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月夜の荒城へ降り立つ殺戮の大天使

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #大天使ブラキエル #オウガ・フォーミュラ

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●●月より高き天上へと至らなかった大天使
 『骸の月が満月喰らい尽くせし時、仮初の侵略者は真の支配者となる。しかし、その骸の月も今や喪われた。我が友よ、君の願いは叶わなかった。君は"書架"へと帰るがよい』 今宵は満月。猟書家らの魔の手から骸の月に侵食されたアックス&ウィザーズの月は、猟兵の活躍により煌々と輝いていた。
 その月より、蒼き星を眺めるものが居る。オウガ・フォーミュラ、大天使ブラキエルである。彼は骸の月に侵食される月面を拠点としていた。月が完全に骸の月に侵食された暁には、かつて仕えていた神々への失望から配下の猟書家を手勢に天上界へ侵攻、大天使でありながら神殺しとして神々を誅せんと欲すのが彼の計画であった。だが、骸の月は喪われた。これにより手に持った剣を虚空へと消し去り、天井へと至る儀式を執り行うのは不可能……に見えた。

『ならば、我は天上界の扉を開く僅かな可能性を実行しよう……』
 大天使ブラキエルには、まだ天上界への門を開く手立てが残されていた。本来であれば最終手段であるこの方法を避けたい所であったが、彼には今やそれしか残されていない。大義を果たすには、多少なりの犠牲がつきものだ。配下の猟書家が行っていた行為による被害は、自ら手を下そうとする事より穏便であったのは大天使としての慈悲からであっただろう。決意を秘めた趣で、彼は静かに瞼を瞑り集中する。

『もっとも、ヴァルギリオスさえ見逃し、あまつさえ封印された愚か者共が、今更地上の危機に扉を開く事もあるまいが……』
 杞憂を拭いながらも、大天使はその威光を称えるかのような眩い光に包まれて月より地上へと降臨する。その光は一筋の流星として、輝きを戻した満月を仰ぐ人々の目に映っていたのであった。


●グリモアベースにて
「アックス&ウィザーズにおける骸の月の消失を観測しました。まずは皆様方、長きに渡る猟書家との攻防を制したことに感謝申し上げます」
 シグルド・ヴォルフガング(人狼の聖騎士・f06428)は集めた猟兵を前に、アックス&ウィザーズを侵食していた骸の月を完全に押し返したことへ、深々と敬礼をしながら祝辞を述べる。だが、彼がここに呼び出したのはその為ではないと誰もが思っている。それもその筈で、猟兵がこのグリモアベースに集結しているのはオブリビオンが世界を破滅に導こうとしていようとしている以外に他ならないのだ。

「同時に骸の月が消え去ったことにより、アックス&ウィザーズの猟書家を束ねていたオウガ・フォーミュラー、大天使ブラキエルの所在や目的も予知できました。彼は月面を拠点とし、骸の月が満月を完全に呑み込んだ夜に、神々が住まう天上界へ至る門を開こうとしました。骸の月が喪われた今、ブラキエルの野望は潰えたかに見えましたが、実は天上界への門を開く為の手立てはまだ残されていたのです。無差別大量虐殺、血の儀式にて」
 それならば、回りくどい事をせずに最初から配下の猟書家を使いそれを行えば良いのだが、敢えてこれを最終手段として残していたのは大天使として思うところが合ったのだろうと、シグルドは語る。ブラキエルの心中はあくまでも憶測に過ぎないが、彼が為そうとしていることは無辜の民への虐殺に他ならない。

「ブラキエルは今、廃城同然の荒城へと降り立っています。暴虐をなんとしても防ぐべく彼の元へ転送したいところでしたが、どうやら一歩遅かったようです。既に大天使は配下のオブリビオンを、無差別大量虐殺の尖兵を召喚しました。まずは、これらをどうにかしないと近隣の集落に大天使の軍勢は押し寄せ、惨たらしい惨劇を招くのは火を見るよりも明らかです」
 しかし、希望は失われていない。今まで数々の猟書家からの侵攻において出会った縁ある者たちも、何らかの兆候を捉えて大天使の軍勢に抗おうと事前に集結している。

「この満月の一夜、アックス&ウィザーズの危急存亡の秋であると言っても過言はありません。彼らは我ら猟兵ではありません。ですが、世界の危機を前に彼らは立ち上がりました。そうなれば、我々も遅れてはなりませんね」
 シグルドは静かに瞳を瞑り念じると、掌にフォースを、グリモアを展開してゲートを展開した。

「このゲートを潜れば、荒城の門前に出ます。既に激戦が繰り広げられるやもしれませんが、ご武運をお祈りします」


ノーマッド
 ドーモ、ノーマッドです。
 戦争前ですが、最強格のオウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』との決戦と相成りました。


●シナリオ解説
 アックス&ウィザーズの猟書家最終決戦シナリオとなります。
 大天使ブラキエルを20回倒せば完全に滅ぼすことなりますが、それよりも多く倒せば猟兵側に有利な事が起きるかもしれません。

 第一章は【集団戦】フラグメントです。
 決戦の舞台は、大天使ブラキエルが降り立った『無人の荒城』となります。
 城内からブラキエルが体に纏った「大天使の光輪」から、無数の「岩の腕を装備したオブリビオン軍団」を召喚し、周辺地域を虐殺・根絶しようとしています。
 この軍団は移植された「岩石の腕(岩腕)」によってユーベルコードの破壊力が大幅に強化されています。判定も難易度はやや難となり厳しい戦いとなりますが、増援として集結していたドワーフ戦士が共に戦ってくれます。
 彼らと共闘することで、プレイングボーナスが発生します。また彼らについては、過去の猟書家の侵攻シナリオをご参考くだされば幸いです。
 『沈む宝石と洞窟王国』
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=33622

 第二章は【ボス】フラグメントです。
 ブラキエルへと至る道の前に、最強の腹心が立ちはだかります。
 この敵は「絶対物質ブラキオン」と呼ばれる「未知の単一原子でできた鎧」を装備しています。この物質は絶対に破壊できないため、倒すには「鎧の僅かな隙間を狙う」しかありません。
 この章におけるプレイングボーナスは「鎧の隙間を狙う」となります。

 第三章も【ボス】フラグメントです。
 オウガ・フォーミュラ「ブラキエル」との初邂逅、そして最終決戦となります。ブラキエルの剣は失われていますが、その代わりに「大天使の光輪」「岩腕」「絶対物質ブラキオン」を駆使し、必ず先制攻撃をして来ます。
 これらの先制攻撃のUCへどのように対抗するかが、この章におけるプレイングボーナスとなります。しかし、判定用とは別に複数のUCを使用しての先制攻撃への対抗については無効となりますので、その点についてはご留意ください。

 状況が進展した際に、逐次情報の開示を行いますので、こちらもご了承ください。

 それでは、皆様の白熱する決戦に負けない熱いプレイングをお待ちしています。
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第1章 集団戦 『レッサーデーモン』

POW   :    悪魔の三叉槍
【手にした三叉槍】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    金縛りの呪言
【手で複雑な印を結んで】から【呪いの言葉】を放ち、【相手を金縛り状態にさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    呪いの鎖
【投げつけた三叉槍】が命中した対象を爆破し、更に互いを【呪われた漆黒の鎖】で繋ぐ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ヴァリアブス碑文とは別の石碑に残されたご先代様の予言通り、石たちの急にざわめきおったから工房から出てきてみれば……なんちゅうエライことになりおって」
 古代ドワーフが身に付けていた古めかしい鎧兜を纒ったドワーフ王国の王…『親方』が息を飲むのも無理はなかった。この地下王国を築いだ国父が残した石碑には『石たちがざわめき立つ時、世界は清浄なる破滅に見舞われる。月より降臨せし者、流星とともに地へ降り立つ』と記されており、親方は普段は宝石採掘で腕を振るうドワーフ戦士らと不吉な星を追って月夜を駆けた。
 だが、どうだろうか。辿り着いた先の主を失って幾歳月が経つ廃城より、岩の腕と化したレッサーデーモンの軍勢が満月に狂乱しながら咆哮を上げていた。次々と重なる轟きは大地を揺るがすようで、高台からみやるこちらにも空気を震わせながら眼前で対峙しているような重い重圧を与えてくる。

「親方ぁ! アレを!!」
 一人の若き血気盛んなドワーフ戦士が星空を指差した先には、幾つもの煌めきが迸っていた。荒城から出てこようとする悪魔の仲間がやって来たのかと一同がざわめき立つ中、親方はその光には見覚えがあった。希望の光だ。

「皆の衆、耳の穴をかっぽじって聞けぇい!! あれこそは数多もの界を渡りし勇者、猟兵の来訪を告げる光じゃ! わしらの地下王国は激流のリヴェンタと猟書家なる者の手により存亡の危機を迎えたが、あの者らの手により救われた。受けた恩義を今こそ返す時じゃ。でなければ、末代までの恥ぞぉ!! バケモノの岩の腕なんぞ、ワシらの手にかかれば木っ端微塵じゃ。ワシに続けぇい!!」
 親方がドワーフ戦士に檄を飛ばすと、先陣を切って普段はドワーフ地下王国の外で放し飼いにしている山ヤギと馬をかけ合わせたような生き物とともに高台を一気に駆け下る。それに続き、ドワーフ戦士らもレッサーデーモンにも負けない鬨の雄叫びを上げて大地を震わせながら、軍勢は怒涛の勢いで荒城へと激突しようとしていた。
政木・朱鞠
ブラキエルの不粋な陰謀を潰すためにも、とりあえず目の前のレッサーデーモン達を退けてこの世界への侵略を緩めないとね。
ドワーフのみんなには【誘惑】で【言いくるめ】で「この厄介事をさっさと解決して一緒にお酒飲もうよ」…って軽い感じで共闘体制にしたいね。

戦闘【POW】
相手は多勢だけど一体一討でレッサーデーモン達に対応して行くよ。
武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして、技能をいかして【鎧砕き】で防御を緩めて【串刺し】にして【傷口をえぐる】流れでダメージを狙うよ。
大がかりな技なので隙が多くなるリスクがあるけど『忍法・煉獄炮烙の刑』の炎で敵陣をを覆うように配置して追い打ち攻撃を仕掛けたいね。

アドリブ連帯歓迎。



「ブラキエルの不粋な陰謀を潰すためにも、とりあえず目の前のレッサーデーモン達を退けてこの世界への侵略を緩めないとね」
 ゲートの転送光より妖狐の化身忍者である政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)が、同じく転送された猟兵たちよりも早く先駆けて転送された。シュタッと身軽に着地すると、左右からは片や岩の腕を振りかざすレッサーデーモンらが、片やその腕を打ち砕かんと鬨の声を上げながらドワーフ戦士団が衝突しようとしているその時である。

「もみくちゃにされちゃたまったもんじゃないし、相手は多勢だけど一体一討で行きましょうか」
 ジャラっと重い音を鳴らして、つるバラのように刺々しいスパイクが不規則に並ぶ拷問具の鎖『荊野鎖』を伸ばしながら、朱鞠は駆け出した。

