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#カクリヨファンタズム #二章はみんな例外なく"小学生"になります #二章は皆例外なく"小学生くらいの姿"になります #(←何故かこの二つのタグ消せないんですよね……)

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#カクリヨファンタズム
#二章はみんな例外なく"小学生"になります
#二章は皆例外なく"小学生くらいの姿"になります
#(←何故かこの二つのタグ消せないんですよね……)


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●あの日々
 きーん、こーん。
 時報のように鐘が鳴った。あれは下校を示す音。
 ほら、すぐに下校の放送が始まった。
「じゃあまたね、また話そうね」
 人間の子供は壁の方に独り言を呟いて、今日も元気に手を振って離れていく。
 視線の先には、妖怪がいて。
 彼女は霊感的なそれが合致して、不思議なことに"視えて"いた。
 近年稀な、妖怪を信じている子供。
 "妖怪"はそれだけで十分嬉しかった日々のことを、憶えている――。

 子供が学校を卒業してしまい、妖怪を見つけてくれる子供にはついぞ逢えなかった。
 だから、もう一度会いたかったのだ。
 誰からも忘れ去られたことで現代地球から隣接する幽世へ移動しても。
 再びあの子が、誰かが"自分のことを"思い出してくれたなら、それだけで良かった。
 妖怪は現代地球の様相を"過去の思い出"として夢に見る。
「……あ!」
 あの子供が大人になった、姿を追憶の流れから見て取った。
 妖怪はそれだけで、やはり十分だったのだが。
「あの時の話、憶えてる?憶えて、ないかな……ねえ、思い出してよ」
 震える声で、呟いた。
 妖怪の小さくて大きな願いに、記憶の流れが反応して押し流した。
 周囲に漂う骸魂が飛び込んで、妖怪の姿を変えていく。
 妖怪と子供が当時した『話そのもの』となって、世界に自分を主張する。
 カタストロフの中で、――私は俺は僕はみんな此処に居ます、と。

●もう一度
「学校。学び舎。そこには不思議な話というのは付き物らしいな」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は、いつでもカタストロフと隣接する世界の話を振る。
「俺様が知ッてる話は階段が増えるだとかそんなのだけど……」
 世界を壊しそうになっている中心にいる妖怪は、狐狗狸(こっくり)という。
 比較的、新しい妖怪と言えるだろう。
「妖怪の話はそんなとこ。んで、そいつは記憶に呑まれてオブリビオン化したんだが」
 案の定、世界は崩壊の縁に立っている。
 なにか起こるとすぐこれだ。
「迷宮化した場所は、一般的で普通の小学校のようだ」
 妖怪が過去、訪れた記憶のある場所。
 つまり思い出の場所だ。今もまだ現代地球に在るかもしれない。
「小学校の中もな、相応に迷宮化が起こッている。ので、先ずは小学校に侵入するところから必要だ」
 オブリビオンは学校内で、思い出となって歩き回っている。
 全ては、子供と話した内容の再現をするために。
 狐狗狸は、コックリさんを大本に含む概念の妖怪だが――子供をとても気に入って。
 当時の学校に居着いて気づいた奴と話をして遊んでいただけの妖怪。
 見つからなければ、廊下の隅で佇んでいただけの妖怪だ。
 人間に危害を加えたりしていたやつでは、ない。
「これがなあ、紅白な玉だとか分度器とか、色んなモンが飛んでくるんだよ。学校という思い出の中に誰かが入ることを拒んでいるんだ」
 兎に角小学校にあるモノなら、なんでもかんでもだ。
 取り外して投げられるものなら、たいてい。
「妖力を使ッて投擲しているものだから、お前らはフツーに躱して進めると思うけど」
 学校の中は、それこそ異次元。
 無事に後者の中に入り込むと不思議な力が働いて、みんな小学三年生くらいの見た目になる。そうだ、踏み込んだ時点でみんな子供にされる空間だ。
「場所は小学校だからな。不思議なコトに触れるなら、子供じャなきャいけねえ……幽世からの配慮みたいなモンだよ」
 学校の怪談、七不思議。歩き回るオブリビオンは、それらの集合体のようなナニか。
 そんな体験をするべきなのは、正しく子供であるべきだからだ。
「なにかの制限が付くわけでなし。ただ幼くなる。それだけ」
 怖がることで、オブリビオンは愉しそうにするだろうが、それが妖怪というもの。
 誰かに話して、誰かに認知されて。
 満足したら、斃されるのだってきっと吝かではない。
「学校の敷地内には、迷宮化の影響でどこからともなく桜が舞ッているらしい」
 どこかの記憶が切り取られたように、季節感を無視して咲き誇る狂イ桜の群れ。
 騒ぐ音から飲食の気配。目に見えないのに誰かがそこで、楽しんでいる気配。
 どれもが子供の姿をしているから、まるで遠足の様相だ。
「異常な怪異が少ーし居残るだろうけど、どうせ華胥の夢だから。消え去るまでの儚い時間……アンタも好きに、過ごしたら良いんじャね?」
 子供姿になった猟兵も、無事カタストロフが収束して世界が元通りになったなら。
 普段の姿へ戻るはずだ。なんのしんぱいもいらない。オブリビオン化から救出された妖怪は、そんな捻れ歪んだ現象さえ面白がってくれるはずだから。
 思い出が思い出の形を取り戻して消えていくまで、子供の時間を過ごしてくるといい。


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 カクリヨファンタズム式ふぁんたじー怪異発生のお知らせ。
 雰囲気はなんか懐かしい、を体験するシナリオ。
 大まかな姿は、参加するヒトによって変わるかも知れません。

●一章:冒険。
 なんか黒板消しとか色々無差別に飛んできます。
 学校に在るもの、教室にありそうなもの、学生がこっそり持ち込みそうなものets。
 どこからともなく飛んでくるので、避けて学校へ入り込む形へ持ち込みましょう。

●二章:ボス戦。
 学校へ踏み込んだ時点で、皆さんは平等に子供姿にされます。
 (指定がなければ小学校三年生くらい。小一~小六までなら自由が効きます)いい感じにそうなるので、武器防具、所有品。考え方や喋り方などが年齢基準になる事は特にありませんが、姿相応にがんばる感じ、大丈夫です。キミが、クラスの、リーダーだ!
 始めから小学生に該当する年齢の猟兵さんは、あら不思議。なんだか同級生(?)が出来たような楽しい気分になります。やったね!

 小学校中の施設や部屋で、ボスと出会った場所はプレイングでご指定を。
 基本的には、ふらっと一人ずつ、出会う感じを想定しています。
 (指定がなければいい感じに廊下とか、ホラーが始まる場所になるかもしれません)。

●三章:日常。
 子供姿は継続されています。(頑張れば元の姿に自力で戻れます)。
 狐狗狸さんも、桜を見上げたりして……時間の移り変わりにノスタルジアを感じていることでしょう。消え去るまでは、あの日の夕方、子供と別れたときのことを鮮明に思い出せているでしょうね。思い出に触れに行っても大丈夫ですし、そっとしておいても大丈夫。遠巻きに言えば、わいわいと賑やかな、遠足みたいな風景。

 三章のみ、呼ばれたときだけフィッダ(f18408)がお話相手を努めますが、この場合も相応に幼くなっている感じです。途中参加、途中だけ参加は大丈夫な気持ちでいますが、全ての採用ができない場合があったり、人数が多くなった場合は、戦争期間中の裏側で全体的に少しゆっくりめでギリギリなご返却を行う可能性が高めなので、ご検討くださる方はご注意下さい。
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第1章 冒険 『侵入者を一歩も進ませない程度の弾幕』

POW   :    体力で弾幕を耐え凌ぎ、まっすぐ進む

SPD   :    身軽な動きで弾幕の間隙を縫って進む

WIZ   :    弾幕のパターンを覚え、弾道を外れるルートを取って進む。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

久段・映
(夕去り方の校門前に今ドキ姿の女)
はいどーも……、っと、あっぶな。
聞いてはいたが、とんだご挨拶じゃあねえのよ。くわばらくわばら。
ふぅむ……一足早いが、
子ども好きなら、これで手心加えてくれんかね。

(化術、浄化、郷愁を誘う)
(一足早くランドセルの小学三年生程に変化
どうだい、懐かしいかいね
紫煙の香と共に、相手の妖力も浄め弱め
なおも物が飛ぶなら、当たり判定の小さな体で避わそう)

忘れ去られんのは我々が常たぁ言えども、どうにも寂しいもんよな。
此処にいたい、あの子の記憶に息づいていたい
どこにでもある思いが悲劇に繋がらねえよう。
我々『友達の友達』が
お前さんを存分に語り、拡散してやるよ。



●登校

 陽の色は沈んだ。
 夕刻を去りゆく色は黒と夜の色を染め上げて、校門の前にいた女の姿を浮かび上がらせる。
 そこからみた校舎は、特に何の変哲もない。
 怪異のそれも、古ぼけてる様子も特になかった。そう珍しくない今ドキなモダニズムに身を包んだ久段・映(友達の友達・f28088)。
「はいどーもー……、っと、あっぶな」
 まずはヒトんちに踏み込む前に挨拶、と軽く声を上げた途端。
 ひゅん、と誰のか知らぬ先の赤い上履きが、彼女の顔を掠めてすごいスピードで飛び去っていく。
 アレは片足、と認識してすぐにもう片足も追従してきた。ひょい、と顔を反らすことで躱した映は、思わず凍らせた顔を緩ませる。
「いやいや?聞いてはいたが、とんだご挨拶じゃあねえのよ」
 ――ああ、くわばらくわばら。
 手をこすりこすり。
 おまじない効果で避けて通れよ、なんて願いを僅かに乗せて。
 引っ切り無しに飛んでくる上履きの群れは、妖力で操られているとは言え、左右でワンセットがばらばらに飛ばされてくるのだ。
 まるでクラスのみんなで一斉に移動していく様をみているかのようだ。
 誰かが走ったり、歩く光景に見えなくもない。
 悪ふざけする様子を幻視するような。
 ただモノを投げているだけの意地悪が投影されているような。拒絶するには少し、威嚇というものがその投擲には足りなかった。
「ふぅむ、避けるだけでも手間だなあ……一足早いが」
 ――子どもがすきなら、これで手心加えてくれんかね。

 どろんバケラーの真髄。どろんと姿を変えたなら。
 自ずと上履きパニックはゆるやかになった。
 ぱたぱた、とその場に落下してくるりと踵を返すように上履きの群れは校舎へと引き返していく。
まるでクラスの担任に一括された生徒の群れをみているよう。
「おーおー、どっかからちゃあんと見てるって証拠だねえ」
 映は、郷愁を誘う姿へとその身を既に変えていた。
 背中によいしょ、と背負う荷物のオプション付き。
「一足早いがお望みのものか、よおくご覧よ」
 ――どうだいどうだい、懐かしいかいね。
 そこには、ランドセルを背負った子供がいた。
 小学三年生ほどの姿で、夜の学校――それも校庭を堂々と闊歩する。
 ただしワンポイントの小学生にあり得ない 口に咥えた一服は、紫煙を燻らせて香の領域をふわりと広げた。
 彼女は新しい妖怪だ、そこは目を瞑ると良い。
 ――此処は相手の力場。
 ――敷地内全部たあ、やりすぎだってんだ。
 ――少し子供らしい妖力に抑えなよ。
 子供らしからぬ香の浄化作用がどんどんと広がって、映の近くに恐ろしいモノが飛んでくる頻度が極端に落ちた。
 それは大人と子供の境界を曖昧にする香り。
「おっとぉ?」
 完全に飛んでこない、ということはなかったが。
 大人な背丈より、小さな身体をしている今ならばスキップする感覚で、するりと躱してしまえば後は学校へ乗り込んでいくだけだ。
『――みんな帰ったんじゃあ、なかったの?』
 微かに聞こえた声。
 夜に"登校"する映の姿にどこかで釘付けになったから、おそるおそるというふうに映へと伝えてきたのだろう。
「忘れ去られんのは我々が常たぁ言えども、どうにも寂しいもんよな」
 遊ぶために戻ってきた。そんなふうにパタパタと校庭を一気に突っ切る映は、聞こえた声には正直に答えずに"妖怪"の好で解らなくもない気持ちに乗ってやる。
 ――此処にいたい、あの子の記憶に息づいていたい。
 ――どこにでもある思いが悲劇に繋がらねえよう。
「我々"友達の友達"がお前さんを存分に語り、拡散してやるよ」
 語られたらもう、誰かの記憶に住み着くこと請負だ。
 そう簡単には忘れられないものさね。
 ――いい話じゃ、ねえかい?

成功 🔵​🔵​🔴​

炎・天遼
(※「ん」だけ「ン」と発音するアクセント有)

へー、これが学校かー
オレの故郷には無かったンだよなー
とりあえず、ま、邪魔するz……

(飛来する家庭科室のまな板)

誰だ、調理器具を粗末にしやがった奴h……

(さらに飛来する寸胴鍋)

だから、調理器具は調理のためにつk……

(包丁の嵐)

……殺す気か!?

あったまきた、ぜってぇ仕置きしてやる!
喰らった傷は手持ちのユーベルコードで治療して
ついでに耐久力上げて、強行突破してやるぜ!



●食材は

 やや遠くに仰ぎ見る巨大な建物。
「へー、これが学校かー」
 炎・天遼(薬毒の無上厨師・f33161)はわくわくそわそわと物珍しげに覗き込む。
 見える限り点々と、窓ガラスがたくさんあって。べたべたべたと、あかーい人間の手形が窓に模様を作っているのが見えた気がするが、それは絶対気のせいだ。
 それから教室がー、と数えだすと少々きりがない。敷地ごとこの地に現れたのかと思うと、ワクワクする気持ちは止まらなくなった。
 ――ニ階建て、いや三階建てかー?
 廊下も含めて、電気が付いている様子は全く見て取れない。
 ぽつぽつと、街灯のようなものは付いているので真っ暗というわけでもないのが救いだろうか。破壊された箇所もなさそうなので……廃校、という様子もない。
 ――オレの故郷には無かったンだよなー。
「まあ、様子見ばかりじゃだめだよな。とりあえず邪魔するz……」

 しゅぅうううう。

 気の抜けるような音が、直進してくるのに気がついて。
 軽い身のこなしで身を翻す。ととん、とリズムを刻んで跳ねて躱す。
 殺意は確かに、全く感じなかった。
 からんからんと乾いた音が直ぐ側でしたので、首をかしげる。
 ぶつかるものを見つけられず、妖力で投擲されたものは地面にそのまま落下したらしい。
 天遼は飛来してきたモノをマジマジと見ると、誰がどうみてもまな板だ。
 適度に使用された包丁痕の残る、家庭科室由来の何の変哲もないまな板が何故――。飛ぶ食材を斬る為に、まな板を飛ばす必要は全く無い。
「おいおい誰だ、調理器具を粗末にしやがった奴は……」
 顔を上げて、思わず目を疑った。
 調理人魂が、呆れを通り越すくらいありえない物が飛んできた。
 天遼は慌てて、地面に身を転がす。軽く身をひねるだけでは、駄目だと直感が告げたのだ。
 強引に避けた途端、ぐわぁああんと大きな音を立てて寸胴鍋が地面を跳ねた。それも一つではない、幾つもごろんごろんと飛んできたもので。
 中身んがなにもないにせよ、形が大きく歪んでしまっていた。
「だーかーら!調理器具は調理のためにつk……」
 校舎の方に目を移した時、今度はぞわああと寒気が背中を駆け抜ける。
 ――ちょっとまて、まな板。それから、鍋。
 ――オレを"食材"にしようとしてるんなら、次に来るのは――――。
 この場所に留まり続けているのは大いに危険。
 気がついた時点で、天遼は校舎へと走ることにした。
 ズドドドドドドド、煌めく何かが突き刺さる。
 ――ああアレは見なくても分かる!
「その音、菜箸なンかじゃないだろ!絶対包丁だろー!」
 妖力で操られた包丁を無視して走るが、さく、と突き立つ刃が回収された音まで聞こえるのだ。
 正面突破だけではいけないだなんて聞いてない!
「おいおいおいおい……殺す気か!?」
 ――活きの良い食材扱いしてるだろ。
「あったまきた、ぜってぇ仕置きしてやる!」
 器具を扱ってきたのは、訪れる誰かを拒む妖怪だ。
 ――料理が何たるか、そこから語り尽くすからな!
 はあああ、と深くため息を零しながら、飛んでくる包丁の嵐を躱しながら天遼は進む。その手に構えるは、大包丁。
 飛来する刃による深手の傷は、多少派手な傷を作ることで逆に治してしまえ!
 ギタギタ血まみれ外科手術を施すんだ、耐久力の底上げも完璧だ。
 強行突破――するぜ、逃さねえからな!

