感や見切りで躱し呪詛耐性で耐える

「人の褌で相撲を取る、という言葉がありますけれど。貴方は、その鎧がない方が強かったかもしれません。その与えられた鎧に対する依存と慢心が、貴方を打ち倒したのです。それを悔しいと思うなら…骸の海にお戻りになられてからも、再度の顕現、転生を願われますよう」
最後は鎮魂歌歌い送る


鍋島・小百合子
WIZ重視
他の猟兵との連携可

エイミー殿らはすでに離脱できたか
ならばわらわはこの竜を討滅するのみぞ

「身を包んだ鎧を崩せぬのであれば鎧の隙間を穿つまでじゃ」
UC「煙人間変化」発動
体を煙状に変化させ、風に乗るように飛翔しては撹乱しつつまとわりつくように接敵
敵の黒雨を煙体でやり過ごし(被弾に備え呪詛耐性込み)、敵の纏う鎧の隙間を見つけては小太刀で切り込みをかけ串刺しに処す(遊撃、鎧砕き、咄嗟の一撃、部位破壊併用)
接敵困難の場合は戦場内を煙体で駆けつつ黒雨を凌げそうな場から長弓に矢劇薬を塗布した矢を番いて鎧の隙間を狙撃(視力、スナイパー、毒使い、マヒ攻撃、継続ダメージ、猟兵との連携時には援護射撃併用)




「我に歯向かうか。ならば緩やかに死に逝け、定命の者たちよ」
 竜の力が、その特性を変化させていく。大地を裂き、生命を喰らい尽くしていた黒輪は再び宙に浮かび、黒き雨を己の爪痕残る地上へと降り注がせる。
 呪詛の雨が降り注ぐ間、竜はそれ以上の手出しが出来ない。その必要も無い。
 竜に害意を持つ者の刃は、竜に届くことはないのだから。

「なんて強い“穢れ”だ……」
 地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)が貌を顰める。穢れを感知し浄化する力を持つ陵也は、竜の呪詛に宿るそれを人一倍敏感に感じ取ってしまう。
「ドス黒い“穢れ”が渦巻いている……絶対に止めないと!」
「エイミー殿らはすでに離脱できたようじゃな」
 鍋島・小百合子(朱舞の女丈夫・f04799)が表情を引き締めたまま、どこかほっとしたように息を吐く。クレリック達ならまだしも、傷つき弱った元人質たちはこの呪詛を浴びるだけでも命を失いかねない。大地を穢し、生命を蝕む雨だ。
「ならばわらわ達でこの竜を討滅するのみぞ」
「身の程知らずの人間どもよ。この雨を掻い潜ったとて、貴様らに明日はない」
 長い身体を畳むようにして、竜が大地に腰掛ける。傷ついた眸を庇いながらも、もう一方の目線が静かに猟兵達を見据えていた。
(「……身体が、重い」)
 黒い雨に打たれる御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)もまた、その力のその身で感じていた。全身が鉛にでもなってしまったかのようだ。桜の化身たる全身を浸し、しみ込んでいく毒の雨。
「私は影朧たちを導く桜。この程度では枯れません。ですがあまり時間をかけてはいられませんね」
 痺れる両手を奮い立たせ、軽機関銃を構える。
「無駄だ」
 あらゆる攻撃を遮断する竜の力に弾かれても、桜花は攻撃の手を止めない。
 狙いはメランシオンを傷付けることではない。何とか敵に戦闘行動を行わせ、絶対防御を崩すこと。
「大天使とやらの威光を借りて君臨する貴様が、果たして本当にわらわ達の攻撃を防ぎきれるかの?」
 小百合子の身体が煙のように変化していく。叩きつけるような雨をものともせず、風に乗るように飛翔しては竜の貌にまとわりつき、その集中を妨害する。
 煙となって広がる身体は、雨に乗る呪詛も和らげている。竜は絶対防御の力を得る代わり、いかに近づかれようと攻撃動作を取ることが出来ない。小百合子は竜の鎧の隙間を見付ける度に小太刀で切り込み、竜の鱗を串刺しにする。
 銃弾も斬撃も、竜の身体に傷一つつけることは出来ない。その間にも雨は降り注ぎ、猟兵たちの身体を蝕んでいく。
「攻撃が駄目なら環境の変化はどうだ? 鎧が『悪天候』から装備者を護りきれるとは限らないハズだ」
 陵也が展開するのは霧氷侵蝕。あらゆる熱を食いつぶす冷気が竜の周囲を満たして行く。
「雨を凍らせるつもりか?」
 竜が天を仰ぐ。呪詛の雨は変わらず降り注いでいた。
「愚か者め。たとえ絶対零度とて、我の呪詛は防げぬ」
「そうか。けど本体はどうかな?」
 竜が己自身に向けた力は『外部からの攻撃を遮断し』、『生命維持を必要としなくなる』力だ。だが直接傷をつけたり体力を奪う事は出来ずとも、悪天候の影響そのものを完全に無視する事など出来はしまい。
 竜の鎧がうっすらと氷を纏い、きらきらと光るのを陵也は見逃さなかった。
 加えて陵也は己自身の培った耐性と、仲間たちにはオーラでの障壁を纏わせることで凍えるほどの寒さから身を護っている。障壁には陵也特有の力、つまり穢れを浄化する力も乗せ、竜の呪詛をも和らげていた。
「助かります、陵也さん」
「けど穢れが強すぎて浄化が追い付かない。このままじゃじり貧だ」
「その前に竜を討てばよいということじゃな」
 竜は変わらず悠然と、猟兵達を見下ろすばかり。
 だが桜花も、小百合子も、そして陵也も、呪詛の雨を乗り越えた先の勝利を確かに見据え続けていた。


 何度目かの斬撃が竜の表皮を擽り、機銃掃射が降り注ぐ。
 ただじっと腰を据え、猟兵の攻撃を受け止めながら雨を降らせ続ける竜が、ちいさくその身体を震わせた。
「寒そうですね。ドラゴンさん」
「蜥蜴のようなものじゃ、寒さへの耐性は低いのじゃろう」
 体力を奪う事こそ出来ずとも、強烈な寒さは集中力を奪い、思考力を低下させる。
 煙の身体で竜の視界を飛び回る小百合子に、うるさい羽虫を追い払うかのように竜が前脚を振り回した。――殆ど無意識だったのだろう。
「! しまっ……」
「とうとうわらわに手を下したな!」
 獲物を薙ぎ払った竜の方が目を剥き、煙の身体を風圧で吹き飛ばされた小百合子の方が笑みを浮かべた。煙はもくもくと集まり、大地に叩きつけられる直前に人の姿を取り戻す。両の足が確りと地面を踏みしめる頃、黒輪から降り注ぐ雨はぴたりと止んでいた。
「という事は――今なら攻撃が通る筈だ!」
「くっ!」
 再び絶対防御を張り巡らせようとする竜だが、護りを失った身体へと視界を覆い尽くす程の桜吹雪が襲い掛かる。
「ほころび届け、桜よ桜」
 無数の花弁が鎧の隙間から入り込み、その身体に傷を刻み込む。
「グオオオオオアアアアア!!」
 竜が片方だけの目を見開いて叫ぶ。
「如何に加護を失ったとて、このような花ごときが我を傷付けるなど……!?」
「俺の冷気がただの行動阻害だと思ったか?」
 浄化に向けていた分の力も全て冷気に注ぎながら、陵也が竜を見据える。
「急激に冷やされた物体は脆い。元が硬いからこそ、一旦罅が入ってしまえば崩すのは簡単になる」
 身もだえする竜目掛けて、真っ直ぐに矢が飛び込んできた。遠くへと飛ばされていた小百合子が放ったものだ。巨獣をも仕留める劇薬を塗り込めた矢が、距離をものともせず鎧の隙間を穿つ。
 誰よりも至近距離で竜を撹乱していた小百合子は、その間に鎧の隙間を的確に見定め、記憶していた。竜が攻撃に転じた時、ありったけの力を注げるように。
「我を傷付けた罪。愚弄した罪。その命で贖え、人間どもめ!」
 竜の爪が迫る。紙一重で躱しながら、桜花は吹雪を繰り出し続ける。
「人の褌で相撲を取る、という言葉がありますけれど。貴方は、その鎧がない方が強かったかもしれません」
 精神を搔き乱す歌に乗せた、挑発とすら思える言葉。竜はきつく桜花を睨みつけたが、桜花はいつものように柔らかく笑むだけだった。
「その与えられた鎧に対する依存と慢心が、貴方を打ち倒したのです。それを悔しいと思うなら……」
 桜花の目に、竜が尽くした破壊の光景が映る。大地には穴が開き、そこに降り注いだ雨はこの地からますます緑を奪っていく事だろう。
 それでも、桜花は願わずにはいられない。
「骸の海にお戻りになられてからも、再度の顕現、転生を願われますよう」
 出来ればその時は。心強い味方とまではいわずとも、こうして刃を向け合う仲でないといい。
「貴方にも――幻朧桜の加護がありますように」
 優しい鎮魂歌が、戦場を満たしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
❄花狼

救出した人々の避難をエイミーさんたちに任せ
ヴォルフと共にメランシオンに対峙
広範囲の破壊(ヴォルフが受けるPOW攻撃)に巻き込まれないよう
翼飛行で空を飛び第六感で見切り回避

どんな暗闇が覆うとも、人々を守ると決めた
この胸の勇気と覚悟は決して萎れることはない
禍々しい黒の奔流を激痛耐性、狂気耐性、オーラ防御で耐え抜いて
祈りと共にこの白い翼を眩き聖光に変え

――我、今こそ【光の人】となりて、絶望を払い世を照らす篝火とならん

強い光に照らされれば、鎧の継ぎ目の部分に僅かな影が出来るはず
ヴォルフ、あなたなら出来るわ
その剣で闇を打ち砕き、希望への道を切り開いて……!