『ブゥモオオオオオォ!!』
 あたかもドワーフたちの先達に立つ形となった朱鞠に対し、レッサーデーモンが小癪なとばかりに手にした三叉槍を投げ放たんと大きく振り上げた。しかし、レッサーデーモンの巨体が仇となったか、もしくは岩の腕がもたらす剛力の代償なのか動きは干満で、胴体には隙が生じている。朱鞠は一瞬の隙を逃さぬ洞察力で見抜き、荊野鎖をレッサーデーモンの生身のままである胴体に向け荊野鎖の先端を振るい投げた。
 レッサーデーモンの逞しい肉体と言えども、荊野鎖はやすやすと貫いてみせる。節々にある棘が更に傷口を酷くズタズタにすれば、レッサーデーモンも苦痛の叫び声を上げるのも無理はなかった。だが、朱鞠は攻撃の手を緩めようとしない。蔵物と思わしき肉片が棘にこびりつく荊野鎖を引き抜けば、別のレッサーデーモンへと対象を変えて今度は脚部を狙った。
 とはいえ、やはり多勢に無勢。彼女の攻撃を阻害しようと別のレッサーデーモンが三叉槍を振るわれ、既のところで身を翻しながら攻撃を躱す。力任せに三叉槍が振り落とされた大地は砕かれ、もしこれをまともに食らってしまえばただでは済まないだろうと背中に冷たいものが走る。だが、決して彼女は独りではない。同じくこの先に居るはずの大天使の暴挙を防ぐため派遣された猟兵、それと猛牛のように屈強なドワーフ戦士も居るのだ。

「どっせぇぇぇい!!」
 目障りな虫を払い潰そうと三叉槍を掲げるレッサーデーモンに対し、ようやく追いついたドワーフ戦士が長柄のウォーハンマーを力任せに叩きつける。岩の腕はやすやすと砕かれ、片腕となったレッサーデーモンがこの状態でも痛みを感じるのか叫び声を上げた。

「ホッ。随分とまぁ、脆いもんじゃなぁ」
「お見事。ねぇ、この厄介事をさっさと解決したら一緒にお酒でも飲もうよ」
「ガハハハ! お主のようなべっぴんさんとか。そいつは悪い話ではない、のぉ!!」
 思いがけない言葉に気を良くしたドワーフが笑いながら、再び戦槌を大ぶりに振り落とす。

「このままじゃ埒があかないわ。纏めて始末するから、腕を重点的に狙って追い込んでちょうだい」
「ああ、任せておけぇい!」
 朱鞠は戦線の維持をドワーフ戦士たちに委ねると、後方に飛び移りながら印を切って集中する。様々な戦場内の雑音を意識を研ぎ澄ますことで払い、閉じていた瞼を見開けばUCは完成する。

「私の紅蓮の宴…篤と味わいなさい…貴方の罪が煉獄の炎で燃え尽きるその時まで…忍法・煉獄炮烙の刑!」
 召喚された業火を纏った銅製の拷問具が、ドワーフ戦士らに包囲されたレッサーデーモンの覆うようにずらりと並べられる。炮烙の刑とは俗に言う火あぶりの刑であるが、ただの火あぶりの刑ではない。特に彼女の場合においては、業火と共に熱せられて熱伝導性に優れた銅製の拷問具で文字通りに身を焼かせるのだ。拷問具と繋がり、四肢や胴体を絡める燃える鎖が咎人の身体を拘束すれば最後。後は一気に引き寄せられて焼き肉さながらの鉄板焼きとなるのである。

『グモォオオオオオッ!!』
 しかし幸いというべきか、レッサーデーモンは取り囲む拷問具が壁となって、どのように焼かれているかは見えない状態だ。唯一分かるのは、彼らの苦悶に満ちた断末魔。それと、遠い満月に届くかように立ち上る業火の篝火のみであるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
ドワーフの皆さんのお力をお借りしましょう
ふふ、とはいえ、何もあんな使い魔ごときにむきになって
ドワーフさんたちが危険を侵す必要はありません
皆さんはその自慢の怪力とハンマーで、思い切り大地を撃ち砕き
一斉に瓦礫と土埃と砂塵を巻き起こしてください
私はそれを鎖を舞わせて起こした旋風で
範囲攻撃として敵陣へ吹きつけましょう

土埃と瓦礫が口に入れば呪いの言葉も唱えることはできず
砂塵で目がくらめば印を結ぶこともできないでしょうからね、ふふ

さあ次はこちらの番です
砂塵に紛れて噴き出していた私の血の霧は既に戦場を覆っています
体内から引き裂かれて悪夢の底へ沈みなさい
大天使とやら、あなたもすぐに同じ末路を辿ることでしょう



 それでもレッサーデーモンの進撃は止まらない。彼らは怨嗟の言葉を吐きつけるかのように吠え鳴きながら、人々が住まう集落を目指して侵攻しようとしている。

『ぐぬぬ……いささか数が多すぎるわい』
 如何に力強いドワーフとしてもその数には限りがあり、彼らが張っている戦線にも薄い箇所が幾つかあった。いわゆる下級悪魔とも呼ばれるレッサーデーモンであったが、その知能は山羊頭の外見に見合わず賢い。彼らとしては召喚した主である大天使ブラキエルの命に従い、儀式を完遂すべく一団だった群れは散らばり始めた。
 ドワーフ戦士らもそれに対抗しようと隊伍を乱していたが、やはりそうなれば数の優劣で腕を岩と化させたレッサーデーモンの力で成すすべもなく突破されてしまうだろう。

「何もあんな使い魔ごときにむきになって、ドワーフさんたちが危険を侵す必要はありません。皆さんはその自慢の怪力とハンマーで思い切り大地を打ち砕き、一斉に瓦礫と土埃と砂塵を巻き起こしてください」
 移り変わる戦局への対応を迫られるドワーフたちに対し、黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は自らに考えがあると、彼らが手に持った武器で大地を砕くよう指示を送る。流石のドワーフも戸惑いはしたものの、数多の奇跡ともいえるUCを駆使する猟兵の言葉を信じた彼らは日頃の採掘作業で培った手腕を遺憾なく発揮させる。
 地下の硬い岩盤とは違い、常日頃から陽の光や風雨に晒されて風化しつつある岩はドワーフの怪力の前ではいとも容易く打ち砕かれる。それを何度も何度も入念に砕いていけば魅夜の指示通りに細かい粒子となった砂塵が、時折吹き抜ける夜風に煽られると上空へと舞い上がろうとする。

「上出来です。あちらを突破しようとするレッサーデーモンは私がお相手します。あなた方らは、この場をお守りください」
 そのように魅夜は告げると、咎人殺しの証でもある『悪夢』の中で自身を拘束していた先端に鈎の付いた鎖をビュンビュンと風を切りながら舞い始める。すると、それにより旋風が巻き起こり、ドワーフらが作り出した砂塵を巻き上げた。そしてそれを打ち出すかのように鎖をしならせながら叩き出せば、砂嵐はレッサーデーモンらを呑み込まんとばかりに牙を向かせ、敵陣へと襲いかかったろうとしている。

(土埃と瓦礫が口に入れば呪いの言葉も唱えることはできず、砂塵で目がくらめば印を結ぶこともできないでしょうからね、ふふ)
 不敵に笑みを零す魅夜だったが、その真意は彼女が生み出した黒い嵐へ身を投じたことで明らかとなる。

「鮮血の屍衣を纏いし呪いの鋼、喰らい尽くせ汚濁の魂」
 UCにより全身から鮮血の濃霧を纏わせた魅夜は、砂嵐を赤く染め上げて自らの身を意思を持つ砂塵へと変えていく。赤黒い暴風はレッサーデーモンを呑み込み、血の霧は既に戦場を覆った。
 大天使の御業により強大な力を持つに至ったとは言え、襲いかかる砂塵に対して武器で振り払おうとするが虚しく空を切るだけである。ならばと、身体を砂粒でズタズタになりながら印を結んで恨みの言葉を吐こうとしたが、これが魅夜が狙っていたものである。砂に紛れて鮮血の霧がレッサーデーモンの口吻から侵入して肺にまで到達すれば、内側から引き裂く鎖が顕現して臓物をズタズタに引っ掻き回す。レッサーデーモンの肺は自らの血に満たされることで溺れ、溢れ出た血を吐かせながら次々と両膝を突かせて倒れ込んでいった。残された骸は塵となり、吹き上げられた彼らもまた嵐の一部となっていく。

「大天使とやら、あなたもすぐに同じ末路を辿ることでしょう」
 死を帯びた錆びた鉄の臭いを周囲に放ちながら、魅夜は命を奪い取る砂嵐を次なる生贄の山羊の群れへと向かわせ、再び呑み込ませていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リリスフィア・スターライト
アドリブ歓迎、NGなし

ドワーフ達と連携してレッサーデーモンの軍団を壊滅させるよ
UC天体破局で大洪水を巻き起こして
レッサーデーモンが密集している所を纏めて押し流すよ
敵軍団の勢いが弱まった所でドワーフ達に攻めてもらえればかな
UCを発動する時はドワーフ達を巻き込まないようにだけは注意だね
ドワーフ達が戦い始めたら増援にやって来るレッサーデーモン達を
UCで押し流して戦いを優先に進めていくよ
接近戦になる場合は魔剣で応戦してUC発動の機会を作るよ
不利な状況に追い込まれてもドワーフ達を励ましながら
犠牲は出さずに切り抜ければかな

「希望を信じてくれたのだから応えないとだね」


ニクロム・チタノ
ボクドワーフのみんなには猟書家戦で助けてもらった恩があるんだよね
だから今度はボクが助けるよ!
三又槍のリーチもなかなかだけど何より厄介なのは岩石の腕だね
アレじゃまともに近づけないよ、なら
反抗の加護あり
敵に重力を掛けて動きを封じる、なんせそんな大きくて重たい岩石の腕を付けてるからね
ドワーフ達には護りの蒼焔で防御力の加護を
そしてボクは反抗の雷装で攻撃力アップだ!
やっぱり岩石の腕の攻撃が遅いね!
槍も長いせいでこの重力域じゃバランスが悪いでしょ?
これより反抗を開始する
どうか反抗の竜チタノの加護と導きを



「ここは狭まった谷状になっているのね」
 荒城の周囲は複雑に入り組んでおり、正面突破を諦めたレッサーデーモンの一団が地形を利用して抜けようとしている。月明かりに照らし出される形で彼らがV字状の谷底を進軍しているのを、リリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)は切り立った崖の上から見下ろしていた。
 彼女の周囲には付き添ったドワーフ戦士らもおり、彼らは谷底に下りて挟み撃ちにしようかと話し合っていたが、リリスフィアはある策を提案した。それはこの地形を利用して自らのUCで作り出した大洪水で彼らを飲み込もうとするもの。ドワーフ戦士らはこの谷が終わるところで待ち構えてもらい、弱ったレッサーデーモンを一網打尽とするものであった。

『なるほどのぅ。では、嬢ちゃんの作戦に乗ってみよう』
 こうして作戦は決行された。ドワーフたちが谷の出入り口付近に差し掛かったのを見計らい、リリスフィアは両手を組んで天に祈りだすよう詠唱を始める。

「唸れ雷光、轟け嵐、渦に飲まれ、全てを灰燼に帰せ!」
 するとビュウと風が吹き抜けて雷鳴が鳴り響き、大粒の雨が嵐となって谷内を覆い尽くす。前触れもなく起きた大雨にレッサーデーモンがうろたえながらも、水分を吸ってぬかるむ中を駆け回る。だが、雷槌が谷の壁に撃ち落とされると落石が発生した。雨水と合わさり起きた地すべりは、意思を持った山津波となってレッサーデーモンを呑み込もうと襲いかかる。
 彼らの殆どは大小様々の礫に呑まれたが、僅かな手勢は命からがら谷の抜け出した。しかし、それを待ち構えていたドワーフ戦士が奇襲を仕掛け、戦いはドワーフたちが優勢となっている。