成功 🔵​🔵​🔴​

陽川・澄姫
人間を好きになった分、別れた後は寂しくなるものですよね。
次の出会いがなければ尚のこと。
その想いを拗らせてしまった事は不憫に思いますが、それでも周りに迷惑をかけてはいけません。
これはお仕置きが必要ですね。

学び舎に近づくにつれて様々な道具が飛んできますが、これらも思い出の一部ですよね?
そんな乱雑に扱って大丈夫なんでしょうか。
一応、壊さないように配慮はしてあげましょう。

妖気を纏わせた髪を念動力で動かして飛んでくる物を絡め取ったり、面状や網状にして受け止めながら進みます。
確保した物は、また投げられないように全て回収したままにしておきます。
あまりに量が多い場合は一度遠くに置いてくる事も考えましょう。



●拾い集めて

「人間を好きになった分、別れた後は寂しくなるものですよね」
 校舎の何処かで訪れた猟兵の姿を、此方をみているはずだ。
 陽川・澄姫(現世の巡回者・f30333)呟きながら、ひとつ、ふたつと頷いた。
 心根は、妖狐なので。見た目相応の年齢というわけではないのだ。
 彼女にもまた、別れと出会いは存在し――それは胸に抱く、優しい想い出が多い。
「私には出会う人がありましたが、次の出会いがなければ尚のこと」
 話し相手もきっといなかっただろう。
 心をすり減らして、寂しい思いをずっとずっと抱えたはずだ。
「想いを拗らせてしまった事は、不憫に思いますが……それでも周りに迷惑をかけてはいけません」
 無理やり追い払おうとしている今のその姿は、悪戯者という言葉では片付けられない。ただ、"あの頃の子供"以外を認めないだけ姿勢は、反抗的に映る。
 ――これはお仕置きが必要ですね。
 敷地内に踏み込みながら、澄姫は飛んでくる弾幕を横目に歩いていく。
 飛んでくるものは、黒板消し。それから、みっちりと中身が詰まった誰かの筆箱。
 消しゴムが、鉛筆がと細々とした多種多様に使いかけのものばかり。
 ――学び舎に近づくにつれて、様々な道具が飛んできますね。
 ぺち、ぺちと当たっても対していたくない威力の薄いものばかり。
 避ける必要はないが、踏まないようにそっと心を配る。
「ん、これらも思い出の一部ですよね?」
 想い出の中の学校を再現しているなら、沢山の子供が通っていた時期の一部のはずだ。使用していた誰かが居て、子どもたちと同じ時間を共有したはずの品物だろう。
『そうだよ。思い出――よく教室にそれらはあったんだよ』
 何処にも姿は見えないのに何処からともなく聞こえる声は、遠距離会話のようなもの。気になる声には、答えるくらい、此方の様子を見ているようである。
「……誰かの大切なものだったのでしょう?乱雑に扱っても大丈夫なのですか?」
 澄姫の次の問いかけには、黒板に貼り付ける棒状の磁石が多数飛んできた事が答え代わりなのだろう。
 重く、投擲するには適さないそれを投げてくるということは。
 誰かの私物ではないものを投げる事に切り替えたのだろう。
 ――壊さないように配慮を置きますが。
 ――そうですね、あなたにも配慮はあったほうが良いと思います。
 少し心温かい気持ちになった澄姫は、妖気を纏わせた髪を念動力で動かして。
 直接砂の上に落ちるのを、網目状に広げぽすんとワンクションで受け止めて絡め取るように留める。
 自由自在な長い髪だ。飛んでくる物をそのまま捕まえることも出来るが、傷つけないよう、優しく扱うように努めることにした。
「このくらいでは人は逃げません。これは……ええ、暫く預かっておきますね」
 澄姫はただ、進むのだ。
 拾い集めたのはバラバラな誰か過去の私物だが。
 地面にそのままおいていくわけにはいかない。もう一度の投擲に利用されては叶わない。いつか何処かで壊れては、誰かが悲しい思いをしてしまう。
 ――ええ、よくないですからね。
 少々想定した数よりも量が多いようだ。
 ――校舎の中にはいったら職員室に届けておくのが良いでしょうか。
 ――落とし物を入れる箱、などがあるといいですね。
 校舎の誰かが落としたモノを、誰かが拾いにこれるように。
「再び投げようとするのは、だめです。別の方法をお試し下さい」
 ぐん、と妖力で飛び出そうとする筆箱を押さえつけてぴしゃりと言い切っておく。思い出をたくさん拾い集めて、登校する澄姫は普通に昇降口の扉を開けて校舎へはいっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
物を避けてたどり着け、ね
そういうのは大得意だ
でも真っ直ぐ走るんじゃつまんねえし
どっちが速いか競争しようぜアレス
了承を聞く前に先制だ
歌で身体強化して
靴に風の魔力を送り旋風を生成
それを炸裂させた勢いで一気にトップスピードへ
飛んでくる物を見切り避け
時には正面から拳や蹴りをぶつけて弾き飛ばす

アレスに抜かされそうになったら
負けず嫌い精神発動
多少の怪我を構わず前に進むことを優先しようと

…って、アレス下ろせよ!
これじゃ競争にならねぇだろ
じたばたしてみたり
俺が前にいるから俺の勝ちになるぞ!何て言ってみるけど
…くっそ、ズルすぎるだろ
試合にかって勝負に負けた気分だ
赤くなった顔をどう隠せばいいんだ


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

こういうのはセリオスの方が得意…あ、こら!?
はあ…競争、か。君らしいな
…何度だって君に追いついてみせるよ
けれど今日は―君の前を走ろうか
脚鎧に光の魔力を充填
足下で光を爆ぜさせその推進力でダッシュ
目指すは光速
飛来物は【絶望の福音】で予測し
無駄無く回避を

…セリオスの負けず嫌いはよく知ってる
けれど、10秒先の未来の中で彼が怪我しそうなら
彼の元へ駆けよう
抱えてそのまま回避するよ
降ろしてあげたいけれど、向こうは待ってくれなさそうだからね
このまま行かせてもらうよ

…いいよ、でも
僕に『抱えられている』ということをお忘れなく、青星のお姫様
大人しくなったらいい子だねと微笑いかけ
一緒にゴールしようか



●勝ち負けだけが全てじゃない!

「物を避けてたどり着け、ね」
 ――いいぜいいぜ、そういうのは大得意だ。
 セリオス・アリス(青宵の剣・f09573)は何が飛んでくるか、という一点にワクワクとする。
 ちっちゃいものから大きなものまで、きっと気分で投げてくる筈だ。
「でもよぉアレス?このまま真っ直ぐ登校するんじゃつまんねぇし」
 ぺちぺちとアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)の肩口を叩く。
 これはなにかを催促してくる行動のはずだ、と幼馴染みに視線を向けたのをいい事にセリオスはニィと口角を上げて。
「どっちが速いか競争しようぜ!」
 ――スタートダッシュは譲らねえけどなあ、アレス!
 了承を聞くより早く、短いブレスを挟み、歌で全身を奮い立たせるよう強化を施し悪戯準備は即座に完了。
 風は歌うように靴を軽くする。
 言葉の通り風より疾くその足は駆ける事が出来るだろう。
 ちなみにこの間――10秒に足りるかどうか。
 何という瞬間的歌の浸透性。君の前世は忍びの者か?
「こういうのはセリオスの方が得意……あ、こら!?」
 しゅばああ、風の魔力で編まれた旋風を踏み、軽やかに駆けていく背中に驚いている場合ではない。
 あれは即座に暴風が如き爆発力がトップスピードまでギアを挙げるだろう。
「全く、……なんだって?競争?まあ、君らしいな」
 言っている側からこれだとアレクシスが苦笑するのも少しだけ。
 風のように駆ける鳥の独走を許すわけにはいかない、とすぐに思い直す。
「……何度だって君に追いついてみせるからね」
 ――スタートダッシュのあとは、僕にも勝ち目があるはずだ!
 追いかける背中は少し遠い。だが負けない、と駆け出す足は軽く思えるのだから、不思議である。
 何もしていない、はずがない。
 後を追う事を決めたアレクシスは素早く脚鎧に光の魔力を充填させる。
 軽く思えるのではない、セリオス同様にその脚は軽いのだ。
「けれどね、今日は――歩後ろじゃない――君の前を走るからね」
 駆け出す足下で、光を爆ぜさせた推進力をバネに、前に出す足は更に更に加速する。ちなみにこの間、セリオスが駆け出してから5秒に届くかどうだ。
 なあ、君の前世は反射神経の化け物か?
 セリオスがトップスピードに至る頃、もう後ろにはアレクシスがいるのだ。
 なんて速い!野生のマラソン選手が居たならば彼らは勝ち目のないランナーに恐れ慄き、周回遅れに咽び泣くことだろう。
「ほら、追いついた!」
 飛んできた飛来物は……何故か、大柄な定規だ。
 黒板に貼り付けて、線を引くのに使う教師が使う――いやそんな事はいいんだ。
「長いだけで、投擲速度はないようだ。脅威では、ないね――此処で抜かせて貰うよセリオス!」
 まるで十秒先の未来を見てきたかのような、見事な行動予測につき、そのフォームは一切崩れず加速を続けるアレクシス。素晴らしき完璧な姿勢で走り続けている。
「っんな!?」
 簡単に追い抜かれかけたセリオスの奇声はさておき。
 セリオスだって飛んでくる物に見切りを付けて避けているのだ。
 先程飛んできたのは、これまた大きな三角定規――二等辺三角形とか三角形とかどちらでもいいんだよ!
 妖力によって、無回転で飛んでくるものなら当然セリオスは避けたのだ。
 だが、相手は形状に鋭角を持つ、有る意味凶器にもなる教師しか仕えない代物だ!
 ああ、何故か縦回転や横回転を加えられて飛んでくるものまである!
 残念ながら、回転している三角定規共は厚みが足りなくて見てとれない。
「駄目だね!前は譲らねえ!」
 人知れずセリオスの負けず嫌いスピリットが炎上を開始し、やる気ゲージがフルバーストを起こした。
 踏み出す足元に力を込めて、飛び上がったセリオスは拳……いや足だ!と瞬時に切り替える。
 力を込めて跳んだのだ、ちょっと長い滞空時間がある。いける、大丈夫だ。
 真正面からあぶない投擲物を蹴り飛ばし、明後日の方向に弾き飛ばし、とりあえず脅威の排除は完了!
 アレクシスの前を走り続ける事に成功するだろう、と気分を平常値に戻そうとして……すとん、と地面に着地す……ることは叶わなかった。
「……セリオス、負けず嫌いなのもよく知っているよ」
 十秒先で見た光景。
 減速こそ行わなかったアレクシスに、セリオスは抱えられていた。
 ナイスキャッチ、である。
「……ってアレス下ろせよ!これじゃ競争にならねぇだろ!」
「でも、怪我しそうな所に突っ込もうとするのはよくないかなと思って」
 じたばたと暴れる幼馴染みの声を聞きつつ。
 先程見た十秒先ジャストが今だ。セリオスが未来、突っ込んでいただろう空間へドドド、と定規の鋭角が突き立ったのをアレクシスは見ていた。
「定規の串刺しとか、回避できるに越したことはないだろう?降ろしてあげたいけど、向こうは待ってくれないみたいだから」
 簡単には放さないから、暴れないように。
 アレクシスの態度は、そんな言葉を告げているようだった。
 しかし、釘を刺されるようにいわれてもセリオスは競争することを諦めない。
「これじゃ俺が前にいるから俺の勝ちになるぞ!」
「……いいよ、でも」
 少しの空白。
 あれ言葉が返ってこない?と訝しみながら見上げてみると、視線がぶつかる。
「僕に"抱えられている"ということをお忘れなくだよ。――ね?青星のお姫様?」
「……くそ、くっそ、ズルすぎるだろ」
 ――試合には勝ってんのに!
 ――勝負には完敗した気分だ。
 可愛い小言を耳で拾ったアレクシスはニッコリと笑った。
「いい子だね――よし、一緒にゴールしようか」
 顔を真っ赤にしたセリオス、ノーコメント。
 ただ、こくこくと頷いていた。 真っ赤になった顔を、バッチリ見られ隠せなかったことで内心が穏やかではなかったのだ。
 ――……あああああ~~~!
 不意打ちに掛かって隠せなかったのだ、仕方がない。
 そう思うことにしたがアレクシスは本当にいい顔で――笑っていた。
 勝負以外の部分の、そう満足感ならば。
 堂々のアレクシスによる一人勝ちであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オネスト・ファッション
小学生だったのはそこまで昔のことでも無いはずなんだけど
校舎を見ると中学や高校よりも小さく感じる
ノスタルジーってやつだな

さて、学校の備品を投げつけるなんてなかなかにワルだが
小学校卒業済みの『先輩』には、何が飛んでくるかなんてお見通しだぜっ!
【ネメシス・ムーヴ!】を発動し正面から堂々と入っていく

飛来するものを目視し[瞬間思考力]と小学校という世界への[世界知識]を活かしとんでくるものを予想
言い当てることで強者ムーヴを高めてUCの成功率をあげる

あー入り口に黒板消し設置、よくイタズラしたぜ
虫とか魚飼ってる飼育カゴ、なんでかクラスに一個はあるよな。懐かしい
とたまに思い出に耽って被弾するのもご愛嬌って事で



●"先輩"の貫禄を見るが良い!

 知らない場所だろうと、感じるシンパシィ――直感を大切にする。
 見せかけ以上の本物の見極めは、ワルに通ず。
 ファッションリーダーたるコツは、そのあたりが由来するのである。
 それがオネスト・ファッション(見せ掛け以上・f31551)のポリシー。
「小学生だったのはそこまで昔のことでも無いはずなんだけど……」
 指折り数えて年単位で下がれば、指の数は事足りる。
 校舎は大きいが、うっすら教室の内部の椅子や机を見るに少し小柄。
「中学や高校よりもやっぱり小さく感じるなあ!」
 ――これもノスタルジーってやつだな。
 これから侵入を試みようとしている自分もワルい事をしようとしている自覚はもちろんあるが、ひゅんひゅんと色んなところから飛んでくる数々の品を操る妖怪とやらも、なかなかワルな心を理解している。
「さて、あえて声に出して言うけどな、学校の備品を投げつけるなんてなかなかワルだな!」
 だがそれだけではだめなのだ、オネストはちっちっち、と指をふる。
 ――ワルだが……ワルにはワルで上回るぜ?
 ――まぁ!どこから見てるかはわからんけどな!
「小学校卒業済みの"先輩"には、どこからどうやって、いったい何が飛んでくるかなんてどれもこれも、見て無くてもお見通しだぜっ!」
 どんな備品だろうとお構いだしだ、オネストは笑う。
 何が飛んでこようと、堂々とやり過ごして魅せるのが"先輩"の貫禄というもの。
 オネストは、正面から敷地内に踏み込んでいく。

 飛来するモノの一部が、ふと視線に飛び込んできた。
 ブラックな世界で滑り込んで投擲されたもの。あれは――。
 瞬間思考力が加速して、小学校という世界の扉を大いに叩く。
 いいや考えるまでもない。ホワイトボードを消すタイプのそれではなく。
「此処で来るとしたら、字を沢山消して真っ白になった黒板消し!」
 ピタリと言い当てて、"先輩力(せんぱいりょく)"を更に高めて魅せる。
 小学校を卒業出来ていないお子様後輩からの攻撃は、ぐらりと動揺が載ってオネストへの被弾ルートをそれる。
『(こいつ、つよい……!)』
 妖怪が何処かでそう思ったかどうかは定かではないが、動揺間違いなく事実。
 圧倒的強者の貫禄を魅せつけることに成功したのだ。
 回避する、どころか攻撃が逸れる。

 ころんころんと転がったのは少し使い古された黒板消し。
 沢山の授業で文字を消してきた真っ白さ!
 クリーナーに掛ける事無く、わざわざそれを投擲してくるだなんて!
「全く……被弾するトコまで含めてるのか?ワル度高いなあ!」
 笑って入るが、内心は――キメた髪を白くされてたまるか、である。
 そんな気概さえ感じられるオネストの投擲物当ては何度も当たる。
 その都度コロコロと投擲物が転がるのだ。これはこれで、面白い現象であった。
 入り口に近づくころには、一つ二つと黒板消しを拾っていて。
 ニヤニヤと"悪戯トラップ"を施す。
 黒板消しをいい感じに挟み込み、悪戯準備、完了。
「いやぁよくイタズラしたぜ。虫とか魚飼ってる飼育カゴとか、なんでかどこにでも在るんだよなー」
 小学校といえば生物の観察……というのが決まり事項なのだろうか。
 この学校にも、どうやらあるらしい――うんうん、懐かしい。
 ふわふわと、思い出に想いを馳せている間。
 不用意に、今仕掛けたトラップの存在を忘れて扉をからり。

 ぽふん。

 今自分で仕掛けたトラップに、自分で嵌ってしまった。
「……此処までがお前の策略か!」
 妖怪のせいにしてみたが、被弾は自分のミス。
 ハハハ、ご愛嬌ご愛嬌、とさり気なく笑って誤魔化しておくオネストであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リオン・リエーブル
ほうほう学び舎
懐かしいねー
おにーさんもアルダワで錬金術の体系を学んだのさ

投げつけてくる怪異はゴーレムさんが相手だ!
ゴーレムさんを野球少年の形にして
投げてくる品を打ち返す!
ピッチャー振りかぶって第一球投げた!
打った!バッター出塁!
なんて妖怪さんと遊ぶよ
めいっぱいの声援を

野球少年ゴーレムズの試合を抜けて侵入
いやぁこの雰囲気懐かしいなあ
色々あって故郷を追い出されて
グリモアで無理繰り界渡りした傷心傷身のおにーさんを
同年輩の学友が受け止めてくれたっけ
皆で野球っぽい球技にもハマったなあ
皆元気かな?…って500年近く前だから死んじゃった
それでも思い浮かぶ懐かしい顔と思い出話しながら
妖怪のいる所へ歩いて行こう



●遊びの向こう側

「ほうほう確かにこれは学び舎だ!」
 どーんと大きく主張する建物を、腰と額に手を当てたエルフの男。
 リオン・リエーブル(おとぼけ錬金術師・f21392)は上から下まで見える範囲をマジマジと見つめた。
「うん雰囲気が懐かしいねー。おにーさんは現代地球式じゃなく、アルダワで錬金術の体系を学んだのさ」
 現代地球だから、普通に読み書きから友達となんやかんやする青春のエトセトラ。
 それから、とリオンの頭に思い浮かぶのは青春ラプソディー。
 悪戯盛りの子どもたちが、キャッキャとはしゃぎ、教師から隠れて色々するのは想像が滾るもの。
「……なのでおにーさんは、特に叱ったりはしないけど!」
 ふっふっふ、と笑いながら童心に訴えかけてしゅしゅっと構えて取り出すは。
 指の間に挟んだ試験管が数本。
「さあ出ておいで!仮初めの命をあげるよ、一緒にはしゃいで遊んであげよう!」
 薬品の内訳はごにょごにょっと企業秘密。
 全部を混ぜて、メイキングする姿に名を与えよう。
 ――といっても、名前は既に決まってるけど!
 任意の形状で作り出すのはそう――ゴーレムだ!
「ほーら、来た……投げつける怪異はこのゴーレムさんが相手だ!」
 愉快な仲間たちは野球少年の姿で、どれもこれもがバットを所持している。
 どいつもこいつも、グローブ不携帯。
 これは百本ノックの練習風景か?というくらい、広がっていく野球少年たちがそれぞれ適切な場所でピタリと止まった。
 カキィイン。
 それは澄んだ音。ボールのとんだ音だ。
 バットが打ち返したのは、小学校にあるのは軟式ゴムボールのハズだがちゃんと硬式のボールが使用されている。
 誰だ硬いボールを持ち込んだのは。
「いいよいいよ、ノリがいいね。その調子――プレイボール!」
 リオンはあえて、主審を気取ってゆるくふわっと大きな声でからかい始める。
「ほーら少年達よくご覧、ピッチャー振りかぶって第一球投げた!」
 怪異は空気を読んだのか、遊びが始まった事が嬉しかったのか。
 主審の宣言後、すぐにひゅんひゅんと沢山ボールが飛んでくる。まるでバッティングマシーンが設置されてるように、バッター目掛けて飛んでくる!
「お、ナイス!」
 飛んできたボールは流れるようにバッターの絶好スポットに――飛び込んだ!
 カキィイン!
「打った!バッター勢い良く出塁を開始!」
 ばたばた、と走っていくゴーレムに焦ったのか、誰も持っていないグローブまで投擲してくる始末。
 ただしグローブが飛んでいるだけだ。誰かが使っているわけではない。
「妖力でフライを狙ってみる?いいよ、何人アウトにでっきるっかなー?」
 からかいながら、妖怪と遊ぶのだ。
 妖怪とは例にもれず、たいてい遊ぶのが好きでそちらに気を持っていかれるから。
 野球少年ゴーレムズの試合をすぅ、と抜けて。
 誰よりも困難な中を簡単に抜け仰せたリオンは、校舎の中へ一足先に足を運ぶ。

 来客者用のスリッパを適当に履いてみるが、なんという安い感触!思わず笑いが溢れてしまう。
 適当にふらついて、流し見ること右左。
「いやぁこの雰囲気懐かしいなぁ」
 ――色々あって故郷を追い出されて暫し。
「グリモアで無理やり界渡りした傷心傷身のおにーさんを同年輩の学友が受け止めてくれたっけ」
 思い出の光景は目を瞑るとなんだかすぐ昨日のように思い出せる。
「確か、みんなで野球っぽい球技なんかもしたし、妙に皆でハマったんだよなあ」
 沢山学んで、わいわい騒いで。
 メリハリの在る生活が続いていたけれど。
「皆元気かな?……ってあれはもうそうか、500年近く前の事なんだっけ」
 学友たちは種族こそ様々で、しかしその中にエルフはいなかった。
 彼らはとうに死んでいる。
 ――でも、思い出の中では活き活きしているからねえ。
 思い浮かぶ懐かしい顔と思い出話を話し合いながら、ふらりと廊下を歩いていく。
 ひとりで楽しげに話していれば。
 きっと、寂しがり屋の妖怪は――話し欲しさに飛び出してくるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

尾守・夜野
■心境
俺に学校とかいうのにかよった記憶はねぇ
村にいた時も、無いのはエピソード記憶であって意味記憶は…飛んでるところがあるとはいえ、一応あるし

だから飛んでくる物の名称は知ってても懐かしいとかは感じない
小学校ってこんなのなんだ…
こんなに物飛んでたらガキども危なくね?(誤った認識)

■行動
…物自体が意思持って動いてるってわけじゃねぇだろ?
前面にUC発動し飛んでくるもの、置いてあるもの巻き込んで取り込みながら移動しようか

抵抗しないなら取り込めるだろ
後方とか見えないのは来てる黒纒で防ぐ

ボムかな?
まぁ制限時間があるわけじゃねぇんだが
あえていうなら中から溢れ出すまでが制限時間か?