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼

語るに落ちたな、黒輪竜
ブラキエルから借りた力を誇るということは、逆に言えば
己の力のみでは俺たちに勝つ自信がないことの裏返しだ
蜂の一刺しは巨獣をも倒す
並み居る帝竜たちを屠った猟兵の力を侮ったこと、後悔するがいい

魔弾にヘルガが巻き込まれぬよう自ら囮となりダッシュで接近
見切り回避し避けきれない分は激痛耐性で耐える

ヘルガのUCによる眩き光の光源は彼女の背中
彼女より前に出て光を直視しなければ俺の目は眩まず
逆に光を直視した敵の目を眩ませられる

集中力を研ぎ澄ませ敵の動きを注意深く観察
彼女が作ってくれた隙――光が照らす継ぎ目部分の影を狙い
鎧砕きの力を込め【剣魂一擲】

貴様が踏み躙ってきた人の力、思い知れ!




「語るに落ちたな、黒輪竜」
 地獄の炎さえも耐え抜く鉄塊剣を携え、ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)が告げる。
「なんだと……?」
「ブラキエルから借りた力を誇るということは、逆に言えば己の力のみでは俺たちに勝つ自信がないことの裏返しだ」
「いかなる障害も障壁も、わたくし達は乗り越えて来ました」
 言葉を続けながら、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)はエイミー達の気配が遠ざかっていくのを背に感じていた。神に仕える敬虔な彼女たちなら、きっと人質だった人々の未来を繋いでくれるだろうと安堵しながら。
「あの人たちのような、悲しい涙をなくすため――立ちはだかるのが強大な竜であろうと大天使であろうと、わたくし達は止まりません」
「は、我は通過点に過ぎぬと?」
 せせら笑う竜が黒輪を放つ。膨大な数のうちの半分は天に向かって豪雨の如き魔弾を放ち、半分は地を這って獲物を切り刻む丸刃となる。
 ヘルガとヴォルフガングはただ頷きあって駆けだした。ヘルガは翼を広げて空へ。ヴォルフガングは大地を踏みしめ地を走る。
 豪雨と黒輪の隙間を縫うように、白鳥が舞う。すぐそばを破滅の闇が轟いても、深い空色の眸がそれを見定めて身を翻す。
(「なんて禍々しい」)
 攻撃そのものは躱せても、込められた負のエネルギーが肌を撫ぜ、心まで侵食してくるようだった。がばりと開いた顎から放たれるブレスは、より直接的に精神を蝕もうとしてくる。戦意を奪うそれは、一瞬で辺りを焦土と化す魔弾よりも、全身を切り刻む暗黒の輪よりも、よほど恐ろしい。
 全身に張り巡らせたオーラの防御と、幾多の戦場を潜り抜けてきた精神力で、ヘルガは己を保ち続けた。
(「どんな暗闇が覆うとも、人々を護ると決めた」)
 同じ志を持つ人と共に、人々を照らす光であると誓った。
 この胸に宿る勇気と覚悟は、竜の吐息ひとつで消し飛ぶようなものではない。
「こっちだ。悪しき竜よ」
 ヴォルフガングは真っ向からメランシオンの元へと駆ける。雨のように降り注ぐ魔弾を剣で弾きながら。暗黒のエネルギー弾と鉄塊が真っ向からぶつかり、分散した力が己の身に降り注ぐことになろうと、ヴォルフガングは脚を止めなかった。
 振りかぶった剣は鎧によって阻まれる。叩き込まれる尾を大きく跳んで躱しながら、ヴォルフガングは再び竜へと距離を詰めた。
「無駄だ。この鎧は何びとたりとも壊せぬ」
「破壊の黒輪竜であっても、か? 大したものだな」
 今まさに竜の力に阻まれながらも懸命に戦っているヘルガに魔弾までもが向けられぬよう、ヴォルフガングは敢えて竜の神経を逆撫でする言葉を選び続けた。
 鎧の隙間を狙おうにも、竜は巨体に見合わぬ身のこなしで尾を、爪を繰り出してくる。
(「だが目星はついた。あとは踏み込む隙さえあれば」)
 ヴォルフガングの視界に影が落ちる。竜の手が小さき者を圧し潰そうと叩きつけられるところだった。転がりながら躱したそこへと、束ねられるようにして太さを増した魔弾が降り注ぐ。
「終わりだ」
 勝利を確信した竜が宣言する。だが、ヴォルフガングは焦りもせず静かにこちらを見据えてくるのみだった。
 竜が疑問を抱いた瞬間、エネルギーの束さえ掻き消すような強い光が空を満たした。
「!!」
 竜が咄嗟に眼を覆うが、強い光に灼かれた紅眼は眩み、何も映さなくなる。
「――我、今こそ【光の人】となりて、絶望を払い世を照らす篝火とならん」
 それはヘルガの光だった。どんな闇にも掻き消されぬ光。彼女の、いや、『彼女たち』の願いが実を結んだかのような力。
「グウッ!」
 視界を封じられながらも、竜は戦場を覆い尽くすほどの闇を行使する。空を覆う黒輪からの豪雨が、地上を這う刃が、暗黒のブレスが辺り一面を満たす。
 さながら世界の終わりのような光景の中を、ヘルガの光は絶えず照らし続けた。
 轟音の中、こちらに向かって駆けてくる足音がする。金属がこすれ合い軋む音。剣士が己に迫って来るのを察した竜は、持てる力すべてを足音の方角めがけて注ぎ込んだ。
 だが、足音は止まらない。ヘルガの光を背に受けながら進む姿は、絶望の世界に降り立った光の戦士の如く。
 強き光は強大たる竜の隙を生み、それからもう一つ、ヴォルフガングも見定めてきた鎧の隙間を煌々と照らし出す。
(「いつだって、俺の進むべき道はヘルガが示してくれた」)
「ヴォルフ、あなたなら出来るわ」
 遥か後方にいるはずのヘルガの聲が、確かに聞こえる。
「その剣で闇を打ち砕き、希望への道を切り開いて……!」
「ああ」
 近づく足音から逃れようと竜が身を翻すが、視界を奪われた動きは鈍い。大きく体勢を崩したところへ、ヴォルフガングの剣が振り翳された。
「貴様が踏み躙ってきた人の力、思い知れ!」
 武骨な剣が叩きつけられ、黒い体液を噴き出しながら竜が絶叫する。
 かの竜は知らなかったのだろうか。蜂の一刺しは巨獣をも倒す。
 大天使が危険視した『猟兵』は、並み居る帝竜たちを屠った存在なのだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
●POW
〈冥府の槍〉と〈ヘヴィクロスボウ〉を駆使し、脇や尻尾等鎧の繋ぎ目を狙った[カウンター]主体の攻撃法で行く
黒輪は攻撃の合図であるのを逆に利用
敵の攻撃の度に反撃を繰り返し、堅実に削ると同時に苛立たせ隙を生み出したい

天から黒輪が豪雨のように降り注ぐなら俺の姿もけぶってしまうだろう
[結界術]の障壁を必要最低限の大きさで頭上に展開しながら[ダッシュ]で敵の懐へ一気に接近
振り払う動きを[見切り]白鎧の間から見える黒鱗を補足、[怪力]で槍の刃先を差し込んで抉り込ませる
鱗の破壊される感触に即UC発動を繋げよう

逃げろと言い伝えられているのなら今まで相当暴れたんだろうな
閻魔王に全ての行いを清算して貰え


ユーフィ・バウム
鎧の僅かな隙間、狙ってみせましょう
【勇気】【覚悟】はあります、恐れることはない

敵の魔弾の猛攻には、
避けずに風の【属性攻撃】を宿す武器での
【なぎ払い】【衝撃波】で相殺を狙います
凌ぎれないものは【オーラ防御】で弾き、
とにかく受けに回らず間合いを詰めていく

敵の攻撃が止んだら――
【ダッシュ】【ジャンプ】で猛然と迫り
乾坤一擲!鎧の僅かな隙間を――繋ぎ目を【見切り】、
そこに【鎧砕き】の一撃をねじ込みますっ!

鎧を砕くことに成功したなら、
もう間合いは取らせないと【グラップル】で抑え、
【功夫】【暴力】と打撃を叩き込んでいきます!

動きが止まったら、決めます
必殺の一撃!【力溜め】た《麗掌破魂杭》を
めりませますよっ!


パウル・ブラフマン
どもー!エイリアンツアーズでっす☆
愛機Glanzで【騎乗突撃】カマしちゃうよ♪

敵の攻撃に被弾しそうな猟兵さんが居たら
真っ先に救援に向かうね!
後部座席へのご搭乗はいつだって大歓迎☆

暗黒の輪だのブレスだのは
鍛え上げた【運転】テクを駆使して躱したいな。
砂礫は車体前面へFaustを展開させ、回避を試みよう。

鎧の隙間を狙うんだっけ?
なら近付いた方が分かりやすいよね♪
輪を引き付けた状態でワザと敵前へ猛【ダッシュ】。
オラオラ自分の輪っかに轢かれちまえ!

