●帝国の落日
堂々たるその姿は皇帝座乗艦に相応しい威容。
無数の砲門と敵を打ち破る必殺の武装。
これさえあれば帝国は安泰――そのはずだった。
歴史は繰り返す。旗艦インぺリウム……骸の海より甦ったそれは、
決死の戦いを挑む反乱軍/解放軍に敗れ、再び星の海に沈んだのだ。
『――進捗は予定の5%遅れ。資材の加工並びに組立は異常無し。ならば何故?』
静謐な空間に鈴の音の様な女の声が響く。周りには骸骨の様なドロイドが二、三――傅く様に頭を垂れて、僅かに怒気を孕んだその言葉を恭しく受け入れる。
『イレギュラーはこの暗礁宙域特有の気象条件。搬入工程に遅れ、ですか』
時折、蛇の様にうねるプラズマ塊とビリヤードみたいに弾ける隕石の派手な爆発が女の横顔を照らした。くっきりと見えた空間の輪郭――無数の骨組みが足場になって、それらが放射状に広がり球状のやぐらを構成している。形容するならば正に宇宙の工事現場。その中心に女と作業用ドロイド達はいた。
『作業工程を見直しこの遅れを挽回します。三度目は無い……そう思考する様に』
手元の端末に機関銃じみたタイピングで工程の修正を加えていく。これ以上削る無駄が何処にあろう――否、現場には仕事と無駄しかない。故に最適化は限り無い。慌てず、着実に、最速で事を成すのだ――三度星の海に沈まぬ様、自らの誇りを賭けて。
『……またあの夢か』
轟音と共に沈む艦。耳をつんざく爆音の幻に頭を揺さぶられ、男はゆっくりと目を覚ました。相変わらずの荒れ模様――ガタガタと揺れる宇宙船の外は磁気嵐と隕石のピンボールが、四六時中混沌とした原初の宇宙の景色を紡ぎ出す。
『嫌な夢だ、本当に』
エネルギーと資源が溢れている事を除けば、地獄じみたここを一秒でも早く抜け出したい。誰もがそう思っている……だが、自らの夢を叶えるまでは抜ける訳にもいかない。のそりと立ち上がり男は自室を後にした。ここには地獄と仕事以外、何も無いのだ。
「お集まり頂き有難うございます。今回の作戦は対帝国継承軍の重要な任務です」
ぺこりと頭を下げて、ユーノ・ディエール(アレキサンドライト・f06261)は集まった猟兵達の顔を見渡す。グリモアベースの会議室、背後のスクリーンにはスペースシップワールドのある宙域の地図がでかでかと映されていた。
「この地図上の宙域で猟書家の遺志を継いだオブリビオンが、インぺリウム級の新型戦艦を建造しているという予知を視ました。放っておけばその艦を含み、帝国継承軍は艦隊を再編して新たな戦乱の火種となる事は明白です」
インぺリウム――かつて『銀河帝国攻略戦』の終盤、銀河皇帝リスアット・スターゲイザーが座乗し全軍の指揮を執っていた、帝国最大・最強の宇宙戦艦。小惑星並みのサイズ、苛烈な防空兵装、一撃必殺の超兵器の数々――解放軍と猟兵を最後まで苦しめた、正に無敵の城塞と言っても過言ではない帝国の象徴だ。
「だからこそ、ここで絶対に止めねばなりません。至急、当宙域へ向かい建造中のインぺリウム級を破壊して下さい。ただ、一つ問題がありまして」
言うとおり絶対に野放しにしてはならない敵だ。だが攻略にあたって注意しなければならない事があると、ユーノはスクリーンを拡大して宙域の詳細を皆に示した。
「ここは磁気嵐と飛び交う隕石に守られていて非常に危険です。対策せず飛び込めばインぺリウムに辿り着く前に大打撃を受けることは必至――なので、この辺りで生計を立てている熟練のスターライダーから、危険な宙域の突破方法を教えて貰うのです」
つまり、敵は天然の城塞の中で最終兵器を悠々と組み立てている。その中へ飛び込むには、その土地をよく知る者の力を借りるしかない――他には何も無いのか? と誰かが問う。宙域の危険さはよく分かった。
「予知では、建造宙域とスターライダーがいる宇宙船しか視えませんでした。力及ばず申し訳ありません……ですが」
そのスターライダーの姿もおぼろげで、男であるという事と、過去に何らかの大きな戦で乗っていた艦が轟沈したという事以外は不明のまま。後は現地でなんとか本人を探し出し交渉するしかない。それでも――と、ユーノは力強く言葉を続ける。
「幾度となく厳しい戦いを潜り抜けてきた皆様なら、きっと大丈夫だと信じています。これ以上宇宙に戦禍を広げない為にも、どうかよろしくお願いします」
ユーノの手元からゆっくりと水色の光が広がって宇宙船へのゲートが開く――戦いはもう始まっている。まずは航路を知るスターライダーを探し出すのだ。
ブラツ
ブラツです。もうすぐ戦争ですが宇宙もヤバいです。
今回はスペースシップワールドで熟練のスターライダーの力を借り、
オブリビオンが建造しているインぺリウムの破壊が目的です。
第1章は日常です。
シナリオ開幕後のプロローグをご確認の上、スターライダーを探して下さい。
よく話を聞けばプレイングボーナスになり、答えを聞き出す事が出来るでしょう。
第2章はボス戦です。
敵は猟書家の遺志を継いだオブリビオンです。
協力してくれるスターライダーの助言に従う事でプレイングボーナスとなります。
以上、2章構成のシナリオとなりますのでご注意ください。
その他、詳細はオープニングに準じます。
アドリブや連携希望の方は文頭に●とご記載下さい。
単独描写を希望の方は文頭に△とご記載下さい。
同時描写希望時は何がしかの識別子の記載をお願いします。
プレイングは開幕後、第1章のプロローグ記載後に募集致します。
参加者多数の際は、恐れ入りますが抽選で計6~8名前後の採用とさせて貰います。
可能な限り努めてまいりますので、よろしくお願い致します。
第1章 日常
『古い船に伝わる、古い習慣・行事・言い伝え』
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POW : ●『実際に体験してみたりする』
SPD : ●『聞いて回ってみたり、様子を伺ってみたりする』
WIZ : ●『自分の知識と照らし合わせてみたり、そこから推理してみたりする』
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●企鵝の餓え
『……何だアンタら』
宇宙船へ転移したと同時に、眼帯をしたペンギンが目の前に現れた。傷だらけの全身に逆立った鶏冠。歴戦の凄みを感じさせる出で立ち。彼以外に人影は無い。皆出払っているのだろうか……時間も無い。早速用件をこのペンギンに聞いてみる。
『スターライダーだと? ああ、幾らでもいる。戦も終わり、命を捨てそこなった奴らがな……それがどうした?』
ぶっきらぼうな口調で遠くを見ながらペンギンは言葉を吐く。視線の先にはプラズマと隕石のランデブー――この地域特有の異常な気象。これから飛び込まなければならない難所を眺めるペンギンに、続けて本題をぶつけてみた。
『あの磁気嵐と隕石の中を抜けて、その奥に――インぺリウム、だと』
ペンギンの表情が変わった。悲しげに瞳を薄く閉じて、首を上げて猟兵を見上げる。一瞬、大きく嘴を開いて――そしてそっと閉じながら、淡々と言葉を吐いた。
『冗談は止してくれ。あの艦はもう沈んだ。全てを飲み込んで、帝国は滅んだ』
まるでそれを見てきたかのような口ぶり。そのままずいと身を乗り出して、猟兵達の間を逃げる様に抜け出すペンギン。
『……戦争は終わったんだ。話がそれだけなら、どいてくれ』
悲し気な声色で語りながら徐々に背中が小さくなる。他に誰も見当たらない……ならば、ここでペンギンを逃がす訳にはいかない。
一体何故、このペンギンはインぺリウムに反応したのだろうか。
一体何故、このペンギンはこんな辺境にいるのだろうか。
そして熟練のスターライダーは何処にいるのだろうか。
時間は無い。そして戦争は終わっていないのだ。
カタリナ・エスペランサ
●
【天下無敵の八方美人】、話をする為の《コミュ力・礼儀作法》や《情報収集》の洞察力は一流の自負がある
どこまで聞けるか、となると後は流れ次第かな。さて――
確かにこの世界で帝国は滅んだ、戦争は終わった。アタシもそう聞いてるよ
実のところ外様の身でね。在りし日の帝国やその戦いについて詳しい訳じゃないのさ
ただ……オブリビオンの事は知ってる。生前がどうあれ、例外なく世界を破壊に導くよう歪められた過去の亡霊。
そんな輩がのさばる世界がどれだけ最悪かも、よく知ってる
死に損なったスターライダー? 違うね。この日、これからの為に生き延びたのさ
過去の尊厳、現在の平穏、未来の可能性を守る為に――先達の力が必要なんだ
菫宮・理緒
スターライダーがペンギンさんじゃいけないことはないし、
ここはペンギンさんを追いかけてみよう。
といっても、わたしじゃ見失いそうだから、
「ギアちゃん、お願い!」
ペンギンさんを追いかけてもらって、
落ち着いたらもう一度お話聞かせてもらいたいな。
「ペンギンさん、初めまして。猟兵の菫宮理緒っていうよ」
ペンギンさんは『戦争は終わった』って言っていたみたいだけど、
それはちょーっとちがうと思う。
帝国と砲火を交える戦いは終わったかもだけど、
残党を躱しながら探索をするという、生きるための戦いはまだ終わっていないよ。
証拠はわたしがここにいること。
あなたの力は、必ず……ううん、いまでも必要。
お願い、みんなに力を貸して!