「私も急がなくちゃ……。あら、あれは?」
 リリスフィアがドワーフらと合流して加勢すべく走る中、闇の中で煌々と光る目が見えた。

「あれは……レッサーデーモン!」
 別働隊のレッサーデーモンがドワーフ戦士に向かってきている。再びUCを発動しようとした彼女であったが、今起きている嵐を止めて別の場所に起こすには時間がかかってしまう。そうなれば、ドワーフたちを自らのUCで巻き込んでしまう恐れがあった。かくなる上は近接戦を覚悟して腰に下げた魔剣を手にしようとその時、ひとりの猟兵がレッサーデーモンの前に立ちはだかった。

「ボク、ドワーフのみんなには猟書家戦で助けてもらった恩があるんだよね。だから今度はボクが助けるよ!」
 妖刀から黒々しい妖気を迸らせながらニクロム・チタノ(反抗者・f32208)が威勢よく啖呵を切ってみせると、レッサーデーモンは咆哮を上げながら岩の腕を振り上げる。だが、その動きはどこか緩慢であり、振り落とされた三叉槍は大地を砕きながらもニクロムは悠々と回避してみせる。

「反抗の加護あり。そんな大きくて重たい岩石の腕を付けていたら、重力の負荷はもろに受けるのも無理はないよね」
 まるで鉄の塊のような重さとなった岩の腕。自然とレッサーデーモンの身体に血管が浮かび上がっており、その重みは筆舌に尽くしがたいものなのだろう。

「武器を振り上げているのなら、これで援護します!」
 ニクロムの戦い方を見て機転を利かせたリリスフィアが、稲妻の嵐を巻き起こさせる。ただでさえ重力の負荷でバランスを失っているレッサーデーモンに強風が襲いかかると、態勢を崩さないよう踏ん張ろうとする。だが、それに気を取られていてか振り上げた三叉槍が避雷針となって、稲妻が落ちてくるのに気付くのは遅かった。

「いいねぇ。それなら、ボクも反抗の雷装で攻撃力アップだ!」
 ニクロムは反抗の妖刀を掲げて、リリスフィアが生み出した稲妻を受け止める。妖気によって稲妻は刀身に帯電し、受けた雷槌で痺れているレッサーデーモンを切り抜いて更なる電流でその身を焦がしていく。

「待たせたのぉ! まさか増援が来るとは思ってもおらんかったわい。ガハハハ!」
「相手は動きが緩慢になってるけど、気を抜かないであの岩の腕を打ち砕いて!」
 谷から這い上がったレッサーデーモンを追撃していたドワーフ戦士の一部が、敵の増援の知らせを受けて「してやられたわい」と豪快に笑いながらニクロムに加勢し、リリスフィアもまた魔剣を抜いてドワーフたちを励ましながら応戦していく。

「これより反抗を開始する。どうか反抗の竜チタノの加護と導きを」
 ニクロムの掛け声に呼応して、ドワーフ戦士たちが腹の底からの声を張り上げて逆襲に転じていく。押し寄せるレッサーデーモンとの戦いの攻勢は、オブリビオン側から猟兵とドワーフ側に着々と傾いていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

パルピ・ペルポル
ドワーフの皆も親方もお久しぶり。相変わらずのようで何よりだわ。
って細かい話はもろもろ終わってからね。

雨紡ぎの風糸を周囲に展開して、敵の動きを阻害するわ。火事場のなんとやらも使ってがっしりとね。
いくら威力が上がろうともそもそも発動できなければ意味がないでしょう。
あ、徳用折り紙を通常サイズに切って作った万羽鶴も取り出して、敵の口に数匹つっこませて呪いの言葉も吐けないようにしておきましょう。
ま、そこまでやらなくても動きを止めた時点でドワーフ戦士たちが攻撃してくれるでしょうよ。
糸を絡めた時点でそのまま岩の腕ごと切り裂いてやることもできるからね。


ウルル・マーナガルム
混戦時こそ腕の見せ所
ふんぞりかえってるアイツに目にモノ見せてやろう!
『ええウルル、天使とダンスです』

ドワーフのおっちゃん達、背中はボクらに任せて
『一心不乱の侵撃と参りましょう』

フィルギア起動
ボクの姿を投影したハティを前線に配置
自分は距離を離して隠れる
ホログラムの射撃動作と、本物のボクの狙撃を同期
まるでボク自身がその場で応戦してる様に見せかける
MNNを介して上空から戦況を見て
押されそうな所を優先的に援護するよ

相手のUCはハティが受ける
そして動けなくなるのは相手だって同じ
軍勢の隙間を通すような狙撃
避けてみな、ってね!

使用スキル【迷彩、変装、陽動、情報収集、スナイパー】
ドローン撃墜可
連携歓迎


ヴィクトリア・アイニッヒ
大天使ブラキエル。
彼が目指す『天上界』という地が気にならないと言えば、嘘となります。
…が、それはそれ。その為に、無辜の人々を傷つける行いは断じて見過ごせません。
主よ、光り輝く様な悪意を祓う力を与え給え…!

コミュ力を活かしつつ、ドワーフの戦士団と意思疎通。
私がデーモンの脚を止めます。その隙に、トドメを。

友軍を鼓舞するように斧槍を掲げつつ、主への祈りを捧げて無数の光剣を召喚。
デーモンの四肢を串刺し動きを止めて、ドワーフ達が攻撃に動ける隙を作ります。
向けられる三叉槍も、光剣で迎撃して防ぎます。

大天使の加護があろうと、物質は物質。貫けぬ道理はありません。
その悪意、確りと縫い止めてみせましょう。



「ワシらが優勢じゃ、一気に巻き返すぞぉ!!」
 開戦時には数としてレッサーデーモンが優勢であったが、戦いの行方は今や猟兵とドワーフ戦士たちへ勝利の女神が微笑み勢いを増していく。親方とも呼ばれるドワーフ戦士を率いる王が戦士たちに激励を下せば、鼓舞されたドワーフらが唸るような雄叫びを上げながらレッサーデーモンを荒城側へと押し返しつつあった。

「ドワーフの皆も親方もお久しぶり。相変わらずのようで何よりだわ」
 喧騒に包まれた戦場であるが、聞き覚えのある声が親方の耳に止まり振り返る。そこには、いつしか激流のリヴェンタがドワーフ王国を沈めようとした際に救国の英雄として王国を救った猟兵のひとり、パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)が羽を羽ばたかせていた。

「おおっ、お主か。あの時は世話になったのぅ」
「ええ、こちらこそ。でも、細かい話はもろもろ終わってからね」
 お互いに再会を喜び合いたいのは山々であるが、今はそれどころではない。

(大天使ブラキエル。彼が目指す『天上界』という地が気にならないと言えば、嘘となります。……が、それはそれ。その為に、無辜の人々を傷つける行いは断じて見過ごせません)
 その傍ら、勇猛なドワーフ戦士団とともにヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f0408)も残敵の掃討にあたっていた。戦いに余裕が生まれてか、彼女の胸に大天使が目指そうとする天上界についての疑問が湧きつつある。だが、レッサーデーモンとの勝敗はまだ決していない。思わぬところで足をすくわれてはならぬと、彼女はそれ以上の詮索を止め、高らかに戦斧を斧槍を掲げた。ドワーフ戦士を率いて先頭に立つその姿は、凛とした佇まいの中に決意が秘められた女神のようにドワーフたちは見えただろう。

「主よ、光り輝く様な悪意を祓う力を与え給え…!」
 満月の夜の上空に、眩い光が迸る。レッサーデーモンに留まらず、地下生活が長いせいか強い光には反射的に反応してしまうドワーフも怯みはしたが、光り輝く無数の光剣は悪魔の群れへと降り注ぐ。それから逃れようとレッサーデーモンは散らばろうとした。が、見えない何かが彼らの動向を阻害させた。
 それは蜘蛛の糸より細く、柔軟性と強度を兼ね備えた透明な糸。フェアリーとして小柄な身体を利用し、戦場内に張り巡らされたパルピの雨紡ぎの風糸だ。だが、レッサーデーモンの屈強な力の前には、この程度の小細工などはほんの時間稼ぎにしかならない。しかしわずかに過ぎない時間稼ぎは、今の追い詰められた彼らにとって十分そのものである。

『グモォオオオオオッ!!』
 パルピのUCで高められた力で、岩の腕にも食い込まんとしながら絡まった雨紡ぎの風糸を引きちぎる暇を与えまいと、ヴィクトリアが放ったUC『神威の光剣』がレッサーデーモンの四肢に深々と突き刺さる。煌々と光る剣の熱で焼けるような激痛が走る悪魔の叫び声を、遠く離れた岩陰の横でスコープ越しに捉えている者がひとり居た。

「混戦時こそ腕の見せ所。ふんぞりかえってるアイツに目にモノ見せてやろう!」
『ええウルル、天使とダンスです』
 相棒兼お目付役の柴犬サイズ猟犬ロボット・ハティが駆け出すの見送り、ウルル・マーナガルム(グリムハンター・f33219)はマークスマンライフルを構えて、引き金に指を添える。夜も相まって、迷彩による偽装を施している彼の身体は岩と同化しているように遠目では見えるだろう。それが分かるのは、『アンサング』と呼ぶライフルが火を吹いた時だ。

 ──タァン!
 まず初弾は恨みつらみを顔に滲ませている山羊頭の額に一発撃ち込む。そして丁度タイミングが合ったか、ドワーフ戦士が銃声が鳴り響いたのと同時に身動きが取れないレッサーデーモンへと各々の武器を振り上げて追い詰める。

『グルルルル……』
 レッサーデーモンの一匹が銃声が鳴った方角を見据えた。彼にとっては銃という概念は知らないが、あの音が鳴れば仲間がやられると理解したのだろう。再び銃声は響き、ウルルの姿をレッサーデーモンの目が捉えて呪詛が籠もった呪言を放った。が、それは彼女ではない。厳密に言えば、ハティにより投影されているウルルの姿と同期しながら銃声を鳴らすホログラムだ。その証に、銃口の先には銃声を抑える役割を果たすサプレッサーが取り付けられているのだ。

『プロトコル3に則り指定装備を展開します。閃光と衝撃に備えてください。着弾まで残り3秒……2……1、着弾』
 レッサーデーモンが吐きかける呪詛も、ハティを介して展開されるUCによりウルルの元へは届かない。また一発、また一発と仲間が倒れていく中で、レッサーデーモンは次々と呪いの言葉を吐き続けるが届かないのだ。

「なんか、もう勝ったも同然だね」
「はい。そうですね」
 念には念と、徳用折り紙を通常サイズに切って折った万羽鶴の折り紙をパルピが操り、身動きの取れないレッサーデーモンの口へと入れると喉を塞いで言葉を詰まらせている。だが、遠くで囮となっているウルルの働きもあり、これ以上は紙の無駄だと折るのを止める彼女の側に控えているヴィクトリアは戦場を見渡した。
 今自らが放った神威の光剣で身動きが取れず、ドワーフ戦士が取り囲んで掃討しているのがレッサーデーモンの最後の一団であろう。後は大なり小なり、一匹か数匹かの小粒が残っている程度であろうか。大天使ブラキエルが奥で控えている荒城に突入するタイミングは今において他ならない。しかし、オブリビオンがまだ残っている中で、ドワーフ戦士を残して良いものかと悩む中、親方は難しい顔をしている彼女の心中を察したのかガハハと豪快に笑ってみせた。