煽りつつ、接触直前に前輪を上げて【ジャンプ】。
空中(至近距離)から
UCで威力マシマシのKrakeによる
全砲【一斉発射】を隙間へ狙い澄ませてお見舞いしちゃうゾ☆




 大地を消滅させるほどの極大エネルギーが炸裂する。
 戦場を駆ける鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)のすぐ後ろで地面がひしゃげ、砂塵が舞った。
(「確かに強力だが、狙いは大雑把だ」)
 天からの狙撃という点では、先程まで力を貸してくれていたクレリックと性質が近い。――だが。
 神経を集中させ、黒輪の動きを読み解けば、回避し続ける事もそれほど困難ではない。敢えて動きを止め、魔弾を集中させた上で躱してやれば、メランシオンへ距離を詰める事も容易かった。
 冥府の槍が唸り、竜の尻尾を打つ。鎧の隙間から叩き込むが手応えは浅い。
 尻尾がぶんと振られ、相馬は身を引く。そこへ容赦なく豪雨が迫る。
「ちょこまかと……!」
 竜の声音に浮かぶ苛立ちを、相馬ははっきりと感じ取った。強固な鎧の割に、随分と精神の方は脆いように見える。
「破壊の竜というのは、つまり一匹の獲物を仕留めるのに辺り一帯を消滅させるほどに狙いが不正確なんだな。一発を必ず当てられるエイミー達の方が余程敵に回ったら厄介そうだ」
「おのれ! 我が脆弱な人間以下だと!? どこまで愚弄すれば気が済むのだ……!」
 竜の黒輪は一層禍々しく輝き、黒と赤に明滅するエネルギー弾はより激しく降り注ぐ。その一方で、狙いそのものもますます不正確になっていく。
 全く、与しやすいことこの上ない。今度は先程のようにダッシュで距離を詰めると見せかけ、ヘヴィクロスボウで脇を狙撃してやった。
「ガアアアアア……!」
 孤軍奮闘する相馬の視界、ちかりと何かが瞬いた。竜の持つ力に比べればあまりに頼りない光が強まり、中から人影が飛び出してくる。
「どもー! エイリアンツアーズでっす☆」
 律儀に挨拶も忘れない、旅行会社の運転手パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)。彼が跨る白銀の宇宙バイクGlanzの後部座席には、健康的に日焼けした空色の眸持つ少女が騎乗していた。ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)だ。
「助かります、パウルさん。わたしが得意とする肉弾戦に持ち込むには、あの猛撃を掻い潜る必要がありますから」
「困ったときはお互い様ってね! ユーフィちゃんのヘヴィな一撃、期待してるよ☆」
 暗黒の輪が新たな敵へと狙いを定め、地上を鋭利なチャクラムのように駆け巡る。
「行くよ――Glanz!」
 パウルの言葉に応えるように、白銀のバイクも唸りをあげる。縦横無尽に攻撃を掻い潜る様は、操縦というよりも愛機と一体化しているかのようだった。
 焦れたメランシオンは再び黒輪を天に掲げ、雨を降らせる。
「おっ、と」
 回避行動を取ろうとしたパウルよりも早く、ユーフィが動いた。
「はあッ!!」
 悪魔の名を冠した大型武器が振り翳され、風が吹き荒れる。重く鋭い薙ぎ払いは、極大なる暗黒エネルギーも吹き飛ばしていった。
「この程度の雨。密林に降るスコールの方がよっぽど激しいです」
「ユーフィちゃん、ありがと!」
「困ったときはお互い様、ですもんねっ」
 豪雨が砂漠を叩き、猟兵達の姿をけぶらせる。地獄のような光景の中を掻い潜って来る影に、竜は低く唸った。ひとつとふたつ、狙いを定めるように目線を遣り、そして後者へと再び黒輪の刃を飛ばす。
「パウルさん、あとは私が行きます!」
「よっしゃ、お願いね!」
 ユーフィが奔るバイクから身を起こし、跳びあがった。肩にある鎧の隙間目掛け、高く高く。
「私が……蛮人がお相手しましょう!!」
 ――乾坤一擲! 差し向けられた攻撃を薙ぎ払いながら、大きく振りかぶった一撃を叩き込む。
「グゥッ……!」
 岩をも砕く拳でも、『絶対物質』の鎧を破るには至らない。だが竜の方はそうもいかず、剥がれた鱗を飛び散らせながら大きく体勢を崩した。傷口から噴水のように溢れる暗黒エネルギーを躱しながらも、ユーフィはメランシオンの身体から離れようとはしなかった。
「クソッ、小娘、離せ……!」
「わたしは蛮人。一度間合いに入った相手は絶対に逃がしません!」
 肩には銀髪の少女が、尾には一角の羅刹が、それぞれ隙間を目ざとく見つけて攻撃を叩き込んでくる。振り払うように暴れても、彼らはすぐに喰らいついてくる。

「動きがますます鈍ってきたな」
 頭上に降る雨を結界術で和らげながら、相馬が低く呟いた。取るに足らないものだと竜が見做していた相馬の攻撃は、何度も繰り返す事によってその尾に決して浅くない傷を刻み込んでいる。
『格下』を振り払えず積み重なるダメージ。傲岸な竜にはさぞ屈辱的だろう。そして絶好のタイミングで相馬は次の動作に移る。
 白鎧の間の黒鱗。脆くなったそこへと力強く槍を突き立てる。竜が振り払おうと藻掻く隙も与えず、己や槍から流れ出る冥府の炎を注ぎ込んでいく。
 ――炮烙棘。一度穿たれた黒楔は、持ち主が命ずるまで二度と外れることはない。
 それだけでも、耐え難い疼痛を与えるものだ。更に突き刺さったところから炎が広がる。竜の体内を包み込むように駆け巡る。
「逃げろと言い伝えられているのなら今まで相当暴れたんだろうな」
 広がる炎が竜の隅々まで行き渡るその時まで、相馬はもだえ苦しむ竜を見上げていた。
「馬鹿な、こんな力を隠し持って……!」
「閻魔王に全ての行いを清算して貰え」
 ――体内を巡る冥府の炎が一斉に破裂し、竜の黒と白の身体を蒼い火柱が覆い尽くした。

「おのれ、おのれっ!」
 蒼炎に身を焦がされながら竜がわめき、黒輪を繰り出す。その狙いを阻害するように、パウルとGlanzがジグザグの軌道を描きながら竜へと迫る。
「オレを忘れてない? ただの運転手だと思ったら大間違いですぞ☆」
 じゃきりと音を立て、腰部から伸びる海色の触手たちが砲台を構える。狙い定めて四方八方から迫る黒輪を、パウルは避けなかった。
 かわりに一段とスピードを上げたGlanzがそれらを振り切って竜に突っ込み、衝突の寸前で大きく軌道を変える。黒輪は追い付くことも出来ず、主人へとその刃を向ける事になる。
「オラオラ自分の輪っかに轢かれちまえ!」
 敵の攻撃を逆手にとった戦法。鎧の隙間に狙いを定める事は出来ないが、黒輪は何千と飛び交っているのだからその必要もない。鎧は全てを弾く事は出来ず、隙間に入り込んだ刃が竜自身を刻んでいった。
「自分の力も使いこなせないのに他人の威光を借りて威張り散らすなんて、マジでダッセェよね」
 仲間に向けるそれとは打って変わった凶悪な笑み。前輪を上げ、大きく跳んだパウルが今度こそ砲台を一斉に構える。
 炸裂音。竜の身体が大きく傾ぐのに合わせ、ユーフィの拳が光り輝く。悪しき魂を打ち砕く拳。闇を貫く蛮勇の拳。
「これで――決めますっ!!! 麗掌、破魂杭!!!」
 小さな拳は、だからこそ何にも阻まれることなく竜の身体へと突き立てられる。
「グァ、ア、ア……!」
 鱗を砕き、めり込む拳に、竜の口から暗黒の血反吐が飛び散った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイン・セラフィナイト
…久しぶりだね、黒輪竜。
まさかキミが誰かに跪くなんて思わなかったよ。…ボクのかつての故郷を一瞬で蹂躙したその大罪、償ってもらうよ。

黒い雨に対しては『忌み断ちの魔導鏡』と『白鴉のマント』で『オーラ防御』してみよう。

あの時、またボクは独りになった。でも今は違う!

UC発動、四大よ、敵の超常を打ち砕け!『魔力溜め』『リミッター解除』の魔力の奔流を放って黒輪竜の絶対防御を砕いてみるよ。

あの時、ボクはただ絶望することしかできなかった。…キミを打ち破る力は、今ここにある。
『神羅』と『万象』に鎧の隙間を探し出してもらおう。
そこか!『全力魔法・属性攻撃』の魔弾を刃状にして放つよ!

(アドリブ等歓迎)




「人間どもが……我に逆らうなど、楯突くなど……!」
 傷口を抑えながら吼える『黒輪竜』メランシオンへと、静かに、けれど力強く歩を進める者があった。
「……久しぶりだね、黒輪竜」
 竜がゆるゆると貌を上げると、そこに立っていたのはまるで竜と対極にあるかのような少年だった。
 アイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)。光を宿した金色の双眸が、澄み渡る空のような髪の下で光っている。
「まさかキミが誰かに跪くなんて思わなかったよ。あの時のキミは、自分が世界に君臨する存在だと云わんばかりだった」
「小僧。……ああ。見覚えがあるぞ。仕留めそこなった小僧だ。あの時は不覚にも小娘如きに後れをとった」
 しゅうしゅうと竜がせせら笑った。
「して、その小僧が何をしに来た」
「キミを打ち破る。ボクのかつての故郷を一瞬で蹂躙したその大罪、償ってもらうよ」
「――はっ!」
 竜が天を仰ぐ。無数の黒輪が天を覆い尽くし、呪詛の雨を降らせていった。
「小僧が我を斃すだと。あの時ただ護られるだけだった小僧が」
 呪詛は竜の怒りを孕み、ますます濃度を上げて降り注ぐ。忌み断ちの魔導鏡が、魔力を込めた鋼糸と『万象』の羽で編まれたマントが、アインを蝕む呪詛を弾き飛ばした。
「そうだね。あの時のボクは弱かった。ボクを子供と呼んでくれた人達を失い、また独りになった。でも今は違う!」
 力が流転する。無限の魔力が溢れだす。
「――!」
「四大よ! 普遍なる者の祖よ! その力を解き放て! ……敵の超常を、打ち砕け!!」
 全ての属性は四大に通ず。その力、そしてそれらを束ねし者たちの力を合わせて生まれたアインは、本来の竜人ならば持ちえないほどの魔力を宿している。
 しかしあまりに強い力には使用者をも蝕む。少年の身体は軋み、そこに呪詛が降り注ぐ。
「真っ向から向かって来るか。馬鹿め。我の絶対防御が破られる筈がない」
 一度、他の猟兵に対し咄嗟の攻撃動作を取ってしまった事で護りを破られた竜は、今度は決して隙を見せまいとどかりと腰を下ろして不動を貫いていた。
「あの時、ボクはただ絶望することしかできなかった。……キミを打ち破る力は、今ここにある」
 自分のあり方は自分で決めるのだと、笑った人がいた。家族を失ったアインにとって、その言葉が何よりも響いた。
 あの日からアインは自分にできる事を探し始めた。旅をして。魔導書を集めて。魔術を磨いて。
 たくさんの人に出逢った。
 ――あの時立ち止まっていたら、ボクはきっと、ずっと独りだった。
「……そこか!」
 漆黒と純白の鴉たちが同時に鳴いた。名の通り森羅万象を視る彼らが導いてくれた鎧の隙間目掛け、魔力をより一層研ぎ澄ませていく。
 アインの魔弾は刃のように鋭く尖り、主人が手をかざすと同時、目映い光を放ちながら竜の黒燐へと突き刺さる。
「――!?」
 竜が、己の胸元を見下ろした。震える視線に、鎧の隙間を通り、背まで抉った魔弾の刃が映る。
「……ばかな。我の術が、破られ、……そんな、はずは」
「云ったでしょう。あの頃のボクとは違う」
 竜を串刺しにした刃がひときわ輝き、光に灼かれる竜が断末魔の雄叫びを上げる。
「我は黒輪竜! 破壊の化身メランシオン! 何者も、我を脅かせる筈が……!」