鳴上・冬季
「古強者が今から起こる大戦争の予兆に目を瞑ると?それは曾てを知る仲間、共に戦い散った英霊の志に背くものと思われるが、如何?」
ペンギンの進行方向に回り込む
「貴様は曾ての戦争を知る者だ。その身体に残る譽れの跡が、磁気嵐の向こうに沈むインペリアルを知ることが、その何よりの証左となろう。次なる大戦の予兆がある、それが普く銀河に広がる前に、我等はそれを止めねばならぬ。貴様の助力なくば、我等はあの磁気嵐を越えられぬ。戦いの場に立つことすら出来ぬ。この地の平穏な未来のためにも、何としても我等はあの地に赴かねばならんのだ。頼む、貴様の力を貸してくれ。我等を彼の地へ」
宇宙空間での有事にはUCで庇わせオーラ防御
●それでも生きる為に
ふらりと姿を消そうとするペンギンを追いかけて、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)がその後を追う。
「ギアちゃん、お願い!」
小柄な彼を追い続けるのは理緒にとって分が悪い。すかさず供の瀟洒な機械人形に先回りの指示を送る。恭しく首を垂れたメイド服の機械人形はゆらりと景色に溶け込んで、リズミカルに音を立ててペンギンを追跡した。
『……何だ、こんなドロイドこの船に居たか?』
「ペンギンさん、初めまして。猟兵の菫宮理緒っていうよ」
狭い廊下、不意に姿を現わした機械人形に足止めされるペンギン。そして機械人形と五感を共有する理緒がそこに追いつくまで、さほど時間は掛からなかった。
『ご丁寧にどうも。俺は流しのスターライダー……それ以上でも以下でも無い』
ぷい、と視線を外しぶっきらぼうに返すペンギン。さも伝えるべき事は伝えた、と言わんばかりの仕草。慇懃なペンギンを意にも介さず、理緒は言葉を続ける。
「ペンギンさんは『戦争は終わった』って言っていたみたいだけど、それはちょーっとちがうと思う」
にこやかに、そして真剣に。理緒は丁寧に言葉を紡ぐ。膝に手を当てしゃがむ様にペンギンと目線を合わせる。理緒の脳裏にはこれまでの戦いの数々。
「帝国と砲火を交える戦いは終わったかもだけど、残党を躱しながら探索をするという、生きるための戦いはまだ終わっていないよ――証拠はわたしがここにいること」
差し出された理緒のタブレットに戦いの記録が映される。残敵掃討、未踏宙域探査、そして猟書家――言う通り、戦いは終わっていない。銀河帝国の専横が無くなったとはいえ、この宇宙の戦火は未だ絶えないのだ。それを見て、ペンギンが寂しげにつぶやく。
『そうかい。だが俺の戦争は終わったんだ。そいつらが銀河帝国だと? ならば何故あの時あの場所にいなかった』
あの時、インペリウム攻略の激戦の最中。黒騎士も白騎士も倒れ、残る戦力は旗艦と銀河皇帝そのものだけ。これだけの力を持つ連中がいたならば、どうして姿を現わさなかったのか、と。故に俺は舞台から降りたのだと目を細めて。
『俺の戦争は、もう終わってんだ……』
「ほう、古強者が今から起こる大戦争の予兆に目を瞑ると?」
大きな影がペンギンを覆う。鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)――迅雷公を名乗る大妖怪は真正面からペンギンを覗き込み、滔々と言葉を続ける。
「それは曾てを知る仲間、共に戦い散った英霊の志に背くものと思われるが、如何?」
悠久の時を生きた妖狐なればこそ、数多の同胞と共に時代を駆け抜けた冬季の言葉は重い。己が矜持を胸に秘め世界を渡る猟兵となった冬季にしてみれば、伸ばせば手が届くそこにあるならば、貴様がやるべき事は分かる筈だと思いを込めて。
「貴様は曾ての戦争を知る者だ。その身体に残る譽れの跡が、磁気嵐の向こうに沈むインペリウムを知ることが、その何よりの証左となろう」
『俺の仲間は宇宙の藻屑かオブリビオンだ。あの艦と共に消えて無くなった』
それはペンギンがかつて『銀河帝国』側であったという事の証左。磁気嵐の奥にいるのは仲間――にも拘らず、ペンギンの言葉は僅かに苛立ちを孕んでいた。
「だが平穏を選んだ貴様は最早オブリビオンでも帝国の尖兵でもあるまい。そして奴らに与しない――何故だ」
『……』
ならばこそ、どうしてここにいるのだと。再び帝国の御旗を銀河に掲げる気も無い……戦場に身を置き続けた冬季の問いに、ペンギンは言葉を詰まらせる。
「次なる大戦の予兆がある、それが普く銀河に広がる前に、我等はそれを止めねばならぬ」
『勝手にやるがいい。帝国を止めたのも、アンタらだろうに』
最早戦争に興味は無いと言わんばかり。にも拘らずこのような最前線に身を置くのは何故だと。積もる疑問を叩き付ける様に、冬季の言葉は加速した。
「貴様の助力なくば、我等はあの磁気嵐を越えられぬ。戦いの場に立つことすら出来ぬ。この地の平穏な未来のためにも、何としても我等はあの地に赴かねばならんのだ」
『それを元帝国兵の俺に頼むか。いや、だからか――』
だから、戦いを捨てたお前の力が今一度必要なのだと。戦いを望まぬのならば、それを止めねばならぬからこそ――元銀河帝国のペンギンの力が必要なのだ。
『だからこそ、あんな戦争に二度と関わりたいとは思わないんだ。俺達はな』
「確かにこの世界で帝国は滅んだ、戦争は終わった。アタシもそう聞いてるよ」
にべも無く返すペンギンに言葉を重ねたのはカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)――同じく、界渡り戦い続ける猟兵の一人。
「実のところ外様の身でね。在りし日の帝国やその戦いについて詳しい訳じゃないのさ。ただ……」
彼女自身はかつての戦争に参加してはいない。それでも世界を渡り戦い続けるカタリナはよく知っていた。無論、自身の元居た場所に根差す事でもある。
「オブリビオンの事は知ってる。生前がどうあれ、例外なく世界を破壊に導くよう歪められた過去の亡霊。そんな輩がのさばる世界がどれだけ最悪かも、よく知ってる」
ダークセイヴァー……スペースシップワールドとほぼ同時期に発見され、未だ争いの絶えない世界。共にオブリビオン・フォーミュラである支配者が世界を蹂躙し続けた世界故に、一早くその軛から解放されたスペースシップワールドが再びかの地の様になる事を見過ごす訳にはいかない。
「死に損なったスターライダー? 違うね。この日、これからの為に生き延びたのさ」
『……これからの、為?』
生き延びたからこそ託された思い。かつての敵であろうとこの世界に生きる者ならば、その思いは同じ筈。力を込めてカタリナは言葉を続けた。
「過去の尊厳、現在の平穏、未来の可能性を守る為に――先達の力が必要なんだ」
瞬間、耐圧窓が白い光を放つ。宇宙船の外で衝突した隕石が爆ぜたのだ。その爆発を遮る様に巨大な機動兵器――冬季の黄巾力士が超常の威を持って、弾けた隕石から船体を守っていたのだ。キャバリア並みのサイズに拡大したそれが示すのは、猟兵の尋常ならざる力の一端。
「頼む、貴様の力を貸してくれ。我等を彼の地へ」
我等は無力では無いとペンギンに示す冬季。後は道を切り開くだけなのだ。
「あなたの力は、必ず……ううん、いまでも必要。お願い、みんなに力を貸して!」
その言葉に理緒が続く。手を重ね祈る様な仕草でペンギンへ――それを見て、僅かにペンギンの表情が変わった気がした。
『考えさせてくれ。シフトの時間なんだ』
三人の声を背に受けて再び廊下を歩むペンギン。その足取りは先程とは違う――逃げる様な早足では無い。何かを思案する様にゆっくりと、ペンギンは闇に消えていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
秋月・信子
●WIZ
…ゲルニカで見かけたのと同じペンギン、ですね
『ええ、エリート秘密組織をやってそうな賢いペンギンね』
私の『影』と心の中で相談し合いながら、このペンギンさんから手がかりを探ってみます
その前に、相手の目の高さに合わせるようしゃがみながらです
『いい心がけね。そのまま突っ立ったままだと威圧感を与えてしまうし、そうした方が好感を抱かれやすいからね。じゃあ、信子。あんたは私が出した質問を何気なく聞き出したり、話をよく聞いて【慰め】たり、【心配り】して、傷心した心を癒やしてあげなさい。聞き出したピースの推理は私がやっておくわ。でも、早めにね。あのペンギン、何処かに行きそうよ?』
ああ、待ってください!
フィーナ・ステラガーデン
●
(えー。ペンギンじゃないこれ。ペンギンよね?
何で最近の宇宙はペンギンが宇宙駆けるのが当たり前みたいになってんのよ!?
しかもこれ若干ハードボイルドな雰囲気よ?シュールだわー。とりあえず私も乗ろうかしら)
(ペンギンの向かう道の壁にもたれ掛かり腕を組み、俯き帽子を深く被りつつ)
待ちなさい。じゃああんたはどうしてここにいるのよ。ピクニックかしら?
戦争は終わった。それは本当に終わったのかしら?
あんたの中では未だ燻ってるんじゃないの?
匂うわよ。あんたからやり残した戦争の残り火の匂いがね。
・・・インペリウムがまた動き出そうとしているわ
そう。戦争はまだ終わっていないのよ
・・・途中で吹き出すかと思ったわ!!