「なぁに、心配おらんわい。さっきのような大軍団ならともかく、この数ならワシらにとっては朝飯前じゃ。たいそれたことをしでかす奴らの親玉を倒しに行くとええ」
 それに全て倒した頃を見計らっての増援があるかもしれないと、親方は付け足す。猟兵が城へ攻め入る突破口は開けたので後はドワーフたちに任せろとの言葉に甘え、ヴィクトリアは深々と礼をして鎧を鳴らしながら駆ける。

「親方。無茶はしないでね?」
「ああ、分かっとる分かっとる。さ、お主も早く行くと良い」
 折角の再会であったが、名残惜しそうに振り向くパルピに親方は大丈夫だと胸を叩いて見せて見送ると、よっこらせと重々しい戦槌を担ぎ上げる。そうして、まだまだ若いドワーフに負けておらんと、レッサーデーモンの岩の腕を軽々しく打ち砕いてみせた。

「さぁて、もうひと踏ん張りするかのぉ!」
 ドワーフとレッサーデーモンの怒号が未だ止まない戦場を背にして、様々な思いを胸にしながら朽ちかけた荒城の門を目指して猟兵たちは走った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『『戦竜』ベルセルク』

POW   :    戦火飛翔
対象の攻撃を軽減する【全てを壊し蝕み糧とする竜炎を纏い操る姿】に変身しつつ、【戦う程に際限なく鋭さを増す剣術や肉弾戦】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    竜圧選別
全身を【輝きに触れた全てを圧し砕く鮮血紋】で覆い、自身が敵から受けた【戦意や殺意、或いは畏怖や恐怖の総量】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ   :    ドラゴンブレス
【掃討用の超広範囲型から収束まで自在な吐息】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【や空間が竜呪の炎に包まれ、燃え広がりゆく】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は月宮・ユイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 レッサーデーモンらが出兵した門をくぐり、猟兵たちは所々朽ちつつある荒城の通路を突き進む。外で交戦を繰り広げているドワーフ戦士の喧騒が次第に遠のく中、道中に山羊頭の悪魔が潜んでいることも念頭に入れて警戒しながら城の中心部を目指していると、城内の広場なのか開けた空間へと出た。
 手入れをする者がいなくなって久しく、刺々しい植物のツルが壁全体を這っており、広場の中央には嘗ての繁栄の名残りであろう枯れた噴水跡らしきものが月明かりに照らされていた。そして、その奥にある通路は恐らく城塞の奥へと続く道であり、その手前に何者かが立ちはだかっていた。

『……やはり来たな。イェーガー』
 重々しい金属同士が擦れ合う甲冑独自の音を鳴らしながら、それは月夜の元に現れた。接合部同士のわずかな隙間から竜鱗を覗かせる鈍色のプレートメイルに身を纏った、戦竜と謳われる竜人のオブリビオン『ベルセルク』だ。

『この通路の奥を進めば、骸の海より我を呼び出した大天使が次なる儀式を果たそうとしている最中だ。しかし、我とて貴様らをむざむざ通す訳にもならん。如何なる攻撃をも、万物の理をも受け付けぬ鎧。ブラキオンを授けれられた分の仕事を果たさねば、強き魂を尊ぶ誇り高き暴れ竜にして戦争屋の名が折れるもの』
 討伐したドラゴンが最後に放った竜呪を受け、今や身も心もは竜の支配下となった戦士であるが、武人としての誉れを尊ぶ心意気はなおも失われておらずか。かつての勇者たちと壮絶なる相打ちを果たし、なおも復活を遂げた帝竜ヴァルギリオスを再び討った猟兵を前にし、彼は強者に挑む昂りを抑えていたが次第にそれも我慢の限界となった。
 高まる戦意に呼応するかのように彼の身体から黒き雷が迸ると、抜き身の刀身に血管のような模様が赤く光りながら走って浮かんでくる。そして、その鋭い切っ先を突きつけ、竜人は高らかに吠えた。

『来い、イェーガー。我を滅せぬならば、大天使をも滅ぼせぬと識れ。覚悟あらばこの我に挑むが良い!』
ニクロム・チタノ
アナタも竜なんだねでもアナタは圧政者に従っている、ボクは反抗するよ!
しかしなかなか強いねうん?炎を纏った!
いきなり戦闘力が増した
このままじゃ押し切られる、なんとか態勢を整えないと【オーラ防御】を展開相手の動きをよく見るんだどこかに必ず隙はある
そこ、【オーラ防御】を解いて【受け流し】からの
その圧政を食らえ
超重力じゃ鎧は砕けないでもそれでいい
収束した超重力はブラックホールを生む
アナタの身体に纏った竜炎を引き剥がす、呑み込まれないように踏ん張っていると隙ありだよ
ブラックホールに呑まれないようにしてるせいで隙間ができた!
反抗の一撃をくらえ


黒城・魅夜
ふふ、いっぱしの武人を気取りながら
鎧の力、それも他者から与えられた力を借りて粋がるなど笑止です
あなたの誉など所詮その程度の薄いもの
この漆黒の翼で真なる悪夢へ誘ってあげましょう

我がアイテム「呪刻の麗衣」は炎ごときに後れは取りませんが
物理的な炎ではなく魔力がこもるものなら
私もまた「呪詛」による「結界」を張ってその力を防ぎましょう

さらに「早業」による「範囲攻撃」により鎖を舞わせて「衝撃波」を発生
これを相手に叩きつけます
もちろん無効化されるのは承知の上ですが
ふふ、目的は「音」です
鎧が響かせる音の中に微かに混じる不協和音の場所を
「第六感」で「見切り」ます
そここそが鎧の隙間
さあ、我が鎖で食われ尽くしなさい



「アナタも竜なんだね。でもアナタは圧政者に従っている……ボクは反抗するよ!」
 反抗の竜チタノによって選ばれた者、ニクロム。一見すると両者は似たような物と思われるが、決定的に違うのは彼女は猟兵であり、彼はオブリビオンであるという点だ。
 破滅に向かう世界を救済する猟兵。世界を破滅に導こうとするオブリビオン。ベルセルクが如何に純粋な決闘の姿勢を示そうとも、大天使ブラキエルにより骸の海より組み上げられた手駒のひとつに過ぎない。
 大天使も彼の性格を考慮して、この場の守りを任せたのであろう。忠実な番犬として、天上界へ至るための次なる儀式への時間稼ぎとして、猟兵をこの場で食い止めるのがベルセルクに課せられた役割なのだからだ。

『ならば、こちらも全力を尽くそうぞ!』
 ベルセルクが吠えると身体に走っていた黒き雷がバチッと火花を弾けさせ、ブラキオンの鎧ごと黒き炎に包まれた。

「うん? 炎を纏った!」
 突然と全身を燃え盛らせながらこちらを睨む竜人にニクロムはたじろういてしまうが、ベルセルクはお構いなしにと体重を乗せた剣の一撃を彼女に下した。既のところで反抗の妖刀で切り払うが、ブラキオンという絶対的な守りを得たためか守りを捨てた熾烈な攻撃を繰り出し続けてくる。ニクロムが反撃の糸口を探りながらも攻防を繰り広げる中、ひとりの猟兵が加勢に乗り出した。

「ふふ、いっぱしの武人を気取りながら鎧の力、それも他者から与えられた力を借りて粋がるなど笑止です」
 絶対に破壊できない無敵の鎧に身を包んだ姿での戦法を嗤いながらも、魅夜が振るった鎖がヒュンと音を鳴らしてベルセルクの顔を掠めさせる。鱗を掠める程度の牽制であったが、こちらに注意を惹かせるのには成功した。剣戟の攻防を繰り広げるニクロムと距離を取りながら範囲を自在に絞れるブレスが吐き出されると、竜呪が込められた炎が生い茂ったツルに燃え移りながら魅夜を飲み込もうとした。

「あなたの誉など所詮その程度の薄いもの。この漆黒の翼で真なる悪夢へ誘ってあげましょう」
 目には目、歯には歯。呪いには呪いと、吐かれたブレスが物理的な炎ではなく魔力がこもるものならばと、魅夜が身に纏う鎖の付いた黒革のビスチェが呪詛が込められた魔力によって呪炎を中和させながら、冷ややかな趣で悠然と炎の中に立っていた。

『フン、与えられたものを有意義に活用しているまでよ。どうとでも言うが良い』
 一旦仕切り直す形となったベルセルクが呪炎に焼かれない魅夜を様子を伺い、ならば自身の体術でと跳ぼうとした。が、その時に違和感を感じる。身体が鉛になったか、それとも見えない重りが身体に纏わりついている感覚が彼の身体に伸し掛かろうとしていた。

「かかったようだね。その圧政を、反抗の一撃を食らえ!」
 空間に生じたひとつの綻びがニクロムの叫び声とともに崩れ、ベルセルクの背後に生じた超重力の歪み……UCにより作られしブラックホールが呑み込まんと牙を向かせた。

『ぐぅ……ッ! 小賢しい真似を』
「こちらもお忘れなく、ですわよ?」
 魅夜は再び鎖を振るい舞わさせると、鎖の繋ぎ目で織りなす風切音が衝撃波となって周囲を取り囲んでいた呪炎を払い消していく。ベルセルクの身体を覆う炎と吐かれた炎が全てを呑み込まんとするブラックホールに吸い込まれ、身に纏うブラキオンの姿が再び現れた。同時に魅夜の鎖が生じさせた風圧が、払った炎とともにぶつかりあった。

「……聞こえましたわ。さあ、我が鎖で食われ尽くしなさい」
 瞼を閉じて意識を研ぎ澄まし、わずかに手首を傾けた魅夜が鎖を先端をベルセルクへと振るい落とす。彼女の耳はベルセルクが苦悶する声、息巻くニクロムの声、彼女が作り出したブラックホールが奏でる音などの他に、先程浴びせた衝撃波が鎧を響かせた事によって聞こえた音を捉えていた。その中で僅かに混じった不協和音、全身を包む鎧の綻びとなる隙間を魅夜は聞き取ったのだ。
 鎖が意思を持った生物のように弧を描きながら、ベルセルクが身につけるブラキオンを僅かに接触しながら掠める。そして全ての鎖が通過しきると同時に彼はようやくニクロムが作り出したブラックホールの超重力圏内から脱して身体を自由とさせたが、鎧の隙間から赤い液体が伝わり落ちてくる。魅夜が聞き取った箇所、すなわち絶対的な防御力を誇る鎧の隙間を鎖が竜鱗ごと肉をこそぎ落としたのだ。
 追撃しようと鎖の軌道を変えると、遠心力により鎖同士が繋がり合う目に詰まった血肉がふるい落とされる。それらは蒼い満月に染みをつけるように高らかに宙を舞い、僅かにくすぶる呪炎へと落ちて灼かれていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ウルル・マーナガルム
アイテム破損OK

おわー、スッゴい!
竜人とか見るの初めてだから、ちょーっとだけビックリ
でも倒す手立てが無いワケじゃない
狙撃手としては賭けの作戦、だけど
『ええ、"挑む者に勝利あり"です』

さっきと同じくボクのホログラムを纏ったハティが陽動
けど直ぐに囮だってバレるかも
そしたら高所に隠したドローンから発砲音を再生
背後から音がすれば流石にヒヤッとしてくれるかな
本体は其処にいるって錯覚してくれたら儲けもの
意識がそれた隙にハティとボクが入れ替わる
居場所がバレたって感じで逃げるのはホログラム
前線に残ってるのは本物のボクだ
鎧のちょっとの隙間だって、至近距離なら狙うのは簡単
ハティには武装が無いからって油断したね