●例えそれを知らずとも

 学校を目前に、尾守・夜野(墓守・f05352)はただ、その光景に自分の事を重ねていた。
 学び舎、学校。
 今は静かに沈黙する建物が、子どもたちに学を授ける場所である。
 ――俺に学校とかいうのにかよった記憶はねぇ。
 それは、夜野の過去のこと。
 農村に居たのは教師などと呼べる"先"を"生"きるものはいなかった。
 それ以外は色々いたが、学ぶことがあったかどうか。
 無いのは学園ライフなエピソード、それにまつわる記憶であって。
 建造物としての名称を知らぬ訳でなし。
 出身自体は現代地球、数奇な人生を歩んでいるが夜野の生き様は毎日順当に人生のノートに書き記され続けている。
「意味する所は、まあところどころトんでるところがあるとはいえ、一応在るし」
 目標物に対する認識を、決して見誤ったりはしない。
 他の猟兵が数人すでに侵入していったのを、遠巻きに見ていたのだ。
 色々なモノの弾幕が、飛んでいたが――特に何かを思ったりはしなかった。
 ああそんなモノが在るんだ、という、一歩離れた認識が、夜野の中にあっただけ。
 授業で使ったり、学校の生活で利用したり。
 皆で揃いのものを使用したり。
 ――ふーん?
「小学校ってこんなのなんだな。……しかし、こんなに物飛んでたらガキども危なくね?日々怪我が絶えないんじゃねぇの?」
 敷地の外、校庭で色々する時にこのようなモノが飛ぶなどと。
 自分の荷物も、誰かの荷物も絶対入り乱れるだろう。
 ――回収とかどうすんだ?
 誤った認識が加速する中で、誰も訂正するものがいないことは夜野にとって幸いなことなのだろうか。
 小学校はサバイバルする場所、等とそろそろ学び舎である事が色々すり替わりそうなほどだ。

 どしゃ。がしゃああ。

 思考を手放して、今しがた落下したそれに視線を映す。
 支柱に4つの細棒が立つ鉢植えらしいモノが派手に倒れて土を零していた。
 花は幾つか蕾を閉じているが、夜野は特に花の名前に興味はそそられない。
 忘れ去られた誰かの朝顔の鉢植えだ。ちゃんと縁に持ち主の記載まである。
 成長記録を書くのに育てていた学年があったのだろう。
 それが幾つもふわ、ふわと夜野を狙って飛んでくる。
「……物自体が意志持って動いてるってわけじゃねぇだろ?」
 土を零してしまえば、花が困る。
 花が元凶なら、水のほうが欲しいだろう?
「まあ俺は要らないが、邪魔するなら知ったことか――解析開始」
 存在を置き換え、再構成を開始せよ。
 展開する魔法陣は、自身の前方へ。小さな家なら覆い尽くす"マイワールド"。
「元の形を必ずしも保てるとは思うな」
 魔法陣に触れた途端、それらは目の前で消失していく。
 夜野の世界へ、――ユーベルコード制の空間へ放り込む。
「……所有者名が、あったな。つまり、これは……」
 ふわ、ふわと沢山の鉢植えが飛んでくる。
 忘れ去られたのは、ひとつではない。それどころか、朝顔が咲いているのだ。
 どの時期のモノかはさっぱりわからないが――現在進行系で観察していたハズの姿、で存在している。
 学年、もしくはクラス分、この鉢植えは存在してしまう。
「飛ばしてくるなら、こっちも――置いてあるモンも全部収容させて貰うからな」
 妖力で動く前の鉢植えも手当たりしだいに巻き込んで、取り込んでいく。
 みるみる飛ばせる物が減っていく。
「……抵抗は無し。興味も関心もないのか?」
 ――いや、逆か?
 ――取り込み続けられるものなら、やってみろと?
 ――回収しきれなくなって溢れ出すのを期待しているのか?
「制限時間があるわけじゃねぇんだ。その前に、入り込んでしまえば……俺のひとり勝ちだ」

成功 🔵​🔵​🔴​

レーヌ・ジェルブロワ
【あしび】

学校というものは初めてなもので…
こんなに大きな建物なのですね
ヴェルさんもあまり見慣れないのですか?
うふふ。なんだか物珍しくて見回してしまいますね

あら?きゃっ!何でしょう?
(飛んでくるのは部活で使うようなバレーボールやバスケットボール)
ボールのようですが…様々な種類のものがあるのですね?
え、えいっ!
(バレーボールはレシーブするなどして意外にも上手くいなす)

と言っても、全部をレシーブするわけにはいかないので…
飛んで来るものたちにUCを放ちます
何の罪もない物を壊すのは少し気が引けるので、柔らかな花びらの方を当てて飛んでくる勢いを落とす感じで

ふう…でもちょっと楽しいですね、ヴェルさん!


ヴェル・ラルフ
【あしび】

前に依頼でUDCの学校に来たことはあったけれど
遊具みたいなものがあるのは初めてかも
小さい子向けの学校なのかな?僕も見慣れないよ
つい好奇心が頭をもたげて辺りを見回しながら

飛んできたボールは見切って反射で避ける
武術は得意だから、たくさん飛んで来たら足を使う方が楽かも
サッカーボールなどを足で止めて勢い削って
ふふ、子どもの頃こうしてボールで遊んでたことを思い出すなぁ
学校って、こんなにたくさんボールがあるんだね
何を学んでるんだろう?

必要があれば如意棒【残紅】で退けて
レーヌの白薔薇で止められなかったものをなぎ払いながら
彼女を守るようにして進もう

ふふ、そうだね、ちょっとしたアトラクション気分かも



●跳ねる気持ち

「――どうかした?」
「ええと。学校というものは初めてなものなので……」
 レーヌ・ジェルブロワ(いやはての白薔薇・f27381)は大きな建物を仰ぎ見て、目を丸くする。
「こんなに大きな建物なのだなあ、と驚きました。そんなヴェルさんも、なにか思うところがありそう、ですね?」
 なにかを言いたげな顔をしていましたとレーヌに微笑みかけられて、ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)は顔の前でひらひらと手を振った。
 そんな、そんな、大したことじゃないと。
「いやはや、前に依頼でUDCの学校に来たことはあったのだけれど」
 ヴェルはある日の記憶を話し出す。
 沈んでいく太陽の光の中で、潜入のために清掃員の格好をしたあの日のことは、よく覚えている。
 ――掃除をしつつ、各部屋を覗き込んだりしたのだっけ。
 あまり見て回る時間はなかったけれど此処には人の気配はない。
 誰かの言葉、囁きに耳を傾けても聞こえてくるのは、ふわ、ふわと妖力で浮かべられた小物類だ。
 ひとまず視線を外して、校庭の隅に鎮座する複数の遊具に目を留める。
「遊具みたいなものがあるのは初めてかも。これは小さい子向けの学校なのかな……」
「成程です。ヴェルさんもあまり見慣れない光景なのですね?」
 ふふふ、ふわりと笑うレーヌ。
「うん。僕も見慣れないね」
 ついつい好奇心が勝る。ハイスクールな学園には、普通このような設備は無いようなイメージだ。
 鉄棒はまだわかる。だが、古ぼけた感じのジャングルジムやブランコがあるのは、どうなのだ?
「面白い光景だと思わない?」
「わたしはさらに物珍しいと思っていますよ。ゆっくり、見て回りたくなります」
 二人の雰囲気はとても柔らかいものだ。

 そこへ、ひゅん、ひゅん、と音を立てて何かが飛んでくる音が聞こえ始める。

「あら?何の音でしょう……きゃっ!」
 音に驚いたレーヌの後ろに、こん、こんと跳ねるような音。
「何でしょう……?」
 振り向き確認しようとしたが、すぐさま次の投擲物が飛来する。
 ――飛んでくるのは……。
 傍に投擲され、跳ねているものは一体何だ?
 ヴェルは先に何が飛んできたかを、見切って反射的に避けていた。
 だが、何かが来た、という敵意のようなものを感じて避けただけ。
 何が飛んできたかは――。
「……ボール?」
 ヴェルが確かめた先に転がっていたのはサッカーボール(新品)。おや、何だかとても真新しい。
「確かにボールのようですが、なんだかそれにしては様々な色なような気が……!」
 レーヌが聞き返した時、飛んできたボールが直接ぶつかってこようとしていた。
 バスケットボールや、テニスボール(軟式)。
 それから何故かラグビーボール(誰かが持ち込んでいたもの)。
「え、えいっ!」
 腕を胸の前に構え、ぽーんとレーヌはレシーブで打ち返した。どこへ?それは当たってきたバレーボールに聞いて欲しい。弧を描いて高く舞い上がった。
「お、とっても綺麗に上げたねえ」
 ヴェルも楽しげに、サッカーボールの群れをいなしていた。
 低めの打点を転がるように飛んでくるボールを、得意な武術に応用し、靭やかな足さばきで足に絡め勢いをリフティングで打ち上げる形で削いでいく。
 舞うような蹴り技が本来の姿だが、ボールを割らない程度に威力を抑えるのもまた、武術の達人ならば出来ることだ。
 ぽーんぽーんと数度遊べば、妖力で再び浮こうとする様子もない。
 至って普通の、ボールに戻って見えた。
「ヴェルさんは慣れていそうですね?」
「ふふ、子どもの頃こうしてボールで遊んでいた事を思い出してね」
 慣れているんだよ、とヴィルは嬉しげにぱちんと一つのウインクを混ぜた。
 不思議なボール遊びを繰り広げ、二人の周囲には沢山のボールがコロコロと転がり続ける――。
「学校って、こんなにたくさんのボールがあるんだね」
「遊びに使うものでは、ないのですよね……?」
「多分。これで何を学んでるんだろう?」
 はてな、と二人で考えてみるが答えがでるよりはやく、次の弾幕が飛んできそうな音がする。
 流石ボールの群れだ、どこまでも数だけは万全というわけか。
「考えるのはとても楽しい時間でなのですが……全部のボールに対応していては進んではいけませんから」
 白薔薇をふわりと浮かべて、それからずらりと魔力を込めた花がわぁ、と周囲に複製される。
 総数としては81。
「白薔薇の恩恵に抱かれて、おとなしくしていて頂きましょう?」
 とすとす、と柔らかな花側にボールがぶつかってくる。
 飛んできた威力を殺されたボールが、割れること無く地面に落ちて、ぽすんとはずんだ。
「何の罪も、ないでいものでしょうから……せめて、自由に転がっていてくださいね?」
 レーヌの白薔薇でボールの襲撃は止められて。暫しの間、ボールの雨が止んだ。
「少し安心したら、すぐ襲ってくるだろうから……先を急ごうか」
 彼女を護るように先を歩くヴェルを頼もしく思うレーヌの微笑みが耐えることはない。念の為にと、如意棒【残紅】の握る手を緩めることはないのもまた、頼もしい。
「ふう……これで落ち着いたでしょうか?でも、ちょっと楽しいですね、ヴェルさん!」
「ふふ、そうだね。ちょっとしたアトラクション気分かも」
 なんて。猟兵二人に対しての脅威度はとても小さいものに収まった。
 校庭を横断し、二人が校舎へはいっていくまで穏やかな時間はずっと同じ温度を展開し続けたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『七不思議の花子さん』

POW   :    ねぇ、こんな噂を知っている?
【動く二宮金次郎像】と【動く人体模型】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【から生える見えない手が敵の動きを封じ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    友達の友達が聞いたそうなんだけれど
攻撃が命中した対象に【七不思議の呪い】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【テケテケ】【ヨジババ】【赤い紙、青い紙】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ   :    この学校には七不思議があるんだって
戦闘力のない【、戦場全体を内包する夜の旧校舎】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【校舎内に溢れだす学校の七不思議たち】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は九頭竜・聖です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●小学生しかいない夜の学校で

 踏み込んだ学校の中は、耳を澄まさずとも分かるほどシンと静まり返っている。
 外での怪異がまるで嘘のようだ。追跡してくるモノもない。
 だが、注意深く集中すれば聞こえるはずだ。
 ぱた……ぱた…………。
 学校の何処かで、誰かが歩く音。
 学校内で思い出を再現しながら遊んでいるオブリビオンだろう。
 狐狗狸さんと子供が過ごした記憶を火種に、姿は変わった。
 それは記憶の流れに押し流され、周囲で漂っていた骸魂をも巻き込んでいる。
 今は単純な妖怪では、ない。世界崩壊のキッカケとなった脅威となった"誰か"だ。

 突如――ぷつ、と電子音がひとつ。
『皆さん、下校の放送を始めます。アナウンサーは三年二組、■■です。完全下校の時間は――』
 放送室で誰かが放送を流している。これは――狐狗狸さんが何度も聞いた思い出のそれだろうか。
 オブリビオン以外が、この場所にいるはずがないのだから。
『忘れ物の確認は出来ましたか?では気をつけて帰りましょう。ごきげんようさようなら』
 一通り話し終わったのか、放送はすぐに聞こえなくなった。

『あれあれ、今の放送聞こえたでしょ。……帰らないの?ねえ、あなた何年生?』
 話しかけてきた誰かは、クスクスとした笑い声が耳につく。
 "トイレの花子さん"のような姿をした、魂の色が色濃く表した妖怪がそこにいた。
 何年生?そんな質問に何の意味が――おや?自分の姿をよく見て確認すると良い。君は普段の姿と少々異なった風貌になっている。違和感を抱えていなかったが、確かに見上げてみると天井が普段よりも高く見える。
『"私"と楽しい話をしましょうよ。例えばそう、七不思議とか怪談話とか"狐狗狸さん"とかね?』
 学校の怪談を語り合おう、オブリビオンとなった子どもはそう誘ってくるのだ。
『夜の学校でするなら、その話がいいと思わない?』
 クスクス、クスクス。
『色んな話をした覚えがあるの、学校の噂を知らないかしら。ふふふ?』
 誰かの話を聞きたがる怪談は、認知された事を喜んでいる。
 ただし――認識されたからには、体験してもらわなきゃね、とこわーい笑みを浮かべていることは子供の背丈となった君たちにだって、よく理解できることだろう。
炎・天遼
おい、妖気が丸出しだぜ?
誰だ、お前……って、なンだこの高っけぇ声!?
まるでガキの頃の声じゃン!

よく見ると服も故郷にいた頃の奴だし……これがお前の『術』かよ?
…(ズボンをずらして)…ココもご丁寧にガキンちょサイズとは
かーっ、小っ恥ずかしいぜ!

ここまで完璧に術式下に置かれると下手に逆らうのは悪手だな
どうせ、オレは学校行った事もねぇし
お前の『話』、トコトン聞いてやろうじゃん?

……なるほどなー、世界ってまだまだ広ぇなー
ま、でも、お前にはちょいと『穢れ』が積もり積もってるようだから
祖神様の炎で浄化してやるよ【炎狼龍の恩寵】だ

あ、でも調理器具を粗末に扱った件は後でしっかりシメさせてもらうな



●小学生だったら許される!