「……さよなら」
 竜の悲鳴が、途絶えた。
 空に在った彼の象徴たる黒輪は地面に落ち、しゅうしゅうと煙を撒き散らしながら消えていく。
 同じように竜の身体も黒い煙となり、風がそれを掻き消していった。
『絶対物質』と大層な名で呼ばれるブラキオンの鎧だけが、その名にふさわしく無傷なままで転がっていた。

 ――アイン、と老夫婦が云った。はじめての子供。かけがえのない家族だと。
 ――セラフィナイト、と彼女が云った。人と人を結ぶ石の名前だと。

「……終わった」
 アインは呟く。そしてゆるく首を振った。
 いや、これは――はじまりだ。
 そして、やるべきことはまだ、残されている。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『大天使ブラキエル』

POW   :    岩腕
単純で重い【岩石でできた巨大な腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    絶対物質ブラキオン
【「絶対物質ブラキオン」の鎧】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、「絶対物質ブラキオン」の鎧から何度でも発動できる。
WIZ   :    大天使の光輪
自身が装備する【大天使の光輪】から【破壊の光】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【徐々に石化】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 暗黒に支配されていた空に、光が満ちる。
「ゴブリンに続き、メランシオンも討たれたか」
 淡い金の髪を揺らしながら地に降りる大天使ブラキエルが、天を見上げる。
 骸の月は今やその闇を閉ざし、変わらぬ満月が地上を優しく照らしていた。
「猟兵、か――。我の行く手を阻む脅威。だが、その死が我の求むるものへと続くかも知れぬ」
 ブラキエルの言葉は静かだが、天のように澄み渡る双眸は深い失望に満たされていた。未だ天上界への扉は固く閉ざされ、友との約束も果たせぬまま。
 だが大天使は。後を絶たれたオウガ・フォーミュラは。ただ成すべきことの為に、あらゆる生命を断つと決めた。
 芯まで凍えそうな冷たい殺気を漂わせ、月輪のような光を纏い、大天使は今ここに顕現する。
 白く透き通るような腕には、彼が友と呼ぶかの剣はなく。
 代わりに、ゴブリンに与えた岩腕が覆い尽くしていく。
 絵画にその姿を残す天の御使いのような身体は、竜に与えた『絶対物質』の鎧によって包まれていく。
 攻防一体の姿に、光の輪までも携えて。

============================
 大天使ブラキエルは『必ず』先制攻撃をしてきます。対策を講じておくと判定が有利になります(プレイングボーナスがつきます)。
 岩腕や鎧は、それぞれ一章・二章で配下のオブリビオン達が用いていたものと同じもののようです。つまり鎧ならどんな攻撃でも破壊出来ないけれど隙間を狙う事は出来る、といった感じです。
 プレイングは5/24(月)朝8:31より受付開始予定です。宜しくお願いします。
============================
ゴッド・ゴッダー
ブラキエルよ!驕り高ぶるのも程々にせい!
畏れ多くも神い背き、天上界を売り渡そうとは何事か!
その方が犯した罪は万死に値する!

先制攻撃大いに結構!受けて立とう!
フッ、先程の子鬼やトカゲよりは手応えがある様じゃな!
だがワシに言わせれば、まだまだ稚技の域を出ぬ!
ワシが何者か、じゃと?
愚かな堕天使めが!神の顔を見忘れたか!

貴様が石化させたのはこの神の薄皮一枚に過ぎぬ!
全身の筋肉を隆起させ、瞬時に粉砕してみせようぞ!
更に続けて破壊の光を放って来たなら、そんな物はデコピンで軽く弾いてくれる!
実力差を存分に見せつけた所で言おう!
うぬごとき、このワシ自ら手を下すまでもない!
猟兵達よ!懲らしめてやるが良い…とな!




 あらゆる生物を石と化す光が輝く。
 それは真っ先にブラキエルへと距離を詰めた人影ひとつを呑み込み、そして収縮する。
 光が消えた時、その人物は何事もなかったかのようにそこに立っていた。
「ブラキエルよ! 驕り高ぶるのも程々にせい!」
 ゴッド・ゴッダー(ゴッデスト・f20871)。全知全能の神。その一喝だけで空気が震え、大天使の白金の髪をたなびかせる。
「畏れ多くも神い背き、天上界を売り渡そうとは何事か! その方が犯した罪は万死に値する!」
「……何者だ」
「愚かな堕天使めが! 天上界を盲目に目指すうちに神の顔さえも見忘れたか!」
「…………」
 一度骸の海に還り、蘇ったオブリビオンは、全ての記憶を保有しているとは限らない。ゆえにブラキエルはこの老人が正真正銘の神であるのか、それとも只の狂言であるのかを測りかねているようだった。
 白い指が伸びた。光輪が再び輝きを増す。
「フッ、先程の子鬼やトカゲよりは手応えがある様じゃな! だがワシに言わせれば、まだまだ稚技の域を出ぬ!」
 ゴッドは呵々と笑い、その全身で再び光を受け止める。
 ――ぱきり、と乾いた音がした。そこに立っていたのは神と名乗る男ではなく、筋骨隆々な老人を模った精巧な石像だった。
「……本物の神は地上の災厄になど見向きもせぬか」
 哀れなる石像を失望の眼で見下ろしながら、ブラキエルは岩の腕を振り下ろす。男だったものが砕け、辺り一面に破片が飛び散る――否。
「ぬうん!!」
 砕けたのはゴッドの表面、薄皮一枚が石化しただけのものだった。ぱらぱらと破片が落ちれば、ゴッドはやはり無傷のまま、ニヤリと大天使を見下ろすのだった。
「物わかりが悪いのう」
 ゴッドが揶揄するように首を鳴らす。間髪入れずに繰り出された三度目の光は、神の人差し指――という名のただのデコピン――によっていとも簡単に弾き返される。
「……貴様は、本当に」
「だとしたら、どうする?」
「都合がいい。友の望みのため、我は地上に波乱を齎したのだから」
 凪の如き眸に、ぎらぎらとした渇望が宿る。天上界へ至る僅かな可能性に賭けた行動は無駄では無かったのだと。
「ワシを斃す気か。実力の差もわからぬとは落ちぶれたものよ」
 せせら笑う神は、背後に気配を感じ取っていた。
 本来の実力には程遠い今の己ですら、簡単に屠れるであろう大天使。それよりも更に弱き者たちが、それでも各々の信念や目的のためにここに集っているのを。
 ならば、と神は笑った。神は神らしく、彼らの行く末を見守ろうではないか。
「うぬごとき、このワシ自ら手を下すまでもない! 猟兵達よ! 懲らしめてやるが良い!」
「! 待て……」
 ブラキエルの聲も虚しく、神の姿は跡形もなく消え去っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アイン・セラフィナイト
【猫鴉】
この世界はキミのものじゃない。ましてやボクたちのものでもない。生命の剥奪によって得られる報酬に、価値なんて存在しないよ、絶対に。

…この殺気、一筋縄じゃいかなそうだね。

陵也さんに石化の光をすべて当てるわけにはいかないよ!
『忌み断ちの魔導鏡』をボクと陵也さんの周りに展開して、破壊の光を反射してみるよ。(早業・オーラ防御・時間稼ぎ)

キミのその光、逆に利用させてもらうよ。
UC発動、水晶の鴉たちを周辺に展開、ボクの光属性の魔弾と、魔導鏡の反射によって拡散した破壊の光を鴉たちに連続反射、ブラキエルへと撃ち返してみるよ!(動物使い・属性攻撃)
陵也さんとボクの力をも内包した破壊の輝き、受けると良い!


地籠・陵也
【猫鴉】
この世界は俺の仲間にとって大事な場所の一つだ、これ以上蹂躙させるワケにはいかない!

石化を付与する光は厄介だ、なるべくどちらかは行動に支障がないようにしたい。アインを【かばう】為前に立っておくぞ。
【高速詠唱】で【結界術】、アインの魔境の力も合わされば石化に蝕まれるのは俺だけで済むハズ。

攻撃が一段落したタイミングで【多重詠唱】で紡いでおいた【指定UC】を使用、アインの能力を強化。
体が動けずとも口さえ動けば支援は可能だ。
『穢れを清める白き竜性』の【浄化】の力で石化の進行を可能な限り食い止めながら、俺は石化が回り切るまで【属性攻撃(氷)】の術で牽制し続け攻撃の為の【時間稼ぎ】し続けるぞ!!