(おわー、スッゴい! 竜人とか見るの初めてだから、ちょーっとだけビックリ)
 先程の猟兵らと戦竜が繰り広げた攻防を、ウルルは物陰から一部始終を覗き込んで感涙を受けていた。尤も、この場合は竜派であるドラゴニアンをまだ見たこともない彼にとって初めて見たものによるものが強い。出身であるUDCアースにおいては小説やゲームなどの空想的な娯楽ではありきたりな竜人ではあるが、いざ実物を前にすれば狩人にまつわる童話を綴られた本のページを擦り切れるまで読んだことのある彼女にとって、感慨もひとしおと言った具合だろう。
 とは言え、このまま眺めている訳にも行かない。如何に強大な相手であっても、決して倒す手立てが無い訳でもない。本来であれば遠方より狙いを研ぎ澄ます狙撃手としては無謀な賭けに近い作戦ではあるが、勝算がゼロでなければ大博打と言えども勝負をする価値はある。

「じゃあ、ハティ。無茶させてしまうけど、よろしく」
『ええ、任されました。"挑む者に勝利あり"です』
 狙撃手とツーマンセルで行動をともにする観測手でもありウルルの良き相棒である機械じかけのスポッターハウンド『ハティ』が、電子的な抑揚のない声による励ましの言葉を残して走り出す。作戦はレッサーデーモンを騙したように、ハティに搭載された試製7号高画質ホログラム投影機『フィルギア』が立体的なウルルの姿を投影させ、それを囮として使うものだ。しかし、先程は遠距離であるという条件下であったが、今回は城内の庭園跡という限られた空間内での戦いである。普段であれば安全な距離を取るべきだろうが、強靭な竜人の一撃により大破する可能性もありえるところだ。しかし、彼女にとってはウルルの活躍が自ら考えた出した作戦の成否にかかってくる。忠実なロボット犬は主の使命を全うすべく、迷うこと無く行動に移すはずである。その不安を払拭させようと、彼女はしきりに弾が装填されているか、マークスマンライフルの槓桿を僅かに引いて覗かせる排莢口から薬室内をチェックする。

(……確かに弾は装填されてるね。さっき引いたばかりだし当然か)
 ──全ては自分に掛かっている。
 普段は強気の自慢屋である彼女も、ベルセルクが暴れている音のみを聞きながら姿を隠す張り詰めた緊張感の中で口の中が乾いてくる。相手に聞き取られないよう、歯と歯茎の間に舌先を押し付けながら唾液を集めて突如覚えた乾きを癒すと銃声が鳴り響いた。勿論彼女が暴発したものではなく、ハティに搭載されているドローンが再生した陽動だ。
 ともなれば、ハティはまだ無事という証でもある。相棒がまだ無事という安堵の気持ちの中、ライフルのグリップを握りしめて彼の帰りを只々待ち続ける。

『……ただいま、戻りました』
 予定通りにハティは帰ってきた。だが無事とは言えず、右前足を損壊して喪っている状態であった。残された三本の足で、痛々しくも何とかバランスを保つ相棒を前に彼女は掛ける言葉を失いかけたが、毅然とした態度で再びオーダーを下す。

「…ご苦労さま。それじゃ、予定通りによろしくね?」
『そこか。我とのかくれんぼもそこまでだ』
 ベルセルクの低い声が聞こえてくる。ハティがここまで誘導したのだから、全て予定通りだ。あとはこちらが仕上げるだけである。

「うわぁ~~~っ! 居場所がばれた、もうおしまいだぁ!!」
 そう叫ぶと、ウルルは背中を見せながら隠れていた物陰から出ると一目散に逃げ出す。その姿に舌打ちをしたベルセルクが追いかけようとすると、むくりと堆積した枯れた植物の山が盛り上がった。その中から銃口を覗かせて居るのはウルル本人に他ならない。
 つまるところ、ハティが再生する音は電子的なものであるが、その思い込みを突いて彼女本人の肉声を上げたのだ。声ではバレても、精巧な三次元ホログラム映像はまるで生きているようであるので、ベルセルクが騙されるのも無理はない。
 ここまで至近距離であれば、狙いを外すことはない……。照準から覗かせる鎧の隙間に狙いを合わせて『槍を放て』と呟くと、ウルルは引き金を静かに落とした。放たれた銃弾が鎧代わりともなる竜鱗の合わさり目を穿って血肉が爆ぜる。背後からの奇襲に戦竜が激痛に苛まれて反撃されない間に、彼女は起き上がると速やかに移動先としていた物陰へと走り去るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リリスフィア・スターライト
連携、アドリブ可、苦戦描写OK

強気で接近戦が得意な人格のリリスで参加ね
さすがの強敵といった所ね
望み通り覚悟を持って挑んでやるわ
長引けば不利になるし一気に勝負を付けるわ
真の姿を解放して全力で挑むわね
華炎連斬でまずは炎で『戦竜』ベルセルクを攻撃するわ
向こうも強力な竜炎を操る存在、放った炎は
打ち消されるだろうけれど炎に気を取られら隙に剣で突き刺すわ
狙うはベルセルクの鎧の隙間ね
部位は狙いやすいわき腹がいいかしらね
手傷を負わせられたらそこを重点的に狙っていくわよ
ベルセルクの反撃も剣で凌ぎつつ攻撃の機会は逃さないわ
仲間と連携できるなら私が隙を作るようにして
仲間が思う存分に攻撃できるようにするわ


政木・朱鞠
ふーん…心昂ぶって勝負に興じちゃうタイプなんだね…強い思いと結びついたオブリビオンは何でわからず屋さんになっちゃうのかな~。
私達の進攻を邪魔するとあれば、頭デッカチの大天使に加担した咎で貴方にはオヤスミナサイして貰うんだよ…。

戦闘【SPD】
歴戦の勇士は侮らないスタイルで『忍法・狐龍変化身』を使用してちょっとスピード面を強化状態で迎え撃つよ。
プレートメイルの強度はどれ位かは未知数だし、正々堂々とは言い難いけど…得物は『風狸ノ脛当』をチョイスして、【スライディング】技能を使いバランスを崩して、関節部を狙ってキック技で【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の合わせで間を置ずダメージを狙いたい。

アドリブ連帯歓迎


ヴィクトリア・アイニッヒ
成程、中々の手練のようです。
その上で如何なる攻撃をも弾くという大天使の加護を得たとなれば…ただ戦うだけでは、苦戦は必至。

ですが、私達も退けません。
その武を越え、大天使へ挑まねば。

『陽光よ、悪意を切り裂け』を使用。
絶対不壊のその鎧。
全てを壊し蝕むという炎も、確かに厄介です。
厄介ですが…ならば、その悪意『のみ』を斬りましょう。

奉じる神へと祈りを捧げ、纏う聖気(オーラ防御)と破魔の力を高め、白兵戦を挑む。
剣や爪の動きを見切り、武器で受けます。
守りの戦いは私の得手です。相手が焦れるまで耐え…隙を見て、斧槍を薙ぎ払います。

悪意のみを斬る斬撃ならば、肉体を固めても通じるはず。
主よ、悪意を挫く力を──!


パルピ・ペルポル
まぁ互いの目的が噛み合わない以上、やりあうしかないってことよね。

まずは徳用折り紙を通常サイズに切って作った万羽鶴を周囲に展開、さらにそれを有為なる写しで増やして戦場一杯に埋め尽くして目くらましにするわ。
折り鶴の間に雨紡ぎの風糸を展開して敵の行動を阻害、その隙に鎧の隙間に古竜の骨のマン・ゴーシュを突き立ててやるわ。これもUCで増やした上でね。
穢れを知らぬ薔薇の蕾を投げつけてさらに拘束したら隙間という隙間に古竜の骨のマン・ゴーシュを突き立てておけばそちらのUCは効力を発揮しきれないでしょ。

小さいからって無意識で油断してたりはしないわよ、ね?



 一発の銃声が中庭に鳴り響いた。鎧の隙間に銃撃を見舞われたベルセルクだったが、穿たれた傷跡から流れ出る鮮血が鮮血紋として鎧の表面に走っていく。

『思わぬ痛手を受けたが、良い気付けとなった。思う存分やろうではないか!』
「ふーん…心昂ぶって勝負に興じちゃうタイプなんだね…。強い思いと結びついたオブリビオンは何でわからず屋さんになっちゃうのかな~」
 傷は受けたが尚も戦意を高めるベルセルクに対し、朱鞠は呆れた様子で冗談を交えながら彼の出方を待っていた。

「成程、中々の手練のようです」
「ええ。さすがの強敵といった所ね」
 そんな彼女とは対象的に、斧槍を構えたヴィクトリアとリリスフィアの内に眠る剣士としての憧れを具現化した人格『リリス』は、感心しながらもベルセルクの出方を伺っている。

「まぁ、互いの目的が噛み合わない以上、やりあうしかないってことよね」

「その上で如何なる攻撃をも弾くという大天使の加護を得たとなれば……ただ戦うだけでは、苦戦は必至。ですが、私達も退けません。その武を越え、大天使へ挑まねば」
 話し合いをしても平行線で堂々巡りするだけだと覚悟を決めたパルピに続きヴィクトリアが言うように、戦いはここで終わりではないのだ。この奥に控えている大天使ブラキエルとの戦いを控えている以上は、損耗を限りなく抑えなければならない。しかし、相手は戦いを尊んで悦びとする、無敵の鎧に身を包んだ竜の戦士である。体力や戦力を温存しようとする生半可な戦いでは、かえってこちらの損害が増すのは目に見えている。

「望み通り覚悟を持って挑んでやるわよ。長引けば不利になるし一気に勝負を付けるわ」
『それは我とて同じこと。では、いくぞッ!』
 全てを壊して蝕みながら激しさを増す竜炎が、再びベルセルクの身体に迸った。負った傷口から伝い流れ落ちる血を柄で吸った剣も、より禍々しさを増していた。

「たいした時間稼ぎにもならないだろうけど、みんな行って!」
 パルピが1辺15mにもなる折り紙徳用折り紙を通常サイズに切り折った万羽鶴を周囲に展開され、さらにそれらがUC『有為なる写し』により倍々と増えて戦場一杯に埋め尽くして目くらましにしようとした。だが、ベルセルクの鎧に刻まれた鮮血紋が竜炎の煌きが周囲を取り巻く難燃素材の紙で折られた鶴の折り紙を迸る闘気でくしゃくしゃと潰して燃やしていく。それでもパルピの思惑通り、彼の目を欺けることには成功する。

「この距離なら外さない! 焼き払い斬り裂いてあげるわ!」
 真の姿を開放したリリスが自らが愛用する魔剣の刀身に炎を纏わせるUC『華炎連斬』。折り紙の壁から強襲した彼女が振るった炎がベルセルクの竜炎と衝突しあって、鎧に走った鮮血紋を焦がそうとする。しかし、振るわれた魔剣の剣戟をベルセルクが切り払うと、彼の戦意の呼応して激しさをより一層増していく炎がそれを拒んで呑み込もうとする。その時、ヴィクトリアの斧槍がブラキオンの表面に刻まれた血の刻印を削り掠め、振るわれた風圧によって炎が揺らめいた。