シーザー・ゴールドマン
ペンギンを捉まえて。
ああ、確かにインペリウムは沈んだし帝国は滅んだ。
戦争は終わったね。
しかし、帝国の遺志を継ごうとする者達がいる。
その者達が新たな戦争を起こそうと戦力としても象徴としても復活させようとしているのがインペリウムという訳だ。
我々はそれを妨げたい。インペリウムが復活すれば犠牲が増えるからね。
その為に危険宙域を越える腕を持つスターライダーの協力が欲しい。
教えてくれるかな――もちろん、それが君でも構わない。
(微量な『マールスの鼓舞』により精神力を奮い立たせましょう)
●そして炎は灯る
「待ちなさい。じゃああんたはどうしてここにいるのよ」
狭い廊下の曲がり角で三角帽子がゆらゆらと揺れる。次から次へと今日は忙しない――溜め息を吐いて、ペンギンはその人影をゆっくりと見上げた」
「ピクニックかしら?」
『仕事だ。悪いか?』
腕を組んで目深に被った帽子の奥から、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)がじろりと睨み返す。やけに苛立った口調にいつもの快活さは見る影も無い。緊迫した雰囲気を察して、もう一人の猟兵――秋月・信子(魔弾の射手・f00732)は物陰からそっと様子を覗いていた。
(…ゲルニカで見かけたのと同じペンギン?)
『……ちょっと、様子を見て見ましょう』
信子の内なる声が囁く。影の助言者はあれが『かつて見たペンギン』とは何かが違うと感じていた。口調も、雰囲気も。故に飛び出すのは今では無いと判断した。
『信子、これからやる事は分かってるわよね?』
(目線をペンギンさんに合わせて、警戒心を解いてゆっくり情報を聞き出します)
やるべき事、この宙域を突破する為のスターライダーの確保。その為にあのペンギンから話を聞く必要がある。
『いい心がけね。その方が威圧感は無いし……質問は私が考えて、あんたが聞き出す』
穏やかな信子ならば相手の警戒心を解す事も出来るだろう。考えるのはもう一人の自身の役目――緊迫した雰囲気は未だ変わらない。だからこそ慎重に事を運ばなければなるまい。
『答えの推理は私が思考するから、あんたはペンギンの心をがっちり掴むのよ』
(うん。考えるのは難しいけど、お話を聞いてあげる事くらい出来るから――)
あのペンギンは何かを隠している。それを知り、力を借りる事が使命。着々と段取りを整える二人の目の前では、一人と一匹の問答が更に熱を帯びていた。
「宇宙はこんなにも荒れ放題だってのに?」
『それでもバッサリ斬られる前に食い扶持を稼がにゃならん。お子様には分からんだろうが』
「誰が子供よ!」
一瞬、歯を剥き出しにして暴れ狂いそうになるフィーナ。背丈は確かに小柄だがこう見えても幾度も死闘を乗り越えてきた歴戦の兵であり、既に成人だ。子供扱いされて憤るフィーナがずいと顔を寄せて荒々しく言葉を続ける。
『インペリウムは沈んで戦争は終わった。俺の出る幕は無い……』
「戦争は終わった。それは本当に終わったのかしら?」
されど、ペンギンは意にも介さない。途端、ゆらりと赤い光がペンギンをフィーナと挟み込む様に放たれた。それは人の形となり――真紅の美丈夫が姿を現わす。
「ああ、確かにインペリウムは沈んだし帝国は滅んだ。戦争は終わったね」
シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は僅かに笑みを湛えたまま、両者を一瞥すると滔々と言葉を紡いだ。
「しかし、帝国の遺志を継ごうとする者達がいる」
『何だ、アンタも猟兵か?』
猟兵、銀河帝国を打ち破ったかつての仇敵。如何にもと頷くシーザーを見上げて、ペンギンはその言葉を頭で繰り返す。帝国の遺志を継ごうとする者……戦いを終わらせられなかった者達、オブリビオン。かつて己を改造した、妄執に囚われた存在。そのどれもが、忌々しい記憶となって蘇る。
「その者達が新たな戦争を起こそうと、戦力としても、象徴としても復活させようとしているのがインペリウムという訳だ」
『だから何だ。俺に構うな……仕事の時間だ』
「ああ、待ってください!」
怒りに任せて逃げようとするペンギンの前にもう一人、若い女が慌てて飛び出した。これまでの猟兵とは違う、どこか柔らかな雰囲気を持った女だ。
「私は秋月・信子、ここにいる皆さんと同じ、猟兵です」
『だろうな』
ちょこんとしゃがんでペンギンに目線を合わせる信子。両の手を組んで敵対の意志は無い事を暗に示し、ゆっくりと優し気な口調で話を続ける。
「あの、ペンギンさんはどうしてここで仕事をしているのでしょう?」
『……ここが一番、表の世界と離れた場所だったからだ。今まではな』
帝国の残党がのうのうと働けるような場所など限られている。戦場か、このような僻地だけだ。だからこそペンギンは戦いを捨てたのだろうと推理する信子の影。
「何で表の世界、ええと他の宇宙船から離れた場所で働こうと……」
『いろいろ事情があるのさ。俺も、俺以外も、皆』
そして表で働けない連中なんて、元帝国兵以外にも幾らだっている。犯罪者、軍人崩れ、借金のカタに売り飛ばされた者――それでも皆、生きねばならぬのだ。この宇宙は、想像している以上に生きづらい人々がいるのだと思案して信子が返す。
「まあ、ここならある意味安全そうですよね」
「目の前であんな艦が造られてるってのに?」
『……』
生きねばならぬ。だが戦の魔の手はいつだって、いつの間にか忍び寄る。フィーナの言う通り、そんなモノが造られているのならばここも遅かれ早かれ戦場になり、あっという間に跡形も無くなるだろう。沈黙と共に初めて、ペンギンがやりきれない様な顔を見せた。
「匂うわよ。あんたからやり残した戦争の残り火の匂いがね」
『違う! 俺は……』
そんな事になる位なら再び戦場に身を出す事も――それでもいいと一瞬脳裏に過った考えを、怒声に合わせ振り払うペンギン。それを知ってか知らずか、フィーナが再び言葉を重ねる。
「インペリウムがまた動き出そうとしているのよ。そう……」
僅かに眉間にしわを寄せ、初めての大規模戦闘だった銀河帝国攻略戦に思いを馳せるフィーナ。それを再び起こそうとしている連中がいるのだ。つまり。
「戦争はまだ終わっていないのよ」
「我々はそれを妨げたい。インペリウムが復活すれば犠牲が増えるからね」
被せる様にシーザーが言葉を続ける。赤々としたオドの光がペンギンを薄く照らしながら、悪戯めいた口調で言い放つシーザー。
「――もしや、それが望みとか?」
『一緒にするな、あんな連中と!』
その憤りはきっと本物だ。超常で僅かに奮い起された感情はペンギンに素直な気持ちを吐露させる。あんな連中――これで少なくともペンギンが帝国継承軍とは立場を異にする事が分かった。
「ならば、その為に危険宙域を越える腕を持つスターライダーの協力が欲しい」
信子の問いで分かった『訳ありの連中が屯する宇宙船』は帝国継承軍では無い。そして今の生活を捨てる事を由とはしない……その為には、今一度立ち上がる他無いのだ、と続けて。
「教えてくれるかな、凄腕のスターライダーを――もちろん、それが君でも構わない」
「急がなくても大丈夫ですから、ね」
合わせて、優しく話しかけた信子をちらりと見上げ、ペンギンは走って去っていった。逃げられたのか……しょんぼりと肩を落とす信子を内なる影が励ました。
「お願いします。あ、待って……」
『大丈夫よ、多分。これで謎が解けると思うわ』
ペンギンの足取りに迷いは無い。戦いから逃げる様な素振りも無い。恐らく、内なる信子の影の推理が正しければ……。
「にしても……」
はぁ、と溜息を吐いて帽子を被り直すフィーナ。不機嫌そうな顔と共に、わなわなと肩を震わせている。その様子を見下ろしてシーザーはクスリと嗤った。
「途中で吹き出すかと思ったわ!! ペンギンがハードボイルドなのよ!?」
「それだけ、この宇宙は自由という訳さ」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ヘスティア・イクテュス
●
眼帯…ペンギン……あれってあれ?流石にわたしペンギンの個体判別は出来ないわよ?(過去のあれこれからの記録からアベルで『情報収集』)
アレがまぁ合ってるならスターライダーとしてもやれそうだし
男…雄…まぁ間違ってはないけど…
というか、本人だろうが違ったとしても何故ここにペンギンが…
上記諸々をとりあえず聞き出しましょうか…
あぁ、一つ
まだ銀河帝国の残党だっているし、プリンセス・エメラルドが猟書家がいる…なら帝国は完全に滅んじゃいないわ
そして、まだ残ってる限り…この世界の人々の生活が脅かされているなら
まだ戦争は終わっていない
そうでしょ?
響・夜姫
●
夜姫はダイペンギンで外へ出て酷い目にあってる。
ぺんぎんさんのターン。
『確かに帝国は滅んだが。過去が消えたわけじゃない』
帝国が在った事実は消せない。
『戦争は終わった。だが、新たに始めようとする馬鹿がいる』
そいつらが帝国の遺産に手を出した。それだけ。
何もかも忘れ、あるは捨て去って…楽に生きられる道もあっただろう。だが、そうはならなかった。
ならなかったんだよ、相棒。
『だから俺は、お嬢と一緒に馬鹿を潰し続ける事にした。今回のコレもそうさ。その為に道案内を探しててな』
自分を忘れず、捨てもせず。
『なぁ…アンタはどうしたいんだ?』
「いたた。ぺんぎんさん、話終わっ…逢引?」
「クァアー…」(否定の鳴声)
ガーネット・グレイローズ
さて、今回もスターライダーの協力が不可欠な作戦なのだが。
どこにいるんだろう…おや?