「……この殺気、一筋縄じゃいかなそうだね」
「アイン!」
「陵也さん」
 知人の姿を見つけ、聲を交わし合う地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)とアイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)。
「丁度良かった。一人であの石化術を相手どるのは少し骨が折れそうだ。ここは手を組まないか。俺が盾になる」
「それは、ボクとしても有難いけれど……」
 ブラキエルへと身体を向けたまま、横目で陵也の様子を伺う。連戦を潜り抜けてきた陵也の貌には疲労が色濃く刻まれている。身体を張って貰っていいものか、しばし逡巡した。
 けれど、退く訳にはいかないという結論に至る。
「……わかった。ボクも出来る限りのことをするよ」
「ん」
 頷く陵也の貌を、光が照らす。
 大天使の輪が輝き、石化を齎す裁きの光が降り注いだ。
 白い竜翼を広げ、陵也が光を迎え撃つ。大きな翼と共に前に立てば、背丈の近いアインは光の直撃を免れる。
 殺気に反応するアインの結界『忌み断ちの魔導鏡』が、陵也が高速で紡ぐ結界術が、石化を跳ね返し、和らげていく。
 アインが魔術を紡ぐ聲。重ねるように呪文を紡ぎながら、陵也は光が己を侵食するのを感じ取っていた。
(「――穢れを感じる。友を失い、神に失望し、だから強引な手段に……地上を滅ぼす道を選んだ。凄まじい負の力だ。でも……」)
 足元に違和感を覚え、陵也は視線を落とす。靴の爪先が石に変化していた。感覚への侵食はもっと早く、膝から下が全く動かない。
「陵也さん!」
「構うな、詠唱を続けてくれ」
 敵の力が相手を呪い不幸を呼ぶものである以上、陵也の穢れを祓う力は相性がいい。だが、それでも完全に防ぐまでは至らない。
(「進行を遅らせられればそれでいい。口さえ動けば戦える」)
 破壊の力を受けているのは自分たちだが、力を繰り出す大天使が破壊したいものは自分たちではない。いや、この地上のどれでもない。破壊の先にある僅かな望みですら、最早ブラキエルは心から求めているわけではない。
(「……なのに、躊躇が無い。矛先を向ける相手すらいないから、目についたものを誰でも殺せる」)
 ぞくり、陵也の全身が粟立つ。こんな存在を放っておけば、訪れるのは只ひとつ――救いようのない喪失。
「……駄目だ」
「うん。ボクたちが、必ずキミを止める。キミのその光、逆に利用させてもらうよ」
 アインの周囲に無数の水晶が浮かび上がり、ちかちかと瞬く。それはみるみるうちに姿を変え、小型の鴉を模った。
「猟兵。貴様らにこの世界の未来を選ぶ権利があるものか」
 大天使が目を細め、光を強める。陵也の身体は腰の辺りまで石化が進行していた。
「権利? そんなものはないよ。この世界はボクたちのものじゃない。――そして、キミのものでもない」
 孤独だった少年は、今では沢山の人々と繋がっている。
 国王。領主。天使。神。いかなる者にも、人々の道を阻み、世界を掌握する権利などないのだと知っている。
「生命の剥奪によって得られる報酬に、価値なんて存在しないよ、絶対に」
 少年の言葉に呼応するように、水晶の鴉たちが空へと羽搏いた。
 彼ら目掛け、アインは光の魔弾を放つ。水晶の身体は眩い光を跳ね返し、乱反射させてブラキエルへと届かせる。
 更に魔導鏡が反射していたブラキエルへの光をも跳ね返し、強烈な輝きが白い貌を灼く。
「……無駄だ」
 ブラキエルが力を強める。光が光を押し返し、許容量を超える程の『破壊』を受けた鴉たちの身体はみるみるうちに石となり、鈍い音と共に地面に落下する。
「なら……エインセル!」
 氷の礫をブラキエルにぶつけ、動きを阻害しながら陵也は呼びかける。
 もう殆ど身体を動かせぬ陵也の肩から、一匹の猫がふわりと身を躍らせた。
 エインセル――その名の通り陵也によく似た眸と翼を持つ猫が光を放てば、アインの力がみるみるうちに高まっていく。
「この世界は俺の仲間にとって大事な場所の一つだ、これ以上蹂躙させるワケにはいかない!」
「ありがとう、陵也さん」
 ブラキエルのそれとは異なる、あたたかい浄化の光が全身を満たして行くのを感じる。
 残る全ての鴉たちが一斉に輝き、ブラキエルの石化魔法を打ち破る。
「――!」
 目を見張る大天使。アインは残る力全てを鴉たちに注ぎ込む。
「陵也さんとボクの力をも内包した破壊の輝き、受けると良い!」
 空虚な破壊を望む大天使の光は、アインと陵也の想いによって紡がれ、明日を繋ぐための楔となって大天使を穿つ。
 極光が、辺りを照らし出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ビスマス・テルマール
天界とやらに、思う所があって今までの事を仕組んでいたのだとしても……今回の凶行、許す訳には

『マスター……俺も同感ダ』

●POW:対策込み
【ディメイション・なめろうブレイカー】に『属性攻撃(デコイ)&オーラ防御』
【ジュリンプル・グレネドフォート】に『属性攻撃(重力)』を込め

『砲撃&レーザー射撃』の『先制攻撃&一斉発射』を『範囲攻撃&弾幕』を巻きデコイを『念動力』操作

岩腕に負荷を掛けつつ撹乱しつつ
『空中戦&推力移動』で掛け『第六感&瞬間思考力』で『見切り&残像&空中機動』で回避し

隙見て鎧の隙間を『スナイパー』狙い『高速詠唱&早業』で『全力魔法&属性攻撃(暗黒)』込めUCを

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


リューイン・ランサード
ブラキオンを見上げていた
正確にはつい見てしまった、その一点を。
「ちっさ!」
何がとは言わないが、自分の言葉を契機に強大な敵への恐怖を克服する。

先制攻撃は第六感で予測し、見切りでタイミングを捉え、翼による空中退避(空中戦)で躱す。
攻撃の余波はビームシールド盾受け&オーラ防御で受け流し、その勢いも利用して高速上昇。

勢いそのままに弧を描いて降下。
UC発動。

UC&空中戦能力により高速で螺旋状に降下しつつ、仙術で分身創造して幻惑。
2回攻撃の1回目で光の属性攻撃&高速詠唱を放って目くらまし。
2回目で、相手の動きを見切り、UC&限界突破した怪力でエーテルソードを精密に振るって鎧の隙間に貫通攻撃。
タマ取ります!




 岩石の剛腕が宿る。
 極彩色の花々で飾り立てた身体。複数の翼と光り輝く輪を冠した天使は、荘厳たる外見からは想像もつかぬほどの速さで猟兵へと肉薄する。
 ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)の蒼鉛の膚を惹きたてるマゼンタの鎧装からデコイが放たれる。姿かたちを似せただけでなく、ビスマスの念動力によってまるで生きているかのように動き回る囮たちだ。
 だが、大天使の双眸は真っ直ぐにビスマスを捉えていた。腕を薙ぎ払うようにして邪魔な囮たちを撥ね飛ばし、本体めがけて振り上げる。
(「わたしの策が囮だけだと思ったら――大間違いですよっ!」)
 海老型アームドフォートの『頭』がブラキエルへと向けられる。重力を操る擲弾が放たれ、岩の腕へと負荷をかける。
 動きが鈍ったのはほんの一瞬。だがそれだけで充分だった。ビスマスが大きく後ろに跳び、そのまま空へと飛翔する。彼女が先程まで立っていた場所に拳が叩きつけられ、もうもうと砂ぼこりが舞った。
(「…………なんで全裸なんだろう」)
 ビームシールドを構えながら、リューイン・ランサード(竜の雛・f13950)はついついそんなことを考えていた。絶対物質の鎧を召喚できるから衣服など不要という事なのだろうか。同性の裸など見てもなんとも思わないが、それにしても視線がついついいってしまう場所というものはある。
「ちっさ!!!!」
 いや何がとは云わないけど。あの尊大な態度には随分不釣り合いな控えめっぷりだった。
 だが単細胞なゴブリンや威張り散らしたドラゴンとは違い、大天使はその程度の言葉では揺らがなかった。翼を翻しリューインへと迫る双眸には先程垣間見せた失望さえもなく、ただ獲物を狙う爬虫類のような静かな殺気があるのみだった。
 ――それでいい。リューインはごくりと唾を呑む。
 小手先の挑発が通じる相手だとは思っていない。実の所言葉はブラキエルに向けたものでさえない。
 心を落ち着け、大天使の攻撃を見切る。深紅の鱗宿る翼を広げ、宙へと身を躍らせた。
 岩腕が地面に叩きつけられる風圧。ビームシールドとオーラの防御が衝撃を真っ向から受け止め、反動がリューインの身体を高く高く打ち上げる。
「(大天使といえど、『欠点』はあるんです。戦えないはずはない!」)
 そこに在るだけで、威圧感に気圧されそうになる。今日一番ヒトの姿に近い敵が、小鬼や巨竜よりも強大な敵である事をリューインは嫌でも感じ取ってしまう。
 恐怖が生まれるのは仕方ない。だがその恐怖を克服できた時、リューインの全身に未来を切り拓く力がみなぎる。
 どんな無茶な飛行にも耐えられるバリアに身を包んだ竜人は、彗星の如き猛スピードで空を駈ける。