「全てを壊し蝕むという炎も、確かに厄介です。厄介ですが…ならば、その悪意『のみ』を斬りましょう。主よ、悪意を挫く力を──! 浄化せよ! 神威の刃よ!!」
 ブラキオンの護りは絶対的であり、斧槍の研ぎ澄まされた刃先は掠めただけでも、火花を散らしながら砥石に掛けられたように刮がれてしまう。だが、後付であるベルセルクの竜炎と鮮血紋には効果があった。竜の呪いに起因するそれらは、ヴィクトリアが奉じる太陽神への祈りによる聖気を纏った斧槍により断片的に祓わた。回路のように走り巡らされている鮮血紋の一部が寸断されれば、こころなしかベルセルクの動きが緩慢になったようにも思える。

『そう来なくてはなァッ!!』
 だが、竜本来の強靭は健在である。複数の猟兵を相手にしながらも、ベルセルクは己の鋭い竜爪を武器としてヴィクトリアをいなそうと豪腕を振るった。自身の強化を促す刻印が削がれたとは言え、竜の恐ろしさまでは喪われていない。直撃を受ければ鉄の鎧をいとも容易く貫くであろう爪先を、守りの戦いは得手とする彼女はベルセルクの腕を斧槍の太刀打ちで振り払い、軌道を反らしながら再び刃先を振るって牽制した。

(主よ、悪意を挫く力を──!)
 再び振られた斧槍が刃先を鈍らせながら鮮血紋を刮がせる。纏う龍炎もそれに合わせて消えていくのを狙い、朱鞠がベルセルクへ関節部を狙った体術を繰り出した。

「抑えし我が狐龍の力…制御拘束術第壱式にて…強制解放!」
 朱鞠にとって、プレートメイル状に形成されたブラキオンの強度は未知数であり、破壊できずとも衝撃を伝播させてダメージを与えれるかは大きな懸念材料だった。それに、仮に衝撃を伝えれても、竜人の鱗が緩衝材として鎧下の役割を担うことも予想される。ならばと、彼女は可動域が多くあり、なおかつ全身鎧の機動性を確保するにあたり重要な部位ともなる脚部に狙いを絞った。
 今まではベルセルクが身に纏う竜炎で迂闊に接近することは憚れていたが、リリスとヴィクトリアの連携により炎の勢いが衰えたのを好機と彼女は捉えた。そこで跳躍力を補助する忍具と、自身の能力の一部を真の姿と同等にブーストさせたスピードで一気に跳んだのだ。速度を上げて破壊力を増した蹴りは、関節部という生物の弱点を的確に捉えて当てられる。流石に竜として頑丈なのか折れはしなかったが、ベルセルクの動きを弱めるのには成功し、朱鞠に注意が向けられたことに生じた隙を狙ってリリスが魔剣を腹部の隙間に突き立てようと疾走った。

『ッ! そこか!!』
 だが、ベルセルクは予測できていたた。ブラキオンの隙間を狙わねば自身にダメージを与えられないという限られた条件下ならではであろう。しかし、迎撃しようと身体を翻したその時、何者かが彼の耳元で囁いた。

「私が小さいからって無意識で油断してたりはしないわよ、ね?」
 パルピの声であった。彼女は潰れて燃え消えていく折り紙に紛れながら、三人を同時に相手にしているベルセルクの首元にまで忍び寄り、ぷすりと古竜の骨で出来た短剣を鱗の合わさり目に突き刺した。蝶のように舞い蜂のように刺したパルピは短剣を引き抜くと、そこに何かを捻じり込んでベルセルクに払われない内に離脱する。彼がそれを抜こうとした時には、既に手遅れであった。彼女が短剣で作り出した傷口に差されたのは、白いバラの蕾である。だが、それはただのバラではない。血を吸い上げ真紅の薔薇を咲かせる魔性のバラである。挿し木されたそれは、休息に根を張ってベルセルクの身体の中を侵食していく。脊髄も、神経も絡んで締められ、彼は内なる激痛に襲われた。そして、血を吸った白いバラが赤いバラに変わると、勝負に決着が付いた。

「魔剣よ、燃やし尽くせ!
 リリスの魔剣がベルセルクの腹部に深々と突き立てられる。そして、彼女の命により魔剣が熱を帯びて炎を生み出し、ベルセルクの体内から燃やし尽くし始めた。

『……は、ハハハハッ! 我が生、ここまで。よき戦いで……あった。さらばだッ!!』
 その言葉を残し、ベルセルクの身体は業火に呑み込まれた。火柱は月にまで届くかのように燃え盛っていき、程なくして彼の身体はブラキオンのみを残して灰となり、鎧もまたぐずぐずと崩れてただの土塊へと還っていく。
 文字通り闘いに生命を燃やした戦竜の最期を見届た猟兵は、彼が守っていた荒城の最奥部に通じる通路へと急いでいく。あとに残されたのは、月明かりに照らされながら灰の山に咲いた一輪の赤いバラのみだけであり、それは戦竜の闘いを称える墓標のようでもあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『大天使ブラキエル』

POW   :    岩腕
単純で重い【岩石でできた巨大な腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    絶対物質ブラキオン
【「絶対物質ブラキオン」の鎧】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、「絶対物質ブラキオン」の鎧から何度でも発動できる。
WIZ   :    大天使の光輪
自身が装備する【大天使の光輪】から【破壊の光】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【徐々に石化】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 中庭での戦いを制した猟兵は、ブラキオンを身に纏ったオブリビオンが守っていた通路の先に躍り出た。
 そこは礼拝堂を兼ねた玉座の広間であった。所々崩れた壁や天井には人と天使らしき宗教画らしきものが描かれていた痕跡が色褪せながらも残されており、中庭同様にかつての繁栄が偲ばれるものでもある。
 瓦礫を乗り越えながら奥へ、奥へと進むと、崩れ落ちた天井から差し込める月明かりで照らされている者が居た。あたかも宗教画から出てきたような耽美的な、穢れなき純白な二対の翼で神々しい剣を抱く威厳を醸し出しながら佇むそれは天使であった。大天使ブラキエルである。

「……我が友を葬り、ブラキオンを授けた呪われし狂戦士をも倒し、やはりここにまで至たったか。六番目の猟兵たちよ」
 目の前にする猟兵らに送られる刺すような視線は、盟友であり朋友でもあった書架の王『ブックドミネーター』を、アリスラビリンスにて骸の海へ葬り去った敵愾心でもあり敬意が混じったものであった。その素振りを見る限りでは、もしかしたら敢えて城外へと出陣させずに中庭に配置していたオブリビオンは、ブックドミネーターを倒した猟兵は如何なるものかと試すものであったのかもしれない。

「我ら猟書家。求むるは『識』なれど、武と殺戮を躊躇いはせぬ。我は、天上界の扉を開く僅かな可能性を実行しよう……。六番目の猟兵よ。その命と血、天上界の扉を開く贄となって貰う」
 そう言い放つと、ブラキエルは剣を手にして翼を広げた。もし、あのレッサーデーモンの軍勢も猟兵を試す小手先程度であったとすれば、真の大殺戮はこの後に起きるのであろう。そうはさせまいと猟兵らは各々の武器を構える中で、ブラキエルは静かに浅く瞼を瞑り、そして確固たる眼差しを見開かせた。

 ──されど我が友、書架の王が望むなら。肉体を失い、剣だけの姿と成り果てても尚、望むなら……。
 ──ならば還ろう。君を連れて。わが愛と憎しみを満たす、懐かしの天上界へ。
黒城・魅夜
ブックドミネーターのことは覚えていますよ
たっぷり血を吸わせてもらいましたからね
ふふ、もっともその味は雑味が強く浮ついていて
お世辞にも美味ではありませんでしたが

結界を張って空間を歪曲させ破壊光を逸らします
もちろんそれだけでは抗しきれないでしょうが
さらに漆黒のオーラを展開し光を弱めで中和
ダメージは覚悟と激痛耐性で耐えながら
早業で瞬時に間合いを詰めます

徐々に石化?気の長い話です
戦場では一瞬が勝負を分けるのですよ
完全に石化される前にUCを発動
ええ、先ほど受けた傷それ自体が布石
傷から流れた血潮は既に真紅の胡蝶となって舞っています
朽ち果てるといいでしょう
大事な親友に裏切られるという素敵な夢を見ながらね


ニクロム・チタノ
え、今回は剣持ってるの?
その対策はしてないよ
反抗の導きを信じてやってみるよ
ボクの真の名紅明日香の名を以てチタノヤタテを降臨させる
チタノヤタテは八つの盾と八つの重力槍をもつ
八つの盾で先制攻撃を防ぐ八つの盾で壁を作って視界を遮ってる間に重力槍七つを射出準備
石化した盾を砕いた瞬間に七つの重力槍を岩石の腕に射出、岩石の腕にくらわして重力槍を開放して超重力で岩石の腕を地面に叩き落として接近
八つ目の重力槍を剣を持っている腕にくらわして剣を防いで渾身の一撃を叩き込む!
どうか反抗の加護を、覚悟して行くよ



「我が友、と申されますと……。ええ、ブックドミネーターのことは覚えていますよ」
 手にした剣を猟兵たちの前に突きつける大天使ブラキエル。一触即発の空気の中、魅夜は彼が先程零した『我が友』。つまりは、アリスラビリンスで勃発した『はじまりのアリス』にして『はじまりのオウガ』であるオウガ・オリジンと、その力を狙った猟書家らによる三つ巴の戦いであった『迷宮災厄戦』。猟書家勢力の筆頭格であったブックドミネーターの事を指しているとに気付くと、人差し指を曲げさせながら手を口元を隠しながらくすくすと当時の事を思い出す。

『……何を嗤っている?』
「ふふ、もっともその味は雑味が強く浮ついていて……。お世辞にも美味ではありませんでしたが、たっぷり血を吸わせてもらいましたからね」
 まさに売り言葉に買い言葉。大天使は吸血猟兵として盟友の血を吸い尽くし、且つ愚弄する者を前に眉一つ動かさずに冷たい眼光で睨みつけた。

『では、その所業に見合った罰を大天使の名の元に下そう』
 中性的とも無性的とも捉えられるブラキエルの身体を包んでいる大天使の光輪が眩い光を発した。光は礼拝堂を兼ねて奥行きがある玉座の広間を照らすと、何かが上からゴトリと落ちてきて砕け散った。だが、ニクロムはそれが何であるか直様と理解できた。

「え、ちょっと待って。これって…コウモリ!?」
 そう、石化したコウモリの残骸である。遠い昔に主を無くした荒城が崩れて出来たのであろう天上に大きく開けられた穴から、ここはコウモリの巣となっていた。しかし、運悪く逃げ遅れたコウモリがこうして石となって落ちてきた原因を探ると、やはりブラキエルが発している光なのだろう。事実、この光を浴びているニクロム自体も徐々に身体が石に変わっていくような鈍い痺れが体中に走りつつある。小さなコウモリですぐに石化したとすれば人間サイズではすぐに石へとはならないだろうが、何れにしても時間の問題には変わりないだろう。だが、ブラキエルの眉が密かに動いた。何故、石化しないのかとでも言うように。

「こうなれば…反抗の導きを信じてやってみるよ! ボクの名、紅明日香の名を以て!」
 ニクロムが反抗の竜チタノに選ばれるより以前の、実験体として研究所で与えられたナンバー2966(ニクロム)以前の名、紅明日香を名乗ると半面の覗き穴より蒼焔を迸発させながら、胸に埋め込まれている反抗の印を蒼く燃え上げさせた。身体の中で蝕む石化の呪を燃やし尽くすかのように蒼焔が激しく燃え盛りながら、守護竜チタノヤタテの力を身体に宿し、真の姿としてその力を解放させた。