《メカニック》でペンギンを観察。セキュリティ用の
ドロイドのようだが…。
艦内にメカたまこEXを飛ばし、《情報収集》も
同時に行う。《世界知識》《拠点防御》の知識で宇宙船の構造を
調べていこう。
帝国旗艦インペリウム。何者かがあの船を甦らせ、
再び宇宙に覇を唱えようとしているのをご存じですか。
ですが…道のりを阻む障害を抜ける方法さえあれば、
我々は必ず勝てます。そう、例えば凄腕のスターライダーがいれば。
私のささやかな夢は、あの戦争で絶たれた。だけど、宇宙は
新たな夢を与えてくれた。それが、今の私を動かす原動力なんです。
●黄金の選択
「うー……磁気嵐が酷くて眩暈がする……」
響・夜姫(そろそろぺんぎんさんが本体と言われても否定できない・f11389)は一人、サイキックキャバリア『南極皇帝ダイペンギン』に乗り宇宙船の周りを飛んでいた。元々二人掛かりで運用するこの機体を一人で(しかも大体もう一人のパイロットが動かしている)操縦し、飛び交う隕石を避けながら磁気嵐を避け続け慣らしを続ける事にいい加減疲労が溜まっていた所。それでも、今は己が超常の権能を発揮する為に、無駄に危機的な状況に置かれなければならない。
「ぺんぎんさん、まだ話終わらないの……?」
もう一人のパイロット――宇宙ペンギンに全てを託し、夜姫はぼやきながら宇宙を舞った。
『……いい加減、腹を括るべきです』
『んな事言ってもなぁ、ワシもうそんな力無いし』
ペンギンが二羽、狭い船室でぼそぼそと言葉を交わす。眼帯をした宇宙ペンギン――瓜二つのそれぞれは、よく見なければ全く同じに見えるほど。
『何かボーっとしちゃってな。念動力も殆ど出ないしな』
『情けない姿になりましたね、ゴールド指令』
ふらりと、そこにもう一羽のペンギンが姿を現わす。想定外の訪問者――だが三羽はそれぞれ既知の仲なのか、気だるげな表情のまま話を続けた。
『……久しいな。短――ええと、何だっけ?』
『カニ装置! カニ装置!』
一際ぼうっとした眼帯のペンギン――ゴールドと呼ばれたそれに、もう一羽の眼帯ペンギンが呆れた様に言葉を被せる。
『そうそれ! カニ装置の生き残りか貴様!』
『はぁ……アビ星人の苦労が知れる』
『今その話か。まあいい。久しいなジルコン389。いや――』
もう一羽の眼帯ペンギンが訪問者に返礼する。ジルコンと呼ばれたペンギン――夜姫のペンギンはそれに応じ、二年越しの敬礼を両者に返した。
「眼帯……ペンギン……あれってあれ? 流石にわたしペンギンの個体判別は出来ないわよ?」
『データを照合しましたが、成程……よく似ている別の個体ですね。まるで影武者です』
ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)はサポートAIアベルへ、これまで出会ったペンギンとの個体照合を指示していた。その結果、アレは自身が知っているペンギンでは無いという事が知らされる。よく似たペンギンではあるがどうやら違う個体らしい。では何故、アレと同じ様な格好をしていたのだ。
「あのペンギン、セキュリティ用のドロイドでは無かったのか?」
「いやまあ、ペンギンが喋る時点でアレよね、色々とね」
同道するガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)にこれまでの顛末――銀河帝国攻略戦の後、リゾートシップで出会った彼等の説明をした。そしてつい最近、漿船ゲルニカで出会ったペンギンの事も。
「アレがまぁ合ってるならスターライダーとしてもやれそうだし、というか……違ったとしても何故ここにペンギンが……」
「成程、そんな連中がいたのか。銀河帝国も随分なモノを残してくれたのだな」
苦笑しつつ手元の端末を操作して息を吐くガーネット。目に映る情報は、簡素ながら頑丈なこの宇宙船の全てを網羅したモノ。その中には監視カメラと連動した船内モニタの映像すらあった。
「――既にメカたまこEXを飛ばして船内の見取り図は確保したからな。追跡は難しくない。それと……」
「何? まだ何かあるの?」
そこに映されたモノは、狭い船室で何やら話し込む三羽のペンギンの姿。
「あのペンギン、どうやら一羽だけじゃあ無いみたいだぞ」
『確かに帝国は滅んだが。過去が消えたわけじゃない』
夜姫のペンギン――ジルコンが語る。
つまり、帝国が在った事実は消せないという事。
『しかし戦争は終わったんだ。その先の事など知るか』
『戦争は終わった。だが、新たに始めようとする馬鹿がいる』
そしてそいつらが帝国の遺産に手を出した。それだけで済めば放っておいても良かった――だが、そうはならなかった。
『だから俺は、お嬢と一緒に馬鹿を潰し続ける事にした。今回のコレもそうさ。その為に道案内を探しててな』
『新たな主に使えて正義を気取るか。氷山部隊がそこまで宗旨替えとはな……』
眼帯ペンギンが苦笑交じりに言葉を返す。かつて銀河帝国の精鋭サイキック部隊と言われた我等が、どうして反乱軍に――猟兵に寝返ったのだと。
『何もかも忘れ、あるいは捨て去って……楽に生きられる道もあっただろう』
「氷山部隊! 生き残りがこんな所にいたとはね!」
『ゲェ! その声は知ってる猟兵!』
滅茶苦茶だ。ペンギンがペンギンと渋い会話を交わしている最中、割って入ったヘスティアの声にゴールドが悲鳴を上げた。
「あなたちょっと手伝いなさい。今大変なんだから!」
『もういいだろ! 戦争終わったんだし隠居させろよ!』
『生活費たかってるあなたが言うと説得力が無いですよキャプテン』
途端、ヘスティアがゴールドに飛び掛かる。前回は触る暇すら無かったからねと言わんばかりに羽毛をモフモフとまさぐって、ゴールドはぐったりした。
「あぁ、一つ。戦争終わったなんて言える状況じゃ無いわよ、今」
モフりながら話を続けるヘスティア。抱きかかえられてわやくちゃにされたゴールドが屍の様な表情のままそれを聞き、もう一羽の眼帯ペンギンは腕を組んだまま何かを思案していた。
「まだ銀河帝国の残党だっているし、プリンセス・エメラルドとか猟書家がいる……帝国は完全に滅んじゃいないわ」
『だが我々は彼奴等に与するつもりは無い!』
「ならば帝国旗艦インペリウム。彼女らがこれを甦らせて再び宇宙に覇を唱えようとしているのをご存じですか?」
ヘスティアに続いてガーネットが言葉を紡ぐ。あくまで丁寧に、普段の取引の様に――いま彼等の力を借りられねば、インペリウムの建造を阻止する事は出来ないのだから。
『どうやらそうらしいな。だが知るか!』
『キャプテン、このままじゃ我々もまた素寒貧の無一文に逆戻りですよ』
更に声を荒げるゴールド。それを諫める様に眼帯ペンギンが言葉を返す。しかしゴールドの思いは変わらない。少し悲し気な表情を浮かべ、ゴールドは自らの思いを打ち明ける。
『もう……誰かに利用されたりするのは嫌なんだ!』
『そう言いながら、アンタはどうして生きている――ゴールド指令』
銀河帝国に、オブリビオンの意思に――その呪縛からようやく逃れられたのだ。そしてそれは、己に付き従ってくれた仲間も同じ。故に一早く外の世界へ飛び出したジルコンは、ゴールドの中に燻る思いを感じられた。
『なぁ…アンタはどうしたいんだ?』
『…………』
サイキックが使えないなんて嘘だ。唯一のオリジナル、俺達のベースとなった改造強化宇宙ペンギンのオブリビオン。確かに往時の力は無いだろうが、ジルコンが感じたゴールドの波動は決して偶然なんかじゃない。
「私のささやかな夢は、あの戦争で絶たれた」
その波長はガーネットも捉えられた。弱々しく悲し気な、それでも一本芯の通った戦士の持つ波動を。それを受けて心の底から、この世界を愛する者として言葉を紡ぎ出す。
「だけど、宇宙は新たな夢を与えてくれた。それが、今の私を動かす原動力なんです」
次世代の宇宙船開発、異世界との交易、やりたい事、やれる事は幾らでもある。だからこそ、世界を脅かす敵は決して許さない。
「今回の敵も……道のりを阻む障害を抜ける方法さえあれば、我々は必ず勝てます。そう、例えば凄腕のスターライダーがいれば」
「いいから協力しなさいよッ! この世界の人々の生活が脅かされているならッ! まだ戦争は終わっていないッ!」
モフモフしつつヘスティアが続く。そう、戦争は終わってなどいない――オブリビオンが未だ跋扈し続けるこの世界に本当の平和を取り戻さなければならない。
「……そうでしょ?」
『ええ、はい、まあ』
ゴールドが力無く言葉を吐く。否、覚悟を決めたのだ。かつての同志と、仇敵と、今も付き従う仲間の声を受けて、氷山部隊は再び動き出そうとした。
『――えー、本日を持ちまして氷山部隊は解散します』
『むしろ俺とあなたしかいませんよね』
『ていうか存続していたんだ……』
そして早速解散した。まあ二匹しかいないし部隊とかアレよね、と心の声が聞こえそうだ。みかん箱の上に立ったゴールドは咳払いをして言葉を続ける。
『で、本日よりP.A.Dを結成します』
『ハァ?』
「何なのよそれ」
呆れた声音で質問するヘスティアに、ゴールドは自信満々で答えた。
『ペンギンアンドデンジャラーズ』
「ダサいわ」
『どうして……』
『ハァ……まあ、いい』
苦笑するガーネット、呆れるジルコン。そして――。
『インペリウムまでの道はワシとシルバーが案内しよう。付いてこれるな?』
もう一匹の眼帯ペンギン、シルバーが胸に手を当て敬礼の仕草を。覚悟は出来た。その様子を見てジルコンが再び敬礼を掲げる。途端、狭い船室の扉が開いて最後の猟兵――夜姫がひょっこりと顔を覗かせた。
「いたた。ぺんぎんさん、話終わっ……いけないトライアングル?」
『クァアー!』