 一階の廊下を歩いている時、声が掛かった。
 後ろ?いいや、炎・天遼の視線の先。
 その存在は此方を見ていない。背中越しに語りかけてきたのである。
「おい、妖気が丸出しだぜ?絶対人間じゃねぇだろ」
『あら、……わかる?』
 くるりと振り向く少女は怪しい気配を隠しもせず、おかしなものでも見るようにくすくすと笑みを絶やさない。
「誰だ、お前……って、は?な、なンだこの高っけぇ声ぇ!?」
 声変わりをするより前、ほんの少し、何年か前のことだが、思わず驚いた天遼。
 声の高さが変わるスプレーでも嗅がされたかと、一瞬凄く動揺した。
「まるでガキの頃の声じゃン!」
『だって、貴方小学生でしょう?何をおっしゃっているのやら』
 名乗らず笑い続ける少女の言葉で、天遼は自分の違和感にも気がつく。
 ――は?
 よく見た服装は、故郷に居た時のものと相違ない。
 その頃確かに"着ていた"服装だ。少し袖や裾が短い。
 ――ということは顔も少し幼いとか!?
「これがお前の"術"かよ」
『どうかしら。此処の空気がそうさせたのかもしれないのよ?』
「ふーん……」
 すぐさま悪さをしてこないオブリビオンの前で、天遼は思わぬ行動にでる。
 公序良俗に反しない程度でズボンを引っ張って内側を覗いたのだ。
『……!?』
 ギョッとした様子の少女の視線もお構いなし。
 小学三年生くらいの男にはアリ得ることなのだ。
 ――……おお、ココもご丁寧にガキンちょサイズとは。
 ズボンの中をどれくらい捲ったのかは、読んでいる貴方のご想像にお任せしよう。
 ほぼ答えを天遼は見て確認しているのだが、あえて、ご想像の中にお任せしよう。
 廊下でそういう事をする男子が居たら、正しい大人は注意を行いましょう。
 この廊下が、夜で、オブリビオン以外誰も居ないところで命拾いしたようだな。
「かーっ、小っ恥ずかしいぜ!」
 自分で見ておいて視界に手を当てて騒ぐ天遼の様子を一通りみていた少女は。

『変わった子ね』

 思った事を口にした。悪戯っこもたくさんみた。
 真面目な子も不真面目な子も、言葉では語り尽くせない色んな子を。
 ただどの子にも天遼が行った行動は、なかったような気がしたのだ。
「変わってて結構!十人十色、っていうからな!元凶はお前、よって完璧に術式下に置かれるわけにゃあいかねえ!」
『でも知ってる?この学校には七不思議があるんだって』
 攻撃の構えを見せた途端、話を切り替えてくる彼女。
 ――ただ、この現象に逆らうのは悪手だよな。
 ――どうせ、オレは学校行ったことねぇし、正しい内容かわかンねぇし。
「へえ?それどんな話?」
 ――お前の"話"、トコトン聞いてやろうじゃン?
『全部語るには、立ち話が過ぎるもの』
 戦闘力のない戦場である学校が、ざわざわとおかしな圧力を発生させはじめた。
 霊的な煙、ひやりとする空気。そのようなものだ。
 夜の学校という概念としていつか何処かの旧校舎の気配が空間を上書きしていく。
 おどろおどろしい、霊的なモノが出てきそうなずぅうんと重苦しい気配だ。
『だから、ひとつよ?だぁれもいないはずの学校のトイレで、ある方法で呼びかけると……返事が返ってくるんですって』
「へえ、それ誰の声?」
『花子さん。トイレの花子さん、って呼ばれているの。赤い吊りスカートをはいた、おかっぱ頭の……』
 トイレで返事をする花子はどうやら女子だ、と天遼は想像したが。
 スカートをはいたおかっぱ頭のあたりで、今何を見ているのかと目をぱちぱち。
「……ふうん?なるほどなー、世界ってまだまだ広ぇなー」
 露骨に視線をそらして、理解はしたがその"名"を決して口にしない。
 "穢れ"とこの圧力は、名前と言葉に在り。
「お前はちょいと積もり積もるもんがあるようだから、少し祖神様の炎で浄化を行った方が良いな」
『ノックも、呼び掛けもいらないのよ?私が誰か気がついたんでしょう?ねえ、気がついたんでしょう?』
 ずずずずずと学校内の空間が歪み、"七不思議の花子さん"の背後に、旧校舎は必要なものを創り出した。
 三番目のトイレの個室――その扉は開け放たれていて、"花子さん"として天遼の身体を掴む。
 裾を、足を。尋常じゃない力を込めてグイグイと引きずり込もうとするのだ。
「連れてかれるなんてごめンだぜ!」
 生命を司る祖神の炎を燃やし、燃え上がる。
『きゃあ!?あ、あつい、あつい!!』
 超至近距離にいるのだ、彼女は当然勢い良く命を焼かれるように劫火に呑まれ、驚いたように天遼から手を離す。
「これこそ、オレの一族が祖神より賜った生命の炎じゃン!調理器具を粗末に扱った件も合わせてシメてっからな!」
 穢れを落とし、鎮まれ鎮まれ。
 料理人に料理人が怒るモノを投げて寄越したことを反省しろよな!
『酷いわ、お話を聞いてくれる素敵な人だと思ったのに……』
 すぅう、と消えるように"七不思議の花子さん"は逃げ出した。学校内の何処かに現れるだろうが、邪悪な気配は焼いた炎の分削がれたことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花羽・紫音
【アドリブ歓迎】【ソロ希望】

「どんな相手でも正義のヒロインである私が相手ですわ」
というもののいつものコスで小学1年生の姿と思考にされてしまっては恐怖を覚えてしまい、トイレに向かうわ

そしてトイレで花子さんと遭遇し、いつものように戦いを挑むわ……
でも花子さんの話に恐怖で怯えて涙を浮かべて、ついには粗相しそうになったりして……

最後は花子の話す七不思議のどれかに囚われてしまいそうだわ



●トイレに花子さん!?

「どこからでもかかってくることですね!」
 花羽・紫音(セラフィローズ・f23465)はバサリと大きな翼を震わせて。
 声の主にヒーロー魂を向ける。
 己の意志を力に変える偉大なるヒーローなのだ、悪いさをするというのなら、見過ごすことは出来ない。
『あら、本当にどこからでもいいのかしら』
 クスクス、クスクス。
 笑う声はあれど声の主の姿は、どんなに顔を振っても見当たらない。
「どんな相手でも正義のヒロインである私が相手ですわ!」
『あら、あら。頼もしい。でも……』

 ――その姿では可愛いだけなのではないかしら――――。

『私、花子さん。何して遊ぶ?何をお話しましょうか?』
「……!?」
 話など聞いていられるものか。激しい動揺が紫音の中に渦巻いた。
 姿を指摘され、紫音は初めて気がついたのだ。
 いつものコスチューム姿である。オラトリオの翼も、頭の薔薇の花も変わりはない。だが背の高さは大分低いものに変わっている。
 ――これは、小学校一年生、くらい、の……。
 認識した途端、紫音の様子が落ち着きのないものになっていく。
 異常現象の耐性が低かったのか、年齢相応の思考に引きずられていく。
「え、あ……」
 ――こんなに暗い所にどうしているの?
 ――こんなだれもいないところに、どうしているの?
 ヒーロー魂もまた成りを潜め、小学生相応の恐怖感を覚え、がたがたと震えだした。いる理由も来た理由も失ってはいないのだが、怖い場所に来てしまったという認識だけが独り歩きし始めたのだ。
「こ、怖いのは良くないの、――ちょ、ちょっと一時退却を……!」
 なんだかお腹の調子がおかしい気がして。
 最寄りのトイレに紫音は逃げ込んだ。
 トイレの中は、三つの個室があって――どれも扉が閉まっていた。
「な、なんで……!?」
 1つ目の扉にゴンゴンと強くノックをする――が応答は無し。
 開く様子もないので、紫音は慌てて、次の扉のノックを開始する。
「ねえ、開けて!使いたいのよ!」
 誰かがいる気配もないのに、2つ目の扉も開かない。
 ああ、では3つ目の扉なら――淡い期待を持ちながら、扉を強く叩く。
「誰かいないの!?なんでしまっているのよ!」
 軽くパニックが引き起こる。どうしても押しても叩いても、開く様子がない――。
『誰か?誰かといったのね?いるわよ、私が。私はさて、誰でしょう?』
 紫音は特に七不思議を知っていたわけではない。
 しかし、突然誰と問われて出る名前は一番最近聞いた名前が出てしまう。
「花子さん!」
『はぁい』
 返事と同時に扉は開き、ギラつく視線をした先程の"花子さん"が飛び出してくる。
「で、でたわね!う、うぅ……」
 驚くことはなかったが、ぶわああと足元に真っ白い腕が草むらのように生えてくるではないか。
 トイレの床に夥しい数の腕が咲き誇る。
『近くの扉から、一つずつ確かめて。三つ目の扉まで来てしまったのね。怪談"トイレの花子さん"は、該当の扉で問い掛けると発生するのよ?』
 いつものように戦いに挑もうと思ったけれど、花子さんの話に恐怖で怯え倒しぺたりとその場に紫音は座り込む。
 ああ、もうだめだ。
 真っ白い不気味な腕に掴まれて、怖くて涙を浮かべ、怖すぎて泣きじゃくる。
 そして、トイレに行く必要がなくなってしまった――気がするのだ。
 脱力感より恐怖が上回ることはなかったけれど。
『行きたかったんでしょう?どうぞどうぞ、ごゆっくり』
 ずずずずずずず。
 たくさんの手に掴まれて、紫音は三番目の個室に引きずり込まれていった。
 なあに流血沙汰になることはない。
 七不思議の花子さんは、――"話"を最後まで体験コースに案内してくれただけ。
 臨場感と迫力のある話の中に連れ込まれた、だけなのだ。
 紫音は昔話した怪談通りに楽しく"遊ばれた"のである。誰かが扉を開けることがあれば、完全に気絶している紫音が発見されることだろう。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

陽川・澄姫
校内に入って子供になってしまったら、近くの鑑で確認します。元々背が小さいからか、幼く見える気がします。
大人に化け直してみますが、すぐ幼くされてしまいますね。
諦めて職員室へ行き、拾った物を置いて廊下に出たところで妖怪に出会いましたが、彼女が標的でしょうか?
過ぎた悪戯をする子はお仕置きしましょう。

何処からか動く人型の物体が出てきましたが、これが七不思議でしょうか?
銅像の方を髪で絡め取ってもう一体にぶつけます。
大したこと無い――
えっ、何かに捕まった?
体は疎か髪も掴まれてて動かせない……。
それなら、無力化されて怯えた振りをして近づいてくるのを待ち、迂闊に触ってくれたらUCで力を吸取ってしまいましょう。



●話し相手みーつけた

 校内に入ってすぐ、小さな異変が陽川・澄姫のもとに訪れた。
 目を閉じて、気がついたら既にそうだった、と思うのだ。
 頭を振って、大きめな姿見を下駄箱付近で見つけて駆け寄っていく。
「あら、あら……」
 普段の視線の高さから、おおよそ10を超えるくらいは小柄だろう。
 元々小柄で背が小さい澄姫だが、いつもよりも幼く見える気がした。
 特に目元あたり。いつもより、年相応に大きいような――。
「不思議な感じがしますね……」
 自分が望んで小柄になろうとしたわけではない。
 戻ろうと思えば戻れる気もするのだが、なんとなく勘が告げるのだ――上手くいかない気がする、と。
 霊的な勘、妖狐の勘。どれかの琴線に触れていて、ダメだと告げていることだ。
 ――試す事は悪いことではありません。
 一度、人の中に混ざり込む術を改めて使ってみると一瞬は、普段の姿に戻った。
 だが、不思議の力が働いて。
 十秒と立たない間に小学三年生ほどの姿に戻されてしまう。
「……ん、戻らなそうですねぇ」
 諦めて歩いて行くのは目標通りに職員室。
 天井に吊るされた簡単な案内板によれば、すく傍に職員室は在るらしい。
「失礼します」
 こんこん、とノックしてから入る澄姫だが、その場に誰も居ないのはもちろん分かっていた。一応、部外者という立場で入るのだからと礼節の姿勢を崩さなかっただけである。たくさんの業務用の机が並んでいて、教材や教科書、色んなものがそのままだ。誰かが毎日ここで忙しく生徒の事を考えて行動していた事が見て取れる。
「ええと……ああ」
 隅っこの壁の方。"落とし物箱"と小さなポップが踊っているのを見つけた。
 中ぐらいのダンボールが幾つか置いてあるのだ。
 覗き込んでみるとごちゃごちゃと色んな、落とし主不明の私物らしいものがある。
「此処に失礼しておきますね?」
 拾ってきたモノを全部なので箱が縁を越えてパンパンになってしまったが――落とし物には、変わらない。
「これでよし。さて、行きましょう」
 がらり、と職員室を出て直ぐに。
『用事は終わったの?』
 妖怪に声を掛けられた。
「ああ、投擲したのはあなたでしょうか。過ぎた悪戯をする子は、ダメですよ」
 ――お仕置きされてしまいます。
『……ふふふ、そうよ。楽しかった?たくさんお話しましょう?ねえ、学校のウワサ知ってる?』
 友達に話しかけるようにごく自然に七不思議の花子さんは語りだす。
 何処からともなくズズズズズ、と廊下から湧いて現れる人形の二つ。
 片方は本を読むことに夢中なようで俯いていて、片方は体半分、それから臓器が沢山丸見えだ。
 どちらも人形で、人ではないとすぐ分かる。
『この人は勉強が熱心な人なのだけど……あらあら』
 像の持っている本が風もないのにパララララとめくれ始める。
 人体模型は人とは到底思えない腕を上げる、首をかしげる、という動作をいちいちキビキビと一時停止、するさまが恐ろしい。
『集中できないみたいね。人体模型は夜の学校を徘徊するものなのですって、ふふ……どちらも貴方が此処にいるからみたいだわ?』
 突然急激な速度を持って澄姫へと、詰め寄ってくるのはなんと銅像の方!
 プラスチックより恐ろしい機動力を持っていた!しかも全く顔をあげない!
「繊細な方なのですねえ」
 ――これが七不思議でしょうか?
 銅像の方へびゅう、と伸びるのは妖気を纏った靭やかな髪だ。
 伸縮性を意識してぐるぐると巻きつけて。自分の背丈よりも大きな銅像を持ち上げること数秒。
「オトモダチの方とこの場を去るのが宜しいのではないでしょうか」
 人体模型へと、投げつける!
 がらがらがら、と臓物パーツをぶち撒けた人体模型!
 表情こそ変わらないが慌てて零れ落ちた臓器パーツを拾い集める。
 ああ、何かが足りなくて、ポロポロ零れ落ちている!
 自分で自分の中の正しい形が分からないおっちょこちょいさんだ!
「大したコト無い――」
『あらひどい、二つの脅威を退けた。きっと安心するんでしょう?でも――』
 二つの個体を中心に、何かが迫ってくる音が澄姫の耳に届いた。
「えっ、何かに捕まった?」
 足首を、見えないなにかに掴まれた。そんな感触が在る。
 振りほどこうにも、どうしてか体は疎か髪も掴まれてて動かせない――。
『脅威は大抵三段構えになっているの。こうすることで大抵の子は叫ぶの、ふふふ』
「え、こ、この後どうなるというのです、か……?」
 ほおら、捕まえた。叫んで見て?ウワサと同じように。
 花子さんは澄姫に触ってもっと恐怖を煽る悪戯を行おうとしたが――。
 ぺたり、と頬に手を当ててきた。妖怪の手はゾッとするほど冷たい手だった。
 無力化されて怯えた澄姫に対して、近づいた事は花子さんの中で迂闊な行動。
「……まあ、三段構えの最終工程は"返り討ちに遭うのでした"なのでしょうね」
 触れられた部分を起点に、生殺与奪の能力を発動させて――花子さんの不思議な力を奪い取る事に成功した。
 助ける必要があるから、全てを奪い去ることは出来ないが。
『……!?』
 多少なりとも今後の痛手となる深手を骸魂に与えたはずだ。言葉通りの返り討ちにされて、花子さんは煙のように消えて別の場所へ逃げていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リオン・リエーブル
昔はおにーさん病弱だったんだよね冗談抜きでさ
不治の病に掛かってエルフの森で病床に臥せって
捌ききれない魔力を少しでも循環させるためにと
エルフの森でゴーレムを作っては友達にしてた頃

だからかな
遊びたくなっちゃったんだ
こんばんは花子さん
僕と一緒に遊びませんか?

花子さんと一緒に学校の七不思議を巡る旅に出発!
増える階段でグリコして肖像画とにらめっこ
人体模型とかくれんぼしてピアノ聞いて
トイレの手とはチェスしよう
ニ宮金次郎像と競争だ!

息を切らせて花子さんと大の字に
走れるって感動!
子供の頃こういう遊びした事なかった
だから大人になっても遊ぶのだ

楽しい遊びはもうおしまい
楽しかったよありがとう
最後はゴーレムさんで攻撃



●学校の七不思議縦断ツアー

「いやぁーこの学校はそんなに古いものでもなさそうだねえ」
 誰よりも早く学校の中を探検していたリオン・リエーブル。
 ぺったぺったと安いスリッパの音が逆に気持ちがいいくらいだ。
「昔はおにーさん病弱だったんだよね、冗談抜きでさ」
 今では結構な自由の風を吹かせっぱなしのリオン。一人で思い出に浸りながら、ああそんなこともあったっけ、という記憶を現実の遠くに見る。
 いつの間にか普段よりも小柄な背丈、視線になっていたものだから余計に思い出に呑まれていたのかもしれない。
「不治の病に掛かって、そんでエルフの森で病床に臥せって……」
 魔力が上手く巡らなくなってしまって至る場所に、魔術的滞りを出した。少しでも魔力を使用すれば、滞りは解れほどほどに正常な形で循環し続けるであろうことも、捌ききれないぶんの魔力を放置すると命が危ういだろうことも、自分の中で理解したものである。
 こっそりこっそり、病床から抜け出して。
「そうあれは、エルフの森でゴーレムを作っては友達にして居た頃だね」
 二言目には懐かしい、と笑うリオンの背後に、ぺったぺったと音が重なって聞こえてくる。スリッパの音に紛れ込み、静かに付いてきている誰かの靴音だ。振り向きざまに声を掛ける形で驚かすことにした。
「おにーさんのこと、気になる?こんばんは、花子さん」
 ――だからかな。
 ――どこまでも、遊びたくなってきちゃったよ。
『……!こんばんは、いつから気がついていたの?』
「さっき階段を上がったあたりかな、おにーさんの耳は伊達に長くないのです。お時間の都合がよければ、僕と一緒に遊びませんか?」
 エルフ耳を僅かにアピールすると、七不思議の花子さんは控えめに、ふふふ、と笑い声の返事を行う。
「ズバリ、花子さん主催一緒に学校の七不思議を片っ端から体験するツアー!」
『おかしなことを言う人ね。貴方が提案したのに、でも……そういうことなら、話しましょう?』
 花子さんに敵意らしいものは、あまりないとリオンには分かった。
 結果的に驚かす、そんな遊びに興じたがっているようだ、と。
『おにーさん、怪談の話を聞いたことは?』
「ん?ないね、どんな話かな。あ、聞いてるだけじゃつまらないから、グリコしよう、グリコ!」
 はいじゃーんけーん、と先手必勝で仕掛けるリオンの無邪気さに圧されながら、ジャンケン結果は花子さんの敗け。文字通りに階段を登る姿へ、微笑みを崩さず語る。
『この階段は普段12なの。ねえ、今踏んだそれは何段目?』
「え?あ、ごめーん。よく数えてなかったや、そこからみて何段目?』
 質問を質問で返すことで、増える階段はなんやかんやでやり過ごされた。階段を上がり切ると、"美術室"の文字が。
『その教室にも、あるのよ。あそこ、見えるかしら……』
 腕を組む肖像画が、一枚。室内で異様な気配を漂わせている。
 じーーっと肖像画とにらめっこするリオンの視線に耐えかねて視線がすぅうと別の方向へ向いた。
「こんなに間近で失礼したね!すぐ出ていくからそれで許してね!」
 気まずそうにされたのだと独自な理解を示して、花子さんを連れてずんずん学校探検の旅へ。
「これで、半分くらい?さあ、もっとガンガン教えてね!」
 音楽室の前を通りかかったとき、教室のドアは鍵が掛かっているにも関わらず中から聞こえてくる音があって。
『夜の学校でずっと流れていたのに気が付かなかった?これで3回目の曲なのよ』
「4回目が聞こえる前にそのまま通り過ぎてしまえば、聞こえませーん」
『そんなに急いではだめよ。音楽室の隣には、トイレがあるんだもの』
 水場からぞわあああと生えてくる白い手が、リオンの視界いっぱいに伸びてくる。
廊下の壁、床、天井と。
 それから窓を無視してたくさんの手がずぅうんと伸びてくる。
「おにーさんのファンかな、いいよ握手しよう!でも、チェスがいいかな、代表者を決めて!おにーさんに勝ったら皆に平等な握手をプレゼントしましょう!」
 リオンの提案に、肘くらいまでの手が顔(?)を見合わせる。
 到底子供の手ではなさそうな手が、ずずずず、と前へ進んでくるのを面白おかしく眺めて。
「でもごめんね!走ってくる人がいるみたいだから!その後でね!」
 背後から超スピードで走ってくる二宮金次郎!
 なんだあのスピード。銅像という概念はどこへ消えた?
 人体模型に追いかけられてるぞ!?逃げろ、頑張れ二宮金次郎像!
 リオンと花子さんは、その二人の更に前を走っている。
 ――逃げ切れるかどうかは、夜の徘徊者たちの気分に……おや?
 銅像と模型は、一騎打ちに没頭しすぎて子供たちを置き去りにしてそのまま追い越して、走り抜けていった。
 この学校では、七不思議のひとつなのだろう。
『あれが……ライバル関係の二宮金次郎像と、人体模型……』
 息を切らして花子さんと、巡りに巡った学校探検!全力で走りすぎて、ばたりと大の字で寝転んだのは、だだっ広い体育館の中央だ。
 遮蔽物もなければ、怒る大人もいない。
 ――ああ、元気に走り回れるっていいね。最っ高。
「面白い二人だね、タイムレコードとか誰か取ってあげたら良いのに」
 ――子供の頃こういう遊びをしたことが無かったからね。
 ――子供姿の今、こうして体験できるとは思ってなかったよ。
「大人でも、ノリのいい人は遊んでくれるんだよ?分かった?」
『……』
「だんまりはだーめ。楽しい遊びはもうおしまいにしようよ」
 ――おにーさんは、おにーさんでとっても楽しい気分だよ?
「案内してくれてありがとう、花子さん」
『……ダメよ、一人に知ってもらうだけじゃ、だめなのよ』
「そお?たくさんの人に認知されたかったんだね……じゃあ、おにーさん流たくさんの個体に見て貰いましょう!」
 ゴーレムを複製してずらりと並べて。
 ゴーレムメイカー流、お礼の示し方が始まった。
 複製されたゴーレムを念力でバラバラに操作して、襲わせる。
『ふふ。ゴーレムじゃだめよ。"子供"じゃないと、ね』
 それでも沢山のゴーレムを相手にすることになり、花子さんはどことなく嬉しそうに笑っていた。
 ――ああ、おにーさんの友達の友達が聞いたそうなのだけど。
 ――『花子さん』は意外と可愛らしい人だったらしいよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久段・映
いいぜ。
な、おいらの手番からでも良いかい。