「ええ、ええ。不思議で堪らないでしょう? 何故石化しないのだ、と」
 魅夜のブラキエルへ向けた挑発は意図的であり、時間稼ぎでもあった。彼の行動原理が盟友であったブックドミネーターに対する想いであれば、尚更やりやすいものである。夜闇に紛らわせていた漆黒のオーラを結界代わりとしてブラキエルが放った生ける者全てを石へと変える破壊の光を和らげていたのだ。だが、完全にとは言えずに徐々に体の石化して今は脚の感覚が失われていくが、あのコウモリのようにまともに浴びていれば今頃は物言わぬ石像へと成り果てていたかもしれない。しかし、念にはとで事前に備えていた魅夜の機転により、全滅の危機は脱した。明日香の小さい身体から絶えず噴出させる蒼焔が花弁のように重なりあった八つの盾を形成させながらブラキエルへと向けられたが、焔の盾撃は大天使が手にする剣により難なくと切り払われる。だが、次なる手は既に打たれていた。

『やはり、被せてきたか』
 八つの蒼焔の盾のあとに続いて放たれた七槍による重力槍が、ブラキエルの眼前に迫ろうとしている。敢えて盾となる物を放った時点で予測をしていた彼は、剣を握っていない空いた腕を地面に向けさせると石床を迫り出しながら上空へと視線を送る。

『だが、本命はこちらだ』
 一の矢として、石化の光を遮りながらも迫りくる八つの燃え盛る盾。二の矢としての、投げ放たれた七槍による重力の槍。そして本命となる三の矢は、残された一槍の重力槍。盾と槍を囮として、焔の勢いを衰えさせない明日香が反抗を成就させる乾坤一擲の投擲を投げ放っていた。本来であれば死角から迫りくるはずであった本命の重力槍に対し、ブラキエルは取り乱す事無く剣を振るった。狙い通りであれば心臓を狙った重力の穂先であったが、剣身の面で摩擦による火花を立てさせながら払うことで軌道をずらし、彼の横腹を掠めて床を突き破って轟音とともに地面に深々と刺さり落ちる。
 彫刻のようなブラキエルの身体から生者の証である赤い血が滴り降りてくるのを、遠巻きに確認した魅夜が再び笑い出す。

『満足に動けぬ身でまた笑うとは……虚勢も良いところだ。我が友への敵であろうが、ここにまで至ったせめてもの手向けだ。苦痛もなく処しよう』
「ふふふ……。いえ、まさかこのように事が運ぶだなんて。何もかも予想通りで、思わず笑いを堪えることが出来ませんでしたわ」
 状況が状況であるので負け惜しみとも捉えられる彼女の言葉であったが、その意図を僅かな違和感で大天使がハッと気付く。

「ええ、先ほど受けた傷。それ自体が布石。本来であれば私自身がこの手で白い肌を引き裂いてあげたいところでしたが、お仲間のニクロムさん……いえ、今は明日香さんでしたか。彼女のご助力を得て、今ここに傷から流れた血潮は既に真紅の胡蝶となって舞うことになります」
 再び聞こえる黒き貴婦人の笑い声。流れ落ちた血溜まりと伝う鮮血を触媒にして、ブラキエルの周囲に魅夜のUCにより作られし紅の鱗粉で彩られた蝶が一斉に乱れ飛んだ。ブラキエルの瞳には、共に天上界へ至る扉を開く盟友であったブックドミネーターの姿が幾重にも重なり合って周囲を取り囲んでいる様が視えた。

 ──これは我が友の姿を騙った幻惑だ。
 生前と何一つ変わらないドラゴンロード・ブックドミネーターらは、UCで作られた幻であるとブラキエルは理解していた。だが、その幻から向けられる言葉が、鉱物を司る大天使の心に深く伸し掛かってくる。

 ──何故、至らなかった。
 ──交わした誓いは偽りであったか。
 ──所詮、神々によって創られたお前自身も失望した神々と同類だ。

 ブラキエルの記憶では言葉を向けないはずであるブックドミネーターが、彼に対して骸の月による儀式を失敗させたことによる罵り蔑む言葉を次々と送ってくる。

「この悪夢は自らの自責の念を糧にし、引き起こすもの。朽ち果てるといいでしょう……大事な親友に裏切られるという素敵な夢を見ながらね」
 ブラキエルの動揺を表すかのように、万物を石へと変える大天使の光輪が徐々にその光を衰えさせていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リリスフィア・スターライト
連携にアドリブ可
苦戦描写OK

真の姿で挑ませてもらうね。
悪いけれど贄になんかなるつもりはないよ。
飛翔しての高速戦闘を挑むね。
ブラキオンの岩腕による一撃を見切って直撃を避けるね。
常に飛び続けて周辺地形の破壊にも巻き込まれないようにだね。
反撃のチャンスが来たら、魔剣を手にブラキオンに斬りかかるよ。
一撃を与えたらブラキオンの反撃が来る前に離脱して
再び斬りかかるチャンスを伺うね。
仲間と連携できるならブラキオンが怯んだところで
畳みかけるよう合図を送りたいかな。
多少ダメージを受けても攻撃できる程度までは耐え抜いて、
少しでもブラキオンを追い込めればだね。

「最悪の可能性をここで断たせてもらうよ!」


政木・朱鞠
私、凄く怒っているんだよ…。
如何なる使命や大義の為のお題目並べても…結局は生贄を求める目的達成を猟兵として見過ごせないんだよ!
今は…その純粋で歪な志を止める為、私も躊躇なく命を奪う化け物となってでも貴方の咎をここで幕引きとさせて貰うよ…そして、オヤスミナサイ。

戦闘【WIZ】
独り善がりの天国に至る儀式を潰すためにも、こちらも命削る覚悟で人々の盾にならないとね…『忍法・鋳薔薇姫』でほんの数秒だけど動きを封じて隙を作りたいね。
得物は『風狸ノ脛当』をチョイスして、【スライディング】技能を使いバランスを崩して、四肢を思いっきり【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】のキックでダメージを与えたいね。

アドリブ連帯歓迎



「私、凄く怒っているんだよ…。如何なる使命や大義の為のお題目並べても……結局は生贄を求める目的達成を猟兵として見過ごせないんだよ!」
 石化を促す破壊の光に衰えの色を見せると、朱鞠は怒りを露にした。大天使ブラキエルが成そうとしている所業は、どんな経緯があったのかは定かではないが失望に至った天上界に報復を果たそうとする欲望にすぎない。そんな身勝手極まりない目的を果たす為に配下の猟書家が起こしていた事件の犠牲者、骸の月によるA&Wの侵略が失敗に終われば大義名分の元で自らが手を下そうとしている殺戮による血の儀式を前にして、彼女は怒りを覚えた。『今は自由に自分の生活を楽しみたい』と、古来より邪な異世界の住人と結託する組織や闇の勢力を討つために組織された忍者軍団の次期頭主の座に収まることを頑なに拒んでいる彼女であった。だが、やはり血は争ぬもので純粋で歪な志を止める為、躊躇なく命を奪う化け物となってでもブラキエルの咎をここで幕引きしようと、未だに重く鈍い身体に鞭を打って跳んだ。

「悪いけれど、私も贄になんかなるつもりはないよ」
 中庭での戦いではリリスの人格となっていたリリスフィアであったが、今は身体の支配権を主人格に戻されていた。朱鞠と同じ想いの中、全身に魔力を張り巡らせて展開させた光り輝く翼を背に猟兵としての真の姿を開放し、天上界より堕ちた大天使の凶行を阻止せんと突撃を敢行する。

『痴れたことを。貴様らが看過できぬように、我もあの神々を看過ならんのだ』
 既に骸の海へと還って消滅した盟友ブックドミネーター、UCに作り出された幻影の悪夢を振り払うかのように大天使は剣を手にしていない腕を振り上げた。UCによって無から有を生み出して虚から岩石でできた巨大な腕を複数作り出してみせ、腕は一斉に振り下ろされた。

「ッ!?」
 翼の展開に至らない余剰の魔力により知覚がブーストされたリリスフィアが、僅かな空気の流れを感じ取り回避行動に移る。このまま抜けて正面突破したいところであったが、ブラキエルはそれを許さずに打ち砕かれた地面から飛散する礫を触媒にして新たな岩腕が次から次へと生み出されていた。

(常に飛び続けて、周辺地形の破壊にも巻き込まれないようしなきゃ…)
 僅かでも速度を緩めれば叩き落とされる。そのような予感がリリスフィアの脳裏に過る中、今は反撃のチャンスを伺うしかなかった。

「独り善がりの天国に至る儀式を潰すためにも、こちらも命削る覚悟で人々の盾にならないとね…」
 今はリリスフィアに注意が向けられているとは言え、未だに破壊の光の呪縛は残っている。真綿で首を絞められているかのように石化の呪は細胞の一つ一つを、神経を末端から寸断されていくように、ゆっくりとだが身体が思うように動けなくなるのを否応なく朱鞠は実感させられた。万全の状態であればひとっ跳びな距離も、何時もの数倍の距離を行かされているような錯覚が覚えてしまう。当然だが、先程のような眩い光でなくなったとしても、ブラキエルの光輪から発される破壊の光の効力は失われていない。まるでまだ彼女が幼かった頃に聞いた、反旗を翻して討たれた伝説の妖狐の執心が凝り固まって近づくものを命を奪う瘴気を放つ大石の物語を否応なく思い出されてしまう。
 しかし、彼女は向かわねばならない。夜闇を照らす凶星が放つ光の元にまで。身体が鉛のように重くなっていく中で足元に視線を向ける。

(ここまで来て、ようやく影が出来たわね…)
 ブラキエルから微弱にも放たれる破壊の光、それと上空に浮かんでいる満月からの光。それらが彼女の身体を照らし出して一筋の影が伸びている。これでも十分と歯を食いしばりながら、痺れつつある指先を震わせながらUCを発動させる印を刻んだ。

「ちょっとの間だけ、大人しくしていてくれるかな…なるべく痛くしないから…」
 全ての印を刻み終えると、朱鞠の影が硬化して作り出された金属鎖状の触手がブラキエルの岩腕を突き刺し、絡め取り動きを阻害させた。

「チャンスは今ね。最悪の可能性をここで断たせてもらうよ!」
 幾重にも操作されていた岩腕の動きは自身の身を石化という危険に晒しながらも朱鞠によって封じられ、これによって産まれた隙をリリスフィアは逃さなかった。動きが鈍った岩腕の隙間を縫うように突破し、その奥に居るブラキエルに対し速度を緩めずに魔剣で切り抜こうとした。だが、ブラキエルとの剣戟で彼の身体に刃を突きつけれなかったが、反撃の刃を躱すべく離脱する際に、意識を剣士用人格『リリス』に切り替えさせ、払われた魔剣を再び緋く輝かせながら逆しまに振り上げた。

『……なるほど。真の狙いは我でなく、此れであったか』
 一陣の風として吹き抜けるように斬り去ったリリスフィアには一瞥せず、ブラキエルが視線を送った先は大天使の光輪である。最悪の可能性……それはブラキエルによる無辜の人々の大殺戮であり、それを実行させるための手段がこの破壊の光でもある。だが、その可能性は今断たれた。光輪は無残にも裂かれ、大天使の威光を示す光は徐々に消えつつあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

パルピ・ペルポル
僅かな可能性に賭けたくなる気持ちは理解できるのだけど。
それを叶えてあげるわけにはいかないのよ、残念ながら。

大天使の光輪からの破壊の光は巨大折り鶴と古竜の骨のマン・ゴーシュを盾にしてかつオーラ防御も重ねて防ぐわ。

折り鶴をけしかけてめくらましにして。
偶然の不運なる遭遇で気を反らせた隙に鎧の隙間に穢れを知らぬ薔薇の蕾をつっこんでやるわ。一ヶ所と言わずいくつでも。
その翼も雨紡ぎの風糸を絡めて動きを封じて穢れを知らぬ薔薇の蕾でさらにしっかりと封じるとするわ。