叫ぶジルコン――否、夜姫の宇宙ペンギンがバタバタと羽ばたいて、一目散に外へ出た。これで準備は整った。目指すは新インペリウム――再び胎動する悪しき存在を討つべく、猟兵達は各々の準備に取り掛かった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『生体デバイス・アレクシア・ブリジェシー』
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POW : 護る騎士を侍らせても救う騎士は無し……皮肉な話ね
【玉座型本体が意志に反し自己防衛生産モード】に変形し、自身の【(猟兵に助言を与える)ナノマシン製の身体】を代償に、自身の【白い騎士型護衛用ウォーマシン軍団の物量】を強化する。
SPD : 私の存在が悲劇を生むならば、為すべきを為しなさい
自身の【章を跨いで登場出来る無力な仮初の身体 】を代償に、【黒い高速戦闘用騎士型ウォーマシン軍団】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【即時改良と再生産の物量、高速近接戦闘】で戦う。
WIZ : 『過去』が齎す悲劇の再生産、どう断つか見せなさい
対象への質問と共に、【自らの意志に関係なく稼働する黒い本体】から【大量の紅い射撃戦用騎士型ウォーマシン軍団】を召喚する。満足な答えを得るまで、大量の紅い射撃戦用騎士型ウォーマシン軍団は対象を【即時改良された再生産による物量と飽和射撃】で攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「トリテレイア・ゼロナイン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●蟲動
『……まさか、帝国の残滓がこんな所にいたなんて』
インペリウム建造の進捗遅延の真相、搬入遅れの原因は単に宙域の気象条件によるものでは無かった。吹き荒れる磁気嵐に巻き込まれた――かの様に見せかけて、近隣のスカベンジャーがそれらを狙い襲撃をかけていたのだ。
『帝国の再興を願い蘇ったオブリビオンだからこそ、ですか』
敵はアイスバーグレンジャータイプのサイキック兵。その生き残りがインペリウムの資材を狙い、略奪行為を繰り返していたのだ。
『――状況は?』
蒼銀の騎士めいた鎧を纏う少女――アレクシアは、端末を広げてインペリウムの建艦状況と宙域の状態を精査する。進捗は60%。使用出来る火器は三割、辛うじて機動部隊展開用のカタパルトがフル稼働出来る状態ではあるが、これでは往時の半分も力を発揮出来はしない。だが防衛戦ならウォーマシンの展開で十分に対応出来る。
『そして、定時の磁気嵐が間も無く……ですね』
本来この艦の建造を指示すべき『ヘルメスデウス・ブレインコア』は最早無く、新たに呼び覚まされた自分が果たして何処まで出来るか――不安はあるが、自身も帝国の生産を担っていた存在。否、担わされたと言うべきか。
『嵐と共に彼等は、猟兵は来るでしょう。総員第一種戦闘配備』
奇襲を仕掛けるならばこのタイミングだ。嵐が去ってからでは遅すぎる。アレが吹き荒れている今だけは、こちらから外界の様子を殆ど把握出来ないのだ……だが、これまで幾度となく煮え湯を飲ませてきた連中が相手ならば、必ず最悪のタイミングで仕掛けてくるだろうとアレクシアは予想した。
『白銀騎士団を直掩に。黒鉄騎士団を前に、赤銅騎士団は迎撃の火線を形成せよ』
凛とした声で言い放つアレクシア。その眼に迷いは無い。今や彼女は機械騎士に囲まれた才媛の姫君では無いのだ。今や彼女は、前線に立つ精鋭の一人。
『これより本艦は猟兵の奇襲に備え臨時戦闘態勢へ移行する。以降の建艦指示は戦闘終了を待て。全カタパルト展開、三重陣にて迎え撃つ!』
瞬間、アレクシアの身体が虚空へと消えた。自身を形成する仮初の身体――ナノマシンで構成された肉体のリソースを全て戦闘リソースに置換して、余計なものの一切を排除したのだ。これでもう何も、思う事は無い。
『…………』
もう、何も。昔日の悲劇は――露と消えたのだから。
●強襲
『全く、馬鹿げた話だ。次、3秒後』
軋む船体の轟音が呼び覚ますのは昔日の戦争。あの時はインペリウムの直下だったが、猟兵達の怒涛の攻撃に成す術も無かったのは嫌でも覚えている。
『そんなのばかりでしょう。取り舵』
ぐらりと傾く船体に沿って七色の竜巻めいた磁気嵐の余波が流れ、揺れをますます激しくする。この船――氷山丸三世号は只のサルベージ船だ。だがここまで磁気嵐と隕石の直撃を避けられたのは、ゴールドの指示とシルバーの操船の賜物だ。
サイキックを強化されたゴールドの危険察知能力で慣れた航路を突き進む氷山丸。その航路を猟兵達が各々の乗機、あるいは提供されたクルーザーで正確にトレスしていた。隕石群と磁気嵐には緩急がある。長きに渡るサルベージで培った経験と勘が無ければ無傷で渡る事は難しい。だがそれさえ突破出来れば、後はこちらの意のままだ。ごう、と大きな音が船内を揺さぶって、ここまでか――目尻を吊り上げ、ゴールドは傍らのシルバーへ意を決した様に告げる。
『大嵐が来る。カニの鋏を上げろ』
『猟兵、聞こえるか。30秒後に戦場へ転移させる』
正面の氷山丸が背負ったコンテナから、何やら奇矯な突起物がぞわりと姿を現わしていた。それこそインペリウムが本来手にしていた筈の超兵器の一つ――短距離物質瞬間連続転送レンズ照射装置、通称カニ装置だった。ゴールド達は奪ったインペリウム建造資材を組み立てて、いつか再び旗を掲げる日の為にこれを拵えていたのだ。マイクを手にしたゴールドが重い口調で言葉を続けた。
『あの艦を、インペリウムを止めてくれ』
磁気嵐をただ抜ける事は出来る。だがその先に敵が待ち構えている可能性――奇襲に対しての待伏せがあれば、闇雲に突っ込めば敵の思う壺だ。だからこそカニ装置の転送許容範囲まで近づいて更に裏をかく。インペリウムの泣き所はこの二人が良く知っているのだ。何より本来この装置があるべき場所がもぬけの殻だろうから。
『幸運を祈る。シルバー、装置起動』
『了解。マグネティックコンバーター、アンテナ展開』
バチリ、と一対のアンテナが紫電を纏う。それは吹き荒れる磁気嵐から純粋にエネルギーだけを収集する変換機。これを持ってカニ装置を起動するのだ。
『エネルギー充填109%、方位確認。装置ベクトル調整完了』
ガクン、とカニの鋏の様な大きなアンテナが立ち上がり周囲の景色を歪めていく。本家ほどの出力が無い分転送距離は短いが、この作戦で使用する分には十分だろう。
『コントロールアイハブ。空間転送レンズ形成――照射!』
瞬間、背後の猟兵達を透明の空間レンズが包み込み、そして消えた。
『報告、レーダーに感――敵機動部隊がインペリウム直下に出現』
『馬鹿な、磁気嵐を飛び越えて来たとでもいうのか!?』
それは後衛の白銀騎士団からの報告。磁気嵐前に展開していた黒鉄騎士団はそれを受け、直ちに現場へ急行する。想定外にも程がある――それに、出現地点はインペリウムの泣き所でもあるのだ。
『しかも未建造区画の目の前とは……全騎士団に迎撃要請! 奴らをインペリウムの中に入れるな!』
このまま強襲されれば指令ユニットのアレクシアごと破壊されかねない。そうなる前に、三つの騎士団は総力を結集して迎撃に打って出る。ここでやられる訳にはいかないのだ――我らが新たなる帝国の支配を実現する為に。
・前章で隠しペンギンのゴールドを発見した事によりカニ装置を起動しました
・それによって敵の待伏せを通り越し、こちらからの奇襲に成功しました
・これで自由に動けます。中枢突破を狙うもよし、敵部隊の殲滅を狙うもよしです
菫宮・理緒
搭乗機体:リオ・セレステ
ペンギンさんたちのおかげで奇襲は大成功だね。
ここからわたしは、みんながインペリウムを破壊するまで、騎士団を足止めしよう。
磁気嵐に沿った防衛ラインを設定して、黒鉄騎士団が反転してくる時間を計算。
騎士団が来るまでは、相手の通信網を【ハッキング】して、
わざとノイズ混じりにした誤情報(相反する指示や陥落など)を流し続けるよ。
防衛ラインまできたら【E.C.M】を全力展開。
【ジャミング】狙い、と見せかけてじつはそっちが囮。
電磁波の放出で磁気嵐にイレギュラーを発生させて、
黒鉄騎士団を巻き込ませ、混乱したところに【M.P.M.S】で攻撃を加えて足止めするね。
みんな、コアは任せた、よー!
ガーネット・グレイローズ
●
やあ。殺しに来たよ。
あなた達オブリビオンが骸の海から蘇り、銀河の安寧を乱すというのなら。
全力を尽くして何度でも滅ぼしてあげよう。この夜の女王と、
【灰薔薇の旗の下に】集いし戦士たちがね。
紋章が描かれた宇宙船から現れたのは、戦闘服に身を包んだ
屈強な男たち。光剣と携行砲台で武装した彼らは
《空中戦》《空中機動》で紅い機械騎士と交戦を開始する。
私は彼らの援護を受けながら、《推力移動》で敵指揮官のもとへ前進。
《瞬間思考力》《操縦》で被弾を最小限に抑えつつ
PSDホーネットを射出し、《念動力》でコントロール。
マルチアングルからの《レーザー射撃》を主軸に、
敵の本体へダメージを与えていくぞ。
ヘスティア・イクテュス
●
あの二人流石ね…見た目は……アレだけど…
さて、それじゃあインペリウムを潰させてもらおうかしら!
アベル、ユー・ハブ・コントロール、ティターニアの操作をアベルに託し
わたしは自身にかけた『リミッターを解除』
本来はプリンセスエメラルドにとっておきたかったけどね…
周辺一帯に『ハッキング』、敵ウォーマシン軍団を海賊らしく頂きこっちの制御下に…
わたしの十八番は射撃でも空中戦でも操舵でも無く電脳魔術なのよ?