仮に、Aさんとしようか。
真夜中に学校に忍び込んだAさんは
花子さんの後ろにかくれんぼしている
"狐狗狸さん"を見つけて
ひと時、秘密のお喋りをしたんだ──

(降霊、【七不可思議考】の口伝
郷愁を誘う、今や七不思議に取り込まれるも
かつてこの学校で語られていた"狐狗狸さん"を喚ぶ)

さっき見てたろ。おいら、あんたと話がしたかったんだ。
勿論花子さん、あんたの話も。おっと邪魔だけは勘弁な?
(目立たない、浄化、攻撃を惑わす煙の蜃気楼)

な、聞かせてくんろ。
"あの子"と過ごした思い出の話を、
楽しかったことを。また会えたら何をしたいかを。
その子の元へ、想いが届く程、
教えてくれよ。



●七不思議の八話目

「――いいぜ」
 久段・映は簡単に、話を聞くと頷いた。
 話を続けようとする七不思議の花子さんに見えるように指を振り。
 チョット待て、と合図を置いて。
「もう話して聞かせているってー奴さ、こういうのは順番が大事なんだ」
『……そう、いうものかしら』
「な、おいらの手番からでも良いかい」
 会話をする、楽しむ。
 そんな時間が訪れるなんて、夢のよう。
 花子さんは少しだけ渋った様子を見せて、どうぞと話の順番を譲った。
「そうさな、仮にAさんとしようか」
 燻らせる煙に視線を逃しながら、例えて話す事にする。
「真夜中に学校に忍び込んだAさんは、花子さんの後ろにかくれんぼしている"狐狗狸さん"を見つけてさ。ひと時、秘密のお喋りをしたんだ――」

 ぴこん、ぴこん、と誰とも通話していないのに映のスマホの画面になにか通知が表示され始めた。通話中を示す文字。いいや、その程度では動じない。

「ほらご覧よ、みえるかい?」
 語られる怪異の一つに話しかけるようにしてやれば、形を得て"狐狗狸さん"が呆然とした顔で、あらわれた。
 話にだけ聞いた、郷愁を頼りに。
 今や七不思議の中に閉じ込められた当人を喚ぶ。
 かつて、――この学校で語られていた"狐狗狸"さんだ。魂だけが抜け出して、歩く姿を得たような不思議な感覚に、本人も動揺を隠さない。
『……え?あ、…………え?』
「さっき見てたろ。おいら、あんたと話がしたかったんだ」
 ぴこ、と頭上で揺れる獣耳。ゆったりとした和装の妖怪に、話しかけて。
 それから、今や別のモノ(骸魂)が紛れ込んだ体のほうにも向き直る。
「勿論花子さん、あんたの話も」
『信じられないわ!』
 花子さんの存在は七不思議の呪いに触れた、概念とも言えるだろう。
 この場に留まり続けるだけで増していく呪詛の集まり。
『友達の友達が言っていたのだけど、そんなに体験したいのなら、みせてあげるの。さあ、この手を取って?嫌だと言うまで案内するから!』
 羽交い締めにしようとする花子さんの攻撃を映は、忘れていたランドセルを渡す形で、退けた。
「――おっと邪魔だけは勘弁な?」
 目立たないようようにさり気なく。
 攻撃を惑わす煙の蜃気楼を引き連れたランドセルには、浄化のニオイも含まれる。苛立ったところで、煙は煙。
 ――いいからのらりくらりすごしときな?
「な、"狐狗狸さん"聞かせてくんろ?」
『……なにを、かな』
「"あの子"と過ごした思い出を。楽しかったことを。それから、また逢えたら何をしたいかを」
『それを知って、どうするのかな』
「どうともしないさね。その子の元へ、想いが届くほど聞いたみたいと思ってたんだよ。さぁさおいらの話は此処までだ。教えてくれよ」
 ――怪談や七不思議。
 ――花子さんがその"記憶"として実体化したものだろうと思う。外で色んなモノの投擲を行っていた"声"と花子さんの口調は少しだけ異なっていた。
『……"あの子"はね、ぼくを"こっくりさん"で喚び出したんだ。気まぐれに、声に応えてみただけなんだけどね。その中でもあの子は不思議な子で。毎日欠かさず放課後に遊んでくれたんだよ。何度も喚び出すものだから、帰らなくてもいいか、ってぼくはこの学校に居たんだけどね』
 ほら感じるだろう。
 微妙な差異。一度気がついたならば違和感生じさせる程度の、それだ。
『本当に毎日だよ。学校に居着くようになってからは、昼休みとかにも声を掛けてくれてね。怪談話や七不思議、ホラーからジョークまで色んな話を楽しんだよ。この学校だけの怪談を見つけよう、って約束して』
 ――"狐狗狸さん"にあるとすれば、過ごしていた想い出だろ。
 ――語るなら、聞かなきゃだ。
 ――言った通り我々"友達の友達"が存分に語り、拡散できるように。
『――全部見つけないうちに、あの子は卒業してしまってね。見つからずじまいだったのが、ぼくは悔しいんだよ。"また"と言って別れたから――――また、をずっと、待っていたつもりなんだけどねぇ』
「また逢えたら、怪談を見つける?」
『――ううん、ぼくたちが見つけられなかったのは――――』
 つい、と狐狗狸さんが視線を花子さんへ移す。
 時間切れ、に像を霞ませながら、狐狗狸さんは言うのである。
『この学校の"花子さん"。徘徊癖があったようでね、トイレにいて、くれなかったみたいなんだ。だからぼくは"あの子に怪談全部見つけたよ"って、伝えたいなあ、って思っていたんだよ』
 大人になったあの子の記憶に――狐狗狸さんは存在しないかもしれない。
 だから、此処にいるのだと、世界の隙間で主張していた――らしい。
 ――ああ、なんだ。
 ――自分の認知が足りない事を、こんな遠くから叫んでいたのかい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オネスト・ファッション
うわすご!本当に小学生になってる!
でもここまでは聞いてた通り、気合入れていくぜ!
(UCを発動して「怖いもの知らずだった頃の小学生の制服」を取り出して早着替え
以降言動もやや幼い感じに)


魔界の学校にも「トイレで現金を欲しがる声」とか
「夜中にデスメタルを演奏する音楽室の楽器」とか怪談はたくさんあります

でも外の世界の学校のことあまり知りません
どんな怖い話があるですか?
花子さんのお話をたくさん聞きたいです!

[元気]で恐怖心を振いながら、
[環境耐性]で襲い掛かる怪談に順応して楽しむ

今日は怖がる側ですけど、怖さだったら悪魔だって負けてないですからね!
最後は不意打ちで驚かして反撃するワルをかましてみよう



●小さくても大きな大きなワルを実行せよ!

「うわーーーー!」
 不思議体験に大きな声が学校の中で響き渡る。
 鏡の前のオネスト・ファッションは、人生二度目の小学生背丈に関心しきりで興奮が止まらない。夜の学校に不法侵入なのだという点も、ワル度が高く、合わせてぐんぐんと気分は絶賛高揚中だ!
「本当に小学生になってるーーーー!」
 幻でもみたようで、凄いテンションが上がるのだが。
「……でもここまで聞いてた通り、だからな!気合入れていくぜ!」
 指をぱちんと鳴らして、流れるように直ぐ側にあった掃除用具箱を開けるとそれは中身が馴染み在るオネストの四次元クローゼットに成り代わっている!魔界のクローゼットなので、どこにでも突然召喚されるのだ。
 なりたい衣装は決まってる!
 この場にふさわしい、自分のコーデを切り替えるに決まってる!
 ぐい、と掴み願いを叶える素材に腕を通して早着替え。
 "怖いもの知らずだった頃の小学生の制服"である。
 あの時の想い出、と共に着こなすのだ。
 普段のオネストよりも、身の丈にあった口調になっていったとして何ら不思議はないだろう。

「いやーワクワク探検、胸が踊りすぎて、やべえ!」
 な!と話しかける先にいるのは、当たり前のようにいる七不思議の花子さん。無言でじぃいと見ているのは、狐狗狸さんが"子供好き"出会ったことに由来するのだろう。
『帰る時間も忘れて、遊び倒すの?』
「それも良いですね!でも……魔界の学校にも、"トイレで現金欲しがる声"とか、"夜中にデスメタルを演奏する音楽室の楽器"とか、怪談はたくさんあります!」
 花子さん、無言。
 魔界の学校は、ワルに尖った話が多いらしい。
 現代地球での悪戯とはなにか異なる顔がありそうだ。
『学校には七不思議があるんだって。帰らないなら案内してあげようかしら――"私"の知らない、その学校へ。……どんなモノがあるの?』
 ああ!花子さんがこの学校の七不思議よりも魔界の学校話に興味を抱いたことで、夜の旧校舎として喚ばれたものは、オネストには馴染みのある学校の風景が広がった。
 イカした魔界風廊下が伸びて、堂々と"全員右側通行!"と描かれている――。
「"美術室で高笑いし続ける有名な自画像"とか"シャドーボクシングを日夜行う人体模型とか"でしょうか!でも、外の学校のことはあまり知らないんですよね……」
 オネストの語った怪談話が、遠くで全部聞こえてくる。
 激しいデスメタル演奏が夜の学校に響き渡る中、花子さんはひたすら文明力に驚いた様子をみせた。
「どんな怖い話があるのですか?花子さんのお話をたくさん聞きたいです!」
 怖い話を怖がらないオネストは、妖怪が織りなす悪事が伝説として語られているとゆるく思っているようだ。
 ワルの中の7つの悪が――七不思議と呼ばれているのだと。
『そう、ね……インパクトには欠けそうだけれど』
 指差す先は、鏡。
『七不思議、ではなく……怪談にしましょう?貴方が覗き込んだ鏡は、呪いの鏡なの。夜、素敵な時間に鏡を覗き込むと――引きずり込まれてしまうのよ?』
 見た目と異なり、元気で恐怖心を打ち消していたオネスト。
 え?鏡凄く見たんだけど、と内心の冷や汗が止まらなくなる。
「あ、適切な時間じゃなかったんですね。惜しいことしたなぁ」
『そうね。覗き込む時間ではなかったようだけど――安心して?』
 七不思議の顔をした大鏡が、ひとつ、ひとつと宙に浮いてくるくると回りだした。校内に溢れ出す学校の不思議要素が、顔を覗かせる。
『合わせ鏡の四枚目。貴方がどんな表情をしているかで、貴方の生死がきまるのだもの』
「突然の殺意!?や、やややややだなあ!どんな顔の僕もいつもどおりの顔です、よ……?」
 鏡に囲まれたオネスト。
 鏡に挟まれて、もはや、写り込んだ自分の顔を目撃してしまう――。
「あ、……あ?」
 合わせ鏡の四枚目。オネストの表情は――滅茶苦茶ドヤ顔だった。
 死相のシの字すら無い。あれは、最高にワルい顔。
「花子さん?僕今日は怖がる側ですけど、一つ言いそびれていた事があります。怖さだったら、悪魔だって負けてないですからね!」
『……それはどういう?』
「魔界の学校の"鏡の怪談は――"」
 花子さんが出没させた鏡を掴み、オネストは不意打ちで花子さんと一緒に映り込む。まるでスマホで写真を取る感じに、似ていた。
「"映り込んだ人物を凄く悪い人相に換える"んです!」
 ほらみてください、最高にワルでしょう!
『……なに、それ。ふふふ』
 鏡で攻撃を加えられると思った花子さんは、一瞬のことに身をすくませていたが、時間差で暫くの間、死ぬほど笑い転げていたそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

尾守・夜野
…ほほぅいつのまにやらガキんちょサイズのミニマムボディとは
花子さんを探し彷徨くうちに目線が大部下がってた事に気づいたな
なお、記憶は元々ないから自分でも年齢わかってない

元々俺にあるのはUDCに居た時に書物やテレビで見た学校の知識だけ

故に花子さんにであって援軍呼ばれても
「ま、まさか…アニメとかでやってた踊る(ではなく動くだが)人体模型やら徘徊する(だから動くだって)二宮金次郎像に合えるとは!!」

推しにあったファン的なテンションの上がり方をするな
恐怖も…一応はあるのか?わからんが話は喜んで聞くぞ
なお、学校の実情は勘違いしたままなので本来物が飛ばないのを知れば切れる



●子供の夢を壊すな!

 両手を広げ、現状を正しく認識する。
 少しばかり、小柄な姿だが活動に何ら支障はないらしい。
「……ほほぅいつのまにやらガキんちょサイズのミニマムボディとは」
 尾守・夜野が自分の姿の異変に気がついたのは、花子さんを探し学校内を彷徨いていたときのことだ。
 廊下の窓ガラスがとても大きく見えて、サイズの可変があったのは自分の方だと理解が現実に追いつく。
 ぺたぺた、と念の為に自分の身体チェックを行っても特に違和感は――無し。
「目線が大分下がってたからな、まあ不都合は特にないな」
 姿に合わせて記憶や言動を引きづられる事もある、と小耳に挟んだ気もするが。
 夜野は特にそれいじょう気にする素振りを見せなかった。
 記憶は元々ない。夜野自身、年齢の概念だってよく分かっていないから……。

「元々俺にあるのはUDCに居た時に書物やテレビで見た学校の知識だけだ」

 淡々と並んでいる部屋が、教室で。
 ばらまかれるように落ちている雑誌のようなものが教科書であることがわかれば十分のはずだ。

『夜の学校でただお散歩?ねえ、こんな噂を知ってる?』
 夜野が通り過ぎた教室から、声を掛けながら出てきた七不思議の花子さん。
『用心せずに学校を歩くなんて危ないのよ?のんびりしてたら走者に地獄の果てまで追い回されてしまうの。私、さっき見たもの』
「なにを?」
『あ――、ちょうど此処に来たみたい。良かったね、ほら』
 花子さんが指差す先に、激走を繰り広げる理科室の人体模型と動く銅像の姿がかすかに見える。
 廊下で競い合う徘徊者のたち。
 二宮金次郎の背負う銅の薪は全て無くなっていて、なんだか凄く身軽そうな走りを見せている。
 人体模型の臓器見本は、どうにも半数以上紛失している。
 どちらも激走中に零したのだろう。
 大腸がなければ、心臓も胃も殆どの重要なパーツがない。何だアレは。
「お前の援軍?って……ま、まさか…………アニメとかでやってた踊る人体模型やら、徘徊する二宮金次郎像!?」
 低めなテンションが、突然ぐいんと上がった夜野。
 いつかアニメで見た人体模型はコミカルに踊って動いていたのを憶えている。
 あれは楽しいアニメだった。たぶん。そんなものが現実に飛び出しているだなんて!(臓器パーツも盛大に飛び出しています)
 隣を並走する二宮金次郎像は、激しめい徘徊を行う勤勉な像、のはず、だが――。
「良いな、将来有望の陸上選手になれそうだ!」
 何を隠そう、人体模型と金次郎像は夜野にとって平等に推し!
 実際に出会う事になったなんて、どんな顔をすればいいんだ。
『そうかな?廊下持久走無限勝負、なら毎晩ここで行われてるけど……夜限定なんだよね』
 走り回る夜の運動会が繰り返されているせいで、廊下の床が酷く傷つきまくっている。今方向転換にアクロバット走行をし始めた二宮金次郎像のせいで窓にヒビが!
「恐怖……に似たものは確かにあるが。ワクワクの方が勝ちそうだ」
『実際に見れた人は少ないんだぁ。スポーツマンシップに則って、楽しそうにしているだけなんだけどね』
「追い回され続ける、までが噂、と。……所詮子供の考えることだな、お互い以外眼中にさえなさそうじゃないか」
 夜野のもとまで走ってきた2体が、通り過ぎ、通り抜けて、走り去っていった。
 走り去っていった2体が通り過ぎた足跡に、ずずずずずと何かが伸びる音がする。
『そう。二人は小学生を見守るのが仕事だからね。通り過ぎた後の怪異は、不確かで不鮮明なの』
 学校の実情は、やはりよく分からない。
 爆音で走り続ける二つの個体が、暴走しない様子がないのは良いことか?
『例えば、小物類が飛ぶようになったりするのだって、――妖怪の、せいの方が、多いもの』
「……本来モノは、飛ばない?」
『妖力を使って驚かしたりするのには使うけど、……それが、どうかした?』
「――あー、うん、成程わかった」
 怪奇な現象には、理由があり、その実態には妖怪が付き物。
 夜野の足に何かが絡みついてくる気配を感じて、容赦なく夜野は生命力を奪い取る。携帯している血液を、ぐい、と飲みもう迷う必要はない。見えないモノが足を掴み動きを拘束しようとするのだから、何がどうあれ"実物"は存在するはずだ。
 信じれば、そこに存在するものだ。
 「夜の学校体験は、もう満足だ」
 刻印に力を過装填――さあ廻せ、廻せ。
 廻れ、暴走しろ。
 さあ、――目の前から失せろ。
 限界まで突然ぐん、と引き上げた力は花子さんを追い詰める。
『そう――楽しそうな時間はあっという間、ね』
 重たい一撃を食らって、よろめき、どこか寂しそうな気配を出して。それでも花子さんは笑いながら――消えるように逃げ出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェル・ラルフ
【あしび】
小学校の校舎って、外から見たら小さいと思ってたけど…
あれ
レーヌ、なんか小さくなってない…?
うわっ僕もか
そっか、小さくなったから校舎も大きく見えてたんだ

(ただでさえ身長低いの気にしてるのに)
…カッコ悪くて気まずいなぁ…
けれど、中身が変わるわけではなくて少し安心
そう言えば、足音がひとつ多いような、なんて
ふふ、レーヌ、意外と怖がりなのかな
お手をどうぞ

狐狗狸さん…は、今は同い年くらいの少女に見える
おっと、レーヌが怖がって逃げるなら追いかけなくちゃ
…君も一緒に追いかける?
ふふ、なんだか怖がるレーヌを追いかけるのも悪くないなぁ
この真っ直ぐ続く廊下を思いっきり走るのも、なんだかとても楽しいね


レーヌ・ジェルブロワ
【あしび】
アドリブ歓迎です

無事潜入できましたね
桜が舞うなんて不思議な…あら?ヴェルさん、なんだか小さく…?
まあ!わたしも小さいです
これは初めての経験…どうやら子供になってしまったようですね

静かな学校というのは雰囲気がありますね
放送は響きますが、その他の音は足音くらいでしょうか
…ヴェルさん…お手を貸していただいても…?(ぷるぷる)

突然現れた狐狗狸さんにはとても驚きます!
きゃあ~~!!
廊下を走って逃げます
え!?追いかけてくるのはヴェルさんですか、狐狗狸さんですか!?
転んでしまうかも…墓守ですが、やはり慣れない環境だと驚くものですね
ええ、慣れない環境のせいです
怖がりじゃありません
ありませんよ!