友といっしょに骸の海に還りなさいな。


ウルル・マーナガルム
ハティは中庭で待ってて
ドローンだけ貸してね
大丈夫、とっておきが残ってるもん
だけど童話みたいに上手くはいかないかも?
『いいえ、これは御伽噺です。勇敢な狩人が悪者を懲らしめて、めでたしめでたしで終わるのです』

ドローンが観測して
ハティが解析した情報をSKORで受信
攻撃をUCの効果で避けながら跳弾狙撃
弾丸を返されたって
また跳弾で相殺するよ
ボクの狙撃をコピーしたんでしょ?
ならデータから逆算して
撃ち消せる弾道を算出すれば
『ウルルの腕ならば容易い事です』

ヴァルハラ(死後の世界)になら
超特急で連れてったげる
さて、切符を拝見!
銃声は一つ
放たれた弾丸は二つ
これはUCじゃない
ただの早業
これがボクの"とっておき"だよ


ヴィクトリア・アイニッヒ
これが、大天使
この存在感、この圧力。その肩書は伊達ではありませんか
ですが、私も…いいえ、私達は負けられないのです
この世界に生きる、無辜の民を護る為にも…

「主よ、この悪意を祓う力を──!」

UC【神威の光剣】を使用
奉じる神へと祈りを捧げて破魔の力を高めつつ、真の姿である戦女神としての姿を晒します
光輪の光は喚び出した光剣による破魔の光で打ち消しを狙いつつ、討ち漏らしがあれば結界術で防ぎます

破壊の光を防げば、攻撃に
善悪の光満ちる戦場を切り裂くように。斧槍を構え、聖気を込めて
槍投げの要領で、渾身の力で投擲します

その悪意の光、主に代わりて…いいえ、この世界を生きる者の一人として
──ここで、討ち祓います!



 大天使の光輪は砕かれた。失墜した堕天使かのように神々の偉業を称える光が失われていく中、それでもなお大天使としての威厳をブラキエルは失っていない。

「これが、大天使…。この存在感、この圧力。その肩書は伊達ではありませんか」
 殊の外、太陽を神体として信仰する宗教を国教としているヴィクトリアには、異教の神の眷属とは言え大天使が放つ神性を前に強大さを感じ取っていた。本来であれば『過去』であるオブリビオンとして堕ちていてもおかしくはないが、ブラキエルは天上界に住まう神々と呼ばれる高次元存在に連なる者であるのも一因であろう。

「ですが、私も…いいえ、私達は負けられないのです。この世界に生きる、無辜の民を護る為にも…」
「僅かな可能性に賭けたくなる気持ちは理解できるのだけど。それを叶えてあげるわけにはいかないのよ、残念ながら」
 ヴィクトリア自身も、様々な困難に直面した際にはそれが神が齎した試練として受け止めている。であるが、ブラキエルが行おうとするものは神が治める治世の為の蔓延る悪を浄化するものでもなく、神々の使いであったブラキエル個人によるものだ。かつて天上界に席をおいていた彼にとっては何らかの事情から見限って叛逆の狼火を上げる事となった神々への挑戦であろうが、天上界へ至るには多大な犠牲を伴うものである。現に当初は猟書家による骸の月の侵食でそれを実現しようとしていたが、それが叶わぬものとなった今は多くの血を触媒として門を開こうとしている。
 一縷の望みに賭ける想いは、パルピにも理解できる。しかし、方法と手段がとてもではないが看過できるものでない以上、阻止せねばならないのだ。

『我として、理解を得ようとは考えてもいない。ただあるのは、天上界より追放されてから血に塗られた道である。それだけだ』
 それだけに、ブラキエルの目的に同調して理解した盟友ブックドミネーターへの想いは強かったのだろう。でなければ、態々このような荒城の中で猟兵を待ち構えず、天上界の門を開く血の大粛清を行っていたはずだ。それが志半ばで骸の海へと送られたブックドミネーター弔いであったが、まずは計画の障害となろう猟兵の血を亡き盟友に捧げるが彼なりのケジメであったのだろう。

「ですが、私も…いいえ、私達は負けられないのです。この世界に生きる、無辜の民を護る為にも…主よ、この悪意を祓う力を──!」
 目には目、光には光。大天使の光輪が破壊されたことにより、破壊の光は失われたも同然であったが未だに光輪は発光し続けている。機能を完全に停止していないのであれば、不測の事態があるのやもしれない。ヴィクトリアはUCにより光りに包まれると、太陽神の威光を具現化した光剣と共に彼女の真の姿である戦女神としての姿となり、銀髪を陽光の現れである金髪に染め上げてなびかせながら光翼を展開させた。

「私もありったけの折り鶴をけしかけてやるわ!」
 先程の猟兵が光輪を砕くまで巨大折り鶴で石化を促す光を免れていたパルピだったが、今はもうその必要はないとして千羽は優にあろう折鶴の群れを放った。無数の光剣と折鶴の飽和攻撃により、大天使が光りに包まれる。迂闊に手を出せないとして固唾を飲みながら見守る二人であったが、光が収まると大天使は再び姿を見せた。中庭での戦いでオブリビオンが身に付けていた鎧とよく似た物を見に付けている姿として。

『真の姿と言ったな。ならば、我も敬意を払い全力で行かせて貰おう。このブラキオンの名に賭けて』
 傷一つもない姿とすれば、あの鎧は大天使ブラキエルが司る絶対物質『ブラキオン』によるものであろう。しかし、大天使の鎧には大きな破損箇所があり、また身体の周辺にあった光輪も今は消え失せている。とあれば、あれは大天使の光輪が変異したものであり、破損箇所は砕かれたことによって出来たものかもしれない。あの鎧は先程の戦いで『いかなる攻撃も受け付けない鎧』と分かっている。であれば、隙間の他に胸に開いた穴が弱点である。

「その悪意の光、主に代わりて…いいえ、この世界を生きる者の一人として──ここで、討ち祓います!」
 再びヴィクトリアが光の翼より光剣を放つと、その箇所を目掛けて一斉に向かわれていく。しかし、大天使は臆すること無く向かってくる光の束をじっと睨んでいた。

『このブラキオンは真なるブラキオンである。竜の戦士に送った物とは別であると、ここに示そう』
 元は光輪だったこともあってか周囲を鏡のように写す鎧が光を発すると、ヴィクトリアが放った光剣と同じものが虚から現出して迎撃する。

『此れなる鎧は写し身の鎧。姿を移したUCを写し返すものと識れ』
 そう語ってブラキエルが剣を振ると、カァンと金属同士が衝突し合う音と共に何かが壁画に突き刺さる。光剣を背にして槍投げの要領で放った斧槍である。渾身の力で投擲された斧槍が切り払われ、UCを返す鎧を前に猟兵側が窮地に立たされたかと思われたその時、ブラキエルはある違和感に気付く。目を細めてそれを見ると、細くも強靭な雨紡ぎの風糸であった。

「さっきの折り紙の幾つかは囮。本命はこれだったのよ」
 小賢しい真似をと顔を歪ませるブラキエルの顔を、物陰から眺めている者がいる。ウルルだ。この空間に入った時に良い狙撃ポイントとなる場所があったので身を潜めていた彼女であったが、それが功を奏して破壊の光から逃れていた。だが、相棒であるハティの姿はどこにも見当たらない。

「ドローンのプロペラが石化して落下しちゃったけど、ちゃんと見えてるかな?」
『はい、十分です。随分といい場所に墜落したので、相手に感づかれていないのが何よりです』
 彼は中庭の戦いで満足に動けないまでの損傷を受けたことで、そこからウルルへHUD機能の他に無線機能を備えた大型ゴーグルを介して通信を行っていた。

「大丈夫、墜落しちゃったけど……まだとっておきが残ってるもん。だけど童話みたいに上手くはいかないかも?」
『いいえ、これは御伽噺です。勇敢な狩人が悪者を懲らしめて、めでたしめでたしで終わるのです』
 そのような緊張感がほぐれる何時もの冗談交じりな雑談をしつつ、ウルルはスコープで狙いをつけてブラキエルでは無く、壁に向かって銃弾を撃ち放った。UCによって生じる跳弾がブラキオンに写し出され、それは何かに衝突したかのように本来の軌道より逸れて床へとめり込んだ。

「やっぱり、あの鎧が邪魔だね」
『アイギスの鏡のように銃弾を写し出していますが、ウルルの腕ならば容易い事です。それに鏡に近い性質であれば尚更です』
 そんなやり取りをしているとは露知らず、ブラキエルは銃声が弾けた場所を見やるが未だに雨紡ぎの風糸から脱しきれていない。この間に仕留めれなければ、彼女は無事とて済まないだろう。焦る気持ちをハティの無機質な声で解きほぐされながら、マークスマンライフル『アンサング』の引き金をほんの少し戻してカチリという音ともに次弾を撃つ準備を終えて、まずは深く深呼吸した。

「さて、切符を拝見! ヴァルハラ(死後の世界)になら超特急で連れてったげるよ」
 人差し指を引き、再び銃弾が放たれた。だが、丁度その時にブラキエルは剣を握る腕の自由を取り戻して、剣を振るった。狙われている箇所はこの胸に空いた穴であれば、予測は容易いものである。事実、ウルルはそこを狙っていた。先程のはハティに確証を得させるための威力偵察に過ぎない。だが、放たれた鉛弾はブラキエルの剣に敢え無く二つに裂かれてしまった。しかし、不測の攻撃に備えてブラキエルが剣を操ろうとした時、再び先程の雨紡ぎの風糸に似た何かに引っ張られている感触が剣を通して腕に伝わる。
 その先に視線を向ければ、剣の装飾から茨が伸びて鎧に絡んでいる。

「さっきヴィクトリアが放った斧槍。それに薔薇の蕾を仕込ませてもらったの。切り払った衝撃でそれが落ちて、今こうして茨が伸びたんだよ」
 してやったり顔のパルピがイタズラが上手く行ったかのようにガッツポーズする中、ブラキエルの胸に何か熱い物が突き抜けた感触がした。再び視線を向け直すと、そこに弾痕が開かれていていた。だが、確かに銃声は一発だった。

「確かに銃声は一つ。だけど、放たれた弾丸は二つ。これはUCじゃなくてただの早業、これがボクの"とっておき"だよ」
 ピンホールショット。標的のど真ん中にまず一発目を命中させ、続けて放たれた二発目を一発目で開けた穴に銃弾を通すという曲芸撃ちの一種である。仮に鏡に映された物がブラキエルも感知するのであれば、もしかしたら二発目も一発目動揺に斬り落とされていたかもしれない。だが、ウルルの天才的な狩人しての才が、銃弾同士を同じ軌道に合わせる早撃ちによって神の目を欺いてみせたのだ。

「我も……我が友の元へ逝く時が来たか」
 心臓を穿たれたブラキエルは、手にしていた剣を落とした。そして鎧は中庭と同じく土くれと貸し、大天使の身体は赤い血を流す弾痕より塵となって骸の海へと還ろうとしていく。

「友といっしょに骸の海に還りなさいな」
 パルピが手向けの言葉を送ると、最後に残った塵は満月に照らされながら虚へと消え去った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年06月07日


挿絵イラスト