銀河帝国、過去の悲劇…過ちは繰り返さない
『過去』の失敗から、『現代』は学び更に『未来』へ…そうでしょ?
…アベル、ペンギン型の活動用ユニットってどう思う?
●星を駆ける少女達
「あの二人流石ね……見た目はアレだけど……」
「ホント。ペンギンさんたちのおかげで奇襲は大成功だね」
ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)はまばらに散った機械騎士の群れが殺到する様を見やり溜息を吐く。元より得体の知れない能力を持っていたり、自称精鋭部隊だったりもしたが……その実力は本物だったらしい。傍の菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は既に戦闘艦――『リオ・セレステ』に搭乗し、ヘスティアに笑顔で言葉を返すと共に周辺の走査を開始。真っ赤に塗り潰されたレーダーを見やり、別の意味で溜め息を吐いた。
「やあ。殺しに来たよ」
厄介な――理緒が思案した途端、赤が真っ二つに裂ける。その裂け目にはいつの間にか友軍を示す青い反応――オープン回線で堂々と宣戦を布告するガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)だった。
「あなた達オブリビオンが骸の海から蘇り、銀河の安寧を乱すというのなら――」
続々と赤い反応が消えていく。その中心にはガーネットの搭乗する『ブラッドギア「夜の女王」』と超常が呼び起こした歴戦の英霊達の強襲宇宙船。両者が突出して敵の砲撃部隊――赤銅騎士団への奇襲を一手に引き受けていた。
「全力を尽くして何度でも滅ぼしてあげよう。この夜の女王と、灰薔薇の旗の下に集いし戦士たちがね」
大型フォースセイバーを掲げた夜の女王に従って、灰薔薇の精鋭達が宇宙を駆ける。これでは砲撃どころでは無い。そして、この機を逃す道理はない。
「――それじゃあインペリウムを潰させてもらおうかしら!」
ジェットパック『ティターニア』に火を点し、ヘスティアと理緒はインペリウム中枢へ向けて加速した。
「やっぱり黒いのが先に来るよね――でも!」
突出した二人の前には黒鉄騎士団――高機動型の黒いウォーマシンが立ち塞がる。電子光学迷彩で姿を隠し一気に距離を詰めた黒鉄騎士団は、即座に高周波ブレードを抜刀し飛び掛かった。しかし。
「思った通り、統制は取れてるけど外乱には弱い」
「形は立派だけど中身が無いわね!」
飛び掛かった相手は仲間の黒鉄騎士団。突出したウォーマシンがくるりとその身を翻し、続々と迫る仲間に向かってその刃を振り下ろしたのだ。
「あらかじめウォーマシンが相手だって分かっていたからね!」
全ては理緒が仕掛けた電子戦の賜物。磁気嵐に沿った防衛ラインを設定し電子的に待ち伏せを仕掛けていたのだ。まんまと嵌った先行のウォーマシンは味方を敵と誤認し、そのまま自らの刃を味方へと向ける事になる。
「アベル、ユー・ハブ・コントロール」
『イエス、マスター。コントロールアイハブ』
同時に、ヘスティアの指令に二つ返事で答えるアベル。途端、妖精が棚引いた青白い炎の尾は、まるで稲妻の様に不規則な形へと変わっていく。
「導いてあげるわよ、わたしの十八番は射撃でも空中戦でも操舵でも無く……」
ヘスティアの端末に映し出される無数のプログラム――その内の“Queen's Gambit”を選択。途端、ティアラが薄く光を帯びて、超常のプログラムが虚空へと放たれた。それは支配者の絶対コード――女王の勅命。
「この電脳魔術なのよ? さぁ! 妖精の女王に従いなさい!」
ここが幕開けだと言わんばかりに、迸る超常の波に飲まれたウォーマシンが光を失っていく。二人掛かりの電脳魔術は僅か数刻で、漆黒の盤面をひっくり返す事に成功したのだ。
「ヘスティアさん、包囲3-2-3より高エネルギー反応!」
だが、敵は黒鉄騎士団だけでは無い。恐るべきは赤銅騎士団。ガーネットの奮戦で主力の過半は引きつけられてはいるものの、反対側に位置していた後詰の部隊がいつの間にかヘスティアたちの側面に展開していた。
「了解――悪いけど壁になってもらうわ!」
しかし彼女の手駒と化した黒鉄のウォーマシン達が即座に防御陣形に移行する。ヘスティアと理緒を守る様に多重展開したウォーマシンは、赤銅騎士団の猛烈な砲火に晒されて続々と落ちていった。壁は剥がれた――だが、僅かだろうと稼がれた時間は決して無駄じゃない。
「E.C.M最大出力……邪魔はさせない!」
途端、リオ・セレステから強烈な電磁波が放たれた。磁気嵐に勝るとも劣らないそれは超常のノイズジャミングとディセプション――狙いは赤銅騎士団全機の電子索敵機能。それさえ押さえてしまえば、ただの光学照準のみで理緒達に攻撃を当てる事など叶わない。
「動きが鈍った。全軍突撃!」
合わせてガーネットの精鋭部隊が攻撃を再開する。アームドフォートが十重二十重に火を噴いて、フォースセイバーの煌きが巨大なウォーマシンを続々と残骸へ変えていく。ガーネットが誇る銀河帝国と戦ったグレイローズ家の精鋭私兵部隊は間断無く攻撃を続け、戦況は再び逆転していった。
「あの赤い奴らを黙らせるんだ。本機は中枢へ吶喊する!」
無尽蔵に湧いて来るならば片っ端から叩けばいい。そして湧いてくる大元さえ潰せば――加速した夜の女王は砲火を躱しつつ、展開した念動砲台で的確に敵の防空網を潰しながらインペリウムへ突き進む。
「しかし、進歩の無い連中だ……」
帝国継承軍――名前は変われど、やろうとしている事はかつてと同じ。確かにインペリウムは強力な敵だ。しかしそれは既に沈められた艦なのだ。
「『過去』の失敗から、『現代』は学び更に『未来』へ……そうでしょ?」
「ああ。教訓は生かさねばな。我らとてかつてとは違う事を――」
いつの間にか並走していたヘスティアに応えて、ガーネットはマシンに力を込める。己の血とナノマシンと念動力で駆動する夜の女王は、昂るガーネットの気勢に合わせてより苛烈な火線をインペリウムへ放ち、突破口を確保した。
「思い知らせてやるとしよう!」
『スラスター、スロットルマキシマム』
「やる前に言って頂戴!」
叫ぶヘスティア。同時に加速したティターニアが、赤を追う様に光の尾を伸ばしていった。
「まだ出てくるの……!」
インペリウム下方未建造区画、そこに現れたのは黒鉄騎士団。機動力に富む彼らだからこそ、散らばった戦力を瞬く間に集わせて絶対死守の陣形を取る事が出来た。先のハッキングで計算リソースはそれほど残っていない――舌打ちするヘスティアの耳にふと、理緒からの緊急コールが届いていた。
「味方は下がって! 大きいの、行くよ!」
瞬間、ミサイルの雨が黒鉄騎士団に殺到した。リオ・セレステのM.P.M.S――多目的ミサイルランチャー。インペリウム周辺の防空網を破壊したおかげで、超長距離からでも援護の誘導弾を放つ事が出来たのだ。
「みんな、コアは任せた、よー!」
そして敵の周辺には味方が二人。彼女らのマシンやAIの力を少し借りれば、誘導機能に支障は無い。爆発が黒いウォーマシンを続々と飲み込んで、塞がれた道はあっという間に開かれた。
「助かる。さあ行くぞ!」
「ええ。それとアベル」
中枢の破壊の前に生産ユニットを少しでも破壊する。増援を減らせれば後続の攻撃だって通り易くなる……爆炎に包まれながら、ヘスティアはふとアベルに尋ねた。
『何でしょう、お嬢様?』
「ペンギン型の活動用ユニットってどう思う?」
加速する夜の女王とティターニア――共に女王の名を冠するガーネットとヘスティアのマシンは、それぞれが赤と青の尾を引いて幾何学めいたインペリウムの内部を突き進む。女王の行進はもう誰にも止められない。ガラガラと崩れ落ちる鉄骨を優雅に躱して、アベルはノイズ混じりにヘスティアへ返した。
『……着るのですか? 私は着ませんよ?』
材料は幾らでも転がっているとは、アベルは口が裂けても言えなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
フィーナ・ステラガーデン
●
うじゃうじゃと有象無象がいるわね!運動には丁度良いんじゃないかしら!
じゃー私は敵部隊の殲滅をぶいぶいとこなしてボスっぽい奴の相手とか船への侵入は他の猟兵に任せるとするわ!
転送してすぐにUCを使用して暴風竜に跨って竜の暴風で敵部隊を磁気嵐へと吹き飛ばしたり竜に乗ったまま【範囲攻撃】での【吹き飛ばし】できるような爆発魔法で邪魔者をぶっ飛ばしていくわよ!
アレクシアへの道、もしくはインペリウムへの道が閉ざされているようなら
仕方ないわね!突撃よ!暴れまわって仲間がたどり着けるように道を切り開くとするわ!ようするに今回完全にサポート役よ!サポート役!
カタリナ・エスペランサ
●
良い仕事だ。さぁ、アタシもとっておきのお披露目といこうか!
事前に《メカニック》技能で戦場のパラメータを入力し《環境耐性》強化して【黒鉄の暴嵐】発動。
ペンギンたちの協力を得られたなら準備は万全に整えられる筈さ
この機龍はこういう超科学系の世界にルーツのある遺産らしくてね
要するにキミたちの天敵ってワケ!