「天界とやらに、思う所があって今までの事を仕組んでいたのだとしても……今回の凶行、許す訳には」
『マスター……俺も同感ダ』
 ご当地ヒーローを志すビスマスと、この世界で生まれた意志ある魔導武器クロガ。立ちはだかる巨悪を正義の心滾らせ迎え撃つ。
 空中機動に長けるビスマスだが、ブラキエルもその翼で距離を詰めては岩の腕を叩きつけてくる。デコイでの撹乱や重力負荷によって直撃は免れているものの、一撃の重さをビスマスは膚で感じ取っていた。
(「一撃でも当たったら動けなくなってしまいそうですね……」)
 けれどなめろうブレイカーの砲撃は撹乱や回避に重点を置いており、ここから攻撃を繰り出そうとすればその分護りが手薄になる。
「クロガさん」
『ワかってル』
 言葉は短く。それだけで充分だった。
「いきますよ――生成開始(ビルド・オン)っ!」
 クロガのトゲトゲのフォルムが更に鋭く尖ってゆく。雲丹をモチーフにした鎧装を纏った魔導杖から、眩いばかりの光が溢れだした。
 光纏う天使ですら、咄嗟に眼を眇める程の光。同時に漂う濃厚な雲丹の馨と共に、光は凝縮され、鋭い棘持つ光弾として放たれる。
「これで、決めましょう!」
『ああ、刺し貫いてミせるっ!』
 迸る光が、大天使目掛けて叩きつけられた。
「――行きます!!」
 重ねるように光が爆ぜる。リューインの光魔法が天使を灼いた。
 螺旋描き天使へ迫るリューイン。その手に携えたエーテルソードが暗夜の軌道を描くさまは、まるで彼そのものが天を貫く巨大な槍へと化したかのようだった。
 もはや今のリューインに追いつけるものは光くらいしかない。その光すら振り切るように、始原宿る剣を大天使目掛けて振り下ろす。
 岩の腕も。防御も超えて。その先へ。
「タマァ、取りますっ!!!!!」
 リューインの表情は真剣そのものだった。
 …………取れたかどうかはさておき、エーテルソードは確かに大天使に届いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「石化回復はお任せ下さいっ」

UC「花見御膳」使用
飴玉等手持ちおやつに状態異常(石化)回復の効果付け、自分含め石化しかかった仲間の口にポイポイ放り込んで回復させる

敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
回避できない場合は盾受け

高速・多重詠唱で銃弾に破魔の属性乗せ制圧射撃
鎧の所為でダメージは全く通らないが行動阻害で仲間の攻撃が通りやすくなるよう補助する

「貴方は…其の願いを、幾星霜抱えていらっしゃったのでしょう。それでも私達は、貴方の願いが叶う事を見過ごせませんでした…」
骸の海に還られたら、今度は共存できる願いを持って転生を、の言葉を飲み込んで
永く独り在った存在に敬意と哀悼捧げ鎮魂歌を歌う


鬼桐・相馬
●POW
大事を成す為の犠牲には目を瞑るか
否定はしない、そうしてつくられたものもある
だが大人しくやられるつもりもない

岩腕は[視力と戦闘知識]で攻撃範囲を把握し後方へ回避したい
〈冥府の槍〉に張った[結界術]の障壁で飛散物等の余波や衝撃も防ごう
多少の負傷は炎で補う
槍中心の戦闘法だが〈ヘヴィクロスボウ〉も準備、距離をとらせない立ち回りを

先制攻撃の際頭に叩き込んだ地形の状態
戦闘に集中し過ぎて窪地や瓦礫に足を取られた体を演出する
この状況なら追撃が最善策だと思わせたい
俺からの攻撃はないと油断させた状態で弩からボルトを射出しUCを発動

鎖に纏わりつく炎なら鎧の継ぎ目にも忍び込めるだろうか
そのまま爆破してしまおう


鍋島・小百合子
POW重視
他の猟兵との連携可

天使を僭称しておきながら人の破滅を願う天使なぞ今を生きるわらわ達が求めるものではない!

「一刀入魂!我らが手によって成敗いたす!」
まずは敵の先制攻撃を凌ぐべく我が身を賭して引きつけを行う
残像を纏い、敵の振るう岩腕の軌道を読んでは見切り回避
隙あらば腕の付け根を狙って薙刀による咄嗟の一撃(カウンター、切り込み、受け流し、切断併用)
先制攻撃を凌げばこちらから攻勢に打って出、
薙刀による武技乱舞を叩き込んで(なぎ払い、乱れ撃ち、遊撃併用)は機を見てUC「災禍刺刀撃」発動
ぶらきえるに間近まで迫っては破魔と神罰と祈りの込められし懐の小太刀で串刺しの一撃に処す(鎧砕き、属性攻撃併用)




 大天使の右腕が岩を纏い、幹のように肥大化する。
 絶対防御や石化術に比べれば極めて単純で、だからこそ絶大な威力を誇る拳だ。
「天使を僭称しておきながら人の破滅を願う天使なぞ、今を生きるわらわ達が求めるものではない!」
 生粋のエンパイア人である鍋島・小百合子(朱舞の女丈夫・f04799)でも耳にしたことがある。天の御使いは神の言葉を伝え、正しき者達を導くのであると。
「一刀入魂! 我らが手によって成敗いたす!」
 残像を纏いながら小百合子は駆ける。宗教画のように神々しい天使の操る武骨で醜悪な腕が、そのまま奴の本性のようだと思った。
(「情けない男は嫌いじゃ。あの者は力だけは立派なようじゃが、大層な身分に甘えて心構えがなっておらん!」)
 天使だろうが「ふぉーみゅら」だろうが、あんな男にだけは負けたくない。
 迫り来る剛腕を見切り、身を屈めて避ける。
「!」
「生憎、図体だけが立派な木偶の坊の相手は慣れておるでの」
 男性が幅を利かせがちな武家社会を生き延びてきた小百合子だ。体格差を活かして躱したあとは、腕の付け根を狙ってカウンター気味に薙刀を繰り出す。
 朱糸の武者鎧よりも赤い血がしぶいた。
 すぐさま二撃目を振るう小百合子だが、天使の方が早かった。薙ぎ払いを岩の腕で受け止め、小百合子の力をも利用して撥ね飛ばす。素早く体勢を整える小百合子だが、天使は既に翼を翻し別の猟兵へと迫っていた。金目の羅刹、鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)の元へと。
(「想定以上にリーチが長い。通常時の二倍はあるだろうか」)
 小百合子と大天使の打ち合いを見ていた相馬はそう分析する。
(「破壊力は言わずもがな。まともに喰らえば俺でもまともに動けなくなるだろう。だが」)
 振り翳された拳を、後方に飛んで避ける。地面が抉れた飛散物や衝撃の余波は、冥府の槍に張った結界術の障壁が和らげる。
 それでも弾き返せなかった破片が相馬の頬を掠め、傷を刻んでも、湧き上がる冥府の炎がそれを覆い隠していった。
 もっと遠くまで下がれば、負傷を避ける事は出来た。敵の得物が拳である以上、距離を取るのが一番手っ取り早い。
 その上で、相馬は避けられる範囲で敵の射程に入り続ける事を選んだ。片手で槍を振りながらも、もう一方に携えたヘヴィクロスボウをブラキエルに見えるように誇示し続けながら。距離を置くのならばすぐさまこいつで追いつめてやるとでもいうように。
 相馬の狙いに気づいているのかいないのか、大天使はひたすら拳を叩き込み続けた。
「意外ですね。石化攻撃で来ると思っていたのに、もっと直接的な手段に出ましたか」
 目をぱちくりさせながらも、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)のすることは変わらない。ちいさなお重を取り出して桜の加護を加えれば、中のおやつは負傷や状態異常を治癒する有能なアイテムに早変わり。
「たっぷり用意してきましたので、足りないときはおっしゃってくださいね」
 一口サイズの飴玉なら、戦闘中でも補給が容易だ。流れるような動作で仲間へと菓子を給仕する姿は、日頃からパーラーメイドとして働いている桜花ならでは。
 自身もさくらんぼ味の飴玉を舌で転がしながら、大天使の攻撃から身を躱し続ける。受け切れないものはカフェ用の銀盆が防いだ。薄くて軽い銀盆が大天使の剛腕をも防ぐからくりは、それが退魔刀と同じ素材・製法で作られているから。
(「それにしても、なんだか今日は随分と身体が軽いですね」)
 特製花見御膳の出来栄えも上々だ。この地にもある幻朧桜が、桜の精に力を貸してくれているのだろうか。
(「グリードオーシャンのように他の世界との関係が深い場所以外にも、幻朧桜が咲いている……ひょっとしたら」)
 サクラミラージュ以外のオブリビオンにも、等しく癒しと転生の機会があって欲しい――桜花の願いは、無駄ではないのではないか。
「っ、と」
 鋼鉄をも粉砕する岩の拳が、桜花のすぐそばに迫る。直撃こそ避けたものの、衝撃で桜花の身体が吹き飛ばされる。
 地を転がりながらも、その手には軽機関銃が握られていた。破魔の力を乗せた銃弾が乾いた音と共に絶え間なく放たれる。
 銃弾の雨を受けても大天使の傷は浅い。だが広範囲に広がる制圧射撃はその動きを大きく阻害することになる。
 銃弾が途絶えた時、そこには小百合子が迫っていた。地を蹴り大天使へと肉薄した彼女が、薙刀による武技乱舞の数々を繰り出す。
 一撃一撃は軽いが、流れるような動作は反撃の隙を与えさせない。少しずつ追い込まれていく大天使が体勢を崩した時、小百合子が小太刀を抜き、大きく腕を引いた。
「ぶらきえる――覚悟っ!!」
 災禍刺刀撃。小百合子を護ると同時、刺突にも耐えられる強度を誇る攻防一体の小太刀が、至近距離から渾身の力で大天使を串刺しにした。
 すぐさま相馬が槍を振るう。結界術に加え、桜花の加護もある今では拳の余波も恐れることはない。淡々と繰り出される拳を最低限の動きで直撃を避けながら、炎纏う槍を突き出し続けた。
 その身体が、つんのめるようにして突如止まる。ブラキエルが大地に刻み込んだ窪地に足を捉われてしまったのだ。
 狙い澄ました拳が相馬の頭蓋へと振りおろされる。瞬間、黒塗りの重弩から小さなボルトが放たれた。
「――!」
 ボルトが炎を呼ぶ。冥府にある紺青炎の中でも、咎人を拘束し苛むために用いられる鎖状の炎だ。瞬く間にブラキエルを包み、その動きを封じ込める。
 重弩は、ただ近距離戦を仕掛ける為に見せていただけではない。策にかかり、全ての力を攻撃に注ぎ込んできた相手に反撃する機会を、ずっと狙ってきたのだ。
 炎は瞬く間に広がり、逃れようと身動ぐ大天使を爆破した。
 濛々と煙が上がる中、全身を煤だらけにした大天使が尚猟兵めがけて迫りくる。各々の武器と共に応戦する小百合子や相馬を支援しながら、桜花は大天使の表情を伺っていた。
 彫刻のような無表情の中に、静かな殺意と大きな失望がゆらめいている。
「貴方は……其の願いを、幾星霜抱えていらっしゃったのでしょう。それでも私達は、貴方の願いが叶う事を見過ごせませんでした……」
 自らが望むものが最早かの地にはないとわかっていても、友の望みのために屍を積み重ねた道を歩む。恐ろしく、ひたむきな願い。
 だから桜花は、それ以上の言葉を呑み込んだ。きっと今の彼には、共存などという言葉は響かないだろうから。
 ――けれど、いつかは。あの幻朧桜が、彼を癒す時がくればいい。
 永く独り在った存在に敬意と哀悼を捧げ、鎮魂歌を唄い続けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ヘルガ・リープフラウ
❄花狼