●ひとつまみの気まずさ

「無事に潜入出来ましたね」
 小学校に鍵のかかった扉は無かった。
 レーヌ・ジェルブロワが昇降口の扉に手をかけた時、不用心だと疑ったもの。
 鍵を掛け忘れた日の体現か?いいや違う。
 これは"妖怪が小学校に居た頃の思い出"。
 放課後のあとは、鍵を掛けて皆帰るのだと、細かな認識がなかったのだろう。
「外に桜の花弁がひらひらと待っていたようでしたね、不思議な光景で……あら?」
 くるり、とレーヌがヴェル・ラルフを瞳に映した時、抱えた違和感。
 少し背の高い彼を見る自分の視線は、この高さだっただろうか。
「ヴェルさん、なんだか、小さく……?」
「うん。小学校の校舎って、外から見たら小さいと思ってたけど……あれ?」
 会話を続けながらヴェルは、目を疑った。いわれてみれば確かに。不思議と先程よりもレーヌがなんだか小柄に、見えるのだ。
「ねえレーヌ、なんか小さくなってない……?」
 気のせいかな、と言葉を続けるヴェルに視線を向けるレーヌは気がついていなかったようだ。
「まあ!わたしも小さいです」
「う、わ。僕もか。そうだよね、僕だけじゃないよね……?」
 二人揃って120前後の身長になっていた。
 相応な幼さを獲得していて、小学生目線というものを体感している。
「……そっか、小さくなったから校舎が大きく見えたんだね」
「……」
 呆然と、いや、放心するような姿でいるレーヌの応答がどうやら薄い。
「……レーヌ?」
「いえ。これは初めての経験……どうやら、子供になってしまったようですね」
 人の形を得て、成長するのがふつうのコト。しかし、逆に小さくなるなどと。
 ユーベルコードを利用する以外に簡単に体験出来ることはあるまい。
 レーヌは自分の頬を、ぷにぷに、と触れて、ふわふわと抱えた気持ちをゆるやかに楽しんでいるようである。

「それにしてもです、静かな学校というのは雰囲気がありますね」
「……うん」
 レーヌの声を聞きながら、ヴェルは夜の学校迷宮の中を探検する。
 長い長い廊下は、外から見た光景からは全く一致していないような気がした。
 ――ただでさえ僕は気にしているんだけどなあ。
 ――……身長、うう。
 気まずい気持ちが全面に出てしまって、応答の端切れが少々悪くなってしまった。
「……カッコ悪くて、気まずいなぁ…………」
 ――中身が変わるわけではないようだから、少し安心なんだけど。
 ヴェルは自身の髪を弄るようにして、やや現実逃避をしている間にポツリと呟いた。気まずい気持ちの、吐露である。しかし――。

『――ザザ。下校の放送を、繰り返します。アナウンサは――――』
 壊れたレコードのように繰り返される放送。
 繰り返される音の始まりと最後に疎らな雑音が入るため、レーヌにヴェルの呟きは届かなかったようだ。
「放送は響いていますが、その他の音はうーん、足音、ぐらいでしょうか」
 ぱた、ぱた。二人で歩くぶんの音。
 ぱた、ぱた、……ぱた。
「そう言えばそうだね。足音は聞こえる、けど……そういえば足音が一つ、多いような」
 ――なんて?
 多分事実なのだ。後ろ、もしくは直ぐ近くに。
 妖怪が近づいてきている。
「ひゃっ……あ、あの。ヴェルさん……お手を貸していただいても……?」
 びくん、と肩を跳ねさせたレーヌがおずおず、とヴェルを見上げて尋ねた。
「ふふ、レーヌ。実は意外と怖がりなのかな?」
 さあ、お手をどうぞ。
 ヴェルが差し出される手に、レーヌは手を置いて。
「ありがとう、ございます」
 ぎゅ、と握り込むのである――結構な力で、だ。
 暫くの安寧を得られたと、レーヌが落ち着いたのもつかの間。

『探しものは、見つかった?』

 もう一つの足音の犯人が、ひょこ、と廊下の曲がり角から顔を覗かせた。目を細めて、にこりと笑う子供は、"怖がる小学生"を見つけてなんだか嬉しそうである。
「きゃあ~~!!」
 しかしレーヌの驚きボイスが学校中に響くのである。
 顔を覗かせた"狐狗狸さん"とは真逆の方へ全力でダッシュだ!
「レーヌ、レーヌ!落ち着いて!」
 走って逃げ出してしまったレーヌを後を追いかけるヴェルは、同い年ぐらいの少女を背後に想う。
 ――きっと"狐狗狸さん"だ。
『あら、あらまあ。あそこまで驚いて貰えるなんて、嬉しいけれど申し訳ない事をした気分よ』
 申し訳なさそうに、"狐狗狸さん"はごめんなさいね、とお詫びの言葉を告げる。
「意外と足が速いんだねぇ……君も一緒に追いかける?」
『いいの?ふふ、楽しそうね』
 ただただ真っ直ぐに伸びる迷宮化した廊下だ。
 レーヌが逃げ込む場所は、迷宮を無事に抜けるまできっと存在しないだろう。
 目標を見失う必要もなくて、実に単純な"遊び"を楽しめる。
 ――ふふ、なんだか怖がるレーヌを追いかけるのも悪くないなぁ。
 追いかける方の楽しみというのも、意外と胸躍るものである。
「思いっきり走るのも、なんだかとても楽しいよね」
「え!?」
 気が気でないレーヌに聞こえたのは自分の足音以外に置き去りにした後。
 ぱたぱたと走る音が沢山聞こえる。しかし振り向いて確認する余裕がない!
「追いかけてくるのはヴェルさんですか、狐狗狸さんですか!」
「さあ誰かなぁー」
『何人いるか、当ててみて?ふふふ』
「わ、わかりません!……ひゃわっ!?」
 裾を踏んでしまって、レーヌはその場で転んでしまった。
『お怪我はない?大丈夫?』
 "花子さん"の手助けであり学校の怪異の一つ。
 沢山の夥しい数の白い手が生えてきて、レーヌの体をがっちりと支えてくれる。
 さらなる悲鳴が飛び出す前にそお、と床に降ろして、すぅうと消え去る手はどの腕も、サムズアップのアクションをしていた。
「……墓守ですが、やはり、慣れない環境だと驚いてしまいますね」
「レーヌ、本当それだけかい?」
 廊下に座り込んだレーヌに、ヴェルは尋ねる。
 転んだ子の隣、しゃがみこんで、ニッコリと笑いながら。
「ええ、慣れない環境のせいです。怖がりじゃありません。――あ、ありませんよ!」
 不意打ちのあまり軽く腰が抜けてしまって動けないのだ、とはすぐに言えなかったレーヌのことを"狐狗狸さん"は微笑みを浮かべて――見ていた。
 とても嬉しそうな笑みだったというのはヴェルが後に語っていたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎
小学6年生

不気味な程に暗くて、静かだな…
赤星の柄を握りしめば
…セリオス?どうしたんだい?
負けず嫌いの次は強がりさんな主張に少し苦笑する
(でも…僕を守りたいというのは伝わるよ)
ありがとう、セリオス
君がいるからこわくないよ
でも、確かに暗いから
光属性を宿した赤星を灯りにして
いっしょに探そう

辿り着いた音楽室
現れた怪奇現象と“何か”に
咄嗟にセリオスの前に立つ
…君がここの怪異か
ただ君達の話を聞くだけ…ではなさそうだね
連れて行かれるのはお断りしよう
…僕には歌がついている
小さくたって僕は騎士で…セリオスの盾だ!
【蒼穹眼】でよく狙って
暗闇を照らす、破邪と浄化を込めた光属性全力魔法をぶつけるよ!


セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎・小学5年生
小さいアレスはおれが守ってやる!
やる気に満ちた表情で気合をいれる
アレスの腕にギュッとしがみついたのは
暗いろうかがこわいからとかそんなんじゃなくて
そう、これはアレスがこわくないようにだ!

剣で明るくなった廊下に目をキラキラと
アレス天才だな!
これならバケモノもこわくないぞ!
だからとにかくあの花子ってヤツを探さねえと
楽器の音につられて辿り着いた音楽室のドアをバーンと開けて突撃だ
誰も弾いてないのに音がなるピアノとかにはびっくりしたけど
…ちょっとびびったけど
あんな楽器に負けるかよ!
それに対抗するように大きな声で【赤星の盟約】
アレスをおうえんする歌を
がんばれアレス!まけるなー!



●こわいものなんてないのさ!

 小学六年生の背丈のアレクシス・ミラがいうところでは幼馴染セリオス・アリスに変化が現れたのは、校内に入ってすぐの事だったという。
「小さいアレスはおれが守ってやる!」
 やる気に満ちた表情で、握り込む拳は大変頼もしい、の、だが――。
 赤星の柄を握りしめるアレクシスの腕に妙に近く密着しているのである。
「……セリオス?どうしたんだい?」
「どうもこうもあるか!暗いろうかがこわいからとか、そんなんじゃなくて!これは……えっとそうだ!これはアレスがこわくないようにだ!」
 凄い早口で捲し立てて、腕にギュッ、としがみつく。
「不気味なほど暗くて、静かだからね……」
 チカッ、と点滅を繰り返すのは点在するみどりの非常灯。
 それから消防機材のあかーい色だ。それ以外は、殆ど真っ暗闇。殆どのものが黒色に沈んでいて、郷愁の漂う迷宮だからか怖いよりも心細い気分が勝る。
「さっきまでの負けず嫌いの君はどこへ?」
「……ないしょ!」
「そっかー」
 ――でも、……僕を守りたいというのは伝わったよ。
 ――強がりな主張をばれないようにしているね。
 密着感から、お察しな部分は勿論あったのだ。
 ――正直に言って、と言っても今度は意地を張るかな、君は。
「ありがとう、セリオス。君がいるからこわくないよ」
「だろう!何十回でも感謝の言葉は受け付けてるぞ!」
 顔をぐぃいと押し付けてくるセリオスは現実から目を背けている!
「……でも確かに暗いんだよね」
 赤星に光属性を宿してやれば、周囲はふんわりと明るくなった。
「ほら、いっしょに探そう?」
 つんつんと、肩を叩いて暗くないと教えてみると。
 セリオスの反応は一目瞭然。
「……剣で明るく?アレス天才だな!」
 明るくなった廊下に脅威が潜んでいようと、突然飛び込んでこようといち早く知る事が出来る!
 関心したようにたくさん頷いて、目をキラキラさせている。
「じゃあ、とりあえずは真っ直ぐだね。どこまで在るかなこの道は……」
「これならバケモノもこわくないぞ!」
 歩きはじめた時点でおかしな光景は今の所無し。
 廊下の床が誰も居ないのに剥がれて浮き始めたり、異常現象は起こっていたが無害そうなのでアレクシスが主導して、無視を決め込んだ。
「あれはよくあることだよ。誰かが遊んでいるんだろうね」
「そっかー。あ、でもとにかく花子ってヤツ早く探さねぇと!」
「……"見える"といいんだけどね。背後に立っていたりしたら、見落としそうだよ」
 ぼそり、と視認できるか怪しいかも知れない事を示唆すると、ピャッ、と黒い鳥から小さな悲鳴が上がった気がした。
 気の所為ということにしておこう。
「なにか、音が聞こえない?」
「は?何を言って――」
 二人で歩く廊下の先、セリオスが耳を澄ますと流れるようなゆったりとしたメロディが紡がれている事に気がついた。
 怖い音楽ではない。謳うような曲でもない。
 古いピアノを、誰かが弾き鳴らす音だ。
「……いや、聞こえるな。音楽室だ!」
 頭上を見上げた時に見えた"↑音楽室↑"という表記を信じ、アレクシスを引っ張ってセリオスが駆けていく。

 たどり着いた音楽室。
 からり、と横開きのドアを開けた途端、セリオスがぴたりと止まった。

「……え、誰もいねぇ!?」
 ピアノの前に誰かが座っている様子は全く無い。しかし音楽を奏でるのをやめようともしない。自動演奏のピアノが、音楽室で鎮座していたのだ。
「成程ね、これが怪奇現象――"何か"いるね」
「……ちょっとびびったけど、あんな楽器に負けるかよ!」
 全部アレスが片付けるからな!そんなセリオスの後押しを背中に受けてアレクシスは、咄嗟に前に立ち塞がる。
 背後に声援を受けたなら、"何か"だろうとしっかりと確かめなければ。
「……やあ、君がここの"怪異"かい?」
『あら、あら。ピアノが"私"だなんて、よく気がついたのね』
 迷宮化した学校の中に広がる学校の概念。
 校舎内に溢れる学校の七不思議を、"彼女"は体現するようにして、遊んでいた。
「そりゃあね。誰も居ないところで奏でてる事が違和感だよ」
「よおしよし、がんばれアレス!まけるなー!」
 背中をばしんと一つ叩いて、応援する歌を、大きな声で謳うのだ。
 セリオスの後押しは、"赤星の盟約"。
 失った故郷の音楽を奏でる歌声を紡ぐ
「勿論負けないよ……僕には歌がついているから」
『あら。怪談というのはそういうものよ、誘い込まれたのだとは、思わない?』
 ピアノの上に乗って現れた七不思議の花子さんは、ピアノの演奏速度を早める。
 セリオスは感じていた。曲の終わりを、今3度繰り返した。
 4度目が始まって――早回しの音楽は奏でられている――――。
「思わないね。ただ君達の話を聞くだけ……ではなさそうだから、連れて行かれるのはお断りするよ」
 噂、怪談。七不思議。
 どれの顛末も時々驚かす要素を飛び出して、そのまま攫ってしまうものさえある。
 "狐狗狸さん"に付いた骸魂に流されて、そうならないとも限らない。
『持って行きたくなるほど、魅力的な人だと思ったのに』
「申し訳ないね。小さくたって僕は騎士で――セリオスの盾だ!」
 運命も未来も見通す瞳を向けて、花子さんが次に行うことが演奏続ける事以外にあるとすればと看破する。
 黒い鳥を――怖がらせるか――――!
『曲がそろそろ終わるわ?ピアノもお腹が空いたというと思うから、ばりばりむしゃあと食べられてしまってね』
 変調を奏で、転調を加え。
 演奏する曲の流れが、歪に歪んでいく。
「怖いことを言ってもダメだよ。"君"もそろそろ遊び倒しただろう?さあ、もうお還りよ!」
 暗闇を照らす眩い光が、破邪と浄化の色を含めて煌々と照らし出すは怪異だらけの音楽室。室内に輝きが溢れる中で、アレクシスの全力の光属性が叩き込まれる!