奇襲の利を最大に活かし《先制攻撃》。機龍は敵機の《捕食+略奪》と《情報収集+学習力》で無限に進化、敵を《蹂躙》するよ
敵の改良・生産プログラムを奪い見切ってしまえば凌駕も容易い
アタシ自身も《遊撃》に回って戦局を《見切り》要所を突こう
個より成る鋼の軍勢、闘争の具現にして終焉を齎す者。その所以を示す時だ!
●星に舞う双龍
漆黒を天使と魔女が舞う。光が瞬く度に鋼鉄の骸が散華して、爆ぜた欠片がきらきらと周囲に光を振り撒いた。煙の塊の奥、二つの影はまるで踊る様に破壊の跡を撒き散らす。
「しっかし、うじゃうじゃと有象無象がいるわね!」
「だがここまで侵入出来た――良い仕事だ」
フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)とカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は慣れた手付きで、各々が迸る魔力の跡を尾の様に引いて殺到する悪意の尽くを捻じ伏せていた。
「さぁ、アタシもとっておきのお披露目といこうか!」
「そうね。運動には丁度良いんじゃないかしら!」
圧倒的な――暴力。しかしそれは敵も同じ。ならば、力には力で。不意に飛び掛かった黒鉄の騎士が闇に呑み込まれる。それは闇より出でし、破壊の権化。
彼女達の世界の流儀に従って、漆黒より超常の巨大な影が姿を現わした。
「この機龍はこういう超科学系の世界にルーツのある遺産らしくてね――」
ギラギラと明滅する光を纏って、カタリナが呼び出したそれ――幾千の兵装を操る機龍が虚空に吼える。音が届く筈が無いにも拘らずその咆哮は空間を震わせて、途端、無数の鉄の塊は正体不明の動作不良に陥った。
「要するに、キミたちの天敵ってワケ!」
ニヤリと口端を歪ませたカタリナ。機械の龍の背に乗って再び宇宙を駆ける彼女が手を翳せば、それに従い無数の砲火が花火の様に闇を染める。その光がもう一つの巨大な影――フィーナの龍の姿形を浮かび上がらせた。
「私のは何の変哲も無いドラゴンよ! でも天敵よ!」
爆炎が黒を赤く染める。カタリナの竜とは対照的な生物的なフォルム。赤茶色の鱗が爆光を浴びて鈍い光を放つ度、蠢く大蛇めいた巨大な尾が立ち塞がる機械騎士の群れを締め上げて、破壊した。
「アンタ達……オブリビオンのね!」
二頭の龍はそのまま勇猛な騎士の軍勢に飛び込んだ。まるで正と邪が入れ替わった御伽噺の様に、龍と騎士の輪舞は戦いの佳境へと突入した。
「さあ、全部ブッ飛ばすわよ!」
叫ぶフィーナ。眼下の龍がそれに応え、怯えた様な恐ろしげな声を上げる。無数の火球が炸裂して光の花道を描けば、その端で巻き込まれた機械騎士の軍勢は瞬く間に物言わぬ塊と化し、消えていく。
「逃げるつもりかい? 駄目だよ、演者が勝手に舞台から降りちゃあ」
最早、抗う事も叶わないか――刹那、龍を避ける様に散開した黒鉄の騎士たちは、各々の得物の形を変えて一斉に光を放った。
「……成程。結果を基に即時改良か。それならば」
対要塞攻撃用の大型ランチャー。本来ならば艦船の攻撃に使う様な強大な武装。だがそれは動きの鈍い艦が相手であってこそ。爆発と共に肉薄し一撃離脱を試みる戦術も、荒れ狂う竜の前では児戯に等しい。
「こちらとて同じだ! 喰らい尽くせ、黒鉄の暴龍ッ!」
敵に合わせて戦術を変えた所で、元より開いた差を埋めるには到底届かない。それに、進化は彼等だけの力では無い――カタリナの叫びに呼応して、機龍が全身より無数の光を解き放つ。ミラーボールの様に煌々と輝いたそれが通る度、砲火ごと破壊を飲み込んで、それ以上の超常の殲滅が空間を支配した。
「にしても鬱陶しい……ほら! チャキチャキ働くのよ!」
再び、怯えた声を上げる龍がフィーナと共に巨大な火柱を放つ。相変わらず黒鉄の騎士はその数を減らす事無くフィーナたちを狙い迫る。ある意味思惑通りだが……アレクシアへの道、インペリウムへの道がこのまま閉ざされているようなら、やるべき事は変わらない。ただ一つだ。
「仕方ないわ! 突撃よと・つ・げ・き!」
龍の爪が騎士を抉り、太い尾が並居る敵を薙ぎ倒す。相も変わらず派手に光を放ち続けるインペリウム目掛けて、フィーナは三度全力の炎で自らの道を切り開く。
「そこの黒い塊を一気に潰すわ!」
「個より成る鋼の軍勢、闘争の具現にして終焉を齎す者。その所以を示す時だ!」
合わせて、カタリナの機龍が収束した爆光を重ねて放った。敵が自らを改良するならば、この機龍も同じく進化を続け、それ以上の威力で臨めばいいだけ。二頭の龍を従えた天使と魔女はそのまま、闇を切り裂き光の道を突き進む。闇の救済者……やるべき事は世界が変われど一つだけ。その力を以て、世界の歪みを正すまで。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
響・夜姫
●ALLOK。
カニ装置。ぐっじょぶ。
ゴールド、シルバー。報酬は言い値で払う。
むしろ飼……養ってもいいのでは?
「ぺんぎんさん。出し惜しみは無し。全部壊すよ」
南極炉、戦闘出力。全兵装、コンタクト。
「ダイペンギン、バトルごー」
嵐の砲火展開。
【一斉発射/制圧射撃/レーザー射撃/弾幕/砲撃/貫通攻撃】といった、通常攻撃が【範囲攻撃】で【2回攻撃】なペンギンの対要塞戦闘。
「では、ふぁいやー」
インペリウムに接近しながらサバーニャで全方位に砲撃、サバーニャ自体も盾兼質量弾としてぶちかます。
後は敵全てが壊れるまでごり押しで撃つべし、撃つべし。
「ぺんぎんさん、回避任せた」
全部終わったら。皆でご飯、食べに行こー。
秋月・信子
●SPD
......SYSTEM ALLGREEN
<PEACEMAKER Mk-Ⅱ> Ready to launch
宙間戦闘特化型クロムキャバリア、ピースメーカーMk-Ⅱ…テイクオフ
この戦いであのペンギンさん…いえ、氷山丸のクルーの後ろめたさと世間の目が変われば良いのですが…
本機は中央突破を試みる友軍の援護、並びに総力を結集しようとする騎士団へ【存在感】を示して囮にあたります
予めROSETTAにインストールしたインペリウムの内部構造でナビゲートし、追撃する騎士団をバインダービットで【制圧射撃】
重要区画には『破鎧の魔弾』で【限界突破】したハンドブラスターでの『破壊工作』を行っていきます
●星よりも輝いて
「カニ装置。ぐっじょぶ。よもや、まだ残っていたとは」
響・夜姫(そろそろぺんぎんさんが本体と言われても否定できない・f11389)はサイキックキャバリア――南極皇帝ダイペンギンのコクピットの中で、磁気嵐の向こうに親指を立てる。
「よもや、ゴールド、シルバーも……生きてたなんて」
元はインペリウム直下の防衛部隊だった二匹だ。そこの弱点……ましてや、自分達が抜けた穴を知らぬ訳がない。それに不運と踊りかけたシルバーまで生きていたのだ。ようやく全員揃った彼等を守る為にも、夜姫は絶対に負けられない。
「むしろ飼……養ってもいいのでは?」
『グアッ! グアッ!』
そして元職場の上司に思う所があるのか、夜姫のペンギンは抗議の声を上げながら、ダイペンギンは闇を染める爆光に沿って加速した。
......SYSTEM CHECK
Control system OK
Residual fuel OK
Firearm selection OK
............