わたくしは忘れない
悪鬼共に虐げられた人々の嘆きを
無残に踏みにじられた命と尊厳を
そして、惨劇を齎したお前たちへの怒りを!
わたくしは、お前を同じ「天使」などとは決して認めない!

敵の先制攻撃は第六感で見切り空中戦で回避
避けきれない場合はオーラ防御、呪詛耐性で耐える
わたくしは救いの聖歌歌う歌姫
この喉は、この声だけは誰にも奪わせない

破魔の祈り込め歌うは【涙の日】
仲間たちが受けた傷と石化の呪いを癒し浄化して
そして敵には神罰の光輝を
眩き光は鎧の継ぎ目に影を作り浮かび上がらせる
ヴォルフの怒り、わたくしの怒り
定めた狙いは決して逃しはしない

神の名を騙る殺戮者よ
何者も己の罪からは逃れられぬものと知れ


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼

貴様が大天使ブラキエル……絶大な光輝はいっそ禍々しくさえある
あの卑しい悪鬼共に力を与え、この地上を穢し踏み躙った時点で
貴様には一分の正義も誇りも無いものと知れ

先制攻撃に備え防御体勢を取り
地形破壊にヘルガが巻き込まれないように庇う
急所にダメージを直撃しないよう立ち回り盾受け
激痛耐性と気合い、覚悟を決めて耐える

受けた傷痕から【ブレイズフレイム】の炎を放ち
ヘルガの光が照らしだした鎧の継ぎ目部分まで延焼
そのまま隙間に入り込み内側から敵を焼き尽くす

所詮貴様は骸の海から甦りし過去の亡霊
今を生きる人々の願いは決して潰えることはない
どんな理不尽も切り裂き足掻いてやる
地獄の炎に焼かれ燃え尽きろ!




 正しく用いられていれば、それは文字通り天に仇名す者を退け、敬虔なる者を導く光であったことだろう。
 だが今、大天使の周囲を漂う光輪は、ただ無差別に破滅を呼ぶためだけのもの。
「貴様が大天使ブラキエル……いっそ禍々しいな」
 ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)が吐き棄てたのは光輪が放つ絶大な力に対してでもあり、それを操ってみせる大天使本人に対してでもあった。
「あの卑しい悪鬼共に力を与え、この地上を穢し踏み躙った時点で貴様には一分の正義も誇りも無いものと知れ」
「……正義?」
 空と同じ色の眸が、静かにヴォルフガングを見下ろしていた。
「我らが求むるは『識』のみ。武と殺戮を躊躇いはせねど、そこに善悪の概念は不要」
「その為だけに、自分たちの望みのためだけに、あれほどの人たちを傷付けたというの……!」
 ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)が白い手をぎゅっと握る。
 外見こそ天の御使いそのものだが、その中身はヘルガの故郷を奪い、戯れに蹂躙していた吸血鬼どもと何も変わらないではないか。
「わたくしは忘れない。悪鬼共に虐げられた人々の嘆きを、無残に踏みにじられた命と尊厳を……」
 ヘルガの背、純白の翼が広げられる。
「そして、惨劇を齎したお前たちへの怒りを! わたくしは、お前を同じ「天使」などとは決して認めない!」
「……異なる世界の天使か」
 静かに呟いたブラキエルは、直後その光すべてをヘルガへとぶつける。
 大きく身を翻らせるヘルガだが、拡散する光全てを躱すのは困難だ。光の直撃を喰らいすぐさま全身を石に変えられる事は免れたが、足の先が痺れ、感覚が無くなり始めているのを感じる。
 だがヘルガは視線を落とさなかった。脚が石化させられてしまっても飛べばいい。今動きを止め、あの男を打ち漏らしてしまう事のほうが何よりも怖い。
「わたくしは救いの聖歌歌う歌姫。この喉は、この声だけは誰にも奪わせない……!」
 全身を包むオーラと、聖なる気による呪詛耐性で進行を遅らせる。まだ戦えると全身が告げていた。
 二発目をヘルガへ放とうとするブラキエルめがけ、ヴォルフガングが距離を詰める。
「よくもヘルガを……!」
 武骨な鉄塊剣を振り上げた胴体へと、ブラキエルが拳を繰り出した。
 だが、力任せの大振りをかましてくるように見えた鉄塊剣は驚くほどの素早さで軌道を変え、盾のようにかざされてブラキエルの拳を弾く。
「……ほう」
 大天使が柳眉を顰める。伴侶を傷付けられた激情に身を任せていると見せかけ、最初から防御に重きを置き、自らに攻撃を惹きつけながらも倒れない事を重視していたのだ。
 だが、当然無傷では済まない。拳と鉄塊のぶつかる音と共に、ヴォルフガングの身体は大きく弾き飛ばされる。骨肉が砕け、血が迸る。
 そこへ響くのはヘルガの歌声。どこまでも透き通り、やわらかく包み込むような歌声はさながら雨のよう。天からの涙のように降り注いでは、石化を、傷を、癒していく。
 そして光は、背く者を赦しはしない。神罰の光輪がブラキエルへと放たれ、その身を灼くと共に弱点さえも浮かび上がらせる。
(「ヴォルフの怒り、わたくしの怒り。定めた狙いは決して逃しはしない」)
「程々に頼むぞ、ヘルガ」
 静謐なる光の癒しが全身を巡るのを感じながら、ヴォルフガングが立ち上がる。
「お前の癒しの歌声には絶大な信頼を置いているが――完全に治癒されてしまっては、『これ』の出口がなくなるからな」
 ヴォルフガングの傷口から地獄の炎が沸き起こった。天からの光を受け、紅蓮の炎はより赫灼と燃え上がる。
「――!」
「地獄の炎に焼かれ燃え尽きろ!」
 ブラキエルが目を見張る。ヴォルフガングが剣を振り翳すと同時、炎は囂と燃え、ブラキエルを包み込んだ。まるで炎そのものに意志が宿るように、燃やすべき相手の弱点を的確に読み解いて。
「我、は……我の、望みは……!」
 天の光が、地の炎が、ブラキエルの全身を焼く。裁きが刻んだ傷から流れる血を、地獄の炎がすぐに蒸発させていく。
「所詮貴様は骸の海から甦りし過去の亡霊。今を生きる人々の願いは決して潰えることはない」
「神の名を騙る殺戮者よ。何者も己の罪からは逃れられぬものと知れ」
 たとえ、立ちはだかる者が人知を超えた存在であったとしても。
 ――どんな理不尽も切り裂き足掻いてやる、と常闇の世界を生きる二人の眸が語っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユーフィ・バウム
この世界の人々を傷つける存在は、天使だろうと
倒すのみです、【覚悟】っ!

敵の先制は培った【戦闘知識】、天性の
【野生の勘】を生かしすんでで【見切り】、
避けきれない分も自慢の【オーラ防御】を打ち出して
自ら後方に飛び、衝撃を相殺

凌ぎましたらお返しですっ!
風の【属性攻撃】を纏う【衝撃波】を
お見舞いし、【ダッシュ】で大天使へ迫ります

狙うは得意の近接戦っ
【功夫】を生かし打撃を打ち込み、
【グラップル】で組み付き地面に投げますっ

大天使からの反撃も【激痛耐性】と【気合い】で堪え
悲鳴は上げても【限界突破】して倒れません!

最後は【怪力】で地面に投げ落としてからの
【ジャンプ】から必殺の《轟鬼羅刹掌》で仕留めに行きます!