 暴れだそうとするピアノは音楽を奏でるのをやめて、静かになり――光を喰らった"七不思議の花子さん"という姿を取った魂がすぅうと抜け出して消えさった。
 此処に残るのは、目の前に倒れ込んだ"狐狗狸さん"と、狐狗狸さんにとって思い出深い学校の姿である。
 暗い夜の色まで、アレクシスの光は照らし出した。
 怪異の闇は、コレにておしまい。
 オブリビオン化が解けるのと一緒に、夜の色もまた、消えていった。
 広がる空は、晴れた真昼の色のような――しかし感じるモノによって異なりそうなこの空の色もまた郷愁が染めあげた色である事は誰の目にも明らかだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『忘れられた神域』

POW   :    神社に参拝する

SPD   :    御神籤を引く、桜を愛でる

WIZ   :    花より団子、飲食を楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●いつか忘れ去られても尚

 学校の概念が、迷宮化がぐにゃりと歪む。
 狐狗狸さんのオブリビオン化が解けたことで、迷宮化も長くは続かない。
 しかし、遺された少しの日常時間をどう過ごすかは誰もが自由である。
 もう少しだけ、子供の時間は続くのである。

 中庭の中央で大きな桜が季節を問わず咲き誇っていた。
 ひらひらと、舞い落ちる桜のはなびら。その総数は幾ら散っても減る様子がない。
 桜に埋もれるようにひっそりと佇むそこそこ大きめな社と満開の狂イ桜の群れ。
 それから、宴会気分で騒ぐ子供姿の妖怪たちの声と、目に見えない概念のような何かが、漂う気配。
 縁もゆかりもない骸魂が、依代を得る事もできずに漂っているのだろう。どうやら学校とは其処まで関係のない別の場所が混ざって無規則に混在しているらしい。

 狐狗狸さんは、その中でもひときわ大きな桜を静かに桜を見ている。
 此処に広がる在りし日の思い出に満足感を得てしまった。
 あの子の事を忘れたわけではないけれど、"複数の子供"から新しい認知を得たのだ。オブリビオン化して、悪戯を働いた側になったけれど。もう一度、"見えてる子供にも"会いたかった夢をこうした形で叶えてしまったからこそ。
「And more(もっと)……ううん。なんでもないよ」
 呟く言葉は、誰にも届かない独り言。純粋な気持ちで、世界を変えない程度の思い出に浸り続ける事が出来ているようだ。

 猟兵が例えどこに居たとしても、どこからでも中庭へ出てくることが出来るだろう。現在地点が二階だろうと三階の廊下だろうと、屋上だろうと不思議な力で何処からでも下りの怪談が場所を無視して現れて、降りていく事ができる。
 校舎の中から出たとしても、学校の敷地内に要る限り君達の姿は強く戻ろうと願わなければ戻らないだろうけれど。
 桜舞う日常を、どう過ごすのも――勿論誰に、注意されるものではない。
尾守・夜野
「…終わったのか」
物の飛ばなくなった廊下を一人ぽつり
ふらふら歩いてあちこち覗いているだろうな
その内戻るなら無理して戻る必要ねぇからガキのままだ

歩いて歩いて狐狗狸さんに会えたなら、尋ねてみてぇな
ここがどんなところで、どんな思い出があったのか

俺には記憶はねぇし、無理して思い出したいとも思ってない
昔の記憶…村の皆の事もどんどん忘れていってしまっているが
しょうがないことと諦めてるし

…だから俺にとって記憶とは、俺以外のだれかが記憶してくれてるものとなる
だから、彼の話も聞いてみてぇんだよ
一人で抱えるだけだと風化してしまうから
懐かしさも消えてしまうから
忘れないように



●憶えていて

 からん、からん――。
 ぷかぷかと妖力で浮いていた教科書を含めた色んなモノ。
 それらが急激に浮くことを辞めた。
 自然落下で廊下に落ちて、コロコロと転がるものさえ在る。
「……終わったのか」
 学校内に響いていた相応の怪異の発端が収束したのだと尾守・夜野はなんとなく悟った。終わったからと言って、何処へ行くでもない。
 モノの飛ばなくなった廊下を一人、ポツリと歩いていく事にする。
 所謂、学校見学、というやつだ。
 咎めるものは誰も居ない。誰の気配もないのだ、せっかく訪れたのだから、ふらふらと目的のない散歩に興じる。長い廊下から一通り、いけるところまで順番にだ。どの部屋も、鍵はかかっていなかった。狐狗狸さんの思い出の中に、鍵が掛かっていた記憶がないのだろう。
 夜野が覗き込んだ部屋は、何処部屋も教室で珍しいものは一つとしてなかったけれど時々見上げた、"家庭科室"や"理科室"という現実に遭遇する機会の少ない部屋ばかりがあった。
 扉に備え付けられた窓を覗き込むのも、少し背伸びしてギリギリだ。
 ――不便な体だが……。
 ――そのうち元の背丈に戻るって話だったな。
 ――無理に戻る必要もねえ。
 だから、"本来あり得たかも知れない背丈で学校内を巡る"事が出来る貴重な体験が出来るというものだ。
 昇降口付近まで気持ちが満たされるまでの間、ぐるりと一周校内を適度に歩き回り夜野は流れるように中庭に出ていく事にする。

 中庭は見上げれば空がピンクであると表現ができないほどみっちりと桜が花を広げて、ひらひらと、はらはらと花弁が舞っていた。
 幻想的で、狂った光景である。
 これは眩い春の、ぽかぽかとした陽気ならぬ妖気が異常な空間を支えていることは明らかだった。
「なあ」
『……うん?』
 ぱたっ、と獣の耳を揺らして狐狗狸さんは反応する。
「なあ、改めて聞かせてくれよ。此処がどんなところで、どんな思い出があったのか」
『ぼくの思い出か――キミも不思議なことをいうね。ぼくにとっては、不思議だらけが溢れた場所だよ。七不思議も怪談も、此処で知ったんだ』
 子供として此処に通っていたわけではないからね。
 狐狗狸さんは楽しそうに語るが、それだけだ。
『キミは?どう思うんだい、学校という場所は』
 子供背丈になっている夜野よりも頭一つ分大きい狐狗狸さんは、積み重ねた年月分の相応な問いを返してくる。
「俺には……。俺には記憶はねぇし、無理して思い出したいとも思ってないんだ。学校とやらに思い出はない」
『へえ?じゃあ逆に聞かせてよ、どんなことでも構わないから』
 ねえ憶えている事は、なあに?とぐいぐいと尋ねてくる狐狗狸さんに夜野はたじろぐ。
 子供を相手にしたときだけ、こんなに話し好きの妖怪だったのか?
「……昔の記憶、なら少しだけだ。でも、村の事もみんなの事もどんどん忘れていってしまってる。これが俺の人生の積み重ねだと思って、"しょうがないこと"だって思ってるんだ、後悔はねえよ」
 同情するな。そんな口ぶりで目を伏せて、頭を横へ振った。
 話すことはそれくらい。
 ――語る必要のない。いつか崩れて消える経験の記録だ。
「……俺にとって記憶とは、俺以外の誰かが記憶してくれてるものとなる。俺が所有するものではあまりない」
『ふうん?達観した妖怪みたいな事を言うんだね』
「一人で抱えるだけだと風化してしまうからな」
 ――懐かしさも消えてしまうから。
 ――俺を忘れないように、話せ。
 ――お前が存在した事を証明し、話し続けろ。
 時間が許す、その時まで。
 "子供好き"なお前が、話倒せる時間ギリギリまで。

大成功 🔵​🔵​🔵​

炎・天遼
妖気は抜けたのに身体はまだ戻ンねぇかー
ま、大元は退治してるしその内戻るのは間違いねぇみたいだし
花見と洒落込むのも悪くねぇか

ンで、花見の席といえばやっぱ行楽料理や点心は欠かせねぇよな!
1から悠長に作ってる時間はさすがにねぇから
ウォー・アイ・満漢全席!で一気に品数を揃えて
飾りつけと提供順だけ考えるとするか!

……ン、体の感覚がいつもと違うとやっぱ繊細なのはムズイな
とはいえ、妥協はしたくねぇけど……仕方ねぇか
まずは皆の腹を満たす事が第一、だかンな!



●小さくても料理人!

 妖気がどんどん薄れていく気配。
 なんだか体が軽くなるような、気がした炎・天遼は周囲を見た渡してみるが、特に何かが変化した様子は見られない。
 それどころか――自分の見た目に変化は全く無かった。
 あそこもまた、小さいままだと確信できる。
「おかしな妖気は抜けたのに、身体はまだ戻ンねぇかー」
 ――ま、大本は退治しているし、その内戻るだろうケド!
 戻らなければ普段の生活にも色々支障を出しかねないが、何となく分かる。
 そのうちもとに戻るだろうと。元の背丈と声色に、戻るだろうとなんとなくわかるのだ。それはきっと、確信だろう。
「窓から見えるのは、中庭?桜の花が咲いてンのか?」
 ――花見と洒落込むのも悪くねぇな。
 気持ちはこの背丈のままで、楽しむ事に向く。
 当然、そのまま中庭の方へ行こうとした天遼だが、気持ちが少々疼くのだ。

 Q.花見の席といえば?

「やっぱ、行楽料理や点心は欠かせねぇよな!」
 道具の類は自分のものと、そう言えば家庭科室にあるだろう。
 お皿を借りるくらいならば許されるだろうか。
 ぱたぱたと、駆ける背中に揺れる尾は、ワクワクした走りを見せている。
 これから誰かが食べてくれたなら、きっと誰もが笑顔になると信じる顔だ。

 天遼は一人で、中庭の広いスペースに沢山の皿を一枚ずつ丁寧に並べた。
 その間、色んな気配がこちらを伺うように覗き込む。
 見えない誰かであったり、既に酔っ払った見知らぬ誰かであったが、天遼は皿を並べることに没頭している。
 全てを並べと終えて、時計の中央のような場所に台を置き、その上に立つ。
 皿は全部で79枚きれいに並べた。
「一から悠長に作ってる時間は流石にねぇから、さあさあさあ御覧じろ!」
 あらゆる食材を繊細にも豪快に斬る肉厚広刃の大包丁を空に向けて掲げて、下準備から全てを賄うのは――十全大補湯。
 食材の下地にあるのは、燕の巣のスープ。
 厳密には、薬効や毒性を自在に現す炎一族秘伝のそれだ。
 その内訳はどうか、天遼へ尋ねていただこう。
 そして始まる"ウォー・アイ・満漢全席!"。
 10秒で淡々と料理が皿の上に発生する。どれもこれもができたてで、美味しそうなものばかり。
 作成する過程が、料理の作られていく速さに置き去りにされていく。飾り付けは天遼が手を加えて、完成品に変わるまで、ほんの僅かな時間しかかからない。
 ほわほわと、暖か料理に上がる湯気。
「提供順は、やっぱ"満漢全席"のメニュー通りにやりたいよな!」
 さあ、さあ!食いたいやつは集まれ!
 元気な声が、周囲に留まる妖怪たちの気を引いて、花より男子の桜見がわいわいと開催される。
 前菜の皿、大皿、小皿椀にと皿のバリエーションの数だけ、見事に盛り付けられている。季節に応じた――桜フレーバーの点心に、新鮮デザートにも相応な力を通している。提供順は、やはり大事なものなのだが――それにしては客が多いようだ。

 ――……ン、身体の感覚がいつもと違うけど、やっぱ繊細なのはムズイな。
 納得のいかない斬り口をみつけて、苦笑を浮かべる天遼。
 ――とはいえ、妥協はしたくねぇ。
 ――仕方がないトコは多いが、最善を尽くすぜ!
「料理、美味いな!」
「だろ!食べたい奴は声をあげろ、先ずはみんなの腹を満たす事が第一、だかンな!」
 ニッコリ笑うたくさんの顔を見る。
 嬉しそうな者たちの顔を見て、それ以上の満面な笑みを浮かべる天遼。
 超級料理人が喜ばないはずはないのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リオン・リエーブル
アドリブ歓迎
いつもよりも低い視線をもう少し楽しもう
屋上の手すりの隙間から桜を見下ろし

この体で体育館から屋上まで走っちゃった
走れちゃったんだよ
感動だよね

この頃は早く楽になりたいとか思ったけど
紆余は曲折、頑張って生き延びたからさ
こんな光景も見られるんだよね
喉から手が出るくらい欲しかった健康な小さな身体、っていうのも体験できちゃった
色々あったけど人生捨てたもんじゃない
この依頼で改めて思っちゃった

And more(もっと)…か
おにーさんももっともっと頑張るぞ!
骸の海に還ったら二度と浮かび上がらないからさ
今は思う存分「今」を楽しむのだ

さあ帰ろう
研究の続き続き
仕込んだアレはどんな結果かな?
楽しみだね!



●広い空の下で

「ひゅぅ!此処が学校の屋上とみた!」
 ばーん、と屋上の扉を開け放ち、迷宮化がじわじわと朧気になりつつある晴れやかな空のもとで大きく息を吸う。
 広い空が、頭上に広がっていた。
 蒸気と魔法が発達した魔法学園のように、駆動音が聞こえたりすることはない。
 ぐるうりと屋上の隅から見える光景を眺め倒し、校庭に山のように落下している落とし物の群れを見つけてリオン・リエーブルは火が付いたように笑い出した。
 あまりにも非現実。誰もが落とし物を放置したまま帰る学校など在るはずがない。
 この場所もまた、迷宮化が解ける反動で郷愁の中に消えてしまうから拾う必要が無いのかも――。
「まあ。何処から持ち出したか"憶えていない"んなら、ああするしか無いよねえ」
 解らなくもない。元の場所に戻しても戻さなくても。
 記憶の中の学校に"当時の子供"がいなかったように。誰も戻ってこないのだから。
「あ、見事な桜が見えるね」
 リオンは、当たり前のように接触禁止の文字を無視して手すりの隙間から下方に広がる光景を見た。
 屋上の手すりは所々傷んだ古いそれで、誰が見ても確かに危ないものだったが思い切り押すではない。
 壊れそうだという加減は、長く時間を過ごすとなんとなくカンでわかるもの。
 そのまますとん、と座り込んで。
 遠い景色を見ながら今日という日の思い出を、頭の中で思い起こす。

「この体で、体育館から屋上まで走っちゃった。どうしようね、走れちゃったよ」
 そこそこな速度で、たくさんの階段を一つ飛ばしで上がって駆けて、登ってきた。
 肩で息を今でも少し、しているが、それは些事である。
「……いやあ、感動だね。とことん遊び倒せるなんて」
 胸の中が、騒がしく音を立てているけれど。
 それが生きているということなんだと考えれば、不思議とジーンとくるものだ。
 胸に手を当てて、それから今の小柄な手のひらを見て。
「……このくらいの頃は、もういっそ早く楽になりたいとか思ってたなあ」
 長く続くだろう苦しみを、一瞬で終わる簡単な事で終わらせようと考えたことさえリオンにはある。
 しかし、紆余曲折を経て、こうして胸の鼓動は停まらぬまま。
 楽しいことを全力で楽しみながら、"頑張って"生き延びている。
「こんな、視野を広げたら普通にありふれてそうな光景も見られるんだよね。生きていれば」
 当時は決して成し得なかった、喉から手が出るほど欲しいと願って、でも手に入らなかった健康な小さな体。
 短い時間の体験だとしても、この経験は嘘にはならない。
 遠き日に夢見た幻想(ゆめ)ではなく、今。現実に起こっている"摩訶不思議な怪異"だから。
「色々あったけど――人生捨てたもんじゃないねえ」
 ――この依頼で、郷愁を感じて改めて思っちゃったよ。
 髪が風に大きく揺れて、ふわりと浮かんだ髪に桜の花弁が紛れ込んだ。
 風に紛れて、狐狗狸さんの独り言がながーいお耳に聞こえた気がする

『And more(もっと)……』

 ――遊びたいとか、思い出して欲しい、とかかな。
 リオンは笑って、それからすっくと立ち上がる。
 にぎやかな声と見事な桜。それから、そろそろ呼吸が落ち着いたものだから、元気がぐんと戻ってきた気がしたのである。
「おにーさんも」もっともっーーっと頑張るぞ!骸の海に還ったら二度と浮かび上がらないんだからさ」
 誰かが覚えている限り。誰かを覚えている限り。
「今は、とにかく思う存分"今"を楽しんでも良いんじゃないかな!」
 やや大きな声の独り言だった。
 耳の良い、子供好きの妖怪ならば――もしかしたら声を拾っているかもしれない。
「さあ、帰ろう」
 研究の続きが、忙しい日々が。緩やかな日常が、屋上の扉を通り抜けて階段を降り始めた頃に戻ってくる。
 普段の姿に戻ったリオンが、階段をゆっくり降りていった。
 子供は大人に戻って、"今"の楽しみに胸を躍らせる。
「仕込んだアレはどんな結果になったかな?――楽しみだね!」
 頭についた桜の花びらは、今日という日が確かにあったという証明になるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オネスト・ファッション
アドリブ◎

ふぅ…怪談話は中々刺激的でしたね!ビビってませんよ
オブリビオンも居なくなったことですし、これからは楽しい放課後の時間ですよ!


狐狗狸さん、よかったらもう少し一緒に遊びましょう!
狐狗狸さんの友達の話を聞きながら、遊びを教わったり、もっと怪談話を聞いてみたりしてみよう

遠い友人の思い出を懐かしむ狐狗狸さんの姿に
在校生として卒業して行く友人を送り出し続ける主君の姿がなんとなく重なって見えたから、このまま放っておくことはできないなって

だから狐狗狸さん、僕とも友達になってくれませんか?
子供の時間はもうすぐ終わっちゃうけど、君のことも、今日のこともずっと忘れません
約束します!悪魔は嘘をつきません!


陽川・澄姫
狐狗狸さんの様子を見る限り、もうお仕置きは必要なさそうですね。
寂しさを溜め込んで爆発させるくらいなら、他の妖怪達と思い出話に花を咲かせていれば気も紛れたでしょうに。

……もしかして、独りぼっちだったりするんでしょうか?
それなら、私が付き合ってあげてるのも吝かではありません。
昔はよく人間に悪戯をしてましたからね。その頃の話をしてあげましょう。

もしくは、人間の子供の姿で遊んであげても良いかもしれませんね。
ごっこ遊びというやつです。演技にもある程度は自信がありますし、少しでも懐かしんで貰らえたらいいですね。
コックリさんをしたりして遊んでもいいですし、悪戯をしたいようなら驚く役でもやってみせましょう。



●ともだち

 桜を眺める狐狗狸さんは、尾と耳を揺らすばかりでその場からは動く様子がなかった。とても大人しく。思い出に浸り、心がここにないのかもしれない。
 ――もう、お仕置きは必要なさそうですね。
 陽川・澄姫は肩を撫で下ろす気分だ。
「……怪談話は中々刺激的でしたね!ビ、ビビってませんよ!」
 ふう、と呼吸を整えるようにしているオネスト・ファッション。
 見るからに肩を震わせていて、内心はやはり怖かったのだろうか、と狐狗狸さんは首を傾げた。
『怖がるヒトがいると、話すのは楽しくなってしまうね』
「ビビってませんって!僕は元気いっぱいですって!でもオブリビオンも居なくなったことですから、これからが楽しい放課後ですよ!」
『放課後――ああ、ぼくもその響き、好きだね。うん、放課後だ』
 好きなことをしよう。好きな話をしよう。
 そんな日々が、懐かしいね。
「もし、もし?狐狗狸さん」
『なんだい?小さめの、キミ』
「寂しさを溜め込んで爆発させるくらいなら、他の妖怪たちと思い出話に花を咲かせていれば気も紛れたでしょうに」
 澄姫の指摘は狐狗狸さんの悲しみ、辛さ。今回の事件が起こった原因――気持ちに寄るところだ。
 それらが狐狗狸さんだけで抱えていた事だから、話し好きを活かして伝播させていっても良かったのではないか、と。
『……まあ、そうなんだけどね』
 狐狗狸さんが言いよどむ。先程までの、オネストと語る楽しそうな雰囲気はいきなり息を潜めた。
「……まさか、なのですが。…………もしかして、独りぼっちだったりするんでしょうか?」
『……!』
 頭部の耳を、ぴん、と真っ直ぐに立てて。
 狐狗狸さんは苦笑を零す。図星のようだ。
 "この学校の子供"が好きだった狐狗狸さんにとって、幽世に渡ってからの友達は長年生きた"大人"しかおらず。
 "これじゃない"という気分が勝り、誰の輪にも加われず"思い出"にばかり浸っていた姿が目に浮かぶよう。
「狐狗狸さん、よかったらもう少し一緒に遊びましょう!」
「そういうことなら、この姿の私なら、私も付き合ってあげてるのも吝かではありません」
 ――昔はよく人間に悪戯してましたからね。
 ――誰も彼もが年齢不詳の子供姿なのですから、少しの経験を話す分には問題はないでしょう。
 猟兵二人の提案に、狐狗狸は嬉しそうに尾を揺らした。
『ほんとうかい?キミたちぼくを仲間にいれてくれるのかい?――嬉しいなぁ』
 にっこりと、照れくさそうに笑って喜ぶ妖怪は、何処までも嬉しそうにする。