......SYSTEM ALLGREEN
XXX-XX <PEACEMAKER Mk-Ⅱ> Ready to launch
モニタに流れる無機質な文字を眺めて、秋月・信子(魔弾の射手・f00732)は息を飲む。本来、気圏内戦闘兵器たるマシン。その宙間戦闘特化型クロムキャバリア――ピースメーカーMk-Ⅱ。バザーで安く買い叩いたポンコツとは違い、正真正銘の最新鋭機。よもや他世界でお披露目になるとは、と緊張した面持ちのまま、信子は派手に明滅するコンソールを叩いて、機体をアイドリングからコンバットへ移行する。
「この戦いであのペンギンさん……いえ」
思い描くのは暗い表情のペンギンの姿。世捨て人の様にこんな辺境に隠れ住んでいた彼が、再び光を取り戻せる様に。
「氷山丸のクルーの後ろめたさと世間の目が変われば良いのですが……」
「大丈夫、たぶん」
信子の呟きに夜姫が続く。このぺんぎんさんたちは、こう見えたタフなのだ、と。かつて帝国の強敵(とも)であり、今や宇宙の仲間(ダチ)なのだから。それを知ってか知らずか、宇宙ペンギンが放つ念動の冴えが虹色の嵐を軌跡に描いて、無数の黒鉄の騎士達を鮮やかに照らし出す。
「ぺんぎんさん。出し惜しみは無し。全部……壊すよ」
『グァーッ!!』
そして虹がぐらりと歪んで、無数の十字架が形を成す。全て夜姫が誇る、葬送の機動砲台。一千六百基近い破壊の権化が、煌めく光を反射してまるで星団の様にダイペンギンの周囲へ陣を整える。
>>PengiN-Drive Combat Power<<
>>All arms Contact<<
>>Psychic Converter All Circuits open... Connected_<<
よく分からない文字がモニタを埋め尽くし、甲高い音と共に虹色の光が白光へと変化する。搭乗者の思いを力に変えるダイペンギン――その威力が、宇宙を轟かす。
「ダイペンギン、バトルごー」
「ピースメーカーMk-Ⅱ……テイクオフ!」
そして光と爆発の嵐が、再び宇宙を彩った。
「ROSETTAのナビは……大丈夫、行けますね」
バインダービットで鉄塊を吹き飛ばしながら、Mk-Ⅱが宇宙を駆ける。光と共に舞う姿はさながら鋼鉄の妖精――クロムキャバリア技術と他世界技術が融合したハイブリッド型はその威を示しながら、並居る黒鉄の騎士達を次々と叩き伏せる。
「邪魔をしないで下さい!」
ナビの指示に従って進路を固定。手にしたブラスターは元々対キャバリア用――サイズの小さいウォーマシンが浴びれば一溜りも無い。一回り以上大きなMk-Ⅱが加速する度、追い縋る鋼鉄が物言わぬ塊と化して爆光の道を描いていく。過去に敗れるほど最新鋭は温くない――アクチュエータが甲高い音を立てながら、滑らかな動きで攻撃を躱しつつ、信子はインペリウム中枢へその足を向けて、進む。
『グアッ!』
「……よろしい。ならば砲撃だ」
その背後、無数の砲台を従わせたダイペンギンが苛烈な火線を一斉に放った。渦を巻いて放たれるそれはダイペンギンの回避機動に合わせて、まるで闇を飲み込む光の竜巻の如き威力をまざまざと見せつける。
「では、ふぁいやー」
それにこの進行ルートはかつてと同じ――カニ装置を叩く時に使った道そのものだ。何よりインペリウムに詳しいペンギンがここに居る――敵の脆い所を一気に崩す事は難しく無い。迸る念動が続々と爆光を描きつつ、改良する暇も与えない進軍は遂に、インペリウムの玄関口へ辿り着いた。
「こちらピースメーカー、敵ヴァイタルパート到達。情報共有……一気に叩きます」
正面より通信。先んじて突破した信子のMk-Ⅱは最大稼働のブラスターで中枢前最後の巨大な壁を破壊せんと狙いを定めていた。
「ぺんぎんさん、回避任せた」
合わせて、夜姫がダイペンギンを加速させる。小物は概ね倒し切った――後は奥に控えるアレクシアのみ。仲間達が切り開いた道を突き進んで、二体のキャバリアが燦然と立ち並ぶ。
「待たせた、なー」
「これで……撃ち砕いてみせます!」
一拍置く間も無く、巨大な光がインペリウムの最終装甲を撃ち貫く。サバーニャとブラスターの一斉射――並の艦船なら確実に溶け落ちている程だろう。
「ねえ、これ終わったら……」
不意に、夜姫がぼそりと呟いた。
「皆でご飯、食べに行こー」
「いいですね。海鮮なんか」
『グァッ!』
途端、漆黒の大穴が二人の前に姿を見せる。同時に現れた敵の最終防衛ライン――最後の黒鉄の騎士達が二機を取り囲んで。
「でも……まずは、このパーティーを終わらせてから!」
ペダルを踏みこみ加速するMk-Ⅱ。光の跡が破壊を呼んで。そして。
「うん……これ以上、いけない」
ダイペンギンが念動の雷を巻き起こす。これ以上恐るべき、忌まわしき記憶を呼び覚まさない為に。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳴上・冬季
●
「素晴らしい。これも1つの完全なる個であるということか」
出来の良い宝貝のようにアレクシア眺め
「仙もまた、完全なる一を求めるモノ。世界が揺らぐ故に完全は成したその間に不完全となる。瞬く揺らぎの間に現れた一瞬を永遠にせんと、我等は波打ち際で砂上の楼閣を作り続ける。貴様は確かに至り、それ故に不完全となった」
拍手する
「故に我等は宝貝を作り続け壊し続ける。至り至らぬ貴様を、代わりに我が壊そう…貴様の夢は、夢で終わった」
敵の攻撃は黄巾力士に庇わせUCでナノマシンすら余さず破壊していく
「塵は塵に、過去は過去に。未来を見るなら、死してなお忘れず仙骨を育て我等が洞門を訪え。また会おう、アレクシア」
滅びを見送る
シーザー・ゴールドマン
敵部隊を伏撃するもよし、中枢を破壊するもよし、か。
ペンギン君たちはいい仕事をしてくれたね。
……そうだね、やはりインペリウムに三度目の最後をくれてやるべきだろう。
『ヤーヌスの双顔』を常時発動。
新インペリウムの中枢を目指し、これの破壊を試みます。
破壊消滅の魔力により半径100、直径200メートルほどの虚無を創り出しながら移動。床も虚無るので移動は飛行です。(空中浮遊×念動力)
騎士団は対象範囲に入り次第、不可視の魔力の餌食に。
射程外からの攻撃も攻撃そのものを消滅させましょう。
帝国継承軍。古い権威に縋り、かつての旗艦の威光を求めるか。
宇宙が欲しいのであればそんなものに頼らず堂々と行えば良いのにね。
●忘られぬ星の光よ
「敵部隊を伏撃するもよし、中枢を破壊するもよし、か……」
ふわりと、腕を組んだ二人の美丈夫がアスレチックめいた鉄塊の中を飛ぶ。インペリウム中枢へと至る道――人とマシンと龍が切り拓いた道を、最後の猟兵が悠然と突き進む。
「ペンギン君たちはいい仕事をしてくれたね」
「如何にも。現世の業でここまでやれるとは――な!」
奇襲――大剣を手にした白銀の騎士が男達――シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)と鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)に襲い掛かる。相手は頭一つ以上巨大なウォーマシン……だが。
「故にこのような船、彼岸の向こう岸へ早々に帰って貰おうじゃあないか」
「……そうだね、やはりインペリウムに三度目の最後をくれてやるべきだろう」
それは触れる間も無く、消えた。シーザーの超常、全てを無に帰す虚無の供。壁ごと抉る様に球状の破壊の跡が、その威力をまざまざと見せつけて。
「さあ、仕上げに入ろうか」
不敵に笑む真紅の美丈夫と迅雷公は遂に、光が明滅するだけの静謐な空間――インペリウムのコアルームへと辿り着いた。
「帝国継承軍。古い権威に縋り、かつての旗艦の威光を求めるか」
優し気な声音で呆れた様に呟くシーザー。背後には形無き機械の骸。正面には少女の姿を象ったオブリビオン――インペリウムの核たるアレクシアが、玉座めいた鉄骨の椅子に腰掛けて二人を見下ろしていた。
「宇宙が欲しいのであればそんなものに頼らず堂々と行えば良いのにね」
『只人如きに、私の思いが分かるものか――!』
銀河帝国に利用され、兵器生産プラントと化した彼女――その妄執のみが顕現した、歪な過去の産物。その姿を見やり、冬季が突如驚嘆の声を上げる。
「ああ全くだ! 全く素晴らしい。これも1つの完全なる個であるということか」
全にして一。無数の機動兵器を司り、核たる――母たるインペリウムを造り上げんと心血を注ぐアレクシア。その姿に自らがかつて、そして今も極めんとする道に近いものを感じた冬季は、嬉々として言葉を紡ぐ。
「仙もまた、完全なる一を求めるモノ。世界が揺らぐ故に完全は成したその間に不完全となる」
『何を、貴様……!』
拍手と共に稲妻が空を裂いて、バチバチと剥き出しの構造物が紫電を纏う。仙術、超常、ユーベルコード――世界そのものたる奇跡を起こして、迅雷公は不敵に話を続けた。
「瞬く揺らぎの間に現れた一瞬を永遠にせんと、我等は波打ち際で砂上の楼閣を作り続ける。貴様は確かに至り、それ故に不完全となった」
「そうだね。永遠など人の身に余る――それが望まれず齎されたものだとして、君はそれから、何を望み続けた?」
更に赤い雷が――赤公爵の迸る魔力が合わさって、少女の前に無慈悲な現実を叩き付けた。炎と共にインペリウムの中枢が音を立てて崩れていく。
「故に我等は宝貝を作り続け壊し続ける。至り至らぬ貴様を、代わりに我が壊そう……貴様の夢は、夢で終わった」
『……白銀騎士団、どうした! 何故動かない!?』
叫ぶアレクシア。しかしそこに現れたのは、巨大な人型兵器に握り潰され鉄の骸に姿を変えた己の騎士。私の為に作り上げた、私だけの騎士。
「塵は塵に、過去は過去に。未来を見るなら、死してなお忘れず仙骨を育て我等が洞門を訪え」
『赤銅、黒鉄……ああ、全て、私の騎士達が』
それだけでは無い。モニタしていた精鋭達は尽く、猟兵の攻撃によって塵に還っていった。アンノウンもイレギュラーも無い……ここにはもう、私を救う鋼鉄の騎士の存在は無くなったのだ。
「まるでお伽噺の姫君だね、君は」
祈る様に手を組んで空を仰ぐ彼女を見て――何かを待ち望んでいたかのようなその姿に、ぼそりとシーザーが呟く。
「だが、物語はここでお終いだ……」
「また会おう、アレクシア」
インペリウムという砂上の楼閣はこれで崩れ去る。過去と同じく――ここにはもう、未来は無い。パン、と冬季が手を叩いた刹那、ざらざらとしたノイズ混じりの音と共に鋼の宮殿が姿を消していった。そして、アレクシアも――。
文字通り、インペリウムは跡形も無くなった。
ウォーマシンの残骸がそこかしこに散らばれど、コアを失くしたインペリウムはシーザーの超常に呑み込まれ、冬季の仙術に穿たれて存在ごと消え失せた。
もう二度と、滅び去った帝国の遺産を悪用されぬ様に。
過去を乗り越えた生あるものに、限り無い未来を与える為にと。
ただ星の光だけは変わりなく、宇宙を煌々と照らし続けていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2021年05月11日
宿敵
『生体デバイス・アレクシア・ブリジェシー』
を撃破!
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