「この世界の人々を傷つける存在は、天使だろうと倒すのみです、覚悟っ!」
 褐色肌の少女、ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)が高らかに宣言し拳を掲げる。ブラキエルの岩腕を勘定に入れなかったとしても、拳は天使のものよりはるかに小さく、けれど力強く握られていた。
 ブラキエルはそんな彼女を静かに見下ろし――直後、瞬間移動の如き素早さで肉薄する。
(「――右!!」)
 積み重ねてきた修練による判断、野生の勘が告げる直観に従い、ユーフィは大きく身を捩る。拳本体を避けても風圧がユーフィを打ち砕こうとする。無理に抗い食いつく事はせず、オーラの防御で衝撃を和らげながら後ろに跳んだ。
「まさか天使と拳の打ち合いが出来るとは思っていませんでした」
 どちらかというとおっとりとした性格に見られがちなユーフィの表情が、今は抑えても抑えきれない闘志に燃えている。
 部族の戦士としての矜持が、オブリビオンの悪行を赦せない。それもある。
 けれど真にユーフィを滾らせるのは強敵との邂逅だった。凌ぎ切ったのに身体が痺れる。相手には猟兵と交戦し続けた負傷が色濃く刻まれているというのに。
 バトルアックスに似た大型武器も自在に使いこなすユーフィだが、やはり徒手空拳は心が躍る。
「今度は――こちらから参りますっ!」
 風の衝撃波を放つ。ブラキエルの拳が即座にそれを打ち砕くが、その間にユーフィは懐に潜り込む。最も得意とする接近戦に持ち込むために。
 拳、拳、足……一撃の重さも、体格も、ブラキエルには遠く及ばない。ならば一撃でも多く叩き込む。流れるような無数の連打。ブラキエルの表情は揺らがない。効いているのかいないのか。だが手ごたえはある。
(「これでっ!」)
 フェイントからブラキエルの身体を掴む。足を払い、重さを活かして地面に投げつけようとした瞬間、ユーフィの胴体に拳がめり込んだ。
「!! ぐ、ぅ……っ!!」
 咄嗟にオーラ防御を集中させなければ、内臓も骨も全て砕かれ、ひしゃげてしまうほどの衝撃だった。
 息が詰まる。けれどここで倒れたら、反撃の機会は二度と訪れないとユーフィの本能が告げていた。
(「倒れるな、動け、わたしの、身体っ!!」)
 食らいつく。踏みしめる。大きく持ち上げるような投げ方から横に払うような投げ方に変え、ブラキエルの身体を組み敷いた。それでも痛みはユーフィの脳天まで貫き、意識が持っていかれそうになる。
「まだ、です――あなたを倒すまで、倒れません!」
 大きく跳びあがる。鬼の力を宿す必殺の拳が、ブラキエルの胴体を貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パウル・ブラフマン
誰も信じてないクセに他人を利用するんだもん。
上手くいきっこないよ、大天使様☆
このまま戦場へ、Glanzで【騎乗突撃】ィ!

▼先制対策
光輪を注視し
光の放出と同時に猛【ダッシュ】で距離をとるよ。
必要に応じ、敵射程範囲内の猟兵さんも救出したいな。
この時、敵の最大射程範囲を目測。
皆と情報共有しておくね♪

▼反撃
無謀を装い、Krakeを展開させつつ最接近。
今回【カウンター】は一発で十分…―UC発動!
【レーザー射撃】で撃ち返した光線は
鎧の隙間にまで差込んで、石化を齎してくれるハズ。

追撃で向こうが光を照射しても怯まない。
アクセルは既に全開、それにノーブレーキだからね!
隙間へ狙い澄ませて…喰らえ、【一斉発射】ァ!




 友のためと大義名分を掲げ、求むるものがないと知って尚、天上界を目指す。
 その友さえ、今はブラキエルの手元から消え失せている。
「それじゃ上手くいきっこないよ、大天使様☆」
 にっ、と犬歯を見せて笑うのはパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)。――だってそうでしょう? 誰も信じてないクセに他人を利用するんだもん。
 目先の力に溺れる小鬼たち。破壊の権化たる竜。
 金や力で釣られた働きアリたちの弱点を、そして彼らの末路を、パウルは良く知っている。人間の世界を生きる怪物は、やはり魔物もさして変わらないのだという感想を抱いた。
「――だからテメェは、オレ達には勝てねえよ」
 挑発しながらも、パウルは油断することなく宇宙バイクGlanzを駆っている。大天使が纏った光輪が瞬きのように明滅する。
 今だ。
 車体を大きく傾かせ、むちゃくちゃなスピードと角度で左へ大きく逸れて光の射程から免れる。直撃は避けた筈だったが、右半身が妙に重く痺れ始めていた。
「あちゃー、見た目より随分範囲が広いな。これはちょっとピンチかも~」
 声を張り上げたのは仲間への忠告のため。痺れを払うようにぶんぶん大きく振った水色触手は角度と回数でおおよその射程範囲を後続に告げている。さしずめテンタクルサインといったところか。
「時間かけてたら石になっちゃいそうだし……こうなったら、一か八か突っ込むしかないよね!」
 Glanzがスピードを上げる。今度は一直線にブラキエルへと突っ込んでいく。
 光が爆ぜ、パウルを直撃する。かかった、とパウルの口元が告げていた。
「――UC発動! テメェの生、テメェの悪意、絶望、罪、その総て――……オレに寄越せ!!」
 触手に固定された砲台たちからのレーザー射撃が光を受け止め、そして弾き返す。一度だけ敵の術をそっくりそのまま利用できる代わり、対象の悪意も絶望も何もかもを知覚し共有してしまう力だ。
 ぞわり、パウルの心に殺意が沸き起こる。慣れたものだと笑い飛ばした。
 大天使の白い膚が石になっていくのをパウルは見た。同時に己の右手がレバーから離れなくなっているのも感じた。直撃ではないとはいえ、先に光を受けた自分の方が進行が早いかもしれない。
 都合がいい。どのみちアクセルを緩める気は微塵もないのだから。
「それにノーブレーキだからね! オレとGlanzについてこれるならついてきなァ!!」
 光輪がパウルへと向けられる。それよりも早く、砲台が一斉に輝いた。
 今度は反射ではなく、純粋に敵を打ち砕くための光だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フェルト・フィルファーデン
さあ、猟書家よ。その蛮行、ここで終わらせる!

まずは敵の攻撃に対処しましょう。騎士人形の盾を構え更に障壁を付与して守りを固め【盾受けxオーラ防御】
距離を取りつつ敵の動きを注意深く観察し【見切る事で躱し隙を見つけるまで耐え凌ぐわ。

隙が見えたら一気に攻勢に出るわ。さあ、行くわよ。わたしの騎士人形、アーサー!
たとえコピーされても騎士人形のいないアナタには使えない。
それにね?たとえアナタが使えても、そんな濁った目で使うこの力に負ける道理は無いわ!
わたしは絶対にこの世界を救う。そして全ての世界も、人々も救ってみせる!
その世界を侵すアナタに、負けるわけにはいかないのよ!
さあ、その剣で鎧の隙間を貫きなさい!




 絶対物質。ブラキオンの特質は単純だ。「絶対に破壊できない」。
 どんな難しい公式を用いても出来ても0が1より大きい事を証明できないように、あらゆる物質よりも強靭なブラキオンで出来た鎧はどんな力を用いても破壊する事はできない。
 極めて単純で、だからこそありとあらゆる小細工を跳ね返す。
 突破手段はただひとつ。鎧の隙間を狙う事。

(「――でも、あの猟書家は大切なことを忘れている」)
 騎士人形の盾で大天使の攻撃を凌ぎながら、フェルト・フィルファーデン(糸遣いの煌燿戦姫・f01031)は大天使の様子を伺い続けていた。
(「わたし達はあの鎧の弱点を知っている。それは猟書家自身が配下にあの鎧を授けたから」)
 わざわざ自らより力の劣る存在を使って手の内を見せてくれるなんて、随分親切な事だ。大天使自らが操る鎧には絶対防御に加え『反射』の力が加わっているようだが、フェルトにはそれに対抗するための手段がある。
 ブラキエルの光輪が光る。だが絶対防御に力の大半を注ぎ込み、猟兵達に齎された負傷も激しい今のブラキエルは、石化の力は使えないらしい。光の魔弾を打ち出しての攻撃がやっとのようだ――それでも、まともに喰らえば小さなフェルトにとっては命取りになる。
(「魔弾の連射はニ十発が限界ってとこみたいね。それ以上撃とうとすると、一瞬魔力を充填する隙が生じる」)
 騎士人形たちの護りを受け、大天使の力を見抜いたフェルトは、その一瞬に金色の翅を大きく羽ばたかせ高らかに叫ぶ。
「さあ、行くわよ。わたしの騎士人形、アーサー!」
 Yes, Your Majesty――いらえと共に、騎士人形の武装が強化されていく。背に生えたオーラの翼で飛翔し、ブラキエルへと剣を振り下ろした。
 初撃はブラキエルが翳した腕に阻まれる。だが鎧はフェルトのユーベルコードを反射する事はできなかった。
「騎士人形のいないアナタには使えないわよね。それにね? たとえ使えたとしても、そんな濁った目で使うこの力に負ける道理は無いわ!」
 ノブレス・オブリージュ。国が滅んでも、今も姫に残る誓い。
 この力は誰かの為に。その強さは世界の為に。失う哀しみを、なくすために。
「わたしは絶対にこの世界を救う。そして全ての世界も、人々も救ってみせる!」
 フェルトがその心を奮い立たせるたび、伝説の英雄の名を持つ騎士人形は強くなる。その鎧は天使の魔弾さえ弾き、その眼光は敵の僅かな弱点さえ見抜く。
 そしてその剣は、決して狙いを違えることは無い。
「さあ、猟書家よ。その蛮行、ここで終わらせるわ!」
 鎧の隙間にするりと差し込まれた剣は、そのまま大天使の身体を両断した。

「ここまで、か――」
 自らの意識が昏き海に沈んでいくのを感じ、大天使は目を閉じる。
 既に何度も討伐され続けてきたオウガ・フォーミュラに、再生の機会は残されてはいなかった。
 絶対物質ブラキオン――大天使の威光を宿した究極の物体も、霧のように掻き消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月29日
宿敵 『『黒輪竜』メランシオン』 を撃破!


挿絵イラスト