「コックリさん、コックリさん!狐狗狸さんの友達の話、ある?ああはい、人間のですよ!僕たちではなく」
 狐狗狸さんとオネスト、澄姫は十円玉の上に指を置いている。
 提案の発案は澄姫がした。"コックリさん"を狐狗狸さんを交えて、行うという不思議な現象が引き起こる。
『二人の質問に、ぼくが紙面越しでこたえるの?』
「狐狗狸さんは、この遊びの中で喚ばれた妖怪なのでしょう?ならば、それこそこれがいいかな、と」
 オネストの返事には、十円玉がぐぐぐ、と動いて"はい"を示した。
『長くなるから、ぼくが話すけれど。あの子はね、ぼくみたいにひとりぼっちだったんだけど……"コックリさんは怖くない"って色んな子に広めることで友達を増やしていったんだよ。間接的に、ぼくがお友達づくりの協力が出来たということだよね、嬉しいことだよ』
 思い出の"あの子"の友達は、狐狗狸さんのお友達。
 コックリさんをみんなが楽しく遊ぶから、狐狗狸さんは相応の答えを返答していた、という。
『勿論、ただの遊びではないから……"あの子"にちゃんと手順を護るんだよ、って伝えていたけどね』
 狐狗狸さんと遊ぶ、秘密の降霊術。
 手順を護らない悪い子供のもとには、低級霊が忍び寄るような事があったりして軽い騒動が起こったことも在るらしい。
『ぼくは皆の狐狗狸さんだからね、勿論その場で一番"おとな"だったからちゃんと守ったよ』
「子供たちの安全を守っていた妖怪!ひゅう、かっこいいですね!」
 満足したようにオネストが褒めると狐狗狸は鼻を掻いて照れた様子を見せた。
「驚かすどころかかっこいいところまで見せているなんて……あなたを見える人は、多かったですか?」
 次の質問、澄姫の問いかけには"いいえ"の文字を選んで、首を振る。
『見えてた人は少ないよ。ぼくとお化けの違いを分かっていた子の方が少なかっただろうね』
 どんどん時代が移り変わって、"コックリさん"を行った事で起きた怪異などのレポートがネットの海で流出した。
 子供たちが、軽い気持ちでやってはいけないこと。
 おこなってはいけないことと小学生は口止めを行われた程である。
 狐狗狸さんの横顔は、どこか寂しそうに見えた。
「……遠い友人の思い出話、素敵ですね。でも、在校生として卒業していく友人を送り出し続ける主君の姿がなんとなくかさなってみえるんですよ」
『……うん?』
「このまま、放っておけないな、って」
 コックリさんは続いている。
 次の質問は狐狗狸を飛ばして、再びオネストだ。
「だから、狐狗狸さん狐狗狸さん?僕とも友達になってくれませんか?」
「横槍を。私のことも頭数に加えて頂いて構いません。彼と友達に、なってくださいませんか?」
 狐狗狸さんの横顔が、目に見えて涙に溺れるように見えた。
 潤んで、それでも"答えなきゃ"と妖力を駆使して、文字を示す。

 "はい"、だ。

『友達に、なってくれると、うれしいな……』
「ええ!約束します!悪魔は嘘をつきません!」
 襟元をピッ、と正すビジュアルの悪魔は満面の笑顔を魅せる。
「子供の時間はもうすぐ終わっちゃうけど!君のことも、今日のこともこの体験も!ずっと忘れません!」
『ありがとう、オネスト君』
「私には感謝していただけないのですか?"おかえり"願ってしまいますよ」
 コックリさんを終えるときの最後に行う事を指し示している。
『いいや、君にも感謝しているよ。澄姫さん』
 今を生きる現代人の記憶に留まり、認識してもらえるなんて。
 妖怪として、嬉しいことでしか無かった。
『ぼくも……子供以外にも、大人も好きになれそうだよ』

 "コックリさん、コックリさん。お帰り下さい。ありがとうございました"。
 ――そしてまたいつか、遊びましょう――――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
なぁアレス
せっかくまだまだ小さいんだから小さくないとできねえことしようぜ!
いたずら心全開の笑みで告げる
それはなぁ…こういうこと!
するすると桜の木を登りだし
こっちこっちとアレスを手まねく
ふふっ、さくらとアレスしか見えねぇな!
すごくすごくいいけしき

アレスの提案に目をキラキラ
きっともっと一番いいけしきだ!
行こうぜアレス!
アレスといっしょならだいじょうぶ
引っ張ってくれる手をぎゅっとにぎりてっぺんへ

わぁ!すげぇ
ここなら全部見える!
せっかく来たから何かのこしていきたいな…そうだ!
ぽっけをあさってハンカチをゲット
2つのハンカチを結んででっかくしよう
これに名前を書いて…できた!
ふたりのしるし


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎
小6

小さくないとできないこと…?それって何だい?
…え、セリオス!?危ないよ!
〜っもう!そこで待ってて!
彼を追って登れば
すごい…桜色だ
ふふ、僕もおんなじだよ
桜とセリオスしか見えないや

…さっき危ないと言ったのは僕だし
ここも特等席みたいだ
でも、彼ともっと色んな景色を見たくなって
ねえ、セリオス
この木のてっぺんってどんな景色だと思う?
行ってみよう!

登るのを支えたり
彼の手を引っ張り上げたり
いっしょにてっぺんへ!

うわあ…!
これがてっぺんの景色…きれいだね、セリオス!
何かを…うん、僕も残したい!
僕もポケットからハンカチを取り出し、名前を書く
旗みたいなこれを木に結べば
そうだね
ふたりのしるしだ!



●桜の中のふたりのしるし

 戦闘する雰囲気が無くなった――その途端、二人の雰囲気がすんごく軽くなったという。証言は、セリオス・アリスのものだ。
「なぁアレス?せっかくまだまだ小さいんだから小さくないとできねえことしようぜ!」
 悪ガキの誘いは、その声を耳に入れた時点で深く深く染み渡る。
 振り返りざまに剣を腰に戻し、緊張感の糸が突然プツリと途切れたアレクシス・ミラは朗らかに笑った。
「小さくないと出来ないこと?それってなんだい?」
 小学校六年生くらいに相応の思考のゆるさに引っ張られる。勇敢でセリオスよりも一学年上で、勇ましい普段寄りのアレクシスは何処へいったのか。
「良いから良いから!ほら外だ、急げ急げ!」
 アレクシスの手をぐっと引っ張って、中庭にパタパタと出ていく。
 その間も、セリオスは満足げにニンマリしていたという。
「引っ張って走るなんて危ないよセリオス!ちゃんと足元も気をつけて!」
 引っ張って急ぐのには理由があるのかな、なんて軽い気持ちを抱きつつもアレクシスがいい感じの速度を保っていた為セリオスが派手につんのめるような事は起こらなかった。残念。
「アレスが加減するのは分かってた!ので!桜に免じて、許すことを所望する!」
 ぶわああ、と桜の花弁が下に落ちるではなく風で上に舞い上がる。
 セリオスの髪を派手に舞い上げて、"ほら許したまえ"なんて助長するよう。
 何処かにバカでかい扇風機でも設置されているかの暴風だ。
「許すもなにも、怒ってはいないんだけど……って何してるんだい、セリオス!?」
「桜の弾幕に紛れた俺を、見失ったアレスが悪い!さっきの誘いなぁ、――こういうことだ!」
 驚く声と、いたずら心全開の笑みで、告げる声。
 するすると桜の木を登っていたセリオスは、手招きする。
 足場がしっかりしている事を一度二度、ちゃんと踏みしめて確認済みだ!
 桜の幹の虚(うろ)もなかなかの数があるので、木登り経験があってもなくても意外と気軽に登れるようになっていた。
「危ないよ!急いで登らないで!降りてこいとは言わないから、ゆっくりだよ!」
「どうしよっかな~待たないから、登ってこいよ!」
「~~っもう!良いからそこで待ってて!」
 登るしか無い。アレクシスの決断はとても早かった。
 困難という顔をするでもなく、セリオスと同じ目線に登るまでがあっという間であったほど。
「あ……すごいね、たくさん桜色だ」
「さくらを見るなら此処まで近い方がよく見えるし、それにしても、ふふっ……」
 控えめに口元に手を当ててセリオスが笑うのをアレクシスは首を傾げて見た。
「あんまりたくさんの花が溢れてるから、さくらとアレスしか見えねぇな!」
 たくさんの桃色花弁の中のアレクシス。地面なんて当然見えない。木の幹も見えなくなるほどのボリュームの中に、それしかみえないのだ。なんだろうコレは。
「すごくすごくいいけしきなんじゃね?」
「うん。僕もおんなじだよ、見上げる視界いっぱいの桜とセリオスしか見えないや」
 お互いが想う一番鮮やかに咲く花を一つ。
 それから存在感の凄い桜の群れがたくさん。風で花弁が舞う様も、時々髪に桃色が点々と乗るのも、それはそれでいい眺めだ。
「……それで?優等生アレスくん。俺になにかいってたっけなあ?」
 注意していたのはさてどちらさまでしたか?攻撃。
「……危ないと言ったのは僕だよ。うん、でも、ここも特等席と言えるね。うん訂正しよう」
 あぶないのは変わらないんだから、両手を放さないようにね。
 指摘の修正と共に追加注意を忘れないアレクシスは、とても優等生だった。
 ――でも此処はいわば中腹だね。下から見て、一番多く見られる場所だ。
 ――頂点は、まだ上にある。うん、小さくないと出来ないことか……。
 もっと色んな景色を見れるとしたら、この提案が相応しい。
「ねえセリオス、この木のてっぺんで、どんな景色だと思う?行ってみようよ」
 片手を離したアレクシスが上を指し示す。
 セリオスも頭上を見投げてみるが、ここからではどうなっているか全く見えない。
「きっと、きっとだけど。もっと一番、いい景色だ!おう行こうぜアレス!」
 アレクシスの提案に目をキラキラさせて、セリオスがぺろりと口元を舐める。
 登りきってやる、そんな意識の現れだろう。
「さあ、じゃあもっと高いところまで行くよ。付いてきて」
「アレスといっしょならだいじょうぶ!」
 以降――ここから少し、楽しい木登り時間が続く。
 追い越して追い抜いて、桜色の中を二人で笑いながらプチ追いかけっこな様相が繰り広げられていた。
「……お?この辺りがちょうどてっぺんかな。よし、セリオス手を出して?」
 掛ける足場の都合上、アレクシスがセリオスの上を取り、手を差し出す。
 景色を見るなら一緒がいいが、足場の数が足りないと判断したのだ。
 だからまだ、アレクシスは顔を上げた先に見える光景を、知らない。
「おう!」
 手をぎゅ、と握り返してセリオスは引っ張り上げられる。
 危なくないようにと、それこそギュ、と抱きとめられたのだがそれはよくあることだろう?
 おひめさまをえすこーとするのも、じょうきゅうせいのつとめです。いいですね?
 わさああと、花びらが視界を覆ったのも一瞬。
「うわあ……!これがてっぺんの景色……きれいだね、セリオス!」
「わあ!すげえ!ここからなら全部見える!」
 桜の木々のどれよりも高い場所に二人はいた。桃色が波のように風で揺れていた。
 学校の三階よりも高く、屋上よりも高い。
 この空間は全く不思議な広さをしていたが、それでも。
 どの木よりも高い稀な木を二人は登ったのだと分かっただろう。
「しばらく眺め倒すのもいいけど、せっかく来たから何かのこしていきたいな……」
「何かを……うん、僕も残したい!」
 今二人が持っているものは、とゴソゴソとポケットを漁って出せたのは二人共ハンカチだ。
 よく持っていたな、偉いぞ。
「そうだ!俺は思い出した、逆側のポッケに入れていたコレの存在を!」
 じゃーん、とセリオスはペンまで出してくる。ちなみに、ご丁寧に油性だ。
 何故そんなモノが――。
「じゃあぎゅっと結んで、大きくしよう?ああ、名前も書き込もうか!」
 身体を支えているから、とアレクシスが言うもので、その後は完全にセリオスの独壇場である。二人のハンカチをいい感じに硬く結び、自分のハンカチに名前をきゅ、と書き込む。
「はい、アレスも!」
「うん」
 ポップな感じで書かれたセリオスの名前を見つつ、同じくポップな感じで記入した。細ペンではなく、太字で書き込んでいるあたり主張が激しいがその辺りは子供のすることです。どうか大人の人は見つけても叱らないように。
「名前を書いて……これで完成!"ふたりのしるし"!」
「丁度いいからこの辺りに結ぼうか、旗みたいだね」
 ばたばたと、揺れるハンカチは桜の中でもよく映えた。
 二人の名前をいい感じに翻して、此処に来た人が居ますと宣言する目印となる。
「そうだね、これは"ふたりのしるし"だ!」
 誰からも見つからない所に堂々と設置したこれが彼らの"わるいこと"。
 普段の背丈ならば、本当に危ない高さまで登っていたことは後に彼らは知るだろう。アレクシスがすごい勢いでセリオスに説教を食らわせたらしいのだが、それはまた別の機会に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴェル・ラルフ
【あしび】
あはは、ごめんね
拗ねるようなレーヌには謝るけれど、子どもの姿でいると、やっぱりなんだか意地悪したくなっててしまう
こっち、見てくれるから
子どもの時って、こんな気持ちだったんだなぁ

桜の下
子どもたちの賑やかな笑い声
違う世界でも変わらないもの
温かな孤児院での日々を思い出す

もし、僕らがこうして子どもの頃に出会っていたら、どうなっていたんだろう
…もし、あの時レーヌが側にいたら
いつでも誰かのための行動をする君がいてくれたら
僕は、復讐のために独りで孤児院を飛び出すことは、なかったんだろうか

…うん、そうだね
あの時の自分も、無駄じゃないと
そう、思えるように
君に会えたんだからと微笑んで


レーヌ・ジェルブロワ
【あしび】
もう。追いかけられて、怖かったんですから。
頬を膨らませて少々恨めしそうに
子どもの姿だといつもより子どもっぽい対応をしてしまいますね
でもそれも新鮮で、なんだかくすぐったいです

大きな桜の下へ腰かけて
舞う花弁や子どもたちをを見ながらお話ししましょう

子どもの頃に出会っていたら?
(…わたしがもし人間として貴方と同じように年を重ねられたら…そんなことを、最近考えることがあります
何故かしら、人の身を得て人々に奉仕することだけを考えていたのに…)
いいえ。過去があって現在がある。
今のヴェルさんとわたしだから、わたしは…
この先の言葉は自分でもよく分からなくて、ただ貴方が笑顔であってくれたら嬉しく思います



●もしも今より前に出逢っていても

「もう。追いかけられて、怖かったんですから」
 レーヌ・ジェルブロワは頬を膨らませて少々恨めしそうにヴェル・ラルフを見ている。さっきの一連に、ようやく落ち着いた頃のことだ。
「あはは、ごめんね」
 拗ねるようなレーヌには、きちんと謝る声が返る。謝る声は真面目なもので、でも楽しげに笑うヴェルはそれは満足そうだったという。
「やっぱりね、子供姿なものだからなんだか不思議と意地悪したくなってしまって」
「本当にそれだけですか」
 いえ、でもそうですね、とレーヌは自分の言葉否定する。
「子どもの姿だあといつもより子どもっぽい対応をしてしまいますね」
「こっち、見てくれるから」
 ――子どもの時って、こんな気持だったんだなあ。
 改めて思うものの、これはこれで不思議な体験をしていると思うヴェルだった。
「みてますけど!でも、はい。それも新鮮ではあると、思います」
 ――なんだかくすぐったい、気がしますし……
 いい感じに丸く収まるのだから、子ども姿というのも案外悪いことはない。
 レーヌもまた、不思議体験に落ち着いた気持ちで順応しつつあった。
 ふたりで落ち着いて、中庭へと足を運ぶ。
 溢れんばかりの桜の群れが、二人を出迎えてくれた。
 胸に広がるのは、好奇心とそれから穏やかな気持ちである。

 どれもこれも、見上げる桜は見事に狂イ咲いていた。
 ひらひらと、はらはらと。桜の花弁を揺らして落として、靡かせて。
「ほら、此処。レーヌもおいでよ」
「はい、失礼します」
 大きな桜の木の下で、二人は腰を押し付けることにした。
 舞う花弁の下、子供の姿を横目に二人きりのお喋りをするのも悪くない。
 笑い合うにぎやかな声も。
 それぞれが違う世界からやってきたような風変わりな姿も。妖怪たちも一緒になって、楽しそうな時間を過ごしているのがヴェルには見て取れる。
 ――違う世界でも、変わらないものだなあ。
 ――温かな孤児院で過ごした日々も、こんな感じに視えていた気がするよ。
「ねえ。僕らがこうして、子どもの頃に出会っていたら、どうなっていたと思う?」
 ――……もし、もしもあの時からレーヌが傍にいたら。
 あの日常が変わっていただろうか。
 ――いつでも誰かのために行動をする君をいてくれたら。
「僕は、復讐のために独りで孤児院を飛びだすことは、なかったんだろうかとかは思ったけれどね。レーヌは、どう?」
「子どもの頃に出会っていたら?」
 ヤドリガミたる彼女には、不思議な例え話である。
 今のこの姿もまた、珍しい体験で発生した事柄だ。それを、もしももっと前に体験していたら――。
 ――わたしがもし人間として、貴方と同じように年を重ねられたら。
 ――……そんなことを、最近ガンが得ることがあるんですよね。
 少し考え込むように、頭を揺らす。ええと、うーん、と。
 ――何故かしら、人の身を得て人々に奉仕することだけを考えていたのに……。
 モノとして、そのように在ろうとする生い立ちに準ずる。
 だから、答えとして応えるのは考えていたことではない。
「――いいえ。過去があって現在があると、思います」
 過去に会えていたとして、それは全てが書き換わってしまうだろう。
 今の関係があるのは、"過去"を通ってきた自分があってこそ。
「今のヴェルさんとwたしだから、わたしは……」
 この先の言葉は直ぐに出すことは叶わなかったレーヌ。
 自分でもよく分からない。理解しているのは、それだけだ。
「うん、そうだね。あの時も無駄じゃないとそう思えるようにいなくちゃ、かな」
 ひらりと落ちてきた桜の花びらを、ヴェルが手のひらに握り込む。
 自由に落ちてくるひとひらを捕まえて、楽しそうに笑った。
「ほらだって、こうして君に逢えたんだから」
 ――貴方が、そうして笑顔であってくれたら、嬉しいのだと、思います。
 レーヌもまた、嬉しそうに笑ってみせた。
 穏やかな時間は、こうして少しずつ刻まれていく――。
 思い出の中ではない。現在の"想い"と一緒に。はにかんだ笑顔も、怖がった君の表情も、子供の姿から、普段の姿に戻ったときにも続く想いと一緒に――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月19日


挿絵イラスト